(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-05
(45)【発行日】2023-12-13
(54)【発明の名称】細胞解離のためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
C12M 1/34 20060101AFI20231206BHJP
C12M 1/38 20060101ALI20231206BHJP
C12M 3/00 20060101ALI20231206BHJP
G01N 21/17 20060101ALI20231206BHJP
G06N 20/10 20190101ALI20231206BHJP
【FI】
C12M1/34 B
C12M1/38 Z
C12M3/00 Z
G01N21/17 A
G06N20/10
(21)【出願番号】P 2019563610
(86)(22)【出願日】2018-05-18
(86)【国際出願番号】 US2018033413
(87)【国際公開番号】W WO2018213721
(87)【国際公開日】2018-11-22
【審査請求日】2021-05-17
(32)【優先日】2017-05-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】518155982
【氏名又は名称】スライブ バイオサイエンス, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ウォン, カム リン
(72)【発明者】
【氏名】スカリー, メラニー
【審査官】山本 晋也
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2012/0258440(US,A1)
【文献】国際公開第2007/136073(WO,A1)
【文献】特開2006-149268(JP,A)
【文献】特開2012-029598(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M
C12Q
G01N
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
システムであって、
少なくとも1つの細胞解離剤によって細胞培養容器の少なくとも1つの表面から解離されている、細胞培養容器内の複数の細胞を撮像するように構成される、撮像システムと、前記撮像システムに結合される、少なくとも1つのコントローラであって、
実行されると、
解離の間、前記複数の細胞内の少なくともいくつかの細胞の、異なる焦点距離で捉えられる画像のセットを捕捉するように、前記撮像システムを制御し、
前記画像のセットを使用し、各画像を前景部分および背景部分に区画化し、画像内のピクセル毎に、前記ピクセルが前記前景部分に属するかまたは前記背景部分に属するかを示すバイナリマスクを作製することにより、前記少なくとも1つの細胞解離剤を中和するべきときを識別し、前記画像のセットにおける連続画像の前記背景部分における特徴の間の距離を使用することによって、中和するべきときを識別する、
命令を記憶するメモリに結合される、少なくとも1つのコントローラと、
を備える、システム。
【請求項2】
前記画像の区画化は、ヒストグラムを生成し、カットオフ閾値を識別し、縁検出アルゴリズムを実施し、雑音をフィルタリングし、孔を充填することによって実施される、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記少なくとも1つの細胞解離剤を中和するべきときを識別することは、少なくとも部分的に、前記画像のセットにおける連続画像からの前記背景部分の間の距離の測度に基づく、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記少なくとも1つの細胞解離剤を中和するべきときを識別することは、前記画像のセットにおける前記連続画像からの前記背景部分の間の前記距離の測度を計算することを含む、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記連続画像からの前記背景部分の間の前記距離の測度を計算することは、少なくとも部分的に、前記画像のセットにおける前記連続画像からの前記背景部分の強度ヒストグラムの間の距離の測度を計算することによる、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記画像のセットを使用して前記少なくとも1つの解離剤を中和するべきときを識別することは、少なくとも部分的に、
前記画像のセット内の少なくとも1つの画像を使用して、少なくとも1つの特徴を取得すること、
前記少なくとも1つの特徴を入力として分類器に提供すること、および
前記少なくとも1つの特徴を入力として使用して生成される前記分類器の出力に基づいて、前記少なくとも1つの解離剤を中和するべきときを判定すること、
よる、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記少なくとも1つの画像を使用して前記少なくとも1つの特徴を取得することは、少なくとも部分的に、前記画像のセット内の第1の画像の第1の強度ヒストグラムと前記画像のセット内の第2の画像の第2の強度ヒストグラムとの間の距離の測度を計算することによる、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記少なくとも1つのコントローラは、少なくとも部分的に、前記第1の強度ヒストグラムと前記第2の強度ヒストグラムとの間の前記距離の測度を入力として前記分類器に提供することによって、前記少なくとも1つの特徴を入力として前記分類器に提供するように構成される、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記分類器は、決定木と、ニューラルネットワークと、判別関数と、ベイジアンネットワークと、サポートベクタマシンとから成る群から選択される、請求項6に記載のシステム。
【請求項10】
捕捉することは、複数の画像セットを取得することを含み、各画像セットは、複数の焦点面毎に、前記複数の細胞内の前記少なくともいくつかの細胞の画像を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記画像のセットを使用して前記少なくとも1つの解離剤を中和するべきときを識別することは、少なくとも部分的に、
少なくとも部分的に、前記複数の細胞内の少なくとも1つの細胞の縁強度に基づいて計算される焦点スコアに基づいて、第1の焦点画像を選択すること、
少なくとも部分的に、前記複数の細胞内の少なくとも1つの細胞の縁強度に基づいて計算される焦点スコアに基づいて、第2の焦点画像を選択すること、
第1の前記焦点画像および前記第2の焦点画像を使用して、少なくとも1つの特徴を取得すること、
前記少なくとも1つの特徴を入力として分類器に提供すること、および
少なくとも部分的に、前記少なくとも1つの特徴を入力として使用して生成される前記分類器の出力に基づいて、前記少なくとも1つの解離剤を中和するべきときを判定すること、
による、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記少なくとも1つの特徴を取得することは、前記第1の焦点画像の第1の強度ヒストグラムと前記第2の焦点画像の第2の強度ヒストグラムとの間の距離の測度を計算することを含む、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記少なくとも1つの細胞の縁強度は、少なくとも1つの勾配演算子を使用して判定される、請求項11に記載のシステム。
【請求項14】
前記少なくとも1つの細胞の縁強度は、Sobel縁検出器またはCanny縁検出器を使用して判定される、請求項11に記載のシステム。
【請求項15】
前記少なくとも1つの細胞解離剤は、酵素を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項16】
前記酵素は、トリプシンを含む、請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
前記少なくとも1つの細胞解離剤は、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項18】
前記画像のセットは、位相コントラスト画像のシーケンスを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項19】
方法であって、
少なくとも1つの細胞解離剤によっ
て細胞培養容器の少なくとも1つの表面から解離されている複数の細胞を貯蔵する、
前記細胞培養容器を受容することと、
解離の間に、撮像システムによって、前記複数の細胞内の少なくともいくつかの細胞の、異なる焦点距離で捉えられる画像のセットを捕捉することと、
前記撮像システムに結合される少なくとも1つのコントローラを使用して、前記画像のセットを使用し、各画像を前景部分および背景部分に区画化し、画像内のピクセル毎に、前記ピクセルが前記前景部分に属するかまたは前記背景部分に属するかを示すバイナリマスクを作製することにより、前記少なくとも1つの細胞解離剤を中和するべきときを識別し、前記画像のセットにおける連続画像の前記背景部分における特徴の間の距離を使用することによって、中和するべきときを識別することと、
を含む、方法。
【請求項20】
前記画像の区画化は、ヒストグラムを生成し、カットオフ閾値を識別し、縁検出アルゴリズムを実施し、雑音をフィルタリングし、孔を充填することによって実施される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記少なくとも1つの細胞解離剤を中和するべきときを識別することは、少なくとも部分的に、前記
画像のセット内の第1
の画像からの背景部分と前記
画像のセット内の第2
の画像からの背景部分との間の距離の測度に基づいて、前記少なくとも1つの細胞解離剤を中和するべきときを識別することを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記
画像のセット内の前記第1
の画像からの背景部分と前記
画像のセット内の前記第2
の画像からの背景部分との間の前記距離の測度を計算することをさらに含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記
画像のセット内の前記第1
の画像からの背景部分と
前記画像のセット内の前記第2
の画像からの背景部分との間の前記距離の測度を計算することは、前記
画像のセット内の前記第1
の画像からの背景部分の第1の強度ヒストグラムと前記
画像のセット内の前記第2
の画像からの背景部分の第2の強度ヒストグラムとの間の距離の測度を計算することを含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記少なくとも1つの細胞解離剤を中和するべきときを識別することは、
前記画像のセット内の少なくとも1つの画像を使用して、少なくとも1つの特徴を取得することと、
前記少なくとも1つの特徴を入力として分類器に提供することと、
前記少なくとも1つの特徴を入力として使用して生成される前記分類器の出力に基づいて、前記少なくとも1つの解離剤を中和するべきときを判定することと、
を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項25】
前記少なくとも1つの細胞解離剤を中和するべきときを識別することに応答して、前記細胞培養容器に少なくとも1つの細胞培養培地を添加することをさらに含む、請求項19に記載の方法。
【請求項26】
細胞培養インキュベータであって、
少なくとも細胞解離剤によっ
て細胞培養容器の少なくとも表面から解離されている複数の細胞を貯蔵する、
前記細胞培養容器を受容するように構成される、インキュベータキャビネットと、
前記複数の細胞を撮像するように構成される、撮像システムと、
前記撮像システムに結合される、少なくとも1つのコントローラであって、
実行されると、
解離の間、前記複数の細胞内の少なくともいくつかの細胞の、異なる焦点距離で捉えられる画像のセットを捕捉するように、前記撮像システムを制御し、
前記画像のセットを使用し、各画像を前景部分および背景部分に区画化し、画像内のピクセル毎に、前記ピクセルが前記前景部分に属するかまたは前記背景部分に属するかを示すバイナリマスクを作製することにより、前記少なくとも1つの細胞解離剤を中和するべきときを識別し、前記画像のセットにおける連続画像の前記背景部分における特徴の間の距離を使用することによって、中和するべきときを識別する、
命令を含むメモリに結合される、少なくとも1つのコントローラと、
を備える、細胞培養インキュベータ。
【請求項27】
システムであって、
少なくとも1つの細胞解離剤によっ
て細胞培養容器の少なくとも1つの表面から解離されている、
前記細胞培養容器内の複数の細胞を撮像するように構成される、撮像システムと、
前記撮像システムに結合される、少なくとも1つのコントローラであって、
実行されると、
解離の間、前記複数の細胞内の少なくともいくつかの細胞の、異なる焦点距離で捉えられる画像のセットを捕捉するように、前記撮像システムを制御し、
前記画像のセットを使用し、各画像を前景部分および背景部分に区画化し、画像内のピクセル毎に、前記ピクセルが前記前景部分に属するかまたは前記背景部分に属するかを示すバイナリマスクを作製することにより、前記細胞培養容器の少なくとも1つの表面から前記少なくともいくつかの細胞を機械的に分離するべきときを識別し、前記画像のセットにおける連続画像の前記背景部分における特徴の間の距離を使用することによって、中和するべきときを識別する、
命令を記憶するメモリに結合される、少なくとも1つのコントローラと、
を備える、システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、2017年5月19に出願された“SYSTEMS AND METHODS FOR CELL DISSOCIATION”と題する米国仮出願番号第62/508,955号に基づく米国特許法第119条(e)項の下の利益を主張しており、この仮出願は、その全体が参考として本明細書中に援用される。
【0002】
分野
本明細書に説明される技術の側面は、細胞解離剤を使用した細胞解離のための技法に関する。いくつかの側面は、細胞培養インキュベータにおけるこれらの技法の実装に関する。
【背景技術】
【0003】
背景
細胞は、多くの場合、フラスコ、瓶、バッグ、またはプレート等の容器内で培養される。これらの容器では、細胞は、典型的には、細胞のための栄養素を含む成長培地が提供される。細胞は、典型的には、それらが成長するにつれて、容器の1つまたはそれを上回る表面に粘着する。いったん細胞が、ほぼ(または完全に)コンフルエントになると、容器内の細胞は、継代され、細胞が成長し続けることを可能にする。細胞は、容器から細胞を機械的に(例えば、優しい掻爬または叩打を使用することによって)ならびに/もしくは酵素的に(例えば、トリプシンまたは1つまたはそれを上回る他の酵素を使用して)のいずれか一方で剥離し、細胞をさらなる成長のために1つまたはそれを上回る新しい容器に移送することによって継代され得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
要旨
いくつかの実施形態は、少なくとも1つの細胞解離剤によって細胞培養容器の少なくとも1つの表面から解離されている、細胞培養容器内の複数の細胞を撮像するように構成される、撮像システムと、撮像システムに結合される、少なくとも1つのコントローラとを備える、システムを対象とする。少なくとも1つのコントローラは、実行されると、解離の間、複数の細胞内の少なくともいくつかの細胞の画像のシーケンスを捕捉するように、撮像システムを制御し、該画像のシーケンスを使用し、少なくとも1つの細胞解離剤を中和するべきときを識別する命令を記憶する、メモリに結合される。
【0005】
いくつかの実施形態は、少なくとも1つの細胞解離剤によって細胞培養容器の少なくとも1つの表面から解離されている複数の細胞を貯蔵する、細胞培養容器を受容することと、解離の間に、撮像システムによって、複数の細胞内の少なくともいくつかの細胞の画像のシーケンスを捕捉することと、撮像システムに結合される少なくとも1つのコントローラを使用して、画像のシーケンスを使用して少なくとも1つの細胞解離剤を中和するべきときを識別することとを含む方法を対象とする。
【0006】
いくつかの実施形態は、少なくとも細胞解離剤によって細胞培養容器の少なくとも表面から解離されている複数の細胞を貯蔵する、細胞培養容器を受容するように構成される、インキュベータキャビネットと、複数の細胞を撮像するように構成される、撮像システムと、撮像システムに結合される、少なくとも1つのコントローラとを備える、細胞培養インキュベータを対象とする。少なくとも1つのコントローラは、実行されると、解離の間、複数の細胞内の少なくともいくつかの細胞の画像のシーケンスを捕捉するように、撮像システムを制御し、画像のシーケンスを使用し、少なくとも1つの細胞解離剤を中和するべきときを識別する命令を含む、メモリに結合される。
【0007】
いくつかの実施形態は、少なくとも1つの細胞解離剤によって細胞培養容器の少なくとも1つの表面から解離されている、細胞培養容器内の複数の細胞を撮像するように構成される、撮像システムと、撮像システムに結合される、少なくとも1つのコントローラとを備える、システムを対象とする。少なくとも1つのコントローラは、実行されると、解離の間、複数の細胞内の少なくともいくつかの細胞の画像のシーケンスを捕捉するように、撮像システムを制御し、画像のシーケンスを使用し、細胞培養容器の少なくとも1つの表面から少なくともいくつかの細胞を機械的に分離するべきときを識別する命令を記憶する、メモリに結合される。
【0008】
いくつかの実施形態は、細胞培養容器内の複数の細胞を撮像するように構成される、撮像システムと、撮像システムに結合される、少なくとも1つのコントローラとを備えるシステムを対象とする。少なくとも1つのコントローラは、実行されると、複数の細胞内の少なくとも1つの細胞の焦点画像を捕捉するように、撮像システムを制御し、焦点画像を使用して、少なくとも1つの細胞の少なくとも1つの形態的特性を識別し、焦点画像を使用して、少なくとも1つの細胞の少なくとも1つのテクスチャ特徴を識別し、少なくとも1つの細胞の識別された少なくとも1つの形態的特性、および少なくとも1つの細胞の識別された少なくとも1つのテクスチャ特徴を使用して、少なくとも1つの細胞の細胞タイプを識別する命令を記憶する、メモリに結合される。
特定の実施形態では例えば以下の項目が提供される:
(項目1)
システムであって、
少なくとも1つの細胞解離剤によって細胞培養容器の少なくとも1つの表面から解離されている、細胞培養容器内の複数の細胞を撮像するように構成される、撮像システムと、前記撮像システムに結合される、少なくとも1つのコントローラであって、
実行されると、
解離の間、前記複数の細胞内の少なくともいくつかの細胞の画像のシーケンスを捕捉するように、前記撮像システムを制御し、
前記画像のシーケンスを使用し、前記少なくとも1つの細胞解離剤を中和するべきときを識別する、
命令を記憶するメモリに結合される、少なくとも1つのコントローラと、
を備える、システム。
(項目2)
前記画像のシーケンスは、複数の焦点面内の前記少なくともいくつかの細胞の第1の複数の画像と、前記複数の焦点面内の前記少なくともいくつかの細胞の第2の複数の画像とを含む、項目1に記載のシステム。
(項目3)
前記少なくとも1つの細胞解離剤を中和するべきときを識別することは、少なくとも部分的に、前記第1の複数の画像内の第1の画像と前記第2の複数の画像内の第2の画像との間の距離の測度に基づく、項目2に記載のシステム。
(項目4)
前記少なくとも1つの細胞解離剤を中和するべきときを識別することは、前記第1の画像と前記第2の画像との間の前記距離の測度を計算することを含む、項目3に記載のシステム。
(項目5)
前記第1の画像と前記第2の画像との間の前記距離の測度を計算することは、少なくとも部分的に、前記第1の画像の第1の強度ヒストグラムと前記第2の画像の第2の強度ヒストグラムとの間の距離の測度を計算することによる、項目4に記載のシステム。
(項目6)
前記画像のシーケンスを使用して前記少なくとも1つの解離剤を中和するべきときを識別することは、少なくとも部分的に、
前記画像のシーケンス内の少なくとも1つの画像を使用して、少なくとも1つの特徴を取得すること、
前記少なくとも1つの特徴を入力として分類器に提供すること、および
前記少なくとも1つの特徴を入力として使用して生成される前記分類器の出力に基づいて、前記少なくとも1つの解離剤を中和するべきときを判定すること、
よる、項目1に記載のシステム。
(項目7)
前記少なくとも1つの画像を使用して前記少なくとも1つの特徴を取得することは、少なくとも部分的に、前記画像のシーケンス内の第1の画像の第1の強度ヒストグラムと前記画像のシーケンス内の第2の画像の第2の強度ヒストグラムとの間の距離の測度を計算することによる、項目6に記載のシステム。
(項目8)
前記少なくとも1つのコントローラは、少なくとも部分的に、前記第1の強度ヒストグラムと前記第2の強度ヒストグラムとの間の前記距離の測度を入力として前記分類器に提供することによって、前記少なくとも1つの特徴を入力として前記分類器に提供するように構成される、項目7に記載のシステム。
(項目9)
前記分類器は、決定木と、ニューラルネットワークと、判別関数と、ベイジアンネットワークと、サポートベクタマシンとから成る群から選択される、項目6に記載のシステム。
(項目10)
捕捉することは、画像セットのシーケンスを取得することを含み、各画像セットは、複数の焦点面毎に、前記複数の細胞内の前記少なくともいくつかの細胞の画像を含む、項目1に記載のシステム。
(項目11)
前記画像のシーケンスを使用して前記少なくとも1つの解離剤を中和するべきときを識別することは、少なくとも部分的に、
少なくとも部分的に、前記複数の細胞内の少なくとも1つの細胞の縁強度に基づいて計算される焦点スコアに基づいて、第1の焦点画像を選択すること、
少なくとも部分的に、前記複数の細胞内の少なくとも1つの細胞の縁強度に基づいて計算される焦点スコアに基づいて、第2の焦点画像を選択すること、
第1の前記焦点画像および前記第2の焦点画像を使用して、少なくとも1つの特徴を取得すること、
前記少なくとも1つの特徴を入力として分類器に提供すること、および
少なくとも部分的に、前記少なくとも1つの特徴を入力として使用して生成される前記分類器の出力に基づいて、前記少なくとも1つの解離剤を中和するべきときを判定すること、
による、項目10に記載のシステム。
(項目12)
前記少なくとも1つの特徴を取得することは、前記第1の焦点画像の第1の強度ヒストグラムと前記第2の焦点画像の第2の強度ヒストグラムとの間の距離の測度を計算することを含む、項目11に記載のシステム。
(項目13)
前記少なくとも1つの細胞の縁強度は、少なくとも1つの勾配演算子を使用して判定される、項目11に記載のシステム。
(項目14)
前記少なくとも1つの細胞の縁強度は、Sobel縁検出器またはCanny縁検出器を使用して判定される、項目11に記載のシステム。
(項目15)
前記少なくとも1つの細胞解離剤は、酵素を含む、項目1に記載のシステム。
(項目16)
前記酵素は、トリプシンを含む、項目15に記載のシステム。
(項目17)
前記少なくとも1つの細胞解離剤は、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)を含む、項目1に記載のシステム。
(項目18)
前記画像のシーケンスは、位相コントラスト画像のシーケンスを含む、項目1に記載のシステム。
(項目19)
方法であって、
少なくとも1つの細胞解離剤によって前記細胞培養容器の少なくとも1つの表面から解離されている複数の細胞を貯蔵する、細胞培養容器を受容することと、
解離の間に、撮像システムによって、前記複数の細胞内の少なくともいくつかの細胞の画像のシーケンスを捕捉することと、
前記撮像システムに結合される少なくとも1つのコントローラを使用して、前記画像のシーケンスを使用して前記少なくとも1つの細胞解離剤を中和するべきときを識別することと、
を含む、方法。
(項目20)
前記画像のシーケンスを捕捉することは、前記少なくともいくつかの細胞の第1の複数の画像を複数の焦点面内で捕捉することと、続いて、前記少なくともいくつかの細胞の第2の複数の画像を複数の焦点面内で捕捉することとを含む、項目19に記載の方法。
(項目21)
前記少なくとも1つの細胞解離剤を中和するべきときを識別することは、少なくとも部分的に、前記第1の複数の画像からの第1の画像と前記第2の複数の画像からの第2の画像との間の距離の測度に基づいて、前記少なくとも1つの細胞解離剤を中和するべきときを識別することを含む、項目20に記載の方法。
(項目22)
前記第1の画像と前記第2の画像との間の前記距離の測度を計算することをさらに含む、項目21に記載の方法。
(項目23)
前記第1の画像と第2の画像との間の前記距離の測度を計算することは、前記第1の画像の第1の強度ヒストグラムと前記第2の画像の第2の強度ヒストグラムとの間の距離の測度を計算することを含む、項目22に記載の方法。
(項目24)
前記少なくとも1つの細胞解離剤を中和するべきときを識別することは、
前記画像のシーケンス内の少なくとも1つの画像を使用して、少なくとも1つの特徴を取得することと、
前記少なくとも1つの特徴を入力として分類器に提供することと、
前記少なくとも1つの特徴を入力として使用して生成される前記分類器の出力に基づいて、前記少なくとも1つの解離剤を中和するべきときを判定することと、
を含む、項目19に記載の方法。
(項目25)
前記少なくとも1つの細胞解離剤を中和するべきときを識別することに応答して、前記細胞培養容器に少なくとも1つの細胞培養培地を添加することをさらに含む、項目19に記載の方法。
(項目26)
細胞培養インキュベータであって、
少なくとも細胞解離剤によって前記細胞培養容器の少なくとも表面から解離されている複数の細胞を貯蔵する、細胞培養容器を受容するように構成される、インキュベータキャビネットと、
前記複数の細胞を撮像するように構成される、撮像システムと、
前記撮像システムに結合される、少なくとも1つのコントローラであって、
実行されると、
解離の間、前記複数の細胞内の少なくともいくつかの細胞の画像のシーケンスを捕捉するように、前記撮像システムを制御し、
前記画像のシーケンスを使用し、前記少なくとも1つの細胞解離剤を中和するべきときを識別する、
命令を含むメモリに結合される、少なくとも1つのコントローラと、
を備える、細胞培養インキュベータ。
(項目27)
システムであって、
少なくとも1つの細胞解離剤によって前記細胞培養容器の少なくとも1つの表面から解離されている、細胞培養容器内の複数の細胞を撮像するように構成される、撮像システムと、
前記撮像システムに結合される、少なくとも1つのコントローラであって、
実行されると、
解離の間、前記複数の細胞内の少なくともいくつかの細胞の画像のシーケンスを捕捉するように、前記撮像システムを制御し、
前記画像のシーケンスを使用し、前記細胞培養容器の少なくとも1つの表面から前記少なくともいくつかの細胞を機械的に分離するべきときを識別する、
命令を記憶するメモリに結合される、少なくとも1つのコントローラと、
を備える、システム。
(項目28)
システムであって、
細胞培養容器内の複数の細胞を撮像するように構成される、撮像システムと、
前記撮像システムに結合される、少なくとも1つのコントローラであって、
実行されると、
前記複数の細胞内の少なくとも1つの細胞の焦点画像を捕捉するように、前記撮像システムを制御し、
前記焦点画像を使用して、前記少なくとも1つの細胞の少なくとも1つの形態的特性を識別し、
前記焦点画像を使用して、前記少なくとも1つの細胞の少なくとも1つのテクスチャ特徴を識別し、
前記少なくとも1つの細胞の識別された少なくとも1つの形態的特性、および前記少なくとも1つの細胞の識別された少なくとも1つのテクスチャ特徴を使用して、前記少なくとも1つの細胞の細胞タイプを識別する、
命令を記憶するメモリに結合される、少なくとも1つのコントローラと、
を備える、システム。
(項目29)
前記少なくとも1つの形態的特性は、細胞形状と、細胞サイズと、核サイズと、核形状とから成る群から選択される、少なくとも1つの特性を含む、項目28に記載のシステム。
【図面の簡単な説明】
【0009】
種々の側面および実施形態が、以下の図を参照して説明される。図が、必ずしも正確な縮尺率に描かれていないことを理解されたい。複数の図内に出現するアイテムは、それらが出現する全ての図において同一または類似の参照番号によって示される。
【0010】
【
図1】
図1A-1Dは、解離の間、細胞の形状が形状を変化させる様子を図示する略図である。
【0011】
【
図2】
図2A-2Dは、本明細書に説明される技術のいくつかの実施形態による、
図1A-1Dに示される形状毎の細胞の例示的画像を図示する略図である。
【0012】
【
図3】
図3A-3Dは、本明細書に説明される技術のいくつかの実施形態による、解離の間の細胞培養容器内の細胞の4つの異なる画像を示す略図である。
【0013】
【
図4】
図4は、本明細書に説明される技術のいくつかの実施形態による、細胞解離剤を中和するべきときを識別するために細胞の画像を分析するための例証的プロセスを示す略図である。
【0014】
【
図5】
図5は、本明細書に説明される技術のいくつかの実施形態による、容器から細胞を解離させるための例証的プロセスのフローチャートである。
【0015】
【
図6】
図6は、本明細書に説明される技術のいくつかの実施形態による、例証的細胞培養インキュベータの略図である。
【0016】
【
図7】
図7は、本明細書に説明される技術のいくつかの実施形態による、例証的コントローラのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
詳細な説明
上記で議論されるように、細胞は、細胞を細胞解離剤に暴露することによって、細胞培養容器の表面から解離され得る。細胞解離剤は、トリプシン等の酵素および/またはエチレンジアミン四酢酸(EDTA)等の酸を含み得る。しかしながら、細胞は、それらが細胞解離剤に過度に長時間にわたって暴露される場合、損傷または死滅し得る。従来、細胞培養技師は、(1)細胞を細胞解離剤に暴露し、(2)細胞を手動で監視し(例えば、細胞培養容器を定期的に振動または叩打し、細胞が反応することを見ることによって)、細胞が容器から実質的に剥離される時期を識別し、(3)細胞培養容器に対して細胞解離剤を中和することによって(例えば、中和剤ならびに/もしくは付加的な培養培地を添加することによって)、細胞培養容器から細胞を解離させる。
【0018】
本発明者は、容器から細胞を手動で解離させることが、細胞培養技師の時間を要求する時間のかかるプロセスであるだけではなく、これが、培養技師に細胞が細胞培養容器の表面から実質的に剥離されるまたはされない時期に関して判断することを要求するため、人的過誤を受けるものでもあることを認識および理解している。故に、本明細書に説明される技術の側面は、細胞が、細胞解離剤が中和され得、細胞が1つまたはそれを上回る他の容器に移送され得るように、細胞培養容器から実質的に剥離される時期を自動的に判定するための、画像処理ベースの技法に関する。これらの技法は、細胞が解離した時期を判定するための、客観的かつ一貫した基準を提供することによって、従来の細胞解離技法に優って改善し、これは、人的過誤を低減させ、細胞の生存能力を助長する。
【0019】
いくつかの実施形態では、本発明者によって開発される画像処理技法は、(1)細胞培養容器内の細胞の画像のシーケンス(例えば、位相コントラスト画像)を捕捉することと、(2)シーケンス内の画像の少なくともいくつかのものから画像特徴を抽出することと、(3)それらの画像を分類器(例えば、ニューラルネットワーク、判別関数、ベイジアンネットワーク、ガウス混合モデル、サポートベクタマシン等)に提供することと、(4)分類器の出力に基づいて、細胞解離剤を中和するおよび/または細胞培養容器から細胞を機械的に除去するかどうかを判定することとを伴う。分類器の出力に基づいて、細胞解離剤が中和されるべきであり、ならびに/もしくは細胞が細胞培養容器から除去されるべきであることが判定されると、これらのことのうちの一方または両方が、(細胞培養インキュベータ内で手動ならびに/もしくは自動で)講じられてもよい。他方では、分類器の出力に基づいて、まだ細胞解離剤を中和するべきときではないことが判定されると、細胞の自動監視が、継続してもよく、細胞の付加的な画像が、取得され、同様に、分析され、細胞解離剤を中和し、および/または細胞培養容器から細胞を機械的に除去するべき時期を判定してもよい。そのような自動撮像分析が、細胞解離剤が中和され得、および/または細胞が細胞培養容器から除去され得るように、細胞が細胞培養容器から実質的に剥離していることが判定されるまで継続してもよい。
【0020】
いくつかの実施形態では、画像のシーケンス内の画像から抽出される画像特徴は、細胞の1つまたはそれを上回る形態的特性ならびに/もしくは解離の間のそのような特性が経時的に変化する方法を反映し得る。例えば、細胞の形状は、それにわたって細胞が容器と接触している表面積が経時的に減少するにつれて、解離の間、経時的に変化し得る。実際には、細胞が細胞培養容器から解離するにつれて、画像内の細胞の形状は、不規則的なもの(例えば、楕円形または長円形)からより丸みを帯びたものに徐々に変化する。これは、
図1A-1Dを参照して下記に図示およびさらに説明される。細胞形状が不規則的なものから丸みを帯びた形状に変化する速度もまた、経時的に変化し、その速度の低減は、細胞が細胞培養容器から実質的に剥離していることを信号伝達し得る。
【0021】
故に、いくつかの実施形態では、画像のシーケンス内の画像から抽出された画像特徴のうちの少なくともいくつかのものは、細胞形状の変化および/またはそのような変化の速度を反映し得る。例えば、いくつかの実施形態では、画像特徴は、1つまたはそれを上回る画像の前景面積(画像の前景面積は、細胞を含むと判定された画像の一部の面積である)と、1つまたはそれを上回る画像の背景面積(画像の背景面積は、細胞を含まないと判定された画像の一部の面積である)と、1つまたはそれを上回る画像のヒストグラムとを含んでもよい。本発明者は、そのような特徴の変化が、細胞形状の変化およびそのような変化の速度を示し得ることを理解している。故に、いくつかの実施形態では、異なる画像から算出されたときのこれらの特徴およびこれらの特徴間の差異が、細胞解離剤を中和し、ならびに/もしくは細胞培養容器から細胞を機械的に除去するべき時期を判定するために使用されてもよい。
【0022】
本発明者はまた、細胞が、細胞培養容器から剥離し始めるにつれて、細胞形状および/または面積を正確に推定するために、細胞が撮像される深度が、変化される必要があり得ることを認識ならびに理解している。故に、いくつかの実施形態では、画像のシーケンスを取得することは、画像セットのシーケンスを取得することを含んでもよい。各画像セットは、画像内の各画像が個別の焦点面と関連付けられるように、異なる焦点距離で捉えられる複数の画像を含んでもよい。そのような画像セットは、これが、撮像部に対して異なる焦点距離(異なる「z」座標)において2次元(x/y)画像を含み得るため、「Zスタック」と称され得る。各画像セット内の単一の「焦点」画像が、選択され、個別の画像セットのシーケンスから選択されているある焦点画像のシーケンスをもたらしてもよい。ひいては、焦点画像のシーケンスは、細胞解離剤を中和し、および/または細胞培養容器から細胞を機械的に除去するかどうかを判定するために、画像特徴を導出し、分類器に提供するために使用されてもよい。
【0023】
いくつかの実施形態では、焦点画像が、1つまたはそれを上回る縁検出技法を使用することによって画像セットから選択されてもよい。例えば、いくつかの実施形態では、焦点画像が、各画像内の細胞縁を検出し(例えば、少なくとも1つの勾配演算子、すなわち、Sobel縁検出器、Canny縁検出器等を使用して)、縁強度を判定し(例えば、縁に沿った画像強度の差異として)、縁強度を使用し、(例えば、2乗された縁強度の正規化された合計として)焦点スコアを算出することによって、画像セットから選択されてもよい。最も小さい焦点スコアと関連付けられる画像が、画像セット内の焦点画像として選択されてもよい。
【0024】
いくつかの実施形態では、本明細書に説明される画像ベースの技法が、
図7を参照して説明される例証的細胞培養インキュベータ等の細胞培養インキュベータによって実施されてもよい。細胞培養インキュベータは、(1)少なくとも1つの細胞解離剤によって細胞培養容器から解離されている複数の細胞を貯蔵する、細胞培養容器を位置付けるように構成される、インキュベータキャビネットと、(2)細胞培養容器内の細胞を撮像するように構成される、撮像システムと、(3)解離の間、複数の細胞内の少なくともいくつかの細胞の画像のシーケンスを捕捉するように、撮像システムを制御し、画像のシーケンスを使用して、少なくとも1つの細胞解離剤を中和するべきときを識別するように構成される、少なくとも1つのコントローラとを含んでもよい。
【0025】
上記で議論されるように、画像から取得される画像特徴のうちのいくつかのものは、細胞培養容器内の細胞の1つまたはそれを上回る形態的特性(例えば、細胞形状、細胞サイズ、核サイズ、および核形状)を反映する。いくつかの実施形態では、そのような画像特徴は、細胞解離剤を中和するべきときを判定する以外の目的のために使用されてもよい。例えば、画像特徴は、細胞培養物内の細胞のタイプまたは複数のタイプを識別するために採用されてもよい。例証のための一実装では、細胞培養物は、種々の娘細胞を生産することが可能である幹細胞を含んでもよい。本実装では、画像特徴が、細胞培養物の画像から抽出されてもよく、細胞の形態的特性が、画像特徴を使用して識別されてもよく、幹細胞および/または娘細胞の1つまたはそれを上回るタイプの存在(もしくはそれがない状態)が、識別された形態的特性を使用して識別されてもよい。付加的な画像特徴もまた、識別された形態的特性と組み合わせて、光強度特徴および/またはテクスチャ特徴等の細胞培養物内の細胞のタイプもしくは複数のタイプを識別するために採用されてもよい。光強度特徴は、例えば、物体(例えば、細胞)を含むピクセルの強度値の特性に関連し得る。テクスチャ特徴は、例えば、物体(例えば、細胞)の表面および/または断面の外観に関連し得る。
【0026】
本明細書に説明される実施形態が、多数の方法のいずれかにおいて実装され得ることを理解されたい。具体的な実装の実施例が、例証の目的のみのために下記に提供される。これらの実施形態および提供される特徴/能力が、本明細書に説明される技術の側面がこの点において限定されないため、個々に、全てともに、または2つまたはそれを上回るものの任意の組み合わせにおいて使用され得ることを理解されたい。
【0027】
図1A-1Dは、容器102の表面からの解離の間、細胞104の形状が経時的に変化する様子を図示する略図である。
図1A-1Dに示されるように、細胞の形状は、解離の間、不規則的なもの(本実施例では、
図1Aの最も長円形のもの)から丸みを帯びたもの(本実施例では、
図1Dの最も丸みを帯びたもの)に徐々に変化する。
【0028】
細胞形状に類似する変化が、経時的に解離される細胞の画像を示す、
図3A-3Dに見られ得る。
図3Aは、細胞解離剤(本例示的実施例では、トリプシン)が細胞培養容器に添加された直後の細胞培養容器内の細胞の位相コントラスト画像を示す。
図3Bは、解離剤が細胞培養容器に添加された約1分後の細胞の位相コントラスト画像を示す。
図3Cは、解離剤が細胞培養容器に添加された約2分後の細胞の位相コントラスト画像を示す。
図3Dは、解離剤が細胞培養容器に添加された約4分後の細胞の位相コントラスト画像を示す。
図3A-3Dから理解され得るように、細胞解離剤への暴露後、細胞の形状は、不規則的なもの(本実施例では、
図3Aの最も長円形のもの)から丸みを帯びたもの(本実施例では、
図3Dの最も丸みを帯びたもの)に徐々に変化する。これらの図面はまた、形状が、細胞解離剤への暴露の最後の2分間(例えば、
図3Cおよび
図3Dの細胞の形状を比較)より、暴露の最初の2分間に大きい程度に変化する(例えば、
図3Aならびに
図3Cの細胞の形状を比較)ため、変化速度が均一ではないことを示す。
【0029】
上記で議論されるように、細胞形状が経時的に変化するため、いくつかの実施形態では、画像特徴が、細胞形状等の細胞特性の正確な推定値を取得するために、解離プロセスの間、異なる時間に異なる焦点距離で取得される画像から抽出されてもよい。例えば、
図3Aおよび
図3Dの細胞は、結果として生じる画像からの細胞形状ならびに/または他の画像特徴を正確に判定するために、異なる焦点距離で撮像されてもよい。
【0030】
故に、いくつかの実施形態では、画像特徴を抽出する画像を取得するために(画像特徴は、続いて、細胞解離剤を中和するかどうかを判定するために使用され得る)、撮像デバイスが、異なる焦点距離で細胞の複数の画像を捕捉し、複数の画像の中から、着目画像特徴が判定され得る単一の「焦点」画像を選択してもよい。
図5を参照して説明される縁検出ベースの技法を含む、画像のセット(例えば、画像の奥行または「Z」スタック)から単一の焦点画像を選択するための技法が、本明細書に説明される。
【0031】
例えば、
図1A-1Dに示されるように、細胞104は、4つの異なる画像セットを取得するために、焦点面110に対応する焦点距離において、4つの異なる時間周期に撮像されてもよい。本実施例では、細胞104は、細胞解離剤を添加することの直後、細胞解離剤を添加することの約1分後、細胞解離剤を添加することの約2分後、および細胞解離剤を添加することの約3分後に異なる焦点面で撮像される。4つの画像セットはそれぞれ、焦点面110毎に画像を含む。4つの画像セットのそれぞれの中で、画像特徴を抽出するための単一の画像が、選択されてもよい。本実施例では、焦点面108a、108b、108c、および108cに対応する焦点距離で取得される画像が、それぞれ、4つの画像セットから選択されてもよい。異なる焦点面に対応する画像が、細胞104の形状が、
図1A-1Cに示されるように、これらの時間周期にわたって変化し、より丸みを帯び、核106が細胞培養容器102の表面からさらに離れるように移動するため、最初の3つの時間周期内に選択される。他方では、同一の焦点面108cに対応する画像が、細胞104の形状が異なる焦点距離での撮像を必要とするように実質的に変化しないため、第3および第4の時間周期内に取得されるZスタックから選択されてもよい。本実施例では、細胞104は、第3および第4の時間周期の間、同一の焦点距離で焦点合わせされるように見え得る。
【0032】
図2A-2Dは、4つの異なる時間周期で取得された画像セットから選択された、細胞104の画像を図示する略図である。
図2Aは、第1の時間周期の間に、焦点面108aに対応する焦点距離において取得された画像200Aを示す。
図2Bは、第2の時間周期の間に、焦点面108bに対応する焦点距離において取得された画像200Bを示す。
図2Cは、第3の時間周期に、焦点面108cに対応する焦点距離において取得された画像200Cを示す。
図2Dは、第4の時間周期の間に、焦点面108cに対応する焦点距離において取得された画像200Dを示す。
【0033】
図2A-2Dから理解され得るように、細胞104の形状は、解離の間、変化する。例えば、細胞面積は、第1のサイズ低減202、第2のサイズ低減204、および第3のサイズ低減206を介して示されるように減少する。細胞面積の変化速度は、解離の間、経時的に減少し得る。本実施例に示されるように、第1のサイズ低減202は、第2のサイズ低減204を上回り、これは、ひいては、第3のサイズ低減206を上回る。
【0034】
いくつかの実施形態では、各画像セットが、複数の異なる焦点距離毎に取得される細胞培養容器内の細胞の画像を含む、画像セットのシーケンスが、取得されてもよく、画像セット内の画像から取得される画像特徴が、細胞培養容器内の細胞解離剤が中和されるべきであるように、細胞が実質的に解離しているかどうかを判定するために使用されてもよい。細胞が実質的に解離していないと判定される場合、解離プロセスは、継続することが可能にされてもよく(例えば、細胞解離剤を中和しないことによって)、付加的な時間が経過した後、細胞の新しい画像のセットが、取得されてもよく、画像特徴が、この新しい画像のセットを使用して取得され、細胞が実質的に解離しているかどうかを判定するために使用されてもよい。細胞が実質的に解離していると判定されるまで、本プロセスは、反復的であってもよく、各反復は、(1)細胞の新しい画像を取得することと、(2)新しい画像を使用して画像特徴(新しい画像のみから取得される特徴と、新しい画像と以前に取得された画像との間の差異に基づいて取得される差異特徴とを含む)を抽出することと、(3)抽出された画像特徴を使用し、解離が進行中である間、細胞が実質的に解離しているかどうかを判定することとを含み、細胞の周期的な撮像および細胞の画像が、取得され得る。
【0035】
図4は、本明細書に説明される技術のいくつかの実施形態による、細胞解離剤を中和するべきときを識別するために細胞の画像を分析するための、例示的反復的プロセス400の例示的反復を図示する。例示的反復では、2つの画像セット401Aおよび401Bが、それぞれ、第1の時間周期ならびに第2の時間周期の間に取得される。いくつかの実施形態では、画像セット401Aおよび401B内の画像は、位相コントラスト画像であってもよい。画像セットは、例えば、下記に
図6を参照して説明される撮像デバイス604等の任意の好適な撮像デバイスを使用して取得されてもよい。
【0036】
いくつかの実施形態では、第2の時間周期は、第1の時間周期に続く時間周期であってもよい。例えば、画像セット401Aは、細胞解離剤が細胞培養容器に添加された約1分後に取得された(細胞培養容器内の細胞の)画像から成ってもよく、画像セット401Bは、細胞解離剤が細胞培養容器に添加された約2分後に取得された画像から成ってもよい。第1および第2の時間周期が、本明細書に説明される技術の側面がこの点に限定されないため、時間の任意の好適な量(例えば、5秒、10秒、30秒、1分、1.5分、2分、3分等)だけ分離された時間であり得ることを理解されたい。
【0037】
いくつかの実施形態では、画像セット401A内の画像は、複数の焦点距離毎の、細胞培養容器内の細胞の画像を含んでもよい。画像セット401B内の画像もまた、複数の焦点距離毎の、細胞培養容器内の細胞の画像を含んでもよい。いくつかの実施形態では、画像セット401Aおよび401Bは、同一の数の画像から成ってもよい。例えば、各画像セットは、同一の焦点距離のセット毎に捉えられた画像を含んでもよい。別の実施例として、各画像セットは、画像セット401A内の画像を取得するために使用される焦点距離のうちの1つまたはそれを上回るものが、画像セット401B内の画像を取得するために使用されない場合でも、同一の数の焦点距離にわたって捉えられた画像を含んでもよい。他の実施形態では、画像セット401Aおよび401Bは、異なる数の画像から成ってもよい。
【0038】
次いで、単一の「焦点」画像が、画像セット401Aおよび401Bから選択され、それぞれ、画像402Aおよび402Bを取得する。焦点画像が、
図5を参照して説明される縁検出技法を含む縁検出技法を使用して、または任意の他の好適な方法で、画像セットから選択されてもよい。
【0039】
次いで、画像402Aおよび402Bはそれぞれ、前景部分が、細胞を含む画像の一部を含み、かつ背景部分が、細胞を含まない画像の一部を含むように、2つの部分、すなわち、前景部分ならびに背景部分に区画化されてもよい。本例証的実施形態では、画像402Aは、背景部分404Aおよび前景部分406Aに区画化される。画像402Bは、背景部分404Bおよび前景部分406Bに区画化される。
【0040】
いくつかの実施形態では、区画化の結果は、例えば、そのピクセルが前景部分内に属するかまたは背景部分内に属するかどうかを画像内のピクセル毎に示す、バイナリマスク等のマスクによって表されてもよい。
【0041】
画像が、例えば、縁検出技法を含む任意の好適な方法で前景および背景部分に区画化されてもよい。一実施例として、いくつかの実施形態では、区画化は、(1)画像内のピクセル値のヒストグラムを生成し、(2)、ヒストグラムを使用して(例えば、ヒストグラムの谷部の底部における点として)カットオフ閾値を識別し、(3)カットオフ閾値を使用し、縁検出アルゴリズム(例えば、Canny縁検出アルゴリズム)を実施し、(4)侵食および/または拡張演算子を適用し、雑音をフィルタリングし除去し、(5)孔を充填し、完成したバイナリマスクを得ることによって実施されてもよい。いくつかの実施形態では、これらのことのうちの1つまたはそれを上回るものが、省略されてもよい。例えば、いくつかの実施形態では、区画化は、最初の2つのことのみを使用して実施されてもよい。しかしながら、本明細書に説明される技術の側面が、この点に限定されないため、区画化が、縁検出技法を使用して実施される必要はなく、任意の他の好適な方法で実施され得ることを理解されたい。
【0042】
画像402Aおよび402Bが区画化された後、画像特徴408Aが、画像402Aから取得され得、画像特徴408Bが、画像402Bから取得され得る。任意の好適な画像特徴が、画像から抽出され得る。例えば、いくつかの実施形態では、以下の非限定的な特徴のリスト、すなわち、(1)画像内の背景部分の面積(例えば、背景部分404Aの面積)、(2)画像内の前景部分の面積(例えば、前景部分406Aの面積)、(3)ピクセル強度値のヒストグラム、(4)背景部分ピクセル強度値のヒストグラム、(5)前景部分ピクセル強度値のヒストグラム、(6)例えば、画像内の物体(例えば、細胞)を含むピクセルの強度地の特性に関連する、光強度特徴、および(7)例えば、画像内の物体(例えば、細胞)の表面ならびに/もしくは断面の外観に関連する、テクスチャ特徴からの1つまたはそれを上回る画像特徴が、抽出され得る。上記に列挙される例示的特徴に加えて、またはその代わりに、1つまたはそれを上回る他の画像特徴が、取得され得る。
【0043】
画像特徴408Aおよび408Bが、それぞれ、画像402Aならびに402Bから抽出された後、差異特徴409が、算出されてもよい。差異特徴は、画像特徴が画像間で変化した方法を示し得る。例えば、差異特徴409は、画像402Aから取得された背景面積と画像402Bから取得された背景面積との間の変化を示す特徴を含み得る。本特徴は、背景面積間の距離の測度(例えば、差異、絶対差、および2乗差)を計算することによって取得され得る。別の実施例として、差異特徴409は、画像402Aから取得される前景面積と画像402Bから取得される前景面積との間の差異を示す特徴を含んでもよい。この特徴もまた、背景面積間の距離の測度(例えば、差異、絶対差、および2乗差)を計算することによって取得され得る。
【0044】
さらに別の実施例として、差異特徴409は、それぞれ、画像402Aおよび402Bから取得される強度ヒストグラム間の距離の測度を示す、特徴を含んでもよい。例えば、差異特徴409は、前景強度ヒストグラム、背景強度ヒストグラム、または全体画像強度ヒストグラムの間の距離の測度を示す、特徴を含んでもよい。2つのヒストグラムH
1とH
2との間の距離の測度が、任意の好適な方法で算出され得る。例えば、距離の測度は、以下に従って、カイ2乗距離を使用して取得され得る。
【数1】
【0045】
別の実施例として、距離の測度は、以下に従って、相関測度を使用して取得され得る。
【数2】
【0046】
さらに別の実施形態として、距離の測度は、以下に従って、交差測度を使用して取得され得る。
【数3】
【0047】
さらに別の実施例として、距離の測度は、以下に従って、Bhattacharyya距離を使用して取得され得る。
【数4】
【0048】
上記に説明される例証的画像特徴は、細胞形状の変化およびそのような変化の速度を示し得る。ひいては、そのような変化およびそれらの速度は、細胞が、撮像されている細胞培養容器から解離している程度を示し得る。故に、これらの画像特徴は、次いで、入力として分類器410に提供され、その出力は、細胞培養容器内の細胞解離剤が中和され、および/または細胞が細胞解離容器から機械的に(例えば、掻爬を介して)除去されるべきかどうかのインジケーション412を提供し得る。
【0049】
任意の好適な分類器が、本プロセスの一部として使用されてもよい。例えば、決定木分類器が、使用されてもよい。別の実施例として、線形分類器(例えば、Fischerの線形判定分類器、ロジスティック回帰分類器、単純ベイズ分類器、プロビット回帰分類器等)が、使用されてもよい。さらに別の実施例として、ベイジアン分類器(例えば、ベイジアンネットワークまたは他のグライックモデルベースの分類器)が、使用されてもよい。さらに別の実施例として、ニューラルネットワーク分類器(例えば、単層ニューラルネットワーク、多層ニューラルネットワーク、深部ニューラルネットワーク、再帰型ニューラルネットワーク、畳み込みニューラルネットワーク等)が、使用されてもよい。分類器は、画像特徴、および1人またはそれを上回る細胞培養技師によって手動で判定される対応する出力を含む、訓練データを用いて訓練されてもよい。
【0050】
分類器410は、入力として分類器に提供される画像特徴に基づいて、分類器によって算出される結果412を出力してもよい。いくつかの事例では、結果412は、まだ細胞解離プロセスを停止させるべき時期ではないことを示してもよい。そのような事例では、プロセス400の1つまたはそれを上回る付加的な反復が、実施されてもよい。他の事例では、結果412は、細胞解離プロセスを停止させるべき時期であることを示してもよい。そのような事例では、結果412は、細胞が細胞培養容器から実質的に解離しているかどうかを示す情報、細胞が細胞培養容器から機械的に除去されるべきかどうかを示す情報、細胞解離剤が中和されるべきであることを示す情報、および/または細胞が細胞培養容器から実質的に解離していることを示す任意の他の情報を含んでもよい。分類器410によって生産される結果は、本明細書に説明される技術の側面がこの点に限定されないため、任意の好適なフォーマットにあってもよい。
【0051】
図5は、本明細書に説明される技術のいくつかの実施形態による、容器から細胞を解離させるための例示的プロセス500のフローチャートである。プロセス500は、任意の好適なデバイスによって実施されてもよく、例えば、少なくとも部分的に、例えば、
図6を参照して説明されるコントローラ612等のコントローラによって実施されてもよい。
【0052】
プロセス500は、行為502において開始し、ここでは、細胞培養容器内の細胞が、細胞培養容器内の細胞の少なくともいくつかのものが撮像され得る位置内に受容される。例えば、いくつかの実施形態では、細胞培養容器は、細胞のうちの少なくともいくつかのものが撮像デバイスによって撮像され得る場所に自動的に位置付けられてもよい。例えば、行為502において、細胞培養容器が、細胞培養容器内の細胞のうちの少なくともいくつかのもの(例えば、全て)が撮像デバイス604によって撮像され得るように、細胞培養インキュベータ600内の撮像場所605に位置付けられてもよい。
【0053】
次いで、プロセス500は、行為504に進み、ここでは、画像のシーケンスが取得される。画像は、任意の好適な撮像デバイスを使用して取得されてもよく、例えば、いくつかの実施形態では、位相コントラスト顕微鏡であり得る撮像デバイス604を使用して取得されてもよい。故に、いくつかの実施形態では、行為504において取得される画像は、位相コントラスト画像であり得る。しかしながら、本明細書に説明される技術の側面は、位相コントラスト画像のみの使用に限定されない。例えば、他の実施形態では、行為504において取得される画像のうちの1つまたはそれを上回るものは、細胞解離の程度に関する情報が導出され得る、明視野画像ならびに/もしくは任意の他の好適なタイプの画像であってもよい。
【0054】
いくつかの実施形態では、画像のシーケンスは、1つまたは複数の画像セットを含んでもよく、画像セットはそれぞれ、異なる焦点距離で捕捉される細胞培養チャンバ内の細胞のうちの少なくともいくつかのものの複数の画像を含む。いくつかの実施形態では、行為504が初めて実施されると、複数(例えば、2つ、3つ、4つ等)の画像セットが、画像特徴が複数の画像セットのそれぞれから取得され得るように、この最初の反復の間に取得されてもよく、これらの画像特徴間(画像セット間から)の差異が、細胞解離プロセスを停止させるかどうかを判定するために使用されてもよい。しかしながら、(決定ブロック512の「いいえ」の分岐に続いて結果として生じる)後続の反復では、1つまたは複数の画像セットが、行為504において取得されてもよい。1つの新しい画像セットが後続の反復の間に取得される場合でも、新しい画像特徴を使用して算出された特徴と以前に取得された画像特徴を使用して算出された特徴との間の差異が、判定され、その後、細胞解離プロセスを停止させるかどうかを判定するために使用されてもよい。
【0055】
いくつかの実施形態では、行為504において取得される各画像セットは、任意の好適な数の画像を含んでもよい。例えば、行為504において取得される各画像セットは、任意の好適な数の複数の異なる焦点面(または等しくは、焦点距離)毎に取得される画像を含んでもよい。例えば、行為504において取得される各画像セットは、少なくとも2個の焦点面、少なくとも5個の焦点面、少なくとも10個の焦点面、少なくとも50個の焦点面、少なくとも100個の焦点面、2~500個の焦点面、またはそのような範囲内の任意の他の好適な範囲毎に画像を含んでもよい。焦点面は、均一(例えば、焦点面は、2ミクロンだけ分離される)または非均一(例えば、いくつかの焦点面は、1ミクロンだけ分離され、他のものは、3ミクロンだけ分離される)に離間されてもよい。使用される焦点面は、細胞タイプに基づいて選択されてもよい(例えば、より厚い細胞は、より薄い細胞と異なる焦点面のセットを使用することを必要とし得る)。
【0056】
いくつかの実施形態では、複数の画像セットが行為504において取得されると、画像セットは、一度に1つずつの方式で取得されてもよく、少なくとも、時間の閾値量(例えば、少なくとも10秒、少なくとも20秒、少なくとも30秒、少なくとも1分、少なくとも2分、10秒~5分)が、第1の画像セットが取得された後、次の画像セットを取得し始める前に経過する。
【0057】
次いで、1つまたは複数の画像セットを含む画像のシーケンスが、行為504において取得された後、プロセス500は、行為506に進み、ここでは、単一の画像が、行為504において取得された1つまたはそれを上回る画像セットのそれぞれから選択され、後続の分析のために使用されるであろう、1つまたは複数の選択された画像を取得する。選択された画像は、いくつかの実施形態では、選択された画像が、「焦点」画像が識別され得る方法の定量的な推定値に基づいて、画像セットから識別され得るため、「焦点」画像と称され得る。
【0058】
いくつかの実施形態では、画像が、1つまたはそれを上回る縁検出技法を使用することによって、画像セットから「焦点」画像として選択されてもよい。例えば、いくつかの実施形態では、焦点画像が、各画像内の細胞縁を検出し(例えば、少なくとも1つの勾配演算子、すなわち、Sobel縁検出器、Canny縁検出器等を使用して)、縁強度を判定し(例えば、縁に沿った画像強度の差異として)、縁強度を使用し、(例えば、2乗された縁強度の正規化された合計として)焦点スコアを算出することによって、画像セットから選択されてもよい。最も小さい焦点スコアと関連付けられる画像が、画像セット内の焦点画像として選択されてもよい。
【0059】
いくつかの実施形態では、画像のコントラストが、焦点スコアを判定するために採用されてもよい。例えば、画像のコントラストは、縁強度を判定するために採用されてもよい。代替として(または加えて)、画像のコントラストは、縁強度と組み合わせて(もしくはその代わりに)、焦点スコアを生成するために採用されてもよい。
【0060】
いくつかの実施形態では、画像が、(1)背景ピクセル値を伴う輝度閾値を上回る強度を有するピクセルを置換することによって、画像セット内の各画像を変換し、(2)変換された画像上で縁検出を実施し(例えば、Sobel演算子を適用し、勾配強度内の水平および/または垂直変化を推定することによって)、(3)画像内の縁に沿った強度差異(「縁強度」として見なされ得る)を定量化し、(4)各変換された画像内の強度差を使用し、変換された画像のための(例えば、縁強度の2乗された差異の正規化された合計として)「焦点」スコアを取得することによって、画像セットから「焦点」画像として選択されてもよい。
【0061】
いくつかの実施形態では、背景ピクセル値は、時として、「Isodata」アルゴリズムと称される、反復的な閾値化技法を使用して識別されてもよい。本技法は、ピクセル強度のヒストグラムを分析することによって画像の前景と背景との間の閾値を反復的に選択することを伴う。いくつかの実施形態では、ピクセル強度のヒストグラムが、取得され、最初に、初期閾値Θ0を使用して2つの部分に区画化されてもよい(例えば、これは、最大ダイナミックレンジの半分であるものとして判定され得る)。前景ピクセルと関連付けられる濃淡値の標本平均(mf,0)および背景ピクセルと関連付けられる濃淡値の標本平均(mb,0)が、次いで、算出されてもよい。新しい閾値Θ0が、次いで、これらの2つの標本平均の平均値として算出されてもよい。プロセスは、閾値が変化しなくなるまで、新しい閾値に基づいて繰り返されてもよい。故に、閾値は、以下に従って更新され得る。
【0062】
【0063】
焦点画像が、行為504において取得された1つまたはそれを上回る画像セット毎に、行為506において識別された後、プロセス500は、行為508に進み、ここでは、画像特徴が、焦点画像から取得される。任意の好適な画像特徴が、焦点画像から取得され得る。
【0064】
いくつかの実施形態では、画像特徴が、行為506において選択された個々の焦点画像から取得されてもよい。画像特徴のうちの少なくともいくつかのものを取得するために、行為506において選択される画像はそれぞれ、前景および背景部分に区画化されてもよい。これは、
図4を参照して本明細書に説明される方法のうちのいずれかを含む、任意の好適な方法で行われてもよい。行為508において取得される画像特徴は、限定ではないが、(1)画像内の背景部分の面積、(2)画像内の前景部分の面積、(3)ピクセル強度値のヒストグラム、(4)背景部分ピクセル強度値のヒストグラム、および(5)前景部分ピクセル強度値のヒストグラムを含んでもよい。上記に列挙される例示的特徴に加えて、またはその代わりに、1つまたはそれを上回る他の画像特徴が、取得されてもよい。
【0065】
加えて、いくつかの実施形態では、差異特徴が、行為508において計算されてもよい。例えば、複数の画像セットが行為504において取得され、複数の対応する焦点画像が行為506において識別されると、画像特徴(上記に説明される例示的特徴等)が、複数の焦点画像毎に計算されてもよく、これらの特徴間の差異もまた、取得されてもよい。差異特徴を計算するための技法が、
図5を参照して本明細書に説明される。
【0066】
故に、いくつかの実施形態では、個々の画像からの特徴ならびに複数の画像から算出される差異特徴が、行為510において取得され、入力として分類器に提供されてもよい。分類器は、任意の好適なタイプであってもよく、その実施例が、
図4の分類器410を参照するものを含め、本明細書に提供される。
【0067】
次いで、プロセス500が、決定ブロック510に進み、ここでは、細胞解離剤が中和されるべきであるかどうかの判断が、行われる。この判定は、行為510において入力として分類器に提供された画像特徴に基づいて、分類器によって出力された結果を使用して行われ得る。分類器によって出力された結果が、まだ細胞解離プロセスを停止させるべき時期ではないことを示すと、プロセス500は、「いいえ」の分岐を介して行為504に戻り、ここでは、細胞培養容器内の細胞の付加的な画像が、(直後または時間の閾値量の後のいずれか一方で)取得されてもよい。
【0068】
他方では、分類器によって出力された結果が、細胞解離プロセスを停止させるべき時期であることを示すと、プロセス500は、行為514に進み、ここでは、細胞解離剤が、(例えば、中和剤および/または付加的な培養培地を添加することによって)中和され、続いて、行為516に進み、ここでは、細胞が、細胞培養容器から機械的に除去される。細胞は、掻爬、振動、叩打、および/または超音波を含む任意の好適な方法で機械的に除去されてもよい。
【0069】
プロセス500が、例証的であり、変形例が、存在することを理解されたい。例えば、例示的実施形態では、細胞は、細胞解離剤が中和された後に機械的に除去されるが、他の実施形態では、細胞を機械的に除去するプロセスが、細胞解離剤を中和するプロセスに先立って開始してもよい。これは、プレートからの細胞の除去が、酵素処理プロセスにおいて、別様に可能性として考えられるものより以前に行われることを可能にする。別の実施例として、いくつかの実施形態における、叩打および超音波の助けを用いた、複数の画像を有する画像奥行スタックを収集することではなく、単一の画像のみが、単一の対応する焦点距離に関して、行為504の各反復において収集されてもよい。これは、プロセス500の一部として奥行スタック内の「焦点」画像を識別する必要性を除去する。故に、そのような実施形態では、行為506が、省略されてもよい。
【0070】
いくつかの実施形態では、本明細書に説明される技法が、細胞培養インキュベータ内に採用されてもよい。細胞培養インキュベータは、手動の取扱を殆どまたは全く伴わずに細胞を培養するように構築されてもよい。それによって、細胞が汚染される可能性は、低減または排除され得る。そのような細胞培養インキュベータの実施例が、細胞培養インキュベータ600によって
図6に示される。細胞培養インキュベータ600は、1つまたはそれを上回る細胞培養容器内での細胞のインキュベーションのための内部チャンバ608を有する、インキュベータキャビネット609を含む。インキュベータキャビネット609は、開閉し、外部環境とインキュベータキャビネット609との間の通信を可能にする、外部ドア601を含む。いくつかの実施形態では、外部ドア601は、開閉し、外部環境と内部チャンバ608との間の通信を可能にする。内部チャンバ608は、1つまたはそれを上回る細胞培養容器を保持するように構成される。1つまたはそれを上回る細胞培養容器は、貯蔵場所602内で貯蔵される。いくつかの実施形態では、貯蔵場所602は、自立構造である。例えば、貯蔵場所602は、培養容器の装填および装填解除のために内部チャンバ608から除去され得る、試験管または培養フラスコラックであってもよい。いくつかの実施形態では、貯蔵場所602は、内部チャンバ608の表面に添着される。例えば、貯蔵場所602は、内部チャンバ608の壁または床に接続され、したがって、インキュベータキャビネット609から除去されることが可能ではない、一連のラックもしくは棚であってもよい。
【0071】
いくつかの実施形態では、細胞培養インキュベータ600は、1つまたはそれを上回る細胞培養容器を移動させるための移送デバイス603を含む。移送デバイス603は、内部チャンバ608の任意の適切な表面に添着されてもよい。例えば、移送デバイス603は、内部チャンバ608の上面または天井に添着されてもよい。代替として、移送デバイス603は、内部チャンバ608の側壁に添着されてもよい。いくつかの実施形態では、移送デバイス603は、内部チャンバ608の壁に添着されない。例えば、移送デバイス603は、内部チャンバ608の周囲に移動し得る、車輪付き三脚または他のモバイル構造上に静置してもよい。
【0072】
いくつかの実施形態では、移送デバイス603は、1つまたはそれを上回る細胞培養容器を貯蔵場所602から撮像システム610内の撮像場所605、または操作システム611内の操作場所607に移動させる。移送デバイス603は、1つまたはそれを上回る細胞培養容器を撮像場所605から操作場所607に、または操作場所607から撮像場所105に移動させることができる。撮像または操作が完了すると、移送デバイス603は、1つまたはそれを上回る細胞培養容器を撮像場所605もしくは操作場所607から貯蔵場所602に移動させる。
【0073】
いくつかの実施形態では、移送デバイス603は、弁(例えば、電磁または空気圧弁)、歯車、モータ(例えば、電気またはステッパモータ)、段(例えば、xyまたはxyz段)、ピストン、ブレーキ、ケーブル、ボールねじアセンブリ、ラックピニオン配列、グリッパ、アーム、枢動点、継手、平行移動要素、または他の機械的もしくは電気的要素等の1つまたはそれを上回る要素を含んでもよい。いくつかの実施形態では、移送デバイス603は、1つまたはそれを上回るロボット要素を含んでもよい。例えば、移送デバイス603は、1つまたはそれを上回る細胞培養容器を把持する、持ち上げる、押動する、握持する、摺動する、回転させる、並進させる、解放する、上昇させる、降下させる、および/または傾斜させることが可能なロボットアームを含んでもよい。ある場合には、移送デバイス603は、選択的かつ解放可能に、1つまたはそれを上回る細胞培養容器を把持する。ある実施形態では、移送デバイス603は、機械的グリッパに結合されるアームを含んでもよい。例えば、アームは、機械的グリッパを、細胞培養容器を解放可能に把持するための一端またはその近傍に含み、他端またはその近傍においてインキュベータの表面または要素に固着して結合されてもよい。いくつかの実施形態では、ロボットアームは、機械的グリッパがアームおよびアームに沿った1つまたはそれを上回る枢動および/または平行移動継手に結合し、アームの一部の可撓性回転および平行移動を可能にする、枢動点を含む。このように、ロボットアームは、インキュベータキャビネット(例えば、内部チャンバ内の貯蔵アレイ)内の異なる水平および垂直位置において、1つまたはそれを上回る細胞培養容器にアクセスしてもよい。
【0074】
いくつかの実施形態では、インキュベータキャビネット609は、撮像場所605と、操作場所607とを含む。いくつかの実施形態では、撮像場所605は、撮像デバイス604と反対の内部チャンバ608の表面上に位置する。いくつかの実施形態では、撮像場所605は、プラットフォーム、自立式であるか、または内部チャンバの表面608に添着されるかのいずれかである。いくつかの実施形態では、プラットフォームは、移動可能である。例えば、可動プラットフォームが、プラットフォームが、撮像デバイス604に関連して左、右、前方、後方、上、または下に移動されることを可能にする、2つまたはそれを上回るロッドに添着されてもよい。いくつかの実施形態では、可動プラットフォームは、モータ式である。
【0075】
いくつかの実施形態では、撮像システム610は、容器が撮像場所608にあるとき、細胞培養容器内の細胞の画像を捕捉するように構成されてもよい。例えば、撮像システムは、細胞培養容器内の細胞の位相コントラスト画像(時として、「位相偏移」画像と称される)および/または明視野画像を捕捉するように構成されてもよい。位相コントラスト画像は、物体の地形画像であり得、光学距離に関する情報を含み得る。いくつかの実施形態では、位相コントラスト画像は、生存生体細胞等の透明な物体に関する情報を提供し得る。明視野画像は、例えば、サンプルを照明し、サンプルによって吸光される光に基づいて画像を生産することによって捕捉されてもよい。撮像システム610は、光(例えば、透過または散乱光)、色、形態、および/または他の検出可能なパラメータを測定するように構成される、撮像デバイス604を備えてもよい。撮像デバイス604は、例えば、モノクロ撮像デバイス、赤/緑/青色(RGB)撮像デバイス、スペクトル撮像デバイス、蛍光撮像デバイス、および/または多重チャネル撮像デバイスであってもよい。ある実施形態では、撮像システム610は、1つまたはそれを上回るレンズ、ファイバ、開口、ミラー、光源(例えば、レーザもしくはランプ)、または他の光学要素を含む。撮像システム610は、顕微鏡(例えば、明視野顕微鏡、蛍光顕微鏡、および/または位相コントラスト顕微鏡)として実装されてもよい。例えば、撮像システム610は、(明視野画像を生成するための)明視野顕微鏡および/または(位相コントラスト画像を生成するための)位相コントラスト顕微鏡として動作するように構成される、光学顕微鏡として実装されてもよい。
【0076】
いくつかの実施形態では、マニピュレータシステム611は、容器が操作場所607にあるとき、細胞培養容器の細胞を操作する、マニピュレータ606を含む。いくつかの実施形態では、マニピュレータ606は、ニードル、毛細管、ピペット、および/またはマイクロマニピュレータのアレイを有する。例えば、マニピュレータ606は、細胞ピッカを含んでもよい。いくつかの実施形態では、マニピュレータ606は、1つまたはそれを上回る細胞ピッカを備える。いくつかの実施形態では、マニピュレータ606は、表面の細胞を掻爬して除去するために好適な掻爬縁を備える、細胞掻爬器を含んでもよい。いくつかの実施形態では、掻爬縁は、細胞培養容器の表面または他の表面と接触可能であり、表面を清掃するために表面から物質を掻爬し、ならびに/もしくは例えば、機械的に細胞を溶解することによって実質的に細胞を殺すことなく表面に粘着する細胞を掻爬するために適切に構成される、細胞掻爬器の一部である。いくつかの実施形態では、掻爬縁または掻爬縁アセンブリが、細胞培養物間の相互汚染を防止するために、使い捨てであることが望ましい。したがって、いくつかの実施形態では、掻爬縁または掻爬縁アセンブリは、使い捨てである。
【0077】
いくつかの実施形態では、細胞培養インキュベータ600は、撮像システム610、マニピュレータシステム611、および/または移送デバイス603等の、細胞培養インキュベータ600内の1つまたはそれを上回る構成要素の動作を制御するように構成される、コントローラ612を含む。コントローラ612は、上記に説明される方法で1つまたはそれを上回る行為を実施するように構成されてもよい。例えば、コントローラ612は、移送デバイス603に命令を提供し、移送デバイスに細胞培養容器を撮像場所605に移動させ、撮像システム610に命令を提供し、細胞培養容器内の細胞の画像を捕捉してもよい。
【0078】
コントローラ612は、種々の方法のうちのいずれかにおいて実装されてもよい。コントローラ612の例証的実装が、コントローラ700によって
図7に示される。示されるように、コントローラ700は、1つまたはそれを上回るコンピュータハードウェアプロセッサ702と、非一過性コンピュータ可読記憶媒体(例えば、メモリ704および1つまたはそれを上回る不揮発性記憶デバイス706)を含む、1つまたはそれを上回る製造品とを含んでもよい。プロセッサ702は、任意の好適な様式でメモリ704および不揮発性記憶デバイス706にデータを書き込むことと、それからデータを読み取ることとを制御してもよい。本明細書に説明される機能性のうちのいずれかを実施するために、プロセッサ702は、プロセッサ702による実行のためのプロセッサ実行可能命令を記憶する非一過性コンピュータ可読記憶媒体としての役割を果たし得る、1つまたはそれを上回る非一過性コンピュータ可読記憶媒体(例えば、メモリ704)内に記憶される、1つまたはそれを上回るプロセッサ実行可能命令を実行してもよい。
【0079】
種々の改造が、本書の範囲から逸脱することなく、コントローラ700に成され得ることを理解されたい。いくつかの実施形態では、
図7に示されるコントローラ700の1つまたはそれを上回る構成要素は、コントローラ700と別個であってもよく、コントローラ700に通信可能に結合されてもよい。例えば、メモリ704ならびに/もしくは1つまたはそれを上回る不揮発性記憶デバイス706は、コントローラ700と別個であってもよい。
【0080】
用語「プログラム」または「ソフトウェア」は、本明細書では、コンピュータもしくはプロセッサをプログラムし、上記で議論されるような実施形態の種々の側面を実装するために採用され得る、任意のタイプのコンピュータコードまたはプロセッサ実行可能命令のセットを指すために一般的意味で使用される。加えて、一側面によると、実行されると、本明細書に提供される開示の方法を実施する、1つまたはそれを上回るコンピュータプログラムは、単一コントローラもしくはプロセッサ上に常駐する必要はなく、異なるコントローラまたはプロセッサ間にモジュール式方式で分散され、本明細書に提供される開示の種々の側面を実装してもよい。
【0081】
プロセッサ実行可能命令は、1つまたはそれを上回るコントローラもしくは他のデバイスによって実行される、プログラムモジュール等の多くの形態にあってもよい。概して、プログラムモジュールは、特定のタスクを行う、または特定の抽象データタイプを実装する、ルーチン、プログラム、オブジェクト、構成要素、データ構造等を含む。典型的には、プログラムモジュールの機能性は、種々の実施形態では、所望に応じて組み合わせられる、または分散されてもよい。
【0082】
本開示の側面は、制御条件(例えば、無菌および/または殺菌された条件)下で細胞を培養、操作、ならびに/もしくは監視するためのインキュベータおよび方法に関する。いくつかの実施形態では、細胞培養物は、本開示のインキュベータ内の培養容器内で成長される。本明細書で使用されるように、「細胞培養容器」は、筐体と、細胞を培養するための1つまたはそれを上回るチャンバとを含む、デバイスである。いくつかの実施形態では、筐体は、フレームである。フレームは、蓋に結合されてもよい。1つまたはそれを上回るチャンバは、1つまたはそれを上回る膜を含む、細胞培養培地を含んでもよい。いくつかの実施形態では、細胞培養容器は、細胞の成長を助長するための栄養素を含んでもよい。ある実施形態では、細胞培養容器は、1つまたはそれを上回る細胞もしくはその群を完全に封入してもよい。細胞培養容器の筐体は、1つまたはそれを上回る細孔もしくは開口部を含み、細胞培養容器とその周囲環境との間のガスの移送を可能にしてもよい。ある実施形態では、細胞培養容器は、透明または光学的にクリアな窓を含む。例えば、細胞培養容器の筐体に結合される蓋は、例えば、撮像システムを用いて、細胞を視認するための光学的にクリアな部分を含んでもよい。いくつかの実施形態では、細胞培養容器は、実質的に非反射性である、1つまたはそれを上回る部分を含む。
【0083】
細胞培養容器は、真核または原核細胞を含む、異なるタイプの細胞を培養するために構成されてもよい。いくつかの実施形態では、細胞は、哺乳類細胞(例えば、ヒト細胞、イヌ細胞、ウシ細胞、ヒツジ細胞、ネコ細胞、またはウサギ、マウス、もしくはラット細胞等の齧歯類細胞)である。いくつかの実施形態では、細胞は、昆虫細胞、鳥類細胞、微生物細胞(例えば、Saccharomyces cerevisiae、Kluyveromyces lactis、またはPischia pastoris細胞等の酵母細胞、またはEscherichia coli、Bacillus subtilis、またはCorynebacterium細胞等の細菌細胞)、昆虫細胞(例えば、Drosophila細胞またはSf9もしくはSf21細胞)、植物細胞(例えば、藻類細胞)、または任意の他のタイプの細胞である。
【0084】
いくつかの実施形態では、細胞培養容器は、特定の目的のため、例えば、細胞を成長させる、細胞を分化する、細胞を特定のアッセイ条件に曝す等のために、所望の1つまたはそれを上回る試薬とともに事前にキット化されてもよい。いくつかの実施形態では、事前にキット化された細胞培養容器は、実験に先立って、細胞培養上で特定の実験を実施するために有用な試薬(例えば、細胞成長培地、成長因子、選択剤、標識剤等)を含む。事前にキット化された細胞培養容器は、試薬の添加を要求しない、細胞培養の準備ができた容器を提供することによって、実験プロトコルを促進し得る。例えば、患者からの前駆細胞が、自家細胞療法のために分化された細胞の集団を増殖させる目的のために、細胞分化のための試薬で事前にキット化された細胞培養容器に添加されてもよい。事前にキット化された細胞培養容器は、任意の適切な温度で貯蔵されることができ、これは、事前にキット化された細胞培養容器内の試薬の推奨される貯蔵パラメータによって判定される。いくつかの実施形態では、事前にキット化された細胞培養貯蔵容器は、使用に先立って約-80℃~約37℃の温度で貯蔵される。いくつかの実施形態では、事前にキット化された細胞培養貯蔵容器は、使用に先立って約-80℃~約-20℃の温度で貯蔵される。いくつかの実施形態では、事前にキット化された細胞培養貯蔵容器は、使用に先立って約-20℃~約4℃の温度で貯蔵される。いくつかの実施形態では、事前にキット化された細胞培養貯蔵容器は、使用に先立って約4℃~約37℃の温度で貯蔵される。いくつかの実施形態では、事前にキット化された細胞培養容器は、使い捨てである。いくつかの実施形態では、事前にキット化された細胞培養容器は、再使用可能および/または再充填可能である。
【0085】
いくつかの実施形態では、細胞は、天然生成物(例えば、タキソール、顔料、脂肪酸、バイオ燃料等)を生成するために培養される。いくつかの実施形態では、細胞は、組み換え生成物(例えば、抗体、ホルモン、成長因子、または他の治療用ペプチドもしくはタンパク質等の組み換えタンパク質生成物)を発現させるために培養される。いくつかの実施形態では、細胞は、対象内の欠失または欠乏している細胞、組織、もしくは器官機能を提供または補完するために、対象(例えば、ヒト対象)の中への埋込等の治療用の使用のために増殖および/または分化される。
【0086】
いくつかの実施形態では、細胞は、不死化細胞株に由来する。細胞株の非限定的実施例は、ヒト細胞、例えば、HeLa細胞、前立腺癌細胞(例えば、DU145、PC3、および/またはLncap細胞)、乳癌細胞(例えば、MCF-7、MDA-MB-438、および/またはT47D細胞)、急性骨髄性白血病細胞(例えば、THP-1細胞)、膠芽腫細胞(例えば、U87細胞)、神経芽腫細胞(例えば、SHSY5Y細胞)、骨癌細胞(例えば、Saos-2細胞)、および慢性骨髄性白血病細胞(例えば、KBM-7細胞)を含む。いくつかの実施形態では、細胞株は、霊長類細胞株、齧歯類細胞株(例えば、ラットまたはマウス細胞株)、イヌ細胞株、ネコ細胞株、Zebrafish細胞株、Xenopus細胞株、植物細胞株、または任意の他の細胞株を含む。いくつかの実施形態では、細胞は、ヒト293細胞(例えば、293-TまたはHEK293細胞)、ネズミ3T3細胞、チャイニーズハムスターの卵巣(CHO)細胞、CML T1細胞、またはJurkat細胞である。
【0087】
いくつかの実施形態では、細胞は、初代細胞、フィーダ細胞、または幹細胞である。いくつかの実施形態では、細胞は、対象(例えば、ヒト対象)から単離される。いくつかの実施形態では、細胞は、組織または生検サンプルから単離された初代細胞である。いくつかの実施形態では、細胞は、造血細胞である。いくつかの実施形態では、細胞は、幹細胞、例えば、胚性幹細胞、間葉系幹細胞、癌幹細胞等である。いくつかの実施形態では、細胞は、限定ではないが、固形組織および器官を含む、組織または器官(例えば、ヒト組織または器官)から単離される。いくつかの実施形態では、細胞は、胎盤、臍帯、骨髄、肝臓、臍帯血を含む血液、または任意の他の好適な組織から単離されることができる。いくつかの実施形態では、患者特異的細胞が、培養(例えば、細胞増殖および随意に分化のために)および同一患者または異なる患者の中への後続再埋込のために患者から単離される。故に、いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるインキュベータ内で成長される細胞は、同種または自家療法のために使用されてもよい。いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるインキュベータ内で成長される細胞は、免疫療法を提供する目的のために、遺伝子的に修飾され、増殖され、および患者の中に再導入されてもよい(例えば、キメラ抗原受容体療法(CAR-T)またはCRISPR/Cas修飾細胞の送達)。
【0088】
いくつかの実施形態では、初代細胞培養は、上皮細胞(例えば、角膜上皮細胞、乳房上皮細胞等)、線維芽細胞、筋芽細胞(例えば、ヒト骨格筋筋芽細胞)、ケラチノサイト、内皮細胞(例えば、微小血管内皮細胞)、経細細胞、平滑筋細胞、造血細胞、胎盤細胞、またはその2つもしくはそれを上回るものの組み合わせを含む。
【0089】
いくつかの実施形態では、細胞は、組み換え細胞(例えば、ハイブリドーマ細胞または1つまたはそれを上回る組み換え生成物を発現する細胞)。いくつかの実施形態では、細胞は、1つまたはそれを上回るウイルスに感染している。
【0090】
いくつかの実施形態では、細胞は、本明細書に提供されるインキュベータ内でのエクスビボ培養のために組織または生物学的サンプルから単離される。いくつかの実施形態では、細胞(例えば、白血球)が、血液から単離される。いくつかの実施形態では、細胞は、物理的および/または酵素的崩壊を使用して、組織または生物学的サンプルから解放される。いくつかの実施形態では、コラゲナーゼ、トリプシン、またはプロナーゼ等の1つまたはそれを上回る酵素が、細胞外基質を消化させるために使用される。いくつかの実施形態では、組織または生物学的サンプルは、培養培地内に設置され(例えば、物理的または酵素的崩壊の有無を問わず)、解放され、培養培地中で成長される、細胞は、さらなる培養のために単離されることができる。
【0091】
本明細書で使用されるように、細胞培養は、制御条件(例えば、エクスビボ)下で細胞を維持および/または成長させるための手順を指す。いくつかの実施形態では、細胞は、細胞成長および複製を助長するための条件、組み換え生成物の発現を助長するための条件、分化を助長するための条件(例えば、1つまたはそれを上回る組織特異的細胞タイプに)、またはその2つもしくはそれを上回るの組み合わせ下で培養される。
【0092】
いくつかの実施形態では、細胞培養容器は、懸濁液中の細胞を培養するために構成される。いくつかの実施形態では、細胞培養容器は、粘着細胞を培養するために構成される。いくつかの実施形態では、細胞培養容器は、2Dまたは3D細胞培養のために構成される。いくつかの実施形態では、細胞培養容器は、1つまたはそれを上回る表面またはマイクロ担体を含み、細胞成長を支持する。いくつかの実施形態では、これらは、細胞外基質成分(例えば、コラーゲン、フィブリン、および/またはラミニン成分)でコーティングされ、接着性質を増加させ、成長および分化のために必要とされる他の信号を提供する。いくつかの実施形態では、細胞培養容器は、ポリアクリルアミドまたはポリエチレングリコール(PEG)ゲル等の1つまたはそれを上回る合成ヒドロゲルを含み、細胞成長を支持する。いくつかの実施形態では、細胞培養容器は、埋設された栄養素(例えば、ある細菌または酵母培養のために、例えば、ゲルまたは藻類)を伴う、固体支持体を含む。いくつかの実施形態では、細胞培養容器は、液体培養培地を含む。
【0093】
いくつかの実施形態では、細胞は、任意の好適な培養培地のうちの1つ内で培養される。異なる範囲のpH、グルコース濃度、成長因子、および他のサプリメントを有する、異なる培養培地が、異なる細胞タイプまたは異なる用途のために使用されることができる。いくつかの実施形態では、Dulbecco’s Modified Eagle培地、Minimum Essential培地、RPMI培地、HAもしくはHAT培地、またはLife Technologiesもしくは他の商業的供給源から利用可能な他の培地等のカスタム細胞培養培地または市販の細胞培養培地が、使用されることができる。いくつかの実施形態では、細胞培養培地は、血清(例えば、ウシ胎児血清、仔ウシ血清、ウマ血清、ブタ血清、または他の血清)を含む。いくつかの実施形態では、細胞培養培地は、血清がない。いくつかの実施形態では、細胞培養培地は、ヒト血小板溶解物(hPL)を含む。いくつかの実施形態では、細胞培養培地は、1つまたはそれを上回る抗生物質(例えば、アクチノマイシンD、アンピシリン、カルベニシリン、セフォタキシム、ホスミドマイシン、ゲンタマイシン、カナマイシン、ネオマイシン、ペニシリン、ペニシリンストレプトマイシン、ポリミキシンB、ストレプトマイシン、テトラサイクリン、または任意の他の好適な抗生物質もしくはその2つもしくはそれを上回る任意の組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、細胞培養培地は、1つまたはそれを上回る塩類(例えば、平衡塩類、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム等)を含む。いくつかの実施形態では、細胞培養培地は、炭酸水素ナトリウムを含む。いくつかの実施形態では、細胞培養培地は、1つまたはそれを上回る緩衝剤(例えば、HEPESまたは他の好適なバッファ)を含む。いくつかの実施形態では、1つまたはそれを上回るサプリメントが、含まれる。サプリメントの非限定的実施例は、還元剤(例えば、2-メルカプトエタノール)、アミノ酸、コレステロールサプリメント、ビタミン、トランスフェリン、界面活性剤(例えば、非イオン界面活性剤)、CHOサプリメント、初代細胞サプリメント、酵母溶液、またはその2つもしくはそれを上回るものの任意の組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、1つまたはそれを上回る成長または分化因子は、細胞培養培地に添加される。成長または分化因子(例えば、WNT系タンパク質、BMP系タンパク質、IGF系タンパク質等)は、個々にまたは組み合わせて、例えば、特定系統への分化を引き起こす異なる因子を含む分化混合物として、添加されることができる。成長または分化因子および液体培地の他の側面は、本明細書に提供されるインキュベータの一部として統合される自動化された液体ハンドラを使用して添加されることができる。
【0094】
いくつかの側面では、本明細書に説明されるインキュベータおよび方法は、細胞成長のために適切な温度およびガス混合物を提供および維持する。細胞成長条件は、異なる細胞タイプに関して異なり、本明細書に説明されるインキュベータは、異なる条件を維持するようにプログラムされることができることを理解されたい。いくつかの実施形態では、約37℃および5%CO2の条件が、哺乳類細胞に関して使用される。
【0095】
いくつかの実施形態では、本明細書に説明されるデバイスおよび方法は、栄養の消耗、pHの変化、アポトーシス性または壊死性細胞の温度蓄積の変化、ならびに/もしくは細胞密度に関して培養培地を監視または評価するために使用される。いくつかの実施形態では、本明細書に説明されるデバイスおよび方法は、適切であるとき、培養培地または条件を修正もしくは変化させるために、ならびに/もしくは細胞培養物を通過させるために使用される。いくつかの実施形態では、これらの手順は、自動化されている。
【0096】
いくつかの実施形態では(例えば、付着細胞培養のため)、培養培地は、直接、吸引によって除去され、新しい培地と交換されることができる。いくつかの実施形態では(例えば、非付着/懸濁液培養のために)、培地変更は、細胞培養物を遠心分離し、古い培養培地を除去し、それと新しい培地を交換することを伴うことができる。いくつかの実施形態では、遠心分離機が、インキュベータの内部チャンバ内に位置する。いくつかの実施形態では、培養容器は、連続培地交換を可能にする。いくつかの実施形態では、本明細書に説明されるインキュベータは、培養培地の異なる側面を処理、交換、供給、および/または維持し、細胞を支持するために使用され得る、1つまたはそれを上回る構成要素を含んでもよい。インキュベータは、廃棄培地を含むリザーバおよび/または新しい培地を含むリザーバを含んでもよい。そのようなリザーバは、(例えば、一時的貯蔵のために)インキュベータの内側の冷蔵庫またはインキュベータの冷蔵区分内に存在してもよい。いくつかの実施形態では、1つまたはそれを上回るリザーバが、インキュベータの外側に提供され、液体ハンドラユニット(例えば、吸引器を有する液体ハンドルユニット)またはインキュベータ内の一時的リザーバから供給または引出するために、配管が、インキュベータ空間の内外に提供され、細胞給送、培地変更、および他の関連必要性を促進する。懸濁細胞に関して、デバイス(例えば、細胞分画を促進するための遠心分離機)が、インキュベータ内に提供され、細胞を廃棄培地から分離し、本明細書に提供されるインキュベータの一部として自動化された培地変更を促進してもよい。いくつかの実施形態では、本書は、細胞培養の最適成長のために、細胞培養条件を自動的に監視および調節可能である、コンピュータに結合された細胞培養インキュベータを備える、システムを提供する。
【0097】
いくつかの実施形態では、細胞は、本明細書に説明されるインキュベータキャビネット内で継代される。いくつかの実施形態では、細胞培養物は、分裂され、細胞培養物のサブセットは、さらなる成長のために、新しい培養容器に移送される。いくつかの実施形態では(例えば、付着細胞培養のために)、細胞は、新しい培養容器に移送されることに先立って、表面から剥離される(例えば、機械的に、例えば、優しい掻爬を使用して、および/または酵素的に、例えば、トリプシン-EDTAもしくは1つまたはそれを上回る他の酵素を使用して)。いくつかの実施形態では(例えば、懸濁細胞培養のために)、小体積の細胞培養が、新しい培養容器に移送される。
【0098】
いくつかの実施形態では、細胞培養物は、本明細書におけるインキュベータのインキュベータキャビネット内での培養の間、他の方法で操作される。例えば、細胞培養物は、例えば、本明細書に提供されるインキュベータのインキュベータキャビネット内に留まる間、核酸(例えば、DNAまたはRNA)でトランスフェクトされる、もしくはウイルス感染に暴露され(例えば、組み換えウイルス粒子を使用して、DNAまたはRNAを送達し)得る。
【0099】
無菌技法は、使用され、成長および操作の間、細胞培養の汚染を防止または最小限にすることができることを理解されたい。いくつかの実施形態では、細胞培養のために使用される機器(例えば、ピペット、流体取扱デバイス、操作デバイス、他の自動化、またはロボットデバイス等)は、適切な技法を使用して滅菌される。非限定的技法は、本明細書に説明されるように、熱暴露(例えば、高圧蒸気殺菌)、表面消毒(例えば、アルコール、漂白剤、または他の消毒剤を使用して)、照射、および/または消毒ガス(例えば、オゾン、過酸化水素等)への暴露を含む。いくつかの実施形態では、培地は、適切な技法を使用して滅菌される。非限定的技法は、熱暴露(例えば、高圧蒸気殺菌)、抗菌/抗ウイルス処置、濾過、および/または照射を含む。
【0100】
いくつかの実施形態では、細胞培養の操作は、無菌条件下、例えば、消毒され、空気が濾過され、潜在的汚染物質を除去した環境(例えば、インキュベータチャンバ)内で実施される。
【0101】
いくつかの実施形態では、細胞培養物は、GMP準拠培地またはGMP準拠液体取扱機器を使用することを含むものを含む、GMP準拠条件下で成長および維持される。ある場合には、細胞培養物は、標準作業手順(SOP)と併せて方法を実施することによって成長および維持される。
【0102】
いくつかの実施形態では、細胞培養は、監視および/または評価され、汚染を検出することができる。いくつかの実施形態では、異なるタイプの微生物からの細胞による汚染が、検出されることができる。いくつかの実施形態では、マイコプラズマ、細菌、酵母、またはウイルスによる哺乳類細胞培養の汚染は、任意の好適な技法を使用して検出されることができる。いくつかの実施形態では、細胞培養汚染は、汚染(例えば、細菌または酵母による)の特性であって、培養物中で成長されている細胞(例えば、哺乳類細胞)の特性ではない、pH、濁度等の1つまたはそれを上回る培養性質の変化または変化速度をアッセイすることによって検出されることができる。いくつかの実施形態では、1つまたはそれを上回る分子検出アッセイ(例えば、PCR、ELISA、RNA標識、または他の酵素技法)または細胞ベースのアッセイが、汚染(例えば、マイコプラズマ、細菌、酵母、ウイルス、または他の汚染)を検出するために使用されることができる。
【0103】
いくつかの実施形態では、細胞培養は、類似タイプの細胞による汚染(例えば、異なるヒト細胞または異なる哺乳類細胞によって汚染されたヒト細胞株)を検出するように監視および/または評価されることができる。いくつかの実施形態では、細胞培養およびその潜在的汚染は、DNAシーケンシングまたはDNAフィンガプリント法(例えば、短鎖縦列反復配列-STR-フィンガプリント法)、アイソザイム分析、ヒトリンパ球抗原(HLA)判定、染色体分析、核型分析、細胞形態、または他の技法を使用して評価されることができる。
【0104】
いくつかの実施形態では、本明細書に説明されるインキュベータまたは方法を使用して生成される細胞は、後の使用および/または輸送のために、それらを冷凍して保存することができる。いくつかの実施形態では、細胞は、成長および/または分化後、凍結に先立って、凍結保存組成物と混合される。凍結保存組成物は、細胞培養容器に添加されることができる、または細胞は、細胞培養容器から凍結保存容器に凍結保存組成物とともに移送されることができる。凍結保存組成物中に含まれる得る凍結保護物質の非限定的実施例は、DMSO、グリセロール、PEG、スクロース、トレハロース、およびデキストロースを含む。いくつかの実施形態では、凍結装置が、インキュベータの構成要素として提供され、細胞培養物から単離された細胞の凍結を促進してもよい。例えば、1つまたはそれを上回る凍結装置が、内部チャンバ内に位置し、ならびに/もしくはインキュベータキャビネットの中(例えば、インキュベータキャビネットの壁の中)に統合されてもよい。
【0105】
いくつかの実施形態では、本書は、制御条件下(例えば、無菌および/または滅菌条件下)で細胞を培養、操作、ならびに/もしくは監視するためのインキュベータおよび方法に関する。いくつかの実施形態では、細胞培養インキュベータは、1つまたはそれを上回る細胞培養容器内での細胞のインキュベーションのための内部チャンバを有する、インキュベータキャビネットを含む。ある場合には、移送チャンバから内部チャンバへの内部ドアに加え、インキュベータは、外部環境から直接内部チャンバに開放し、例えば、インキュベータが動作していない時間周期の間、例えば、インキュベータの保守の間、内部チャンバへの代替アクセスを提供する、少なくとも1つの外部ドア(例えば、1つ、2つ、3つ、4つ、またはそれを上回る外部ドア)を含む。いくつかの実施形態では、インキュベータは、1つまたはそれを上回る細胞培養容器を貯蔵するための、内部チャンバ内の貯蔵場所を含む。
【0106】
本明細書で使用されるように、「インキュベータキャビネット」は、1つまたはそれを上回る細胞培養容器を保持するように構成される1つまたはそれを上回るチャンバを含む、筐体である。いくつかの実施形態では、インキュベータキャビネットは、移送チャンバと、内部チャンバとを含み、その一方または両方は、1つまたはそれを上回る細胞培養容器を保持するように構成される。いくつかの実施形態では、インキュベータは、1つまたはそれを上回るガス源(例えば、ガスシリンダまたはオゾン発生器)、管類(例えば、水、蒸留水、脱イオン水、細胞培養培地、空気、二酸化炭素、オゾン、および酸素等の1つまたはそれを上回る液体もしくはガスを伝達する)、空気流量機構(例えば、弁、解放弁、ピン孔、ガス調整器、および質量流量調整器)、圧力機構(例えば、乾燥スクロールポンプ、回転式ポンプ、運動量移送ポンプ、拡散ポンプ、またはダイヤフラムポンプ等のポンプ;吸引管;真空システム;および空気送風機)、環境モニタおよび制御(例えば、二酸化炭素、酸素、およびオゾン等のガスの濃度を感知および/または制御するためのガスセンサおよび/またはモニタ;熱源またはシンク;温度モニタおよび制御;湿度モニタ;ガススクラバ;空気フィルタ;粒子状物質を測定するための器具類;圧力ゲージ;および流量計)、ドア(例えば、開口部またはパネル)、窓(例えば、インキュベータの内側の面積を視認するためのガラス、プラスチック、複合材、または他の実質的に透明材料から作製される光学窓)、ポート(例えば、1つまたはそれを上回るガスもしくは液体の導入または除去を可能にする)、光源(例えば、ランプ、電球、レーザ、およびダイオード)、光学要素(例えば、顕微鏡対物レンズ、ミラー、レンズ、フィルタ、開口、波プレート、窓、偏光器、ファイバ、ビームスプリッタ、およびビームコンバイナ)、撮像要素(例えば、カメラ、バーコード読取機)、電気要素(例えば、回路、ケーブル、電源コード、ならびにバッテリ、ジェネレータ、および直流または交流電流供給源等の電力供給源)、コントローラ、機械的要素(例えば、モータ、ホイール、歯車、ロボット要素、ならびに空気圧アクチュエータ、電磁アクチュエータ、カムを伴うモータ、圧電アクチュエータ、および送りねじを伴うモータ等のアクチュエータ)、および制御要素(例えば、スピンホイール、ボタン、キー、トグル、スイッチ、カーソル、ねじ、ダイヤル、画面、およびタッチ画面)等の1つまたはそれを上回る他の要素を含んでもよい。いくつかの実施形態では、これらの他の要素のうちの1つまたはそれを上回るものは、インキュベータの一部であるが、インキュベータキャビネットの外部にある。いくつかの実施形態では、これらの他の要素のうちの1つまたはそれを上回るものは、インキュベータキャビネット内に含まれる。
【0107】
いくつかの実施形態では、本明細書に提供されるインキュベータまたはインキュベータキャビネットは、直方体形状である。いくつかの実施形態では、本明細書に提供されるインキュベータまたはインキュベータキャビネットは、1フィート2~16フィート2の範囲内の長方形占有面積を有する。いくつかの実施形態では、本明細書に提供されるインキュベータまたはインキュベータキャビネットは、最大約1フィート2、2フィート2、3フィート2、4フィート2、5フィート2、6フィート2、7フィート2、8フィート2、9フィート2、10フィート2、11フィート2、12フィート2、13フィート2、14フィート2、15フィート2、または16フィート2の長方形占有面積を有する。いくつかの実施形態では、本明細書に提供されるインキュベータまたはインキュベータキャビネットは、1フィート3~100フィート3の範囲内の総チャンバ体積を有する。いくつかの実施形態では、本明細書に提供されるインキュベータまたはインキュベータキャビネットは、最大約1フィート3、5フィート3、10フィート3、25フィート3、50フィート3、または100フィート3のチャンバ体積を有する。いくつかの実施形態では、本明細書に提供されるインキュベータまたはインキュベータキャビネットは、0.09m2~1.78m2の範囲内の長方形占有面積を有する。いくつかの実施形態では、本明細書に提供されるインキュベータまたはインキュベータキャビネットは、最大約0.1m2、0.2m2、0.3m2、0.4m2、0.5m2、0.6m2、0.7m2、0.8m2、0.9m2、1.0m2、1.1m2、1.2m2、1.3m2、1.4m2、1.5m2、1.6m2、または1.7m2の長方形占有面積を有する。いくつかの実施形態では、本明細書に提供されるインキュベータまたはインキュベータキャビネットは、0.03m3~3m3の範囲内の総チャンバ体積を有する。いくつかの実施形態では、本明細書に提供されるインキュベータまたはインキュベータキャビネットは、最大約0.03m3、0.1m3、0.3m3、1m3、または3m3のチャンバ体積を有する。
【0108】
本明細書で使用されるように、「貯蔵場所」は、1つまたはそれを上回る細胞培養容器が貯蔵される場所(例えば、インキュベータキャビネット内)を指す。例えば、1つまたはそれを上回る細胞培養容器は、貯蔵場所に貯蔵され、後に、異なる場所(例えば、撮像場所)に移送されてもよい。貯蔵場所は、インキュベータの内部チャンバキャビネット内に配置されてもよい。貯蔵場所は、複数の細胞培養容器を貯蔵するために構成されてもよい。例えば、貯蔵場所は、1つまたはそれを上回る貯蔵アレイ、ラック、棚、分類棚、整理棚、トレイ、スロット、または他の位置もしくは機構を含んでもよい。いくつかの実施形態では、貯蔵場所は、細胞培養容器を水平に貯蔵するように構成されてもよい一方、他の実施形態では、細胞培養容器を垂直に貯蔵するように構成されてもよい。例えば、貯蔵場所は、相互にわたって垂直にスタックされた細胞培養容器を受容するための複数のスロットを含んでもよい。貯蔵場所は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、100、または任意の他の数の細胞培養容器を保持するように構成されてもよい。いくつかの実施形態では、貯蔵場所は、100を上回る細胞培養容器を保持するように構成されてもよい。いくつかの実施形態では、貯蔵場所は、1つまたはそれを上回る貯蔵アレイ、ラック、棚、分類棚、整理棚、トレイ、スロット、または他の位置もしくは機構を移動させるための機構を含んでもよい。例えば、貯蔵場所は、1つまたはそれを上回るモータおよび可動段(例えば、xyまたはxyz段)を含み、貯蔵ラックを内部チャンバ内の1つの位置から内部チャンバ内の別の位置に移動させ、例えば、異なる場所内に貯蔵される1つまたはそれを上回る細胞培養容器へのアクセスを促進してもよい。いくつかの実施形態では、インキュベータキャビネットは、1つまたはそれを上回る細胞培養容器を移動させるための1つまたはそれを上回る細胞培養容器移送デバイスを含んでもよい。
【0109】
貯蔵場所は、1つまたはそれを上回る細胞培養容器を固着して保持もしくは受容するように構成されてもよい。例えば、貯蔵場所の1つまたはそれを上回る構成要素は、1つまたはそれを上回る接着剤、磁気、電気、および/または機械的構成要素(例えば、スナップ、締結具、ロック、留め金、ガスケット、Oリング、隔壁、ばね、および他の係合部材)を有する、1つまたはそれを上回るロック機構を含んでもよい。いくつかの実施形態では、貯蔵場所および/または細胞培養容器は、1つまたはそれを上回る溝もしくは凹部を含んでもよい、および/または成型プラスチック片を伴ってもよい。例えば、細胞培養容器は、貯蔵場所における1つまたはそれを上回る対応する溝、孔、または凹部の中への挿入のために成型される、1つまたはそれを上回る突出特徴(例えば、リムまたはノブ)を含んでもよい。ある場合には、細胞培養容器は、貯蔵場所における1つまたはそれを上回る対応する突出特徴に嵌合するように成型される、1つまたはそれを上回る溝、孔、もしくは凹部を含んでもよい。
【0110】
本明細書で使用されるように、「基準マーク」は、1つまたはそれを上回る構成要素の整合を促進する、特徴を指す。いくつかの実施形態では、基準マークは、蛍光性培地または印刷もしくはエンボス加工された蛍光性材料にわたって1つまたはそれを上回る孔開口を含んでもよい。他の実施形態では、基準マークは、グリッド、ライン、または記号を含んでもよい。いくつかの実施形態では、1つまたはそれを上回る細胞培養容器は、1つまたはそれを上回る基準マークを含み、1つまたはそれを上回る細胞培養容器と撮像機の整合を促進する。
【0111】
いくつかの実施形態では、インキュベータキャビネットは、単壁式である。いくつかの実施形態では、インキュベータは、二重壁式である。いくつかの実施形態では、断熱材が、インキュベータのキャビネットの二重壁間に提供され、インキュベータキャビネットからの熱損失を制御し、インキュベータキャビネット内の温度制御を促進する。いくつかの実施形態では、インキュベータキャビネットの外壁は、シート金属、例えば、14~20の冷間圧延鋼を備える。いくつかの実施形態では、インキュベータキャビネットの内壁(例えば、チャンバ表面)は、電解研磨ステンレス鋼を含む。いくつかの実施形態では、インキュベータキャビネットの内壁(例えば、チャンバ表面)は、チタン、コバルト-クロム、タンタル、白金、ジルコニウム、ニオブ、ステンレス鋼、およびその合金等の耐腐食性材料を含む。しかしながら、いくつかの実施形態では、インキュベータキャビネットのチャンバ表面は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のポリマー材料、またはパリレンの商標名で公知のポリマー材料を含む。いくつかの実施形態では、チャンバ表面は、ポリマー表面コーティングの中に組み込まれる銅または銀もしくは抗微生物化合物等、抗微生物性を有してもよい。
【0112】
いくつかの実施形態では、インキュベータの内側の環境は、インキュベータの内側の(例えば、1つまたはそれを上回る内部チャンバ内の)温度、湿度、二酸化炭素、酸素、および他のガス状成分(例えば、オゾンおよび過酸化水素等の滅菌ガス)を制御するように構成され得る、制御システムによって制御される。いくつかの実施形態では、制御システムは、各内部チャンバ内の環境条件(例えば、温度、湿度、二酸化炭素、酸素および他のガス状成分)を別個に制御する。例えば、敏感な機械的、電子的、および光学構成要素を保護するために、内部チャンバの湿度は、貯蔵場所を有する内部チャンバより低いレベルに維持されてもよい。いくつかの実施形態では、インキュベータはさらに、所定のセンサを伴う監視システムを具備する。監視デバイスの実施例は、限定ではないが、酸素モニタ、二酸化炭素モニタ、オゾンガス検出器、過酸化水素モニタ、およびマルチガスモニタを含む。例えば、いくつかの実施形態では、インキュベータは、有利には、温度、空気純度、汚染レベル、pH、湿度、N2、CO2、O2、および光を含み得る、細胞成長に関連する異なるパラメータに応答する複数のセンサを含む。本監視システムを用いて、インキュベータ内のパラメータは、センサを使用して、培養またはプロセスの持続時間にわたって測定されることができる。いくつかの実施形態では、センサによって測定されたパラメータは、本明細書のどこかに議論されるように、さらなる処理のために、監視システムによって、回線を介して、コンピュータ制御式監視および制御システムに伝送される。
【0113】
いくつかの実施形態では、環境監視システムは、本明細書に説明されるインキュベータと併用されることができる。いくつかの実施形態では、温度、空気組成物(例えば、CO2濃度、O2濃度等)、および/またはシステムの湿度の測定を提供する、1つまたはそれを上回るセンサが、インキュベータと関連付けられる(例えば、インキュベータキャビネット内に嵌合される)ことができる。いくつかの実施形態では、1つまたはそれを上回るそのようなセンサは、インキュベータの一部として組み込まれる(例えば、インキュベータの内壁またはドアに取り付けられる、それと一体型である、またはそれに別様に接続される)ことができる。ある場合には、1つまたはそれを上回るセンサは、インキュベータキャビネットの外側または内側の任意の好適な場所に位置付けられることができる(例えば、移送チャンバおよび/または内部チャンバ内、例えば、内壁および/または上側または下側内部表面に取り付けられる)。
【0114】
いくつかの実施形態では、ガスセンサが、リアルタイムで、センサと接触するガス(例えば、キャビネット内のガスまたは周囲空気)の濃度をパーセント、百分率、または任意の他の標準的単位で読取値を提供することができるように提供される。本明細書に提供される方法およびインキュベータにおいて使用するためのガスセンサは、CO2センサ、O2センサ、N2センサ、オゾンガス検出器、過酸化水素モニタ、マルチガスモニタ、およびCOセンサを含む。そのようなセンサは、いくつかの商業的供給源から利用可能である。ある場合には、インキュベータの環境は、本明細書に説明されるセンサによって提供される情報に基づいて変調または制御されてもよい。例えば、インキュベータ内のCO2のレベルは、望ましい濃度より低いCO2がインキュベータ内に存在することのCO2センサからのインジケーションに応じて増加されてもよい。
【0115】
いくつかの実施形態では、1つまたはそれを上回る加熱または冷却要素が、インキュベータ内の温度を制御する目的のために、インキュベータ内に組み込まれることができる(例えば、キャビネットまたはドアの内側表面上に、および/またはキャビネットの壁ならびに/もしくは基部のうちの1つまたはそれを上回るもの内に統合される)。いくつかの実施形態では、加熱要素が、液体、例えば、細胞培養培地または他の試薬を解凍するために使用されることができる。いくつかの実施形態では、1つまたはそれを上回る空気もしくは酸素源、炭素フィルタ、および/または1つまたはそれを上回る加湿もしくは脱湿システムが、インキュベータに接続され、インキュベータ内の酸素、二酸化炭素、および/または湿度のレベルを制御するように構成される(例えば、インキュベータ内またはそこに取り付けられる、1つまたはそれを上回るセンサからの信号に応答して)。
【0116】
いくつかの実施形態では、インキュベータは、1つまたはそれを上回る光源(例えば、白熱電球、LED、UVまたは他の光源)を含むことができる。これらは、インキュベータ内に設置され、キャビネット内の領域を照明することができる。いくつかの実施形態では、培養システム動作は、インキュベータ内または外側に設置され得る、カメラまたは他の光敏感なデバイスを使用して監視される。いくつかの実施形態では、光源は、殺菌光源である。例えば、UVランプが、本明細書に説明される移送チャンバおよび/またはインキュベータの内部チャンバ内に位置してもよい。
【0117】
いくつかの実施形態では、インキュベータは、インキュベータ内からの可視光または他の光波長がインキュベータの外側に設置されたカメラまたは他の光敏感なデバイスによって検出されることを可能にする、透明オブジェクト(例えば、窓)を含む。いくつかの実施形態では、透明オブジェクトの内側表面は、内側表面上に蓄積し(例えば、空気インキュベータの内側の湿った空気に起因する)、システムの監視に干渉し得る、結露を防止または除去するために、払拭されることができる(例えば、キャビネットの内側から)。いくつかの実施形態では、表面は、コントローラによって自動的に制御される、ワイパーによって払拭されることができる。
【0118】
本明細書で使用されるように、「ドア」は、開放されると、2つまたはそれを上回る環境もしくは領域間の連通を可能にし、閉鎖されると、2つまたはそれを上回る環境もしくは領域間の連通を防止する、要素である。ドアは、スライドドア、ポケットドア、スイングドア、ヒンジドア、回転ドア、枢動ドア、または折畳ドア等の任意のタイプであってもよい。ドアは、手動で、機械的に、または電気的に動作されてもよい。例えば、オペレータは、ドアまたはその要素(例えば、ハンドル)を手動で握持する、引動する、押動する、および/またはそれと別様に物理的に相互作用することによって、または機械的制御(例えば、ボタン、トグル、スピンホイール、キー、スイッチ、カーソル、ねじ、ダイヤル、画面、またはタッチ画面)を動作させることによって、ドアを開閉してもよい。ある実施形態では、ドアは、コントローラ等によって、電気またはデジタル制御によって制御されてもよい。ドアは、自動的開放式ドアであってもよい。例えば、ドアは、ドアが開放または閉鎖しているかどうかを検出する、および/またはドアが開閉するときを制御する、圧力、赤外線、運動、または遠隔センサ等のセンサを含んでもよい。ドアは、機械的、空気圧、電気、または他の手段によって開放してもよい。いくつかの実施形態では、1つまたはそれを上回るドアは、1つまたはそれを上回るロック機構を含んでもよい。特定の環境では、1つまたはそれを上回るドアは、1つまたはそれを上回るインターロック(例えば、ピン、バー、またはロック等の機械的インターロックもしくはスイッチ等の電気的インターロック)を含み、1つまたはそれを上回るドアが望ましくない時間に開放しないように防止する(例えば、1つまたはそれを上回るチャンバが外側環境に開放されるとき)。
【0119】
いくつかの実施形態では、インキュベータ(例えば、内部チャンバおよび/またはインキュベータキャビネットの移送チャンバ)は、閉鎖されると、シールされ、無菌状態を保持する(例えば、インキュベータの1つまたはそれを上回るチャンバが殺菌された後)、1つまたはそれを上回る窓ならびに/もしくはドアを備える。いくつかの実施形態では、インキュベータキャビネットの各シールは、閾値レベルの圧力(例えば、最大1atm)まで気密である。いくつかの実施形態では、ガスケットが、所望のレベルのシール能力を確実にするために提供される。一般に、「ガスケット」は、概して、圧縮下にある間、2つの物体間の漏出を防止するために、2つの物体間の空間を充填する、機械的シールとして理解される。ガスケットは、一般に、ガスケットペーパー、ゴム、シリコーン、金属、コルク、フェルト、ネオプレン、ニトリルゴム、ガラス繊維、またはプラスチックポリマー(ポリクロロトリフルオロエチレン等)等のシート材料から切断することによって生成される。多くの場合、ガスケットは、変形し、任意の若干の不規則性を含むために設計される空間を緊密に充填可能であるように、ある程度の降伏を提供する材料から作製されることが望ましい。いくつかの実施形態では、ガスケットは、適切に機能するために、シーラントのガスケット表面への直接塗布と併用されることができる。いくつかの実施形態では、ガスケット材料は、二酸化炭素またはオゾンと反応しない独立気泡ネオプレンフォームを含むことができる。
【0120】
本明細書で使用されるように、「1つまたはそれを上回るアイテムを移動させるための移送デバイス」は、1つまたはそれを上回るアイテムを第1の場所から第2の場所に移送し得るデバイスを指す。いくつかの実施形態では、1つまたはそれを上回るアイテムは、1つまたはそれを上回る細胞培養容器である。他の実施形態では、1つまたはそれを上回るアイテムは、1つまたはそれを上回る細胞培養容器の保守のために有用であって、限定ではないが、ピペット、毛細管、液体(例えば、細胞培養培地)、栄養素、および他の材料を含む。ある実施形態では、移送デバイスは、1つまたはそれを上回るアイテムをインキュベータ内の複数の場所へもしくはそこから移送してもよい。例えば、移送デバイスは、1つまたはそれを上回る細胞培養容器の保守のために、ピペットを内部チャンバ内の保守場所に移動させるために使用されてもよい。いくつかの実施形態では、インキュベータは、1つまたはそれを上回るアイテムを移動させるための1つを上回る移送デバイス(例えば、アイテムをチャンバ間およびその中で移送するための2つまたはそれを上回る別個の移送デバイス)を含む。
【0121】
移送デバイスは、弁(例えば、電磁または空気圧弁)、歯車、モータ(例えば、電気もしくはステッパモータ)、段(例えば、xyまたはxyz段)、ピストン、ブレーキ、ケーブル、ボールねじアセンブリ、ラックピニオン配列、グリッパ、アーム、枢動点、継手、平行移動要素、もしくは他の機械的もしくは電気的要素等の1つまたはそれを上回る要素を含んでもよい。いくつかの実施形態では、移送デバイスは、1つまたはそれを上回るロボット要素を含んでもよい。例えば、移送デバイスは、1つまたはそれを上回るアイテム(例えば、ピペット)を把持する、持ち上げる、押動する、握持する、摺動する、回転させる、平行移動する、解放する、上昇させる、降下させる、ならびに/もしくは傾斜させることが可能なロボットアームを含んでもよい。好ましい実施形態では、移送デバイスは、選択的かつ解放可能に、1つまたはそれを上回るピペットを把持する。ある実施形態では、移送デバイスは、機械的グリッパに結合されるアームを含んでもよい。例えば、アームは、機械的グリッパをピペットを解放可能に把持するための一端またはその近傍に含み、他端もしくはその近傍においてインキュベータの表面または要素に固着して結合されてもよい。いくつかの実施形態では、ロボットアームは、機械的グリッパがアームおよびアームに沿った1つまたはそれを上回る枢動ならびに/もしくは平行移動継手に結合し、アームの一部の柔軟な回転および平行移動を可能にする、枢動点を含む。このように、ロボットアームは、インキュベータ(例えば、内部チャンバ内の貯蔵アレイ)内の異なる水平および垂直位置において、1つまたはそれを上回るアイテム(例えば、ピペット)にアクセスしてもよい。
【0122】
本明細書で使用されるように、「細胞培養容器移送デバイス」は、1つまたはそれを上回る細胞培養容器を第1の場所から第2の場所に移送し得るデバイスを指す。ある実施形態では、移送デバイスは、1つまたはそれを上回るアイテムをインキュベータ内の複数の場所へもしくはそこから移送してもよい。例えば、細胞培養容器移送デバイスは、細胞培養容器を移送チャンバから内部チャンバ、および/または貯蔵場所から撮像場所に移動させるために使用されてもよい。いくつかの実施形態では、インキュベータは、1つまたはそれを上回るアイテムを移動させるための1つを上回る移送デバイス(例えば、アイテムをチャンバ間およびその中で移送するための別個の手段)を含む。細胞培養容器移送デバイスは、弁(例えば、電磁または空気圧弁)、歯車、モータ(例えば、電気もしくはステッパモータ)、段(例えば、xyまたはxyz段)、ピストン、ブレーキ、ケーブル、ボールねじアセンブリ、ラックピニオン配列、グリッパ、アーム、枢動点、継手、平行移動要素、もしくは他の機械的もしくは電気的要素等の1つまたはそれを上回る要素を含んでもよい。いくつかの実施形態では、細胞培養容器移送デバイスは、1つまたはそれを上回るロボット要素を含んでもよい。例えば、細胞培養容器移送デバイスは、1つまたはそれを上回る細胞培養容器を把持する、持ち上げる、押動する、握持する、摺動する、回転させる、平衡移動する、解放する、上昇させる、降下させる、ならびに/もしくは傾斜させることが可能なロボットアームを含んでもよい。好ましい実施形態では、細胞培養容器移送デバイスは、選択的かつ解放可能に、1つまたはそれを上回る細胞培養容器を把持する。ある実施形態では、細胞培養容器移送デバイスは、機械的グリッパに結合されるアームを含んでもよい。例えば、アームは、機械的グリッパを細胞培養容器を解放可能に把持するための一端またはその近傍に含み、他端もしくはその近傍においてインキュベータの表面または要素に固着して結合されてもよい。いくつかの実施形態では、ロボットアームは、機械的グリッパがアームおよびアームに沿った1つまたはそれを上回る枢動ならびに/もしくは平行移動継手に結合し、アームの一部の柔軟な回転および平行移動を可能にする、枢動点を含む。このように、ロボットアームは、インキュベータ(例えば、内部チャンバ内の貯蔵アレイ)内の異なる水平および垂直位置において、1つまたはそれを上回る細胞培養容器にアクセスしてもよい。
【0123】
いくつかの実施形態では、移送デバイスは、ロボットアームを含む。いくつかの実施形態では、ロボットアームは、インキュベータキャビネットの内側表面(例えば、内壁、基部等)に沿って種々の方向に延設されるレールまたはコンベヤに沿って移動し得る、インキュベータキャビネット内のプラットフォームを含む。いくつかの実施形態では、インキュベータキャビネットは、1つを上回る(例えば、2、3、4、または5つ、またはそれを上回る)ロボットアームとともに構成され、器具のスループットを増加させ、ロボットアームのうちの1つの故障の場合、冗長性を提供してもよい。
【0124】
いくつかの実施形態では、移送デバイスはさらに、ロボットアームに結合される、グリッパアセンブリを含むことができる。いくつかの実施形態では、グリッパアセンブリは、ロボットアームの端部または端部付近に搭載される、1つまたはそれを上回るグリッパを含み、各グリッパは、2つまたはそれを上回る(例えば、3、4、5、またはそれを上回る)グリッパフィンガを備える。いくつかの実施形態では、ロボットアームのグリッパフィンガはそれぞれ、溝、摩擦プレート、ゴムパッド、または他の把持表面を有する。把持表面は、フィンガが、キャビネット内の種々のタイプのコンテナ(例えば、培養容器)を把持および輸送することを可能にすることができる。いくつかの実施形態では、ロボットアームは、グリッパアセンブリ、プラットフォームのいずれかに結合される絶対エンコーダ、またはグリッパアセンブリ、プラットフォーム毎の別個の絶対エンコーダを有し、ロボットアームが、障害物に衝打せずに、安全にホームに戻り得る位置にある(例えば、静置または貯蔵構成および/または場所もしくは動作座標系の起点に戻される)かどうかを判定してもよい。
【0125】
いくつかの実施形態では、ある状況では、ロボットアームの到達範囲は、インキュベータキャビネットのある面積まで延在しないことが望ましくあり得るため、ロボットアームは、代わりに、例えば、軸(例えば、x-軸、y-軸)に沿って移動し、ロボットアームが到達することができない、それらの場所の少なくともいくつかへのアクセスを提供する、インキュベータキャビネット床または他の表面上に位置する、シャトルまたはコンベヤベルトの中にコンテナを挿入する、もしくはそこからコンテナを除去することによって、これらの場所に到達してもよい。
【0126】
いくつかの実施形態では、インキュベータキャビネットは、外部アッセイまたは実験室自動化システムと併用されるように設計される。例えば、いくつかの実施形態では、インキュベータキャビネットは、フィンガが、培養容器または他のコンテナもしくは構成要素を実験室自動化システムの輸送ラインとインキュベータキャビネットまたはインキュベータキャビネットの外部アッセイ構成要素との間で輸送するために十分な到達範囲を伴って、グリッパアームがインキュベータのキャビネットの外側を枢動することを可能にするために十分に大きい開口部を有する、ドアを有してもよい。
【0127】
いくつかの実施形態では、ロボットアームは、とりわけ、培養容器を搬送するように設計されており、その場合、ロボットアームの移動は、そのような容器の急激な動きもしくは加速または容器からのサンプルの溢流を生じさせ得る他の移動を防止するように制御される。いくつかの実施形態では、ロボットアームは、とりわけ、培養容器を搬送するように設計され、その場合、ロボットアームの移動は、新しく播種された細胞を培養容器の具体的面積内に凝集/集中させるようなそのような容器の移動を防止するように制御される。
【0128】
いくつかの実施形態では、ロボットアームは、容器または他のコンテナをインキュベータキャビネット内の具体的位置間で輸送するため、ロボットアームまたはインキュベータの他の構成要素は、容器または他のコンテナが位置する場所を精密に追跡するように設計されることができる。ある場合には、ロボットアームが使用され得る、インキュベータキャビネット内には、インキュベータキャビネットの他の構成要素またはインキュベータキャビネットの壁が位置する、したがって、ロボットアームのある移動が限定され得るような面積が存在する可能性が高い。これらの場合、ホーム機構が、アームの種々のモータ(例えば、x-モータ、シータ-モータおよびz-モータ)毎に使用され、電源投入された後、またはロボットアームが別のオブジェクトと衝突する場合、動作を再開する前に、ロボットアームを既知の場所に適切に位置付けることができる。
【0129】
いくつかの実施形態では、無停電電力供給源(「UPS」)が、インキュベータキャビネットにもしくはその中に取り付けられるか、またはそれとともに含有され、種々の自動化およびサンプル情報の保存ならびに進行中の任意の輸送または移送プロセス(例えば、ロボットアームによってその目的地に搬送されているコンテナまたは容器の輸送)の完了を含む、インキュベータ動作の正常シャットダウンを可能にする。オペレータは、可聴信号、視覚的信号、電子信号(例えば、電子メールまたはテキストメッセージ)によって、またはある他の様式において、インキュベータの無許可開放に対してアラートされてもよい。いくつかの実施形態では、センサまたは他の特徴が、インキュベータの1つまたはそれを上回るドアが開放されると(例えば、外部または内部ドア等のインキュベータキャビネットドアが開放されると)、それを検出するために提供される。そのような特徴は、オペレータが、無菌性を脅かす、生成物を駄目にする、アッセイまたは実験を損なわせ得る等、インキュベータ(例えば、インキュベータキャビネット)の任意の予定外または無許可の開放を追跡もしくは警告されることを可能にするため、有用である。いくつかの実施形態では、無線周波数ビーコンまたは他の信号源が、インキュベータキャビネット内の1つまたはそれを上回るデバイス内の場所を判定するために使用され得る、インキュベータ(例えば、インキュベータキャビネット)内に位置する(例えば、信号を検出し、それを使用して、その場所を判定することができる、センサを有するデバイス)。いくつかの実施形態では、デバイスは、信号源を有し得、センサは、インキュベータキャビネットのチャンバのうちの1つまたはそれを上回るもの内に位置し得る(例えば、内部チャンバの内部表面上に位置する)。
【0130】
いくつかの実施形態では、光信号またはレーザ(例えば、レーザ信号のグリッド)が、インキュベータキャビネット内の1つまたはそれを上回るデバイスもしくは構成要素の場所を判定するために使用されることができる。そのような情報は、例えば、有線または無線で、外部コンピュータまたは監視ステーションに通信されることができる。情報は、インキュベータキャビネット内の移送デバイス、例えば、ロボットアームの動作を制御し、移送デバイスが、インキュベータキャビネット内でデバイスまたはアイテムを適切に握持、操作、または操縦し得ることを確実にするために使用されることができる。
【0131】
いくつかの実施形態では、コンテナまたは容器がインキュベータキャビネット内に運ばれる前に、ユーザは、インキュベータキャビネットの中に挿入されている特定のコンテナ、容器、原料、または細胞に基づいて、自動化システムプロトコルを選択することができる。インキュベータおよび/または1つもしくはそれを上回るインキュベータ構成要素ならびに成長されている細胞に関連する関連情報が、データシステムの中に打ち込まれることができる。例えば、バーコード(例えば、1Dまたは2Dバーコード)等の1つまたはそれを上回る識別子が、コンテナまたは容器上に設置されることができ、コンテナのタイプ、コンテナの内容物、コンテナ内のサンプル上で実施されるべきアッセイまたは操作等の他の有意な情報が、規定されることができる。いくつかの実施形態では、インキュベータシステムおよび/または細胞に関連する情報は、別個のデータシステム上の1つまたはそれを上回るバーコードまたはそれらの組み合わせ内に含有されることができる。ユーザはまた、容器もしくは他のコンテナの寸法(例えば、高さ、直径)を識別する情報を打ち込んでもよい、またはシステム自体が、容器もしくは他のコンテナの高さの尺度を決定することができる。本情報を使用して、ロボットアームは、分析モジュールがアッセイもしくは他の操作を容器内で成長される細胞に実施する準備ができるとき、またはアッセイもしくは操作の実施が完了するとき等、特定のコンテナを輸送するように要求されてもよいも。
【0132】
本明細書に提供されるインキュベータは、センサ、環境制御システム、ロボット等を含む、いくつかの構成要素を含み、これは、コンピュータ、プロセッサ、マイクロコントローラ、または他のコントローラの指示でともに動作してもよい。構成要素は、例えば、移送デバイス(例えば、ロボットアーム)、液体取扱デバイス、培養容器を送達するための送達システム、インキュベータキャビネットへもしくはそこからの他の構成要素、インキュベータキャビネットの温度および他の環境側面を制御するための環境制御システム、ドア動作システム、撮像または検出システム、および細胞培養アッセイシステムを含んでもよい。
【0133】
ある場合には、細胞培養インキュベータおよび/またはその中に提供されるか、もしくはそれとインターフェースをとる構成要素の動作の制御等の動作は、ハードウェア、ソフトウェア、またはそれらの組み合わせを使用して実装されてもよい。ソフトウェア内に実装されると、ソフトウェアコードは、単一構成要素内に提供される、または複数の構成要素間に分散されるかどうかにかかわらず、任意の好適なプロセッサまたはプロセッサの集合上で実行されることができる。そのようなプロセッサは、1つまたはそれを上回るプロセッサを集積回路構成要素内に伴う、集積回路として実装されてもよい。プロセッサは、任意の好適な形式における回路を使用して実装されてもよい。
【0134】
いくつかの実施形態では、構成要素(例えば、コントローラ)は、インキュベータの内側で実施される種々のプロセスを制御する。例えば、コントローラは、制御機器(例えば、マニピュレータ、撮像機、流体取扱システム等)に指示してもよい。いくつかの実施形態では、コントローラは、細胞培養の撮像、細胞の取り上げ、細胞の間引き(例えば、細胞集塊の除去)、細胞培養条件の監視、細胞培養条件の調節、インキュベータ内の細胞培養容器移動の追跡、および/または前述のプロセスのいずれかのスケジューリングを制御する。細胞アッセイ
【0135】
ある実施形態では、本明細書に提供されるインキュベータは、1つまたはそれを上回るアッセイが、インキュベータキャビネットまたはインキュベータキャビネットに動作可能に接続されるチャンバ、例えば、インキュベータの一部である別個のアッセイチャンバ内で実施されることを可能にするように構成される。いくつかの実施形態では、本明細書に提供されるインキュベータは、細胞計数アッセイ、複製標識化アッセイ、細胞膜統合性アッセイ、細胞ATPに基づく生存率アッセイ、ミトコンドリアレダクターゼ活性アッセイ、カスパーゼ活性アッセイ、アネキシンV染色アッセイ、DNA含有量アッセイ、DNA分解アッセイ、核断片化アッセイ、またはそれらの組み合わせの実施を可能にするように構成される。他の例示的アッセイは、BrdU、EdU、またはH3-チミジン組み込みアッセイ;ヘキスト染色、DAPI、アクチノマイシンD、7-アミノアクチノマイシンD、またはヨウ化プロピジウム等の核酸染色を使用するDNA含有量アッセイ;AlamarBlue、MTT、XTT、およびCellTitre Glo等の細胞代謝アッセイ;核断片化アッセイ;細胞質ヒストン関連DNA断片化アッセイ;PARP切断アッセイ;ならびにTUNEL染色アッセイを含む。
【0136】
いくつかの実施形態では、本明細書に提供されるインキュベータは、細胞のデジタル識別およびマーキングを可能にするように構成される。例えば、細胞または複数の細胞が、本明細書に説明されるインキュベータ内で培養され、蛍光顕微鏡検査法を介して撮像され、着目細胞(例えば、蛍光発光に関して陽性である細胞)もしくは複数の細胞(例えば、細胞集団)を(例えば、インキュベータに結合される撮像ソフトウェアを有するコンピュータを介して)デジタル的にマーキングしてもよい。マーキングされた細胞の場所は、コンピュータのメモリ上に記憶され、後の時点にアクセスされることができる。細胞集団のデジタルマーキングは、マーキングされた細胞が続いて視認または操作されることを可能にし得る。後続の視認および/または操作することは、細胞がデジタル的にマーキングされた場所と同一の場所(例えば、撮像場所)もしくは細胞がデジタル的にマーキングされた場所から遠隔の場所(例えば、撮像場所ではない操作場所)で実施されてもよい。ある場合には、細胞または複数の細胞のデジタルマーキングは、1つまたはそれを上回る基準マークを介した、該細胞を収容する細胞培養容器の撮像器への整合によって促進され得る。いくつかの実施形態では、本明細書に説明されるようなインキュベータは、複数のワークステーション(例えば、1台、または2台、または3台、または4台、または5台、またはそれを上回るワークステーション)を備え、各ワークステーションは、細胞のデジタル識別およびマーキングを可能にするように構成される。
【0137】
ある実施形態では、本明細書に提供されるインキュベータは、インキュベータキャビネット内の高スループットスクリーニング(HTS)を可能にするように構成される。いくつかの実施形態では、HTSは、最大で100,000化合物/日の、そしてそれを含む試験を指す。いくつかの実施形態では、スクリーニングアッセイは、マルチウェルフォーマット、例えば、96-ウェル、384-ウェルフォーマット、または1,536-ウェルフォーマットで実施されてもよく、自動化されたプロトコルを使用して実施されることができる。そのような高スループットアッセイでは、1日で数千個の異なる化合物または組成物をスクリーニング可能である。特に、マイクロタイタープレートの各ウェルは、選択された試験化合物に対して別個のアッセイを起動するために使用されることができる、または濃度もしくはインキュベーション時間効果が観察されるべき場合、複数のウェルが、単一化合物の試験サンプルを含むことができる。1日あたり多くのプレートをアッセイすることが可能であって、最大約6,000、20,000、50,000、または100,000個を上回る異なる化合物のためのアッセイスクリーニングが、アッセイを使用して可能である。典型的には、本明細書に開示されるアッセイのHTS実装は、自動化の使用を伴う。いくつかの実施形態では、1つまたはそれを上回るロボットアームを含む、統合されたロボットシステムが、化合物、細胞、および/または試薬添加、混合、インキュベーション、および最後に、読取または検出のために、複数のアッセイステーション間でアッセイマイクロプレートを輸送する。いくつかの側面では、HTSアッセイは、多くのプレートを同時に調製、インキュベート、および分析することを含み、データ収集プロセスをさらに加速させてもよい。
【0138】
いくつかの実施形態では、アッセイは、試験細胞、対照細胞、および1つまたはそれを上回る試験化合物、例えば、10、100、1000、10,000個、またはそれを上回る試験化合物を含むことができる。細胞および試験剤が、細胞に及ぼす試験化合物の影響を査定するために好適な様式において、1つまたはそれを上回る容器内に配列されることができる。これらのアッセイは、本明細書に説明される1つまたはそれを上回るインキュベータの1つまたはそれを上回るインキュベータキャビネット内で実施されることができる。典型的には、容器は、好適な組織培養培地を含有し、試験化合物が、組織培養培地内に存在し、自動化された方式において、本明細書に提供されるインキュベータのインキュベータキャビネット内の培養培地に送達されてもよい。特定の細胞タイプを培養するために適切な培地が、使用のために選択されることができる。いくつかの実施形態では、培地は、血清または組織抽出物がない、もしくは本質的にないが、他の実施形態では、そのような成分が、存在する。いくつかの実施形態では、細胞は、プラスチックまたはガラス表面上で培養される。
【0139】
種々の発明の概念が、例えば、
図5を参照して説明されるプロセスを含めて、その実施例が提供されている、1つまたはそれを上回るプロセスとして具現化され得る。各プロセスの一部として実施される行為は、任意の好適な方法で順序付けられてもよい。したがって、例証的実施形態では順次行為として示されたとしても、いくつかの行為を同時に実施することを含み得る、図示されるものと異なる順序で行為が実施される、実施形態が構築されてもよい。
【0140】
本明細書および本請求項で使用されるような、1つまたはそれを上回る要素の一覧を参照した「少なくとも1つ」という語句は、要素の一覧中の要素のうちのいずれか1つまたはそれを上回るものから選択される、少なくとも1つの要素を意味するが、要素の一覧内で具体的に記載される、あらゆる要素のうちの少なくとも1つを必ずしも含むとは限らず、要素の一覧中の要素の任意の組み合わせを除外しないことを理解されたい。この定義はまた、「少なくとも1つ」という語句が指す要素の一覧内で具体的に識別される要素と関係するか、無関係であるかにかかわらず、それらの具体的に識別される要素以外の要素が必要に応じて存在してもよいことも許容する。したがって、例えば、「AおよびBのうちの少なくとも1つ」(または同等に、「AまたはBのうちの少なくとも1つ」、または同等に、「Aおよび/またはBのうちの少なくとも1つ」)は、一実施形態では、Bが存在しない、必要に応じて1つを上回るものを含む、少なくとも1つのA(必要に応じてB以外の要素を含む)を指し、別の実施形態では、Aが存在しない、必要に応じて1つを上回るものを含む、少なくとも1つのB(必要に応じてA以外の要素を含む)を指し、さらに別の実施形態では、必要に応じて1つを上回るものを含む、少なくとも1つのA、および、必要に応じて1つを上回るものを含む、少なくとも1つのB(必要に応じて他の要素を含む)等を指すことができる。
【0141】
本明細書および本請求項で使用されるような、「および/または」という語句は、そのように結合される要素、すなわち、ある場合では接合的に存在し、他の場合では離接的に存在する要素の「いずれか一方または両方」を意味すると理解されたい。「および/または」を用いて列挙される複数の要素、すなわち、そのように結合される要素の「1つまたはそれを上回る」ものが、同一の方式で解釈されるべきである。「および/または」という節によって具体的に識別される要素以外に、他の要素が、それらの具体的に識別される要素に関係するか、無関係であるかにかかわらず、随意に存在してもよい。したがって、非限定的実施例として、「Aおよび/またはB」の言及は、「~を備える」等の非制約的な用語と併せて使用されると、一実施形態では、Aのみ(随意に、B以外の要素を含む)を指し、別の実施形態では、Bのみ(随意に、A以外の要素を含む)を指し、さらに別の実施形態では、AおよびBの両方(随意に、他の要素を含む)等を指すことができる。
【0142】
請求項要素を修飾するための請求項における「第1」、「第2」、「第3」等の序数用語の使用自体は、任意の優先順位、先行、または別のものに先行する1つの請求項要素の順序、または方法の作用が行われる時間的順序を示すものではない。そのような用語は、単に、ある名称を有する1つの請求項要素を(序数用語の使用がない場合)同一名称を有する別の要素から区別するための標識として使用される。本明細書に使用される語法および専門用語は、説明の目的のためのものであり、限定するものとして見なされるべきではない。「含む」「備える」「有する」「含有する」「伴う」、およびその変形例の使用は、その後列挙されるアイテムと、付加的なアイテムとを包含するように意図される。
【0143】
本明細書に説明される技法のいくつかの実施形態を詳細に説明しているため、種々の修正および改良が、当業者に容易に想起されるであろう。そのような修正および改良は、本開示の精神ならびに範囲内であることが意図される。故に、前述の説明は、実施例にすぎず、限定しているものと意図されない。技法は、以下の請求項およびその均等物によって定義されるようにのみ限定される。