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特許7397410センサー用カバー及びそれを備えたセンサー装置、及び液体の特性の測定方法、通気培養における代謝生産物の製造方法
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  • 特許-センサー用カバー及びそれを備えたセンサー装置、及び液体の特性の測定方法、通気培養における代謝生産物の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-05
(45)【発行日】2023-12-13
(54)【発明の名称】センサー用カバー及びそれを備えたセンサー装置、及び液体の特性の測定方法、通気培養における代謝生産物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/3577 20140101AFI20231206BHJP
【FI】
G01N21/3577
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020528836
(86)(22)【出願日】2019-06-28
(86)【国際出願番号】 JP2019025828
(87)【国際公開番号】W WO2020009022
(87)【国際公開日】2020-01-09
【審査請求日】2022-06-08
(31)【優先権主張番号】P 2018128836
(32)【優先日】2018-07-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000066
【氏名又は名称】味の素株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100123630
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 誠
(72)【発明者】
【氏名】児玉 陽平
(72)【発明者】
【氏名】藤江 正明
【審査官】井上 徹
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-60364(JP,A)
【文献】実開昭62-192242(JP,U)
【文献】特開2013-226116(JP,A)
【文献】特開平4-173097(JP,A)
【文献】特開2003-75344(JP,A)
【文献】特開2000-97930(JP,A)
【文献】特開平11-248696(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00-G01N 21/01
G01N 21/17-G01N 21/61
G01N 33/00-G01N 33/46
G01N 1/00-G01N 1/44
G01N 15/00-G01N 15/14
G01N 27/00-G01N 27/10
G01N 27/14-G01N 27/24
A01K 61/00-A01K 61/65
A01K 61/80-A01K 63/10
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
気泡が混入した液体の特性を測定するセンサー用のカバーであって、
センサーを取り囲むように配置される、一重の筒状のカバー本体を有し、
このカバー本体の下側の面の少なくとも一部には、液体を通す下側透過部が設けられ、上記カバー本体の上側の面の少なくとも一部には、液体を通す上側透過部が設けられ、
上記下側透過部及び上記上側透過部には、液体を通すための多数の微細孔が夫々形成されており、上記下側透過部に設けられた微細孔は、上記上側透過部に設けられた微細孔よりも小さく形成され
上記上側透過部に設けられている微細孔の径は、上記下側透過部に設けられている微細孔の径の1.5倍乃至5倍であり、上記下側透過部に設けられている微細孔の径は、100μm乃至400μmであることを特徴とするセンサー用カバー。
【請求項2】
上記カバー本体は略円筒形に形成され、その内部の軸線方向に上記センサーが延びている請求項1記載のセンサー用カバー。
【請求項3】
上記下側透過部は略円筒形の上記カバー本体の下側半円部全面に設けられ、上記上側透過部は上記カバー本体の上側半円部全面に設けられている請求項2記載のセンサー用カバー。
【請求項4】
上記カバー本体は金属製の薄板から形成され、上記下側透過部及び上記上側透過部に設けられた微細孔は、金属製の薄板に設けた略円形の穴である請求項1乃至3の何れか1項に記載のセンサー用カバー。
【請求項5】
液体の特性を測定するためのセンサーと、
このセンサーを取り囲むように配置された請求項1乃至の何れか1項に記載のセンサー用カバーと、を有し、
上記カバー本体は、液体を収容した容器の側壁面から斜め下方に向けて突出するように設けられ、上記センサーの計測部は、上記カバー本体の先端近傍に配置されるセンサー装
【請求項6】
液体の特性を測定するためのセンサーと、
このセンサーを取り囲むように配置された請求項1乃至の何れか1項に記載のセンサー用カバーと、
を有することを特徴とするセンサー装置。
【請求項7】
請求項記載のセンサー装置を準備する段階と、
液体内に挿入された上記センサー装置から測定信号を取得する段階と、
を有することを特徴とする液体の特性の測定方法。
【請求項8】
請求項記載のセンサー装置を準備する段階と、
培養液中に挿入した上記センサー装置から測定信号を取得する段階と、
上記培養液で通気培養する段階と、
上記測定信号に基づいて、通気培養における代謝生産物の濃度変化、及び/又は培養の原料の濃度変化を追跡する段階と、
を有することを特徴とする通気培養における代謝生産物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はセンサー用カバーに関し、特に、気泡が混入した液体の特性を測定するセンサー用のカバー及びそれを備えたセンサー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
種々の工業的生産工程において、液体の導電率や、濁度、液体中に含まれる特定成分の濃度等、種々の液体の特性を測定する必要がある。特許第3074781号(特許文献1)には、L-リジンの製造方法が記載されている。この製造方法においては、培養液中の炭素源の濃度を5g/L以下に保持するように炭素源を添加している。即ち、この方法では、適時培養液をサンプリングして炭素源濃度を直接分析したり、pHや溶存酸素濃度を測定し、その変化から炭素源の欠乏状態を感知したりして炭素源濃度を測定し、培地のフィードを制御している。
【0003】
特許文献1記載の発明のように、液体の特性は、製造工程から測定すべき液体の一部を取り出して測定することは比較的容易であるが、製造工程から取り出すことなくインラインで測定することが、製造効率の観点からは好ましい。しかしながら、測定すべき液体中に気泡が混入している場合には、特にインラインで液体の特性を測定することが困難になることがある。例えば、通気培養を行っている培養液中には、供給された酸素や空気の気泡や、培養中の微生物自体の代謝産物である炭酸ガスの気泡が混入しており、これらの気泡が測定値にノイズを混入させたり、測定誤差を増大させたりする場合がある。
【0004】
特許第4420168号公報(特許文献2)には、濁度センサが記載されている。この濁度センサは、ステンレス製の中空半円筒の部材を有し、その下部に被検液の取り込み口と自動的に開閉するスイングバルブが設けられ、上部には泡抜き用の孔が設けられている。さらに、中空半円筒の内部の先端位置には、レーザ濁度計の接液測光部が配置されている。この濁度センサによる測定時においては、まず、スイングバルブを開弁して中空半円筒内部の被検液を置換する。次いで、スイングバルブを閉弁し、中空半円筒内の気泡が泡抜き用の孔から排出されて、検出される濁度が安定するのを待ってから濁度の測定を実行する。特許文献2記載の発明では、このようにして被検液中の気泡の影響を低減している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第3074781号
【文献】特許第4420168号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2記載の濁度センサにおいては、スイングバルブを閉弁した後、検出値が安定するのを待つ必要があり、リアルタイムで検出を行うのが困難である。また、特許文献2記載の濁度センサでは、遠隔操作により開閉されるスイングバルブ等が必要であるため構造が複雑になると共に、長期間に亘って安定動作させるためのメンテナンスにも手間がかかるという問題がある。
【0007】
従って、本発明は、シンプルな構造で、液体に混入している気泡の影響を軽減することができるセンサー用のカバー及びそれを備えたセンサー装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するために、本発明は、気泡が混入した液体の特性を測定するセンサー用のカバーであって、センサーを取り囲むように配置される、一重の筒状のカバー本体を有し、このカバー本体の下側の面の少なくとも一部には、液体を通す下側透過部が設けられ、カバー本体の上側の面の少なくとも一部には、液体を通す上側透過部が設けられ、下側透過部及び上側透過部には、液体を通すための多数の微細孔が夫々形成されており、下側透過部に設けられた微細孔は、上側透過部に設けられた微細孔よりも小さく形成され、上側透過部に設けられている微細孔の径は、下側透過部に設けられている微細孔の径の1.5倍乃至5倍であり、下側透過部に設けられている微細孔の径は、100μm乃至400μmであることを特徴としている。
【0009】
このように構成された本発明によれば、センサーを取り囲むように配置されるカバー本体に、液体を通す下側透過部及び上側透過部が設けられているので、測定すべき液体はカバー本体に絶えず流入、流出することができる。この結果、カバー本体内の液体は常に置換され、カバー本体内に配置されたセンサーは、リアルタイムで連続的に液体の特性を測定することができる。また、下側透過部に設けられた微細孔は、上側透過部に設けられた微細孔よりも小さく形成されているので、カバー本体の下方から浮き上がってきた気泡は、下側透過部の微細孔を通過しにくく、カバー本体内への気泡の侵入を効果的に抑制することができる。一方、上側透過部の微細孔は下側透過部の微細孔よりも大きく形成されているので、カバー本体内に侵入した気泡はカバー本体内で浮き上がり、上側透過部を通って排出されやすい。この結果、カバー本体内に侵入した気泡がカバー本体内に滞留し、センサーの測定値に悪影響を及ぼすのを抑制することができる。
【0010】
本発明において、好ましくは、カバー本体は略円筒形に形成され、その内部の軸線方向にセンサーが延びている。
このように構成された本発明によれば、カバー本体が略円筒形に形成されているので、カバー本体の下側から浮き上がった気泡が、カバー本体の下側表面に沿って上方に流れやすく、気泡のカバー本体内への侵入を更に抑制することができる。また、カバー本体が略円筒形に形成されているので、カバー本体内に侵入して浮き上がった気泡がカバー本体内の最も高い部分に集められ、センサーに接触しにくくなる。これにより、カバー本体内に気泡が侵入した場合でも、測定への悪影響を最低限に抑制することができる。
【0011】
本発明において、好ましくは、下側透過部は略円筒形のカバー本体の下側半円部全面に設けられ、上側透過部はカバー本体の上側半円部全面に設けられている。
このように構成された本発明によれば、下側半円部及び上側半円部の全面に、下側透過部及び上側透過部が夫々設けられているので、カバー本体の液体が透過する部分を極めて大きくすることができる。この結果、カバー本体内の液体が外部の液体と置換されやすくなり、液体の特性をリアルタイムで正確に測定することが可能となる。
【0012】
本発明において、好ましくは、カバー本体は金属製の薄板から形成され、下側透過部及び上側透過部に設けられた微細孔は、金属製の薄板に設けた略円形の穴である。
このように構成された本発明によれば、金属製の薄板に設けた穴により下側透過部及び上側透過部の微細孔が形成されているので、素線を編んで形成した網状物で下側透過部や上側透過部を形成した場合に比べ、液体が下側透過部、上側透過部に付着しにくく、センサー用カバーのメンテナンス性を向上させることができる。また、金属製の薄板に設けた穴により下側透過部及び上側透過部の微細孔を形成することにより、網状物よりも破損しにくく、耐久性の高いカバー本体を構成することができる。
【0013】
本発明において、好ましくは、上側透過部に設けられている微細孔の径は、下側透過部に設けられている微細孔の径の1.5倍乃至5倍である。
このように構成された本発明においては、上側透過部の微細孔の径を下側透過部の微細孔の径の1.5倍乃至5倍に設定することにより、カバー本体内への気泡侵入の抑制と、カバー本体内に侵入してしまった気泡の排出が適正にバランスし、センサーへの気泡の影響を効果的に抑制することができる。
【0014】
本発明において、下側透過部に設けられている微細孔の径は、100μm乃至400μm、好ましくは、150μm乃至400μmである。
このように構成された本発明においては、下側透過部に設けられている微細孔の径が100μm乃至400μmに形成されているので、カバー本体内への液体の流入を許容しながらセンサーの測定値に悪影響を与えやすい大きさの気泡の侵入を、効果的に抑制することができる。
【0015】
本発明のセンサー装置は、液体の特性を測定するためのセンサーと、このセンサーを取り囲むように配置された本発明のセンサー用カバーと、を有し、カバー本体は、液体を収容した容器の側壁面から斜め下方に向けて突出するように設けられ、センサーの計測部は、カバー本体の先端近傍に配置される。
このように構成された本発明においては、カバー本体が、液体を収容した容器の側壁面から斜め下方に向けて突出するので、下方から浮き上がってカバー本体に到達した気泡が、カバー本体の下側面に沿って上方に流れやすく、カバー本体内への侵入を効果的に抑制することができる。また、カバー本体内に侵入した気泡は、上方に位置するカバー本体の基端部に集まるので、カバー本体の先端近傍に配置されたセンサーの計測部から遠ざかり、測定に与える悪影響を軽減することができる。
【0016】
また、本発明のセンサー装置は、液体の特性を測定するためのセンサーと、このセンサーを取り囲むように配置された本発明のセンサー用カバーと、を有することを特徴としている。
【0017】
さらに、本発明の液体の特性の測定方法は、本発明のセンサー装置を準備する段階と、液体内に挿入されたセンサー装置から測定信号を取得する段階と、を有することを特徴としている。
また、本発明の通気培養における代謝生産物の製造方法は、本発明のセンサー装置を準備する段階と、培養液中に挿入したセンサー装置から測定信号を取得する段階と、培養液を通気培養する段階と、測定信号に基づいて、通気培養における代謝生産物の濃度変化、及び/又は培養の原料の濃度変化を追跡する段階と、を有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0018】
本発明のセンサー用カバー及びそれを備えたセンサー装置によれば、シンプルな構造で、液体に混入している気泡の影響を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施形態によるセンサー用カバーを備えたセンサー装置を、アミノ酸の培養槽に適用した例を示す断面図である。
図2】本発明の実施形態によるセンサー用カバーの外観を示す斜視図である。
図3】本発明の実施形態によるセンサー装置を培養槽の側壁面に取り付けた状態を拡大して示す断面図である。
図4】本発明の実施形態によるセンサー用カバーにおいて、カバー本体表面に設けられている微細孔の一例を拡大して示す図である。
図5】従来のセンサー用カバーの作用((a)(b))と、本発明の実施形態のセンサー用カバーの作用(c)を比較して、模式的に示す図である。
図6】比較例として、本発明の実施形態によるセンサー用カバーを使用せずにアミノ酸濃度を測定した場合の一例を示す図である。
図7】比較例として、従来のセンサー用カバーを使用してアミノ酸濃度を測定した場合の一例を示す図である。
図8】本発明の実施形態によるセンサー用カバーを使用したセンサー装置によるアミノ酸濃度の測定例を示す図である。
図9】本発明の実施形態によるセンサー用カバーを使用して、図6乃至図8とは異なる培養液中のアミノ酸濃度を測定した例を示す図である。
図10】本発明の実施形態によるセンサー用カバーを使用して、図6乃至図8とは異なる培養液中のアミノ酸濃度を測定した例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、添付図面を参照して、本発明の好ましい実施形態を説明する。
図1は、本発明の実施形態によるセンサー用カバーを備えたセンサー装置を、アミノ酸の培養槽に適用した例を示す断面図である。図2は、本発明の実施形態によるセンサー用カバーの外観を示す斜視図である。図3は、本発明の実施形態によるセンサー装置を培養槽の側壁面に取り付けた状態を拡大して示す断面図である。
【0021】
図1に示すように、本発明の実施形態によるセンサー用カバーを備えたセンサー装置1は、液体を収容した容器である培養槽2の側壁面2aに設けられ、培養槽2の中に収容されている培養液L中のアミノ酸の濃度をインラインで測定するように構成されている。さらに、センサー装置1の内部には、センサーが配置されており、このセンサーによって取得された信号が測定器本体4に送信される。また、本実施形態においては、培養槽2は概ね円筒形であり、その中心軸線に沿って培養液を攪拌するための攪拌機6が設けられている。攪拌機6には培養液Lを攪拌するための複数の羽根6aが備えられており、これらの羽根6aを回転させることにより、培養槽2の培養液Lは均質になるように攪拌される。また、培養槽2内で通気培養を行う場合には、供給装置(図示せず)から培養槽2内に酸素又は空気が導入される。従って、培養液L中には、供給された酸素や空気の微細な気泡や、培養している微生物が生成した炭酸ガスの微細な気泡が混入している。
【0022】
次に、図2及び図3を参照して、本発明の実施形態によるセンサー装置1の構成を説明する。
図3に示すように、センサー装置1は、本発明の実施形態によるセンサー用カバー10と、このセンサー用カバー10の内部に配置されたセンサー12と、を有する。
【0023】
センサー用カバー10は、略円筒形のカバー本体14と、このカバー本体14の基端に設けられ、培養槽2の側壁面2aに固定されるフランジ部16と、を有する。
カバー本体14は、ステンレス製の薄板で形成されると共に、先端が閉塞された略円筒形に構成されており、センサー12を取り囲むように配置されている。また、後述するように、カバー本体14は、その全面に多数の微細孔が設けられており、培養槽2内の液体は、これらの微細孔を通ってカバー本体14内に流入することができる。なお、カバー本体は、直方体等、円筒形以外の任意の形状に構成することができる。また、カバー本体は、ステンレス以外の金属や、ポリテトラフルオロエチレン等の樹脂でも形成することができ、攪拌による液体の流れにより破損しにくい材質で形成するのが良い。
【0024】
フランジ部16は、ステンレス製の円板であり、その中央にカバー本体14が溶接により固定され、一体化されている。また、カバー本体14は、フランジ部16の板面に対し垂直に取り付けられている。フランジ部16にはボルト穴16aが設けられており、固定用ボルト18aによりフランジ部16が側壁面2aの外側に固定される。また、フランジ部16と側壁面2aの間にはパッキン18bが配置されており、フランジ部16と側壁面2aの間の水密性が確保されている。さらに、図3に示すように、側壁面2a外側の、フランジ部16を固定する部分は鉛直に対して傾斜するように形成されている。これにより、センサー装置1が培養槽2の側壁面2aに取り付けられたとき、カバー本体14は容器の側壁面から内側に向けて斜め下方に突出する。カバー本体14の取り付け角度は、カバー本体14内への気泡の流入を抑制すると共に、カバー本体14の近傍に液溜まりができて雑菌が繁殖するのを抑制することができる角度に設定することが好ましく、液体の性質によっては水平に近い角度に設定することもできる。本実施形態においては、カバー本体14の中心軸線は、水平な軸線に対して約16度傾斜している。
【0025】
また、本実施形態においては、センサー12として透過反射型近赤外分光センサ(NIRセンサー)が採用されており、近赤外分析により培養液L中のアミノ酸の濃度を測定している。しかしながら、本実施形態のセンサー用カバー10は、NIRセンサーの他、紫外線や可視光を使用した分光センサー、その他の光学的センサー、誘電率や、導電率を測定するための電磁気的センサー等、種々のセンサーに適用することができ、これらのセンサーと組み合わせてセンサー装置を構成することができる。
【0026】
図3に示すように、センサー12は、円形断面の棒状のセンサープローブ12aを備えており、その先端部に計測部12bが設けられている。センサープローブ12aは、センサー用カバー10のフランジ部16中央に設けられた開口を通ってカバー本体14の内部に延びている。また、センサープローブ12aはカバー本体14の中心軸線に沿って延びており、その先端部に設けられた計測部12bは、カバー本体14の先端部近傍に位置している。なお、本実施形態においては、センサープローブ12aの外径は約20mmであり、その周囲を外径約60mmのカバー本体14が取り囲むように構成されている。このように、センサープローブ12aとカバー本体14の内壁面との間には、約10mm乃至約30mm程度のクリアランスを設けることが好ましい。
【0027】
次に、図4及び図5を新たに参照して、本発明の実施形態のセンサー用カバー10に備えられているカバー本体14の構成を詳細に説明する。
図4は、カバー本体14表面に設けられている微細孔の一例を拡大して示す図である。図5は、従来のセンサー用カバーの作用と、本実施形態のセンサー用カバーの作用を比較して、模式的に示す図である。
【0028】
上述したように、本発明の実施形態によるセンサー用カバー10のカバー本体14には、その全面に多数の微細孔が形成されており、周囲の液体がカバー本体14の内側に流入できるようになっている。ここで、本実施形態のセンサー用カバー10においては、カバー本体14の下側の面に設けられた各微細孔の大きさと、上側の面に設けられた各微細孔の大きさが異なるものとなっている。即ち、カバー本体14の下側の面には液体を通す下側透過部14aが設けられ、上側の面には液体を通す上側透過部14bが設けられており、下側透過部14aに設けられた微細孔は、上側透過部14bに設けられた微細孔よりも小さく形成されている。
【0029】
図2に示すように、下側透過部14aは、円形断面を有するカバー本体14の下側の半円に対応する下側半円部全面に形成され、上側透過部14bは、カバー本体14の上側の半円に対応する上側半円部全面に形成されている。また、カバー本体14の先端面14cにも、全面に下側透過部14aと同一の微細孔が多数形成されている。
【0030】
なお、本明細書において、カバー本体14の「下側の面」とは、使用状態に設置したセンサー用カバー10に鉛直下方から光を投射したときに光が当たる面を意味し、「上側の面」とは、鉛直上方から光を投射したときに光が当たる面を意味している。また、本実施形態においては、カバー本体14の「下側の面」及び「上側の面」全体に多数の微細孔が形成されているが、微細孔は必ずしも全面に形成される必要はなく、一部に形成されていれば良い。さらに、本実施形態においては、カバー本体14の先端面14cにも微細孔が設けられているが、先端面14cには微細孔を設けなくても良い。
【0031】
次に、図4に示すように、下側透過部14a及び上側透過部14bには、千鳥状に略円形の微細孔が配列されている。即ち、各微細孔は、隣接する3つの微細孔の中心を結ぶ線が正三角形を形成するように配列されている。本実施形態においては、下側透過部14a及び上側透過部14bは、ステンレス製の薄板にエッチング加工を施して多数の微細孔を形成することにより構成されている。また、一例として、本実施形態においては、直径D=約180μmの円形の穴を、ピッチP=約320μm(円の中心を結ぶ正三角形の辺の長さ)で配列することにより下側透過部14aが形成されている。さらに、上側透過部14bは、一例として、直径D=約850μmの円形の穴を、ピッチP=約1270μmで配列したもの、又は直径D=約350μmの円形の穴を、ピッチP=約630μmで配列したものから構成されている。
【0032】
ここで、直径D=約180μmの円形の穴を、ピッチP=約320μmで配列した下側透過部14aは、開口率約28.7%となり、概ね80♯の網(80メッシュ:1インチの間に80本の素線を縦横に配置して形成した網)に相当する。さらに、直径D=約850μmの円形の穴を、ピッチP=約1270μmで配列した上側透過部14bは開口率約40.6%となり、概ね20♯の網に相当する。また、直径D=約350μmの円形の穴を、ピッチP=約630μmで配列した上側透過部14bは開口率約28%となり、概ね40♯の網に相当する。
なお、直径D=約100μmの円形の穴を、ピッチP=約210μmで配列した場合には、開口率約20.5%となり、概ね150♯の網に相当し、直径D=約150μmの円形の穴を、ピッチP=約250μmで配列した場合には、開口率約32.5%となり、概ね100♯の網に相当する。
【0033】
なお、本実施形態においては、薄板に多数の微細孔を形成したもので下側透過部14a及び上側透過部14bを構成しているが、細い素線を織る、編む等して組み合わせて形成した網状物で下側透過部14aや上側透過部14bを構成することもできる。この場合には「微細孔」は、網状物を構成する素線間の空間として形成され、「微細孔の径」は隣接する素線間の距離を意味するものとする。好ましくは、下側透過部14aに設ける微細孔の径は約100μm乃至約400μmに設定する。より好ましくは、下側透過部14aに設ける微細孔の径は約150μm乃至約400μmに設定する。また、カバー本体内に入った気泡を排出しやすくするため、上側透過部14bに設ける微細孔は下側透過部の微細孔の径よりも大きくする形成することが好ましい。しかしながら、上側透過部14bの微細孔の径は、下方へ向かう液体の流れにより気泡が上側透過部14bを通って流入するのを十分に抑制できる径に設定するのが良い。好ましくは、上側透過部14bに設ける微細孔の径は、下側透過部14aに設ける微細孔の径の約1.5倍乃至約5倍に設定する。これにより、カバー本体14内への気泡侵入の抑制と、カバー本体14内に侵入してしまった気泡の排出を適正にバランスさせることができる。
【0034】
次に、図5を参照して、センサー用カバーの作用を模式的に説明する。
まず、気泡が混入した液体の特性を測定する場合において、センサーを網状のストレーナでカバーして気泡の影響を低減することは従来から知られている。しかしながら、このような従来のカバーでは、図5(a)に示すように、センサーを覆うストレーナの網目を粗く設定しておくと、液体中の大きな気泡も、小さな気泡もカバーの内部に容易に侵入してしまうため、気泡の影響を十分に低減することはできない。
【0035】
一方、図5(b)に示すように、センサーを覆うストレーナの網目を細かく設定しておくと、大きな気泡の侵入を防止することができる。しかしながら、小さな気泡の一部はカバーの内部に侵入してしまう。ここで、ストレーナの網目が細かく設定されていると、カバーの内部に侵入した気泡はカバーの内部から排出されにくく、長時間カバー内に滞留することとなる。カバー内に滞留している気泡は浮き上がり、カバーの上部に溜まるため、ここで気泡同士が合体して大きな気泡となり、更にカバー内から排出されにくくなる。このため、従来のセンサー用のカバーでは、ストレーナの網目を細かく設定した場合でも、時間の経過と共に多くの気泡がカバー内に滞留することとなり、これらの気泡がセンサーの測定に悪影響を与えていた。
【0036】
これに対し、図5(c)に示す本発明の実施形態によるセンサー用カバー10では、カバー本体14の下側透過部14aには直径の小さな微細孔が形成されているので、下方から浮き上がってきた大きな気泡のカバー本体14内への侵入が阻止される。加えて、本実施形態においては、カバー本体14が、培養槽2の側壁面2aから斜め下方に向けて突出するように設けられているので、カバー本体14により侵入を阻止された気泡が、カバー本体14の下面に沿って斜め上方に移動しやすく、多くの気泡はセンサー用カバー10を容易に迂回しながら上方に移動する。
【0037】
一方、下方から近づいた気泡であっても小さなものは、下側透過部14aを通ってカバー本体14内へ侵入する。しかしながら、上側透過部14bには直径の大きな微細孔が形成されているので、下側透過部14aを通って侵入した小さな気泡はカバー本体14内で浮き上がり、上側透過部14bを通って容易にカバー本体14の外へ排出される。このため、侵入した気泡がカバー本体14内に長時間滞留し、そこで大きな気泡に成長するのを防止することができる。
【0038】
また、センサー用カバー10に接近する気泡は、全てが下側から接近するものではないが、気泡には常に液体による浮力が作用するため、下側からセンサー用カバー10に接近する気泡の割合が多く、これらの侵入が下側透過部14aによって大幅に抑制される。さらに、上側透過部14bによっても、側方等からセンサー用カバー10に接近する一部の気泡の侵入が阻止される。
【0039】
また、カバー本体14は、斜め下方に向けて突出するように設けられているため、カバー本体14内に侵入した気泡はカバー本体14の基端部の方へ、上方に移動する。一方、カバー本体14内に配置されているセンサープローブ12aの計測部12bは、カバー本体14の先端部近傍に配置されているため、カバー本体14内の気泡はセンサー12の計測部12bから遠ざかるように移動される。このため、カバー本体14内に侵入した気泡の測定への影響が更に軽減される。
これらの作用により、本実施形態のセンサー用カバー10によれば、測定に対する気泡の影響が効果的に低減される。
【0040】
次に、図6乃至図10を参照して、本発明の実施形態によるセンサー用カバー10を備えたセンサー装置1を使用したアミノ酸濃度の測定例を説明する。
図6は、センサー用カバー10を使用せずにアミノ酸濃度を測定した場合の一例を示す図であり、図7は、従来のセンサー用カバー(ストレーナ)を使用してアミノ酸濃度を測定した場合の一例を示す図である。図8は、本発明の実施形態によるセンサー用カバー10を使用したセンサー装置1によるアミノ酸濃度の測定例を示す図である。さらに、図9及び図10は、図6乃至図8とは異なる培養液中のアミノ酸濃度を、本発明の実施形態による2種類のセンサー用カバーを使用して夫々測定した例を示す図である。
【0041】
まず、上述したように、本実施形態においては、センサー12はNIRセンサーであり、センサープローブ12aにおいて受光された光が光ファイバを介して測定器本体4(図1)に導かれる。測定器本体4においては、導かれた光のNIRスペクトルが取得される。このセンサープローブ12aからの光に対して求められたNIRスペクトルに、予め作成しておいた検量モデルを当てはめることにより、培養液L中に含まれるアミノ酸の濃度を推定することができる。図6乃至図8は、このようにして推定されたアミノ酸濃度の時間的変化を示すグラフである。
【0042】
図6は、培養槽2内の培養液L内のアミノ酸濃度を、センサー用カバー10を取り付けることなく、センサー12を使用して測定(推定)した例である。図6に示すように、センサー用カバー10を用いない測定では、時間の経過と共に培養槽2内のアミノ酸濃度が上昇するという傾向はみられるものの、測定ごとに極めて大きく推定値がばらついている。これは、培養液L中に混入している気泡がセンサープローブ12aにおいて受光される光に影響を与え、推定値がばらついているものと考えられる。
【0043】
図7は、図6に示す例で測定した培養液Lのアミノ酸濃度を、20♯のストレーナ(従来のセンサー用カバー)で覆ったセンサー12を使用して測定した場合の一例である。図7に示すように、センサー12をストレーナで覆うことにより、図6に示す例と比較して、アミノ酸濃度の推定値のばらつきが小さくなっている。しかしながら、ストレーナを使用した場合でも推定値が大きくばらつく時間帯があり、従来のセンサー用カバーでは、アミノ酸濃度を十分な信頼度で推定することはできない。
【0044】
図8は、図6及び図7に示す例で測定した培養液Lのアミノ酸濃度を、本発明の実施形態によるセンサー用カバー10を使用して測定した場合の一例である。なお、図8に示す例では、下側透過部14aとして、約180μmの円形穴をピッチ約320μmで配列したメッシュが設けられ、上側透過部14bとして、約850μmの円形穴をピッチ約1270μmで配列したメッシュが設けられたカバー本体14が使用されている。図8に示すように、センサー12を本実施形態のセンサー用カバー10で覆うことにより、図6及び図7に示す例と比較して、アミノ酸濃度の推定値のばらつきは極めて小さくなっており、十分に信頼性の高い推定値が得られている。
【0045】
次に、図9及び図10を参照して、図6乃至図8の例とは異なるアミノ酸を培養している培養槽2内のアミノ酸濃度の推定例を説明する。
ここで、図6乃至図8にアミノ酸濃度の推定例を示した培養槽2においては、通気培養が行われており、供給装置(図示せず)により直径約150μm程度の微細な気泡が培養液L内に導入されている。これに対し、図9及び図10に測定例を示す培養槽2では気泡の導入は行われておらず、混入している気泡は培養液L内で生成される炭酸ガスによる直径約350μm程度の微細な気泡が中心となる。
【0046】
図9は培養液Lのアミノ酸濃度を、本発明の実施形態によるセンサー用カバー10を使用して測定した場合の一例である。なお、図9に示す例では、図8に示した例と同様に、下側透過部14aとして、約180μmの円形穴をピッチ約320μmで配列したメッシュが設けられ、上側透過部14bとして、約850μmの円形穴をピッチ約1270μmで配列したメッシュが設けられたカバー本体14が使用されている。図9に示すように、センサー12を本実施形態のセンサー用カバー10で覆うことにより、アミノ酸濃度の推定値のばらつきは小さく抑えられており、信頼性の高い推定値が得られている。
【0047】
図10は、図9に示す例と同一の培養液Lのアミノ酸濃度を、本発明の実施形態によるセンサー用カバー10を使用して測定した場合の一例である。なお、図10に示す例では、下側透過部14aとして、約180μmの円形穴をピッチ約320μmで配列したメッシュが設けられ、上側透過部14bとして、約350μmの円形穴をピッチ約630μmで配列したメッシュが設けられたカバー本体14が使用されている。図10に示す例においても、アミノ酸濃度の推定値のばらつきは極めて小さく抑えられており、十分に信頼性の高い推定値が得られている。
【0048】
また、図10に示す例では、図9に示す例と比較して、推定値のばらつきは更に小さくなっている。このように、下側透過部14a及び上側透過部14bに設ける微細孔の大きさを、測定する液体に混入している気泡の性状や、液体の粘性等の性質に応じて夫々適切に設定することにより、気泡の混入による影響を十分に抑制することができる。
【0049】
本発明の実施形態のセンサー用カバー10によれば、センサー12を取り囲むように配置されるカバー本体14に、液体を通す下側透過部14a及び上側透過部14bが設けられている(図2)ので、測定すべき液体はカバー本体14に絶えず流入、流出することができる。この結果、カバー本体14内の液体は常に置換され、カバー本体14内に配置されたセンサー12は、リアルタイムで連続的に液体の特性を測定することができる(図8乃至図10)。また、下側透過部14aに設けられた微細孔は、上側透過部14bに設けられた微細孔よりも小さく形成されているので(図5(c))、カバー本体14の下方から浮き上がってきた気泡は、下側透過部14aの微細孔を通過しにくく、カバー本体14内への気泡の侵入を効果的に抑制することができる。一方、上側透過部14bの微細孔は下側透過部14aの微細孔よりも大きく形成されているので、カバー本体14内に侵入した気泡はカバー本体内で浮き上がり、上側透過部14bを通って排出されやすい。この結果、カバー本体14内に侵入した気泡がカバー本体14内に滞留し、センサー12の測定値に悪影響を及ぼすのを抑制することができる。
【0050】
また、本実施形態のセンサー用カバー10によれば、カバー本体14が略円筒形に形成されているので(図2)、カバー本体14の下側から浮き上がった気泡が、カバー本体14の下側表面に沿って上方に流れやすく、気泡のカバー本体14内への侵入を更に抑制することができる。また、カバー本体14が略円筒形に形成されているので、カバー本体14内に侵入して浮き上がった気泡がカバー本体14内の最も高い部分に集められ、センサー12に接触しにくくなる。これにより、カバー本体14内に気泡が侵入した場合でも、測定への悪影響を最低限に抑制することができる。
【0051】
さらに、本実施形態のセンサー用カバー10によれば、下側半円部及び上側半円部の全面に、下側透過部14a及び上側透過部14bが夫々設けられているので(図2)、カバー本体14の液体が透過する部分を極めて大きくすることができる。この結果、カバー本体14内の液体が外部の液体と置換されやすくなり、液体の特性をリアルタイムで正確に測定することが可能となる。
【0052】
また、本実施形態のセンサー用カバー10によれば、金属製の薄板に設けた穴により下側透過部14a及び上側透過部14bの微細孔が形成されているので(図4)、素線を編んで形成した網状物で下側透過部や上側透過部を形成した場合に比べ、液体が下側透過部14a、上側透過部14bに付着しにくく、センサー用カバー10のメンテナンス性を向上させることができる。
【0053】
さらに、本実施形態のセンサー用カバー10によれば、カバー本体14が、液体を収容した容器である培養槽2の側壁面2aから斜め下方に向けて突出するので(図3)、下方から浮き上がってカバー本体14に到達した気泡が、カバー本体14の下側面に沿って上方に流れやすく、カバー本体14内への侵入を効果的に抑制することができる。また、カバー本体14内に侵入した気泡は、上方に位置するカバー本体14の基端部に集まるので、カバー本体14の先端近傍に配置されたセンサー12の計測部12bから遠ざかり、測定に与える悪影響を軽減することができる。
【0054】
以上、本発明の好ましい実施形態を説明したが、上述した実施形態に種々の変更を加えることができる。特に、上述した本発明の実施形態においては、気泡が混入している培養液中のアミノ酸濃度を分光分析により推定しているが、本発明は、気泡が混入している他の任意の液体の特性を測定するために適用することができる。また、上述した実施形態においては、液体中の特定の成分濃度の測定に本発明を適用しているが、液体の誘電率や、導電率等、液体自体の特性を測定する任意のセンサーのセンサー用カバーに本発明を適用することができる。
【0055】
また、上述した本発明の実施形態においては、培養液中のアミノ酸濃度の測定に本発明を適用していたが、アミノ酸濃度に限らず液体中の種々の成分濃度の測定に本発明を適用することで、通気培養を精度よく管理することが可能となり、培養液中の生産物の蓄積や収率を高めることができる。例えば、上述した特許文献1に記載されている、炭素源濃度の測定に本発明を適用することにより、炭素源濃度をインラインで測定することもできる。
【符号の説明】
【0056】
1 センサー装置
2 培養槽
2a 側壁面
4 測定器本体
6 攪拌機
6a 羽根
10 センサー用カバー
12 センサー
12a センサープローブ
12b 計測部
14 カバー本体
14a 下側透過部
14b 上側透過部
14c 先端面
16 フランジ部
18a 固定用ボルト
18b パッキン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10