(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-05
(45)【発行日】2023-12-13
(54)【発明の名称】ドアトリム、及び、車両
(51)【国際特許分類】
B60J 5/00 20060101AFI20231206BHJP
【FI】
B60J5/00 Z
(21)【出願番号】P 2022544541
(86)(22)【出願日】2021-08-20
(86)【国際出願番号】 JP2021030578
(87)【国際公開番号】W WO2022044994
(87)【国際公開日】2022-03-03
【審査請求日】2022-11-08
(32)【優先日】2020-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】000220066
【氏名又は名称】テイ・エス テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】弁理士法人大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大矢 美奈子
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 生佳
(72)【発明者】
【氏名】木幡 耕平
【審査官】上谷 公治
(56)【参考文献】
【文献】実開昭63-000006(JP,U)
【文献】実開昭61-131309(JP,U)
【文献】特開2008-179264(JP,A)
【文献】実開平07-024615(JP,U)
【文献】特開平02-117446(JP,A)
【文献】特開2005-280531(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60J 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のドアに設けられるドアトリムであって、
前記車両に搭載された空調装置から送出される空気が吸い込むべく開口する吸込口と、
前記吸込口に一端側において接続された筒状のダクトと、
前記ダクトの他端側に接続され、前記空気を車室内へ吹出させるべく開口する吹出口とを有し、
前記ダクトの内部には、前記ダクト内の前記空気に芳香剤を供給する芳香剤供給装置が設けられ
、
前記ダクトは、前記吸込口に一端側に接続された筒状の上流側筒部と、前記上流側筒部の他端側に一端側において接続された2つの下流側筒部とを有し、
前記ダクトには、前記上流側筒部に送り込まれた前記空気の一方の前記下流側筒部への流れを遮断する遮断装置が設けられ、
前記下流側筒部の他端側はそれぞれ前記吹出口に接続され、
前記一方の前記下流側筒部に前記芳香剤供給装置が設けられ、
前記遮断装置は、前記下流側筒部の前記一方及び前記上流側筒部の間を選択的に遮断可能な扉体と、前記扉体を駆動する扉体駆動装置とを備えるドアトリム。
【請求項2】
前記遮断装置は、前記上流側筒部に送り込まれた前記空気の、他方の前記下流側筒部への流れを遮断可能である
請求項1に記載のドアトリム。
【請求項3】
前記芳香剤供給装置は、車内側から前記芳香剤を含むカートリッジを挿入可能な複数の挿入室を備えた箱体と、前記挿入室に送入された前記カートリッジを選択的に前記空調装置から供給された前記空気に露出させるべく、前記挿入室を選択的に開閉する開閉装置とを備える
請求項1又は請求項2に記載のドアトリム。
【請求項4】
前記箱体は前記挿入室それぞれの上流側に設けられた上流側開口と、及び、前記挿入室それぞれの下流側に設けられた下流側開口とを有し、
前記開閉装置は、前記上流側開口それぞれを選択的に開閉する上流側ルーバと、前記上流側開口それぞれを選択的に開閉する下流側ルーバと、前記上流側ルーバ、及び、前記上流側ルーバに対応する前記下流側ルーバを連動して開閉動作させるモータと、を備える
請求項3に記載のドアトリム。
【請求項5】
前記ドアに結合されるドアトリム本体を有し、
前記箱体は前記ドアトリム本体の車外側の側面に結合され、
前記ドアトリム本体には前記箱体に整合する位置に車幅方向に貫通する箱体開口と、前記箱体開口を開閉する蓋体とが設けられ、
前記箱体の車内側の側面には前記挿入室それぞれに対応する位置に、前記挿入室に連通し、前記カートリッジが挿入可能なカートリッジ開口が設けられている
請求項4に記載のドアトリム。
【請求項6】
前記箱体には、挿入された前記カートリッジを係止する係止部が設けられている
請求項5に記載のドアトリム。
【請求項7】
車室側に膨出し、且つ、前後に延在するアームレストと、前記アームレストの下方に接するように設けられ、車外側に膨出するドアポケットとを有し、
前記一方の前記下流側筒部は、前記アームレストの内部と通過し、
前記芳香剤供給装置は、前記芳香剤を収容するボトルと、前記ドアポケットの内部に設けられ、前記一方の前記下流側筒部に連通するように前記ボトルが連結可能な連結部と、を備える
請求項1に記載のドアトリム。
【請求項8】
請求項1~請求項7のいずれか1項に記載の前記ドアトリムが設けられた前記ドアを備えた車両であって、
前記車室内に配置されたシートの着座者の側からシート側に向かって排気可能な排気装置と、
前記排気装置を制御可能であり、且つ、前記空調装置に接続された制御装置と、を有し、
前記制御装置は、前記空調装置が駆動している場合に、前記排気装置を駆動させる車両。
【請求項9】
請求項1又は請求項2に記載の前記ドアトリムが設けられた前記ドアを備えた車両であって、
前記車室内に配置されたシートの着座者の臭いを検出する臭気センサと、
前記臭気センサの検出結果に基づいて、前記遮断装置を駆動する制御装置とを有する車両。
【請求項10】
車両のドアに設けられるドアトリムであって、
前記車両に搭載された空調装置から送出される空気が吸い込むべく開口する吸込口と、
前記吸込口に一端側において接続された筒状のダクトと、
前記ダクトの他端側に接続され、前記空気を車室内へ吹出させるべく開口する吹出口とを有し、
前記ダクトの内部には、前記ダクト内の前記空気に芳香剤を供給する芳香剤供給装置が設けられ、
前記芳香剤供給装置は、車内側から前記芳香剤を含むカートリッジを挿入可能な複数の挿入室を備えた箱体と、前記挿入室に送入された前記カートリッジを選択的に前記空調装置から供給された前記空気に露出させるべく、前記挿入室を選択的に開閉する開閉装置とを備えるドアトリム。
【請求項11】
車両のドアに設けられるドアトリムであって、
前記車両に搭載された空調装置から送出される空気が吸い込むべく開口する吸込口と、
前記吸込口に一端側において接続された筒状のダクトと、
前記ダクトの他端側に接続され、前記空気を車室内へ吹出させるべく開口する吹出口とを有し、
前記ダクトの内部には、前記ダクト内の前記空気に芳香剤を供給する芳香剤供給装置が設けられ、
前記ダクトは、前記吸込口に一端側に接続された筒状の上流側筒部と、前記上流側筒部の他端側に一端側において接続された2つの下流側筒部とを有し、
前記ダクトには、前記上流側筒部に送り込まれた前記空気の一方の前記下流側筒部への流れを遮断する遮断装置が設けられ、
前記下流側筒部の他端側はそれぞれ前記吹出口に接続され、
前記一方の前記下流側筒部に前記芳香剤供給装置が設けられ、
車室側に膨出し、且つ、前後に延在するアームレストと、前記アームレストの下方に接するように設けられ、車外側に膨出するドアポケットとを有し、
前記一方の前記下流側筒部は、前記アームレストの内部と通過し、
前記芳香剤供給装置は、前記芳香剤を収容するボトルと、前記ドアポケットの内部に設けられ、前記一方の前記下流側筒部に連通するように前記ボトルが連結可能な連結部と、を備えるドアトリム。
【請求項12】
ドアトリムが設けられたドアと、空調装置とを備えた車両であって、
前記ドアトリムは、前記空調装置から送出される空気が吸い込むべく開口する吸込口と、前記吸込口に一端側において接続された筒状のダクトと、前記ダクトの他端側に接続され、前記空気を車室内へ吹出させるべく開口する吹出口とを有し、
前記ダクトの内部には、前記ダクト内の前記空気に芳香剤を供給する芳香剤供給装置が設けられ、
前記ダクトは、前記吸込口に一端側に接続された筒状の上流側筒部と、前記上流側筒部の他端側に一端側において接続された2つの下流側筒部とを有し、
前記ダクトには、前記上流側筒部に送り込まれた前記空気の一方の前記下流側筒部への流れを遮断する遮断装置が設けられ、
前記下流側筒部の他端側はそれぞれ前記吹出口に接続され、
前記一方の前記下流側筒部に前記芳香剤供給装置が設けられ、
車室内にシートの着座者の臭いを検出する臭気センサが配置され、
前記臭気センサの検出結果に基づいて、前記遮断装置を駆動する制御装置が設けられている車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両用芳香装置が設けられたドアトリム、及び、そのドアトリムを備えた車両に関する。
【背景技術】
【0002】
ドアの開閉によって自動的に車室内に芳香剤が送り出される車両用芳香装置が公知である(例えば、特許文献1)。車両用芳香装置は、フロントドアのドアトリムに設けられ、フロントドアが閉じると空気流を吹き出すポンプと、ポンプから吹出された空気流が送り込まれるベンチュリ管と、ベンチュリ管に接続され、車室に向けて開口する噴霧口を備えたノズルと、パイプを介して接続されたタンクとを備えている。タンクには、芳香剤が充填されている。
【0003】
フロントドアが閉じられると、ポンプから吹き出された空気流がベンチュリ管に送り込まれる。この際、タンク内の芳香剤がパイプを通じてタンクから吸い出され、霧となってノズルの噴霧口から車室に噴霧される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
車両用芳香装置は、車室内に芳香剤を噴霧するためのポンプが必要となるため、割高となる問題があった。
【0006】
本発明は、以上の背景に鑑み、ポンプを要することなく、車室内に芳香剤を導入可能なドアトリム、及び、そのドアトリムを備えた車両を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の一態様は、車両(1)のドア(3)に設けられるドアトリム(34)であって、前記車両に搭載された空調装置(30)から送出される空気が吸い込むべく開口する吸込口(56)と、前記吸込口に一端側において接続された筒状のダクト(42)と、前記ダクトの他端側に接続され、前記空気を車室内へ吹出させるべく開口する吹出口(32)とを有し、前記ダクトの内部には、前記ダクト内の前記空気に芳香剤を供給する芳香剤供給装置(46)が設けられている。
【0008】
この態様によれば、車両の空調装置から車室内に送出される空気に芳香剤を供給することができるため、ポンプを要することなく、車室内に芳香剤を導入することができる。
【0009】
上記の態様において、前記ダクトは、前記吸込口に一端側に接続された筒状の上流側筒部(64)と、前記上流側筒部の他端側に一端側において接続された2つの下流側筒部(66)とを有し、前記ダクトには、前記上流側筒部に送り込まれた前記空気の一方の前記下流側筒部への流れを遮断する遮断装置(44)が設けられ、前記下流側筒部の他端側はそれぞれ前記吹出口に接続され、前記一方の前記下流側筒部に前記芳香剤供給装置が設けられているとよい。
【0010】
この態様によれば、芳香剤を含まない空気が車室内に送り出される状態と、芳香剤を含む空気が車室内に送り出される状態とに、遮断装置によって切り替えることができる。
【0011】
上記の態様において、前記遮断装置は、前記下流側筒部の前記一方及び前記上流側筒部の間を選択的に遮断可能な扉体と、前記扉体を駆動する扉体駆動装置とを備えるとよい。
【0012】
この態様によれば、下流側筒部の一方を選択的に遮断することによって、車室内への芳香を停止することができる。
【0013】
上記の態様において、前記遮断装置は、前記上流側筒部に送り込まれた前記空気の、他方の前記下流側筒部への流れを遮断可能であるとよい。
【0014】
この態様によれば、下流側筒部の一方のみに空調装置からの空気が流れ込むため、他方の下流側筒部への空気の流れが遮断されない場合に比べて、効果的に芳香剤を車室に導入することができる。
【0015】
上記の態様において、車内側から前記芳香剤を含むカートリッジ(74)を挿入可能な複数の挿入室(75)を備えた箱体(76)と、前記挿入室に送入された前記カートリッジを選択的に前記空調装置から供給された前記空気に露出させるべく、前記挿入室を選択的に開閉する開閉装置とを備えるとよい。
【0016】
この態様によれば、選択的に挿入室を開閉することで、車室内に導入する香りを選択することができる。
【0017】
上記の態様において、前記箱体は前記挿入室それぞれの上流側に設けられた上流側開口(90)と、及び、前記挿入室それぞれの下流側に設けられた下流側開口とを有し、前記開閉装置は、前記上流側開口それぞれを選択的に開閉する上流側ルーバ(94)と、前記上流側開口それぞれを選択的に開閉する下流側ルーバ(96)と、前記上流側ルーバ、及び、前記上流側ルーバに対応する前記下流側ルーバを連動して開閉動作させるモータ(98)と、を備えるとよい。
【0018】
この態様によれば、挿入室を開くことで、カートリッジを下流側筒部内の空気に晒すことができる。これにより、そのカートリッジに含まれた芳香剤を下流側筒部内の空気に導入することができる。
【0019】
上記の態様において、前記ドアに結合されるドアトリム本体(40)を有し、前記箱体は前記ドアトリム本体の車外側の側面に結合され、前記ドアトリム本体には前記箱体に整合する位置に車幅方向に貫通する箱体開口(60)と、前記箱体開口を開閉する蓋体(62)とが設けられ、前記箱体の車内側の側面には前記挿入室それぞれに対応する位置に、前記挿入室に連通し、前記カートリッジが挿入可能なカートリッジ開口(82)が設けられているとよい。
【0020】
この態様によれば、車室内からカートリッジを挿入することができる。
【0021】
上記の態様において、前記箱体には、挿入された前記カートリッジを係止する係止部(83)が設けられているとよい。
【0022】
この態様によれば、意図しないカートリッジの脱落が防止できる。
【0023】
上記の態様において、車室側に膨出し、且つ、前後に延在するアームレスト(202)と、前記アームレストの下方に接するように設けられ、車外側に膨出するドアポケット(203)とを有し、前記一方の前記下流側筒部は、前記アームレストの内部と通過し、前記芳香剤供給装置は、前記芳香剤を収容するボトル(206)と、前記ドアポケットの内部に設けられ、前記一方の前記下流側筒部に連通するように前記ボトルが連結可能な連結部(208)と、を備えるとよい。
【0024】
この態様によれば、ドアポケットの内部に芳香剤を収容するボトルを配置することができるため、ドアポケットの内部の空間を有効に活用できる。
【0025】
上記ドアトリムが設けられたドアを備えた車両であって、前記車室内に配置されたシートの着座者の側からシート側に向かって排気可能な排気装置(12)と、前記排気装置を制御可能であり、且つ、前記空調装置に接続された制御装置(48)と、を有し、前記制御装置は、前記空調装置が駆動している場合に、前記排気装置を駆動させるとよい。
【0026】
この態様によれば、ドアトリムから着座者に向かう空気の流れを発生させることができる。
【0027】
上記ドアトリムが設けられたドアを備えた車両であって、前記車室内に配置されたシートの着座面の臭いを検出する臭気センサ(20A)と、前記臭気センサの検出結果に基づいて、前記遮断装置を駆動する制御装置(48)とを有するとよい。
【0028】
この態様によれば、着座面の臭いに応じて、芳香剤を車室に導入することができる。
【発明の効果】
【0029】
上記課題を解決するために、本発明の一態様は、車両のドアに設けられるドアトリムであって、前記車両に搭載された空調装置から送出される空気が吸い込むべく開口する吸込口と、前記吸込口に一端側において接続された筒状のダクトと、前記ダクトの他端側に接続され、前記空気を車室内へ吹出させるべく開口する吹出口とを有し、前記ダクトの内部には、前記ダクト内の前記空気に芳香剤を供給する芳香剤供給装置が設けられている。この態様によれば、車両の空調装置から車室内に送出される空気に芳香剤を供給することができるため、ポンプを要することなく、車室内に芳香剤を導入することができる。
【0030】
上記の態様において、前記ダクトは、前記吸込口に一端側に接続された筒状の上流側筒部と、前記上流側筒部の他端側に一端側において接続された2つの下流側筒部とを有し、前記ダクトには、前記上流側筒部に送り込まれた前記空気の一方の前記下流側筒部への流れを遮断する遮断装置が設けられ、前記下流側筒部の他端側はそれぞれ前記吹出口に接続され、前記一方の前記下流側筒部に前記芳香剤供給装置が設けられているとよい。この態様によれば、芳香剤を含まない空気が車室内に送り出される状態と、芳香剤を含む空気が車室内に送り出される状態とに、遮断装置によって切り替えることができる。
【0031】
上記の態様において、前記遮断装置は、前記下流側筒部の前記一方及び前記上流側筒部の間を選択的に遮断可能な扉体と、前記扉体を駆動する扉体駆動装置とを備えるとよい。この態様によれば、下流側筒部の一方を選択的に遮断することによって、車室内への芳香を停止することができる。
【0032】
上記の態様において、前記遮断装置は、前記上流側筒部に送り込まれた前記空気の、他方の前記下流側筒部への流れを遮断可能であるとよい。この態様によれば、下流側筒部の一方のみに空調装置からの空気が流れ込むため、他方の下流側筒部への空気の流れが遮断されない場合に比べて、効果的に芳香剤を車室に導入することができる。
【0033】
上記の態様において、車内側から前記芳香剤を含むカートリッジを挿入可能な複数の挿入室を備えた箱体と、前記挿入室に送入された前記カートリッジを選択的に前記空調装置から供給された前記空気に露出させるべく、前記挿入室を選択的に開閉する開閉装置とを備えるとよい。この態様によれば、選択的に挿入室を開閉することで、車室内に導入する香りを選択することができる。
【0034】
上記の態様において、前記箱体は前記挿入室それぞれの上流側に設けられた上流側開口と、及び、前記挿入室それぞれの下流側に設けられた下流側開口とを有し、前記開閉装置は、前記上流側開口それぞれを選択的に開閉する上流側ルーバと、前記上流側開口それぞれを選択的に開閉する下流側ルーバと、前記上流側ルーバ、及び、前記上流側ルーバに対応する前記下流側ルーバを連動して開閉動作させるモータと、を備えるとよいこの態様によれば、挿入室を開くことで、カートリッジを下流側筒部内の空気に晒すことができる。これにより、そのカートリッジに含まれた芳香剤を下流側筒部内の空気に導入することができる。
【0035】
上記の態様において、前記ドアに結合されるドアトリム本体を有し、前記箱体は前記ドアトリム本体の車外側の側面に結合され、前記ドアトリム本体には前記箱体に整合する位置に車幅方向に貫通する箱体開口と、前記箱体開口を開閉する蓋体とが設けられ、前記箱体の車内側の側面には前記挿入室それぞれに対応する位置に、前記挿入室に連通し、前記カートリッジが挿入可能なカートリッジ開口が設けられているとよい。この態様によれば、車室内からカートリッジを挿入することができる。
【0036】
上記の態様において、前記箱体には、挿入された前記カートリッジを係止する係止部が設けられているとよい。この態様によれば、意図しないカートリッジの脱落が防止できる。
【0037】
上記の態様において、車室側に膨出し、且つ、前後に延在するアームレストと、前記アームレストの下方に接するように設けられ、車外側に膨出するドアポケットとを有し、前記一方の前記下流側筒部は、前記アームレストの内部と通過し、前記芳香剤供給装置は、前記芳香剤を収容するボトルと、前記ドアポケットの内部に設けられ、前記一方の前記下流側筒部に連通するように前記ボトルが連結可能な連結部と、を備えるとよい。この態様によれば、ドアポケットの内部に芳香剤を収容するボトルを配置することができるため、ドアポケットの内部の空間を有効に活用できる。
【0038】
上記ドアトリムが設けられたドアを備えた車両であって、前記車室内に配置されたシートの着座者の側からシート側に向かって排気可能な排気装置と、前記排気装置を制御可能であり、且つ、前記空調装置に接続された制御装置と、を有し、前記制御装置は、前記空調装置が駆動している場合に、前記排気装置を駆動させるとよい。この態様によれば、ドアトリムから着座者に向かう空気の流れを発生させることができる。
【0039】
上記ドアトリムが設けられたドアを備えた車両であって、前記車室内に配置されたシートの着座面の臭いを検出する臭気センサと、前記臭気センサの検出結果に基づいて、前記遮断装置を駆動する制御装置とを有するとよい。この態様によれば、着座面の臭いに応じて、芳香剤を車室に導入することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1】第1実施形態に係るドアトリムが設けられた車両の車室を示す斜視図
【
図2】第1実施形態に係るドアトリムが設けられたドアの側面図
【
図3】(A)カートリッジ挿入時の芳香剤供給装置の状態示す斜視図、(B)駆動時の芳香剤供給装置の状態示す斜視図、(C)IIIC-IIC断面図、及び(D)(C)の二点鎖線で囲まれた部分の拡大図
【
図4】ダクト、及び、ダクトに設けられた装置を示す斜視図
【
図6】開口部の位置を説明するためのシートの斜視図
【
図7】第2実施形態に係るドアトリムが設けられたドアの側面図
【
図9】車内消臭装置を備えた車両の車室内を示す斜視図
【
図10】臭気センサの位置を説明するためのシートの斜視図
【発明を実施するための形態】
【0041】
<車内に芳香剤を導入するためのドアトリム、及び、ドアトリムを備えた車両>
以下、図面を参照して、本発明に係るドアトリムをフロントドアに適用した車両について説明する。本明細書においては、前後方向、左右方向、及び、上下方向を、車両の向きを基準として定める。
【0042】
<<第1実施形態>>
図1に示すように、車両1には乗員が乗る空間となる車室2が設けられている。運転席が車両1を構成する車体にはドア3が設けられ、ドア3を開閉することによって、乗員の車外から車室2内へのアクセスが可能となる。
【0043】
車室2内には乗員が着座する左右に並ぶシート5が前後に列をなして並ぶように設けられている。シート5はそれぞれ着座した乗員が車両1の前方を向くように配置されている。本実施形態では、右列の最も前方に位置するシート5が運転席に相当する。但し、
図1においては、簡略化のため、ステアリングホイール等が省略されて図示されている。
【0044】
シート5は、車室2の下面を画定するフロア6の上側に設けられたシートクッション7と、シートクッション7の後端に接続されたシートバック8と、シートバック8の上端に接続されたヘッドレスト9とを有している。
【0045】
シートクッション7、シートバック8、及び、ヘッドレスト9はそれぞれ骨格をなす金属製のフレーム(不図示)と、フレームに支持されたパッドと、パッドを覆う表皮材とを有している。
【0046】
パッドには着座者の側を向く面(以下、表面)において開口する通気孔11が設けられている。シートクッション7の下側には通気孔11にダクトなどを介して接続された送風機12と、送風機12の駆動を制御する制御装置(以下、AVS制御装置13)に接続されている。送風機12はAVS制御装置13からの信号に基づいて駆動し、シート5の着座面15に対して空気の吸引や送風が行い、着座者の汗むれの防止や湿度の調整を行う。パッドに設けられた通気孔11と、送風機12と、AVS制御装置13は、着座面15からの吸引や、着座面15に対する送風を行い、着座者の汗むれの防止や湿度の調整を行うエアーベンチレーションシステム(AVS)の一部を構成する。送風機12は、着座者の側からシート側に向かって排気可能な排気装置としても、シート側から着座者側へ送風可能な送風装置として機能する。
【0047】
シート5にはそれぞれ、着座者の生体情報を取得する生体センサ20が設けられている。生体センサ20が取得する情報(以下、生体情報)には、乗員の脈波、体動、温度、姿勢等が含まれる。
【0048】
生体センサ20には着座面15の臭いを検出する臭気センサ20Aが含まれているとよい。臭気センサ20Aは通気孔11の内部、又は、送風機12に接続されたダクト内に設けられているとよい。臭気センサ20Aとしては、例えば、臭気レベルに応じて抵抗値が変化する公知の半導体センサであってよい。
【0049】
最前列に位置するシート5(以下、フロントシート5A)の前方にはダッシュボード22が設けられている。ダッシュボード22は、樹脂材料から形成された板状部材である。
【0050】
ダッシュボード22にはスピードメータ等が配置されたインストルメントパネル24が設けられている。インストルメントパネル24の車幅方向内側には、カーナビゲーションシステム26が設けられている。
【0051】
カーナビゲーションシステム26は、地図情報を記憶した記憶装置(不図示)と、乗員からの入力を受け付けて情報を表示するタッチパネル28と、GPS受信機(不図示)とを備えている。カーナビゲーションシステム26は、GPS受信機によって受信した信号に基づいて、車両1の位置を特定し、特定された位置を地図情報に重ね合わせて、タッチパネル28に表示する。更に、カーナビゲーションシステム26は、タッチパネル28に入力された目的地に係る情報と、特定した車両1の位置とに基づいて、目的地に至るルートを設定する。
【0052】
本実施形態では、カーナビゲーションシステム26はVICS(登録商標)受信機を備え、道路交通情報を取得する機能を備えている。道路交通情報には例えば、渋滞情報が含まれる。
【0053】
ダッシュボード22の前方には空調装置30が設けられている。ダッシュボード22の車室2側の側面には、空調装置30を操作するための操作入力部が設けられている。操作入力部は例えば、カーナビゲーションシステム26のタッチパネル28によって構成されていてもよい。本実施形態では、空調装置30は、車室2内の温度、及び、車外の温度をそれぞれ検出可能な温度センサ(不図示)を備えている。
【0054】
空調装置30は、ダッシュボード22に形成された複数の吹出口31に接続されている。吹出口31はそれぞれダッシュボード22を貫通し、車室2に向けて開口している。具体的には、例えば、
図1に示すように、ダッシュボード22の上部前端には、吹出口31が、ウィンドシールドガラス35(フロントガラス)の前端部に向けて上向きに開口するように形成されている。
【0055】
ダッシュボード22の左右両端には、前方に向かって車外側に延びるボード側壁部36が設けられている。最前に位置するドア3(以下、フロントドア3A)が閉じられているときには、ボード側壁部36はフロントドア3Aの前縁部分に当接する。ボード側壁部36には厚さ方向に貫通する開口する接続口38が設けられている。接続口38は配管(不図示)等を介して空調装置30に接続されている。
【0056】
図2に示すように、フロントドア3Aは骨格部材としてのドア本体32(ドアパネル)と、ドア本体32の車室2側の側面に設けられたドアトリム34とを備えている。ドア本体32は、インナパネルとアウタパネルとを有する。アウタパネルは車体の外面を構成する。インナパネルは、アウタパネルの車室2側(車内側)に配置されている。インナパネルは、上縁を除く、前縁、下縁、及び後縁においてアウタパネルに結合され、中央部に空間を形成している。
【0057】
インナパネル及びアウタパネルの間には、サイドウインドウガラス33及びその昇降装置(不図示)が配置される。サイドウインドウガラス33は、インナパネル及びアウタパネルの上縁間に形成された開口を通過して上下に移動する。
【0058】
ドアトリム34は、ドアトリム本体40と、ダクト42と、遮断装置44と、芳香剤供給装置46と、芳香制御装置48とを有している。
【0059】
ドアトリム本体40は板状をなす部材であり、ドア本体32(インナパネル)の車内側に配置されている。ドアトリム本体40は左右を向く面を有する主部50と、主部50の周縁からドア本体32(インナパネル)側に延び、ドア本体32の車内側面に結合された縁壁部52とを有する。
【0060】
縁壁部52のうち、主部50の前縁から前方に向かって車外側(ドア本体32の側)に延びた部分(以下、前縁壁部52A)には吸込口56が設けられている。吸込口56は前縁壁部52Aを貫通する孔である。フロントドア3Aが閉じられると前縁壁部52Aはボード側壁部36に当接する。このとき、吸込口56が接続口に車外側から重なり、吸込口56が接続口38に接続する。
【0061】
縁壁部52のうち、主部50の上側に位置する部分(以下、上縁壁部52B)には、貫通孔である吹出口58が設けられている。本実施形態では、上縁壁部52Bには前後に並ぶ2つの吹出口58が設けられている。以下、前側に位置する吹出口58を前吹出口58A、後側に位置する吹出口58を後吹出口58Bと記載する。
【0062】
前吹出口58A及び後吹出口58Bはそれぞれ、サイドウインドウガラス33の下端部に向けて上向きに開口するように形成されている。但し、この態様には限定されず、例えば、前吹出口58Aがサイドウインドウガラス33の下端部に向けて上向きに開口し、後吹出口58Bが車内側に向けて開口する態様をなしていてもよい。
【0063】
図2(A)に示すように、ドアトリム本体40には車幅方向に貫通し、車外側に向けて開口する芳香剤用開口60(箱体開口)が設けられている。芳香剤用開口60には車室2内の乗員が開閉することのできる蓋体62が設けられている。蓋体62が開かれると芳香剤用開口60が露出し、
図2(B)に示すように、蓋体62が閉じられると芳香剤用開口60が封じられる。
【0064】
ダクト42は硬質樹脂製の筒状部材であり、ドアトリム本体40とドア本体32(ドアパネル)との間に配置されている。
【0065】
図3に示すように、ダクト42は一端において吸込口56に接続し、二又に分岐し、他端でそれぞれ2つの吹出口58に接続している。以下、ダクト42の吸込口56から分岐地点までの部分を上流側筒部64、分岐地点から吹出口58の部分をそれぞれ下流側筒部66とそれぞれ記載する。
【0066】
上流側筒部64は一端側(上流端側)において吸込口56に接続され、他端側において、2つの下流側筒部66に接続されている。下流側筒部66は一端側において上流側筒部64に接続され、他端側において吹出口58にそれぞれ接続されている。以下、前吹出口58Aに接続する下流側筒部66を前下流側筒部66Aと記載し、後吹出口58Bに接続する下流側筒部66を後下流側筒部66Bと記載する。
【0067】
図4に示すように、遮断装置44はダクト42の分岐地点、すなわち、上流側筒部64と下流側筒部66との接続部分に設けられている。遮断装置44は、上流側筒部64と後下流側筒部66Bとの間を選択的に遮断可能な扉体68(エアミックスドア)と、扉体68を駆動する扉体駆動装置70とを有している。
【0068】
本実施形態では、扉体68は上流側筒部64と前下流側筒部66Aとの間を選択的に遮断する前遮断位置と、上流側筒部64と後下流側筒部66Bとの間を選択的に遮断する後遮断位置と、上流側筒部64と2つの下流側筒部66との間を遮断することのない非遮断位置とに変位可能に構成されている。扉体68が前遮断位置にあるときには、上流側筒部64と後下流側筒部66Bとが連通する。扉体68が後遮断位置にあるときには、上流側筒部64と前下流側筒部66Aとが連通する。扉体68が非遮断位置にあるときには、上流側筒部64と前下流側筒部66Aとが連通し、且つ、上流側筒部64と後下流側筒部66Bとが連通する。
【0069】
また、扉体68は回動することにより、上流側筒部64から前下流側筒部66Aへの空気の流量と、後下流側筒部66Bへの空気の流量を調節可能に構成されていてもよい。扉体駆動装置70は扉体68の位置を変化させるアクチュエータや、モータ等であってよい。本実施形態では、扉体駆動装置70は、扉体68を回動させることによって、前遮断位置、後遮断位置、及び、非遮断位置に変位させるモータによって構成されている。
【0070】
下流側筒部66の車内側の側面には芳香剤供給装置46が挿入される貫通孔(以下、芳香剤挿入孔72)が車幅方向に貫通するように設けられている。本実施形態では、芳香剤挿入孔72は後下流側筒部66Bに設けられている。具体的には、芳香剤挿入孔72は後下流側筒部66Bの芳香剤用開口60の車外側に位置する部分であって、芳香剤用開口60に車外側から重なる位置に形成されている。
【0071】
芳香剤供給装置46はドアトリム34とドア本体32との間であって、その一部が芳香剤挿入孔72を通過して、下流側筒部66の内部に突入するように配置されている。本実施形態では、芳香剤供給装置46は、後下流側筒部66Bの内部に突入している。
【0072】
図3(A)及び(B)に示すように、芳香剤供給装置46は、芳香剤を含むカートリッジ74を挿入可能な挿入室75(
図3(B)参照)を備えた箱体76と、箱体76に挿入されたカートリッジ74を後下流側筒部66B内において選択的に露出させる開閉装置78とを備えている。
【0073】
箱体76は芳香剤用開口60の車外側に位置している。箱体76は車内側を向く面を有し、その面が主部50の車外側側面の芳香剤用開口60の周縁部分に接し、車幅方向に延びるように配置されている。箱体76には、車内側を向く面から車外側に向かって延びる複数の凹部80が形成されている。箱体76は車外側において芳香剤挿入孔72を介して、後下流側筒部66Bに突入している。
【0074】
図3(C)に示すように、箱体76に形成された凹部80によって、箱体76の車内側を向く面には、カートリッジ74が挿入される開口部分(以下、カートリッジ開口82)が形成されている。凹部80によって、箱体76にはカートリッジ74が挿入される挿入室75が画定される。カートリッジ開口82は箱体76の車内側側面から挿入室75に通じる開口を構成している。
【0075】
本実施形態では、2つの挿入室75が箱体76に設けられている。挿入室75にはそれぞれ挿入されるべきカートリッジ74の種別が予め決められている。本実施形態では、一方の挿入室75(以下、挿入室75A)には、ペパーミント等の清涼感のある香りやベルガモット等の柑橘系の香りの芳香剤を含むカートリッジ74が、他方の挿入室75(挿入室75B)には、バニリンのような甘い香りの芳香剤を含むカートリッジ74が挿入される。
【0076】
挿入室75はそれぞれ芳香剤を含むカートリッジ74が挿入可能な大きさに設定されているが、下流側筒部66の内部の空気を導入するため、挿入室75はカートリッジ74よりも若干大きくなるように設定されているとよい。
【0077】
図3(D)に示すように、挿入室75にはそれぞれ、挿入されたカートリッジ74を係止する係止部83が設けられている。係止部83はカートリッジ74に設けられた凹部(係止凹部84。
図3(A)も参照)に係脱可能な爪状をなしているとよい。これにより、意図しないカートリッジ74の脱落が防止できる。
【0078】
図3(A)に示すように、蓋体62を開くと、カートリッジ開口82が車内側に露出し、乗員が挿入室75にカートリッジ74を挿入することができる。
【0079】
図3(C)に示すように、挿入室75の上流側には上流側開口90が設けられている。上流側開口90は挿入室75の下側(上流側)を画定する壁体を上下方向に貫通している。換言すれば、上流側開口90は箱体76の上流側から挿入室75に至る貫通孔として形成されている。上流側開口90は箱体76の下面において開口している。
【0080】
挿入室75の下流側(上面)には下流側開口92が設けられている。下流側開口92は挿入室75の上側(下流側)を画定する壁体を上下方向に貫通している。換言すれば、下流側開口92は箱体76の下流側から挿入室75に至る貫通孔として形成されている。下流側開口92は箱体76の上面において開口している。
【0081】
開閉装置78は、箱体76の上面に挿入室75ごとに設けられた上流側ルーバ94と、箱体76の下面に挿入室75ごとに設けられた下流側ルーバ96と、挿入室75ごとに設けられたルーバモータ98(
図5参照)とを有している。
【0082】
上流側ルーバ94は、上流側開口90の縁部にヒンジ接続された板状をなしている。上流側ルーバ94はヒンジ軸を中心として回転し、上流側開口90を開閉する。
【0083】
下流側ルーバ96は、下流側開口92の縁部にヒンジ接続された板状をなしている。下流側ルーバ96はヒンジ軸を中心として回転し、下流側開口92を開閉する。
【0084】
ルーバモータ98はそれぞれ、対応する挿入室75の上流側ルーバ94及び下流側ルーバ96をヒンジ軸回りに回動させて、上流側開口90及び下流側開口92を開閉する。より具体的には、ルーバモータ98は、対応する上流側ルーバ94と下流側ルーバ96とを連動させて同時に開き、対応する上流側ルーバ94と下流側ルーバ96とを連動させて同時に閉じるように駆動する。
【0085】
芳香制御装置48は、
図5に示すように、中央演算処理装置100(CPU)、RAM102、ROM104、及び、SSD等の記憶装置106を有し、入力装置としてのスイッチ110に接続されている。
【0086】
図2に示すように、スイッチ110はドアトリム34に設けられている。但し、この態様には限定されず、スイッチ110は、カーナビゲーションシステム26のタッチパネル28によって構成されていてもよく、また、ダッシュボード22に設けられるものであってもよい。スイッチ110は押圧されることにより入力を受け付ける押しボタンスイッチであってよい。
【0087】
芳香制御装置48は、カーナビゲーションシステム26、空調装置30、生体センサ20、スイッチ110、遮断装置44、開閉装置78、及び、AVS制御装置13に接続されている。芳香制御装置48は、空調装置30が駆動しているときに、例えば、カーナビゲーションシステム26からの目的地に到着したことを示す信号などを取得し、その信号に基づいて、遮断装置44、開閉装置78、及び、AVS制御装置13を制御する。
【0088】
芳香制御装置48は、空調装置30が駆動しているときに、スイッチ110が押圧されると、遮断装置44を駆動して、扉体68を非遮断位置に変位させる。同時に、芳香制御装置48は、開閉装置78のルーバモータ98のうちの一つを選択的に駆動させて、対応する上流側ルーバ94及び下流側ルーバ96を開く。
【0089】
これにより、空調装置30から導入される空気が、上流側筒部64から、前下流側筒部66A及び後下流側筒部66Bに侵入する。前下流側筒部66Aに侵入した空気は、前吹出口58Aから吹き出し、サイドウインドウガラス33に吹き付けられる。
【0090】
後下流側筒部66Bに侵入した空気の一部は、開かれた上流側ルーバ94に対応する上流側開口90から箱体76の中に侵入する。これにより、対応する挿入室75に挿入されたカートリッジ74に含まれる芳香剤が後下流側筒部66Bに侵入した空気に導入される。その後、芳香剤が導入された空気は、対応する下流側開口92から後吹出口58Bに到達し、車室2内に流入する。これにより、車室2内に芳香剤による香りが漂うようになる。
【0091】
このとき、芳香剤制御装置は、送風機12を駆動させて、着座面15から後方に排気するように、AVS制御装置13を制御してもよい。これにより、
図1の破線の矢印に示すように、後吹出口58Bから車室2内に流入した空気がシート5の着座面15に到達し、シート5の後方に向かって流れるため、シート5の着座者がより強く芳香剤による香りを感じ取ることができる。
【0092】
着座者によって塞がれない場所から排気することができるように、シートクッション7やシートバック8を構成するパッドに排気通路を設けてもよい。これにより、
図1の破線の矢印に示すようなシート5(すなわち、着座者)への空気の流れを生じ易くなる。例えば、
図6に示すように、シートクッション7やシートバック8を構成するパッド部材の左右側面に開口部120を有し、送風機12に至る排気通路を設けてもよい。例えば、シートクッション7やシートバック8を構成するパッド部材の土手部に開口部122を有し、送風機12に至る排気通路を設けてもよい。また、車室2内の空気の流れを生じさせることを目的として、送風機12とは別体の送風機12を設け、シートクッション7やシートバック8を構成するパッドに、左右側面や土手部等からその別体の送風機12に至る排気通路を設けてもよい。芳香剤制御装置は、芳香剤を含む空気が車室2内に導入されるタイミングで、これらの送風機12を駆動させて、シートクッション7やシートバック8の左右側面や土手部からシート5後方に排気するとよい。また、AVS制御装置13にはシート5後方へ排出される空気の消臭を行う消臭フィルタが設けられているとよい。
【0093】
但し、この態様には限定されず、芳香制御装置48は、遮断装置44を駆動して、扉体68を非遮断位置に変位させる代わりに、扉体68を前遮断位置に移動させてもよい。これにより、空調装置30からダクト42に侵入した空気が前下流側筒部66Aには流入せず、後下流側筒部66Bに流入するため、より強く車室2内に芳香剤による香りが漂うようになる。
【0094】
また、芳香制御装置48は後下流側筒部66Bに流入する空気の量を調節して、車室2内に香りが漂うタイミングを調整してもよい。具体的には、芳香制御装置48は適宜遮断装置44を駆動して、扉体68を後遮断位置と被遮断位置との間で変位させ、芳香剤が導入された空気が車室2内に流入するタイミングを調整してもよい。また、芳香制御装置48は、開閉装置78を駆動して上流側ルーバ94及び下流側ルーバ96を開閉することにより、後下流側筒部66Bに流入する空気に含まれる芳香剤の量を調節してもよい。
【0095】
芳香制御装置48は所定時間ごとに芳香剤が導入された空気の車室2内への流入・停止を繰り返すると良い。これにより、乗員の嗅覚順応を防止することができる。
【0096】
また、芳香制御装置48は、芳香剤が導入された空気が車室2内に流入するタイミングを、カーナビゲーションシステム26によって取得される交通情報や、車両1の位置情報に基づいて設定してもよい。具体的には、芳香制御装置48は、カーナビゲーションシステム26によって取得した道路交通情報に基づき、注意喚起を目的として、車両1の走行ルート上に所定距離以内に渋滞が発生している領域がある場合に芳香剤が導入された空気を車室2内に流入させるとよい。このとき、芳香制御装置48は、渋滞が発生している領域から車両1が抜けだしたときに、芳香剤が導入された空気の車内への流入を停止するとよい。
【0097】
芳香制御装置48は、車両1の位置情報に基づき、注意喚起を目的として、車両1が学校周辺等の自転車や歩行者が多いエリア内に位置するときに、芳香剤が導入された空気を車室2内に流入させてもよい。
【0098】
芳香制御装置48は芳香剤が導入された空気が車室2内に流入するタイミングを、生体センサ20による検出結果である生体情報に基づいて、着座者の感情(例えば、着座者のいらつき等のネガティブな感情)を推定し、その推定した感情に基づいて設定してもよい。
【0099】
芳香制御装置48は臭気センサ20Aによる検出得結果に基づいて、遮断装置44を制御してもよい。例えば、芳香制御装置48は、臭気センサ20Aによって取得された臭気のレベルが所定の閾値以上の強さであったとき(具体的には、臭気センサ20Aの抵抗値の初期値からの変化量が所定の閾値以上となったとき)に、遮断装置44が扉体68を後遮蔽位置から非遮蔽位置、又は、前遮蔽位置に移動させて、芳香剤を含む空気を車室2内に導入してもよい。これにより、着座面15の臭いに応じて、芳香剤を車室2に導入することができるため、着座者の体臭等の臭いを低減し、心地よい車内環境を提供することができる。
【0100】
芳香制御装置48は、空調装置30が取得した外気温に基づいて、開閉するルーバ(上流側ルーバ94及び下流側ルーバ96)を選択してもよい。芳香制御装置48は、乗員が暑いと感じるとき、例えば、外気温が所定の閾値以上(例えば、28度以上)であるときには、挿入室75Aに設けられたルーバを開閉するべく、モータを駆動するとよい。これにより、外気温が所定の閾値以上であり、乗員が暑いと感じるときに、ペパーミント等の清涼感のある香りやベルガモット等の柑橘系の香りが車室2内に漂う。これにより、乗員に冷感を与えることができ、乗員の感じる体感温度を下げることができる。
【0101】
芳香制御装置48は、乗員が寒いと感じるとき、例えば、外気温が所定の閾値以下(例えば、7度以下)であるときには、挿入室75Bに設けられたルーバを開閉するべく、モータを駆動するとよい。これにより、バニリンのような甘い香りが車室2内に漂う。これにより、乗員に温感を与えることができ、乗員の感じる体感温度を上げることができる。
【0102】
但し、芳香制御装置48は、生体センサ20が取得する着座者の体表温度や、カーナビゲーションシステム26のタッチパネル28において入力を受け付ける着座者の体感温度に基づいて、車内に導入すべき香りを選択するように構成してもよい。
【0103】
芳香制御装置48は、スイッチ110が押圧されるか、又は、カーナビゲーションシステム26から車両1が目的地に到着したことを示す信号を取得すると、遮断装置44を駆動して、扉体68を後遮断位置に変位させる。同時に、芳香制御装置48は、開かれている上流側ルーバ94及び下流側ルーバ96を閉じるべく、開閉装置78のルーバモータ98を駆動させる。
【0104】
次に、このように構成したドアトリム34、及び、車両1の効果について説明する。
【0105】
扉体68が非遮断位置、又は、前遮断位置にあるとき、車両1の空調装置30から吹き出される空気は後下流側筒部66Bを通過する。このとき、芳香剤から後下流側筒部66Bを通過する空気に芳香剤が導入される。芳香剤を含む空気は後吹出口58Bを通過して車内側に到達し、車内に芳香剤に対応する香りが漂うようになる。このように、空調装置30によって車室2内に送出される空気に芳香剤を供給することができるため、ポンプを用いることなく、車室2内に芳香剤を導入することができる。
【0106】
遮断装置44によって扉体68を後遮断位置に移動させると、後下流側筒部66Bが選択的に遮断されて、芳香剤供給装置46に空気が触れることを防止される。これにより、芳香剤が導入されることなく空調装置30からの空気が前吹出口58Aを介して、車室2内に流入する。また、遮断装置44によって扉体68を非遮断位置、又は、前遮断位置に移動させると、後下流側筒部66Bに流入した空気が芳香剤供給装置46に触れて芳香剤を含む空気となり、後吹出口58Bを介して、車室2内に流入する。このように、芳香剤を含まない空気が車室2内に送り出される状態と、芳香剤を含む空気が車室2内に送り出される状態とに、遮断装置44によって切り替えることができる。
【0107】
また、扉体68が非遮断位置にあるときよりも、前遮断位置にあるときには、より多くの空気が後下流側筒部66Bに流れ込む。そのため、前下流側筒部66Aが遮断されないときよりも、効果的に芳香剤を車室2内に導入することができ、車室2内をより芳香剤の香りで満たすことができる。
【0108】
また、開閉装置78によって選択的にルーバを開くことができる。これにより、そのルーバに対応する挿入室75に挿入されたカートリッジ74を、選択的に後下流側筒部内の空気に晒すことができる。これにより、そのカートリッジ74に含まれる芳香剤が後下流側筒部66B内を流れる空気に導入されて、対応する香りが車室2内に導入される。このように、開くべきルーバを選択することで、車室2内に導入する香りを選択することができる。
【0109】
<<第2実施形態>>
第2実施形態に係るドアトリム201は、ドアトリム本体40と、ダクト42と、芳香剤供給装置46との構成が第1実施形態と異なり、他の構成については第1実施形態と同様である。よって、他の構成については、説明を省略する。
【0110】
図7に示すように、ドアトリム本体40は、第1実施形態と同様に、主部50と、主部50の周縁からインナパネル側に突出し、ドア本体32の車内側面における縁部に当接する縁壁部52とを有する。主部50は、アームレスト202と、ドアポケット203とを有している。アームレスト202は、車室2側に膨出し、且つ、前後に延在している。ドアポケット203は、アームレスト202の下方に接するように設けられ、車外側に膨出している。ドアポケット203の内部には車内側から物品を収納可能な収納室203Aが形成されている。アームレスト202にはドアポケット203の収納室203Aに通じる貫通孔(不図示)が設けられている。
【0111】
ダクト42は、第1実施形態と同様に、上流側筒部64と、前下流側筒部66Aと、後下流側筒部66Bと、遮断装置44とを備えている。後下流側筒部66Bは主部50の車外側であって、アームレスト202の内部と通過している。後下流側筒部66Bにはアームレスト202の貫通孔に整合する位置に、筒状の接続部204が設けられている。接続部の内部は後下流側筒部66Bの内部に通じている。接続部204の外周面には雄ねじが形成されているとよい。
【0112】
芳香剤供給装置46は内部に芳香剤を収容するボトル206を備えている。ボトル206は後下流側筒部66Bの接続部204にねじ込むことにより連結可能な連結部208を備えている。連結部208と接続部204とが連結しているときには、ボトル206はドアポケット203の内部に位置し、ボトル206の内部は後下流側筒部66Bの内部に連通している。
【0113】
ボトル206の内部は後下流側筒部66Bの内部に連通し、ボトル206の内部の芳香剤が揮発して、後下流側筒部66B内に導入される。これにより、扉体68が非遮断位置、又は、前遮断位置にあるときに、空調装置30からダクト42に流入した空気の一部に芳香剤が拡散し、芳香剤が空気とともに、車室2内に流入する。これにより、車室2内に、芳香剤に対応する香りがもたらされる。
【0114】
次に、このように構成したドアトリム34の効果について説明する。ドアポケット203の内部に芳香剤を収容するボトル206を配置することができる。これにより、ドアポケット203の内部の空間を有効に活用できる。
【0115】
<車室内消臭装置>
上記実施形態に係るドアトリム34、及び、車両1では、空調装置30から車内に流入する空気に芳香剤を供給するように構成されていたが、芳香剤の代わりに、消臭剤を車内に噴霧することも考えられる。
【0116】
従来、車室2内の臭いのデータを収集し、臭いの種別やレベルに応じてサービス(車室内清掃や代用車を用意・料金割引化)を提供する車両管理システムが公知である(国際公開第2020/039223)。この車両管理システムでは、収集された結果に基づき、臭いの種別やレベルが車両1の使用に適切でない場合には、清掃や代用車の用意等が必要となる。一方、車両1の利用者が利用終了時に車室2内に消臭剤を噴霧することも考えられるが、利用者が噴霧することなく利用を終えてしまう虞がある。また、利用者自身が消臭を行わなければならず、利用者に大きな負担となる虞がある。
【0117】
そこで、
図8に示すように、車両1に設けられる車室内消臭装置301であって、車室2内に消臭剤(無香料)を噴霧可能な消臭剤噴霧装置302と、車室2内に設けられた臭気センサ304と、臭気センサ304によって検出した臭いレベルに応じて消臭剤噴霧装置302を駆動する制御装置306とを備え、制御装置306は、臭気センサ304で検知した臭いレベルが閾値を超えたときに、消臭剤噴霧装置302を駆動させて車室2内(例えば、シート5)に向けて消臭剤を噴霧させるものを構成するとよい。これにより、臭気センサ304によって検出された臭気レベルが閾値を超えた場合に、自動で消臭剤がシート5に噴射されるため、乗員の手動による作業が不要となる。
【0118】
臭気センサ304は、車室2内の空気に接触する位置や、エアーベンチレーションシステムの流路に設けられるとよい。臭気センサ304としては、例えば、臭気レベルに応じて抵抗値が変化する公知の半導体センサであってよい。
【0119】
また、制御装置306は、臭いレベルと複数の閾値とを比較することにより、臭いレベルに応じて、消臭剤噴霧装置302から噴霧される消臭剤の噴射量を段階的に変更してもよい。これにより、臭いの強さに応じて消臭剤の噴霧量を調整することができる。より具体的には、臭いレベルが高くなるにつれて、消臭剤の噴霧量を増やすことができるため、より効果的に消臭を行うことができる。
【0120】
また、車室内消臭装置301は、シート5に設けられ、着座面15に加わる圧力を検出する体圧センサ308を含み、制御装置306は体圧センサ308によって取得された圧力に基づいて、シート5に着座者が着座しているかを判定し、着座者が着座しておらず、且つ、臭いレベルが閾値以上であるときに、対応するシート5に消臭剤を噴射するとよい。これにより、乗員が着座していないときに消臭剤の噴霧を行うことができるため、乗員が離席したときにすぐ消臭剤を噴霧できる。
【0121】
また、車室内消臭装置301は、車室2内の乗員の有無を検出する乗員センサ310と、走行させるための推進力を車両1に与える推進装置の駆動・停止を検出する推進装置センサ312とを有し、制御装置306は推進装置センサ312によって推進装置の駆動が停止された後に、所定時間に渡って、乗員センサ310によって車室2内に乗員がいないことを検出されたときには、消臭剤噴霧装置を駆動してもよい。これにより、乗員が車室2内に不在となっているときに、消臭剤を噴霧できる。
【0122】
また、車室内消臭装置301が搭載される車両1は、貸し出し業者(レンタカーやカーシェア、ライドシェア等の業者)から貸し出される車両1であることがある。そのとき、制御装置306は、貸し出し業者が運用するサーバから、乗客が車両1を返却した利用を終えた状態にあることを示す情報を取得し、その情報に基づいて、乗員が利用を終えたと判定した場合には、消臭剤駆動装置を駆動させて、車室2内に消臭剤を噴射するとよい。これにより、利用を終えた状態にあることを示す情報に基づいて、乗員が車室2内にいないことを容易に判定できる。
【0123】
また、車室内消臭装置301は、消臭剤噴霧装置302は消臭剤を収容する消臭剤タンク320と、消臭剤タンク320内の消臭剤の量を検出する残量センサ322を備え、制御装置306は、残量センサ322によって検出される消臭剤の量が閾値よりも少なくなった場合には、制御装置306は、貸し出し業者へ通知するべく、貸し出し業者の運用するサーバに通知を行うとよい。これにより、貸し出し業者が消臭剤タンク320に消臭剤を充填すべきタイミングを容易に把握できる。
【0124】
また、車室内消臭装置301は、車室2内に設けられた予備タンクと、制御装置306からの信号に基づいて、車室2内の乗員に音声や表示によって通知を行う通知装置とを備え、制御装置306は残量センサ322によって検出される消臭剤の残量が閾値以下となった場合には、制御装置306は予備タンクに収容された消臭剤を消臭剤タンク320に補充するように乗員に通知を行うとよい。これにより、消臭剤タンク320内の消臭剤の量が閾値以下となったときに、乗員によって消臭剤タンク320に充填が行われて、消臭剤の噴霧が再開される。
【0125】
また、車室内消臭装置301は車室2内やシート5における複数の箇所に配置された複数の臭気センサ304を備えているとよい。また、制御装置306は、複数の臭気センサ304のうち、臭いレベルが所定の閾値を超えたと判定したときには、その臭気センサ304と対応する消臭剤噴霧装置302を駆動させ、消臭剤を噴射するよう制御するとよい。
【0126】
図9に示すように、消臭剤噴霧装置302の噴出口302Aは、天井(ルーフ)に設けられていてもよい。これにより、重力に任せてシートクッション7やシートバック8等に消臭剤を噴射させることができる。
【0127】
また、消臭剤噴霧装置302の噴出口302Bは、ドア3に設けられていてもよい。これにより、車幅方向外側からシートクッション7やシートバック8等の広範囲に消臭剤を噴射させることができる。
【0128】
また、消臭剤噴霧装置302の噴出口302Cは、最前列に位置するシート5の前方に位置するインストルメントパネル330に設けられていてもよい。シート5の前方からシートクッション7やシートバック8、ヘッドレスト9等の正面側に向けて消臭剤を噴射させることができる。
【0129】
また、消臭剤噴霧装置302の噴出口302Dは、シートクッション7の前端において、後方(シート後方)を向くように配置されているとよい。これにより、効果的に消臭剤を後方に位置するシート5の着座面15に噴霧することができ、且つ、噴出口を配置することによる着座者に与えうる違和感を低減することができる。
【0130】
また、消臭剤噴霧装置302の噴出口302Eは、シートバック8の上端に設けられていてもよい。これにより、噴出口から噴霧された消臭剤を重力によって下方に移動させることができるため、シートバック8の前面に効果的に消臭剤を噴霧することができる。
【0131】
図10に示すように、臭気センサ304Aは、シートバック8の乗員の肩に対応する部位(肩部支持領域)に設けられるとよい。これにより、乗員の脇下から放たれる腋臭を効果的に検出できる。
【0132】
また、臭気センサ304Bは、ヘッドレスト9に設けられていてもよい。これにより、乗員の耳の裏から放たれる加齢臭等を効果的に検出できる。
【0133】
また、臭気センサ304Cは、シートクッション7に設けられていてもよい。これにより、乗員から放たれる腸内ガスを効果的に検出できる。
【0134】
また、
図9に示すように、臭気センサ304Dは、アームレスト332の着座者側の面に設けられているとよい。これにより、着座面15に消臭剤を塗布する場合に、臭気センサ304に消臭剤が到達し難くなり、臭気センサ304Dによる検出精度を高めることができる。着座面に臭気センサ304Dが設けられていないため、着座面に着座したときに臭気センサ304Dによって着座者が異物感を感じることがない。
【0135】
図10に示すように、消臭剤タンク320A(又は、予備タンク)は、シートクッション7の下側に設けられていてもよい。
図9に示すように、消臭剤タンク320B(又は、予備タンク)は、シートバック8の背面(後面)に設けられていてもよい。
【0136】
また、乗員がアームレスト332などに設けられたボタン340を押圧することにより、消臭剤噴霧装置302を駆動させることができるように構成されているとよい。これにより、乗員は適宜手動で消臭剤を車室2内に噴霧することができる。
【0137】
<車室内環境調整装置>
上記実施形態では、乗員からの臭気や車室2内の臭気に基づいて、車内環境を向上させる装置について記載してきたが、臭気以外の情報に基づいて車内環境を向上させることも考えられる。例えば、このような車内環境を向上させる装置(車室内環境調整装置)であって、乗員情報に応じた光色の照明光を供給する乗物用照明装置が知られている(例えば、特開2018-199391号公報)。乗員情報は乗員の感情を示す情報であり、車両1が乗員の音声を取得するための手段としてマイクが搭載され、マイクで取得した乗員の音声に基づいて感情分析装置が感情を分析する。
【0138】
しかし、このような乗物用照明装置では、複数の乗員の音声から個々の乗員の音声を識別し、個々の乗員の感情を推定する必要がある。そのため、乗員ごとに乗員情報取得手段を設ける必要があり、設備及び制御が煩雑となるおそれがある。また、複数の乗員が会話をしている状況などにおいては、個人の感情に基づいて車室2内の環境を調整すると、複数の乗員によって形成される車室2内の雰囲気にそぐわないものとなる可能性がある。
【0139】
そこで、
図11に示すように、車室内環境調整装置401は、車室2内の複数の乗員の音声を取得する音声取得装置402及び車室2内の乗員それぞれの体動を取得する体動取得装置403の少なくとも一方と、音声取得装置402によって取得された音声及び体動取得装置403によって取得された体動の少なくとも一方に基づいて車室2内の雰囲気を推定する車室内雰囲気推定装置404と、車室内雰囲気推定装置404によって推定された雰囲気に基づいて、車室2内の環境を調整する調整装置405とを有するとよい。これによれば、個々の乗員の感情等の推定によらず、複数の乗員によって形成される車室2内の雰囲気に基づいて車室2内の環境を調整することができるため、車室2内を全乗員にとって適する環境となるように調整することができる。
【0140】
音声取得装置402は、例えば、車室2内の音声を取得するマイク402Aを含み、車室内雰囲気推定装置404は、その音声の大きさ、トーン、乗員の話す速度等によって、車室2内の雰囲気を推定するとよい。
【0141】
具体的には、音声取得装置402によって取得される声の要素が大きい場合には、車室内雰囲気推定装置404は、複数の乗員間の会話が盛り上がっている(すなわち、車室2内の雰囲気が良好である)と推定するとよい。
【0142】
また、音声取得装置402によって取得される声の要素が大きく、且つ、体動取得装置403によって取得された体動も大きい場合には、車室内雰囲気推定装置404は、車室2内が更に盛り上がっていると推定するとよい。
【0143】
また、車室内環境調整装置401は、音声取得装置402によって取得される声の要素が小さい場合に、車室内雰囲気推定装置404は乗員がリラックス状態にあると推定するとよい。また、音声取得装置402によって取得される声の要素が小さく、且つ、体動取得装置403によって取得された体動も小さい場合には、車室内雰囲気推定装置404は、乗員が更にリラックス状態にあると推定するとよい。
【0144】
車室内環境調整装置401は、乗員に情報を表示可能な表示装置410を含み、乗員がリラックス状態にあることが車室内雰囲気推定装置404によって推定されたときに、表示装置410は乗員に対して寝るように促す通知(すなわち、寝るモードに移行する提案)を通知するように構成されていてもよい。
【0145】
車室内雰囲気推定装置404は、音声取得装置402によって取得された音声をテキスト化し、乗員同士の会話の文脈に基づいて乗員の情報を推定可能な乗員情報推定部413と、乗員情報推定部413によって推定された情報に基づいて、車室2内の雰囲気を推定する雰囲気推定部415とを含むとよい。乗員情報推定部413によって推定される乗員の情報としては、乗員の感情や乗員の状況(喜怒哀楽、リラックス状態、緊張状態など)、乗員同士の関係性(家族、友人、上司と部下、など)が挙げられる。ここで、乗員の情報の推定や、会話の文脈の推定には、感情、状況、関係性に応じた特徴語の抽出、もしくは文脈を推定可能な人工知能を用いてよい。
【0146】
調整装置405は車室2内を照らす照明装置418を制御してもよい。照明装置は、推定された雰囲気に応じて、照明装置418の発光色や輝度を変化させてもよい。また、調整装置405は、車室2内の温度を制御する空調装置30の設定温度を変更してもよく、車室2内に芳香剤を噴霧する芳香剤供給装置46を制御し、車室2内の香りを調整するものであってよい。また、調整装置405はシートポジションを変更するアクチュエータ420に接続され、シートポジションを調整するものであってもよく、また、調整装置405はスピーカ422から車室2内に流れる音楽を変更するものであってもよい。
【0147】
その他、体動取得装置403によって取得された乗員の体動に所定のパターンが含まれている場合には、そのパターンに応じて調整装置405が車室内環境を調整してもよく、また、表示装置410が乗員に車室内環境の調整を促す通知を行うように構成されていてもよい。なお、所定のパターンとして、例えば微振動を繰り返す体動が検出された場合、車室内雰囲気推定装置404は車室2内が寒いと推定し、調整装置405が空調装置30の空調温度を高めるべく駆動するか、又は、表示装置410が調整を乗員に促すように通知してもよい。
【0148】
車室内雰囲気推定装置404は音声取得装置402や体動取得装置403によって取得された情報に基づいて、乗員の年齢層や分類(幼児、高齢者の年齢層や性別等)を推定するものであってもよい。調整装置405は、車室内雰囲気推定装置404によって推定された乗員の年齢層や分類に基づいて、調整装置405は、車室2内の環境(例えば、車室2内の温度等)を調節してもよい。
【0149】
以上で具体的実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されることなく幅広く変形実施することができる。
【符号の説明】
【0150】
1 :車両
2 :車室
3 :ドア
5 :シート
20A :臭気センサ
30 :空調装置
31 :吹出口
34 :第1実施形態に係るドアトリム
40 :ドアトリム本体
42 :ダクト
44 :遮断装置
46 :芳香剤供給装置
56 :吸込口
58 :吹出口
60 :芳香剤用開口(箱体開口)
62 :蓋体
64 :上流側筒部
66 :下流側筒部
68 :扉体
70 :扉体駆動装置
74 :カートリッジ
75 :挿入室
75A :挿入室
75B :挿入室
76 :箱体
78 :開閉装置
82 :カートリッジ開口
83 :係止部
90 :上流側開口
92 :下流側開口
94 :上流側ルーバ
96 :下流側ルーバ
201 :第2実施形態に係るドアトリム
202 :アームレスト
203 :ドアポケット
206 :ボトル
208 :連結部