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特許7397493治療用途のための樹状細胞のin vitro分化および成熟のための方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-05
(45)【発行日】2023-12-13
(54)【発明の名称】治療用途のための樹状細胞のin vitro分化および成熟のための方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/15 20150101AFI20231206BHJP
   C12N 15/87 20060101ALI20231206BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20231206BHJP
   C12N 15/31 20060101ALI20231206BHJP
   C12N 15/33 20060101ALI20231206BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20231206BHJP
   C12N 15/86 20060101ALI20231206BHJP
   A61K 39/00 20060101ALI20231206BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20231206BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20231206BHJP
   A61P 31/00 20060101ALI20231206BHJP
   A61P 31/10 20060101ALI20231206BHJP
   C12N 5/0784 20100101ALN20231206BHJP
   C12P 21/02 20060101ALN20231206BHJP
   A61K 38/19 20060101ALN20231206BHJP
   A61K 38/20 20060101ALN20231206BHJP
   A61K 38/21 20060101ALN20231206BHJP
   C07K 14/005 20060101ALN20231206BHJP
   C07K 14/195 20060101ALN20231206BHJP
   C07K 14/37 20060101ALN20231206BHJP
   C07K 14/39 20060101ALN20231206BHJP
   C07K 14/47 20060101ALN20231206BHJP
   C07K 14/82 20060101ALN20231206BHJP
   C12N 15/88 20060101ALN20231206BHJP
【FI】
A61K35/15
C12N15/87 Z ZNA
C12N15/12
C12N15/31
C12N15/33
C12N5/10
C12N15/86 Z
A61K39/00 H
A61K39/00 Z
A61P35/00
A61K39/00 K
A61K48/00
A61P31/00
A61P31/10
C12N5/0784
C12P21/02 C
A61K38/19
A61K38/20
A61K38/21
C07K14/005
C07K14/195
C07K14/37
C07K14/39
C07K14/47
C07K14/82
C12N15/88 Z
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020570762
(86)(22)【出願日】2019-06-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-10-14
(86)【国際出願番号】 EP2019066398
(87)【国際公開番号】W WO2019243537
(87)【国際公開日】2019-12-26
【審査請求日】2022-06-17
(31)【優先権主張番号】18179073.4
(32)【優先日】2018-06-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】514185611
【氏名又は名称】ユニベルシテイト ゲント
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITEIT GENT
【住所又は居所原語表記】Sint-Pietersnieuwstraat 25, B-9000 Gent, Belgium
(74)【代理人】
【識別番号】100102842
【弁理士】
【氏名又は名称】葛和 清司
(72)【発明者】
【氏名】フェルメーレン,カリム
【審査官】長谷川 茜
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第01806395(EP,A1)
【文献】特表2004-507238(JP,A)
【文献】国際公開第2017/109110(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0297541(US,A1)
【文献】特表2017-513812(JP,A)
【文献】J Transl Med,2015年,Vol.13:175,pp.1-16,DOI 10.1186/s12967-015-0528-7
【文献】The Journal of Immunology,2013年,Vol.190, No.7,pp.3328-3337
【文献】Mol Biotechnol,2008年,Vol.40,pp.151-160
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 35/00 -35/768
A61K 39/00 -39/44
C12N 5/00 - 5/28
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自己樹状細胞ワクチンを製造するためのin vitroの方法であって、以下のステップを含む、前記方法:
単離された単球性樹状細胞前駆体を、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)およびインターロイキン-4(IL-4)の存在下で48~96時間培養すること;
成熟した樹状細胞(DC集団を形成するため、未熟なDCを、最後の24時間、インターフェロンガンマ(IFN-γ)およびモノホスホリルリピドA(MPLA)と接触させること;および
成熟DCを抗原コードmRNAでトランスフェクトすること。
【請求項2】
樹状細胞が、医薬グレードの完全な閉鎖系において分化しおよび成熟する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
単球性樹状細胞前駆体が、培養バッグ中に提供され、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
細胞培養の開始の際の培養バッグ中の細胞密度が、0.5~2×10 細胞/mLの範囲にわたる、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
GM-CSF、IL-4およびIFN-γの濃度が、500U/mlと2500U/mlとの間である、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
MPLAの濃度が、1~10μg/mlの間である、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
トランスフェクションが、エレクトロポレーションによって行われる、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
エレクトロポレーションが、矩形波パルスを使用して行われる、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
トランスフェクトされたDCが、さらに凍結保存培地中に再懸濁され、および、液体窒素容器の気相中で貯蔵される、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
トランスフェクトされたDCが、さらに、凍結保存されおよび解凍される、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
抗原が、腫瘍抗原、腫瘍関連抗原、がん-精巣抗原、ミュータノーム由来抗原、ウイルス抗原、細菌抗原、酵母抗原、寄生虫抗原および真菌抗原からなる群から選択される、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載の方法によって得られる樹状細胞。
【請求項13】
求項1~11のいずれか一項に記載の方法によって得られた樹状細胞を含む、医薬組成物またはワクチン。
【請求項14】
能動的免疫療法における使用のための、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法によって得られた樹状細胞。
【請求項15】
請求項1~11のいずれか一項に記載の方法によって得られた樹状細胞集団であって、凍結保存および解凍の後において、相対的平均蛍光強度(relMFI)によって表したとき400未満のT細胞共阻害性リガンドPD-L1の細胞表面レベルによって特徴づけられる、前記樹状細胞集団。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野
本発明は、免疫療法における使用のための、および、とりわけがんワクチン接種における使用のための、高収量の1型分極mRNA負荷樹状細胞を生成する加速された方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明までの背景
40年より前の樹状細胞の発見以来、これらの細胞のユニークな生物学的特性の医学応用への橋渡しは、依然として難題である。大半の努力は、DCsをがんに対するワクチンの形で臨床へ持っていくことに焦点を当てている。これは、腫瘍抗原に対するT細胞応答を誘起するDCの能力に基づくものであり、無数の前臨床モデルにおいて実証されているとおり、腫瘍発達に対する防護およびさらには確立した腫瘍の根絶につながる。
【0003】
この効果の根底にあるのは、「4シグナル」コンセプトとしてまとめられてきた一連のユニークな生物学的特性である:(1)主要組織適合複合体(MHC)分子への極めて高い量の処理抗原の提示、(2)細胞表面上のT細胞共刺激分子の大きなアレイの上方制御、(3)T細胞応答の適切な分極を駆り立てるサイトカインの放出、および(4)引き出されたT細胞エフェクターの組織ホーミングパターンをプログラムする追加のシグナルの提供。抗腫瘍免疫の特定の文脈において、DCsは、DNGR-1などの特殊化された受容体という手段により死細胞を見つけることができ、これはMHC Iの交差提示および抗原特異的細胞傷害性T細胞のプライミングに至る。力強くかつ長続きする細胞傷害性T細胞応答の生成のためにはCD70の上方制御が必須であるが、T細胞共刺激分子CD40の高い発現は、CD4+およびCD8+ T細胞増大の大きさをブーストし、増強された腫瘍防護および耐性の免疫への変換を結果としてもたらす。対照的に、T細胞阻害受容体またはプログラム細胞死リガンド1(PD-L1)などのチェックポイントリガンドの発現は、DCs表面において最小限になるべきである。
【0004】
次に、満足な量の生理活性IL-12をT細胞接触の時に分泌する能力は、NK細胞エフェクター機能も支持しながら、最適な腫瘍コントロールのために必要な1型分極応答を駆り立てるのに必須である。加えて、DCによって放出されるケモカインのパターンは、どのタイプのT細胞がリクルートされるかを決定づけ、すなわち、抗腫瘍免疫の場合には1型分極エフェクターを、Tヘルパー(Th)2細胞(腫瘍支持の潜在性を持つ)または免疫抑制的な制御性T細胞(T-regs)よりも優先的に好む。
【0005】
この知識から、理想的なDCベースのがんワクチンは、これらの臨界的なパラメータの全ての最大限のコントロールおよび最適化を要することが明らかである。未熟なDCs(iDCs)はT細胞応答を刺激するのにほとんど無効であり、およびT細胞寛容を促進さえできるので、正しいDC活性化または成熟状態は、T細胞の結果を決定するのに必須である。
【0006】
それ故に、DC「消耗」の現象も回避しながら、完全に強力な成熟したDCsを生成するための強い活性化刺激を選択することにおいて、周到な考慮は当然必要である。
Toll様受容体(TLR)リガンドはDC成熟のための最も強いトリガーのうちであり、および、外来性(すなわち、病原体由来)または内在性(組織損傷または細胞死からの危険関連分子)のいずれかであり得る。この知識にもかかわらず、最も使用されている成熟戦略は、最初にJonuleit et al.により記載されたとおり、腫瘍壊死因子アルファ(TNF-α)、インターロイキン-1ベータ(IL-1β)、インターロイキン-6(IL-6)、およびプロスタグランジンE2(PGE2)を包含する炎症メディエーターの組み合わせに対して単球由来のDCsを曝露することからなる。PGE2を加えることの価値は、それがDCの収量、成熟、および遊走をさらに増加させることができるという観察にある(Jonuleit et al. 1997)。しかしながら、PGE2がDCsの生理活性IL-12p70を分泌する能力を損ない、およびTヘルパー細胞分極化をTh1よりむしろTh2の発達へとシフトするということもまた示されている(Kalinski et al. 1998)。
【0007】
その時以来、1型分極応答を誘導するDCsの能力を最大化するために数多くの代替的な戦略が探索されてきた。Mailliard et alは、炎症促進(pro-inflammatory)サイトカインTNF-α、IL-1β、IFN-γおよびインターフェロンアルファ(IFN-α)の存在下で、TLR3アゴニストのポリ(I:C)と一緒に、DCsを成熟させたプロトコルを開発した(US7972847;US8691570)。「標準的な」TNF-α、IL-1β、IL-6、およびPGE2で成熟させられたDCsと比較すると、これらのα-1型分極DCs(αDC1)は、より高いレベルのIL-12p70を生産し、および、メラノーマ関連抗原に対する長命の細胞溶解性T細胞(CTLs)のよりロバストな増大を誘導した(Maillard et al. 2004)。これらのαDC1細胞は、既に再発性悪性神経膠腫を持つ患者についての臨床試験に使用されているものの(Okada et al. 2011)、成熟「カクテル」の複雑性は、適正製造規範(GMP)を遵守した生産プロセスでの実施の観点から大きな難題を提起する。
【0008】
より単純な代替策には、TLR4リガンドをインターフェロンガンマ(IFN-γ)と組み合わせることが関与する。リポ多糖(LPS)は、IL-12などの免疫刺激性サイトカインの大規模な生産をトリガーする、DC成熟のための最も強い生得的な刺激の一つである。しかしながら、LPS刺激によるDCsは、その後in vivoでT細胞と同族相互作用に従事するとき、さらなるIL-12放出に対して不応性になる。この「消耗」現象は、DCsのIFN-γへの共曝露によってオフセットさせることができ、そこではT細胞接触または人工的CD40ライゲーションによりトリガーされた際のIL-12の「第2のバースト」の生産を可能にしている(Paustian et al. 2011)。依然として、LPSの使用は、その毒性と、GMP製剤化が存在しないことに起因して、大スケールの細胞療法応用については課題を生じさせる。LPSの派生物であるモノホスホリル脂質A(MPLA)は、しかしながら、免疫刺激特性を保存するものの有意に毒性レベルを減弱させるLPSの酸加水分解の結果として、臨床的使用が認可されている(Boccaccio et al. 1997)。MPLAは、現在の大量生産されるワクチンのアジュバント製剤の不可欠な成分である。
【0009】
MPLA/IFN-γ DCsおよびα-1型分極DCsの両方が、TNF-α、IL-1β、IL-6、およびPGE2で成熟させられたDCsと比較すると、IL-12p70、およびエフェクターT細胞を引き付けるケモカインの分泌の観点から同等に優れており、かつ、CD4+およびCD8+ T細胞プライミング能力の観点からも優れていることが報告されている(Hansen et al. 2013)。MPLA/IFN-γ DC成熟アプローチは、Ten Brinke et alのグループによってさらに探索されており、それによると、GM-CSFおよびIL-4の存在下で8日間培養された単球は、培養の最後の2日間の間に成熟ブーストを受けた。採取後、結果としてもたらされたDCsは、CCR7リガンドへ向かって遊走する能力を保ちながらも、高い細胞溶解活性を持った抗原特異的CD8+ T細胞のプライミングならびに新たな(de novo)Tヘルパー1分極化を誘導する能力を発揮した(Ten Brinke et al. 2007;WO2007/078196;ten Brinke et al. 2010)。このDC培養プロトコルは、このセッティングにおけるDC成熟および分化へのヒト血清の有害な影響を示すさらなる研究とともに、可能な臨床実施についてさらに調査されている(Kolanowski et al. 2014)。
【0010】
適したタイプの成熟刺激の次に、抗原負荷モダリティは、臨床応用可能性の重要な決定要因である。DCsの免疫原性ペプチドでの受動負荷は、上述した研究における機能試験のために典型的に使用されたとおり、考慮される各候補抗原に対する免疫優性エピトープの従前の知識を暗示し、および、適格患者のヒト白血球抗原(HLA)型の観点での特定的な制限を課す。未熟なDCsの高い抗原取り込み能力を有効利用した代替は、腫瘍溶解物とのインキュベーションである。しかしながら、これは満足な量の患者腫瘍材料を要求し、これもやはり、小さい生検または細胞学的試料だけしか通常入手可能でない転移性疾患における実現可能性を制限する。
【0011】
腫瘍抗原をコードする完全長mRNAでDCsを負荷することは、広域な考えられるエピトープの提示を誘導するための洗練されたやり方として今や広く認識されている。これはまた、DCの免疫力を最適化することができるRNAコンストラクトを共導入する機会をも与える(Van Lint et al. 2014)。これは、典型的に細胞のエレクトロポレーションによって達成され、このアプローチの裏側の面は、無視できない細胞の喪失のリスクになり、これによって、満足なワクチン用量を患者へ投与する可能性に支障を来たす(Tuyaerts et al. 2003; Ponsaerts et al. 2003; Bonehill et al. 2004)。
【0012】
ワクチン生産の面から見た重要な追加の側面は、細胞培養の継続時間である。単球由来のDCsについて、これは伝統的には7~8日間の範囲にあったところ、培地への新鮮な培地およびサイトカインの繰り返しの添加を暗示していた。これは、要求の厳しいGMP生産環境の文脈において、消費財ならびにオペレーター介入の観点から、増加したコストとへと転化する。複数のグループが、加速された培養プロトコルを使用して、単球から、完全に機能するDCsを分化させることができるということを実証した(Jarnjak-Jankovic et al. 2007; Dauer et al. 2003; Kvistborg et al. 2009; Massa et al. 2013; Truxova et al. 2014; EP2829600)。
最終的な実用的な考慮は、閉鎖系細胞培養を使用するという選択肢である:これは、GMP要件の観点から別の長所を成し、そして生産プロセスを市販の自動化された細胞培養デバイスへと置き換えることができる。
【発明の概要】
【0013】
これらの考慮を念頭に置いて、臨床グレードのDCに基づくがんワクチンの生産のためのプロセスを開発することが本発明のねらいであったところ、本明細書によって初めて、複数の主要な利点を一つの同じ生産方法に再統合させる:加速された培養時間、および、GMPに適合した1型分極させる成熟カクテルの長所を活かしての、mRNAエレクトロポレーションによる抗原負荷との組み合わせ。そのうえ、これは、GMP認定されているかまたは医薬グレードである成分の最大限の使用を伴う血清フリー条件において、GMPに準拠した培養バッグ中で閉鎖培養系を使用して達成することができるということが実証された。
【0014】
本発明に従う方法のパフォーマンスは、TNF-aおよびPGE2の組み合わせを用いて成熟させられた単球由来のDCsの広く確立された「標準的な」8日間培養と比較された。この成熟カクテルは当業者に周知であり、および、Jonuleit et alによって記載されたTNF-a、PGE2、IL-1bおよびIL-6を含む元々の古典的なモノ-DC成熟カクテルの単純化されたバージョンである。
【0015】
重要なことに、および数多くの以前の報告とは対照的に、また現実のワクチン接種のセッティングをそっくり模倣するために、本発明におけるエレクトロポレーションされたDCsを用いた全ての機能アッセイは、操作したての細胞を使用するよりもむしろ、凍結保存および解凍の後に行われた。
標準プロトコルと比較して、本発明の方法は、表現型としても機能的にもより優れたDCsのより高い収量をもたらす。驚くべきことに、我々は、本発明に従い生成されたDCs上では、古典的なプロトコルで得られたものと比較して強く低減されたT細胞抑制性チェックポイントリガンドPD-L1の発現を見出した。そのうえ、凍結保存されたアリコートの解凍後には古典的なDCs上では発現がさらに増加したが、本発明の方法を用いて得られた解凍されたDCのアリコートの場合は当てはまらなかった。これは、達成し得る限りこの免疫抑制性リガンドの発現を低くするべきところである患者へ実際に注射される細胞に関しては、決定的な観察結果である。
【0016】
本発明の概要
本発明は、成熟した、好ましくは自己の、臨床グレードの樹状細胞を閉鎖系(1以上の滅菌された接続部(sterile connections)を用いた培養など)において生成するためのin vitroの方法に関し、および、例としてがん患者の、ワクチン接種に好適である。1つの態様において、方法は、本質的に、臨床グレードのサイトカイン、好ましくはGM-CSFおよびIL-4、を使用した白血球アフェレーシスから得られた単球の分化による成熟した臨床グレードの樹状細胞の生成(例として閉鎖系における)を含み、これを成熟因子の組み合わせへの、好ましくは、臨床グレードのIFN-gとエンドトキシンの無毒化誘導体MPLAへの追加の曝露による、かくして得られたDCsのさらなる成熟と組み合わせている。
【0017】
約4日間以内の合計のin vitro培養時間(好ましくは約3日間~約5日間の範囲内の培養)で生産された/生成された成熟した樹状細胞を含む、得られた生産物は、後から、1以上の抗原、とりわけ腫瘍関連抗原(TAA)で負荷される。本発明に従うこの迅速法は白血球アフェレーシス産物から大きな数のDCを、好ましくは血清フリー培地を使用した閉鎖系において、生成することが可能である。
【0018】
1つの態様において、本発明に従う方法は、以下のステップを含む:
- 患者から単核細胞白血球アフェレーシス産物を得ること、
- 白血球アフェレーシスからの単球の単離、
- 臨床グレードのサイトカインとともに、好ましくは樹状細胞への分化のための好適な量のGM-CSFおよびIL-4とともに、単球をインキュベートすること、
- 単球由来の樹状細胞の最終的な成熟のための成熟因子MPLAおよびIFN-gの追加、および
- 得られた細胞を回収して、1または複数の抗原またはエピトープをコードする核酸配列、とりわけmRNAで、それらをトランスフェクトすること。
【0019】
1つの態様において、単球は、約1~4、好ましくは1~3、より好ましくは2~3日間(1日は24時間として数える)、GM-CSFおよびIL-4と接触させられ、その時間の間にDC前駆体が未熟な樹状細胞へと分化する。さらなる態様において、IFN-gおよびMPLAの存在下での成熟時間は、1~3、好ましくは1~2、より好ましくは約2日(24時間)かかる。培養条件は、成熟したDC集団を形成するための未熟なDCsの成熟に好適である。
【0020】
さらなる態様において、本発明は、本明細書中で提供される方法によって得られる、成熟した(およびトランスフェクトされた)樹状細胞または成熟した(およびトランスフェクトされた)樹状細胞の集団を提供する。
本発明はまた、本発明の方法によって得られた樹状細胞を含む、組成物、キット、臨床グレードのバッグまたはクライオバイアルも提供する。
【0021】
トランスフェクトされた樹状細胞は、免疫療法のための、とりわけ免疫療法におけるそれらの使用のための、さらにとりわけがんを処置することにおける、組成物を調製するために、殊のほか有用である。ゆえに、本発明はまた、本明細書中で提供される方法によって得られたトランスフェクトされた樹状細胞を対象へ投与することを含む、免疫療法のための方法、腫瘍治療、またはT細胞を活性化するための方法も提供する。
【0022】
図面の簡単な説明
図に特に関連して、示されている委細は一例であり、本発明の異なる態様の例証的な考察を目的とするということに注意すべきである。それらは、本発明の原理および概念的な側面の最も有用で容易な記載であると思われるものを提供するという理由で提示される。この点から、本発明の基本的な理解のために必要なものよりも詳細に本発明の構造的な詳細を示そうとはしていない。図面とともに取り上げた説明は、本発明の複数の形態がいかに実際に具体化され得るかを当業者にとって明らかにする。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1A-1C】図1.採取の際の4日間培養されたmoDCsの特性:(A)デブリを取り除いた後のCD11c HLA-DR DCsのフローサイトメトリーの純度;(B)サイトスピン調製およびMay-Grunwald Giemsa染色後の光学顕微鏡下での形態;(C)生存率、および単球のDCへの変換率(フローサイトメトリー)(n=33)(箱ひげ図は中央値および95%C.I.を示す);
図1D】(D)代表的なオープンヒストグラム(vs 灰色のバックグラウンド染色)、および、まとめた箱ひげ図(中央値および95%C.I.;n=33)、これは相対的MFIs(正の蛍光シグナルの幾何平均の、バックグラウンド蛍光に対する比率)(両方とも生CD11c HLA-DR DCsの範囲内でゲーティングしたもの)を示す、を包含する、表現型のおよび成熟のマーカーの細胞表面発現。
図2図2.4日(4-day)moDCsと8日(8-day)moDCsとの間で比較した採取時のDCプロファイル(n=10):(A)生存率および単球のDCへの変換率(フローサイトメトリー);(B)相対的MFIs(正の蛍光シグナルの幾何平均の、バックグラウンド蛍光に対する比率、生CD11c HLA-DR DCsの範囲内でゲーティングしたもの)として算出された、表現型のおよび成熟のマーカーの細胞表面発現の比較。統計:ウィルコクソンの対応した符号付き順位検定(Wilcoxon matched-pairs signed rank test)。
【0024】
図3図3.採取の際の4日(4-day)moDCにおける成熟プロファイルの誘導へのMPLA、IFN-γまたはその両方の相対寄与(n=3)。棒グラフとして示される、DC成熟マーカーの相対的MFIs。統計:クラスカル・ワリス(Kruskal-Wallis)をダンの多重比較検定(Dunn’s multiple comparisons test)と組み合わせた。
図4A図4.ナイーブTヘルパー分極化能の観点からの、4日(4-day)moDCsに対するMPLAおよびIFN-γのコンビナトリアル効果(2の異なるDCドナーおよび3の異なる同種異系T細胞ドナーでの反復実験からプールされたn=6~12のレプリケート)。(A)同種異系ナイーブTヘルパー細胞分極アッセイについての実験タイムラインの概略。
図4B-4C】(B)未成熟のまたは完全に成熟した同種異系DCsとの14日間の共培養後のCD4+ T細胞内の、CD4+ T細胞 IFN-γ/IL-10サイトカイン生産を示す代表的なドットプロット。(C)DCに媒介されるナイーブTヘルパー細胞分極化に対するMPLA、IFN-γまたは組み合わせの相対寄与:棒グラフは、それぞれ、IFN-γ、IL-10、IL-4、およびIL-17の細胞内発現を示すCD4+細胞の百分率を表す。
【0025】
図5図5.(A)ビヒクル(MOCK-EP)またはeGFP mRNA(1μg mRNA/10 DCs)のいずれかでEPした4日(4-day)moDCsの、エレクトロポレーション4時間後の生存CD11c HLA-DR DCsのeGFP発現レベルを示す、代表的なドットプロット。(B)生存CD11c HLA-DR DCsの百分率および相対的MFIとして描かれた、時間におけるeGFP発現レベルの強度。MOCK-EP DCsの幾何平均は、バックグラウンド染色としての役割を果たした。EPの4時間後(n=9)、解凍直後(n=9)およびサイトカインの不在下での24時間後(n=3)を包含する時点が、アッセイに包含された。(C)eGFP-mRNAでエレクトロポレーションされた後の4日(4-day)moDCsの生存率(トリパンブルー)および回収百分率(n=17)。回収率は、エレクトロポレーション後の生存DCs(トリパンブルー)の数をエレクトロポレーション前のもので除算したものとして算出した。(D)eGFP mRNAでのEP後の生存率(トリパンブルー)および回収率の、4日(4-day)および8日(8-day)moDCs間の比較(n=8)。(B~C)統計:クラスカル・ワリス(Kruskal-Wallis)をダンの多重比較検定(Dunn’s multiple comparisons test)と組み合わせた;(D)ウィルコクソンの対応した符号付き順位検定(Wilcoxon matched-pairs signed rank test)。
【0026】
図6A図6.(A)Luminexアッセイを使用して測定した、凍結保存された4日の(4-day)(n=5)および8日の(8-day)(n=2)eGFP mRNA-EP DCsの、サイトカインフリー培地中での24時間のインキュベーション期間後のサイトカインおよびケモカインセクレトーム。統計:独立t検定。
図6B-6C】(B)同種異系Tヘルパー細胞との共培養における凍結保存されたEP-DCsのタイムライン。(C)凍結保存および解凍後の、エレクトロポレーションされたDCsのT細胞分極化特性(薄い灰色のバー)。DCsなしの同種異系ナイーブCD4+ T細胞は、陰性対照としての役割を果たした(白いバー)(2の異なるDCドナーおよび1の同種異系T細胞ドナーでの反復実験からプールされたn=3~6のレプリケート)。データは、サイトカインを発現するCD4+ T細胞の百分率を示す。統計:マン・ホイットニー検定(Mann-Whitney test)。
【0027】
図7A図7.(A)HLA-A2-陽性ドナーからのMACS精製CD8+ T細胞を、示唆されたmRNAsでエレクトロポレーションされたかまたはMART-1からのAAAGIGILTV A2拘束性ペプチドを用いてパルスされた自己4d-moDCsで、2回刺激した。四量体陽性CD8+ T細胞の増大を示す代表的なドットプロット。全てのアッセイにおいて使用したDCsは、凍結保存されおよび解凍された。
図7B-7C】(B)異なるHLA-A2+ドナーならびにDCなしで、MOCKでパルスされたDCsで、eGFP-mRNA-EP DCsで、MART-1 mRNA-EP DCsでおよびMART-1ペプチドでパルスされたDCsで刺激されたCD8+ T細胞を使用して得られたデータの概要(2の異なるHLA-A2陽性ドナーでの反復実験からプールされたn=4~8のレプリケート)。(C)示唆されたDC条件で示唆されたMART-1特異的CD8+ T細胞における細胞内IFN-γおよびグランザイムBのレベル。(B-C)統計:クラスカル・ワリス(Kruskal-Wallis)とともにダンの多重比較検定(Dunn’s multiple comparisons test)。
【0028】
図8A図8.(A)HLA-A2+ドナーおよびモデル抗原としてのMART-1を使用した自己DC:CD8 T細胞の共培養に続く抗原特異的細胞毒性アッセイの外観。2回の週1回のラウンドの、自己4d-moDCでの刺激の後、細胞溶解性CD8+ T細胞を、T2標的細胞、無関係のペプチドでパルスされたT2標的細胞(インフルエンザペプチド)またはMART-1ペプチドでパルスされたT2標的細胞のいずれかとともに共培養した。DCの対応物は、陰性対照DCs(MOCKでパルスされたDCs(図示せず)およびeGFP mRNA-EP DCs)、MART-1 mRNA-EP DCsおよび陽性対照DCs(MART-1からのAAAGIGILTVペプチドを用いてパルスした(図示せず))を包含した。CD8+ T細胞の細胞溶解活性は、グランザイムBおよびIFN-γの分泌と組み合わせられた、脱顆粒マーカーCD107aおよび活性化マーカーCD137の同時の上方制御によって特徴づけられた。
図8B】(B)MART-1ペプチド負荷されたT2細胞との共培養後のCD107a/CD137発現を示す代表的なドットプロットでの、示唆されたDC条件で前に刺激されたCD8+ T細胞。
図8C】(C)前のDC刺激およびT2標的細胞のタイプに従った、自己CD8+ T細胞の細胞傷害性活性(CD107a/CD137発現)(2の異なるHLA-A2-陽性ドナーでの反復実験からプールされたn=4~8のレプリケート)。統計:二元配置ANOVAとテューキーの多重比較検定(Tukey’s multiple comparisons test)
【0029】
図9図9.異なる時点で決定したときの、8日の(8-day)TNF-α/PGE2/IL-1β/IL-6で成熟させられたmoDCsと8日の(8-day)TNF-α/PGE2で成熟させられたmoDCsとの間で比較したDC表現型(n=3)。関連がある場合はいつでも、時点「採取の際の」、「EPの4時間後」、「解凍直後」および「サイトカインの不在下での24時間後」がアッセイ中に包含される。(A)採取の際の単球のDCへの変換率(トリパンブルー);(B)時間における生存率(トリパンブルー);(C)相対的MFIs(正の蛍光シグナルの幾何平均の、バックグラウンド蛍光に対する比率、生CD11c HLA-DR DCsの範囲内でゲーティングしたもの)として算出された、時間における表現型のおよび成熟のマーカーの細胞表面発現の比較を、生CD11c HLA-DR 細胞の範囲内のeGFP+細胞の百分率、および相対的MFIとして描いたもの。バックグラウンド染色としての役割を果たしたMOCK-EP DCsの幾何平均。統計:棒グラフは95%C.I.を伴う中央値を表す。
【0030】
図10図10.4日(4-day)MPLA/IFN-γと「古典的な」moDCsとのプロトコル間で比較した、凍結保存前後のT細胞共阻害分子PD-L1の発現レベル。表面PD-L1発現のレベルは、相対的MFI(正の蛍光シグナルの幾何平均の、バックグラウンド蛍光に対する比率、生CD11c HLA-DR DCsの範囲内でゲーティングしたもの)として算出した。「採取の際の(n=2)(それぞれ4日目または8日目)」および「解凍直後の(n=4)」時点を、アッセイに包含した。両方のDC培養において、採取の際に各ドナーを、その後の凍結保存および解凍のために、2つのエレクトロポレーション条件(すなわち、eGFP mRNA-およびMART-1 mRNA-EP)にわたって分けた。
【0031】
図11図11.DC生存率を、エレクトロポレーション(または非エレクトロポレーション条件のためのさらなるインキュベーション)の4時間後、ならびに冷凍および解凍後に評価した。短期DC培養:3日間GM-CSF/IL-4;24時間MPLA(2.5μg/ml)およびIFN-γ(1000U/mL)。採取の際、DCsを以下のエレクトロポレーションのセッティングに分けた:・エレクトロポレーションなし(非EP);・指数パルス(EXP-EP):300V;150μF;200μl;∞Ω;+/- 5×10DCs/キュベット;・矩形波パルス(SQW-EP):500V;0,5ms;200μl;1パルス;+/- 5×10 DCs/キュベット。 eGFP mRNAは、0.5μg/10細胞で使用した。
【0032】
図12A図12.(A)生存率およびeGFP発現のフローサイトメトリー分析;
図12B】(B)生DCs(vs 冷凍前)の生存率および有効回収率について評価したときの、凍結保存されたアリコートの解凍後のDCsの安定性。単球由来の DCsを、2の別々のドナーの白血球アフェレーシスから生成させた。採取の際、以下のセッティングで矩形波パルスを使用して、DCsを0.5μg eGFP mRNA/10E細胞でエレクトロポレーションした:500V;1.0ms;200μl;1パルス;50×10 DCs/キュベット。
【0033】
図13-1】図13.単球由来の樹状細胞を、本発明に記載されたプロトコル(「MIDRIX DCs」)またはMassa et al., 2013に記載されたプロトコル(「Massa DCs」)のいずれかに従って生成した。DCsを、それぞれの時点で採取し、およびeGFPコードmRNAでエレクトロポレーションした。6の異なるドナーからのデータ。(A)両方のプロトコルで得られた生CD11c+ HLA-DR+ 樹状細胞の採取の際の生存率および絶対的な細胞収量。
図13-2】(B)単球マーカーCD14 vs DC分化マーカーCD83の発現。(C)DC成熟マーカーCD40、CD70、CD86およびCCR7の発現。
図13-3】(D)T細胞共阻害受容体PD-L1の発現。(E)エレクトロポレーションの4時間後に測定したときの、翻訳されたタンパク質のレベル(eGFPシグナル)ならびにエレクトロポレーションされたeGFP-mRNAの首尾よく成功した翻訳を伴う細胞の割合(eGFP+ DCsの百分率)として表された、エレクトロポレーション効率。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明の詳細な説明
これより本発明がさらに記載される。以下の文において、本発明の異なる側面が、より詳細に定義される。そのように定義される各側面は、明らかにそうでないことが示唆されていなければ、あらゆる他の側面(単数または複数)と組み合わせられてもよい。本明細書および添付の請求項中で使用されるとき、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈が明らかにそうでないことを決定づけていなければ、複数の指示物を包含するものとする。一例として、「化合物(単数)」は、1つの化合物または1つより多い化合物を意味する。本明細書の記載および請求項の全体を通して、単語「含む(comprise)」およびその単語の他の形、「含むこと(comprising)」および「含んでいる(comprises)」などは、包含するが限定されないことを意味し、また、例えば他の追加物、要素、整数、またはステップを除外することは意図しない。明細書中に使用した上記の用語およびその他は、当業者によく理解される。本明細書中に引用された、全ての参照文献、および具体的に言及された教示は、それらの全体が参照により本明細書中に組み込まれる。
【0035】
本発明樹状細胞ワクチンの、とりわけ、自己の単球性樹状細胞ワクチンの、製造に関する。とりわけ興味の対象となるのは、本発明の方法を臨床グレードの完全な閉鎖系を使用して行うことができるということである。ガス透過性の培養バッグまたは容器は、閉鎖流路培養系の長所をもたらし、それによって細胞懸濁液は滅菌された接続ポートを介して培養バッグへと加えられ得る。理想的には、全ての細胞収集が、および所望であれば事前選択が、閉鎖流路系の中で執り行われ、これは次いで、バッグの中への細胞の移動のためにガス透過性のバッグへ無菌的に接続される。培養培地は、次いで、滅菌された接続ポートおよび滅菌管系を介して、連続的にバッグを通して灌流されるかまたは定期的にリフレッシュされることができる。ガス透過性のバッグ内の細胞培養は、そうでなければ細胞が当初バッグまたは容器中へと導入されるとき、培地がリフレッシュされるとき、または新たな培地が加えられるときに培養中へと導入され得たかもしれない微生物などの、環境危険因子に晒されることなく、インキュベーターのガス制御された雰囲気中に維持されることができる。
【0036】
培養期間全体を通じて、培養された細胞の試料は、分析のために、バッグから滅菌接続されたポートを通じて無菌的に引き上げることができる。同様に、DC培養がすぐに採取できる状態になったとき、細胞を、閉鎖系洗浄および/またはさらなる処理(processing)のために、無菌的に引き上げることができる。閉鎖系は、加えて、空中浮遊粒子数の観点からより低いストリンジェントさを伴うクリーンルーム環境(例としてClass Cクリーンルーム環境)中で細胞培養を実行する可能性を開く。これは、オペレーターのための作業条件の観点から長所を有し、コストを減少させ、そして、細胞分化プロセスを市販の自動化された培養系(例としてCliniMACS Prodigy(登録商標)System, Miltenyi Biotec GmBH, Bergisch Gladbach, Germany)へと簡単に置き換えることができる可能性もまた与える。
【0037】
ゆえに、本明細書中で使用されるとき、用語「閉鎖系」は、その各々が周囲環境に対して閉鎖されており、かつその各々に要素間の効果的な滅菌接続のための手段が提供されている、要素のアセンブリを指す。1つの態様において、閉鎖系は、白血球アフェレーシス産物を、本明細書中で提供されるとおりの分化および成熟要素と一緒に含む。GMP認定されたガス透過性の培養バッグ系の例は、MACS(登録商標)GMP細胞培養バッグ(Miltenyi Biotec GmBH, Bergisch Gladbach, Germany)である。本明細書中で使用されるとき、「GMP認定された」は、適正製造規範(Good Manufacturing Practice)を意味し、および医薬品製造者がその生産プロセスにおいて満たさなければならない最低限の水準を記載している。欧州医薬品庁(EMA)は、例として、これらの標準への準拠を点検するための査察をコーディネートし、欧州連合(EU)レベルでのGMP活動を調和させることにおける主要な役割を担っている。
【0038】
1つの態様において、本発明の方法は、樹状細胞前駆体の集団を単離するおよび/または提供するステップを含む。典型的には、本明細書中で使用される「樹状細胞前駆体」は、(ヒト)末梢血単核球、単球または別の骨髄前駆細胞である。本明細書中で使用されるとき、「単球」は、樹状細胞へと分化する能力を有するCD14+単核白血球を指す。単球は、あらゆる哺乳動物からのものであり得るが、しかし好ましくはヒト単球である。単球は、血液、血液画分(例として、白血球(WBCs)、バフィーコート、末梢血単核球(PBMCs)、単核細胞白血球アフェレーシス産物などの、しかしそれらに限定されない、組成物中で、ならびに、単球がさらに富化された組成物中で、提供されおよびインキュベートされることができる。
【0039】
好ましい態様において、単球は、他の末梢血単核球(PBMCs)と一緒に、例えば、単核細胞アフェレーシス産物として、提供される。血液および骨髄を包含する様々な起源から、単球および従来の樹状細胞などの、樹状細胞前駆体が富化された細胞集団を単離するための方法は、当該技術分野において知られている。例えば、単球および従来の樹状細胞は、ヘパリン化血液を収集することにより、アフェレーシスもしくは白血球アフェレーシスにより、バフィーコートの調製により、ロゼット、遠心分離、密度勾配遠心分離、細胞の分別溶解(differential lysis)、ろ過、エルトリエーション、蛍光活性化細胞選別または免疫磁気単離により、単離することができる。好ましい態様において、単球は、単核細胞白血球アフェレーシスから単離される。
【0040】
白血球アフェレーシスの方法は、当該技術分野において知られている。白血球アフェレーシスは、それによって白血球が対象の血液から除去され、その残りが次いで対象へ再び輸血される、という手順である。白血球アフェレーシス産物は、典型的に、PBMCsが富化された血液画分であって、低いレベルの夾雑する赤血球、顆粒球および血小板を持つものである。白血球アフェレーシスを行うための方法および設備は、当該技術分野において周知である。単球性樹状細胞前駆体および/または分化した従来の樹状細胞は、健康な対象から、あるいは、例えばがん患者またはその他の対象であって細胞免疫刺激が有益もしくは望ましいといえる者(すなわち、細菌もしくはウイルス感染症を有する対象等)などの免疫刺激を必要とする対象から、単離することができる。樹状細胞前駆体および/または未熟な樹状細胞はまた、免疫刺激を必要とするHLA適合した患者への投与のためにHLA適合した健康な個人から得ることもできる。
【0041】
1つの態様において、単球は、分化ステップに先立って富化される。単球またはPBMCs等々に対して操作が行われ得、および、例として遠心分離、エルトリエーション、接線流ろ過、Ficoll密度勾配、希釈Ficoll密度勾配遠心分離、希釈Percoll密度勾配遠心分離、抗体パンニング、磁気細胞ソーティング、ポジティブもしくはネガティブ免疫磁気セレクション等を包含する。加えて、ひとたび対象から単離されると、単球(例として、精製された単球、富化された単球、単球を含むPBMCs、等々)は任意に、例として1℃~34℃で、ある期間、例としてそれらが対象から単離されてからおよそ1~96時間、インキュベートされることができる。
具体的な態様において、単球前駆体は、免疫磁気単離により白血球アフェレーシスから得られる。さらにいっそう具体的には、生存単球DC前駆体の集団は高度に精製され、例として、単球マーカーCD14および生存判別染色を使用してフローサイトメトリーにより決定したとき、90%よりも、95%よりも、またはさらには99%よりも純粋である。
【0042】
ゆえに、本明細書中で開示された方法の第1のステップは、単離された(自己の)単球性DC前駆体を、とりわけ本明細書中で提供されるとおりの閉鎖系を使用して、提供することを含む。典型的には、細胞培養の開始の際の培養バッグまたは容器中のDC前駆細胞密度は、当該技術分野において知られている方法によって決定したとき、0.5×10から2×10までの細胞/ml、好ましくは約1×10細胞/mlの範囲にわたる。
【0043】
単離、精製および/または富化に続いて、DC前駆体は、樹状細胞への分化に誘導される。ゆえに、さらなる態様において、本発明の方法は、少なくとも顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)およびインターロイキン-4(IL-4)の存在下(分化培地と呼ばれる)での前駆体細胞の培養などの、未熟なDCsを得るための培養および/または分化ステップを含み、および、これは約48~96時間、より具体的には48~84時間、さらにいっそう具体的には80、75、74、73、72、71、70時間までまたはそれ以下、より具体的には少なくとも48時間かつ72時間までである。+/-4時間または+/-2時間の差は許容し得、および実用的制約の観点から必然たり得る。特定の態様において、単離されたDC前駆体は、閉鎖系を介して、(血清フリーの)分化培地の入ったガス透過性の培養バッグへと移される。
【0044】
GM-CSFおよびIL-4は、約100U/mlから5000U/mlまでの各サイトカインの濃度で、好ましくは500U/mlから2500U/mlまで、より好ましくは500U/mlから1500U/mlまで、または約500~1000U/mlで使用することができる。とりわけ、GM-CSFは、500U/mlと2500U/mlとの間の濃度で、好ましくは1000U/mlと1500U/mlとの間、およびより好ましくは約1000U/mlで使用することができる。より具体的には、IL-4は、500U/mlから2500U/mlまでの濃度で、好ましくは500U/mlから1500U/mlまで、より好ましくは500U/mlから1000U/mlまで、およびさらにいっそう好ましくは約500U/mlで使用することができる。
【0045】
未熟な樹状細胞への単球の分化に続いて、未熟な樹状細胞は、成熟した樹状細胞へと成熟することができる。ゆえに、1つの態様において、本発明の方法は、(分化した)未熟なDCsにインターフェロンガンマ(IFN-g)およびモノホスホリルリピドA(MPLA)(成熟刺激またはカクテルと呼ぶ)を加えるなどの成熟ステップを含み、およびこれは、少なくとも30時間まで、好ましくは少なくとも24時間までである。とりわけ、成熟刺激IFN-gおよびMPLAは、採取および/またはトランスフェクション前の細胞培養の最後の24時間 +/-4時間、とりわけ+/-2時間、培地へと加えられる。
【0046】
IFN-gは、500U/mlから2000U/mlまでの濃度で、好ましくは500U/mlから1500U/mlまで、さらにいっそう好ましくは500U/mlから1000U/mlまで、および具体的な態様において、約1000U/mlで使用される。MPLAは、1μg/mlと20μg/mlとの間の濃度で、より具体的には1μg/mlと10μg/mlとの間、さらにいっそう具体的には1μg/mlと5μg/mlとの間で使用される。具体的な態様において、MPLAは、約2.5μg/mlの濃度で使用される。さらなる態様において、IFN-gは、医薬グレードまたはGMP認定された組換えヒトIFN-gである。本明細書中で使用されるとき、「医薬グレード」化合物は、あらゆる活性なまたは不活性な薬物、バイオ医薬品または試薬であって、認められている国もしくは地域の薬局方によってそれについての科学的純度基準(chemical purity standard)が確立されているものを指す。
【0047】
ゆえに、本発明に従うと、前駆体および/または未熟な樹状細胞は、(少なくとも)上記の因子の組み合わせ、すなわち、分化および/または成熟因子とともに、栽培される。これは、培養培地に因子を加えることによって行うことができる。代替的に、前駆細胞および/または未熟な樹状細胞が中で育てられていた培養培地は、因子を既に含有する培地によって置き換えられる。
【0048】
さらなる態様において、上述した物質は、該細胞の培養培地に加えられるか、またはそれに加えられる組成物の一部であり得る。該培養培地は、あらゆる好適な種類のものであってよく、すなわち、例としてタンパク質、アミノ酸、または抗生物質のようなあらゆる他の添加物が添加されていてもいなくてもよい。具体的な態様において、培地は、GMP条件下で生産され、および使用される。さらにいっそう具体的には、培養培地は、例として血清フリーGMP CellGro(登録商標)(CG)培地(CellGenix GmBH, Freiburg, Germany)などの、血清フリーのものである。完全な閉鎖系の態様において、前駆細胞は、本明細書中で提供されるとおりのDC分化培地を含有する培養バッグへと移されることができる。第2のステップで、およびおよそ48時間(プラスまたはマイナス4時間)後に、成熟刺激IFN-gおよびMPLAが、培養バッグ中の培地および細胞に加えられる。
【0049】
本発明のねらいは、そのうえ、核酸にコードされた腫瘍抗原の効率的な提示と組み合わせた、強いTh1分極能を持つ臨床グレードの樹状細胞(DCs)の生産のための「加速された」in vitro細胞分化法を提供することである。典型的に、本発明のDC培養プロトコルは、8日間の「標準的な」プロトコルに代えて、約4日に限られる。
異なるドナーの範囲にわたって評価したとき、DC生存率および単球のDCへの変換率の両方が、本発明の方法では標準的なプロトコルと比較して有意により高い(例として、変換率に関して:本発明の方法:約45%、標準法:約25%)。
【0050】
表現型の上では、本明細書中で提供される方法によって得られた細胞は、以下を包含する、樹状細胞の基本的な特性を見せる:
- 光学顕微鏡によって評価したときの典型的な樹状細胞形態
- DC分化マーカーCD11c、MHCクラスII(HLA-DR)およびCD83の均一な発現
- 単球マーカーCD14の均一な下方制御。
【0051】
DCsの成熟状態の観点から、これは、特定の細胞表面マーカーの発現を、その中でもT細胞共刺激分子を、好ましくはフローサイトメトリー分析によって、測定することによって分析される。その場合において、発現レベルは、一般的に知られている方法によって決定したとき、平均蛍光強度(MFIs)(正の蛍光シグナルの幾何平均の、バックグラウンド蛍光に対する比率)として与えられる。T細胞共刺激分子は、典型的に成熟マーカーとして評価され、それについてのDCsの表面上での発現は可能な限り高くあるべきである。反対に、最終DC産物上でT細胞共阻害分子の発現を可能な限り低く維持するように努力がなされている。
【0052】
本発明の方法に従い得られたDCsは以下を実証する:
- T細胞共刺激分子(CD40、CD70、CD86)の均一な上方制御、および
- リンパ組織ホーミングケモカイン受容体CCR7の均一な発現。
CD40、CD70およびCCR7のレベルの中央値は、「古典的な」プロトコルを使用して生成されたDCsが見せるそれらと比較して、統計的有意性を伴ってより高い(両側(two-tailed)p値<0.05)。
本発明の1つの態様において、本明細書中で生成されるDCs上の細胞表面マーカー発現レベルは、PGE2およびTNF-αを成熟刺激として使用してそれによって成熟した樹状細胞が8日後に得られる「古典的な」方法を使用して生成されたDCsのそれと比較される。
【0053】
例えば、T細胞共阻害性リガンドPD-L1については、平均蛍光強度(relMFI)によって表した細胞表面レベルは(使用した分析方法の記載については、「例」の下の材料および方法のセクションを参照のこと)、400、350、320、310、300、250、200未満、とりわけ150未満である。加えて、本発明の方法に従い生産されたDCs上では、エレクトロポレーション、凍結保存および細胞解凍後(すなわち、患者への投与の時の産物の代表となるもの)の表面PD-L1発現は、500、470、450未満、とりわけ400未満である。
【0054】
ゆえに、細胞採取の時(DC成熟の直後)、本発明の方法に従い生成されたDCsによるPD-L1の発現レベルは、PGE2およびTNF-aを成熟刺激として使用してそれによって8日後に成熟した樹状細胞が得られる「古典的な」方法を使用して生成されたDCsによる発現よりも、少なくとも3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍およびとりわけ少なくとも10倍、低い(「例」の図10を参照のこと)。
ゆえに、細胞解凍の時、本発明の方法に従い生成されたDCsによるPD-L1の発現レベルは、PGE2およびTNF-aを成熟刺激として使用してそれによって8日後に成熟した樹状細胞が得られる「古典的な」方法を使用して生成されたDCsによる発現よりも、少なくとも4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍およびとりわけ少なくとも10倍、低い(「例」の図10を参照のこと)。
【0055】
機能的には、凍結保存および解凍の後、長期化されたサイトカインフリー培地中のインキュベーションの間に、細胞は、1型分極サイトカイン(IL-12、IFN-g)ならびに、Th1、CD8およびNK細胞を誘引するケモカインを分泌する能力を保存する。とりわけ本発明の方法に従い生産されたDCsは、上述の「古典的な」方法で得られたDCsと比較して、統計的に有意により高いレベルのCXCR3リガンドCXCL9(MIG30)およびCXCL10(IP-10)、ならびにCCR5リガンドCCL3(MIP-1α)、CCL4(MIP-1β)およびCCL5(RANTES)、および、検出不能なほど低いレベルのCCL17を、分泌する。1つの態様において、サイトカインまたはケモカインの分泌レベルは、相対的な観点から、すなわち、PGE2およびTNF-aを成熟刺激として使用してそれによって8日後に成熟した樹状細胞が得られる「古典的な」方法を使用して生成されたDCsによるサイトカインまたはケモカインそれぞれの分泌レベルと比較したときのもので、表される。分泌レベルは、標準的なタンパク質測定法、例としてELISAまたは本明細書中で提供されたLuminex(登録商標)法を使用することによって決定することができる。
【0056】
例えば、原型的な1型T細胞分極およびNK細胞支持ケモカインIL-12については、解凍および上述の条件でのさらなる培養後に樹状細胞上清中に放出されるレベルの範囲は、以下である:
・本発明の方法に従い生産されたDCsについて:50pg/mlから250pg/mlまで;とりわけ60~200pg/ml;さらにいうととりわけ70~150pg/ml;
・「標準的な」8日間プロトコルに従い生産されたDCsについて:0~35pg/mlであるが、50pg/ml未満。
【0057】
ケモカインCXCL10(1型分極T細胞およびNK細胞をリクルートするのに重要)については、解凍および上述の条件でのさらなる培養後に樹状細胞上清中に放出されるレベルの範囲は、以下である:
・本発明の方法に従い生産されたDCsについて:200pg/mlから2000pg/ml;とりわけ250~1800pg/ml;さらにいうととりわけ280~1600pg/ml;
・「標準的な」8日間プロトコルに従い生産されたDCsについて:0~5pg/mlであるが、10pg/ml未満。
【0058】
ゆえに、CXCL10については、本発明の方法に従い生成されたDCsによる分泌レベルは、「古典的な」方法を使用して生成されたDCsによる分泌よりも少なくとも50倍高い。本発明の方法を用いて得られたDCsの、類似の優位性が、抗がん免疫に要求されるとおりの1型分極炎症性応答を促進する追加のサイトカインおよびケモカイン、その中でもIFN-g、CCL3、CCL4、CCL5およびCXCL9で観察される。
【0059】
それに対して、ケモカインCCL17(制御性T細胞および2型分極T細胞(両方とも抗がん免疫応答に有害である)のリクルートに関与する)については、本発明の方法に従い生成されたDCsによる放出は、「古典的な」方法を使用して精製したDCsによる分泌よりも少なくとも3倍低い。
【0060】
したがって、本発明の方法を用いて得られたDCsは、例として能動的がん免疫療法のために要求されるような高いIFN-γ分泌によって特徴づけられる1型分極プロファイルへのナイーブTヘルパー細胞の分化を駆り立てる。 そのうえ、該細胞は、トランスフェクトされたRNAに由来する免疫原性のエピトープを提示することができ、およびその後、既に言及したとおりのIFN-γおよび細胞傷害性分子グランザイムBを発現する、自己の、腫瘍抗原特異的なCD8+ T細胞の、増大を駆り立てることができる。
【0061】
さらなる態様において、本発明の方法は、核酸、とりわけRNA、さらにいうととりわけmRNAをコードする抗原で、成熟DCsを負荷するかまたはトランスフェクトすることを含む。本明細書中で使用されるとき、「抗原」は、本発明に限定するものではない。1つの態様において、抗原は、腫瘍抗原、腫瘍関連抗原、がん-精巣抗原、ミュータノーム(mutanome)由来抗原、(発がん性の)ウイルス抗原、細菌抗原、酵母抗原、寄生虫抗原および真菌抗原からなる群から選択される。抗原は対象に対して自己由来とすることができ、および、対象への投与のために抗原を負荷された自己DCワクチンを調製することに使用することができる。対象に対して自己由来であるということは、その抗原(またはその配列)が同じ対象から得られたかまたはそれに由来するという意味である。
【0062】
非限定例として、抗原は、対象から得られたがん細胞または腫瘍組織からのものであり得る。がん抗原は、抽出物中に存在するか、精製されたか、増幅されたか、in vitroで翻訳された等何であれ、がん細胞、がん細胞もしくは組織の溶解物、がん細胞もしくは組織からの抽出物、がん細胞もしくは組織の精製またはクローン化された要素、トータルRNAもしくはトータルmRNA、またはかかる細胞もしくは組織からの選択されたRNAもしくはmRNA、として樹状細胞中へと負荷される可能性がある。代替的に、抗原は、病原体からもしくは対象中に存在する病原体感染細胞から、得られるかまたはこれに由来し得る。
【0063】
用語「核酸」は、一本鎖、二本鎖、および三重のらせん分子、遺伝子または遺伝子フラグメント、エキソン、イントロン、mRNA、tRNA、rRNA、リボザイム、cDNA、組換えポリヌクレオチド、分枝鎖ポリヌクレオチド、プラスミド、ベクター、あらゆる配列の単離されたDNA、あらゆる配列の単離されたRNA、核酸プローブ、およびプライマーを指す。より具体的には、樹状細胞は、1以上の抗原コードmRNAでトランスフェクトされている。任意に、および代替的な態様において、成熟期間が完了した後、DCsは、(例としてトランスフェクションなどの)さらなる取り扱いの前に最初に採取され得、それによって細胞が収集され、遠心分離されおよび/またはサイトカインが洗い出される。
加速された培養プロトコルから考えて、成熟DCsのトランスフェクションは、単球の単離または前駆体DCsへの分化刺激の付加の後、約72~96時間で、とりわけ86時間+/-4時間で、可能である。
【0064】
本発明の文脈において、トランスフェクションの方法は、これらに限定されないが、エレクトロポレーション、フォトポレーション、リポフェクショnクション、ウイルスベクター系、裸の核酸のインキュベーション、または、感染細胞もしくは腫瘍細胞とのDCsの融合を包含する。これらの標準法は、当該技術分野において周知でありかつ実行可能であり、および、抗原コードプラスミド、それらのRNAまたはDNAなどの核酸をDCs中へと導入する。あらゆる種類の抗原源として使用するための膜フラグメントまたはエキソソームなどの想定され得る元々のMHC分子との他の抗原性組み合わせもまたあるかも知れない。特定の態様において、成熟DCsは、エレクトロポレーションによってトランスフェクトされる。指数減衰パルス(Exponential Decay Pulse)、矩形波パルス(Square Wave Pulse)および時定数(Time Constant)などの3つの異なる型のパルスを、エレクトロポレーションのために使用することができる。本発明の具体的な態様において、エレクトロポレーションは、矩形波パルスからなる。トランスフェクションを完了させるために、典型的には1または2のパルスが誘導される。
【0065】
本発明の1つの態様において、抗原は、樹状細胞のエレクトロポレーションによって、核酸で、好ましくはmRNAで付加される。好ましくは、樹状細胞は、樹状細胞10E個あたりおよそ0.25~4μgのRNAで、最も好ましくは樹状細胞10E個あたり約1~3μgのRNAで、トランスフェクトされる。1つの態様において、百万のDCにつき1~2μgの抗原RNAが、トランスフェクションにつき使用される。
【0066】
本明細書中では、本発明の方法によって得られた細胞が、トランスフェクトされたmRNAに由来するタンパク質を均一にかつ安定して発現するということが実証された(「例」を参照のこと)。そのうえ、該細胞は、例として能動的がん免疫療法のために要求されるとおり、トランスフェクトされたmRNAに由来する免疫原性エピトープを提示すること、およびその後、自己由来の、細胞傷害性プロファイルを持つ腫瘍抗原特異的CD8+ T細胞の増大を駆り立てることができる。
【0067】
本発明の文脈において、本明細書中で提供されたとおりの未熟な樹状細胞の、短縮されたインキュベーション時間下での、例としておよそ3日間以内での刺激は、8日間の「古典的な」プロトコルによって調製されたmDCsと比較して、改善された生存率、機能性および/または免疫刺激作用を持つ成熟した樹状細胞の生成を、結果としてもたらすということが見出された。本明細書中で使用されるとき、用語「免疫刺激作用」は、満足な量の特定のサイトカインおよびケモカイン、とりわけIL-12およびCXCL10を、生産および/または分泌する、成熟した樹状細胞のまたは成熟した樹状細胞の集団の性能を指し、これは、例としてがんおよび特定の病原体に対する免疫のために要求されるとおり、1型分極エフェクターT細胞およびNK細胞の正しい分化および動員を媒介する。
【0068】
本発明の1つの態様において、負荷された/トランスフェクトされた樹状細胞は、凍結保護剤を含む組成物中において冷凍することができる。DCsを冷凍するための多数の凍結保護剤および方法が当業者に知られている。一例として、樹状細胞は、制御された速度の冷凍庫を使用して冷却され、および、凍結保存および貯蔵のために液体窒素容器の気相中に移される。とりわけ、樹状細胞は、100μLの体積アリコート中に、20~70×10生細胞/mL、より具体的には約40~60×10生細胞/mL、さらにいっそう具体的には約50×10生細胞/mLの濃度で、好適な凍結保存培地中に再懸濁される。さらなるステップにおいて、解凍された樹状細胞ワクチンは、一般的に解凍後4時間までは、すぐに対象へ投与されることができる状態である。
1つの態様において、本発明は、凍結保存された、成熟したトランスフェクトされた、とりわけエレクトロポレーションされた、本明細書中で提供されたとおりのDCsを、とりわけ、凍結保存に先立って測定すると100μLあたり約5×10細胞の量で含む、クライオバイアルを提供する。
【0069】
本発明はさらに、本明細書中で提供された方法に従い調製した凍結保存された生きた樹状細胞を解凍すること、およびそれを対象へ投与することを含む、抗原負荷樹状細胞ワクチンの投与のための方法を提供する。
本発明は、本明細書中で開示した方法によって得られた抗原負荷樹状細胞の、医薬としての、とりわけ医薬または医薬組成物の調製のための使用もまた提供する。本発明は、免疫療法における使用のための、とりわけがんまたは病原体感染の処置または予防のための、本明細書中で記載したとおりのDCsまたは組成物を提供する。
【0070】
さらなる側面において、本発明は、本発明に従う成熟した樹状細胞および薬学的に許容し得る担体および/または賦形剤を含む医薬組成物を網羅する。さらにまた、本発明は、悪性疾患(がん)、特定の良性疾患(例としてLAM肺疾患(リンパ脈管筋腫症)、および感染性疾患(例としてウイルス、細菌、細胞内細菌または真菌によって誘発されるからなる群から選択される疾患を処置する方法における使用のための、本発明の成熟した樹状細胞にもまたは成熟した樹状細胞の集団にも関する。さらにまた、本発明は、腫瘍性疾患(がんなど)または感染性疾患を持つ患者を処置するための、有効量の本発明の成熟した樹状細胞を該患者へ投与する、方法にも関する。
【0071】
本発明の抗原負荷樹状細胞は、疾患の処置または予防におけるワクチンとして、またはT細胞の活性化のために、有用である。例えば、抗原負荷樹状細胞は、抗原に対する免疫応答を引き出すために使用されることができる。それらは、病原体感染またはがんなどの、しかしそれらに限定されない、将来の感染または疾患を予防するための(「予防ワクチン接種」)、または、進行中の疾患を処置するための免疫系を活性化させるための(「治療ワクチン接種」)、ワクチンとして使用され得る。本明細書中において調製されるとおりの抗原負荷樹状細胞は、生理学的緩衝液または他の注射可能な液体などの好適な担体とともにワクチンまたは医薬組成物としての使用のために製剤化され得る。ワクチンまたは医薬組成物は、免疫応答を引き出すのに満足な治療有効量で投与される。
【0072】
本明細書中で使用されるとおりの用語「処置(treatment)」および「処置すること(treating)」は、一般的には、所望の薬理学的および/または生理学的効果を得ることを意味し、および、哺乳動物、特にヒトにおける疾患のあらゆる処置をカバーし、これは以下を包含する:
(1)疾患または症状にかかりやすい可能性があるが未だそれを有すると診断されていない対象において、疾患または症状が起きることを予防すること;
(2)疾患の症状を阻害する、すなわちその発症を停止させること;または
(3)疾患の症状を緩和する、すなわち疾患または症状の退縮を起こさせること。
【0073】
効果は、完全にもしくは部分的にその疾患または症状を予防するという観点から予防的であり得、および/または、疾患および/もしくは疾患に起因し得る悪影響の部分的なもしくは完全な安定化もしくは治癒という観点から治療的であり得る。加えて、ワクチンは、治癒的なセッティングにおいてその有効性を最大化させるために一次もしくは初期療法に加えて与えられる「アジュバント療法」として、または疾患の制御を最大限にしおよび疾患の再発を遅延させるために、初期療法に続く「維持」もしくは「地固め」療法として、使用されることができる。
【0074】
本発明の文脈において、用語「がん」は、悪性腫瘍によって誘発されるあらゆる疾患を指す。本明細書中で使用される、用語「感染性疾患」は、病原性ウイルス、病原性細菌、真菌、原生動物、または多細胞寄生虫、を包含する病原性微生物因子から結果としてもたらされる、あらゆる臨床的に明白な疾患を指す。
【0075】
樹状細胞ワクチンを製剤化するための方法は、当業者に知られている。投与のための好適な製剤は、抗酸化物質、緩衝剤、静菌薬を含有することができる水性等張滅菌注射溶媒、および、製剤を意図されるレシピエントの血液と等張にする溶質、および、懸濁剤を包含することができる水性および非水性の滅菌された懸濁液、可溶化剤、増粘剤、安定剤、防腐剤、免疫刺激物質、サイトカインおよびアジュバントを、包含することができる。
【0076】
樹状細胞組成物/ワクチンは、注射(例として、皮下、皮内、静脈内、リンパ内、関節内、筋肉内、腹腔内)、持続注入によるもの、インプラント等々からの持続放出などの、しかしそれらに限定されない、様々な方法によって投与されることができる。DCワクチンは、特定の間隔で投与されることができる。1つの態様において、DCsは、2~4週間間隔で、とりわけ2週間間隔で、投与される。樹状細胞ワクチンは、生理的に許容し得る担体、緩衝液、希釈剤、アジュバント、免疫調節剤、等々、とともに投与されることができる。好ましくは、樹状細胞ワクチンは、それが投与される患者にとって自己由来であるか、または最大限にHLA適合している。
【0077】
対象へ投与される細胞の用量は、所望の有益な治療反応を対象において経時的に達成するのに、またはがん細胞の成長を阻害するのに、または感染を阻害するのに有効であり、一方で良好な認容性プロファイル(最小毒性)を維持する、有効量である。これを成し遂げるのに十分適正な量は、「治療有効量」として定義される。用量は、生じる樹状細胞の生物学上および/または臨床上の活性、および任意に患者の状態により、決定されることになる。用量の大きさはまた、具体的な患者における具体的な細胞の投与に付随するあらゆる良くない副作用の存在、性質、および程度によっても決定される。
【0078】
がん(例として、転移性メラノーマ、前立腺癌、等々)などの疾患の処置または予防において投与する細胞の有効量を決定することにおいて、医師(または治験責任医師)は、ワクチンに包含される標的に対する免疫応答を評価すること(すなわち、免疫モニタリング)を、測定可能パラメータ(標準もしくは免疫関連RECIST判定基準による放射線学的腫瘍量、腫瘍マーカー、循環腫瘍細胞、血漿循環腫瘍DNAまたはその他の疾患負荷もしくは疾患活性の代理マーカー)の臨床評価とともに行っていく必要がある。
【0079】
生物学上および/または臨床上の効果の特定のレベルを達成するために投与するDCsの好ましい用量についての根拠はないことが、当業者に周知である。同様に、明らかな用量規定毒性(DLT)は観察されておらず、およびしたがって、最大耐量(MTD)は観察されていない。最もごく一般的に投与される用量は、白血球アフェレーシスの1ラウンドから得られたDCsの収量および所望の数のその後のワクチン接種によって決定づけられる。1つの態様において、用量は、ワクチン接種ラウンドあたり5~100×10 DCsの範囲内にあり、2~8回、とりわけ2~6回、さらにいうととりわけ2~4回反復される。同様に、注射された細胞の数と毒性との間には関係がない。DCワクチン接種での毒性は通常低く、およびむしろ投与のルート(静脈内ルートでは皮内ルートと比較するとより深刻な副作用)に結びついている。注射は、1、2または3週間の間隔で2、3、4、5または6回反復されてもよく、および、静脈内に、またはリンパ節付近で皮内もしくは皮下注射によって、またはリンパ節中へと直接注射されて、与えられるべきである。ブースター注射は、例として1~数か月、間を置いてから行われる。
【0080】
本発明のDCsまたは活性化したT細胞による処置のために、生物学的応答調節物質が任意に加えられる。例えば、細胞は任意に、アジュバント、またはGM-CSF、IL-12、IFN-αもしくはIL-2などのサイトカインを投与される。
本明細書中に記載された特徴の全て(あらゆる付随する請求項、要約および図面を包含する)および/またはそのように開示されたあらゆる方法またはプロセスの全てのステップは、上記側面のいずれかと、いずれの組み合わせで組み合わせられてもよい(かかる特徴および/またはステップの少なくとも一部が相互排他的である組み合わせを除く)。
【0081】
本発明を、以下の図面、表および例によりさらに記載するが、これらは請求項において定義されるとおりの保護の範囲を限定することは意図しない。例において記載される方法および実験は、匿名ドナーのバフィーコートを出発材料として使用した前臨床開発に主に関する。
【0082】

材料および方法
単球由来の樹状細胞の培養
バフィーコートを、地元の輸血センターから得て、および、末梢血単核球(PBMCs)を、Ficoll-paque密度勾配遠心分離(GE Healthcare Life Science, Chicago, Illinois, USA)により単離した。ヒト抗CD14免疫磁気マイクロビーズ(Miltenyi Biotec, Bergisch Gladbach, Germany)を製造者のプロトコルに従って使用して、単球を免疫磁気的(immunomagnetically)に精製した。フローサイトメトリーによって分析されたとおり、>90%の純度が一貫して得られた(データは図示せず)。
【0083】
単球が枯渇した画分(末梢血リンパ球(PBLs))を、10%ウシ胎仔血清(FBS)(Sigma-Aldrich, Missouri, USA)、100U/mlペニシリン/ストレプトマイシン(P/S)(Gibco by Life Technologies, California, USA)および10%ジメチルスルホキシド(DMSO)(Sigma-Aldrich, Missouri, USA)を伴うRPMI-GlutaMAX培地(Invitrogen by Life Technologies, California, USA)中で冷凍した。
【0084】
我々の加速された(すなわち、4日間の)DC培養プロトコルのために、単球を、30ml GMP細胞分化バッグ(Miltenyi Biotec, Bergisch Gladbach, Germany)中で、1000U/ml 医薬グレード顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)(Leukine (Berlex), Bayer HealthCare Pharmaceuticals, New Jersey, USA)、1000U/ml GMP認定された組換えヒトインターロイキン-4(huIL-4)(Miltenyi Biotec, Bergisch Gladbach, Germany)および100U/ml P/S(Gibco by Life Technologies, California, USA)を含有する血清フリーGMP CellGro(CG)培地(CellGenix GmBH, Freiburg, Germany)中で2×10 細胞/mlの密度で培養した。3日目に、2.5μg/ml 合成MPLA(Invivogen, California, USA)および1000U/ml 医薬グレードIFN-γ(Immukine, Boehringer Ingelheim BV, Ingelheim, Germany)を、もう24h、培養培地に加えた。成熟DCs(mDCs)を4日目に採取した。
【0085】
「古典的な」(8日間の)プロトコルのために、単球をポリスチレン培養フラスコ(Nunc by Thermo Fisher Scientific, Massachusetts, USA)中で、より低い濃度の組換えhuIL-4(250U/ml;Miltenyi Biotec, Bergisch Gladbach, Germany)、および1%のプールされたヒトAB血清(huAB血清)(Sigma-Aldrich, Missouri, USA)の追加を除いて同じ完全培地中で、1×10の密度で培養した。3日目または4日目に、新鮮なGM-CSF-およびIL-4-含有培養培地を加えた。6日目に、20ng/ml 組換えヒトTNF-α(Miltenyi Biotec, Bergisch Gladbach, Germany)および2.5μg/ml 医薬グレードPGE2(Prostin E2, Pfizer, New York, USA)を、追加の48h、培養培地に加えた。成熟DCsを8日目に採取した。
【0086】
DC表現型分析
表面染色のために、細胞を最初に洗浄し、および次いでリン酸緩衝生理食塩水(PBS)(Invitrogen by Life Technologies, California, USA)中に再懸濁させることを、FcR-ブロッキング試薬(Miltenyi Biotec, Bergisch Gladbach, Germany)および死細胞を染色するための固定可能な生存判別色素eFluor 506(eBioscience by Thermo Fisher Scientific, Massachusetts, USA)の組み合わせを用いた4℃での20分間のインキュベーションに先立って行った。
【0087】
次に、細胞を、0.5mM エチレンジアミン四酢酸(EDTA);0.25%ウシ血清アルブミン(BSA);および0.05% NaN3(全てSigma-Aldrich, Missouri, USAからのもの)を添加したPBS(Invitrogen by Life Technologies, California, USA)からなるFACS緩衝液で洗浄することを、4℃で30分間表面抗体(Abs)を加える前に行った。以下の蛍光色素コンジュゲートモノクローナルAbsを使用した:抗CD40 FITC;抗HLA-ABC FITC;抗CCR7 APC;抗CD11c Alexa Fluor 700;抗HLA-DR APC-Cy7(eBioscience by Thermo Fisher Scientific, Massachusetts, USA);抗HLA-A2 FITC;抗DNGR-1 PE;抗CD86 PE Texas Red;抗CD83 PE-Cy7;抗PD-L1 Pacific Blue(BD Biosciences, New Jersey, USA);抗CD70 PE;および抗CD14 Pacific Blue(Miltenyi Biotec, Bergisch Gladbach, Germany)。
【0088】
試料をLSR Fortessa分析フローサイトメーター(BD Biosciences, New Jersey, USA)上で取得し、およびFlowJoソフトウェア(バージョン9.9.4;BD Biosciences, New Jersey, USA)を使用して分析した。表現型および成熟マーカー発現レベルは、相対的蛍光強度(MFIs)(正の蛍光シグナルの幾何平均の、バックグラウンド蛍光に対する比率、生CD11c HLA-DR DCsの範囲内でゲーティングしたもの)として示される。
【0089】
Luminexアッセイ
凍結保存された4日の(4-day)および8日の(8-day)単球由来のDCs(moDCs)のアリコートを解凍し、および、100U/ml P/S(Gibco by Life Technologies, California, USA)を添加した血清・サイトカインフリーCG培地(CellGenix GmBH, Freiburg, Germany)中で24hの間培養した。DC培養上清を収集し、および、以下のヒトサイトカインおよびケモカインを包含するようにカスタマイズされたLuminexアッセイ(R&D Systems, Minneapolis, USA)を使用して分析した:IL-12p70;IFN-γ;IL-10;CCL3;CCL4;CCL5;CXCL9;CXCL10;CCL17;CCL20;およびCXCL12。Luminexアッセイを、Bio-Plex(Bio-Rad, California, USA)の読取り装置上で分析した。
【0090】
DCのmRNAエレクトロポレーション
4日目または8日目にそれぞれ採取後、DCsをエレクトロポレーションし、およびその後、3.5% ヒト血清アルブミン(Sanquin, Amsterdam, The Netherlands);6.25% ヒドロキシエチルデンプン(HES)(Grifols, Barcelona, Spain);および6.25% DMSO(Sigma-Aldrich, Missouri, USA)で富化されたPlasma-Lyte A(Baxter, Illinois, USA)中で凍結保存した。eGFP mRNAは、ブリュッセル自由大学、K. Thielemans教授のLaboratory of Molecular and Cellular Therapy(LMCT)からご厚意で提供されたpST1-eGFP2プラスミドを起源とした。プラスミドは、最初にSapI制限酵素(New England Biolab, Massachusetts, USA)を使用して線状にし、その後、mMESSAGE mMACHINE T17 Ultraキット(Ambion by Thermo Fisher Scientific, Massachusetts, USA)を使用してmRNAへとin vitro転写させた。
【0091】
MART-1 mRNAもまた、LMCTによって寄付された。MART-1のオープンリーディングフレームを、Bonehill et al (2004)によって先行して記載されているとおり、リソソームタンパク質DC-LAMP1のHLAクラスII標的配列に融合させた1μg mRNA/10 DCsの用量でヌクレアーゼフリー水(Applied Biosystems by Life Technologies, California, USA)中に溶解した30μlのmRNAを添加した170μlの血清フリーCG培地(CellGenix GmBH, Freiburg, Germany)中に4~16×10 DCsを再懸濁させ、および4mmギャップキュベット(Bio-Rad, California, USA)へと移した。
【0092】
以下のパラメータでGene Pulser Xcell Electroporation System(Bio-Rad, California, USA)を使用して、指数波パルスを使用したエレクトロポレーションを行った:容量150μF;電圧300V;抵抗∞Ω。EPの直後に、DCsを37℃および5%COで4時間、1000U/ml GM-CSF(Leukine (Berlex), Bayer HealthCare Pharmaceuticals, New Jersey, USA)、組換えhuIL-4(DC型に依存して1000U/mlまたは250U/ml;Miltenyi Biotec, Bergisch Gladbach, Germany)および100U/ml P/S(Gibco by Technologies, California, USA)を添加したCG培地(CellGenix GmBH, Freiburg, Germany)中で超低接着プレート(Corning, New York, USA)上に、回復のために放置した。MOCK-EP DCsを、mRNAなしのCG培地(CellGenix GmBH, Freiburg, Germany)中で同じパルスセッティングでエレクトロポレーションした。矩形波パルスエレクトロポレーション(SQW-EP)を使用したエレクトロポレーションを、以下のパラメータで同じエレクトロポレーションシステムを使用して行った:電圧500V;0.5ms;200μl;1パルス;5×10または50×10 DCs/キュベット。
【0093】
同種異系Tヘルパー細胞分極アッセイ
エレクトロポレーションされおよび凍結保存されたDCsを解凍し、37℃および5%COで少なくとも1時間、10% huAB血清(Invitrogen by Life Technologies, California, USA)および100U/ml P/S(Gibco by Life Technologies, California, USA)を添加した温RPMI-GlutaMAX培地(Invitrogen by Life Technologies, California, USA)中で回復させ、そして刺激物質として使用した。応答物質として、CD45RO陰性Tヘルパー細胞を同種異系PBLsから、AutoMACSセルセパレータ上のナイーブCD4+ T細胞単離キットII(両方ともMiltenyi Biotec, Bergisch Gladbach, Germanyからのもの)を使用して富化させた。DCsとT細胞とを、10% huAB血清(Sigma-Aldrich, Missouri, USA)および100U/ml P/S(Gibco by Life Technologies, California, USA)を添加したRPMI-GlutaMAX培地(Invitrogen by Life Technologies, California, USA)中で、1:5のDC:T細胞比率で14日間共培養した。10ng/ml 組換えヒトIL-2(R&D Systems, Minneapolis, USA)を、共培養の7日目に加え、および、DCsを含有しない対照条件については追加で3日目および10日目に加えた。
【0094】
同種異系共培養の最後に、50ng/ml ホルボール12-ミリスタート13-アセタート(PMA);1μg/ml イオノマイシン(iono)および10μg/ml ブレフェルジン(BFA)(全てSigma-Aldrich, Missouri, USAからのもの)を37℃および5%CO2で5時間加え、その後に細胞をフローサイトメトリー染色のために採取した。表面T細胞マーカーを検出する抗体は、抗CD3 PerCP-Cy5.5;抗CD8a PE-Cy7(BioLegend, California, USA);抗CD4 APC-Cy7(BD Biosciences, New Jersey, USA);および抗CD45RO PE-Cy7(eBioscience by Thermo Fisher Scientific, Massachusetts, USA)を包含した。細胞内(IC)染色のために、細胞を表面染色後にFACS緩衝液で洗浄し、および、製造者のプロトコルに従ってCytofix/Cytoperm(BD Biosciences, New Jersey, USA)で処置することを、以下のAbsを用いた4℃での30分間のインキュベーションに先立って行った:抗IL-4 FITC(BD Biosciences, New Jersey, USA);抗IL-10 PE;抗IL-17A APC;および抗IFN-γ Pacific Blue(eBioscience by Thermo Fisher Scientific, Massachusetts, USA)。
【0095】
抗原特異的な自己CTLsの増殖の増大
HLA-A2+ドナーからのバフィーコートを、4日の(4-day)MPLA/IFN-γで成熟させられたDCsを生成するために使用し、これらを、採取後に4時間冷凍するか(すなわち、非EP DCs)、または、最初に凍結保存の前にビヒクル(すなわち、eGFP mRNA-EP DCs)もしくは抗原MART-1 mRNA(すなわち、MART-1 mRNA-EP DCs)のいずれかでエレクトロポレーションするか、のいずれかを行った。DC培養および操作の詳細については、我々は上の材料および方法のセクションの「単球由来の樹状細胞培養」および「DCのmRNAエレクトロポレーション」に言及する。
【0096】
解凍後、非EP DCs;eGFP mRNA-EP DCs;およびMART-1 mRNA-EP DCsを、37℃および5%CO2で少なくとも1時間、10% huAB血清(Invitrogen by Life Technologies, California, USA)および100U/ml P/S(Gibco by Life Technologies, California, USA)を添加したRPMI-GlutaMAX培地(Invitrogen by Life Technologies, California, USA)中で回復させた。のちに、非EP DCsの半分を、10μMの、MART-1(AAAGIGILTV;配列番号1)(Genscript, New Jersey, USA)からの最適化された、免疫優勢の、HLA-A*201拘束性ペプチドを用いてパルスし(Valmori D. et al. 1998)、これは、陽性対照条件としての役割を果たした。非EP DCsの半分は、ビヒクルを用いてのみパルスし、および陰性対照条件としての役割を果たした(MOCKでパルスされたDCs)。インキュベーション後、37℃および5%CO2で少なくとも1時間、上記と同じ培養培地を使用して、結合されていないペプチドを洗い流した。
【0097】
CD8+ T細胞を、凍結保存された自己CD14陰性画分から、ポジティブ免疫磁気セレクションキット(Miltenyi Biotec, Bergisch Gladbach, Germany)を使用して精製した。DCsとT細胞とを、10% huAB血清(Invitrogen by Life Technologies, California, USA)および100U/ml P/S(Gibco by Life Technologies, California, USA)を添加したRPMI-GlutaMAX培地(Invitrogen by Life Technologies, California, USA)中で、1:10の比率で14日間共培養した。20ng/ml 組換えヒトIL-2(R&D Systems, Minneapolis, USA)を3日目および10日目に加えた。DCsなしの自己CD8+ T細胞を伴う培養ウェルが、追加の対照として包含された。
【0098】
共培養の7日目に、自己CD8+ T細胞を、対応するDCs(すなわち、MOCKでパルスされたDCs、eGFP mRNA-EP DCs、MART-1 mRNA DCs、およびMART-1ペプチドでパルスされたDCs)で再刺激した。共培養の最後に、細胞を上記のとおりPMA/iono/brefAとともに5時間インキュベートし、および、PE-コンジュゲートA*02:01/ヒトMART-1 MHC四量体(Sanquin, Amsterdam, The Netherlands)を使用した表面染色および以下のマーカーを使用した細胞内染色のために採取した:抗IFN-γ FITC(BioLegend, California, USA);および抗グランザイムB Pacific Blue(BD Biosciences, New Jersey, USA)。
【0099】
DCに誘導された抗原特異的細胞溶解活性の評価
エフェクターT細胞を、上記のとおりの自己DC:T細胞共培養設定の14日目に採取した。標的細胞は、上記のとおりのMART-1からの同じペプチド(Genscript, New Jersey, USA)または対照としての配列GILGFVFTL(AnaSpec, California, USA;配列番号2)を持つインフルエンザマトリックスタンパク質からの無関係のA2拘束性ペプチド(いずれも10μg/mlで使用)で負荷されたTAP2欠損T2細胞からなる。T2細胞を3時間パルスし、および、結合されていないペプチドを除去するために徹底的に洗浄した。共培養を、モネンシン(Golgistop, BD Biosciences, New Jersey, USA)および抗CD107a Pacific Blue Ab(Miltenyi Biotec, Bergisch Gladbach, Germany)の存在下において、10:1のE:T比で14時間に設定した。共培養の最後に、細胞を表面抗CD3、抗CD8および抗CD137(eBioscience by Thermo Fisher Scientific, Massachusetts, USA)で染色した。
【0100】
統計
統計分析は、GraphPad Prism(バージョン7.02、GraphPad Software, California, USA)を使用して行った。正規分布を、最初に、ダゴスティーノ・ピアソンのオムニバス正規性検定(D’Agostino-Pearson omnibus normality test)を使用して検定した。正規分布したデータを、2群についての独立(unpaired)もしくは対応のある(paired)t検定、または3以上の群についてのテューキーの多重比較検定(Tukey’s multiple comparisons testing)と組み合わせたANOVA検定を用いて分析した。非正規分布であるデータについては、ノンパラメトリック検定、すなわち、独立(unpaired)データセットについてはマン・ホイットニー検定(Mann-Witney test)、および対応のある(paired)データセットについてはウィルコクソンの対応した符号付き順位検定(Wilcoxon matched-pairs signed rank test)を2群について、使用した。2よりも多い群については、ノンパラメトリックなクラスカル・ワリス検定(Kruskal-Wallis test)をダンの多重比較検定(Dunn’s multiple comparisons testing)と組み合わせて使用した。統計的有意性のレベルは、以下のアスタリスク符号で記号化した:p値0.01~0.05(*)、p値0.001~0.01(**)、p値<0.001(***)およびp値<0.0001(****)。
【0101】
結果
TLR4リガンドとIFN-γを足し合わせて用いた成熟が関与する短縮された培養プロトコルによって高収量の完全に分化した成熟した樹状細胞を得ることができる
大幅に短縮された単球培養継続時間を、確立された1型分極因子の組み合わせを使用した成熟と一緒に、組み合わせることによってDCsを生成することの実現可能性を、バフィーコートから開始する拡張可能な一連の(extensive series of)小スケール培養を使用して査定した。細胞培養培地、サイトカインおよび閉鎖系容器を、我々のGMP生産環境への直接的な橋渡しのために選択した。
【0102】
オペレーター介入の必要性を低減させるために、我々は、標準的な8日間のDC培養継続時間を4日間の合計期間にまでカットすることを狙った。これは、GM-CSF/IL-4を添加したGMP準拠の血清フリー培地中の3日間培養と、これに続く採取前の追加の24時間のMPLAとIFN-γとの組み合わせへの曝露からなる。このプロトコルは、94.6%の純度の中央値 [95% CI: 93.7 - 96.9]を伴うCD11c HLA-DR 単核細胞集団を結果としてもたらし(図1A)、光学顕微鏡により特徴的な樹状細胞形態を示す(図1B)。採取の際、単球のDCへの変換率の中央値は41.5% [95% CI: 30.7 - 51.7]であり、95.7% [95% CI: 92.7 - 96.4]の生存率中央値(フローサイトメトリーによる)を伴った(図1C)。
【0103】
細胞の表現型は、完全に分化した成熟したDCsのそれと一貫しており、単球マーカーCD14の著しい下方制御を伴い、これに並行してCD83の上方制御があり、ならびに、HLAクラスIおよびクラスII抗原提示分子の高いレベルとの組み合わせで、T細胞共刺激マーカーCD40、CD70、およびCD86の高い表面発現があった。さらにまた、分子DNGR-1を高いレベルで検出することができたという観察結果は、外来性細胞結合抗原を捕捉しおよび交差提示する潜在性を提案する。成熟DCs上でCCR7が誘導されたところ、これは二次リンパ器官へ遊走する能力を示唆する。moDCsの大域的な活性化状態の反映として、T細胞チェックポイント分子PD-L1もまた上方制御された(図1D)。
【0104】
4日間moDC分化プロトコルを、確立された「古典的な」臨床グレード8日間DC培養と、ワクチン生産に関係する複数の主要なパラメータの観点から比較した。8日(8-day)moDCsを、GM-CSF/IL-4添加培養培地中で生成させ、および、TNF-αおよびPGE2を加えたことによって最後の2日間成熟させた。最初にJonuleit et al (1997)によって記載された元々の成熟カクテルはTNF-α、PGE2、IL-1βおよびIL-6からなるものであったものの、我々およびその他は、IL-1βおよびIL-6の欠如が、かくして生成されたDCsの生存率、分化および成熟度への有害作用を有さず(図9)、またDCの機能性にも負の影響を有しないということを観察している(Van Driessche et al. 2009)。
【0105】
最初に、我々は一貫して、4日(4-day)moDCsが、採取の際の8日(8-day)DCsよりも有意に生存性が高く(p値 0.0010)、58% [95% CI: 45.1 - 69.1]と比較して96.3% [95% CI: 92.7 - 98]の生存率中央値(フローサイトメトリー)を伴ったことを観察した。4日(4-day)moDCsは、最も高い単球のDCへの変換率の中央値(46.9% [95% CI: 27.2 - 63.2] vs 26.8% [95% CI: 14.1 - 36.2])もまた生じさせ、統計的有意に達した(p値 0.0195)(図2A)。
【0106】
次に、我々は、採取の際の表現型のプロファイルにおける差異を見ていった。4日(4-day)moDCsは、標準的な8日(8-day)moDCsよりも有意に高いCD40、CD70およびHLA-ABCのレベル(MFI)を見せた。予想外なことに、PGE2への曝露がなかったにもかかわらず、CCR7もまた、MPLA/IFN-γで成熟させられた4日(4-day)moDCs上でより高いレベルで発現した。それに対して、CD86の発現は、8日(8-day)moDCsにおいてより高い(図2Bおよび表1)。CD83、HLA-DRおよびDNGR-1は、両方のDC培養プロトコルにわたって、統計的有意差を示さなかった。予想外なことに、PD-L1発現は、標準的な8日(8-day)のものにおいては4日(4-day)moDCsと比較して一貫してより高く(平均して4倍)、また、凍結保存されたDCアリコートの解凍後にさらに増加さえした(図10)。
【0107】
【表1】
【0108】
これらのデータから、我々は、単球培養継続時間を半分に低減させることが、活性化因子MPLAおよびIFN-γとの組み合わせで、より高い変換収率、より高い細胞生存率を伴って、完全に分化した成熟したDCsを生じさせ、かつ、共刺激分子発現レベルへの有害な影響がない、ということを結論付ける。
【0109】
我々の知る限りでは、たった1つの報告が、たった24~36時間の単球からDCへの分化期間を伴う加速されたDC分化プロトコルにおける成熟カクテルとしてのMPLA + IFN-γの統合について記載している(Massa et al. 2013)。しかしながら、DCワクチンの作用の帰結は、該代替DCsについて評価されていなかった。比較として、単球由来の樹状細胞を、本明細書中で前に記載したプロトコルに従うか(「MIDRIX DCs」)、またはMassa et al.によって記載されたalt-2プロトコルに従う(「Massa DCs」)かのいずれかで生成した。CD14+単球を、本明細書中で前に記載したとおりバフィーコートから単離した。DCsを、それぞれの時点で採取し、およびeGFPコードmRNAでエレクトロポレーションした。
【0110】
データは6の異なるドナーに由来し、および以下の側面が評価された:
(A)両方のプロトコルで得られた生CD11c+ HLA-DR+ 樹状細胞の採取の際の生存率および絶対的な細胞収量;
(B)単球マーカーCD14 vs DC分化マーカーCD83の発現;
(C)DC成熟マーカーCD40、CD70、CD86およびCCR7の発現;
(D)T細胞共阻害受容体PD-L1の発現;
(E)エレクトロポレーションの4時間後に測定したときの、翻訳されたタンパク質のレベル(eGFPシグナルの相対的平均蛍光強度)ならびにエレクトロポレーションされたeGFP-mRNAの首尾よく成功した翻訳を伴う細胞の割合(eGFP+ DCsの百分率)として表された、エレクトロポレーション効率。
【0111】
図13において見られるとおり、単球のDCsへの満足な分化を達成するためには、ならびにT細胞刺激能力と相関する成熟の満足な表現型特性(phenotypical features)を生成するためには、24~36時間の分化ステップの継続時間は十分ではない。重要なことに、生存DCsの絶対収量は、Massa et al.によって記載されたプロトコルを使用すると本発明の方法と比較して有意に低く、これはエレクトロポレーションおよび凍結保存でこれらの細胞さらにを処理する可能性を有意に損なうと見受けられており、およびかくしてDCワクチンに対する影響を有する。「Massa DCs」は、完全長タンパク質をコードするmRNAでのエレクトロポレーションをより起こしにくく、一方、本発明に従い生成されたDCsは高いエレクトロポレーション効率を示した。
【0112】
加えて、「Massa DCs」は、単球マーカーCD14のより少ない下方制御、DC分化マーカーCD83のより少ない上方制御、DC成熟/T細胞共刺激受容体CD40、CD70およびCD86のより低いレベルを見せる。リンパ組織のT細胞ゾーン中への遊走に要求されるCCR7のレベルもまた、D1 DCsについてはより上方制御が少ない。さらにいうと、PD-L1レベルは、「Massa DCs」上でより高い発現の傾向を示した
【0113】
短期培養されたDCsに、完全に成熟した表現型および新たな(de novo)Tヘルパー1分極化を誘導する能力を付与するにはMPLAおよびIFN-γの両方が一緒に必要である
我々は、次に、4日間培養されたmoDCsの、MPLA、IFN-γまたは組み合わせの表現型成熟状態への、ならびにTヘルパー分極化能力の面から見た機能的な影響への相対的な寄与を分けて分析した。
我々は、両方の成熟刺激が、T細胞共刺激分子CD40、CD70、CD86の、ならびにCD83およびCCR7の表面発現レベルを最大化させるのに要求されるということを見出した(図3)。この効果は、HLA-DRまたはDNGR-1の発現に関しては観察されず、後者は未熟なDCsに対して相対的に変わらないままであった。注目されるのは、moDCs上のPD-L1誘導が、IFN-γ曝露よりもむしろ専らMPLAによって駆り立てられたという観察結果である。
【0114】
機能レベル上で、ナイーブ同種異系CD4+ T細胞によるIFN-γ分泌の最大の誘導は、MPLAおよびIFN-γの両方へのDCsの事前の曝露によってのみ達成された。ナイーブTヘルパー細胞において、IL-10生産の限られた量が未熟なDCsによって誘導され、およびこれは、事前のIFN-γ曝露に関係なく、MPLAで事前曝露されたDCsの存在下でさらに抑制された。Tヘルパー細胞IL-4生産は、MPLA/IFN-γで成熟させられたDCの存在下で小さい増加を示したIL-17もそうであったように、低いレベルでしか誘導されなかった(図4)。
かくして、短期培養されたmoDCsの、MPLAおよびIFN-γの両方一緒での曝露は、完全に成熟した表現型を得ることおよびロバストな新たな(de novo)1型分極Tヘルパー細胞応答を誘導する能力をこれらの細胞に授けることに、必要である。
【0115】
短期培養されたDCsはエレクトロポレーションへのより優れた回復力を、高いmRNA翻訳効率と一緒に発揮する
表現型成熟および1型免疫分極能に加えて、臨床業務において実施可能にするためには、満足なDC量がエレクトロポレーションおよび凍結保存のストレスに続いて回収されるべきである。
我々は最初に、エレクトロポレーションされた抗原コードmRNAに由来するタンパク質抗原を首尾よくかつ安定して発現させるための、MPLA/IFN-γで成熟させられた短期培養されたDCsの能力を評価した。エレクトロポレーション効率についてのマーカーとしてeGFPコードmRNAを使用して、エレクトロポレーション4時間後/凍結保存前、細胞解凍直後、およびサイトカインフリー培地中でのさらなるインキュベーションに続く細胞解凍24時間後の、eGFP発現を見ていった。
【0116】
指数パルスによってエレクトロポレーションされたeGFP陽性DCsの百分率の中央値は、凍結保存前の64.8 [95% CI: 55.2 - 87.7]から、解凍直後に80.2 [95% CI: 73.1 - 87.7]まで進化し、および続く24時間の期間においては依然として安定であり(86.3 [95% CI: 75.2 - 86.4)、その期間にわたって発現強度(MFI)に有意な変化はなかった(図5A、B)。
【0117】
4日(4-day)moDCsにおいて、指数パルスエレクトロポレーションは、生存率(トリパンブルー)の平均17.3%の減少に至った。エレクトロポレーションに誘導された正味の細胞喪失との組み合わせで、これは百分率の中央値でいう生DC回収率51.4% [95% CI: 36 - 67%](エレクトロポレーション後 vs 前の、回収された生細胞)に転化した(図5C)。別々の一連のドナーを使用して、我々は、エレクトロポレーションに対する回復力の観点から4日(4-day)MPLA/IFN-γ moDCsを標準的な8日(8-day)moDCsと比較した。我々は、4日(4-day)DCsが、EP後の8日(8-day)DCsよりも有意に生存性が高く(トリパンブルー)、67.3% [95% CI: 18.2 - 93.5] vs 16.5% [95% CI: 2.8 - 57.8]の生存率中央値を伴ったことを観察した。8日(8-day)moDCsはまた、eGFP mRNA EP後の正味の細胞喪失も起こしやすく、24.6% [95% CI: 3.7 - 47.5]の平均生細胞回収率を伴い、4日(4-day)moDCsでの41.5% [95% CI: 12.8 - 83.8]と比較される(図5D)。
【0118】
さらなる試験において、我々は矩形波パルスエレクトロポレーション後の成果を評価した。サイトカイン濃度の範囲にわたって生産されたDCsを使用した小スケールのランを使用して、我々は、矩形波パルスを使用したエレクトロポレーション後および凍結保存後の細胞生存率が、指数パルスプログラムと比較すると一貫してより高かったということを見出した(図11)。
【0119】
矩形波パルスのさらなる評価を、GMP環境におけるフルスケールのDC生産ラウンドについて行った。矩形波パルスを使用してエレクトロポレーションされたDCsによるeGFP発現のフローサイトメトリー分析は、指数パルスと比較して、%eGFP陽性細胞の観点で劣っていなかった(代表的なデータは図12Aに示される)。矩形波パルスによるエレクトロポレーションは、解凍直後のDC回収>凍結保存されたDCsの80%、これとともに>75%の生存率を、結果としてもたらした(図12B)。
矩形波パルスエレクトロポレーションの後で、肉眼で見える細胞集合の形成は観察されなかったところ、これはさらなる細胞取り扱いを大幅に円滑化し、および全体的な細胞回収を改善する(結果は図示せず)。
【0120】
エレクトロポレーションおよび凍結保存は、1型分極T細胞応答を選択的に促進させる短期培養されたDCsの能力を損なわない
エレクトロポレーションおよび凍結保存のストレスに続いても無傷のまま維持されるべきである主要なDCの性質は、患者へ投与されたときに1型分極かつ細胞溶解性のT細胞を選択的に動員する潜在力である。この機能性の評価を提供するために、我々は、エレクトロポレーションされおよび凍結保存された4日(4-day)moDCs vs 標準的な8日(8-day)DCsの、サイトカインフリー培地中での24時間のインキュベーション期間に続くサイトカインおよびケモカインセクレトームを評価した(図6A)。我々は、4日(4-day)moDCsが、依然として生理活性IL-12ならびにIFN-γを分泌することを可能としたということ、一方、8日(8-day)moDCsによるこれらのサイトカインの生産は、検出限界未満であったということを見出した。両方のDC型の間でIL-10生産の差異は観察されなかった。
【0121】
より印象的なことに、我々は、1型分極Tヘルパー細胞、細胞溶解性T細胞およびNK細胞を誘引することに関与するケモカイン(Colantonio et al. 2002)の高い量を、MPLA/IFN-で成熟させられた4日(4-day)moDCsのみが生産したことを、標準的な8日(8-day)moDCsからは検出可能な分泌がないこととともに見出した。これは、CXCR3リガンドCXCL9(MIG30)およびCXCL10(IP-10)(Groom et al. 2011)、ならびにCCR5リガンドCCL3(MIP-1α)、CCL4(MIP-1β)およびCCL5(RANTES)(Samson et al. 1997)の高いレベルを誘導する。CXCR3リガンドCXCL11の分泌(Groom et al. 2011)は、検出限界未満であった。それに対して、T-reg-およびTh2-動員ケモカインCCL17(TARC)の分泌(Yoshie et al. 2015)は、標準的な8日(8-day)moDCsで5倍高かった。4日(4-day)moDCsによるより高いTh17-およびT-reg-誘引ケモカインCCL20(Yamazaki et al. 2008)の放出の傾向があり、一方、T-reg-誘引CXCR4リガンドCXCL12(SDF-1α)の生産(Colantonio et al. 2002)は、両方のDC培養プロトコルの間で差がなかった(データは図示せず)。
【0122】
我々は、エレクトロポレーションおよび凍結保存が、新たな(de novo)Tヘルパー1分極化応答を誘導するための4日(4-day)moDCsの能力を左右するかどうかもまた調査した(図6C)。同種異系ナイーブCD4 T細胞と解凍された4日(4-day)moDCsとの共培養は、採取したてのエレクトロポレーションされていない4日(4-day)moDCsを用いて得られたものに匹敵する高いIFN-γ生産レベルを結果としてもたらした(図4)。IL-10生産の誘導は、このセッティングにおいて極めて低く(図6C)、これは新鮮なDCsを用いて得られた結果と一貫していた(図4)。
【0123】
短期培養されたDCsは、細胞溶解活性を持つ腫瘍抗原特異的CD8+ T細胞を効率的にプライミングおよび増大させる
短期培養されたmoDCsの、収量、表現型、エレクトロポレーション/凍結保存後の回収、および1型分極T細胞応答を促進する能力、の観点からの優位性を確立したところで、我々は、次に、エレクトロポレーションされた腫瘍抗原コードmRNAからの免疫原性エピトープを提示するこれらの細胞の能力を試験した。ここでもやはり、現実の臨床セッティングにおけるDCワクチンの実施を反映させるために、我々は全てのアッセイを、新鮮なmRNA-EP DCsよりもむしろ凍結保存されたものを用いて行った。HLA-A2-陽性の健康な血液ドナーにおける四量体を使用してMART-1特異的CD8+ T細胞を検出する可能性を受けて、MART-1/Melan-Aをモデル腫瘍関連抗原として使用した。
【0124】
我々は MART-1-mRNA-EP DCsでの合計2回の週1回の刺激ラウンドが、無関係の抗原(eGFP)で負荷されたDCsでの刺激と比較して、30倍を超える抗原特異的な(四量体陽性の)CD8+ T細胞の増大を誘導するのに満足であったということを観察した(中央値0.43% [95% CI: 0.22 - 0.53] vs 13.2% [95% CI: 1.21 - 37.6])。エレクトロポレーション後の生存率および回収率の観点から、4日(4-day)moDCsがMART-1 mRNAまたはeGFP mRNAのいずれでエレクトロポレーションされたかでの差異は観察されなかった(データは図示せず)。MART-1特異的CD8+ T細胞の増大は、MART-1ペプチドでパルスされたDCs(陽性対照)で得られたのと同じだけの桁の規模であった(中央値 18.9% [95% CI: 5.75 - 28.8])。これらの結果は、MPLA/IFN-γで成熟させられた4日(4-day)moDCsが、Ag-特異的自己CD8+ T細胞への効率的な提示のために、エレクトロポレーションされたMART1コードmRNAから免疫原性エピトープを抽出することができたということを示唆する(図7A~B)。
【0125】
刺激されたCD8+ T細胞のエフェクター潜在性を評価するために、我々は、IFN-γおよびグランザイムBについてのIC染色と四量体検出を組み合わせた。我々は、MART-1-mRNA-EPの4日(4-day)moDCsが、陰性対照条件(すなわち、MOCKでパルスされたまたはeGFP mRNA-EP-DCsでの刺激、またはDCsなし)と比較して、IFN-γおよびグランザイムB生産抗原特異的CD8+ T細胞を最も多数誘導したことを見出した(図7C)。
【0126】
4日(4-day)moDCで刺激されたCD8+ T細胞の細胞溶解能をさらに評価するために、我々は、TAP欠損のHLA-A2+ T2細胞を、A2拘束性MART-1ペプチド vs 無関係の(インフルエンザ)ペプチドで受動負荷させて標的として使用した(実験セットアップは図8Aに図示される)。以前に記載されたとおり、T細胞活性化マーカーCD137/4-1BBの、細胞溶解性脱顆粒マーカーCD107aと一緒での二重発現を見ていくフローサイトメトリー分析を、標的エンゲージメントおよび殺活性を検出するために使用した(Bonehill et al. 2009)。我々は、2週間の間に、MART-1-mRNA負荷されかつMART-1ペプチドでパルスされた4日(4-day)moDCsで刺激されたCD8+ T細胞のみが、MART-1ペプチドで負荷されたT2細胞との接触に続いてCD137/CD107aを上方制御したことを観察した(図8Bにおける代表的な点プロット)。このシグナルはドナーのほとんどにおいて検出され、また、無関係の標的(インフルエンザペプチド負荷されたT2細胞)のエンゲージメントが細胞溶解性マーカー発現を誘導せず、MOCKでパルスされたかまたはeGFP-mRNAエレクトロポレーションされたDCsでのエフェクターCD8+ T細胞の事前の刺激もそうしなかったというように、特異的であった(図8C)。
【0127】
考察
我々の知る限りでは、これは、エレクトロポレーションにより導入された、RNAにコードされた腫瘍抗原の、効率的な提示と組み合わせた、強いTh1分極能を持つ臨床グレードのDCsの生産を可能にさせる加速されたin vitro細胞分化法を、初めて記載したものである。
【0128】
完全に成熟したDCsを生産するための古典的な7~8日間のin vitro培養を短縮することの実現可能性は、過去に他のグループによって記載されている。しばしば「高速DCs(fast-DCs)」と名付けられる、GM-CSFおよびIL-4の存在下での24時間(Dauer et al. 2003; Kvistborg et al. 2009; Jarnjak-Jankovic et al. 2007)~72時間(Truxova et al. 2014)の単球からDCへの分化時間の後に、標準的な炎症性サイトカインカクテルTNF-α、IL-1β、IL-6、PGE2またはTLRリガンドのいずれかを使用した24時間の成熟期間がこれに続いて(Truxova et al. 2014)得られる細胞は、成熟プロファイルおよび機能性の観点で、古典的な長期間DC培養と同等に機能を果たした。
【0129】
たった1つの報告が、加速されたDC分化プロトコルにおける成熟カクテルとしてのMPLA + IFN-γの統合を、24~36時間の単球からDCへの分化期間の後の4つの異なる成熟戦略を使用した比較実験の一部として記載している(Massa et al. 2013)。古典的なTNF-α+IL-1β+IL-6+PGE2のカクテルまたは代替物のTNF-α+IL-1β+IFN-α+IFN-γ+ポリ(I:C)もしくはTNF-α+IL-1β+IFN-γ+CL097、を用いて成熟させられたDCsと比較して、MPLA+IFN-γで成熟させられたDCsは、共刺激分子発現の最も高いレベルを発現し、およびIL-12p70/IL-10放出の最も良い比率を生成した。
【0130】
Ten Brinke et al (2007; 2010)によって行われた研究もまた、MPLA/IFN-γの使用を、6~7日間の培養時間ではあるが、1型分極の観点から記録した。本発明は、加速された培養プロトコルに適用されたときにも同じようにMPLA/IFN-γがDCsの完全な成熟を駆り立てることができるということを実証する(図1D;2B)。加えて、我々は、両方の剤の組み合わせが、CD86、CD40およびCD70などの主要なT細胞共刺激分子の、ならびにリンパ節ホーミングケモカイン受容体CCR7の、最大限の発現を誘導するために必要であることを実証する(図3)。
【0131】
これらのうち、CD40およびCD70上方制御は、複雑な炎症性カクテルを用いて成熟させられた8日(8-day)DCsを使用して得られたものよりも一貫して高かった。両方の分子の満足なレベルは、抗腫瘍免疫応答において必須である:CD40は、下流のCD8+ 細胞傷害性Tリンパ球の最適な刺激を可能にさせるTヘルパー細胞-DC活性化を円滑化し、一方、CD70は、T-regまたはTh17 T細胞分化よりもむしろTh1を駆り立てることにおいて、およびCD8+ T細胞にエフェクターおよびメモリー特性を授けるための、基軸となる。したがって、CD40/CD40LおよびCD70/CD27軸の潜在性に入り込むことは、臨床的ながんワクチン応用のためにDC免疫原性を増加させるための戦略として首尾よく有効利用されている。
【0132】
我々が驚いたことには、T細胞共阻害受容体PD-L1のより低いレベルを、MPLA/IFN-γで成熟させられたDCs上(vs TNF-α/PGE2 DCs上)で検出した(図2B)。印象的なことに、採取の際のPD-L1発現レベルの差異は、凍結保存/解凍後には(図10)、すなわち、可能な限りこの免疫抑制性リガンドの発現を低くするべきところである患者へ効果的に投与されることになる生物学的製剤では、さらに増加する。2型インターフェロンが数多くの細胞型に対するPD-L1発現の原型的な誘導物質であるものの(Gato-Canas et al. 2017)、PGE2は、免疫抑制能力を持った腫瘍関連骨髄細胞における場合がそうであるとして示されたとおり、骨髄細胞に対するPD-L1上方制御の力強い原動力として記載されている(Prima et al. 2017)。
【0133】
DC培養プロトコルにおけるPGE2の使用は、リンパ組織のT細胞依存性領域への遊走の効率を最大化する、DCs上のCCR7の最適な発現を誘導するその能力によって通常は動機付けられる。しかしながら、本発明において、4日(4-day)MPLA/IFN-γ DCsは、少なくともTNF-α/PGE2で成熟させられたDCsと同じくらい多くのCCR7を発現した。我々のTNF-α/PGE2で成熟させられたDCsで見られたIL-12抑制(図6A)と組み合わせて、全部合わせるとこれらの知見は、次世代のDCベースのがんワクチンのための古典的なDC成熟カクテルからの脱却を強く支持する。
【0134】
4日の(4-day)MPLA/IFN-γで成熟させられたDCsの1型分極免疫応答を支持する能力をさらに確認するのは、凍結保存、解凍およびサイトカインフリー基本培地中のさらなる24時間の培養の後で放出されるケモカインのプロファイルである(図6A)。8日の(8-day)TNF-α/PGE2で成熟させられたDCsと比較して、たったの4日の(4-day)MPLA/IFN-γで成熟させられたDCsは、Th1誘引ケモカインCCL3、CCL4、CCL5、CXCL9、およびCXCL10の高いレベルを分泌した。in vivoで、DCに分泌されるCXCL10とCD4+ T細胞上のCXCR3受容体発現との間の相互作用は、リンパ節におけるこれらの細胞型の間の安定した接触の形成を確実にすることが示された。この安定した細胞接触は、これらのCD4+ T細胞を、高いIFN-γ生産の潜在的なニッチ中へと置くこととの組み合わせで、さらにTh1分化を促進することができる。加えて、我々の実験は、T-regおよびTh2-動員ケモカインCCL17は、おそらくはPGE2の事前条件付けの帰結として、圧倒的に8日の(8-day)TNF-α/PGE2で成熟させられたDCsによって放出されるということを示す。
【0135】
統計的有意には達しなかったものの、4日の(4-day)MPLA/IFN-γで成熟させられたDCsによるより高いTh17-およびT-reg-誘引ケモカインCCL20の放出の傾向もまたあった。DC成熟刺激における選定がTh1-またはTh2-T細胞動員プロファイルを定義するという事実は、Lebre et al (2005)によって既に記録されている。彼らの試験では、採取したての成熟DCsのケモカイン生産が、CD40ライゲーションに呼応して評価された。LPSおよびIFN-γの存在下で成熟させられたDCsは、圧倒的にTh1誘引ケモカインを放出することが示されたが、他方、成熟カクテル中にPGE2が存在したときにはTh2関連ケモカインCCL22の発現レベルが有意に増加した。我々の知見とは対照的に、Lebre et alの論文では、CCL17の発現パターンはDC型に依存しなかった。
【0136】
達成されるDC成熟のレベルに潜在的に影響を及ぼす追加の因子は、使用される培養容器の物理的性質である。本発明の方法によって、臨床的に認定された免疫磁気単離系と互換性がある閉鎖系を構成するガス透過性のバッグの中の細胞を分化および活性化させることが実行可能である。我々の結果は、臨床グレードのバッグ中で生成されたDCsが、下方制御された共刺激分子発現、ケモカインおよびIL-12分泌を伴う損なわれた成熟プログラムを有するということを示唆した先行研究(Rouas et al. 2010)と相反する。
【0137】
驚くべきことに、我々は、これら全ての特徴が我々のDCにおいて誘導されており、および、凍結保存、解凍およびサイトカインフリー基本培地中のさらなる培養の後でさえも無傷であるということを示す。類似の研究は、G. Gaudernack et alおよびG. Kvalheim et alのグループらによって行われており(Kyte et al. 2005; Mu et al. 2003)、無傷の免疫原性の性質を持った臨床グレード DCsを実際にバッグの中で生成することができるというアイディアを補強する。細胞分化バッグ中で培養することはまた、我々の方法を市販の自動化された細胞培養デバイスへと簡単に置き換えることを、我々に可能にさせる。この選択肢は、オペレーター介入のさらなる低減を可能にし、コンタミネーションのリスクを減少させ、および全体的な再現性を増加させる。
【0138】
本発明は、抗原でDCsを負荷するやり方としてmRNAエレクトロポレーションを選択することによって、代替的な培養継続時間および/または成熟プロトコルに着目して先行する報告からさらに自らを差別化する。この技術の長所は、MHCIおよびMHCII提示の両方を最適化するための配列を組み込む選択肢を伴う、腫瘍関連抗原をコードするカスタマイズされた配列または突然変異由来のネオエピトープを含有する配列を合成するという観点からの柔軟性である。また、HLA拘束性(HLA-restricted)ペプチドで受動負荷された以前の研究とは対照的に、完全長RNAでのエレクトロポレーションは、HLA型の観点からのいかなる患者事前選択をも課すことなく広域なエピトープの処理(processing)および潜在的な提示を確実にする。
【0139】
そのうえ、DCにおける翻訳されたタンパク質の半減期は、MHC I-エピトープ複合体の長期化された生成を確実にし、一方、受動負荷された外来性ペプチドは、表面HLA分子に一時的に結合するかまたは内在化によって枯渇するのみである。mRNAでエレクトロポレーションされたDCsの、ペプチド負荷DCsと同じくらいロバストなT細胞応答を誘導する能力が、先行して実証されている。ここで我々は、4日間培養された、MPLA/IFN-γで成熟させられた、モデル腫瘍関連抗原でエレクトロポレーションされたDCsは、抗腫瘍ツールキット(例としてIFN-γおよびパーフォリンの高発現)を備えた希少な抗原特異的CD8+ T細胞の活発な増大を誘導することができるということを示し、これは効率的かつ高度に特異的な細胞傷害性活性に反映される。重要なことに、我々は、現実のワクチン接種のセッティングを反映した凍結保存および解凍後のこの必須のDCの性質を評価した。
【0140】
要するに、本発明は、4日の(4-day)MPLA/IFN-γで成熟させられた単球由来のDCsの、「古典的な」8日の(8-day)TNF-α/PGE2で成熟させられたDCsに対する、細胞収量、表現型、および1型分極プロファイルの観点からの優位性を実証する。培養時間を低減し、GMP準拠の材料および血清フリー培地を閉鎖系で使用して、エレクトロポレーションおよび凍結保存は、細胞溶解性腫瘍由来の抗原に特異的なCD8+ T細胞応答を誘導する短期培養されたMPLA/IFN-γ-DCsの能力を損なわなかったところ、これは臨床実施にとってのこの生産方法のロバスト性を浮き彫りにする。
【0141】
参考文献
【表2-1】
【表2-2】

【表2-3】
図1A-1C】
図1D
図2
図3
図4A
図4B-4C】
図5
図6A
図6B-6C】
図7A
図7B-7C】
図8A
図8B
図8C
図9
図10
図11
図12A
図12B
図13-1】
図13-2】
図13-3】
【配列表】
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