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特許7397390組成物、射出成形体、粉体塗料および被覆電線
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-05
(45)【発行日】2023-12-13
(54)【発明の名称】組成物、射出成形体、粉体塗料および被覆電線
(51)【国際特許分類】
   C08L 27/18 20060101AFI20231206BHJP
   C08F 214/26 20060101ALI20231206BHJP
   C09D 5/03 20060101ALI20231206BHJP
   C09D 127/18 20060101ALI20231206BHJP
   H01B 7/02 20060101ALI20231206BHJP
   B29C 45/00 20060101ALN20231206BHJP
【FI】
C08L27/18
C08F214/26
C09D5/03
C09D127/18
H01B7/02 Z
B29C45/00
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2023115116
(22)【出願日】2023-07-13
【審査請求日】2023-07-13
(31)【優先権主張番号】P 2022134930
(32)【優先日】2022-08-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000486
【氏名又は名称】弁理士法人とこしえ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井坂 忠晴
(72)【発明者】
【氏名】津田 早登
(72)【発明者】
【氏名】山本 有香里
(72)【発明者】
【氏名】善家 佑美
【審査官】小森 勇
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第03/022922(WO,A1)
【文献】特許第7112013(JP,B1)
【文献】特開2000-281939(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 27/12-27/20
C08F 14/00-14/28
C08F 214/00-214/28
C09D 5/03
C09D 127/12-127/20
H01B 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリテトラフルオロエチレンと含フッ素共重合体とを含有する組成物であって、
前記組成物中の前記ポリテトラフルオロエチレンの含有量が、前記組成物の質量に対して、0.03~0.30質量%であり、
前記含フッ素共重合体が、テトラフルオロエチレン単位、ヘキサフルオロプロピレン単位およびパーフルオロ(プロピルビニルエーテル)単位を含有し、
前記含フッ素共重合体中のヘキサフルオロプロピレン単位の含有量が、全単量体単位に対して、8.5~11.2質量%であり、
パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)単位の含有量が、全単量体単位に対して、0.5~2.0質量%であり、
テトラフルオロエチレン単位の含有量が、全単量体単位に対して、86.8~91.0質量%であり、
372℃におけるメルトフローレートが、13.0~42.0g/10分である
組成物。
【請求項2】
前記含フッ素共重合体中のヘキサフルオロプロピレン単位の含有量が、全単量体単位に対して、9.4~11.0質量%である請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記含フッ素共重合体中のパーフルオロ(プロピルビニルエーテル)単位の含有量が、全単量体単位に対して、0.7~1.8質量%である請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記含フッ素共重合体の372℃におけるメルトフローレートが、15.0~38.0g/10分である請求項1または2に記載の組成物。
【請求項5】
前記ポリテトラフルオロエチレンの標準比重が、2.15~2.25である請求項1または2に記載の組成物。
【請求項6】
前記組成物中の前記ポリテトラフルオロエチレンの含有量が、前記組成物の質量に対して、0.05~0.20質量%である請求項1または2に記載の組成物。
【請求項7】
請求項1または2に記載の組成物を含有する射出成形体。
【請求項8】
請求項1または2に記載の組成物を含有する粉体塗料。
【請求項9】
請求項1または2に記載の組成物を含有する被覆層を備える被覆電線。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、組成物、射出成形体、粉体塗料および被覆電線に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、標準比重が2.15~2.30であるポリテトラフルオロエチレン〔PTFE〕と、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン系共重合体〔FEP〕とを含み、上記PTFEの含有量は、上記FEP100質量部に対し0.01~3質量部であり、アルカリ金属の含有量は樹脂組成物の固形分に対して5ppm未満であり、上記FEPを含む水性分散液と上記PTFEを含む水性分散液とを混合したのち凝析することによりフッ素樹脂の共凝析粉末を得る工程(1)と、上記共凝析粉末を溶融押出する工程(2)と、上記PTFEおよび上記FEPの不安定末端基の安定化処理をする工程(3)とを有する方法から得られることを特徴とするフッ素樹脂組成物が記載されている。
【0003】
特許文献2には、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン系共重合体100質量部と、標準比重が2.15~2.30であるポリテトラフルオロエチレン0.01~3質量部とからなるフッ素樹脂組成物であって、前記フッ素樹脂組成物は、前記テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン系共重合体からなる水性分散液と、前記ポリテトラフルオロエチレンからなる水性分散液とを混合したのち凝析し次いで乾燥後に溶融押出することより得られるものであることを特徴とするフッ素樹脂組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2009/044753号
【文献】国際公開第2006/123694号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示では、射出成形性、塗膜成形性および電線被覆成形性に優れており、高温高荷重に対する耐変形性、耐ストレスクラック性、引張応力に対する耐変形性、繰返しの応力負荷に対する耐性に優れる成形体を得ることができる組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示によれば、ポリテトラフルオロエチレンと含フッ素共重合体とを含有する組成物であって、前記組成物中の前記ポリテトラフルオロエチレンの含有量が、前記組成物の質量に対して、0.03~0.30質量%であり、前記含フッ素共重合体が、テトラフルオロエチレン単位、ヘキサフルオロプロピレン単位およびパーフルオロ(プロピルビニルエーテル)単位を含有し、前記含フッ素共重合体中のヘキサフルオロプロピレン単位の含有量が、全単量体単位に対して、8.5~11.2質量%であり、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)単位の含有量が、全単量体単位に対して、0.5~2.0質量%であり、372℃におけるメルトフローレートが、13.0~42.0g/10分である組成物が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、射出成形性、塗膜成形性および電線被覆成形性に優れており、高温高荷重に対する耐変形性、耐ストレスクラック性、引張応力に対する耐変形性、繰返しの応力負荷に対する耐性に優れる成形体を得ることができる組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本開示の具体的な実施形態について詳細に説明するが、本開示は、以下の実施形態に限定されるものではない。
【0009】
本開示の組成物は、ポリテトラフルオロエチレンと含フッ素共重合体とを含有する。
【0010】
特許文献1では、比較的広い成形温度範囲での被覆押出成形において高速成形を行っても成形不良が生じにくく、表面平滑性に優れた電線、特に発泡電線を得ることができるフッ素樹脂組成物を提供することを目的として、上記したフッ素樹脂組成物が提案されている。また、特許文献2では、溶融押出成形における成形性の改良を目的として、上記したフッ素樹脂組成物が提案されている。
【0011】
しかしながら、テトラフルオロエチレン単位、ヘキサフルオロプロピレン単位およびパーフルオロ(プロピルビニルエーテル)単位を含有する含フッ素共重合体の射出成形性を向上させる手段については、一切検討されていない。また、射出成形体の物性を改良することについても、一切検討されていない。
【0012】
本開示は、このような現状に鑑み、テトラフルオロエチレン単位、ヘキサフルオロプロピレン単位およびパーフルオロ(プロピルビニルエーテル)単位を含有する含フッ素共重合体の射出成形性を向上させることができる組成物であって、さらに、高温高荷重に対する耐変形性に優れる成形体を得ることができる組成物を提供することを目的とするものである。また、本開示の組成物は、塗膜成形性および電線被覆成形性に優れている。さらに、本開示の組成物を用いることにより、耐ストレスクラック性、引張応力に対する耐変形性、繰返しの応力負荷に対する耐性に優れる成形体を得ることができる。
【0013】
(ポリテトラフルオロエチレン)
本開示の組成物は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を含有する。本開示の組成物は、限定された量のPTFEを含有し、なおかつ、後述するように、組成およびメルトフローが限定された含フッ素共重合体を含有するものであることから、射出成形により容易に成形することができ、さらには、美観に優れ、高温高荷重に対する耐変形性にも優れる射出成形体を得ることができる。また、本開示の組成物は、塗膜成形性および電線被覆成形性にも優れている。さらに、本開示の組成物を用いることにより、耐ストレスクラック性、引張応力に対する耐変形性、繰返しの応力負荷に対する耐性に優れる成形体を得ることができる。
【0014】
本開示の組成物が含有するPTFEは、非溶融加工性を有するPTFEであってもよいし、溶融加工性を有するPTFEであってもよい。PTFEとしては、組成物の射出成形性および射出成形体の耐変形性が一層向上し、塗膜成形性および電線被覆成形性、ならびに、成形体の耐ストレスクラック性、引張応力に対する耐変形性、繰返しの応力負荷に対する耐性も向上することから、非溶融加工性を有するPTFEが好ましい。
【0015】
非溶融加工性とは、PTFEの融点より高い温度で、ASTM D 1238およびD 2116に準拠して、メルトフローレートを測定できない性質を意味する。
【0016】
PTFEは、フィブリル化性を有するPTFEであってもよいし、非フィブリル化性を有するPTFEであってもよい。PTFEとしては、組成物の射出成形性および射出成形体の耐変形性が一層向上し、塗膜成形性および電線被覆成形性、ならびに、成形体の耐ストレスクラック性、引張応力に対する耐変形性、繰返しの応力負荷に対する耐性も向上することから、フィブリル化性を有するPTFEが好ましい。
【0017】
フィブリル化性の有無は、TFEの重合体から作られた粉末である「高分子量PTFE粉末」を成形する代表的な方法である「ペースト押出し」で判断できる。通常、ペースト押出しが可能であるのは、高分子量のPTFEがフィブリル化性を有するからである。ペースト押出しで得られた未焼成の成形物に実質的な強度や伸びがない場合、たとえば伸びが0%で引っ張ると切れるような場合はフィブリル化性がないとみなすことができる。
【0018】
PTFEの標準比重(SSG)は、好ましくは2.15~2.25であり、より好ましくは2.20以下である。PTFEの標準比重を上記の範囲内とすることによって、組成物の射出成形性および射出成形体の耐変形性を一層向上させ、塗膜成形性および電線被覆成形性、ならびに、成形体の耐ストレスクラック性、引張応力に対する耐変形性、繰返しの応力負荷に対する耐性も向上させることができる。
【0019】
標準比重は、ASTM D 4895-89に準拠して成形されたサンプルを用い、ASTM D 792に準拠した水置換法により測定することができる。
【0020】
PTFEの融点は、好ましくは320℃以上であり、より好ましくは323℃以上であり、さらに好ましくは325℃以上であり、好ましくは337℃以下であり、より好ましくは335℃以下であり、さらに好ましくは333℃以下である。
【0021】
PTFEの融点(二次融点)は、示差走査熱量計を用い、昇温速度10℃/分で230℃から380℃までの1度目の昇温を行い、続けて、冷却速度10℃/分で380℃から230℃まで冷却し、再度、昇温速度10℃/分で230℃から380℃までの2度目の昇温を行い、2度目の昇温過程で生ずる溶融曲線ピークを記録し、ピークトップに対応する温度として、特定することができる。
【0022】
PTFEは、TFE単位のみを含有するTFEホモポリマーであってもよいし、TFE単位とTFEと共重合可能な変性モノマー単位とを含む変性PTFEであってもよい。
【0023】
変性モノマーとしては、たとえば、ヘキサフルオロプロピレン等のパーフルオロオレフィン;クロロトリフルオロエチレン等のクロロフルオロオレフィン;トリフルオロエチレン、フッ化ビニリデン等の水素含有フルオロオレフィン;フルオロアルキルビニルエーテル;フルオロアルキルアリルエーテル;パーフルオロアルキルエチレン;エチレンなどが挙げられる。
【0024】
PTFEにおける変性モノマー単位の含有量は、PTFEを構成する全単量体単位に対して、好ましくは0~1.0質量%であり、より好ましくは0.5質量%以下であり、さらに好ましくは0.2質量%以下であり、特に好ましくは0.1質量%以下である。
【0025】
PTFEにおけるTFE単位の含有量は、PTFEを構成する全単量体単位に対して、好ましくは100~99.0質量%であり、より好ましくは99.5質量%以上であり、さらに好ましくは99.8質量%以上であり、特に好ましくは99.9質量%以上である。
【0026】
PTFEを構成する各単量体の含有量は、NMR、FT-IR、元素分析、蛍光X線分析を単量体の種類によって適宜組み合わせることで算出できる。
【0027】
PTFEと含フッ素共重合体とを混合することにより組成物を得る際に用いるPTFEは、水性分散体中に分散したPTFEであってもよいし、PTFE粉末であってもよい。PTFE粉末は、PTFEファインパウダーであってもよいし、PTFEモールディングパウダーであってもよい。
【0028】
一実施形態においては、水性分散体中に分散したPTFEの一次粒子を用いることができる。PTFEの平均一次粒子径は、好ましくは10~800nmであり、より好ましくは50nm以上であり、より好ましくは500nm以下である。
【0029】
PTFEの平均一次粒子径は、固形分0.22質量%となるように水で希釈した水性分散体について、単位長さに対する波長500nmの投射光の透過率を測定し、予め透過型電子顕微鏡写真における定方向径を測定して得たPTFE数基準長さ平均一次粒子径と上記透過率との検量線に基づいて決定することができる。
【0030】
一実施形態においては、PTFEの二次粒子を用いることができる。PTFEの二次粒子は、PTFEの一次粒子が凝集することにより形成される粒子である。PTFEの平均二次粒子径は、好ましくは1~2000μmである。
【0031】
PTFEの二次粒子径は、ASTM D 4895に準拠して測定することができる。
【0032】
(含フッ素共重合体)
本開示の組成物が含有する含フッ素共重合体は、溶融加工性のフッ素樹脂である。溶融加工性とは、押出機および射出成形機などの従来の加工機器を用いて、ポリマーを溶融して加工することが可能であることを意味する。
【0033】
本開示の組成物が含有する含フッ素共重合体は、テトラフルオロエチレン(TFE)単位、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)単位およびパーフルオロ(プロピルビニルエーテル)(PPVE)単位を含有する。
【0034】
含フッ素共重合体のHFP単位の含有量は、含フッ素共重合体を構成する全単量体単位に対して、8.5~11.2質量%であり、好ましくは8.8質量%以上であり、より好ましくは9.0質量%以上であり、さらに好ましくは9.1質量%以上であり、尚さらに好ましくは9.2質量%以上であり、殊更に好ましくは9.3質量%以上であり、特に好ましくは9.4質量%以上であり、尚特に好ましくは9.5質量%以上であり、最も好ましくは9.7質量%以上であり、好ましくは11.1質量%以下であり、より好ましくは11.0質量%以下であり、さらに好ましくは10.9質量%以下であり、特に好ましくは10.8質量%以下である。HFP単位の含有量が少なすぎると、組成物を射出成形法により成形して射出成形体を得た場合に、射出成形体に傷がつきやすい。また、HFP単位の含有量が少なすぎると、優れた塗膜成形性および電線被覆成形性が得られず、耐ストレスクラック性に優れる成形体が得られない。HFP単位の含有量が多すぎると、組成物を射出成形法により成形する際に、金型から射出成形体を取り出すことが困難になり、射出成形体の生産性に劣る。また、HFP単位の含有量が多すぎると、高温高荷重に対する耐変形性、繰返しの応力負荷に対する耐性に優れる成形体が得られない。
【0035】
含フッ素共重合体のPPVE単位の含有量は、含フッ素共重合体を構成する全単量体単位に対して、0.5~2.0質量%であり、好ましくは0.6質量%以上であり、より好ましくは0.7質量%以上であり、好ましくは1.9質量%以下であり、より好ましくは1.8質量%以下であり、さらに好ましくは1.7質量%以下であり、特に好ましくは1.6質量%以下である。PPVE単位の含有量が少なすぎると、組成物を射出成形法により成形して射出成形体を得た場合に、デラミネーションが発生しやすい。また、PPVE単位の含有量が少なすぎると、優れた電線被覆成形性が得られず、耐ストレスクラック性に優れる成形体が得られない。PPVE単位の含有量が多すぎると、組成物を射出成形法により成形して射出成形体を得た場合に、射出成形体に繊維状の筋が発生しやすい。また、PPVE単位の含有量が多すぎると、組成物を射出成形法により成形する際に、金型から射出成形体を取り出すことが困難になり、射出成形体の生産性に劣る。さらに、PPVE単位の含有量が多すぎると、高温高荷重に対する耐変形性、引張応力に対する耐変形性に優れる成形体が得られない。
【0036】
含フッ素共重合体のTFE単位の含有量は、含フッ素共重合体を構成する全単量体単位に対して、好ましくは86.8質量%以上であり、より好ましくは86.9質量%以上であり、さらに好ましくは87.0質量%以上であり、尚さらに好ましくは87.1質量%以上であり、殊さらに好ましくは87.2質量%以上であり、特に好ましくは87.4質量%以上であり、最も好ましくは87.6質量%以上であり、好ましくは91.0質量%以下であり、より好ましくは90.7質量%以下であり、さらに好ましくは90.3質量%以下であり、尚さらに好ましくは89.9質量%以下であり、殊さらに90.0質量%以下であり、特に好ましくは89.8質量%以下であり、最も好ましくは89.6質量%以下である。また、HFP単位、PPVE単位、TFE単位およびその他の単量体単位の含有量の合計が100質量%となるように、TFE単位の含有量を選択してもよい。
【0037】
含フッ素共重合体は、上記の3つの単量体単位を含有するものであれば、上記の3つの単量体単位のみを含有する共重合体であっても、上記の3つの単量体単位およびその他の単量体単位を含有する共重合体であってもよい。
【0038】
その他の単量体としては、TFE、HFPおよびPPVEと共重合可能な単量体であれば特に限定されず、フルオロモノマーであっても、フッ素非含有モノマーであってもよい。
【0039】
フルオロモノマーとしては、クロロトリフルオロエチレン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、トリフルオロエチレン、ヘキサフルオロイソブチレン、CH=CZ(CF(式中、ZはHまたはF、ZはH、FまたはCl、nは1~10の整数である)で表される単量体、CF=CF-ORf(式中、Rfは炭素数1~8のパーフルオロアルキル基)で表されるパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)〔PAVE〕(ただし、PPVEを除く)、CF=CF-O-CH-Rf(式中、Rfは、炭素数1~5のパーフルオロアルキル基)で表されるアルキルパーフルオロビニルエーテル誘導体、パーフルオロ-2,2-ジメチル-1,3-ジオキソール〔PDD〕、および、パーフルオロ-2-メチレン-4-メチル-1,3-ジオキソラン〔PMD〕からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0040】
CH=CZ(CFで表される単量体としては、CH=CFCF、CH=CH-C、CH=CH-C13、CH=CF-CHなどが挙げられる。
【0041】
CF=CF-ORfで表されるパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)としては、CF=CF-OCF、CF=CF-OCFCFなどが挙げられる。
【0042】
フッ素非含有モノマーとしては、TFE、HFPおよびPPVEと共重合可能な炭化水素系モノマーなどが挙げられる。炭化水素系モノマーとしては、たとえば、エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレン等のアルケン類;エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル等のアルキルビニルエーテル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、n-酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、吉草酸ビニル、ピバリン酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリル酸ビニル、カプリン酸ビニル、バーサチック酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ミリスチン酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル、パラ-t-ブチル安息香酸ビニル、シクロヘキサンカルボン酸ビニル、モノクロル酢酸ビニル、アジピン酸ビニル、アクリル酸ビニル、メタクリル酸ビニル、クロトン酸ビニル、ソルビン酸ビニル、桂皮酸ビニル、ウンデシレン酸ビニル、ヒドロキシ酢酸ビニル、ヒドロキシプロピオン酸ビニル、ヒドロキシ酪酸ビニル、ヒドロキシ吉草酸ビニル、ヒドロキシイソ酪酸ビニル、ヒドロキシシクロヘキサンカルボン酸ビニル等のビニルエステル類;エチルアリルエーテル、プロピルアリルエーテル、ブチルアリルエーテル、イソブチルアリルエーテル、シクロヘキシルアリルエーテル等のアルキルアリルエーテル類;エチルアリルエステル、プロピルアリルエステル、ブチルアリルエステル、イソブチルアリルエステル、シクロヘキシルアリルエステル等のアルキルアリルエステル類等が挙げられる。
【0043】
フッ素非含有モノマーとしては、また、TFE、HFPおよびPPVEと共重合可能な官能基含有炭化水素系モノマーであってもよい。官能基含有炭化水素系モノマーとしては、例えば、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシプロピルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、ヒドロキシイソブチルビニルエーテル、ヒドロキシシクロヘキシルビニルエーテル等のヒドロキシアルキルビニルエーテル類;グリシジルビニルエーテル、グリシジルアリルエーテル等のグリシジル基を有するフッ素非含有モノマー;アミノアルキルビニルエーテル、アミノアルキルアリルエーテル等のアミノ基を有するフッ素非含有モノマー;(メタ)アクリルアミド、メチロールアクリルアミド等のアミド基を有するフッ素非含有モノマー;臭素含有オレフィン、ヨウ素含有オレフィン、臭素含有ビニルエーテル、ヨウ素含有ビニルエーテル;ニトリル基を有するフッ素非含有モノマー等が挙げられる。
【0044】
含フッ素共重合体におけるその他の単量体単位の含有量としては、含フッ素共重合体を構成する全単量体単位に対して、好ましくは0~4.2質量%であり、より好ましくは2.8質量%以下であり、さらに好ましくは1.0質量%以下であり、特に好ましくは0.5質量%以下であり、最も好ましくは0.1質量%以下である。
【0045】
含フッ素共重合体のメルトフローレート(MFR)は、13.0~42.0g/10分であり、好ましくは14.0g/10分以上であり、より好ましくは15.0g/10分以上であり、さらに好ましくは17.0g/10分以上であり、尚さらに好ましくは18.0g/10分以上であり、殊さらに好ましくは19.0g/10分以上であり、特に好ましくは21.0g/10分以上であり、尚特に好ましくは22.0g/10分以上であり、最も好ましくは23.0g/10分以上であり、好ましくは41.0g/10分以下であり、より好ましくは40.0g/10分以下であり、さらに好ましくは39.0g/10分以下であり、尚さらに好ましくは38.0g/10分以下であり、特に好ましくは37.0g/10分以下であり、最も好ましくは36.5g/10分以下である。MFRが低すぎると、組成物を射出成形法により成形して射出成形体を得た場合に、フローマークが発生しやすく、また、デラミネーションが発生しやすい。また、MFRが低すぎると、優れた塗膜成形性および電線被覆成形性が得られず、引張応力に対する耐変形性に優れる成形体が得られない。MFRが高すぎると、組成物を射出成形法により成形して射出成形体を得た場合に、射出成形体に繊維状の筋が発生しやすい。また、MFRが高すぎると、優れた塗膜成形性および電線被覆成形性が得られず、耐ストレスクラック性に優れる成形体が得られない。
【0046】
本開示において、メルトフローレートは、ASTM D-1238に準拠して、メルトインデクサーG-01(東洋精機製作所製)を用い、372℃、5kg荷重下で、内径2mm、長さ8mmのダイから10分間あたりに流出するポリマーの質量(g/10分)として得られる値である。
【0047】
MFRは、単量体を重合する際に用いる重合開始剤の種類および量、連鎖移動剤の種類および量などを調整することによって、調整することができる。
【0048】
含フッ素共重合体は、カルボニル基含有末端基、-CF=CFまたは-CHOHを有していてもよいし、有してなくてもよい。含フッ素共重合体の一実施形態においては、カルボニル基含有末端基、-CF=CFおよび-CHOHの合計数が、主鎖炭素数10個当たり、90個以下である。カルボニル基含有末端基、-CF=CFおよび-CHOHの合計数は、たとえば、重合開始剤または連鎖移動剤の種類の適切な選択により、あるいは、後述する含フッ素共重合体の湿潤熱処理またはフッ素化処理により、調整することができる。
【0049】
カルボニル基含有末端基は、たとえば、-COF、-COOH、-COOR(Rはアルキル基)、-CONH、および、-O(C=O)O-R(Rはアルキル基)である。-COORおよび-O(C=O)O-Rが有するアルキル基(R)の種類は、含フッ素共重合体を製造する際に用いた重合開始剤、連鎖移動剤などにより決まり、たとえば、-CHなどの炭素数1~6のアルキル基である。
【0050】
含フッ素共重合体は、-CFHを有していてもよいし、有してなくてもよい。含フッ素共重合体の一実施形態においては、-CFHの数が、主鎖炭素数10個当たり、50個以上である。-CFHの数は、たとえば、重合開始剤または連鎖移動剤の種類の適切な選択により、あるいは、後述する含フッ素共重合体の湿潤熱処理またはフッ素化処理により、調整することができる。
【0051】
上記官能基の種類の同定および官能基数の測定には、赤外分光分析法を用いることができる。
【0052】
官能基数については、具体的には、以下の方法で測定する。まず、上記含フッ素共重合体をコールドプレスにより成形して、厚さ0.25~0.30mmのフィルムを作製する。このフィルムをフーリエ変換赤外分光分析により分析して、上記含フッ素共重合体の赤外吸収スペクトルを得、完全にフッ素化されて官能基が存在しないベーススペクトルとの差スペクトルを得る。この差スペクトルに現れる特定の官能基の吸収ピークから、下記式(A)に従って、上記含フッ素共重合体における炭素原子1×10個あたりの官能基数Nを算出する。
【0053】
N=I×K/t (A)
I:吸光度
K:補正係数
t:フィルムの厚さ(mm)
【0054】
参考までに、いくつかの官能基について、吸収周波数、モル吸光係数および補正係数を表1に示す。また、モル吸光係数は低分子モデル化合物のFT-IR測定データから決定したものである。
【表1】
【0055】
-CHCFH、-CHCOF、-CHCOOH、-CHCOOCH、-CHCONHの吸収周波数は、それぞれ表中に示す、-CFH、-COF、-COOH freeと-COOH bonded、-COOCH、-CONHの吸収周波数から数十カイザー(cm-1)低くなる。
【0056】
たとえば、-COFの官能基数とは、-CFCOFに起因する吸収周波数1883cm-1の吸収ピークから求めた官能基数と、-CHCOFに起因する吸収周波数1840cm-1の吸収ピークから求めた官能基数との合計である。
【0057】
また、-CFH基の数は、核磁気共鳴装置を用い、測定温度を(ポリマーの融点+20)℃として19F-NMR測定を行い、-CFH基のピーク積分値からも求めることができる。
【0058】
-CFH基などの官能基は、含フッ素共重合体の主鎖末端または側鎖末端に存在する官能基、および、主鎖中または側鎖中に存在する官能基である。これらの官能基は、たとえば、含フッ素共重合体を製造する際に用いた連鎖移動剤や重合開始剤によって、含フッ素共重合体に導入される。たとえば、連鎖移動剤としてアルコールを使用する、あるいは重合開始剤として-CHOHの構造を有する過酸化物を使用した場合、含フッ素共重合体の主鎖末端に-CHOHが導入される。また、官能基を有する単量体を重合することによって、上記官能基が含フッ素共重合体の側鎖末端に導入される。
【0059】
このような官能基を有する含フッ素共重合体に対して、湿潤熱処理、フッ素化処理などの処理をすることによって、上記範囲内の官能基数を有する含フッ素共重合体を得ることができる。
【0060】
含フッ素共重合体の融点は、組成物の射出成形性が一層向上することから、好ましくは220~290℃であり、より好ましくは240~280℃である。
【0061】
含フッ素共重合体の融点は、示差走査熱量計〔DSC〕を用いて測定できる。
【0062】
含フッ素共重合体は、塊状重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合などのいずれの重合方法によっても製造することができる。これらの重合方法において、温度、圧力等の各条件、重合開始剤、連鎖移動剤、溶媒やその他の添加剤は、所望の含フッ素共重合体の組成や量に応じて適宜設定することができる。
【0063】
重合開始剤としては、油溶性ラジカル重合開始剤または水溶性ラジカル開始剤を使用できる。
【0064】
油溶性ラジカル重合開始剤としては、公知の油溶性の過酸化物であってよく、たとえば、
ジノルマルプロピルパーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジsec-ブチルパーオキシジカーボネートなどのジアルキルパーオキシカーボネート類;
t-ブチルパーオキシイソブチレート、t-ブチルパーオキシピバレートなどのパーオキシエステル類;
ジt-ブチルパーオキサイドなどのジアルキルパーオキサイド類;
ジ[フルオロ(またはフルオロクロロ)アシル]パーオキサイド類;
などが代表的なものとしてあげられる。
【0065】
ジ[フルオロ(またはフルオロクロロ)アシル]パーオキサイド類としては、[(RfCOO)-](Rfは、パーフルオロアルキル基、ω-ハイドロパーフルオロアルキル基またはフルオロクロロアルキル基)で表されるジアシルパーオキサイドが挙げられる。
【0066】
ジ[フルオロ(またはフルオロクロロ)アシル]パーオキサイド類としては、たとえば、ジ(ω-ハイドロパーフルオロヘキサノイル)パーオキサイド、ジ(ω-ハイドロ-ドデカフルオロヘプタノイル)パーオキサイド、ジ(ω-ハイドロ-テトラデカフルオロオクタノイル)パーオキサイド、ジ(ω-ハイドロ-ヘキサデカフルオロノナノイル)パーオキサイド、ジ(パーフルオロブチリル)パーオキサイド、ジ(パーフルオロパレリル)パーオキサイド、ジ(パーフルオロヘキサノイル)パーオキサイド、ジ(パーフルオロヘプタノイル)パーオキサイド、ジ(パーフルオロオクタノイル)パーオキサイド、ジ(パーフルオロノナノイル)パーオキサイド、ジ(ω-クロロ-ヘキサフルオロブチリル)パーオキサイド、ジ(ω-クロロ-デカフルオロヘキサノイル)パーオキサイド、ジ(ω-クロロ-テトラデカフルオロオクタノイル)パーオキサイド、ω-ハイドロ-ドデカフルオロヘプタノイル-ω-ハイドロヘキサデカフルオロノナノイル-パーオキサイド、ω-クロロ-ヘキサフルオロブチリル-ω-クロローデカフルオロヘキサノイル-パーオキサイド、ω-ハイドロドデカフルオロヘプタノイル-パーフルオロブチリル-パーオキサイド、ジ(ジクロロペンタフルオロブタノイル)パーオキサイド、ジ(トリクロロオクタフルオロヘキサノイル)パーオキサイド、ジ(テトラクロロウンデカフルオロオクタノイル)パーオキサイド、ジ(ペンタクロロテトラデカフルオロデカノイル)パーオキサイド、ジ(ウンデカクロロトリアコンタフルオロドコサノイル)パーオキサイドなどが挙げられる。
【0067】
水溶性ラジカル重合開始剤としては、公知の水溶性過酸化物であってよく、たとえば、過硫酸、過ホウ素酸、過塩素酸、過リン酸、過炭酸などのアンモニウム塩、カリウム塩、ナトリウム塩、t-ブチルパーマレエート、t-ブチルハイドロパーオキサイドなどがあげられる。亜硫酸塩類のような還元剤も併せて含んでもよく、その使用量は過酸化物に対して0.1~20倍であってよい。
【0068】
重合開始剤として、油溶性ラジカル重合開始剤を用いると、-COFおよび-COOHの生成を回避でき、含フッ素共重合体の-COFおよび-COOHの合計数を容易に上述した範囲に調整できることから好ましい。また、油溶性ラジカル重合開始剤を用いると、カルボニル基含有末端基および-CHOHを上述した範囲に調整することも容易になる傾向がある。特に、油溶性ラジカル重合開始剤を用いた懸濁重合により、含フッ素共重合体を製造することが好適である。油溶性ラジカル重合開始剤としては、ジアルキルパーオキシカーボネート類およびジ[フルオロ(またはフルオロクロロ)アシル]パーオキサイド類からなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、ジノルマルプロピルパーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネートおよびジ(ω-ハイドロ-ドデカフルオロヘプタノイル)パーオキサイドからなる群より選択される少なくとも1種がより好ましい。
【0069】
連鎖移動剤としては、たとえば、エタン、イソペンタン、n-ヘキサン、シクロヘキサン等の炭化水素類;トルエン、キシレン等の芳香族類;アセトン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル等の酢酸エステル類;メタノール、エタノール、2,2,2-トリフルオロエタノール等のアルコール類;メチルメルカプタン等のメルカプタン類;四塩化炭素、クロロホルム、塩化メチレン、塩化メチル等のハロゲン化炭化水素;3-フルオロベンゾトリフルオライド等が挙げられる。添加量は用いる化合物の連鎖移動定数の大きさにより変わりうるが、通常、溶媒100質量部に対して0.01~20質量部の範囲で使用される。
【0070】
たとえば、重合開始剤として、ジアルキルパーオキシカーボネート類、ジ[フルオロ(またはフルオロクロロ)アシル]パーオキサイド類などを用いる場合、得られる含フッ素共重合体の分子量が高くなりすぎ、所望のメルトフローレートに調整することが容易でない場合があるが、連鎖移動剤を用いて、分子量を調整することができる。特に、アルコール類などの連鎖移動剤および油溶性ラジカル重合開始剤を用いた懸濁重合により、含フッ素共重合体を製造することが好適である。
【0071】
溶媒としては、水、水とアルコールとの混合溶媒等が挙げられる。また、含フッ素共重合体の重合に用いるモノマーを、溶媒として用いることもできる。
【0072】
懸濁重合では、水に加えて、フッ素系溶媒を使用してもよい。フッ素系溶媒としては、CHCClF、CHCClF、CFCFCClH、CFClCFCFHCl等のハイドロクロロフルオロアルカン類;CFClCFClCFCF、CFCFClCFClCF等のクロロフルオロアルカン類;パーフルオロシクロブタン、CFCFCFCF、CFCFCFCFCF、CFCFCFCFCFCF等のパーフルオロアルカン類等が挙げられ、なかでも、パーフルオロアルカン類が好ましい。フッ素系溶媒の使用量は、懸濁性および経済性の面から、溶媒100質量部に対して、10~100質量部が好ましい。
【0073】
重合温度としては特に限定されず、0~100℃であってよい。また、重合開始剤として、ジアルキルパーオキシカーボネート類、ジ[フルオロ(またはフルオロクロロ)アシル]パーオキサイド類などを用いる場合など、重合開始剤の分解速度が速すぎる場合には、重合温度を0~35℃の範囲とするなど、比較的低温の重合温度を採用することが好ましい。
【0074】
重合圧力は、用いる溶媒の種類、溶媒の量、蒸気圧、重合温度などの他の重合条件に応じて適宜定められるが、通常、0~9.8MPaGであってよい。重合圧力は、好ましくは0.1~5MPaG、より好ましくは0.5~2MPaG、さらに好ましくは0.5~1.5MPaGである。また、重合圧力を1.5MPaG以上とすると、生産効率を向上させることができる。
【0075】
重合における添加剤としては、たとえば、懸濁安定剤が挙げられる。懸濁安定剤としては、従来公知のものであれば特に限定されず、メチルセルロース、ポリビニルアルコール等を使用することができる。懸濁安定剤を用いると、重合反応により生成する懸濁粒子が水性媒体に安定に分散するので、グラスライニングなどの付着防止処理を施していないSUS製の反応槽を使用しても、反応槽に懸濁粒子が付着しにくい。したがって、高圧に耐える反応槽を使用することができるので、高圧下での重合が可能となり、生産効率を向上させることができる。これに対し、懸濁安定剤を用いずに重合を行った場合、付着防止処理を施していないSUS製の反応槽を使用すると、懸濁粒子が付着して生産効率が低下するおそれがある。懸濁安定剤の水性媒体に対する濃度は、条件によって適宜調節することができる。
【0076】
重合反応により含フッ素共重合体を含む水性分散体が得られる場合は、水性分散体中に含まれる含フッ素共重合体を凝析させ、洗浄し、乾燥することにより乾燥含フッ素共重合体を回収してもよい。また、重合反応により含フッ素共重合体がスラリーとして得られる場合は、反応容器からスラリーを取り出し、洗浄し、乾燥することにより乾燥含フッ素共重合体を回収してもよい。乾燥することによりパウダーの形状で含フッ素共重合体を回収できる。
【0077】
重合により得られた含フッ素共重合体を、ペレットに成形してもよい。ペレットに成形する成形方法としては、特に限定はなく、従来公知の方法を用いることができる。たとえば、単軸押出機、二軸押出機、タンデム押出機を用いて含フッ素共重合体を溶融押出しし、所定長さに切断してペレット状に成形する方法などが挙げられる。溶融押出しする際の押出温度は、含フッ素共重合体の溶融粘度や製造方法により変える必要があり、好ましくは含フッ素共重合体の融点+20℃~含フッ素共重合体の融点+140℃である。含フッ素共重合体の切断方法は、特に限定は無く、ストランドカット方式、ホットカット方式、アンダーウオーターカット方式、シートカット方式などの従来公知の方法を採用できる。得られたペレットを、加熱することにより、ペレット中の揮発分を除去してもよい(脱気処理)。得られたペレットを、30~200℃の温水、100~200℃の水蒸気、または、40~200℃の温風と接触させて処理してもよい。
【0078】
重合により得られた含フッ素共重合体を、空気および水の存在下で、100℃以上の温度に加熱してもよい(湿潤熱処理)。湿潤熱処理の方法としては、たとえば、押出機を用いて、空気および水を供給しながら、重合により得られた含フッ素共重合体を溶融させ、押し出す方法が挙げられる。湿潤熱処理により、含フッ素共重合体の-COF、-COOHなどの熱的に不安定な官能基を、熱的に比較的安定な-CFHに変換することができる。空気および水に加えて、アルカリ金属塩の存在下で、含フッ素共重合体を加熱することにより、-CFHへの変換反応を促進することができる。しかしながら、含フッ素共重合体の用途によっては、アルカリ金属塩による汚染を回避すべきであることに留意すべきである。
【0079】
重合により得られた含フッ素共重合体を、フッ素化処理してもよいし、フッ素化処理しなくてもよい。フッ素化処理は、フッ素化処理されていない含フッ素共重合体とフッ素含有化合物とを接触させることにより行うことができる。フッ素化処理により、含フッ素共重合体のカルボニル基含有末端基、-CHOHなどの熱的に不安定な官能基、および、熱的に比較的安定な-CFHなどの官能基を、熱的に極めて安定な-CFに変換することができる。
【0080】
フッ素含有化合物としては特に限定されないが、フッ素化処理条件下にてフッ素ラジカルを発生するフッ素ラジカル源が挙げられる。上記フッ素ラジカル源としては、Fガス、CoF、AgF、UF、OF、N、CFOF、フッ化ハロゲン(たとえばIF、ClF)などが挙げられる。
【0081】
ガスなどのフッ素ラジカル源は、100%濃度のものであってもよいが、安全性の面から不活性ガスと混合し、5~50質量%に希釈して使用することが好ましく、15~30質量%に希釈して使用することがより好ましい。上記不活性ガスとしては、窒素ガス、ヘリウムガス、アルゴンガスなどが挙げられるが、経済的な面より窒素ガスが好ましい。
【0082】
フッ素化処理の条件は、特に限定されず、溶融させた状態の含フッ素共重合体とフッ素含有化合物とを接触させてもよいが、通常、含フッ素共重合体の融点以下、好ましくは20~220℃、より好ましくは100~200℃の温度下で行うことができる。上記フッ素化処理は、一般に1~30時間、好ましくは5~25時間行う。フッ素化処理は、フッ素化処理されていない含フッ素共重合体をフッ素ガス(Fガス)と接触させるものが好ましい。
【0083】
(組成物の構成)
組成物中のPTFEの含有量は、組成物の質量に対して、0.03~0.30質量%であり、好ましくは0.04質量%以上であり、より好ましくは0.05質量%以上であり、好ましくは0.25質量%以下であり、より好ましくは0.20質量%以下であり、さらに好ましくは0.19質量%以下であり、尚さらに好ましくは0.17質量%以下であり、殊さらに好ましくは0.15質量%以下であり、特に好ましくは0.13質量%以下であり、最も好ましくは0.12質量%以下である。PTFEの含有量が少なすぎると、組成物を射出成形法により成形して射出成形体を得た場合に、デラミネーションが発生しやすい。また、PTFEの含有量が少なすぎると、高温高荷重に対する耐変形性、繰返しの応力負荷に対する耐性に優れる成形体が得られない。PTFEの含有量が多すぎると、組成物を射出成形法により成形して射出成形体を得た場合に、射出成形体に繊維状の筋が発生しやすい。また、PTFEの含有量が多すぎると、優れた塗膜成形性および電線被覆成形性が得られず、耐ストレスクラック性に優れる成形体が得られない。
【0084】
組成物は、PTFEおよび上記した含フッ素共重合体とは異なるその他の成分を含有してもよい。その他の成分としては、充填剤、可塑剤、加工助剤、離型剤、顔料、難燃剤、滑剤、光安定剤、耐候安定剤、導電剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、発泡剤、香料、オイル、柔軟化剤、脱フッ化水素剤等を挙げることができる。
【0085】
充填剤としては、たとえば、シリカ、カオリン、クレー、有機化クレー、タルク、マイカ、アルミナ、炭酸カルシウム、テレフタル酸カルシウム、酸化チタン、リン酸カルシウム、フッ化カルシウム、フッ化リチウム、架橋ポリスチレン、チタン酸カリウム、カーボン、チッ化ホウ素、カーボンナノチューブ、ガラス繊維等が挙げられる。導電剤としてはカーボンブラック等があげられる。可塑剤としては、ジオクチルフタル酸、ペンタエリスリトール等があげられる。加工助剤としては、カルナバワックス、スルホン化合物、低分子量ポリエチレン、フッ素系助剤等があげられる。脱フッ化水素剤としては有機オニウム、アミジン類等があげられる。
【0086】
また、上記その他の成分として、PTFEおよび上記した含フッ素共重合体以外のその他のポリマーを用いてもよい。その他のポリマーとしては、PTFEおよび上記した含フッ素共重合体以外のフッ素樹脂、フッ素ゴム、非フッ素化ポリマーなどが挙げられる。
【0087】
組成物の製造方法としては、PTFEおよび含フッ素共重合体を乾式で混合する方法、PTFEおよび含フッ素共重合体を予め混合機で混合し、次いで、ニーダー、溶融押出し機等で溶融混練する方法、PTFEおよび含フッ素共重合体を含有する水性分散体を調製し、PTFEおよび含フッ素共重合体を共凝析させる方法などを挙げることができる。
【0088】
PTFEおよび含フッ素共重合体を含有する組成物であって、PTFEを比較的多く含有する組成物(マスターバッチ)を調製し、さらに、得られた組成物と含フッ素共重合体とを混合することにより、組成物を製造してもよい。組成物(マスターバッチ)の製造方法としては、PTFEおよび含フッ素共重合体を予め混合機で混合し、次いで、ニーダー、溶融押出し機等で溶融混練する方法、PTFEおよび含フッ素共重合体を含有する水性分散体を調製し、PTFEおよび含フッ素共重合体を共凝析させる方法などを挙げることができる。得られた組成物(マスターバッチ)と含フッ素共重合体とを混合する方法としては、たとえば、両者を乾式で混合する方法、ニーダー、溶融押出し機等を用いて両者を溶融混練する方法などを挙げることができる。
【0089】
PTFEおよび含フッ素共重合体を含有する組成物を調製した後、得られる組成物に対して、湿潤熱処理またはフッ素化処理を行ってもよい。組成物の湿潤熱処理およびフッ素化処理は、含フッ素共重合体の湿潤熱処理およびフッ素化処理の方法と同様の方法により行うことができる。
【0090】
組成物の形状は、特に限定されず、粉体、ペレット等であってよい。
【0091】
(組成物の成形および用途)
本開示の組成物は、成形材料として用いることができ、特に射出成形法に用いる成形材料として好適に用いることができる。本開示の組成物を成形することにより、成形体を得ることができる。本開示の組成物を含有する成形体は、美観に優れ、高温高荷重に対する耐変形性にも優れている。
【0092】
本開示の組成物は、粉体塗料として使用することもできる。上記した製造方法により、組成物が粉体として得られる場合は、得られた粉体をそのまま粉体塗料として用いることができる。上記した製造方法により得られる組成物が粉体でない場合は、たとえば、組成物を製造した後、得られた組成物をロールでシート状に圧縮し、粉砕機により粉砕し、分級することにより、粉体塗料を製造することができる。粉体塗料の平均粒子径は、好ましくは10~1000μmである。粉体塗料は、通常、被塗装物に塗布した後、加熱焼成して造膜させることにより施工される。このように施工して得られる塗膜は、耐食ライニング等として、様々な用途に用いることができる。
【0093】
組成物を成形する方法は特に限定されず、射出成形法、押出成形法、圧縮成形法、ブロー成形法、トランスファー成形法、ロト成形法、ロトライニング成形法等が挙げられる。成形方法としては、なかでも、押出成形法、圧縮成形法、射出成形法またはトランスファー成形法が好ましく、高い生産性で成形体を生産できることから、射出成形法、押出成形法またはトランスファー成形法がより好ましく、射出成形法がさらに好ましい。すなわち、成形体としては、押出成形体、圧縮成形体、射出成形体またはトランスファー成形体であることが好ましく、高い生産性で生産できることから、射出成形体、押出成形体またはトランスファー成形体であることがより好ましく、射出成形体であることがさらに好ましい。本開示の組成物を射出成形法により成形することにより、美麗な成形体を得ることができる。
【0094】
また、本開示の組成物からは、高温高荷重に対する耐変形性、耐ストレスクラック性、引張応力に対する耐変形性、繰返しの応力負荷に対する耐性に優れる成形体を得ることができる。
【0095】
本開示の成形体の105℃における引張弾性率は、好ましくは50.0MPa以上であり、より好ましくは51.0MPa以上であり、さらに好ましくは53.0MPa以上であり、尚さらに好ましくは、54.0MPa以上であり、殊更に好ましくは55.0MPa以上であり、特に好ましくは56.0MPa以上であり、最も好ましくは57.0MPa以上である。引張弾性率が高い成形体は、引張応力に対する耐変形性に優れている。
【0096】
本開示の成形体の32万回時点の引張強度は、好ましくは5.30N以上であり、より好ましくは5.40N以上であり、さらに好ましくは5.50N以上である。32万回時点の引張強度が高い成形体は、繰返しの応力負荷に対する耐性が優れている。
【0097】
成形体としては、たとえば、ナット、ボルト、継手、フィルム、ボトル、ガスケット、電線被覆、チューブ、ホース、パイプ、バルブ、シート、シール、パッキン、タンク、ローラー、容器、コック、コネクタ、フィルターハウジング、フィルターケージ、流量計、ポンプ、ウェハーキャリア、ウェハーボックス等であってもよい。
【0098】
本開示の組成物または上記の成形体は、例えば、次の用途に使用できる。
食品包装用フィルム、食品製造工程で使用する流体移送ラインのライニング材、パッキン、シール材、シート等の食品製造装置用流体移送部材;
薬品用の薬栓、包装フィルム、薬品製造工程で使用される流体移送ラインのライニング材、パッキン、シール材、シート等の薬液移送部材;
化学プラントや半導体工場の薬液タンクや配管の内面ライニング部材;
自動車の燃料系統並びに周辺装置に用いられるO(角)リング・チューブ・パッキン、バルブ芯材、ホース、シール材等、自動車のAT装置に用いられるホース、シール材等の燃料移送部材;
自動車のエンジン並びに周辺装置に用いられるキャブレターのフランジガスケット、シャフトシール、バルブステムシール、シール材、ホース等、自動車のブレーキホース、エアコンホース、ラジエーターホース、電線被覆材等のその他の自動車部材;
半導体製造装置のO(角)リング、チューブ、パッキン、バルブ芯材、ホース、シール材、ロール、ガスケット、ダイヤフラム、継手等の半導体装置用薬液移送部材;
塗装設備用の塗装ロール、ホース、チューブ、インク用容器等の塗装・インク用部材;
飲食物用のチューブ又は飲食物用ホース等のチューブ、ホース、ベルト、パッキン、継手等の飲食物移送部材、食品包装材、ガラス調理機器;
廃液輸送用のチューブ、ホース等の廃液輸送用部材;
高温液体輸送用のチューブ、ホース等の高温液体輸送用部材;
スチーム配管用のチューブ、ホース等のスチーム配管用部材;
船舶のデッキ等の配管に巻き付けるテープ等の配管用防食テープ;
電線被覆材、光ファイバー被覆材、太陽電池の光起電素子の光入射側表面に設ける透明な表面被覆材および裏面剤等の各種被覆材;
ダイヤフラムポンプのダイヤフラムや各種パッキン類等の摺動部材;
農業用フィルム、各種屋根材・側壁等の耐侯性カバー;
建築分野で使用される内装材、不燃性防火安全ガラス等のガラス類の被覆材;
家電分野等で使用されるラミネート鋼板等のライニング材;
【0099】
上記自動車の燃料系統に用いられる燃料移送部材としては、更に、燃料ホース、フィラーホース、エバポホース等が挙げられる。上記燃料移送部材は、耐サワーガソリン用、耐アルコール燃料用、耐メチルターシャルブチルエーテル・耐アミン等ガソリン添加剤入燃料用の燃料移送部材として使用することもできる。
【0100】
上記薬品用の薬栓・包装フィルムは、酸等に対し優れた耐薬品性を有する。また、上記薬液移送部材として、化学プラント配管に巻き付ける防食テープも挙げることができる。
【0101】
上記成形体としては、また、自動車のラジエータタンク、薬液タンク、ベロース、スペーサ、ローラー、ガソリンタンク、廃液輸送用容器、高温液体輸送用容器、漁業・養魚タンク等が挙げられる。
【0102】
上記成形体としては、更に、自動車のバンパー、ドアトリム、計器板、食品加工装置、調理機器、撥水撥油性ガラス、照明関連機器、OA機器の表示盤・ハウジング、電照式看板、ディスプレイ、液晶ディスプレイ、携帯電話、プリント基盤、電気電子部品、雑貨、ごみ箱、浴槽、ユニットバス、換気扇、照明枠等に用いられる部材も挙げられる。
【0103】
成形体は、ガスケット、パッキンなどの被圧縮部材として好適に利用することができる。被圧縮部材は、ガスケットまたはパッキンであってよい。
【0104】
被圧縮部材の大きさや形状は用途に応じて適宜設定すればよく、特に限定されない。被圧縮部材の形状は、たとえば、環状であってよい。また、被圧縮部材は、平面視で円形、長円形、角を丸めた四角形などの形状を有し、かつその中央部に貫通孔を有するものであってよい。
【0105】
被圧縮部材は、非水電解液電池を構成するための部材として用いることが好ましい。被圧縮部材は、非水電解液電池中の非水電解液と接する状態で用いられる部材として、特に好適である。すなわち、被圧縮部材は、非水電解液電池中の非水電解液との接液面を有するものであってもよい。
【0106】
非水電解液電池としては、非水電解液を備える電池であれば特に限定されず、たとえば、リチウムイオン二次電池、リチウムイオンキャパシタなどが挙げられる。また、非水電解液電池を構成する部材としては、封止部材、絶縁部材などが挙げられる。
【0107】
上記非水電解液は、特に限定されるものではないが、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、γ-ブチルラクトン、1,2-ジメトキシエタン、1,2-ジエトキシエタン、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネートなどの公知の溶媒の1種もしくは2種以上が使用できる。非水電解液電池は、電解質をさらに備えてもよい。上記電解質は、特に限定されるものではないが、LiClO、LiAsF、LiPF、LiBF、LiCl、LiBr、CHSOLi、CFSOLi、炭酸セシウムなどを用いることができる。
【0108】
被圧縮部材は、たとえば、封止ガスケット、封止パッキンなどの封止部材、絶縁ガスケット、絶縁パッキンなどの絶縁部材として、好適に利用できる。封止部材は、液体もしくは気体の漏出または外部からの液体もしくは気体の侵入を防止するために用いられる部材である。絶縁部材は、電気を絶縁するために用いられる部材である。被圧縮部材は、封止および絶縁の両方の目的のために用いられる部材であってもよい。
【0109】
被圧縮部材は、非水電解液電池用封止部材または非水電解液電池用絶縁部材として好適に使用できる。また、被圧縮部材は、上記の組成物を含有することから、優れた絶縁特性を有している。したがって、被圧縮部材を絶縁部材として使用した場合には、2以上の導電部材にしっかりと密着して、短絡を長期間に渡って防止する。
【0110】
本開示の組成物は、電線被覆を形成するための材料として好適に利用することができる。本開示の組成物を含有する被覆層を備える被覆電線は、高温の環境中で荷重が負荷されても変形しにくい。
【0111】
被覆電線は、心線と、前記心線の周囲に設けられており、本開示の組成物を含有する被覆層と、を備えるものである。例えば、心線上に本開示の組成物を溶融押出成形した押出成形体を上記被覆層とすることができる。被覆電線は、LANケーブル(Eathernet Cable)、高周波伝送ケーブル、フラットケーブル、耐熱ケーブル等に好適であり、なかでも、LANケーブル(Eathernet Cable)、高周波伝送ケーブルなどの伝送ケーブルに好適である。
【0112】
心線の材料としては、例えば、銅、アルミ等の金属導体材料を用いることができる。心線は、直径0.02~3mmであるものが好ましい。心線の直径は、0.04mm以上であることがより好ましく、0.05mm以上が更に好ましく、0.1mm以上が特に好ましい。心線の直径は、2mm以下がより好ましい。
【0113】
心線の具体例としては、例えば、AWG(アメリカンワイヤゲージ)-46(直径40マイクロメートルの中実銅製ワイヤー)、AWG-26(直径404マイクロメートルの中実銅製ワイヤー)、AWG-24(直径510マイクロメートルの中実銅製ワイヤー)、AWG-22(直径635マイクロメートルの中実銅製ワイヤー)等を用いてもよい。
【0114】
被覆層の厚みは、0.1~3.0mmであるものが好ましい。被覆層の厚みは、2.0mm以下であることも好ましい。
【0115】
高周波伝送ケーブルとしては、同軸ケーブルが挙げられる。同軸ケーブルは、一般に、内部導体、絶縁被覆層、外部導体層および保護被覆層が芯部より外周部に順に積層することからなる構造を有する。本開示の組成物を含有する成形体は、絶縁被覆層として、好適に利用することができる。上記構造における各層の厚さは特に限定されないが、通常、内部導体は直径約0.1~3mmであり、絶縁被覆層は、厚さ約0.3~3mm、外部導体層は、厚さ約0.5~10mm、保護被覆層は、厚さ約0.5~2mmである。
【0116】
被覆層は、気泡を含有するものであってもよく、気泡が被覆層中に均一に分布しているものが好ましい。
【0117】
気泡の平均泡径は限定されるものではないが、例えば、60μm以下であることが好ましく、45μm以下であることがより好ましく、35μm以下であることが更に好ましく、30μm以下であることが更により好ましく、25μm以下であることが特に好ましく、23μm以下であることが殊更に好ましい。また、平均泡径は、0.1μm以上であることが好ましく、1μm以上であることがより好ましい。平均泡径は、電線断面の電子顕微鏡画像を取り、画像処理により各泡の直径を算出し、平均することにより求めることができる。
【0118】
被覆層は、発泡率が20%以上であってもよい。より好ましくは30%以上であり、更に好ましくは33%以上であり、更により好ましくは35%以上である。上限は特に限定されないが、例えば、80%である。発泡率の上限は60%であってもよい。発泡率は、((電線被覆材の比重-被覆層の比重)/電線被覆材の比重)×100として求める値である。発泡率は、例えば後述する押出機中のガスの挿入量の調節等により、あるいは、溶解するガスの種類を選択することにより、用途に応じて適宜調整することができる。
【0119】
被覆電線は、上記心線と上記被覆層との間に別の層を備えていてもよく、被覆層の周囲に更に別の層(外層)を備えていてもよい。被覆層が気泡を含有する場合、電線は、心線と被覆層の間に非発泡層を挿入した2層構造(スキン-フォーム)や、外層に非発泡層を被覆した2層構造(フォーム-スキン)、更にはスキン-フォームの外層に非発泡層を被覆した3層構造(スキン-フォーム-スキン)であってもよい。非発泡層は特に限定されず、TFE/HFP系共重合体、TFE/PAVE共重合体、TFE/エチレン系共重合体、フッ化ビニリデン系重合体、ポリエチレン〔PE〕等のポリオレフィン樹脂、ポリ塩化ビニル〔PVC〕等の樹脂からなる樹脂層であってよい。
【0120】
被覆電線は、たとえば、押出機を用いて、組成物を加熱し、組成物が溶融した状態で心線上に押し出し、被覆層を形成することにより製造することができる。
【0121】
被覆層の形成に際しては、組成物を加熱し、組成物が溶融した状態で、組成物中にガスを導入することにより、気泡を含有する上記被覆層を形成することもできる。ガスとしては、たとえば、クロロジフルオロメタン、窒素、二酸化炭素等のガス又は上記ガスの混合物を用いることができる。ガスは、加熱した組成物中に加圧気体として導入してもよいし、化学的発泡剤を組成物中に混和させることにより発生させてもよい。ガスは、溶融状態の組成物中に溶解する。
【0122】
また、本開示の組成物は、高周波信号伝送用製品の材料として、好適に利用することができる。
【0123】
上記高周波信号伝送用製品としては、高周波信号の伝送に用いる製品であれば特に限定されず、(1)高周波回路の絶縁板、接続部品の絶縁物、プリント配線基板等の成形板、(2)高周波用真空管のベース、アンテナカバー等の成形体、(3)同軸ケーブル、LANケーブル等の被覆電線等が挙げられる。上記高周波信号伝送用製品は、衛星通信機器、携帯電話基地局などのマイクロ波、特に3~30GHzのマイクロ波を利用する機器に、好適に使用することができる。
【0124】
上記高周波信号伝送用製品において、本開示の組成物は、誘電正接が低い点で、絶縁体として好適に用いることができる。
【0125】
上記(1)成形板としては、良好な電気特性が得られる点で、プリント配線基板が好ましい。上記プリント配線基板としては特に限定されないが、例えば、携帯電話、各種コンピューター、通信機器等の電子回路のプリント配線基板が挙げられる。上記(2)成形体としては、誘電損失が低い点で、アンテナカバーが好ましい。
【0126】
本開示の組成物は、フィルムに好適に利用することができる。
【0127】
フィルムは、離型フィルムとして有用である。離型フィルムは、本開示の組成物を、溶融押出成形、カレンダー成形、プレス成形、流延成形等により成形して製造することができる。均一な薄膜が得られる観点から、溶融押出成形により離型フィルムを製造することができる。
【0128】
フィルムは、OA機器に用いるロールの表面に適用することができる。また、本開示の組成物を、押出成形、圧縮成形、プレス成形などにより必要な形状に成形してシート状やフィルム状、チューブ状に成形し、OA機器ロールまたはOA機器ベルト等の表面材料に使用することができる。特に溶融押出成形法により薄肉のチューブやフィルムを製造することができる。
【0129】
本開示の組成物は、チューブ、ボトルなどにも好適に利用することができる。
【0130】
以上、実施形態を説明したが、特許請求の範囲の趣旨および範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。
【0131】
<1> 本開示の第1の観点によれば、
ポリテトラフルオロエチレンと含フッ素共重合体とを含有する組成物であって、
前記組成物中の前記ポリテトラフルオロエチレンの含有量が、前記組成物の質量に対して、0.03~0.30質量%であり、
前記含フッ素共重合体が、テトラフルオロエチレン単位、ヘキサフルオロプロピレン単位およびパーフルオロ(プロピルビニルエーテル)単位を含有し、
前記含フッ素共重合体中のヘキサフルオロプロピレン単位の含有量が、全単量体単位に対して、8.5~11.2質量%であり、
パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)単位の含有量が、全単量体単位に対して、0.5~2.0質量%であり、
372℃におけるメルトフローレートが、13.0~42.0g/10分である
組成物が提供される。
<2> 本開示の第2の観点によれば、
前記含フッ素共重合体中のヘキサフルオロプロピレン単位の含有量が、全単量体単位に対して、9.4~11.0質量%である第1の観点による組成物が提供される。
<3> 本開示の第3の観点によれば、
前記含フッ素共重合体中のパーフルオロ(プロピルビニルエーテル)単位の含有量が、全単量体単位に対して、0.7~1.8質量%である第1または第2の観点による組成物が提供される。
<4> 本開示の第4の観点によれば、
前記含フッ素共重合体の372℃におけるメルトフローレートが、15.0~38.0g/10分である第1~第3のいずれかの観点による組成物が提供される。
<5> 本開示の第5の観点によれば、
前記ポリテトラフルオロエチレンの標準比重が、2.15~2.25である第1~第4のいずれかの観点による組成物が提供される。
<6> 本開示の第6の観点によれば、
前記組成物中の前記ポリテトラフルオロエチレンの含有量が、前記組成物の質量に対して、0.05~0.20質量%である第1~第5のいずれかの観点による組成物が提供される。
<7> 本開示の第7の観点によれば、
第1~第6のいずれかの観点による組成物を含有する射出成形体が提供される。
<8> 本開示の第8の観点によれば、
第1~第6のいずれかの観点による組成物を含有する粉体塗料が提供される。
<9> 本開示の第9の観点によれば、
第1~第6のいずれかの観点による組成物を含有する被覆層を備える被覆電線が提供される。
【実施例
【0132】
つぎに本開示の実施形態について実験例をあげて説明するが、本開示はかかる実験例のみに限定されるものではない。
【0133】
実験例の各数値は以下の方法により測定した。
【0134】
(単量体単位の含有量)
含フッ素共重合体の各単量体単位の含有量は、NMR分析装置(たとえば、ブルカーバイオスピン社製、AVANCE300 高温プローブ)、または、赤外吸収測定装置(パーキンエルマー社製、Spectrum One)を用いて測定した。
【0135】
(メルトフローレート(MFR))
含フッ素共重合体のMFRは、ASTM D-1238に準拠して、メルトインデクサーG-01(東洋精機製作所製)を用い、372℃、5kg荷重下で、内径2mm、長さ8mmのダイから10分間あたりに流出するポリマーの質量(g/10分)を測定することにより、求めた。
【0136】
(-CFHの数)
含フッ素共重合体の-CFH基の数は、核磁気共鳴装置AVANCE-300(ブルカーバイオスピン社製)を用い、測定温度を(ポリマーの融点+20)℃として19F-NMR測定を行い、-CFH基のピーク積分値から求めた。
【0137】
(-COOH、-COOCH、-CHOH、-COF、-CF=CF、-CONHの数)
実験例で得られた乾燥粉体もしくはペレットを、コールドプレスにより成形して、厚さ0.25~0.3mmのフィルムを作製した。このフィルムをフーリエ変換赤外分光分析装置〔FT-IR(Spectrum One、パーキンエルマー社製)〕により40回スキャンし、分析して赤外吸収スペクトルを得た。得られた赤外吸収スペクトルを、既知のフィルムの赤外吸収スペクトルと比較して末端基の種類を決定した。また、得られた赤外吸収スペクトルと、既知のフィルムの赤外吸収スペクトルとの差スペクトルに現れる特定の官能基の吸収ピークから、下記式(A)に従って試料における炭素原子1×10個あたりの官能基数Nを算出した。
【0138】
N=I×K/t (A)
I:吸光度
K:補正係数
t:フィルムの厚さ(mm)
【0139】
参考までに、実験例における官能基について、吸収周波数、モル吸光係数および補正係数を表2に示す。また、モル吸光係数は低分子モデル化合物のFT-IR測定データから決定したものである。
【0140】
【表2】
【0141】
(-OC(=O)O-R(カーボネート基)の数)
国際公開第2019/220850号に記載の方法にて分析を行った。吸収周波数を1817cm-1、モル吸光度係数を170(l/cm/mol)、補正係数を1426とした以外は、官能基数Nの算出方法と同様にして、-OC(=O)O-R(カーボネート基)の数を算出した。
【0142】
(含フッ素共重合体の融点)
含フッ素共重合体の融点は、示差走査熱量計(商品名:X-DSC7000、日立ハイテクサイエンス社製)を用いて、昇温速度10℃/分で200℃から350℃までの1度目の昇温を行い、続けて、冷却速度10℃/分で350℃から200℃まで冷却し、再度、昇温速度10℃/分で200℃から350℃までの2度目の昇温を行い、2度目の昇温過程で生ずる溶融曲線ピークから融点を求めた。
【0143】
(標準比重)
PTFEの標準比重は、ASTM D4895-89に準拠して成形されたサンプルを用い、ASTM D 792に準拠した水置換法により測定した。
【0144】
(PTFEの融点)
PTFEの融点は、示差走査熱量計(商品名:X-DSC7000、日立ハイテクサイエンス社製)を用いて、昇温速度10℃/分で230℃から380℃までの1度目の昇温を行い、続けて、冷却速度10℃/分で380℃から230℃まで冷却し、再度、昇温速度10℃/分で230℃から380℃までの2度目の昇温を行い、2度目の昇温過程で生ずる溶融曲線ピークから融点を求めた。
【0145】
(平均一次粒子径)
固形分0.22質量%になるように水で希釈したPTFEを含有する水性分散体について、単位長さに対する波長500nmの投射光の透過率を測定し、予め透過型電子顕微鏡写真における定方向径を測定して得たPTFE数基準長さ平均一次粒子径と上記透過率との検量線に基づいて決定した。
【0146】
実験例1~17、20、21では以下のPTFEの水性分散体を用いた。
PTFEを含有する水性分散体
PTFE:フィブリル化性および非溶融加工性を有するTFEホモポリマー
PTFEの標準比重:2.173
PTFEの融点:327℃
PTFEの平均一次粒子径:300nm
固形分濃度:30質量%
【0147】
実験例1
特開2010-235667号公報に記載の製造方法に準じて、反応スケール、反応圧力、TFE仕込み量、HFP仕込み量、PPVE仕込み量、過硫酸アンモニウムの仕込み量等を適宜調整し、固形分濃度20.5質量%、TFE/HFP/PPVE共重合体(FEP)の水性分散体を作製した。
【0148】
このFEP水性分散体に、水性分散体中の固形分に対するPTFE固形分の比率が0.50質量%になるように、PTFEの水性分散体を加えて混合したのちに、水と60%硝酸を加えて攪拌して凝析させ、固体相と液体相が分離したのち、水分を取り除いた。脱イオン水を用いて洗浄後、得られた白色粉末を、200℃にて60時間乾燥させ粉体を得た。
【0149】
(ペレット化)
得られた粉体を、2軸スクリュー型押出機(KZW15TW-60MG-NH-700,テクノベル社製)により385℃にて溶融押出して、ペレットを得た。得られたペレットを用いて、ペレット中のFEPの各単量体単位の含有量を測定した。結果を表3に示す。
【0150】
(フッ素化)
得られたペレットを、電気炉にて200℃で72時間脱気した後、真空振動式反応装置VVD-30(大川原製作所社製)に入れ、200℃に昇温した。真空引き後、Nガスで20体積%に希釈したFガスを大気圧まで導入した。Fガス導入時から0.5時間後、いったん真空引きし、再度Fガスを導入した。さらにその0.5時間後、再度真空引きし、再度Fガスを導入した。以降、上記Fガス導入及び真空引きの操作を1時間に1回行い続け、200℃の温度下で8時間反応を行った。反応終了後、反応器内をNガスに十分に置換して、フッ素化反応を終了し、ペレットを得た。得られたペレットを用いて、ペレット中のFEPのMFR、融点、官能基数を測定した。結果を表3に示す。
【0151】
実験例2
特開2010-235667号公報に記載の製造方法に準じて、反応スケール、反応圧力、TFE仕込み量、HFP仕込み量、PPVE仕込み量、過硫酸アンモニウムの仕込み量等を適宜調整し、固形分濃度20.5質量%、TFE/HFP/PPVE共重合体(FEP)の水性分散体を作製した。
【0152】
このFEP水性分散体に、水性分散体中の固形分に対するPTFE固形分の比率が0.06質量%になるように、PTFEの水性分散体を加えて混合したのちに、水と60%硝酸を加えて攪拌して凝析させ、固体相と液体相が分離したのち、水分を取り除いた。脱イオン水を用いて洗浄後、得られた白色粉末を、200℃にて60時間乾燥させ粉体を得た。
【0153】
(ペレット化)
得られた粉体を、2軸スクリュー型押出機(KZW15TW-60MG-NH-700,テクノベル社製)により370℃にて溶融押出して、フッ素樹脂組成物のペレットを得た。得られたペレットを用いて、ペレット中のFEPの各単量体単位の含有量を測定した。結果を表3に示す。
【0154】
(フッ素化)
得られたペレットを、実験例1と同様の方法にてフッ素化を行った。得られたペレットを用いて、ペレット中のFEPのMFR、融点、官能基数を測定した。結果を表3に示す。
【0155】
実験例3
実験例2で作製されたペレット86質量部と実験例1で作製されたペレット14質量部を混合した後に、2軸スクリュー型押出機(ラボプラストミル30C-150,東洋精機社製)により345℃にて溶融押出して、PTFEの含有量が0.12質量%のペレットを得た。得られたペレットを用いて、ペレット中のFEPの各単量体単位の含有量、MFR、融点、官能基数を測定した。結果を表3に示す。
【0156】
実験例4
特開2010-235667号公報に記載の製造方法に準じて、反応スケール、反応圧力、TFE仕込み量、HFP仕込み量、PPVE仕込み量、過硫酸アンモニウムの仕込み量等を適宜調整し、固形分濃度20.5質量%、TFE/HFP/PPVE共重合体(FEP)の水性分散体を作製した。
【0157】
このFEP水性分散体に、水性分散体中の固形分に対するPTFE固形分の比率が0.07質量%になるように、PTFEの水性分散体を加えて混合したのちに、水と60%硝酸を加えて攪拌して凝析させ、固体相と液体相が分離したのち、水分を取り除いた。脱イオン水を用いて洗浄後、得られた白色粉末を、200℃にて60時間乾燥させ粉体を得た。
【0158】
(ペレット化)
得られた粉体を、国際公開第2006/123694号の実施例1の段落0058に記載の方法で、ペレットに成形した(湿潤熱処理)。得られたペレットを用いて、ペレット中のFEPの各単量体単位の含有量、MFR、融点、官能基数を測定した。結果を表3に示す。
【0159】
実験例5
特開2010-235667号公報に記載の製造方法に準じて、反応スケール、反応圧力、TFE仕込み量、HFP仕込み量、PPVE仕込み量、過硫酸アンモニウムの仕込み量等を適宜調整し、共重合体(FEP)の水性分散体を作製した。
【0160】
このFEP水性分散体に、水と60%硝酸を加えて攪拌して凝析させ、固体相と液体相が分離したのち、水分を取り除いた。脱イオン水を用いて洗浄後、得られた白色粉末を、200℃にて60時間乾燥させ粉体を得た。
【0161】
(ペレット化)
得られた粉体を、実験例2の方法にて押出ペレット化を行った。得られたペレットを用いて、ペレット中のFEPの各単量体単位の含有量を測定した。結果を表3に示す。
【0162】
(フッ素化)
得られたペレットを、実験例1と同様の方法にてフッ素化を行った。得られたペレットを用いて、ペレット中のFEPのMFR、融点、官能基数を測定した。結果を表3に示す。
【0163】
実験例6
特開2010-235667号公報に記載の製造方法に準じて、反応スケール、反応圧力、TFE仕込み量、HFP仕込み量、PPVE仕込み量、過硫酸アンモニウムの仕込み量等を適宜調整し、固形分濃度20.5質量%、TFE/HFP/PPVE共重合体(FEP)の水性分散体を作製した。
【0164】
このFEP水性分散体に、水性分散体中の固形分に対するPTFE固形分の比率が0.07質量%になるように、PTFEの水性分散体を加えて混合したのちに、水と60%硝酸を加えて攪拌して凝析させ、固体相と液体相が分離したのち、水分を取り除いた。脱イオン水を用いて洗浄後、得られた白色粉末を、200℃にて60時間乾燥させ粉体を得た。
【0165】
(ペレット化)
得られた粉体を、実験例2の方法にて押出ペレット化を行った。得られたペレットを用いて、ペレット中のFEPの各単量体単位の含有量を測定した。結果を表3に示す。
(フッ素化)
得られたペレットを、実験例1と同様の方法にてフッ素化を行った。得られたペレットを用いて、ペレット中のFEPのMFR、融点、官能基数を測定した。結果を表3に示す。
【0166】
実験例7
フッ素化されたTFE/HFP/PPVE共重合体(FEP)のペレット82質量部と実験例1で作製されたペレット18質量部を混合した後に、2軸スクリュー型押出機(ラボプラストミル30C-150,東洋精機社製)により345℃にて溶融押出して、PTFEの含有量が0.09質量%のフッ素樹脂組成物のペレットを得た。得られたペレットを用いて、ペレット中のFEPの各単量体単位の含有量、MFR、融点、官能基数を測定した。結果を表3に示す。
【0167】
実験例8
国際公開第2009/044753号の実施例1の方法にてペレットを得た。得られたペレットを用いて、ペレット中のFEPの各単量体単位の含有量、MFR、融点、官能基数を測定した。結果を表3に示す。
【0168】
実験例9
国際公開第2006/123694号の実施例1の方法にてペレットを得た。得られたペレットを用いて、ペレット中のFEPの各単量体単位の含有量、MFR、融点、官能基数を測定した。結果を表3に示す。
【0169】
実験例10
フッ素化されたTFE/HFP/PPVE共重合体(FEP)のペレット86質量部と実験例1で作製されたペレット14質量部を混合した後に、2軸スクリュー型押出機(ラボプラストミル30C-150,東洋精機社製)により345℃にて溶融押出して、PTFEの含有量が0.07質量%のフッ素樹脂組成物のペレットを得た。得られたペレットを用いて、ペレット中のFEPの各単量体単位の含有量、MFR、融点、官能基数を測定した。結果を表3に示す。
【0170】
実験例11
フッ素化されたTFE/HFP/PPVE共重合体(FEP)のペレット86質量部と実験例1で作製されたペレット14質量部を混合した後に、2軸スクリュー型押出機(ラボプラストミル30C-150,東洋精機社製)により345℃にて溶融押出して、PTFEの含有量が0.07質量%のフッ素樹脂組成物のペレットを得た。得られたペレットを用いて、ペレット中のFEPの各単量体単位の含有量、MFR、融点、官能基数を測定した。結果を表3に示す。
【0171】
実験例12
フッ素化されたTFE/HFP/PPVE共重合体(FEP)のペレット86質量部と実験例1で作製されたペレット14質量部を混合した後に、2軸スクリュー型押出機(ラボプラストミル30C-150,東洋精機社製)により345℃にて溶融押出して、PTFEの含有量が0.07質量%のフッ素樹脂組成物のペレットを得た。得られたペレットを用いて、ペレット中のFEPの各単量体単位の含有量、MFR、融点、官能基数を測定した。結果を表3に示す。
【0172】
実験例13
フッ素化されたTFE/HFP/PPVE共重合体(FEP)のペレット86質量部と実験例1で作製されたペレット14質量部を混合した後に、2軸スクリュー型押出機(ラボプラストミル30C-150,東洋精機社製)により345℃にて溶融押出して、PTFEの含有量が0.07質量%のフッ素樹脂組成物のペレットを得た。得られたペレットを用いて、ペレット中のFEPの各単量体単位の含有量、MFR、融点、官能基数を測定した。結果を表3に示す。
【0173】
実験例14
フッ素化されたTFE/HFP/PPVE共重合体(FEP)のペレット86質量部と実験例1で作製されたペレット14質量部を混合した後に、2軸スクリュー型押出機(ラボプラストミル30C-150,東洋精機社製)により345℃にて溶融押出して、PTFEの含有量が0.07質量%のフッ素樹脂組成物のペレットを得た。得られたペレットを用いて、ペレット中のFEPの各単量体単位の含有量、MFR、融点、官能基数を測定した。結果を表3に示す。
【0174】
実験例15
フッ素化されたTFE/HFP/PPVE共重合体(FEP)のペレット86質量部と実験例1で作製されたペレット14質量部を混合した後に、2軸スクリュー型押出機(ラボプラストミル30C-150,東洋精機社製)により345℃にて溶融押出して、PTFEの含有量が0.07質量%のフッ素樹脂組成物のペレットを得た。得られたペレットを用いて、ペレット中のFEPの各単量体単位の含有量、MFR、融点、官能基数を測定した。結果を表3に示す。
【0175】
実験例16
フッ素化されたTFE/HFP/PPVE共重合体(FEP)のペレット86質量部と実験例1で作製されたペレット14質量部を混合した後に、2軸スクリュー型押出機(ラボプラストミル30C-150,東洋精機社製)により345℃にて溶融押出して、PTFEの含有量が0.07質量%のフッ素樹脂組成物のペレットを得た。得られたペレットを用いて、ペレット中のFEPの各単量体単位の含有量、MFR、融点、官能基数を測定した。結果を表3に示す。
【0176】
実験例17
フッ素化されたTFE/HFP/PPVE共重合体(FEP)のペレット90質量部と実験例1で作製されたペレット10質量部を混合した後に、2軸スクリュー型押出機(ラボプラストミル30C-150,東洋精機社製)により345℃にて溶融押出して、PTFEの含有量が0.05質量%のフッ素樹脂組成物のペレットを得た。得られたペレットを用いて、ペレット中のFEPの各単量体単位の含有量、MFR、融点、官能基数を測定した。結果を表3に示す。
【0177】
実験例18
実験例18ではPTFE水性分散体2を用いた。
PTFE水性分散体2
PTFE:フィブリル化性および非溶融加工性を有するTFEホモポリマー
PTFEの標準比重:2.200
PTFEの融点:327℃
PTFEの平均一次粒子径:300nm
固形分濃度:30質量%
【0178】
特開2010-235667号公報に記載の製造方法に準じて、反応スケール、反応圧力、TFE仕込み量、HFP仕込み量、PPVE仕込み量、過硫酸アンモニウムの仕込み量等を適宜調整し、固形分濃度20.5質量%、TFE/HFP/PPVE共重合体(FEP)の水性分散体を作製した。
【0179】
このFEP水性分散体に、水性分散体中の固形分に対するPTFE固形分の比率が0.20質量%になるように、PTFE水性分散体2を加えて混合したのちに、水と60%硝酸を加えて攪拌して凝析させ、固体相と液体相が分離したのち、水分を取り除いた。脱イオン水を用いて洗浄後、得られた白色粉末を、200℃にて60時間乾燥させ粉体を得た。
【0180】
(ペレット化)
得られた粉体を、2軸スクリュー型押出機(KZW15TW-60MG-NH-700,テクノベル社製)により375℃にて溶融押出して、フッ素樹脂組成物のペレットを得た。得られたペレットを用いて、ペレット中のFEPの各単量体単位の含有量を測定した。結果を表3に示す。
【0181】
(フッ素化)
得られたペレットを、実験例1と同様の方法にてフッ素化を行った。得られたペレットを用いて、ペレット中のFEPのMFR、融点、官能基数を測定した。結果を表3に示す。
【0182】
実験例19
実験例19ではPTFE水性分散体3を用いた。
PTFE水性分散体3
PTFE:フィブリル化性および非溶融加工性を有し、PPVEを0.1質量%含有するPTFE(変性PTFE)
PTFEの標準比重:2.159
PTFEの融点:324℃
PTFEの平均一次粒子径:300nm
固形分濃度:30質量%
【0183】
特開2010-235667号公報に記載の製造方法に準じて、反応スケール、反応圧力、TFE仕込み量、HFP仕込み量、PPVE仕込み量、過硫酸アンモニウムの仕込み量等を適宜調整し、固形分濃度20.5質量%、TFE/HFP/PPVE共重合体(FEP)の水性分散体を作製した。
【0184】
このFEP水性分散体に、水性分散体中の固形分に対するPTFE固形分の比率が0.15質量%になるように、PTFE水性分散体3を加えて混合したのちに、水と60%硝酸を加えて攪拌して凝析させ、固体相と液体相が分離したのち、水分を取り除いた。脱イオン水を用いて洗浄後、得られた白色粉末を、200℃にて60時間乾燥させ粉体を得た。
【0185】
(ペレット化)
得られた粉体を、2軸スクリュー型押出機(KZW15TW-60MG-NH-700,テクノベル社製)により375℃にて溶融押出して、フッ素樹脂組成物のペレットを得た。得られたペレットを用いて、ペレット中のFEPの各単量体単位の含有量を測定した。結果を表3に示す。
【0186】
(フッ素化)
得られたペレットを、電気炉にて200℃で72時間脱気した後、真空振動式反応装置VVD-30(大川原製作所社製)に入れ、170℃に昇温した。真空引き後、Nガスで20体積%に希釈したFガスを大気圧まで導入した。Fガス導入時から0.5時間後、いったん真空引きし、再度Fガスを導入した。さらにその0.5時間後、再度真空引きし、再度Fガスを導入した。以降、上記Fガス導入及び真空引きの操作を1時間に1回行い続け、170℃の温度下で6時間反応を行った。反応終了後、反応器内をNガスに十分に置換して、フッ素化反応を終了し、ペレットを得た。得られたペレットを用いて、ペレット中のFEPのMFR、融点、官能基数を測定した。結果を表3に示す。
【0187】
実験例20
フッ素化されたTFE/HFP/PPVE共重合体(FEP)のペレット90質量部と実験例1で作製されたペレット10質量部を混合した後に、2軸スクリュー型押出機(ラボプラストミル30C-150,東洋精機社製)により345℃にて溶融押出して、PTFEの含有量が0.05質量%のフッ素樹脂組成物のペレットを得た。得られたペレットを用いて、ペレット中のFEPの各単量体単位の含有量、MFR、融点、官能基数を測定した。結果を表3に示す。
【0188】
実験例21
フッ素化されたTFE/HFP/PPVE共重合体(FEP)のペレット90質量部と実験例1で作製されたペレット10質量部を混合した後に、2軸スクリュー型押出機(ラボプラストミル30C-150,東洋精機社製)により345℃にて溶融押出して、PTFEの含有量が0.05質量%のフッ素樹脂組成物のペレットを得た。得られたペレットを用いて、ペレット中のFEPの各単量体単位の含有量、MFR、融点、官能基数を測定した。結果を表3に示す。
【0189】
次に、共重合体の製造方法の参考例を示す。参考例に記載の共重合体は、本開示の組成物の実施形態に包含されない。
【0190】
参考例1
容積174Lの攪拌機付きオートクレーブに脱イオン水40.25kgとメタノール0.099kgを投入し、オートクレーブ内を十分に真空窒素置換した。その後、オートクレーブ内を真空脱気し、真空状態となったオートクレーブ内にHFP40.25kgとPPVE0.36kg投入し、オートクレーブを30.0℃に加温した。続けて、オートクレーブの内部圧力が0.905MPaになるまでTFEを投入し、次に8質量%のジ(ω-ヒドロパーフルオロヘキサノイル)パーオキサイド溶液(以下DHPと略す)0.63kgをオートクレーブ内に投入して重合を開始した。重合開始時点のオートクレーブの内部圧力を0.905MPaに設定し、TFEを連続追加することで設定圧力を保つようにした。重合開始から1.5時間後にメタノール0.099kgを追加投入した。重合開始から2時間後、4時間後、にDHP0.63kgを追加投入するとともに内部圧力を0.001MPa下げ、6時間後に0.48kgを投入するとともに内部圧力を0.001MPa下げた。以降、反応が終了するまで2時間ごとにDHP0.13kgを追加投入し、その都度内部圧力を0.001MPa下げた。
【0191】
なお、PPVEはTFEの連続追加投入量が8.1kg、16.2kg、24.3kgに達した時点でそれぞれ0.11kg追加投入した。 また、TFEの追加投入量が6.0kg、18.1kgに達した時点でそれぞれ0.099kgのメタノールをオートクレーブ内に追加投入した。 そして、TFEの追加投入量が40.25kgに達したところで重合を終了させた。重合終了後、未反応のTFE及びHFPを放出し、湿潤粉体を得た。そしてこの湿潤粉体を純水で洗浄した後、150℃で10時間乾燥し、46.2kgの乾燥粉体を得た。
【0192】
得られた粉末を、スクリュー押出機(商品名:PCM46、池貝社製)により370℃にて溶融押出して、共重合体のペレットを得た。得られたペレットを用いて、上記した方法により各種物性を測定した。結果を表3に示す。
【0193】
参考例2
重合開始前に投入するメタノールの量を0.067kgに変更し、重合開始後に分割して追加投入するメタノールの量をそれぞれ0.067kgに変更し、重合開始前に投入するPPVEの量を0.36kgに変更し、重合開始後に分割して追加投入するPPVEの量をそれぞれ0.11kgに変更し、重合開始前後のオートクレーブ内部の設定圧力を0.906MPaに変更した以外は、参考例1と同様にして共重合体ペレットを得た。得られたペレットを用いて、上記した方法により各種物性を測定した。結果を表3に示す。
【0194】
参考例3
容積174Lの攪拌機付きオートクレーブに脱イオン水40.25kgとメタノール0.195kgを投入し、オートクレーブ内を十分に真空窒素置換した。その後、オートクレーブ内を真空脱気し、真空状態となったオートクレーブ内にHFP40.25kgを投入し、オートクレーブを30.0℃に加温した。続けて、オートクレーブの内部圧力が0.926MPaになるまでTFEを投入し、次に8質量%のジ(ω-ヒドロパーフルオロヘキサノイル)パーオキサイド溶液(以下DHPと略す)0.63kgをオートクレーブ内に投入して重合を開始した。重合開始時点のオートクレーブの内部圧力を0.926MPaに設定し、TFEを連続追加することで設定圧力を保つようにした。重合開始から1.5時間後にメタノール0.195kgを追加投入した。重合開始から2時間後、4時間後、にDHP0.63kgを追加投入するとともに内部圧力を0.001MPa下げ、6時間後に0.48kgを投入するとともに内部圧力を0.001MPa下げた。以降、反応が終了するまで2時間ごとにDHP0.13kgを追加投入し、その都度内部圧力を0.001MPa下げた。
【0195】
また、TFEの追加投入量が6.0kg、18.1kgに達した時点でそれぞれ0.195kgのメタノールをオートクレーブ内に追加投入した。 そして、TFEの追加投入量が40.25kgに達したところで重合を終了させた。重合終了後、未反応のTFE及びHFPを放出し、湿潤粉体を得た。そしてこの湿潤粉体を純水で洗浄した後、150℃で10時間乾燥し、45.2kgの乾燥粉体を得た。
【0196】
得られた粉末を、スクリュー押出機(商品名:PCM46、池貝社製)により370℃にて溶融押出して、共重合体のペレットを得た。得られたペレットを用いて上記した方法によりHFP含有量とPPVE含有量を測定した。結果を表3に示す。
【0197】
参考例4
重合開始前に投入するメタノールの量を0.274kgに変更し、重合開始後に分割して追加投入するメタノールの量をそれぞれ0.274kgに変更し、重合開始前に投入するPPVEの量を0.41kgに変更し、重合開始後に分割して追加投入するPPVEの量をそれぞれ0.11kgに変更し、重合開始前後のオートクレーブ内部の設定圧力を0.937MPaに変更した以外は、参考例1と同様にして共重合体ペレットを得た。得られたペレットを用いて、上記した方法により各種物性を測定した。結果を表3に示す。
【0198】
参考例5
容積174Lの攪拌機付きオートクレーブに脱イオン水40.25kgとメタノール0.189kgを投入し、オートクレーブ内を十分に真空窒素置換した。その後、オートクレーブ内を真空脱気し、真空状態となったオートクレーブ内にHFP40.25kgとPPVE0.42kg投入し、オートクレーブを25.5℃に加温した。続けて、オートクレーブの内部圧力が0.830MPaになるまでTFEを投入し、次に8質量%のジ(ω-ヒドロパーフルオロヘキサノイル)パーオキサイド溶液(以下DHPと略す)1.25kgをオートクレーブ内に投入して重合を開始した。重合開始時点のオートクレーブの内部圧力を0.830MPaに設定し、TFEを連続追加することで設定圧力を保つようにした。重合開始から1.5時間後にメタノール0.189kgを追加投入した。重合開始から2時間後、4時間後、にDHP1.25kgを追加投入するとともに内部圧力を0.002MPa下げ、6時間後に0.96kgを投入するとともに内部圧力を0.002MPa下げた。以降、反応が終了するまで2時間ごとにDHP0.25kgを追加投入し、その都度内部圧力を0.002MPa下げた。
【0199】
なお、PPVEはTFEの連続追加投入量が8.1kg、16.2kg、24.3kgに達した時点でそれぞれ0.11kg追加投入した。 また、TFEの追加投入量が6.0kg、18.1kgに達した時点でそれぞれ0.189kgのメタノールをオートクレーブ内に追加投入した。 そして、TFEの追加投入量が40.25kgに達したところで重合を終了させた。重合終了後、未反応のTFE及びHFPを放出し、湿潤粉体を得た。そしてこの湿潤粉体を純水で洗浄した後、150℃で10時間乾燥し、45.4kgの乾燥粉体を得た。
【0200】
得られた粉末を、スクリュー押出機(商品名:PCM46、池貝社製)により370℃にて溶融押出して、共重合体のペレットを得た。得られたペレットを用いて、上記した方法により各種物性を測定した。結果を表3に示す。
【0201】
参考例6
重合開始前に投入するメタノールの量を0.128kgに変更し、重合開始後に分割して追加投入するメタノールの量をそれぞれ0.128kgに変更し、重合開始前に投入するPPVEの量を0.46kgに変更し、重合開始後に分割して追加投入するPPVEの量をそれぞれ0.12kgに変更し、重合開始前後のオートクレーブ内部の設定圧力を0.832MPaに変更した以外は、参考例5と同様にして共重合体ペレットを得た。得られたペレットを用いて、上記した方法により各種物性を測定した。結果を表3に示す。
【0202】
参考例7
重合開始前に投入するメタノールの量を0.206kgに変更し、重合開始後に分割して追加投入するメタノールの量をそれぞれ0.206kgに変更し、重合開始前に投入するPPVEの量を0.35kgに変更し、重合開始後に分割して追加投入するPPVEの量をそれぞれ0.11kgに変更し、重合開始前後のオートクレーブ内部の設定圧力を0.897MPaに変更した以外は、参考例1と同様にして共重合体ペレットを得た。得られたペレットを用いて、上記した方法により各種物性を測定した。結果を表3に示す。
【0203】
【表3-1】
【0204】
【表3-2】
【0205】
表3中の「その他(個/C10)」との記載は、-COOCH、-CF=CFおよび-CONHの合計数を表す。表3中の「<9」との記載は、-CFH基の数(合計数)が9個未満であること意味する。表3中の「<6」との記載は、対象の官能基の数(合計数)が6個未満であることを意味する。表3中の「ND」との記載は、対象の官能基について、定量できる程度のピークを確認できなかったことを意味する。
【0206】
次に得られたペレットを用いて、下記の特性を評価した。結果を表4に示す。
【0207】
1.平板の製造
射出成形機(住友重機械工業社製、SE50EV-A)を使用し、シリンダ温度を380℃、金型温度を170℃とし、射出速度を5mm/sとして、ペレットを射出成形した。金型として、HPM38製の金型(100mm×100mm×2.0mmt、サイドゲート)を用いた。取出し時は、エジェクターピンによる突出しで射出成形体を金型から落下させ、金型直下のシューターを用いて回収した。
【0208】
1-1.フローマーク
射出成形体を目視で確認し、以下の基準で評価した。
〇:フローマークなし
×:フローマークあり
【0209】
1-2.筋
10個の射出成形体を観察し、繊維状の筋の有無を観察した。繊維状の筋は、成形の際に発生する糸引き(成形不良)に起因して生じる。
○:10個の射出成形体全てに繊維状の筋が無い
×:1個以上の射出成型体に繊維状の筋がある
【0210】
1-3.引っかき傷(スクラッチ)
シューターから回収した直後の射出成形体を目視で確認し、以下の基準で評価した。
〇:擦れによる引っかき傷が無い
×:擦れによる引っかき傷がある
【0211】
1-4.デラミネーション
射出成形体を目視で観察し、以下の基準でデラミネーションの評価した
〇:表面に表層剥離による荒れがない。
×:表面に表層剥離(デラミネーション)による荒れが観察される。
【0212】
1-5.金型離型性
10回連続成形し、エジェクターピンによる突出しにより、金型から射出成形体が落下しなかった回数を確認した。
○:0回
×:1~10回
【0213】
3.113℃荷重変形性評価
ペレットを用いて、ヒートプレスにより厚み0.5mmのシートを作製し、得られたシートから、幅2.0mm、長さ20mmのサンプルを作製した。治具間の距離が約10mmになるように作製されたサンプルを測定治具に装着して、日立ハイテクサイエンス社製TMA-7100を用いて、サンプルを113℃に加熱してから、サンプルに4.37N/mmの荷重をかけて900分間放置した。
【0214】
荷重をかけはじめてから80分後の時点でのサンプル長を初期のサンプル長で割った割合(%)と、荷重をかけはじめてから855分後の時点でのサンプル長を初期のサンプル長で割った割合(%)の差を、変形率(%)として算出した。
【0215】
変形率(%)は、80分時点から855分時点の間にどれだけ変形したかを示す値であり、変形率(%)が小さいサンプルは、高温の環境中で荷重が負荷されても変形しにくい。
変形率(%)=X/X×100-X/X×100
:初期のサンプル長
:荷重をかけはじめてから80分後の時点でのサンプル長(mm)
:荷重をかけはじめてから855分後の時点でのサンプル長(mm)
【0216】
4.高温での耐ストレスクラック性
ペレットおよびヒートプレス成形機を用いて、厚み約2mmの成形体を作製した。13.5mm×38mmの長方形ダンベルを用いて、得られたシートを打ち抜くことにより、3個の試験片を得た。得られた各試験片の長辺の中心に、ASTM D1693に準じて、19mm×0.45mmの刃でノッチを入れた。100mLポリプロピレン製ボトルに、ノッチ試験片3個と過酸化水素3質量%水溶液25gを入れ、電気炉にて80℃で20時間加熱後、ノッチ試験片を取り出した。得られたノッチ試験片3個をASTM D1693に準じた応力亀裂試験治具に取り付け、電気炉にて80℃で2時間加熱した後、ノッチおよびその周辺を目視で観察し、亀裂の数を数えた。高温で薬液に浸漬させても亀裂が生じないシートは、高温での耐ストレスクラック性に優れている。
○:亀裂の数が0個である
×:亀裂の数が1個以上である
【0217】
5.引張弾性率
ペレットおよびヒートプレス成形機を用いて、2.0mm厚の試験片(圧縮成形)を得た。上記試験片から、ASTM V型ダンベルを用いてダンベル状試験片を切り抜き、得られたダンベル状試験片を用いて、オートグラフ(島津製作所社製 AG―I 300kN)を使用して、ASTM D638に準じて、50mm/分の条件下で、105℃で引張弾性率を測定した。引張弾性率が高いシートは、引張応力に対する耐変形性に優れている。
【0218】
6.32万回サイクル時点の引張強度
ペレットおよびヒートプレス成形機を用いて、厚さ約2.4mmのシートを作製し、ASTM D1708マイクロダンベル用いて、ダンベル形状(厚み2.4mm、幅5.0mm、測定部長さ22mm)のサンプルを作製した。島津製作所社製疲労試験機MMT-250NV-10を用いて、サンプルを測定治具に装着し、サンプルを装着した状態で測定治具を110℃の恒温槽中に設置した。ストローク0.2mm、周波数100Hzで、一軸方向への引張りを繰り返し、32万回サイクル時点の引張強度(ストロークが+0.2mmの時の引張強度、単位:N)を測定した。
【0219】
7.粉体塗料の調製および評価
得られたペレットを粉砕してから18号ふるい(東京スクリーン社製)にかけ、共重合体粉末を得た。脱脂され、表面が平滑なSUS316基材(200mm×200mm×5mm)に共重合体粉末を静電塗装法にて塗布した後に、乾燥炉中で垂直に吊り下げて285℃で30分間焼成し、膜厚約100μmの塗膜を得た。得られた塗膜を目視で観察して塗膜の作製状態を評価した。また、塗膜ごと水につけ95℃で20時間加熱して、SUS316基材からはがれた塗膜を回収し、膜厚を計測して100μm±20%以内の膜厚で作製できていることを確認した。
【0220】
得られた塗膜を以下の基準により評価した。
○:良好な塗膜が作製できた
×:良好な塗膜が作製できなかった
・実験例1 :表面が平滑な塗膜が作製できなかった
・実験例10:溶融不完全で塗膜が作製できなかった
・実験例11:垂れにより目標の膜厚の塗膜が作製できなかった
・実験例12:表面が平滑な塗膜が作製できなかった
【0221】
8.被覆電線の作製および評価
(電線被覆成形条件)
30mmφ電線被覆成形機(田辺プラスチック機械社製)により、導体径0.50mmの導体上に、下記被覆厚みで押出被覆し、被覆電線を得た。電線被覆押出成形条件は以下の通りである。
a)芯導体:軟鋼線導体径0.50mm
b)被覆厚み:0.15mm
c)被覆電線径:0.80mm
d)電線引取速度:100m/分)
e)押出条件:
・シリンダー軸径=30mm,L/D=22の単軸押出成形機
・ダイ(内径)/チップ(外形)=9.0mm/5.0mm
押出機の設定温度:バレル部C-1(320℃)、バレル部C-2(350℃)、バレル部C-3(375℃)、ヘッド部H(390℃)、ダイ部D-1(390℃)、ダイ部D-2(390℃)。芯線予備加熱は80℃に設定した。
【0222】
電線被覆成形の結果を以下の基準により評価した。
○:被覆電線が作製できた
×:被覆電線が作製できなかった
・実験例1 :外径のばらつきが大きく作製不可
・実験例10:被覆切れにより作製不可
・実験例11:外径のばらつきが大きく作製不可
・実験例12:被覆切れにより作製不可
・実験例13:被覆切れにより作製不可
【0223】
(外径の確認)
外径測定器(Zumbach社製ODAC18XY)を用いて10分連続で計測し、目標外径0.90mmに対し、外径の最大最小値の小数点3桁目の検出値を四捨五入して、3%以上ずれる場合は、被覆電線の作製を不可とした。
【0224】
(電線被覆の110℃荷重変形性評価)
上記で得られた被覆電線の被覆層を剥がし、得られた被覆層から幅約2mm、長さ22mmのサンプルを作製した。治具間の距離が約10mmになるように作製されたサンプルを測定治具に装着して、日立ハイテクサイエンス社製TMA-7100を用いて、サンプルを110℃に加熱してから、サンプルに4.49N/mmの荷重をかけて900分間放置した。
【0225】
荷重をかけはじめてから85分後の時点でのサンプル長を初期のサンプル長で割った割合(%)と、荷重をかけはじめてから900分後の時点でのサンプル長を初期のサンプル長で割った割合(%)の差を、変形率(%)として算出した。
【0226】
変形率(%)は、85分時点から900分時点の間にどれだけ変形したかを示す値であり、変形率(%)が小さいサンプルは、高温の環境中で荷重が負荷されても変形しにくい。
変形率(%)=X/X×100-X/X×100
:初期のサンプル長
:荷重をかけはじめてから85分後の時点でのサンプル長(mm)
:荷重をかけはじめてから900分後の時点でのサンプル長(mm)
【0227】
【表4】
【0228】
参考例1~7の共重合体は、本開示の組成物の実施形態に包含されない。参考例1~7の共重合体を成形して、フィルムやチューブを得ることができる。また、参考例1~7の共重合体を、電線の被覆に用いることもできる。被覆する電線の心線として、単線、撚線などを用いることができ、銅線、銀メッキ線など任意の導体を用いることができる。
【0229】
(フィルム成形)
φ14mm押出機(井元製作所製)にて、Tダイを用い、フィルムを作製した。押出成形条件は以下のとおりである。
a)巻き取り速度:1m/分
b)ロール温度:120℃
c)フィルム幅:70mm
d)厚み:0.10mm
e)押出条件:
・シリンダー軸径=14mm,L/D=20の単軸押出成形機
押出機の設定温度:バレル部C-1(330℃)、バレル部C-2(350℃)、バレル部C-3(365℃)、Tダイ部(370℃)
問題なくフィルムが作製されたことを目視で確認した。結果を表5に示す。
【0230】
(チューブ成形)
φ30mm押出機(田辺プラスチックス機械製)にて、外径10.0mm、肉厚1.0mmのチューブを押出成形した。押出成形条件は以下のとおりである。
a)ダイ内径:25mm
b)マンドレル外径:13mm
c)サイジングダイ内径:10.5mm
d)引取り速度:0.4m/分
e)外径:10.0mm
f)肉厚:1.0mm
g)押出条件:
・シリンダー軸径=30mm,L/D=22の単軸押出成形機
押出機の設定温度:バレル部C-1(350℃)、バレル部C-2(370℃)、バレル部C-3(380℃)、ヘッド部H-1(390℃)、ダイ部D-1(390℃)、ダイ部D-2(390℃)
問題なくチューブが作製されたことを目視で確認した。結果を表5に示す。
【0231】
【表5】
【要約】
【課題】射出成形性、塗膜成形性および電線被覆成形性に優れており、高温高荷重に対する耐変形性、耐ストレスクラック性、引張応力に対する耐変形性、繰返しの応力負荷に対する耐性に優れる成形体を得ることができる組成物を提供すること。
【解決手段】ポリテトラフルオロエチレンと含フッ素共重合体とを含有する組成物であって、前記組成物中の前記ポリテトラフルオロエチレンの含有量が、前記組成物の質量に対して、0.03~0.30質量%であり、前記含フッ素共重合体が、テトラフルオロエチレン単位、ヘキサフルオロプロピレン単位およびパーフルオロ(プロピルビニルエーテル)単位を含有し、前記含フッ素共重合体中のヘキサフルオロプロピレン単位の含有量が、全単量体単位に対して、8.5~11.2質量%であり、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)単位の含有量が、全単量体単位に対して、0.5~2.0質量%であり、372℃におけるメルトフローレートが、13.0~42.0g/10分である組成物を提供する。
【選択図】 なし