(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-05
(45)【発行日】2023-12-13
(54)【発明の名称】エポキシ樹脂接着剤、硬化物およびモータ
(51)【国際特許分類】
C09J 163/00 20060101AFI20231206BHJP
C09J 11/04 20060101ALI20231206BHJP
C09J 11/08 20060101ALI20231206BHJP
【FI】
C09J163/00
C09J11/04
C09J11/08
(21)【出願番号】P 2020091195
(22)【出願日】2020-05-26
【審査請求日】2023-02-14
(31)【優先権主張番号】P 2019120703
(32)【優先日】2019-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000132404
【氏名又は名称】株式会社スリーボンド
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】小野 由智
(72)【発明者】
【氏名】安長 可奈
【審査官】上坊寺 宏枝
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-11445(JP,A)
【文献】特開平2-124931(JP,A)
【文献】特開2009-299079(JP,A)
【文献】特表2009-506169(JP,A)
【文献】特開2010-270198(JP,A)
【文献】特開2000-319620(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-5/10、9/00-201/10
H02K 15/00-15/02、15/04-15/06
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
C08G 59/00-59/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の(A)~(E)成分を含むエポキシ樹脂接着剤。
(A)成分:1分子中にエポキシ基を2以上有するエポキシ樹脂
(B)成分:エポキシ樹脂用硬化剤
(C)成分:ガラス転移温度(DSC法)が70℃以上であるポリスチレン粒子
(D)成分:ガラス転移温度(DSC法)が0℃以下である樹脂粒子(但し、(C)成分を除く)
(E)成分:平均粒径10~500μmのスペーサー粒子(但し、(C)成分、(D)成分を除く)
【請求項2】
前記(D)成分が、ガラス転移温度(DSC法)が0℃以下である(メタ)アクリル粒子であることを特徴とする、請求項1に記載のエポキシ樹脂接着剤。
【請求項3】
エポキシ樹脂接着剤を120℃雰囲気で60分間の加熱を行い硬化させた硬化物のガラス転移温度(DMA法、tanδのピーク)が150℃以上であることを特徴とする、請求項1または2に記載のエポキシ樹脂接着剤。
【請求項4】
前記(A)成分が、1分子中にエポキシ基を2以上3未満有するエポキシ樹脂(a1)と、1分子中にエポキシ基を3以上10未満有する多官能エポキシ樹脂(a2)とを含むことを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂接着剤。
【請求項5】
前記(B)成分が、潜在性硬化剤であることを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂接着剤。
【請求項6】
前記(E)成分が、球状であることを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂接着剤。
【請求項7】
前記(a1)成分と前記(a2)成分との質量比((a1)/(a2))が、30/70~90/10であることを特徴とする、請求項4に記載のエポキシ樹脂接着剤。
【請求項8】
前記(A)成分100質量部に対して、前記(C)成分が1~100質量部、前記(D)成分が1~100質量部、前記(E)成分が0.5~50質量部で含まれることを特徴とする、請求項1~7のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂接着剤。
【請求項9】
25℃で液状であることを特徴とする、請求項1~8のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂接着剤。
【請求項10】
前記(E)成分が、ガラス、シリカ、液晶ポリマー、アルミナ、酸化ジルコニウム、および窒化硼素からなる群から少なくとも1以上選択されることを特徴とする、請求項1~9のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂接着剤。
【請求項11】
(F)成分として、充填剤をさらに含むことを特徴とする、請求項1~10のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂接着剤。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂接着剤を含有する、マグネット用接着剤。
【請求項13】
請求項1~11のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂接着剤を含有する、モータ用接着剤。
【請求項14】
請求項1~11のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂接着剤を硬化することにより得られる、硬化物。
【請求項15】
請求項1~11のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂接着剤を使用して組み立てられていることを特徴とする、モータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は高温熱時接着力が優れ、かつ、モータ部材に要求される冷熱サイクル試験後も接着力を維持するエポキシ樹脂接着剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電気自動車やハイブリッド車両の車輪を駆動する車載用モータの需要が拡大している。モータには磁石を固定する目的で接着剤が多用されている。例えば、モータのステーターと磁石との接着やローターと磁石との接着などがあげられる。引用文献1には、モータ用接着剤として接着強度が高いことから加熱硬化型エポキシ樹脂が適する旨が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車載モータで使用される接着剤には、(1)車載モータは高温領域で使用されるため高温時でも接着力を維持すること、(2)車載モータの使用箇所、使用地域の気候などを考慮し、冷熱サイクル環境(-40℃⇔125℃)試験後も接着力を維持することが求められる。前記引用文献1に開示された加熱硬化型エポキシ樹脂系接着剤は高温熱時接着力を得るためにガラス転移温度の高い硬化物が得られる組成物になるように処方している。背反として、硬化物が硬くなりすぎているため冷熱サイクル環境試験後の接着力を維持することが困難であった。
【0005】
以上から、高温熱時接着力が優れ、かつ、モータ部材に要求される冷熱サイクル試験後も接着力を維持するエポキシ樹脂接着剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は以下の要旨を有するものである。
【0007】
[1]下記の(A)~(E)成分を含むエポキシ樹脂接着剤:
(A)成分:1分子中にエポキシ基を2以上有するエポキシ樹脂
(B)成分:エポキシ樹脂用硬化剤
(C)成分:ガラス転移温度(DSC法)が70℃以上であるポリスチレン粒子
(D)成分:ガラス転移温度(DSC法)が0℃以下である樹脂粒子(但し、(C)成分を除く)
(E)成分:平均粒径10~500μmのスペーサー粒子(但し、(C)成分、(D)成分を除く)。
【0008】
[2]前記(D)成分が、ガラス転移温度(DSC法)が0℃以下である(メタ)アクリル粒子であることを特徴とする、[1]に記載のエポキシ樹脂接着剤。
【0009】
[3]エポキシ樹脂接着剤を120℃雰囲気で60分間の加熱を行い硬化させた硬化物のガラス転移温度(DMA法、tanδのピーク)が150℃以上であることを特徴とする、[1]または[2]に記載のエポキシ樹脂接着剤。
【0010】
[4]前記(A)成分が、1分子中にエポキシ基を2以上3未満有するエポキシ樹脂(a1)と、1分子中にエポキシ基を3以上10未満有する多官能エポキシ樹脂(a2)とを含むことを特徴とする、[1]~[3]のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂接着剤。
【0011】
[5]前記(B)成分が、潜在性硬化剤であることを特徴とする、[1]~[4]のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂接着剤。
【0012】
[6]前記(E)成分が、球状であることを特徴とする、[1]~[5]のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂接着剤。
【0013】
[7]前記(a1)成分と前記(a2)成分との質量比((a1)/(a2))が、30/70~90/10であることを特徴とする、[4]に記載のエポキシ樹脂接着剤。
【0014】
[8]前記(A)成分100質量部に対して、前記(C)成分が1~100質量部、前記(D)成分が1~100質量部、前記(E)成分が0.5~50質量部で含まれることを特徴とする、[1]~[7]のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂接着剤。
【0015】
[9]25℃で液状であることを特徴とする、[1]~[8]のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂接着剤。
【0016】
[10]前記(E)成分が、ガラス、シリカ、液晶ポリマー、アルミナ、酸化ジルコニウム、および窒化硼素からなる群から少なくとも1以上選択されることを特徴とする、[1]~[9]のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂接着剤。
【0017】
[11](F)成分として、充填剤をさらに含むことを特徴とする、[1]~[10]のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂接着剤。
【0018】
[12][1]~[11]のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂接着剤を含有する、マグネット用接着剤。
【0019】
[13][1]~[11]のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂接着剤を含有する、モータ用接着剤。
【0020】
[14][1]~[11]のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂接着剤を硬化することにより得られる、硬化物。
【0021】
[15][1]~[11]のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂接着剤を使用して組み立てられていることを特徴とする、モータ。
【発明の効果】
【0022】
本発明は高温熱時接着力が優れ、かつ、モータ部材に要求される冷熱サイクル試験後も接着力を維持するエポキシ樹脂接着剤を提供するものである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に発明の詳細を説明する。
【0024】
<(A)成分>
本発明の(A)成分であるエポキシ樹脂は、1分子中にエポキシ基(グリシジル基)を2以上有する化合物であれば、特に限定なく使用することができる。(A)成分としては、例えば、1分子中にエポキシ基を2以上3未満有するエポキシ樹脂(a1)、1分子中にエポキシ基を3以上10未満有する多官能エポキシ樹脂(a2)などが挙げられる。本発明において、(A)成分は高温熱時接着力が優れ、かつ、モータ部材に要求される冷熱サイクル試験後も接着力を維持するエポキシ樹脂接着剤が得られるという観点から(a1)成分と(a2)成分とを併用することが好ましい。なお、エポキシ樹脂接着剤が2以上の(A)成分(例えば、(a1)および(a2))を含む場合には、(A)成分の含有量は、これらの合計量を意味する。
【0025】
ここで、(a2)成分としては、1分子中にエポキシ基を3以上9未満有する多官能エポキシ樹脂が好ましく、1分子中にエポキシ基を3以上8未満有する多官能エポキシ樹脂がより好ましく、1分子中にエポキシ基を3以上7未満有する多官能エポキシ樹脂がさらに好ましく、1分子中にエポキシ基を3以上6未満有する多官能エポキシ樹脂が特に好ましい。
【0026】
前記(A)成分は、25℃で液状でも固体でも使用可能であるが、ハンドリング性が得られるという観点から、好ましくは、25℃で液状のものが好ましい。なお、前記ハンドリング性とは、エポキシ樹脂接着剤の粘度が低く塗布作業しやすいことを意味する。
【0027】
前記(a1)成分としては、特に限定されないが、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂などのビスフェノール型エポキシ樹脂、水素化ビスフェノール型エポキシ樹脂、1,2-ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,3-ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、2,3-ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,5-ペンタンジオールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,4-シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテルなどのアルキレングリコール型エポキシ樹脂などが挙げられる。これらの中でも、芳香族ポリエステル樹脂に対する接着性に優れ、流れ性が優れているという観点から、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂が好ましく用いられる。また、これらは単独あるいは混合で使用してもよい。
【0028】
前記(a2)成分としては、特に限定されないが、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂などのノボラック型エポキシ樹脂;N,N-ジグリシジル-4-グリシジルオキシアニリン、4,4’-メチレンビス(N,N-ジグリシジルアニリン)、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、テトラグリシジル-m-キシリレンジアミン等のグリシジルアミン化合物;グリシジル基を4つ有するナフタレン型エポキシ樹脂などを挙げることができる。これらの化合物は、それぞれ単独で用いてもよく、また2種類以上を混合して用いてもよい。
【0029】
前記(a1)成分と(a2)成分の質量比((a1)/(a2))は、特に制限されないが、30/70~90/10となる範囲が好ましく、更に好ましくは、36/66~85/15の範囲であり、更により好ましくは36/64~85/15の範囲であり、特に好ましくは、40/60~80/20の範囲である。
【0030】
(A)成分の市販品としては、特に限定されないが、例えばjER828、1001、801、806、807、152、604、630、871、YX8000、YX8034、YX4000(三菱ケミカル株式会社製);エピクロン830、850、830LVP、850CRP、835LV、HP4032D、703、720、726、820(DIC株式会社製);EP4100、EP4000、EP4080,EP4085、EP4088、EPU6、EPU7N、EPR4023、EPR1309、EP4920(株式会社ADEKA製)、TEPIC(日産化学工業株式会社製);KF-101、KF-1001、KF-105、X-22-163B、X-22-9002(信越化学工業株式会社製);デナコールEX411、314、201、212、252(ナガセケムテックス株式会社製);DER-331、332、334、431、542(ダウケミカル社製);YH-434、YH-434L(日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0031】
<(B)成分>
本発明に使用される(B)成分のエポキシ樹脂用硬化剤は、(A)成分の硬化剤として作用するものである。(B)成分としては好ましくは潜在性硬化剤である。潜在性硬化剤とは、当該潜在性硬化剤と(A)成分とを混合した組成物は25℃で安定しており、かつ、この組成物を70~250℃で加熱することにより硬化剤として作用するものである。
【0032】
前記(B)成分の潜在性硬化剤としては、特に限定されないが、例えばアミン化合物とエポキシ化合物、イソシアネート化合物、または尿素化合物とを反応させた反応生成物(アダクト型潜在性硬化剤)、ジシアンジアミド、ヒドラジド化合物、三フッ化ホウ素-アミン錯体などが挙げられる。本発明においては、冷熱サイクル試験後も接着力を維持するエポキシ樹脂接着剤が得られるという観点からアダクト型潜在性硬化剤、ジシアンジアミドが好ましい。また、アダクト型潜在性硬化剤、ジシアンジアミド、ヒドラジド化合物、三フッ化ホウ素-アミン錯体からなる群から少なくとも2以上を選択し組み合わせることでより一層に高温熱時接着力が優れるという観点から好ましい。さらに好ましくは、(B)成分としてアダクト型潜在性硬化剤およびジシアンジアミドを組み合わせて用いることであり、これにより、高温熱時接着力および冷熱サイクル試験後の接着力の維持に優れたエポキシ樹脂接着剤が得られる。
【0033】
(B)成分としてアダクト型潜在性硬化剤およびジシアンジアミドを組み合わせて用いる場合、その質量比((アダクト型潜在性硬化剤)/(ジシアンジアミド))は、特に制限されないが、20/80~80/20となる範囲が好ましく、更に好ましくは、30/70~70/30の範囲であり、特に好ましくは、35/65~60/40の範囲である。
【0034】
また、本発明の(B)成分は、その形状が球状であることが好ましく、その場合の(B)成分の平均粒径は特に限定されないが、例えば0.1~100μmの範囲が好ましく、より好ましくは1~30μmの範囲であり、さらに好ましくは2~20μmの範囲であり、特に好ましくは4~15μmである。
【0035】
以下、本発明における平均粒径とは、体積換算に基づく50%平均粒径(体積分布における平均粒径、すなわち体積平均粒径)を指す。前記平均粒径の測定方法は、レーザー回折・散乱法である。
【0036】
前記(B)成分の市販品としては、特に限定されないが、例えば、アダクト型潜在性硬化剤としては、例えばフジキュア FXE-1000、FXR-1020、FXR-1030、FXB-1050(T&K TOKA社製品)、アミキュアPN-23、アミキュアPN-H、アミキュアPN-31、アミキュアPN-40、アミキュアPN-50、アミキュアPN-F、アミキュアPN-23J、アミキュアPN-31J、アミキュアPN-40J、アミキュアMY-24、アミキュアMY-25、アミキュアMY-R、アミキュアPN-R(味の素ファインテクノ社製品)等が挙げられ、ジシアンジアミドとしては、jERキュアDICY7、15、20、7A(三菱化学株式会社製)、オミキュアDDA10、DDA50、DDA100、DDA5、CG-325、DICY-F、DICY-M(CVC Thermoset Specialties社製)、CG-1200、CG-1400(エアープロダクツジャパン株式会社製)等が挙げられ、ヒドラジド化合物としては、アミキュアVDH、VDH-J、UDH、UDH-J(味の素ファインテクノ株式会社製)等が挙げられる。また、これらは単独あるいは混合で使用してもよい。
【0037】
本発明における(B)成分の配合量としては、前記(A)成分100質量部に対して、好ましくは3~50質量部、より好ましくは5~40質量部であり、さらに好ましくは10~30質量部である。上記の範囲内であることで、より一層、冷熱サイクル試験後も接着力を維持するエポキシ樹脂接着剤が得られるという観点で優れる。なお、エポキシ樹脂接着剤が2以上のエポキシ樹脂硬化剤((B)成分)を含む場合には、(B)成分の含有量は、これらの合計量を意味する。
【0038】
<(C)成分>
本発明に使用される(C)成分のガラス転移温度が70℃以上であるポリスチレン粒子としては、本発明のその他成分と組み合わせることにより、高温熱時接着力が優れ、かつ、モータ部材に要求される冷熱サイクル試験後も接着力を維持できるという顕著な効果を有する。(C)成分のガラス転移温度は、好ましくは75℃以上であり、より好ましくは80℃以上であり、さらに好ましくは85℃以上であり、特に好ましくは90℃以上である。(C)成分のガラス転移温度の上限は特に制限されないが、例えば、好ましくは300℃以下であり、より好ましくは250℃以下であり、さらに好ましくは200℃以下であり、特に好ましくは150℃以下である。なお、ガラス転移温度の測定方法は後述する内容の通りである。
【0039】
以下、本発明における前記(C)成分のガラス転移温度(Tg)の測定は次の通りである。アルミニウム製パン(容器)に、(C)成分の試料3mgを採取し、次に示差走査熱量計(SII社製DSC220C)を用いて昇温速度10℃/min、測定温度域-50~250℃で測定した。なお、ガラス転移温度は、DSCの測定結果のチャートのベースラインが変曲する場合、初期ベースラインと変曲点との交点とした。
【0040】
前記(C)成分としては特に制限されないが、例えば、スチレンまたはスチレン誘導体を重合または共重合させたポリスチレン粒子である。ポリスチレン粒子にはスチレンのホモポリマーも含まれる。また、前記スチレン誘導体としては、例えば、ハロゲン、アルキル基等をスチレンに付加させた化合物が挙げられ、例えばメタクロロスチレン、パラクロロスチレン、パラフロロスチレン、パラメトキシスチレン、メタターシャリーブトキシスチレン、パラビニル安息香酸、パラメチル-α-メチルスチレン、ジビニルベンゼン、ビニルトルエン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、スチレンまたはスチレン誘導体と共重合できるモノマーは、例えばイソプレン等の共役ジエン類、酢酸ビニル、ビニルピリジン、N-ビニルピロリドン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニル等のビニル単量体、(メタ)アクリル酸グリシジル等の(メタ)アクリレート単量体等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。これらは単独あるいは混合で使用してもよい。これらの(C)成分の中でも高温熱時接着力が優れるという観点から、スチレン誘導体同士の共重合体のポリスチレン粒子が好ましく、さらに好ましくはスチレンとジビニルベンゼンの共重合体のポリスチレン粒子である。
【0041】
前記(C)成分の形状は球状であることが好ましく、その平均粒径は0.01μm~30μmの範囲のものが好ましく、より好ましくは0.03μm~20μmの範囲であり、さらに好ましくは0.05μm~10μmの範囲であり、特に好ましくは0.1μm~5μm、最も好ましくは0.1μm以上1μm未満の範囲である。(C)成分の平均粒径が上記の範囲内であることで、より一層に、冷熱サイクル試験後も接着力を維持できることから好ましい。
【0042】
前記(C)成分の市販品としては、例えばスチレン-ジビニルベンゼン共重合体のポリスチレン粒子、ガラス転移温度が110℃である松浦株式会社製ファインパールPB-3006E、メタクリル酸グリシジルとスチレンの共重合体のポリスチレン系フィラー、Tg=96℃である日油株式会社製マープルーフG-1005S等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0043】
前記(C)成分の含有量は、特に限定されないが、(A)成分100質量部に対して、好ましくは1~100質量部であり、より好ましくは2~90質量部であり、さらに好ましくは2.5~80質量部であり、特に好ましくは3~70質量部であり、最も好ましくは5~50質量部である。(C)成分が上記の範囲内であることで、より一層に、高温熱時接着力が優れ、かつ、冷熱サイクル試験後も接着力を維持するエポキシ樹脂接着剤が得られるという観点で好ましい。
【0044】
<(D)成分>
本発明に使用される(D)成分のガラス転移温度が0℃以下である樹脂粒子は、本発明のその他成分と組み合わせることにより、高温熱時接着力が優れ、かつ、モータ部材に要求される冷熱サイクル試験後も接着力を維持できるという顕著な効果を有する。(D)成分のガラス転移温度は、0℃以下であり、例えば、より好ましくは-5℃以下であり、さらに好ましくは-10℃以下であり、特に好ましくは-15℃以下である。(D)成分のガラス転移温度の下限は特に制限されないが、例えば、-300℃以上であり、好ましくは-200℃以上であり、より好ましくは-170℃以上、さらに好ましくは-150℃以上、特に好ましくは-100℃以上である。なお、ガラス転移温度はDSCの測定結果のチャートのベースラインが変曲する場合、初期ベースラインと変曲点との交点とした。但し、本発明の(D)成分は(C)成分を除くものとする。
【0045】
前記(D)成分のガラス転移温度(Tg)の測定は次の通りである。アルミニウム製パン(容器)に、(D)成分の試料3mgを採取し、次に示差走査熱量計(SII社製DSC220C)を用いて昇温速度10℃/min、測定温度域-50~250℃で測定した。
【0046】
(D)成分の具体例としては、例えば、(メタ)アクリル樹脂粒子、シリコーンゴム粒子などが挙げられるが、中でも、(A)成分との相溶性に優れる(メタ)アクリル樹脂粒子が好ましい。本発明で使用することができる(D)成分の(メタ)アクリル樹脂粒子は、モノマーとして(メタ)アクリル酸または(メタ)アクリル酸エステルから重合される(メタ)アクリル樹脂粒子である。重合または共重合に際して、ブタジエン、イソプレンなどが含まれてもよい。(メタ)アクリル酸エステルの具体例としては(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸-n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸-nブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸-t-ブチル、(メタ)アクリル酸-n-ペンチル、(メタ)アクリル酸-n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸-n-ヘプチル、(メタ)アクリル酸-n-オクチル、(メタ)アクリル酸-2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸トルイル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸-2-メトキシエチル、(メタ)アクリル酸-3-メトキシブチル、(メタ)アクリル酸-2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸-2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸2-アミノエチル、γ-(メタクリロイルオキシプロピル)トリメトキシシラン、(メタ)アクリル酸のエチレンオキサイド付加物、(メタ)アクリル酸トリフルオロメチルメチル、(メタ)アクリル酸2-トリフルオロメチルエチル等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。本発明においては、これらより選択して重合させることができるが、炭化水素基を有する(メタ)アクリルモノマーを選択することが好ましい。なお、前記(メタ)アクリル酸エステルとはアクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルをいう。また、上記(D)成分の(メタ)アクリル樹脂粒子は粘度変化を考慮するとコアシェル型が好ましい。
【0047】
上記(D)成分の(メタ)アクリル樹脂粒子の具体例としては、MXシリーズ(綜研化学株式会社製)、メタブレンWシリーズ(三菱レイヨン株式会社製)、ゼフィアックシリーズ(ゼオン化成株式会社製)、ゼフィアックシリーズF-351G(アイカ工業株式会社製)などが挙げられる。また、事前に(D)成分を分散したエポキシ樹脂の具体例としては、RKBシリーズ(レジナス化成株式会社製)などが挙げられる。乳化重合を用いたエポキシ樹脂の具体例としては、アクリセットBPシリーズ(株式会社日本触媒製)などが挙げられる。また、(D)成分のシリコーンゴム粒子の具体例としては、KMP-597、KMP-598、KMP-594、X-52-875(信越化学工業株式会社製)、トレフィルシリーズ(デュポン・東レ・スペシャリティ・マテリアル株式会社)が、これらに限定されるものではない。
【0048】
上記(D)成分は、その形状が球状であることが好ましく、その場合の(D)成分の平均粒径としては、0.05~50μmが好ましく、より好ましくは0.1~20μmであり、さらに好ましくは0.1~10μmであり、特に好ましくは0.2~5μmである。
【0049】
(D)成分の含有量は、特に限定されないが、(A)成分100質量部に対して、1~100質量部の範囲が好ましく、より好ましくは2~70質量部の範囲であり、さらに好ましくは3~60質量部の範囲であり、特に好ましくは5~50質量部の範囲である。(D)成分を上記の範囲内で添加することで、より一層に、高温熱時接着力が優れ、かつ、冷熱サイクル試験後も接着力を維持するエポキシ樹脂接着剤が得られるという観点で好ましい。
【0050】
<(E)成分>
本発明の(E)成分の平均粒径10~500μmのスペーサー粒子であり、2つの物体をある空間距離に保つことができるものであればよい。(E)成分を本発明のその他成分と組み合わせることにより、高温熱時接着力が優れ、かつ、モータ部材に要求される冷熱サイクル試験後も接着力を維持できるという顕著な効果を有することから好ましい。前記(E)成分の平均粒径は、好ましくは15~300μmであり、より好ましくは20~200μmであり、さらに好ましくは50~200μmであり、特に好ましくは100~200μmの範囲である。但し、本発明の(E)成分は、(C)成分および(D)成分を除くものとする。
【0051】
前記(E)成分の材質としては、特に制限されないが、無機化合物、有機化合物のいずれでもよく、好ましくは、例えば、ガラス、シリカ、液晶ポリマー、アルミナ、酸化ジルコニウム、および窒化硼素からなる群から選択される少なくとも1以上である。前記(E)成分の形状は、特に制限されないが、球状であるのが好ましい。本発明の(E)成分の球状とは、完全な球形のみではなく、ほぼ球形、断面が楕円形などの形状が含まれる。なお、前記(E)成分は中空になっているものであってもよく、また穴の開いたビーズ形状であってもよい。
【0052】
前記(E)成分の市販品としては、特に制限されないが、例えば、J-90、J-120、HGB-253、GB731B(ポッターズ・バロティーニ株式会社製)などが挙げられる。また、これらは単独で使用されてもまたは2種以上を混合して使用されてもよい。
【0053】
前記(E)成分の添加量は特に制限されないが、例えば、前記(A)成分100質量部に対して、(E)成分は0.5~50質量部の範囲であるのが好ましく、より好ましくは、0.7~30質量部であり、さらに好ましくは1~20質量部であり、特に好ましくは1~10質量部の範囲である。(E)成分の添加量を上記の範囲内にすることで、より一層に、高温熱時接着力が優れ、かつ、モータ部材に要求される冷熱サイクル試験後も接着力を維持できるという顕著な効果を有することから好ましい。なお、エポキシ樹脂接着剤が2以上のスペーサー粒子((E)成分)を含む場合には、(E)成分の含有量は、これらの合計量を意味する。
【0054】
<(F)成分>
さらに、本発明のエポキシ樹脂接着剤に対して(F)成分として充填剤を添加することができる。(F)成分により、より一層、モータ部材に要求される冷熱サイクル試験後も接着力を維持できるという顕著な効果を有する。(F)成分としては特に制限されないが、例えば、炭酸カルシウム、窒化アルミ、カーボン粉、シリコーンゴム粉体、カオリンクレー、タルク、マイカなどが挙げられる。但し、本発明においては、(F)成分から本発明の(C)~(E)成分を除くものとする。
【0055】
本発明の(F)成分は、その形状が球状であることが好ましく、その場合の(F)成分の平均粒径は、好ましくは0.1μm以上10μm未満であり、より好ましくは0.5μm以上10μm未満であり、さらに好ましくは1μm以上10μm未満であり、特に好ましくは1~8μmの範囲である。
【0056】
前記(F)成分の添加量は特に制限されないが、例えば、前記(A)成分100質量部に対して、(F)成分は0.1~500質量部の範囲であるのが好ましく、より好ましくは0.5~300質量部であり、さらに好ましくは1~150質量部であり、特に好ましくは5~100質量部、最も好ましくは10~50質量部の範囲である。(F)成分の添加量を上記の範囲内にすることで、より一層に、高温熱時接着力が優れ、かつ、モータ部材に要求される冷熱サイクル試験後も接着力を維持できるという顕著な効果を有することから好ましい。
【0057】
<任意成分>
また本発明においては、エポキシ樹脂接着剤の特性を損なわない範囲において任意の添加成分をさらに含ませることができる。前記成分としては例えば、金、銀、銅、ニッケルなどの導電性フィラー、可塑剤、溶剤、希釈剤、シランカップリング剤等の接着性向上成分、分散剤、レベリング剤、湿潤剤、消泡剤等の界面活性剤、帯電防止剤、表面潤滑剤、防錆剤、防腐剤、粘弾性調整剤、レオロジー調整剤、着色剤、紫外線吸収剤等の老化防止剤等を含有させてもよい。
【0058】
<製造方法>
本発明のエポキシ樹脂接着剤は、従来公知の方法により製造することができる。例えば、(A)成分~(E)成分並びにその他の任意成分の所定量を配合して、プラネタリミキサー等のミキサー等の混合手段を使用して、好ましくは10~70℃の温度、より好ましくは20~50℃、特に好ましくは常温(25℃)で、好ましくは0.1~5時間、より好ましくは30分~3時間、特に好ましくは60分前後混合することにより製造することができる。
【0059】
<塗布方法>
本発明のエポキシ樹脂接着剤を基材へ塗布する方法としては、公知の接着剤の方法が用いられる。例えば、自動塗布機を用いたディスペンシング、スプレー、インクジェット、スクリーン印刷、グラビア印刷、ディッピング、スピンコートなどの方法を用いることができる。なお、エポキシ樹脂接着剤は、基材へ塗布しやすいという観点から25℃で液状であることが好ましい。
【0060】
<硬化方法>
本発明のエポキシ樹脂接着剤を加熱硬化させることで得られる硬化物もまた、本発明の一形態である。加熱に際しての温度及び時間は、十分に硬化できる条件であればよいが、例えば、40~300℃、好ましくは60~200℃、特に好ましくは80~190℃で、例えば、10秒~120分、好ましくは20秒~60分、より好ましくは30秒~10分、更に好ましくは60秒程度の条件で加熱することが適当である。好ましくは、80~190℃で20秒~30分の条件が適切である。
【0061】
<硬化物>
本発明のエポキシ樹脂接着剤を硬化させることで得られる硬化物は本発明の一様態である。本発明の硬化物のガラス転移温度(DMA法)が150℃以上であることが好ましい。具体的には、本発明のエポキシ樹脂接着剤を120℃雰囲気で60分間の加熱を行い硬化させた硬化物のガラス転移温度(DMA法、tanδのピーク)は150℃以上である。本発明の硬化物のガラス転移温度が上記の範囲内であることで、より一層に、高温熱時接着力が優れ、かつ、モータ部材に要求される冷熱サイクル試験後も接着力を維持することができる。車載モータは高温領域で使用されるため、本発明の特性を有することで高温時でも接着力を維持すること可能である。
【0062】
本発明の硬化物のガラス転移温度の測定方法は次の通りである。エポキシ樹脂接着剤を120℃雰囲気で60分間の加熱を行い硬化させ、10mm×50mm×0.5mmの短冊状の試験片を得た。この試験片を動的粘弾性測定装置 DMS6100(セイコーインスツル株式会社製)を用いて温度範囲を25~350℃、昇温速度5℃/min、周波数1Hzの引張りモードで測定を行った。ガラス転移温度(℃)はtanδのピークより求めた。
【0063】
<用途>
本発明のエポキシ樹脂接着剤は、自動車分野、鉄道車両分野、航空宇宙分野、電気電子部品分野、建築分野、土木分野等様々な分野で使用可能である。本発明のエポキシ樹脂接着剤は、高温熱時接着力が優れ、かつ、モータ部材に要求される冷熱サイクル試験後も接着力を維持することができることから、中でも好ましくは、マグネット用接着剤であり、特に好ましくはモータ用接着剤として利用可能である。また、本発明のエポキシ樹脂接着剤で接着していることを特徴とするモータもまた本発明の一様態である。
【0064】
以下に実施例によって本発明について具体的に説明するが、本発明は以下の実施例により制約されるものではない。
【実施例】
【0065】
<エポキシ樹脂接着剤の調製>
・実施例1
本発明の(A)成分として、(a1-1)成分のビスフェノールF型ジグリシジルエーテル(三菱ケミカル株式会社製jER807)60質量部と、(a2-1)成分の1分子中にエポキシ基を3官能有するアミン型エポキシ樹脂(三菱ケミカル株式会社製jER630)40質量部と、
(B)成分として(b1)成分の平均粒径10μm以下のジシアンジアミド(DDA5)8質量部と、(b2)成分の平均粒径6μmのアダクト型潜在性硬化剤(株式会社T&K TOKA製フジキュアFXE-1000)6質量部と、
(C)成分として、(c1)成分のDSC測定によるガラス転移温度が109℃であり、平均粒径0.6μmのスチレン・ジビニルベンゼン共重合体製球状フィラー(松浦株式会社製ファインパールPB3006E)20質量部と、
(D)成分として、(d1)成分のDSC測定によるガラス転移温度が-22℃であり、平均粒径0.3μmである球状(メタ)アクリル樹脂(アイカ工業株式会社製ゼフィアックF-351G)20質量部と、
(E)成分として、(e1)成分の平均粒径 170μmのガラス製ビーズ状スペーサー粒子(ポッターズ・バロティーニ株式会社製J-90)5質量部と、
充填剤として、平均粒径3.6μmの炭酸カルシウム30質量部と、
を添加し、25℃にてミキサーで60分混合し、エポキシ樹脂接着剤である実施例1を得た。
【0066】
・実施例2
実施例1において、(a2-1)成分を(a2-2)成分の1分子中にエポキシ基を4官能有するアミン型エポキシ樹脂(三菱ケミカル株式会社製jER604)に変更した以外は、実施例1と同様にして調製し、エポキシ樹脂接着剤である実施例2を得た。
【0067】
・実施例3
実施例1において、(e1)成分を(e2)成分の平均粒径 100μmのガラス製ビーズ状スペーサー粒子(ポッターズ・バロティーニ株式会社製J-120)に変更した以外は、実施例1と同様にして調製し、エポキシ樹脂接着剤である実施例3を得た。
【0068】
・比較例1
実施例1において、(c1)成分、(d1)成分、(e1)成分を除いた以外は、実施例1と同様にして調製し、エポキシ樹脂接着剤である比較例1を得た。
【0069】
・比較例2
実施例1において、(d1)成分、(e1)成分を除いた以外は、実施例1と同様にして調製し、エポキシ樹脂接着剤である比較例2を得た。
【0070】
・比較例3
実施例1において、(c1)成分、(e1)成分を除いた以外は、実施例1と同様にして調製し、エポキシ樹脂接着剤である比較例3を得た。
【0071】
・比較例4
実施例1において(e1)成分を除いた以外は、実施例1と同様にして調製し、エポキシ樹脂接着剤である比較例4を得た。
【0072】
・比較例5
実施例1において(e1)成分を(e’1)成分の平均粒径5μmのガラス製ビーズ状スペーサー粒子(ポッターズ・バロティーニ株式会社製EMB-10)に変更した以外は、は、実施例1と同様にして調製し、エポキシ樹脂接着剤である比較例5を得た。
【0073】
実施例及び比較例において使用した試験法は下記の通りである。
【0074】
<(1)異種材質における引張せん断接着強さ試験>
幅25mm×長さ100mm×厚さ1.6mmのSUS304製テストピースに、実施例、比較例のエポキシ樹脂接着剤を塗布する。その後、別の幅25mm×長さ100mm×厚さ1.5mmのPBT製テストピースをオ-バーラップ面が25mm×10mmになるように貼り合わせてクリップで固定した。そして、120℃に設定した熱風乾燥炉にて30分硬化させ試験片を得た。そして、試験片を用いて25℃にて万能引張試験機(引っ張り速度10mm/min.)にてせん断接着強さ(単位はMPa)をJIS K 6850:1999に従い測定した。結果を表1に示す。
【0075】
なお、本発明においてモータ部品を接着するためには、引張せん断接着強さは、6.0MPa以上であることが好ましく、さらに好ましくは、6.5MPa以上であり、特に好ましくは7.0MPa以上である。
【0076】
<(2)冷熱サイクル性試験後の引張せん断接着強さ試験>
上記の異種材質における引張せん断接着強さ試験にて用いた試験片を用いて冷熱サイクル試験(1サイクル:-40℃×30分、125℃×30分)を200サイクル行った。その後、冷熱サイクル環境試験後の試験片を用いて25℃にて万能引張試験機(引っ張り速度10mm/min.)にてせん断接着強さ(単位はMPa)をJIS K 6850:1999に従い測定した。結果を表1に示す。
【0077】
なお、本発明においてモータ部品を接着するためには、冷熱サイクル性試験後の引張せん断接着強さは、4.0MPa以上であることが好ましく、さらに好ましくは、4.5MPa以上であり、特に好ましくは5.5MPa以上である。
【0078】
【0079】
表1の実施例1~3の結果より、本発明のエポキシ樹脂接着剤は、冷熱サイクル試験後も接着力を維持することができることを確認した。一方で、本発明の(C)~(E)成分を含まない比較例1は、冷熱サイクル試験後の接着力が劣る結果であった。また、本発明の(D)成分と(E)成分を含まない比較例2は、冷熱サイクル試験後の接着力が劣る結果であった。また、本発明の(C)成分と(E)成分を含まない比較例3は、冷熱サイクル試験後の接着力が劣る結果であった。また、本発明の(E)成分を含まない比較例4は、冷熱サイクル試験後の接着力が劣る結果であった。また、本発明の(E)成分の代わりに平均粒径が小さいスペーサー粒子を用いた比較例5は、冷熱サイクル試験後の接着力が劣る結果であった。
【0080】
さらに、(3)SPCC-SD/SPCC-SD 引張せん断接着強さ試験(初期)、(4)SPCC-SD/SPCC-SD 高温熱時張せん断接着強さ試験を行った。
【0081】
<(3)SPCC-SD/SPCC-SD 引張せん断接着強さ試験(初期)>
幅25mm×長さ100mm×厚さ1.6mmのSPCC-SD製テストピースに、実施例1~3、比較例5のエポキシ樹脂接着剤を塗布する。その後、別の幅25mm×長さ100mm×厚さ1・6mmのSPCC-SD製テストピースをオ-バーラップ面が25mm×10mmになるように貼り合わせてクリップで固定した。そして、120℃に設定した熱風乾燥炉にて30分硬化させ試験片を得た。そして、試験片を用いて25℃にて万能引張試験機(引っ張り速度10mm/min.)にてせん断接着強さ(単位はMPa)をJIS K 6850:1999に従い測定した。結果は、実施例1が23.2MPa、実施例2が26.9MPa、実施例3が24.1MPa、比較例5が22.0MPaであった。なお、本発明においてモータ部品を接着するためには、SPCC-SD/SPCC-SD 引張せん断接着強さは、10.0MPa以上であることが好ましく、さらに好ましくは、15.0MPa以上であり、特に好ましくは20.0MPa以上である。
【0082】
<(4)SPCC-SD/SPCC-SD 高温熱時張せん断接着強さ試験>
幅25mm×長さ100mm×厚さ1.6mmのSPCC-SD製テストピースに、実施例1~3、比較例5のエポキシ樹脂接着剤を塗布する。その後、別の幅25mm×長さ100mm×厚さ1.6mmのSPCC-SD製テストピースをオ-バーラップ面が25mm×10mmになるように貼り合わせてクリップで固定した。そして、チャンバーを備えた万能引張試験機(引っ張り速度10mm/min.)を使用して、150℃環境下で、上記の試験片を用いてせん断接着強さ(単位はMPa)をJIS K 6850:1999に従い測定した。結果は、実施例1が12.4MPa、実施例2が14.5MPa、実施例3が12.6MPa、比較例5が11.7MPaであった。
【0083】
なお、本発明において車載モータ部品を接着するためには、SPCC-SD/SPCC-SD 高温熱時張せん断接着強さは、3.0MPa以上であることが好ましく、さらに好ましくは、5.0MPa以上であり、特に好ましくは10.0MPa以上である。
【0084】
さらに、(5)硬化物のガラス転移温度の試験、粘度測定を行った。
【0085】
<(5)硬化物のガラス転移温度測定>
上記実施例1~3、比較例5の各エポキシ樹脂接着剤を120℃雰囲気で60分間の加熱を行い硬化させ、10mm×50mm×0.5mmの短冊状の試験片を得た。この試験片を動的粘弾性測定装置DMS6100(株式会社日立ハイテクサイエンス製)を用いて温度範囲を25~350℃、昇温速度5℃/min、周波数1Hzの引張りモードで測定を行った。ガラス転移温度(℃)はtanδのピークより求めた。実施例1~3、比較例5の各エポキシ樹脂接着剤の硬化物のガラス転移温度はすべて150℃以上であることが確認された。
【0086】
<(6)粘度測定>
実施例1~3のエポキシ樹脂接着剤を用いて粘度を評価した。粘度測定は、EHD型粘度計(東機産業株式会社製TV-33)を用いて粘度(Pa・s)を25℃で測定した。測定条件は以下の通りである。粘度は低いほどモータ部品などを接着する際の塗布作業性に優れる。特に本発明において粘度は、250Pa・s未満であることが好ましい。実施例1~3のエポキシ樹脂接着剤はすべて250Pa・s未満であり液状であることが確認された。
【0087】
[測定条件]
コーンローター:3°×R14
回転速度:0.5rpm
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明のエポキシ樹脂接着剤は高温熱時接着力が優れ、かつ、モータ部材に要求される冷熱サイクル試験後も接着力を維持することから有用であり、モータ用接着剤などの用途など広い分野に適用可能であることから産業上有用である。