IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 新日鐵住金株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-ガードレールビーム 図1
  • 特許-ガードレールビーム 図2
  • 特許-ガードレールビーム 図3
  • 特許-ガードレールビーム 図4
  • 特許-ガードレールビーム 図5
  • 特許-ガードレールビーム 図6
  • 特許-ガードレールビーム 図7
  • 特許-ガードレールビーム 図8
  • 特許-ガードレールビーム 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-05
(45)【発行日】2023-12-13
(54)【発明の名称】ガードレールビーム
(51)【国際特許分類】
   C23C 2/06 20060101AFI20231206BHJP
   C22C 18/04 20060101ALI20231206BHJP
   C23C 2/20 20060101ALI20231206BHJP
   C23C 2/40 20060101ALI20231206BHJP
   E01F 15/04 20060101ALI20231206BHJP
【FI】
C23C2/06
C22C18/04
C23C2/20
C23C2/40
E01F15/04 A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2023555796
(86)(22)【出願日】2023-04-06
(86)【国際出願番号】 JP2023014253
【審査請求日】2023-09-12
(31)【優先権主張番号】P 2022105942
(32)【優先日】2022-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100187702
【弁理士】
【氏名又は名称】福地 律生
(74)【代理人】
【識別番号】100162204
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 学
(74)【代理人】
【識別番号】100195213
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 健治
(72)【発明者】
【氏名】上野 晋
(72)【発明者】
【氏名】莊司 浩雅
(72)【発明者】
【氏名】小林 亜暢
(72)【発明者】
【氏名】山下 悟
【審査官】祢屋 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-120461(JP,A)
【文献】特開2017-209727(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第101831600(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 2/06
C22C 18/04
C23C 2/20
C23C 2/40
E01F 15/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼材と、前記鋼材の両面に形成されかつZn系めっきからなるめっき層とを備えためっき鋼材によって構成され、
前記鋼材の少なくとも1つの端面が前記めっき層で被覆されており、下記式1~3を満たすことを特徴とする、ガードレールビーム。
0.60×tc≦te<tc ・・・式1
We≧Wc ・・・式2
Wt≧Wc ・・・式3
ここで、
tcは、めっき層で被覆された端面から10mm以上内側の位置における鋼材の平均板厚(mm)であり、
teは、めっき層で被覆された端面から1~10mmの位置における鋼材の平均板厚(mm)であり、
Weは、めっき層で被覆された端面から1~10mmの位置におけるめっき層の片面当たりの平均厚さ(μm)であり、
Wcは、めっき層で被覆された端面から10mm以上内側の位置におけるめっき層の片面当たりの平均厚さ(μm)であり、
Wtは、めっき層で被覆された端面におけるめっき層の平均厚さ(μm)である。
【請求項2】
前記めっき層がZn-Al-Mg系めっきであることを特徴とする、請求項1に記載のガードレールビーム。
【請求項3】
前記めっき層が、質量%で、
Al:15.0超~30.0%、
Mg:5.0超~15.0%、
Sn:0~0.70%、
Ca:0~0.60%、
Si:0~0.75%、
Ti:0~0.25%、
Ni:0~1.00%、
Co:0~0.25%、
Fe:0~5.0%、
B :0~0.50%、並びに
残部:Zn及び不純物からなる化学組成を有することを特徴とする、請求項2に記載のガードレールビーム。
【請求項4】
前記めっき層で被覆された端面が地面に対して上側に向くように配置されたことを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載のガードレールビーム。
【請求項5】
前記めっき層で被覆された端面から10mmの位置までのめっき被覆率が90面積%以上であることを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載のガードレールビーム。
【請求項6】
前記めっき層で被覆された端面以外の少なくとも1つの端面が切断端面であり、前記切断端面が、前記鋼材の第1表面から第2表面に向かって板厚方向に対して傾斜する傾斜面と、破断面とを有するか、又は前記鋼材の第1表面から第2表面に向かって板厚方向に対して傾斜する傾斜面と、せん断面と、破断面とを有し、
板厚方向における前記破断面の長さが前記鋼材の板厚の40%以下であり、
前記傾斜面と前記せん断面におけるめっき被覆率が合計で50面積%以上であることを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載のガードレールビーム。
【請求項7】
前記めっき層で被覆された端面以外の少なくとも1つの端面が切断端面であり、前記切断端面が、
前記鋼材の第1表面から中央部に向かって板厚方向に対して傾斜する第1傾斜面と、
前記鋼材の第2表面から中央部に向かって板厚方向に対して傾斜する第2傾斜面と、
前記第1傾斜面と前記第2傾斜面との間に形成される破断面とを有し、
板厚方向における前記破断面の長さが前記鋼材の板厚の40%以下であり、
前記第1傾斜面と前記第2傾斜面におけるめっき被覆率が合計で50面積%以上であることを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載のガードレールビーム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガードレールビームに関する。
【背景技術】
【0002】
ガードレールは、一般に波形断面のガードレールビームと支柱とによって構成され、ガードレールビームにおいてめっき鋼材が使用されることがある。当該めっき鋼材におけるめっき処理としては、例えば、鋼板に予めめっきを施すプレめっきや、鋼板を製品に加工した後にめっきを施す後めっき(ドブめっきと称することもある)がある。
【0003】
プレめっき処理に関連して、例えば、特許文献1では、めっき鋼帯のワイピング時に鋼帯のエッジ部分においてめっき金属の付着量が多くなり、その結果として平坦不良等の品質不良の原因となり得るエッジオーバーコートが発生することから、めっき鋼帯のエッジ部に対応する補助ワイピングノズルから予熱された補助ワイピングガスを供給することによってめっき金属の付着量を調整し、めっき鋼帯におけるエッジオーバーコート等の発生を防止することが教示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平6-122953号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ガードレールビームとして、例えば、後めっき処理しためっき鋼材を使用する場合には、鋼板を製品に加工した後、加工された製品を輸送し、次いで後めっき処理に供する必要がある。したがって、後めっき処理の場合には手間がかかりコストも高くなる。一方で、特許文献1に記載されるようなプレめっき処理の場合には、予めめっきが施されているため、加工後のめっきが不要であり、後めっき処理に比べてコストを低減することができるという利点がある。しかしながら、プレめっき処理は、後めっき処理に比べて一般にめっき付着量が小さく、それゆえ耐食性に劣る場合がある。また、プレめっき処理では、スリット等で切断加工された端部がめっきで覆われていないために、加工後にめっきが施される後めっき処理の場合と比較して、このような端部から腐食が発生しやすいという問題がある。
【0006】
仮に切断加工されていないプレめっき鋼材のエッジ部をガードレールビームに利用することを検討したとしても、特許文献1に記載されるようなエッジオーバーコートに起因する平坦不良等の品質不良の問題を解決しつつ、屋外の比較的厳しい環境下で一般に使用されるガードレールビームにおいて要求される高い耐食性、それに関連する長寿命化を達成する必要があり、非常に困難である。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、新規な構成により、耐食性が改善されたガードレールビームを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成するために、ガードレールビームにおいて比較的腐食が発生しやすい端部の構造に着目して検討を行った。その結果、本発明者らは、ガードレールビームに適用される鋼材の端部における所定範囲内の厚さを薄くするとともに、当該所定範囲内のめっき層厚さを相対的に厚くし、さらには端面のめっき層厚さを比較的厚くすることにより、ガードレールビームの端部における腐食の発生を顕著に抑制又は防止することができることを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
上記目的を達成し得た本発明は下記のとおりである。
(1)鋼材と、前記鋼材の両面に形成されかつZn系めっきからなるめっき層とを備えためっき鋼材によって構成され、
前記鋼材の少なくとも1つの端面が前記めっき層で被覆されており、下記式1~3を満たすことを特徴とする、ガードレールビーム。
0.60×tc≦te<tc ・・・式1
We≧Wc ・・・式2
Wt≧Wc ・・・式3
ここで、
tcは、めっき層で被覆された端面から10mm以上内側の位置における鋼材の平均板厚(mm)であり、
teは、めっき層で被覆された端面から1~10mmの位置における鋼材の平均板厚(mm)であり、
Weは、めっき層で被覆された端面から1~10mmの位置におけるめっき層の片面当たりの平均厚さ(μm)であり、
Wcは、めっき層で被覆された端面から10mm以上内側の位置におけるめっき層の片面当たりの平均厚さ(μm)であり、
Wtは、めっき層で被覆された端面におけるめっき層の平均厚さ(μm)である。
(2)前記めっき層がZn-Al-Mg系めっきであることを特徴とする、上記(1)に記載のガードレールビーム。
(3)前記めっき層が、質量%で、
Al:15.0超~30.0%、
Mg:5.0超~15.0%、
Sn:0~0.70%、
Ca:0~0.60%、
Si:0~0.75%、
Ti:0~0.25%、
Ni:0~1.00%、
Co:0~0.25%、
Fe:0~5.0%、
B :0~0.50%、並びに
残部:Zn及び不純物からなる化学組成を有することを特徴とする、上記(1)又は(2)に記載のガードレールビーム。
(4)前記めっき層で被覆された端面が地面に対して上側に向くように配置されたことを特徴とする、上記(1)~(3)のいずれか1項に記載のガードレールビーム。
(5)前記めっき層で被覆された端面から10mmの位置までのめっき被覆率が90面積%以上であることを特徴とする、上記(1)~(4)のいずれか1項に記載のガードレールビーム。
(6)前記めっき層で被覆された端面以外の少なくとも1つの端面が切断端面であり、前記切断端面が、前記鋼材の第1表面から第2表面に向かって板厚方向に対して傾斜する傾斜面と、破断面とを有するか、又は前記鋼材の第1表面から第2表面に向かって板厚方向に対して傾斜する傾斜面と、せん断面と、破断面とを有し、
板厚方向における前記破断面の長さが前記鋼材の板厚の40%以下であり、
前記傾斜面と前記せん断面におけるめっき被覆率が合計で50面積%以上であることを特徴とする、上記(1)~(5)のいずれか1項に記載のガードレールビーム。
(7)前記めっき層で被覆された端面以外の少なくとも1つの端面が切断端面であり、前記切断端面が、
前記鋼材の第1表面から中央部に向かって板厚方向に対して傾斜する第1傾斜面と、
前記鋼材の第2表面から中央部に向かって板厚方向に対して傾斜する第2傾斜面と、
前記第1傾斜面と前記第2傾斜面との間に形成される破断面とを有し、
板厚方向における前記破断面の長さが前記鋼材の板厚の40%以下であり、
前記第1傾斜面と前記第2傾斜面におけるめっき被覆率が合計で50面積%以上であることを特徴とする、上記(1)~(5)のいずれか1項に記載のガードレールビーム。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、耐食性が改善されたガードレールビームを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態に係るガードレールビームを構成するめっき鋼材における端部の構造を示す模式図である。
図2】従来の切断装置による切断状態を示す模式図である。
図3】従来の切断装置による切断後のめっき鋼材の切断端面を示す模式図である。
図4】追加の好ましい実施形態1に係る切断端面を得る際の切断状態を示す模式図である。
図5】追加の好ましい実施形態1に係る切断端面を得る際の切断状態を示す模式図である。
図6】追加の好ましい実施形態1に係る切断端面を示す模式図である。
図7】追加の好ましい実施形態2に係る切断端面を示す模式図である。
図8】追加の好ましい実施形態2に係る切断端面を得るためのめっき鋼材の切断前の状態を示す模式図である。
図9図8に示す切断装置によるめっき鋼材の切断後の状態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<ガードレールビーム>
本発明の実施形態に係るガードレールビームは、鋼材と、前記鋼材の両面に形成されかつZn系めっきからなるめっき層とを備えためっき鋼材によって構成され、
前記鋼材の少なくとも1つの端面が前記めっき層で被覆されており、下記式1~3を満たすことを特徴としている。
0.60×tc≦te<tc ・・・式1
We≧Wc ・・・式2
Wt≧Wc ・・・式3
ここで、
tcは、めっき層で被覆された端面から10mm以上内側の位置における鋼材の平均板厚(mm)であり、
teは、めっき層で被覆された端面から1~10mmの位置における鋼材の平均板厚(mm)であり、
Weは、めっき層で被覆された端面から1~10mmの位置におけるめっき層の片面当たりの平均厚さ(μm)であり、
Wcは、めっき層で被覆された端面から10mm以上内側の位置におけるめっき層の片面当たりの平均厚さ(μm)であり、
Wtは、めっき層で被覆された端面におけるめっき層の平均厚さ(μm)である。
【0013】
めっき層を備えた鋼材によって構成されるガードレールビームにおいては、鋼材の端部がめっき層によって十分に被覆されていない場合があり、このような場合には、鋼材の表裏面と比較して端部においてより腐食が発生及び進行しやすいという問題がある。端部の腐食により赤錆が発生し、それが端部から進行していくと、寿命の低下につながるだけでなく外観上の品質も大きく低下させてしまうため好ましくない。そこで、本発明者らは、ガードレールビームにおいて比較的腐食が発生及び進行しやすい端部の構造に着目して検討を行った。以下、図面を参照してより詳しく説明する。
【0014】
図1は、本発明の実施形態に係るガードレールビームを構成するめっき鋼材における端部の構造を示す模式図である。図1を参照すると、本発明の実施形態に係るガードレールビームを構成するめっき鋼材1は、鋼材2と、当該鋼材2の両面、すなわち表裏面に形成されかつZn系めっきからなるめっき層3とを備え、鋼材2の端面4がめっき層3で被覆されている。まず、本発明者らは、鋼材2の端部における所定範囲内の厚さを薄くすること、より具体的にはめっき層3で被覆された鋼材2の端面4から1~10mmの位置、すなわち端面4から板厚方向に対して垂直でかつ1~10mm内側の位置(図1中のA領域)における鋼材2の平均板厚(mm)をte、めっき層3で被覆された鋼材2の端面4から10mm以上内側の位置(図1中のB領域)における鋼材2の平均板厚(mm)をtcとしたときに、これらの平均板厚を下記式1を満たすよう制御することにより、仮に端部のめっき層3が消失して鋼材2の一部が露出したとしても、露出部の板厚が薄いことでカソード反応領域の面積を小さくすることができるため、Zn系めっきからなるめっき層3の犠牲防食作用を最小限に抑えることが可能であり、それゆえめっき鋼材1及びそれによって構成されるガードレールビームの耐食性を改善し、ひいては高寿命化を達成することができることを見出した。
0.60×tc≦te<tc ・・・式1
【0015】
加えて、本発明者らは、鋼材2のA領域の平均板厚te(μm)を薄くすることに関連して、当該A領域のめっき層3の片面当たりの平均厚さWe(μm)をB領域のめっき層3の片面当たりの平均厚さWc(μm)と同じか又はそれに対して相対的に厚くし、より具体的にはこれらの平均厚さを下記式2を満たすよう制御すること、さらには鋼材2の端面4におけるめっき層3の平均厚さWt(μm)を比較的厚くすること、より具体的には下記式3を満たすよう制御することで、めっき鋼材1及びそれによって構成されるガードレールビームの耐食性及び寿命をより顕著に改善することができることを見出した。
We≧Wc ・・・式2
Wt≧Wc ・・・式3
プレめっき処理又は後めっき処理に関係なく、めっき鋼材の端部を図1に示されるような構造に制御し、さらにはそれをガードレールビームに適用することで、当該ガードレールビームの耐食性、ひいてはその寿命を顕著に改善することができるという事実は従来知られておらず、今回、本発明者らによって初めて明らかにされたことである。実際、従来のプレめっき処理においては、例えば、特開平6-122953号公報においても教示されているように、鋼材の端部においてめっき付着量が多くなるエッジオーバーコートは、平坦不良等の品質不良の原因となることから、その発生を防止することが一般に求められる。これに対し、本件発明の実施形態に係るガードレールビームでは、鋼材端部の板厚を薄くすることにより当該端部のめっき層厚さを相対的に厚くするため、従来のプレめっき処理のようなエッジオーバーコートに起因する平坦不良等の品質不良の問題を生じさせることなしに、高い耐食性及び長寿命化を達成することが可能である。
【0016】
以下、本発明の実施形態に係るガードレールビームについてより詳しく説明するが、これらの説明は、本発明の好ましい実施形態の単なる例示を意図するものであって、本発明をこのような特定の実施形態に限定することを意図するものではない。
【0017】
[式1:0.60×tc≦te<tc]
本発明の実施形態に係るガードレールビームでは、めっき層で被覆された鋼材の端面から1~10mmの位置における鋼材の平均板厚te(mm)と、めっき層で被覆された鋼材の端面から10mm以上内側の位置における鋼材の平均板厚tc(mm)とを、これらの平均板厚が下記式1を満たすよう制御することが必要である。
0.60×tc≦te<tc ・・・式1
これにより、例えば腐食や剥離等によって鋼材端部のめっき層が消失して鋼材の一部が露出したとしても、上記のとおり露出部の板厚が薄いことでカソード反応領域の面積を小さくすることができるため、Zn系めっきからなるめっき層の犠牲防食作用を最小限に抑えることが可能となる。このため、めっき層の犠牲防食作用を長期にわたって維持することができ、それゆえめっき鋼材及びそれによって構成されるガードレールビームの耐食性の改善及び高寿命化を達成することが可能となる。また、teを薄くすることで、同じ領域におけるめっき層の平均厚さWeを相対的に厚くすることができるため、さらに耐食性及び寿命を改善することができる。このような観点からは、teは小さいほど好ましく、例えばtcの0.98倍以下(≦0.98×tc)、0.95倍以下(≦0.95×tc)、0.93倍以下(≦0.93×tc)、0.90倍以下(≦0.90×tc)又は0.88倍以下(≦0.88×tc)であってもよい。一方で、teを薄くしすぎると、端部の強度が低下してガードレールビームの運搬や設置作業などの取り扱い時に変形が生じる場合がある。したがって、teはtcの0.60倍以上(0.60×tc≦)とし、例えば0.65倍以上(0.65×tc≦)、0.70倍以上(0.70×tc≦)、0.75倍以上(0.75×tc≦)又は0.80倍以上(0.80×tc≦)であってもよい。
【0018】
tcの具体的な値は、ガードレールビームとして一般に使用される任意の適切な値であってよく特に限定されないが、例えば2.0mm以上、2.5mm以上、3.0mm以上若しくは3.5mm以上であってもよく、及び/又は6.0mm以下、5.5mm以下、5.0mm以下若しくは4.5mm以下であってもよい。
【0019】
本発明において、「端面から1~10mmの位置」及び「端面から10mm以上内側の位置」という表現における鋼材の端面の基準位置は、めっき鋼材端部の断面写真から特定される。より具体的には、めっき鋼材端部の断面写真において板厚方向に平行な直線を引いたときに、当該直線と接するめっき鋼材端部の最も外側の点が鋼材の端面の基準位置として決定される。したがって、例えば、図1に示されるような板厚方向に平行な直線状の端面ではなく、凹凸状の端面や傾斜した端面の場合には、このような端面のうち、断面写真上で板厚方向に平行な直線と接する最も外側の点が鋼材の端面の基準位置として決定される。また、teは、めっき鋼材端部の断面写真において、端面から1~10mmの位置における鋼材の板厚を2mm間隔で5点測定して得られた板厚の算術平均をいうものである。同様に、tcは、端面から10mm以上内側の位置における鋼材の板厚を50mm以上の間隔で3点以上測定して得られた板厚の算術平均をいうものであり、測定点のうち1点は鋼材の中心部辺りの板厚を測定するものとする。
【0020】
[式2:We≧Wc]
[式3:Wt≧Wc]
本発明の実施形態に係るガードレールビームでは、めっき層で被覆された鋼材の端面から1~10mmの位置におけるめっき層の片面当たりの平均厚さWe(μm)と、めっき層で被覆された鋼材の端面から10mm以上内側の位置におけるめっき層の片面当たりの平均厚さWc(mm)とをこれらの平均厚さが下記式2を満たすよう制御することが必要であり、同様に、めっき層で被覆された鋼材の端面におけるめっき層の平均厚さWt(μm)とWc(mm)とをこれらの平均厚さが下記式3を満たすよう制御することが必要である。
We≧Wc ・・・式2
Wt≧Wc ・・・式3
比較的腐食が発生及び進行しやすい鋼材端部のめっき層厚さに対応するWe及びWtを鋼材の表裏面のめっき層厚さに対応するWcと同等か又はそれよりも厚くすることで、めっき鋼材及びそれによって構成されるガードレールビームの耐食性及び寿命を確実に改善することが可能となる。耐食性を改善する観点からは、We及びWtは大きいほど好ましい。より具体的には、式2及び3に関連して、We及びWtは、例えばそれぞれ独立してWcの1.00倍超(>Wc)、1.10倍以上(≧1.10×Wc)、1.20倍以上(≧1.20×Wc)、1.30倍以上(≧1.30×Wc)、1.40倍以上(≧1.40×Wc)又は1.50倍以上(≧1.50×Wc)であってもよい。一方で、We及びWtを厚くしすぎても、耐食性の改善効果が飽和し、特にWeが厚くなりすぎると、鋼材の平坦不良等の品質不良が生じる場合がある。したがって、We及びWtは、特に限定されないが、それぞれ独立してWcの2.50倍以下(≦2.50×Wc)であることが好ましく、例えばWcの2.30倍以下(≦2.30×Wc)、2.00倍以下(≦2.00×Wc)又は1.80倍以下(≦1.80×Wc)であってもよい。
【0021】
Wcの具体的な値は、任意の適切な値であってよく特に限定されないが、例えば3μm以上又は5μm以上であってもよい。耐食性向上の観点からは、Wcは10μm以上であることが好ましく、15μm以上であることがより好ましく、20μm以上であることが最も好ましい。上限は特に限定されないが、Wcは、例えば80μm以下、60μm以下、50μm以下、40μm以下又は30μm以下であってもよい。
【0022】
式2については、鋼材の両面に形成されるめっき層のうち、少なくとも一方の表面においてWe≧Wcの関係を満たせばよい。なぜならば、いずれか一方の表面でも式2を満たせば、両方の表面で式2を満たさない場合と比較して、めっき鋼材及びそれによって構成されるガードレールビームの耐食性を改善することができるからである。耐食性をより改善する観点からは、鋼材の両面に形成されるめっき層において式2を満たすことが好ましい。また、式3についても、鋼材の両面に形成されるめっき層のうち、少なくとも一方の表面においてWt≧Wcの関係を満たせばよい、すなわち端面におけるめっき層の平均厚さWtが少なくとも一方の表面のWcに対してWt≧Wcの関係を満たせばよい。なぜならば、いずれか一方の表面でも式3を満たせば、両方の表面で式3を満たさない場合と比較して、めっき鋼材及びそれによって構成されるガードレールビームの耐食性を改善することができるからである。耐食性をより改善する観点からは、鋼材の両面に形成されるめっき層において式3を満たすことが好ましく、そして、鋼材の両面に形成されるめっき層において式2、式3両方を満たすことがより好ましい。
【0023】
Weは、めっき鋼材端部の断面写真において、端面から1~10mmの位置におけるめっき層の片面当たりの厚さを2mm間隔で5点測定して得られた値の算術平均をいうものである。ただし、5点の測定点において、例えば鋼素地が部分的に露出していて、めっき層厚さの測定値が0(ゼロ)となる測定点が含まれる場合には、Weは、当該測定値を除く残りの測定値の算術平均をいうものとする。同様に、Wcは、端面から10mm以上内側の位置におけるめっき層の片面当たりの厚さを50mm以上の間隔で3点以上測定して得られた値の算術平均をいうものであり、測定点のうち1点は鋼材の中心部辺りのめっき層の片面当たりの厚さを測定するものとする。また、Wtは、端面上の任意の異なる4点以上の位置におけるめっき層厚さを測定し、得られた4点以上の測定値のうち最小の測定値を除く3点以上の測定値の算術平均をいうものである。ただし、4点以上の測定値のうち1点の測定値は、端面上のめっき層厚さが最も厚い部分の測定値とする。また、4点以上の測定点には、めっき層厚さの測定値が0(ゼロ)となる測定点は含まないものとする。これに関連して、端面のめっきは、取扱いによりめっきが削れるなどして、局部的にめっきの厚みが薄くなったり、鋼素地が露出してしまう場合がある。しかし、鋼素地の露出が部分的であり、前記方法で測定、計算されたWe、Wtの値がそれぞれ式2及び式3を満たせば、周囲のめっきの犠牲防食作用やめっきの腐食生成物の被覆効果により、本発明の効果は得られる。なお、上で定義した端面の基準位置から10mm以内における部分的な鋼素地の露出は、断面観察した時の表裏面を含む露出長さの合計が200μm以下となるものであることが好ましい。
【0024】
[めっき層]
本発明の実施形態に係るめっき鋼材は、鋼材の両面にZn系めっきからなるめっき層を備えている。本発明において、Zn系めっきとは、Znを主成分とするめっきをいうものである。Znが主成分であれば、めっき層中のZn含有量は特に限定されず、例えば、めっき層中のZn含有量は30.0質量%以上又は40.0質量%以上であってもよい。めっき層をZn系めっきから構成することで、Znの犠牲防食作用によって高い耐食性を確保することができる。例えば、めっき層は溶融亜鉛めっき層又は合金化溶融亜鉛めっき層であってもよい。耐食性をより向上させる観点からは、めっき層はZn-Al-Mg系めっきであることが好ましい。特に限定されないが、めっき層中のZn含有量は50.0質量%以上であることが好ましく、例えば55.0質量%以上、60.0質量%以上、65.0質量%以上又は70.0質量%以上であってもよい。上限は特に限定されないが、めっき層中のZn含有量は100質量%であってもよく、例えば95.0質量%以下又は90.0質量%以下であってもよい。
【0025】
[めっき層の好ましい化学組成]
本発明は、上記のとおり、耐食性が改善されたガードレールビームを提供することを目的とするものであって、ガードレールビームを鋼材の両面に形成されたZn系めっきからなるめっき層を備えためっき鋼材によって構成し、さらに当該めっき層で鋼材の少なくとも1つの端面を被覆するとともに、めっき鋼材端部の構造を上記式1~3を満たすものとすることによって上記目的を達成するものである。したがって、めっき層はZn系めっきであればよく、めっき層全体の具体的な化学組成は、本発明の目的を達成する上で必須の技術的特徴でないことは明らかである。以下、本発明の実施形態に係るめっき鋼材において適用されるめっき層の好ましい化学組成について詳しく説明するが、これらの説明は、耐食性をさらに向上させるためのめっき層の好ましい化学組成の単なる例示を意図するものであって、本発明をこのような特定の化学組成を有するめっき層を使用したものに限定することを意図するものではない。また、以下の説明において、各成分の含有量に関する「%」は、特に断りがない限り「質量%」を意味するものである。
【0026】
[Al:15.0超~30.0%]
Alは、めっき層の耐食性及び加工性を向上させるのに有効な元素である。これらの効果を十分に得るためには、Al含有量は15.0%超であることが好ましい。Al含有量は17.0%以上であってもよい。一方で、Alを過度に含有すると、効果が飽和するか又は逆に加工性を低下させる場合がある。したがって、Al含有量は30.0%以下であることが好ましい。Al含有量は28.0%以下、26.0%以下、24.0%以下、22.0%以下又は20.0%以下であってもよい。
【0027】
[Mg:5.0超~15.0%]
Mgは、めっき層の耐食性を向上させるのに有効な元素である。このような効果を十分に得るためには、Mg含有量は5.0%超であることが好ましい。Mg含有量は5.5%以上であってもよい。一方で、Mgを過度に含有すると、脆性なMgZn2相が粗大かつ過剰に生成して加工性を低下させる場合がある。したがって、Mg含有量は15.0%以下であることが好ましい。Mg含有量は13.0%以下、10.0%以下又は8.0%以下であってもよい。
【0028】
めっき層の基本化学組成は上記のとおりである。さらに、当該めっき層は、必要に応じて、Sn:0~0.70%、Ca:0~0.60%、Si:0~0.75%、Ti:0~0.25%、Ni:0~1.00%、Co:0~0.25%、Fe:0~5.0%、及びB:0~0.50%からなる群から選択される1種又は2種以上を含有してもよい。以下、これらの任意選択元素について詳しく説明する。
【0029】
[Sn:0~0.70%]
Snは、めっき層の耐食性及び加工性を向上させるのに有効な元素である。Sn含有量は0%であってもよいが、これらの効果を得るためには、Sn含有量は0.01%以上であることが好ましい。Sn含有量は0.05%以上であってもよい。一方で、Snを過度に含有すると、粗大で脆性なMg2Sn相等が生成して加工性を低下させる場合がある。したがって、Sn含有量は0.70%以下であることが好ましい。Sn含有量は0.60%以下、0.40%以下又は0.25%以下であってもよい。
【0030】
[Ca:0~0.60%]
Caは、めっき層の製造時にめっき浴上に形成されるトップドロスの生成を抑制するのに有効な元素であり、めっき層の加工性を向上させる効果も有する。Ca含有量は0%であってもよいが、これらの効果を得るためには、Ca含有量は0.01%以上であることが好ましい。Ca含有量は0.05%以上であってもよい。一方で、Caを過度に含有すると、脆性なCa-Zn相が生成して加工性を低下させる場合がある。したがって、Ca含有量は0.60%以下であることが好ましい。Ca含有量は0.50%以下、0.40%以下又は0.30%以下であってもよい。
【0031】
[Si:0~0.75%]
Siは、鋼材に対するめっき層の密着性を向上させるのに有効な元素である。Si含有量は0%であってもよいが、このような効果を得るためには、Si含有量は0.01%以上であることが好ましい。Si含有量は0.05%以上又は0.10%以上であってもよい。一方で、Siを過度に含有すると、粗大なMg2Si相が生成して加工性を低下させる場合がある。したがって、Si含有量は0.75%以下であることが好ましい。Si含有量は0.60%以下、0.40%以下又は0.20%以下であってもよい。
【0032】
[Ti:0~0.25%]
Tiは、めっき層の耐食性を向上させるのに有効な元素である。Ti含有量は0%であってもよいが、このような効果を得るためには、Ti含有量は0.01%以上であることが好ましい。一方で、Tiを過度に含有すると、効果が飽和し、それゆえTiを必要以上にめっき層中に含有させることは製造コストの上昇を招く虞がある。したがって、Ti含有量は0.25%以下であることが好ましい。Ti含有量は0.20%以下、0.15%以下又は0.12%以下であってもよい。
【0033】
[Ni:0~1.00%]
Niは、めっき層の耐食性を向上させるのに有効な元素である。Ni含有量は0%であってもよいが、このような効果を得るためには、Ni含有量は0.01%以上であることが好ましい。Ni含有量は0.10%以上、0.15%以上又は0.20%以上であってもよい。一方で、Niを過度に含有すると、効果が飽和し、それゆえNiを必要以上にめっき層中に含有させることは製造コストの上昇を招く虞がある。したがって、Ni含有量は1.00%以下であることが好ましい。Ni含有量は0.80%以下、0.60%以下又は0.40%以下であってもよい。
【0034】
[Co:0~0.25%]
Coは、めっき層の耐食性を向上させるのに有効な元素である。Co含有量は0%であってもよいが、このような効果を得るためには、Co含有量は0.01%以上であることが好ましい。Co含有量は0.02%以上であってもよい。一方で、Coを過度に含有すると、効果が飽和し、それゆえCoを必要以上にめっき層中に含有させることは製造コストの上昇を招く虞がある。したがって、Co含有量は0.25%以下であることが好ましい。Co含有量は0.20%以下、0.15%以下又は0.10%以下であってもよい。
【0035】
[Fe:0~5.0%]
Feは、めっきポットからFeが溶け出すのを抑制するためにめっき浴中に意図的に添加したり又は鋼材等からめっき浴中に溶け出したりすることでめっき層中に含まれ得る。Fe含有量は0%であってもよいが、Feがめっき層中に含まれる場合には、Fe含有量は0.1%以上、0.3%以上又は0.5%以上であり得る。同様にFeがめっき層中に含まれる場合には、Fe含有量は一般的に5.0%以下であり、3.0%又は1.0%以下であり得る。
【0036】
[B:0~0.50%]
Bは、めっき層の耐食性を向上させるのに有効な元素である。B含有量は0%であってもよいが、このような効果を得るためには、B含有量は0.001%以上であることが好ましい。B含有量は0.01%以上又は0.02%以上であってもよい。一方で、Bを過度に含有すると、効果が飽和し、それゆえBを必要以上にめっき層中に含有させることは製造コストの上昇を招く虞がある。したがって、B含有量は0.50%以下であることが好ましい。B含有量は0.30%以下、0.20%以下又は0.10%以下であってもよい。
【0037】
[残部:Zn及び不純物]
めっき層において、上記の元素以外の残部はZn及び不純物からなる。めっき層における不純物とは、めっき層を工業的に製造する際に、原料を始めとして、製造工程の種々の要因によって混入する成分等である。
【0038】
めっき層の化学組成は、鋼材の腐食を抑制するインヒビターを加えた酸溶液にめっき層を溶解し、得られた溶液をICP(高周波誘導結合プラズマ)発光分光法によって測定することにより決定される。
【0039】
[鋼材]
本発明の実施形態に係るガードレールビームにおいて適用される鋼材は、ガードレールビームにおいて一般に適用される当業者に公知の任意の適切な材料であってよい。特に限定されないが、例えば400MPa以上の引張強さを有するものであることが好ましい。鋼材は、480MPa以上、590MPa以上又は780MPa以上の引張強さを有するものであってもよい。このような高強度の材料を使用することで、鋼材の板厚をより薄くすることが可能である。上限は特に限定されないが、例えば、鋼材の引張強さは980MPa以下であってもよい。鋼材の引張強さはJIS Z 2241:2011に準拠して、5号試験片を作製し、引張試験を行うことで測定される。鋼材の化学組成及びミクロ組織については特に限定されず、所望の引張強さ等に応じて適切に決定することができる。
【0040】
[めっき層で被覆された端面の配向]
本発明の好ましい実施形態によれば、めっき層で被覆された鋼材の端面は、地面に対して上側に向くように配置される。「地面に対して上側に向く」とは、地面に対して真上を向くことを必ずしも意味するものではなく、端面に垂直な軸が鉛直上向きに対して80°以下の角度で傾いている状態を包含するものである。端面に垂直な軸は、鉛直上向きに対して70°以下、60°以下又は45°以下の角度で傾いていてもよい。また、「地面に対して上側に向く」とは、鋼材端部の位置が上側にあることを必ずしも意味するものではなく、鋼材端部の位置に関係なく、あくまで端面に垂直な軸が地面に対して上側に向いているか否かを意味するものである。ガードレールビームにおける端面のうち、地面に対して上側を向いた端面は、一般的に腐食が発生及び進行しやすい部位となる。このため、このような部位に本発明の実施形態に係るガードレールビームの端部構造を適用することで、当該ガードレールビームの耐食性をより顕著に改善することが可能となる。
【0041】
めっき層で被覆された鋼材の端面を地面に対して上側に向くように配置する利点についてより詳しく説明すると、まず、Zn系めっきによる防食作用としては、Zn系めっき自体の高い耐食性に加えて、Zn系めっきによるいわゆる犠牲防食作用、さらにはZn系めっきの腐食生成物が鋼材の保護被膜として作用することで腐食の速度を抑制する防食作用が考えられる。ここで、Zn系めっきを適用したガードレールビームにおいては、当該ガードレールビームにおける端面のうち、地面に対して上側を向いた端面(以下、単に「上側端面」ともいう)の鋼材露出部において赤錆が発生すると、その付近のZ系めっきによる犠牲防食が働くことで上側端面近傍のめっきが腐食しやすくなる。これに関連して、Zn系めっきの腐食生成物が形成されるが、形成された腐食生成物は重力の関係で上側端面近傍を十分に覆うことができない場合がある。このため、例えば、腐食生成物によって十分に覆われた他の端面の場合と比較して、Zn系めっきによる犠牲防食作用が長期にわたって作用し続けることで、Zn系めっきの腐食が促進されてしまう場合がある。仮に、上側端面がZn系めっきの腐食生成物によって覆われたとしても、当該腐食生成物は、同様に重力の関係で下側に流れ出しやすく、腐食生成物によって覆われた状態を適切に維持することができない場合がある。したがって、ガードレールビームの下側部分は腐食生成物に覆われて腐食速度が抑制されるものの、上側部分はZn系めっきの腐食生成物が流れ出していくため、下側部分と比較して腐食の進行が促進され拡大していく傾向にある。すなわち、ガードレールビームの上側端面における鋼材露出部に対してその付近のZn系めっきが腐食することになるが、当該鋼材露出部がこのような腐食生成物による保護被膜で十分に覆われないと、鋼材露出部の腐食がさらに進行してしまい、それを防ぐためにZn系めっきによる犠牲防食が作用し続けることとなる。その結果として、ガードレールビームの上側端面部分からZn系めっきが次第に消失していくことになるため、鋼材露出部が拡大していき、さらにそれを防ぐために犠牲防食を行う必要が生じるものの、Zn系めっきの消失に関連して犠牲防食が距離的に作用しなくなり、赤錆が進行及び拡大することとなる。
【0042】
これに対し、本発明の実施形態に係るガードレールビームでは、まず第一に、端面が比較的厚いめっき層で十分に被覆されているため、初期の赤錆発生に対する耐食性が非常に高い。第二に、先に述べたとおり、鋼材端部の板厚が薄いことで、仮に鋼材端部のめっき層が消失して鋼材の一部が露出したとしても、カソード反応領域の面積を小さくすることができるため、Zn系めっきからなるめっき層の犠牲防食作用を最小限に抑えることが可能となる。したがって、本発明の実施形態に係るガードレールビームにおいて、図1で示されるめっき層で被覆された端面を地面に対して上側に向くように配置することで、このような端部構造を適用しない場合と比較して、ガードレールビームの上側端面における赤錆の発生及び当該上側端面からの赤錆の拡大を十分に抑制又は防止することができ、それゆえガードレールビームの耐食性及び寿命をより顕著に改善することが可能となる。
【0043】
[めっき層で被覆された端面から10mmの位置までのめっき被覆率:90面積%以上]
本発明の実施形態に係るガードレールビームでは、めっき層で被覆された端面から10mmの位置、より具体的にはめっき層で被覆された端面から板厚方向に対して垂直でかつ10mm内側の位置までのめっき被覆率は90面積%以上であることが好ましい。当該めっき被覆率を90面積%以上とすることで、ガードレールビームの端面における赤錆の発生及び当該端面からの赤錆の拡大をより確実に抑制又は防止することが可能となる。当該めっき被覆率は、例えば92面積%以上、95面積%以上又は97面積%以上であってもよい。上限は特に限定されないが、当該めっき被覆率は、例えば100面積%であってもよく、99面積%以下であってもよい。
【0044】
めっき層で被覆された端面から10mmの位置までのめっき被覆率は、以下のようにして決定される。まず、めっき鋼材のめっき層で被覆された端部を表面、裏面及び端面の方向からそれぞれ写真撮影した画像データがコンピューターに取り込まれる。次いで、表面及び裏面方向からの各写真において、めっき層の最も外側の部分から、先に説明しためっき鋼材端部の断面写真により特定される端面から10mmの位置までの領域に関して、めっき層と鋼材の光沢の差異に基づき、画像処理によって全体の面積及びめっき被覆面積が算出される。次に、端面方向からの写真において同様に全体の面積及びめっき被覆面積が算出される。最後に、表面、裏面及び端面のめっき被覆面積の合計をそれぞれの全体の面積の合計で除することにより、めっき層で被覆された端面から10mmの位置までのめっき被覆率が決定される。
【0045】
[めっき層で被覆された端面の稜線長さ:tcの1.3倍以上]
本発明の好ましい実施形態によれば、めっき層で被覆された端面の稜線長さは、tcの1.3倍以上である。より具体的には、めっき層で被覆された端面は、当該端面の稜線長さがtcの1.3倍以上となるような凹凸形状を有する。めっき層で被覆された端面の稜線長さをtcの1.3倍以上とすることで、当該端面の形状をより凹凸状の形状とすることができる。このため、いわゆるアンカー効果により端部におけるめっき層と鋼材との間の密着性を高めることができる。この場合には、めっきの剥離等に起因する腐食の発生及び進行を顕著に抑制又は防止することが可能となる。めっき層の密着性を高める観点からは、めっき層で被覆された端面の稜線長さは長いほど好ましく、例えば1.4倍以上、1.5倍以上、1.7倍以上又は2.0倍以上であってもよい。上限は特に限定されないが、めっき層で被覆された端面の稜線長さは、例えば2.5倍以下又は2.2倍以下であってもよい。
【0046】
めっき層で被覆された端面の稜線長さは、tcの定義に関連して説明しためっき鋼材端部の断面写真において、端面の画像を画像解析ソフトを用いて解析することにより求められる。次いで、得られた端面の稜線長さと先に求めたtcの値とから、tcに対する端面の稜線長さの比率が決定される。
【0047】
[ガードレールビームの形状]
本発明の実施形態に係るガードレールビームは、各国の規格等に従った公知の任意の形状に適用することが可能である。例えば、日本における防護柵の設置基準について言えば、本発明の実施形態に係るガードレールビームは、SS種、SA種、SB種、SC種、A種、B種及びC種のいずれの形状のガードレールビームにおいても適用することが可能である。
【0048】
<ガードレールビームの製造方法>
本発明の実施形態に係るガードレールビームは、当業者に公知の任意の適切な方法によって製造することが可能である。ガードレールビームの構造のうち、とりわけ上記式1~3を満たす端部構造以外の部分は、例えば400MPa以上の引張強さを有するSS400等のSS材(一般構造用圧延鋼材)を用いて従来公知の方法によって容易に製造することが可能である。このため、以下では、当該端部構造部分の製造に関し、プレめっき処理されためっき鋼板を用いた場合について詳しく説明する。しかしながら、以下の説明は、本発明の実施形態に係るガードレールビームを製造するための方法の例示を意図するものであって、当該ガードレールビームを以下に説明するような製造方法によって製造されるものに限定することを意図するものではない。
【0049】
プレめっき処理では、スリット等で切断加工された端部はめっき層で被覆されていないため、このような切断端面を本発明の実施形態に係るガードレールビームの端部構造(以下、単に「ガードレールビームの端部構造」ともいう)に適用すると、追加のめっき工程が必要となり、それゆえ適切ではない。そこで、プレめっき鋼板において切断加工を施さない幅方向の端部をガードレールビームの端部構造に適用することが好ましく、このような構成は従来技術においては提案されていない。これに関連して、例えば、波形形状のガードレールビームに加工する前のめっき鋼板の幅は、一般に400~500mm程度である。このため、同程度の板幅を有するめっき鋼板を製造すれば、切断加工を施さずに幅方向の両端面をガードレールビームの端部構造に適用することが可能である。この場合には、最終的に得られるガードレールビームにおける鋼材の端面のうち、2つの端面がめっき層で被覆されることになる。しかしながら、このような比較的短い板幅を有するめっき鋼板を製造することは、製造効率を低下させ、その結果として製造コストの上昇を招く。したがって、対象とするガードレールビームの幅の約2倍の板幅を有するめっき鋼板を製造し、当該めっき鋼板をスリット等で切断加工して幅方向に2分割することが好ましい。この場合には、2分割した各めっき鋼板において、切断加工されていない幅方向端部がめっき層で覆われているため、各めっき鋼板の当該幅方向端部をガードレールビームの端部構造に適用することが可能となる。
【0050】
式1:0.60×tc≦te<tcを満たすガードレールビームの端部構造は、例えば、圧延工程において鋼材の幅方向端部の板厚が薄くなるように傾斜を施した圧延ロールを用いて圧延することにより製造することが可能である。他の端面加工方法としては、例えば、めっき工程前の鋼板の幅方向端部をトリミングする際に端面を圧縮若しくは鍛造する工程を付与したり、又は同様にめっき工程前の鋼板の幅方向端部を研削して薄くしたりすることで、上記式1を満たす端部構造を製造することも可能である。
【0051】
式2:We≧Wc及び式3:Wt≧Wcを満たすガードレールビームの端部構造は、例えば、圧延工程後のめっき工程において、ガスワイピングの条件を適切に制御することによって製造することが可能である。より詳しく説明すると、めっき工程では、めっき付着量が一般にガスワイピングによって制御される。ガスワイピングは、溶融めっき浴から引き上げられためっき鋼板の表裏面に窒素や空気等のガスを吹き付けることで余分なめっきを落とす技術である。めっき付着量の制御は、ガスワイピングのガス圧、ガスを吹き付けるためのノズル間隔、及び吹き付け位置などを調整することによって一般に行われる。しかしながら、めっき鋼板の端面近傍では、めっき鋼板の表面と裏面の両方からガスワイピングによりガスが吹き付けられてこれらのガスが干渉することになる。吹き付けガスの干渉によってガスの吹き付け圧が低下するため、このような吹き付け圧の低下を適切に制御することで、めっき鋼板の端部におけるめっき付着量を中央部と比較して多くし、すなわち上記式2及び3を満たすようにめっきを厚く付着させることが可能である。めっき工程では、ガスワイピング以外の条件は特に限定されず、Zn系めっきのための適切な溶融めっき浴、例えば、めっき層の化学組成が上で説明しためっき層の好ましい化学組成の範囲内となるように成分調整した溶融めっき浴を用い、溶融めっきプロセスにて当業者に公知の適切な条件下でめっき処理を行うことができる。
【0052】
上記式1~3を満たすガードレールビームの端部構造を製造するためのさらに別の方法として以下の方法が挙げられる。具体的には、まず、めっき工程前の鋼板自体は平坦な形状で製造し、次いで、以降のめっき工程において、ガスワイピングの条件(ガス圧、ノズル間隔、及び吹き付け位置など)を適切に調整して端部のめっき厚さが比較的厚いめっき鋼板を製造する。次に、得られためっき鋼板をスキンパス圧延などにより当該めっき鋼板の端部を適切に圧下することで、鋼板の幅方向端部の板厚は薄くしつつ、当該幅方向端部のめっき厚さを厚くした端部構造、すなわち上記式1~3を満たす端部構造を製造することが可能である。
【0053】
次に、得られためっき鋼板は、従来公知の適切な方法を用いて、県道や国道、交通量の多い幹線道路や高速道路などの用途に応じた所望の形状に加工することにより、本発明の実施形態に係るガードレールビームが製造される。なお、景観の観点や更なる長期耐久性のためにガードレールビームに粉体塗装などの後塗装をしてもよい。
【0054】
上記の製造方法によって製造されたガードレールビームは、上記式1を満たすため、例えば腐食や剥離等によって鋼材端部のめっき層が消失して鋼材の一部が露出したとしても、露出部の板厚が薄いことでカソード反応領域の面積を小さくすることができ、Zn系めっきからなるめっき層の犠牲防食作用を最小限に抑えて当該犠牲防食作用を長期にわたって維持することができる。加えて、式2及び3を満たすことで、比較的腐食が発生及び進行しやすい鋼材端部のめっき層厚さを鋼材の表裏面のめっき層厚さと同等か又はそれよりも厚くすることができ、このような構成を含まないガードレールビームの場合と比較して、その耐食性及び寿命を確実に改善することが可能となる。
【0055】
[追加の好ましい実施形態]
本発明の実施形態に係るガードレールビームは、上記のとおり、少なくとも1つの端面がめっき層で被覆されかつ式1~3を満たす端部構造を特徴とするものであるが、以下では、めっき層で被覆された端面以外の少なくとも1つの端面が切断端面である場合に、当該切断端面に別の特徴を付与した追加の好ましい実施形態1及び2(以下、単に「実施形態1」などともいう)について詳しく説明する。
【0056】
[実施形態1]
実施形態1に係るガードレールビームは、少なくとも1つの端面がめっき層で被覆されかつ式1~3を満たす端部構造に加え、めっき層で被覆された端面以外の少なくとも1つ、例えば2つ又は3つの端面が切断端面であり、当該切断端面が、鋼材の第1表面から第2表面に向かって板厚方向に対して傾斜する傾斜面と、破断面とを有するか、又は鋼材の第1表面から第2表面に向かって板厚方向に対して傾斜する傾斜面と、せん断面と、破断面とを有し、
板厚方向における破断面の長さが鋼材の板厚の40%以下であり、
傾斜面とせん断面におけるめっき被覆率が合計で50面積%以上であることを特徴としている。以下、図面を参照して詳しく説明する。
【0057】
従来の切断装置10では、図2に示すように、第1刃部11の刃先11a及び第2刃部12の刃先12aが直角形状となっている。したがって、このような切断装置を用いて鋼材の上面(第1表面)及び下面(第2表面)にめっき層が被覆されているめっき鋼材1を切断加工する際には、めっき鋼材1を第1刃部11及び第2刃部12で挟み込み、押し込むことでめっき鋼材1にせん断力が加わり切断される。この場合、得られる切断端面5は、図3に示すように、上面から順にせん断面及び破断面を有する。また、このとき、図3に示すように、破断面のうち、第2表面側の角部にバリ6が一般に形成される。せん断面は、めっき鋼材1にめり込んだ第1刃部11の移動によって形成される平滑面であり、破断面は、めっき鋼材1に生じたクラックが起点となってめっき鋼材1が破断した面である。図3に示すように、めっき鋼材1の切断端面5において、めっき層3は、特に刃のクリアランスが小さい場合は、せん断面にはほとんど残存せず、破断面では鋼材2が露出している。このため、このような切断端面5の耐食性は低く、赤錆の発生が懸念される。
【0058】
これに関連して、図2に示すような従来の直角形状の刃先で切断した場合には、せん断面が小さいことから、めっき鋼材1の切断に至るまでにめっき鋼材1の上面におけるめっき層3から切断端面5へのめっきの入り込み(又は回り込み)が少なくなるものと考えられる。同様に、従来の直角形状の刃先で切断した場合には、上下の刃先の角部に応力が集中し、これらの角部をつなぐようにクラックが発生するため、切断タイミングが早くなり、鋼材2の露出領域(すなわち破断面)が大きくなるものと考えられる。したがって、切断端面5の耐食性を向上させるためには、切断タイミングを遅くして鋼材2が露出する破断面の割合を比較的小さくするとともに、切断端面5のうち破断面以外の部分のめっき被覆率を高めることが重要となる。
【0059】
切断加工の際に、めっき鋼材1の切断端面5へめっきをより多く入り込ませるための手法として、例えば、刃部にテーパー状の傾斜面を付与することが考えられる。この場合には、刃部の押し込み時にめっき鋼材1の上面におけるめっき層3中のめっきが刃部の動きに追従し、当該刃部の傾斜面に沿って切断端面5に入り込むため、図2に示すような直角形状の刃先を用いてめっき鋼材1を切断する場合と比較して、切断端面5のめっき被覆率を高くすることができる。しかしながら、この場合でも、上下の刃先の角部が角張っていると、角部の応力集中は緩和されず、これらの角部をつなぐようにクラックが発生するため、切断タイミングは遅くならず、破断面の割合は大きいままとなる。
【0060】
そこで、切断端面の耐食性を改善するために、追加の好ましい実施形態1に関連して、例えば、第1刃部21及びその刃先21a又は第2刃部22及びその刃部22aのうち少なくとも一方を、傾斜部P1及び突起部P2を有する形状とすることができる。より具体的には、図4に示すように、第1刃部21及びその刃先21aを傾斜部P1及び突起部P2を有する形状とし、第2刃部22及びその刃先22aは直角形状としてもよい。また、例えば、図5に示すように、第1刃部21及びその刃先21aと第2刃部22及びその刃先22aの両方を傾斜部P1及び突起部P2を有する形状としてもよい。図4及び5に示すような切断装置20により切断加工を行うことで、バリ6の発生を抑制しつつ、刃部の押し込み時にめっき鋼材1の上面又は下面におけるめっき層3中のめっきを刃部の動きに追従させて、当該刃部の傾斜面に沿って切断端面5に入り込ませることができ、さらには刃先の角部の応力集中も緩和されることから、切断タイミングを遅くすることができ、その結果として、鋼材2が露出する破断面の割合を十分に小さくするとともに、切断端面5のうち破断面以外の部分のめっき被覆率を顕著に増大させることが可能となる。
【0061】
図6は、追加の好ましい実施形態1に係る切断端面を示す模式図であり、図4及び5に示す一対の刃部21及び22により切断されためっき鋼材1の切断端面5を示すものである。図6は、図4及び5の第1刃部21の傾斜部P1により、当該傾斜部P1と対向する上面(第1表面)が押し込まれた側の切断端面5を示す。図6に示すように、切断端面5は、上面から順に、上面(第1表面)から下面(第2表面)に向かって突出するように板厚方向に対して傾斜する傾斜面、せん断面及び破断面を有する。傾斜面は、第1刃部21の傾斜部P1に沿って形成された面であり、鋼材2の上面(第1表面)から下面(第2表面)に向かって板厚方向に対して傾斜している。せん断面は、めっき鋼材1にめり込んだ第1刃部21の移動によって形成される平滑面であり、僅かに生じるか又は全く生じない場合がある。破断面は、めっき鋼材1に生じたクラックが起点となってめっき鋼材1が破断した面である。
【0062】
図6に示すめっき鋼材1の切断端面5では、第1表面のめっき層3は第1刃部21の動きに追従し、傾斜面に入り込んで当該傾斜面を被覆している。図6から明らかなように、図4及び5に示すような切断装置20によってめっき鋼材1を切断加工することで、めっきがほとんど残存しない「せん断面」及び鋼材2が露出している「破断面」の割合を、従来の切断装置10を用いた場合と比較して非常に小さくすることができ、これに関連して切断端面5の多くの領域を第1表面からのめっきで覆うことが可能となり、したがって切断端面5の耐食性を顕著に向上させることが可能となる。また、図4及び図5に示す一対の刃部では、破断面を生じさせる最終的な切断は、角部が略直角の突起部P2によって行われるため、バリの発生が抑制されている。
【0063】
図4に示すように、第1刃部21及びその刃先21aを傾斜部P1及び突起部P2を有する形状とし、第2刃部22及びその刃先22aは直角形状とする場合には、2つに分割された切断後のめっき鋼材1のうちの一方は、図6に示すような切断端面5を有する。しかしながら、他方のめっき鋼材1の切断端面5にはめっきが被覆されないため、スクラップとなる。一方で、図5に示すように、第1刃部21及びその刃先21aと第2刃部22及びその刃先22aの両方が傾斜部P1及び突起部P2を有する形状であれば、2つに分割された切断後のめっき鋼材1の両方が、図6に示すような切断端面5を有することができる。
【0064】
実施形態1によれば、切断端面5の板厚方向における破断面の長さは、鋼材2の板厚の40%以下に低減することができ、傾斜部及び突起部の形状や第1刃部21と第2刃部22との間のクリアランスなどを適切に調整することで、さらに鋼材2の板厚の30%以下、25%以下又は20%以下にまで低減することができる。加えて、傾斜面と存在する場合にはせん断面におけるめっき被覆率を合計で50面積%以上に増大させることができ、同様に上記傾斜部及び突起部の形状やクリアランスを適切に調整することで、60面積%以上、80面積%以上又は100面積%にまで増大させることができる。したがって、実施形態1によれば、切断端面5に赤錆が発生する領域を極めて小さくすることが可能である。
【0065】
切断端面の板厚方向における破断面の長さは、切断端面における断面写真から算出され、破断面が板厚方向に対して傾斜している場合には、傾斜面の長さではなく、板厚方向に沿った部分の破断面の長さが算出される。傾斜面とせん断面におけるめっき被覆率は、以下のようにして決定される。まず、めっき鋼材の切断端面を写真撮影した画像データがコンピューターに取り込まれる。次いで、破断面以外の領域(傾斜面及び存在する場合にはせん断面)において、めっき層と鋼材の光沢の差異に基づき、画像処理によって全体の面積及びめっき被覆面積が算出され、算出されためっき被覆面積を全体の面積で除することにより、傾斜面とせん断面におけるめっき被覆率が決定される。
【0066】
[実施形態2]
実施形態2に係るガードレールビームは、少なくとも1つの端面がめっき層で被覆されかつ式1~3を満たす端部構造に加え、めっき層で被覆された端面以外の少なくとも1つ、例えば2つ又は3つの端面が切断端面であり、当該切断端面が、
鋼材の第1表面から中央部に向かって板厚方向に対して傾斜する第1傾斜面と、
鋼材の第2表面から中央部に向かって板厚方向に対して傾斜する第2傾斜面と、
第1傾斜面と第2傾斜面との間に形成される破断面とを有し、
板厚方向における破断面の長さが鋼材の板厚の40%以下であり、
第1傾斜面と第2傾斜面におけるめっき被覆率が合計で50面積%以上であることを特徴としている。以下、図面を参照して詳しく説明する。
【0067】
図7は、追加の好ましい実施形態2に係る切断端面を示す模式図である。図7を参照すると、めっき鋼材1の切断端面5は、鋼材2の上面(第1表面)から中央部に向かって突出するように板厚方向に対して傾斜する第1傾斜面と、鋼材2の下面(第2表面)から中央部に向かって突出するように板厚方向に対して傾斜する第2傾斜面と、当該第1傾斜面と当該第2傾斜面との間に形成される破断面とを有している。加えて、実施形態2に係る切断端面5では、図6に示される実施形態1の場合と同様に、鋼材2が露出する破断面の板厚方向における長さが鋼材2の板厚の40%をはるかに下回るレベルまで十分に低減され、さらに第1及び第2表面のめっき層3がそれぞれ第1及び第2傾斜面に入り込むことで当該第1及び第2傾斜面がめっき層によって合計で50面積%を大きく超える範囲において広く被覆されていることがわかる。したがって、図7に示す実施形態2に係る切断端面においても、実施形態1の場合と同様に、切断端面5の耐食性を顕著に向上させることが可能となる。
【0068】
実施形態2に係る切断端面は、例えば、図8及び9に示す切断装置30によって製造することが可能である。図8は、追加の好ましい実施形態2に係る切断端面を得るためのめっき鋼材1の切断前の状態を示す模式図であり、図9は、図8に示す切断装置30によるめっき鋼材1の切断後の状態を示す模式図である。切断装置30は、図8に示すように、刃先31aを備えた楔形状の第1刃部31を有するパンチ33と、刃先32aを備えた楔形状の第2刃部32を有するダイ34とから構成され、第1刃部31と第2刃部32が対向して配置されている。ダイ34に対してパンチ33を相対的に移動させて楔形状の第1刃部31及び第2刃部32をそれぞれめっき鋼材1に対して押し込むことで、図9に示されるようにめっき鋼材1が切断される。
【0069】
第1刃部31及び第2刃部32をめっき鋼材1に対して押し込んだ際、それらの間で生じる引張力により、めっき鋼材1の第1及び第2表面のめっき層3中のめっきを、第1刃部31及び第2刃部32の動きに追従させて切断端面5へ入り込ませ、図7に示されるとおり、切断端面5がめっきで覆われるようにする。これにより、めっき鋼材1の切断端面5において、第1及び第2傾斜面を形成してそれらのめっき被覆率を高くするとともに、それらの間に形成され、鋼材2が露出する破断面の割合を顕著に低減することが可能となる。また、本実施形態に係る切断装置30により切断されためっき鋼材1の切断端面5の形状は、第1刃部31及び第2刃部32の形状に依存する。ここで、第1刃部31及び第2刃部32は楔形状であるため、めっき鋼材1の切断端面5は、図7に示すような楔形状の斜面に沿った第1傾斜面及び第2傾斜面を有する形状であって、板厚方向中央部に向かうにつれて突出した形状となる。また、第1刃部31及び第2刃部32を楔形状とすることで、めっき鋼材1の切断時に楔形状の斜面に沿ってめっき鋼材1の第1及び第2表面上のめっきが第1刃部31及び第2刃部32の動きに追従しやすくなる。その結果として、めっき鋼材1の第1及び第2表面上のめっきによって第1及び第2傾斜面のより広い領域を覆うことが可能となる。
【0070】
実施形態2によれば、切断端面5の板厚方向における破断面の長さは、鋼材2の板厚の40%以下に低減することができ、第1刃部31及びその刃先31a並びに第2刃部32及びその刃先32aの楔形状をより適切なものに調整したり、第1刃部31と第2刃部32との間のクリアランスを調整したりすることで、さらに鋼材2の板厚の30%以下、25%以下又は20%以下にまで低減することができる。加えて、第1傾斜面と第2傾斜面におけるめっき被覆率を合計で50面積%以上に増大させることができ、同様に上記楔形状やクリアランスを適切に調整することで、60面積%以上、80面積%以上又は100面積%にまで増大させることができる。したがって、実施形態2によれば、切断端面5に赤錆が発生する領域を極めて小さくすることが可能である。
【0071】
切断端面の板厚方向における破断面の長さ及び第1傾斜面と第2傾斜面におけるめっき被覆率は、実施形態1の場合と同様に切断端面における断面写真及び切断端面の写真に基づいて算出される。
【0072】
以下、実施例によって本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【実施例
【0073】
[例A]
本例では、1つの端面がめっき層で被覆された種々の端部構造を有するめっき鋼材を製造し、その耐食性について調べた。
【0074】
まず、厚さ4.0mm(tc)、幅90mm及び長さ150mmの一般構造用圧延鋼材SS400を用意し、次いでこの鋼材の短辺の一方の端面について、端面から10mmまでの部分をプレス機で圧下又は研削することで、端面から1~10mmの位置における鋼材の平均板厚(te)を表1に示す板厚にした。次に、得られた鋼材に対し、表2に示す化学組成を有する溶融めっき浴を用いた溶融めっきプロセスにてめっき処理を行った。その際、ガスワイピングによるガスの吹き付け圧等の条件を特に鋼材端部において適切に制御することで、表1に示すWc、We及びWtの各平均厚さを有するめっき層を備えた鋼材を作製した。表1中のtc、te、Wc、We及びWtは、上で説明したように複数の測定値の算術平均に該当するものであり、当該算術平均の小数点以下1桁を四捨五入することによって得られた値を示している。次いで、鋼材の長辺である両端面を10mmずつシャー切断することで、長辺の両端面において鋼材を露出させた幅70mm×長さ150mmのめっき鋼材aを作製した。実施例51については、鋼素地の部分的な露出を模擬するため、評価対象の端面(断面観察した時の角部)のめっきの一部をサンドペーパー(#1000仕上げ)で研削し、(断面観察した時の露出長さとして)50μmの鋼素地を露出させたサンプルを準備した。
また、評価用の基準サンプルとして、上記の各めっき鋼材aに対応するめっき組成を有するめっき鋼材bを作製した。具体的には、まず、厚さ4.0mm、幅70mm及び長さ150mmの一般構造用圧延鋼材SS400を用意し、表2に示す化学組成を有する溶融めっき浴を用いた溶融めっきプロセスにてめっき処理を行った。その際、ガスワイピングによるガスの吹き付け圧等の条件を特に鋼材端部において適切に制御することで、表1に示すWcの平均厚さを有するめっき鋼材bを作製した(めっき鋼材bは4つの端面がすべてめっき層で被覆されている)。
【0075】
[耐食性の評価]
得られためっき鋼材aを、短辺の板厚を調整した端面が上側に向くように設置し、一方で下側端面及び左右端面から15mmまでの部分はシールした状態で、サイクル腐食試験(CCT、JIS H 8502:1999 中性塩水噴霧サイクル試験)に供した。サイクル腐食試験の間、平面部の外観を目視観察し、赤錆発生面積が平面部の3%に達するサイクル数を調査した。また、めっき鋼材bは全端面から15mmまでの部分をシールした状態で、同様にサイクル腐食試験を実施した。めっき鋼材bの平面部の赤錆面積率が3%に達するサイクル数Bに対して、めっき鋼材aの平面部の赤錆面積率が3%に達するサイクル数Aが1.1倍以上であるか又はサイクル数Aとサイクル数Bの差すなわちサイクル数A-サイクル数Bが30サイクル以上である場合を◎、サイクル数Bに対してサイクル数Aが1.0倍以上1.1倍未満であるか又はサイクル数A-サイクル数Bが30サイクル未満である場合を〇、サイクル数Bに対してサイクル数Aが1.0倍未満である場合を×とし、◎及び〇を実施例(発明例)とし、×を比較例として評価した。より詳しく説明すると、本試験では、短辺の板厚を調整した端面にめっきを施しためっき鋼材aの耐食性を、短辺の板厚を調整していない通常の端面にめっきを施し、さらに当該端面にシールを施すことでより腐食されにくくしためっき鋼材bと比較して評価している。その結果を表1に示す。なお、実施例42はめっき後に無機系のZr含有クロムフリー化成処理を施し、実施例43はめっき後に有機系のV含有ウレタン樹脂系クロムフリー処理を施したものである。
【0076】
【表1】
【0077】
【表2】
【0078】
表1では、表裏面のうちいずれか一方でも式2を満たせば、式2はOKと判定しており、表裏面の両方で式2を満たさない場合に式2をNGと判定している。いずれか一方でも式2を満たせば、表裏面の両方で式2を満たさない場合と比較して、めっき鋼材の耐食性を改善することができるからである。式3についても同様である。表1を参照すると、比較例37~41では、短辺の板厚を調整した端面において、式1は満たすものの、当該端面及び/又はその近傍におけるめっき層の厚さが比較的薄かったために式2及び3の一方又は両方を満足せず、それゆえ耐食性が低下した。これとは対照的に、全ての実施例において、短辺の板厚を調整した端面に関連して式1~3の全てを満たすことで、短辺の板厚を調整していない通常の端面にめっきを施し、さらに当該端面にシールを施すことでより腐食されにくくしためっき鋼材bと比較しても、高い耐食性を達成することができた。とりわけ、実施例48~50では一方の表面のみ式2を満たし、さらに実施例50では一方の表面に関してのみ式3を満たしていたが、いずれの実施例においても良好な耐食性を達成することができた。同様に、実施例51では、めっき層で被覆された端面が部分的に露出していたにもかかわらず、式1~3の全てを満たすことで高い耐食性を達成することができた。また、実施例46、47及び51以外の全ての実施例において、めっき層で被覆された端面から10mmの位置までのめっき被覆率は100面積%であり、めっき層で被覆された端面の稜線長さはtcと同じであった。実施例46では、めっき層で被覆された端面から10mmの位置までのめっき被覆率は93面積%であり、めっき層で被覆された端面の稜線長さはtcと同じであった。一方、実施例47では、めっき層で被覆された端面から10mmの位置までのめっき被覆率は100面積%であり、めっき層で被覆された端面の稜線長さはtcの1.5倍であった。なお、比較例45では、teが薄すぎて式1を満たさなかったために、端部の強度が低下し、長辺のシャー切断の際にめっき層で被覆された端面が変形してしまい、ガードレールビームとしての使用に適さなかった。このため、比較例45については耐食性の評価を行わなかった。
【0079】
[例B]
本例では、例Aにおいて実施例(発明例)として評価された範囲内で、追加の好ましい実施形態1に対応する切断端面を有するめっき鋼材を製造し、当該切断端面における耐食性について調べた。
【0080】
まず、厚さ4.0mm(tc)、幅90mm及び長さ150mmの一般構造用圧延鋼材SS400を用意し、次いでこの鋼材の短辺の一方の端面について、端面から10mmまでの部分をプレス機で圧下又は研削することで、端面から1~10mmの位置における鋼材の平均板厚(te)を表3に示す板厚にした。次に、得られた鋼材に対し、表2に示すめっき種Nの溶融めっき浴を用いた溶融めっきプロセスにてめっき処理を行った。その際、ガスワイピングによるガスの吹き付け圧等の条件を特に鋼材端部において適切に制御することで、表3に示すWc、We及びWtの各平均厚さを有するめっき層を備えた鋼材を作製した。最後に、鋼材の長辺である両端面を10mmずつ、図4に示すような切断装置を用いて切断することで長辺の両端面において、図6に示すような傾斜面と、せん断面と、破断面とを有する切断端面を含む70mm×150mmのめっき鋼材を作製した。切断の際、各例において第1刃部と第2刃部との間のクリアランスを適切に調整することにより、傾斜面とせん断面のめっき被覆率及び板厚方向の破断面長さを表3に示すように変更した。
【0081】
[切断端面における耐食性の評価]
得られためっき鋼材を、短辺の板厚を調整した端面が上側に向くように設置し、一方で下側端面から15mmまでの部分はシールした状態で、サイクル腐食試験(CCT、JIS H 8502:1999 中性塩水噴霧サイクル試験)に供した。また、同じめっき鋼材の左右をシールせず、通常のシャー切断を行ったままの状態として、下側のみシールしたものの平坦部の赤錆面積率が3%に達するサイクル数Bに対して、前述の図4に示す切断装置で切断したものの平坦部の赤錆面積率が3%に達するサイクル数Aが1.1倍以上であるか又はサイクル数A-サイクル数Bが30サイクル以上である場合を◎、それ以下の場合を×として切断端面の耐食性(切断端面の性状に起因する耐食性)を評価した。その結果を表3に示す。
【0082】
【表3】
【0083】
表3を参照すると、各例の評価基準であるシャー切断では、鋼材の板厚に対する板厚方向の破断面(鋼材露出部)長さの割合が大きかったのに対し(全てのシャー切断で破断面の長さが鋼材板厚の70%以上)、例101~104の全てにおいて、板厚方向における破断面の長さを板厚の40%以下に制御するとともに、傾斜面とせん断面におけるめっき被覆率を合計で50面積%以上に制御することで、切断端面の多くの領域をめっきで覆うことができ、それゆえ切断端面において高い耐食性を達成することができた。
【0084】
[例C]
本例では、例Aにおいて実施例(発明例)として評価された範囲内で、追加の好ましい実施形態2に対応する切断端面を有するめっき鋼材を製造し、当該切断端面における耐食性について調べた。
【0085】
まず、厚さ4.0mm(tc)、幅90mm及び長さ150mmの一般構造用圧延鋼材SS400を用意し、次いでこの鋼材の短辺の一方の端面について、端面から10mmまでの部分をプレス機で圧下又は研削することで、端面から1~10mmの位置における鋼材の平均板厚(te)を表4に示す板厚にした。次に、得られた鋼材に対し、表2に示すめっき種Nの溶融めっき浴を用いた溶融めっきプロセスにてめっき処理を行った。その際、ガスワイピングによるガスの吹き付け圧等の条件を特に鋼材端部において適切に制御することで、表4に示すWc、We及びWtの各平均厚さを有するめっき層を備えた鋼材を作製した。最後に、鋼材の長辺である両端面を10mmずつ、図8及び9に示すような切断装置を用いて切断することで長辺の両端面において、図7に示すように、鋼材の上面及び下面(第1表面及び第2表面)からそれぞれ中央部に向かって突出するように板厚方向に対して傾斜する第1傾斜面及び第2傾斜面と、それらの間に形成される破断面とを有する切断端面を含む70mm×150mmのめっき鋼材を作製した。切断の際、各において第1刃部と第2刃部との間のクリアランスを適切に調整することにより、第1傾斜面と第2傾斜面のめっき被覆率及び板厚方向の破断面長さを表4に示すように変更した。
【0086】
[切断端面における耐食性の評価]
得られためっき鋼材を、短辺の板厚を調整した端面が上側に向くように設置し、一方で下側端面から15mmまでの部分はシールした状態で、サイクル腐食試験(CCT、JIS H 8502:1999 中性塩水噴霧サイクル試験)に供した。また、同じめっき鋼材の左右をシールせず、通常のシャー切断を行ったままの状態として、下側のみシールしたものの平坦部の赤錆面積率が3%に達するサイクル数Bに対して、前述の図8及び9に示すような切断装置で切断したものの平坦部の赤錆面積率が3%に達するサイクル数Aが1.1倍以上であるか又はサイクル数A-サイクル数Bが30サイクル以上である場合を◎、それ以下の場合を×として切断端面の耐食性(切断端面の性状に起因する耐食性)を評価した。その結果を表4に示す。
【0087】
【表4】
【0088】
表4を参照すると、各例の評価基準であるシャー切断では、鋼材の板厚に対する板厚方向の破断面(鋼材露出部)長さの割合が大きかったのに対し(全てのシャー切断で破断面の長さが鋼材板厚の70%以上)、例201~204の全てにおいて、板厚方向における破断面の長さを板厚の40%以下に制御するとともに、第1傾斜面と第2傾斜面におけるめっき被覆率を合計で50面積%以上に制御することで、切断端面の多くの領域をめっきで覆うことができ、それゆえ切断端面において高い耐食性を達成することができた。
【符号の説明】
【0089】
1 めっき鋼材
2 鋼材
3 めっき層
4 端面
5 切断端面
6 バリ
10、20、30 切断装置
11、21、31 第1刃部
11a、21a、31a 第1刃部の刃先
12、22、32 第2刃部
12a、22a、32a 第2刃部の刃先
33 パンチ
34 ダイ
【要約】
鋼材と、鋼材の両面に形成されかつZn系めっきからなるめっき層とを備えためっき鋼材によって構成され、鋼材の少なくとも1つの端面が前記めっき層で被覆されており、0.60×tc≦te<tc、We≧Wc、及びWt≧Wcを満たすことを特徴とするガードレールビーム(tcはめっき層で被覆された端面から10mm以上内側の位置における鋼材の平均板厚(mm)、teはめっき層で被覆された端面から1~10mmの位置における鋼材の平均板厚(mm)、Weはめっき層で被覆された端面から1~10mmの位置におけるめっき層の片面当たりの平均厚さ(μm)、Wcはめっき層で被覆された端面から10mm以上内側の位置におけるめっき層の片面当たりの平均厚さ(μm)、Wtはめっき層で被覆された端面におけるめっき層の平均厚さ(μm)である)が提供される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9