(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-05
(45)【発行日】2023-12-13
(54)【発明の名称】車両管理システム
(51)【国際特許分類】
G08G 1/00 20060101AFI20231206BHJP
G08G 1/09 20060101ALI20231206BHJP
G06Q 50/10 20120101ALI20231206BHJP
【FI】
G08G1/00 D
G08G1/09 F
G08G1/09 V
G06Q50/10
(21)【出願番号】P 2019126302
(22)【出願日】2019-07-05
【審査請求日】2022-06-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002664
【氏名又は名称】弁理士法人相原国際知財事務所
(72)【発明者】
【氏名】谷川 颯
【審査官】白石 剛史
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-181105(JP,A)
【文献】特開2017-197066(JP,A)
【文献】特開2000-311220(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00
G08G 1/09
G06Q 50/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の運転を許可する利用者の運転免許証の情報に基づき
前記車両を管理する車両管理システムであって、
前記車両に設けられ、利用者固有の生体認証情報を取得する認証情報取得手段と、
前記車両が位置する位置情報を取得する位置情報取得手段と、
被利用者の生体認証情報、当該生体認証情報と対応した被利用者の免許証情報が格納され、格納された被利用者の生体認証情報と前記取得した利用者固有の生体認証情報との照会により、利用者の運転免許証の情報で
前記車両の運転が可能かを判定するサーバーと、
前記サーバーで判定した情報と前記位置情報取得手段で取得した
前記車両の位置情報とに基づき、照会した利用者により
前記車両の運転が可能な地域か否かを判定する運転エリア判定手段と、
前記運転エリア判定手段の判定に基づき、照会した利用者による前記車両の操作を許可又は不許可にする運転制御手段と、
を具備
し、
前記運転エリア判定手段は、運転免許証がないと運転が行えない地域の他に、前記サーバーで判定した利用者の運転免許証の有無に関わらず、前記車両の走行または進入を禁止する禁止地域か否かを判定し、
前記運転制御手段は、前記禁止地域では前記車両の操作を不許可とする
ことを特徴とする車両管理システム。
【請求項2】
前記運転エリア判定手段は、運転免許
証がないと運転が行えない地域の他に、
前記サーバーで判定した利用者の運転免許証の有無に関わらず、運転免許証がない利用者でも
前記車両
の運転が可能である特別地域
か否かを判定し、
前記運転制御手段は、前記特別地域
では前記車両の操作を許可とする
ことを特徴とする請求項
1に記載の車両管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、免許証やICカードなど利用者の認証する物品を用いず、車両の運転が可能な地域、運転が不可能な地域などに合わせた車両の管理を可能とした車両管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近時、車両の運転を管理するシステムとして、免許証を用いず、ICカードを用いて、利用者による車両の運転操作権を管理する車両管理システムが提案されている(特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記車両管理システムは、免許証と同様、ICカードは身に着ける、又は利用者の身近な場所に置いて利用するために、不携帯や紛失などのおそれが避けられない。
また管理システムに対し車両の管理が不十分との指摘が寄せられている。
例えば砂丘、歩行者天国の地域など車両の走行自体が禁止される地域においては、規制を受けるものの、ICカードが有りさえすれば車両の走行が自由に行えるので、安全性や地域の景観が損なわれるおそれがある。
【0005】
またサーキット場や私有地などでは、免許証やICカードが無くとも、車両の運転が可能であるものの、実際は免許証が無いと車両の運転が行えなくなることがある。
このため、上記車両感知装置においては、地域の状況に合わせた車両管理の改善が求められている。
そこで、本発明の目的は、紛失のおそれのある免許証やICカードなど利用者の認証する物品を必要とせずに、地域の状況に合わせた車両の管理を可能とした車両管理システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の態様は、車両の運転を許可する利用者の運転免許証の情報に基づき車両を管理する車両管理システムであって、車両に設けられ、利用者固有の生体認証情報を取得する認証情報取得手段と、車両が位置する位置情報を取得する位置情報取得手段と、被利用者の生体認証情報、当該生体認証情報と対応した被利用者の免許証情報が格納され、格納された被利用者の生体認証情報と取得した利用者固有の生体認証情報との照会により、利用者の運転免許証の情報で車両の運転が可能かを判定するサーバーと、サーバーで判定した情報と位置情報取得手段で取得した車両の位置情報とに基づき、照会した利用者により車両の運転が可能な地域か否かを判定する運転エリア判定手段と、運転エリア判定手段の判定に基づき、照会した利用者による車両の操作を許可又は不許可にする運転制御手段とを具備し、運転エリア判定手段は、運転免許がないと運転が行えない地域の他に、サーバーで判定した利用者の運転免許証の有無に関わらず、車両の走行または進入を禁止する禁止地域か否かを判定し、運転制御手段は、禁止地域では車両の操作を不許可とすることにある。
【0007】
好ましくは、運転エリア判定手段は、運転免許がないと運転が行えない地域の他に、サーバーで判定した利用者の運転免許証の有無に関わらず、運転免許がない利用者でも車両運転が可能である特別地域か否かを判定し、運転制御手段は、特別地域では車両の操作を許可とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、利用者は、車両において利用者固有の生体認証情報を認証させる行為を行うだけで、免許証やICカードのような利用者を認証する物品を必要とせずに車両の操作が許可される。このため、免許証やICカードのような不携帯や紛失などを生じるおそれはない。
しかも、利用者の生体認証情報で得た免許証情報と、位置情報取得手段で得た車両が位置する位置情報とに基づき、車両の運転が可能な地域か否かを判定したことにより、各地域に合わせて、適切に車両を管理することが可能となる。
【0009】
特に、車両の走行自体を禁止する禁止地域の場合は車両の操作を不許可としたり、免許が無い利用者で車両運転が可能な特別地域の場合は車両の運転を許可としたりしたので、各地域の状況にも対応できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態に係る態様となる車両管理システムの主な構成を、車両と共に示すブロック図。
【
図2】利用者の生体認証情報の取得から、車両の運転が地域に応じて許可、不許可に至るまでを説明するフローチャート。
【
図3】車両の走行が禁止となる禁止地域の一例を示す図。
【
図4】免許の無い利用者でも車両の走行が可能となる特別地域の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を
図1~
図4に示す一実施形態にもとづいて説明する。
図1(a)中1は、例えばAT式の車両を示す。同車両1は、例えばエンジン(図示しない)を駆動源として走行する車両で、車両の幅方向両側にはフロントドア3が設けられる。また例えば車両のインストルメントパネル5には、操舵用のハンドル7と共に押ボタン式のエンジン始動スイッチ9が設けられる。
【0012】
つまり、車両1は、利用者(運転者)がフロントドア3のドアハンドル3aを操作して車室内に入り、図示しないフロントシートに着座してから、エンジン始動スイッチ9を操作すると、車両運転に必要な車両運転機器33たるエンジンが始動され、同じく電動パワーステアリングなどが作動可能となり、利用者の操作により運転が行われる。むろん、車両1は、ハイブリッド車、EV車などでもよい。
【0013】
この車両1に車両管理システム21が装備される。この車両管理システム21には、利用者固有の生体認証情報を用いて、予め車両外部において格納されている多くの被利用者の中から利用者の免許情報を取得、さらには車両が位置する地域に位置情報を取得して、これら情報に基づき車両1の操作(運転)を許可したり不許可としたりするシステムが用いられる。
【0014】
この車両管理システム21を説明すると、例えば
図1(a),(b)に示されるように車両管理システム21は、クラウドと呼ばれる外部サーバー23(本願のサーバーに相当)と、利用者(図示しない)の生体認証情報である指紋を読み取る指紋リーダー25(本願の認証情報取得手段に相当)、車両1の位置情報を取得する位置情報取得手段であるGPS装置27と、車両1の操作を許可又は不許可にするECU29(制御部)とを有している。
【0015】
このうち外部サーバー23は、例えば所定の外部施設に設けられる。
ECU29は、車両1に搭載される。ECU29には、通信部、例えばインターネット通信部31が設けられ、インターネット通信部31を介して、ECU29と外部サーバー23との間で通信が行えるようになっている。ちなみに外部サーバー23は、図示はしないが通信機能を有している。
【0016】
また指紋リーダー25は、例えばエンジン始動スイッチ9の操作面に設けられ、エンジン始動の押操作の際、利用者の指紋が取得されるようにしている。この指紋リーダー25とECU29とが接続され、指紋リーダー25で取得した利用者の指紋情報がインターネット通信部31から、外部サーバー23へ送られる。ちなみに指紋リーダー25は、フロントドア3のドアハンドル3aのハンドルパネル面にも設けてもよい。
【0017】
一方、外部サーバー23は、利用者の指紋情報を含む多くの被利用者の指紋情報や、これら被利用者の指紋情報に対応して結びづけた運転免許証の情報(例えば運転可能な有効期限など)が格納されている。
外部サーバー23は、指紋リーダー25で読み取られた指紋情報と、格納されている多くの指紋情報とを照会する機能が設定され、照会した利用者の指紋情報から運転免許となる運転免許証の情報を抽出する。そして、この抽出により、利用者の運転免許で車両1の運転が可能か否かの判定が行われるようにしている。つまり、運転免許を有する利用者と判定されると、車両1の運転が許可され、運転免許を有しない利用者と判定されると、車両1の運転不許可となる。
【0018】
この結果が、外部サーバー23の通信機能(図示しない)、さらにはインターネット通信部31を介して、車両1、すなわちECU29へ送られる。
他方、ECU29には、GPS装置27から取得される地図上の車両1の位置情報に基づき、同車両1が位置する地域や車両1が向かうとする直近の地域が、利用者の運転免許証情報で運転が可能か否かを判定する機能が設定されている。
【0019】
具体的には、GPS装置27によって取得した地図は、車両1が位置(あるいは直近)する地図には、例えば通常の運転免許がないと運転が行えない道路を含む通常の車両1の走行可能な地域や、歩行者天国のような車両の運転が可能か否かを問わず車両の進入を許さない道路を含む禁止地域や、
図3に示されるような国が特別指定保護地域にしている砂丘α1、すなわち一般車両の走行自体を禁止する禁止地域αなどが含まれる。
【0020】
この他、
図4に示されるような特別地域β、例えば私有地、具体的にはサーキット場β1のような運転免許証の無い利用者でも、車両1の運転が可能な特別の地域なども含まれる。
ECU29には、運転免許の有る利用者の場合、取得した利用者の免許情報と、取得した車両1の位置情報とに基づき、車両1の利用者が運転可能か否かの判定を行う判定機能(本願の運転エリア判定手段に相当)が設定され、各地域に応じた運転の可否の判定が行われるようにしている。
【0021】
これにより、ECU29は、
図2(b)に示されるように利用者の運転免許の有無だけで車両1の運転を許可、不許可とするだけでなく、車両1が位置するエリア(地域)に基づいても車両1の運転の許可、不許可を判定する。
さらにECU29には、この判定に基づき、利用者による車両1の操作を許可又は不許可とする運転制御機能が設定されている(本願の運転制御手段に相当)。
【0022】
具体的には、通常の利用者による走行を許される地域では、車両1の走行に求められる操作が許される設定としている。これに対し車両1の走行が許されない地域では、例えば車両運転機器33であるエンジンの作動を強制的に停止させたり、同じく強制的に車両停止させたりするなど強制的に車両1の走行を止める設定としている。またサーキット場β1などの私有地の地域では、免許証の有無を問わず、車両1の操作を可能とする設定としている。
【0023】
つまり、車両管理システム21は、利用者の免許証情報により車両1が管理されるだけでなく、車両1が走行する地域の状況に合わせて、車両1の管理が行えるシステムとなっている。
つぎに、
図2(a)に示すフローチャートを参照して車両管理システム21の作用を説明する。
【0024】
例えば車外に居る利用者(図示しない)が車両1に乗り込んで走行させるとする。
まず、利用者は、フロントドア3を開き、フロントシート(図示しない)に着座してから、指先にてエンジン(図示しない)を始動させるべくインストルメントパネル5上のエンジン始動スイッチ9を押操作する。
エンジン始動後、利用者により、セレクタレバー(図示しない)をドライブレンジにシフトし、パーキングスイッチ(図示しない)を解除し、アクセルペダル(図示しない)を踏操作すると、車両1は走行を始める。
【0025】
車両管理システム21は、このときの利用者の行動に基いて車両1の管理が始まる。
車両1の管理は、エンジン始動スイッチ9を押操作する際、エンジン始動スイッチ9の操作面に設けた指紋リーダー25により、利用者の指先の指紋、多くは人差し指の指紋が読み取られることにより始まる。これにより、車両1を運転しようとする利用者固有の生体認証情報である利用者の指紋情報の取得が行われる(ステップS1)。
【0026】
この指紋情報が、ECU29、インターネット通信部31経て、クラウドと呼ばれる外部サーバー23へ送られる。
外部サーバー23では、まず、利用者の指紋情報と、予め格納された多くの被利用者の指紋情報との照会が行われる。ここで、利用者の運転免許が有るとすると、利用者の指紋情報に対応した免許証情報が取得される(ステップS3)。むろん、運転免許が無い場合、免許情報は取得できない。この照会が、外部サーバー23の通信機能、インターネット通信部31を介して、ECU29へ通信される。
【0027】
一方、GPS装置27は、車両1が位置する位置情報を取得している(ステップS5)。ECU29では、免許証の有無、所得した車両1の位置情報から、照会した利用者の免許証情報で、車両1の運転が可能な地域か否かの地域の判定が行われる(ステップS7)。
具体的には、
図2(b)に示されるように利用者に免許証があり、例えば取得した地域が通常の一般道が有る地域であると、運転が可能な地域であると判定される。つまり、車両1の運転が可能となる。
【0028】
また、取得した地域が、国の保護する
図3に示される砂丘β1のような車両1の走行を禁止する地域や、車両1の進入を禁止する歩行者天国の有る地域であると、ECU29は、運転が行えない地域であると判定される。
つまり、地域に応じて車両1の運転の許可、不許可の判定が行われる。むろん、利用者が無免許であれば、いずれの場合も、運転不可と判定される。
【0029】
取得した地域がサーキット場β1のような私有地βは、運転免許が無くとも運転が可能な地域であると判定され、ECU29は、許可さえ受けると(サーキット場β1であれば許可証の受領)、免許証の有無を問わず運転が許可される地域と判定される。つまり、サーキット場β1における車両1の運転は可能となる。
車両1の走行の許されない地域の場合、ECU29は、例えば現在の車両のエンジンの作動を強制的に停止させたり、強制的にシフトを解除させたり、強制的に車両を止めさせたりなど(発進不可を含む)、車両1の走行を禁止させる不許可の措置が講じられる(ステップS9)。
【0030】
このように利用者固有の指紋情報(生体認証情報)を照会して利用者の免許証を認証させて車両1の操作を管理する車両管理システム21を用いたことにより、免許証やICカードなど認証のための物品は不要となり、不携帯や紛失などは生じずにすむ。
しかも、利用者の指紋情報(生体認証情報)で得た免許証情報と、GPS装置27(位置情報取得手段)で得た位置情報とに基づき、車両1が位置する地域で車両1の操作を許可、不許可としたので、各地域にしたがい適切に車両1を管理することができる。
【0031】
それ故、紛失のおそれのある免許証やICカードなど利用者の認証する物品を必要とせず、地域の状況に合わせた車両1の管理を行うことができる。
特に、車両1の走行自体を禁止する禁止地域αの場合は、車両1の操作が不許可され、免許が無い利用者でも車両運転が可能な特別地域βの場合は、車両1の運転が許可されるという、地域の事情を考慮した車両管理システム21を採用したので、各地域の状況に迅速に対応した車両1の管理ができる。
【0032】
なお、本発明は、上述した一実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲内で種々可変して実施しても構わない。例えば上述した実施形態では、車両の位置情報の取得にGPS装置を用いたが、これに限らず、他の手段を用いてもよい。
【符号の説明】
【0033】
1 車両
21 車両管理システム
23 外部サーバー(サーバー)
25 指紋リーダー(認証情報取得手段)
27 GPS装置(位置情報取得手段)
29 ECU(運転エリア判定手段、運転制御手段)
α 禁止地域
β 特別地域