(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-05
(45)【発行日】2023-12-13
(54)【発明の名称】パレット及び製造方法
(51)【国際特許分類】
B65D 19/32 20060101AFI20231206BHJP
【FI】
B65D19/32 G
(21)【出願番号】P 2019172322
(22)【出願日】2019-09-20
【審査請求日】2022-06-21
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 [展示日]平成31年2月20日,[展示会名、開催場所]第16回シーフードショー大阪 アジア太平洋トレードセンター(大阪府大阪市住之江区南港北2-1-10),[展示日]令和1年8月21日,[展示会名、開催場所]第21回ジャパンインターナショナルシーフードショー 東京ビッグサイト 南展示棟(東京都江東区有明3-11-1)
(73)【特許権者】
【識別番号】000104674
【氏名又は名称】キョーラク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】藤井 素晴
【審査官】長谷川 一郎
(56)【参考文献】
【文献】実開平05-013938(JP,U)
【文献】特開2010-005872(JP,A)
【文献】特開2011-235951(JP,A)
【文献】特開2003-137288(JP,A)
【文献】特開2006-206089(JP,A)
【文献】特開昭58-052044(JP,A)
【文献】特開2016-030620(JP,A)
【文献】特開2003-118739(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 19/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パレットであって、
中空の樹脂成形体、及び、滑止部材を備え、
前記樹脂成形体は、差込孔を備え、
前記滑止部材は、差込部を備え、
前記差込部が前記差込孔に差し込まれた状態で、前記滑止部材が前記樹脂成形体に取り付けられており、
前記滑止部材は、前記樹脂成形体の下面から前記樹脂成形体の内部に向けて取り付けられており、
前記パレットは、発泡体をさらに備え、
前記発泡体は、前記樹脂成形体内に配置され、
前記差込孔は、前記樹脂成形体に形成された空気通過孔の径を拡張した孔である、
パレット。
【請求項2】
請求項1に記載のパレットにおいて、
前記樹脂成形体は、前記下面側に取付凹部を備え、
前記滑止部材は、前記取付凹部にその一部を挿入された状態で前記樹脂成形体に取り付けられており、
前記滑止部材は、前記下面の延在方向に非平行な封止面を備え、
前記封止面が前記取付凹部の内壁に当接するように構成される、
パレット。
【請求項3】
請求項2に記載のパレットにおいて、
前記差込部は、前記封止面より前記樹脂成形体の内側に設けられる、
パレット。
【請求項4】
請求項1~請求項3の何れか1つに記載のパレットにおいて、
前記樹脂成形体は、肉抜き孔が設けられない状態で形成される、
パレット。
【請求項5】
請求項1~請求項4の何れか1つに記載のパレットにおいて、
前記下面に複数の脚部が形成され、
前記複数の脚部は、第1方向及び第2方向からフォークリフトにより前記パレットを搭載可能な位置に形成されており、
前記滑止部材は、前記フォークリフトによる前記パレットの搭載が前記第1方向及び前記第2方向のいずれの方向からであっても前記フォークリフトと当接する箇所に取り付けられている、
パレット。
【請求項6】
請求項1~請求項5の何れか1つに記載のパレットにおいて、
前記下面と、前記滑止部材の前記樹脂成形体の外側の端面までの距離をdとし、
前記下面と、
前記樹脂成形体の上面までの距離をDとした場合、
(d/D)の値は、0.01~0.3である、
パレット。
【請求項7】
パレットの製造方法であって、
垂下工程、型締工程、及び、取付工程を備え、
前記垂下工程では、第1金型及び第2金型の間に樹脂シートを垂下させ、
前記型締工程では、第1金型及び第2金型を型締めし、
前記取付工程では、滑止部材を樹脂シートにより形成される樹脂成形体に取り付け、
前記取付工程までに前記樹脂成形体に差込孔を形成し、
前記取付工程において、前記滑止部材に設けれた差込部が前記差込孔に差し込まれることにより、前記滑止部材が前記樹脂成形体に取り付けられ、
前記滑止部材は、前記樹脂成形体の下面から前記樹脂成形体の内部に向けて取り付けられ、
前記樹脂成形体に空気通過孔を形成し、
前記差込孔は、前記空気通過孔と略同軸に孔形成機を用いて形成される、
製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パレット及び製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
モノの運搬のため、種々のパレットが提案されている。例えば、特許文献1には、パレットに載せた荷物の安定化を図ることを目的としたパレットが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、パレットは、パレットを移動させる機械(例:フォークリフト)との間の安定化についても考慮すべきである。
【0005】
本発明は、かかる事情を鑑みてなされたものであり、安定した移動が可能なパレット及び製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、パレットであって、中空の樹脂成形体、及び、滑止部材を備え、前記樹脂成形体は、差込孔を備え、前記滑止部材は、差込部を備え、前記差込部が前記差込孔に差し込まれた状態で、前記滑止部材が前記樹脂成形体に取り付けられており、前記滑止部材は、前記樹脂成形体の下面から前記樹脂成形体の内部に向けて取り付けられている、パレットが提供される。
【0007】
本発明の一態様によれば、パレットを構成する樹脂成形体の下面から滑止部材は樹脂成形体に取り付けられている。ここで、滑止部材は差込部を備え、樹脂成形体は差込孔を備える。そして、差込部が差込孔に差し込まれた状態で、滑止部材が樹脂成形体に取り付けられる。これにより、滑止部材によってパレット移動が安定する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態に係るパレット3の上面斜視図である。
【
図4】
図4Aは、滑止部材40の斜視図である。
図4Bは、
図4Aと異なる方向から見た滑止部材40の斜視図である。
【
図7】
図6の状態から滑止部材40を除いた状態の図である。
【
図12】インサート工程及び型締工程を説明するための概念図である。
【
図14】
図7の領域Xの形成方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を用いて本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態中で示した各種特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。
【0010】
1.パレット3
図1~
図8を用いて、本発明の一実施形態に係るパレット3について説明する。
図1及び
図5に示すように、パレット3は、中空の樹脂成形体30、及び、滑止部材40を備える。本実施形態では、パレット3はさらに発泡体50を備える。
図5に示すように、発泡体50は、樹脂成形体30内に配置される。
【0011】
樹脂成形体30は、樹脂により形成されるものである。発泡体50は、任意の発泡材料により形成され、断熱効果及び軽量化に寄与するものである。滑止部材40は、パレット3搬送時の摩擦抵抗を低減する部材であり、パレットを構成する樹脂成形体30よりも摩擦係数が大きい材料で形成される。滑止部材40の材質は特に限定されないが、例えばエラストマーにより構成することができる。
【0012】
図1及び
図2に示すように、樹脂成形体30は、上面31及び下面32を備える。本実施形態では、上面31及び下面32は互いに対向する面である。
【0013】
また、本実施形態では、樹脂成形体30は、肉抜き孔が設けられない状態で形成されることが好ましい。具体的には、樹脂成形体30を構成する上面31及び下面32に加え、上面31及び下面32以外の面においても肉抜孔が存在しないことが好ましい。これは、従来のパレット3と比べ、樹脂成形体30の内部に発泡体50が存在することにより重量が軽くなっていること、及び、後述する封止面43と樹脂成形体30に形成された取付凹部34の内壁(側壁35)が当接することによる水の侵入防止効果により実現されるものである。具体的には、従来のパレットでは、軽量化のために肉抜きが必要であり、且つ、洗浄時等に水がパレットの内部に侵入した場合にかかる水を外部を排出するために肉抜孔を設けることが必須であったが、本実施形態に係るパレット3では、発泡体50をインサートすることによる軽量化に加え、封止面43による水の侵入の防止が実現されるので、従来のパレットのような肉抜孔が不要になり、美観が向上するという効果を奏する。さらに、肉抜孔が存在しないため、断熱性が向上する。これは、肉抜孔が存在する場合には、接地面から伝わる熱が肉抜孔を介して積載物に伝わりやすくなるためである。
【0014】
図2に示すように、パレット3を構成する樹脂成形体30の下面32側には、複数の脚部33が形成される。本実施形態では、中心に配置された脚部33を囲むように8個の脚部33が形成される。
図3に示すように、複数の脚部33は、第1方向及び第2方向からフォークリフトによりパレット3を搭載可能な位置に形成されている。また、本実施形態では、
図2に示すように、下面32には、複数の凹部32bが形成される。凹部32bを設けることにより、パレット3の搬送者がパレット3を持ち上げるときに指を引っ掛けることができる。
【0015】
また、
図3に示すように、滑止部材40は、樹脂成形体30の下面32に取り付けられている。
図4A及び
図4Bに示すように、滑止部材40は、接触面41、連結面42、封止面43、基面44、軸45、差込部46を備える。
【0016】
図3及び
図6に示すように、接触面41は、パレット3を搬送する機械の一部と接触する面であり、例えば、フォークリフトの爪又はサヤと接触する面である。封止面43は、樹脂成形体30の下面32側に形成された取付凹部34(
図6及び
図7を用いて後述)の内壁と当接するように構成される。連結面42は、接触面41と封止面43を連結する面である。また、封止面43は、基面44から垂直に形成される。そして、基面44から垂直且つ封止面43と逆方向に軸45が形成される。軸45の先端には、先端に向けて先細り形状の差込部46が形成される。
【0017】
滑止部材40は、フォークリフトによるパレット3の搭載が第1方向及び第2方向のいずれの方向からであってもフォークリフトと当接する箇所に取り付けられていることが好ましい。ここで、
図3中の破線部分は、フォークリフトの爪又はサヤと接触するパレット3の下面32の範囲を模式的に示すものである。ここで、
図3の例では、第1方向及び第2方向は互いに垂直な方向であるが、これに限定されない。これにより、第1方向及び第2方向のいずれの方向から、フォークリフトの爪又はサヤによりパレット3の下面32を持ち上げられた場合でも、滑止部材40とフォークリフトの爪又はサヤが接触することにより、フォークリフトの爪又はサヤとパレット3が滑ることを低減することができる。
【0018】
図5に示すように、滑止部材40を通る端面において、発泡体50の両端部(角部37a)において、樹脂成形体30と発泡体50の間に空間Sが形成される。空間Sを形成することにより、パレット3の搬送中にパレット3が他の備品等と接触した場合でも、パレット3の角部の損傷を低減することができる。これは、パレット3の搬送中において、角部が接触しやすいためである。
【0019】
また、
図8に示すように、複数の脚部33を通る端面において、発泡体50の両端部(角部37b)において、樹脂成形体30と発泡体50の間に空間Sが形成される。空間Sを形成することにより、パレット3の搬送中にパレット3が他の備品等と接触した場合でも、パレット3の周縁の損傷を低減することができる。これは、パレット3の搬送中において、周縁が接触しやすいためである。
【0020】
図6及び
図7に示すように、滑止部材40は、樹脂成形体30の下面32から樹脂成形体30の内部に向けて取り付けられている。また、滑止部材40は、下面32から樹脂成形体30の外部に向けて突出するように構成されることが好ましい。
【0021】
図6及び
図7に示すように、本実施形態では、樹脂成形体30は、下面32に取付凹部34を備える。そして、滑止部材40は、取付凹部34にその一部を挿入された状態で樹脂成形体30に取り付けられている。本実施形態では、滑止部材40の一部である差込部46が取付凹部34に挿入されている。また、
図6に示すように、封止面43は、下面32の延在方向に非平行に形成される。
図6の例では、封止面43は、下面32の延在方向に垂直に形成される。
【0022】
本実施形態では、
図6及び
図7に示すように、樹脂成形体30は、差込孔36を備える。そして、滑止部材40の差込部46が差込孔36に差し込まれた状態で、滑止部材40が樹脂成形体30に取り付けられている。なお、差込部46は、封止面43より樹脂成形体30の内側に設けられる。
【0023】
図6に示すように、封止面43は、樹脂成形体30の下面32側に形成された取付凹部34(
図7参照)の内壁(側壁35)と当接するように構成される。また、差込部46が位置する周辺と、側壁35の近傍に、空間Sが形成される。また、取付凹部34の内側(破線箇所)において、取付凹部34と発泡体50が溶着している。これは、取付凹部34と発泡体50を溶着させることにより、溶着箇所の周辺の強度を高めるためである。このように、取付凹部34と発泡体50をわずかに溶着させ、側壁35の近傍に空間Sを形成することにより、滑止部材40を差込孔36に圧入する際に樹脂が撓みやすくなるとともに、取付凹部34と発泡体50を溶着させることにより、滑止部材40を差込孔36に圧入する際に樹脂成形体30が破損することを低減することができる。かかる構成により、滑止部材40を所定の強度以上の力で押し混むと滑止部材40が撓むようになり、圧入しやすく、一度圧入されると抜けにくくなる。
【0024】
ここで、下面32と、滑止部材40の樹脂成形体30の外側の端面までの距離をdとし、下面32と、上面31までの距離Dとした場合、(d/D)の値は、0.01~0.3であることが好ましい。好ましくは、(d/D)の値は、0.02~0.2であり、さらに好ましくは、0.03~0.1である。(d/D)の値は、具体的には例えば、0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、0.11、0.12、0.13、0.14、0.15、0.16、0.17、0.18、0.19、0.2、0.21、0.22、0.23、0.24、0.25、0.26、0.27、0.28、0.29、0.3であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0025】
また、dの大きさは、0mmより大きく、20mm以下であることが好ましい。これは、dが大きすぎると、フォークリフトの爪又はサヤをパレット3の下面32に形成された脚部33の間に挿入する際に、滑止部材40の接触面41とフォークリフトの爪又はサヤが干渉する恐れが生じる。かかる干渉により、接触面41及びフォークリフトの爪又はサヤの破損につながるため好ましくないからである。
【0026】
そして、
図6、
図7及び
図14に示すように、滑止部材40の取付方向の中心線が、樹脂成形体30に形成された空気通過孔(AH)の近傍に配置されるように滑止部材40が樹脂成形体30に取り付けられている。本実施形態では、差込孔36は、空気通過孔(AH)と略同軸に孔形成機を用いて形成されるものである。換言すると、差込孔36は、樹脂成形体30に形成された空気通過孔(AH)の径を拡張した孔である。ここで、空気通過孔(AH)は、真空吸引の場合には、発泡体50を内包した樹脂成形体30において、樹脂成形体30の内部に残留した空気を樹脂成形体30の外部に排出するために形成されるものである。樹脂成形体30内部の残留空気については公知の課題であり、空気通過孔(AH)を形成した場合、一般的には空気通過孔(AH)を隠蔽するための様々な処理が施される。本発明の一実施形態に係るパレット3では、滑止部材40の取付方向の中心線が、樹脂成形体30に形成された空気通過孔(AH)の近傍に配置されるように滑止部材40が樹脂成形体30に取り付けられている。好ましくは、滑止部材40の軸と空気通過孔(AH)の軸が略同軸上に構成される。また、空気通過孔(AH)と略同軸に差込孔36を形成することにより、樹脂成形体30に形成された空気通過孔(AH)が差込孔36により隠蔽される。さらに、滑止部材40の差込部46を差込孔36に差し込むことにより、結果的に空気通過孔(AH)の隠蔽と滑止部材40の取り付けを1つの部材で実現することができる。これにより、滑止部材40よりパレット3移動の安定化と、空気通過孔(AH)の隠蔽を両立することが可能になる。
【0027】
また、樹脂成形体30の内部に発泡体50が設けられることにより、発泡体50の断熱効果によりパレット3の載置面から受ける熱の影響を低減することができる。
【0028】
2.成形機1の構成
次に、
図9を用いて、本発明の一実施形態に係るパレット3の製造方法の実施に利用可能な成形機1について説明する。成形機1は、樹脂供給装置2と、Tダイ18と、第1及び第2金型21,22を備える。樹脂供給装置2は、ホッパー12と、押出機13と、アキュームレータ17を備える。押出機13とアキュームレータ17は、連結管19aを介して連結される。アキュームレータ17とTダイ18は、連結管19bを介して連結される。以下、各構成について詳細に説明する。
【0029】
<ホッパー12、押出機13>
ホッパー12は、原料樹脂11を押出機13のシリンダ13a内に投入するために用いられる。原料樹脂11の形態は、特に限定されないが、通常は、ペレット状である。原料樹脂は、例えばポリオレフィンなどの熱可塑性樹脂であり、ポリオレフィンとしては、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体及びその混合物などが挙げられる。原料樹脂11は、ホッパー12からシリンダ13a内に投入された後、シリンダ13a内で加熱されることによって溶融されて溶融樹脂になる。また、シリンダ13a内に配置されたスクリューの回転によってシリンダ13aの先端に向けて搬送される。スクリューは、シリンダ13a内に配置され、その回転によって溶融樹脂を混練しながら搬送する。スクリューの基端にはギア装置が設けられており、ギア装置によってスクリューが回転駆動される。シリンダ13a内に配置されるスクリューの数は、1本でもよく、2本以上であってもよい。
【0030】
<アキュームレータ17、Tダイ18>
原料樹脂と発泡剤が溶融混練されてなる発泡樹脂は、シリンダ13aの樹脂押出口から押し出され、連結管19aを通じてアキュームレータ17内に注入される。アキュームレータ17は、シリンダ17aとその内部で摺動可能なピストン17bを備えており、シリンダ17a内に溶融樹脂11aが貯留可能になっている。そして、シリンダ17a内に発泡樹脂が所定量貯留された後にピストン17bを移動させることによって、連結管19bを通じて発泡樹脂をTダイ18内に設けられたスリットから押し出して垂下させて第1及び第2樹脂シート23a,23bを形成する。
【0031】
<第1及び第2金型21,22>
第1及び第2樹脂シート23a,23bは、第1及び第2金型21,22間に導かれる。
図9及び
図10に示すように、第1金型21には、多数の減圧吸引孔(不図示)が設けられており、第1樹脂シート23aを減圧吸引して第1金型21に沿った形状に賦形することが可能になっている。第1金型21は、凹部21cを有する形状になっており、凹部21cを取り囲むようにピンチオフ部21dが設けられている。第2金型22には、多数の減圧吸引孔(不図示)が設けられており、第2樹脂シート23bを減圧吸引して第2金型22のキャビティ22bに沿った形状に賦形することが可能になっている。キャビティ22bは、凸部22c及び凹部22eを有する形状になっており、凸部22c及び凹部22eを取り囲むようにピンチオフ部21dが設けられている。
【0032】
3.パレット3の製造方法
次に、
図10~
図14を用いてパレット3の製造方法について説明する。
【0033】
本実施形態の方法は、垂下工程、賦形工程、インサート工程、型締工程、取付工程を備える。以下、詳細に説明する。
【0034】
3.1 垂下工程
垂下工程では、第1金型21及び第2金型22の間に樹脂シート23を垂下させる。本実施形態では、樹脂シート23は、第1樹脂シート23a及び第2樹脂シート23bである。具体的には、
図10に示すように、発泡体50を、第1及び第2金型21,22間に配置する。
【0035】
そして、第1及び第2金型21,22間に、溶融状態の発泡樹脂をTダイ18のスリットから押し出して垂下させて形成した第1及び第2樹脂シート23a,23bを垂下する。本実施形態では、Tダイ18から押し出された第1及び第2樹脂シート23a,23bをそのまま使用するダイレクト真空成形が行われるので、第1及び第2樹脂シート23a,23bは、成形前に室温にまで冷却されて固化されることがなく、固化された第1及び第2樹脂シート23a,23bが成形前に加熱されることもない。ここで、
図10では、垂下工程中において、第1及び第2樹脂シート23a,23bの間に発泡体50を図示しているが、垂下工程では、発泡体50を他の場所に待機させておいてもよい。
【0036】
3.2 賦形工程
次に、
図11に示すように、第1及び第2樹脂シート23a,23bをそれぞれ第1及び第2金型21,22の一部に当接させた後、第1及び第2金型21,22の両方によって第1及び第2樹脂シート23a,23bを減圧吸引して第1及び第2金型21,22に沿った形状に賦形する。
【0037】
3.3 インサート工程及び型締工程
次に、インサート工程において、発泡体50を第1及び第2樹脂シート23a,23bに溶着させる(不図示)。そして、
図12に示すように、型締工程において、第1及び第2金型21,22を型締めする。そして、第1及び第2金型21,22から成形体を取り出し、バリ26を除去することによって、
図13に示される構造体3Pが得られる。
【0038】
3.3 取付工程
取付工程では、滑止部材40を第1樹脂シート23a及び第2樹脂シート23bにより形成される樹脂成形体30に取り付ける。ここで、取付工程までに、樹脂成形体30に差込孔36を形成する。
【0039】
4.滑止部材40の取り付け方法
図14を用いて、型締工程後の構造体3Pに対して滑止部材40を取り付けて、
図1~
図3に示されるパレット3を形成する方法について説明する。
【0040】
図14に示すように、インサート工程前の構造体3Pの下面32側に形成された樹脂壁に対し、針等を用いて空気通過孔(AH)を形成する。例えば、賦形工程の際に、針を金型から突出させておいてもよく、賦形後に針が金型から突出することで空気通過孔(AH)を形成してもよい。
【0041】
本実施形態では、差込孔36は、型締工程と取付工程の間に、樹脂成形体30の空気通過孔(AH)の近傍に孔形成機を用いて形成される。本実施形態では、差込孔36は、空気通過孔(NG)と略同軸に孔形成機を用いて形成される。孔形成機は、例えばドリルである。本実施形態では、空気通過孔(AH)に対して孔形成器の孔形成部を略垂直に位置決めすることにより、差込孔36を正確に形成することが可能になる。また、金型による成形中に空気通過孔(AH)を形成しているため、孔形成器による孔形成加工が容易になる。これは、金型から取り出して冷えた成形品に孔を開けるよりも、成形品にすで形成された孔に対して孔形成器をあてる方が作業負荷が低減されるためである。
【0042】
そして、滑止部材40の取付方向の中心線が、空気通過孔(AH)の近傍に配置されるように滑止部材40を樹脂成形体30に取り付けることにより、
図1及び
図6に示されるパレット3が形成される。本実施形態では、滑止部材40に設けれた差込部46が差込孔36に差し込まれることにより、滑止部材40が樹脂成形体30に取り付けられる。このとき、滑止部材40は、樹脂成形体30の下面32から樹脂成形体30の内部に向けて取り付けられる。
【0043】
本実施形態では、
図14に示される空気通過孔(AH)と略同軸に差込孔36を形成することにより、樹脂成形体30に形成された空気通過孔(AH)が差込孔36により隠蔽される。さらに、滑止部材40の差込部46を差込孔36に差し込むことにより、結果的に空気通過孔(AH)の隠蔽と滑止部材40の取り付けを1つの部材で実現することができる。これにより、滑止部材40よりパレット3移動の安定化と、空気通過孔(AH)の隠蔽を両立することが可能になる。
【0044】
5.その他
本発明に係るパレット3は、以下の態様でも実現可能である。
・発泡体50を用いずにパレット3を形成する。
・2枚の樹脂シート23を用いる代わりに、円筒状のパリソンを利用したブロー成形でパレット3を成形する。この場合、空気通過孔(AH)は、樹脂成形体30の内部に空気を吹き込むための空気吹込孔となる。
・樹脂シート23を加熱してから賦形する。
【0045】
次に記載の各態様で提供されてもよい。
前記パレットにおいて、発泡体を備え、前記発泡体は、前記樹脂成形体内に配置され、前記差込孔は、前記樹脂成形体の内部に残留する空気を排出する空気通過孔の径を拡張した孔である、パレット。
前記パレットにおいて、前記樹脂成形体は、前記下面側に取付凹部を備え、前記滑止部材は、前記取付凹部にその一部を挿入された状態で前記樹脂成形体に取り付けられており、前記滑止部材は、前記下面の延在方向に非平行な封止面を備え、前記封止面が前記取付凹部の内壁に当接するように構成される、パレット。
前記パレットにおいて、前記差込部は、前記封止面より前記樹脂成形体の内側に設けられる、パレット。
前記パレットにおいて、前記樹脂成形体は、肉抜き孔が設けられない状態で形成される、パレット。
前記パレットにおいて、前記下面に複数の脚部が形成され、前記複数の脚部は、第1方向及び第2方向からフォークリフトにより前記パレットを搭載可能な位置に形成されており、前記滑止部材は、前記フォークリフトによる前記パレットの搭載が前記第1方向及び前記第2方向のいずれの方向からであっても前記フォークリフトと当接する箇所に取り付けられている、パレット。
前記パレットにおいて、前記下面と、前記滑止部材の前記樹脂成形体の外側の端面までの距離をdとし、前記下面と、前記上面までの距離をDとした場合、(d/D)の値は、0.01~0.3である、パレット。
パレットの製造方法であって、垂下工程、型締工程、及び、取付工程を備え、前記垂下工程では、第1金型及び第2金型の間に樹脂シートを垂下させ、前記型締工程では、第1金型及び第2金型を型締めし、前記取付工程では、滑止部材を樹脂シートにより形成される樹脂成形体に取り付け、前記取付工程までに前記樹脂成形体に差込部を形成し、前記取付工程において、前記滑止部材に設けれた差込部が前記差込孔に差し込まれることにより、前記滑止部材が前記樹脂成形体に取り付けられ、前記滑止部材は、前記樹脂成形体の下面から前記樹脂成形体の内部に向けて取り付けられる、製造方法。
前記製造方法において、前記樹脂成形体に空気通過孔を形成し、前記差込孔は、前記空気通過孔と略同軸に孔形成機を用いて形成される、製造方法。
もちろん、この限りではない。
【符号の説明】
【0046】
1 :成形機
2 :樹脂供給装置
3 :パレット
3P :構造体
11 :原料樹脂
11a :溶融樹脂
12 :ホッパー
13 :押出機
13a :シリンダ
17 :アキュームレータ
17a :シリンダ
17b :ピストン
18 :Tダイ
19a :連結管
19b :連結管
21 :第1金型
21c :凹部
21d :ピンチオフ部
22 :第2金型
22b :キャビティ
22c :凸部
22e :凹部
23 :樹脂シート
23a :第1樹脂シート
23b :第2樹脂シート
26 :バリ
30 :樹脂成形体
31 :上面
32 :下面
32b :凹部
33 :脚部
34 :取付凹部
35 :側壁
36 :差込孔
37a :角部
37b :角部
40 :滑止部材
41 :接触面
42 :連結面
43 :封止面
44 :基面
45 :軸
46 :差込部
50 :発泡体
AH :空気通過孔
D :距離
S :空間
X :領域