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<図1>
  • 特許-ヘッドアップディスプレイ装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-05
(45)【発行日】2023-12-13
(54)【発明の名称】ヘッドアップディスプレイ装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 27/01 20060101AFI20231206BHJP
   B60K 35/00 20060101ALI20231206BHJP
   C03C 27/12 20060101ALI20231206BHJP
【FI】
G02B27/01
B60K35/00 A
C03C27/12 Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020558148
(86)(22)【出願日】2019-10-10
(86)【国際出願番号】 JP2019039955
(87)【国際公開番号】W WO2020105306
(87)【国際公開日】2020-05-28
【審査請求日】2022-09-05
(31)【優先権主張番号】P 2018217237
(32)【優先日】2018-11-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002200
【氏名又は名称】セントラル硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】泉谷 健介
(72)【発明者】
【氏名】森 直也
(72)【発明者】
【氏名】中村 洋貴
【審査官】佐藤 洋允
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-158883(JP,A)
【文献】特開平06-040271(JP,A)
【文献】特開2017-149604(JP,A)
【文献】特表平04-502525(JP,A)
【文献】特表2016-519774(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 27/01
B60K 35/00
C03C 27/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体に搭載され、投影光の投影部での反射像に基づく虚像を前記移動体の乗員に視認させる、へッドアップディスプレイ装置であって、
前記投影部は、中間膜及び前記中間膜を介して対向して配置された、前記移動体の室外側に配置される第一ガラス板と、前記移動体の室内側に配置される第二ガラス板とを備え、
前記第一ガラス板は、前記室外側に露出される第一主面と、前記第一主面の反対側の第二主面とを備え、
前記第二ガラス板は、前記室内側に露出される第四主面と、前記第四主面の反対側の第三主面とを備え、
前記第一ガラス板と、前記第二ガラス板とは、表面に錫が検出される錫面と、前記錫面よりも表面の錫濃度が低い非錫面とを備え、
前記第四主面は、非錫面が配置されており、
前記虚像は、前記第四主面に形成された反射像に基づき、
前記投影光はS偏光とP偏光とを含み、
前記投影光として、S偏光とP偏光とが同割合の混合光を使用した際に、
前記投影光において、波長400nm~500nm未満内の第一最大ピーク光の強度が、波長500nm~700nm内の第二最大ピーク光の強度の、1.25倍~2.5倍であり、
前記第四主面において、前記第一最大ピーク光となる波長での反射率は、前記第二最大ピーク光となる波長での反射率よりも大きく、その差が0.15%以下である、
前記ヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項2】
移動体に搭載され、投影光の投影部での反射像に基づく虚像を前記移動体の乗員に視認させる、へッドアップディスプレイ装置であって、
前記投影部は、中間膜及び前記中間膜を介して対向して配置された、前記移動体の室外側に配置される第一ガラス板と、前記移動体の室内側に配置される第二ガラス板とを備え、
前記第一ガラス板は、前記室外側に露出される第一主面と、前記第一主面の反対側の第二主面とを備え、
前記第二ガラス板は、前記室内側に露出される第四主面と、前記第四主面の反対側の第三主面とを備え、
前記第一ガラス板と、前記第二ガラス板とは、表面に錫が検出される錫面と、前記錫面よりも表面の錫濃度が低い非錫面とを備え、
前記第四主面は、非錫面が配置されており、
前記虚像は、前記第四主面に形成された反射像に基づき、
前記投影光はS偏光からなり、
前記中間膜が半波長板を含む、又は、半波長板が前記第一ガラス板又は前記第二ガラス板に貼り付けられており、
前記投影光を、前記第一主面に対して、ブリュースター角を形成する入射角度で入射させた際に、
前記投影光において、波長400nm~500nm未満内の第一最大ピーク光の強度が、波長500nm~700nm内の第二最大ピーク光の強度の、1.25倍~2.5倍であり、
前記第四主面において、前記第一最大ピーク光となる波長での反射率は、前記第二最大ピーク光となる波長での反射率よりも大きく、その差が0.30%以下である、
前記ヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項3】
前記投影光として、S偏光とP偏光とが同割合の混合光を使用した際に、前記第四主面において、前記第一最大ピーク光となる波長での、56°で入射した際の反射率が7.5%~7.8%である、請求項1に記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項4】
前記投影光として、S偏光を使用した際に、前記第四主面において、前記第一最大ピーク光となる波長での、56°で入射した際の反射率が15.0%~15.6%である、請求項2に記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項5】
前記第二ガラス板が、ISO16293-1で規定されたガラス組成の、ソーダ石灰珪酸塩ガラスからなり、
前記ガラス組成中の鉄酸化物(Fe換算)含有量が0.2質量%~2.0質量%、鉄酸化物(FeO換算)含有量が0.1質量%~0.5質量%である、
請求項1~のいずれかに記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項6】
前記第一最大ピーク光の波長が、440nm~470nm内にあり、前記第二最大ピーク光の波長が540nm~570nm内にある、請求項1~のいずれかに記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項7】
前記投影部は、前記反射像の領域において、厚さが徐々に変動する楔角プロファイルを備える、請求項1~のいずれかに記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両や航空機などの移動体に搭載されて、乗員の前方視野内の投影部に映像を投影して乗員に視認させるようにしたヘッドアップディスプレイ(以降、HUDと表記する場合がある)装置に関する。
【背景技術】
【0002】
HUD装置の前記投影部として、移動体の前方部に設置されるウィンドシールドが用いられている。乗員は、前記投影部における投影光の反射像に基づく虚像を視認する。前記投影部では、室内側主面、室外側主面の両主面に反射像が形成され得る。前記投影光の強度が同じであれば、反射像の輝度は、室内側主面の反射像の方が高くなる。そのため、HUD装置での映像表示の輝度を優先する場合、HUD装置においては、室内側主面に形成された反射像に基づく虚像を視認できるような光学設計がなされる。
【0003】
前記投影部での、室内側主面、室外側主面の両主面での反射像の形成は、二重像として、乗員に視認され得る虚像(二重像発生の機構は、非特許文献1を参照されたい)につながる。HUD装置では、二重像を低減する方式として、楔HUD方式と、偏光HUD方式とがある。
【0004】
楔HUD方式は、前記投影部を、厚さが徐々に変動する楔角プロファイルを備えるものとすることで、乗員からみて室内側主面に形成された反射像に基づく虚像と、室外側主面に形成された反射像に基づく虚像とが一致するように、投影光の光路が調整される(二重像低減の機構は、非特許文献1を参照されたい)。
【0005】
また、偏光HUD方式の二重像低減は、次のような機構でなされている。前記投影部を、室内側に配置されるガラス等からなる第一透光板と、室外側に配置される第二透光板と、前記第一透光板と前記第二透光板との間に配置される半波長板とを備える積層部材から構成し、前記積層部材の各材料は、可視光領域での屈折率が同等になるように調整されたものとする。そして、前記投影部に対して、投影光がブリュースター角で入射される。
尚、ISO16293-1で規定されているソーダ石灰珪酸塩ガラスの組成物からなるフロートガラス板に対する光入射では、ブリュースター角は、56°となる。
【0006】
S偏光からなる投影光により、前記第一透光板の室内側主面に前記反射像が形成される。そして、前記投影部を通過する投影光は半波長板によってP偏光に変換される。該P偏光は、前記第二透光板の室外側主面に達したときは、該主面で反射されることなく、室外側へと出射される。前記乗員は、前記第一透光板の室内側主面に形成された、S偏光の反射像に基づく虚像を視認する。
他方で、前記反射像の輝度を改善するために、前記投影光を照射する映像部の光源としてLEDが使用されてきている(例えば、特許文献1~4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2007-87792号公報
【文献】特開2010-177224号公報
【文献】特開2011-90976号公報
【文献】特開2016-180922号公報
【非特許文献】
【0008】
【文献】「新型アクティブドライビングディスプレイの開発」、マツダ技法、No.33(2016)、60頁-65頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
投影光の高輝度化は、可視光線の中で最も強いエネルギーを持つ光帯、所謂、ブルーライトの強度増加をもたらす。特に、映像部の光源としてLED、特には白色LEDや、レーザー光が使用される場合、それは顕著に現れる。表示装置からのブルーライトは、表示装置の視認者の目の疲れを促進する効果がある。
【0010】
前記楔HUD方式と、前記偏光HUD方式の場合、視認者が視認する表示は投影部の室内側主面又は室外側主面に形成される反射像に基づくので、ブルーライトが乗員に与える影響は、スマートフォンやテレビジョンなどのその他一般の表示装置の場合よりも小さいと言えるかもしれない。しかしながら、移動体に搭載される、HUD装置の視認者は、主として、移動体を運転する乗員であり、HUD装置の映像を視認する時間は比較的長いものとなることから、ブルーライトが乗員に与える影響を軽視することはできない。
【0011】
以上から、本発明では、ブルーライトが乗員に与える影響が改善される、HUD装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
移動体に搭載され、投影光の投影部での反射像に基づく虚像を移動体の乗員に視認させる、へッドアップディスプレイ装置において、投影部は、中間膜及び中間膜を介して対向して配置された、移動体の室外側に配置される第一ガラス板と、前移動体の室内側に配置される第二ガラス板とを備えるものが使用される。
第一ガラス板及び第二ガラス板には、通常、フロート法で製造されたガラス板(以下、「フロートガラス板」と表記される場合有り)が使用される。フロートガラス板は、その製造過程で、溶融された錫からなる、錫浴上で板状に成形される。そのため、フロートガラス板の主面には、その製造過程で錫浴に接した面である錫面と、該錫面とは反対側となる面の非錫面とがある。
【0013】
本発明者は、フロートガラス板の錫面での可視光反射率が、非錫面での可視光反射率よりも高くなり、フロートガラス板の入射面側で明確な差となって生じることを見出した。本発明の実施形態に係るヘッドアップディスプレイ装置は、フロートガラスの錫面での可視光反射率と非錫面での可視光反射率の違いを活用して、なされたものである。
【0014】
すなわち、本発明の一態様の第一のヘッドアップディスプレイ装置(以下、第一のHUD装置ともいう)は、移動体に搭載され、投影光の投影部での反射像に基づく虚像を前記移動体の乗員に視認させる、へッドアップディスプレイ装置であって、
前記投影部は、中間膜及び前記中間膜を介して対向して配置された、前記移動体の室外側に配置される第一ガラス板と、前記移動体の室内側に配置される第二ガラス板とを備え、
前記第一ガラス板は、前記室外側に露出される第一主面と、前記第一主面の反対側の第二主面とを備え、
前記第二ガラス板は、前記室内側に露出される第四主面と、前記第四主面の反対側の第三主面とを備え、
前記第一ガラス板と、前記第二ガラス板とは、表面に錫が検出される錫面と、前記錫面よりも表面の錫濃度が低い非錫面とを備え、
前記第四主面は、非錫面が配置されており、
前記虚像は、前記第四主面に形成された反射像に基づき、
前記投影光はS偏光とP偏光とを含み、
前記投影光として、S偏光とP偏光とが同割合の混合光を使用した際に、
前記投影光において、波長400nm~500nm未満内の第一最大ピーク光の強度が、波長500nm~700nm内の第二最大ピーク光の強度の、1.25倍~2.5倍であり、
前記第四主面において、前記第一最大ピーク光となる波長での反射率は、前記第二最大ピーク光となる波長での反射率よりも大きく、その差が0.15%以下である、ヘッドアップディスプレイ装置である。
【0015】
第一のHUD装置は、投影光としてS偏光とP偏光を含む光を使用する。
投影光としてS偏光とP偏光とが同割合の混合光を使用した際に、第一最大ピーク光となる波長の光と第二最大ピーク光となる波長の光とを比べると、第一最大ピーク光となる波長の光の反射率のほうが大きいが、第一のHUD装置では第四主面を非錫面とすることによってその反射率の差が0.15%以下に抑えられている。
第一最大ピーク光となる波長の光はブルーライトに相当する光であるので第一最大ピーク光となる波長の光の反射率が抑えられているということは、ブルーライトが乗員に与える影響が改善されることを意味する。このことは、高輝度化されたフルカラーの投影光に基づく投影部での反射像において、青色光が強調されることが抑制されることでもあり、ひいては、反射像での赤色、緑色、青色のバランスを高め、反射像に基づく虚像の映像品質を高めることにつながる。
【0016】
また、本発明の別態様の第二のヘッドアップディスプレイ装置(以下、第二のHUD装置ともいう)は、移動体に搭載され、投影光の投影部での反射像に基づく虚像を前記移動体の乗員に視認させる、へッドアップディスプレイ装置であって、
前記投影部は、中間膜及び前記中間膜を介して対向して配置された、前記移動体の室外側に配置される第一ガラス板と、前記移動体の室内側に配置される第二ガラス板とを備え、
前記第一ガラス板は、前記室外側に露出される第一主面と、前記第一主面の反対側の第二主面とを備え、
前記第二ガラス板は、前記室内側に露出される第四主面と、前記第四主面の反対側の第三主面とを備え、
前記第一ガラス板と、前記第二ガラス板とは、表面に錫が検出される錫面と、前記錫面よりも表面の錫濃度が低い非錫面とを備え、
前記第四主面は、非錫面が配置されており、
前記虚像は、前記第四主面に形成された反射像に基づき、
前記投影光はS偏光からなり、
前記投影光を、前記第一主面に対して、ブリュースター角を形成する入射角度で入射させた際に、
前記投影光において、波長400nm~500nm未満内の第一最大ピーク光の強度が、波長500nm~700nm内の第二最大ピーク光の強度の、1.25倍~2.5倍であり、
前記第四主面において、前記第一最大ピーク光となる波長での反射率は、前記第二最大ピーク光となる波長での反射率よりも大きく、その差が0.30%以下である、ヘッドアップディスプレイ装置である。
【0017】
第二のHUD装置は、投影光としてS偏光からなる光を使用する。
投影光としてS偏光からなる光を使用した際に、第一最大ピーク光となる波長の光と第二最大ピーク光となる波長の光とを比べると、第一最大ピーク光となる波長の光の反射率のほうが大きいが、第二のHUD装置では第四主面を非錫面とすることによってその反射率の差が0.30%以下に抑えられている。
第一最大ピーク光となる波長の光はブルーライトに相当する光であるので第一最大ピーク光となる波長の光の反射率が抑えられているということは、ブルーライトが乗員に与える影響が改善されることを意味する。このことは、高輝度化されたフルカラーの投影光に基づく投影部での反射像において、青色光が強調されることが抑制されることでもあり、ひいては、反射像での赤色、緑色、青色のバランスを高め、反射像に基づく虚像の映像品質を高めることにつながる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の実施形態に係るHUD装置は、ブルーライトに相当する光である第一最大ピーク光となる波長の光の反射率が抑えられているので、ブルーライトが乗員に与える影響を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施形態に係るHUD装置の概略と、該装置での光路を示す、模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施形態に係る第一のHUD装置及び本発明の実施形態に係る第二のHUD装置につき、図面を用いて説明する。
なお、以下の説明において本発明の実施形態に係る第一のHUD装置及び本発明の実施形態に係る第二のHUD装置を区別しないときは単に本発明の実施形態に係るHUD装置という。
図1は、本発明の実施形態に係るHUD装置の概略と、該装置での光路を示す、模式図である。
図1では、投影光の光路は実線で示されている。
HUD装置1において、投影部4は、中間膜44及び中間膜44を介して対向して配置された、移動体の室外側に配置される第一ガラス板41と、移動体の室内側に配置される第二ガラス板42とを備えている。
【0021】
第一ガラス板41は、室外側に露出される第一主面411と、第一主面の反対側の第二主面412とを備え、第二ガラス板42は、室内側に露出される第四主面424と、第四主面424の反対側の第三主面423とを備えている。
【0022】
投影光50は、映像部3から第四主面424に照射され、第四主面424には第一反射像が形成される。乗員6は第一反射像に基づく光路51の延長上にある虚像511を観察する。
【0023】
本発明の実施形態に係るHUD装置は、第一反射像に基づく虚像を観察するように光学設計されたものである。このようなHUD装置としては、楔HUD方式のもの、S-HUD方式が例示される。これらの具体的な構成は、後段にて詳述される。
【0024】
第一ガラス板41及び第二ガラス板42は、表面に錫が検出される錫面と、錫面よりも表面の錫濃度が低い非錫面とを備える。
第一ガラス板41及び第二ガラス板42は、フロートガラス板、好ましくはISO16293-1で規定されているソーダ石灰珪酸塩ガラスの組成物からなるフロートガラス板が使用されることが好ましい。フロートガラス板は、その製造過程で、溶融された錫からなる、錫浴上で溶融ガラス素地を板状に成形することで得られる。そのため、フロートガラス板の主面には、その製造過程で、錫浴に接した面である錫面と、該錫面とは反対側となる面の非錫面とがある。溶融ガラス素地を板状に成形する過程で、雰囲気中に存在する酸素は、錫浴に溶解する、または、錫と反応して酸化錫を形成する。錫浴中の錫と酸素又は酸化錫の一部は、ガラス素地の錫浴と接する面に取り込まれ、フロートガラス板の主面の一つに錫面が形成される。錫面とは反対側の主面が非錫面となる。
そして、第四主面は、非錫面が配置されている。
【0025】
ガラス板の錫面、非錫面は次の方法で見分けることができる。錫面と非錫面とでは、表面錫量が異なっており、表面錫量は、蛍光X線法によって測定することができる。
表面錫量とは、ガラス板の表面から厚み方向に数十μmに存在するSnの量(単位はppm)のことである。蛍光X線法では、予め湿式化学分析法にて表面錫量が測定された標準試料の蛍光X線強度を求め、その蛍光X線強度と表面錫量との関係から検量線が得られる。あるフロートガラス板主面の蛍光X線強度と、検量線との対比から表面錫量が求められる。フロートガラス板の錫面の表面錫量は、10ppm以上(非錫面の表面錫量は10ppmには到達しない)なので、フロートガラス板の主面の表面錫量を求めることで、フロートガラス板の主面が錫面か、非錫面であるかを見分けることができる。
【0026】
錫面の表面錫量は、溶融ガラス素地を板状に成形する過程で、雰囲気中の水素や窒素などのガスの流量、濃度を調整することや、溶融ガラス素地の温度や、該素地の錫浴上の滞留時間を調整することで、調整することができる。
一般的に、雰囲気中が還元性の雰囲気であるほど、表面錫量は低下する傾向にある。
また、溶融ガラス素地の温度が高いほど、該素地の錫浴上の滞留時間が長いほど、表面錫量は高くなる傾向にある。
【0027】
錫面の表面錫量は、ガラス板主面の可視光反射率に影響するので、10ppm~300ppmであることが好ましく、30ppm~160ppmであることがより好ましく、40ppm~120ppmであることがさらに好ましい。
【0028】
他方で、非錫面の表面錫量は、可視光反射率を低くするために、10ppm未満であることが好ましい。より好ましくは、5ppm以下、さらに好ましくは2ppm以下であることが好ましい。さらには、測定限界以下の量、すなわち0ppmであることがより好ましい。
【0029】
以下に、本発明の実施形態に係るヘッドアップディスプレイ装置に使用される投影部の好適な形態を実施するための構成及び材料について説明する。
投影部は、中間膜を第一ガラス板及び第二ガラス板で挟持して作製される合わせガラスである。また、S-HUD方式のHUD装置の場合は、投影部に半波長板が配置されている。
【0030】
<ガラス板>
第一ガラス板及び第二ガラス板としては、フロート法で製造されたガラス板を好適に用いることができる。ガラス板の材質としては、ISO16293-1で規定されているようなソーダ石灰珪酸塩ガラスの他、アルミノシリケートガラスやホウケイ酸塩ガラス、無アルカリガラス等の公知のガラス組成のものを使用することができる。
これらの中でも、ガラス組成中の鉄酸化物(Fe換算)含有量が0.2質量%~2.0質量%、鉄酸化物(FeO換算)含有量が0.1質量%~0.5質量%であるガラス(グリーンガラス)が好ましい。グリーンガラスの場合、本発明の実施形態に係るHUD装置の効果が顕著に発揮されやすい。
ガラス板の厚さは、約2mmtのものを使うことが好ましいが、軽量化のためにこれよりも薄い厚さのものを用いてもよい。
【0031】
曲面形状が必要とされる場合には、ガラス板を軟化点以上に加熱した後、モールドによるプレスや自重による曲げなどで2枚が同じ面形状となるように成形し、ガラスを冷却する。また、厚さに傾斜を備えたガラス板を用いることもできる。
また、楔HUD方式に用いる場合には、厚さに傾斜があるガラス板を用いることができる。
【0032】
<中間膜>
中間膜としては樹脂中間膜を用いることができ、樹脂中間膜としては、熱可塑性の透明なポリマーを用いるのが好ましい。ポリマーとして、ポリビニルブチラール(PVB)、エチレン酢酸ビニル(EVA)、アクリル樹脂(PMMA)、ウレタン樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、シクロオレフィンポリマー(COP)等を使用することができる。
通常、樹脂中間膜の表面には、合わせガラスへの一体化加工時に発生する脱気不良に起因する失透や泡欠陥が生じないように、凹凸状のエンボス加工がなされており、本発明の実施形態に係るHUD装置においてもエンボス加工がなされた樹脂中間膜を用いることができる。
【0033】
また、樹脂中間膜には、その一部が着色したもの、遮音機能を有する層をサンドイッチしたもの、厚さに傾斜があるものなどが使用できる。また、樹脂中間膜に紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、抗酸化剤、帯電防止剤、熱安定剤、着色剤、接着調整剤等を適宜添加配合したものでも良い。また、樹脂中間膜は、テンションをかけて延伸したものでも、傘状の加圧ロールの間に通して扇型に変形したものでも良い。
また、楔HUD方式に用いる場合には、厚さに傾斜がある中間膜を用いることができる。
【0034】
<半波長板>
半波長板としては、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエーテルサルフォン、シクロオレフィンポリマー等のプラスチックフィルムを一軸又は二軸延伸した位相差素子や、液晶ポリマーを特定方向に配向させて配向状態を固定化した位相差素子を用いることができる。
ポリマーを配向させる方法としては、例えば、ポリエステルフィルムやセルロースフィルムなどの透明プラスチックフィルムをラビング処理する方法や、ガラス板やプラスチックフィルム上に配向膜を形成し、上記配向膜をラビング処理又は光配向処理する方法などが挙げられる。配向を固定化する方法としては、例えば、紫外線硬化型の液晶ポリマーを光重合開始剤の存在下、紫外線照射して重合反応によって硬化させる方法や、加熱により架橋させる方法や、高温状態で配向した後に急冷する方法などが挙げられる。
【0035】
液晶ポリマーとして使用される化合物は、特定方向へ配向する際、液晶性を示す化合物であれば特に限定されない。例えば、液晶状態でねじれネマティック配向し、液晶転移点以下ではガラス状態となるものを使用することができ、光学活性なポリエステル、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエステルイミドなどの主鎖型液晶ポリマー、光学活性なポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリマロネート、ポリシロキサン、ポリエーテルなどの側鎖型液晶ポリマーや重合性液晶などが挙げられる。また、光学活性でないこれらの主鎖型あるいは側鎖型ポリマーに、他の低分子あるいは高分子の光学活性化合物を加えたポリマー組成物などを例示することができる。
半波長板は、投影部の光路内に配置されていればよく、例えば、中間膜が半波長板を含んでいてもよいし、ガラス板に接する位置に配置されても良い。
【0036】
以下に、本発明の実施形態に係るヘッドアップディスプレイ装置に使用される光源及び投影部に入射する投影光の形態について説明する。
<光源及び投影光>
映像部からの投影光としてはP偏光とS偏光とを含む投影光を使用することができる。
P偏光とS偏光とを含む投影光の例としては、あらゆる偏光をランダムに含んだもの(無偏光)、円偏光や楕円偏光、P偏光とS偏光との混合光、P偏光、S偏光でもない直線偏光などが挙げられる。
映像部としては、P偏光とS偏光とを含む投影光を照射できるプロジェクターが好適に使用される。そのようなプロジェクターの例としては、DMD投影システム方式プロジェクター、レーザー走査型MEMS投影システム方式プロジェクター、または、反射型液晶方式プロジェクターからなるものが挙げられる。
【0037】
投影光が通る経路に偏光子を配置することでP偏光とS偏光とを含む投影光をS偏光からなる投影光に変換することができる。
投影光をS偏光からなる投影光に調整することで、S-HUD方式への切り替えが行われる。
偏光子は、一つの直線偏光に対する透過窓を有し、該透過窓が投影光の進行方向に面するように配置される。
また、投影光は、投影部に対して、ブリュースター角を形成する入射角度で入射されることが好ましい。
【0038】
本発明の実施形態に係る第一のHUD装置では、投影光はS偏光とP偏光とを含む。
そして、投影光として、S偏光とP偏光とが同割合の混合光を使用した際に、投影光において、波長400nm~500nm未満内の第一最大ピーク光の強度が、波長500nm~700nm内の第二最大ピーク光の強度の、1.25倍~2.5倍であり、第四主面において、第一最大ピーク光となる波長での反射率は、第二最大ピーク光となる波長での反射率よりも大きく、その差が0.15%以下である。
なお、上記規定は、本発明の実施形態に係る第一のHUD装置で使用する投影光を「S偏光とP偏光とが同割合の混合光」に限定するものではなく、「S偏光とP偏光とが同割合の混合光」で測定したときの、第一最大ピーク光及び第二最大ピーク光の強度及び反射率を示したものである。
【0039】
本発明の実施形態に係る第二のHUD装置では、投影光はS偏光からなる。
そして、投影光を、第一主面に対して、ブリュースター角を形成する入射角度で入射させた際に、投影光において、波長400nm~500nm未満内の第一最大ピーク光の強度が、波長500nm~700nm内の第二最大ピーク光の強度の、1.25倍~2.5倍であり、第四主面において、第一最大ピーク光となる波長での反射率は、第二最大ピーク光となる波長での反射率よりも大きく、その差が0.30%以下である。
第二のHUD装置では、投影光はS偏光からなるが、映像部からの投影光の時点でS偏光からなることを必ずしも意味するものではなく、映像部からP偏光とS偏光とを含む投影光として照射された光が偏光子によりS偏光からなる投影光に変換された光であってもよい。
【0040】
なお、本発明の実施形態に係る第二のHUD装置において第一最大ピーク光となる波長での反射率と第二最大ピーク光となる波長での反射率の差を求める際には、ブリュースター角を形成する入射角度で投影光を入射させるが、これは測定条件としての入射角度を定義しているものであり、本発明の実施形態に係る第二のHUD装置で使用する投影光が投影部に対して入射する角度をブリュースター角を形成する入射角度に限定することを意味しない。
本発明の実施形態に係る第二のHUD装置で使用する投影光が投影部に対して入射する角度としては、ブリュースター角を形成する入射角度を中心にある程度の幅を持っていてもよい。
例えば、ブリュースター角±10°程度の入射角度で入射させることができる。
一例として、ブリュースター角が56°である場合、投影光を46°~66°の入射角度で入射させることができる。
【0041】
本発明の実施形態に係る第一のHUD装置及び第二のHUD装置においては、第一最大ピーク光となる波長での、56°で入射した際の反射率が7.5%~7.8%であることが好ましい。
また、第一最大ピーク光の波長が、440nm~470nm内にあり、第二最大ピーク光の波長が540nm~570nm内にあることが好ましい。
本発明の実施形態に係る第二のHUD装置においては、上記投影光として、S偏光を使用した際に、上記第四主面において、上記第一最大ピーク光となる波長での、56°で入射した際の反射率が15.0%~15.6%であることが好ましい。
【0042】
以下に、本発明の実施形態に係るヘッドアップディスプレイ装置に適用される、楔HUD方式及びS-HUD方式について説明する。
【0043】
第一のHUD装置は、楔HUD方式のものであることが好ましい。
楔HUD方式の場合、投影部が、第四主面に反射像が形成される領域において、厚さが徐々に変動する楔角プロファイルを備える。
楔HUD方式の場合、投影光の偏光に限定はなく、P偏光とS偏光とを含む投影光を使用することができる。
この場合、投影部の第四主面で反射像が形成され、移動体の乗員は、第四主面での反射像に基づく虚像を視認する。投影部の第一主面では別の反射像が形成されるが、楔角プロファイルを調整しておくことにより二つの反射像が重なるようになり、二重像が生じることが防止される。
【0044】
第二のHUD装置は、楔HUD方式、または、S-HUD方式が適用できる。楔HUD方式の場合、第一のHUD方式で述べられた態様と比べると、投影光がS偏光からなるものとする以外は、他は同じ構成となる。
S-HUD方式の場合、投影光はS偏光からなり、中間膜が半波長板を含むことが好ましい。そして、S偏光からなる投影光を第一主面に対してブリュースター角で入射することが好ましい。この場合、投影部の第四主面で反射像が形成され、移動体の乗員は、第四主面での反射像に基づく虚像を視認する。第四主面を透過し、投影部内を進行した投影光は、半波長板で、P偏光に変換され、投影部の第一主面で反射が生じることなく、投影光はP偏光のまま室外側へ放出される。そのため、二重像が生じることが防止される。
【0045】
<合わせガラスの作製手順>
以下に、本発明の実施形態に係るヘッドアップディスプレイ装置の投影部となる合わせガラスを作製する方法の好適な一例を説明する。
ガラス板のうちの1枚を水平に置き、その上に中間膜(樹脂中間膜)を重ね、最後にもう一方のガラス板を置く。なお、樹脂中間膜としてPVBを用いる場合には、PVBの含水率を最適に保つために、作業時の温度を恒温恒湿に維持するのが好ましい。その後、サンドイッチ状に積層したガラスと樹脂中間膜との間に存在する空気を脱気しながら温度80~100℃に加熱し、予備接着を行う。空気を脱気する方法には、ガラス板と樹脂中間膜の積層物を耐熱ゴムなどでできたゴムバッグで包んで行うバッグ法、積層物のガラス板の端部のみをゴムリングで覆ってシールするリング法、積層物をロールの間に通して最外層となる2枚のガラス板の両側から加圧するロール法などがあり、いずれの方法を用いても良い。
【0046】
予備接着が終了後、バッグ法を用いた場合は積層物をゴムバッグから取り出し、リング法を用いた場合は積層物からゴムリングを取り外す。その後、積層物をオートクレーブに入れ、10~15kg/cmの高圧下で、120℃~150℃に加熱し、この条件で20~40分間、加熱・加圧処理(仕上げ接着)する。処理後、50℃以下に冷却したのちに除圧し、合わせガラスをオートクレーブから取り出す。
【0047】
楔HUD方式のHUD装置の投影部となる合わせガラスの場合は、中間膜又はガラス板の厚さに傾斜があるものが用いられる。
中間膜又はガラス板の厚さに傾斜があるものを使用することで、投影部は、反射像の領域において、厚さが徐々に変動する楔角プロファイルを備えるようにすることができる。
【0048】
S-HUD方式のHUD装置の投影部となる合わせガラスの場合は、半波長板をガラス板とガラス板との間に挟持し、中間膜に含ませるようにしたものや、ガラス板の中間膜と接する面に半波長板が貼り付けられたものが用いられる。半波長板は、反射像が形成される領域に配置されていれば良く、ガラス板と同じ大きさであっても、ガラス板よりも小さくても良い。
【実施例
【0049】
ここで、フロートガラス板の錫面、非錫面、それぞれの可視光反射率の測定結果について述べる。
下記の測定では、フロートガラス板としてクリアガラス、グリーンガラス、熱線吸収ガラス、UVカット熱線吸収ガラスの4種類のガラス板のいずれかを使用した。
各板ガラスの厚さは2mmである。
まず、各種ガラスの錫/非錫面に対してS偏光:P偏光=1:1の光を入射角40°~70°で入射した場合の反射率(裏面の反射を省いたもの)を測定し、第一最大ピーク光となる波長を450nm、第二最大ピーク光となる波長を560nmとした場合の反射率の“差”と“比”を求めた(表1を参照)。
【0050】
フロートガラス板の錫面、非錫面の可視光反射率は、380nm~780nmの波長範囲の分光反射スペクトルを求め、JIS R3106(1998年)に基づいて測定した。
但し、測定試料に対する投影光の入射角度は、40°、56°(ブリュースター角)、65°、70°に、重価係数に関わる光のスペクトルは、CIE昼光Aへと、前記JISから変更されている。
【0051】
また、可視光反射率は、測定光のガラス板への入射面(投影部4の第四主面424に相当)での空気側への反射として求めた。
入射面での空気側への分光反射スペクトルの測定時には、出射面での光の反射を抑制するために、ガラス板の出射面にブラスト加工を施した後に黒色つや消しスプレーを塗布した。
【0052】
【表1】
【0053】
また、可視光反射率の測定を合わせガラスに対しても実施した。
合わせガラスの構成は表2に示す通りとして、投影光を入射する面である第四主面が錫面の場合、非錫面の場合のそれぞれについて測定した。
測定試料に対する投影光の入射角度は、56°(ブリュースター角)とした。
なお、合わせガラスの第四主面が錫面の場合は第一主面を非錫面とし、第四主面が非錫面の場合は第一主面を錫面とした。
【0054】
【表2】
【0055】
表1及び表2に示すように、非錫面の入射・反射の場合、第一最大ピーク光となる波長(450nm)と第二最大ピーク光となる波長(560nm)での反射率の差(<C>-<D>)が0.15%以下となっている。
すなわち、ブルーライトに相当する光である第一最大ピーク光となる波長の光の反射率が低くなっていて、ブルーライトが乗員に与える影響が改善されているといえる。
一方、錫面の入射・反射の場合、第一最大ピーク光となる波長(450nm)と第二最大ピーク光となる波長(560nm)での反射率の差(<A>-<B>)が0.15%を超えていることから、ブルーライトが乗員に与える影響が大きいといえる。
【0056】
続いて、表3に示す各種ガラスの錫/非錫面に対してS偏光の光をブリュースター角である入射角56°で入射した場合の反射率(裏面の反射を省いたもの)を測定し、第一最大ピーク光となる波長を450nm、第二最大ピーク光となる波長を560nmとした場合の反射率の“差”と“比”を求めた(表3を参照)。
可視光反射率の測定を行う実験系は表1に示す実験系と同様である。
【0057】
また、可視光反射率の測定を合わせガラスに対しても実施した。
合わせガラスの構成は表4に示す通りとして、投影光を入射する面である第四主面が錫面の場合、非錫面の場合のそれぞれについて測定した。
なお、合わせガラスの第四主面が錫面の場合は第一主面を非錫面とし、第四主面が非錫面の場合は第一主面を錫面とした。
【0058】
【表3】
【0059】
【表4】
【0060】
非錫面の入射・反射の場合、第一最大ピーク光となる波長(450nm)と第二最大ピーク光となる波長(560nm)での反射率の差(<C>-<D>)が0.30%以下となっている。
すなわち、ブルーライトに相当する光である第一最大ピーク光となる波長の光の反射率が低くなっていて、ブルーライトが乗員に与える影響が改善されているといえる。
一方、錫面の入射・反射の場合、第一最大ピーク光となる波長(450nm)と第二最大ピーク光となる波長(560nm)での反射率の差(<A>-<B>)が0.30%を超えていることから、ブルーライトが乗員に与える影響が大きいといえる。
【0061】
次に、表5に示された各合わせガラスを投影部4とした。そして、該投影部4と、第一最大ピーク光の強度は、第二最大ピーク光の強度の2倍である、S偏光からなるフルカラーの投影光を照射する映像部3とで、HUD装置1が構成された。HUD装置1では、合わせガラス内の半波長板にて、投影部4に入射されたS偏光がP偏光に変換される。また、該HUD装置1では、投影光は、投影部4に対して、ブリュースター角である入射角56°で入射された。さらには、表5の合わせガラスは、投影光の錫面入射・反射、投影光の非錫面入射・反射が行えるように、作製された。
表5に各合わせガラス(投影部4)に投影された映像を観察した結果を述べる。「非錫面入射・反射」では、映像の赤色、緑色、青色のバランスが改善されている。このことから、本発明の実施形態に係るHUD装置によって、ブルーライトが乗員に与える影響が改善されることが理解される。
【0062】
【表5】
【産業上の利用可能性】
【0063】
自動車などの車両のフロントガラス部に投影される投影光に含まれるブルーライトが乗員に与える影響が改善されるHUD装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0064】
1 HUD装置
3 映像部
4 投影部
6 乗員
41 第一ガラス板
411 第一主面
412 第二主面
42 第二ガラス板
423 第三主面
424 第四主面
44 中間膜
50 投影光
51 第一反射像に基づく光路
511 第一反射像に基づく虚像
図1