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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-05
(45)【発行日】2023-12-13
(54)【発明の名称】物品固定装置
(51)【国際特許分類】
   F16B 5/02 20060101AFI20231206BHJP
   F16B 37/00 20060101ALI20231206BHJP
   F16B 23/00 20060101ALI20231206BHJP
   B62D 25/06 20060101ALN20231206BHJP
【FI】
F16B5/02 P
F16B5/02 Y
F16B5/02 R
F16B37/00 C
F16B23/00 Q
B62D25/06 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020096222
(22)【出願日】2020-06-02
(65)【公開番号】P2021188711
(43)【公開日】2021-12-13
【審査請求日】2022-12-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】390038069
【氏名又は名称】株式会社青山製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100154852
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 太一
(74)【代理人】
【識別番号】100194087
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 伸一
(72)【発明者】
【氏名】飛田 一紀
(72)【発明者】
【氏名】纐纈 英治
(72)【発明者】
【氏名】古川 朗洋
(72)【発明者】
【氏名】松並 重樹
【審査官】田村 佳孝
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0299539(US,A1)
【文献】特開2011-033164(JP,A)
【文献】特表2012-511675(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 5/02
F16B 37/00
F16B 23/00
B62D 25/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の板と第2の板との間に介在され、前記第1の板の下面の側に接合されたアジャスト機構と、
前記アジャスト機構に一体に設けられ、前記第1の板の上面に物品を固定する突起部と、
前記アジャスト機構に前記第2の板を締結する締結ボルトと、を備え、
前記アジャスト機構は、
前記突起部と一体に設けられた一方の部材と、
前記一方の部材と螺合可能な他方の部材と、
前記他方の部材に設けられ、前記締結ボルトの回転と協働する締結ボルト仮保持部材と、を備え、
前記締結ボルト仮保持部材は、前記締結ボルトに係止する係止爪を有し、
前記締結ボルト仮保持部材は、工具が係止可能な工具係止溝を有し、
前記締結ボルト仮保持部材は、前記係止爪より前記第2の板の側に突出する凸部に前記工具係止溝が形成されている、
ことを特徴とする物品固定装置。
【請求項2】
第1の板と第2の板との間に介在され、前記第1の板の下面の側に接合されたアジャスト機構と、
前記アジャスト機構に一体に設けられ、前記第1の板の上面に物品を固定する突起部と、
前記アジャスト機構に前記第2の板を締結する締結ボルトと、を備え、
前記アジャスト機構は、
前記突起部と一体に設けられた一方の部材と、
前記一方の部材と螺合可能な他方の部材と、
前記他方の部材に設けられ、前記締結ボルトの回転と協働する締結ボルト仮保持部材と、を備え、
前記締結ボルト仮保持部材は、前記締結ボルトに係止する係止爪を有し、
前記締結ボルト仮保持部材は、工具が係止可能な工具係止溝を有し、
前記工具係止溝を形成する凸部の内側面に前記係止爪を形成する、
ことを特徴とする物品固定装置。
【請求項3】
前記締結ボルト仮保持部材は、前記他方の部材の凹部に嵌装されるように、平面視で多角形に形成されている、ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の物品固定装置。
【請求項4】
前記締結ボルト仮保持部材は、前記係止爪より前記第2の板の側に突出する凸部に前記工具係止溝が形成されている、ことを特徴とする請求項2に記載の物品固定装置。
【請求項5】
前記工具係止溝は十字形状である、ことを特徴とする請求項1または請求項4に記載の物品固定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品固定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
物品固定装置として、例えば、車体のルーフパネルにアジャスト機構を介してルーフレールを固定するものが知られている。具体的には、物品固定装置は、車体に取り付けた支持部材がルーフパネルの下方に配置され、支持部材とルーフパネルとの間にアジャスト機構が介在されている。アジャスト機構の上端部がルーフパネルの開口部から上方に露出され、支持部材およびアジャスト機構を下方から貫通した締結ボルトが、ルーフパネルの上方に突出してナットにねじ結合されている。ナットは、ルーフレールに取り付けられている。
【0003】
すなわち、ルーフレールがルーフパネルに締結ボルトで取り付けられ、支持部材とルーフパネルとの間にアジャスト機構が介在された状態で固定されている。
この物品固定装置によれば、アジャスト機構とナットとは別部材で形成され、それぞれが分離された状態に配置されている。よって、比較的重量物のルーフレールから入力した荷重は、主に、締結ナットを経て締結ボルトに伝達される(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許第9187045号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の物品固定装置は、ルーフレールなどの物品から入力した荷重が、主に、ナットを経て締結ボルトに伝達される。このため、物品から入力した荷重をアジャスト機構に好適に伝達させることが難しく、この観点から改良の余地が残されている。
さらに、アジャスト機構を確実に組み付けることができる技術の実用化が望まれている。
【0006】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、物品から入力した荷重を、アジャスト機構に好適に伝達させることができ、アジャスト機構を確実に組み付けることができる物品固定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明は以下の手段を提案している。
(1)本発明に係る物品固定装置は、第1の板(例えば、実施形態のルーフパネル14)と第2の板(例えば、実施形態の支持部材18)との間に介在され、前記第1の板の下面(例えば、実施形態の下面14c)の側に接合されたアジャスト機構(例えば、実施形態のアジャスト機構65)と、前記アジャスト機構に一体に設けられ、前記第1の板の上面(例えば、実施形態の上面14d)に物品(例えば、実施形態のルーフレール22)を固定する突起部(例えば、実施形態の突起部67)と、前記アジャスト機構に前記第2の板を締結する締結ボルト(例えば、実施形態の締結ボルト61)と、を備え、前記アジャスト機構は、前記突起部と一体に設けられた一方の部材(例えば、実施形態の嵌合凸部材71)と、前記一方の部材と螺合可能な他方の部材(例えば、実施形態の嵌合凹部材72)と、前記他方の部材に設けられ、前記締結ボルトの回転と協働する締結ボルト仮保持部材(例えば、実施形態の樹脂リング73)と、を備えている。
【0008】
この構成によれば、物品を固定する突起部がアジャスト機構に一体に設けられている。これにより、比較的重量物である物品から第1の板及び突起部に入力した荷重を、突起部及びアジャスト機構に好適に伝達させることができる。これにより、物品から入力した荷重をアジャスト機構全体で良好に支えることができる。
【0009】
また、他方の部材に締結ボルト仮保持部材を設け、締結ボルト仮保持部材を締結ボルトの回転と協働するようにした。よって、例えば、締結ボルトを時計回り方向に回転させることにより、締結ボルトとともに締結ボルト仮保持部材を同方向に回転させることができる。締結ボルト仮保持部材は、他方の部材に設けられている。他方の部材は、一方の部材に螺合されている。
よって、締結ボルト仮保持部材が時計回り方向に回転することにより、他方の部材を同方向に回転させることができる。他方の部材を時計回り方向に回転させることにより、他方の部材を第2の板へ向けて伸長させて(移動させて)、アジャスト機構を確実に組み付けることができる。これにより、第2の板に他方の部材を当接させて固定させることができ、締結ボルトによりアジャスト機構で第1の板と第2の板とを締結固定できる。
【0010】
(2)前記締結ボルト仮保持部材は、前記締結ボルトに係止する係止爪(例えば、実施形態の係止爪92)を有してもよい。
【0011】
この構成によれば、締結ボルト仮保持部材に係止爪を形成することにより、締結ボルトと締結ボルト仮保持部材とを係止爪によって確実に接触させることができる。よって、締結ボルトの回転に協働させて締結ボルト仮保持部材とともに他方の部材を時計回り方向に確実に回転させることができる。これにより、他方の部材を第2の板へ向けて確実に伸長させる(移動させる)ことができ、第2の板に他方の部材を当接させて確実に固定させることができる。
【0012】
(3)前記締結ボルト仮保持部材は、工具が係止可能な工具係止溝(例えば、実施形態の工具係止溝94)を有しているとなおよい。
【0013】
ここで、締結ボルト仮保持部材が、例えば、樹脂で形成された樹脂リングの場合、締結ボルトを一度締めてしまうと締結ボルト仮保持部材の係止爪が潰れてしまうことが考えられる。係止爪が潰れた場合、物品固定装置をメンテナンスなどで車体に再度取り付けようとしても、締結ボルトに協働させて締結ボルト仮保持部材を時計回り方向に回転させることが難しい。
そこで、締結ボルト仮保持部材に工具係止溝を形成した。よって、工具を係止溝に係止させて時計回り方向に回転させることにより、締結ボルト仮保持部材を同方向に回転させることができる。すなわち、締結ボルト仮保持部材により他方の部材を時計回り方向に回転させることができる。これにより、第2の板へ向けて伸長させて(移動させて)、例えば、メンテナンスの後に、アジャスト機構を確実に組み付けることができる。これにより、第2の板に他方の部材を当接させて固定させることができ、メンテナンスの後に、締結ボルトによりアジャスト機構で第1の板と第2の板とを締結固定できる。
【0014】
(4)前記締結ボルト仮保持部材は、前記他方の部材の凹部(例えば、実施形態の嵌合部86)に嵌装されるように、平面視で多角形に形成されていてもよい。
【0015】
この構成によれば、締結ボルト仮保持部材を他方の部材の凹部に嵌装できるようにしたので、アジャスト機構の軸方向の寸法を短縮でき、アジャスト機構を小型化できる。
【0016】
(5)前記締結ボルト仮保持部材は、前記係止爪より前記第2の板の側に突出する凸部(例えば、実施形態の凸部93)に前記工具係止溝が形成されていてもよい。
【0017】
この構成によれば、締結ボルト仮保持部材において、係止爪より第2の板の側に凸部を突出させ、凸部に工具係止溝を形成した。これにより、工具係止溝を第2の板に近づけることができ、工具係止溝に工具をアクセス(係合)しやすくできる。
【0018】
(6)前記工具係止溝は十字形状であるとなおよい。
【0019】
この構成によれば、締結ボルト仮保持部材を回転させるための工具、例えばプラスドライバーのような十字形状の工具を工具係止溝に容易に係合できる。また、十字形状の工具を工具係止溝に係合することにより、締結ボルト仮保持部材への係合箇所(接触箇所)をマイナスドライバーに比べて増すことができる。
よって、締結ボルト仮保持部材を工具で回転させる際に、工具係止溝に作用する荷重を好適に分散させることができる。これにより、例えば、締結ボルト仮保持部材が、樹脂で形成された樹脂リングの場合でも、工具係止溝を潰し難くできる。したがって、工具係止溝(すなわち、締結ボルト仮保持部材)の強度を抑えることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、物品から入力した荷重を、アジャスト機構に好適に伝達させることができ、アジャスト機構を確実に組み付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明に係る一実施形態の物品固定装置を備えた車体上部構造を車室側から見た斜視図である。
図2図1のII部を拡大した斜視図である。
図3図2のIII-III線に沿う断面図である。
図4】一実施形態の物品固定装置を示す分解斜視図である。
図5】一実施形態のアジャスト機構を示す分解斜視図である。
図6】一実施形態の樹脂リングを示す斜視図である。
図7図6の樹脂リングを示す平面図である。
図8】(a)は、一実施形態のアジャスト機構を組み付ける例を説明する断面図、(b)は、一実施形態のアジャスト機構を組み付けた状態を説明する断面図である。
図9】(a)は、一実施形態のアジャスト機構をメンテナンスの後に工具で操作する例を説明する断面図、(b)は、(a)のIX-IX線に沿う断面図である。
図10】(a)は、一実施形態のアジャスト機構をメンテナンスの後に工具で支持部材に当接させた状態を説明する断面図、(b)は、一実施形態のアジャスト機構をメンテナンスの後に組み付けた状態を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態の物品固定装置を図面に基づいて説明する。図面において、矢印FRは車両の前方、矢印UPは車両の上方、矢印LHは車両の左側方を示す。実施形態においては、物品固定装置20を備えた車体上部構造10として車体Veの左側を例に説明するが、車体Veの右側も同様に構成されている。
【0023】
図1図2に示すように、車体上部構造10は、車体骨格部材12と、ルーフパネル(第1の板)14と、補強部材16と、複数の支持部材(第2の板)18と、複数の物品固定装置20と、ルーフレール(物品)22(図3参照)と、を備えている。
車体骨格部材12は、フロントピラー23と、センタピラー24と、クオータピラー25と、ルーフサイドレール26と、フロントルーフクロスメンバ27と、センタルーフクロスメンバ28と、クオータルーフクロスメンバ29と、を備えている。
【0024】
フロントピラー23は、車室31の前左側部に立ち上げられて閉断面に形成されている。左側のフロントピラー23の上端部23aと、右側のフロントピラーの上端部(図示せず)とにフロントルーフクロスメンバ27が車幅方向に向けて架け渡されている。
センタピラー24は、車室31の中央左側部に立ち上げられて閉断面に形成されている。クオータピラー25は、車室31の後左側部に立ち上げられて閉断面に形成されている。
フロントピラー23の上端部23a、センタピラー24の上端部24a、およびクオータピラー25の上端部25aにルーフサイドレール26が連結されている。
【0025】
図3に示すように、ルーフサイドレール26は、例えば、アウタサイドレール34と、インナサイドレール35と、を備えている。アウタサイドレール34は、ルーフサイドレール26の上部を形成し、車幅方向外側に張り出された第1アウタフランジ34aと、車幅方向内側に張り出された第1インナフランジ34bと、を有する。インナサイドレール35は、ルーフサイドレール26の下部を形成し、車幅方向外側に張り出された第2アウタフランジ35aと、車幅方向内側に張り出された第2インナフランジ35bと、を有する。
第1アウタフランジ34aおよび第2アウタフランジ35aが接合され、第1インナフランジ34bおよび第2インナフランジ35bが接合される。これにより、アウタサイドレール34とインナサイドレール35とによりルーフサイドレール26が閉断面に形成されている。
【0026】
図1に戻って、左側のルーフサイドレール26の車体前後方向中央寄りの部位26aと、右側のルーフサイドレールの車体前後方向中央寄りの部位(図示せず)とにセンタルーフクロスメンバ28が車幅方向に向けて架け渡されている。左側のルーフサイドレール26の車体後部26bと、右側のルーフサイドレールの車体後部(図示せず)とにクオータルーフクロスメンバ29が車幅方向に向けて架け渡されている。
ルーフサイドレール26、フロントルーフクロスメンバ27、センタルーフクロスメンバ28、およびクオータルーフクロスメンバ29にルーフパネル14が支持されている。
ルーフパネル14は、左側のルーフサイドレール26、右側のルーフサイドレール、フロントルーフクロスメンバ27、およびクオータルーフクロスメンバ29に沿って外周部が平面視矩形状に形成されている。
【0027】
図3に示すように、ルーフパネル14は、左側部(外側部)14aがアウタサイドレール34の内側部34cに沿って形成され、左側部14aおよび内側部34cがブレージング(ろう付)によりブレージング接合部38で接合されている。ルーフパネル14は、左側部14a寄りに左側部14aに沿うレール取付部位14bと、レール取付部位14bに車体前後方向へ間隔をおいて設けられた複数の第1貫通孔41(図4も参照)と、を有する。
【0028】
図1図3に示すように、ルーフパネル14の下面14cにおいて、左側部14aに沿って補強部材16が車体前後方向へ帯状に延びている。補強部材16は、外側辺16aが下方へ折り曲げられ、内側辺16bが下方へ折り曲げられ、車体前後方向へ間隔をおいて複数の隆起部16cが形成されている。複数の隆起部16cがルーフパネル14の下面14cに接合されている。
【0029】
図3図4に示すように、補強部材16の隆起部16cは、ルーフパネル14の下面14cのうち第1貫通孔41の周囲に位置し、かつ、ルーフレール22で車体上方から覆われる部位43に、例えば、スポット溶接または接着剤により接合されている。
このように、ルーフパネル14の下面14cのうちルーフレール22で車体上方から覆われる部位43に補強部材16が接合されている。これにより、補強部材16をルーフパネル14に接合した部位43(例えば、スポット溶接などで接合した際の溶接打痕)をルーフレール22で車体上方から覆うことができ、外観性(見栄え)を確保できる。
【0030】
また、補強部材16の隆起部16cとルーフパネル14の下面14cとの間において、第1貫通孔41の全周に渡り第2シール材63が設けられている。第2シール材63については後で詳しく説明する。
隆起部16cは、第2貫通孔47を有する。第2貫通孔47は、ルーフパネル14の第1貫通孔41の下方に配置されている。
複数の隆起部16cの下方に複数の支持部材18(図1も参照)が間隔をおいて配置されている。複数の支持部材18はインナサイドレール35の内側部(車体Ve側の取付部)35cに接合されている。以下、車体Ve側の取付部35cを「車体側取付部35c」という。補強部材16と支持部材18との間に物品固定装置20が介在されている。
【0031】
図2図3に示すように、支持部材18は、支持取付部51と、基端部52と、周辺部53と、筋交い(ガセット)54と、を有する。支持部材18は、例えば、支持取付部51、基端部52、周辺部53、筋交い54が1枚の板材から一体に成形されている。
支持取付部51は、補強部材16の隆起部16cの下方に配置され、隆起部16cに沿って平坦に形成されている。支持取付部51は、例えば、先端が車幅方向内側に突出する湾曲状に形成され、基端が車体位前後方向へ延びる直線状に形成されている。支持取付部51の基端に基端部52が形成されている。支持取付部51は、先端寄りの部位に取付孔56を有する。
【0032】
基端部52は、支持取付部51の基端から車体側取付部35cに沿って下方へ向けて折り曲げられている。基端部52が車体側取付部35cに接合されることにより、支持部材18が車体側取付部35cに片持支持されている。支持取付部51および基端部52の周辺に周辺部53が形成されている。周辺部53は、支持取付部51の周辺から下方へ向けて折り曲げられ、基端部52の周辺から車幅方向内側へ向けて折り曲げられている。支持取付部51は、周辺部53により補強されている。
【0033】
支持取付部51および基端部52に筋交い54が形成されている。筋交い54は、基端部52および支持取付部51に設けられている。筋交い54は、下辺54aが基端部52から支持取付部51の取付孔56寄りの部位51aまで車幅方向内側へ向けて上り勾配に延びている。このように、車体側取付部35cに支持部材18が片持支持された状態において、支持部材18に筋交い54が設けられることにより、支持部材18が筋交い54で補強され、支持部材18の強度、剛性が確保されている。
【0034】
図3から図5に示すように、支持部材18の支持取付部51は、補強部材16の隆起部16cの下方に間隔をおいて配置されている。隆起部16cおよび支持取付部51間に物品固定装置20が介在されている。
物品固定装置20は、ルーフレール取付部材60と、締結ボルト61と、第1シール材62と、第2シール材63と、を備えている。ルーフレール取付部材60は、アジャスト機構65と、頭部座面66と、突起部67とを備えている。
【0035】
アジャスト機構65は、ルーフパネル14の下面14cに補強部材16を介して接合されている。アジャスト機構65は、嵌合凸部材(一方の部材)71と、嵌合凹部材(他方の部材)72と、樹脂リング(締結ボルト仮保持部材)73を備えている。
嵌合凸部材71は、第1筒状部75と、張出頂部76と、を有する。第1筒状部75は、筒壁75aにより中空の筒状に形成され、筒壁75aの内周面に雌ネジ78が形成されている。また、筒壁75aの外周面に雄ネジ79が形成されている。さらに、第1筒状部75の頂部75bに張出頂部76が一体に設けられている。第1筒状部75の頂部75b(雌ネジ78)が張出頂部76で閉塞されている。
【0036】
張出頂部76は、円板状に形成され、第1筒状部75の筒壁75aから径方向外側に張り出されている。張出頂部76は、上面で頭部座面66が円状に形成されている。頭部座面66の中心から突起部67が第1筒状部75の反対側に突出されている。突起部67は、雄ネジ部で構成されている。頭部座面66および突起部67については後で詳しく説明する。
嵌合凸部材71の第1筒状部75の雌ネジ78に締結ボルト61が螺合されている。また、第1筒状部75の雄ネジ79に嵌合凹部材72が螺合されている。
【0037】
嵌合凹部材72は、第2筒状部82と、張出底部83と、を有する。第2筒状部82は、筒壁82aにより中空の筒状に形成され、筒壁82aの内周面に形成された雌ネジ84と、底部82bに形成された嵌合部(凹部)86と、を有する。雌ネジ84は、第1筒状部75の雄ネジ79に螺合可能に形成されている。第2筒状部82の雌ネジ84が第1筒状部75の雄ネジ79に螺合されることにより、第2筒状部82が第1筒状部75に突没自在に嵌合されている。これにより、アジャスト機構65の軸方向の寸法を調整することができる。
【0038】
嵌合部86は、底部82bの内周面が多角形(例えば、実施形態では六角形)に形成され、底部82bの底面に開口されている。嵌合部86に樹脂リング73が設けられている。実施形態では、嵌合部86を六角形に形成した例について説明するが、嵌合部86を三角形、四角形、五角形に形成してもよい。
第2筒状部82の底部82bに張出底部83が一体に設けられている。張出底部83は、外形が多角状(例えば、実施形態では6角状)に形成され、第2筒状部82の筒壁82aから径方向外側に張り出されている。実施形態では、張出底部83の外形を六角形に形成した例について説明するが、張出底部83の外形を三角形、四角形、五角形に形成してもよい。
【0039】
図5から図7に示すように、樹脂リング73は、樹脂で形成されて、リング部91と、複数の係止爪92と、凸部93と、工具係止溝94と、を有する。リング部91は、環状に形成され、嵌合部86に底部82bの開口から嵌装可能に、外形が平面視において多角形(例えば、実施形態では6角形)に形成されている。具体的には、リング部91は、嵌合部86に嵌装可能に、嵌合部86と同じ多角形に形成されている。実施形態では、リング部91の外形を六角形に形成した例について説明するが、リング部91の外形を三角形、四角形、五角形に形成してもよい。
リング部91の外形が多角形に形成され、嵌合部86が多角形に形成されることにより、樹脂リング73が、例えば、時計回り方向に回転することにより、嵌合部86(すなわち、嵌合凹部材72)が樹脂リング73に協働して時計回り方向に回転する。
【0040】
リング部91の内周面から複数(例えば、実施形態では4個)の係止爪92が径方向内側に突出されている。複数の係止爪92は、内周面の周方向において等間隔に形成されている。複数の係止爪92は、締結ボルト61のネジ部61aに係止するように形成されている。実施形態では、複数の係止爪92を4個とする例について説明するが、例えば、複数の係止爪92を3個、5個などにしてもよい。
リング部91のうち、底部82bの開口側の面91aに凸部93が形成されている。凸部93は、リング部91の面91aから底部82bの開口に向けて環状に突出されている。すなわち、凸部93は、複数の係止爪92より支持部材18(図3参照)の側に突出されている。
【0041】
環状のリング部91および環状の凸部93には、工具係止溝94が形成されている。工具係止溝94は、例えば、十字形状に形成されることにより、環状のリング部91および環状の凸部93に複数(すなわち、4個)の溝部94aが形成されている。複数の溝部94aは、リング部91および凸部93に周方向に等間隔において、径方向外側に凹状に形成されている。工具係止溝94は、複数の溝部94aに工具100(図9(a)参照)が係止可能に形成されている。
このように形成された樹脂リング73は、嵌合凹部材72の嵌合部86に嵌装される。これにより、アジャスト機構65の軸方向の寸法を短縮でき、アジャスト機構65を小型化できる。
【0042】
図3図5に示すように、アジャスト機構65は、張出底部83が支持部材18の支持取付部51に載置されている。この状態において、支持取付部51の取付孔56の上方に、樹脂リング73の複数の係止爪92、第2筒状部82の雌ネジ84、および第1筒状部75の雌ネジ78が配置されている。締結ボルト61が取付孔56に下方から貫通され、貫通された締結ボルト61が複数の係止爪92および雌ネジ84を経て雌ネジ78に螺合されている。また、締結ボルト61の頭部61bと支持取付部51との間にワッシャ64が介在されている。
【0043】
この状態において、締結ボルト61のネジ部61aが複数の係止爪92に係止されている。よって、締結ボルト61が時計回り方向に回転されることにより、複数の係止爪92(すなわち、樹脂リング73)が締結ボルト61と協働して時計回り方向に回転する。樹脂リング73が時計回り方向に回転することにより、嵌合部86(すなわち、嵌合凹部材72)が樹脂リング73に協働して時計回り方向に回転する。
【0044】
これにより、締結ボルト61の頭部61bが嵌合凸部材71に近づく方向に移動し、かつ、嵌合凹部材72が嵌合凸部材71から離れる方向(すなわち、支持取付部51に近づく方向)に移動する。したがって、支持取付部51に嵌合凹部材72が固定される。換言すれば、嵌合凹部材72に支持取付部51が締結ボルト61で締結されている。すなわち、アジャスト機構65は、支持部材18を介して車体側取付部35cに固定されている。
【0045】
ここで、支持部材18の取付孔56は、締結ボルト61が貫通された状態において、締結ボルト61の軸方向に対して交差する方向への位置調整を許容するように形状が形成されている。具体的には、取付孔56は、例えば、締結ボルト61の外径寸法に対して内径寸法が位置調整を許容可能に大きく(いわゆる、バカ孔に)形成されている。その他の例として、取付孔56を長孔に形成して、締結ボルト61の軸方向に対して交差する方向への位置調整を許容させることも可能である。
【0046】
図3図4に示すように、アジャスト機構65の張出頂部76に頭部座面66および突起部67が一体に設けられている。頭部座面66は、張出頂部76の上面により、例えば円状に形成されている。頭部座面66は、補強部材16(具体的には、隆起部16c)の下面16dに、例えばリングプロジェクション溶接や接着剤などにより第1貫通孔41の全周に渡り環状の接合部85で接合されている。よって、第1貫通孔41および突起部67の隙間87の径方向外側の全周に渡り、頭部座面66と隆起部16cの下面16dとの間が接合部85で閉塞されている。
【0047】
突起部67の頭部座面66から突起部67が嵌合凸部材71と同軸上に突起されている。突起部67は、雄ねじ部で構成され、補強部材16の第2貫通孔47とルーフパネル14の第1貫通孔41とに補強部材16の車内側からルーフパネル14の車外側へ貫通されている。ルーフパネル14から上方へ突出された突起部67にルーフレール22が取り付けられる。
具体的には、ルーフレール22のベース22aにベース取付孔89が形成され、ベース取付孔89を貫通した突起部67がベース22aの上方へ突出される。ベース22aの上方へ突出した突起部67にナット90が螺合されることにより、ルーフレール22が突起部67に取り付けられてルーフパネル14の上面14dに固定される。この状態において、ルーフレール22の内側部とルーフパネル14の上面14dとの間にシール材96が介在されている。また、ルーフレール22の外側部とルーフパネル14の上面14dとの間にシール材96が介在されている。
【0048】
また、ルーフレール取付部材60の突起部67は、ルーフパネル14の車外側に突出されている。よって、ルーフレール22をルーフパネル14に取り付ける際に、突起部67にルーフレール22のベース取付孔89を嵌め込むことにより、突起部67をルーフレール22の位置決め基準として兼用できる。これにより、ルーフレール22をルーフパネル14の上面14dに取り付ける際の取付作業性を高めることができる。
【0049】
ここで、車体Veを組み付ける際に、例えば、組付公差などにより車体側取付部35cの位置がずれることが考えられる。また、ルーフパネル14をルーフサイドレール26にブレージングで取り付ける際に、ルーフパネル14の位置がずれることが考えられる。このため、支持部材18とルーフパネル14との相対位置が変位することが考えられる。そこで、支持部材18とルーフパネル14(具体的には、補強部材16)との間にアジャスト機構65を介在させた。これにより、支持部材18とルーフパネル14との位置ずれに対応させてアジャスト機構65を調整することにより、支持部材18とルーフパネル14との位置ずれをアジャスト機構65で吸収できる。
【0050】
具体的には、アジャスト機構65の嵌合凸部材71がルーフパネル14に補強部材16を介して接合され、アジャスト機構65の嵌合凹部材72が車体側取付部35cに支持部材18を介して固定されている。よって、ルーフパネル14をルーフサイドレール26にブレージングする際のルーフパネル14の上下方向への位置ずれや、支持部材18を車体側取付部35cに固定する際の支持部材の上下方向への位置ずれをアジャスト機構65の螺合状態の調整で吸収できる。
【0051】
また、ルーフパネル14がルーフサイドレール26に取り付けられ、支持部材18が車体側取付部35cに取り付けられた状態において、支持部材18とルーフパネル14とが締結ボルト61の軸線方向に対して交差する方向にずれることが考えられる。
そこで、軸線方向に対して交差する方向への締結ボルト61の位置調整を許容するように、支持部材18の取付孔56を形成した。これにより、支持部材18とルーフパネル14との相対的なずれに合わせて締結ボルト61の位置を調整することにより、支持部材18とルーフパネル14とのずれを取付孔56で吸収できる。
【0052】
さらに、アジャスト機構65に突起部67が一体に設けられ、突起部67によりルーフレール22がルーフパネル14に固定されている。よって、比較的重量物であるルーフレール22から入力した荷重F1を、突起部67を経てアジャスト機構65に矢印Aの如く好適に伝達させることができる。これにより、ルーフレール22から入力した荷重F1をアジャスト機構65全体で良好に支えることができる。
また、アジャスト機構65の嵌合凸部材71に突起部67が一体に設けられ、嵌合凸部材71がアジャスト機構65の嵌合凹部材72に螺合されている。よって、突起部67、嵌合凸部材71、および嵌合凹部材72を一体化することができる。これにより、ルーフレール22から入力した荷重F1を、突起部67を経てアジャスト機構65に好適に伝達させることができる。
【0053】
さらに、補強部材16は、第1貫通孔41の周囲おいてルーフパネル14の下面14cに接合されている。よって、突起部67やルーフレール22から比較的大きな荷重F1が入力する第1貫通孔41の周囲のルーフパネル14を補強部材16で補強できる。これにより、ルーフパネル14の全体の板厚寸法を小さくすることが可能になり、ルーフパネル14(すなわち、車体)の軽量化を図ることができる。
【0054】
加えて、支持部材18に筋交い54が設けられることにより、支持部材18が筋交い54で補強されている。よって、ルーフレール22から入力した荷重F1がアジャスト機構65を経て支持部材18に伝達される際に、伝達された荷重F2を支持部材18で好適に支えることができる。これにより、支持部材18に伝えられた荷重F2を、支持部材18および車体側取付部35cを経て車体Veに良好に伝達することができる。
【0055】
ここで、第1貫通孔41と突起部67との隙間87に第1シール材62が設けられている。第1シール材62として、例えば、使用時に液状で塗布されて塗布後に常温で硬化するシール材や、グロメットなどが挙げられる。第1貫通孔41と突起部67との隙間87に第1シール材62が設けられることにより、隙間87からルーフパネル14の車内側に水が浸入を抑制する。これにより、ルーフパネル14から車内側への水浸入を簡素な構成で抑制できるシール効果を得ることができる。
【0056】
また、頭部座面66は、補強部材16(具体的には、隆起部16c)の下面16dに、例えばリングプロジェクション溶接や接着剤などにより環状の接合部85で接合されている。接合部85は、第1貫通孔41および第2貫通孔47の径方向外側において全周に渡り環状に形成されている。よって、頭部座面66を隆起部16cの下面16dに接合する簡素な構成で、第1貫通孔41および突起部67の隙間87の外側の全周に渡り、環状のシール効果を得ることができる。これにより、簡素なシール構成で確実なシール効果をさらに高めることができる。
【0057】
さらに、隆起部16cとルーフパネル14の下面14cとの間において、第1貫通孔41および第2貫通孔47の全周に渡り第2シール材63が環状に設けられている。第2シール材63として、例えば、使用時に液状で塗布されて塗布後に常温で硬化するシール材などが挙げられる。
このように、第1貫通孔41および第2貫通孔47の全周に渡り第2シール材63が環状に設けられることにより、隆起部16cとルーフパネル14の下面14cとの間を第1貫通孔41の全周に渡り第2シール材63で閉塞できる。これにより、第1貫通孔41および突起部67の隙間87に対するシール効果を得ることができ、簡素なシール構成で確実なシール効果をさらに高めることができる。
【0058】
つぎに、実施形態に係るアジャスト機構65を組み付ける例を図8(a)、(b)に基づいて説明する。
図8(a)に示すように、嵌合凹部材72には樹脂リング73が、嵌合凹部材72に対して一体に回転可能に設けられている。また、樹脂リング73は、締結ボルト61の回転に協働するように、締結ボルト61のネジ部61a(具体的には、先端部)がかみ込まれている。よって、締結ボルト61を、例えば、時計回り方向に矢印Bの如く回転させることにより、締結ボルト61とともに樹脂リング73を同方向に矢印Bの如く回転させることができる。
【0059】
ここで、嵌合凹部材72は、例えば、時計回り方向の回転により、嵌合凸部材71から離れる方向(すなわち、支持取付部51に近づく方向)に移動可能に、雌ネジ84が嵌合凸部材71の雄ネジ79に螺合されている。よって、嵌合凹部材72を時計回り方向に矢印Bの如く回転させることにより、嵌合凹部材72を支持部材18へ向けて矢印Cの如く伸長させる(移動させる)ことができる。嵌合凹部材72が矢印Cの如く移動することにより、嵌合凹部材72の張出底部83が支持部材18の支持取付部51に当接する。
【0060】
図8(b)に示すように、張出底部83が支持取付部51に当接することにより、嵌合凹部材72および樹脂リング73の回転が止まり静止する。締結ボルト61(想像線で示す)を矢印Bの如く継続して単独で回転させることにより、樹脂リング73のうちネジ部61aがかみ込まれた部位が変形する(潰れる)。樹脂リング73が潰れることにより、締結ボルト61が嵌合凸部材71の雌ネジ78に向けて矢印Dの如く移動する。
【0061】
締結ボルト61が移動することにより、締結ボルト61のネジ部61aが嵌合凸部材71の雌ネジ78に螺合される。よって、締結ボルト61の頭部61b(実線で示す)が支持取付部51を下方から締め付ける。これにより、支持取付部51に嵌合凹部材72が固定され、アジャスト機構65が確実に組み付けられる。
換言すれば、嵌合凹部材72に支持取付部51が締結ボルト61で締結される。これにより、アジャスト機構65が組み付けられ、締結ボルト61によりアジャスト機構65でルーフパネル14と支持部材18とを締結固定できる。
【0062】
また、図5に示すように、樹脂リング73に複数の係止爪92が形成されている。よって、締結ボルト61のネジ部61aと樹脂リング73とを複数の係止爪92によって確実に接触させることができる。これにより、締結ボルト61の回転に協働させて樹脂リング73とともに嵌合凹部材72を時計回り方向に確実に回転させることができる。したがって、嵌合凹部材72を支持部材18へ向けて確実に伸長させる(移動させる)ことができ、支持部材18に嵌合凹部材72を当接させて確実に固定させることができる。
【0063】
つぎに、実施形態に係るアジャスト機構65をメンテナンスなどで車体に再度組み付ける例を図9(a)、(b)、図10(a)、(b)に基づいて説明する。
図9(a)、(b)に示すように、実施形態においては、締結ボルト仮保持部材として、例えば、樹脂で形成された樹脂リング73が使用されている。この場合、締結ボルト61を一度締めてしまうと樹脂リング73の複数の係止爪92が潰れてしまうことが考えられる。複数の係止爪92が潰れた場合、物品固定装置20をメンテナンスなどで車体に再度取り付けようとしても、締結ボルト61に協働させて樹脂リング73を時計回り方向に回転させることが難しい。
【0064】
そこで、樹脂リング73に工具係止溝94を形成した。この工具係止溝94に工具100を係止させる。工具係止溝94は、凸部93に形成されている。凸部93は、複数の係止爪92より支持部材18の側に突出されている。これにより、工具係止溝94を支持部材18に近づけることができ、工具係止溝94に工具100をアクセス(係合)しやすくできる。
【0065】
工具100は、工具係止溝94と同様に、先端部100aが、例えばプラスドライバーのように十字形状に形成されている。よって、工具100の先端部100aを工具係止溝94に容易に係合できる。また、工具100の先端部100aを十字形状にすることにより、先端部100aを工具係止溝94に係合させた状態において、工具係止溝94(すなわち、樹脂リング73)への係合箇所(接触箇所)を、例えばマイナスドライバーに比べて増すことができる。
よって、樹脂リング73を工具100で回転させる際に、工具係止溝94に作用する荷重を好適に分散させることができる。これにより、例えば、樹脂リング73のように樹脂で形成したリングを使用した場合でも、工具100の先端部100aで工具係止溝94を潰し難くできる。したがって、工具係止溝94(すなわち、樹脂リング73)の強度を抑えることができる。
【0066】
このように、工具100の先端部100aを工具係止溝94に係合させた状態において、工具100を時計回り方向に矢印Eの如く回転させることにより、樹脂リング73を同方向に矢印Fの如く回転させることができる。よって、樹脂リング73により嵌合凹部材72を時計回り方向に矢印Fの如く回転させることができる。これにより、嵌合凹部材72を支持部材18へ向けて矢印Gの如く伸長させる(移動させる)ことができる。
【0067】
図10(a)に示すように、張出底部83が支持部材18の支持取付部51に当接する。すなわち、張出底部83が支持部材18の支持取付部51に当接した状態において、アジャスト機構65がルーフパネル14(具体的には、補強部材16の隆起部16c)と支持部材18との間に介在される。この状態において、工具100を工具係止溝94(図9(b)参照)から外す。
【0068】
図10(b)に示すように、支持取付部51の取付孔56に締結ボルト61を下方から挿入し、締結ボルト61のネジ部61aを嵌合凸部材71の雌ネジ78に螺合させる。この状態において、締結ボルト61を時計回り方向に回転する。
ここで、樹脂リング73の複数の係止爪92は潰れている。このため、締結ボルト61を時計回り方向に回転する際に、樹脂リング73が締結ボルト61に協働しないで静止状態に保たれる。よって、締結ボルト61を時計回り方向に回転することにより、締結ボルト61の頭部61bが支持取付部51を下方から締め付ける。これにより、支持取付部51に嵌合凹部材72が固定され、例えばメンテナンスの後に、アジャスト機構65が確実に組み付けられ。換言すれば、嵌合凹部材72に支持取付部51が締結ボルト61で締結される。これにより、例えば、メンテナンスの後に、締結ボルト61によりアジャスト機構65でルーフパネル14と支持部材18とを締結固定できる。
【0069】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0070】
例えば、前記実施形態では、ルーフパネル14の下面の側として、ルーフパネル14の下面14cに隆起部16cを接合して隆起部16cの下面16dに物品固定装置20の頭部座面66…を接合する例について説明したが、これに限らない。その他の例として、例えば、ルーフパネル14の下面14cに物品固定装置20の頭部座面66…を直接接合してもよい。
【0071】
また、前記実施形態では、物品固定装置の物品としてルーフレール22を例に説明したが、これに限らない。その他の例として、例えば、スポイラーなどの車体に取り付ける部品を物品としてもよい。
【0072】
さらに、実施形態では、締結ボルト仮保持部材として樹脂リング73を例示したが、これに限らない。その他の例として、例えば、締結ボルト仮保持部材を金属製のリングを使用してもよい。
【0073】
その他、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0074】
10 車体上部構造
14 ルーフパネル(第1の板)
14c ルーフパネルの下面
14d ルーフパネルの上面
18 支持部材(第2の板)
20 物品固定装置
22 ルーフレール(物品)
61 締結ボルト
65 アジャスト機構
67 突起部
71 嵌合凸部材(一方の部材)
72 嵌合凹部材(他方の部材)
73 樹脂リング(締結ボルト仮保持部材)
86 嵌合部(凹部)
92 係止爪
93 凸部
94 工具係止溝
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10