(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-05
(45)【発行日】2023-12-13
(54)【発明の名称】管理システム
(51)【国際特許分類】
H04W 4/021 20180101AFI20231206BHJP
【FI】
H04W4/021
(21)【出願番号】P 2019236546
(22)【出願日】2019-12-26
【審査請求日】2022-12-21
(73)【特許権者】
【識別番号】304021417
【氏名又は名称】国立大学法人東京工業大学
(74)【代理人】
【識別番号】100067736
【氏名又は名称】小池 晃
(74)【代理人】
【識別番号】100192212
【氏名又は名称】河野 貴明
(74)【代理人】
【識別番号】100204032
【氏名又は名称】村上 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100200001
【氏名又は名称】北原 明彦
(72)【発明者】
【氏名】デファゴ クサヴィエ
(72)【発明者】
【氏名】田村 康将
(72)【発明者】
【氏名】亀山 聖太
(72)【発明者】
【氏名】奥村 圭祐
(72)【発明者】
【氏名】森 将真
【審査官】石原 由晴
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-105880(JP,A)
【文献】特開2004-054369(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D1/00-1/12
G08G1/00-99/00
H04B7/24-7/26
H04W4/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のノードにより構成される環境中を移動する1以上の移動体の行動を各ノードによって分散管理する管理システムであって、
前記各ノードは、少なくとも、
隣接するノードと通信を行うノード間通信手段と、
自らの管理領域内に前記移動体が存在する場合に該移動体と通信を行う対移動体通信手段と、
前記ノード間通信手段により取得した情報に基づいて自らの管理領域内の前記移動体の行動を決定するノード側計算手段
を備
え、
前記複数のノードは互いに連結可能であるとともに、各ノードは隣接するノードに対して着脱自在であることを特徴とする管理システム。
【請求項2】
前記ノード側計算手段は、前記ノード同士の接続関係を制御するアルゴリズムを有することを特徴とする請求項1に記載の管理システム。
【請求項3】
前記ノード側計算手段は、前記隣接するノードとの協調動作を制御するアルゴリズム、及び前記移動体の行動計画を行うアルゴリズムを有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の管理システム。
【請求項4】
前記ノード側計算手段は前記ノード間通信手段により作成されたルーティングテーブルを保持することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体群の協調行動支援を行う管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
群ロボットシステムなど、複数の移動体が協調行動に基づいてタスクを実行(目的を達成)するシステムでは、移動体同士の衝突を回避しながらタスクを確実に(かつ効率的に)実行するための行動計画が必要となる。
【0003】
例えば、特許文献1などに挙げられる、Kivaシステムと呼ばれる代表的な既存システムでは、すべての移動体の状態を一元管理し、行動計画を行うマスターコンピュータを配置した中央制御機構が一般に用いられる。
【0004】
こうした中央制御システムでは、マスターコンピュータに該当する計算モジュールがすべての移動体の状態を把握しているため、タスクを確実に、かつ効率的に実行する行動計画の立案が可能である。一方で、移動体の数の増加や環境サイズの拡大に対しスケーラビリティを確保することが難しく、またマスターコンピュータに該当する計算モジュールの故障に弱い(単一障害点)などの問題を抱えており、大規模化する現代のシステム需要に対して最適な解であるとは言い難い。また、中央集権的な手法では、外乱等によって移動体の行動の再計画を行う必要が生じた際に、再計画に時間を要してしまい、システムのリアルタイム性を損なう可能性が高い。
【0005】
そこで、スケーラビリティおよび耐障害性を有するシステムを構成するため、自律分散型の移動体を用いたシステムの構築方法について研究が進められている。このタイプのシステムでは、各移動体は自律的に周囲の状況を把握し、与えられたタスクを実行するための行動を決定する。このとき、各移動体同士は衝突回避やタスクの実行効率の向上を目的として互いに通信を行うなどによって、それぞれの行動について合意形成を行う(例えば、特許文献2)。
【0006】
このようなシステムは、全体的なタスクの実行効率という点においては中央制御システムほどの有効性は望めないが、単一障害点の問題については明らかに解決されることが期待できる。また、各移動体は基本的に自身の周辺に関する局所的な情報のみに基づいて行動計画を立てるため、移動体の台数増加や環境サイズの拡大など、問題規模の増加に対して頑健なシステムを構築可能である。
【0007】
しかしながら、移動体同士が通信を用いて協調行動を行うシステムには、(1)通信の干渉問題、および(2)移動先の環境状態を接近するまで把握できない、といった2つの大きな課題が存在する。
【0008】
多数の移動体が互いに無線通信によって情報交換を行う場合、電波が干渉してしまうことにより通信がうまくいかない状況が生じる。通信は協調行動の要であり、したがって、通信がうまくいかない状況ではうまく協調行動をとることができない。結果として移動体同士の衝突を避けるためには移動体を停止させるか、移動体自身のセンサ情報などを用いて障害物を検知し、行動計画とは独立して衝突回避を実行するしかない。いずれにせよ、タスクの実行効率の低下を避けることができないため、通信の干渉は複数の移動体により構成される自律分散型システムにおいて大きな問題である。通信の干渉を解決する方法としてNFCなどの近距離通信を使用する方法が考えられるが、センサ情報を用いて衝突回避を行うケースと同様に、通信範囲が限定されることによって移動体の行動計画が後手にまわってしまう状況は解決できない。
【0009】
また、移動体が自律的に周辺環境を知覚して自身の行動を決定する場合、自身から遠く離れた場所の状態はその場所の近傍に到達するまで不明である。これは、事故などにより通過できない場所が発生した場合や、混雑により実質的に通過できない状況が生じた場合などに不都合となる可能性がある。他の移動体との通信によりこの情報を補完できる可能性もあるが、通信により得られた情報と最新の状態が同じである保証はない。この問題を解決するためには環境の側から移動体に環境情報を伝える仕組み(たとえば道端にある電光掲示板のようなもの)があると良いが、大域的な環境情報を管理する仕組みを置くことは、単一障害点の問題や環境サイズの拡大に対しスケールしないなどの問題を再度生み出してしまう恐れがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】米国特許第7873469号明細書
【文献】特開2004-133585号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、中央制御機構を必要とせず、環境自体が計算能力を有して環境中の移動体の行動の分散管理を行う管理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一態様は、環境を分割管理するモジュール化された複数のノード上を移動する1以上の移動体の行動を各ノードによって分散管理する管理システムであって、各ノードは、少なくとも、隣接するノードと通信を行うノード間通信手段と、自らの管理領域内に前記移動体が存在する場合に該移動体と通信を行う対移動体通信手段と、ノード間通信手段により取得した情報に基づいて自らの管理領域内の移動体の行動を決定するノード側計算手段を備え、複数のノードは互いに連結可能であるとともに、各ノードは隣接するノードに対して着脱自在である。
【0013】
本発明の一態様によれば、環境(例えば、床面)を構成する複数のノードのそれぞれが、ノード間通信手段により取得した情報に基づいて自らのノード上の移動体の行動を決定するノード側計算手段を備えることで、中央制御機構を必要とせず、環境自体が計算能力を有して分散管理を行うことができる。また、各ノードを隣接するノードに対して着脱自在とすることにより、自由に環境の設計やスケールの変更等を行うことができる。
【0014】
このとき、本発明の一態様では、ノード側計算手段は、少なくとも、ノード同士の接続関係を制御するアルゴリズムを有するとしてもよい。
【0015】
これにより、各ノードは隣接するノード同士で通信を行って情報のやり取りをすることができる。
【0016】
また、本発明の一態様では、ノード側計算手段は、隣接するノードとの協調動作を制御するアルゴリズム、及び移動体の行動計画を行うアルゴリズムを有するとしてもよい。
【0017】
このようなアルゴリズムを用いることにより、各ノードにおいて移動体が移動するべき経路を算出し、分散管理を行うことができる。
【0018】
また、本発明の一態様では、ノード側計算手段はノード間通信手段により作成されたノード間の移動経路表であるルーティングテーブルを保持するとしてもよい。
【0019】
ノード間通信手段による隣接ノード間での通信に基づいて作成されたルーティングテーブルを用いることによって、自らのノード上に存在する移動体が移動するべき経路を決定することができる。
【発明の効果】
【0024】
以上説明したように本発明によれば、中央制御機構を必要とせず、環境自体が計算能力を有して環境中に存在する移動体の分散管理を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の一実施形態に係る管理システムの構成の一例を示す概略図である。
【
図2】本発明の一態様に係るノードの構成の一例を示すブロック図である。
【
図3】本発明の一態様に係る移動体の構成の一例を示すブロック図である。
【
図4】環境(ノード)による移動体の行動制御の一例を示した概略図であり、(A)は、移動前の制御フローを示した図であり、(B)は、移動後の制御フローを示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、以下に説明する本実
施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではなく、本
実施形態で説明される構成の全てが本発明の解決手段として必須であるとは限らない。
【0027】
図1は、本発明の一実施形態に係る管理システムの構成の一例を示す概略図である。本発明の一実施形態に係る管理システム1は、複数の端末(ノード)10および1以上の移動体(ロボットなど)20からなり、各モジュール(ノード)10は実物理空間内の決められた領域の状態および領域内に存在する移動体20の行動を管理する。一例として、ノード10は、パネル状あるいはブロック状の床面を形成し、移動体20は連結された複数のノード10上を移動する。ノード10は管理領域内に存在する移動体20との通信手段を有し、また、隣接するノードとの間にも通信手段を有する。各ノード10は、ノード間での合意結果に基づいて移動体20の行動を制御することで、環境中に存在する移動体20の協調行動を計画する。本発明の一態様では、移動体20はノード10に対し自身の目的を送信し、ノード10は隣接するノード間で通信を行って経路を決定し、移動体20はノード10からの指示を受信し次第、指示に従って行動を実行する。
【0028】
このように、本発明の一態様では、環境(ノード)に計算能力を埋め込むことで、環境(ノード)が行動計画を行い、移動体は環境(ノード)からの指示に従って行動するアプローチをとる。すなわち、従来のように中央制御機構によって環境全体を一元管理するのではなく、環境を局所的に管理するノードを多数配置し、ノード間の通信に基づいて環境全体を管理しようというアプローチである。この仕組みにより、環境サイズの拡大に対してはノードの配置数を増やすことで容易に対応が可能であり、また1つのノードが管理を担当する領域中に存在できる移動体数に制限があるため、システム全体における移動体数の増加の影響を受けにくい。ノード数の増加に対しても、ノード同士の通信は局所的にのみ行われるため、スケーラビリティは確保される。
【0029】
本発明の一実施形態に係る管理システム1において、移動体20は環境(ノード)10からの指示に応じて行動するため、移動体同士で各自の行動に関して通信を行う必要がない。分散管理の仕組みにより、ノード10と移動体20との距離について上界を設けることが容易であるため、管理領域内のノード10と移動体20との通信には例えば、近距離無線通信(NFC)などを用いることが可能であり、上述したような通信干渉の問題は解決される。
【0030】
また、隣接するノード同士は直接通信が可能となるよう管理システム1を構築する。これにより、あるノードが管理する環境の状態はマルチホップ通信によりすべてのノードで共有され、例えばある場所が立ち入り禁止状態になっているなどの情報を予め環境で考慮可能となる。状態共有には距離に応じた遅れが生じるものの、移動体が自律的に環境を知覚する場合と比較して明らかに早いタイミングでの行動計画の変更が可能となる。
【0031】
本発明の一実施形態に係る管理システム1は、各ノードの隣接ノードとの局所通信に基づいて自律分散的に制御されている。各ノードの振る舞いを決定する分散アルゴリズムは階層構造を有し、それぞれ(1)ノード同士の接続関係(トポロジ)を制御するアルゴ
リズム、(2)隣接ノードとの協調動作を制御するアルゴリズム、(3)移動体の行動計画を行うアルゴリズム、等からなる。こうしたノードの制御アルゴリズムとは独立して、移動体は自身の行動制御のためのアルゴリズムおよび行動計画以外の協調動作アルゴリズム(たとえば移動体間の役割分担など)を有する。
【0032】
例えば、各ノードは隣接ノードとの通信によって特定の移動体が移動可能な範囲について予め合意をとることが可能である。これにより、各移動体は独立に衝突回避プログラムを動かすことなく、他の移動体と衝突しない経路上を移動し続けることができる。一例として、
図1に示すように、移動体20Aは、移動体20A直下のノード間の通信によって決定された領域(斜線部)50A上のみを移動し、移動体20Bは、移動体20B直下のノード間の通信によって決定された領域(ドット部)50B上のみを移動することで、互いに衝突しないことを保証できる。これは、他の移動体についても同様である。
【0033】
また、本発明の一実施形態に係る管理システム1では、複数のノードは互いに連結可能であるとともに、各ノードは隣接するノードに対して着脱自在であるとしてもよい。例えば、
図1に示すように、すでに構築された環境に対して、新たなノード5を接続することもできる。新たなノード5は、隣接するノードと通信を行うことで、各ノードが保有する情報を更新することができる。
【0034】
また、ノードは隣接ノードとの通信により、不具合が生じて通行ができないノード6(
図1中、バツ印のついたノード)や、不具合が生じた移動体7(
図1中、バツ印のついた移動体)により通行が妨げられる可能性のあるノード(当該移動体7直下の2つのノード)を検出することができ、移動体がその場所へ行かないよう予め経路計画を変更することが可能となる。不具合の生じたノード6あるいは移動体7は、適当なタイミングで取り除き、新たなノードや移動体と交換することができる。
【0035】
次に、本発明の一態様に係るノード及び移動体が備える構成について説明する。
図2は、本発明の一態様に係るノードの構成の一例を示すブロック図である。ノード10は、例えば
図2に示すように、対移動体通信手段11、ノード側計算手段12、ノード間通信手段13、電源14などから構成される。
【0036】
対移動体通信手段11は、移動体(ロボット)との非接触型双方向通信を提供するものである。対移動体通信手段11は、一例として、RFIDや赤外線通信、可視光線通信、音波通信などの近距離無線通信技術により実装される。移動体との双方向通信のため、移動体の側も同規格の近距離無線通信モジュールを備える必要がある。例えば、通信方式を近距離通信とすることで、電波干渉を最小限に抑えることができる。
【0037】
ノード側計算手段12は、CPU等の計算ユニット、および、ROMやRAM等の記憶装置からなる計算資源を持ち、一例として、メモリ31、経路設定部32、及び、ネットワーク制御部33(接続管理部34やルーティングテーブル35等からなる)を備える。経路設定部32やネットワーク制御部33により、(1)移動体の行動計画、(2)移動体・隣接ノードとの通信管理、(3)隣接ノードとの通信に基づく環境情報(トポロジ情報など)の把握を行うことができる。また、移動体の行動計画は、例えば、NetChangeなどの分散アルゴリズムを用いたトポロジ情報に基づくルーティングテーブル35の計算・保持・更新により実現され得る。また、隣接ノードとの接続関係の更新は、例えば、Ping送信などにより接続状態を監視することより実現されうる。
【0038】
ノード間通信手段13は、隣接するノード15A、15B(隣接するノードの数による)との間での通信を行うものである。通信の確実性およびリアルタイム性を重視し、接触型双方向通信を採用することが好ましい。例えば、I2CやSPI、UART、CANなどのプロトコルにより実装され得る。また、接続は、有線端子あるいはマグネットコネクタなどにより実装され得る。隣接ノードとの局所通信に基づき、各ノードは担当領域内に存在する移動体について適切な行動計画を行い、これを上述の非接触型近距離通信等により移動体へ伝達する。また、分散ルーティングなどの技術により、各ノードはノード間通信を介して環境の変化を検出し、これに自律的に対応することができる。
【0039】
電源14は、上述した対移動体通信手段11、ノード側計算手段12、ノード間通信手段13などを稼働させるためのものである。電源はリチウムイオン電池などバッテリーを内蔵する形式の他に、電源線をノード間で共有する方法、Qiなどの無線給電技術によりノード下部の床より給電する方法、ソーラーパネルなどを用いた自己発電などにより実現され得る。
【0040】
図3は、本発明の一態様に係る移動体の構成の一例を示すブロック図である。移動体20は、例えば
図3に示すように、移動体側計算手段21、対ノード通信手段22、センサー23、アクチュエーター24、外部通信手段25、電源26などから構成される。
【0041】
移動体側計算手段21は、CPU等の計算ユニット、および、ROMやRAM等の記憶装置からなる計算資源を持ち、一例として、メモリ41、動作制御部42、及び、意思決定部43を備える。動作制御部42や意思決定部43により、(1)アクチュエーターやセンサーを用いた移動の制御、(2)移動体が位置するノード・外部デバイス60との通信管理、(3)ノードとの通信に基づく進行方向の把握、(4)目的地の選択・決定を行うことができる。また、目的地の選択・決定は、例えば、Wi-Fiなどを介して目的地を与える他デバイスとの通信などにより実現され得る。
【0042】
対ノード通信手段22は、ノード10との非接触型双方向通信を提供するものである。対ノード通信手段22は、一例として、RFIDや赤外線通信、可視光線通信、音波通信などの近距離無線通信技術により実装される。ノード10との双方向通信のため、ノード10の側も同規格の近距離無線通信モジュールを備える必要がある。
【0043】
センサー23は、移動体20の正常な進行や、緊急時の回避行動のために必要となる構成である。センサー23は、赤外線センサーや超音波センサー、あるいはカメラなどにより実装され得る。
【0044】
アクチュエーター24は、移動体20の移動のために必要となる構成である。アクチュエーター24は、無限軌道やタイヤを動かすモーターなどにより実現され得る。
【0045】
外部通信手段25は、外部デバイス60から目的地情報を受け取るためなどのために外部デバイス60と通信を行う。外部通信手段25は、例えば、Wi-FiやBluetooth(登録商標)などにより実現され得る。
【0046】
電源26は、上述した各モジュールを稼働させるためのものである。電源26は、例えばリチウムイオン電池などバッテリーを内蔵する形式、Qiなどの無線給電技術により給電する方法、ソーラーパネルなどを用いた自己発電などにより実現される。
【0047】
次に、本発明に係る管理方法の一実施形態について、図面を使用しながら説明する。
【0048】
図4は、環境(ノード)による移動体の行動制御の一例を示した概略図であり、
図4(A)は、移動前の制御フローを示した図であり、
図4(B)は、移動後の制御フローを示した図である。
【0049】
一例として、移動体がノードAからノードBへと移動する場合の制御フローを示す。なお、移動体のいるノード(ノードA)は「移動体(ロボット)を保有している状態」、移動体のいないノード(ノードB)は「予約を受け付ける状態」であるとする。
【0050】
まず、
図4(A)に示すように、移動体は、例えば外部デバイスから入力された最終的な目的地へ移動するための移動先を直下のノードAに対して問い合わせる(通信m1)。移動体から移動先の問い合わせを受けたノードAは、例えば、予めノード間の通信により作成されたルーティングテーブルを基に、ノード側計算手段内の経路設定部により適切な移動先(隣接するノードB)を決定する(プロセスp1)。
【0051】
移動先(隣接するノードB)決定後は、ノードAは、移動先ノード(ノードB)へ移動の可否を問い合わせる(通信m2)。ノードBは、移動体がいないノードであるため、ノードAからの予約を受け付け、移動体の移動を待機する状態へ移行する(プロセスp2)。そして、ノードBは、移動を受け付ける旨をノードAへと通知する(通信m3)。
【0052】
ノードBから移動受付の通知を受けたノードAは、移動体への移動命令を構築し、移動体へ移動命令を発行し(通信m4)、移動完了を待機する状態へ移行する(プロセスp3)。ノードAから移動命令を受けた移動体は、指定された移動先(ノードB)への移動を開始する(アクションa1)。
【0053】
移動体(ロボット)が移動している間、移動元ノード(ノードA)及び移動先ノード(ノードB)は、共に移動体の移動完了を待機する。この間、隣接する他のノードから送られ得る、別の移動体に関する移動可否の問い合わせには、すべて「不可」である旨を返し、他の移動体が管理区域内に侵入することを避ける。
【0054】
移動後の制御フローについては、
図4(B)に示すように、移動体が移動先(ノードB)への移動を完了する(アクションa1)。このとき、移動体はノードBに対して移動が完了したことを通知する(通信m1)。通知を受けたノードBは、移動体の移動を待機する状態から移動体を保有している状態に移行する(プロセスp1)。
【0055】
そして、ノードBは移動元ノード(ノードA)へ移動が完了した旨を通知する(通信m2)。通知を受けたノードAは、移動完了を待機する状態から予約を受け付ける状態へと移行する(プロセスp2)。ノードAは、移動元ノード(ノードA)の状態更新が成功したことを移動先ノード(ノードB)へ通知し(通信m3)、ノードBは、移動に関わったノードの状態更新が成功したことを移動体(ロボット)に通知する(通信m4)。状態更新の成否の通知がシステム要件として不必要である場合、通信m3およびm4は省略しても良い。
【0056】
なお、移動先ノード(ノードB)が「移動体(ロボット)を保有する状態」あるいは「移動体(ロボット)の移動完了を待機する状態」にある場合、この移動先ノード(ノードB)は新たな予約操作を受け付けることができない。なぜならば、新たな予約操作を受け付け、他の移動体の侵入を許してしまうと、移動体同士の衝突が発生してしまうためである。移動先ノードが予約を受け付けられない場合、
図4(A)におけるプロセスp2は正常に実行されず、代わりに移動元ノード(ノードA)に対して「受け入れ不可」であることを通知する。移動先ノード(ノードB)から「受け入れ不可」の通知を受け取った移動元ノード(ノードA)は、他の移動先を探すか、あるいは移動体に対してその場で待機するよう命令を下す。この部分に関してはシステム固有の振る舞いではなく、移動体の行動計画を具体的に行うアルゴリズムによって振る舞いが決定される。
【0057】
なお、上記のように本発明の一実施形態について詳細に説明したが、本発明の新規事項及び効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは、当業者には、容易に理解できるであろう。従って、このような変形例は、全て本発明の範囲に含まれるものとする。例えば、本発明では主に複数のノードによる環境中の移動体の行動の分散管理について説明してきたが、分散管理の管理対象は移動体に限らず、環境自体もその対象であってもよい。
【0058】
また、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義又は同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。また、管理システム及び管理方法の構成、動作も本発明の一実施形態で説明したものに限定されず、種々の変形実施が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明の一態様に係る管理システム及び管理方法をもとに展開されうる主なサービスとして、大規模な自動共有倉庫(Automated Shared Warehouse)が挙げられる。現在の大規模倉庫の多くは基本的に自社倉庫の形式をとっており、高い資本力を持った大企業でなければ保有が難しい。資本力に乏しい中小企業が少ない投資で倉庫を保有しようとする場合、複数の企業でシェア可能な倉庫サービスの利用が考えられる。このとき、従来の中央制御システムでは、マスターコンピュータを保有する企業に権力が集中しかねない問題が発生するが、自律分散型のシステムであればこうした問題を回避可能である。特に、本発明に基づくシステムでは、環境側が移動体の占有面積、移動速度、位置を把握することができるため、移動体の差異を吸収した経路計画が可能となる。この点において、本発明は将来的に広く利用されることが想像できる。
【0060】
また、自動倉庫に限らず、本発明はより一般的に複数の移動体からなるシステムの基盤となるインフラストラクチャとなり得る。例えば自動運転車により形成されるインテリジェント・トランスポーテーション・システムが実現した未来において、現在の考え方では、輸送車間で通信を行うことで衝突回避などの協調動作を行う従来の分散管理手法が考えられるが、本発明によりその状況は一変する可能性がある。本発明の肝たる「環境に行動計画を委任し、移動体は環境からの指示に基づいて行動する」アイデアは、将来的なインフラ基盤の根源的アイデアとなる可能性を十分に持っている。
【符号の説明】
【0061】
1 管理システム、5 新たなノード、6 不具合の生じたノード、7 不具合の生じた移動体、10 ノード、11 対移動体通信手段、12 ノード側計算手段、13 ノード間通信手段、14 電源、15A,15B 隣接するノード、20,20A,20B 移動体、21 移動体側計算手段、22 対ノード通信手段、23 センサー、24 アクチュエーター、25 外部通信手段、26 電源、31 メモリ、32 経路設定部、33 ネットワーク制御部、34 接続管理部、35 ルーティングテーブル、41 メモリ、42 動作制御部、43 意思決定部、50A,50B ノード間の通信によって決定された領域、60 外部デバイス