(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-05
(45)【発行日】2023-12-13
(54)【発明の名称】濾過装置及びそのフィルタ洗浄方法
(51)【国際特許分類】
B01D 29/11 20060101AFI20231206BHJP
B01D 46/682 20220101ALI20231206BHJP
B01D 29/66 20060101ALI20231206BHJP
B01D 24/48 20060101ALI20231206BHJP
B01D 29/60 20060101ALI20231206BHJP
【FI】
B01D29/10 510D
B01D46/682
B01D29/10 510F
B01D29/10 520A
B01D29/10 520B
B01D29/10 530A
B01D29/10 530B
B01D29/38 510C
B01D29/38 520C
B01D29/36 C
B01D29/36 Z
(21)【出願番号】P 2019141543
(22)【出願日】2019-07-31
【審査請求日】2022-04-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000237167
【氏名又は名称】富士フィルター工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129425
【氏名又は名称】小川 護晃
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【氏名又は名称】西山 春之
(74)【代理人】
【識別番号】100168642
【氏名又は名称】関谷 充司
(72)【発明者】
【氏名】高橋 裕一
【審査官】本間 友孝
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-047209(JP,A)
【文献】国際公開第2018/216247(WO,A1)
【文献】特開2017-006876(JP,A)
【文献】特開2015-104683(JP,A)
【文献】実開昭50-028374(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D24/00-24/48
B01D29/00-37/04
B01D46/00-46/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部から対象流体を流入させる第1ポートを有する流体流入室と、前記対象流体を濾過して濾過後の濾過流体を外部へ流出させる第2ポートを有する濾過室と、に区画されたケーシングと、
フィルタエレメントであって、前記濾過室に配置されて円筒状をなし、一端部が前記流体流入室と連通接続されて前記流体流入室から導かれた前記対象流体を内周面から外周面へ向かう方向に通過させることで濾過を行い、他端部から前記第2ポートへの前記対象流体の流出が閉止されるように構成された、フィルタエレメントと、
前記濾過流体を前記フィルタエレメントの外周面から内周面に向かう方向に吸引することで逆洗を行う逆洗機構と、
前記フィルタエレメントの内周面から外周面に向かう方向で前記フィルタエレメントを通過するように高圧流体を噴射して高圧洗浄を行う高圧洗浄機構と、
前記逆洗機構及び前記高圧洗浄機構が取り付けられ、前記流体流入室と連通する前記フィルタエレメントの内部空間において前記逆洗機構及び前記高圧洗浄機構を前記フィルタエレメントの軸線の周りで回転させる回転駆動機構と、
を備え、
前記高圧洗浄機構は、前記軸線の方向に移動可能かつ前記軸線の周りで回転可能な可動シリンダと、前記可動シリンダに収容され、前記軸線の方向に移動不能なピストン部を有するとともに、前記可動シリンダの内部空間が前記ピストン部を挟んで区画された第1流体室と第2流体室とのそれぞれに外部から前記高圧流体を供給する2つの流体供給路を有する、ピストンロッドと、前記可動シリンダに複数設けられ、一部が前記第1流体室と連通し他部が前記第2流体室と連通して前記高圧流体を外部へ噴射する噴射ノズルと、を含み、前記2つの流体供給路のうち前記高圧流体を供給する流体供給路が順次切り替えられることで前記可動シリンダが前記軸線の方向で往復移動するように構成され、
前記2つの流体供給路を短絡する短絡路に設けられ、前記2つの流体供給路のうち前記高圧流体を供給する一方の流体供給路から前記高圧流体の一部を他方の流体供給路へ供給可能な流量制御弁をさらに備えた、濾過装置。
【請求項2】
前記フィルタエレメントは複数層に重ねて形成され、前記フィルタエレメントの内周面側の最内層が最も細かい網目となっている、請求項1に記載の濾過装置。
【請求項3】
前記回転駆動機構は、駆動源と連結される第1端部回転体と、前記軸線の方向で前記第1端部回転体から離間した第2端部回転体と、前記軸線の方向に延び、前記第1端部回転体を前記第2端部回転体に連結する連結軸と、を有し、
前記可動シリンダは、前記連結軸が挿通される閉塞栓で両端部が閉塞され、前記第1端部回転体と前記第2端部回転体との間で前記軸線の方向に移動可能である、請求項1又は請求項2に記載の濾過装置。
【請求項4】
前記ピストンロッドは、前記可動シリンダに相対回転可能かつ相対移動可能に挿通されて前記軸線の方向に延び、前記第1端部回転体に相対回転可能に支持され、前記第2端部回転体を相対回転可能に貫通し、前記ケーシングに固定された、請求項3に記載の濾過装置。
【請求項5】
前記ピストンロッドは、前記可動シリンダに相対移動可能に挿通されて前記軸線の方向に延び、前記第1端部回転体及び前記第2端部回転体に相対回転不能に固定され、前記ケーシングを相対回転可能に貫通し、前記ケーシングから外部に延びた延出端部に外部から前記2つの流体供給路に前記高圧流体を供給するように構成されたロータリージョイントを有する、請求項3に記載の濾過装置。
【請求項6】
前記フィルタエレメントの前記他端部は蓋板で閉塞され、
前記ケーシングには該ケーシング及び前記蓋板を貫通して前記
フィルタエレメントの内部空間に開口する第1ドレンケースが固定され、
前記第2端部回転体は前記第1ドレンケースの開口部に回転可能に支持されるとともに、前記フィルタエレメントは前記第1ドレンケースが前記蓋板の貫通孔に嵌合することで前記第1ドレンケースに支持され、
前記逆洗により前記濾過流体が前記フィルタエレメントを通過して生成された逆洗流体は、前記第2端部回転体の内部通路を介して前記第1ドレンケースに吐出される、請求項3~請求項5のいずれか1つに記載の濾過装置。
【請求項7】
前記ケーシングには、前記第1ドレンケースの外周面を離間して囲みつつ前記ケーシング及び前記蓋板を貫通して前記
フィルタエレメントの内部空間に開口する第2ドレンケースが固定され、
前記フィルタエレメントは、前記第1ドレンケースに代えて前記第2ドレンケースが前記蓋板の貫通孔に嵌合することで前記第2ドレンケースに支持され、
前記高圧洗浄によって生成された洗浄流体は、前記第2ドレンケースの開口部を介して前記第2ドレンケースに吐出される、請求項6に記載の濾過装置。
【請求項8】
前記濾過室は、前記フィルタエレメントが配置されるとともに前記第2ポートを介して外部に連通する第1濾過室と、前記フィルタエレメントの前記他端部が連通接続される第2濾過室と、に区画され、
前記ケーシングには該ケーシングを貫通して前記
フィルタエレメントの内部空間又は前記第2濾過室で開口する第1ドレンケースが固定され、
前記第2端部回転体は前記第1ドレンケースの開口部に回転可能に支持され、
前記逆洗により前記濾過流体が前記フィルタエレメントを通過して生成された逆洗流体は、前記第2端部回転体の内部通路を介して前記第1ドレンケースに吐出される、請求項3~請求項5のいずれか1つに記載の濾過装置。
【請求項9】
前記第2濾過室に連通接続されるドレンパイプをさらに備えた、請求項8に記載の濾過装置。
【請求項10】
前記逆洗機構、前記高圧洗浄機構及び前記回転駆動機構を制御する制御装置をさらに備え、
前記制御装置は、前記逆洗機構に前記逆洗を行わせた後に、前記高圧洗浄機構に前記高圧洗浄を行わせる、請求項1~請求項9のいずれか1つに記載の濾過装置。
【請求項11】
前記制御装置は、前記フィルタエレメントの内周面側の圧力と外周面側の圧力との差圧が所定値未満である場合には、前記高圧洗浄を省略する、請求項10に記載の濾過装置。
【請求項12】
前記制御装置は、前記高圧洗浄を行っているときに、前記噴射ノズルの前記フィルタエレメントの軸線方向の移動速度、又は、前記回転駆動機構の回転速度を調整する、請求項10又は請求項11に記載の濾過装置。
【請求項13】
外部から対象流体を流入させる第1ポートを有する流体流入室と、前記対象流体を濾過して濾過後の濾過流体を外部へ流出させる第2ポートを有する濾過室と、に区画されたケーシングと、
フィルタエレメントであって、円筒状に形成されて前記濾過室に配置され、一端部が前記流体流入室と連通接続されて前記流体流入室から導かれた前記対象流体を内周面から外周面へ向かう方向に通過させることで濾過を行い、他端部から前記第2ポートへの前記対象流体の流出を閉止するように構成された、フィルタエレメントと、
を備えた濾過装置のフィルタ洗浄方法であって、
前記濾過流体を前記フィルタエレメントの外周面から内周面に向かう方向に吸引することで逆洗を行うことと、
前記フィルタエレメントの内周面から外周面に向かう方向で前記フィルタエレメントを通過するように高圧流体を噴射して高圧洗浄を行うことと、
前記逆洗及び前記高圧洗浄を行っている間、前記流体流入室と連通する前記フィルタエレメントの内部空間において前記逆洗を行う機構及び前記高圧洗浄を行う機構を前記フィルタエレメントの軸線の周りで回転させることと、
を含み、
前記高圧洗浄を行う機構は、前記軸線の方向に移動可能かつ前記軸線の周りで回転可能な可動シリンダと、前記可動シリンダに収容され、前記軸線の方向に移動不能なピストン部を有するとともに、前記可動シリンダの内部空間が前記ピストン部を挟んで区画された第1流体室と第2流体室とのそれぞれに外部から前記高圧流体を供給する2つの流体供給路を有する、ピストンロッドと、一部が前記第1流体室と連通し他部が前記第2流体室と連通して前記可動シリンダに複数設けられて、前記高圧流体を噴射する噴射ノズルと、を含み、前記2つの流体供給路のうち前記高圧流体を供給する流体供給路が順次切り替えられることで前記可動シリンダが前記軸線の方向で往復移動するように構成され、
前記2つの流体供給路のうち前記高圧流体を供給する一方の流体供給路から前記高圧流体の一部を他方の流体供給路へ供給することで前記可動シリンダの移動速度を低下させる、濾過装置のフィルタ洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルタエレメントを用いて流体を濾過する濾過装置及びそのフィルタ洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
濾過装置及びそのフィルタ洗浄方法として、例えば特許文献1に記載されているように、円筒状のフィルタエレメントの外周面から内周面に向かう方向で濾過を行い、フィルタエレメントを回転させた状態で外周面から逆洗及び高圧洗浄を行うものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、逆洗を行う逆洗機構及び高圧洗浄を行う高圧洗浄機構は円筒状のフィルタエレメントの外側に配置されることから、濾過装置の小径化には限界があり、製造コストの低減が困難となっていた。また、円筒状のフィルタエレメントの外周面から内周面に向かう方向で濾過を行っているため、フィルタエレメントには対象流体によって内方に向けて押し潰す力が作用し、フィルタエレメントの強度を維持する上で好ましくない。さらに、逆洗機構により発生した逆洗流体を排出する配管が逆洗機構の取り外し方向とは異なる方向で濾過装置の外部に突出しているので、濾過装置のメンテナンス時に逆洗機構を取り外すことが容易であるとはいえなかった。
【0005】
そこで、本発明は以上のような問題点に鑑み、濾過装置の小径化、フィルタエレメントの強度向上、及びメンテナンス性の向上を図った濾過装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このため、本発明に係る濾過装置は、外部から対象流体を流入させる第1ポートを有する流体流入室と、対象流体を濾過して濾過後の濾過流体を外部へ流出させる第2ポートを有する濾過室と、に区画されたケーシングと、フィルタエレメントであって、濾過室に配置されて円筒状をなし、一端部が流体流入室と連通接続されて流体流入室から導かれた対象流体を内周面から外周面へ向かう方向に通過させることで濾過を行い、他端部から第2ポートへの対象流体の流出が閉止されるように構成された、フィルタエレメントと、濾過流体をフィルタエレメントの外周面から内周面に向かう方向に吸引することで逆洗を行う逆洗機構と、フィルタエレメントの内周面から外周面に向かう方向でフィルタエレメントを通過するように高圧流体を噴射して高圧洗浄を行う高圧洗浄機構と、逆洗機構及び高圧洗浄機構が取り付けられ、流体流入室と連通するフィルタエレメントの内部空間において逆洗機構及び高圧洗浄機構をフィルタエレメントの軸線の周りで回転させる回転駆動機構と、を備え、高圧洗浄機構は、軸線の方向に移動可能かつ軸線の周りで回転可能な可動シリンダと、可動シリンダに収容され、軸線の方向に移動不能なピストン部を有するとともに、可動シリンダの内部空間がピストン部を挟んで区画された第1流体室と第2流体室とのそれぞれに外部から高圧流体を供給する2つの流体供給路を有する、ピストンロッドと、可動シリンダに複数設けられ、一部が第1流体室と連通し他部が第2流体室と連通して高圧流体を外部へ噴射する噴射ノズルと、を含み、2つの流体供給路のうち高圧流体を供給する流体供給路が順次切り替えられることで可動シリンダが軸線の方向で往復移動するように構成され、2つの流体供給路を短絡する短絡路に設けられ、2つの流体供給路のうち高圧流体を供給する一方の流体供給路から高圧流体の一部を他方の流体供給路へ供給可能な流量制御弁をさらに備える。
【0007】
また、本発明に係る濾過装置のフィルタ洗浄方法は、外部から対象流体が流入する第1ポートを有する流体流入室と、対象流体を濾過して濾過後の濾過流体を外部へ流出させる第2ポートを有する濾過室と、に区画されたケーシングと、フィルタエレメントであって、円筒状に形成されて濾過室に配置され、一端部が流体流入室と連通接続されて流体流入室から導かれた対象流体を内周面から外周面へ向かう方向に通過させることで濾過を行い、他端部から第2ポートへの対象流体の流出を閉止するように構成された、フィルタエレメントと、を備えた濾過装置において、濾過流体をフィルタエレメントの外周面から内周面に向かう方向に吸引することで逆洗を行うことと、フィルタエレメントの内周面から外周面に向かう方向でフィルタエレメントを通過するように高圧流体を噴射して高圧洗浄を行うことと、逆洗及び高圧洗浄を行っている間、流体流入室と連通するフィルタエレメントの内部空間において逆洗を行う機構及び高圧洗浄を行う機構をフィルタエレメントの軸線の周りで回転させることと、を含み、高圧洗浄を行う機構は、軸線の方向に移動可能かつ軸線の周りで回転可能な可動シリンダと、可動シリンダに収容され、軸線の方向に移動不能なピストン部を有するとともに、可動シリンダの内部空間がピストン部を挟んで区画された第1流体室と第2流体室とのそれぞれに外部から高圧流体を供給する2つの流体供給路を有する、ピストンロッドと、一部が第1流体室と連通し他部が第2流体室と連通して可動シリンダに複数設けられて、高圧流体を噴射する噴射ノズルと、を含み、2つの流体供給路のうち高圧流体を供給する流体供給路が順次切り替えられることで可動シリンダが軸線の方向で往復移動するように構成され、2つの流体供給路のうち高圧流体を供給する一方の流体供給路から高圧流体の一部を他方の流体供給路へ供給することで可動シリンダの移動速度を低下させる。
【発明の効果】
【0008】
本発明の濾過装置によれば、濾過装置の小径化、フィルタエレメントの強度向上、及びメンテナンス性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1実施形態に係る濾過装置の一例を示す中央縦断面図である。
【
図3】同濾過装置におけるフィルタの層構造の一例を示す断面図である。
【
図4】同濾過装置の濾過時の動作を示す中央縦断面図である。
【
図5】同濾過装置の逆洗時の動作を示す中央縦断面図である。
【
図6】同濾過装置の高圧洗浄時の第1の動作を示す中央縦断面図である。
【
図7】同濾過装置の高圧洗浄時の第2の動作を示す中央縦断面図である。
【
図8】同濾過装置における流量制御弁による動作を示す中央縦断面図である。
【
図9】同濾過装置の一部分解状態を示す断面図である。
【
図10】同濾過装置の変形例を示す中央断面図である。
【
図11】第2実施形態に係る濾過装置の一例を示す中央縦断面図である。
【
図13】同濾過装置の第1変形例を示す中央断面図である。
【
図14】同濾過装置の第2変形例を示す一部中央断面図である。
【
図15】第3実施形態に係る濾過装置の一例を示す中央断面図である。
【
図16】第4実施形態に係る濾過装置の一例を示す概略構成図である。
【
図17】同濾過装置におけるフィルタ洗浄処理の一例を示すフローチャートである。
【
図18】
図14のフィルタ洗浄処理の第1変形例を示すフローチャートである。
【
図19】
図14のフィルタ洗浄処理の第2変形例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付された図面を参照し、本発明を実施するための実施形態について、詳細に説明する。
【0011】
〔第1実施形態〕
図1及び
図2は、第1実施形態に係る濾過装置の一例を示す。この濾過装置は、濾過の対象となる各種流体(以下、「対象流体」という)を、内蔵のフィルタエレメントに通過させて濾過を行う濾過機能を有する。対象流体としては、河川水、湖沼水若しくは海水、各種装置の冷却水若しくはプロセス液等の産業一般に用いられる液体、潤滑油若しくはディーゼル燃料油等の油、化学工場等で使用される各種原料気体、又は、船舶のバラスト水等がある。具体的には、濾過装置は、濾過機能を具現化する構成として、ケーシング1及びフィルタユニット2を備える。
【0012】
ケーシング1は、濾過装置の外殻をなす筒状体(例えば円筒体)11であり、一端部の開口が第1ケーシング蓋板12で閉塞されるとともに他端部の開口が第2ケーシング蓋板13で閉塞されて、内部に密閉された空間を有する。ケーシング1の内部は、第1ケーシング蓋板12及び第2ケーシング蓋板13に対向する(例えば略平行な)隔壁板14で2つの空間に仕切られる。第1ケーシング蓋板12と隔壁板14との間の空間は、外部から対象流体が流入する流体流入室15が形成され、隔壁板14と第2ケーシング蓋板13との間の空間は、流体流入室15の対象流体を濾過する濾過室16が形成される。ケーシング1の材質は、金属又は合成樹脂などであり、その形状・大きさは、濾過装置の使用目的、対象流体の種類若しくは量、又は、濾過装置の設置場所等に応じて適宜決められる。
【0013】
流体流入室15は、筒状体11の内外を貫通する第1ポート17を有し、この第1ポート17を介して、対象流体を外部から流入させる。濾過室16は、筒状体11の内外を貫通する第2ポート18を有し、この第2ポート18を介して、対象流体の濾過後の流体(以下、「濾過流体」という)を外部へ流出させる。流体流入室15と濾過室16とは、第1ケーシング蓋板12から第2ケーシング蓋板13へ向かう方向で隔壁板14を貫通する略円形状の連絡孔14aにより連通する。
【0014】
フィルタユニット2は、対象流体を濾過する円筒状のフィルタエレメント21を有し、フィルタエレメント21の軸線21aが隔壁板14から第2ケーシング蓋板13へ向けて延びるようにして濾過室16内に配置される。フィルタエレメント21の一端部の外周には全周にわたって放射状にフランジ部22が取り付けられ、フィルタエレメント21の他端部の開口はフィルタ蓋板23で閉塞される。フランジ部22及びフィルタ蓋板23は、フィルタエレメント21の径方向の形状を維持する構造体としても機能する。フィルタエレメント21の一端部は、フランジ部22が連絡孔14aの周囲に接続固定されることで流体流入室15に連通接続され、フィルタエレメント21の一端部の開口が流体流入室15に臨む。これにより、フィルタエレメント21の内部空間Fは一端部の開口を介して流体流入室15の一部を構成する。流体流入室15に流入した対象流体は、フィルタエレメント21の内周面(以下、「濾過面」という)から外周面(以下、「反濾過面」という)に向かう方向でフィルタエレメント21を通過することで濾過され、これにより濾過流体が生成される。
【0015】
フィルタエレメント21は、
図3に示す従来のフィルタエレメントと同様に、複数層に重ねられており、フィルタエレメント21の濾過面側の最内層が最も細かい網目となっているものであればよい。例えば、複数積層した金網を焼結して保形性を高め円筒状に成形したものや、円筒状のノッチワイヤーフィルタ、ウェッジワイヤーフィルタ、板部材に細孔をあけたもの等がある。焼結したものの場合は、最内層の網目の大きさは10~200μmのもの、それより外側の層の網目の大きさは200~5000μmのものの中から適宜選定される。この場合、最内層以外の補強メッシュや保護メッシュは、フィルタユニット2の強度に係わるものであり、必要な強度が得られるように、その層数、網目の大きさ及び線材径を選択する。また、メッシュの織り方は、平織り、綾織り、朱子織り、畳織り、綾畳織り等が適用できる。なお、フィルタエレメント21の反濾過面側の最外層を金網として、その内側に例えば角穴が無数に穿設された円筒状のパンチングプレートや、複数本の細いロッドを縦横方向に並べた補強部材を配設した状態で焼結してもよい。
【0016】
濾過装置は、濾過機能に加えて、フィルタエレメント21に捕捉された微粒子や塵埃等の捕捉物をフィルタエレメント21からはく離させるフィルタ洗浄機能を有している。フィルタ洗浄機能には、逆洗及び高圧洗浄が含まれる。濾過装置は、フィルタ洗浄機能を具現化する構成として、逆洗用ドレンケース3、回転駆動機構4、逆洗機構5及び高圧洗浄機構6を備える。
【0017】
逆洗用ドレンケース3は、一端部がフィルタエレメント21の内部空間Fで開口し、他端部が軸線21aの方向にフィルタ蓋板23及び第2ケーシング蓋板13を貫通してケーシング1の外部に延出し、その延出端開口が閉塞された有底筒状体(例えば有底円筒体)である。逆洗用ドレンケース3は、その一端部がフィルタ蓋板23の貫通孔に嵌合することで、フィルタエレメント21を支持する。逆洗用ドレンケース3は、後述のように逆洗を行うことでフィルタエレメント21からはく離した捕捉物を含む流体(以下、「逆洗流体」という)を収容する逆洗用ドレン室31を筒状体の内部空間に形成するものであり、ケーシング1の一部を構成する。逆洗用ドレンケース3は、逆洗用ドレン室31と濾過装置の外部とを連通する逆洗用ドレンポート32を有する。なお、フィルタ蓋板23の貫通孔の内周面とこれに挿通される逆洗用ドレンケース3の外周面との間には、流体漏れ防止を目的としたOリング等のシール部材23aが設けられる。
【0018】
回転駆動機構4は、例えば減速機付モータ等の駆動源41をケーシング1の外部に有し、駆動源41から出力軸42を介して逆洗機構5及び高圧洗浄機構6に回転力を伝達する機構である。例えば、フィルタエレメント21の軸線21aが鉛直方向である場合には、第1ケーシング蓋板12の上に駆動源41が設置される。回転駆動機構4は、出力軸42から逆洗機構5及び高圧洗浄機構6に回転力を伝達する構成として、ケーシング1の外部から流体流入室15及びフィルタエレメント21の内部空間Fにかけて、第1端部回転体43、第2端部回転体44及び連結軸45を有する。
【0019】
第1端部回転体43は、ケーシング1の外部において回転力伝達可能に出力軸42に連結される。第1端部回転体43は、出力軸42との連結部から第1ケーシング蓋板12を貫通して流体流入室15へ延出し、流体流入室15において第1ケーシング蓋板12に配置固定された環状の第1軸受46に軸線21aの周りで相対回転可能に挿通される。なお、第1ケーシング蓋板12の貫通孔の内周面とこれに挿通される第1端部回転体43の外周面との間には、ケーシング1の内外間の流体漏れ防止のためにOリング等のシール部材42aが設けられる。
【0020】
第2端部回転体44は、軸線21aの方向でフィルタ蓋板23の近傍位置において、逆洗用ドレンケース3の一端部の開口に外周面が密接に嵌合固定された環状の第2軸受47に軸線21aの周りで相対回転可能に挿通される。第2端部回転体44が第2軸受47に相対回転可能に挿通されることで、逆洗用ドレンケース3の一端部の開口が閉塞される。第2端部回転体44は、軸線21aと略平行に直線状に延びる少なくとも1つの連結軸45によって第1端部回転体43に連結され、第2端部回転体44には第1端部回転体43から連結軸45を介して出力軸42の回転力が伝達される。
【0021】
このように連結軸45で連結された第1端部回転体43及び第2端部回転体44は、第1軸受46及び第2軸受47により軸線21aの周りで回転可能に支持されるとともに、軸線21aの方向における移動が第1軸受46と第2軸受47との間に規制される。
【0022】
逆洗機構5は、フィルタエレメント21の反濾過面から濾過面へ向けて濾過流体を通過させて吸引する逆洗を行うことで、主に、濾過面側から捕捉された、最内層等の捕捉物を除去して洗浄することを目的とした機構である。具体的には、逆洗機構5は、逆洗ヘッド51及び除去ブラシ52を有する。
【0023】
逆洗ヘッド51は、フィルタエレメント21のフランジ部22からフィルタ蓋板23まで濾過面に沿って延びる、両端が閉塞された管状体である。逆洗ヘッド51は、第1端部回転体43及び第2端部回転体44の少なくとも一方に接続固定され、回転駆動機構4によって軸線21aの周りで回転する。逆洗ヘッド51は、その管状体のうち濾過面に臨む部分で管内外を連通する吸引孔51aを管長方向の全長にわたって有する。逆洗流体は、逆洗ヘッド51が吸引孔51aを介してフィルタエレメント21の反濾過面から濾過面へ向かう方向に濾過流体を吸引して、濾過流体がフィルタエレメント21を通過したときに発生する。なお、逆洗ヘッド51は、回転駆動機構4によって回転したときに、吸引孔51aの開口端部がフィルタエレメント21の濾過面と摺接するように構成されてもよい。
【0024】
逆洗ヘッド51には管内から第2端部回転体44に向けて貫通する逆洗流体吐出ポート51bが形成され、この逆洗流体吐出ポート51bは第2端部回転体44に形成された内部通路である逆洗流体吐出路44aと連通接続される。この逆洗流体吐出路44aによって、逆洗ヘッド51の管内に発生した逆洗流体を逆洗流体吐出ポート51bから逆洗用ドレン室31へ吐出する。
【0025】
除去ブラシ52は、回転駆動機構4により逆洗ヘッド51が回転したときに、先端が濾過面と摺接する摺接部材であり、逆洗ヘッド51の吸引孔51aの周囲に植毛される。除去ブラシ52のブラシ毛の材質は、例えば天然若しくは合成の繊維、又は、鋼、銅、真鍮等の金属線であり、濾過装置の使用目的及び対象流体の種類に応じて適宜選択される。なお、除去ブラシ52の代わりに、刃状又はヘラ状に形成された、金属製、樹脂製又はゴム製のスクレーパを摺接部材として、吸引孔51aの周囲に設けることもできる。
【0026】
高圧洗浄機構6は、フィルタエレメント21の濾過面に高圧流体を噴射して反濾過面へ通過させる高圧洗浄を行うことで、主に、逆洗では除去困難な中間層や最外層等の捕捉物を除去することを目的とした機構である。この高圧洗浄機構6は、回転駆動機構4による回転運動に加えて、軸線21aの方向で往復移動可能に構成される。具体的には、高圧洗浄機構6は、ピストンロッド61及びこれが内部に挿通される可動シリンダ62を有する。
【0027】
ピストンロッド61は、その軸線が軸線21aと共通の円柱体ないし円筒体であり、逆洗用ドレンケース3の外部から第2端部回転体44を相対回転可能に貫通して第1端部回転体43まで延びる。ピストンロッド61の一端部は、ストッパー兼回り止めとしての機能を有する固定具63によって逆洗用ドレンケース3に固定される。ピストンロッド61の他端部は中間軸受48を介して第1端部回転体43に相対回転可能に支持される。なお、第2端部回転体44の貫通孔の内周面とこれを貫通するピストンロッド61の外周面との間には、フィルタエレメント21の内部空間Fと逆洗用ドレン室31との間における液密又は気密のためにOリング等のシール部材44bが設けられる。
【0028】
ピストンロッド61は、第1端部回転体43と第2端部回転体44との間の中間位置で、全周が径方向に膨出した円盤状のピストン部61cを有する。このピストン部61cは、その軸線が軸線21aと共通である。また、ピストンロッド61の内部には、高圧流体を供給するための第1流体供給路61a及び第2流体供給路61bが設けられる。第1流体供給路61aは、ピストン部61cと第1端部回転体43との間のうちピストン部61cの近傍でピストンロッド61の外部へ開口する。第2流体供給路61bは、ピストン部61cと第2端部回転体44との間のうちピストン部61cの近傍でピストンロッド61の外部へ開口する。そして、第1流体供給路61a及び第2流体供給路61bは、ピストンロッド61が逆洗用ドレンケース3に固定される一端部まで延びる。
【0029】
可動シリンダ62は、その内部空間に、ピストンロッド61が挿通されて、ピストン部61cを軸線21aの方向で相対移動可能に収容する円筒体である。可動シリンダ62において、一端部の開口は、ピストンロッド61が軸線21aの方向で相対移動可能に貫通した第1閉塞栓62aで閉塞される。また、可動シリンダ62において、他端部の開口は、ピストンロッド61が軸線21aの方向で相対移動可能に貫通した第2閉塞栓62bで閉塞される。第1閉塞栓62a及び第2閉塞栓62bにおいて、連結軸45が軸線21aの方向で相対移動可能に貫通する。可動シリンダ62の内部空間は、ピストン部61cによって2つの流体室に区画され、ピストン部61cと第1閉塞栓62aとの間に第1流体室62cが形成され、ピストン部61cと第2閉塞栓62bとの間に第2流体室62dが形成される。第1流体室62cには、第1流体供給路61aを介して高圧流体が供給され、第2流体室62dには、第2流体供給路61bを介して高圧流体が供給される。
【0030】
可動シリンダ62は、ピストン部61cに対して、軸線21aと共通の軸線で相対回転可能となっている。また、第1閉塞栓62a及び第2閉塞栓62bはピストンロッド61に対して相対回転可能に構成される。
【0031】
なお、可動シリンダ62の内周面とピストン部61cの外周面との間には、第1流体室62cと第2流体室62dとの間の流体漏れ防止のためにOリング等のシール部材62eが設けられる。また、ピストンロッド61の外周面と第1閉塞栓62a及び第2閉塞栓62bの各貫通孔の内周面との間には、それぞれ、可動シリンダ62の内外間の流体漏れ防止のためにOリング等のシール部材62f,62gが設けられる。
【0032】
第1閉塞栓62aには、第1流体室62c内の高圧流体をフィルタエレメント21の内周面に向けて噴射する第1噴射ノズル64が取り付けられ、第1流体室62cと第1噴射ノズル64とは第1噴射経路62hによって連通される。第2閉塞栓62bには、第2流体室62d内の高圧流体をフィルタエレメント21の内周面に向けて噴射する第2噴射ノズル65が取り付けられ、第2流体室62dと第2噴射ノズル65とは第2噴射経路62iによって連通される。
【0033】
上記の構成において、回転駆動機構4又はピストンロッド61の軸線と軸線21aとの間に誤差がある場合でも、以下の理由により大きな問題は発生しない。すなわち、噴射ノズル64,65から濾過面に高圧流体を噴射する高圧洗浄機構6はフィルタエレメント21とは接触しないので、逆洗ヘッド51が濾過面と摺接しない場合には、可撓性を有する除去ブラシ52の撓みによって軸線の誤差を吸収できるからである。
【0034】
次に、濾過装置において、濾過、逆洗及び高圧洗浄に要する外部配管系と各種圧力の検出手段とについて説明する。
【0035】
流体流入室15の第1ポート17には、対象流体を外部から供給するための対象流体流入管L1が接続される。対象流体流入管L1は、その途中で管路の開閉を行う流入バルブVIを介して、ポンプ等の1次圧P1の対象流体供給源と接続される。濾過室16の第2ポート18には、濾過流体を外部へ流出させるための濾過流体流出管L2が接続される。濾過流体流出管L2は、その途中で管路の開閉を行う流出バルブVOを介して、濾過流体貯留槽等の2次圧P2の圧力容器に接続される。逆洗用ドレン室31の逆洗用ドレンポート32は、逆洗用ドレン室31に収容した逆洗流体を排出するための逆洗流体排出管L3と接続される。逆洗流体排出管L3は、その途中で管路の開閉を行う逆洗用ドレンバルブVDを介して、大気圧等の周囲圧力P0の空間に開放される。ここで、1次圧P1、2次圧P2及び周囲圧力P0は、この順番で圧力が小さくなる(P0<P2<P1)。1次圧P1は、フィルタエレメント21の濾過抵抗等による濾過装置の内部における圧力損失と配管やバルブ等の流路損失とを2次圧P2に加算した値より大きくなるように設定される。
【0036】
第1流体供給路61aは、供給圧力PH(例えば10MPa)の清浄な高圧流体を供給する高圧流体供給源と接続された供給ポートを有する三方弁VHの第1分岐ポートに、第1流体供給管Laを介して接続される。また、第2流体供給路61bは、三方弁VHの第2分岐ポートに第2流体供給管Lbを介して接続される。三方弁VHは、供給ポート及び第1分岐ポートが開放される第1の設定、供給ポート及び第2分岐ポートが開放される第2の設定、あるいは、少なくとも供給ポートが閉止される第3の設定のいずれか1つに設定される。第1の設定では、第1流体供給路61aを介して第1流体室62cに高圧流体が供給され、第2の設定では、第2流体供給路61bを介して第2流体室62dに高圧流体が供給される。三方弁VHを第1の設定と第2の設定との間で切り替えることで、可動シリンダ62が軸線21aの方向で往復移動するようになっている。
【0037】
濾過装置は、フィルタエレメント21による濾過の圧力損失を検出するために、フィルタ内圧検出手段Sin及びフィルタ外圧検出手段Soutを備える。フィルタ内圧検出手段Sinは、フィルタエレメント21の濾過面側である内部空間Fの圧力(フィルタ内圧Pin)を検出するための圧力センサを有し、その出力信号に基づいてフィルタ内圧Pinを表示する。同様に、フィルタ外圧検出手段Soutは、フィルタエレメント21の反濾過面側である濾過室16の圧力(フィルタ外圧Pout)を検出するための圧力センサを有し、その出力信号に基づいてフィルタ外圧Poutを表示する。
【0038】
また、濾過装置は、第1流体供給路61aの流体圧力Paを検出するための第1流体圧力検出手段Saと、第2流体供給路61bの流体圧力Pbを検出するための第2流体圧力検出手段Sbと、を備える。第1流体圧力検出手段Saは、例えば第1流体供給管Laにおいて、第1流体供給路61aの流体圧力Paを検出するための圧力センサを有し、その出力信号に基づいて流体圧力Paを表示する。同様に、第2流体圧力検出手段Sbは、例えば第2流体供給管Lbにおいて、第2流体供給路61bの流体圧力Pbを検出するための圧力センサを有し、その出力信号に基づいて流体圧力Pbを表示する。
【0039】
次に、
図4~
図7を用いて、濾過装置の動作について説明する。
図4は濾過時の動作を示し、
図5は逆洗時の動作を示し、
図6は可動シリンダ62が一方向に移動する高圧洗浄時の第1の動作を示し、
図7は可動シリンダ62が他方向に移動する高圧洗浄時の第2の動作を示す。
【0040】
図4に示すように、濾過時には、回転駆動機構4を作動させずに、流入バルブV
I及び流出バルブV
Oを開弁するとともに逆洗用ドレンバルブV
Dを閉弁する。また、三方弁V
Hを第3の設定にして、可動シリンダ62への流体供給を行わないようにする。このような設定により、第1ポート17の流体圧力よりも第2ポート18の流体圧力の方が低くなるので、流体流入室15の圧力よりも濾過室16の圧力の方が低くなる。このため、第1ポート17を介して流体流入室15に流入した対象流体(太実線矢印)は、フィルタエレメント21を濾過面から反濾過面に向けて通過し、これにより濾過室16内に生成された濾過流体(白抜矢印)は第2ポート18を介して流出する。
【0041】
図5に示すように、逆洗時には、回転駆動機構4を作動して逆洗ヘッド51を軸線21aの周りに回転させるとともに、流入バルブV
I、流出バルブV
O及び逆洗用ドレンバルブV
Dを開弁する。また、三方弁V
Hを第3の設定にして、可動シリンダ62への流体供給を行わないようにする。このような設定により、逆洗ヘッド51の管内の圧力が低下するので、濾過流体(白抜矢印)が、フィルタエレメント21のうち逆洗ヘッド51の吸引孔51aに面した帯状領域を反濾過面から濾過面に向かう方向で通過する。そして、回転駆動機構4により逆洗ヘッド51はフィルタエレメント21の濾過面に沿って移動し、除去ブラシ52でフィルタエレメント21に捕捉された捕捉物を掻き取りながら吸引孔51aに面した帯状領域が移動していくので、濾過面のほぼ全域について逆洗が行われる。これにより逆洗ヘッド51の管内に生成された逆洗流体(破線矢印)には、主に濾過時に濾過面側から捕捉された捕捉物がはく離して含まれる。そして、逆洗流体は、逆洗流体吐出ポート51b及び逆洗流体吐出路44aを介して逆洗用ドレン室31に吐出され、さらに、逆洗用ドレンポート32を介して濾過装置の外部へ排出される。
【0042】
逆洗は、濾過装置の想定される使用条件に応じて、所定の頻度で所定の時間行うことができる。あるいは、逆洗は、フィルタエレメント21に実際に捕捉された捕捉物の捕捉量に応じて適切なタイミング・時間で逆洗を行うことができる。例えば、逆洗は、フィルタ内圧検出手段Sinによって表示されたフィルタ内圧Pinとフィルタ外圧検出手段Soutによって表示されたフィルタ外圧Poutとの差圧ΔPが所定値以上であるときに行われる。この所定値は、フィルタエレメント21に濾過性能の面からフィルタ洗浄の必要性があると推定されるときの濾過抵抗を示す差圧ΔPである。なお、逆洗は、差圧ΔPが所定値未満となったときに停止するようにしてもよい。
【0043】
図6及び
図7に示すように、高圧洗浄時には、回転駆動機構4を作動して可動シリンダ62を軸線21aの周りに回転させる。また、高圧洗浄時には、同時に濾過を行って濾過装置のダウンタイムを低減すべく、流入バルブV
I及び流出バルブV
Oを開弁し、逆洗用ドレンバルブV
Dを閉弁する。したがって、高圧洗浄は、濾過時及び逆洗時と同様に、濾過装置内に対象流体及び濾過流体が存在する状態で行われる。
【0044】
図6に示すように、可動シリンダ62を第1端部回転体43の方向へ移動させる場合には、三方弁V
Hを第1の設定にする。すると、圧力P
Hの高圧流体が三方弁V
Hから第1流体供給路61aを介して第1流体室62cへ流入し、第1流体室62cが充填された後、第1噴射経路62hを介して第1噴射ノズル64から噴射される。また、第1流体室62cに充填された高圧流体の圧力P
Hによって、第1閉塞栓62aがピストン部61cから離れる方向に移動して第1流体室62cの体積が上昇する。これに伴い、第2閉塞栓62bがピストン部61cに近づく方向に移動するので、第2流体室62dの体積が減少する。これにより、第2流体室62dの流体も第2噴射経路62iを介して第2噴射ノズル65から噴射される。
【0045】
第1閉塞栓62aが第1端部回転体43に当接すると、第2流体室62dの体積が減少しなくなる。このため、第2噴射ノズル65からの流体の噴射が停止し、第2流体圧力検出手段Sbで表示される流体圧力Pbが高圧流体の圧力PHから著しく低下する。したがって、可動シリンダ62の移動方向を変える場合には、流体圧力Pbが圧力PHから著しく低下したときに、三方弁VHを第2の設定に切り替えればよい。三方弁VHから第1流体供給路61aを介して第1流体室62cに充填された高圧流体は、三方弁VHの設定切り替えによって可動シリンダ62を第2端部回転体44の方向へ移動させるときに、第1噴射ノズル64から噴射される流体として用いられる。なお、第1閉塞栓62aと第2閉塞栓62bとの間の距離は、第1閉塞栓62aが第1端部回転体43に当接したときに、第2流体室62dに臨む第2流体供給路61bの開口が第2閉塞栓62bによって閉塞されないように設定されることが好ましい。
【0046】
一方、
図7に示すように、可動シリンダ62を第2端部回転体44の方向へ移動させる場合には、三方弁V
Hを第2の設定にする。すると、圧力P
Hの高圧流体が三方弁V
Hから第2流体供給路61bを介して第2流体室62dへ流入し、第2流体室62dが充填された後、第2噴射経路62iを介して第2噴射ノズル65から噴射される。また、第2流体室62dに充填された高圧流体の圧力P
Hによって、第2閉塞栓62bがピストン部61cから離れる方向に移動して第2流体室62dの体積が上昇する。これに伴い、第1閉塞栓62aがピストン部61cに近づく方向に移動するので、第1流体室62cの体積が減少する。これにより、第1流体室62cの流体も第1噴射経路62hを介して第1噴射ノズル64から噴射される。
【0047】
第2閉塞栓62bが第2端部回転体44に当接すると、第1流体室62cの体積が減少しなくなる。このため、第1噴射ノズル64からの流体の噴射が停止し、第1流体圧力検出手段Saで表示される流体圧力Paが高圧流体の圧力PHから著しく低下する。したがって、可動シリンダ62の移動方向を変える場合には、流体圧力Paが圧力PHから著しく低下したときに、三方弁VHを第1の設定に切り替えればよい。三方弁VHから第2流体供給路61bを介して第2流体室62dに充填された高圧流体は、三方弁VHの設定切り替えによって可動シリンダ62を第1端部回転体43の方向へ移動させるときに、第2噴射ノズル65から噴射される流体として用いられる。なお、第1閉塞栓62aと第2閉塞栓62bとの間の距離は、第2閉塞栓62bが第2端部回転体44に当接したときに、第1流体室62cに臨む第1流体供給路61aの開口が第1閉塞栓62aによって閉塞されないように設定されることが好ましい。
【0048】
図6に示すように、三方弁V
Hから第1流体室62cに圧力P
Hの高圧流体が供給される場合には、第1噴射ノズル64によって流路断面積が絞られることで、第1流体室62cの内圧は圧力P
Hとなる。そして、可動シリンダ62における軸線21aの方向の力の釣り合いから、第2流体室62dの内圧も圧力P
Hとなる。したがって、三方弁V
Hに接続された高圧流体供給源の供給圧力が圧力P
Hで安定している場合には、第1噴射ノズル64及び第2噴射ノズル65から噴射される流体の噴射流量は一定となる。第2噴射ノズル65からの流体の噴射流量が一定であると、第2流体室62dの体積減少速度が一定となり、可動シリンダ62の移動速度も一定となる。
【0049】
図7に示すように、三方弁V
Hから第2流体室62dに圧力P
Hの高圧流体が供給される場合には、第2噴射ノズル65によって流路断面積が絞られることで、第2流体室62dの内圧は圧力P
Hとなる。そして、可動シリンダ62における軸線21aの方向の力の釣り合いから、第1流体室62cの内圧も圧力P
Hとなる。したがって、三方弁V
Hに接続された高圧流体供給源の供給圧力が圧力P
Hで安定している場合には、第1噴射ノズル64及び第2噴射ノズル65から噴射される流体の噴射流量は一定となる。第1噴射ノズル64からの流体の噴射流量が一定であると、第1流体室62cの体積減少速度が一定となり、可動シリンダ62の移動速度も一定となる。
【0050】
三方弁VHと接続された高圧流体供給源から供給される高圧流体の圧力PH及び回転駆動機構4の駆動源41の回転出力は、噴射ノズル64,65からの噴射流体の広がりを示す噴射角度を考慮しつつ、濾過面の全域について噴射できるように予め設定される。このように高圧流体の圧力PH及び駆動源41の回転出力が設定されたときに、可動シリンダ62の移動速度が設定移動速度uとなり、可動シリンダ62の回転速度が設定回転速度ωとなる。
【0051】
例えば、設定移動速度u及び設定回転速度ωは下記の関係式から設定することができる。ここで、Lは第1端部回転体43と第2端部回転体44との間における可動シリンダ62の片道の移動距離であり、nは正の整数であり、p,qはいずれも正の自然数であり、pはqより小さい値であり、pはqの1以外の公約数でないものとする。この関係式は、可動シリンダ62が設定回転速度ωで1回転したときの時間と可動シリンダ62が設定移動速度uで(n+p/q)周期移動したときの時間とが一致することを示している。ただし、可動シリンダ62が軸線21aの方向に往復移動して元の位置に戻るまでを1周期とする。
u/ω={L(n+p/q)}/π
【0052】
可動シリンダ62が1回転したときに(n+p/q)周期に相当する移動がなされるようにすると、可動シリンダ62が1回転したときに第1噴射ノズル64及び第2噴射ノズル65の位置をフィルタエレメント21の濾過面に投影したときの移動軌跡はq通りとなる。したがって、qの値が増大するに従って噴射ノズル64,65の移動軌跡の間隔が小さくなるので、qの値は、噴射ノズル64,65の噴射角度を考慮して、濾過面の全域が被噴射領域となるように設定される。例えば、qの値は、最短時間で濾過面の全域が噴射されるように設定される。このqの値を上記の関係式に代入することで設定移動速度u及び設定回転速度ωが設定され、さらに、高圧流体の圧力PH及び駆動源41の回転出力が設定される。
【0053】
図8に示すように、可動シリンダ62の移動速度が設定移動速度uに対して超過する場合には、第1流体供給路61aと第2流体供給路61bとの間の短絡路に流量調整可能な流量制御弁V
Cを設けて、可動シリンダ62の移動速度を低下させてもよい。流量制御弁V
Cは、例えば第1流体供給管Laと第2流体供給管Lbとの短絡路に設けられる。三方弁V
Hを第1の設定にすることで第1流体供給路61aを介して第1流体室62cに流体を供給するときに、可動シリンダ62の移動速度を低下させるために、流量制御弁V
Cを僅かに開弁する。これにより、第1流体室62cの内圧は低下しないが、三方弁V
Hから第1流体供給路61aに流入した流体の一部が第2流体供給路61bを介して第2流体室62dへ供給されて第2流体室62dの体積減少速度が低下するので、可動シリンダ62の移動速度が低下する。三方弁V
Hを第2の設定にすることで第2流体供給路61bを介して第2流体室62dに流体を供給するときも同様にして可動シリンダ62の移動速度を低下させることができる。
【0054】
このように可動シリンダ62は、三方弁VHを第1の設定と第2の設定との間で切り替えることで軸線21aの方向で往復移動するとともに、回転駆動機構4によって軸線21aの周りで回転運動をする。したがって、設定移動速度u及び設定回転速度ωを適宜設定することで、第1噴射ノズル64及び第2噴射ノズル65はフィルタエレメント21の濾過面の全域について噴射可能となる。濾過面側からの高圧噴射によって、主に逆洗では除去困難な中間層や最外層等の捕捉物が、フィルタエレメント21の外部の濾過室16内にはく離し、濾過流体とともに第2ポート18を介して外部に流出する。
【0055】
高圧洗浄も、濾過装置の想定される使用条件に応じて予め設定された頻度及び時間で行うことができる。ただし、高圧洗浄は、主に逆洗では除去困難な中間層や最外層等の捕捉物の除去を目的としており、これらの捕捉物は逆洗除去の主な対象とされる濾過面側から捕捉された捕捉物の捕捉量と比較して少量であるので、逆洗を行う頻度よりも低くすることができる。
【0056】
高圧洗浄を所定頻度で行う代わりに、フィルタエレメント21に実際に捕捉された捕捉物の捕捉量に応じて高圧洗浄の実施の可否を決定することができる。例えば、逆洗が終了したときに、フィルタ内圧検出手段Sinによって表示されたフィルタ内圧Pinとフィルタ外圧検出手段Soutによって表示されたフィルタ外圧Poutとの差圧ΔPが所定値未満である場合には、高圧洗浄を省略する。なお、高圧洗浄中に差圧ΔPが所定値未満となった場合には、高圧洗浄を直ちに停止するようにしてもよい。
【0057】
高圧洗浄は、逆洗によって濾過面側から捕捉された捕捉物を除去してから行われる。仮に、逆洗前に高圧洗浄を行うと、濾過面側から捕捉された捕捉物の一部がフィルタエレメント21の内部空間Fにはく離し、そのうち微細な粒子状の捕捉物(例えば200μm以下)は沈降せずに浮遊する。このような微細な粒子状の捕捉物は、濾過機能によってフィルタエレメント21に濾過面側から再び捕捉されて、濾過性能の十分な復元を困難にするおそれがある。このため、高圧洗浄の前に、微細な粒子状の捕捉物を逆洗によって除去するようにする。
【0058】
次に、濾過装置から逆洗機構5及び高圧洗浄機構6の脱着方法について説明する。
図1を参照すると、逆洗機構5及び高圧洗浄機構6を取り出す場合には、先ず、出力軸42と第1端部回転体43との連結を解除して駆動源41を濾過装置から取り外した後、第1ケーシング蓋板12を取り外して、ケーシング1に取り出し口となる開口を設ける。そして、ピストンロッド61と第1流体供給管La及び第2流体供給管Lbとの接続を解除し、ピストンロッド61を逆洗用ドレンケース3に固定している固定具63を取り外す。その後、
図9に示すように、第1端部回転体43をケーシング1の開口から引き出す。このようにしても、逆洗機構5及び高圧洗浄機構6は脱落しない。逆洗ヘッド51は第1端部回転体43及び第2端部回転体44に接続固定され、可動シリンダ62は第1端部回転体43及び第2端部回転体44により移動が規制され、ピストン部61cは第1閉塞栓62aと第2閉塞栓62bとの間で移動が規制されるからである。このようにして、逆洗機構5及び高圧洗浄機構6が濾過装置の外部に取り出される。また、フィルタユニット2については、フランジ部22と隔壁板14との接続を解除して、フランジ部22をケーシング1の開口から引き出すことで、濾過装置の外部に取り出される。逆洗機構5、高圧洗浄機構6及びフィルタユニット2を濾過装置に装着する場合には、上記の逆の手順で行えばよい。
【0059】
図10は、第1実施形態に係る濾過装置の変形例を示す。濾過室16は、第2ケーシング蓋板13と隔壁板14との間の隔壁板19によって、第1濾過室16aと第2濾過室16bとにさらに区画される。第1濾過室16aは、フィルタエレメント21が配置されるとともに第2ポート18を介して外部と連通する。第2濾過室16bは、フィルタエレメント21の他端部が連通接続される。隔壁板19の貫通孔には、フィルタエレメント21の一端部の外周に全周にわたって放射状に形成されたフランジ部24が嵌合し、これにより、フィルタエレメント21はケーシング1に支持される。なお、隔壁板19の貫通孔の内周面とこれに挿通されるフランジ部24の外周面との間には、流体漏れ防止を目的としたOリング等のシール部材24aが設けられる。
【0060】
本変形例の濾過装置によれば、フィルタエレメント21の他端部をフィルタ蓋板23で閉塞せず、第2濾過室に連通接続することで、フィルタエレメント21からはく離して沈降した捕捉物が第2噴射ノズル65からの高圧流体噴射により舞い上がり難くなる。なお、本変形例の濾過装置でも、上記と同様に動作し着脱可能であり、流量制御弁VCの適用も可能である。したがって、フィルタエレメント21は、その他端部から第2ポート18への対象流体の流出が閉止されるように構成されていればよい。
【0061】
第1実施形態に係る濾過装置によれば、逆洗機構5及び高圧洗浄機構6が回転駆動機構4に取り付けられ、フィルタエレメント21の内部空間Fで回転可能に配置されている。したがって、回転可能なフィルタエレメント21の外部に逆洗機構5及び高圧洗浄機構6を配置する従来の濾過装置と比較して、濾過装置の小径化を図ることができ、これにより、製造コストも低減することが可能となる。
【0062】
また、第1実施形態に係る濾過装置では、フィルタエレメント21の濾過方向を内周面から外周面に向かう方向とし、逆洗機構5及び高圧洗浄機構6を回転させている。したがって、フィルタエレメント21の濾過方向を外周面から内周面に向かう方向とし、フィルタエレメント21を回転させる従来の濾過装置と比較して、フィルタエレメント21の強度を向上させることができる。
【0063】
さらに、第1実施形態に係る濾過装置では、逆洗機構5が回転する関係上、逆洗ヘッド51で発生した逆洗流体を、逆洗機構5及び高圧洗浄機構6の取り外し方向と同じく、軸線21aの方向に吐出する構成としている。したがって、逆洗流体を排出する配管をケーシング1の外周面に貫通して設けた従来の濾過装置と比較すると、逆洗機構5及び高圧洗浄機構6の取り外しが容易となり、濾過装置のメンテナンス性を向上させることが可能となる。
【0064】
〔第2実施形態〕
図11及び
図12は、第2実施形態に係る濾過装置の一例を示す。なお、本実施形態では主に第1実施形態と異なる点について説明し、第1実施形態と同様の構成については、同一の符号を付することで、その説明を省略ないし簡略化する。以下の実施形態において同様である。
【0065】
第1実施形態で説明したように、基本的には、高圧洗浄の前に逆洗を行うことで、フィルタエレメント21の濾過面側から捕捉された微細な粒子状の捕捉物は殆ど全て逆洗流体とともに除去される。しかし、逆洗が不十分な場合には、微細な粒子状の捕捉物が高圧洗浄によってフィルタエレメント21の内部空間Fにはく離して残留するおそれがある。このため、本実施形態の濾過装置では、フィルタエレメント21の捕捉物が高圧洗浄でフィルタエレメント21の内部空間Fにはく離する可能性を考慮して、このような捕捉物を排出する経路をさらに備える。
【0066】
濾過装置は、高圧洗浄時にはく離した捕捉物を外部に排出するために、逆洗用ドレンケース3の外周面を離間して囲む筒状体である高圧洗浄用ドレンケース7をケーシング1に固定して備える。高圧洗浄用ドレンケース7は、一端部がフィルタエレメント21の内部空間Fで開口し、他端部が軸線21aの方向にフィルタ蓋板23及び第2ケーシング蓋板13を貫通してケーシング1の外部に延出する。その延出端は逆洗用ドレンケース3の外周面まで延びて高圧洗浄用ドレンケース7の他端部は閉塞される。これにより、高圧洗浄用ドレンケース7は逆洗用ドレンケース3に固定される。また、高圧洗浄用ドレンケース7は、その一端部がフィルタ蓋板23の貫通孔に嵌合することで、フィルタエレメント21を支持する。そして、逆洗用ドレンケース3の外周面と高圧洗浄用ドレンケース7の内周面との間の空間に、高圧洗浄でフィルタエレメント21の内部空間Fにはく離した捕捉物を含む流体(以下、「洗浄流体」という)を収容する高圧洗浄用ドレン室71が形成される。高圧洗浄用ドレンケース7は、筒状体の内外を貫通する高圧洗浄用ドレンポート72を有する。
【0067】
なお、フィルタ蓋板23の貫通孔の内周面及びこれに挿通される高圧洗浄用ドレンケース7の外周面は、軸線21aの周りで相対回転可能に形成されている。また、フィルタ蓋板23の貫通孔の内周面とこれに挿通される高圧洗浄用ドレンケース7の外周面との間には、流体漏れ防止を目的としたOリング等のシール部材23aが設けられる。
【0068】
高圧洗浄用ドレン室71の高圧洗浄用ドレンポート72は、高圧洗浄用ドレン室71に収容した洗浄流体を排出するための洗浄流体排出管L4と接続される。洗浄流体排出管L4は、その途中で管路の開閉を行う高圧洗浄用ドレンバルブVDHを介して、大気圧等の周囲圧力P0の空間に開放される。
【0069】
高圧洗浄用ドレンバルブVDHは、濾過時及び逆洗時には閉弁し、高圧洗浄時に開弁する。高圧洗浄時に高圧洗浄用ドレンバルブVDHを開弁すると、高圧洗浄用ドレン室71の内圧が低下する。このため、流体流入室15ひいてはフィルタエレメント21の内部空間Fに流入した対象流体の一部が、高圧洗浄によりフィルタエレメント21の内部空間Fにはく離した捕捉物を含む洗浄流体(黒塗矢印)として高圧洗浄用ドレン室71に流出する。そして、高圧洗浄用ドレン室71に収容された洗浄流体は、高圧洗浄用ドレンポート72から洗浄流体排出管L4を介して濾過装置の外部へ排出される。
【0070】
図13は、第2実施形態に係る濾過装置の第1変形例を示す。この変形例では、
図10の濾過装置において、第2濾過室16bに連通接続されたドレンパイプ8をさらに備えたものである。高圧洗浄用ドレンポート72と同様に、ドレンパイプ8には洗浄流体排出管L4が接続され、洗浄流体排出管L4は、その途中で管路の開閉を行う高圧洗浄用ドレンバルブV
DHを介して、大気圧等の周囲圧力P
0の空間に開放される。そして、第2濾過室16bに収容された洗浄流体は、ドレンパイプ8及び洗浄流体排出管L4を介して外部に排出される。
【0071】
図14は、第2実施形態に係る濾過装置の第2変形例を示す。この変形例では、
図11及び
図13の濾過装置における噴射ノズル64,65の噴射軸線Xが軸線21aに直交する方向Dよりも、軸線21aで噴射ノズル64,65の位置から逆洗用ドレンケース3の位置に向かう方向へ傾いている。ここで、噴射軸線Xとは噴射ノズル64,65から噴射される高圧流体の進行方向に沿った噴流の中心軸を意味する。このように噴射軸線Xを傾けることで、高圧洗浄によってフィルタエレメント21からその内部空間Fにはく離した微細な粒子状の捕捉物が、比較的速やかに高圧洗浄用ドレン室71あるいはドレンパイプ8に導かれる。
【0072】
第2実施形態に係る濾過装置によれば、高圧洗浄によりフィルタエレメント21からはく離した捕捉物を排出している。したがって、濾過装置の小径化及び製造コストの低減、フィルタエレメント21の強度向上、並びに、メンテナンス性の向上に加えて、濾過性能の十分な復元が可能となる。
【0073】
〔第3実施形態〕
図15は、第3実施形態に係る濾過装置の一例を示す。本実施形態の濾過装置では、ピストンロッド61が第1端部回転体43及び第2端部回転体44に相対回転不能に固定されて回転駆動機構4と一体に回転する点で、第1実施形態の濾過装置と異なる。このため、本実施形態では、第1実施形態における以下の構成を省略する。すなわち、ピストンロッド61を第1端部回転体43に相対回転可能に支持する中間軸受48、及び、ピストンロッド61を逆洗用ドレンケース3に固定する固定具63を省略する。また、ピストンロッド61が第2端部回転体44の貫通孔の内周面に密接して固定されるものとして、第2端部回転体44とピストンロッド61との間のシール部材44bを省略する。
【0074】
逆洗用ドレンケース3の外面のうちピストンロッド61が貫通する貫通孔の周囲には環状の第3軸受49が配置固定され、ピストンロッド61は第3軸受49に軸線21aの周りで相対回転可能に挿通される。また、ピストンロッド61は、第3軸受49からさらに外部へ延びて、回転するピストンロッド61に高圧流体を供給するための密閉容器であるロータリージョイント66に、軸線21aの周りで相対回転可能に、かつ、液密又は気密に挿通される。そして、ピストンロッド61の延出端部にはストッパー61dが着脱可能に取り付けられ、ストッパー61dとロータリージョイント66との間にピストンロッド61が挿通された環状のスラスト軸受61eが配置される。これにより、ロータリージョイント66の軸線21aの方向における移動を第3軸受49とストッパー61dとの間に規制して、ロータリージョイント66の脱落を防止するようにしている。
【0075】
ロータリージョイント66は、ケーシング1に対して相対回転不能に固定され、ロータリージョイント66には第1流体供給管La及び第2流体供給管Lbが接続される。ロータリージョイント66は、その内部空間が液密又は気密に2つに区画され、第1流体供給管Laと連通する第1連通室66a、及び、第2流体供給管Lbと連通する第2連通室66bを有する。第1連通室66aは、ピストンロッド61の回転角度にかかわらず第1流体供給路61aと連通するが第2流体供給路61bとは連通しないように構成される。また、第2連通室66bは、ピストンロッド61の回転角度にかかわらず第2流体供給路61bと連通するが第1流体供給路61aとは連通しないように構成される。
【0076】
例えば、ロータリージョイント66では、その内部空間を軸線21aの方向に沿って区画して、第1連通室66a及び第2連通室66bとすることができる。この場合、軸線21aの方向で第1連通室66aの位置に第1流体供給路61aを開口させ、軸線21aの方向で第2連通室66bの位置に第2流体供給路61bを開口させる。これにより、ピストンロッド61の回転角度にかかわらず、第1連通室66aは第1流体供給路61aと常時連通し、第2連通室66bは第2流体供給路61bと常時連通する。
【0077】
第1実施形態の濾過装置では、ピストンロッド61の一端部が固定具63によって逆洗用ドレンケース3に固定され、ピストンロッド61の他端部が中間軸受48を介して第1端部回転体43に相対回転可能に支持されていた。このため、第1実施形態のピストンロッド61は、回転する可動シリンダ62へ高圧流体を供給するロータリージョイントとして機能していた。これに対し、第3実施形態の濾過装置では、ピストンロッド61が回転駆動機構4と一体に回転するので、回転するピストンロッド61に高圧流体を供給するために上記のロータリージョイント66を備えている。
【0078】
逆洗機構5及び高圧洗浄機構6を取り出す場合に、固定具63を取り外す第1実施形態と異なる点は、ストッパー61dを取り外す必要があることである。その他については第1実施形態と同様にして、逆洗機構5、高圧洗浄機構6及びフィルタユニット2が濾過装置の外部に取り出される。
【0079】
第3実施形態に係る濾過装置によれば、ピストンロッド61が第1端部回転体43及び第2端部回転体44に相対回転不能に固定されて回転駆動機構4と一体に回転する。このため、ピストンロッド61と可動シリンダ62との間に、軸線21aの方向の直線摺動は発生するが回転摺動は発生しないので、第1実施形態と比較すると、特に、シール部材62e,62f,62gの消耗期間を延ばすことができる。したがって、濾過装置の小径化及び製造コストの低減、フィルタエレメント21の強度向上、並びに、メンテナンス性の向上に加えて、濾過装置のメンテナンス頻度を低減することが可能となる。
【0080】
〔第4実施形態〕
図16は、第4実施形態に係る濾過装置の一例を示す。図中の濾過装置は第1実施形態と同様であるが、濾過装置は、これが有する制御装置100によって動作制御される。
【0081】
本実施形態において、三方弁VH、流入バルブVI、流出バルブVO及び逆洗用ドレンバルブVDは、いずれも外部からの制御が可能な電磁弁であるものとする。また、流量制御弁VCは、内蔵するソレノイドの入力電流に応じて通過流量が変化する、外部からの制御が可能な調節弁であるものとする。さらに、フィルタ内圧検出手段Sin、フィルタ外圧検出手段Sout、第1流体圧力検出手段Sa及び第2流体圧力検出手段Sbは、それぞれの検出対象となる圧力に関連する信号を出力可能に構成されるものとする。
【0082】
回転駆動機構4の駆動源41は、電源と駆動源41との間に介装された電源リレー若しくはパワートランジスタ、又は、駆動源41を駆動するインバータ等の種々の電力機器を介して、外部から制御可能に構成されるものとする。回転駆動機構4は、出力軸42の回転角度を検出するための回転角度検出手段Srを備える。回転角度検出手段Srには、レゾルバ、ロータリエンコーダ又はホール素子等の種々の回転角度センサを用いることができる。
【0083】
制御装置100は、フィルタ内圧検出手段Sin、フィルタ外圧検出手段Sout、第1流体圧力検出手段Sa、第2流体圧力検出手段Sb及び回転角度検出手段Srの各出力信号を入力する。そして、これらの出力信号に基づいて、制御装置100は、三方弁VH、流入バルブVI、流出バルブVO、逆洗用ドレンバルブVD、流量制御弁VC及び回転駆動機構4の駆動源41を制御する。これにより、制御装置100は濾過装置の動作制御を行う。
【0084】
制御装置100は、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサを有するマイクロコンピュータを備える。このマイクロコンピュータは、プロセッサと内部バスによって通信可能に接続された、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、入出力インタフェース等を有する。制御装置100は、マイクロコンピュータのプロセッサがROMから濾過装置の動作制御プログラムをRAMに読み出して実行するソフトウェア処理によって、濾過装置の動作制御を行うものとする。なお、制御装置100における濾過装置の動作制御は、その一部又は全部がハードウェアの構成により実行されることを排除するものではない。
【0085】
図17は、制御装置100において行われる濾過装置の動作制御のうち、濾過時に繰り返し実行されるフィルタ洗浄処理の一例を示す。なお、濾過時には、制御装置100は濾過の設定を行う。具体的には、制御装置100は、回転駆動機構4の駆動源41を作動させずに、流入バルブV
I及び流出バルブV
Oを開弁するとともに逆洗用ドレンバルブV
Dを閉弁する。また、制御装置100は、三方弁V
Hを第3の設定にして、可動シリンダ62への流体供給を行わないようにする。これにより濾過装置において濾過が行われる。
【0086】
ステップS101(図中では「S101」と略記する。以下同様である。)では、制御装置100はフィルタ洗浄要求があるか否かを判定する。例えば、制御装置100は、そのスイッチ操作又は上位の制御装置の信号出力によって入出力インタフェースを介して濾過指令信号を入力したときに、あるいは、予め設定された所定タイミングとなったときに、フィルタ洗浄要求があると判定してもよい。そして、制御装置100は、フィルタ洗浄要求があると判定した場合には(YES)、処理をステップS102へ進める一方、フィルタ洗浄要求がないと判定した場合には(NO)、フィルタ洗浄処理を一旦終了して、再度ステップS101を実行する。
【0087】
ステップS102では、制御装置100は、逆洗用ドレンバルブVDを開弁し、回転駆動機構4を始動させ、これにより濾過装置において逆洗を開始する。なお、制御装置100は、逆洗を効果的に実施するために、濾過装置内の流体量が一定以上であるときに逆洗を開始することができる。例えば、図外の液位センサの出力信号から得られる濾過装置内の液位が、満液ないしフィルタエレメント21の全体が流体に浸漬していることを示す値以上であるときに逆洗を開始してもよい。
【0088】
ステップS103では、制御装置100は、逆洗を開始してからの出力軸42の回転量Δθ[rad]が、第1所定回転量θ1に到達したか否かを判定する。出力軸42の回転量Δθは回転角度検出手段Srの出力信号に基づいて得られる。また、第1所定回転量θ1は、フィルタエレメント21の濾過面側から捕捉された微細な粒子状の捕捉物が逆洗によって殆ど全てはく離すると推定される回転量Δθであり、少なくとも1回転(=2π[rad])であることが好ましい。そして、制御装置100は、出力軸42の回転量Δθが第1所定回転量θ1に到達したと判定した場合には(YES)、処理をステップS104へ進める。一方、制御装置100は、出力軸42の回転量Δθが第1所定回転量θ1に到達していないと判定した場合には(NO)、逆洗を続行すべく、再度ステップS103を実行する。なお、ステップS103では、上記の内容に代えて、逆洗開始からの経過時間が、出力軸42の回転量Δθが第1所定回転量θ1に到達するまでに要する時間に到達したか否かを判定してもよい。以下のステップS111についても同様である。
【0089】
ステップS104では、制御装置100は逆洗用バルブを閉弁し、これにより濾過装置において逆洗を停止する。
【0090】
ステップS105では、制御装置100は、高圧洗浄を開始すべく、三方弁VHを第1の設定又は第2の設定のいずれか一方に設定する。制御装置100は、高圧洗浄の開始時の三方弁VHの設定を、第1の設定又は第2の設定のいずれか一方に固定しておいてもよいが、これに代えて、前回の高圧洗浄における三方弁VHの最後の設定に応じて三方弁VHの今回の設定を決定することができる。例えば、前回の高圧洗浄における三方弁VHの最後の設定が第2の設定である場合には、三方弁VHの今回の設定を第2の設定にしてもよい。なお、前回の高圧洗浄における三方弁VHの最後の設定に関する情報は、例えば制御装置100のフラッシュROM等の書き込み可能なROMに書き込まれて保持される。
【0091】
なお、第2実施形態のように高圧洗浄用ドレン室71を設けている場合には、ステップS105において、制御装置100は、電磁弁として構成された高圧洗浄用ドレンバルブVDHを開弁する。
【0092】
ステップS106において、制御装置100は、三方弁VHが第1の設定である場合には(YES)、処理をステップS107へ進める一方、三方弁VHが第2の設定である場合には(NO)、処理をステップS109へ進める。
【0093】
ステップS107では、制御装置100は、第2流体圧力検出手段Sbの出力信号に基づいて取得された、第2流体供給路61bの流体圧力Pbが、所定値α未満であるか否かを判定する。所定値αは、第1閉塞栓62aが第1端部回転体43に当接したと推定されるときの第2流体供給路61bの流体圧力Pbである。そして、制御装置100は、第2流体供給路61bの流体圧力Pbが所定値α未満であると判定した場合には(YES)、処理をステップS108へ進めて、三方弁VHを第1の設定から第2の設定に切り替える。一方、制御装置100は、第2流体供給路61bの流体圧力Pbが所定値α以上であると判定した場合には(NO)、ステップS108を省略して第1の設定を維持し、処理をステップS111へ進める。
【0094】
ステップS109では、制御装置100は、第1流体圧力検出手段Saの出力信号に基づいて取得された、第1流体供給路61aの流体圧力Paが、所定値β未満であるか否かを判定する。所定値βは、第2閉塞栓62bが第2端部回転体44に当接したと推定されるときの第1流体供給路61aの流体圧力Paである。なお、所定値βは所定値αと同じ値でもよい。そして、制御装置100は、第1流体供給路61aの流体圧力Paが所定値β未満であると判定した場合には(YES)、処理をステップS110へ進めて、三方弁VHを第2の設定から第1の設定に切り替える。一方、制御装置100は、第1流体供給路61aの流体圧力Paが所定値β以上であると判定した場合には(NO)、ステップS110を省略して第2の設定を維持し、処理をステップS111へ進める。
【0095】
ステップS111では、制御装置100は、高圧洗浄を開始してからの出力軸42の回転量Δθ[rad]が、第2所定回転量θ2に到達したか否かを判定する。出力軸42の回転量Δθは回転角度検出手段Srの出力信号に基づいて得られる。また、第2所定回転量θ2は、濾過面の全域について噴射できるように予め設定された値である。例えば、設定移動速度u及び設定回転速度ωが上記の関係式を満たす場合には、第2所定回転量θ2を(q×2π)[rad]と設定することができる。そして、制御装置100は、出力軸42の回転量Δθが第2所定回転量θ2に到達したと判定した場合には(YES)、処理をステップS112へ進める。一方、制御装置100は、出力軸42の回転量Δθが第2所定回転量θ2に到達していないと判定した場合には(NO)、高圧洗浄を続行すべく、処理をステップS106へ戻す。
【0096】
ステップS112では、制御装置100は、三方弁VHを第3の設定にし、回転駆動機構4を停止させ、これにより濾過装置において高圧洗浄を停止する。以上でフィルタ洗浄処理が終了する。
【0097】
なお、第2実施形態のように高圧洗浄用ドレン室71を設けている場合には、ステップS112において、制御装置100は、電磁弁として構成された高圧洗浄用ドレンバルブVDHを閉弁する。
【0098】
図18は、
図17のフィルタ洗浄処理の第1変形例を示す。なお、本変形例では、ステップS101a及びステップS104aを除き、
図17のフィルタ洗浄処理と同様であるので、
図17のフィルタ洗浄処理と同様の内容については、同一のステップ番号を付して、その説明を省略ないし簡略化する。
【0099】
ステップS101aでは、制御装置100は、
図17のステップS101のようにフィルタ洗浄要求があるか否かを判定する代わりに、フィルタ内圧P
inとフィルタ外圧P
outとの差圧ΔPを求め、この差圧ΔPが所定値γ以上であるか否かを判定する。フィルタ内圧P
inはフィルタ内圧検出手段S
inの出力信号に基づいて得られ、フィルタ外圧P
outはフィルタ外圧検出手段S
outの出力信号に基づいて得られる。また、所定値γは、フィルタエレメント21に濾過性能の面からフィルタ洗浄の必要性があると推定されるときの濾過抵抗を示す差圧ΔPである。そして、制御装置100は、差圧ΔPが所定値γ以上であると判定した場合には(YES)、処理をステップS102へ進める一方、差圧ΔPが所定値γ未満であると判定した場合には(NO)、フィルタ洗浄処理を一旦終了して、再度ステップS101aを実行する。このように差圧ΔPに基づいてフィルタ洗浄を開始するか否かを判定することで、フィルタエレメント21の実際の捕捉状態に応じた適切なタイミングでフィルタ洗浄を開始することができる。
【0100】
なお、ステップS101aの処理は、ステップS101の処理と組み合せて実行することもできる。例えば、フィルタ洗浄に要する電力消費及び流体消費を抑制する場合には、ステップS101においてフィルタ洗浄要求があると判定されたときに、さらにステップS101aの処理を実行するようにしてもよい。あるいは、濾過性能の低下抑制を重視する場合には、ステップS101においてフィルタ洗浄要求がないと判定されたときでも、ステップS101aの処理を実行するようにしてもよい。
【0101】
ステップS104aでは、制御装置100は、ステップS104で逆洗を停止した後であって、ステップS105で高圧洗浄を行う前に、差圧ΔPが所定値γ以上であるか否かを判定する。そして、制御装置100は、差圧ΔPが所定値γ以上であると判定した場合には(YES)、処理をステップS105へ進める一方、差圧ΔPが所定値γ未満であると判定した場合には(NO)、フィルタ洗浄処理を一旦終了して、再度ステップS101aを実行する。このように、逆洗後であって高圧洗浄前に差圧ΔPに基づいて高圧洗浄の開始要否を判定するので、逆洗によって濾過性能が向上していると推定される場合には高圧洗浄の実施を省略して、高圧洗浄に要する無駄な電力消費及び流体消費を抑制することができる。
【0102】
なお、本変形例では、ステップS101のステップS101aへの置換、又は、ステップS104とステップS105との間のステップS104aの追加のいずれか一方が反映されるようにしてもよい。
【0103】
図19は、
図17のフィルタ洗浄処理の第2変形例を示す。なお、本変形例では、ステップS110aを除き、
図17のフィルタ洗浄処理と同様であるので、
図17のフィルタ洗浄処理と同様の内容については、同一のステップ番号を付して、その説明を省略ないし簡略化する。
【0104】
制御装置100は、ステップS108又はステップS110において三方弁VHの設定を切り替えた後、ステップS111の処理を実行する前に、ステップS110aにおいて移動速度又は回転速度の調整を行う。具体的には、制御装置100は、三方弁VHの前回の設定切り替えから今回の設定切り替えまでに経過した経過時間Δtと、設定移動速度uから得られる半周期分の時間Thalf(=L/u)と、の比較に基づいて、可動シリンダ62の移動速度又は回転速度の調整を行う。経過時間Δtよりも半周期分の時間Thalfの方が大きい場合には、可動シリンダ62の実際の移動速度が設定移動速度uよりも低い。このため、制御装置100は、駆動源41の速度制御が可能である場合にはこれを制御することで、例えば上記の関係式を満足するように、移動速度の乖離量に応じて回転速度を低下させる。一方、経過時間Δtよりも半周期分の時間Thalfの方が小さい場合には、可動シリンダ62の実際の移動速度が高い。このため、制御装置100は、流量制御弁VCを僅かに開弁して移動速度を低下させることで、移動速度の乖離量に応じて回転速度を上昇させる。あるいは、制御装置100は、駆動源41の速度制御が可能である場合にはこれを制御することで、例えば上記の関係式を満足するように、移動速度の乖離量に応じて回転速度を上昇させる。
【0105】
なお、本変形例のフィルタ洗浄処理において、ステップS102に置換されるステップS102a、及び、ステップS105とステップS106との間に挿入されるステップS105aの少なくとも一方の処理を実行することが可能である。
【0106】
第4実施形態に係る濾過装置によれば、これが有する制御装置100によって、フィルタ洗浄処理が逆洗から高圧洗浄の順番で自動的に行われて、微細な粒子状の捕捉物がフィルタエレメント21の内部空間Fにはく離し難くなる。したがって、濾過装置の小径化及び製造コストの低減、フィルタエレメント21の強度向上、並びに、メンテナンス性の向上に加えて、濾過性能の十分な復元が可能となる。
【0107】
なお、前述の第1~第4実施形態において、高圧洗浄時に、濾過装置の定期メンテナンス時等、濾過機能を働かせる必要がない場合には、流入バルブVI及び逆洗用ドレンバルブVDを閉弁し、流出バルブVOを開弁して、濾過装置内の流体を外部に排出してもよい。この場合には、高圧洗浄によって濾過面側から捕捉された捕捉物をはく離させても、微細な粒子状の捕捉物がフィルタエレメント21の内部空間Fに浮遊することがないので、高圧洗浄の前に逆洗を行わなくてもよい。
【0108】
また、高圧洗浄は逆洗後に行われるものとして説明したが、高圧洗浄中に逆洗を行うようにしてもよい。このようにすれば、高圧洗浄によってフィルタエレメント21の内部空間Fにはく離してしまった微細な粒子状の捕捉物が再びフィルタエレメント21に捕捉されても、逆洗によって外部に排出することができる。
【0109】
高圧洗浄機構6は、高圧噴射の噴射流体を用いて可動シリンダ62を往復移動させる構成に限られず、フィルタエレメント21の一端部から他端部までを往復移動できる機構であればいずれでもよい。例えば、エアシリンダや、モータ駆動による送りねじ機構を用いて、第1噴射ノズル64及び第2噴射ノズル65を往復移動させてもよい。
【0110】
高圧洗浄の噴射流体として清浄な流体を用いたが、これに限られず、例えば、濾過流体を用いてもよい。なお、濾過流体には、高圧洗浄で除去された捕捉物が混入している可能性がある。しかし、このような捕捉物は、主に、濾過時にフィルタエレメント21を通過した後に、逆洗時に反濾過面側から捕捉されたものである。したがって、高圧洗浄の噴射流体として濾過流体を用いたとしても、濾過時に再びフィルタエレメント21を通過する蓋然性が認められるので、格別の問題はない。
【0111】
ケーシング1の内部を流体流入室と濾過室とで区画しているが、これに限らず、流体流入室を省略することができる。この場合には、フィルタエレメント21の内部空間Fに外部から直接、対象流体が流入するように構成すればよい。
【0112】
可動シリンダ62には、第1流体室62cに連通する第1噴射ノズル64と、第2流体室62dに連通する第2噴射ノズル65と、の2つが取り付けられているが、噴射ノズルの個数はこれに限られない。すなわち、第1流体室62cに連通する噴射ノズルと第2流体室62dに連通する噴射ノズルとの少なくとも一方の個数が複数であってもよい。例えば、軸線21aの周りで逆洗ヘッド51と干渉しない角度に、第1流体室62cに連通する噴射ノズルを2つ取り付けるとともに、第2流体室62dに連通する噴射ノズルを2つ取り付けることができる。
【0113】
濾過装置の設置姿勢については特に限定するものではないが、例えば、軸線21aが鉛直方向となるように濾過装置を設置するか、あるいは、軸線21aが水平方向となるように濾過装置を設置することができる。
【0114】
以上、好ましい実施形態を参照して本発明の内容を具体的に説明したが、本発明の基本的技術思想及び教示に基づいて、当業者であれば、種々の変形態様を採り得ることは自明である。また、上記の第1~第4実施形態で説明した各技術的思想は、矛盾が生じない限りにおいて、適宜組み合せて使用することができる。
【符号の説明】
【0115】
1…ケーシング、2…フィルタユニット、3…逆洗用ドレンケース、4…回転駆動機構、15…流体流入室、5…逆洗機構、6…高圧洗浄機構、7…高圧洗浄用ドレンケース、8…ドレンパイプ、16…濾過室、16a…第1濾過室、16b…第2濾過室、17…第1ポート、18…第2ポート、21…フィルタエレメント、21a…フィルタエレメントの軸線、23…フィルタ蓋板、41…駆動源、43…第1端部回転体、44…第2端部回転体、44a…逆洗流体吐出路、45…連結軸、51…逆洗ヘッド、51a…吸引孔、61…ピストンロッド、61a…第1流体供給路、61b…第2流体供給路、61c…ピストン部、62…可動シリンダ、62a…第1閉塞栓、62b…第2閉塞栓、62c…第1流体室、62d…第2流体室、64…第1噴射ノズル、65…第2噴射ノズル、66…ロータリージョイント、100…制御装置、F…フィルタエレメントの内部空間、VC…流量制御弁、Pin…フィルタ内圧、Pout…フィルタ外圧、ΔP…差圧、u…設定移動速度、ω…設定回転速度