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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-05
(45)【発行日】2023-12-13
(54)【発明の名称】ワークの洗浄装置及びワークの洗浄方法
(51)【国際特許分類】
   B08B 3/04 20060101AFI20231206BHJP
   H01M 8/00 20160101ALN20231206BHJP
   H01M 8/0202 20160101ALN20231206BHJP
【FI】
B08B3/04 A
H01M8/00 Z
H01M8/0202
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018187292
(22)【出願日】2018-10-02
(65)【公開番号】P2019063793
(43)【公開日】2019-04-25
【審査請求日】2021-04-14
【審判番号】
【審判請求日】2022-09-09
(31)【優先権主張番号】P 2017194438
(32)【優先日】2017-10-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】591282711
【氏名又は名称】アクア化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 健之
(72)【発明者】
【氏名】西分 貴彦
(72)【発明者】
【氏名】原口 拓也
(72)【発明者】
【氏名】河邉 聡
(72)【発明者】
【氏名】加藤 清誠
【合議体】
【審判長】村上 聡
【審判官】柿崎 拓
【審判官】伊藤 秀行
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-172152(JP,A)
【文献】実公昭47-35653(JP,Y1)
【文献】特開平11-628(JP,A)
【文献】特開2010-110679(JP,A)
【文献】特開2007-15229(JP,A)
【文献】特開2014-8447(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B08B3/04
B08B11/02
H01M8/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池のセパレータを構成する複数枚の薄板状のワークを収納するラックと、洗浄液が貯留される洗浄槽と、を備え、前記ラックに収納された前記ワークを前記洗浄槽内にて洗浄する装置であって、
前記洗浄槽内に設けられ、前記ラックを載置可能な載置部と、
前記載置部における一端部に連結され、同一端部を昇降させる昇降機構と、
前記洗浄槽内における前記載置部の下方に設けられ、前記昇降機構による前記載置部の前記一端部の昇降に伴う前記載置部における前記一端部とは反対側の他端部の移動を案内する案内面を有する案内部材と、を備え、
前記ラックは、互いに対向する一対の側板と、前記側板同士の対向面にそれぞれ設けられ、前記ワークの両端を支持する複数対の支持溝と、前記側板同士の間に位置する柱状の支持部材と、を有し、
前記複数対の支持溝は、前記ラックが前記載置部に載置された状態において、前記載置部の前記一端部から前記他端部に向かう方向に沿って並設され、前記複数のワークをそれらの厚さ方向に互いに間隔をおいて且つ起立した状態で収納可能に構成され、
前記支持部材は、前記ラックが前記載置部に載置された状態において、前記ラックの下端において前記複数対の支持溝の並設方向に沿って延在するとともに、前記並設方向において並設され、前記ワークの各々の下縁部を支持する複数の支持凹部を有する、
ワークの洗浄装置。
【請求項2】
前記昇降機構は、前記載置部における前記一端部に対して揺動可能に連結された昇降部と、前記昇降部を昇降させるアクチュエータと、を備える、
請求項1に記載のワークの洗浄装置。
【請求項3】
前記載置部の前記他端部には、前記案内面上を移動可能な回転体が設けられている、
請求項1または請求項2に記載のワークの洗浄装置。
【請求項4】
請求項1~請求項3のいずれか一項に記載のワークの洗浄装置を用いたワークの洗浄方法であって、
記洗浄槽を複数用いるとともに、複数枚の前記ワークが収納された前記ラックを前記洗浄液が貯留された複数の前記洗浄槽に順次浸漬させることで前記ワークを段階的に洗浄する洗浄工程を備え、
前記洗浄工程は、
複数の前記洗浄槽のうち前記ラックが最後に浸漬される第1洗浄槽に対して前記洗浄液の新液を供給する一方、前記第1洗浄槽からオーバーフローする前記洗浄液を前記第1洗浄槽に対応して設けられた第1貯留槽にて貯留し、前記第1貯留槽に貯留されている前記洗浄液を濾過した後に前記第1洗浄槽に供給し、
前記第1洗浄槽の直前に前記ラックが浸漬される第2洗浄槽に対応して設けられた第2貯留槽に前記第1貯留槽からオーバーフローする前記洗浄液を貯留する一方、前記第2貯留槽に貯留されている前記洗浄液を濾過した後に前記第2洗浄槽に供給し、前記第2洗浄槽からオーバーフローする前記洗浄液を前記第2貯留槽に貯留する、
ワークの洗浄方法。
【請求項5】
前記洗浄槽に浸漬され、前記載置部に載置された状態の前記ラックを前記昇降機構により揺動させるとともに前記洗浄液に超音波を印加する、
請求項4に記載のワークの洗浄方法。
【請求項6】
アルカリ性のアルカリ洗浄液が貯留されたアルカリ洗浄槽に前記ラックを浸漬させることで前記ワークをアルカリ洗浄するアルカリ洗浄工程と、
前記アルカリ洗浄工程の後に、リンス洗浄液が貯留された複数のリンス洗浄槽に前記ラックを順次浸漬させることで前記ワークを段階的にリンス洗浄するリンス洗浄工程と、を備え、
前記リンス洗浄工程は、前記洗浄工程を行うものであり、
前記リンス洗浄工程では、複数の前記リンス洗浄槽のうち前記ラックが最後に浸漬される第1リンス洗浄槽に対して前記リンス洗浄液の新液として純水を供給する、
請求項4または請求項5に記載のワークの洗浄方法。
【請求項7】
アルカリ性のアルカリ洗浄液が貯留されたアルカリ洗浄槽に前記ラックを順次浸漬させることで前記ワークを段階的にアルカリ洗浄するアルカリ洗浄工程と、
前記アルカリ洗浄工程の後に、リンス洗浄液が貯留されたリンス洗浄槽に前記ラックを浸漬させることで前記ワークをリンス洗浄するリンス洗浄工程と、を備え、
前記アルカリ洗浄工程は、前記洗浄工程を行うものである、
請求項4~請求項6のいずれか一項に記載のワークの洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークの洗浄装置及びワークの洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、金属製品などのワークの洗浄を行う洗浄装置が知られている(例えば特許文献1参照)。特許文献1に記載の洗浄装置は、洗浄液を貯留する洗浄槽、洗浄槽内に設けられた揺動台、及び揺動台に連結されて揺動台を昇降させる昇降機構を備えている。そして、金属製品が収納された洗浄籠を洗浄槽内の揺動台に載置し、昇降機構により揺動台を昇降させることで、洗浄液に浸漬された状態の洗浄籠及び金属製品を揺動させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-202421号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、本願発明者は、特許文献1に記載の洗浄装置を用いて、複数枚の薄板状のワークが収納された洗浄籠を各ワークを起立した状態で揺動台に載置し、昇降機構により揺動台を昇降させることを考えた。しかしながら、この場合、以下の不都合が生じるおそれがある。すなわち、ワーク同士が密着していたり、ワークが洗浄籠の側面に密着していたりすると、昇降機構により揺動台を昇降させたとしても、ワーク同士が離間しなかったり、ワークが洗浄籠から離間しなかったりすることで洗浄処理が不十分となる。
【0005】
本発明の目的は、ワークの洗浄性能を高めることができるワークの洗浄装置及びワークの洗浄方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するためのワークの洗浄装置は、ラックに収納された複数枚の薄板状のワークを洗浄液の貯留された洗浄槽内にて洗浄する装置であって、前記洗浄槽内に設けられ、前記ラックを載置可能な載置部と、前記載置部における一端部に連結され、前記一端部を昇降させる昇降機構と、前記洗浄槽内における前記載置部の下方に設けられ、前記昇降機構による前記載置部の前記一端部の昇降に伴う前記載置部における前記一端部とは反対側の他端部の移動を案内する案内面を有する案内部材と、を備え、前記ラックは、前記載置部に載置された状態において、前記載置部の前記一端部から前記他端部に向かう方向に沿って並設され、前記複数のワークをそれらの厚さ方向に互いに間隔をおいて且つ起立した状態で収納可能な複数の収納部を有している。
【0007】
同構成によれば、ラックは、洗浄槽内の載置部に載置された状態において、複数のワークをそれらの厚さ方向に互いに間隔をおいて且つ起立した状態で収納可能な複数の収納部を有している。このため、ワーク同士の密着を抑制することができる。また、昇降機構により、載置部の一端部が昇降されると、これに伴って載置部の他端部が同一端部から同他端部に向かう方向に沿って案内部材の案内面上を往復動する。このように、載置部の他端部が往復動されることで、ラックに対して各収納部の並設方向への力を積極的に作用させることができる。これにより、収納部の側面からワークが一時的に離間されやすくなり、ワーク全体を洗浄液にて処理することができる。したがって、ワークの洗浄性能を高めることができる。
【0008】
また、上記目的を達成するためのワークの洗浄方法は、複数枚の薄板状のワークが収納されたラックを洗浄液が貯留された複数の洗浄槽に順次浸漬させることで前記ワークを段階的に洗浄する洗浄工程を備える方法であって、前記洗浄工程は、複数の前記洗浄槽のうち前記ラックが最後に浸漬される第1洗浄槽に対して前記洗浄液の新液を供給する一方、前記第1洗浄槽からオーバーフローする前記洗浄液を前記第1洗浄槽に対応して設けられた第1貯留槽にて貯留し、前記第1貯留槽に貯留されている前記洗浄液を濾過した後に前記第1洗浄槽に供給し、前記第1洗浄槽の直前に前記ラックが浸漬される第2洗浄槽に対応して設けられた第2貯留槽に前記第1貯留槽からオーバーフローする前記洗浄液を貯留する一方、前記第2貯留槽に貯留されている前記洗浄液を濾過した後に前記第2洗浄槽に供給し、前記第2洗浄槽からオーバーフローする前記洗浄液を前記第2貯留槽に貯留する。
【0009】
同方法によれば、複数枚の薄板状のワークが収納されたラックを複数の洗浄槽に順次浸漬させてワークを段階的に洗浄する。
ここで、洗浄によってワークから分離された不純物は、第1洗浄槽及び第2洗浄槽(以下、洗浄槽)内の洗浄液の上層に多く存在する。洗浄槽においては、洗浄液の上層の部分がオーバーフローすることから、上記不純物の多くはオーバーフローする洗浄液と共に第1貯留槽及び第2貯留槽(以下、貯留槽)に排出されることとなる。このため、上記不純物が洗浄槽内の洗浄液の上層に滞留することを抑制できる。これにより、洗浄槽からラックを引き上げる際に上記不純物がワークの表面に再付着することを抑制できる。
【0010】
また、洗浄槽には、当該洗浄槽に対応する貯留槽内の洗浄液が濾過された後に供給される。これにより、洗浄槽内の洗浄液が徐々に入れ替わることで、洗浄槽内における洗浄液の液質を略一定に維持することができる。
【0011】
また、洗浄槽内においては、当該洗浄槽に対応する貯留槽からの洗浄液が供給されることによって洗浄液の流れが形成される。こうした洗浄液の流れにより、ワークの表面に上記不純物が再付着することを抑制できる。
【0012】
更に、上記方法によれば、第2貯留槽には、第2洗浄槽からオーバーフローした洗浄液に加えて、第1貯留槽からオーバーフローした洗浄液が貯留される。第1洗浄槽内の洗浄液に含まれる不純物の割合は、第1洗浄槽よりも前の第2洗浄槽内の洗浄液に含まれる不純物の割合よりも少ないことから、新液の供給量を抑えつつも第2洗浄槽内の洗浄液の純度を高めることができる。
【0013】
したがって、ワークの洗浄性能を高めることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ワークの洗浄性能を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第1実施形態の洗浄装置全体を斜め上方から示す斜視図。
図2図1に対応する図であって、洗浄槽を破断して示す斜視図。
図3】同実施形態のラック全体を示す斜視図。
図4図3の4-4線に沿った断面図。
図5図3の5-5線に沿った断面図。
図6】(a)は、図2の6-6線に沿った断面図、(b)は、(a)のA部を拡大して示す拡大断面図。
図7】(a)は、同実施形態の洗浄装置全体を示す平面図、(b)は、(a)のB部を拡大して示す拡大平面図。
図8図7の8-8線に沿った断面図であって、(a)は、載置部の一端部が持ち上げられていない状態を示す断面図、(b)は、載置部の一端部が持ち上げられている状態を示す図。
図9】第2実施形態の洗浄装置の構成を示す模式図。
図10】同実施形態のアルカリ洗浄部の構成を示す液回路図。
図11】同実施形態のリンス洗浄部の構成を示す液回路図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<第1実施形態>
以下、図1図8を参照して、ワークの洗浄装置の第1実施形態について説明する。
図1及び図2に示すように、本実施形態のワークの洗浄装置は、複数の薄板状のワーク10をそれらの厚さ方向に互いに間隔をおいて収納可能なラック20と、ラック20に収納された複数枚のワーク10をラック20ごと洗浄する洗浄槽30とを備えている。
【0017】
本実施形態のワーク10は、燃料電池のセパレータである。ワーク10は、ステンレス鋼などの金属材料からなり、数百μmの厚さの略長方形板状をなしている。
まず、ラック20について説明する。
【0018】
図3に示すように、ラック20は、同図の上下方向に長い長方形板状をなし、互いに対向する一対の側板21と、各側板21の対向方向に沿って延在し、各側板21の長手方向の一端同士及び他端同士を連結する一対の連結部材22とを有している。各連結部材22は、各側板21の短手方向の一端に連結されている。各側板21及び各連結部材22は、例えばステンレス鋼からなる。
【0019】
各側板21の短手方向の他端側には、把手21aが突設されている。本実施形態では、側板21及び把手21aが一体に形成されている。各側板21及び各連結部材22により、ラック20の外枠が構成されている。
【0020】
図3及び図4に示すように、各側板21の内面、すなわち互いに対向する面には、硬質樹脂材料により形成された溝部材23が接着により固定されている。
図3に示すように、各溝部材23には、各側板21の短手方向に沿って延在し、各ワーク10の両端を支持する複数対の支持溝23aが各側板21の長手方向に互いに所定の間隔をおいて並設されている。
【0021】
各支持溝23aは、これらの延在方向(各側板21の短手方向)の両端において開口している。ワーク10の両端は、支持溝23aの延在方向における他端側の開口を通じて支持溝23a内に挿入される。すなわち、支持溝23aの延在方向のうち一端側がワーク10の収納方向の前側となり、他端側がワーク10の収納方向の後側となる。
【0022】
図4に示すように、各支持溝23aの幅W1は、各支持溝23aの延在方向において同一とされている。
図3に示すように、一対の連結部材22の間には、各側板21の長手方向(同図の上下方向)に沿って延在し、ワーク10の収納方向の前側及び各側板21の長手方向の双方への変位を規制する2つの柱状の支持部材24が、各側板21の対向方向に互いに間隔をおいて設けられている。
【0023】
図5に示すように、各支持部材24は、一対の連結部材22に連結された金属材料からなる円柱状の芯部25、及び芯部25の全周を被覆する硬質樹脂材料からなる被覆部26とを有している。
【0024】
被覆部26は、側板21の長手方向(同図の上下方向)において等間隔にて設けられた複数の小径部26a、互いに隣り合う小径部26aの間に1つずつ設けられ、小径部26aよりも外径の大きい複数の大径部26bを有している。また、被覆部26は、小径部26aと大径部26bとの間に1つずつ設けられ、小径部26aから大径部26bにかけて外径が連続的に大きくされた傾斜部26cを有している。1つの小径部26aと、同小径部26aと隣り合う一対の傾斜部26cとによって支持凹部26dが構成されている。小径部26aの上下方向の幅W2は、ワーク10の厚みdよりも大きくされている(W2>d)。
【0025】
ワーク10の収納方向の前縁部が支持凹部26dに当接されることにより、ワーク10の前側及び各側板21の長手方向の双方への変位が規制される。
次に、洗浄槽30について説明する。
【0026】
図1及び図2に示すように、洗浄槽30は、上部に平面視四角形状の開口31aを有する箱状の槽本体31及び開口31aの縁部に全周にわたって設けられた鍔部32を有している。鍔部32のうち上記開口31aの1つの辺に対応する部分には、他の辺に対応する部分よりも外周側に張り出された張出部33が設けられている。また、鍔部32の外周縁部には、上方に突出する突壁部34が全周にわたって設けられている。
【0027】
図6図8に示すように、槽本体31内には、上記張出部33の張り出す方向に沿って延在する一対の案内部材35が設けられている。
なお、以降において、各案内部材35の延在する方向を延在方向Lとし、延在方向L及び上下方向の双方に対して直交する方向を幅方向Wとして説明する。
【0028】
図6(a)及び図7(a)に示すように、一対の案内部材35は、幅方向Wにおいて互いに間隔をおいて配置されている。
図6(b)に拡大して示すように、各案内部材35は上下方向に沿って延在するとともに、その上端において屈曲して幅方向Wの内側に延在しており、断面L字状をなしている。
【0029】
図7及び図8に示すように、各案内部材35の延在方向Lの両端は、槽本体31の内面に固定されている。
図2図6図8に示すように、槽本体31内には、ラック20を載置可能な載置部40が設けられている。
【0030】
載置部40は、各案内部材35の上面である案内面35aの上方に設けられ、延在方向Lに沿って延在する一対の第1フレーム41を備えている。
各第1フレーム41の間には、幅方向Wに沿って延在するとともに第1フレーム41同士を連結し、ラック20を下方から支持する複数(本実施形態では3つ)の支持棒42が延在方向Lに互いに間隔をおいて設けられている。また、各第1フレーム41の間には、幅方向Wに沿って延在するとともに第1フレーム41同士を連結し、ラック20の延在方向Lにおける載置位置を規制する一対の規制棒43が延在方向Lに互いに間隔をおいて設けられている。一対の規制棒43は、3つの支持棒42よりも上側であり、且つ3つの支持棒42よりも延在方向Lの外側に配置されている。
【0031】
図2図8(a)及び図8(b)に示すように、洗浄槽30には、各第1フレーム41の延在方向Lにおける一端部(図8(a)における右端部)を昇降させる昇降機構60が取り付けられている。
【0032】
昇降機構60は、載置部40の各第1フレーム41における一端部に対して揺動可能に連結された昇降部50と、昇降部50を昇降させるアクチュエータ70とを備えている。
昇降部50は、各第1フレーム41の一端部に揺動機構110を介して連結された一対の第2フレーム51を備えている。各第2フレーム51は、上下方向に沿って鍔部32よりも上方まで延在する長尺部51aと、長尺部51aの上端にて屈曲して延在方向Lに沿って張出部33の上方まで延在する短尺部51bとを有しており、全体として略L字状をなしている。
【0033】
各第2フレーム51には、幅方向Wに沿って延在するとともに第2フレーム51同士を連結する複数の連結棒52(本実施形態では3つ)が上下方向に互いに間隔をおいて設けられている。具体的には、2つの連結棒52が各第2フレーム51の長尺部51aの間に設けられており、1つの連結棒52が短尺部51bの間に設けられている。
【0034】
各第2フレーム51の短尺部51b同士の間には、長方形板状をなす連結板53が連結されている。連結板53には、昇降部50を昇降させるアクチュエータ70が連結されている。
【0035】
図2図8(a)及び図8(b)に示すように、槽本体31の張出部33には、上方に向けて突出可能なロッド72aを有するエアシリンダ72が取り付けられている。ロッド72aの上端部は、連結板53の下面に固定されたジョイント71に連結されている。
【0036】
図7(b)に示すように、各第1フレーム41の延在方向Lの一端部には、幅方向Wの内側からベアリング111が嵌入されている。ベアリング111には、幅方向Wの内側からボルト113が挿通されている。ボルト113は、第2フレーム51(長尺部51a)の下端部のボルト孔(図示略)に挿通されており、ボルト113の先端部には、ナット114が螺合されている。なお、ベアリング111と第2フレーム51の下端部との間には、カラー112が設けられている。
【0037】
図7(b)、図8(a)及び図8(b)に示すように、各第2フレーム51の長尺部51aの下端部には、昇降部50の昇降に伴って槽本体31の内面上を転動するホイール121が回転可能に設けられている。ホイール121は、長尺部51aよりも延在方向Lの外側に向けて突出している。ホイール121には、幅方向Wの外側からボルト123が挿通されている。ボルト123は、第2フレーム51の下端部のボルト孔(図示略)に挿通されており、ボルト123の先端部には、ナット124が螺合されている。なお、ホイール121の内部には、リテーナにより保持された複数のころ(いずれも図示略)が設けられている。
【0038】
図6及び図7に示すように、槽本体31の内面のうちホイール121に対向する部分、すなわち上記ホイール121が摺動する部分には、上下方向に対して長い長方形板状の補強板36が固定されている。
【0039】
図7及び図8に示すように、各第1フレーム41の延在方向Lの他端部(図7(a)における下端部)には、案内部材35の上面である案内面35a上を移動可能な回転体としてのベアリング101が回転可能に設けられている。ベアリング101には、ベアリング101が案内面35a上を移動する際の幅方向Wの内側への変位を規制するフランジ部101aが設けられている。各ベアリング101には、幅方向Wの外側からボルト103が挿通されている。ボルト103は、第1フレーム41の他端部のボルト孔(図示略)に挿通されており、ボルト103の先端部には、ナット104が螺合されている。なお、ベアリング101と第1フレーム41の他端部との間には、カラー102が設けられている。
【0040】
図6図8に示すように、槽本体31内には、洗浄液を加熱するヒータ80が設けられている。ヒータ80は、槽本体31の外部から槽本体31の側壁を貫通して取り付けられており、案内部材35の下方に位置している。
【0041】
なお、槽本体31の底部には、槽本体31内の洗浄液を外部に排出するための排出部(図示略)が設けられている。
図8(a)及び図8(b)に示すように、ラック20は、把手21aを上側にする、すなわち支持部材24を下側にするとともに、複数の支持溝23aの並設方向を延在方向Lに一致させた状態でのみ載置部40に載置可能とされている。このとき、ラック20の各支持溝23aに収納された複数のワーク10は起立した状態とされる。なお、本実施形態における各支持溝23aが本発明に係る複数の収納部に相当する。
【0042】
次に、本実施形態の作用について説明する。
ラック20に収納されたワーク10は、以下のようにして洗浄される。
図8(a)に示すように、まず、複数のワーク10が収納されたラック20を載置部40に載置するとともに、洗浄槽30の槽本体31内に洗浄液を貯留する。なお、同図では、ワーク10の図示を省略している。
【0043】
次に、図8(b)に示すように、エアシリンダ72を駆動してロッド72aを上方に向けて突出させることにより、昇降部50を上昇させる。これにより、昇降部50の下端部に揺動機構110を介して連結された載置部40の一端部が持ち上げられる。これに伴い、載置部40の他端部が案内面35a上をベアリング101を介して延在方向Lにおいて上記一端部に近接する側に移動される。
【0044】
続いて、載置部40の一端部が持ち上げられている状態から昇降部50を降下させる。これにより、図8(a)に示すように、載置部40の一端部が降ろされる。これに伴い、載置部40の他端部が案内面35a上をベアリング101を介して延在方向Lにおいて上記一端部から離間する側に移動される。
【0045】
このように、昇降部50の昇降により、載置部40の一端部は昇降される一方、他端部は延在方向Lにおいて往復動されることとなる。
以降、これらの動作が繰り返し行われることで、載置部40に載置されたラック20が上下方向及び前後方向の双方に往復動される。
【0046】
以上説明した本実施形態に係るワークの洗浄装置によれば、以下に示す作用効果が得られるようになる。
(1)ワーク10の洗浄装置は、洗浄槽30内に設けられ、ラック20を載置可能な載置部40、及び載置部40における一端部に連結され、同一端部を昇降させる昇降機構60を備えている。また、洗浄槽30内における載置部40の下方に設けられ、昇降機構60による載置部40の一端部の昇降に伴う載置部40の一端部とは反対側の他端部の移動を案内する案内面35aを有する案内部材35を備えている。ラック20は、載置部40に載置された状態において、載置部40の一端部から他端部に向かう方向に沿って並設され、複数のワーク10をそれらの厚さ方向に互いに間隔をおいて且つ起立した状態で収納可能な複数の収納部としての支持溝23aを有している。
【0047】
こうした構成によれば、ラック20は、洗浄槽30内の載置部40に載置された状態において、複数のワーク10をそれらの厚さ方向に互いに間隔をおいて且つ起立した状態で収納可能な複数の支持溝23aを有している。このため、ワーク10同士の密着を抑制することができる。また、昇降機構60により、載置部40の一端部が昇降されると、これに伴って載置部40の他端部が同一端部から同他端部に向かう方向(延在方向L)に沿って案内部材35の案内面35a上を往復動する。このように、載置部40の他端部が往復動されることで、ラック20に対して各支持溝23aの並設方向への力を積極的に作用させることができる。これにより、支持溝23aの側面からワーク10が一時的に離間されやすくなり、ワーク10全体を洗浄液にて処理することができる。したがって、ワーク10の洗浄性能を高めることができる。
【0048】
(2)昇降機構60は、載置部40における一端部に対して揺動可能に連結された昇降部50と、昇降部50を昇降させるアクチュエータ70とを備えている。
こうした構成によれば、載置部40と昇降部50とが相対揺動可能に連結されているため、アクチュエータ70により昇降部50を昇降させることで、載置部40の一端部が昇降されるとともに、載置部40の他端部が前後方向に往復動される。したがって、簡易な構成により、載置部40に載置されたラック20を上下方向及び前後方向の双方に移動させることができる。
【0049】
(3)載置部40の他端部には、案内面35a上を移動可能な回転体としてのベアリング101が設けられている。
こうした構成によれば、載置部40の他端部がベアリング101を介して案内面35a上を滑らかに移動するようになる。このため、載置部40の他端部を安定して往復動させることができる。
【0050】
<第2実施形態>
以下、図9図11を参照して、ワークの洗浄装置の第2実施形態について説明する。なお、第1実施形態と同一の構成については同一の符号を付し、第1実施形態と対応する構成については、第1実施形態の符号「**」に200を加算した符号「2**」を付すことにより重複する説明を省略する。
【0051】
本実施形態のワークの洗浄装置(以下、洗浄装置)は、複数枚の薄板状のワーク10が収納されたラック20を複数の洗浄槽に順次浸漬させることでワーク10を段階的に洗浄するものである。
【0052】
図9に示すように、洗浄装置は、ワーク10をアルカリ洗浄するアルカリ洗浄部300と、アルカリ洗浄された後のワーク10をリンス洗浄するリンス洗浄部400とを備えている。
【0053】
図9に示すように、アルカリ洗浄部300は、アルカリ性のアルカリ洗浄液によりワーク10を段階的にアルカリ洗浄するアルカリ洗浄工程に用いられるものであり、複数(本実施形態では3つ)のアルカリ洗浄槽(第1アルカリ洗浄槽311、第2アルカリ洗浄槽312、第3アルカリ洗浄槽313)を備えている。
【0054】
また、リンス洗浄部400は、アルカリ洗浄された後のワーク10をリンス洗浄液により段階的にリンス洗浄するリンス洗浄工程に用いられるものであり、複数(本実施形態では4つ)のリンス洗浄槽(第1リンス411,第2リンス洗浄槽412,第3リンス洗浄槽413,第4リンス洗浄槽414)を備えている。
【0055】
洗浄装置は、ラック20を把持するとともに洗浄槽313,312,311,414,413,412,411に対してラック20を順次浸漬させるべく搬送する搬送装置500を備えている。
【0056】
次に、図9及び図10を参照して、アルカリ洗浄部300について詳細に説明する。
アルカリ洗浄部300は、NaOHなどのアルカリ洗浄液により、プレス加工時にワーク10の表面に付着した油分などの不純物を除去するアルカリ洗浄工程を行うためのものである。
【0057】
図9及び図10に示すように、各アルカリ洗浄槽311~313は、基本的に第1実施形態の洗浄槽30と同様な構成を備えている。すなわち、図示は省略するが、各洗浄槽311~313は、ラック20を載置可能な載置部40と、載置部40における一端部に連結され、同一端部を昇降させる昇降機構60とを備えている。ただし、各洗浄槽311~313には、サブタンク237及び超音波発生機380が設けられている一方、ヒータ80が設けられていない。
【0058】
第1アルカリ洗浄槽311には、アルカリ洗浄液の新液を供給する供給流路361を有するアルカリ洗浄液供給装置360が接続されている。
サブタンク237は、槽本体231の外側面の上部と鍔部232との間に全周にわたって設けられており、四角環状をなしている。サブタンク237には、槽本体231の上縁からオーバーフローしたアルカリ洗浄液が貯留される。
【0059】
図10に示すように、各アルカリ洗浄槽311~313の各サブタンク237には、各サブタンク237に貯留されたアルカリ洗浄液を、3つのアルカリ洗浄槽311~313に対応して設けられた第1アルカリ貯留槽331、第2アルカリ貯留槽332、及び第3アルカリ貯留槽333にそれぞれ供給する第1流路320が接続されている。第1流路320には、アルカリ洗浄液を圧送するポンプ321が設けられている。
【0060】
各アルカリ貯留槽331~333は、1つのアルカリ集合槽330の内部に区画されている。
アルカリ集合槽330は、長方形板状の底壁335と、底壁335の周縁から全周にわたって立設された都合4つの側壁336と、アルカリ集合槽330の内部を3つのアルカリ貯留槽331~333に区画する複数(本実施形態では2つ)の仕切壁337,338とを有している。第1アルカリ貯留槽331と第2アルカリ貯留槽332とを区画する仕切壁337の上縁部は、第2アルカリ貯留槽332と第3アルカリ貯留槽333とを区画する仕切壁338の上縁部よりも上方に位置している。また、側壁336の上縁部は、各仕切壁337,338の上縁部よりも上方に位置している。したがって、第1アルカリ貯留槽331、第2アルカリ貯留槽332、及び第3アルカリ貯留槽333の順で液面の高さが低くなる。これらにより、第1アルカリ貯留槽331に貯留されるアルカリ洗浄液の液面の高さが仕切壁337を越えると当該アルカリ洗浄液は、第2アルカリ貯留槽332にオーバーフローする。また、第2アルカリ貯留槽332に貯留されるアルカリ洗浄液の液面の高さが仕切壁338を越えると当該アルカリ洗浄液は、第3アルカリ貯留槽333にオーバーフローする。
【0061】
以上のことから、第1アルカリ貯留槽331には、第1アルカリ洗浄槽311のサブタンク237に接続された第1流路320から圧送されるアルカリ洗浄液が供給される。
第2アルカリ貯留槽332には、第2アルカリ洗浄槽312のサブタンク237に接続された第1流路320から圧送されるアルカリ洗浄液と、第1アルカリ貯留槽331においてオーバーフローしたアルカリ洗浄液とが供給される。
【0062】
第3アルカリ貯留槽333には、第3アルカリ洗浄槽313のサブタンク237に接続された第1流路320から圧送されるアルカリ洗浄液と、第2アルカリ貯留槽332においてオーバーフローしたアルカリ洗浄液とが供給される。
【0063】
各アルカリ貯留槽331~333には、アルカリ洗浄液を加熱するヒータ381が設けられている。なお、図10において、第2アルカリ貯留槽332に設けられたヒータ381の図示を省略している。
【0064】
アルカリ集合槽330の底壁335のうち第3アルカリ貯留槽333の底部を構成する部分には、アルカリ洗浄液を排出する排出流路340が接続されている。排出流路340には、排出流路340を開閉するバルブ341が設けられている。
【0065】
各アルカリ貯留槽331~333には、対応するアルカリ洗浄槽311~313にアルカリ洗浄液を供給する第2流路350が接続されている。各第2流路350には、上流側から順に、アルカリ洗浄液を圧送するポンプ351と、アルカリ洗浄液を濾過するフィルタ352とが設けられている。なお、図10において、第2アルカリ洗浄槽312及びこれに接続される第2流路350の図示を省略している。
【0066】
以上のことから、各アルカリ洗浄槽311~313には、第2流路350によりアルカリ洗浄液が供給される一方、第1流路320によりアルカリ洗浄液が排出される。
なお、第1アルカリ洗浄槽311は、第2流路350によりアルカリ洗浄液が供給されることに加えて、供給流路361を有するアルカリ洗浄液供給装置360によりアルカリ洗浄液の新液が供給される。
【0067】
次に、図9及び図11を参照して、リンス洗浄部400について詳細に説明する。
リンス洗浄部400は、上記アルカリ洗浄工程においてワーク表面に付着したアルカリ洗浄液を除去するリンス洗浄工程を行うためのものである。
【0068】
リンス洗浄部400は、アルカリ洗浄部300と基本的に同様な構成を有している。したがって、以降において、アルカリ洗浄部300と同様な構成を有する部分については、アルカリ洗浄部300に対応する符号「3**」に「100」を加算した符号「4**」を付すことにより、重複する説明を省略する場合がある。
【0069】
第1リンス洗浄槽411には、リンス洗浄液の新液を供給する供給流路461を有するリンス洗浄液供給装置460が接続されている。
本実施形態のリンス洗浄液の新液は純水である。ここで、純水とは、摂氏25℃における導電率が1.0μS/cm以下であり、不純物がほとんど含まれていない水である。
【0070】
図11に示すように、各リンス洗浄槽411~414の各サブタンク237には、各サブタンク237に貯留されたリンス洗浄液を、4つのリンス洗浄槽411~414に対応して設けられた第1リンス貯留槽431、第2リンス貯留槽432、第3リンス貯留槽433、及び第4リンス貯留槽434にそれぞれ供給する第1流路420が接続されている。
【0071】
各リンス貯留槽431~434は、1つのリンス集合槽430の内部に区画されている。
リンス集合槽430は、リンス集合槽430の内部を4つのリンス貯留槽431~434に区画する複数(本実施形態では3つ)の仕切壁437,438,439を有している。
【0072】
仕切壁437の上縁部は、仕切壁438の上縁部よりも上方に位置している。また、仕切壁438の上縁部は、仕切壁439の上縁部よりも上方に位置している。したがって、第1リンス貯留槽431、第2リンス貯留槽432、第3リンス貯留槽433、及び第4リンス貯留槽434の順で液面の高さが低くなる。これらにより、第1リンス貯留槽431に貯留されるリンス洗浄液の液面の高さが仕切壁437を越えると当該リンス洗浄液は、第2リンス貯留槽432にオーバーフローする。また、第2リンス貯留槽432に貯留されるリンス洗浄液の液面の高さが仕切壁438を越えると当該リンス洗浄液は、第3リンス貯留槽433にオーバーフローする。また、第3リンス貯留槽433に貯留されるリンス洗浄液の液面の高さが仕切壁439を越えると当該リンス洗浄液は、第4リンス貯留槽434にオーバーフローする。
【0073】
各リンス洗浄槽411~414の各サブタンク237には、各サブタンク237に貯留されたリンス洗浄液を各リンス貯留槽431~434に供給する第1流路420が接続されている。
【0074】
以上のことから、第1リンス貯留槽431には、第1リンス洗浄槽411のサブタンク237に接続された第1流路420から圧送されるリンス洗浄液が供給される。
第2リンス貯留槽432には、第2リンス洗浄槽412のサブタンク237に接続された第1流路420から圧送されるリンス洗浄液と、第1リンス貯留槽431においてオーバーフローしたリンス洗浄液とが供給される。
【0075】
第3リンス貯留槽433には、第3リンス洗浄槽413のサブタンク237に接続された第1流路420から圧送されるリンス洗浄液と、第2リンス貯留槽432においてオーバーフローしたリンス洗浄液とが供給される。
【0076】
第4リンス貯留槽434には、第4リンス洗浄槽414のサブタンク237に接続された第1流路420から圧送されるリンス洗浄液と、第3リンス貯留槽433においてオーバーフローしたリンス洗浄液とが供給される。
【0077】
リンス集合槽430の底壁435のうち第4リンス貯留槽434の底部を構成する部分には、リンス洗浄液を排出する排出流路440が接続されている。排出流路440には、排出流路440を開閉するバルブ441が設けられている。
【0078】
各リンス洗浄槽411~414は、第2流路450によりリンス洗浄液が供給される一方、第1流路420によりリンス洗浄液が排出される。
なお、第1リンス洗浄槽411は、第2流路450によりリンス洗浄液が供給されることに加えて、供給流路461を有するリンス洗浄液供給装置460によりリンス洗浄液の新液が供給される。
【0079】
次に、ワーク10の洗浄工程について説明する。
まず、搬送装置500によりワーク10が収納されたラック20を第3アルカリ洗浄槽313に浸漬させる。このとき、ラック20は載置部40に載置されるとともに、載置部40に連結された昇降機構60により揺動される。またこのとき、超音波発生機380により、第3アルカリ洗浄槽313内のアルカリ洗浄液に超音波が印加される。このようにして、ワーク10がアルカリ洗浄液によりアルカリ洗浄される。
【0080】
次に、搬送装置500によりラック20を第3アルカリ洗浄槽313から引き上げるとともに第2アルカリ洗浄槽312の上方まで搬送し、第2アルカリ洗浄槽312に浸漬させる。そして、上記態様と同様にしてワーク10のアルカリ洗浄を行う。
【0081】
次に、搬送装置500によりラック20を第2アルカリ洗浄槽312から引き上げるとともに第2アルカリ洗浄槽312の上方まで搬送し、第1アルカリ洗浄槽311に浸漬させる。そして、上記態様と同様にしてワーク10のアルカリ洗浄を行う。
【0082】
以上により、ワーク10のアルカリ洗浄工程が完了する。
続いて、アルカリ洗浄工程と同様にして、搬送装置500により、ラック20を各リンス洗浄槽414~411に順次浸漬させてワーク10のリンス洗浄を行う。
【0083】
以上により、ワーク10のリンス洗浄工程が完了する。
なお、アルカリ洗浄工程において、アルカリ洗浄液は、アルカリ洗浄液供給装置360により第1アルカリ洗浄槽311に常時供給される一方、排出流路340を通じて第3アルカリ貯留槽333から常時排出されている。
【0084】
なお、リンス洗浄工程において、リンス洗浄液は、リンス洗浄液供給装置460により第1リンス洗浄槽411に常時供給される一方、排出流路440を通じて第4リンス貯留槽434から常時排出されている。
【0085】
次に、本実施形態の作用について説明する。
アルカリ洗浄工程によってワーク10から分離された油分などの不純物は、各アルカリ洗浄槽311~313内のアルカリ洗浄液の上層に多く存在する。各アルカリ洗浄槽311~313においては、アルカリ洗浄液の上層の部分がオーバーフローすることから、上記不純物の多くはオーバーフローするアルカリ洗浄液と共に各アルカリ貯留槽331~333に排出されることとなる。このため、上記不純物が各アルカリ洗浄槽311~313内のアルカリ洗浄液の上層に滞留することを抑制できる。これにより、各アルカリ洗浄槽311~313からラック20を引き上げる際に上記不純物がワーク10の表面に再付着することを抑制できる(以上、作用1)。
【0086】
また、各アルカリ洗浄槽311~313には、当該アルカリ洗浄槽に対応する各アルカリ貯留槽331~333内のアルカリ洗浄液がフィルタ352により濾過された後に供給される。これにより、各アルカリ洗浄槽311~313内のアルカリ洗浄液が徐々に入れ替わることで、各アルカリ洗浄槽311~313内におけるアルカリ洗浄液の液質を略一定に維持することができる(以上、作用2)。
【0087】
また、各アルカリ洗浄槽311~313内においては、当該アルカリ洗浄槽に対応する各アルカリ貯留槽331~333からのアルカリ洗浄液が供給されることによってアルカリ洗浄液の流れが形成される。こうしたアルカリ洗浄液の流れにより、ワーク10の表面に上記不純物が再付着することを抑制できる(以上、作用3)。
【0088】
更に、第2アルカリ貯留槽332(第3アルカリ貯留槽333)には、第2アルカリ洗浄槽312(第3アルカリ洗浄槽313)からオーバーフローしたアルカリ洗浄液に加えて、第1アルカリ貯留槽331(第2アルカリ貯留槽332)からオーバーフローしたアルカリ洗浄液が貯留される。第1アルカリ洗浄槽311(第2アルカリ洗浄槽312)内のアルカリ洗浄液に含まれる不純物の割合は、第1アルカリ洗浄槽311(第2アルカリ洗浄槽312)よりも前の第2アルカリ洗浄槽312(第3アルカリ洗浄槽313)内のアルカリ洗浄液に含まれる不純物の割合よりも少ない。このことから、新液の供給量を抑えつつも第2アルカリ洗浄槽312(第3アルカリ洗浄槽313)内のアルカリ洗浄液の純度を高めることができる(以上、作用4)。
【0089】
また、リンス洗浄工程によってワーク10から分離された不純物は、各リンス洗浄槽411~414内のリンス洗浄液の上層に多く存在する。各リンス洗浄槽411~414においては、リンス洗浄液の上層の部分がオーバーフローすることから、上記不純物の多くはオーバーフローするリンス洗浄液と共に各リンス貯留槽431~434に排出されることとなる。このため、上記不純物が各リンス洗浄槽411~414内のリンス洗浄液の上層に滞留することを抑制できる。これにより、各リンス洗浄槽411~414からラック20を引き上げる際に上記不純物がワーク10の表面に再付着することを抑制できる(以上、作用5)。
【0090】
また、各リンス洗浄槽411~414には、当該リンス洗浄槽に対応する各リンス貯留槽431~433内のリンス洗浄液がフィルタ452により濾過された後に供給される。これにより、各リンス洗浄槽411~414内のリンス洗浄液が徐々に入れ替わることで、各リンス洗浄槽411~414内におけるリンス洗浄液の液質を略一定に維持することができる(以上、作用6)。
【0091】
また、各リンス洗浄槽411~414内においては、当該リンス洗浄槽に対応する各リンス貯留槽431~434からのリンス洗浄液が供給されることによってリンス洗浄液の流れが形成される。こうしたリンス洗浄液の流れにより、ワーク10の表面に上記不純物が再付着することを抑制できる(以上、作用7)。
【0092】
更に、第2リンス貯留槽432(第3リンス貯留槽433,第4リンス貯留槽434)には、第2リンス洗浄槽412(第3リンス洗浄槽413,第4リンス洗浄槽414)からオーバーフローしたリンス洗浄液に加えて、第1リンス貯留槽431(第2リンス貯留槽432,第3リンス貯留槽433)からオーバーフローしたリンス洗浄液が貯留される。第1リンス洗浄槽411(第2リンス洗浄槽412,第3リンス洗浄槽413)内のリンス洗浄液に含まれる不純物の割合は、第1リンス洗浄槽411(第2リンス洗浄槽412,第3リンス洗浄槽413)よりも前の第2リンス洗浄槽412(第3リンス洗浄槽413,第4リンス洗浄槽414)内のリンス洗浄液に含まれる不純物の割合よりも少ない。このことから、新液の供給量を抑えつつも第2リンス洗浄槽412(第3リンス洗浄槽413,第4リンス洗浄槽414)内のリンス洗浄液の純度を高めることができる(以上、作用8)。
【0093】
以上説明した本実施形態に係るワークの洗浄方法によれば、以下に示す効果が得られるようになる。
(4)アルカリ洗浄工程は、複数のアルカリ洗浄槽のうちラック20が最後に浸漬される第1アルカリ洗浄槽311に対してアルカリ洗浄液の新液を供給する。加えて、第1アルカリ洗浄槽311からオーバーフローするアルカリ洗浄液を第1アルカリ洗浄槽311に対応して設けられた第1アルカリ貯留槽331にて貯留し、第1アルカリ貯留槽331に貯留されているアルカリ洗浄液を濾過した後に第1アルカリ洗浄槽311に供給する。また、第1アルカリ洗浄槽311(第2アルカリ洗浄槽312)の直前にラック20が浸漬される第2アルカリ洗浄槽312(第3アルカリ洗浄槽313)に対応して設けられた第2アルカリ貯留槽332(第3アルカリ貯留槽333)に第1アルカリ貯留槽331(第2アルカリ貯留槽332)からオーバーフローするアルカリ洗浄液を貯留する。加えて、第2アルカリ貯留槽332(第3アルカリ貯留槽333)に貯留されているアルカリ洗浄液を濾過した後に第2アルカリ洗浄槽312(第3アルカリ洗浄槽313)に供給する。そして、第2アルカリ洗浄槽312(第3アルカリ洗浄槽313)からオーバーフローするアルカリ洗浄液を第2アルカリ貯留槽332(第3アルカリ貯留槽333)に貯留する。
【0094】
こうした方法によれば、上記作用1~4を奏することから、ワーク10のアルカリ洗浄における洗浄性能を高めることができる。
(5)リンス洗浄工程は、複数のリンス洗浄槽のうちラック20が最後に浸漬される第1リンス洗浄槽411に対してリンス洗浄液の新液を供給する。加えて、第1リンス洗浄槽411からオーバーフローするリンス洗浄液を第1リンス洗浄槽411に対応して設けられた第1リンス貯留槽431にて貯留し、第1リンス貯留槽431に貯留されているリンス洗浄液を濾過した後に第1リンス洗浄槽411に供給する。また、第1リンス洗浄槽411(第2リンス洗浄槽412,第3リンス洗浄槽413)の直前にラック20が浸漬される第2リンス洗浄槽412(第3リンス洗浄槽413,第4リンス洗浄槽414)に対応して設けられた第2リンス貯留槽432(第3リンス貯留槽433,第4リンス貯留槽434)に第1リンス貯留槽431(第2リンス貯留槽432,第3リンス貯留槽433)からオーバーフローするリンス洗浄液を貯留する。加えて、第2リンス貯留槽432(第3リンス貯留槽433,第4リンス貯留槽434)に貯留されているリンス洗浄液を濾過した後に第2リンス洗浄槽412(第3リンス洗浄槽413,第4リンス洗浄槽414)に供給する。そして、第2リンス洗浄槽412(第3リンス洗浄槽413,第4リンス洗浄槽414)からオーバーフローするリンス洗浄液を第2リンス貯留槽432(第3リンス貯留槽433,第4リンス貯留槽434)に貯留する。
【0095】
こうした方法によれば、上記作用5~8を奏することから、ワーク10のリンス洗浄における洗浄性能を高めることができる。
(6)リンス洗浄工程では、第1リンス洗浄槽411に対してリンス洗浄液の新液として純水を供給するようにした。
【0096】
こうした方法によれば、第1リンス洗浄槽411に対して供給されるリンス洗浄液の新液として不純物がほとんど含まれていない純水を用いているため、新液を供給することによるリンス洗浄液への不純物の混入を抑制することができる。
【0097】
(7)各アルカリ洗浄槽311~313(各リンス洗浄槽411~414)に浸漬された状態のラック20を揺動させるとともにアルカリ洗浄液(リンス洗浄液)に超音波を印加するようにした。
【0098】
こうした方法によれば、ラック20が揺動されることと、アルカリ洗浄液(リンス洗浄液)に超音波が印加されることとによってラック20に収納されたワーク10の表面に接するアルカリ洗浄液(リンス洗浄液)が攪拌される。これにより、ワーク10全体が均一に洗浄されるようになる。したがって、ワーク10のアルカリ洗浄(リンス洗浄)における洗浄性能を一層高めることができる。
【0099】
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0100】
・ベアリング101に代えてボールローラを採用することもできる。
・アクチュエータ70はエアシリンダ72を備えるものに限定されない。他に例えば、ボールねじや電磁ソレノイドを用いたアクチュエータであってもよい。
【0101】
・ヒータ80を省略してもよい。
・案内部材35は、張出部33に対して傾斜して設けられていてもよい。
・揺動機構110は、本実施形態のようにベアリング111を中心に回動するものに限定されない。他に例えば、ベアリング111に代えて、各第2フレーム51に幅方向Wに延在する摺動軸を設け、各第1フレーム41に摺動軸が挿入される長孔を設けるようにしてもよい。長孔は、載置部40の他端側ほど上方または下方に位置するように傾斜して延在している。上記構成によれば、各第2フレーム51の昇降に伴い、各第1フレーム41が長孔の延在方向において摺動軸に対して相対移動することで、載置部40が上下方向及び前後方向の双方に往復動される。
【0102】
・リンス洗浄工程の後に、ワーク10を乾燥させる乾燥工程を別途行うようにしてもよい。
・各アルカリ洗浄槽311~313(各リンス洗浄槽411~414)は、超音波発生機380(超音波発生機480)に加えてアルカリ洗浄液(リンス洗浄液)を加熱するヒータを有するものであってもよい。この場合、各アルカリ貯留槽331~333(各リンス貯留槽431~434)内のヒータ381(ヒータ481)を省略することができる。
【0103】
・各アルカリ洗浄槽311~313(各リンス洗浄槽411~414)は、超音波発生機380(超音波発生機480)を備えていないものであってもよい。
・アルカリ洗浄部300を構成するアルカリ洗浄槽の数は適宜変更することができる。すなわち、洗浄装置は、リンス洗浄槽を2つ以上有するものであれば、アルカリ洗浄槽を1つだけ有するものであってもよい。また、リンス洗浄部400を構成するリンス洗浄槽の数は適宜変更することができる。すなわち、洗浄装置は、アルカリ洗浄槽を2つ以上有するものであれば、リンス洗浄槽を1つだけ有するものであってもよい。
【0104】
・本発明に係る洗浄方法は、アルカリ洗浄工程及びリンス洗浄工程の双方を備えるものに限定されず、アルカリ洗浄工程のみを備えるものであってもよいし、リンス洗浄工程のみを備えるものであってもよい。
【符号の説明】
【0105】
10…ワーク、20…ラック、21…側板、21a…把手、22…連結部材、23…溝部材、23a…支持溝、24…支持部材、25…芯部、26…被覆部、26a…小径部、26b…大径部、26c…傾斜部、26d…支持凹部、30…洗浄槽、31…槽本体、31a…開口、32…鍔部、33…張出部、34…突壁部、35…案内部材、35a…案内面、36…補強板、40…載置部、41…第1フレーム、42…支持棒、43…規制棒、50…昇降部、51…第2フレーム、51a…長尺部、51b…短尺部、52…連結棒、53…連結板、60…昇降機構、70…アクチュエータ、71…ジョイント、72…エアシリンダ、72a…ロッド、80…ヒータ、101…ベアリング、101a…フランジ部、102…カラー、103…ボルト、104…ナット、110…揺動機構、111…ベアリング、112…カラー、113…ボルト、114…ナット、121…ホイール、123…ボルト、124…ナット、L…延在方向、W…幅方向、W1…幅、W2…幅、231…槽本体、232…鍔部、237…サブタンク、300…アルカリ洗浄部、311…第1アルカリ洗浄槽、312…第2アルカリ洗浄槽、313…第3アルカリ洗浄槽、320…第1流路、321…ポンプ、330…アルカリ集合槽、331…第1アルカリ貯留槽、332…第2アルカリ貯留槽、333…第3アルカリ貯留槽、335…底壁、336…側壁、337,338…仕切壁、340…排出流路、341…バルブ、350…第2流路、351…ポンプ、352…フィルタ、360…アルカリ洗浄液供給装置、361…供給流路、380…超音波発生機、381…ヒータ、400…リンス洗浄部、411…第1リンス洗浄槽、412…第2リンス洗浄槽、413…第3リンス洗浄槽、414…第4リンス洗浄槽、420…第1流路、421…ポンプ、430…リンス集合槽、431…第1リンス貯留槽、432…第2リンス貯留槽、433…第3リンス貯留槽、434…第4リンス貯留槽、435…底壁、436…側壁、437,438,439…仕切壁、440…排出流路、441…バルブ、450…第2流路、451…ポンプ、452…フィルタ、460…リンス洗浄液供給装置、461…供給流路、480…超音波発生機、481…ヒータ、500…搬送装置。
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