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特許7397280タイヤ用ゴムの摩耗特性試験方法および摩耗特性試験機
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-05
(45)【発行日】2023-12-13
(54)【発明の名称】タイヤ用ゴムの摩耗特性試験方法および摩耗特性試験機
(51)【国際特許分類】
   G01N 3/56 20060101AFI20231206BHJP
   G01M 17/02 20060101ALI20231206BHJP
【FI】
G01N3/56 G
G01M17/02
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019159088
(22)【出願日】2019-08-30
(65)【公開番号】P2021038955
(43)【公開日】2021-03-11
【審査請求日】2022-07-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山根 賢司
【審査官】西浦 昌哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-247301(JP,A)
【文献】特開2005-233797(JP,A)
【文献】特開2016-114504(JP,A)
【文献】特表2014-509387(JP,A)
【文献】特開2006-300725(JP,A)
【文献】特開2018-044825(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 3/00- 3/62
G01M 17/00-17/10
G01N 33/00-33/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
実タイヤのトレッドゴムの試験片を作成する試験片作成ステップと、所定の実路面を再現した模擬路面を有する回転体を作成する回転体作成ステップと、所定の試験条件下にて前記試験片を前記回転体の前記模擬路面に接地させる摩耗試験ステップと、を備えるタイヤ用ゴムの摩耗特性試験方法であって、
前記摩耗試験ステップにて、前記試験片のスリップ角をノコギリ波状あるいは正弦波状に連続的に変化させることを特徴とするタイヤ用ゴムの摩耗特性試験方法。
【請求項2】
前記摩耗試験ステップにて、前記模擬路面の表面温度が所定温度に制御される請求項1に記載のタイヤ用ゴムの摩耗特性試験方法。
【請求項3】
前記模擬路面の前記表面温度が室温よりも低い温度に制御される請求項2に記載のタイヤ用ゴムの摩耗特性試験方法。
【請求項4】
前記摩耗試験ステップにて、前記試験片と前記模擬路面との相対速度が所定の実車平均速度よりも速くなるように、前記回転体の回転速度が制御される請求項1~3のいずれか一つに記載のタイヤ用ゴムの摩耗特性試験方法。
【請求項5】
所定の実路面を再現した模擬路面を有する回転体と、実タイヤのトレッドゴムの試験片を前記回転体の前記模擬路面に接地させて保持する試験片保持装置とを備えるタイヤ用ゴムの摩耗特性試験機であって、
前記試験片保持装置が、前記試験片のスリップ角をノコギリ波状あるいは正弦波状に連続的に変化させるスリップ角制御部を備えるタイヤ用ゴムの摩耗特性試験機。
【請求項6】
前記模擬路面の表面温度を制御する温度制御装置を備える請求項5に記載のタイヤ用ゴムの摩耗特性試験機。
【請求項7】
前記スリップ角が、-20[deg]以上20[deg]以下の範囲内で連続的に変化する請求項1~4のいずれか一つに記載のタイヤ用ゴムの摩耗特性試験方法。
【請求項8】
前記スリップ角が、-20[deg]以上20[deg]以下の範囲内で連続的に変化する請求項5または6に記載のタイヤ用ゴムの摩耗特性試験機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、タイヤ用ゴムの摩耗特性試験方法および摩耗特性試験機に関し、さらに詳しくは、試験片を用いた摩耗試験の試験精度を向上できるタイヤ用ゴムの摩耗特性試験方法および摩耗特性試験機に関する。
【背景技術】
【0002】
近年のタイヤ用ゴムの摩耗特性試験方法では、実タイヤのトレッドゴムの試験片を作成し、所定の実路面を再現した模擬路面を有する回転体を作成し、所定の試験条件下にて試験片を回転体の模擬路面に接地させる摩耗試験が行われている。かかる従来の摩耗特性試験方法として、特許文献1に記載される技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6444720号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この発明は、試験片を用いた摩耗試験の試験精度を向上できるタイヤ用ゴムの摩耗特性試験方法および摩耗特性試験機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、この発明にかかるタイヤ用ゴムの摩耗特性試験方法は、実タイヤのトレッドゴムの試験片を作成する試験片作成ステップと、所定の実路面を再現した模擬路面を有する回転体を作成する回転体作成ステップと、所定の試験条件下にて前記試験片を前記回転体の前記模擬路面に接地させる摩耗試験ステップと、を備えるタイヤ用ゴムの摩耗特性試験方法であって、前記摩耗試験ステップにて、前記試験片のスリップ角をノコギリ波状あるいは正弦波状に連続的に変化させることを特徴とする。
【0006】
また、この発明にかかるタイヤ用ゴムの摩耗特性試験機は、所定の実路面を再現した模擬路面を有する回転体と、実タイヤのトレッドゴムの試験片を前記回転体の前記模擬路面に接地させて保持する試験片保持装置とを備えるタイヤ用ゴムの摩耗特性試験機であって、前記試験片保持装置が、前記試験片のスリップ角をノコギリ波状あるいは正弦波状に連続的に変化させるスリップ角制御部を備える。
【発明の効果】
【0007】
この発明にかかるタイヤ用ゴムの摩耗特性試験方法および摩耗特性試験機によれば、(1)試験片および模擬路面が使用されて摩耗試験が行われるので、実タイヤを用いた摩耗試験と比較して、トレッドゴムの摩耗特性を取得するための試験時間を短縮できる利点がある。また、試験片のスリップ角を0[deg]あるいは所定の角度に固定して摩耗試験を行う構成と比較して、試験片の偏摩耗が抑制される。これにより、試験精度が向上する利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、この発明の実施の形態にかかるタイヤ用ゴムの摩耗特性試験機を示す平面図である。
図2図2は、この発明の実施の形態にかかるタイヤ用ゴムの摩耗特性試験機を示す正面図である。
図3図3は、この発明の実施の形態にかかるタイヤ用ゴムの摩耗特性試験方法を示すフローチャートである。
図4図4は、図3に記載した摩耗特性試験方法における回転体作成ステップを示すフローチャートである。
図5図5は、スリップ角の変化の一例を示す説明図である。
図6図6は、この発明の実施の形態にかかる摩耗試験の結果を示す図表である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、この実施の形態の構成要素には、発明の同一性を維持しつつ置換可能かつ置換自明なものが含まれる。また、この実施の形態に記載された複数の変形例は、当業者自明の範囲内にて任意に組み合わせが可能である。
【0010】
[摩耗特性試験機]
図1および図2は、この発明の実施の形態にかかるタイヤ用ゴムの摩耗特性試験機を示す平面図(図1)および正面図(図2)である。これらの図は、一例として、ターンテーブル型の摩耗特性試験機1を模式的に示している。
【0011】
図1に示すように、摩耗特性試験機1は、回転体2と、試験片保持装置3と、温度制御装置4とを備える。
【0012】
回転体2は、いわゆるターンテーブルであり、駆動装置(図示省略)により駆動されて、後述する所定の回転速度で回転する。また、回転体2は、その上面に所定の実路面を再現した模擬路面21を有し、この模擬路面21を水平にして回転する。また、模擬路面21が後述する作成方法により別部材に形成され、この部材が回転体2の上面に貼り付けられる。
【0013】
試験片保持装置3は、後述する円柱形状の試験片Sを保持して、試験片Sの周面を回転体2の模擬路面21に接地させて保持する。具体的には、図2に示すように、試験片保持装置3が保持部31を備え、保持部31が、円柱形状の試験片Sを回転可能に保持する。また、保持部31が回転体2の軸方向に進退することにより、試験片Sと模擬路面21との接地状態が切り替えられる。また、保持部31が模擬路面21に対する試験片Sの押圧力を制御することにより、試験片Sの接地荷重が制御される。また、図1に示すように、試験片保持装置3がスリップ角制御部32を備え、スリップ角制御部32が保持部31を中心に回動することにより、保持部31が模擬路面21上で回転して、試験片Sのスリップ角が変動する。なお、図2では、スリップ角制御部32の図示が省略されている。
【0014】
温度制御装置4は、回転体2の模擬路面21の表面温度を後述する所定温度に制御する。例えば、図2に示すように、回転体2が内部に冷媒流路Rを備え、温度制御装置4が、回転体2の回転軸を介して回転体の内部に所定温度の冷媒を供給することにより、模擬路面21の表面温度が制御される。
【0015】
[摩耗特性試験方法]
図3は、この発明の実施の形態にかかるタイヤ用ゴムの摩耗特性試験方法を示すフローチャートである。図4は、図3に記載した摩耗特性試験方法における回転体作成ステップST2を示すフローチャートである。図5は、スリップ角の変化の一例を示す説明図である。
【0016】
この摩耗特性試験方法は、実タイヤのトレッドゴムの試験片Sを所定の実路面を再現した模擬路面21に接地させて試験片Sの摩耗特性データを取得する試験であり、以下のように行われる。
【0017】
試験片作成ステップST1では、試験片Sが作成される。試験片Sは、実タイヤ(図示省略)のトレッドゴムと同一のゴム材料から成り、円柱形状に成形される。また、その円柱形状の側面が、タイヤのトレッド踏面に相当する。また、試験片Sの円柱形状の外径が、実タイヤの外径に対して1/12以上1/6以下の範囲にあることが好ましい。また、試験片Sの円柱形状の高さが、実タイヤの接地幅に対して1/20以上1/9以下の範囲にあることが好ましい。
【0018】
試験片Sの接地長は、所定の接地領域における円柱形状の側面の接地長の平均値として算出される。実タイヤの外径は、タイヤを所定リムに装着して所定内圧を付与したときのタイヤ外径として算出される。実タイヤの接地長は、タイヤを所定リムに装着して所定内圧を付与すると共に所定荷重を付与したときの、所定の接地領域におけるタイヤ接地長の平均値として算出される。上記した所定リム、所定内圧、所定荷重および所定の接地領域は、試験目的および試験条件に応じて適宜選択される。
【0019】
回転体作成ステップST2では、所定の実路面を再現した模擬路面21を有する回転体2が作成される。具体的には、回転体作成ステップST2が次のように行われる(図4参照)。
【0020】
路面データ取得ステップST21では、所定の実路面の路面データが取得される。例えば、実路面の三次元データがレーザースキャナを用いて取得されて、実路面の路面データとして用いられる。実路面の路面データは、実路面の所定領域における位置データおよび深さデータ(すなわち、実路面の凹凸部の高さ方向のデータ)を含む。
【0021】
路面粗さ算出ステップST22では、上記路面データから実路面のミクロ粗さおよびマクロ粗さが算出される。具体的には、路面データが、FFT(fast Fourier transform)解析されて、相互に異なる波長をもつ複数の波形データに分類される。そして、これらの波形データが、所定の閾値よりも短い波長を有する第一波形データ群と、長い波長を有する第二波形データ群とに分類される。例えば実路面が一般舗装路である場合には、波長の閾値が0.5mm以上1.0mm以下の範囲から選択される。次に、第一および第二の波形データ群の合成波がそれぞれ算出されて、各波形データ群の表面粗さがそれぞれ算出される。そして、短い波長をもつ第一波形データ群の表面粗さが実路面のミクロ粗さとして定義され、長い波長をもつ第二波形データ群の表面粗さが実路面のマクロ粗さとして定義される。なお、ミクロ粗さは、相対的に細かい凹凸部のみを抽出した実路面の表面粗さに相当し、マクロ粗さは、相対的に粗い凹凸部のみを抽出した実路面の表面粗さに相当する。また、表面粗さは、例えば、算術平均粗さ、十点平均粗さなどから選択される。
【0022】
マクロ粗さ補正ステップST23では、試験片Sと実タイヤとの外径比あるいは接地長比が用いられて、上記した実路面のマクロ粗さが補正される。具体的には、まず、円柱形状を有する試験片Sの外径あるいは接地長が測定される。次に、実タイヤの外径あるいは接地長が測定される。次に、算出された実タイヤの外径あるいは接地長と、円柱形状を有する試験片Sの外径あるいは接地長との比が算出される。そして、上記した実路面のマクロ粗さと、上記した試験片Sおよび実タイヤの外径比あるいは接地長比との積が算出されて、補正後のマクロ粗さとして用いられる。概念的には、試験片Sの外径および接地長が実タイヤの外径および接地長よりも小さいので、上記閾値で定義された長い波長をもつ第二波形データ群の表面粗さが補正により縮小される。また、波形データ群の波長は、補正されずに使用される。
【0023】
一方で、上記した実路面のミクロ粗さは、補正されない。すなわち、上記閾値で定義された短い波長をもつ波形データ群の表面粗さおよび波長は、補正されずに使用される。ただし、後述する模擬路面21の作成にあたり、実路面のミクロ粗さに製造誤差が生じ得る。この場合には、製造誤差が±10[%]の範囲にあることが好ましい。
【0024】
模擬路面作成ステップST24では、実路面のミクロ粗さおよび上記補正後のマクロ粗さを有する模擬路面21が作成される。すなわち、実路面の表面粗さが、部分的に補正されて模擬路面21上に再現される。模擬路面21の作成方法としては、公知の手法を採用できる。例えば、実路面のミクロ粗さおよび上記補正後のマクロ粗さを再現できる骨材(例えばセラミックス骨材)を接着材(例えばエポキシ樹脂)で転圧して固める方法が採用され得る。そして、上記作成された模擬路面21が回転体2の上面に貼り付けられて、回転体2が作成される。
【0025】
図3において、摩耗試験ステップST3では、所定の試験条件下にて、試験片Sが回転体2の模擬路面21に押しつけられて接地し、回転体2が回転することにより、試験片Sの摩耗が進行する。具体的には、試験片保持装置3が、試験片Sを回転可能に保持しつつ試験片Sの周面を回転体2の模擬路面21に押し当てて接地させる(図2参照)。このとき、試験片保持装置3が試験片Sの押し当て力を制御することにより、試験片Sの接地荷重が制御される。そして、試験片Sの摩耗状態が観察されて、試験片Sの摩耗特性データが取得される。上記試験条件として、例えば、試験片Sの接地荷重、模擬路面21の表面温度、回転体の回転速度、試験片Sのスリップ角が設定される。
【0026】
試験片Sの接地荷重は、上記した試験片保持装置3の保持部31(図2参照)を介して試験片Sに付与される。また、試験片Sの接地荷重は、試験片Sの接地圧が、実タイヤを所定リムに装着して所定内圧を付与すると共に所定荷重を付与したときの、所定の接地領域における実タイヤの接地圧と同等になるように、設定される。試験片Sの接地圧は、試験片Sが回転体2の模擬路面21に押しつけられたときの試験片Sの周面と模擬路面21との接触圧力として定義される。試験片Sの接地荷重の算出方法は、公知の手法が採用され得る。
【0027】
模擬路面21の表面温度は、上記した温度制御装置4により所定温度に制御される。また、模擬路面21の表面温度が、試験片Sの摩耗進行を促進するために、試験室の室温よりも低く設定される。具体的には、模擬路面21の表面温度が0[℃]以上23[℃]以下の範囲に設定されることが好ましく、5[℃]以上15[℃]以下の範囲に設定されることがより好ましい。上記下限により、模擬路面21の凍結が防止され、上記上限により、試験片Sの摩耗進行が適正に促進される。
【0028】
回転体2の回転速度は、上記した回転体2の駆動制御により制御される。また、回転体2の回転速度は、模擬路面21における試験片Sの走行速度が所定の実車平均速度よりも速くなるように、設定される。具体的には、上記した試験片Sと実タイヤとの外径比あるいは接地長比が用いられて、実車平均速度が試験片Sの走行速度に換算され、この換算値が用いられて回転体2の回転速度が設定される。また、実車平均速度としては、対象となる実路面における通行車両の平均速度(例えば、道路の制限速度)が選択される。また、試験片Sと模擬路面21との相対速度が上記実車平均速度に対して1.05倍以上5.0倍以下の範囲にあることが好ましい。
【0029】
試験片Sのスリップ角は、上記した試験片保持装置3のスリップ角制御部32により試験片Sに付与される。また、試験片Sのスリップ角は、試験片Sの偏摩耗を抑制するために、時間の経過と共に連続的に変化するように設定される。また、スリップ角が-20[deg]以上20[deg]以下の範囲内で連続的に変化するように設定されることが好ましい。また、スリップ角は、例えばノコギリ波状に変化しても良いし(図5参照)、正弦波状に変化しても良い(図資料略)。
【0030】
[効果]
以上説明したように、このタイヤ用ゴムの摩耗特性試験方法は、実タイヤのトレッドゴムの試験片Sを作成する試験片作成ステップST1と、所定の実路面を再現した模擬路面21を有する回転体2(図1および図2参照)を作成する回転体作成ステップST2と、所定の試験条件下にて試験片Sを回転体2の模擬路面21に接地させる摩耗試験ステップST3と、を備える(図3参照)。また、摩耗試験ステップST3にて、試験片Sのスリップ角を連続的に変化させる(図1参照)。
【0031】
かかる構成では、(1)試験片Sおよび模擬路面21が使用されて摩耗試験が行われるので、実タイヤを用いた摩耗試験と比較して、トレッドゴムの摩耗特性を取得するための試験時間を短縮できる利点がある。また、(2)試験片Sのスリップ角を0[deg]あるいは所定の角度に固定して摩耗試験を行う構成と比較して、試験片Sの偏摩耗が抑制される。これにより、試験精度が向上する利点がある。
【0032】
また、この発明にかかるタイヤ用ゴムの摩耗特性試験方法では、摩耗試験ステップST3にて、模擬路面21の表面温度が所定温度に制御される。これにより、模擬路面21と試験片Sとの接触面の温度が適正化されて、摩耗試験の再現精度が向上する利点がある。特に、実タイヤを用いた摩耗試験では、タイヤの接地面積が大きいため、模擬路面の表面温度を安定的に制御することが難しい。この点において、小さい試験片Sを用いた摩耗試験は、模擬路面の表面温度を適正に制御できる点で有益である。
【0033】
また、この発明にかかるタイヤ用ゴムの摩耗特性試験方法では、模擬路面21の表面温度が室温よりも低い温度に制御される。これにより、試験片Sの摩耗が促進されて、試験時間を短縮できる利点がある。
【0034】
また、この発明にかかるタイヤ用ゴムの摩耗特性試験方法では、摩耗試験ステップST3にて、試験片Sと模擬路面21との相対速度が所定の実車平均速度よりも速くなるように、回転体2の回転速度が制御される。これにより、試験片Sの摩耗が促進されて、試験時間を短縮できる利点がある。
【0035】
また、この発明にかかるタイヤ用ゴムの摩耗特性試験機1は、所定の実路面を再現した模擬路面21を有する回転体2と、実タイヤのトレッドゴムの試験片Sを回転体2の模擬路面21に接地させて保持する試験片保持装置3とを備える(図1および図2参照)。また、試験片保持装置3が、試験片Sのスリップ角を連続的に変化させるスリップ角制御部32を備える。
【0036】
かかる構成では、(1)試験片Sおよび模擬路面21が使用されて摩耗試験が行われるので、実タイヤを用いた摩耗試験と比較して、トレッドゴムの摩耗特性を取得するための試験時間を短縮できる利点がある。また、(2)試験片Sのスリップ角を0[deg]あるいは所定の角度に固定して摩耗試験を行う構成と比較して、試験片Sの偏摩耗が抑制される。これにより、試験精度が向上する利点がある。
【0037】
また、この発明にかかるタイヤ用ゴムの摩耗特性試験機1は、模擬路面21の表面温度を制御する温度制御装置4を備える。かかる構成では、模擬路面21と試験片Sとの接触面の温度が適正化されて、摩耗試験の再現精度が向上する利点がある。特に、実タイヤを用いた摩耗試験では、タイヤの接地面積が大きいため、模擬路面の表面温度を安定的に制御することが難しい。この点において、小さい試験片Sを用いた摩耗試験は、模擬路面の表面温度を適正に制御できる点で有益である。
【実施例
【0038】
図6は、この発明の実施の形態にかかる摩耗試験の結果を示す図表である。
【0039】
まず、実タイヤの摩耗試験として、タイヤサイズ215/60R16の実タイヤがリムサイズ16×6.5Jのリムに組み付けられ、この実タイヤに230[kPa]の空気圧が付与される。また、実タイヤが、試験車両である四輪セダンに装着される。そして、試験車両が所定のテストコースを16[km/h]の平均速度で走行して、実タイヤが所定の摩耗量まで摩耗したときの摩耗状態が観察される。
【0040】
次に、試験片を用いた摩耗試験として、上記実タイヤのトレッドゴムと同一のゴム材料から成る円柱状の試験片が作成される。また、試験片の外径が、実タイヤの外径に対して1/8の寸法に設定される。また、上記テストコースの実路面の表面粗さを再現した模擬路面が作成される。また、模擬路面のマクロ粗さおよびミクロ粗さが、0.5[mm]の波長を閾値として定義される。試験片が回転体の模擬路面に押し当てられて、実タイヤの摩耗試験におけるタイヤ接地圧と同一の接地圧が試験片に付与される。
【0041】
そして、実タイヤの摩耗状態と試験片の摩耗状態とが比較されて、試験片を用いた摩耗試験の試験精度が評価される。この評価は、相関係数を用いて算出され、数値が1.00に近いほど好ましい。また、試験片が所定の摩耗量まで摩耗するまでの試験時間が測定される。この評価は、比較例1を基準(100)とした指数評価により行われ、数値が小さいほど試験時間が短く好ましい。
【0042】
また、図6において、比較例1では、模擬路面のマクロ粗さおよびミクロ粗さが実路面と同一(1/1)に設定される。また、模擬路面の温度が室温(24[℃])であり、制御されていない。また、模擬路面における試験片の走行速度が実車平均速度(16[km/h])の換算値(2.1)になるように、回転体の回転速度が設定される。また、試験片のスリップ角が9[deg]で固定される。比較例2は、比較例1と比較して、模擬路面のミクロ粗さのみが実路面と同一に設定され、マクロ粗さが0に設定される点で相異する。
【0043】
また、実施例1は、比較例1と比較して、模擬路面のミクロ粗さのみが実路面と同一に設定され、マクロ粗さが実路面のマクロ粗さを1/8(試験片および実タイヤの外径比と同じ。)に縮小した値に設定される点で相異する。また、試験片のスリップ角が±9[deg]の範囲で連続的に変化する。実施例2は、実施例1と比較して、模擬路面の温度が室温よりも低い温度(10[℃])に設定される点で相異する。実施例3は、実施例2と比較して、模擬路面における試験片の走行速度が、実車平均速度100[km/h]である場合の換算値(13)に設定される点で相異する。
【0044】
試験結果が示すように、実施例1~3の試験方法では、試験片を用いた摩耗試験の試験精度を向上しつつ試験時間を短縮できることが分かる。
【符号の説明】
【0045】
1 摩耗特性試験機;2 回転体;21 模擬路面;3 試験片保持装置;31 保持部;32 スリップ角制御部;4 温度制御装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6