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特許7397445Cell Adhesion Molecule3に結合する抗体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-05
(45)【発行日】2023-12-13
(54)【発明の名称】Cell Adhesion Molecule3に結合する抗体
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/13 20060101AFI20231206BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20231206BHJP
   C07K 16/46 20060101ALI20231206BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20231206BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20231206BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20231206BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20231206BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20231206BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20231206BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20231206BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20231206BHJP
   A61K 51/00 20060101ALI20231206BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20231206BHJP
【FI】
C12N15/13 ZNA
C07K16/28
C07K16/46
C07K19/00
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12N15/62 Z
C12P21/08
A61K39/395 L
A61K39/395 N
A61K51/00 100
A61K51/00 200
A61P25/00
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2020527593
(86)(22)【出願日】2019-06-26
(86)【国際出願番号】 JP2019025454
(87)【国際公開番号】W WO2020004492
(87)【国際公開日】2020-01-02
【審査請求日】2022-06-24
(31)【優先権主張番号】P 2018120477
(32)【優先日】2018-06-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成30年度、国立研究開発法人日本医療研究開発機構、革新的バイオ医薬品創出基盤技術開発事業「ヒトIgG特異的修飾技術による多様な機能性抗体医薬の創出」委託研究開発、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000001029
【氏名又は名称】協和キリン株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504258527
【氏名又は名称】国立大学法人 鹿児島大学
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 信明
(72)【発明者】
【氏名】中野 了輔
(72)【発明者】
【氏名】前田 さやか
(72)【発明者】
【氏名】山田 武直
(72)【発明者】
【氏名】伊東 祐二
【審査官】福間 信子
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-119637(JP,A)
【文献】特表2017-503475(JP,A)
【文献】KAKUNAGA S. et al.,Nectin-like molecule-1/TSLL1/SynCAM3: a neural tissue-specific immunoglobulin-like cell-cell adhesion molecule localizing at non-junctional contact sites of presynaptic nerve terminals, axons and glia cell processes,J Cell Sci, 2005, vol.118, p.1267-1277
【文献】HUNTER PR. et al.,Localization of Cadm2a and Cadm3 Proteins During Development of the Zebrafish Nervous System,J Comp Neurol, 2011, vol.519, no.11, p.2252-2270
【文献】ATLAS ANTIBODIES, Product No. HPA002981, Anti-CADM3,2012
【文献】R&D systems, Catalog No. MAB3678, Human IGSF4B/SynCAM3 Antibody,2/7/2018
【文献】宮本結花 ほか,血液能関門の通過を目指したトランスフェリンレセプター特異的VHH抗体の単離,第89回日本生化学会大会, 2016, p.542-543 [3P-350]
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
SwissProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Cell Adhesion molecule3(CADM3)に結合する、下記(a)~()からなる群より選ばれる1である、抗体または該抗体断片;
(a)VHのCDR1~3のアミノ酸配列が、それぞれ配列番号23、24および25に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのCDR1~3のアミノ酸配列が、それぞれ配列番号28、29および30に記載されるアミノ酸配列を含む抗体、
(b)VHのCDR1~3のアミノ酸配列が、それぞれ配列番号34、35および36に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのCDR1~3のアミノ酸配列が、それぞれ配列番号38、39および40に記載されるアミノ酸配列を含む抗体、
(c)VHHのCDR1~3のアミノ酸配列が、それぞれ配列番号3、4および5に記載されるアミノ酸配列を含む抗体断片、
(d)VHHのCDR1~3のアミノ酸配列が、それぞれ配列番号8、9および10に記載されるアミノ酸配列を含む抗体断片、
(e)VHHのCDR1~3のアミノ酸配列が、それぞれ配列番号13、14および15に記載されるアミノ酸配列を含む抗体断片、
(f)VHHのCDR1~3のアミノ酸配列が、それぞれ配列番号18、19および20に記載されるアミノ酸配列を含む抗体断片、
(g)VHのCDR1~3のアミノ酸配列が、それぞれ配列番号89、90および91に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのCDR1~3のアミノ酸配列が、それぞれ配列番号94、95および96に記載されるアミノ酸配列を含む抗体
(h)VHのCDR1~3のアミノ酸配列が、それぞれ配列番号99、100および101に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのCDR1~3のアミノ酸配列が、それぞれ配列番号134、135および136に記載されるアミノ酸配列を含む抗体
(i)VHのCDR1~3のアミノ酸配列が、それぞれ配列番号104、105および106に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのCDR1~3のアミノ酸配列が、それぞれ配列番号134、135および136に記載されるアミノ酸配列を含む抗体
(j)VHのCDR1~3のアミノ酸配列が、それぞれ配列番号109、110および111に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのCDR1~3のアミノ酸配列が、それぞれ配列番号134、135および136に記載されるアミノ酸配列を含む抗体
(k)VHのCDR1~3のアミノ酸配列が、それぞれ配列番号114、115および116に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのCDR1~3のアミノ酸配列が、それぞれ配列番号134、135および136に記載されるアミノ酸配列を含む抗体
(l)VHのCDR1~3のアミノ酸配列が、それぞれ配列番号119、120および121に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのCDR1~3のアミノ酸配列が、それぞれ配列番号134、135および136に記載されるアミノ酸配列を含む抗体
(m)VHのCDR1~3のアミノ酸配列が、それぞれ配列番号124、125および126に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのCDR1~3のアミノ酸配列が、それぞれ配列番号134、135および136に記載されるアミノ酸配列を含む抗体
(n)VHのCDR1~3のアミノ酸配列が、それぞれ配列番号129、130および131に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのCDR1~3のアミノ酸配列が、それぞれ配列番号134、135および136に記載されるアミノ酸配列を含む抗体
(о)VHのCDR1~3のアミノ酸配列が、それぞれ配列番号139、140および141に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのCDR1~3のアミノ酸配列が、それぞれ配列番号164、165および166に記載されるアミノ酸配列を含む抗体
(p)VHのCDR1~3のアミノ酸配列が、それぞれ配列番号144、145および146に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのCDR1~3のアミノ酸配列が、それぞれ配列番号164、165および166に記載されるアミノ酸配列を含む抗体
(q)VHのCDR1~3のアミノ酸配列が、それぞれ配列番号149、150および151に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのCDR1~3のアミノ酸配列が、それぞれ配列番号164、165および166に記載されるアミノ酸配列を含む抗体
(r)VHのCDR1~3のアミノ酸配列が、それぞれ配列番号154、155および156に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのCDR1~3のアミノ酸配列が、それぞれ配列番号164、165および166に記載されるアミノ酸配列を含む抗体
(s)VHのCDR1~3のアミノ酸配列が、それぞれ配列番号159、160および161に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのCDR1~3のアミノ酸配列が、それぞれ配列番号164、165および166に記載されるアミノ酸配列を含む抗体
(t)VHのCDR1~3のアミノ酸配列が、それぞれ配列番号169、170および171に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのCDR1~3のアミノ酸配列が、それぞれ配列番号174、175および176に記載されるアミノ酸配列を含む抗体
【請求項2】
抗体が脳滞留性を有する請求項1に記載の抗体または該抗体断片。
【請求項3】
抗体が神経細胞および/または神経組織結合性を有する請求項1または2に記載の抗体または該抗体断片。
【請求項4】
抗体または該抗体断片が下記(1)~(30)からなる群より選ばれる1である、請求項1~3のいずれか1項に記載の抗体または該抗体断片;
(1)VHのアミノ酸配列が配列番号22に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのアミノ酸配列が配列番号27に記載されるアミノ酸配列を含む抗体、
(2)VHのアミノ酸配列が配列番号32に記載されるアミノ酸配列含み、かつVLのアミノ酸配列が配列番号37に記載されるアミノ酸配列を含む抗体、
(3)VHHのアミノ酸配列が配列番号2に記載されるアミノ酸配列を含む抗体断片、
(4)VHHのアミノ酸配列が配列番号7に記載されるアミノ酸配列を含む抗体断片、
(5)VHHのアミノ酸配列が配列番号12に記載されるアミノ酸配列を含む抗体断片、(6)VHHのアミノ酸配列が配列番号17に記載されるアミノ酸配列を含む抗体断片、(7)VHHのアミノ酸配列が配列番号68に記載されるアミノ酸配列を含む抗体断片、(8)VHHのアミノ酸配列が配列番号70に記載されるアミノ酸配列を含む抗体断片、(9)VHHのアミノ酸配列が配列番号72に記載されるアミノ酸配列を含む抗体断片、(10)VHHのアミノ酸配列が配列番号74に記載されるアミノ酸配列を含む抗体断片、
(11)VHHのアミノ酸配列が配列番号76に記載されるアミノ酸配列を含む抗体断片、
(12)VHHのアミノ酸配列が配列番号78に記載されるアミノ酸配列を含む抗体断片、
(13)VHHのアミノ酸配列が配列番号80に記載されるアミノ酸配列を含む抗体断片、
(14)VHHのアミノ酸配列が配列番号82に記載されるアミノ酸配列を含む抗体断片、
(15)VHHのアミノ酸配列が配列番号84に記載されるアミノ酸配列を含む抗体断片、
(16)VHHのアミノ酸配列が配列番号86に記載されるアミノ酸配列を含む抗体断片、
(17)VHのアミノ酸配列が配列番号88に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのアミノ酸配列が配列番号93に記載されるアミノ酸配列を含む抗体、
(18)VHのアミノ酸配列が配列番号98に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのアミノ酸配列が配列番号133に記載されるアミノ酸配列を含む抗体、
(19)VHのアミノ酸配列が配列番号103に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのアミノ酸配列が配列番号133に記載されるアミノ酸配列を含む抗体、
(20)VHのアミノ酸配列が配列番号108に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのアミノ酸配列が配列番号133に記載されるアミノ酸配列を含む抗体、
(21)VHのアミノ酸配列が配列番号113に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのアミノ酸配列が配列番号133に記載されるアミノ酸配列を含む抗体、
(22)VHのアミノ酸配列が配列番号118に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのアミノ酸配列が配列番号133に記載されるアミノ酸配列を含む抗体、
(23)VHのアミノ酸配列が配列番号123に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのアミノ酸配列が配列番号133に記載されるアミノ酸配列を含む抗体、
(24)VHのアミノ酸配列が配列番号128に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのアミノ酸配列が配列番号133に記載されるアミノ酸配列を含む抗体、
(25)VHのアミノ酸配列が配列番号138に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのアミノ酸配列が配列番号163に記載されるアミノ酸配列を含む抗体、
(26)VHのアミノ酸配列が配列番号143に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのアミノ酸配列が配列番号163に記載されるアミノ酸配列を含む抗体、
(27)VHのアミノ酸配列が配列番号148に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのアミノ酸配列が配列番号163に記載されるアミノ酸配列を含む抗体、
(28)VHのアミノ酸配列が配列番号153に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのアミノ酸配列が配列番号163に記載されるアミノ酸配列を含む抗体、
(29)VHのアミノ酸配列が配列番号158に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのアミノ酸配列が配列番号163に記載されるアミノ酸配列を含む抗体、
(30)VHのアミノ酸配列が配列番号168に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのアミノ酸配列が配列番号173に記載されるアミノ酸配列を含む抗体
【請求項5】
抗体または該抗体断片がバイスペシフィック抗体である、請求項1~4のいずれか1項に記載の抗体または該抗体断片。
【請求項6】
バイスペシフィック抗体がCADM3および脳に存在する抗原に結合する、請求項5に記載のバイスペシフィック抗体。
【請求項7】
バイスペシフィック抗体がCADM3に結合する抗原結合部位および脳に存在する抗原に結合する抗原結合部位を含む、請求項5または6に記載のバイスペシフィック抗体。
【請求項8】
抗体断片がFab、Fab’、F(ab’)2、一本鎖抗体(scFv)、二量体化V領域(diabody)、ジスルフィド安定化V領域(dsFv)、VHHからなる群より選ばれる1である、請求項1~7のいずれか1項に記載の抗体断片。
【請求項9】
抗体が遺伝子組換え抗体である、請求項1~8のいずれか1項に記載の抗体または該抗体断片。
【請求項10】
抗体がマウス抗体、ラット抗体、ラビット抗体、アルパカ抗体、ラクダ抗体、ラマ抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体およびヒト抗体からなる群より選ばれる1である、請求項1~9のいずれか1項に記載の抗体または該抗体断片。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載のCADM3に結合する抗体または該抗体断片に、下記(i)~(iii)からなる群より選ばれる少なくとも1つを結合させた融合抗体または該融合抗体断片;
(i)親水性高分子、
(ii)両親媒性高分子、および
(iii)機能性分子。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項に記載の抗体または該抗体断片を産生する細胞
【請求項13】
請求項1~11のいずれか1項に記載の抗体または該抗体断片をコードする塩基配列を含む核酸。
【請求項14】
請求項13に記載の核酸を含むベクターを含む形質転換細胞。
【請求項15】
請求項12に記載の細胞または請求項14に記載の形質転換細胞を培養し、培養液から請求項1~11のいずれか1項に記載の抗体または該抗体断片を採取することを含む、請求項1~11のいずれか1項に記載の抗体または該抗体断片の製造方法。
【請求項16】
請求項1~11のいずれか1項に記載の抗体または該抗体断片を含む、組成物。
【請求項17】
脳に存在する抗原の検出または測定用の組成物である、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
脳疾患の診断または治療するための組成物である、請求項16に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、Cell Adhesion Molecule3(CADM3)に結合する抗体または該抗体断片、該抗体または該抗体断片を産生するハイブリドーマ、該抗体または該抗体断片をコードする塩基配列を含む核酸、該核酸を含むベクターを含む形質転換細胞、該抗体または該抗体断片の製造方法、該抗体または該抗体断片を含む組成物、該抗体または該抗体断片を用いた脳に存在する抗原を検出または測定する方法、脳疾患を診断または治療する方法、抗体の脳滞留性を向上させる方法、脳内の抗体量を増加させる方法などに関する。
【背景技術】
【0002】
1986年にマウス抗CD3抗体、muromonab-CD3(OKT3)が最初の抗体医薬品としてFDAから承認を受けて以来、数多くの抗体医薬品が開発されている。1994年には、マウス抗体のもつ抗原性を低減するために、マウス抗体の可変領域とヒト抗体の定常領域を連結したキメラ抗体abciximabが承認を受けている。
【0003】
さらに抗原性を低減するために、マウス抗体の可変領域の抗原結合に重要な働きをもつ相補性決定領域(complementarity determining region;CDR)をヒト抗体のフレームワーク領域(frame work region;FR)に移植するヒト化抗体技術が開発され、1997年にヒト化抗CD20抗体dacizumabが承認を受けている。
【0004】
また、ヒトの抗体配列ライブラリを用いたファージディスプレイ技術が用いられるようになり、ファージディスプレイ技術で取得した最初の抗体として、完全ヒト抗TNFα抗体adalimumabが2002年に承認されている。CD20、CD52、TNFα、HER2、EGFRなどを標的抗原とした抗体医薬品が、既に60品目以上が承認されている(非特許文献1)。
【0005】
このように、抗体は幅広く認知された医薬品フォーマットとなっている。これまでに承認された抗体医薬品のうち大部分はがんや免疫疾患を対象とするものであり、全体の約75%以上を占めている。
【0006】
中枢神経疾患の治療においても、抗体などのバイオロジクスの重要性が高まっており、アミロイドβに対するモノクローナル抗体がアルツハイマー病において研究されていることや、神経保護作用を有する各種神経栄養因子(brain-derived neurotorophic factor;BDNF、glial-derived neurotorophic factor;GDNF)が中枢神経疾患において神経保護作用を示すことが動物モデルで報告されている(非特許文献2)。
【0007】
しかしながら、中枢神経系では、抗体を末梢に投与した場合に他の臓器と比べて送達量が低く、抗体移行率[脳脊髄液(cerebrospinal fluid;CSF)中濃度と血清濃度の比]は0.1-0.3%と報告されている(非特許文献3-5)。
【0008】
脳および脊髄を含む中枢神経系において薬剤送達量が低下する理由として、血液脳関門(Blood Brain Barrier;BBB)と呼ばれる血液と脳との組織液間での物質輸送を制限する機構が挙げられる。血液脳関門は、血管内皮細胞の細胞間接合による物理的・非特異的な制御機構および排出トランスポーターによる基質特異的な排出機構を有しており、異物または薬物から中枢神経系を保護し、恒常性の維持に重要な役割を果たしている。
【0009】
しかしながら、血液脳関門の存在により、中枢神経系では薬剤投与時の有効濃度が得られにくく、薬剤開発が困難になっている。例えば、ハーラー症候群(ムコ多糖症I型)に対するα-L-イズロニダーゼや、ハンター症候群(ムコ多糖症II型)に対するイズロン酸2-スルファターゼの静脈内投与による酵素補充療法が行われているが、酵素の分子量が大きく血液脳関門を通過しないため、中枢神経症状に対する有効性は認められていない(非特許文献6-9)。また、一定量の組換え酵素を定期的に継続投与するため、中和抗体の産生などの副作用が現れることが報告されている(非特許文献10)。
【0010】
また、脳内濃度を高めるために、バイオロジクスを髄腔内または脳内に直接投与する試みも行われている。例えば、ハンター症候群(ムコ多糖症II型)の患者の脳障害の進行を防止するために、イズロン酸2-スルファターゼを患者の脳内に投与する方法が報告されている(特許文献1)。しかしながら、髄腔内または脳内への直接投与は侵襲性が高い(非特許文献11)。
【0011】
そのため、バイオロジクスのような高分子物質の脳内濃度を高めるために、様々な送達技術が研究されている。例えば、脳血管内皮細胞に発現している膜蛋白質に結合し、高分子物質および膜蛋白質の複合体を形成させてエンドサイトーシスにより血液脳関門を通過させる方法が複数報告されている。
【0012】
報告されている技術のほとんどは、受容体介在性トランスサイトーシス(receptor-mediated transcytosis;RMT)を利用したものであり、標的となる脳血管内皮発現受容体としては、例えばトランスフェリン受容体、インスリン受容体、インスリン様成長因子受容体、低比重リポ蛋白質受容体ファミリー(LDLRf)などがある。
【0013】
抗トランスフェリン受容体抗体および神経成長因子の融合蛋白質を作製することにより、トランスフェリン受容体を介した血液脳関門通過技術が報告されている。抗トランスフェリン受容体抗体を用いた技術としては、抗トランスフェリン受容体抗体および抗ベーターセクレターゼ(BACE1)抗体のバイスペシフィック抗体(特許文献2および3、ならびに非特許文献12および13)、および抗アミロイドβ抗体のカルボキシル末端側に抗トランスフェリン受容体の一価抗体を融合させた融合抗体(特許文献4および非特許文献14)が報告されている。
【0014】
抗トランスフェリン受容体抗体および抗BACE1抗体のバイスペシフィック抗体による脳送達は、マウスにおいて20mg/kg体重で抗体を投与した際に脳での抗体取り込み量がコントロールの約4倍に増加することが報告されている(非特許文献13)。
【0015】
また、抗トランスフェリン受容体抗体を表面に有するリポソームに薬剤を内包させることで、薬剤を血液脳関門において通過させる技術が報告されている。抗ラットトランスフェリン受容体抗体とイムノミセル融合体により、ラットにおける脳での取り込み量が約2~5倍に増加することが報告されている(非特許文献15)。
【0016】
また、抗インスリン受容体抗体のカルボキシル末端側に、神経栄養因子、酵素または抗アミロイド抗体を融合した融合蛋白質を作製することにより、インスリン受容体を介した血液脳関門通過技術が報告されている(非特許文献16-19)。
【0017】
アカゲザルにおいて、標識抗ヒトインスリン受容体抗体およびGDNFの融合抗体を投与した2時間後の脳での取り込み量が、GDNFと比較して約15倍となることが報告されている(非特許文献17)。
【0018】
しかしながら、トランスフェリン受容体およびインスリン受容体は脳血管内皮細胞だけでなく、肝臓など全身で発現しているため、これらの技術では中枢神経系への薬剤送達量の増大とともに肝臓などにも薬剤送達が起こる(非特許文献20)。さらに、全身で抗原が発現しているため、抗体の血中半減期が短い(非特許文献12)。
【0019】
また、脳血管内皮膜発現抗原であるTMEM30Aに対する抗体(Fc5)が、RMT様の活性を示すことが報告されている(特許文献5、ならびに非特許文献21および22)。Fc5はラマ由来のシングルドメインの重鎖抗体の重鎖可変領域(Variable domain of Heavy chain of Heavy chain antibody;VHH)抗体であり、Fc5およびヒトFcの融合体がコントロールIgGと比較して脳送達が増加することが、in vitro BBBモデルおよびラットin vivoモデルにおいて示されている。
【0020】
Fc5由来の単鎖抗体(single chain antibody;scFv)および代謝型グルタミン酸受容体1型(metabotropic glutamate receptor type I;mGluRI)抗体の融合体が、コントロール単鎖抗体およびmGluRI抗体の融合体と比較して、ラットモデルでのCSF曝露が高まることが報告されているが、増加量としては5倍程度である(非特許文献23)。
【0021】
また、IgG抗体は胎児性Fc受容体(neonatal Fc receptor;FcRn)によって脳内から循環血液方向へ速やかに排出されることが報告されており(非特許文献24および25)、例えばラットにおけるIgGの脳内投与後の脳内半減期は48分間と短い(非特許文献24)。
【0022】
CADM3は、カルシウムイオン非依存性免疫グロブリン様細胞接着分子である(非特許文献26-31)。CADM3は、細胞外領域の3つの免疫グロブリン様ドメイン、1つの膜貫通ドメイン、および1つの細胞質ドメインといった構造に分けられる(非特許文献29)。
【0023】
RNA blotとin situ hybridizationの解析から、CADM3は小脳、大脳皮質、海馬、扁桃体、嗅球および延髄を含む様々な中枢神経と末梢神経の両方の神経組織特異的に発現している(非特許文献26、27および32)。CADM3は2つの軸索末端間、軸索末端および軸索シャフトの間、ならびに軸索末端および軸索末端のグリア細胞プロセスの間の接触部位に局在化する(非特許文献26)。
【0024】
CADM3は、カルシウムイオン非依存性のホモフィリック結合での細胞間の接着活性を示す。また、CADM3は、Necl-2、nectin-1およびnectin-3とカルシウムイオン非依存性のヘテロフィリック結合での細胞間の接着活性を示すが、Necl-5およびnectin-2とは接着活性を示さない。nectin-1およびnectin-3と相互作用するCADM3は、小脳形態形成時と同様に神経活動依存性のシナプスの再構築プロセスに関与する(非特許文献32および33)。in vitro結合解析から、アクチン細胞骨格の再編成に関与するprotein 4.1NとCADM3が結合することが示されている(非特許文献27)。
【0025】
CADM3を欠損させたマウスでは、生後早期に視神経および脊髄における有髄軸索数が減少する。しかし、成熟後で正常個体と変異体の間で、有髄軸索数やミエリン鞘の厚さに差はない(非特許文献30)。また、CADM3に結合するポリクローナル抗体が報告されている(非特許文献27)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0026】
【文献】国際公開第2012/023623号
【文献】国際公開第2016/081640号
【文献】国際公開第2016/081643号
【文献】国際公開第2014/033074号
【文献】カナダ国特許第2623841号明細書
【非特許文献】
【0027】
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【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0028】
本発明は、例えば、CADM3に結合するCADM3結合分子及び該分子を用いた方法などに関する。具体的には、CADM3に結合する抗体または該抗体断片、該抗体または該抗体断片を産生するハイブリドーマ、該抗体または該抗体断片をコードする塩基配列を含む核酸、該核酸を含むベクターを含む形質転換細胞、該抗体または該抗体断片の製造方法、該抗体または該抗体断片を含む組成物、該抗体または該抗体断片を用いた脳に存在する抗原を検出または測定する方法、脳疾患を診断または治療する方法、抗体の脳滞留性を向上させる方法、脳内の抗体量を増加させる方法などを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0029】
上記課題を解決するための手段として、本発明はCADM3に結合するCADM3結合分子および該分子を用いた方法、具体的にはCADM3に結合する抗体または該抗体断片を提供する。
【0030】
すなわち、本発明は以下の〈1〉~〈22〉に関する。
【0031】
〈1〉Cell Adhesion Molecule3(CADM3)に結合する抗体または該抗体断片。
〈2〉抗体が脳滞留性を有する〈1〉に記載の抗体または該抗体断片。
〈3〉抗体が神経細胞および/または神経組織結合性を有する〈1〉または〈2〉に記載の抗体または該抗体断片。
〈4〉抗体または該抗体断片が下記(a)~(x)からなる群より選ばれる1である、〈1〉~〈3〉のいずれか1に記載の抗体または該抗体断片;
(a)重鎖可変領域(VH)の相補性決定領域(CDR)1~3のアミノ酸配列が、それぞれ配列番号23、24および25に記載されるアミノ酸配列を含み、かつ軽鎖可変領域(VLのCDR1~3のアミノ酸配列が、それぞれ配列番号28、29および30に記載されるアミノ酸配列を含む抗体、
(b)VHのCDR1~3のアミノ酸配列が、それぞれ配列番号34、35および36に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのCDR1~3のアミノ酸配列が、それぞれ配列番号38、39および40に記載されるアミノ酸配列を含む抗体、
(c)重鎖抗体の重鎖可変領域(VHH)のCDR1~3のアミノ酸配列が、それぞれ配列番号3、4および5に記載されるアミノ酸配列を含む抗体断片、
(d)VHHのCDR1~3のアミノ酸配列が、それぞれ配列番号8、9および10に記載されるアミノ酸配列を含む抗体断片、
(e)VHHのCDR1~3のアミノ酸配列が、それぞれ配列番号13、14および15に記載されるアミノ酸配列を含む抗体断片、
(f)VHHのCDR1~3のアミノ酸配列が、それぞれ配列番号18、19および20に記載されるアミノ酸配列を含む抗体断片、
(g)VHのCDR1~3のアミノ酸配列が、それぞれ配列番号89、90および91に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのCDR1~3のアミノ酸配列が、それぞれ配列番号94、95および96に記載されるアミノ酸配列を含む抗体、
(h)VHのCDR1~3のアミノ酸配列が、それぞれ配列番号99、100および101に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのCDR1~3のアミノ酸配列が、それぞれ配列番号134、135および136に記載されるアミノ酸配列を含む抗体、
(i)VHのCDR1~3のアミノ酸配列が、それぞれ配列番号104、105および106に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのCDR1~3のアミノ酸配列が、それぞれ配列番号134、135および136に記載されるアミノ酸配列を含む抗体、
(j)VHのCDR1~3のアミノ酸配列が、それぞれ配列番号109、110および111に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのCDR1~3のアミノ酸配列が、それぞれ配列番号134、135および136に記載されるアミノ酸配列を含む抗体、
(k)VHのCDR1~3のアミノ酸配列が、それぞれ配列番号114、115および116に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのCDR1~3のアミノ酸配列が、それぞれ配列番号134、135および136に記載されるアミノ酸配列を含む抗体、
(l)VHのCDR1~3のアミノ酸配列が、それぞれ配列番号119、120および121に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのCDR1~3のアミノ酸配列が、それぞれ配列番号134、135および136に記載されるアミノ酸配列を含む抗体、
(m)VHのCDR1~3のアミノ酸配列が、それぞれ配列番号124、125および126に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのCDR1~3のアミノ酸配列が、それぞれ配列番号134、135および136に記載されるアミノ酸配列を含む抗体、
(n)VHのCDR1~3のアミノ酸配列が、それぞれ配列番号129、130および131に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのCDR1~3のアミノ酸配列が、それぞれ配列番号134、135および136に記載されるアミノ酸配列を含む抗体、
(о)VHのCDR1~3のアミノ酸配列が、それぞれ配列番号139、140および141に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのCDR1~3のアミノ酸配列が、それぞれ配列番号164、165および166に記載されるアミノ酸配列を含む抗体、
(p)VHのCDR1~3のアミノ酸配列が、それぞれ配列番号144、145および146に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのCDR1~3のアミノ酸配列が、それぞれ配列番号164、165および166に記載されるアミノ酸配列を含む抗体、
(q)VHのCDR1~3のアミノ酸配列が、それぞれ配列番号149、150および151に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのCDR1~3のアミノ酸配列が、それぞれ配列番号164、165および166に記載されるアミノ酸配列を含む抗体、
(r)VHのCDR1~3のアミノ酸配列が、それぞれ配列番号154、155および156に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのCDR1~3のアミノ酸配列が、それぞれ配列番号164、165および166に記載されるアミノ酸配列を含む抗体、
(s)VHのCDR1~3のアミノ酸配列が、それぞれ配列番号159、160および161に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのCDR1~3のアミノ酸配列が、それぞれ配列番号164、165および166に記載されるアミノ酸配列を含む抗体、
(t)VHのCDR1~3のアミノ酸配列が、それぞれ配列番号169、170および171に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのCDR1~3のアミノ酸配列が、それぞれ配列番号174、175および176に記載されるアミノ酸配列を含む抗体、
(u)前記(a)~(t)に記載の少なくとも1つの抗体または抗体断片と、CADM3への結合について競合する抗体、
(v)前記(a)~(t)に記載のいずれか1つの抗体または抗体断片が結合するエピトープを含むエピトープに結合する抗体、
(w)前記(a)~(t)に記載のいずれか1つの抗体または抗体断片が結合するエピトープと同じエピトープに結合する抗体、
(x)前記(a)~(t)に記載のいずれか1つの抗体または抗体断片のアミノ酸配列と85%以上の相同性を有するアミノ酸配列を含む抗体。
〈5〉抗体または該抗体断片が下記(1)~(31)からなる群より選ばれる1である、〈1〉~〈4〉のいずれか1に記載の抗体または該抗体断片;
(1)VHのアミノ酸配列が配列番号22に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのアミノ酸配列が配列番号27に記載されるアミノ酸配列を含む抗体、
(2)VHのアミノ酸配列が配列番号32に記載されるアミノ酸配列含み、かつVLのアミノ酸配列が配列番号37に記載されるアミノ酸配列を含む抗体、
(3)VHHのアミノ酸配列が配列番号2に記載されるアミノ酸配列を含む抗体断片、
(4)VHHのアミノ酸配列が配列番号7に記載されるアミノ酸配列を含む抗体断片、
(5)VHHのアミノ酸配列が配列番号12に記載されるアミノ酸配列を含む抗体断片、
(6)VHHのアミノ酸配列が配列番号17に記載されるアミノ酸配列を含む抗体断片、
(7)VHHのアミノ酸配列が配列番号68に記載されるアミノ酸配列を含む抗体断片、
(8)VHHのアミノ酸配列が配列番号70に記載されるアミノ酸配列を含む抗体断片、
(9)VHHのアミノ酸配列が配列番号72に記載されるアミノ酸配列を含む抗体断片、
(10)VHHのアミノ酸配列が配列番号74に記載されるアミノ酸配列を含む抗体断片、
(11)VHHのアミノ酸配列が配列番号76に記載されるアミノ酸配列を含む抗体断片、
(12)VHHのアミノ酸配列が配列番号78に記載されるアミノ酸配列を含む抗体断片、
(13)VHHのアミノ酸配列が配列番号80に記載されるアミノ酸配列を含む抗体断片、
(14)VHHのアミノ酸配列が配列番号82に記載されるアミノ酸配列を含む抗体断片、
(15)VHHのアミノ酸配列が配列番号84に記載されるアミノ酸配列を含む抗体断片、
(16)VHHのアミノ酸配列が配列番号86に記載されるアミノ酸配列を含む抗体断片、
(17)VHのアミノ酸配列が配列番号88に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのアミノ酸配列が配列番号93に記載されるアミノ酸配列を含む抗体、
(18)VHのアミノ酸配列が配列番号98に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのアミノ酸配列が配列番号133に記載されるアミノ酸配列を含む抗体、
(19)VHのアミノ酸配列が配列番号103に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのアミノ酸配列が配列番号133に記載されるアミノ酸配列を含む抗体、
(20)VHのアミノ酸配列が配列番号108に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのアミノ酸配列が配列番号133に記載されるアミノ酸配列を含む抗体、
(21)VHのアミノ酸配列が配列番号113に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのアミノ酸配列が配列番号133に記載されるアミノ酸配列を含む抗体、
(22)VHのアミノ酸配列が配列番号118に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのアミノ酸配列が配列番号133に記載されるアミノ酸配列を含む抗体、
(23)VHのアミノ酸配列が配列番号123に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのアミノ酸配列が配列番号133に記載されるアミノ酸配列を含む抗体、
(24)VHのアミノ酸配列が配列番号128に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのアミノ酸配列が配列番号133に記載されるアミノ酸配列を含む抗体、
(25)VHのアミノ酸配列が配列番号138に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのアミノ酸配列が配列番号163に記載されるアミノ酸配列を含む抗体、
(26)VHのアミノ酸配列が配列番号143に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのアミノ酸配列が配列番号163に記載されるアミノ酸配列を含む抗体、
(27)VHのアミノ酸配列が配列番号148に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのアミノ酸配列が配列番号163に記載されるアミノ酸配列を含む抗体、
(28)VHのアミノ酸配列が配列番号153に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのアミノ酸配列が配列番号163に記載されるアミノ酸配列を含む抗体、
(29)VHのアミノ酸配列が配列番号158に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのアミノ酸配列が配列番号163に記載されるアミノ酸配列を含む抗体、
(30)VHのアミノ酸配列が配列番号168に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのアミノ酸配列が配列番号173に記載されるアミノ酸配列を含む抗体、
(31)前記(1)~(30)に記載のいずれか1つの抗体または抗体断片のアミノ酸配列と85%以上の相同性を有するアミノ酸配列を含む抗体。
〈6〉抗体または該抗体断片がバイスペシフィック抗体である、〈1〉~〈5〉のいずれか1に記載の抗体または該抗体断片。
〈7〉バイスペシフィック抗体がCADM3および脳に存在する抗原に結合する、〈6〉に記載のバイスペシフィック抗体。
〈8〉バイスペシフィック抗体がCADM3に結合する抗原結合部位および脳に存在する抗原に結合する抗原結合部位を含む、〈6〉または〈7〉に記載のバイスペシフィック抗体。
〈9〉抗体断片がFab、Fab’、F(ab’)、一本鎖抗体(scFv)、二量体化V領域(diabody)、ジスルフィド安定化V領域(dsFv)、VHHおよびCDRを含むペプチドからなる群より選ばれる1である、〈1〉~〈8〉のいずれか1に記載の抗体断片。
〈10〉抗体が遺伝子組換え抗体である、〈1〉~〈9〉のいずれか1に記載の抗体または該抗体断片。
〈11〉抗体がマウス抗体、ラット抗体、ラビット抗体、アルパカ抗体、ラクダ抗体、ラマ抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体およびヒト抗体からなる群より選ばれる1である、〈1〉~〈10〉のいずれか1に記載の抗体または該抗体断片。
〈12〉〈1〉~〈11〉のいずれか1に記載のCADM3に結合する抗体または該抗体断片に、下記(i)~(iii)からなる群より選ばれる少なくとも1つを結合させた融合抗体または該融合抗体断片;
(i)親水性高分子、
(ii)両親媒性高分子、および
(iii)機能性分子。
〈13〉〈1〉~〈12〉のいずれか1に記載の抗体、該抗体断片、融合抗体若しくは該融合抗体断片を産生するハイブリドーマ。
〈14〉〈1〉~〈12〉のいずれか1に記載の抗体、該抗体断片、融合抗体若しくは該融合抗体断片をコードする塩基配列を含む核酸。
〈15〉〈14〉に記載の核酸を含むベクターを含む形質転換細胞。
〈16〉〈13〉に記載のハイブリドーマまたは〈15〉に記載の形質転換細胞を培養し、培養液から〈1〉~〈12〉のいずれか1に記載の抗体、該抗体断片、融合抗体若しくは該融合抗体断片を採取することを含む、〈1〉~〈12〉のいずれか1に記載の抗体、該抗体断片、融合抗体若しくは該融合抗体断片の製造方法。
〈17〉〈1〉~〈12〉のいずれか1に記載の抗体、該抗体断片、融合抗体若しくは該融合抗体断片を含む、組成物。
〈18〉脳に存在する抗原の検出または測定用の組成物である、〈17〉に記載の組成物。
〈19〉脳疾患の診断または治療するための組成物である、〈17〉に記載の組成物。
〈20〉〈1〉~〈12〉のいずれか1に記載の抗体、該抗体断片、融合抗体若しくは該融合抗体断片、または〈17〉に記載の組成物を用いて、脳に存在する抗原を検出または測定する方法。
〈21〉〈1〉~〈12〉のいずれか1に記載の抗体、該抗体断片、融合抗体若しくは該融合抗体断片、または〈17〉に記載の組成物を用いて、脳疾患を診断または治療する方法。
〈22〉〈1〉~〈12〉のいずれか1に記載の抗体、該抗体断片、融合抗体若しくは該融合抗体断片、または〈17〉に記載の組成物を用いて、抗体、該抗体断片、融合抗体若しくは該融合抗体断片の脳滞留性を向上させる方法。
〈23〉〈1〉~〈12〉のいずれか1に記載の抗体、該抗体断片、融合抗体若しくは該融合抗体断片、または〈17〉に記載の組成物を用いて、脳内の抗体量、該抗体断片量、融合抗体量若しくは該融合抗体断片量を増加させる方法。
【発明の効果】
【0032】
本発明のCADM3結合分子は、CADM3に特異的に結合することで結合分子自体の脳滞留性を増加させるだけでなく、その他の目的分子をCADM3結合分子に修飾することで、目的分子を脳内への輸送、滞留させることで、脳疾患の治療に応用することができる。本発明の具体的なCADM3結合分子としては、抗体または該抗体断片が挙げられる。本発明の抗体または該抗体断片は、脳内のCADM3に結合することにより、脳滞留性を有する抗体または該抗体断片である。それゆえ、本発明の抗体または該抗体断片は、脳に存在する抗原(CADM3、またはCADM3および脳に存在するその他の抗原)の検出または測定用の組成物、脳疾患の診断用の組成物、および脳疾患を治療するための医薬組成物として用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1図1(A)および(B)は、組織中における各抗体の濃度を測定した結果である。図1(A)は抗体投与3日後の血清中の抗体濃度を示す。縦軸は抗体濃度(ng/mL)、横軸は投与した抗体を示す。図1(B)は抗体投与3日後の脳組織中の抗体濃度を示す。縦軸は抗体濃度(ng/g脳)、横軸は投与した抗体を示す。
図2図2(A)および(B)は、組織中における各抗体の濃度を測定した結果である。図2(A)は抗体投与7日後の血清中の抗体濃度を示す。縦軸は抗体濃度(ng/mL)、横軸は投与した抗体を示す。図2(B)は抗体投与7日後の脳組織中の抗体濃度を示す。縦軸は抗体溶出量(ng/g脳)、横軸は投与した抗体を示す。
図3図3(A)および(B)は、組織中における各抗体の濃度を測定した結果である。図3(A)は、抗体投与7日後の血清中の抗体濃度を示す。縦軸は抗体濃度(ng/mL)、横軸は投与した抗体を示す。図3(B)は投与7日後の脳組織中の抗体濃度を示す。縦軸は抗体溶出量(ng/g脳)、横軸は投与した抗体を示す。抗体濃度はモル濃度から、モノクローナル抗体の分子量(150kDa)で換算した値で示す。
図4図4(A)および(B)は、各抗体のマウス脳移行性イメージング評価の結果である。図4(A)は抗体投与9日後の脳のイメージング像を示す。図4(B)は脳中蛍光量を投与抗体の蛍光強度で補正した値の対抗AVM抗体比を示す。縦軸は対抗AVM抗体比、横軸は投与した抗体を示す。
図5図5は、各抗体のマウス脳移行性イメージング評価の結果であり、抗体投与7日後の脳のイメージング像を示す。
図6図6は、各抗体のマウス脳移行性イメージング評価の結果であり、脳中蛍光量を投与抗体の蛍光強度で補正した値の対抗AVM抗体比を示す。縦軸は対抗AVM抗体比、横軸は投与した抗体を示す。
図7図7(A)および(B)は、組織中における各抗体の濃度を測定した結果である。図7(A)は、抗体投与7日後の血清中の抗体濃度を示す。縦軸は抗体濃度(ng/mL)、横軸は投与した抗体を示す。図7(B)は投与7日後の脳組織中の抗体濃度を示す。縦軸は抗体溶出量(ng/g脳)、横軸は投与した抗体を示す。
図8図8(A)および(B)は、各抗体のマウス脳移行性イメージング評価の結果である。図8(A)は抗体投与7日後の脳のイメージング像を示す。図8(B)は脳中蛍光量を投与抗体の蛍光強度で補正した値の対抗AVM抗体比を示す。縦軸は対抗AVM抗体比、横軸は投与した抗体を示す。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明は、CADM3に結合する抗原結合分子に関する。より具体的には、本発明はCADM3に結合する抗体または該抗体断片に関するものである。
【0035】
本発明のCADM3結合分子としては、CADM3に特異的に結合し当該分子が脳内に滞留する分子であればいずれの分子形態でもよく、タンパク質、核酸、有機合成された低分子化合物/高分子化合物などいずれの分子であってもよい。具体的には組換えタンパク質、抗体、アプタマー、低分子スクリーニングで得られる低分子化合物などいずれのものでもよいが、好ましくは抗体および該抗体断片が挙げられる。CADM3結合分子は、CADM3の細胞外領域に結合する分子であることが好ましい。
【0036】
CADM3は、カルシウムイオン非依存性免疫グロブリン様細胞接着分子であり、カルシウム非依存性のホモフィリック結合での細胞間の接着活性を示す。例えば、シグナル配列を含むヒトCADM3の全長は398アミノ酸からなり、中枢神経系および末梢神経系において2つの軸索末端間、軸索末端および軸索シャフトの間、ならびに軸索末端および軸索末端のグリア細胞プロセスの間の接触部位で発現しており、細胞接着作用において役割を果たしている。
【0037】
本発明のCADM3結合分子が結合するCADM3の動物種は、マウス、ラット、カニクイザルおよび/またはヒトなどが挙げられるが、特にこれらの種に限定されるものではなく、抗体の用途に応じて、適切な動物種を選択することができる。例えば、本発明の抗体をヒトの医薬用途で用いる場合、該抗体は少なくともヒトのCADM3に結合する抗体であることが好ましい。
【0038】
本発明において、ヒトCADM3としては、配列番号52に記載のアミノ酸配列若しくはNCBIアクセッション番号AAH33819のアミノ酸配列を含むポリペプチド、配列番号52に記載のアミノ酸配列若しくはNCBIアクセッション番号AAH33819のアミノ酸配列において1つ以上のアミノ酸が欠失、置換または付加されたアミノ酸配列からなり、かつヒトCADM3の機能を有するポリペプチド、あるいは配列番号52に記載のアミノ酸配列若しくはNCBIアクセッション番号AAH33819のアミノ酸配列と60%以上、好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上の相同性を有するアミノ酸配列から成り、かつヒトCADM3の機能を有するポリペプチドなどが挙げられる。
【0039】
配列番号52に記載のアミノ酸配列またはNCBIアクセッション番号AAH33819で示されるアミノ酸配列において1つ以上のアミノ酸が欠失、置換または付加されたアミノ酸配列を有するポリペプチドは、部位特異的変異導入法[Molecular Cloning, A Laboratory Manual, Second Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press (1989)、Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons (1987-1997)、Nucleic acids Research, 10, 6487 (1982)、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 79, 6409 (1982)、Gene, 34, 315 (1985)、Nucleic Acids Research, 13, 4431 (1985)、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 82, 488 (1985)]などを用いて、例えば配列番号52のアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードするDNAに、部位特異的変異を導入することにより得ることができる。
【0040】
欠失、置換または付加されるアミノ酸の数は特に限定されないが、好ましくは1個~数十個、例えば、1~20個、より好ましくは1個~数個、例えば、1~5個のアミノ酸である。
【0041】
マウスCADM3のアミノ酸配列[配列番号54またはNCBIアクセッション番号NP_444429.1]、ラットCADM3のアミノ酸配列[NCBIアクセッション番号AAI61811.1]およびカニクイザルCADM3のアミノ酸配列[配列番号56またはNCBIアクセッション番号NP_001270618.1]についても同様のことがいえる。
【0042】
本発明において、ヒトCADM3をコードする遺伝子としては、配列番号51に記載の塩基配列またはNCBIアクセッション番号BC033819.1の塩基配列が挙げられる。配列番号51に記載の塩基配列若しくはNCBIアクセッション番号BC033819.1の塩基配列において、1以上の塩基が欠失、置換または付加された塩基配列から成り、かつCADM3の機能を有するポリペプチドをコードするDNAを含む遺伝子、配列番号51に記載の塩基配列若しくはNCBIアクセッション番号BC033819.1の塩基配列と少なくとも60%以上の相同性を有する塩基配列、好ましくは80%以上の相同性を有する塩基配列、さらに好ましくは95%以上の相同性を有する塩基配列から成り、かつCADM3の機能を有するポリペプチドをコードするDNAを含む遺伝子、または配列番号51に記載の塩基配列若しくはNCBIアクセッション番号BC033819.1の塩基配列を含むDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAから成り、かつCADM3の機能を有するポリペプチドをコードする遺伝子なども本発明においてCADM3をコードする遺伝子に含まれる。
【0043】
ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAとしては、配列番号51に記載の塩基配列若しくはNCBIアクセッション番号BC033819.1の塩基配列を含むDNAをプローブに用いた、コロニー・ハイブリダイゼーション法、プラーク・ハイブリダイゼーション法、サザンブロット・ハイブリダイゼーション法またはDNAマイクロアレイ法などにより得られるハイブリダイズ可能なDNAのことをいう。
【0044】
具体的には、ハイブリダイズしたコロニー若しくはプラーク由来のDNA、または該配列を有するPCR産物若しくはオリゴDNAを固定化したフィルター若しくはスライドガラスを用いて、0.7~1.0mol/Lの塩化ナトリウム存在下、65℃でハイブリダイゼーション法[Molecular Cloning, A Laboratory Manual, Second Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press (1989)、Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons (1987-1997)、DNA Cloning 1: Core Techniques, A Practical Approach, Second Edition, Oxford University, (1995)]を行った後、0.1~2倍濃度のSaline Sodium Citrate(SSC)溶液(1倍濃度のSSC溶液の組成は、150mmol/Lの塩化ナトリウムおよび15mmol/Lのクエン酸ナトリウムよりなる)を用い、65℃条件下でフィルターまたはスライドガラスを洗浄することにより同定できるDNAを挙げることができる。
【0045】
ハイブリダイズ可能なDNAとしては配列番号51に記載の塩基配列またはNCBIアクセッション番号BC033819.1の塩基配列と少なくとも60%以上の相同性を有するDNA、好ましくは80%以上の相同性を有するDNA、さらに好ましくは95%以上の相同性を有するDNAを挙げることができる。
【0046】
マウスCADM3の塩基配列[配列番号53またはNCBIアクセッション番号NM_053199.3]、ラットCADM3の塩基配列[NCBIアクセッション番号NM_001047103.1]およびカニクイザルCADM3の塩基配列[配列番号55またはNCBIアクセッション番号NM_001283689.1]についても同様のことがいえる。
【0047】
CADM3の機能としては、上記したように、中枢神経系および末梢神経系における軸索末端間などにおける細胞接着などへの関与が挙げられる。
【0048】
真核生物のタンパク質をコードする遺伝子の塩基配列には、しばしば遺伝子の多型が認められる。本発明において用いられる遺伝子に、このような多型によって塩基配列に小規模な変異を生じた遺伝子も本発明におけるCADM3をコードする遺伝子に包含される。
【0049】
本発明における相同性の数値は、特に明示した場合を除き、当業者に公知の相同性検索プログラムを用いて算出される数値であってよいが、塩基配列については、BLAST[J. Mol. Biol., 215, 403 (1990)]においてデフォルトのパラメータを用いて算出される数値など、アミノ酸配列については、BLAST2[Nucleic Acids Res.,25, 3389 (1997)、Genome Res., 7, 649 (1997)、http://www.ncbi.nlm.nih.gov/Education/BLASTinfo/information3.htmL]においてデフォルトのパラメータを用いて算出される数値などが挙げられる。
【0050】
デフォルトのパラメータとしては、G(Cost to open gap)が塩基配列の場合は5、アミノ酸配列の場合は11、-E(Cost to extend gap)が塩基配列の場合は2、アミノ酸配列の場合は1、-q(Penalty for nucleotide mismatch)は-3、-r(reward for nucleotide match)は1、-e(expect value)は10、-W(wordsize)が塩基配列の場合は11、アミノ酸配列の場合は3、-y[Dropoff(X)for blast extensions in bits]がblastnの場合は20、blastn以外のプログラムの場合は7、-X(X dropoff value for gapped alignment in bits)は15、および-Z(final X dropoff value for gapped alignment in bits)がblastnの場合は50、blastn以外のプログラムの場合は25である(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/blast/htmL/blastcgihelp.htmL)。
【0051】
上記の各種CADM3のアミノ酸配列の部分配列を含むポリペプチドは、当業者に公知の方法によって作製することができる。具体的には、上記の各種CADM3のアミノ酸配列をコードするDNAの一部を欠失させ、これを含む発現ベクターを導入した形質転換体を培養することにより作製することができる。また、上記と同様の方法により、各種CADM3のアミノ酸配列において1以上のアミノ酸が欠失、置換または付加されたアミノ酸配列を有するポリペプチドを得ることができる。
【0052】
さらに、各種CADM3のアミノ酸配列からなるポリペプチド、または各種CADM3のアミノ酸配列において1以上のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を有するポリペプチドは、フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)法、t-ブチルオキシカルボニル(tBoc)法などの化学合成法によって製造することもできる。
【0053】
本発明において、ヒトCADM3の細胞外領域は、配列番号52またはNCBIアクセッション番号AAH33819に記載のアミノ酸配列において、25番目から330番目のアミノ酸配列をいう。
【0054】
マウスCADM3の細胞外領域は、配列番号54またはNCBIアクセッション番号NP_444429.1に記載のアミノ酸配列において、23番目から328番目のアミノ酸配列をいう。ラットCADM3の細胞外領域は、NCBIアクセッション番号AAI61811.1に記載のアミノ酸配列において、23番目から328番目のアミノ酸配列をいう。
【0055】
カニクイザルCADM3の細胞外領域は、配列番号56またはNCBIアクセッション番号NP_001270618.1に記載のアミノ酸配列において、23番目から328番目のアミノ酸配列をいう。
【0056】
本発明のCADM3結合分子がCADM3の細胞外領域に結合することは、CADM3発現細胞または組換えCADM3タンパク質に対する本発明のCADM3結合分子の結合性を、Enzyme-Linked ImmunoSorbent Assay(ELISA)、フローサイトメトリーまたは表面プラズモン共鳴法などを用いて測定することにより確認することができる。また、公知の免疫学的検出法[Monoclonal Antibodies-Principles and practice, Third edition, Academic Press (1996)、Antibodies-A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory (1988)、単クローン抗体実験マニュアル、講談社サイエンティフィック(1987)]などを組み合わせて確認することもできる。
【0057】
本発明のCADM3結合分子は脳内のCADM3に特異的に結合することで脳滞留性を有する分子であり、例えば本発明の抗体は、脳内のCADM3に結合することにより、脳滞留性を有する抗体である。また、本発明の抗体は、動物の末梢に投与したときに、末梢から脳の血液脳関門を透過して脳内に移行し、脳内のCADM3に結合することにより、脳滞留性を有する抗体である。本発明の抗体は、脳滞留性に優れた抗体、または脳滞留性が向上した抗体であることが好ましい。
【0058】
本発明において、脳滞留性とは、被験動物に対象物を投与したときに、該対象物が脳内に留まる性質をいう。即ち、脳内への移行の増加、脳内への蓄積の増加、脳内から脳外への移行の低下、脳内から脳外への排出の低下、および脳内分解の低下から選らばれる少なくともいずれか1つによって該対象物の脳内濃度(または脳内量)が増加すること、または検出可能な程度に一定濃度存在することを意味する。
【0059】
本発明において、脳滞留性が優れる、脳滞留性が高い、または脳滞留性が向上していることとは、対象物を被験動物に投与した際に、コントロールと比べて、投与から同日経過後の該対象物の脳内濃度(または脳内量)が増加すること、または、当該対象物が脳内で長期間検出可能な程度に一定濃度(量)存在することを意味する。
【0060】
これらの現象は、コントロールと比べて、該対象物の脳内への移行の増加、脳内への蓄積の増加、脳内から脳外への移行の低下、脳内から脳外への排出の低下、および脳内分解の低下のうち、少なくともいずれか1つによって生じる。
【0061】
本発明において、脳滞留性が優れる、脳滞留性が高い、または脳滞留性が向上していることとは、例えば、被験動物に該対象物を投与したときに、コントロールと比べて投与後1~10日、好ましくは投与後2~10日、3~10日、より好ましくは4~10日の該対象物の脳内濃度(量)が高いこと、または当該対象物の脳内濃度(または脳内量)のピークが投与後4日目以降、好ましくは投与後5日目以降、6日目以降、7日目以降、8日目以降、9日目以降、より好ましくは10日目以降であることなどが挙げられる。
【0062】
脳滞留性に優れた抗体、脳滞留性が高い抗体または脳滞留性が向上した抗体は、コントロール抗体と比べて、脳内での抗体濃度(抗体量)が高い抗体、または脳内に長期間存在し得る特徴を備えた抗体であればいずれの抗体であってもよい。
【0063】
例えば、コントロール抗体と比べて、脳内への移行性および/または脳内蓄積性が高い特徴、脳内から脳外への移行性、排出性および/または脳内分解性が低い特徴、ならびに脳内から脳外への移行性、排出性および/または脳内分解性に比べて、脳内への移行性および/または脳内蓄積性が高い特徴などを備えた抗体が挙げられる。
【0064】
したがって、本発明の抗体または該抗体断片としては、抗体または該抗体断片を動物に投与した場合、コントロール抗体と比べて、投与から同日経過後の脳内の抗体濃度(または抗体量)が高い抗体若しくは該抗体断片、または、脳内に長期間存在することができる抗体若しくは該抗体断片などが挙げられる。
【0065】
脳内での抗体濃度(または抗体量)の変化はいかなるものでもよく、例えば、測定期間中に脳内の抗体濃度が一度ピークに達した後、徐々に抗体濃度が低下する場合、脳内の抗体濃度がピークに達した後、その抗体濃度を維持し続けている場合、または抗体投与後に脳内での抗体濃度が増加し続けている場合などが挙げられる。
【0066】
本発明の抗体または該抗体断片としては、例えば、ラットへの投与後4日目若しくは10日目にコントロール抗体よりも脳内の抗体濃度または抗体量が高い抗体、ラットへの投与後4日目から10日目の間に、脳内の抗体濃度若しくは抗体量が維持されている、若しくは増加する抗体、またはラットへの投与後10日目以降にも脳内での存在が明確に確認できる抗体などをいうが、これらに限定されない。
【0067】
コントロール抗体としては、被験抗体と同じ種またはサブクラスの抗体であればいずれの抗体でもよいが、例えば、抗アベルメクチン(AVM)抗体などを用いることができる。
【0068】
本発明において、脳内としては、例えば、脳実質、脳室内、脳脊髄液中などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0069】
免疫電子顕微鏡法により、CADM3の染色は、例えば顆粒細胞の平行線維末端、平行線維末端および平行線維軸索の接触部位、ならびに平行線維末端およびグリア細胞プロセスの接触部位に確認される(非特許文献26)。したがって、本発明のCADM3結合分子の一態様として、神経細胞および/または神経組織内のCADM3に特異的に結合することにより神経細胞結合性を有し、これにより脳滞留性を有する分子が挙げられる。本発明の抗体の一態様として、例えば神経細胞および/または神経組織内のCADM3に結合することにより神経細胞結合性を有し、これにより脳滞留性を有する抗体が挙げられる。
【0070】
本発明において、動物に抗体を投与する方法としては、例えば、静脈投与、脳室内投与、腹腔内投与、皮下投与、皮内投与、経鼻投与、脊髄腔内投与などが挙げられるが、これらの方法に限定されない。
【0071】
本発明において抗体の脳滞留性を測定する方法としては、例えば、動物に抗体を投与して数日経過後に脳組織を回収し、ホモジナイズして遠心分離後の上清中の抗体濃度を測定し、単位脳重量あたりの抗体量を算出する方法、回収した脳組織を用いて公知の免疫学的手法を用いて抗体の存在を検出する方法、標識を施した抗体を動物に投与し、in vivoイメージングシステムで経時的に当該抗体の存在を検出する方法などが挙げられる。
【0072】
本発明の抗体または該抗体断片としては、下記(a)~(x)からなる群より選ばれる1の抗体または抗体断片が挙げられる。これらの中でも、抗体の脳滞留性および脳内抗体量の点から、(d)、(j)、(о)または(t)が好ましい。
(a)VHのCDR1~3のアミノ酸配列が、それぞれ配列番号23、24および25に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのCDR1~3のアミノ酸配列が、それぞれ配列番号28、29および30に記載されるアミノ酸配列を含む抗体、
(b)VHのCDR1~3のアミノ酸配列が、それぞれ配列番号34、35および36に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのCDR1~3のアミノ酸配列が、それぞれ配列番号38、39および40に記載されるアミノ酸配列を含む抗体、
(c)VHHのCDR1~3のアミノ酸配列が、それぞれ配列番号3、4および5に記載されるアミノ酸配列を含む抗体断片、
(d)VHHのCDR1~3のアミノ酸配列が、それぞれ配列番号8、9および10に記載されるアミノ酸配列を含む抗体断片、
(e)VHHのCDR1~3のアミノ酸配列が、それぞれ配列番号13、14および15に記載されるアミノ酸配列を含む抗体断片、
(f)VHHのCDR1~3のアミノ酸配列が、それぞれ配列番号18、19および20に記載されるアミノ酸配列を含む抗体断片、
(g)VHのCDR1~3のアミノ酸配列が、それぞれ配列番号89、90および91に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのCDR1~3のアミノ酸配列が、それぞれ配列番号94、95および96に記載されるアミノ酸配列を含む抗体、
(h)VHのCDR1~3のアミノ酸配列が、それぞれ配列番号99、100および101に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのCDR1~3のアミノ酸配列が、それぞれ配列番号134、135および136に記載されるアミノ酸配列を含む抗体、
(i)VHのCDR1~3のアミノ酸配列が、それぞれ配列番号104、105および106に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのCDR1~3のアミノ酸配列が、それぞれ配列番号134、135および136に記載されるアミノ酸配列を含む抗体、
(j)VHのCDR1~3のアミノ酸配列が、それぞれ配列番号109、110および111に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのCDR1~3のアミノ酸配列が、それぞれ配列番号134、135および136に記載されるアミノ酸配列を含む抗体、
(k)VHのCDR1~3のアミノ酸配列が、それぞれ配列番号114、115および116に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのCDR1~3のアミノ酸配列が、それぞれ配列番号134、135および136に記載されるアミノ酸配列を含む抗体、
(l)VHのCDR1~3のアミノ酸配列が、それぞれ配列番号119、120および121に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのCDR1~3のアミノ酸配列が、それぞれ配列番号134、135および136に記載されるアミノ酸配列を含む抗体、
(m)VHのCDR1~3のアミノ酸配列が、それぞれ配列番号124、125および126に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのCDR1~3のアミノ酸配列が、それぞれ配列番号134、135および136に記載されるアミノ酸配列を含む抗体、
(n)VHのCDR1~3のアミノ酸配列が、それぞれ配列番号129、130および131に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのCDR1~3のアミノ酸配列が、それぞれ配列番号134、135および136に記載されるアミノ酸配列を含む抗体、
(о)VHのCDR1~3のアミノ酸配列が、それぞれ配列番号139、140および141に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのCDR1~3のアミノ酸配列が、それぞれ配列番号164、165および166に記載されるアミノ酸配列を含む抗体、
(p)VHのCDR1~3のアミノ酸配列が、それぞれ配列番号144、145および146に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのCDR1~3のアミノ酸配列が、それぞれ配列番号164、165および166に記載されるアミノ酸配列を含む抗体、
(q)VHのCDR1~3のアミノ酸配列が、それぞれ配列番号149、150および151に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのCDR1~3のアミノ酸配列が、それぞれ配列番号164、165および166に記載されるアミノ酸配列を含む抗体、
(r)VHのCDR1~3のアミノ酸配列が、それぞれ配列番号154、155および156に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのCDR1~3のアミノ酸配列が、それぞれ配列番号164、165および166に記載されるアミノ酸配列を含む抗体、
(s)VHのCDR1~3のアミノ酸配列が、それぞれ配列番号159、160および161に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのCDR1~3のアミノ酸配列が、それぞれ配列番号164、165および166に記載されるアミノ酸配列を含む抗体、
(t)VHのCDR1~3のアミノ酸配列が、それぞれ配列番号169、170および171に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのCDR1~3のアミノ酸配列が、それぞれ配列番号174、175および176に記載されるアミノ酸配列を含む抗体、
(u)前記(a)~(t)に記載の少なくとも1つの抗体または抗体断片と、CADM3への結合について競合する抗体、
(v)前記(a)~(t)に記載のいずれか1つの抗体または抗体断片が結合するエピトープを含むエピトープに結合する抗体、
(w)前記(a)~(t)に記載のいずれか1つの抗体または抗体断片が結合するエピトープと同じエピトープに結合する抗体、
(x)前記(a)~(t)に記載のいずれか1つの抗体または抗体断片のアミノ酸配列と85%以上の相同性を有するアミノ酸配列を含む抗体。
【0073】
本発明の抗体としては、上記(a)~(t)に記載されるいずれか1つの抗体または抗体断片のVHのCDR1~3およびVLのCDR1~3のアミノ酸配列と、それぞれ85%以上、好ましくは90%以上の相同性を示す抗体のVHのCDR1~3およびVLのCDR1~3のアミノ酸配列を有する抗体を含む。90%以上の相同性としてより好ましくは、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%および99%の相同性などが挙げられる。
【0074】
本発明において、上記(a)~(t)に記載される抗体または抗体断片の一態様としては、それぞれヒト抗CADM3モノクローナル抗体として、CADM301抗体、CADM3102抗体、CADM3219抗体、CADM3301抗体、CADM3309抗体、CADM3312抗体、CADM3314抗体、CADM3316抗体、CADM3349抗体、CADM3351抗体、CADM3402抗体、CADM3404抗体、CADM3432抗体、CADM3448抗体、CADM3458抗体およびCADM3501抗体ならびにアルパカ抗CADM3モノクローナルVHH抗体として、iCADM3-3R1-L5抗体、iCADM3-3R1-L8抗体、iCADM3-3R1-L10抗体およびiCADM3-3R1-L11抗体が挙げられる。これらの中でも、抗体の脳滞留性および脳内抗体量の点から、CADM3312抗体、CADM3402抗体、CADM3502抗体またはiCADM3-3R1-L8抗体が好ましい。
【0075】
他には、上述のモノクローナル抗体から遺伝子組換え技術により作製されたヒト型キメラ抗体、ヒト化抗体などが挙げられる。具体的には、iCADM3-3R1-L8_01ヒト化抗体、iCADM3-3R1-L8_02ヒト化抗体、iCADM3-3R1-L8_03ヒト化抗体、iCADM3-3R1-L8_04ヒト化抗体、iCADM3-3R1-L11_01ヒト化抗体、iCADM3-3R1-L11_02ヒト化抗体、iCADM3-3R1-L11_03ヒト化抗体、iCADM3-3R1-L11_04ヒト化抗体、iCADM3-3R1-L11_05ヒト化抗体、iCADM3-3R1-L11_06ヒト化抗体なども挙げられる。
【0076】
本発明において上記(u)の抗体とは、上記(a)~(t)に記載のいずれか1つの抗体または抗体断片を第1抗体とした時に、該第1抗体とCADM3との結合を阻害する第2抗体をいう。
【0077】
本発明において上記(w)の抗体とは、上記(a)~(t)に記載のいずれか1つの抗体または抗体断片を第1抗体、および第1抗体が結合するエピトープを第1エピトープとした場合、当該第1エピトープを含む、第2エピトープに結合する第2抗体をいう。
【0078】
また、本発明の上記(x)の抗体とは、上記(a)~(t)に記載のいずれか1つの抗体または抗体断片を第1抗体、および第1抗体が結合するエピトープを第1エピトープとした場合に、当該第1エピトープに結合する第2抗体をいう。
【0079】
また、本発明の抗体または該抗体断片として、具体的には、下記(1)~(31)からなる群より選ばれる1の抗体または抗体断片も挙げられる。これらの中でも、抗体の脳滞留性および脳内抗体量の点から、(4)、(20)、(25)または(30)が好ましい。
(1)VHのアミノ酸配列が配列番号22に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのアミノ酸配列が配列番号27に記載されるアミノ酸配列を含む抗体、
(2)VHのアミノ酸配列が配列番号32に記載されるアミノ酸配列含み、かつVLのアミノ酸配列が配列番号37に記載されるアミノ酸配列を含む抗体、
(3)VHHのアミノ酸配列が配列番号2に記載されるアミノ酸配列を含む抗体断片、
(4)VHHのアミノ酸配列が配列番号7に記載されるアミノ酸配列を含む抗体断片、
(5)VHHのアミノ酸配列が配列番号12に記載されるアミノ酸配列を含む抗体断片、
(6)VHHのアミノ酸配列が配列番号17に記載されるアミノ酸配列を含む抗体断片、
(7)VHHのアミノ酸配列が配列番号68に記載されるアミノ酸配列を含む抗体断片、
(8)VHHのアミノ酸配列が配列番号70に記載されるアミノ酸配列を含む抗体断片、
(9)VHHのアミノ酸配列が配列番号72に記載されるアミノ酸配列を含む抗体断片、
(10)VHHのアミノ酸配列が配列番号74に記載されるアミノ酸配列を含む抗体断片、
(11)VHHのアミノ酸配列が配列番号76に記載されるアミノ酸配列を含む抗体断片、
(12)VHHのアミノ酸配列が配列番号78に記載されるアミノ酸配列を含む抗体断片、
(13)VHHのアミノ酸配列が配列番号80に記載されるアミノ酸配列を含む抗体断片、
(14)VHHのアミノ酸配列が配列番号82に記載されるアミノ酸配列を含む抗体断片、
(15)VHHのアミノ酸配列が配列番号84に記載されるアミノ酸配列を含む抗体断片、
(16)VHHのアミノ酸配列が配列番号86に記載されるアミノ酸配列を含む抗体断片、
(17)VHのアミノ酸配列が配列番号88に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのアミノ酸配列が配列番号93に記載されるアミノ酸配列を含む抗体、
(18)VHのアミノ酸配列が配列番号98に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのアミノ酸配列が配列番号133に記載されるアミノ酸配列を含む抗体、
(19)VHのアミノ酸配列が配列番号103に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのアミノ酸配列が配列番号133に記載されるアミノ酸配列を含む抗体、
(20)VHのアミノ酸配列が配列番号108に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのアミノ酸配列が配列番号133に記載されるアミノ酸配列を含む抗体、
(21)VHのアミノ酸配列が配列番号113に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのアミノ酸配列が配列番号133に記載されるアミノ酸配列を含む抗体、
(22)VHのアミノ酸配列が配列番号118に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのアミノ酸配列が配列番号133に記載されるアミノ酸配列を含む抗体、
(23)VHのアミノ酸配列が配列番号123に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのアミノ酸配列が配列番号133に記載されるアミノ酸配列を含む抗体、
(24)VHのアミノ酸配列が配列番号128に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのアミノ酸配列が配列番号133に記載されるアミノ酸配列を含む抗体、
(25)VHのアミノ酸配列が配列番号138に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのアミノ酸配列が配列番号163に記載されるアミノ酸配列を含む抗体、
(26)VHのアミノ酸配列が配列番号143に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのアミノ酸配列が配列番号163に記載されるアミノ酸配列を含む抗体、
(27)VHのアミノ酸配列が配列番号148に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのアミノ酸配列が配列番号163に記載されるアミノ酸配列を含む抗体、
(28)VHのアミノ酸配列が配列番号153に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのアミノ酸配列が配列番号163に記載されるアミノ酸配列を含む抗体、
(29)VHのアミノ酸配列が配列番号158に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのアミノ酸配列が配列番号163に記載されるアミノ酸配列を含む抗体、
(30)VHのアミノ酸配列が配列番号168に記載されるアミノ酸配列を含み、かつVLのアミノ酸配列が配列番号173に記載されるアミノ酸配列を含む抗体、
(31)前記(1)~(30)に記載のいずれか1つの抗体または抗体断片のアミノ酸配列と85%以上の相同性を有するアミノ酸配列を含む抗体。
【0080】
本発明の抗体としては、上記(1)~(30)に記載されるいずれか1つの抗体または抗体断片のVHおよびVLのアミノ酸配列と、それぞれ85%以上、好ましくは90%以上の相同性を示す抗体のVHおよびVLのアミノ酸配列を有する抗体を含む。90%以上の相同性としてより好ましくは、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%および99%の相同性などが挙げられる。
【0081】
本発明において、上記(1)~(31)に記載される抗体または抗体断片の一態様としては、それぞれヒト抗CADM3モノクローナル抗体として、CADM301抗体、CADM3102抗体、CADM3219抗体、CADM3301抗体、CADM3309抗体、CADM3312抗体、CADM3314抗体、CADM3316抗体、CADM3349抗体、CADM3351抗体、CADM3402抗体、CADM3404抗体、CADM3432抗体、CADM3448抗体、CADM3458抗体およびCADM3501抗体、ならびにアルパカ抗CADM3モノクローナルVHH抗体として、iCADM3-3R1-L5抗体、iCADM3-3R1-L8抗体、iCADM3-3R1-L10抗体およびiCADM3-3R1-L11抗体が挙げられる。これらの中でも、抗体の脳滞留性および脳内抗体量の点から、CADM3312抗体、CADM3402抗体、CADM3502抗体またはiCADM3-3R1-L8抗体が好ましい。
【0082】
他には、上述のモノクローナル抗体から遺伝子組換え技術により作製されたヒト型キメラ抗体、ヒト化抗体などが挙げられる。具体的には、配列番号177のアミノ酸配列の6番目、27番目の、37番目、44番目、45番目、47番目、49番目、79番目および98番目から選ばれる少なくとも1つのアミノ酸残基が置換されたヒト化抗体、配列番号178番目のアミノ酸配列の1番目、12番目、14番目、27番目、28番目、29番目、37番目、44番目、45番目、46番目、47番目、49番目、78番目、96番目および97番目から選ばれる少なくとも1つのアミノ酸残基が置換されたヒト化抗体、配列番号177のアミノ酸配列の6番目のアミノ酸残基をGluへ、27番目のアミノ酸残基をArgへ、37番目のアミノ酸残基をPheへ、44番目のアミノ酸残基をGluへ、45番目のアミノ酸残基をArgへ、47番目のアミノ酸残基をPheへ、49番目のアミノ酸残基をAlaへ、79番目のアミノ酸残基をValへ、および98番目のアミノ酸残基をAlaへ置換するアミノ酸残基置換のうち、少なくとも1つのアミノ酸残基置換を含むヒト化抗体、配列番号178番目のアミノ酸配列の1番目のアミノ酸残基をGlnへ、12番目のアミノ酸残基をValへ、14番目のアミノ酸残基をAlaへ、27番目のアミノ酸残基をSerへ、28番目のアミノ酸残基をIleへ、29番目のアミノ酸残基をPheへ、37番目のアミノ酸残基をTyrへ、44番目のアミノ酸残基をGlnへ、45番目のアミノ酸残基をArgへ、46番目のアミノ酸残基をGlyへ、47番目のアミノ酸残基をLeuへ、49番目のアミノ酸残基をAlaへ、78番目のアミノ酸残基をValへ、96番目のアミノ酸残基をAsn、および97番目のアミノ酸残基をAlaへ置換するアミノ酸残基置換のうち、少なくとも1つのアミノ酸残基置換を含むヒト化抗体、iCADM3-3R1-L8_01ヒト化抗体、iCADM3-3R1-L8_02ヒト化抗体、iCADM3-3R1-L8_03ヒト化抗体、iCADM3-3R1-L8_04ヒト化抗体、iCADM3-3R1-L11_01ヒト化抗体、iCADM3-3R1-L11_02ヒト化抗体、iCADM3-3R1-L11_03ヒト化抗体、iCADM3-3R1-L11_04ヒト化抗体、iCADM3-3R1-L11_05ヒト化抗体、iCADM3-3R1-L11_06ヒト化抗体なども挙げられる。
【0083】
本発明においてEUインデックスとは、シーケンス・オブ・プロテインズ・オブ・イムノロジカル・インタレスト第5版(1991)に示されるアミノ酸残基の位置をいう。以下に示すアミノ酸残基の位置は、特に記載の無い場合は全てEUインデックスに記載されるアミノ酸残基の位置を示す。
【0084】
抗体分子はイムノグロブリン(Ig)とも称され、その基本的な構造は重鎖(Heavy chain;H鎖)および軽鎖(Light chain;L鎖)と呼ばれるポリペプチドをそれぞれ二つずつ有する四量体である。
【0085】
また、H鎖はN末端側よりH鎖可変領域(VHとも表記される)、H鎖定常領域(CHとも表記される)、L鎖はN末端側よりL鎖可変領域(VLとも表記される)、L鎖定常領域(CLとも表記される)の各領域により、それぞれ構成される。
【0086】
CHは各サブクラスごとに、α、δ、ε、γおよびμ鎖がそれぞれ知られている。CHはさらに、N末端側よりCH1ドメイン、ヒンジドメイン、CH2ドメインおよびCH3ドメインの各ドメインにより構成される。
【0087】
ドメインとは、抗体分子の各ポリペプチドを構成する機能的な構造単位をいう。また、CH2ドメインおよびCH3ドメインを併せてFc(Fragment,crystallizable)領域または単にFcという。CLは、Cλ鎖およびCκ鎖が知られている。
【0088】
CHがα、δ、ε、γおよびμ鎖である抗体のサブクラスは、それぞれIgA、IgD、IgE、IgGおよびIgMという。各抗体のサブクラスには動物によってアイソタイプが存在するものがあり、ヒトではIgAにはIgA1およびIgA2、IgGにはIgG1、IgG2、IgG3およびIgG4のアイソタイプが存在する。
【0089】
本発明におけるCH1ドメイン、ヒンジドメイン、CH2ドメイン、CH3ドメインおよびFc領域は、EUインデックスにより、N末端からのアミノ酸残基の番号で特定することができる。
【0090】
具体的には、CH1はEUインデックス118~215番のアミノ酸配列、ヒンジはEUインデックス216~230番のアミノ酸配列、CH2はEUインデックス231~340番のアミノ酸配列、CH3はEUインデックス341~447番のアミノ酸配列、およびFc領域はEUインデックス231~447番のアミノ酸配列とそれぞれ特定される。
【0091】
本発明の抗体としては、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体およびオリゴクローナル抗体のいずれの抗体をも包含する。ポリクローナル抗体とは、異なるクローンの抗体産生細胞が分泌する抗体分子の集団をいう。モノクローナル抗体とは、単一クローンの抗体産生細胞が分泌する抗体であり、ただ一つのエピトープ(抗原決定基ともいう)を認識し、モノクローナル抗体を構成するアミノ酸配列(一次配列)が均一である抗体をいう。オリゴクローナル抗体とは、複数の異なるモノクローナル抗体を混合した抗体分子の集団をいう。
【0092】
本発明におけるモノクロ-ナル抗体としては、ハイブリドーマにより産生される抗体、または抗体遺伝子を含む発現ベクターで形質転換した形質転換体により産生される遺伝子組換え抗体が挙げられる。
【0093】
エピトープとは、モノクローナル抗体が認識し結合する、単一のアミノ酸配列、アミノ酸配列からなる立体構造、翻訳後修飾されたアミノ酸配列および翻訳後修飾されたアミノ酸配列からなる立体構造などが挙げられる。
【0094】
翻訳後修飾されたアミノ酸配列としては、糖鎖がOH置換基を有するTyrおよびSerに結合したO結合型糖鎖、糖鎖がNH置換基を有するGlnおよびAsnに結合したN結合型糖鎖、ならびに硫酸分子がOH置換基を有するTyrに結合し、チロシン硫酸化されたアミノ酸配列が挙げられる。
【0095】
本発明の抗体が結合するCADM3のエピトープは、CADM3の一部のドメインを欠失させた欠損体、CADM3の一部のドメインを他のタンパク質由来のドメインと置換させた変異体、CADM3の部分ペプチド断片などを用いて抗体の結合実験を行うことにより決定することができる。また、上記欠損体または変異体の発現細胞を用いて抗体の結合実験を行うこともできる。
【0096】
または、本発明の抗体が結合するCADM3のエピトープは、タンパク質分解酵素にて消化したCADM3のペプチド断片に本発明の抗体を添加し、既知の質量分析法を用いてエピトープマッピングを行うことによっても決定することができる。
【0097】
本発明の抗体としては、遺伝子組換え技術によって作製されるマウス抗体、ラット抗体、ハムスター抗体、ラビット抗体、ラマ抗体、ラクダ抗体、アルパカ抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体(「CDR移植抗体」ともいう)、ヒト抗体などの遺伝子組換え抗体も含まれる。
【0098】
本発明において、キメラ抗体とは、VHおよびVLと、CHおよびCLとが異なる動物種に由来する抗体をいう。ヒト以外の動物(非ヒト動物)の抗体のVHおよびVLと、ヒト抗体のCHおよびCLからなる抗体は、ヒト型キメラ抗体、マウス以外の動物の抗体のVHおよびVLと、マウス抗体のCHおよびCLからなる抗体は、マウス型キメラ抗体といい、その他のキメラ抗体も同様の方法で命名される。
【0099】
非ヒト動物としては、マウス、ラット、ハムスター、ラビット、ラマ、ラクダ、アルパカなど、ハイブリドーマを作製する、または抗体ファージライブラリを作製することが可能な動物であれば、いかなるものも用いることができる。
【0100】
ハイブリドーマとは、非ヒト動物に抗原を免疫して取得されたB細胞と、マウスなどに由来するミエローマ細胞とを細胞融合させて得られる、所望の抗原特異性を有したモノクローナル抗体を産生する細胞をいう。
【0101】
抗体ファージライブラリは免疫グロブリン可変領域の遺伝子をファージにクローニングして、その表面に抗原結合分子を発現させて作製したライブラリをいう。使用されるファージはM13ファージなどが挙げられるが、特に限定されるものではない。
【0102】
ファージに提示される抗原結合分子は、いかなる形態でもよいが、scFv、Fab、VHHなどの抗体断片であることが好ましい。
【0103】
本発明において、抗体ファージライブラリは、免疫ライブラリ、ナイーブライブラリおよび合成ライブラリのうちいずれのライブラリでもよい。
【0104】
免疫ライブラリは、抗原で免疫された動物または患者のリンパ球由来の抗体遺伝子をもとに構築された抗体ファージライブラリをいう。ナイーブライブラリは、正常の動物または健常人のリンパ球由来の抗体遺伝子をもとに構築された抗体ファージライブラリをいう。合成ライブラリは、ゲノムDNAにおけるV遺伝子または再構築された機能的なV遺伝子のCDRを、適当な長さのランダムなアミノ酸配列をコードするオリゴヌクレオチドで置換したライブラリをいう。
【0105】
キメラ抗体の作製方法として、以下にヒト型キメラ抗体の作製方法を記載する。その他のキメラ抗体についても同様の方法で作製することができる。
【0106】
ヒト型キメラ抗体は、モノクローナル抗体を生産する非ヒト動物細胞由来のハイブリドーマより、VHおよびVLをコードするcDNAを取得し、ヒト抗体のCHおよびCLをコードするDNAを有する動物細胞用発現ベクターにそれぞれ挿入してヒト型キメラ抗体発現ベクターを構築し、動物細胞へ導入することにより発現させ、製造することができる。
【0107】
また、非ヒト動物由来の抗体ファージライブラリよりVHおよびVLをコードする遺伝子をクローニングし、ヒト抗体のCHおよびCLをコードするDNAを有する動物細胞用発現ベクターにそれぞれ挿入してヒト型キメラ抗体発現ベクターを構築し、動物細胞へ導入することにより発現させ、製造することもできる。
【0108】
ヒト化抗体とは、非ヒト動物抗体のVHおよびVLのCDRのアミノ酸配列をヒト抗体のVHおよびVLの対応するCDRに移植した抗体をいう。VHおよびVLのCDR以外の領域はFRと称される。
【0109】
ヒト化抗体は、非ヒト動物抗体のVHのCDRのアミノ酸配列および任意のヒト抗体のVHのFRのアミノ酸配列からなるVHのアミノ酸配列をコードするcDNAならびに非ヒト動物抗体のVLのCDRのアミノ酸配列および任意のヒト抗体のVLのFRのアミノ酸配列からなるVLのアミノ酸配列をコードするcDNAを構築し、ヒト抗体のCHおよびCLをコードするDNAを有する動物細胞用発現ベクターにそれぞれ挿入してヒト化抗体発現ベクターを構築し、動物細胞へ導入することにより発現させ、製造することができる。
【0110】
ヒト抗体は、元来、ヒト体内に天然に存在する抗体をいうが、ヒト抗体ファージライブラリまたはヒト抗体産生トランスジェニック動物から得られる抗体なども含まれる。
【0111】
ヒト抗体は、ヒトイムノグロブリン遺伝子を保持するマウス(Tomizuka K. et al., Proc Natl Acad Sci U S A. 97, 722-7, 2000.)に所望の抗原を免疫することにより、取得することができる。また、ヒト由来のB細胞から抗体遺伝子を増幅したファージディスプレイライブラリを用いて所望の結合活性を有するヒト抗体を選択することにより、免疫を行わずにヒト抗体を取得することができる(Winter G. et al., Annu Rev Immunol.12:433-55. 1994)。
【0112】
さらに、EBウイルスを用いてヒトB細胞を不死化することにより、所望の結合活性を有するヒト抗体を生産する細胞を作製し、ヒト抗体を取得することができる(Rosen A. et al., Nature 267, 52-54.1977)。
【0113】
ヒト抗体ファージライブラリは、ヒト(健常人または患者)のリンパ球から調製した抗体遺伝子をファージ遺伝子に挿入することによりFab、scFv、およびVHHなどの抗体断片を表面に発現させたファージのライブラリである。該ライブラリより、抗原を固定化した基質に対する結合活性を指標として所望の抗原結合活性を有する抗体断片を発現しているファージを回収することができる。該抗体断片は、更に遺伝子工学的手法により、2本の完全なH鎖および2本の完全なL鎖からなるヒト抗体分子へも変換することができる。
【0114】
ヒト抗体産生トランスジェニック動物は、ヒト抗体遺伝子が宿主動物の染色体内に組込まれた動物をいう。具体的には、マウスES細胞へヒト抗体遺伝子を導入し、該ES細胞を他のマウスの初期胚へ移植後、発生させることによりヒト抗体産生トランスジェニック動物を作製することができる。
【0115】
ヒト抗体産生トランスジェニック動物からのヒト抗体の作製は、通常のヒト以外の哺乳動物で行われているハイブリドーマ作製方法により得たヒト抗体産生ハイブリドーマを培養して培養物中にヒト抗体を産生蓄積させ、該培養物から抗体を精製することにより行うことができる。
【0116】
本発明の抗体は、重鎖のみで構成される重鎖抗体を包含する。重鎖抗体は、ラマ、ラクダ、アルパカなどのラクダ科の動物から取得される抗体、または該抗体をもとに作製した遺伝子組換え抗体をいう。
【0117】
本発明において抗体断片は、抗体の断片であって、かつ抗原結合活性を有するものをいう。例えば、Fab、Fab’、F(ab’)、scFv、diabody、dsFv、複数のCDRを含むペプチド、およびVHHなどが挙げられる。また、本発明の抗体断片には、該抗体断片に抗体の定常領域またはFcの全長若しくは一部を融合させた抗体断片、定常領域またはFcを含む抗体断片など、抗体の部分断片を含みかつCADM3結合活性を有するものであればいずれの抗体断片も含まれる。
【0118】
Fabは、IgG抗体をタンパク質分解酵素パパインで処理して得られる断片のうち(H鎖の224番目のアミノ酸残基で切断される)、H鎖のN末端側約半分とL鎖全体がジスルフィド結合(S-S結合)で結合した、分子量約5万の抗原結合活性を有する抗体断片である。
【0119】
F(ab’)は、IgGをタンパク質分解酵素ペプシンで処理して得られる断片のうち(H鎖の234番目のアミノ酸残基で切断される)、Fabがヒンジ領域のS-S結合を介して結合されたものよりやや大きい、分子量約10万の抗原結合活性を有する抗体断片である。
【0120】
Fab’は、上記F(ab’)のヒンジ領域のS-S結合を切断した分子量約5万の抗原結合活性を有する抗体断片である。
【0121】
scFvは、1本のVHと1本のVLとを4個のGlyおよび1個のSer残基からなるリンカー(G4S)を任意の個数つなげたリンカーペプチドなどの適当なペプチドリンカー(P)を用いて連結した、VH-P-VLまたはVL-P-VHポリペプチドで、抗原結合活性を有する抗体断片である。
【0122】
Diabodyは、抗原結合特異性の同じまたは異なるscFvが2量体を形成した抗体断片で、同じ抗原に対する2価の抗原結合活性または異なる抗原に対する特異的な抗原結合活性を有する抗体断片である。
【0123】
dsFvは、VHおよびVL中のそれぞれ1アミノ酸残基をシステイン残基に置換したポリペプチドを該システイン残基間のS-S結合を介して結合させたものであり、抗原結合活性を有する抗体断片である。
【0124】
CDRを含むペプチドは、VHまたはVLのCDRの少なくとも1領域以上を含んで構成されるものであり、抗原結合活性を有する抗体断片である。複数のCDRを含むペプチドは、CDR同士を直接または適当なペプチドリンカーを介して結合させることができる。本発明のCDRを含むペプチドとしては、本発明の抗体由来の6個のCDRを含むペプチドがあげられる。
【0125】
該CDRを含むペプチドは、本発明の抗体のVHおよびVLのCDRをコードするDNAを構築し、該DNAを原核生物用発現ベクターまたは真核生物用発現ベクターに挿入し、該発現ベクターを原核生物または真核生物へ導入することにより発現させ、製造することができる。また、該CDRを含むペプチドは、Fmoc法、またはtBoc法などの化学合成法によって製造することもできる。
【0126】
VHHは、重鎖抗体の可変領域であり、nanobodyともいう。本発明の抗体断片は、上述したいずれかの抗体断片または該部分断片を含みかつCADM3結合活性を有する抗体断片であればいずれのものも含む。
【0127】
本発明において、一つの抗原結合部位を有する抗体または該抗体断片を一価抗体という。一価抗体のフォーマットとしては、国際公開第2014/054804号、国際公開第2011/090754号、国際公開第2007/048037号、および国際公開第2012/116927号などに記載される、抗原結合部位を一つ有する抗体または該抗体断片のフォーマットなどが挙げられる。
【0128】
本発明において、3つ以上の異なる抗原またはエピトープに結合する1分子の抗体または該抗体断片をマルチスペシフィック抗体という。また、本発明において、2つの異なる抗原またはエピトープに結合する1分子の抗体または該抗体断片をバイスペシフィック抗体という。
【0129】
マルチスペシフィック抗体またはバイスペシフィック抗体のフォーマットとしては、国際公開第2009/131239号、国際公開第2014/054804号、国際公開第01/077342号、米国特許出願公開2007/0071675号明細書、国際公開2007/024715号、Wu et al.,[Nature Biotechnology,2007,25(11),p.1290-1297]、Labrijn et al., [PNAS 2013, vol.110, no.13, p5145-5150]、Jong et al., [http://dx.doi.org/10.1371/journal.pbio.1002344]、Kontermann et al., [mAbs 2012, vol.4, issue2, p182-197]、Spiess et al., [Molecular Immunology 67 (2015) 95-106]、 Ridgway et al., [Protein engineering, 1996 vol.9 no.7 pp617-621、国際公開第2009/080251号、国際公開第2010/151792号および国際公開第2014/033074号などに記載されるフォーマットなどが挙げられる。
【0130】
バイスペシフィック抗体として具体的には、以下に記載するバイスペシフィック抗体などが挙げられる。
(1)抗体の二つの重鎖のうち、一方の重鎖(重鎖A)のCH3にS354C/T366W、もう一方の重鎖(重鎖B)のCH3にY349C/T366S/L368A/Y407Vのアミノ酸改変を加えたバイスペシフィック抗体。
(2)抗体のC末端に抗体断片を融合させたバイスペシフィック抗体。
(3)抗体のN末端に抗体断片を融合させたバイスペシフィック抗体。
【0131】
上記(1)に記載するバイスペシフィック抗体は、重鎖AのVHを含む抗原結合部位がCADM3に結合し、重鎖BのVHを含む抗原結合部位が脳に存在する抗原に結合するバイスペシフィック抗体でもよいし、その逆でもよい。
【0132】
上記(2)に記載するバイスペシフィック抗体としては、例えば、抗体を構成する二つの重鎖の一方のC末端に抗体断片が結合しているバイスペシフィック抗体、抗体を構成する二つの重鎖の両方のC末端に抗体断片が結合しているバイスペシフィック抗体、抗体を構成する二つの軽鎖の一方のC末端に抗体断片が結合しているバイスペシフィック抗体、抗体を構成する二つの軽鎖の両方のC末端に抗体断片が結合しているバイスペシフィック抗体、抗体を構成する二つの軽鎖のC末端および二つの重鎖のC末端のいずれにも抗体断片が結合しているバイスペシフィック抗体などが挙げられる。なお、抗体のC末端および抗体断片の間には適当なリンカーが存在していてもよい。
【0133】
上記(2)に記載するバイスペシフィック抗体が有する抗体断片は、scFv、FabおよびVHHなどが好ましいが、特にこれらに限定されない。
【0134】
上記(2)に記載するバイスペシフィック抗体は、N末端の抗原結合部位がCADM3に結合し、C末端の抗原結合部位が脳に存在する抗原に結合するバイスペシフィック抗体でもよいし、その逆でもよい。
【0135】
上記(3)に記載するバイスペシフィック抗体は、抗体を構成する二つの重鎖または軽鎖の少なくともいずれか1つのN末端に抗体断片が結合しているバイスペシフィック抗体をいう。また、抗体の重鎖および/または軽鎖のN末端と抗体断片との間に適当なリンカーが存在していてもよい。上記(3)に記載するバイスペシフィック抗体が有する抗体断片は、scFv、FabおよびVHHなどが好ましいが、特にこれらに限定されない。
【0136】
また、上記(3)に記載するバイスペシフィック抗体としては、重鎖のN末端からVH-CH1-VH-CH1-ヒンジ-CH2-CH3という構造を有するバイスペシフィック抗体、および上記重鎖構造を有し、かつVHとVHがそれぞれVLと抗原結合部位を形成しているバイスペシフィック抗体などが挙げられる。VHおよびVHが抗原結合部位を形成するVLは、同じアミノ酸配列であってもよいし、異なるアミノ酸配列であってもよい。
【0137】
本発明において、マルチスペシフィック抗体またはバイスペシフィック抗体は、CADM3に結合するマルチスペシフィック抗体およびバイスペシフィック抗体であればいかなる抗体でもよい。なかでも、CADM3および脳に存在する抗原に結合するマルチスペシフィック抗体またはバイスペシフィック抗体が好ましく、CADM3に結合する抗原結合部位および脳に存在する抗原に結合する抗原結合部位を含むマルチスペシフィック抗体またはバイスペシフィック抗体がより好ましい。
【0138】
本発明において、脳に存在する抗原とは、タンパク質、糖鎖、および脂質などが挙げられ、なかでもタンパク質であることが好ましい。
【0139】
脳に存在するタンパク質としては、例えば、Prion、5T4、AFP、ADAM10、ADAM12、ADAM17、AFP、AXL、BCAM、BSG、C5、C5R、CA9、CA72-4、CADM3、CCL11、CCL2、CCR1、CCR4、CCR5、CCR6、CD2、CD3E、CD4、CD5、CD6、CD8、CD11、CD18、CD19、CD20、CD22、CD24、CD25、CD29、CD30、CD32B、CD33、CD37、CD38、CD40、CD40LG、CD44、CD47、CD52、CD55SC1、CD56、CD66E、CD71、CD72、CD74、CD79a、CD79b、CD80、CD86、CD95、CD98、CD137、CD147、CD138、CD168、CD200、CD248、CD254、CD257、CDH2、CDH3、CEA、CEACAM1、CEACAM5、CEACAM6、CEACAM8、Claudin3、Claudin4、CSF-1、CSF2RA、CSPG-4、CSPG5、CTLA4、CRF-1、Cripto、CXCR4、CXCR5、DJ-1、DLL4、DR4、DR5、ED-B、EFNA2、EGFR、EGFRvIII、ETBR、ENPP3、EPCAM、EphA2、EphA4、EPOR、ERBB2、ERBB3、ERBB4、FAPα、FAS、FcγRI、FCER2、FGFR1、FGFR2、FGFR3、FGFR4、FLT1、FOLH1、FOLR1、GDF2、GFR、GLP1R、glypican-3、GPNMB、GRP78、HAPLN4、HB-EGF、HGF、HLA-DRβ、HMGB1、ICAM1、ICAM5、IFNA1、IFNB、IgE、IgE-Fc、IGF1R、IL10、IL12B、IL13、IL15、IL17A、IL1A、IL1B、IL2RA、IL4、IL5、IL5RA、IL6、IL6R、IL9、IL2Rα、IL2Rβ、IL2Rγ、INSR、ITGA2、ITGA2B2、ITGB3、ITGA4、ITGB7、ITGA5、ITGAL、ITGAV、ITGB3、ITGB2、KDR、L1CAM、LAG3、LRP3、mesothelin、MAG、MMP14、MMP15、MOG、MST1R、MSTN、MUC1、MUC4、MUC16、MUC5AC、myostatin、NECTIN4、NCAN、NGF、NMDAR、NOTCH、NRG1、NRP、OX40、OX40L、P2Y6、PAR1、PDGFA、PDGFB、PDGFRA、PDGFRB、PD1、PDL1、PLP1、PSCA、PTPRZ、RET、RGMA、SLAM7、SLC44A4、TAG-72、TCR、TGFB1、TGFB2、TGFBR、TIMP2、TLR9、TNF、TNFR、TNFRSF10A、TNFRSF10B、TNFRSF12A、TNFSF13、TNFSF14、TNFSF2、TNFSF7、TREM2、TRAILR2、TRKA、TRKB、TRKC、Transferrin、VEGF、VEGFR、VLA-4、CGRP、alpha-synuclein、TDP-43、Tau、FUS、Amyloid-beta(Aβ)、APP、BACE1、Presenilin、LINGO-1、Nogo、Troy、polyQ、androgen receptor、huntingtin、ataxin 1、ataxin 2、Phospho-Tau、またはPhospho-alpha-synucleinなどが挙げられるが、これらのタンパク質に限定されるものではない。
【0140】
脳に存在する糖鎖としては、例えば、Lewis-x、Lewis-y、またはCD15などが挙げられるが、これらの糖鎖に限定されるものではない。
【0141】
脳に存在する脂質としては、例えば、GD1a、GD2、GD3、GM1、GM2、GM3またはPhosphatidylserineなどが挙げられるが、これらの脂質に限定されるものではない。
【0142】
本発明の抗体または該抗体断片は、翻訳後修飾されたいかなるアミノ酸を含む抗体をも包含する。翻訳後修飾としては、例えば、H鎖のC末端におけるリジン残基の欠失[リジン・クリッピング(lysine clipping)]、およびポリペプチドのN末端におけるグルタミン残基のピログルタミン(pyroGlu)への変換などが挙げられる[Beck et al, Analytical Chemistry, 85, 715-736(2013)]。
【0143】
本発明の抗体または該抗体断片は、Fc領域のアミノ酸改変を行っていてもよい。Fc領域のアミノ酸改変としては、例えば、抗体を安定化させるため、または血中半減期を制御するためのアミノ酸改変などが挙げられる。Fc領域のアミノ酸改変としては、具体的には例えば、国際公開第2006/033386号、国際公開第2006/075668号、国際公開第2011/122011号、および国際公開第2009/125825号などが挙げられる。
【0144】
本発明の抗体または該抗体断片は、抗体または該抗体断片に所望の分子を結合させることで修飾された融合抗体または該融合抗体断片も包含する。抗体を修飾する方法は特に限定されず、所望のアミノ酸残基および糖鎖を修飾できるものであればいずれの方法も用いることができる。
【0145】
例えば、化学反応を利用した化学修飾[抗体工学入門、地人書館(1994);Kolb et al., Angew Chem Int Ed Engl. 40. 2004-21, 2001]や、遺伝子組換え技術を利用し、組換えタンパク質発現ベクターを適当な宿主細胞へ導入して発現させる遺伝子工学的手法での修飾などが挙げられる。
【0146】
本発明において、抗体または該抗体断片を修飾する分子としては、例えば、親水性高分子、両親媒性高分子、および機能性分子などが挙げられる。前記親水性高分子、両親媒性高分子としては、例えば、ポリオキシアルキレン、ポリオールまたは多糖を含む分子などが挙げられる。
【0147】
本発明において、抗体または該抗体断片に化学修飾によって他の分子を修飾する場合、その修飾部位としては、抗体または抗体断片の定常領域が挙げられ、特にC末端またはS-S結合部位のCys残基が好ましい。遺伝子工学的手法により、後から化学修飾可能な残基を、予め抗体または抗体断片の任意の位置に導入することも可能である。
【0148】
また、遺伝子工学的手法により、直接他の分子を修飾する場合、その修飾部位としては、抗体または抗体断片の軽鎖または重鎖のN末端またはC末端が挙げられる。
【0149】
ポリオキシアルキレンとしては、例えば、直鎖または分岐鎖からなるポリエチレングリコール(polyethylene glycol;PEG)、ポリプロピレングリコール、ポリプロピレンエチレングリコールなどが挙げられる。
【0150】
ポリオールまたは多糖を含む分子としては、例えば、アミロース、デキストラン、プルラン、グリコーゲンなどのグルコースが重合した直鎖または分岐状の多糖などが挙げられる。また、ホモ多糖類に限らず、ヘテロ多糖類であってもよい。
【0151】
親水性高分子または両親媒性高分子を含む分子の分子量は特に限定されないが、100Da以上であることが好ましく、例えば、100Da~100kDaであることが好ましい。
【0152】
機能性分子としては、例えば、抗原結合分子、抗体結合分子の断片、薬物、生理活性ペプチド、生理活性タンパク質、核酸、放射性標識化合物、糖鎖、脂質、蛍光化合物などが挙げられる。抗原結合分子などの機能性分子で修飾された結果、二重特異性を有する分子は、バイスペシフィック抗体である。
【0153】
抗原結合分子としては、例えば、抗体、受容体、リガンドなどが挙げられる。
【0154】
抗原結合分子の断片としては、前記抗原結合分子の断片であって、抗原結合活性を有するものであれば、いかなるものでもよい。
【0155】
薬物としては、例えば、アルキル化剤、ニトロソウレア剤、代謝拮抗剤、抗ウイルス剤、抗生物質、植物アルカロイド、トポイソメラーゼ阻害剤、チューブリン重合阻害剤、ホルモン療法剤、ホルモン拮抗剤、アロマターゼ阻害剤、P糖蛋白阻害剤、白金錯体誘導体、M期阻害剤若しくはキナーゼ阻害剤などの抗癌剤[臨床腫瘍学、癌と化学療法社(1996)]、ステロイド剤、非ステロイド剤、免疫調節剤、免疫抑制剤、または抗ヒスタミン剤などの抗炎症剤[炎症と抗炎症療法、医歯薬出版株式会社(1982)]などが挙げられる。
【0156】
より具体的には、例えば、メルタンシン、エムタンシン、アミフォスチン(エチオール)、シスプラチン、ダカルバジン(DTIC)、ダクチノマイシン、メクロレタミン(ナイトロジェンマスタード)、ストレプトゾシン、シクロフォスファミド、イホスファミド、カルムスチン(BCNU)、ロムスチン(CCNU)、ドキソルビシン(アドリアマイシン)、エピルビシン、ゲムシタビン(ゲムザール)、ダウノルビシン、プロカルバジン、マイトマイシン、シタラビン、エトポシド、5-フルオロウラシル、フルオロウラシル、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ブレオマイシン、ダウノマイシン、ペプロマイシン、エストラムスチン、パクリタキセル(タキソール)、ドセタキセル(タキソテア)、アルデスロイキン、アスパラギナーゼ、ブスルファン、カルボプラチン、オキサリプラチン、ネダプラチン、クラドリビン、カンプトテシン、10-ヒドロキシ-7-エチル-カンプトテシン(SN38)、フロクスウリジン、フルダラビン、ヒドロキシウレア、イダルビシン、メスナ、イリノテカン(CPT-11)、ノギテカン、ミトキサントロン、トポテカン、ロイプロリド、メゲストロール、メルファラン、メルカプトプリン、ヒドロキシカルバミド、プリカマイシン、ミトタン、ペガスパラガーゼ、ペントスタチン、ピポブロマン、ストレプトゾシン、タモキシフェン、ゴセレリン、リュープロレニン、フルタミド、テニポシド、テストラクトン、チオグアニン、チオテパ、ウラシルマスタード、ビノレルビン、クロラムブシル、ハイドロコーチゾン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、ビンデシン、ニムスチン、セムスチン、カペシタビン、トムデックス、アザシチジン、UFT、オキザロプラチン、ゲフィチニブ(イレッサ)、イマチニブ(STI571)、エルロチニブ、FMS-like tyrosine kinase 3(Flt3)阻害剤、vascular endothelial growth factor receptor(VEGFR)阻害剤、fibroblast growth factor receptor(FGFR)阻害剤、タルセバなどのepidermal growth factor receptor(EGFR)阻害剤、ラディシコール、17-アリルアミノ-17-デメトキシゲルダナマイシン、ラパマイシン、アムサクリン、オール-トランスレチノイン酸、サリドマイド、レナリドマイド、アナストロゾール、ファドロゾール、レトロゾール、エキセメスタン、ブシラミン、アザチオプリン、ミゾリビン、シクロスポリン、ラパマイシン、ヒドロコルチゾン、ベキサロテン(ターグレチン)、タモキシフェン、デキサメタゾン、プロゲスチン類、エストロゲン類、アナストロゾール(アリミデックス)、ロイプリン、アスピリン、インドメタシン、セレコキシブ、アザチオプリン、ペニシラミン、金チオマレート、マレイン酸クロルフェニラミン、クロロフェニラミン、クレマシチン、トレチノイン、砒素、ボルテゾミブ、アロプリノール、カリケアマイシン、イブリツモマブチウキセタン、タルグレチン、オゾガミン、クラリスロマシン、ロイコボリン、ケトコナゾール、アミノグルテチミド、スラミン、メトトレキセート、メイタンシノイドなどが挙げられ、これらの誘導体であってもよい。
【0157】
薬物および抗体または該抗体断片を結合させる方法としては、上述の方法の他、グルタールアルデヒドを介して薬物および抗体のアミノ基を結合させる方法、または水溶性カルボジイミドを介して薬物のアミノ基および抗体のカルボキシル基を結合させる方法などが挙げられる。
【0158】
生理活性ペプチドまたは生理活性タンパク質としては、例えば、インターフェロン(IFN)-α、IFN-β、IFN-γ、インターロイキン(IL)-2、IL-12、IL-15、IL-18、IL-21、IL-23、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、顆粒球/マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、またはマクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)など、NK細胞、マクロファージ、または好中球などの免疫担当細胞を活性化するサイトカイン若しくは増殖因子、ヒドラーゼ、リアーゼおよびイソメラーゼなどのタンパク質分解酵素、酸性スフィンゴミエリナーゼ、グルコセレブロシダーゼなどの酵素、リシン、ジフテリアトキシン、またはONTAKなどの細菌毒素および植物毒素などの毒素、細胞膜傷害活性を有する抗菌ペプチド、細胞膜結合性または細胞膜透過性を有するペプチド、およびそれらの誘導体などが挙げられる。
【0159】
核酸としては、ヌクレオチドまたは該ヌクレオチドと同等の機能を有する分子が重合した分子であればいかなる分子であってもよく、例えば、siRNA、microRNA、アンチセンスRNA/DNA、DNAアプタマーなどが挙げられる。
【0160】
放射性標識化合物としては、診断用または治療用用途に使用される核種であればよく、例えば、H、14C、32P、33P、35S、51Cr、57CO、18F、153Gd、159Gd、64Cu、68Ge、166Ho、115In、113In、112In、111In、131I、125I、123I、121I、140La、177Lu、54Mn、99Mo、103Pd、142Pr、149Pm、186Re、188Re、211At、105Rh、97Ru、153Sm、47Sc、75Se、85Sr、99Tc、201Ti、113Sn、117Sn、133Xe、169Yb、175Yb、90Yおよび65Znなど、または上述の核種を含む化合物が挙げられる。
【0161】
放射性標識化合物は、クロラミンT法などによって抗体に直接結合させることができる。また、放射性標識化合物をキレートする物質を抗体に結合させてもよい。キレート剤としては、例えば、1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン四酢酸(DOTA)、1-[2-(4-アミノフェニル)エチル]-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン四酢酸(PA-DOTA)、1,4,7,10-テトラアザシクロトリデカン四酢酸(TRITA)およびジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)などが挙げられ、キレート剤によって修飾された抗体、およびキレート剤を介して放射性標識化合物が標識された修飾化抗体も本発明の抗体に含まれる。
【0162】
糖鎖としては、例えば、単糖、二糖類またはオリゴ糖などが挙げられ、より具体的には、例えば、フコース、マンノース、グルコース、アロース、アルトース、ギュロース、イドース、ガラクトース、タロース、リボース、アラビノース、キシロース、リキソース、エリトース、エリトロース、トレオース、セロビオース、マルトース、イソマルトース、ラクトース、リポアラビノマンナン、ルイスX型三糖、シアリルルイスX型四糖などが挙げられる。また、イムノアジュバントとして知られる糖鎖を含む天然物でもよく、β(1→3)グルカン(レンチナン、シゾフィラン)、またはαガラクトシルセラミド(KRN7000)などが挙げられる。
【0163】
脂質としては、例えば、脂肪酸と各種アルコールとのエステルおよびその類似体である単純脂質(中性脂質)が挙げられる。例えば、油脂(例えば、トリアシルグリセロール)、ろう(例えば、高級アルコールの脂肪酸エステル)、ステロールエステル、コレステロールエステル、ビタミンの脂肪酸エステルなど、脂肪酸とアルコールのほかにリン酸、糖、硫酸、アミンなど極性基をもつ複合脂質、例えば、リン脂質(例えば、グリセロリン脂質およびスフィンゴリン脂質など)および糖脂質(例えば、グリセロ糖脂質およびスフィンゴ糖脂質など)、単純脂質および複合脂質の加水分解によって生成する化合物のうち脂溶性のものをさす誘導脂質、例えば、脂肪酸、高級アルコール、脂溶性ビタミン、ステロイド、炭化水素などが挙げられる。
【0164】
蛍光化合物としては、例えば、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)などのフルオレセイン系列、ローダミンイソチオシアネート(RITC)などのローダミン系列、Cy3、Cy5、エオシン系列、アレクサフルオロ系列およびNBD系列などの蛍光色素、アクリジニウムエステル、またはロフィンなどの発光物質ならびに緑色蛍光タンパク質(GFP)などの蛍光性タンパク質などが挙げられる。
【0165】
本発明の抗体または該抗体断片は、上述の親水性高分子、両親媒性高分子または機能性分子を直接または適当なリンカーを介して結合させることができる。リンカーとしては、例えば、エステル、ジスルフィド、ヒドラゾンおよびジペプチドなどが挙げられる。
【0166】
本発明の抗体または該抗体断片を遺伝子工学的な手法によって修飾し、融合抗体または融合抗体断片を作製する場合には、抗体をコードするcDNAにタンパク質をコードするcDNAを連結させ、融合抗体または融合抗体断片をコードするDNAを構築し、該DNAを原核生物または真核生物用発現ベクターに挿入し、該発現ベクターを原核生物または真核生物へ導入して融合抗体または融合抗体断片を発現させることにより、融合抗体または融合抗体断片を作製することができる。
【0167】
本発明の組成物は、本発明の抗体または該抗体断片を含有する組成物であればいかなるものでもよい。かかる組成物は、抗体または該抗体断片の他に、適当なキャリア、安定化剤などの添加剤を含んでいてもよい。
【0168】
本発明の組成物としては、例えば、本発明の抗体または該抗体断片を含む検出用または測定用の組成物などが挙げられる。本発明の組成物としては、例えば、本発明の抗体または該抗体断片を有効成分として含有する医薬組成物(治療剤)などが挙げられ、薬理学的に許容しうる担体とともに所望の剤型に製剤化される。
【0169】
本発明において、検出用または測定用の組成物とは、本発明の抗体または該抗体断片を含んでおり、本発明の抗体または該抗体断片が特異的に結合する抗原を検出または測定できるものであればいかなる組成物でもよい。本発明の抗体または該抗体断片が特異的に結合する抗原としては、CADM3、またはCADM3および脳に存在する抗原などが挙げられる。
【0170】
本発明の抗体または該抗体断片は動物に投与すると脳内のCADM3に結合し、脳に滞留する性質を有する。したがって、当該抗体または該抗体断片を含む検出用または測定用の組成物を用いることにより、当該抗体の脳内における維持、または脳内における抗体濃度の向上が可能となり、長期間にわたってCADM3、またはCADM3および脳に存在する抗原を検出または測定すること、および/またはCADM3、またはCADM3および脳に存在する抗原を高感度に検出または測定することもできる。
【0171】
例えば、検出用または測定用の組成物がCADM3と脳に存在する抗原に結合するバイスペシフィック抗体を含む組成物であるときには、当該バイスペシフィック抗体が結合するCADM3および脳に存在する抗原を長期間検出または測定すること、ならびに/またはCADM3および脳に存在する抗原を高感度に検出または測定することができる。
【0172】
また、例えば、検出用または測定用の組成物が、放射性標識化合物または蛍光色素で標識されたCADM3に結合する融合抗体または該融合抗体断片を含む組成物であるときには、CADM3を長期間検出または測定すること、および/またはCADM3を高感度に検出または測定することができる。
【0173】
本発明の抗体または該抗体断片を含有する医薬組成物(治療剤)は、本発明の抗体または該抗体断片が特異的に結合する抗原が発現している疾患であればいずれの疾患の治療剤でもよいが、脳疾患の治療剤が好ましい。
【0174】
脳疾患としては、例えば、アルツハイマー病、前駆期アルツハイマー病、ハンチントン病、パーキンソン病、脳腫瘍、多発性硬化症、筋ジストロフィー、筋萎縮性側索硬化症、多系統萎縮症、進行性核上性麻痺、線条体黒質変性症、オリーブ橋小脳萎縮症、球脊髄性筋萎縮症、脊髄小脳変性症、脳血管障害、てんかん、片頭痛、多動性障害、クロイツフェルトヤコブ病、大脳皮質基底核変性症、ライソゾーム病、うつ病、およびジストニアなどが挙げられる。
【0175】
本発明の抗体または該抗体断片は、動物に投与すると脳内のCADM3に結合し、脳に滞留する性質を有する。したがって、当該抗体または該抗体断片を含有する治療剤を用いることで、脳内における該抗体または該抗体断片の長期間にわたる維持、脳内における抗体濃度の向上が可能となり、上記の疾患に対して治療効果を示すことができる。
【0176】
例えば、治療剤が本発明の抗CADM3抗体の融合抗体を含む治療剤であるときには、融合させた分子を脳内へ送達させることで、当該分子による治療効果を発揮することができる。具体的には、薬物や酵素などを抗CADM3抗体に融合させた融合抗体を含む治療剤であるときは、薬物や酵素により治療効果を示すことができるし、CADM3と脳に存在する抗原に結合するバイスペシフィック抗体を含む治療剤であるときには、当該バイスペシフィック抗体が結合する、脳に存在する抗原に関連する脳疾患に対して治療効果を示すことができる。
【0177】
また、例えば、治療剤が低分子薬剤で修飾されたCADM3に結合する融合抗体または融合抗体断片であるときには、当該低分子薬剤が標的とする脳疾患に対して治療効果を示すことができる。このとき、該低分子薬剤を単体で用いるときよりも、本発明の治療剤を用いたときのほうが、治療効果が高いことが好ましい。
【0178】
本発明の抗体または該抗体断片を含有する治療剤は、有効成分としての該抗体または該抗体断片のみを含むものであってもよいが、通常は薬理学的に許容される1以上の担体と一緒に混合し、製剤学の技術分野において公知の任意の方法により製造した医薬製剤として提供するのが望ましい。
【0179】
投与経路は、治療に際して最も効果的なものを使用するのが好ましく、例えば、経口投与、または口腔内、気道内、直腸内、皮下、皮内、筋肉内、脳室内、脊髄腔内、鼻腔内、腹腔内若しくは静脈内などの非経口投与が挙げられ、特に好ましくは静脈内または脳室内投与などが挙げられる。投与形態としては、例えば、噴霧剤、カプセル剤、錠剤、散剤、顆粒剤、シロップ剤、乳剤、座剤、注射剤、軟膏、またはテープ剤などが挙げられる。
【0180】
投与量または投与回数は、目的とする治療効果、投与方法、治療期間、年齢、および体重などにより異なるが、通常成人1日当たり10μg/kg~20mg/kgである。
【0181】
また、本発明は、本発明の抗体または該抗体断片を用いて抗体を脳内に滞留させる方法、抗体の脳滞留性を向上させる方法、および脳内の抗体濃度(または抗体量)を高める方法をも包含する。
【0182】
また、本発明は、CADM3に結合するペプチド、該ペプチドをコードする塩基配列を含む核酸、該核酸を含むベクターを含む形質転換細胞、該形質転換細胞を培養し、培養液から前記ペプチドを採取することを含む、前記ペプチドの製造方法、前記ペプチドを含む組成物、または前記ペプチドまたは前記組成物を用いて、脳に存在する抗原を検出または測定する方法、脳疾患を診断若しくは治療する方法、ペプチドの脳滞留性を向上させる方法、または脳内のペプチド量を増加させる方法に関する。
【0183】
本発明のペプチドは、ペプチドが修飾された融合ペプチドを含む。
【0184】
CADM3に結合するペプチドに関する各種用語の定義などは、特に記載がない限り、上述したCADM3に結合する抗体について記載した用語の定義などと同じものを用いる。
【0185】
以下に、本発明の抗体または該抗体断片の製造方法、疾患の治療方法、および疾患の診断方法などについて、具体的に説明する。
【0186】
1.抗体の製造方法
(1)抗原の調製
抗原となるCADM3またはCADM3発現細胞は、CADM3全長またはその部分長をコードするcDNAを含む発現ベクターを、大腸菌、酵母、昆虫細胞または動物細胞などに導入することで得ることができる。また、CADM3は、CADM3を多量に発現している各種動物細胞株、動物細胞および動物組織などからCADM3を精製することによっても得ることができる。
【0187】
また、これら動物細胞株、動物細胞および動物組織などをそのまま抗原として使用することもできる。さらに、Fmoc法またはtBoc法などの化学合成法によりCADM3の部分配列を有する合成ペプチドを調製し、抗原に用いることもできる。
【0188】
CADM3またはCADM3の部分配列を有する合成ペプチドには、C末端またはN末端にFLAGまたはHisなどの公知のタグが付加されていてもよい。
【0189】
本発明で用いられるCADM3は、Molecular Cloning,A Laboratory Manual, Second Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press (1989)やCurrent Protocols In Molecular Biology, John Wiley & Sons (1987-1997)などに記載された方法などを用い、例えば、以下の方法により、CADM3をコードするDNAを宿主細胞中で発現させて、製造することができる。
【0190】
まず、CADM3をコードする部分を含む完全長cDNAを適当な発現ベクターのプロモーターの下流に挿入することにより、組換えベクターを作製する。上記完全長cDNAの代わりに、完全長cDNAをもとにして調製された、ポリペプチドをコードする部分を含む適当な長さのDNA断片を用いてもよい。次に、得られた該組換えベクターを、該発現ベクターに適合した宿主細胞に導入することにより、ポリペプチドを生産する形質転換体を得ることができる。
【0191】
発現ベクターとしては、使用する宿主細胞における自律複製または染色体中への組込みが可能で、ポリペプチドをコードするDNAを転写できる位置に、適当なプロモーターを含有しているものであればいずれも用いることができる。宿主細胞としては、大腸菌などのエシェリヒア属などに属する微生物、酵母、昆虫細胞または動物細胞など、目的とする遺伝子を発現できるものであればいずれも用いることができる。
【0192】
大腸菌などの原核生物を宿主細胞として用いる場合、発現ベクターは、原核生物中で自律複製が可能であると同時に、プロモーター、リボソーム結合配列、ヒトCADM3をコードする部分を含むDNA、および転写終結配列を含むベクターであることが好ましい。また、該発現ベクターには、転写終結配列は必ずしも必要ではないが、構造遺伝子の直下に転写終結配列を配置することが好ましい。さらに、該組換えベクターには、プロモーターを制御する遺伝子を含んでいてもよい。
【0193】
該発現ベクターとしては、リボソーム結合配列であるシャイン・ダルガルノ配列(SD配列ともいう)および開始コドンの間を適当な距離(例えば6~18塩基)に調節したプラスミドを用いることが好ましい。
【0194】
また、CADM3をコードするDNAの塩基配列としては、宿主内での発現に最適なコドンとなるように塩基を置換することができ、これにより目的とするCADM3の生産率を向上させることができる。
【0195】
発現ベクターとしては、使用する宿主細胞中で機能を発揮できるものであればいずれも用いることができ、例えば、pBTrp2、pBTac1、pBTac2(以上、ロシュ・ダイアグノスティックス社製)、pKK233―2(ファルマシア社製)、pSE280(インビトロジェン社製)、pGEMEX-1(プロメガ社製)、pQE-8(キアゲン社製)、pKYP10(日本国特開昭58-110600号公報)、pKYP200[Agricultural Biological Chemistry, 48, 669 (1984)]、pLSA1[Agric. Biol. Chem., 53, 277 (1989)]、pGEL1[Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 82, 4306 (1985)]、pBluescript II SK(-)(ストラタジーン社製)、pTrs30[大腸菌JM109/pTrS30(FERM BP-5407)より調製]、pTrs32[大腸菌JM109/pTrS32(FERM BP-5408)より調製]、pGHA2[大腸菌IGHA2(FERM BP-400)より調製、日本国特開昭60-221091号公報]、pGKA2[大腸菌IGKA2(FERM BP-6798)より調製、日本国特開昭60-221091号公報]、pTerm2(米国特許第4,686,191号明細書、米国特許第4,939,094号明細書、米国特許第160,735号明細書)、pSupex、pUB110、pTP5、pC194、pEG400[J. Bacteriol., 172, 2392 (1990)]、pGEX(ファルマシア社製)、pETシステム(ノバジェン社製)またはpME18SFL3などが挙げられる。
【0196】
プロモーターとしては、使用する宿主細胞中で機能を発揮できるものであればいかなるものでもよい。例えば、trpプロモーター(Ptrp)、lacプロモーター、PLプロモーター、PRプロモーターまたはT7プロモーターなどの、大腸菌またはファージなどに由来するプロモーターが挙げられる。また、例えば、Ptrpを2つ直列させたタンデムプロモーター、tacプロモーター、lacT7プロモーターまたはlet Iプロモーターなどの人為的に設計改変されたプロモーターなどが挙げられる。
【0197】
宿主細胞としては、例えば、大腸菌XL1-Blue、大腸菌XL2-Blue、大腸菌DH1、大腸菌MC1000、大腸菌KY3276、大腸菌W1485、大腸菌JM109、大腸菌HB101、大腸菌No.49、大腸菌W3110、大腸菌NY49または大腸菌DH5αなどが挙げられる。
【0198】
宿主細胞への組換えベクターの導入方法としては、使用する宿主細胞へDNAを導入する方法であればいずれも用いることができ、例えば、カルシウムイオンを用いる方法[Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 69, 2110 (1972)、Gene, 17, 107 (1982)、Molecular & General Genetics, 168, 111 (1979)]が挙げられる。
【0199】
動物細胞を宿主として用いる場合、発現ベクターとしては、動物細胞中で機能を発揮できるものであればいずれも用いることができ、例えば、pcDNAI、pCDM8(フナコシ社製)、pAGE107[日本国特開平3-22979号公報;Cytotechnology, 3, 133 (1990)]、pAS3-3(日本国特開平2-227075号公報)、pCDM8[Nature, 329, 840 (1987)]、pcDNAI/Amp(インビトロジェン社製)、pcDNA3.1(インビトロジェン社製)、pREP4(インビトロジェン社製)、pAGE103[J. Biochemistry, 101, 1307 (1987)]、pAGE210、pME18SFL3、pKANTEX93(国際公開第97/10354号)、N5KG1val(米国特許第6,001,358号明細書)、INPEP4(Biogen-IDEC社製)、pCI(Promega社製)およびトランスポゾンベクター(国際公開第2010/143698号)などが挙げられる。
【0200】
プロモーターとしては、動物細胞中で機能を発揮できるものであればいずれも用いることができ、例えば、サイトメガロウイルス(CMV)のimmediate early(IE)遺伝子のプロモーター、SV40の初期プロモーター、レトロウイルスのプロモーター、メタロチオネインプロモーター、ヒートショックプロモーター、SRαプロモーターまたはモロニーマウス白血病ウイルスのプロモーター若しくはエンハンサーが挙げられる。また、ヒトCMVのIE遺伝子のエンハンサーをプロモーターと共に用いてもよい。
【0201】
宿主細胞としては、例えば、ヒト白血病細胞Namalwa細胞、サル細胞COS細胞、チャイニーズ・ハムスター卵巣細胞CHO細胞[Journal of Experimental Medicine, 108, 945 (1958); Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 60 , 1275 (1968); Genetics, 55, 513 (1968); Chromosoma, 41, 129 (1973); Methods in Cell Science, 18, 115 (1996); Radiation Research, 148, 260 (1997); Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 77, 4216 (1980); Proc. Natl. Acad. Sci., 60, 1275 (1968); Cell, 6, 121 (1975); Molecular Cell Genetics, Appendix I, II (pp. 883-900)];ジヒドロ葉酸還元酵素遺伝子(dhfr)が欠損したCHO細胞(CHO/DG44細胞)[Proc.Natl.Acad.Sci.USA,77,4216(1980)]、CHO-K1(ATCC CCL-61)、DUkXB11(ATCC CCL-9096)、Pro-5(ATCC CCL-1781)、CHO-S(Life Technologies、Cat#11619)、Pro-3、ラットミエローマ細胞YB2/3HL.P2.G11.16Ag.20(またはYB2/0ともいう)、マウスミエローマ細胞NS0、マウスミエローマ細胞SP2/0-Ag14、シリアンハムスター細胞BHKまたはHBT5637(日本国特開昭63-000299号公報)などが挙げられる。
【0202】
宿主細胞への発現ベクターの導入方法としては、動物細胞にDNAを導入する方法であればいずれも用いることができ、例えば、エレクトロポレーション法[Cytotechnology, 3, 133 (1990)]、リン酸カルシウム法(日本国特開平2-227075号公報)またはリポフェクション法[Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 84, 7413 (1987)]などが挙げられる。
【0203】
以上のようにして得られるCADM3をコードするDNAを組み込んだ発現ベクターを保有する微生物または動物細胞などの由来の形質転換体を培地中で培養し、培養液中に該CADM3を生成蓄積させ、該培養液から採取することにより、CADM3を製造することができる。該形質転換体を培地中で培養する方法は、宿主の培養に用いられる通常の方法に従って行うことができる。
【0204】
真核生物由来の細胞で発現させた場合には、糖または糖鎖が付加されたCADM3を得ることができる。
【0205】
誘導性のプロモーターを用いた発現ベクターで形質転換した微生物を培養するときには、必要に応じてインデューサーを培地に添加してもよい。例えば、lacプロモーターを用いた発現ベクターで形質転換した微生物を培養する場合にはイソプロピル-β-D-チオガラクトピラノシドなどを、trpプロモーターを用いた発現ベクターで形質転換した微生物を培養する場合にはインドールアクリル酸などを培地に添加してもよい。
【0206】
動物細胞を宿主として得られた形質転換体を培養する培地としては、例えば、一般に使用されているRPMI1640培地[The Journal of the American Medical Association, 199, 519 (1967)]、EagleのMEM培地[Science, 122, 501 (1952)]、ダルベッコ改変MEM培地[Virology, 8, 396 (1959)]、199培地[Proc. Soc. Exp. Biol. Med., 73, 1 (1950)]若しくはIscove’s Modified Dulbecco’s Medium(IMDM)培地またはこれら培地に牛胎児血清(FBS)などを添加した培地などが挙げられる。培養は、通常pH6~8、30~40℃、5%CO存在下などの条件下で1~7日間行う。また、培養中に必要に応じて、カナマイシンまたはペニシリンなどの抗生物質を培地に添加してもよい。
【0207】
CADM3をコードする遺伝子の発現方法としては、例えば、直接発現以外に、分泌生産または融合タンパク質発現などの方法[Molecular Cloning, A Laboratory Manual,Second Edition,Cold Spring Harbor Laboratory Press (1989)]が挙げられる。
【0208】
CADM3の生産方法としては、例えば、宿主細胞内に生産させる方法、宿主細胞外に分泌させる方法、または宿主細胞外膜上に生産させる方法が挙げられ、使用する宿主細胞または生産させるCADM3の構造を変えることにより、適切な方法を選択することができる。
【0209】
CADM3が宿主細胞内または宿主細胞外膜上に生産される場合、ポールソンらの方法[J. Biol. Chem., 264, 17619 (1989)]、ロウらの方法[Proc. Natl. Acad. Sci., USA, 86, 8227 (1989)、Genes Develop., 4, 1288 (1990)]、日本国特開平05-336963号公報または国際公開第94/23021号などに記載の方法を用いることにより、CADM3を宿主細胞外に積極的に分泌させることができる。また、ジヒドロ葉酸還元酵素遺伝子などを用いた遺伝子増幅系(日本国特開平2-227075号公報)を利用してCADM3の生産量を上昇させることもできる。
【0210】
得られたCADM3は、例えば、以下のようにして単離、精製することができる。CADM3が細胞内に溶解状態で発現した場合には、培養終了後に細胞を遠心分離により回収し、水系緩衝液に懸濁後、超音波破砕機、フレンチプレス、マントンガウリンホモゲナイザーまたはダイノミルなどを用いて細胞を破砕し、無細胞抽出液を得る。該無細胞抽出液を遠心分離することにより得られる上清から、通常のタンパク質の単離精製法、即ち、溶媒抽出法、硫安などによる塩析法、脱塩法、有機溶媒による沈殿法、ジエチルアミノエチル(DEAE)-セファロース、DIAION HPA-75(三菱化学社製)などのレジンを用いた陰イオン交換クロマトグラフィー法、S-Sepharose FF(ファルマシア社製)などのレジンを用いた陽イオン交換クロマトグラフィー法、ブチルセファロース、フェニルセファロースなどのレジンを用いた疎水性クロマトグラフィー法、分子篩を用いたゲルろ過法、アフィニティークロマトグラフィー法、クロマトフォーカシング法、または等電点電気泳動などの電気泳動法などの手法を単独または組み合わせて用い、精製標品を得ることができる。
【0211】
CADM3が細胞内に不溶体を形成して発現した場合は、上記と同様に細胞を回収後破砕し、遠心分離を行うことにより、沈殿画分として該CADM3の不溶体を回収する。回収した該CADM3の不溶体をタンパク質変性剤で可溶化する。該可溶化液を希釈または透析することにより、該CADM3を正常な立体構造に戻した後、上記と同様の単離精製法によりポリペプチドの精製標品を得ることができる。
【0212】
CADM3またはその糖修飾体などの誘導体が細胞外に分泌された場合には、培養上清において該CADM3またはその糖修飾体などの誘導体を回収することができる。該培養物を上記と同様に遠心分離などの手法により処理することにより可溶性画分を取得し、該可溶性画分から、上記と同様の単離精製法を用いることにより、精製標品を得ることができる。
【0213】
また、本発明において用いられるCADM3は、Fmoc法またはtBoc法などの化学合成法によっても製造することができる。また、アドバンストケムテック社製、パーキン・エルマー社製、ファルマシア社製、プロテインテクノロジインストルメント社製、シンセセル-ベガ社製、パーセプチブ社製または島津製作所社製などのペプチド合成機を利用して化学合成することもできる。
【0214】
(2)動物の免疫と融合用抗体産生細胞の調製
3~20週令のマウス、ラット、ラビットまたはハムスターなどの動物に、(1)で得られる抗原を免疫して、その動物の脾、リンパ節、末梢血中の抗体産生細胞を採取する。また被免疫動物としてラマ、アルパカ、ラクダなどの動物を用いることもできる。
【0215】
免疫は、動物の皮下、静脈内または腹腔内に、例えば、フロインドの完全アジュバント、または水酸化アルミニウムゲルと百日咳菌ワクチンなどの適当なアジュバントとともに抗原を投与することにより行う。抗原が部分ペプチドである場合には、ウシ血清アルブミン(BSA)またはKeyhole Limpet hemocyanin(KLH)などのキャリアタンパク質とコンジュゲートを作製し、これを免疫原として用いる。
【0216】
マウスやラットに免疫する際、抗原の投与は、1回目の投与の後、1~2週間おきに5~10回行う。各投与後3~7日目に眼底静脈叢より採血し、その血清の抗体価を酵素免疫測定法[Antibodies - A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory (1988)]などを用いて測定する。免疫に用いた抗原に対し、その血清が十分な抗体価を示した動物を融合用抗体産生細胞の供給源とする。
【0217】
抗原の最終投与後3~7日目に、免疫した動物より脾臓などの抗体産生細胞を含む組織を摘出し、抗体産生細胞を採取する。脾臓細胞を用いる場合には、脾臓を細断、ほぐした後、遠心分離し、さらに赤血球を除去して融合用抗体産生細胞を取得する。
【0218】
その他の被免疫動物についても同様の方法で免疫を行い、抗体産生細胞を取得することができる。免疫間隔や最後の免疫から組織の摘出までの期間は、被免疫動物の動物種に合わせて適切な条件を選択することができる。
【0219】
(3)骨髄腫細胞の調製
骨髄腫細胞としては、マウスから得られた株化細胞を用い、例えば、8-アザグアニン耐性マウス(BALB/c由来)骨髄腫細胞株P3-X63Ag8-U1(P3-U1)[Current Topics in Microbiology and Immunology, 18, 1 (1978)]、P3-NS1/1-Ag41(NS-1)[European J. Immunology, 6, 511 (1976)]、SP2/0-Ag14(SP-2)[Nature, 276, 269 (1978)]、P3-X63-Ag8653(653)[J. Immunology, 123, 1548 (1979)]またはP3-X63-Ag8(X63)[Nature, 256, 495 (1975)]などが用いられる。
【0220】
該骨髄腫細胞は、正常培地[グルタミン、2-メルカプトエタノール、ジェンタマイシン、FBS、および8-アザグアニンを加えたRPMI1640培地]で継代し、細胞融合の3~4日前に正常培地に継代し、融合当日2×10個以上の細胞数を確保する。
【0221】
(4)細胞融合とモノクローナル抗体産生ハイブリドーマの調製
(2)で得られる融合用抗体産生細胞と(3)で得られる骨髄腫細胞をMinimu Essential Medium(MEM)培地またはリン酸緩衝生理食塩水(PBS;リン酸二ナトリウム1.83g、リン酸一カリウム0.21g、食塩7.65g、蒸留水1リットル、pH7.2)でよく洗浄し、細胞数が、融合用抗体産生細胞:骨髄腫細胞=5~10:1になるよう混合し、遠心分離した後、上清を除く。
【0222】
沈澱した細胞群をよくほぐした後、ポリエチレングリコール-1000(PEG-1000)、MEM培地およびジメチルスルホキシドの混液を37℃で、攪拌しながら加える。さらに1~2分間毎にMEM培地1~2mLを数回加えた後、MEM培地を加えて全量が50mLになるようにする。
【0223】
遠心分離後、上清を除く。沈澱した細胞群をゆるやかにほぐした後、HAT培地[ヒポキサンチン、チミジン、およびアミノプテリンを加えた正常培地]中にゆるやかに細胞を懸濁する。この懸濁液を5%COインキュベーター中、37℃にて7~14日間培養する。
【0224】
培養後、培養上清の一部を抜き取り、後述のバインディングアッセイなどのハイブリドーマの選択方法により、CADM3に反応し、CADM3ではない抗原に反応しない細胞群を選択する。次に、限界希釈法によりクローニングを行い、安定して強い抗体価の認められたものをモノクローナル抗体産生ハイブリドーマとして選択する。
【0225】
(5)精製モノクローナル抗体の調製
プリスタン処理[2,6,10,14-テトラメチルペンタデカン(Pristane)0.5mLを腹腔内投与し、2週間飼育する]した8~10週令のマウスまたはヌードマウスに、(4)で得られるモノクローナル抗体産生ハイブリドーマを腹腔内に注射する。10~21日でハイブリドーマは腹水癌化する。
【0226】
このマウスから腹水を採取し、遠心分離して固形分を除去後、40~50%硫酸アンモニウムで塩析し、カプリル酸沈殿法、DEAE-セファロースカラム、プロテインA-カラムまたはゲルろ過カラムによる精製を行ない、IgGまたはIgM画分を集め、精製モノクローナル抗体とする。
【0227】
また、(4)で得られるモノクローナル抗体産生ハイブリドーマを、10%FBSを添加したRPMI1640培地などで培養した後、遠心分離により上清を除き、Hybridoma SFM培地に懸濁し、3~7日間培養する。
【0228】
得られた細胞懸濁液を遠心分離し、得られた上清よりプロテインA-カラムまたはプロテインG-カラムによる精製を行ない、IgG画分を集め、精製モノクローナル抗体を得ることもできる。なお、Hybridoma SFM培地には5%ダイゴGF21を添加することもできる。
【0229】
抗体のサブクラスの決定は、サブクラスタイピングキットを用いて酵素免疫測定法により行う。タンパク質量の定量は、ローリー法または280nmでの吸光度より算出する。
【0230】
(6)抗体の選択
抗体の選択は以下に示すように、フローサイトメトリーを用いて、CADM3発現細胞への抗体の結合性を測定することなどにより行う。CADM3発現細胞は、細胞表面上にCADM3が発現していればいずれの細胞でもよく、例えば、動物細胞、動物細胞株および(1)で得られるCADM3強制発現細胞株などが挙げられる。
【0231】
CADM3発現細胞を96ウェルプレートなどのプレートに分注した後、第1抗体として血清、ハイブリドーマの培養上清または精製抗体などの被験物質を分注し、反応させる。反応後の細胞を1~10%BSAを含むPBS(以下、BSA-PBSと記す)などで、よく洗浄した後、第2抗体として蛍光試薬などで標識した抗イムノグロブリン抗体を分注して反応させる。BSA-PBSなどでよく洗浄した後、フローサイトメーターを用いて標識化抗体の蛍光量を測定することにより、CADM3発現細胞に対して特異的に反応する抗体を選択する。
【0232】
また、抗体の選択は、以下に記載するELISAまたは表面プラズモン共鳴を用いて、モノクローナル抗体のCADM3発現細胞またはCADM3タンパク質などへの結合性を測定することにより行うこともできる。CADM3タンパク質は、CADM3の一部のドメインからなるタンパク質であっても、GSTなどのタグが付加しているタンパク質であってもよい。
【0233】
ELISAは、CADM3発現細胞またはCADM3タンパク質を96ウェルプレートなどのプレートに分注した後、BSA-PBSでブロッキングし、第1抗体として血清、ハイブリドーマの培養上清または精製抗体などの被験物質を分注し、反応させる。次に、PBSなどでよく洗浄した後、第2抗体として蛍光試薬などで標識した抗イムノグロブリン抗体を分注して反応させる。
【0234】
その後PBSなどでよく洗浄した後、発色試薬を添加する。最後に反応停止液で発色反応を止めて、マイクロプレートリーダーで各ウェルにおける吸光度を測定することにより、CADM3発現細胞またはCADM3タンパク質に対して特異的に反応する抗体を選択する。
【0235】
表面プラズモン共鳴は、公知のプロトコールを用いて、適切なセンサーチップに抗体を固相化し、CADM3タンパク質をアナライトとすることでCADM3に結合する抗体のアフィニティーを測定することができる。
【0236】
得られた抗体のアフィニティーより、CADM3タンパク質に対して所望のアフィニティーを有する抗体を選択することができる。また、センサーチップにCADM3タンパク質を固相化し、抗体をアナライトとして、CADM3に結合する抗体のアフィニティーを測定することもできる。
【0237】
また、本発明の抗体と競合してCADM3に結合する抗体は、上述のフローサイトメトリーやELISAを用いた測定系に、被験抗体を添加して反応させることで取得できる。すなわち、被験抗体を加えた時に本発明の抗体およびCADM3の結合が阻害される抗体をスクリーニングすることにより、CADM3のアミノ酸配列、またはその立体構造への結合について、本発明の抗体と競合する抗体を取得することができる。
【0238】
また、本発明の抗体が結合するエピトープを含むエピトープに結合する抗体は、上述のスクリーニング方法で取得された抗体のエピトープを公知の方法で同定し、同定したエピトープを含む合成ペプチド、またはエピトープの立体構造に擬態させた合成ペプチドなどを作製し、免疫することで取得することができる。
【0239】
更に、本発明の抗体が結合するエピトープと、同じエピトープに結合する抗体は、上述のスクリーニング方法で取得された抗体のエピトープを同定し、同定したエピトープの部分的な合成ペプチド、またはエピトープの立体構造に擬態させた合成ペプチドなどを作製し、免疫することで、取得することができる。
【0240】
(7)ファージディスプレイ法による抗体の取得
(7-1)抗体ファージライブラリの作製方法
本発明において、抗体ファージライブラリは免疫ライブラリ、ナイーブライブラリおよび合成ライブラリを用いることができる。各ライブラリの作製方法を以下に記載する。
【0241】
免疫ライブラリは、上記(1)と同様の方法で免疫した動物、または患者由来のリンパ球を、ナイーブライブラリは正常な動物または健常人由来のリンパ球を採取し、RNAを抽出して逆転写反応反応によりcDNAを合成する。
【0242】
このcDNAを鋳型にしてPCRで増幅した抗体遺伝子断片をファージミドベクターに挿入し、該ファージミドベクターで大腸菌を形質転換する。得られた形質転換体にヘルパーファージを感染させると、抗体遺伝子がライブラリ化された抗体ファージライブラリを得ることができる。
【0243】
また、合成ライブラリはゲノムDNAにおけるV遺伝子や再構築された機能的なV遺伝子のCDRを、適当な長さのランダムなアミノ酸配列をコードするオリゴヌクレオチドで置換し、当該V遺伝子を挿入したファージミドベクターで大腸菌を形質転換する。得られた形質転換体にヘルパーファージを感染させると、抗体ファージライブラリを得ることができる。
【0244】
リンパ球由来のcDNA、抗体ファージライブラリは市販のものを用いることもできる。
【0245】
ファージミドベクターはpCANTAB 5E(Amersham Pharmacia社)、pUC118/pUC119ベクター(TaKaRa社)、pBlueScript II Phagemid Vector(Agilent Technologies社)、およびpKSTV-02[Miyazaki N., et al., J. Biochem., 158(3), 205-215, 2015]などを用いることができる。
【0246】
ヘルパーファージはM13KO7ヘルパーファージ(Invitrogen社)、VCSM13 Interference Resistant Helper Phage(Agilent Technologies社)、R408 Interference Resistant Helper Phage(Agilent Technologies社)などを用いることができる。
【0247】
ファージディスプレイには、ファージベクターも用いることができる。繊維状ファージのg3pを提示分子とするペプチドファージライブラリ(New England Biolabs社製など)およびg7p、g8p、g9pを提示分子とする方法などがある。
【0248】
また、T7ファージを用いたファージディスプレイ用をいることもできる。T7ファージへのディスプレイシステムにはT7Selectベクター(Novagen社)などがある。
【0249】
(7-2)抗体ファージクローンの選択
(7-1)で作製した抗体ファージライブラリからの抗体ファージクローンの選択は、以下に示すELISA法を用いて行うことができる。
【0250】
イムノチューブにCADM3を固相化し、ブロッキングバッファーでチューブをブロッキングする。チューブの各ウェルに上記(7-1)で作製した抗体ファージライブラリを加えて反応させる。次に、ウェルを洗浄し、蛍光標識された抗ファージ抗体を加えて反応させた後、再びウェルを洗浄して発色液を添加する。その後反応停止液で発色反応を止めて、マイクロプレートリーダーで各ウェルにおける吸光度を測定する。これにより、CADM3に結合する抗体ファージクローンを選択する。
【0251】
2.遺伝子組換え抗体の作製
遺伝子組換え抗体の作製例として、以下にヒト型キメラ抗体およびヒト化抗体の作製方法を示す。遺伝子組換えのマウス抗体、ラット抗体、ラビット抗体、ハムスター抗体、ラクダ抗体、ラマ抗体、アルパカ抗体、およびヒト抗体、各種キメラ抗体、ならびに重鎖抗体なども同様の方法で作製することができる。
【0252】
(1)遺伝子組換え抗体発現用ベクターの構築
遺伝子組換え抗体発現用ベクターは、ヒト抗体のCHおよびCLをコードするDNAが組み込まれた動物細胞用発現ベクターであり、動物細胞用発現ベクターにヒト抗体のCHおよびCLをコードするDNAをそれぞれクローニングすることにより構築することができる。
【0253】
ヒト抗体の定常領域(C領域)は任意のヒト抗体のCHおよびCLを用いることができる。例えば、ヒト抗体のγ1サブクラスのCHおよびκクラスのCLなどを用いる。ヒト抗体のCHおよびCLをコードするDNAには、cDNAを用いるが、エキソンとイントロンからなる染色体DNAを用いることもできる。
【0254】
動物細胞用発現ベクターには、ヒト抗体のC領域をコードする遺伝子を組込み発現できるものであればいかなるものでも用いることができる。例えば、pAGE107[Cytotechnol., 3, 133 (1990)]、pAGE103[J. Biochem., 101, 1307 (1987)]、pHSG274[Gene, 27, 223 (1984)]、pKCR[Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 78, 1527 (1981)]、pSG1bd2-4[Cytotechnol., 4, 173 (1990)]またはpSE1UK1Sed1-3[Cytotechnol., 13, 79 (1993)]などを用いる。
【0255】
動物細胞用発現ベクターのうち、プロモーターおよびエンハンサーには、SV40の初期プロモーター[J. Biochem., 101, 1307 (1987)]、モロニーマウス白血病ウイルスLTR[Biochem. Biophys. Res. Commun., 149, 960 (1987)]または免疫グロブリンH鎖のプロモーター[Cell, 41, 479 (1985)]およびエンハンサー[Cell, 33, 717 (1983)]などが挙げられる。
【0256】
遺伝子組換え抗体発現用ベクターには、遺伝子組換え抗体発現ベクターの構築の容易さ、動物細胞への導入の容易さ、動物細胞内での抗体H鎖およびL鎖の発現量のバランスが均衡するなどの点から、抗体H鎖およびL鎖が同一のベクター上に存在するタイプ(タンデム型)の遺伝子組換え抗体発現用ベクター[J.Immunol. Methods, 167, 271(1994)]を用いるが、抗体H鎖およびL鎖が別々のベクター上に存在するタイプを用いることもできる。タンデム型の遺伝子組換え抗体発現用ベクターには、pKANTEX93(国際公開第97/10354号)、pEE18[Hybridoma, 17, 559 (1998)]などを用いる。
【0257】
(2)ヒト以外の動物由来の抗体の可変領域(V領域)をコードするcDNAの取得およびアミノ酸配列の解析
非ヒト抗体のVHおよびVLをコードするcDNAの取得およびアミノ酸配列の解析は以下のようにして行うことができる。
【0258】
(2-1)ハイブリドーマ法で抗体を取得した場合
非ヒト抗体を産生するハイブリドーマ細胞よりmRNAを抽出し、cDNAを合成する。合成したcDNAをファージまたはプラスミドなどのベクターにクローニングしてcDNAライブラリを作製する。
【0259】
前記ライブラリより、非ヒト抗体のC領域部分またはV領域部分をコードするDNAをプローブとして用い、VH若しくはVLをコードするcDNAを有する組換えファージまたは組換えプラスミドをそれぞれ単離する。組換えファージまたは組換えプラスミド上の目的とする非ヒト抗体のVHまたはVLの全塩基配列をそれぞれ決定し、塩基配列よりVHまたはVLの全アミノ酸配列をそれぞれ推定する。
【0260】
非ヒト抗体を産生するハイブリドーマ細胞を作製するヒト以外の動物には、マウス、ラット、ハムスター、ラビット、ラマ、ラクダ、またはアルパカなどを用いるが、ハイブリドーマ細胞を作製することが可能であれば、いかなる動物も用いることができる。
【0261】
ハイブリドーマ細胞からの全RNAの調製には、チオシアン酸グアニジン-トリフルオロ酢酸セシウム法[Methods in Enzymol., 154, 3 (1987)]、またはRNeasy kit(キアゲン社製)などのキットなどを用いる。
【0262】
全RNAからのmRNAの調製には、オリゴ(dT)固定化セルロースカラム法[Molecular Cloning, A Laboratory Manual, Second Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press (1989)]、またはOligo-dT30<Super>mRNA Purification(登録商標)Kit(タカラバイオ社製)などのキットなどを用いる。また、Fast Track mRNA Isolation(登録商標)Kit(インビトロジェン社製)、またはQuickPrep mRNA Purification(登録商標)Kit(ファルマシア社製)などのキットを用いてハイブリドーマ細胞からmRNAを調製することもできる。
【0263】
cDNAの合成およびcDNAライブラリの作製には、公知の方法[Molecular Cloning, A Laboratory Manual, Second Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press (1989)、Current Protocols in Molecular Biology, Supplement 1, John Wiley & Sons (1987-1997)]、またはSuperScript Plasmid System for cDNA Synthesis and Plasmid Cloning(インビトロジェン社製)若しくはZAP-cDNA Synthesis(登録商標)Kit(ストラタジーン社製)などのキットなどを用いる。
【0264】
cDNAライブラリの作製の際、ハイブリドーマ細胞から抽出したmRNAを鋳型として合成したcDNAを組み込むベクターには、該cDNAを組み込めるベクターであればいかなるものでも用いることができる。例えば、ZAP Express[Strategies, 5, 58 (1992)]、pBluescript II SK(+)[Nucleic Acids Research, 17, 9494 (1989)]、λZAPII(Stratagene社製)、λgt10、λgt11[DNA Cloning:A Practical Approach, I, 49 (1985)]、Lambda BlueMid(クローンテック社製)、λExCell、pT7T3-18U(ファルマシア社製)、pCD2[Mol. Cell. Biol., 3, 280 (1983)]またはpUC18[Gene, 33, 103 (1985)]などを用いる。
【0265】
ファージまたはプラスミドベクターにより構築されるcDNAライブラリを導入する大腸菌には、該cDNAライブラリを導入、発現および維持できるものであればいかなるものでも用いることができる。例えば、XL1-Blue MRF’[Strategies, 5, 81 (1992)]、C600[Genetics, 39, 440 (1954)]、Y1088、Y1090[Science, 222, 778 (1983)]、NM522[J. Mol. Biol., 166, 1 (1983)]、K802[J. Mol. Biol., 16, 118 (1966)]またはJM105[Gene, 38, 275 (1985)]などを用いる。
【0266】
cDNAライブラリからの非ヒト抗体のVHまたはVLをコードするcDNAクローンの選択には、アイソトープ若しくは蛍光標識したプローブを用いたコロニー・ハイブリダイゼーション法、またはプラーク・ハイブリダイゼーション法[Molecular Cloning, A Laboratory Manual, Second Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press (1989)]などを用いる。
【0267】
また、プライマーを調製し、mRNAから合成したcDNAまたはcDNAライブラリを鋳型として、Polymerase Chain Reaction(PCR)法[Molecular Cloning, A Laboratory Manual, Second Edition , Cold Spring Harbor Laboratory Press (1989)、Current Protocols in Molecular Biology, Supplement 1, John Wiley & Sons (1987-1997)]を行うことよりVHまたはVLをコードするcDNAを調製することもできる。
【0268】
選択されたcDNAを、適当な制限酵素などで切断後、pBluescript SK(-)(ストラタジーン社製)などのプラスミドにクローニングし、通常用いられる塩基配列解析方法などにより該cDNAの塩基配列を決定する。塩基配列解析方法には、例えば、ジデオキシ法[Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 74, 5463 (1977)]などの反応を行った後、ABI PRISM3700(PEバイオシステムズ社製)またはA.L.F.DNAシークエンサー(ファルマシア社製)などの塩基配列自動分析装置などを用いる。
【0269】
(2-2)ファージディスプレイ法により抗体を取得した場合
選択したファージクローンのプラスミドベクターから、ベクター部分またはV領域部分をコードするDNAをプローブとして用い、VHまたはVLの全塩基配列をそれぞれ決定し、塩基配列よりVHまたはVLの全アミノ酸配列をそれぞれ推定することができる。
【0270】
ハイブリドーマ法またはファージディスプレイ法のいずれの手法においても、決定した塩基配列からVHおよびVLの全アミノ酸配列をそれぞれ推定し、既知の抗体のVHおよびVLの全アミノ酸配列[Sequences of Proteins of Immunological Interest, US Dept. Health and Human Services (1991)]と比較することにより、取得したcDNAが分泌シグナル配列を含む抗体のVHおよびVLの完全なアミノ酸配列をコードしているかをそれぞれ確認する。
【0271】
分泌シグナル配列を含む抗体のVHおよびVLの完全なアミノ酸配列に関しては、既知の抗体のVHおよびVLの全アミノ酸配列[Sequences of Proteins of Immunological Interest, US Dept. Health and Human Services (1991)]と比較することにより、分泌シグナル配列の長さおよびN末端アミノ酸配列を推定でき、更にはそれらが属するサブグループを知ることができる。
【0272】
また、VHおよびVLの各CDRのアミノ酸配列についても、既知の抗体のVHおよびVLのアミノ酸配列[Sequences of Proteins of Immunological Interest, US Dept. Health and Human Services (1991)]と比較することによって見出すことができる。
【0273】
また、得られたVHおよびVLの完全なアミノ酸配列を用いて、例えば、SWISS-PROTまたはPIR-Proteinなどの任意のデータベースに対してBLAST法[J. Mol. Biol., 215, 403 (1990)]などの相同性検索を行い、VHおよびVLの完全なアミノ酸配列が新規なものかを確認できる。
【0274】
(3)ヒト型キメラ抗体発現ベクターの構築
(1)で得られる遺伝子組換え抗体発現用ベクターのヒト抗体のCHまたはCLをコードするそれぞれの遺伝子の上流に、それぞれ非ヒト抗体のVHまたはVLをコードするcDNAをそれぞれクローニングすることで、ヒト型キメラ抗体発現ベクターを構築することができる。
【0275】
非ヒト抗体のVHまたはVLをコードするcDNAの3’末端側と、ヒト抗体のCHまたはCLの5’末端側とを連結するために、連結部分の塩基配列が適切なアミノ酸をコードし、かつ適当な制限酵素認識配列になるように設計したVHおよびVLのcDNAを作製する。
【0276】
作製されたVHおよびVLのcDNAを、(1)で得られる遺伝子組換え抗体発現用ベクターのヒト抗体のCHまたはCLをコードするそれぞれの遺伝子の上流にそれらが適切な形で発現する様にそれぞれクローニングし、ヒト型キメラ抗体発現ベクターを構築する。
【0277】
また、非ヒト抗体VHまたはVLをコードするcDNAを、適当な制限酵素の認識配列を両端に有する合成DNAを用いてPCR法によりそれぞれ増幅し、(1)で得られる遺伝子組換え抗体発現用ベクターにクローニングすることもできる。
【0278】
(4)ヒト化抗体のV領域をコードするcDNAの構築
ヒト化抗体のVHまたはVLをコードするcDNAは、以下のようにして構築することができる。
【0279】
非ヒト抗体のVHまたはVLのCDRのアミノ酸配列を移植するための、ヒト抗体のVHまたはVLのFRのアミノ酸配列をそれぞれ選択する。選択するFRのアミノ酸配列には、ヒト抗体由来のものであれば、いずれのものでも用いることができる。
【0280】
例えば、Protein Data Bankなどのデータベースに登録されているヒト抗体のFRのアミノ酸配列、またはヒト抗体のFRの各サブグループの共通アミノ酸配列[Sequences of Proteins of Immunological Interest, US Dept. Health and Human Services (1991)]などを用いる。抗体の結合活性の低下を抑えるため、元の抗体のVHまたはVLのFRのアミノ酸配列とできるだけ高い相同性(少なくとも60%以上)のFRのアミノ酸配列を選択する。
【0281】
次に、選択したヒト抗体のVHまたはVLのFRのアミノ酸配列に、もとの抗体のCDRのアミノ酸配列をそれぞれ移植し、ヒト化抗体のVHまたはVLのアミノ酸配列をそれぞれ設計する。設計したアミノ酸配列を抗体の遺伝子の塩基配列に見られるコドンの使用頻度[Sequences of Proteins of Immunological Interest, US Dept. Health and Human Services (1991)]を考慮してDNA配列に変換し、ヒト化抗体のVHまたはVLのアミノ酸配列をコードするDNA配列をそれぞれ設計する。
【0282】
設計したDNA配列に基づき、100塩基前後の長さからなる数本の合成DNAを合成し、それらを用いてPCR反応を行う。この場合、PCR反応での反応効率および合成可能なDNAの長さから、好ましくはVH、VL各々について各6本の合成DNAを設計する。
【0283】
さらに、両端に位置する合成DNAの5’または3’末端に適当な制限酵素の認識配列を導入することで、ヒト化抗体のVHまたはVLをコードするcDNAを、(1)で得られる遺伝子組換え抗体発現用ベクターへ容易にクローニングすることができる。
【0284】
PCR反応後、増幅産物をpBluescript SK(-)(ストラタジーン社製)などのプラスミドにそれぞれクローニングし、(2)に記載の方法と同様の方法により、塩基配列を決定し、所望のヒト化抗体のVHまたはVLのアミノ酸配列をコードするDNA配列を有するプラスミドを取得する。
【0285】
または、設計したDNA配列に基づき、VH全長およびVL全長を各々1本の長鎖DNAとして合成したものを、上記PCR増幅産物に代えて用いることもできる。さらに、合成長鎖DNAの両端に適当な制限酵素の認識配列を導入することで、ヒト化抗体のVHまたはVLをコードするcDNAを、(1)で得られる遺伝子組換え抗体発現用ベクターへ容易にクローニングすることができる。
【0286】
(5)ヒト化抗体のV領域のアミノ酸配列の改変
ヒト化抗体は、非ヒト抗体のVHおよびVLのCDRのみをヒト抗体のVHおよびVLのFRに移植しただけでは、その抗原結合活性は元の非ヒト抗体に比べて低下する[BIO/TECHNOLOGY, 9, 266 (1991)]。
【0287】
ヒト化抗体では、ヒト抗体のVHおよびVLのFRのアミノ酸配列の中で、直接抗原との結合に関与しているアミノ酸残基、CDRのアミノ酸残基と相互作用するアミノ酸残基、および抗体の立体構造を維持し、間接的に抗原との結合に関与しているアミノ酸残基を同定し、それらのアミノ酸残基を元の非ヒト抗体のアミノ酸残基に置換することにより、低下した抗原結合活性を上昇させることができる。
【0288】
抗原結合活性に関わるFRのアミノ酸残基を同定するために、X線結晶解析[J. Mol. Biol., 112, 535 (1977)]またはコンピューターモデリング[Protein Engineering, 7, 1501 (1994)]などを用いることにより、抗体の立体構造の構築および解析を行うことができる。また、それぞれの抗体について数種の改変体を作製し、それぞれの抗原結合活性との相関を検討することを繰り返し、試行錯誤することで必要な抗原結合活性を有するヒト化抗体を取得できる。
【0289】
ヒト抗体のVHおよびVLのFRのアミノ酸残基は、改変用合成DNAを用いて(4)に記載のPCR反応を行うことにより、改変させることができる。PCR反応後の増幅産物について(2)に記載の方法により、塩基配列を決定し、目的の改変が施されたことを確認する。
【0290】
(6)ヒト化抗体発現ベクターの構築
(1)で得られる遺伝子組換え抗体発現用ベクターのヒト抗体のCHまたはCLをコードするそれぞれの遺伝子の上流に、構築した遺伝子組換え抗体のVHまたはVLをコードするcDNAをそれぞれクローニングし、ヒト化抗体発現ベクターを構築することができる。
【0291】
例えば、(4)および(5)で得られるヒト化抗体のVHまたはVLを構築する際に用いる合成DNAのうち、両端に位置する合成DNAの5’または3’末端に適当な制限酵素の認識配列を導入することで、(1)で得られる遺伝子組換え抗体発現用ベクターのヒト抗体のCHまたはCLをコードするそれぞれの遺伝子の上流にそれらが適切な形で発現するようにそれぞれクローニングする。
【0292】
(7)遺伝子組換え抗体の一過性発現
(3)および(6)で得られる遺伝子組換え抗体発現ベクター、またはそれらを改変した発現ベクターを用いて遺伝子組換え抗体の一過性発現を行い、作製した多種類のヒト型キメラ抗体、ヒト化抗体の抗原結合活性を効率的に評価することができる。
【0293】
発現ベクターを導入する宿主細胞には、遺伝子組換え抗体を発現できる宿主細胞であれば、いかなる細胞でも用いることができるが、例えば、COS-7細胞[American Type Culture Collection(ATCC)番号:CRL1651]を用いる[Methods in Nucleic Acids Res., CRC press, 283 (1991)]。
【0294】
COS-7細胞への発現ベクターの導入には、DEAE-デキストラン法[Methods in Nucleic Acids Res., CRC press (1991)]、またはリポフェクション法[Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 84, 7413 (1987)]などを用いる。
【0295】
発現ベクターの導入後、培養上清中の遺伝子組換え抗体の発現量および抗原結合活性は酵素免疫抗体法[Monoclonal Antibodies-Principles and practice, Third edition, Academic Press (1996)、Antibodies - A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory (1988)、単クローン抗体実験マニュアル、講談社サイエンティフィック(1987)]などを用いて測定する。
【0296】
(8)遺伝子組換え抗体を安定に発現する形質転換株の取得と遺伝子組換え抗体の調製
(3)および(6)で得られた遺伝子組換え抗体発現ベクターを適当な宿主細胞に導入することにより遺伝子組換え抗体を安定に発現する形質転換株を得ることができる。
宿主細胞への発現ベクターの導入には、エレクトロポレーション法[日本国特開平2-257891号公報、Cytotechnology, 3, 133 (1990)]などを用いる。
【0297】
遺伝子組換え抗体発現ベクターを導入する宿主細胞には、遺伝子組換え抗体を発現させることができる宿主細胞であれば、いかなる細胞でも用いることができる。例えば、CHO-K1(ATCC CCL-61)、DUKXB11(ATCC CCL-9096)、Pro-5(ATCC CCL-1781)、CHO-S(Life Technologies、Cat#11619)、ラットミエローマ細胞YB2/3HL.P2.G11.16Ag.20(ATCC番号:CRL1662、またはYB2/0ともいう)、マウスミエローマ細胞NS0、マウスミエローマ細胞SP2/0-Ag14(ATCC番号:CRL1581)、マウスP3X63-Ag8.653細胞(ATCC番号:CRL1580)、dhfrが欠損したCHO細胞(CHO/DG44細胞)[Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 77, 4216 (1980)]などを用いる。
【0298】
また、細胞内糖ヌクレオチドGDP-フコースの合成に関与する酵素などのタンパク質、N-グリコシド結合複合型糖鎖の還元末端のN-アセチルグルコサミンの6位にフコースの1位がα結合する糖鎖修飾に関与する酵素などのタンパク質若しくは細胞内糖ヌクレオチドGDP-フコースのゴルジ体への輸送に関与するタンパク質などの活性が低下または欠失した宿主細胞、例えば、α1,6-フコース転移酵素遺伝子が欠損したCHO細胞(国際公開第2005/035586号、国際公開第02/31140号)、レクチン耐性を獲得したLec13[Somatic Cell and Molecular genetics, 12, 55 (1986)]などを用いることもできる。
【0299】
発現ベクターの導入後、遺伝子組換え抗体を安定に発現する形質転換株は、G418硫酸塩(以下、G418と表記する)などの薬剤を含む動物細胞培養用培地で培養することにより選択する(日本国特開平2-257891号公報)。
【0300】
動物細胞培養用培地には、RPMI1640培地(インビトロジェン社製)、GIT培地(日本製薬社製)、EX-CELL301培地(ジェイアールエイチ社製)、IMDM培地(インビトロジェン社製)若しくはHybridoma-SFM(インビトロジェン社製)、またはこれら培地にFBSなどの各種添加物を添加した培地などを用いる。
【0301】
得られた形質転換株を培地中で培養することで培養上清中に遺伝子組換え抗体を発現蓄積させる。培養上清中の遺伝子組換え抗体の発現量および抗原結合活性はELISA法などにより測定できる。また、dhfr遺伝子増幅系(日本国特開平2-257891号公報)などを利用して、形質転換株の産生する遺伝子組換え抗体の発現量を向上させることができる。
【0302】
遺伝子組換え抗体は、形質転換株の培養上清よりプロテインA-カラムを用いて精製する[Monoclonal Antibodies - Principles and practice, Third edition, Academic Press (1996)、Antibodies - A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory (1988)]。また、ゲルろ過、イオン交換クロマトグラフィーおよび限外ろ過などのタンパク質の精製で用いられる方法を組み合わせることもできる。
【0303】
精製した遺伝子組換え抗体のH鎖、L鎖若しくは抗体分子全体の分子量は、ポリアクリルアミドゲル電気泳動法[Nature, 227, 680 (1970)]、またはウェスタンブロッティング法[Monoclonal Antibodies - Principles and practice, Third edition, Academic Press (1996)、Antibodies - A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory(1988)]など用いて測定することができる。
【0304】
(9)抗体断片の作製方法
本発明の抗体断片は、公知の方法に従い作製することができる。本発明の抗体断片は、上記(1)~(8)にて記載した方法に従い作製した抗体を、酵素などで切断することにより作製してもよいし、所望の抗体断片をコードする塩基配列を調製し、遺伝子工学的な手法で作製してもよい。
【0305】
(10)一価抗体の作製方法
本発明において、一価抗体は、国際公開第2014/054804号、国際公開第2011/090754号、国際公開第2007/048037号、および国際公開第2012/116927号などに記載する方法などで作製することができる。
【0306】
(11)バイスペシフィック抗体またはマルチスペシフィック抗体の製造方法
本発明のバイスペシフィック抗体またはマルチスペシフィック抗体は、上述した抗体の製造方法に準じて作製することができる。例えば、国際公開第2009/131239号、国際公開第2014/054804号、国際公開第01/077342号、米国特許出願公開第2007/0071675号明細書、国際公開第2007/024715、Wu et al.,[Nature Biotechnology,2007,25(11),p.1290-1297]、Labrijn et al.,[PNAS 2013, vol.110, no.13, p5145-5150]、Jong et al., [http://dx.doi.org/10.1371/journal.pbio.1002344]、Kontermann et al., [mAbs 2012, vol.4, issue2, p182-197]、Spiess et al., [Molecular Immunology 67 (2015) 95-106]、Ridgway et al., [Protein engineering, 1996 vol.9 no.7 pp617-621]、国際公開第2009/080251、国際公開第2010/151792および国際公開第2014/033074などに記載される方法を用いて作製することができる。
【0307】
例えば脳に存在する抗原に結合するIgG抗体のC末端に、CADM3に結合するscFvを融合させたバイスペシフィック抗体の発現ベクターは、以下に記載する方法で作製することができ、上述した抗体の発現方法および抗体の精製方法に準じて当該バイスペシフィック抗体を作製することができる。また、その他には、抗体のC末端に抗体断片を融合させたバイスペシフィック抗体も同様の方法で作製することができる。
【0308】
脳に存在する抗原に結合するIgG抗体の重鎖定常領域の合成遺伝子を鋳型として、PCR法によりCH1-Hinge-CH2-CH3-linker領域の遺伝子断片を増幅する。次に、CADM3に結合する抗体の塩基配列を鋳型として、当該抗体のVHおよびVL適切なリンカーで結合させたscFv領域の塩基配列を、PCR法などを用いて調製する。上記二つの領域をPCR法などで結合させ、得られた遺伝子断片をpCIベクターなどの適切なベクターに挿入する。
【0309】
また、脳に存在する抗原に結合するIgG抗体の軽鎖領域(VLおよびCL)の遺伝子断片、および当該抗体のVHの遺伝子断片を、それぞれ適切な鋳型を用いたPCR法により増幅し、上記ベクターの適切な位置に挿入する。
【0310】
また、本発明のバイスペシフィック抗体は、化学的手法により、IgG抗体に抗体断片を含む抗原結合部位を結合させて作製することもできる。
【0311】
3.抗体または該抗体断片の活性評価
本発明において、抗体または該抗体断片の活性評価は、以下のように行うことができる。
【0312】
(1)CADM3に対する結合活性
本発明の抗体または該抗体断片のCADM3に対する結合活性は、前述の1-(6)に記載のフローサイトメトリー、ELISA、および表面プラズモン共鳴検出などを用いて測定する。また、蛍光抗体法[Cancer Immunol. Immunother., 36, 373 (1993)]を用いて測定することもできる。
【0313】
本発明の抗体または該抗体断片がCADM3に結合する一価抗体である場合にも、同様の方法で当該一価抗体のCADM3への結合活性を測定することができる。本発明の抗体または該抗体断片がCADM3および脳に存在する抗原に結合するバイスペシフィック抗体またはマルチスペシフィック抗体である場合にも、同様の方法で当該バイスペシフィック抗体またはマルチスペシフィック抗体のCADM3または脳に存在する抗原への結合活性を測定することができる。
【0314】
(2)脳滞留性の測定方法
本発明の抗体または該抗体断片の脳滞留性は以下に記載する方法で測定することができる。
【0315】
動物に抗体または該抗体断片を投与して数日経過後に脳組織を回収し、ホモジナイズして遠心分離後の上清中の抗体または該抗体断片の濃度を測定し、単位脳重量あたりの抗体または該抗体断片の量を算出する方法、または回収した脳組織を用いて公知の免疫学的手法により抗体または該抗体断片の存在を検出する方法などが挙げられる。また、薬理学的に許容される標識を施した抗体または該抗体断片を動物に投与し、in vivoイメージングシステムで経時的に当該抗体または該抗体断片の存在を検出する方法などが挙げられる。
【0316】
脳滞留性の評価に用いる動物は、本発明の抗体または該抗体断片の用途に応じた適切な動物を選択することができる。
【0317】
(3)抗体依存性細胞傷害活性(ADCC)、補体依存性細胞傷害活性(CDC)の測定方法
ヒトCADM3発現細胞またはCADM3および脳に存在する抗原が発現している細胞に対する本発明の抗体または該抗体断片のCDC、またはADCCは公知の測定方法[Cancer Immunol. Immunother., 36, 373(1993); Current protocols in Immunology, Chapter7. Immunologic studies in humans, Editor, John E, Coligan et al., John Wiley & Sons,Inc.,(1993)]により測定することができる。
【0318】
4.抗体また抗体断片のエフェクター活性を制御する方法
本発明の抗体または該抗体断片のエフェクター活性を制御する方法としては、抗体またはFcを含む該抗体断片のFc領域の297番目のアスパラギン(Asn)に結合するN結合複合型糖鎖の還元末端に存在するN-アセチルグルコサミン(GlcNAc)にα1,6結合するフコース(コアフコースともいう)の量を制御する方法(国際公開第2005/035586号、国際公開第2002/31140号、国際公開第00/61739号)、または抗体若しくは該抗体断片のFc領域のアミノ酸残基を改変することで制御する方法などが知られている。本発明の抗体または該抗体断片にはいずれの方法を用いても、エフェクター活性を制御することができる。
【0319】
エフェクター活性とは、抗体または該抗体断片のFc領域を介して引き起こされる抗体依存性の活性をいい、ADCC、CDC、またはマクロファージ若しくは樹状細胞などの食細胞による抗体依存性ファゴサイトーシス(Antibody-dependent phagocytosis;ADP)などが知られている。
【0320】
エフェクター活性の測定法として、例えば、標的細胞、エフェクターとしてヒト末梢血単核球(PBMC)、そして標的細胞特異的な抗体または該抗体断片を混合し、4時間程度インキュベーションした後、細胞傷害の指標として遊離してきた乳酸脱水素酵素(LDH)を測定することができる。他には、遊離51Cr法またはフローサイトメトリー法などによってエフェクター活性を測定することもできる。
【0321】
抗体のFcのN結合複合型糖鎖のコアフコースの含量を制御することで、抗体またはFcを含む抗体断片のエフェクター活性を増加または低下させることができる。抗体または該抗体断片のFcに結合しているN結合複合型糖鎖に結合するフコースの含量を低下させる方法としては、α1,6-フコース転移酵素遺伝子が欠損したCHO細胞を用いて抗体または該抗体断片を発現することで、フコースが結合していない抗体または該抗体断片を取得することができる。フコースが結合していない抗体または該抗体断片は高いADCCを有する。
【0322】
一方、抗体または該抗体断片のFcに結合しているN結合複合型糖鎖に結合するフコースの含量を増加させる方法としては、α1,6-フコース転移酵素遺伝子を導入した宿主細胞を用いて抗体または該抗体断片を発現させることで、フコースが結合している抗体または該抗体断片を取得できる。フコースが結合している抗体または該抗体断片は、フコースが結合していない抗体または該抗体断片よりも低いADCCを有する。
【0323】
また、抗体または該抗体断片のFc領域のアミノ酸残基を改変することでADCCまたはCDCを増加または低下させることができる。例えば、米国特許出願公開第2007/0148165号明細書に記載のFc領域のアミノ酸配列を用いることで、抗体または該抗体断片のCDCを増加させることができる。
【0324】
また、米国特許第6,737,056号明細書、米国特許第7,297,775号明細書または米国特許第7,317,091号明細書に記載のアミノ酸改変を行うことで、ADCCまたはCDCを、増加させることも低下させることもできる。
【0325】
また本発明の抗体または該抗体断片には、上述の抗体または該抗体断片が含む定常領域におけるアミノ酸改変または糖鎖改変に合わせて、例えば、日本国特開第2013-165716号公報または日本国特開第2012-021004号公報などに記載のアミノ酸改変を行うことにより、Fc受容体への反応性を制御することで血中半減期を制御した抗体または該抗体断片も含まれる。
【0326】
さらに、上述の方法を組み合わせて、一つの抗体または該抗体断片に使用することにより、エフェクター活性や血中半減期が制御された抗体または該抗体断片を取得することができる。
【0327】
5.本発明の抗体または該抗体断片を用いた疾患の治療方法
本発明の抗体または該抗体断片は、脳内にCADM3が発現している動物の脳疾患の治療に用いることができる。
【0328】
脳疾患としては、例えば、アルツハイマー病、前駆期アルツハイマー病、ハンチントン病、パーキンソン病、脳腫瘍、多発性硬化症、筋ジストロフィー、筋萎縮性側索硬化症、多系統萎縮症、進行性核上性麻痺、線条体黒質変性症、オリーブ橋小脳萎縮症、球脊髄性筋萎縮症、脊髄小脳変性症、脳血管障害、てんかん、片頭痛、多動性障害、クロイツフェルトヤコブ病、大脳皮質基底核変性症、ライソゾーム病、うつ病、ジストニアなどが挙げられる。
【0329】
本発明の抗体または該抗体断片が治療できる脳疾患は、本発明の抗体または該抗体断片が結合する抗原、および本発明の融合抗体または融合抗体断片において抗体または該抗体断片を修飾する分子の種類などによって異なる。
【0330】
本発明の抗体または該抗体断片を含有する治療剤は、有効成分としての該抗体または該抗体断片のみを含むものであってもよいが、通常は薬理学的に許容される1以上の担体と一緒に混合し、製剤学の技術分野において公知の方法により製造した医薬製剤として提供される。
【0331】
投与経路としては、例えば、経口投与、または口腔内、気道内、直腸内、皮下、筋肉内、脳室内、腹腔内投与、皮内投与、経鼻投与、脊髄腔内投与若しくは静脈内などの非経口投与が挙げられる。投与形態としては、例えば、噴霧剤、カプセル剤、錠剤、散剤、顆粒剤、シロップ剤、乳剤、座剤、注射剤、軟膏またはテープ剤などが挙げられる。
【0332】
経口投与に適当な製剤としては、乳剤、シロップ剤、カプセル剤、錠剤、散剤または顆粒剤などが挙げられる。
【0333】
乳剤またはシロップ剤のような液体調製物は、水、ショ糖、ソルビトール若しくは果糖などの糖類、ポリエチレングリコール若しくはプロピレングリコールなどのグリコール類、ごま油、オリーブ油若しくは大豆油などの油類、p-ヒドロキシ安息香酸エステル類などの防腐剤またはストロベリーフレーバー若しくはペパーミントなどのフレーバー類などを添加剤として用いて製造する。
【0334】
カプセル剤、錠剤、散剤または顆粒剤などは、乳糖、ブドウ糖、ショ糖若しくはマンニトールなどの賦形剤、デンプン若しくはアルギン酸ナトリウムなどの崩壊剤、ステアリン酸マグネシウム若しくはタルクなどの滑沢剤、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルセルロース若しくはゼラチンなどの結合剤、脂肪酸エステルなどの界面活性剤またはグリセリンなどの可塑剤などを添加剤として用いて製造する。
【0335】
非経口投与に適当な製剤としては、注射剤、座剤または噴霧剤などである。注射剤は、塩溶液若しくはブドウ糖溶液、またはその両者の混合物からなる担体などを用いて製造する。座剤はカカオ脂、水素化脂肪またはカルボン酸などの担体を用いて製造する。
【0336】
噴霧剤は受容者の口腔および気道粘膜を刺激せず、かつ本発明の抗体または該抗体断片を微細な粒子として分散させ、吸収を容易にさせる担体などを用いて製造する。担体としては、例えば乳糖またはグリセリンなどを用いる。また、エアロゾルまたはドライパウダーとして製造することもできる。さらに、上記非経口剤においても、経口投与に適当な製剤で添加剤として例示した成分を添加することもできる。
【0337】
6.本発明の抗体または該抗体断片を用いた脳に存在する抗原の検出若しくは測定方法、または疾患の診断方法
本発明の抗体または該抗体断片を用いて、CADM3、またはCADM3と脳に存在する抗原とを検出または測定することができる。また、CADM3、またはCADM3と脳に存在する抗原とを検出または測定することにより、脳内にCADM3が発現している動物の脳疾患を診断することができる。
【0338】
脳疾患としては、例えば、アルツハイマー病、前駆期アルツハイマー病、ハンチントン病、パーキンソン病、脳腫瘍、多発性硬化症、筋ジストロフィー、筋萎縮性側索硬化症、多系統萎縮症、進行性核上性麻痺、線条体黒質変性症、オリーブ橋小脳萎縮症、球脊髄性筋萎縮症、脊髄小脳変性症、脳血管障害、てんかん、片頭痛、多動性障害、クロイツフェルトヤコブ病、大脳皮質基底核変性症、ライソゾーム病、うつ病、ジストニアなどが挙げられるが、本発明の抗体または該抗体断片が診断できる脳疾患は、本発明の抗体または該抗体断片が結合する抗原、および本発明の融合抗体または融合抗体断片において抗体または該抗体断片を修飾する分子の種類などによって異なる。
【0339】
脳内にCADM3が発現している動物の脳疾患の診断は、例えば、患者または罹患動物の脳内に存在するCADM3を免疫学的手法により検出または測定して行うことができる。また、患者または罹患動物の脳内の細胞に発現または存在しているCADM3をフローサイトメトリーなどの免疫学的手法を用いて検出することにより診断を行うことができる。
【0340】
本発明の抗体または該抗体断片として、CADM3に結合する一価抗体を用いるときには、上記と同様の方法で脳内のCADM3を測定することができる。本発明の抗体または該抗体断片としてCADM3および脳に存在する抗原に結合するバイスペシフィック抗体またはマルチスペシフィック抗体を用いるときには、上記と同様の方法で脳内のCADM3または脳に存在する抗原を検出または測定することができる。
【0341】
免疫学的手法とは、標識を施した抗原または抗体などを用いて、抗体量または抗原量を検出または測定する方法である。例えば、放射性物質標識免疫抗体法、酵素免疫測定法、蛍光免疫測定法、発光免疫測定法、ウエスタンブロット法または物理化学的手法などを用いる。
【0342】
放射性物質標識免疫抗体法は、例えば、抗原または抗原を発現した細胞などに、本発明の抗体または該抗体断片を反応させ、さらに放射線標識を施した抗イムノグロブリン抗体または該抗体断片を反応させた後、シンチレーションカウンターなどで測定する。
【0343】
酵素免疫測定法は、例えば、抗原または抗原を発現した細胞などに、本発明の抗体または該抗体断片を反応させ、さらに酵素などで標識を施した抗イムノグロブリン抗体または該抗体断片を反応させた後、基質を添加して反応液の吸光度を吸光光度計で測定する。例えば、サンドイッチELISA法などを用いる。酵素免疫測定法で用いる標識体としては、公知[酵素免疫測定法、医学書院(1987)]の酵素標識を用いることができる。
【0344】
例えば、アルカリフォスファターゼ標識、ペルオキシダーゼ標識、ルシフェラーゼ標識またはビオチン標識などを用いる。サンドイッチELISA法は、固相に抗体を結合させた後、検出または測定対象である抗原をトラップさせ、トラップされた抗原に第2の抗体を反応させる方法である。
【0345】
前記ELISA法では、検出または測定したい抗原を認識する抗体であって、抗原認識部位の異なる2種類の抗体を準備し、そのうち、第1の抗体を予めプレート(例えば、96ウェルプレート)に吸着させ、次に第2の抗体をFITCなどの蛍光物質、ペルオキシダーゼなどの酵素またはビオチンなどで標識しておく。
【0346】
上記の第1の抗体が吸着したプレートに、生体内から分離された、細胞またはその破砕液、組織またはその破砕液、細胞培養上清、血清、胸水、腹水または眼液などを反応させた後、第2の抗体を反応させ、標識物質に応じた検出反応を行う。濃度既知の抗原を段階的に希釈して作成した検量線より、被験サンプル中の抗原濃度を算出する。
【0347】
サンドイッチELISA法に用いる抗体としては、ポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体のいずれを用いてもよい。また、抗体の代わりにFab、Fab’またはF(ab)などの抗体断片を用いてもよい。サンドイッチELISA法で用いる2種類の抗体の組み合わせとしては、異なるエピトープを認識するモノクローナル抗体または該抗体断片の組み合わせでもよいし、ポリクローナル抗体とモノクローナル抗体またはそれらの抗体断片との組み合わせでもよい。
【0348】
蛍光免疫測定法は、文献[Monoclonal Antibodies-Principles and practice, Third edition, Academic Press (1996)、単クローン抗体実験マニュアル、講談社サイエンティフィック (1987)]などに記載された方法で測定する。蛍光免疫測定法で用いる標識体としては、公知[蛍光抗体法、ソフトサイエンス社(1983)]の蛍光標識を用いることができる。例えば、FITCまたはRITCなどを用いる。
【0349】
発光免疫測定法は文献[生物発光と化学発光 臨床検査42、廣川書店(1998)]などに記載された方法で測定する。発光免疫測定法で用いる標識体としては、公知の発光体標識が挙げられ、アクリジニウムエステルまたはロフィンなどを用いる。
【0350】
ウエスタンブロット法は、抗原または抗原を発現した細胞などをSDS(ドデシル硫酸ナトリウム)-PAGE(ポリアクリルアミドゲル)[Antibodies - A Laboratory Manual Cold Spring Harbor Laboratory (1988)]で分画した後、該ゲルをポリフッ化ビニリデン(PVDF)膜またはニトロセルロース膜にブロッティングし、該膜に抗原を認識する抗体または該抗体断片を反応させ、さらにFITCなどの蛍光物質、ペルオキシダーゼなどの酵素標識またはビオチン標識などを施した抗マウスIgG抗体または結合断片を反応させた後、該標識を可視化することによって測定する。一例を以下に示す。
【0351】
CADM3のアミノ酸配列を有するポリペプチドを発現している細胞や組織を溶解し、還元条件下でレーンあたりのタンパク量として0.1~30μgをSDS-PAGE法により泳動する。泳動されたタンパク質をPVDF膜にトランスファーし、BSA-PBSに室温で30分間反応させブロッキング操作を行う。
【0352】
ここで本発明の抗体または該抗体断片を反応させ、0.05~0.1%のポリオキシエチレンソルビタンモノラウラート(Tween-20)を含むPBS(以下、Tween-PBSと表記する)で洗浄し、ペルオキシダーゼ標識したヤギ抗マウスIgGを室温で2時間反応させる。
【0353】
Tween-PBSで洗浄し、ECL Western Blotting Detection Reagents(アマシャム社製)などを用いて本発明の抗体または該抗体断片が結合したバンドを検出することにより、CADM3のアミノ酸配列を有するポリペプチドを検出する。
【0354】
ウェスタンブロッティングでの検出に用いられる抗体または該抗体断片としては、天然型の立体構造を保持していないポリペプチドに結合できる抗体または該抗体断片が用いられる。
【0355】
物理化学的手法は、例えば、抗原であるCADM3と本発明の抗体または該抗体断片とを結合させることにより凝集体を形成させて、この凝集体を検出することにより行う。この他に物理化学的手法として、毛細管法、一次元免疫拡散法、免疫比濁法またはラテックス免疫比濁法[臨床検査法提要、金原出版(1998)]などを用いることもできる。
【0356】
ラテックス免疫比濁法は、抗体または抗原を感作させた粒径0.1~1μm程度のポリスチレンラテックスなどの担体を用い、対応する抗原または抗体により抗原抗体反応を起こさせると、反応液中の散乱光は増加し、透過光は減少する。この変化を吸光度または積分球濁度として検出することにより被験サンプル中の抗原濃度などを測定する。
【0357】
CADM3が発現している細胞の検出または測定は、公知の免疫学的検出法を用いることができるが、なかでも、免疫沈降法、免疫細胞染色法、免疫組織染色法または蛍光抗体染色法などを用いることが好ましい。
【0358】
免疫沈降法は、CADM3を発現した細胞などを本発明の抗体または該抗体断片と反応させた後、プロテインG-セファロースなどのイムノグロブリンに特異的な結合能を有する担体を加えて抗原抗体複合体を沈降させる。または以下のような方法によっても行うことができる。
【0359】
ELISA用96ウェルプレートに上述した本発明の抗体または該抗体断片を固相化した後、BSA-PBSによりブロッキングする。抗体が、例えば、ハイブリドーマ培養上清などの精製されていない状態である場合には、抗マウスイムノグロブリン、抗ラットイムノグロブリン、プロテイン-Aまたはプロテイン-GなどをあらかじめELISA用96ウェルプレートに固相化し、BSA-PBSでブロッキングした後、ハイブリドーマ培養上清を分注して結合させる。
【0360】
次に、BSA-PBSを捨てPBSでよく洗浄した後、ヒトCADM3を発現している細胞や組織の溶解液を反応させる。よく洗浄した後のプレートより免疫沈降物をSDS-PAGE用サンプルバッファーで抽出し、上記のウェスタンブロッティングにより検出する。
【0361】
免疫細胞染色法または免疫組織染色法は、抗原を発現した細胞または組織などを、場合によっては抗体の通過性を良くするため界面活性剤やメタノールなどで処理した後、本発明の抗体と反応させ、さらにFITCなどの蛍光標識、ペルオキシダーゼなどの酵素標識またはビオチン標識などを施した抗イムノグロブリン抗体またはその結合断片と反応させた後、該標識を可視化し、顕微鏡にて顕鏡する方法である。
【0362】
また、蛍光標識の抗体と細胞を反応させ、フロ-サイトメーターにて解析する蛍光抗体染色法[Monoclonal Antibodies-Principles and practice, Third edition, Academic Press (1996)、単クローン抗体実験マニュアル、講談社サイエンティフィック (1987)]により検出を行うことができる。特に、本発明の抗体または該抗体断片は、蛍光抗体染色法により天然型の立体構造を保持して発現している細胞の検出ができる。
【0363】
また、蛍光抗体染色法のうち、FMAT8100HTSシステム(アプライドバイオシステム社製)などを用いた場合には、形成された抗体-抗原複合体と、抗体-抗原複合体の形成に関与していない遊離の抗体または抗原とを分離することなく、抗原量または抗体量を測定できる。
【0364】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【実施例
【0365】
[実施例1]抗CADM3抗体の取得
(1)アルパカ抗体ライブラリでの抗体の取得
後述する実施例4で作製したhCADM3-FLAG_FcおよびmCADM3-FLAG_Fcを免疫原として、初回はTiterMax(TiterMax社製)、2~5回目は不完全コンプリートアジュバント(BD社製)とのエマルジョンを作製し、アルパカに免疫した。
【0366】
免疫されたアルパカの血液(50mL)からリンパ球(2×10細胞)を採取し、得られた細胞からRNA IsoPlus(TAKARA社製)を用いてRNAを抽出した。さらに、SuperScript(登録商標) III First-Strand Synthesis System for RT-PC(Invitrogen社製)を使った逆転写反応によりcDNAを合成後、アルパカIgG2(Short hinge-heavy chain antibody)、IgG3(Long hinge-heavy chain antibody)に特異的なプライマーを使用して、VHH遺伝子の増幅を行った。VHH遺伝子断片をファージミドベクターpKSTV-02(Miyazaki N., et al., J. Biochem., 158(3), 205-215, 2015)に挿入し、MicroPulser エレクトロポレーター(BioRad社製)を使ったエレクトロポレーションにより大腸菌TG1を形質転換した。
【0367】
得られた形質転換体にM13KO7 Helper Phage(Invitrogen社製)を感染させることで、VHH遺伝子がライブラリ化されたアルパカ抗体M13ファージライブラリを得た。
【0368】
このアルパカ抗体M13ファージライブラリを用いて、下記のバイオパニングの手法を用いて、抗CADM3抗体を取得した。イムノチューブに後述する実施例4のhCADM3-GSTを固相化し、0.5%BSAを用いてブロッキングした。該チューブにアルパカ抗体M13ファージライブラリを室温下で1時間反応させ、PBS-Tで洗浄後に0.1mol/Lのグリシン-塩酸緩衝液(Gly-HCl)(pH2.7)でファージを溶出した。溶出液はトリスヒドロキシメチルアミノメタン-塩酸緩衝液(Tris-HCl)(pH9.1)を加えて中和した。溶出したファージは、大腸菌TG1に感染後、ファージを増幅した。
【0369】
その後、イムノチューブに固相化したmCADM3-GSTと反応させて、洗浄および溶出を実施した。さらに、イムノチューブに固相化したhCADM3-GSTと反応させて、洗浄および溶出を実施し、hCADM3-GSTおよびmCADM3-GSTに特異的に結合するVHHを提示したファージを濃縮した。濃縮されたファージを単クローン化し、ELISAにてhCADM3-GSTおよびmCADM3-GSTへの結合性を有するクローンを選択した。
【0370】
ELISAでは、MAXISORP(NUNC社製)にhCADM3-GSTおよびmCADM3-GSTを固相化(50ng/50μL)し、0.5%BSAを用いてブロッキングした。各ウェルに各々のファージクローンを加え、室温下で1時間反応させた後、各ウェルをPBS-Tで5回洗浄した。次いで、ビオチン化抗M13ファージ抗体(Abcam社製)と西洋ワサビペルオキシダーゼで標識されたストレプトアビジン(Vector社製)を各ウェルに50μL加え、室温下1時間インキュベートした。
【0371】
マイクロプレートを、PBS-Tで洗浄後、3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジン(TMB)発色基質液(CALBIOCHEM社製)を各ウェルに加え、室温下でインキュベートした。各ウェルに1mol/Lの塩酸を加えて発色反応を止め、波長450nm(参照波長570nm)での吸光度をマイクロプレートリーダーで測定した。
【0372】
hCADM3-GSTおよびmCADM3-GSTに結合したクローンについて配列解析を行い、抗CADM3 VHH抗体iCADM3_3R1-L5、iCADM3_3R1-L8、iCADM3_3R1-L10およびiCADM3_3R1-L11を取得した。各種抗CADM3抗体のVHHをコードする塩基配列、および該塩基配列から推定されるアミノ酸配列を表1に示す。
【0373】
【表1】
【0374】
(2)ヒト抗体ファージライブラリでの抗体の取得
ヒトPBMC由来のcDNAから、PCRにてVH遺伝子断片およびVL遺伝子断片を増幅させた。VH遺伝子断片およびVL遺伝子断片をファージミドベクターpCANTAB 5E(Amersham Pharmacia社製)にそれぞれ挿入し、大腸菌TG1(Lucigen社製)を形質転換してプラスミドを得た。得られたプラスミドをM13KO7 Helper Phage(Invitrogen社製)に感染させることで、VH遺伝子およびVL遺伝子がライブラリ化されたヒト抗体M13ファージライブラリを得た。
【0375】
このヒト抗体M13ファージライブラリを用いて、下記のファージディスプレイ法を用いて、抗CADM3モノクローナル抗体を取得した。MAXISORP STARTUBE(NUNC社製)に、後述する実施例4のhCADM3-FLAG_Fc、rCADM3-FLAG_FcまたはmCADM3-FLAG_Fcを固相化し、SuperBlock Blockig Buffer(Thermo社製)を用いてブロッキングした。
【0376】
該チューブにヒト抗体M13ファージライブラリを室温下で1時間反応させ、PBSまたはPBS-Tで洗浄後に0.1mol/LのGly-HCl(pH2.2)でファージを溶出した。溶出液はTris-HCl(pH8.5)を加えて中和した。溶出したファージは、TG1コンピテントセルに感染させ、ファージを増幅した。
【0377】
その後、再度MAXISORP STARTUBEに固相化したhCADM3-FLAG_Fc、rCADM3-FLAG_FcまたはmCADM3-FLAG_Fcと反応させて、洗浄および溶出を実施した。この操作を繰り返し、hCADM3-FLAG_Fc、rCADM3-FLAG_FcおよびmCADM3-FLAG_Fcに特異的に結合するscFvを提示したファージを濃縮した。濃縮されたファージを単クローン化し、ELISAにてCADM3への結合性を有するクローンを選択した。
【0378】
ELISAは、hCADM3-FLAG_Fc、rCADM3-FLAG_Fcおよび mCADM3-FLAG_FcをMAXISORP(NUNC社製)に各々固相化し、SuperBlock Blockig Buffer(Thermo社製)を用いてブロッキングした。ネガティブコントロールとして、Fcを固相化したプレートも用意した。
【0379】
各ウェルに各々のファージクローンを加え、室温下で30分間反応させた後、各ウェルをPBS-Tで洗浄した。次いで、西洋ワサビペルオキシダーゼで標識された抗M13抗体(GEヘルスケア社製)を10%ブロックエース(大日本製薬株式会社製)含有PBS-Tで希釈した溶液を、各ウェルに加え、室温下30分間インキュベートした。
【0380】
マイクロプレートを、PBS-Tで3回洗浄後、TMB発色基質液(DAKO社製)を加え、室温下でインキュベートした。各ウェルに0.5mol/Lの硫酸を加えて発色反応を止め、波長450nm(参照波長570nm)での吸光度をマイクロプレートリーダーで測定した。
【0381】
CADM3-FLAG_Fcを用いたパニングから得られたクローンについて配列解析を行い、CADM301、CADM3102、CADM3219、CADM3301、CADM3309、CADM3312、CADM3314、CADM3316、CADM3349、CADM3351、CADM3402、CADM3404、CADM3432、CADM3448、CADM3458またはCADM3501をコードするファージミドベクターをそれぞれ取得した。
【0382】
各種抗CADM3抗体のVHまたはVLをコードする塩基配列、および該塩基配列から推定されるアミノ酸配列を表2Aおよび表2Bに示す。
【0383】
【表2A】
【0384】
【表2B】
【0385】
[実施例2]抗体作製
(1)CADM3 VHH-hG4PE(R409K)発現ベクターの構築
EUナンバリングS228P、L235EおよびR409Kのアミノ酸残基置換を含むヒトIgG4抗体(以下、IgG4改変体と略記する場合もある)のFc領域に、各抗CADM3 VHH抗体を結合させたVHH-Fc抗体を作製するために発現ベクターを構築した。
iCADM3_3R1-L5、iCADM3_3R1-L8、iCADM3_3R1-L10およびiCADM3_3R1-L11のVHHの合成遺伝子を鋳型として、PCRによりVHH領域の遺伝子断片を増幅した。重鎖定常領域の合成遺伝子を鋳型として、PCRによりHinge-CH2-CH3領域の遺伝子断片を増幅した。得られた遺伝子断片をpCIベクター(Promega社製)に挿入し、pCI_iCADM3_3R1-L5 VHH-hG4PE(R409K)ベクターを作製した。
【0386】
同様の方法で、表1に記載した各種抗CADM3抗体のVHH領域の遺伝子断片を挿入した抗体発現ベクターを作製し、それぞれpCI_iCADM3_3R1-L8 VHH-hG4PE(R409K)ベクター、pCI_iCADM3_3R1-L10 VHH-hG4PE(R409K)ベクターおよびpCI_iCADM3_3R1-L11 VHH-hG4PE(R409K)ベクターと命名した。
【0387】
(2)CADM3 scFv-hG4PE(R409K)発現ベクターの構築
抗CADM3抗体の抗体可変領域をヒトIgG4改変体のFc領域に結合させたscFv-Fc抗体を作製するために発現ベクターを構築した。実施例1の(2)で得られたCADM301をコードするファージミドベクターを鋳型として、PCRによりscFv領域の遺伝子断片を増幅した。重鎖定常領域の合成遺伝子を鋳型として、PCRによりHinge-CH2-CH3領域の遺伝子断片を増幅した。
【0388】
得られた遺伝子断片をN5ベクター(IDEC社製)に挿入し、N5_CADM301 scFv-hG4PEベクターを作製した。同様の方法で、実施例1の(2)で得られたCADM3102をコードするファージミドベクターを鋳型として、N5_CADM3102 scFv-hG4PEベクターを作製した。
【0389】
(3)CADM3 hG4PE(R409K)発現ベクターの構築
実施例1の(2)で得られたCADM3219、CADM3301、CADM3309、CADM3312、CADM3314、CADM3316、CADM3349、CADM3351、CADM3402、CADM3404、CADM3432、CADM3448、CADM3458またはCADM3501をコードするファージミドベクターをそれぞれ鋳型として、PCRにより可変領域の各遺伝子断片を増幅した。得られた各遺伝子断片をpCIベクター(Promega社製)に挿入し、pCI-hKG4PE(R409K)_CADM3219、pCI-hKG4PE(R409K)_CADM3301、pCI-hKG4PE(R409K)_CADM3309、pCI-hKG4PE(R409K)_CADM3312、pCI-hKG4PE(R409K)_CADM3314、pCI-hKG4PE(R409K)_CADM3316、pCI-hKG4PE(R409K)_CADM3349、pCI-hKG4PE(R409K)_CADM3351、pCI-hKG4PE(R409K)_CADM3402、pCI-hKG4PE(R409K)_CADM3404、pCI-hKG4PE(R409K)_CADM3432、pCI-hKG4PE(R409K)_CADM3448、pCI-hKG4PE(R409K)_CADM3458、およびpCI-hKG4PE(R409K)_CADM3501をそれぞれ作製した。
【0390】
(4)pCI_AVM-hLG4PE(R409K)-CADM3 VHHベクターの構築
抗AVM-IgG4抗体のC末端側に2つの抗CADM3 VHH抗体を結合させた抗AVM-IgG4-CADM3 VHHバイスペシフィック抗体を作製するために発現ベクターを構築した。抗AVM抗体の可変領域を鋳型としてVLおよびVH領域の遺伝子断片を、合成遺伝子を鋳型としてCLおよびCH1-Hinge-CH2-CH3-linker領域の遺伝子断片をPCRにより増幅した。また、iCADM3_3R1-L5、iCADM3_3R1-L8、iCADM3_3R1-L10およびiCADM3_3R1-L11のVHHの合成遺伝子を鋳型として、PCRによりVHH領域の遺伝子断片を増幅した。
【0391】
得られた遺伝子断片をpCIベクター(Promega社製)に挿入し、pCI_AVM-hLG4PE(R409K)-iCADM3_3R1-L5 VHHベクター、pCI_AVM-hLG4PE(R409K)-iCADM3_3R1-L8 VHHベクター、pCI_AVM-hLG4PE(R409K)-iCADM3_3R1-L10 VHHベクターおよびpCI_AVM-hLG4PE(R409K)-iCADM3_3R1-L11 VHHベクターを作製した。
【0392】
抗体発現ベクターの名称と抗体の重鎖または軽鎖をコードする塩基配列、および該塩基配列から推定されるアミノ酸配列を表3に示す。
【0393】
【表3】
【0394】
(5)抗Avermectin抗体の発現ベクターおよびpCI-AVM-hLG4PE(R409K)_AVMscFv5ベクターの構築
ネガティブコントロール抗体として、キメラ抗Avermectin(AVM)抗体を作製した。SDラットにAVMを免疫し、通常の方法で抗AVM抗体産生ハイブリドーマを樹立した。該ハイブリドーマ由来の可変領域を鋳型として、PCRによりVLおよびVHの遺伝子断片を増幅した。合成したヒトIgGのラムダ鎖定常領域をコードする塩基配列および増幅した可変領域をN5KG4PEベクター(国際公開第2002/088186号に記載)に挿入し、発現ベクターN5LG4PE_AVMを作製した。
【0395】
合成遺伝子を鋳型として、CLおよびCH1-Hinge-CH2-CH3-linker領域の遺伝子断片をPCRにより増幅した。また、N5LG4PE_AVMを鋳型として、PCRによりAVMのVH、VLの遺伝子断片を増幅した。得られた遺伝子断片をpCIベクター(Promega社製)に挿入し、pCI_AVM-hLG4PE(R409K)-AVMscFv5ベクターを作製した。
【0396】
(6)抗体の調製
抗体発現プラスミドベクターをExpi293(商標) Expression System(Thermo Fisher Scientific社製)を用いてExpi293F細胞(Thermo Fisher Scientific社製)に導入して培養し、一過性発現系で抗体を発現させた。ベクター導入3~4日後に培養上清を回収し、孔径0.22μmのメンブランフィルター(メルクミリポア社製)でろ過した。この培養上清中の抗体タンパク質をProteinA樹脂(MabSelect SuRe,GEヘルスケアバイオサイエンス社製)を用いてアフィニティー精製した。
【0397】
洗浄液としてリン酸緩衝液を用いた。プロテインAに吸着させたタンパク質を、20mmol/Lのクエン酸ナトリウムおよび50mmol/LのNaCl緩衝液(pH3.4)により溶出し、1mol/LのTris-HCl(pH8.0)を含むチューブに回収した。次に、アミコンウルトラ(メルクミリポア社製)を用いた限外ろ過とNAPカラム(GEヘルスケアバイオサイエンス社製)により溶出液の溶媒をPBSに置換後、孔径0.22μmのメンブランフィルター(メルクミリポア社製)でろ過滅菌を行った。抗体溶液の280nmの吸光度を測定し、精製抗体の濃度を算出した。
【0398】
実施例2(1)で作製したベクターを発現させて得た抗CADM3 VHH-Fc抗体を、それぞれiCADM3_3R1-L5 VHH-hG4PE(R409K)、iCADM3_3R1-L8 VHH-hG4PE(R409K)、iCADM3_3R1-L10 VHH-hG4PE(R409K)およびiCADM3_3R1-L11 VHH-hG4PE(R409K)と命名した。
【0399】
実施例2(2)で作製したベクターを発現させて得た抗CADM3 scFv-Fc抗体を、それぞれCADM301 scFv-hG4PEおよびCADM3102 scFv-hG4PEと命名した。
【0400】
実施例2(3)で作製したベクターを発現させて得た抗CADM3抗体を、CADM3219-hG4PE、CADM3301-hG4PE、CADM3309-hG4PE、CADM3312-hG4PE、CADM3314-hG4PE、CADM3316-hG4PE、CADM3349-hG4PE、CADM3351-hG4PE、CADM3402-hG4PE、CADM3404-hG4PE、CADM3432-hG4PE、CADM3448-hG4PE、CADM3458-hG4PE、およびCADM3501-hG4PEとそれぞれ命名した。
【0401】
実施例2(4)で作製したpCI_AVM-hLG4PE(R409K)-iCADM3_3R1-L5 VHHベクター、pCI_AVM-hLG4PE(R409K)-iCADM3_3R1-L8 VHHベクター、pCI_AVM-hLG4PE(R409K)-iCADM3_3R1-L10 VHHベクターおよびpCI_AVM-hLG4PE(R409K)-iCADM3_3R1-L11 VHHベクターを発現させて得た抗AVM-IgG4-CADM3 VHHバイスペシフィック抗体を、それぞれAVM IgG4PE(R409K)_iCADM3_3R1-L5 dVHH、AVM IgG4PE(R409K)_iCADM3_3R1-L8 dVHH、AVM IgG4PE(R409K)_iCADM3_3R1-L10 dVHHおよびAVM IgG4PE(R409K)_iCADM3_3R1-L11 dVHHと命名した。
【0402】
また、実施例2(5)で作製したN5LG4PE_AVMを発現させて得た抗AVM-IgG4抗体と実施例2(4)で作製したpCI_AVM-hLG4PE(R409K)-AVMscFv5ベクターを発現させて得た抗AVM-IgG4-AVM dscFvバイスペシフィック抗体を、それぞれ抗AVM抗体、AVM IgG4PE(R409K)_AVM dscFv5と命名した。
【0403】
[実施例3]CADM3発現細胞への反応性解析
ヒトCADM3をコードする塩基配列を配列番号51に、該塩基配列から推定されるアミノ酸配列を配列番号52に、マウスCADM3をコードする塩基配列を配列番号53に、該塩基配列から推定されるアミノ酸配列を配列番号54に、サルCADM3をコードする塩基配列を配列番号55に、該塩基配列から推定されるアミノ酸配列を配列番号56に示す。
【0404】
ヒトCADM3、マウスCADM3およびサルCADM3の全長遺伝子配列を合成し、それぞれの遺伝子配列をpEF6/V5-His(Thermo Fisher Scientific社製)ベクターのBamHI-NotIサイトに挿入することにより、各種CADM3の膜発現用プラスミドベクターpEF6_human CADM3、pEF6_mouse CADM3およびpEF6_cynomolgus CADM3を作製した。
【0405】
各種膜型CADM3抗原発現ベクターをFreeStyle(商標)293 Expression System(Thermo Fisher Scientific社製)を用いてExpi293F細胞に導入して培養し、一過性発現系で膜型抗原を発現させた。上記の細胞を用いて、以下の手順に従いfluoresence activated cell sorting(FACS)法により、実施例2で作製した抗体のCADM3発現細胞への反応性を解析した。
【0406】
Expi293F細胞、ヒトCADM3/Expi293F細胞、マウスCADM3/Expi293F細胞、およびサルCADM3/Expi293F細胞をそれぞれ0.1%NaN、1% FBS含有PBSのStaining Buffer(SB)に懸濁し、96穴丸底プレート(ベクトンディッキンソン社製)に分注した。
【0407】
遠心分離(2000rpm、4℃、2分間)の後、上清を除去し、ペレットへ実施例2で得た10μg/mLの各抗体を加えて懸濁した後、氷温下で30分間静置した。さらに遠心分離(2000rpm、4℃、2分間)して上清を除去し、ペレットをSBで洗浄後に、1μg/mLのRPE蛍光標識ヤギ抗ヒト抗体(SouthernBiotech社製)を加え、氷温下30分間インキュベートした。
【0408】
SBで洗浄後、SBに懸濁し、フローサイトメーターFACS CANTO II(ベクトンディッキンソン社製)で各細胞の蛍光強度を測定した。なお、ネガティブコントロールとして、10μg/mLの抗AVM抗体を用いた。
【0409】
検出結果を解析し、幾何平均(geometric mean)を利用して平均蛍光強度(mean fluorescence intensity;MFI)を算出した。さらに、各抗体10μg/mLの濃度のときのMFIについて、ヒトCADM3/Expi293F細胞とExpi293F細胞(親株)の比率(平均蛍光強度比)を算出した。
【0410】
同様の手順でサルCADM3/Expi293F細胞およびマウスCADM3/Expi293F細胞についてもExpi293F細胞(親株)に対する平均蛍光強度比を算出し、結果を表4に示す。
【0411】
【表4】
【0412】
表4に示すように、全ての抗CADM3抗体で、平均蛍光強度比はネガティブコントロールである抗AVM抗体に対して増加しており、ヒトCADM3/Expi293F細胞、マウスCADM3/Expi293F細胞およびサルCADM3/Expi293F細胞に反応性を示した(ただし、一部の抗CADM3抗体については、サルCADM3/Expi293F細胞への反応性は未評価)。よって、抗CADM3抗体はヒトCADM3、マウスCADM3、またはサルCADM3を認識して、結合することが明らかになった。
【0413】
また、AVM IgG4PE(R409K)_iCADM3_3R1-L5 dVHH、AVM IgG4PE(R409K)_iCADM3_3R1-L8 dVHH、AVM IgG4PE(R409K)_iCADM3_3R1-L10 dVHHおよびAVM IgG4PE(R409K)_iCADM3_3R1-L11 dVHHについても、同様の手順でExpi293F細胞、ヒトCADM3/Expi293F細胞およびマウスCADM3/Expi293F細胞に対して反応性を解析した結果を表5に示す。
【0414】
【表5】
【0415】
表5に示すように、全ての抗体で平均蛍光強度比はネガティブコントロールである抗AVM抗体に対して増加しており、ヒトCADM3/Expi293F細胞およびマウスCADM3/Expi293F細胞に反応することが明らかとなった。
【0416】
[実施例4]可溶型CADM3抗原の作製
(1)FLAG_Fcが結合したCADM3の細胞外ドメインタンパク質の作製
ヒトCADM3、マウスCADM3およびラットCADM3の可溶性抗原として、C末端にFLAG_Fcが付加されたCADM3の細胞外ドメインタンパク質を以下に記載する方法で作製した。
【0417】
ヒトCADM3の細胞外ドメインの合成遺伝子およびFLAG_Fcの合成遺伝子をINPEP4(IDEC社製)ベクターに挿入することにより、C末端側にFLAG_Fcが付加されたヒトCADM3の細胞外ドメインを発現するプラスミドベクターINPEP4-hCADM3-FLAG_Fcを作製した。hCADM3-FLAG_Fcをコードする塩基配列を配列番号57に、該塩基配列から推定されるアミノ酸配列を配列番号58に示す。
【0418】
マウスCADM3およびラットCADM3についても、同様の方法でプラスミドベクターINPEP4-mCADM3-FLAG_FcおよびINPEP4-rCADM3-FLAG_Fcを作製した。mCADM3-FLAG_Fcをコードする塩基配列を配列番号59に、該塩基配列から推定されるアミノ酸配列を配列番号60に、rCADM3-FLAG_Fcをコードする塩基配列を配列番号61に、該塩基配列から推定されるアミノ酸配列を配列番号62に示す。
【0419】
INPEP4-hCADM3-FLAG_Fc、INPEP4-mCADM3-FLAG_FcおよびINPEP4-rCADM3-FLAG_FcをExpi293(商標) Expression System(Thermo Fisher Scientific社製)を用いてExpi293F細胞に導入して培養し、一過性発現系でタンパク質を発現させ、実施例2と同様の方法で精製した。溶液中の精製したヒト、マウスおよびラットCADM3-FLAG_Fcタンパク質の濃度は280nmの吸光度により測定した。
【0420】
(2)GSTが結合したCADM3の細胞外ドメインタンパク質の作製
ヒトCADM3およびマウスCADM3の可溶性抗原として、C末端にGSTが付加されたCADM3の細胞外ドメインタンパク質を以下に記載する方法で作製した。
【0421】
ヒトおよびマウスCADM3の細胞外ドメインの合成遺伝子およびGSTの合成遺伝子をN5ベクター(IDEC社製)に挿入することにより、C末端側にGSTが付加されたヒトおよびマウスCADM3の細胞外ドメインを発現するプラスミドベクターN5-hCADM3-GSTおよびN5-mCADM3-GSTを作製した。
【0422】
hCADM3-GSTをコードする塩基配列を配列番号63に、該塩基配列から推定されるアミノ酸配列を配列番号64に示し、mCADM3-GSTをコードする塩基配列を配列番号65に、該塩基配列から推定されるアミノ酸配列を配列番号66に示す。
【0423】
N5-hCADM3-GSTおよびN5-mCADM3-GSTをExpi293(商標) Expression System(Thermo Fisher Scientific社製)を用いてExpi293F細胞に導入して培養し、一過性発現系でタンパク質を発現させた。ベクター導入3~4日後に培養上清を回収し、孔径0.22μmのメンブランフィルター(メルクミリポア社製)でろ過した。
【0424】
この培養上清中のタンパク質をGlutathione Sepharose 4B(GEヘルスケアバイオサイエンス社製)を用いてアフィニティー精製した。洗浄液としてリン酸緩衝液を用いた。Glutathione Sepharose 4Bに吸着させたタンパク質を、50mmol/LのTris-HClおよび10mmol/Lのreduced glutatione(pH8.0)により溶出した。
【0425】
次に、アミコンウルトラ(メルクミリポア社製)を用いた限外ろ過とNAPカラム(GEヘルスケアバイオサイエンス社製)により、溶液中の溶媒をPBSに置換した。得られた溶液を孔径0.22μmのメンブランフィルター(メルクミリポア社製)でろ過滅菌した。溶液中の精製したヒトおよびマウスCADM3-GSTタンパク質の濃度は280nmの吸光度により測定した。
【0426】
[実施例5]表面プラズモン共鳴検出によるCADM3に対する結合性の評価
実施例2で作製した抗CADM3抗体のヒトCADM3およびマウスCADM3へのアフィニティーをBiacore T-100(GE Healthcare)を用いて測定した。CM5センサーチップ上にHuman antibody Captureキットを用いて各抗体を固定化し、実施例4で作製したhCADM3-GSTおよびmCADM3-GSTをアナライトとして結合能を評価した。
【0427】
得られたセンサグラムについてBIAevaluation softwareにより解析を行うことで解離定数(KD値)を算出した。その結果、実施例2で作製した全ての抗CADM3抗体がヒトCADM3およびマウスCADM3に親和性を示した。
【0428】
[実施例6]マウス脳移行性評価
(1)抗体量測定
マウスに各抗体を9mg/kg体重で尾静脈(i.v.)投与し、3日後に採血を行った。採血と同じ日に麻酔下にて全身灌流後、脳組織を回収してその重さを測定した。また、回収した脳組織にバッファー溶液を加えホモジナイズし、遠心分離後、上清に溶出された抗体溶液を回収した。その容量を測定するとともに抗体濃度をAlphaLISA(PerkinElmer社製)により測定し、単位脳重量あたりの抗体量を算出した。なお、標準曲線はキット付属の抗体を用いて作成した。
【0429】
抗体投与3日後の血清中抗体濃度を図1(A)、単位脳重量あたりの脳組織中の抗体量を図1(B)に示す。図1(A)に示すように、抗CADM3 VHH-Fc抗体は、ネガティブコントロール(抗AVM抗体)と比較して、抗体投与3日後の血清中濃度に差はなかった。一方で、図1(B)のように、抗CADM3 VHH-Fc抗体;iCADM3_3R1-L5 VHH-hG4PE(R409K)、iCADM3_3R1-L8 VHH-hG4PE(R409K)およびiCADM3_3R1-L10 VHH-hG4PE(R409K)では脳内の抗体量が、ネガティブコントロールと比較して、約10倍に高まることが示された。
【0430】
また、上記とは異なる条件で実施した試験の方法とその結果を示す。
【0431】
ネガティブコントロール抗体(抗AVM抗体)、抗CADM3 VHH-Fc抗体;iCADM3_3R1-L8、抗CADM3抗体;CADM3312 hG4PE(R409K)、CADM3402 hG4PE(R409K)、CADM3501 hG4PE(R409K)について、5 mg/kgで尾静脈(i.v.)投与し、7日後に採血を行った。採血後に麻酔下にて全身灌流後、脳組織を回収してその重さを測定した。回収した脳組織にバッファー溶液を加えホモジナイズし、遠心分離後、上清に溶出された抗体溶液を回収した。その容量を測定するとともに抗体濃度をAlphaLISA(PerkinElmer社製)により測定し、単位脳重量あたりの抗体量を算出した。なお、標準曲線は各抗体を用いて作成した。
【0432】
抗体投与7日後の血清中抗体濃度を図2(A)、単位脳重量あたりの脳組織中の抗体量を図2(B)に示す。図2(A)に示すように、CADM3 VHH-Fc抗体;iCADM3_3R1-L8、抗CADM3抗体;CADM3312 hG4PE(R409K)、CADM3402 hG4PE(R409K)、およびCADM3501 hG4PE(R409K)抗体は、ネガティブコントロール(抗AVM抗体)と比較して、抗体投与7日後の血清中濃度に顕著な差はなかった。一方で、図2(B)に示すように、抗CADM3 VHH-Fc抗体;iCADM3_3R1-L8、ならびに抗CADM3抗体;CADM3312 hG4PE(R409K)、CADM3402 hG4PE(R409K)、およびCADM3501 hG4PE(R409K)では抗AVM抗体に比べて、脳内抗体量が増加した。従って脳内抗体量を高められる効果が確認された。
【0433】
次に、上記とは異なる条件で実施した試験の方法とその結果を示す。
マウスに各抗体を35nmol/kg体重で尾静脈(i.v.)投与し、7日後に採血を行った。採血と同じ日に麻酔下にて全身灌流後、脳組織を回収してその重さを測定した。また、回収した脳組織にバッファー溶液を加えホモジナイズし、遠心分離後、上清に溶出された抗体溶液を回収した。その容量を測定するとともに抗体濃度をAlphaLISA(PerkinElmer社製)により測定し、単位脳重量あたりの抗体量を算出した。抗体濃度はモル濃度から、モノクローナル抗体の分子量(150kDa)で換算した値で示した。なお、標準曲線は各抗体を用いて作成した。
【0434】
AVM IgG4PE(R409K)_AVM dscFv5とAVM IgG4PE(R409K)_iCADM3_3R1-L8 dVHHの血清中抗体濃度を図3(A)、脳組織中の単位脳重量あたりの抗体量を図3(B)に示す。
【0435】
図3(B)に示すように、バイスペシフィック抗体のネガティブコントロールである抗AVM-IgG4-AVM dscFvバイスペシフィック抗体;AVM IgG4PE(R409K)_AVM dscFv5と比較して、抗AVM-IgG4-CADM3 VHHバイスペシフィック抗体;AVM IgG4PE(R409K)_iCADM3_3R1-L8 dVHHでは脳内の抗体量が増加することが示された。以上より、CADM3に結合するバイスペシフィック抗体は、CADM3に結合しないバイスペシフィック抗体よりも、脳内の抗体量を高めることができることが示された。
【0436】
(2)イメージング解析
抗CADM3 VHH-Fc抗体およびネガティブコントロール(抗AVM抗体)について、Alexa FluorR 488 Protein Labeling Kit(Molecular Probes社製)にて標識を行った。標識後の各抗体を9mg/kg体重でマウスに尾静脈(i.v.)投与し、9日後に採血を行った。採血後に麻酔下にて全身灌流後、脳組織を回収し、IVIS Spectrum(パーキンエルマー社製)にて蛍光強度を測定した。
【0437】
抗体投与9日後の脳イメージング像を図4(A)に示す。脳中蛍光量を投与抗体の蛍光強度で補正した値の対ネガティブコントロール比を図4(B)に示す。図4(A)および(B)に示すように、抗CADM3 VHH-Fc抗体;iCADM3_3R1-L5 VHH-hG4PE(R409K)、iCADM3_3R1-L8 VHH-hG4PE(R409K)、iCADM3_3R1-L10 VHH-hG4PE(R409K)およびiCADM3_3R1-L11 VHH-hG4PE(R409K)ではネガティブコントロールと比較して、脳内抗体量は数倍に高まっており、抗体の分布は脳内全域に亘っていることが示された。
【0438】
また、上記とは異なる条件で実施した試験の方法とその結果を示す。
【0439】
ネガティブコントロール抗体(抗AVM抗体)、抗CADM3 VHH-Fc抗体;iCADM3_3R1-L8、ならびに抗CADM3抗体;CADM3312 hG4PE(R409K)、CADM3402 hG4PE(R409K)、CADM3501 hG4PE(R409K)について、SAIVI Alexa Fluor 647 Antibody/Protein 1 mg-Labeling Kitを用いて蛍光標識した抗体を5 mg/kgで尾静脈(i.v.)投与し、7日後に採血を行った。採血後に麻酔下にて全身灌流後、脳組織を回収し、IVIS Spectrum(パーキンエルマー社製)にて蛍光強度を測定した。
【0440】
抗体投与7日後の脳イメージング像を図5に示す。ネガティブコントロールの投与抗体が脳の中心部にごくわずかに認められる(脳の中心部のみ発色している)のに対して、いずれのCADM3抗体においてもその分布は脳内全域に亘っている(脳内全体が発色している)ことが示された。なお、白黒画像では、抗CADM3 VHH-Fc抗体;iCADM3_3R1-L8は発色が強すぎて、全体的に白く見えているが、これはネガティブコントロールの図の発色せずに白く見えていることとは異なる。
【0441】
次に、抗体投与7日後の脳中蛍光量を投与抗体の蛍光強度で補正した値の対ネガティブコントロール比を図6に示す。ネガティブコントロールと比較して、抗CADM3 VHH-Fc抗体;iCADM3_3R1-L8、ならびに抗CADM3抗体;CADM3312 hG4PE(R409K)、CADM3402 hG4PE(R409K)、およびCADM3501 hG4PE(R409K)では、いずれも脳内抗体量は数倍に高まっていた。
【0442】
[実施例7]ヒト化抗CADM3抗体の作製
(1)iCADM3_3R1-L8ヒト化抗体の各種VHHのアミノ酸配列の設計
以下に記載する方法で、iCADM3_3R1-L8ヒト化抗体の各種VHHのアミノ酸配列を設計した。VHHについて、iCADM3_3R1-L8抗体のFRのアミノ酸配列と、Kabatら[Sequences of Proteins of Immunological Interest, US Dept. Health and Human Services(1991)]で報告されているヒトFRコンセンサス配列との相同性を比較した。その結果、GenBankアクセッションナンバーACR16109.1が、iCADM3_3R1-L8抗体のVHHのFRのアミノ酸配列と最も相同性が高かった。よって、ACR16109.1のFRのアミノ酸配列の適切な位置に、それぞれ配列番号8、9および10で表されるiCADM3_3R1-L8抗体のCDR1~3のアミノ酸配列を移植したアミノ酸配列を含むiCADM3_3R1-L8_00抗体を設計した(配列番号177)。iCADM3_3R1-L8_00抗体は、選択したヒト抗体のFRのアミノ酸配列に、アルパカ抗体iCADM3_3R1-L8抗体由来のCDR1~3のアミノ酸配列のみを移植したアミノ酸配列を含むヒト化抗体である。
【0443】
しかし、一般的に、ヒト化抗体を作製する場合には、単にげっ歯類、ウサギやアルパカ等の動物由来抗体のCDRのアミノ酸配列をヒト抗体のFRのアミノ酸配列へ移植するのみでは、ヒト化抗体の結合活性が低下してしまうことが多い。このような結合活性の低下を回避するため、CDRのアミノ酸配列の移植とともに、ヒト抗体とアルパカ抗体で異なっているFRのアミノ酸残基のうち、抗体の結合活性に影響を与えると考えられるアミノ酸残基を改変することが行われている。
【0444】
そこで、本実施例においても、抗体の結合活性に影響を与えると考えられるFRのアミノ酸残基を以下のようにして同定し、改変した。iCADM3_3R1-L8_00抗体の可変領域の三次元構造をコンピューターモデリングの手法を用いて構築した。
【0445】
三次元構造座標作製および三次元構造の表示には、Discovery Studio(BIOVIA社)を用いた。また、iCADM3_3R1-L8抗体の可変領域の三次元構造のコンピューターモデルも同様にして構築した。更に、iCADM3_3R1-L8_00抗体のVHHのFRのアミノ酸配列の中で、iCADM3_3R1-L8抗体と異なっているアミノ酸残基を、iCADM3_3R1-L8抗体の同じ部位に存在するアミノ酸残基に置換したアミノ酸配列を作製し、同様に三次元構造モデルを構築した。
【0446】
これら作製したiCADM3_3R1-L8抗体、iCADM3_3R1-L8_00抗体および改変体の可変領域の三次元構造を比較し、抗体の結合活性に影響を与えると予測されるアミノ酸残基を同定した。
【0447】
同定したiCADM3_3R1-L8_00抗体のアミノ酸残基のうち、少なくとも1つ以上のアミノ酸残基を、iCADM3_3R1-L8抗体の同じ部位に存在するアミノ酸残基へ置換し、様々な改変を有するヒト化抗体のVHHを設計した。
【0448】
具体的には、同定したアミノ酸残基のうち、配列番号177で表わされるアミノ酸配列の6番目のGlnからGlu、27番目のPheからArg、37番目のValからPhe、44番目のGlyからGlu、45番目のLeuからArg、47番目のTrpからPhe、49番目のSerからAla、79番目のLeuからVal、および98番目のLysからAlaへのアミノ酸残基置換から選ばれる少なくとも1つのアミノ残基置換を含むヒト化抗体のアミノ酸配列を作製し、様々な改変を有するヒト化抗体のVHHを設計した。
【0449】
具体的には、iCADM3_3R1-L8ヒト化抗体のVHHとして、iCADM3_3R1-L8_01(配列番号68)、iCADM3_3R1-L8_02(配列番号70)、iCADM3_3R1-L8_03(配列番号72)、iCADM3_3R1-L8_04(配列番号74)を設計した。各種iCADM3_3R1-L8ヒト化抗体のVHHをコードするアミノ酸配列を表6に示す。
【0450】
(2)iCADM3_3R1-L11ヒト化抗体の各種VHHのアミノ酸配列の設計
iCADM3_3R1-L11ヒト化抗体のVHHのアミノ酸配列についても、実施例7(1)と同様の方法で設計した。アミノ酸配列の相同性が最も高いヒトFRはGenBankアクセッションナンバーAAQ05734.1であったが、抗原性が高いことが予想された。よってGermline配列VH3-53を使用することとした。
【0451】
VH3-53のFRのアミノ酸配列の適切な位置に、iCADM3_3R1-L11抗体のVHHのCDR1~3のアミノ酸配列(それぞれ配列番号18、19および20)を移植したアミノ酸配列を含むiCADM3_3R1-L11_00抗体を設計した(配列番号178)。iCADM3_3R1-L11_00抗体の結合活性に影響を与えると考えられるFRのアミノ酸残基についても、実施例7(1)と同様の手法で選択した。
【0452】
選択したアミノ酸残基のうち、配列番号178で表わされるアミノ酸配列の1番目のGluからGln、12番目のIleからVal、14番目のProからAla、27番目のPheからSer、28番目のTheからIle、29番目のValからPhe、37番目のValからTyr、44番目のGlyからGln、45番目のLysからArg、46番目のGluからGly、47番目のTrpからLeu、49番目のSerからAla、78番目のLeuからValおよび96番目のAlaからAsn、97番目のArgからAlaのアミノ酸残基置換から選ばれる、少なくとも1つのアミノ残基置換を含むヒト化抗体のアミノ酸配列を作製し、様々な改変を有するヒト化抗体のVHHを設計した。
【0453】
具体的には、iCADM3_3R1-L11ヒト化抗体のVHHとして、iCADM3_3R1-L11_01(配列番号76)、iCADM3_3R1-L11_02(配列番号78)、iCADM3_3R1-L11_03(配列番号80)、iCADM3_3R1-L11_04(配列番号82)、iCADM3_3R1-L11_05(配列番号84)、iCADM3_3R1-L11_06(配列番号86)を設計した。各種iCADM3_3R1-L11ヒト化抗体のVHHをコードするアミノ酸配列を表6に示す。
【0454】
表6に示すヒト化抗体の可変領域のアミノ酸配列をコードする塩基配列を、動物細胞で高頻度に使用されるコドンを用いて設計し、表6に示す。
【0455】
【表6】
【0456】
(3)CADM3ヒト化抗体の調製
実施例2(1)と同様の方法で、表6に記載した各種ヒト化抗CADM3抗体のVHH領域の遺伝子断片を挿入した抗体発現ベクターを作製した。実施例2(5)と同様の方法で作製したベクターを発現させて抗体を得た。
【0457】
作製したヒト化抗CADM3 VHH-Fc抗体を、それぞれiCADM3_3R1-L8_01 VHH-hG4PE(R409K)、iCADM3_3R1-L8_02 VHH-hG4PE(R409K)、iCADM3_3R1-L8_03 VHH-hG4PE(R409K)、iCADM3_3R1-L8_04 VHH-hG4PE(R409K)、iCADM3_3R1-L11_01 VHH-hG4PE(R409K)、iCADM3_3R1-L11_02 VHH-hG4PE(R409K)、iCADM3_3R1-L11_03 VHH-hG4PE(R409K)、iCADM3_3R1-L11_04 VHH-hG4PE(R409K)、iCADM3_3R1-L11_05 VHH-hG4PE(R409K)およびiCADM3_3R1-L11_06 VHH-hG4PE(R409K)と命名した。
【0458】
(4)CADM3ヒト化抗体のCADM3発現細胞への反応性解析
作製したヒト化抗CADM3 VHH-Fc抗体について、実施例3と同様の手順でExpi293F細胞、ヒトCADM3/Expi293F細胞およびマウスCADM3/Expi293F細胞に対して反応性を解析した。結果を表7および表8に示す。
【0459】
【表7】
【0460】
【表8】
【0461】
表7および表8に示すように、全ての抗体で平均蛍光強度比はコントロールである抗AVM抗体に対して増加しており、ヒト化抗CADM3抗体はヒトCADM3/Expi293F細胞およびマウスCADM3/Expi293F細胞に反応することが明らかとなった。
【0462】
作製したヒト化抗CADM3抗体について、実施例6と同様の手順で表面プラズモン共鳴検出によるCADM3に対する結合性を評価した。その結果、表9および表10に示す通り、全ての抗体がヒトCADM3およびマウスCADM3に親和性を示した。
【0463】
【表9】
【0464】
【表10】
【0465】
[実施例8]ヒト化抗CADM3抗体のマウス脳移行性評価
ネガティブコントロール抗体(抗AVM抗体)、抗CADM3 VHH-Fc抗体(iCADM3_3R1-L8 VHH-hG4PE(R409K))、ヒト化抗CADM3 VHH-Fc抗体(iCADM3_3R1-L8_04 VHH-hG4PE(R409K))について、SAIVI Alexa Fluor 647 Antibody/Protein 1mg-Labeling Kitにて標識を行った。標識後の各抗体を5mg/kg体重で尾静脈(i.v.)投与し、7日後に採血を行った。
【0466】
採血後に麻酔下にて全身灌流後、脳組織を回収してその重さを測定した。回収した脳組織にバッファー溶液を加えホモジナイズし、遠心分離後、上清に溶出された抗体溶液を回収した。その容量を測定するとともに抗体濃度をAlphaLISA(PerkinElmer社製)により測定し、単位脳重量あたりの抗体量を算出した。なお、標準曲線は各抗体を用いて作成した。また、同条件で回収した脳組織について、IVIS Spectrum(パーキンエルマー社製)にて蛍光強度を測定した。
【0467】
抗体投与7日後の血清中抗体濃度を図7(A)、脳組織中の単位脳重量あたりの抗体量を図7(B)に示す。図7(A)および(B)に示すように、iCADM3_3R1-L8 VHH-hG4PE(R409K)およびiCADM3_3R1-L8_04 VHH-hG4PE(R409K)では、血清中の抗体濃度および脳組織中の単位脳重量あたりの抗体量ともに差はなく、ヒト化後も脳内抗体量を高められる効果が維持されていることが示された。
【0468】
抗体投与7日後の脳イメージング像を図8(A)に示す。脳中蛍光量を投与抗体の蛍光強度で補正した値の対ネガティブコントロール比を図8(B)に示す。図8(A)および(B)に示すように、ネガティブコントロールと比較して、抗CADM3 VHH-Fc抗体およびヒト化抗CADM3 VHH-Fc抗体はいずれも脳内抗体量が数倍に高まっており、抗体の分布が脳内全域に亘っていることが示された。以上の結果から、抗CADM3 VHH抗体と同等の活性を維持したヒト化VHHが作製された。
【0469】
本発明を特定の態様を用いて詳細に説明したが、本発明の意図と範囲を離れることなく様々な変更および変形が可能であることは、当業者にとって明らかである。なお、本出願は、2018年6月26日付けで出願された日本特許出願(特願2018-120477)に基づいており、その全体が引用により援用される。
【配列表フリーテキスト】
【0470】
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配列番号160-人工配列の説明:CADM3458のHCDR2のアミノ酸配列
配列番号161-人工配列の説明:CADM3458のHCDR3のアミノ酸配列
配列番号162-人工配列の説明:CADM3402、CADM3404、CADM3432、CADM3448およびCADM3458のVL(シグナル配列を除く)をコードする塩基配列
配列番号163-人工配列の説明:CADM3402、CADM3404、CADM3432、CADM3448およびCADM3458のVL(シグナル配列を除く)のアミノ酸配列
配列番号164-人工配列の説明:CADM3402、CADM3404、CADM3432、CADM3448およびCADM3458のLCDR1のアミノ酸配列
配列番号165-人工配列の説明:CADM3402、CADM3404、CADM3432、CADM3448およびCADM3458のLCDR2のアミノ酸配列
配列番号166-人工配列の説明:CADM3402、CADM3404、CADM3432、CADM3448およびCADM3458のLCDR3のアミノ酸配列
配列番号167-人工配列の説明:CADM3501のVH(シグナル配列を除く)をコードする塩基配列
配列番号168-人工配列の説明:CADM3501のVH(シグナル配列を除く)のアミノ酸配列
配列番号169-人工配列の説明:CADM3501のHCDR1のアミノ酸配列
配列番号170-人工配列の説明:CADM3501のHCDR2のアミノ酸配列
配列番号171-人工配列の説明:CADM3501のHCDR3のアミノ酸配列
配列番号172-人工配列の説明:CADM3501のVL(シグナル配列を除く)をコードする塩基配列
配列番号173-人工配列の説明:CADM3501のVL(シグナル配列を除く)のアミノ酸配列
配列番号174-人工配列の説明:CADM3501のLCDR1のアミノ酸配列
配列番号175-人工配列の説明:CADM3501のLCDR2のアミノ酸配列
配列番号176-人工配列の説明:CADM3501のLCDR3のアミノ酸配列
配列番号177-人工配列の説明:iCADM3_3R1-L8_00のVHH(シグナル配列を除く)をアミノ酸配列
配列番号178-人工配列の説明:iCADM3_3R1-L11_00のVHH(シグナル配列を除く)をアミノ酸配列
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【配列表】
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