(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-05
(45)【発行日】2023-12-13
(54)【発明の名称】精子採取装置
(51)【国際特許分類】
A61B 10/02 20060101AFI20231206BHJP
G01N 1/10 20060101ALI20231206BHJP
【FI】
A61B10/02 110Z
G01N1/10 V
(21)【出願番号】P 2020083916
(22)【出願日】2020-05-12
【審査請求日】2023-03-09
(73)【特許権者】
【識別番号】505167222
【氏名又は名称】株式会社TENGA
(74)【代理人】
【識別番号】100085660
【氏名又は名称】鈴木 均
(74)【代理人】
【識別番号】100149892
【氏名又は名称】小川 弥生
(74)【代理人】
【識別番号】100185672
【氏名又は名称】池田 雅人
(72)【発明者】
【氏名】高堀 恭平
【審査官】▲高▼木 尚哉
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-504122(JP,A)
【文献】国際公開第2015/092081(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/132462(WO,A1)
【文献】特開2014-171910(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0353208(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 10/02
A61F 5/453
A61H 19/00
A61H 21/00
G01N 1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性素材によって構成され、ペニスの挿入口、及び前記挿入口に挿入された前記ペニスが相対的に進退移動する挿入空所を設けたコア部材と、
前記コア部材を内側空間に収容した容器と、を備えた精子採取装置であって、
前記容器は、
軸方向両端が開口した筒形状であって、一端に前記コア部材の挿入口側端部を取り付けたベースユニットと、
軸方向一端が開口し他端を閉塞した筒形状であって、前記ベースユニットの他端に対して軸中心に回転自在に取り付けた可動ユニットと、を備え、
前記可動ユニットの一端は、前記ベースユニットの他端に重ねて配置され、且つ前記可動ユニットの一端と前記ベースユニットの他端との重なり部には空気流路を備え、
前記重なり部には、前記可動ユニットの前記ベースユニットに対する回転角度に応じて前記容器内外を流通する空気流量を調整する調整機構を設けたことを特徴とする精子採取装置。
【請求項2】
前記コア部材は、前記ペニスが前記挿入空所の内奥に向けて移動したときに開放し、前記内奥から前記挿入口に向けて移動したときに閉じるバルブを備えたことを特徴とする請求項1に記載の精子採取装置。
【請求項3】
前記可動ユニットは、一端が開口し他端を閉塞した筒形状のカップ部材と、前記ベースユニットにおける軸方向他端の内周
側に
、当該ベースユニットが備えるパッキンを介して隣接して配置されて前記カップ部材と一体に回転し、且つ第1開口部を形成した可動部材と、を含み、
前記ベースユニット
が備える前記パッキンは、前記軸方向他端における前記空気流路と連通する位置
に第2開口部を
備え、
前記調整機構は、前記可動ユニットの前記ベースユニットに対する回転角度に応じて、前記第1開口部と前記第2開口部との重なり部分の開口面積を変更自在な構成を有したことを特徴とする請求項1又は2に記載の精子採取装置。
【請求項4】
前記第1開口部は、周方向に細長い形状であり、
前記第2開口部は、周方向に間隔を空けて複数個形成されており、
前記調整機構は、前記可動ユニットの前記ベースユニットに対する回転角度に応じて、前記第1開口部内に位置する前記第2開口部の数を変更自在な構成を有したことを特徴とする請求項3に記載の精子採取装置。
【請求項5】
前記第2開口部は、周方向に間隔を空けて複数個形成されており、且つ前記各第2開口部の開口面積は異なっており、
前記第1開口部は、前記複数の第2開口部のうちの一つを個別にその開口内に位置させることが可能な形状であり、
前記調整機構は、前記可動ユニットの前記ベースユニットに対する回転角度に応じて複数の前記第2開口
部のうちの一つを前記第1開口部の開口内に位置させる構成を有したことを特徴とする請求項3に記載の精子採取装置。
【請求項6】
前記第1開口部は、周方向に間隔を空けて複数個形成されており、且つ前記各第1開口部の開口面積は異なっており、
前記第2開口部は、複数の第1開口部のうちの一つを個別にその開口内に位置させることが可能な形状であり、
前記調整機構は、前記可動ユニットの前記ベースユニットに対する回転角度に応じて複数の前記第1開口部のうちの一つを前記第2開口部の開口内に位置させる構成を有したことを特徴とする請求項3に記載の精子採取装置。
【請求項7】
前記第1開口部は、周方向に細長く、且つ軸方向の
開口長を周方向位置に応じて異ならせた形状であり、
前記第2開口部は、周方向の
開口長が前記第1開口部の周方向長さよりも短く、且つ軸方向の
開口長が前記第1開口部における軸方向の最大
開口長以上に形成され、
前記調整機構は、前記可動ユニットの前記ベースユニットに対する回転角度に応じて、前記第2開口部内に位置する前記第1開口部の面積を変更自在な構成を有したことを特徴とする請求項3に記載の精子採取装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、精子採取装置に関し、特に医学的な研究、治療のための要請や、性犯罪防止、売春防止、及び性病の蔓延防止等の社会的な要請に基づいて従来から使用されてきた精子採取装置の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
医学的な研究や治療上の必要から、精子を採取するための精子採取装置(射精を促進するための射精促進装置)が種々提案されている。
精子採取装置は、例えば、夫婦間の不妊の原因を究明するために採取した精子から夫の性機能を検査したり、性機能障害を治療したり、人工授精のために精子を確保、保管する等の医学的な必要性のために使用される。更に、精子採取装置は、個人的な性的欲求を解消させることによる性犯罪の予防、売春防止、性病感染者数の減少等の種々の社会的なニーズを満たすためにも使用される。
精子採取装置は、ペニスを挿入するための挿入空所を備え、挿入空所内におけるペニスの進退移動に伴う摩擦によってペニスの先端部に対して刺激を付与し、射精を促進する手段である。
【0003】
例えば、特許文献1には、長手方向の基端が開口し、先端に空気穴を設けた硬質プラスチック材製の筒状容器と、容器内に収容され、長手方向基端の挿入口から内部に延びる挿入空所を備えたゲル状樹脂製のコア部材とから成る射精促進装置が開示されている。
特許文献1の射精促進装置では、挿入口から挿入されたペニスを挿入空所内で進退移動させることにより、ペニスの先端部に対して刺激を付与して射精を促進する。さらに、当該射精促進装置では、減圧装置を容器の先端側に取り付けて空気穴を通じて容器内を減圧することにより、ペニスに対して強い刺激を与えている。
【0004】
また、特許文献2には、ペニスの挿入口を長手方向の基端に設け、且つ当該挿入口に連続した挿入空所を内部に設けた弾性樹脂製の内部ボディと、長手方向の基端が開口し、先端が閉じられた瓶形状であって内部ボディを収容した容器と、容器の基端寄りの外周面に対して回転自在に設けた空気量調整リングとを備えた男女兼用の自慰装置が開示されている。特許文献2の自慰装置もまた、挿入口から挿入されたペニスを挿入空所内で進退移動させることにより、ペニスの先端部に対して刺激を付与するように構成されている。
また、特許文献2の自慰装置は、容器における長手方向基端寄りの側面に容器側開口部を設け、空気量調整リングにリング側開口部を設けて、空気量調整リングの回転量に応じて容器側開口部とリング側開口部との重なり部分の面積を変化させている。当該自慰装置では、両開口部の重なり部分の面積に応じて、容器内外を流通する空気流量を調整し、ペニスに与える刺激の強さを調整している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2016/132462号
【文献】国際公開第2015/092081号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2の自慰装置では、容器の外周面上に容器側開口部とリング側開口部とが設けられているため、使用時において使用者が意図せずにリング側開口部を指で塞いでしまう恐れがある。容器の外周面においてリング側開口部が指で塞がれると空気が流通し難くなり、使用者が意図しない刺激の変化によって射精促進効果が損なわれてしまう不都合が生じ得た。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、精子採取装置の使用時において、使用者が意図しない刺激の変化を抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、弾性素材によって構成され、ペニスの挿入口、及び前記挿入口に挿入された前記ペニスが相対的に進退移動する挿入空所を設けたコア部材と、前記コア部材を内側空間に収容した容器と、を備えた精子採取装置であって、前記容器は、軸方向両端が開口した筒形状であって、一端に前記コア部材の挿入口側端部を取り付けたベースユニットと、軸方向一端が開口し他端を閉塞した筒形状であって、前記ベースユニットの他端に対して軸中心に回転自在に取り付けた可動ユニットと、を備え、前記可動ユニットの一端は、前記ベースユニットの他端に重ねて配置され、且つ前記可動ユニットの一端と前記ベースユニットの他端との重なり部には空気流路を備え、前記重なり部には、前記可動ユニットの前記ベースユニットに対する回転角度に応じて前記容器内外を流通する空気流量を調整する調整機構を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、精子採取装置の使用時において、使用者が意図しない刺激の変化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】(a)は精子採取装置の縦断面図、(b)はコア部材内部の挿入空所を説明する縦断面図である。
【
図2】精子採取装置の使用状態を説明する図である。
【
図3】(a)はコア部材を説明する図、(b)はリング部材を説明する図である。
【
図7】カップ部材を開口部側から視た斜視図である。
【
図8】可動リングのベースユニットへの取り付け状態を説明する斜視図である。
【
図9】(a)は調整機構付近の部分拡大断面図、(b)は調整機構付近における空気の流れを説明する図である。
【
図10】可動ユニットに対する回転操作を説明する図である。
【
図11】(a)は調整機構による空気流量を最小にしたときの湾曲片側開口部とパッキン側開口部の位置関係を説明する図、(b)は調整機構による空気の流量を最大にしたときの湾曲片側開口部とパッキン側開口部の位置関係を説明する図である。
【
図12】第2実施形態の精子採取装置の要部を説明する分解斜視図である。
【
図13】(a)はパッキン側開口部を構成する複数の開口部の中の一つを選択したときの状態を説明する図、(b)はパッキン側開口部を選択しなかったときの状態を説明する図である。
【
図14】(a)は第3実施形態の精子採取装置の要部を説明する分解斜視図、(b)は可動リングに設けた可動筒側開口部を説明する図である。
【
図16】(a)は容器の縦断面図、(b)は調整機構付近の部分拡大断面図である。
【
図17】(a)は複数の可動筒側開口部の何れも選択していない状態を説明する図、(b)は複数の可動筒側開口部の中の一つを選択したときの状態を説明する図、(c)は他の開口部を選択したときの状態を説明する図である。
【
図18】第3実施形態の変形例の精子採取装置が備えた可動リングを説明する図である。
【
図19】(a)は可動筒側開口部とパッキン側開口部とが重なっていない状態を説明する図、(b)は空気流量を中間程度に調節した状態を説明する図、(c)は空気流量を最大に調節した状態を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<精子採取装置1の概要と特徴>
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
最初に、精子採取装置1の概要と特徴を説明する。
図1(a)は精子採取装置1の断面図、
図1(b)はコア部材10内部の挿入空所ESを説明する断面図、
図2は精子採取装置1の使用状態を説明する図である。
図1(a)、及び(b)に示す精子採取装置1は、筒形状の弾性素材によって作製され、挿入口11aに挿入されたペニスP(
図2を参照)が相対移動する挿入空所ESを設けたコア部材10と、コア部材10を収容する内側空間ISを備えた容器20と、を備えている。
【0011】
コア部材10は、エラストマーやゲル状樹脂等の弾性素材で作製されており、ペニスPが挿入空所ES内を相対的に進退移動することに伴って体積を変化させる。例えば、ペニスPが挿入空所ES内を基端側から内奥方向に移動すると膨張し、挿入空所ES内を内奥側から基端方向に移動すると収縮する。
容器20は、硬質プラスチック材(硬質樹脂材)によって作製されており、軸方向両端が開口した筒形状に構成され、基端側(一端側)開口部にコア部材10の挿入口11a側の端部を取り付けたベースユニット30と、硬質プラスチック材によって作製されており、軸方向基端(一端)が開口し先端(他端)を閉塞したカップ形状(筒形状)に構成され、ベースユニット30に対して軸中心に回転自在、且つ脱落しないように組み付けられている可動ユニット40と、を備えている。ベースユニット30は、コア部材10の挿入口11a側の端部(基端部)近傍を固定的に、或いは着脱可能に支持している。
精子採取装置1の軸方向中間位置P1において、可動ユニット40の基端内周面は、ベースユニット30の先端外周面に重ねられており、両周面が対向した重なり部には、容器20内外を流通する空気用の空気流路APと、空気流路APの空気流量を調整する調整機構ADとを設けている。調整機構ADは、可動ユニット40のベースユニット30に対する回転角度に応じて空気流路APの空気流量を調整する。
【0012】
図2に示すように、精子採取装置1の使用時において、ペニスP(先端部PT)は挿入空所ES内を軸方向に沿って相対的に往復移動する。ペニスPにはコア部材10の内周面が接触するため、挿入空所ES内の移動に伴って摩擦(摺擦)による刺激が付与され、射精が促進される。
なお、精子採取装置1の使用時には必要に応じて、挿入空所ES内には粘性を有した液体状の潤滑剤が塗布され、使用者のペニスPには避妊具(コンドーム、不図示)が装着される。この場合、使用者の精液は避妊具内に射出されて採取される。また、潤滑剤を使用しないときには、挿入空所ES内に射出された精液を採取してもよい。
【0013】
コア部材10は、ペニスPの先端部PTが挿入空所ES内を基端側から内奥側に向けて相対的に移動することにより、符号EXの点線で示すように挿入空所ES内のペニスPによって外周側に膨らむ。その結果、容器20の内側空間ISの空気は、調整機構AD、及び空気流路APを通じて容器20の外に排出される。
挿入空所ES内は、ペニスPの先端部PTが挿入空所ES内を内奥側から基端側に向けて相対的に移動するときが減圧される。挿入空所ES内の減圧に伴い、コア部材10は符号CTの点線で示すように収縮する。
その結果、ペニスPの先端部PTとコア部材10の内周面との間の密着力が強くなり、ペニスPの先端部PTに与えられる刺激が強くなる。また、コア部材10の収縮に伴って、容器20外の空気は空気流路AP、及び調整機構ADを通じて容器20の内側空間ISに流入する。
【0014】
図1(a)に示すように、調整機構ADは、ベースユニット30(第2パッキン34)のパッキン側開口部34c(第2開口部)と可動ユニット40側の湾曲片側開口部42e(第1開口部)との重なり部分の面積を変更自在な構成を有している。例えば、第1実施形態の調整機構ADでは、湾曲片側開口部42e内に配置されるパッキン側開口部34c(小孔)の数を変えることにより、パッキン側開口部34cと湾曲片側開口部42eとの重なり部分の面積を変更し、調整機構ADにおける空気流量(空気の流れやすさ)を調整している。
ペニスPの先端部PTに与えられる刺激は、調整機構ADが調整する空気流量に応じて変化する。なお、調整機構ADによる空気流量の調整については後で詳しく説明する。
図2に示すように、調整機構ADにおける空気流量が少ないとき(空気が流れ難いとき)に、ペニスP(先端部PT)が挿入空所ES内を基端側から内奥側へ向けて相対的に移動すると、コア部材10が膨張するために挿入空所ESから容器20の内側空間ISに空気が排出されるが、容器20の内側空間ISから容器20外へは空気が排出され難いため、コア部材10が膨張し難くなって突起11eによるペニスPへの刺激が強くなる。
同様に、調整機構ADにおける空気流量が少ないときに、ペニスPが挿入空所ES内を内奥側から基端側へ向けて相対的に移動すると、容器20外から内側空間ISへ空気が流入され難くなってコア部材10が収縮し難くなり、ペニスPの先端部PTとコア部材10の内周面との間の密着力が高くなって突起11eによるペニスPへの刺激が強くなる。
【0015】
反対に、調整機構ADにおける空気流量が多いとき(空気が流れ易いとき)に、ペニスPが挿入空所ES内を基端側から内奥側へ向けて相対的に移動すると、内側空間ISから容器20外へと空気が円滑に流れるため、空気流量が少ないときと比較してコア部材10が容易に膨張する。その結果、突起11eによるペニスPへの刺激は空気流量が少ないときと比較して弱くなる。
同様に、調整機構ADにおける空気流量が多いときに、ペニスPが挿入空所ES内を内奥側から基端側へ向けて相対的に移動すると、容器20外から内側空間ISへ空気が円滑に流入するため、空気流量が少ないときと比較してコア部材10が収縮し易くなって、ペニスPとコア部材10の内周面との間の密着力が低くなる。その結果、突起11eによるペニスPへの刺激は空気流量が少ないときと比較して弱くなる。
【0016】
従って、調整機構ADにおける空気流量が少ないときは、空気流量が多いときと比較して、ペニスPの先端部PTに与えられる刺激が大きくなり、射精が促進される。
後述するように、容器20内外を流通する空気流量(調整機構ADの空気抵抗)は、可動ユニット40のベースユニット30に対する回転角度に応じて調整される。調整機構ADは、ベースユニット30側と可動ユニット40側とに分かれて設けられており、可動ユニット40の基端内周面とベースユニット30の先端外周面との境界に沿って設けられた空気流路APを通じて容器20外と連通している。
この精子採取装置1では、空気流路AP、及び調整機構ADが、可動ユニット40の基端(一端)とベースユニット30の先端(他端)とが対向した重なり部に設けられているため、使用時において使用者が空気流路APを指で塞ぎ難くなり、使用者が意図しない刺激の変化を抑制することができる。
【0017】
<第1実施形態の精子採取装置1の詳細>
以下、第1実施形態の精子採取装置1の詳細について説明する。最初に、コア部材10について説明する。
図3(a)はコア部材10を説明する図、
図3(b)はリング部材を説明する図である。
【0018】
<コア部材10>
図2に示す精子採取装置1は、挿入空所ES内を長手方向に沿って往復移動するペニスPの先端部PTに密着して刺激を与えるコア部材10を備えている。
図3(a)に示すように、コア部材10は、人体(膣内)を模した柔らかさの弾性素材(エラストマー、ゲル状樹脂等)で作成されたコア本体11と、コア本体11よりも硬い弾性素材(エラストマー、ゲル状樹脂等)で作成され、且つコア本体11内に内包された複数枚(例えば3枚)のリング部材12とを備えている。
コア本体11は、端面中心部に挿入口11aが設けられた円盤形状のフランジ部11bと、内部に挿入空所ESを設けた筒形状の筒状部11cと、筒状部11cにおけるフランジ部11b寄りの部分に間隔を空けて複数(例えば3箇所)設けられたリング収納部11dとを備えている。
【0019】
フランジ部11bは、容器20のベースユニット30の基端30a(第1筒部材31の基端31a)に対して気密状態で固定的に、又は着脱自在に取り付けられている。
筒状部11cは、先端側が閉塞された袋体であり、内部には挿入口11aに連通した挿入空所ESが設けられている。また、筒状部11cの内周面には多数の突起11eが設けられており凹凸形状をしている。ペニスPの先端部PTは、挿入空所ES内において筒状部11cの内周面に密着する。従って、ペニスPの先端部PTが挿入空所ES内を相対的に進退移動すると、先端部PTには突起11eによって刺激が付与されて射精が促進される。
【0020】
リング収納部11dは、
図3(b)に示すリング部材12を収納する。リング部材12は、円環形状の外周部12aと、ペニスPが挿通される開口部12bが中心に形成された円盤形状の内周部12cと、外周部12aと内周部12cとの間を周方向に間隔を空けて連結する複数のスポーク部12dと、を有している。
開口部12bは挿入空所ESの一部分を構成する(
図1(b)参照)。内周部12cには、開口部12bに向かって渦巻き形状に湾曲した複数の突条12eが設けられている。これらの突条12eは、ペニスPの進退移動時にペニスPとの摩擦によって周方向の回転力を発生する。この回転力によってスポーク部12dが周方向に撓み、内周部12cが回転してペニスPに刺激が付与される。
【0021】
<容器20>
次に、容器20について説明する。
図4は容器20の正面図、
図5は容器20の分解斜視図、
図6は容器20の断面図である。
図4乃至
図6に示すように、容器20は、軸方向両端が開口した筒形状に構成された筒形状のベースユニット30と、軸方向基端が開口し先端を閉塞したカップ形状(筒形状)に構成され、且つベースユニット30の先端に対して軸中心に回転自在、且つ脱落しないように組み付けられている可動ユニット40と、ベースユニット30の基端に対して着脱自在に取り付けられるカバーCPと、を備えている。
【0022】
<ベースユニット30>
図5に示すように、ベースユニット30は、両端が開放した筒形状の第1筒部材31と、両端が開放した筒形状であって、軸方向の途中に略V字形状の窪み(V溝)32aを全周に亘って設けた第2筒部材32と、第1筒部材31の先端と第2筒部材32の基端との間に介在する第1パッキン33と、第2筒部材32の先端に装着される第2パッキン34と、を備えている。なお、窪み32aを設けることにより、使用者の指先を窪み32a内に係止させ易くなり、使用者が精子採取装置1を落としてしまう不都合を抑制する。
図1に示すように、第1筒部材31の基端31aには、コア部材10のフランジ部11bが全周に亘って気密状態で固定的に、或いは着脱可能に取り付けられている。コア部材10の基端部は、容器20の基端よりも軸方向の外側(使用時における使用者側)に若干突出している。
図6に示すように、第1筒部材31の先端側半部と第2筒部材32における基端側半部(窪み32aから基端側の部分)とは互いに整合されており、第1筒部材31の先端側半部の内周面に第2筒部材32の基端側半部の外周面が密着状態で嵌合している。
【0023】
図5に示すように、第1パッキン33は、短尺な円筒形状の筒部33aと、筒部33aの先端から側方に突出して設けられた円環形状のフランジ部33bとを備えている。
図6に示すように、第1パッキン33の筒部33aは第1筒部材31の内周面に密着し、フランジ部33bは第1筒部材31と第2筒部材32との間に挟まれている。第1筒部材31と第2筒部材32とは、第1パッキン33が介在することにより、気密状態で接続されている。
第1実施形態の精子採取装置1では、第1筒部材31、及び第2筒部材32がそれぞれ硬質プラスチック材(例えば第1筒部材31がポリカーボネイト樹脂、第2筒部材32がABS樹脂)によって作製され、第1パッキン33が柔軟性、及びシール性を有した合成樹脂(各種ゴム材、又はゴム弾性を有するエラストマー)によって作製されている。
【0024】
図5に示すように、第2筒部材32の先端部32bの側面(外周面)には、周方向に細長く周方向全長に亙らない長さのベース側開口部32cを設けている。後述するように、ベース側開口部32cには、第2パッキン34が備えた突状部34bが嵌合されており、突状部34bに設けたパッキン側開口部34c(小孔、第2開口部)を介して容器20の内側空間ISと空気流路APとが連通される(
図6を参照)。
図4、及び
図5に示すように、第2筒部材32におけるV字形状の窪み32aの表面であってベース側開口部32cに対応する周方向範囲には、ベース側指標32dを形成している。ベース側指標32dは、長さが異なる複数の溝(凹所)を周方向に間隔を空けて設けたものである。ベース側指標32dの長さ(溝の長さ)は、調整機構ADによる空気流量を表している。例えば、最も短い左端のベース側指標32dは最も空気流量が少ない状態を示し、最も長い右端のベース側指標32dは最も空気流量が多い状態を示している。ベース側指標32d(各溝)は、ベース側開口部32cまで延長されており、溝の内側が空気流路APの一部になっている。
なお、空気流路APは、ベースユニット30の外周面と可動ユニット40の内周面との間に設けられていればよいため、空気流路APの一部になる溝を可動ユニット40(カップ部材41)の基端内周面に設けてもよい。
【0025】
図5、及び
図6に示すように、第2筒部材32におけるV字形状の窪み32aの先端縁(ベース側開口部32cとの境界)には、周方向に沿って延びた係止溝32eが設けられている。係止溝32eによって、可動ユニット40はベースユニット30に対して軸中心に回転自在、且つ脱落不能に係止される(後述する)。
また、第2筒部材32、及び可動リング42の一方は弾性特性を有する硬質プラスチック材で作製し、他方は弾性特性を有さない硬質プラスチック材で作製し、且つ第2筒部材32、及び可動リング42に突起と凹所の組み合わせによる係合構造を設けてもよい。
図5に一例を示すように、第2筒部材32の先端には、弾性を有し、且つ内周側に突起を形成した弾性片32fを設けている。弾性片32fの突起は、可動ユニット40が備えた係合凹所42dに係合される。従って、
図5の例では弾性片32fと係合凹所42dとが係合構造を構成している。
第2筒部材32の先端周縁には、周方向に間隔を空けて複数の突片32gを設けている。
図8に示すように、各突片32gの先端はフランジ部42aに対して軸方向の基端側から当接しており、可動リング42を支持している。
【0026】
図5、及び
図6に示すように、第2パッキン34は、短尺な円筒形状の筒部34aを備えており、筒部34aが第2筒部材32の先端部32bの内周面に密着している。第2パッキン34におけるベース側開口部32cに対応する部分(開口範囲内の部分)は、他の部分よりも厚みが大きくなっており、周方向に細長い突条部34bが形成されている。突条部34bにはパッキン側開口部34cが設けられ、且つ突条部34bはベース側開口部32cに嵌合される。
パッキン側開口部34cは例えば円形小孔であり、周方向に間隔を空けて複数個形成されている。
図5に示すように、第1実施形態では、パッキン側開口部34cは9個設けられており、左端から1番目から7番目のパッキン側開口部34cは同形状(同じ開口面積)である。また、左端から8番目と9番目のパッキン側開口部34cは同形状(同じ開口面積)であり、且つ1番目から7番目のパッキン側開口部34cよりも大きい。
なお、各パッキン側開口部34cは、大きさが等しい複数の円形小孔によって構成してもよいし、四角形等の円形以外の形状の小孔によって構成してもよい。
第1実施形態の精子採取装置1において、第2パッキン34は、第1パッキン33と同じく柔軟性、及びシール性を有した合成樹脂(例えば各種ゴム材、又はゴム弾性を有するエラストマー)によって作製されている。
【0027】
<可動ユニット40>
次に、可動ユニット40について説明する。
図7はカップ部材41を開口部側(基端側)から視た斜視図、
図8は可動リング42のベースユニット30への取り付け状態を説明する斜視図である。
図5に示すように、可動ユニット40は、基端(一端)が開放し、先端(他端)が閉塞され、且つ先端が基端よりも小径とされたカップ形状のカップ部材41と、カップ部材41の基端開口部側の内周面に取り付けられて、カップ部材41と一体に回転する可動リング42とを備えている。本実施形態において、カップ部材41は硬質プラスチック材(例えばポリカーボネイト樹脂)によって作製されている。そして、カップ部材41を第2筒部材32とは異なる種類の樹脂素材で作製することにより、摺動摩擦に起因する異音の発生を抑制でき、且つカップ部材41と第2筒部材32とを円滑に摺動させることができる。
【0028】
図4に示すように、カップ部材41の基端外周面には、可動側指標41aが設けられている。可動側指標41aは突起によって構成されており、可動ユニット40のベースユニット30に対する回転角度に応じて、複数のベース側指標32dの中の一つに対して周方向の位置が整合される。なお、可動側指標41aは印刷やシールによって構成されていてもよい。
上述したように、ベース側指標32dの長さ(溝の長さ)は調整機構ADにおける空気流量(空気抵抗)を表している。従って、使用者は、可動側指標41aが示すベース側指標32dの長さに基づいて、空気流量を認識できる。
【0029】
図7に示すように、カップ部材41の基端内周面には、周方向に沿って延びる第1係止突起41bを設けている。
図6に示すように、第1係止突起41bは、第2筒部材32に設けた係止溝32eに係止され、係止溝32e内を周方向に沿って移動できる。従って、可動ユニット40をベースユニット30に取り付けた状態において、カップ部材41(可動ユニット40)は第2筒部材32(ベースユニット30)に対して軸中心に回転自在であり、且つ脱落しないように組み付けられる。
図7に示すように、カップ部材41の内周面には、カップ部材41の軸方向(長手方向)に延びる細長い複数の第2係止突起41cを設けている。
図7の例では、周方向に約90度間隔で3本の第2係止突起41cを設けている。各第2係止突起41cの下端は可動リング42に設けた係止溝42c(
図8)に嵌合する。これにより、可動リング42は、カップ部材41と共に軸中心に回転する。
【0030】
図5、及び
図8に示すように、可動リング42は、ベースユニット30の先端(第2パッキン34)に当接する円環形状のフランジ部42aと、フランジ部42aに一体化された湾曲片42bとを備えている。可動リング42は、弾性特性を有する硬質プラスチック材(例えばポリアセタール樹脂やポリアミド樹脂)によって作製されている。
フランジ部42aには、カップ部材41の内周面に設けた第2係止突起41cの基端が嵌合する切欠き状の係止溝42cと、第2筒部材32に設けた弾性片32f(突起)が係合する切欠き状の係合凹所42dとが設けられている。図示の例において、係止溝42cは、第2係止突起41cと同じく、周方向に間隔を空けて3個設けられており、係合凹所42dは、ベース側指標32dと同じ数を、周方向に沿って同じ間隔で設けている。
上述したように、各第2係止突起41cの基端が対応する係止溝42cに嵌合されると、可動リング42はカップ部材41と共に軸中心に回転する。また、可動ユニット40の回転時に、弾性片32fの突起と各係合凹所42dとの間で係合と離脱とが繰り返されると、回転抵抗に強弱(クリック感)が生じる。
このクリック感により、使用者に対して、精子採取装置1の使用時に可動ユニット140が回動して空気量が変化したことを、触感によって認識させることができる。また、使用者の意に反して可動ユニット140を回転させてしまう不都合も抑制できる。
湾曲片42bは、周方向に細長い板状部材であり、ベースユニット30の先端内周面(第2パッキン34の内周面)に倣って湾曲している。可動ユニット40(カップ部材41)が軸中心に回転するとき、湾曲片42bはベースユニット30の先端内周面に沿って周方向に移動する。
湾曲片42bには、周方向に細長い湾曲片側開口部42e(第1開口部)が設けられている。湾曲片側開口部42eは、第2パッキン34に設けた複数のパッキン側開口部34c(複数の第2開口部)を開口範囲内に配置可能な形状に設けている。
【0031】
図6に示すように、可動ユニット40をベースユニット30に取り付けた状態において、カップ部材41の基端内周面は第2筒部材32の基端外周面に重ねられている。湾曲片42bと第2筒部材32とが対向した重なり部には第2パッキン34が介在しており、パッキン側開口部34cを除いた部分が気密状態で取り付けられている。
そして、カップ部材41の基端内周面と第2筒部材32の基端外周面との間には、ベース側指標32dによって空気流路APが形成される。これにより、容器20の内側空間ISと容器20外との間は、パッキン側開口部34c(調整機構AD)、及び空気流路APによって連通されている。
【0032】
<調整機構AD>
調整機構ADは、容器20内外を流通する空気流量(空気の流れやすさ)を調整する。第1実施形態の精子採取装置1において、調整機構ADは、ベースユニット30の先端部(第2筒部材32の先端部32b、パッキン側開口部34c)と可動ユニット40の基端部(可動リング42、湾曲片側開口部42e)とによって構成されている。
以下、調整機構ADについて説明する。
図9(a)は調整機構AD付近の部分拡大断面図、
図9(b)は調整機構AD付近における空気の流れを説明する図、
図10は可動ユニット40に対する回転操作を説明する図、
図11(a)は調整機構ADによる空気流量を最小にしたときの湾曲片側開口部42eとパッキン側開口部34cの位置関係を説明する図、
図11(b)は調整機構ADによる空気流量を最大にしたときの湾曲片側開口部42eとパッキン側開口部34cの位置関係を説明する図である。
【0033】
図9(a)に示すように、湾曲片側開口部42eを周方向に移動させて湾曲片側開口部42eの開口範囲内に複数のパッキン側開口部34cを位置させると、
図9(b)に矢印AFで示すように、空気流路AP、パッキン側開口部34c、及び湾曲片側開口部42eを通じて、容器20の内側空間ISと容器20外とが連通する。このとき、容器20の内外を流通する空気流量は、湾曲片側開口部42eの開口範囲内に配置されたパッキン側開口部34cの開口面積の合計、言い換えればパッキン側開口部34cの数(小孔の数)によって定められる。
図10に示すように、容器20の内外を流通する空気流量は、可動ユニット40をベースユニット30に対して軸中心に回転させることによって調整できる。すなわち、可動ユニット40の回転に伴って湾曲片42bが周方向に沿って移動し、湾曲片側開口部42eとパッキン側開口部34cとの間の周方向の相対位置を変えることができる。
【0034】
例えば、
図11(a)に示す状態では、湾曲片側開口部42eの開口範囲内にパッキン側開口部34cが位置していないため、最も空気が流れ難くなる。一方、
図11(b)に示す状態では、湾曲片側開口部42eの開口範囲内に複数のパッキン側開口部34cの全てが位置しているため、最も空気が流れ易くなる。
そして、
図11(a)に示す状態と
図11(b)に示す状態の中間の状態では、湾曲片側開口部42eの開口範囲内に位置付けられたパッキン側開口部34cの開口面積の合計(小孔の数)に応じて空気流量が変化する。
【0035】
<第1実施形態のまとめ>
第1実施形態の精子採取装置1では、可動ユニット40の基端側部分の内周面とベースユニット30の先端側部分の外周面との重なり部(対向部)に空気流路APを備え、容器20内外を流通する空気流量を調整する調整機構ADを空気流路APと容器20の内側空間ISとの間に設け、可動ユニット40のベースユニット30に対する回転角度に応じて空気流量を調整可能に構成しているため、使用者が意図せずに空気流路APを指で塞ぎ難く、使用者が意図しないペニスPへの刺激の変化を抑制することができる。
【0036】
<第2実施形態の精子採取装置1A>
前述した第1実施形態の精子採取装置1では、湾曲片側開口部42eの開口範囲内に位置付けられたパッキン側開口部34cの開口面積の合計(パッキン側開口部34cの数)に応じて調整機構ADの空気抵抗を変化させ、ペニスPの先端部PTに与える刺激を調整していたが、この構成に限定されない。
例えば、
図12に示すように、パッキン側開口部134c(第2開口部)、及びベース側開口部132c(第2開口部)を、開口面積が異なる複数種類の開口部によって構成し、可動ユニット140のベースユニット130に対する回転角度に応じて、複数のパッキン側開口部134c、及びベース側開口部132cの組の中の何れか一組を可動筒側開口部142g(第1開口部)の内側に位置させるようにしてもよい。
【0037】
以下、このように構成した第2実施形態の精子採取装置1Aについて説明する。
図12は第2実施形態の精子採取装置1Aの要部を説明する分解斜視図、
図13(a)は複数のパッキン側開口部134cの中の一つを選択したときの状態を説明する図、
図13(b)はパッキン側開口部134cを選択しなかったときの状態を説明する図である。
図12に示す精子採取装置1Aは、ベースユニット130(第2筒部材132)の先端132bの側面に設けた複数のベース側開口部132c(第2開口部)と、第2パッキン134に設けた複数のパッキン側開口部134c(第2開口部)と、可動リング142に設けた一つの可動筒側開口部142g(第1開口部)と、を備えている。
なお、この精子採取装置1Aにおいて、第1実施形態の精子採取装置1と同様の構成については同じ符号を付して説明を省略する。また、図示しない構成は第1実施形態の精子採取装置1と同様であるため説明を省略する。
【0038】
ベースユニット130は、第1実施形態のベースユニット30と同様に、第1筒部材131、第2筒部材132、第1パッキン(不図示)、及び第2パッキン134を備えている。なお、第1筒部材131、及び第1パッキンは、第1実施形態の第1筒部材31、及び第1パッキン33と同様の構成であるため、説明を省略する。
第2筒部材132は、軸方向両端が開放した筒形状であって、軸方向の途中にV字形状の窪み132aが全周に亘って設けられている。第2筒部材132における窪み132aよりも基端側の部分は、第1筒部材131の先端側半部の内周側に嵌合されている。第1パッキンは、第1実施形態の第1パッキン33と同様に、第2筒部材132と第1筒部材131との間に介在し、各筒部材131、132を気密状態で接続する。
【0039】
ベース側開口部132cは、第2筒部材132の先端132bの側面に、周方向に沿って間隔を空けて複数形成されている。図示の例において、ベース側開口部132cは円形小孔によって構成されており、周方向に間隔を空けて9個形成されている。各ベース側開口部132cは開口面積が異なっており、図中の左端に位置するベース側開口部132c(1)の開口面積が最も大きく、右端に位置するベース側開口部132c(9)の開口面積が最も小さくなっている。
第2筒部材132の先端132bの内周面であって各ベース側開口部132cから周方向に沿って反対側の位置には、複数の溝(凹所)からなる係合凹所132dが設けられている。また、第2筒部材132の先端132bには第2パッキン134の回り止めとなる突起132eが周方向に間隔を空けて複数形成されている。図示の例では、4個の突起132eが90度間隔で形成されている。
【0040】
第2パッキン134は、リング形状のリング状部134aと、リング状部134aと一体化されて周方向に細長い湾曲片134bと、湾曲片134bに設けられたパッキン側開口部134cとを備えている。第2実施形態の第2パッキン134も第1実施形態の第2パッキン34と同様に柔軟性、及びシール性を有した合成樹脂(例えば各種ゴム材、又はゴム弾性を有するエラストマー)によって作製されている。
リング状部134aは、第2筒部材132の先端面に載せられる部分であり、第2筒部材132の先端に設けられた突起132eと嵌合する切り欠き134dが周方向に沿って90度間隔で形成されている。湾曲片134bは、第2筒部材132の先端内周面に整合して湾曲され、全てのベース側開口部132cを覆うことが可能な形状(例えば横長長方形状)に設けられている。
【0041】
パッキン側開口部134cは、ベース側開口部132cと同様に、周方向に沿って間隔を空けて複数形成されている。図示の例において、各パッキン側開口部134cは、面積が異なる9個の円形小孔によって構成されており、左端に位置するパッキン側開口部134c(1)の面積が最も大きく、右端に位置するパッキン側開口部134c(9)の面積が最も小さくなっている。本実施形態において、各パッキン側開口部134cと対応する各ベース側開口部132cとは、互いに形状(開口面積)と形成位置が一致している。
また、湾曲片134bの内周面には、各パッキン側開口部134cを個別に囲む略四角形状のリブ134eが形成されている。なお、右端に位置するリブ134eの内周にはパッキン側開口部134cが設けられていない。
【0042】
可動リング142は、ベースユニット130の先端(第2パッキン134)に当接する円環形状のフランジ部142aと、フランジ部142aに設けられた可動筒142bとを備えている。フランジ部142aには、カップ部材41の内周面に設けた第2係止突起41cの基端が嵌合する切り欠き状の係止溝142cが設けられている。従って、可動リング142は、カップ部材41と共に軸中心に回転する。
可動筒142bには、可動筒側開口部142g(第1開口部)が設けられている。可動筒側開口部142gは、一つの矩形状開口であり、複数のパッキン側開口部134cの中の一つを個別に内側に配置可能である。
【0043】
可動筒142bにおける可動筒側開口部142gの位置から周方向に沿って180度回転した位置には、係合突起142dが形成されている。係合突起142dは、周方向に細長い板バネ部142eの周方向中央部において外向きに突出している。本実施形態において、板バネ部142eは、軸方向に間隔を空けて形成した周方向に細長い2本のスリット142fによって設けられている。
係合突起142dは、可動筒側開口部142gの内側に複数のパッキン側開口部134cの中の何れか一つを配置したときに、第2筒部材132の先端内周面に設けられた複数の係合凹所132dの一つに係合する。係合凹所132dに係合している係合突起142dが、隣の係合凹所132dに移動するときには、可動ユニット140の回転抵抗に強弱(クリック感)が生じる。
このクリック感により、可動ユニット140が回動して空気量が変化したことを、使用者に対して触感によって認識させることができる。また、使用者の意に反して可動ユニット140を回転させてしまう不都合も抑制できる。
【0044】
第2実施形態の精子採取装置1Aでは、第2筒部材132の先端内周面に第2パッキン134の湾曲片134bの外周面を対向させ、且つ各ベース側開口部132c(第2開口部)と各パッキン側開口部134c(第2開口部)の周方向位置を整合させた状態で、第2パッキン134を第2筒部材132に取り付ける。
さらに、周方向に回転自在な可動筒142bの外周面を、第2パッキン142の湾曲片134bの内周面に対向させた状態で取り付けることにより、複数のパッキン側開口部134cの中の何れか一つを可動筒側開口部142g(第1開口部)の内側に位置させている。
【0045】
図13(a)に示す例では、可動筒側開口部142gを、左端から5番目のパッキン側開口部134c(5)に位置付けている。これにより、可動筒側開口部142g、パッキン側開口部134c(5)、及びベース側開口部132c(5)が連通するため、空気は、各開口部142g、134c(5)、132c(5)の開口面積(流路抵抗)に応じた流量で、容器20内外を流通する。
図13(b)に示す例では、
図13(a)の状態から可動ユニット40(カップ部材41、可動リング42)を時計回りに回転させ、可動筒側開口部142gを、パッキン側開口部134cが設けられていないリブ134eの内周に位置付けている。この状態において、空気は、可動ユニット40とベースユニット30の隙間、及び挿入空所ESとペニスPの隙間等を通じてしか流れず、ペニスPに対する刺激が最も強い状態になる。
複数のパッキン側開口部134c、及び複数のベース側開口部132cは、互いに開口面積が異なっているため、可動ユニット40のベースユニット30に対する回転角度に応じて容器20内外を流通する空気の流量が調整される。従って、当該回転角度に応じてペニスPに対する刺激の強さが調整できる。
【0046】
<第3実施形態の精子採取装置1B>
前述した第2実施形態の精子採取装置1Aでは、一つの可動筒側開口部142g(第1開口部)が、開口面積が異なる複数のパッキン側開口部134c、及びベース側開口部132cの組(第2開口部)の一つを選択する構成であったが、この構成に限定されない。
例えば、
図14に示すように、一つのパッキン側開口部234c(第2開口部)に対して、開口面積が異なる複数の可動筒側開口部242d(第1開口部)の中の一つを選択的に位置付ける構成にしてもよい。
【0047】
以下、このように構成した第3実施形態の精子採取装置1Bについて説明する。
図14(a)は第3実施形態の精子採取装置1Bの要部を説明する分解斜視図、
図14(b)は可動リング242に設けた可動筒側開口部242dを説明する図、
図15は第2パッキン234の断面図、
図16(a)は容器20Bの縦断面図、
図16(b)は調整機構AD2付近の部分拡大断面図である。
図14(a)に示す精子採取装置1Bは、ベースユニット230(第2筒部材232)の先端232bに設けたベース側溝部232cと、第2パッキン234に設けたパッキン側開口部234c(第2開口部)と、可動リング242に設けた複数の可動筒側開口部242d(第1開口部)と、を備えている。
なお、第3実施形態の精子採取装置1Bにおいて、第1実施形態の精子採取装置1と同様の構成については同じ符号を付して説明を省略する。また、図示されない構成は第1実施形態の精子採取装置1と同様であるので説明を省略する。
【0048】
ベースユニット230は、第1実施形態のベースユニット30と同様に、第1筒部材231、第2筒部材232、第1パッキン233(
図16参照)、及び第2パッキン234を備えている。第1筒部材231、及び第1パッキン233は、第1実施形態の第1筒部材31、及び第1パッキン33と同様の構成である。このため、説明は省略する。
第2筒部材232は、軸方向両端が開放した筒形状であって、軸方向の途中に略V字形状の窪み232aが全周に亘って設けられている。第2筒部材232における窪み232aよりも基端側の部分は、第1筒部材231の先端側半部の内周側に嵌合されている。第1パッキン233は、
図16に示すように、第2筒部材232の基端と第1筒部材231との間に介在し、各筒部材231、232を気密状態で接続する。
【0049】
第2筒部材232の先端232bに設けられたベース側溝部232cは、先端が開放した一つの溝によって構成されている。図示の例において、ベース側溝部232cは、U字形状の溝によって構成されているが、この形状に限定されない。例えば、ベース側溝部232cを、先端が開放した四角形状の溝によって構成してもよい。
第2筒部材232の先端232bにおいてベース側溝部232cから周方向に沿って反対側の位置には、複数の係合スリット232dが設けられている。各係合スリット232dは先端が開放し、且つ軸方向に細長い四角形状のスリットである。この例では、10個の係合スリット232dが周方向に間隔を空けて設けられている。
【0050】
図14(a)、及び
図15に示すように、第2パッキン234は、円筒形状の筒状部234aと、筒状部234aの先端に一体化されたリング状部234bと、筒状部234aの側面に設けられたパッキン側開口部234cとを備えている。第3実施形態の第2パッキン234も第1実施形態の第2パッキン34と同様に柔軟性、及びシール性を有した合成樹脂(各種ゴム材、又はゴム弾性を有するエラストマー)によって作製されている。
リング状部234bは、筒状部234aの先端から外径方向に拡がり、且つ基端側に向けて僅かに傾斜した状態で設けられている。
パッキン側開口部234cは、横方向長さ(周方向長さ)に比べて縦方向長さ(軸方向長さ)が長い縦長楕円形状をしており、筒状部234aの厚さ方向を貫通している。筒状部234aの内周面には、パッキン側開口部234cの縁に沿った楕円形状のリブ234dが内径方向に突設されている。
【0051】
可動リング242は、第2パッキン234のリング状部234bに当接する円環形状のフランジ部242aと、フランジ部242aと一体に設けられた可動筒242bとを備えている。フランジ部242aには、カップ部材41の内周面に設けた第2係止突起41cの基端が嵌合する切り欠き状の係止溝242cが設けられている。従って、可動リング242は、カップ部材41と共に軸中心に回転する。本実施形態において、可動リング242は、弾性特性を有する硬質プラスチック材(例えばポリアセタール樹脂やポリアミド樹脂)によって作製されている。
【0052】
図14(b)に示すように、可動筒242bには、複数の可動筒側開口部242d(第1開口部)が設けられている。各可動筒側開口部242dは、開口面積が互いに相違した小孔であり、周方向に間隔を空けて設けられている。
本実施形態では9個の可動筒側開口部242dが設けられており、
図14(b)の左端に位置する可動筒側開口部242d(1)の開口面積が最も小さく、右端に位置する可動筒側開口部242d(9)の開口面積が最も大きくなっており、左端から右端に向かう程に開口面積が段階的に大きくなっている。
各可動筒側開口部242dの形状、及び大きさは、パッキン側開口部234cの開口内に収まる形状、及び大きさに定められる。また、隣り合う可動筒側開口部242d同士の周方向間隔は、一つの可動筒側開口部242dのみがパッキン側開口部234c内に配置される大きさに定められているが、複数の可動筒側開口部242dがパッキン側開口部234cに配置可能な間隔にしてもよい。
【0053】
図14(a)に示すように、可動筒242bの内周面における各可動筒側開口部242dの形成範囲には、ガイドプレート242eを設けている。ガイドプレート242eは、取り付けリブ242fによって可動筒242bの内周面から内径側に間隔を空けた位置に取り付けられており、ガイドプレート242eの内周面には傾倒状態のコア部材10が当接可能である。
ガイドプレート242eは、傾倒状態のコア部材10によって各可動筒側開口部242dが塞がれてしまう不都合を抑制する。言い換えれば、ガイドプレート242eは、各可動筒側開口部242dの通気性を確保するためのガイド部材といえる。
【0054】
可動筒242bにおけるガイドプレート242eの位置から周方向に沿って180度回転した位置には、係合突起242gが形成されている。係合突起242gは、第2実施形態と同様に、周方向に細長い板バネ部242hの周方向中央部において外向きに突出している。
係合突起242gは、第2筒部材232の先端232bに設けた係合スリット232dに係合する。各係合スリット232dには、複数の可動筒側開口部242dの中の何れか一つがパッキン側開口部234cの内側に配置されたときに係合突起242gが係合する。係合スリット232dに係合している係合突起242gが、隣の係合スリット232dに移動するときには、可動ユニット240の回転抵抗に強弱(クリック感)が生じる。
このクリック感によって、可動ユニット140が回動して空気量が変化したことを、使用者に対して触感によって認識させることができる。また、使用者の意に反して可動ユニット140を回転させてしまう不都合も抑制できる。
【0055】
図16に示すように、第3実施形態の精子採取装置1Bにおいても、可動ユニット240の基端内周面は、ベースユニット230の先端外周面と対向した状態で重ねて配置されており、各周面の重なり部には、容器20内外を流通する空気用の空気流路APと、空気流路APの空気流量を調整する調整機構AD2とを設けている。
調整機構AD2は、ベースユニット230の先端(第2筒部材232の先端232b、パッキン側開口部234c)と可動ユニット240の基端(可動リング242、可動筒側開口部242d)とによって構成される。
そして、ベース側指標32d(
図4を参照)によってカップ部材41の基端内周面とベースユニット230の先端外周面との間に空気流路APが形成されており、空気流路APと調整機構AD2とを介して容器20Bの内外が連通される。なお、第3実施形態の精子採取装置1Bにおいて、パッキン側開口部234cが一つであるため、ベース側指標32dは1本設けられる。一方、可動側指標41a(
図4を参照)は、可動筒側開口部242dの数に応じた本数が周方向に間隔を空けて設けられる。
さらに、調整機構AD2は、パッキン側開口部234cの内側に配置された一つの可動筒側開口部242dの面積に応じて、容器20B内外を流通する空気流量(空気の流れやすさ)を調整する。
【0056】
図17(a)は複数の可動筒側開口部242dの何れも選択していない状態を説明する図、
図17(b)は複数の可動筒側開口部242dの中の一つを選択したときの状態を説明する図、
図17(c)は他の可動筒側開口部242dを選択したときの状態を説明する図である。
図17(a)に示す例では、複数の可動筒側開口部242dの何れもパッキン側開口部234c内に配置されていない。この状態において、空気は、可動ユニット240とベースユニット230の隙間、及び挿入空所ESとペニスPの隙間等を通じてしか流れず、ペニスPに対する刺激が最も強い状態になる。
図17(b)に示す例では、左端から5番目の可動筒側開口部242d(5)をパッキン側開口部234cに位置付けているため、5番目の可動筒側開口部242d(5)の面積に応じた流路抵抗で空気が流通する。この状態では、
図17(a)に示す例よりもペニスPに対する刺激が弱められる。
図17(c)に示す例では、最も面積の大きな右端の可動筒側開口部242d(9)をパッキン側開口部234cに位置付けているため、
図17(b)に示す例よりもペニスPに対する刺激がさらに弱められる。
【0057】
このように第3実施形態の精子採取装置1Bでも、可動ユニット240(カップ部材41)のベースユニット230に対する回転角度に応じて容器20B内外を流通する空気流量が調整される。従って、当該回転角度に応じてペニスPに対する刺激の強さが調整できる。
【0058】
<変形例>
前述の各実施形態では、可動ユニット40、140、240の基端内周面とベースユニット30、130、230の先端外周面とを対向させ、且つ両周面の間にパッキン側開口部34c、134c、234cを設けた第2パッキン34、134、234を介在させていたが、この構成に限定されない。
例えば、前述の各実施形態において、調整機構AD、AD1、AD2、及びAD2’は、容器20における軸方向の中間位置に設けられていたが、軸方向の上端(上端側面、上端面)に設けてもよい。
また、ベースユニット30等の先端を外周壁と内周壁の二重構造にし、可動ユニット40等の基端をベースユニット先端の外周壁と内周壁との間の溝に嵌合し、第2パッキン34等を可動ユニット基端とベースユニット内周壁との間に介在させる構成を採ってもよい。この構成では、可動ユニット40等の基端側面とベースユニット30等の内周壁とが第2パッキン34等を介して対向する。従って、可動ユニット40等の基端側面、ベースユニット30等の内周壁、及び第2パッキン34等のそれぞれに開口を設けることにより、上述した各実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0059】
前述の各実施形態において、コア部材10の挿入空所ESと容器20の内側空間ISとは連通されていなかったが、
図1等に示すように、コア部材10の先端部近傍に、容器20の内側空間ISとコア部材10の挿入空所ESとを連通させるバルブ11fを設けてもよい。
バルブ11fは、コア部材10の一部(例えば先端部)に設けられており、筒状部11cの厚さ方向を貫通する線状の切り込みである。バルブ11fは、常時においては弾性素材自体の弾性により閉止し続ける一方で、挿入空所ES内の空気圧力が所定以上に高まった時に開放して挿入空所ESを内側空間ISと連通させて空気の排出を許容する。
このように、バルブ11fは、挿入空所ESから容器20の内側空間ISへの空気の排出は許容し、容器20の内側空間ISから挿入空所ESへの空気の流入は制限する。
【0060】
調整機構AD、AD1、AD2に関し、前述の各実施形態では、可動リング42、142、242に湾曲片側開口部42eや可動筒側開口部142g、242dを設け、ベースユニット30、130、230にパッキン側開口部34c、134c、234cやベース側開口部132cを設けていたが、これらの構成に限定されない。
調整機構AD、AD1、AD2は、可動ユニット40のベースユニット30に対する回転角度に応じて容器20、20A、20Bの内外を流通する空気流量を調整できればよい。
【0061】
図18は第3実施形態の変形例の精子採取装置1B’が備えた可動リング242’を説明する図、
図19(a)は可動筒側開口部242jとパッキン側開口部234cとが重ならない状態を説明する図、
図19(b)は空気流量を中間程度に調節した状態を説明する図、
図19(c)は空気流量を最大に調節した状態を説明する図である。
図18に示すように、精子採取装置1B’は可動リング242’を備えている。可動リング242’は、可動筒側開口部242j(第1開口部)を備えている。可動筒側開口部242jは、周方向に細長く、且つ開口高さ(軸方向の間隔
,開口長)を周方向の位置に応じて異ならせた形状である。
図18に例示した可動筒側開口部242jは、周方向に細長い略三角形状をしている。具体的には、可動筒側開口部242jは、周方向一端(左端)の開口高さ(軸方向の間隔
,開口長)が最も小さく、周方向他端(右端)の開口高さが最も大きくなっている。従って、可動筒側開口部242jは、周方向一端から他端に向かうほどに開口高さが漸増し(連続的に大きくなり)、周方向他端から一端に向かうほどに開口高さが漸減する(連続的に小さくなる)。なお、可動筒側開口部242jの形状は、
図18の例に限定されない。
図19に示すように、第2パッキン234に設けたパッキン側開口部234c(第2開口部)は、周方向長さが可動筒側開口部242jの周方向長さよりも短く、開口高さが可動筒側開口部242jの周方向他端における開口高さ(軸方向の最大間隔
,最大開口長)以上である。
なお、第3実施形態の変形例の精子採取装置1B’において、他の構成は第3実施形態の精子採取装置1Bと同様であるので説明を省略する。
【0062】
図19に示す調整機構AD2’では、可動ユニット130のベースユニット230に対する回転角度に応じて、パッキン側開口部234c(第2開口部)内に位置する可動筒側開口部242j(第1開口部)の面積が変化する。そして、調整機構AD2’では、パッキン側開口部234c内に位置する可動筒側開口部242jの面積に応じて、容器内外を流通する空気流量(空気の流れやすさ)を調整する。
図19(a)に示す例では、パッキン側開口部234c内に可動筒側開口部242jは位置付けられない。この状態において、空気は、可動ユニット240とベースユニット230の隙間、及び挿入空所ESとペニスPの隙間等を通じてしか流れず、ペニスPに対する刺激が最も強い状態になる。
図19(b)に示す例では、パッキン側開口部234c内に可動筒側開口部242jの周方向中央部が位置付けられているため、各開口部234c、242jの重なり部の面積に応じた流路抵抗で空気が流通する。この状態では、
図19(a)に示す例よりもペニスPに対する刺激が弱められる。
図19(c)に示す例では、パッキン側開口部234c内に可動筒側開口部242jの周方向右端が位置付けられているため、
図19(b)に示す例よりもペニスPに対する刺激がさらに弱められる。
【0063】
コア部材10に関し、
図3の構成に限定されない。例えば、リング部材12の枚数を1枚や2枚にしてもよく、省略してもよい。
【0064】
カップ部材41の外観形状に関し、ベースユニット30に対して軸中心に回転可能であればカップ形状に限定されない。例えば、カップ部材41の外観形状を直方体形状にしてもよい。
【0065】
空気流路APに関し、前述の各実施形態では、ベース側指標32dを溝によって作製し、空気流路APとしても利用する構成を例示したが、この構成に限定されない。カップ部材41の内表面側に溝を形成してもよいし、カップ部材41の基端内表面と第2筒部材32の先端外表面との間に隙間を設けてもよい。
【0066】
[本発明の実施態様例と作用、効果のまとめ]
<第一の実施態様>
本態様に係る精子採取装置1、1A、1Bは、弾性素材によって構成され、ペニスPの挿入口11a、及び挿入口11aに挿入されたペニスPが進退移動する挿入空所ESを設けたコア部材10と、コア部材10を内側空間ISに収容した容器20、20A、20Bと、を備えており、容器20等は、軸方向両端が開口した筒形状に構成され、軸方向基端(一端)にコア部材10の挿入口側端部を取り付けたベースユニット30、130、230と、軸方向基端が開口し先端を閉塞した筒形状(カップ形状)に構成され、且つベースユニット30等の先端に対して軸中心に回転自在に取り付けた可動ユニット40、140、240と、を備え、可動ユニット40等の基端は、ベースユニット30等の先端(他端)に重ねられ、且つ可動ユニット40等の基端とベースユニット30等の先端との重なり部には空気流路APを備え、前記重なり部には、可動ユニット40等のベースユニット30等に対する回転角度に応じて容器20等の内外を流通する空気流量を調整する調整機構AD、AD1、AD2を設けたことを特徴とする。
本態様に係る精子採取装置1等では、可動ユニット40等のベースユニット30に対する回転角度に応じて調整機構AD等が空気流量を調整し、ペニスPの先端部PTに与えられる刺激が調整される。そして、空気流路APが可動ユニット40等の基端とベースユニット30等の先端とが対向した重なり部に備えられているため、使用時において使用者が空気流路APを指で塞ぎ難くなり、使用者が意図しない刺激の変化を抑制することができる。
【0067】
<第二の実施態様>
本態様に係る精子採取装置1等において、コア部材10は、ペニスPの先端部PTが挿入空所ESの内奥に向けて移動したときに開放し、内奥から挿入口11aに向けて移動したときに閉じるバルブ11fを備えたことを特徴とする。
本態様に係る精子採取装置1等では、コア部材10がバルブ11fを備えているため、ペニスPの先端部PTが挿入空所ESの内奥から挿入口11aに向けて移動したときにペニスPの先端部PTとコア部材10の内周面との間の密着力が強くなり、ペニスPの先端部PTに与えられる刺激を強くすることができる。
【0068】
<第三の実施態様>
本態様に係る精子採取装置1等において、可動ユニット40等は、基端が開口し先端を閉塞した筒形状のカップ部材41と、ベースユニット30等における先端側部分の内周面に第2パッキン34、134、234を介して隣接して配置されてカップ部材41と一体に回転し、且つ第1開口部(湾曲片側開口部42e、可動筒側開口部142g、242d)を形成した可動部材(可動リング42、142、242)と、を含み、ベースユニット30等は、先端における空気流路APと連通する位置に形成した第2開口部(パッキン側開口部34c、134c、234c)を含み、調整機構AD、AD1、AD2は、可動ユニット40等のベースユニット30等に対する回転角度に応じて、第1開口と第2開口との重なり部分の開口面積を変更自在な構成を有したことを特徴とする。
本態様に係る精子採取装置1では、可動ユニット40のベースユニット30に対する回転角度に応じて、第1開口部と第2開口部との重なり部分の開口面積を変更自在であるため、重なり部分の開口面積に基づいて空気流量を精度良く調整できる。
【0069】
<第四の実施態様>
本態様に係る精子採取装置1において、第1開口部(湾曲片側開口部42e)は、周方向に細長い形状であり、第2開口部(パッキン側開口部34c)は、周方向に間隔を空けて複数個形成されており、調整機構ADは、可動ユニット40のベースユニット30に対する回転角度に応じて、第1開口部内に位置する第2開口部の数を変更自在な構成を有したことを特徴とする。
本態様に係る精子採取装置1では、第1開口部内に位置する第2開口部の数に応じて空気流量を精度良く調整できる。
【0070】
<第五の実施態様>
本態様に係る精子採取装置1Aにおいて、第2開口部(パッキン側開口部134c)は、周方向に間隔を空けて複数個形成されており、且つ前記各第2開口部の開口面積は異なっており、第1開口部(可動筒側開口部142g)は、複数の第2開口部の中の一つを個別にその開口内に位置させることが可能な形状であり、調整機構AD1は、可動ユニット140のベースユニット130に対する回転角度に応じて複数の第2開口部の中の一つを選択し、第1開口部の開口内に位置させる構成を有したことを特徴とする。
本態様に係る精子採取装置1Aでは、第1開口部内に位置する第2開口部の開口面積に応じて空気流量を精度良く調整できる。
【0071】
<第六の実施態様>
本態様に係る精子採取装置1Bにおいて、第1開口部(可動筒側開口部242d)は、周方向に間隔を空けて複数個形成されており、且つ各第1開口部の開口面積は異なっており、第2開口部(パッキン側開口部234c)は、複数の第1開口部の中の一つを個別にその開口内に位置させることが可能な形状であり、調整機構AD2は、可動ユニット240のベースユニット230に対する回転角度に応じて複数の第1開口の中の一つを選択し、第2開口部の開口内に位置させる構成を有したことを特徴とする。
本態様に係る精子採取装置1Bでは、第2開口部内に位置する第1開口部の開口面積に応じて空気流量を精度良く調整できる。
【0072】
<第七の実施態様>
本態様に係る精子採取装置1B’において、第1開口部(可動筒側開口部242j)は、周方向に細長く、且つ軸方向の間隔(開口高さ)を周方向位置に応じて異ならせた形状であり、第2開口部(パッキン側開口部234c)は、周方向の長さが第1開口部の周方向長さよりも短く、且つ軸方向の間隔が第1開口部における軸方向の最大間隔以上に形成され、調整機構AD2’は、可動ユニット130のベースユニット230に対する回転角度に応じて、第2開口部内に位置する第1開口部の面積を変更自在な構成を有したことを特徴とする。
本態様に係る精子採取装置1B’では、第2開口部内に位置する第1開口部の開口面積に応じて空気流量を精度良く調整できる。
【符号の説明】
【0073】
1、1A、1B、1B’…精子採取装置,10…コア部材,11a…ペニスの挿入口,11f…バルブ,20、20A、20B…容器,30、130、230…ベースユニット,31、131、231…第1筒部材,32、132、232…第2筒部材,132c…ベース側開口部,32d…ベース側指標(溝),34、134、234…第2パッキン、34c、134c、234c…パッキン側開口部,40、140、240…可動ユニット,41…カップ部材,41a…可動側指標,42、142、242…可動リング,42e…湾曲片側開口部,142g、242d…可動筒側開口部,ES…コア部材内部の挿入空所,IS…容器の内側空間,AP…空気流路,AD、AD1、AD2…調整機構,P…ペニス,PT…ペニスの先端部