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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-05
(45)【発行日】2023-12-13
(54)【発明の名称】地盤の液状化深度推定装置及びその方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 1/02 20060101AFI20231206BHJP
   E02D 1/00 20060101ALI20231206BHJP
【FI】
E02D1/02
E02D1/00
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020071230
(22)【出願日】2020-04-10
(65)【公開番号】P2021167534
(43)【公開日】2021-10-21
【審査請求日】2023-03-27
(73)【特許権者】
【識別番号】505047784
【氏名又は名称】株式会社オムテック
(74)【代理人】
【識別番号】100120145
【弁理士】
【氏名又は名称】田坂 一朗
(74)【代理人】
【識別番号】100140866
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 武史
(72)【発明者】
【氏名】後藤 泰博
(72)【発明者】
【氏名】田中 毅弘
(72)【発明者】
【氏名】丹治 捺依斗
【審査官】荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-101388(JP,A)
【文献】特開2019-100082(JP,A)
【文献】特開2002-155526(JP,A)
【文献】特開2006-009262(JP,A)
【文献】特開2007-139454(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 1/02
E02D 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定位置における液状化層の最深深度である最深液状化深度を、測定済みの地盤データに含まれる参照位置から推定する地盤の液状化深度推定装置であって、
前記所定位置を示す所定位置情報を取得する位置情報取得手段と、
前記位置情報取得手段により取得された前記所定位置情報に基づき、前記地盤データから複数の前記参照位置を選定する参照位置選定手段と、
前記参照位置選定手段により選定された前記参照位置毎に、前記地盤データから前記最深液状化深度を示す深度情報を取得する深度情報取得手段と、
前記参照位置の各々とこれらに対応する複数の前記深度情報とに基づき、前記所定位置の前記最深液状化深度を推定する推定手段と、を備えることを特徴とする地盤の液状化深度推定装置。
【請求項2】
前記所定位置から前記参照位置までの距離である参照距離を算出する参照距離算出手段を、更に備え、
前記参照位置選定手段は、前記参照距離が所定距離以内となる複数の前記参照位置を選定することを特徴とする請求項1に記載の地盤の液状化深度推定装置。
【請求項3】
前記参照位置選定手段は、基準面内において前記所定位置を囲む3つの前記参照位置を選定し、
前記深度情報取得手段は、前記参照位置選定手段により選定された3つの前記参照位置に対応する3つの前記深度情報を取得し、
前記推定手段は、
前記基準面内の位置をX座標及びY座標、前記基準面から深さ方向の位置をZ座標とし、これらのX座標及びY座標並びにZ座標により、3つの前記参照位置の前記最深液状化深度に対応する3つの参照地点を、それぞれ特定し、
特定した3つの前記参照地点を含む仮想平面を算出し、
前記所定位置情報に含まれるX座標及びY座標と前記仮想平面とに基づき、当該仮想平面内において前記所定位置に対応するZ座標を、当該所定位置の前記最深液状化深度として推定することを特徴とする請求項1又は2に記載の地盤の液状化深度推定装置。
【請求項4】
前記推定手段は、前記参照位置毎に前記参照距離に応じた係数を、前記深度情報に基づく前記最深液状化深度に乗算することで補正値を算出し、当該補正値に基づき、前記所定位置の前記最深液状化深度を推定することを特徴とする請求項2に記載の地盤の液状化深度推定装置。
【請求項5】
前記推定手段は、前記参照距離の逆数を前記係数として、前記深度情報に基づく前記最深液状化深度に乗算することにより、前記補正値を算出することを特徴とする請求項4に記載の地盤の液状化深度推定装置。
【請求項6】
所定位置における液状化層の最深深度である最深液状化深度を、測定済みの地盤データに含まれる参照位置から推定する地盤の液状化深度推定方法であって、
前記所定位置を示す所定位置情報を取得するステップと、
取得された前記所定位置情報に基づき、前記地盤データから複数の前記参照位置を選定するステップと、
選定された前記参照位置毎に、前記地盤データから前記最深液状化深度を示す深度情報を取得するステップと、
前記参照位置の各々とこれらに対応する複数の前記深度情報とに基づき、前記所定位置の前記最深液状化深度を推定するステップと、を含むことを特徴とする地盤の液状化深度推定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤の液状化深度推定装置及びその方法に関し、詳しくは、液状化の可能性がある液状化層の最深深度を推定するための液状化深度推定装置及びその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の方法としては、ボーリングデータ採取位置の近傍位置に、掘削・貫入の試験施工を行い、当該試験施工によってボーリングデータにより明らかな支持層へ到達するまでの深度等といった予想データを採取し、採取した予想データに基づいて支持層の深度を推定する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-101388号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の方法では、既存のボーリングデータを活用するものの、実際に試験施工を行って所望とする所定位置の予想データを採取しなければならず、しかも、液状化の可能性がある液状化層の最深深度に絞り込んで推定することもできないという難点もあった。
【0005】
本発明は、所定位置における液状化層の最深深度を簡易な手法で正確に推定することが可能な地盤の液状化深度推定装置及びその方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)所定位置における液状化層の最深深度である最深液状化深度を、測定済みの地盤データに含まれる参照位置から推定する地盤の液状化深度推定装置であって、
前記所定位置を示す所定位置情報を取得する位置情報取得手段と、
前記位置情報取得手段により取得された前記所定位置情報に基づき、前記地盤データから複数の前記参照位置を選定する参照位置選定手段と、
前記参照位置選定手段により選定された前記参照位置毎に、前記地盤データから前記最深液状化深度を示す深度情報を取得する深度情報取得手段と、
前記参照位置の各々とこれらに対応する複数の前記深度情報とに基づき、前記所定位置の前記最深液状化深度を推定する推定手段と、を備えることを特徴とする地盤の液状化深度推定装置。
【0007】
(1)の発明によれば、所定位置における液状化層の最深深度である最深液状化深度を、測定済みの地盤データに含まれる参照位置から推定する地盤の液状化深度推定装置は、位置情報取得手段と、参照位置選定手段と、深度情報取得手段と、推定手段と、を備える。
位置情報取得手段は、所定位置を示す所定位置情報を取得する。
参照位置選定手段は、位置情報取得手段により取得された所定位置情報に基づき、地盤データから複数の参照位置を選定する。
深度情報取得手段は、参照位置選定手段により選定された参照位置毎に、地盤データから最深液状化深度を示す深度情報を取得する。
推定手段は、参照位置の各々とこれらに対応する複数の深度情報とに基づき、所定位置の最深液状化深度を推定する。
【0008】
これにより、地盤データから所定位置に応じた複数の参照位置を選定させ、これらに対応する深度情報を取得させるだけで、所定位置の最深液状化深度が推定される。
このため、既存の地盤データを用いるだけで所定位置の最深液状化深度が推定され、しかも、液状化の可能性がある最深液状化深度に絞り込んで推定することができる。
したがって、本発明によれば、所定位置における液状化層の最深深度を簡易な手法で正確に推定することが可能となる。
【0009】
(2)前記所定位置から前記参照位置までの距離である参照距離を算出する参照距離算出手段を、更に備え、
前記参照位置選定手段は、前記参照距離が所定距離以内となる複数の前記参照位置を選定することを特徴とする(1)に記載の地盤の液状化深度推定装置。
【0010】
(2)の発明によれば、所定位置から所定距離以内で比較的近隣となる複数の参照位置が選定され、これらに対応する深度情報に基づいて所定位置の最深液状化深度が推定されるので、所定位置に対して比較的近隣の地盤データを用いて推定精度を高めることができる。
【0011】
(3)前記参照位置選定手段は、基準面内において前記所定位置を囲む3つの前記参照位置を選定し、
前記深度情報取得手段は、前記参照位置選定手段により選定された3つの前記参照位置に対応する3つの前記深度情報を取得し、
前記推定手段は、
前記基準面内の位置をX座標及びY座標、前記基準面から深さ方向の位置をZ座標とし、これらのX座標及びY座標並びにZ座標により、3つの前記参照位置の前記最深液状化深度に対応する3つの参照地点を、それぞれ特定し、
特定した3つの前記参照地点を含む仮想平面を算出し、
前記所定位置情報に含まれるX座標及びY座標と前記仮想平面とに基づき、当該仮想平面内において前記所定位置に対応するZ座標を、当該所定位置の前記最深液状化深度として推定することを特徴とする(1)又は(2)に記載の地盤の液状化深度推定装置。
【0012】
(3)の発明によれば、基準面内において所定位置を囲む3つの参照位置が選定されるとともに、これらの参照位置に対応する3つの深度情報が取得され、そして、3つの参照位置の最深液状化深度に対応する3つの参照地点をX座標及びY座標並びにZ座標により特定し、これらの参照地点を含む仮想平面が算出され、最終的には、仮想平面内において所定位置に対応するZ座標が所定位置の最深液状化深度として推定される。
これにより、参照位置毎の最深液状化深度に応じた仮想平面を用いて推定精度を高めることができる。
【0013】
(4)前記推定手段は、前記参照位置毎に前記参照距離に応じた係数を、前記深度情報に基づく前記最深液状化深度に乗算することで補正値を算出し、当該補正値に基づき、前記所定位置の前記最深液状化深度を推定することを特徴とする請求項(2)に記載の地盤の液状化深度推定装置。
【0014】
(4)の発明によれば、参照位置毎に参照距離に応じた係数を乗算することで最深液状化深度の補正値が算出され、この補正値に基づいて所定位置の最深液状化深度が推定されるので、参照位置毎の参照距離に応じた係数を用いて推定精度を高めることができる。
【0015】
(5)前記推定手段は、前記参照距離の逆数を前記係数として、前記深度情報に基づく前記最深液状化深度に乗算することにより、前記補正値を算出することを特徴とする請求項(4)に記載の地盤の液状化深度推定装置。
【0016】
(5)の発明によれば、参照位置毎に参照距離の逆数を乗算することで最深液状化深度の補正値が算出され、この補正値に基づいて所定位置の最深液状化深度が推定されるので、参照位置毎に参照距離の逆数を用いて推定精度を高めることができる。
【0017】
(6)所定位置における液状化層の最深深度である最深液状化深度を、測定済みの地盤データに含まれる参照位置から推定する地盤の液状化深度推定方法であって、
前記所定位置を示す所定位置情報を取得するステップと、
取得された前記所定位置情報に基づき、前記地盤データから複数の前記参照位置を選定するステップと、
選定された前記参照位置毎に、前記地盤データから前記最深液状化深度を示す深度情報を取得するステップと、
前記参照位置の各々とこれらに対応する複数の前記深度情報とに基づき、前記所定位置の前記最深液状化深度を推定するステップと、を含むことを特徴とする地盤の液状化深度推定方法。
【0018】
(6)の発明によれば、(1)の発明と同様の作用効果を奏することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、所定位置における液状化層の最深深度を簡易な手法で正確に推定することが可能な地盤の液状化深度推定装置及びその方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施形態に係る液状化深度推定装置の機能構成を示すブロック図である。
図2】地盤データを模式的に示す図である。
図3】液状化深度推定装置が実行する最深液状化深度を推定する第1方法を説明する図である。
図4】第1方法における推定手段の推定例を説明する図である。
図5】第2方法における推定手段の推定例を説明する図である。
図6】本発明の実施形態に係る液状化深度推定装置が実行する最深液状化深度推定処理フローを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。以下の説明において、同一の構成には、同一の符号を付し、その説明を省略又は簡略化する。
【0022】
図1は、本発明の実施形態に係る液状化深度推定装置の機能構成を示すブロック図である。液状化深度推定装置1は、所望とする推定位置の液状化層の最深深度(以下、「最深液状化深度」と称する)を、測定済みの地盤データに含まれる参照位置から推定する。液状化深度推定装置1は、制御手段10と、記憶手段100と、を備える。
【0023】
制御手段10は、位置情報取得手段11と、参照距離算出手段12と、参照位置選定手段13と、深度情報取得手段14と、推定手段15と、を備える。記憶手段100は、参照位置毎に最深液状化深度を示す複数の深度情報をデータベース化した地盤データ110を記憶している。
【0024】
位置情報取得手段11は、所望とする推定位置を示す推定位置情報を取得する。具体的には、例えば、位置情報取得手段11は、ユーザの操作に基づき入出力装置から入力された推定位置情報を取得し、記憶手段100に記憶する。推定位置情報は、例えば、地表上の座標表現である緯度・経度を示す情報や、所在地を示す情報である。
【0025】
参照距離算出手段12は、記憶手段100から地盤データ110を読み込み、この地盤データ110から位置情報取得手段11が取得した推定位置情報が示す位置周辺の複数の参照位置を取得し、推定位置情報に基づく推定位置から当該参照位置までの距離(以下、「参照距離」と称する)を算出する。
地盤データ110には、最深液状化深度が予め測定された参照位置を示す情報(例えば、緯度・経度を示す情報や、所在地を示す情報)と、当該参照位置それぞれに対応する最深液状化深度を示す情報とが含まれる。
【0026】
図2は、地盤データ110を模式的に示す図である。
地盤データ110は、参照位置を識別するための参照位置No.に、各参照位置の緯度・経度(図2に示す例では、緯度・経度を10進法で示している)と、各参照位置にて予め求められた最深液状化深度を示す深度情報(基準面(地盤面や、いわゆる海抜等)からの深度(m))と、が対応付けられて、記憶手段100に記憶されている。
なお、このような地盤データ110は、外部の装置(例えば、インターネットにおいて、地盤データを公表しているサイトのサーバ等)から取得可能としてもよいし、入力手段によるユーザの入力によって直接取得可能としてもよい。
最深液状化深度を示す深度情報は、例えば、いわゆる液状化安全率(FL値)が1未満で液状化の可能性がある液状化層について最も深い層の深度を示す情報である。
【0027】
参照位置選定手段13は、参照距離算出手段12により算出された参照距離が所定距離以内となる複数の参照位置を地盤データ110から選定する。具体的に、参照位置選定手段13は、参照距離が所定距離(例えば、1000m)以内の参照位置を選定し、さらに、参照距離について、最も短い距離、2番目に短い距離、3番目に短い距離に該当する特に3つの参照位置(本実施形態では、例えば、図2に示す参照位置No.5,4,3)を地盤データ110から選定する。
【0028】
深度情報取得手段14は、参照位置選定手段13により選定された3つの参照位置毎に、地盤データ110から最深液状化深度を示す深度情報を取得する。選定された3つの参照位置の緯度・経度は、Y座標、X座標、それらに対応して取得された最深液状化深度は、Z座標とされ、このようなX,Y,Z座標で示される3次元データが3つの参照地点の情報として後述の推定手段15により特定される。
【0029】
推定手段15は、3つの参照位置の各々とこれらに対応する3つの深度情報(最深液状化深度)とに基づき、推定位置における最深液状化深度を推定する。具体的に、推定手段15は、上記したX,Y,Z座標で示される3つの参照地点を特定し、所定の方法(例えば、後述する第1方法や、第2方法等)により、位置情報取得手段11が取得した推定位置における地盤の最深液状化深度を推定する。
【0030】
液状化深度推定装置1が実行する最深液状化深度を推定する第1方法について説明する。
図3は、液状化深度推定装置1が実行する最深液状化深度を推定する第1方法を説明する図である。
第1方法において、参照位置選定手段13は、推定位置Pを囲む3つの参照位置(図3に示す例では、No.5、No.4、No.3)を選定する。例えば、参照位置選定手段13は、推定位置Pに最も近い参照位置No.4、2番目に近いNo.5、3番目に近いNo.3を選定する。次に、参照位置選定手段13は、これらの選定した3つの参照位置で形成される三角形内に、推定位置Pが存在するか否かを判定する。上記三角形内に推定位置Pが存在する場合、参照位置選定手段13は、選定した3つの参照位置をそのまま用いる。一方、上記三角形内に推定位置Pが存在しない場合、参照位置選定手段13は、推定位置Pに最も近い参照位置No.4より、緯度が大きい参照位置No.と、小さい参照位置No.とを仮選定し、推定位置Pに最も近い参照位置No.4と、仮選定した2点とで形成される三角形内に、推定位置Pが存在することになるまで、このような仮選定を推定位置Pに近い順に変えていく。このようにして、推定位置Pを囲む3点で、かつ、参照距離が比較的近い3つの参照位置が選定される。
【0031】
推定手段15は、参照位置選定手段13が選定した3つの参照位置に対して、参照位置における基準面から最深液状化深度に達した位置である参照地点を、参照位置に含まれるX座標(経度)及びY座標(緯度)、当該参照位置の最深液状化深度をZ座標として、それぞれ特定する。推定手段15は、これらの3つの参照地点により形成される三角形の仮想平面を算出する。そして、推定手段15は、仮想平面における推定位置PのX座標及びY座標に対応して特定される位置のZ座標を、最深液状化深度と推定する。
【0032】
図4は、第1方法における推定手段の推定例を説明する図である。
第1方法において、推定手段15は、例えば、参照位置選定手段13が選定した3つの参照位置により形成される三角形の平面の方程式におけるZの値を、ベクトルの外積と法線ベクトルを用いて求める。
推定手段15は、図4に示す方程式のZを、推定位置Pの最深液状化深度として、このZを、参照位置の地盤データ110(図2参照)に記憶された推定位置PのX座標(経度)及びY座標(緯度)と、参照位置選定手段13が選定した参照位置No.5,4,3のX座標(経度)、Y座標(緯度)及び最深液状化深度を用いて求める。
【0033】
次に、液状化深度推定装置1が実行する最深液状化深度を推定する第2方法について説明する。
第2方法において、参照位置選定手段13は、参照距離が所定距離(例えば、1000m)以内の参照位置を選定する(図5に示す例では、No.1~12)。
【0034】
推定手段15は、参照距離算出手段12が算出した参照距離に応じた係数を、当該参照位置の最深液状化深度に乗じた補正値に基づき、推定位置Pの最深液状化深度を推定する。
図5は、第2方法における推定手段の推定例を説明する図である。
具体的には、推定手段15は、参照距離の逆数を、当該参照位置の係数Bとし、この係数(B)を最深液状化深度(A)に乗じた補正値(A×B)に基づき、推定位置Pの最深液状化深度を推定する。具体的に、推定手段15は、参照位置選定手段13が選定した参照位置(図5に示す例では、No.1~12)に対して、それぞれ、参照距離の逆数を算出し(例えば、参照位置No.1であれば1/524=0.0019087)し、この逆数を係数(B)とし、この係数(B)を最深液状化深度(A)に乗じた補正値(A×B)を算出する。そして、推定手段15は、参照位置選定手段13が選定した参照位置それぞれに算出した係数(B)を合算し、合算係数(Σ(B))を算出する(図5に示す例では0.0318447)。また、推定手段15は、参照位置選定手段13が選定した参照位置それぞれに算出した補正値(A×B)を合算し、合算補正値(Σ(A×B))を算出する(図5に示す例では0.3240718)。
そして、推定手段15は、合算補正値(Σ(A×B))(図5に示す例では0.3240718)を、合算係数(Σ(B))(図5に示す例では0.0318447)で除算することで算出した値(図5に示す例では10.2)を、推定位置Pの最深液状化深度と推定する。
【0035】
上記の液状化深度推定装置1の機能構成は、あくまで一例であり、一つの機能ブロック(データベース及び機能処理部)を分割したり、複数の機能ブロックをまとめて一つの機能ブロックとして構成したりしてもよい。各機能処理手段は、装置に内蔵されたCPU(Central Processing Unit)が、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、SSD(Solid State Drive)、ハードディスク等の記憶手段100に格納されたコンピュータ・プログラム(例えば、基幹ソフト等)を読み出し、CPUにより実行されたコンピュータ・プログラムによって実現される。すなわち、各機能処理部は、このコンピュータ・プログラムが、記憶手段100に格納されたデータベース(DB;Data Base)やメモリ上の記憶領域からテーブル等の必要なデータを読み書きし、場合によっては、関連するハードウェア(例えば、キーボードやマウス等の入出力装置、ディスプレイ等の表示装置、通信インターフェース装置)を制御することによって実現される。
【0036】
次に、液状化深度推定装置1が実行する最深液状化深度推定処理について説明する。
図6は、本発明の実施形態に係る液状化深度推定装置1が実行する最深液状化深度推定処理フローを示す図である。
【0037】
ステップS1において、位置情報取得手段11は、ユーザの操作に基づき入出力装置から入力された推定位置情報を取得し、記憶手段100に記憶する。
【0038】
ステップS2において、参照距離算出手段12は、ステップS1で位置情報取得手段11が取得した推定位置情報が示す位置周辺の地盤データ110を取得する。
【0039】
ステップS3において、参照距離算出手段12は、ステップS1で取得した推定位置情報が示す推定位置Pから、ステップS2で取得した地盤データ110の各々の参照位置までの参照距離を算出する。
【0040】
ステップS4において、参照位置選定手段13は、ステップS3で算出した参照距離が所定距離(例えば、上述の第1方法であれば150m、第2方法であれば1000m)以内の複数の参照位置を選定する。
【0041】
ステップS5において、深度情報取得手段14は、ステップS4で選定した複数の参照位置に対応する最深液状化深度情報を、記憶手段100の地盤データ110から読み込み、所定の方法(例えば、第1方法(図3,4参照)や、第2方法(図5参照))により、ステップS1で取得した推定位置Pの最深液状化深度を推定する。
【0042】
このように、本実施形態の液状化深度推定装置1によれば、以下の作用効果を奏する。
液状化深度推定装置1によれば、地盤データ110から推定位置Pに応じた複数の参照位置が選定され、これらに対応する最深液状化深度情報を取得するだけで、推定位置Pの最深液状化深度が推定される。
このため、既存の地盤データ110を用いるだけで推定位置Pの最深液状化深度が推定され、しかも、液状化の可能性がある最深液状化深度に絞り込んで推定することができるので、推定位置Pにおける液状化層の最深深度を簡易な手法で正確に推定することができる。
【0043】
また、液状化深度推定装置1によれば、推定位置Pから所定距離以内で比較的近隣となる複数の参照位置が選定され、これらに対応する最深液状化深度情報に基づいて推定位置Pの最深液状化深度が推定されるので、推定位置Pに対して比較的近隣の地盤データ110を用いて推定精度を高めることができる。
【0044】
また、液状化深度推定装置1によれば、基準面内において推定位置Pを囲む3つの参照位置(図3に示す例では、No.5、No.4、No.3)が選定されるとともに、これらの参照位置に対応する3つの最深液状化深度情報が取得され、そして、3つの参照位置の最深液状化深度に対応する3つの参照地点をX座標及びY座標並びにZ座標により特定し、これらの参照地点を含む仮想平面が算出され、最終的には、仮想平面内において推定位置Pに対応するZ座標が推定位置Pの最深液状化深度として推定されるので、参照位置毎の最深液状化深度に応じた仮想平面を用いて推定精度を高めることができる。
【0045】
また、液状化深度推定装置1によれば、参照位置毎に参照距離の逆数を係数(B)とし、この係数を最深液状化深度に乗算することで最深液状化深度の補正値(A×B)が算出され、この補正値に基づいて推定位置Pの最深液状化深度が推定されるので、仮に、推定位置Pから比較的近い参照位置に関するデータが無い場合でも、参照位置毎の参照距離に応じた係数を用いて推定精度を高めることができる。
【0046】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【符号の説明】
【0047】
1 液状化深度推定装置
10 制御手段
11 位置情報取得手段
12 参照距離算出手段
13 参照位置選定手段
14 深度情報取得手段
15 推定手段
100 記憶手段
110 地盤データ
図1
図2
図3
図4
図5
図6