IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 西田 新一の特許一覧

特許7397495耐疲労・耐緩み防止機能を備えたボルト構造およびボルト構造を適用したネジ締結体
<>
  • 特許-耐疲労・耐緩み防止機能を備えたボルト構造およびボルト構造を適用したネジ締結体 図1
  • 特許-耐疲労・耐緩み防止機能を備えたボルト構造およびボルト構造を適用したネジ締結体 図2
  • 特許-耐疲労・耐緩み防止機能を備えたボルト構造およびボルト構造を適用したネジ締結体 図3
  • 特許-耐疲労・耐緩み防止機能を備えたボルト構造およびボルト構造を適用したネジ締結体 図4
  • 特許-耐疲労・耐緩み防止機能を備えたボルト構造およびボルト構造を適用したネジ締結体 図5
  • 特許-耐疲労・耐緩み防止機能を備えたボルト構造およびボルト構造を適用したネジ締結体 図6
  • 特許-耐疲労・耐緩み防止機能を備えたボルト構造およびボルト構造を適用したネジ締結体 図7
  • 特許-耐疲労・耐緩み防止機能を備えたボルト構造およびボルト構造を適用したネジ締結体 図8
  • 特許-耐疲労・耐緩み防止機能を備えたボルト構造およびボルト構造を適用したネジ締結体 図9
  • 特許-耐疲労・耐緩み防止機能を備えたボルト構造およびボルト構造を適用したネジ締結体 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-05
(45)【発行日】2023-12-13
(54)【発明の名称】耐疲労・耐緩み防止機能を備えたボルト構造およびボルト構造を適用したネジ締結体
(51)【国際特許分類】
   F16B 33/02 20060101AFI20231206BHJP
   F16B 39/30 20060101ALI20231206BHJP
【FI】
F16B33/02 A
F16B39/30 Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021005863
(22)【出願日】2021-01-18
(65)【公開番号】P2022110449
(43)【公開日】2022-07-29
【審査請求日】2022-10-12
(73)【特許権者】
【識別番号】505059307
【氏名又は名称】西田 新一
(74)【代理人】
【識別番号】100080160
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 憲一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100149205
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 泰央
(72)【発明者】
【氏名】西田 新一
【審査官】田村 佳孝
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-012784(JP,A)
【文献】実開昭56-025816(JP,U)
【文献】特開2014-180366(JP,A)
【文献】特開2009-174563(JP,A)
【文献】特開2009-174564(JP,A)
【文献】国際公開第2010/092817(WO,A1)
【文献】特表2011-513681(JP,A)
【文献】特開平08-177839(JP,A)
【文献】特開2019-100457(JP,A)
【文献】実開平06-004419(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 33/02
F16B 39/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐疲労・緩み防止機能を備えたボルト構造において、
ボルトの軸線の先端側にネジ山を有する雄ネジを備え、
雄ネジ部全体の雄ネジのネジ山を軸線の直角断面に対してボルトの先端側に2~10°傾けたことを特徴とするボルト構造。
【請求項2】
ボルト軸線の先端側に形成された雄ネジと、
前記雄ネジのボルト頭部側又はボルト円筒部側のネジ山の頂部の一部が除去され前記ボルト頭部側又は前記ボルト円筒部側に向かって漸次ネジ山外径が縮径したテーパー部と、前記テーパー部の最小径部から前記ボルト頭部側又は前記ボルト円筒部側に向かって緩やかな円弧状に形成された不完全ネジ除去部と、
を有することを特徴とする請求項1に記載のボルト構造。
【請求項3】
前記請求項2に記載されたボルトと、ナットと、を螺合させて使用するネジ締結体において、ボルトの雄ネジをナットの雌ネジよりも硬い材料で構成したことを特徴とするネジ締結体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種機械装置、鉄橋、建築物、建設機械、各種搬送機器、電気製品、各種エンジンなどの内燃機関、風力発電装置等の稼働または外部から振動を受ける部材の接合部に使用されるボルト構造およびそのボルトを使用したネジ締結体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、かかる分野で用いられるボルト及びナットを用いたネジ締結体は、同一箇所に複数本使用され、これらが緩まなければ使用中に破損することはほとんど考えられなかった。また、ボルトはテーパー効果(楔効果)により厚い部材でも強力な締付けを行うことができるとともに簡単な工具で容易に緩ませることができ、物の組立や分解が容易にできるという優れた特徴を有している。
【0003】
ボルト及びナットを用いたネジ締結体は、繰返し荷重が加えられる条件下で使用されることが多いため、締結当初は所定のトルクで適切に締結されていても、長期にわたる使用期間中の外部応力(振動や温度変化などの荷重変動)によりボルト緩みが発生し、しばしば疲労破壊が発生するという問題があった。
【0004】
特に、振動部材の接合部に使用されるボルト及びナットを用いたネジ締結体は、長期使用時に外部荷重が繰り返されることで緩みが発生していた。従来、長期使用によるネジ締結体が緩む問題に対しては、定期的に緩みに対する点検を行い、緩んでいる箇所を締め直すなどのメンテナンスで対応していた。
【0005】
かかる問題を解消するために、緩み防止機能を有する種々のボルト及びナットが研究開発されている。
【0006】
二重ネジボルトは、その例の一つである。特許文献1には、同一個所に並目および細目のネジを加工し、それぞれに対応して内側に並目、外側に細目のナットを螺合させることで、極めて緩み難いボルトとナットの締結体を構成している(特許文献1)。
【0007】
また、他の緩み防止機能を有するネジ締結体としては、一般に「モーションタイト」(商標登録第5120985号、商標登録第5362140号)と呼ばれるボルトがある。これは、ボルトの雄ネジ部のネジ山を頭部側にわざと傾かせ、雌ネジと螺合した際に、雄ネジ部の傾いたネジ山の面と、雌ネジ部のネジ山の面を摺接せしめるように構成したものである。すなわち、雄ネジ部のネジ山の先端部分が、雌ネジ部のネジ山の付け根部分、すなわち谷底近傍で摺接することにより、耐緩み性の効果を生じせしめようとするものである(特許文献2)。
しかし、特許文献2に記載の雄ネジは、「耐緩み」には効果があるが、雄ネジのネジ山間の谷底に生起される荷重が引張応力であるため、「耐疲労」には効果がない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2009-174564号公報
【文献】再表2010-092817号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、特許文献1に係るボルトを用いた締結体は、通常、振動などの繰返し荷重が加えられるところに使用されていることが多いもののボルトの疲労破壊を完全に防止できる機構ではなかった。
【0010】
すなわち、繰返し荷重が加わった場合、締結体の締結部が緩みにくいという効果はあるものの、ボルトそのものの疲労強度を向上させる構成はなく、現状のネジ締結体よりもボルト本数の減少、安全・安心のネジ締め効果の確保やメンテナンス・フリーといった効果までは期待することができなかった。
【0011】
また、このネジ締結体は、少なくとも二種類のナットを使用しなければならないので、作業性、コスト及び重さ等の点において、必ずしもユーザーの満足を得るに足るものとはいえなかった。さらに、かかるネジ締結体は、埋め込みネジには適用できないという問題があった。
【0012】
また、特許文献2に係る締結部材および締結構造におけるボルトは、ボルトのネジ山とナットのネジ山とが弾性的に螺合し、締結後にお互いに軸方向に反発力を生じせしめるものであるため、その発生した反発力により、お互いのネジ山の摩擦力を向上して緩み止め効果を奏するものである。
【0013】
しかし、このように形成されたボルトには、次のような問題がある。
(1)このようなボルトは、一般的に、引張応力を受けるナット端部に位置するボルトのネジ山の付け根部において、ネジ山の弾性変形により大きな引張残留応力が発生するため、締結後の繰返し応力によって疲労破壊が発生する虞がある。
さらに(2)このようなボルトは、完全ネジ山でないネジ山を有する、いわゆる「耐疲労ボルト」(特許第4701253号、特許第4977178号)には、非完全ネジ部近傍においてボルトのネジ山とナットのネジ山の摺接面積が少ないため、適用しても十分な効果を発揮することができない虞がある。
【0014】
なお、「耐疲労ボルト」とは、ボルト円筒部側に位置するネジ山の頂部が一部除去されボルト頭部側又はボルト円筒部側に向かってネジ山外径が縮径したテーパー部と、テーパー部の最小径部からボルト頭部側又はボルト円筒部側に向かって緩やかな円弧状に形成された不完全ネジ除去部と、を有するボルトのことである。
【0015】
本発明は、かかる従来の問題点を解決するためになされたものであり、疲労強度に優れたボルトに簡単なメカニズムで緩みにくい特性を付与せしめることで、従来にない安全性、信頼性に優れた耐疲労・耐緩み性を備えたボルト構造およびボルト構造を適用したネジ締結体を提供するものである。
これにより、物の締結に使用するボルトの数を減少し、さらに、ボルトを締結するための孔の加工や、当該孔へのボルトの締結作業の工数を削減しつつ、メンテナンス・フリー等による大幅なコスト低減に寄与することができる。
【0016】
ここで、ボルトの疲労強度を支配する一般的要因について説明する。
[表1]は、ボルトの疲労強度が低下する要因とその対策および効果についてまとめたものである。疲労強度が低下する要因としては、(1)ボルトの各ネジ山に生起される荷重が不均一であること、(2)ボルトの各ネジ山間の谷底に引張り応力が集中すること、(3)ボルトの各ネジ山に曲げ応力が集中すること、(4)片当り、の4つを挙げることができる。
【0017】
本発明は、[表1]において、四角の二重線で囲った対策を実現することにより、従来の問題点を解決又は改善する耐疲労・耐緩み性を備えたボルトを提供するものである。具体的には、耐疲労ボルトにおいて、ネジ山をボルト軸心の直角断面に対して、ボルトの先端方向に2~10°傾けて形成するものである。
【0018】
【表1】
【0019】
なお、ボルトの緩みに関しては、多くの研究や製品開発がされているが、ボルトの疲労強度については、書籍等にはほとんど記載されていない。その理由は、ボルトのネジ山そのものが鋭い切欠き材の一種であり応力集中が生起しやすい形態であること、また、ボルトに生起される引張り荷重がボルトのネジ山とナットのネジ山との接触機構によって伝達されていること、によりボルトの疲労強度を向上することが極めて難しいためである。
【0020】
疲労破壊についてボルトとナットを比べると、破損するのはボルト側であり、ナットが破損することは極めて少ない。その理由は、ボルトには引張応力が作用するが、ナットには圧縮応力が作用するためである。しかも、ボルト及びナットは、それぞれのネジ山を嵌合するためにボルトの谷底の径をナットの谷底の径よりも小さく形成している。
従って、ボルトとナットの両者に同一の荷重が生起された場合、谷底の径が小さいボルト側に発生する応力がナットと比較して大きくなるため、破損しやすい。また、一般的に物体が破損する場合、圧縮応力により破損することは少なく、破損するのは引張り応力によるものである。
【0021】
また、ナットのネジ山間谷底の径の方が、ボルトのネジ山間谷底の径よりも大きく、さらに、ボルトのネジ山の径の方が、ボルトのネジ山間谷底の径よりも大きい。そうすると、ナットのネジ山間谷底の径をDとし、ボルトのネジ山間谷底の径をdとすると、ナットのネジ山間谷底の径の円周長はπDであり、ボルトのネジ山間谷底の径の円周長はπdであるため、πD>πdである。
一方、ボルトとナットのネジ山同士が摺接する個所に加わる力は、ボルトもナットも等しいため、谷の径の円周長が大きいナットの方が単位円周長当たりに受ける力が小さく壊れにくくなる。
【0022】
したがって、表1に記載しているように、ボルトの疲労強度を支配する(1)ボルトの各ネジ山に生起される荷重が不均一であること、(2)ボルトの各ネジ山間の谷底に引張り応力が集中すること、(3)ボルトの各ネジ山に曲げ応力が集中すること、(4)片当り、の4つの要因のいずれか、または、その全てについて対策を講じることが、ボルトの疲労強度の改善につながる。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明の第1の態様は、耐疲労・緩み防止機能を備えたボルト構造において、ボルトの軸線の先端側にネジ山を有する雄ネジ部を備え、雄ネジ部のネジ山を軸線の直角断面に対して雄ネジ部の先端側に2~10°傾けるように形成したものである。
【0024】
本発明の第2の態様は、ボルト軸線の先端側に形成された雄ネジ部と、雄ネジ部のボルト頭部側又はボルト円筒部側のネジ山の頂部の一部が除去されボルト頭部側又はボルト円筒部側に向かってネジ山外径が縮径したテーパー部と、テーパー部の最小径部からボルト頭部側又はボルト円筒部側に向かって緩やかな円弧状に形成された不完全ネジ除去部と、を有するように形成したものである。
【0025】
本発明の第3の態様は、本発明の第2の態様に記載されたボルトと、ナットと、を螺合させて使用するネジ締結体において、ボルトの雄ネジをナットの雌ネジよりも強度が高い材料で構成したものである。
【発明の効果】
【0026】
本発明の第1の態様によれば、耐疲労・緩み防止機能を備えたボルト構造において、ボルトの軸線の先端側にネジ山を有する雄ネジ部を備え、雄ネジ部のネジ山を軸線の直角断面に対して雄ネジ部の先端側に2~10°傾けるように形成したため、被締結部材をボルトにて締結した際にナットおよび雌ネジ構造を有する部材の雌ネジのネジ山先端部分が、ボルトの雄ネジの根元部分に摺接する。これにより、ナットの雌ネジのネジ山における先端部が、ボルトの雄ネジ部のネジ山間に形成される谷底近傍を押圧するとともに、ナットのネジ山がボルトのネジ山間の谷底近傍から反発力を受けて変形しながら摺接する構造とすることで緩みにくくすることができる。
【0027】
また、締結前はナットの雌ネジのネジ山における先端部がボルトの雄ネジのネジ山間に形成される谷部に摺接しているだけのため、ナットを締め付ける際の摩擦力を可及的に低減し、締め付け易い構造を実現している。そして、締結後はボルトとナットそれぞれのネジ山の局部的な変形によりナットとボルトのネジ山の当該変形部分全体が摺接する構造となるため摺接面積が拡大して摩擦力が増大し、緩みにくくすることができる。
【0028】
また、本発明に係るボルトは、従来のボルトに比較して、ボルトの疲労強度を支配する要因である(1)ボルトの各ネジ山に生起される荷重が不均一であること、(2)ボルトの各ネジ山間の谷底に引張り応力が集中すること、(3)ボルトの各ネジ山に曲げ応力が集中すること、(4)片当り、の4つの要因のうち、(2)ボルトの各ネジ山間の谷底に引張り応力が集中すること、(3)ボルトの各ネジ山に曲げ応力が集中すること、(4)片当り、の3つの要因を解消することができる。
【0029】
また、本発明の第2の態様によれば、ボルト軸線の先端側に形成された雄ネジ部と、雄ネジ部のボルト頭部側又はボルト円筒部側のネジ山の頂部の一部が除去されボルト頭部側又はボルト円筒部側に向かってネジ山外径が縮径したテーパー部と、テーパー部の最小径部からボルト頭部側又はボルト円筒部側に向かって緩やかな円弧状に形成された不完全ネジ除去部と、を有する、いわゆる耐疲労ボルトである。
更には、本発明に係る耐破壊用ネジ締結体は、第1の態様に記載のボルトに耐疲労ボルトの構造を適用して使用するものである。
【0030】
このように構成することにより、ボルトの各ネジ山にかかる荷重を略均一化することができ、さらに請求項1に記載のボルト構造とすることで、請求項1に記載の効果をも奏することができ、疲労強度を改善することができる。
また、不完全ネジ部への応力集中がなくなるため、ボルトの雄ネジ部に生起されるネジ山の応力集中係数をほとんど1に等しくできる。その結果、従来のボルトと比較して((1)ボルトの各ネジ山に生起される荷重が不均一であること、(2)ボルトの各ネジ山間の谷底に引張り応力が集中すること、(3)ボルトの各ネジ山に曲げ応力が集中すること、(4)片当り)の減少が期待できる。さらに、雌ネジのネジ山の先端部分を雄ネジのネジ山の根元部分に摺接させることにより、ボルト軸線の方向に反発力が発生し、この力がネジ締結体の緩み防止に効果を発揮する。さらに、ボルトのナットと摺接する端面に圧縮応力を付与せしめるため、その後の繰返し応力に対し壊れにくくなる。
【0031】
このように、ネジ締結体の緩み防止と、ボルト自体の疲労強度向上により、安全・安心の耐疲労・耐緩み防止機能を備えたボルト構造を実現することができる。
また、耐疲労・耐緩み防止機能を備えたボルト構造は、適切な使用条件のもとで、ほとんど緩むおそれがないため、疲労限の向上分だけボルトには大きな変動荷重を付加させることができる。
【0032】
例えば、従来締結部に10本のボルトを使用していた場合、それを5本のボルトに変更しても十分に安全性を確保することができる。
一方、設計上ボルトの本数を減らすことができない場合、ボルトの外径を細くすることができ、ボルトの外径を従来の1/√2の寸法に小径化することができる。これによって、穴あけ加工、ボルト締結の作業量の低下、軽量化、さらには、安全・安心およびメンテナンス・フリーのネジ締結体の確保、および繰返し使用が可能であるなどのメリットがある。
【0033】
また、本発明の第3の態様によれば、本発明の第2の態様に記載されたボルトと、ナットと、を螺合させて使用するネジ締結体において、ボルトの雄ネジをナットの雌ネジよりも硬度が高い材料で構成したものである。
【0034】
このように構成することにより、ボルトをナットと螺合した場合、ナットの雌ネジのネジ山がボルトの雄ネジのネジ山の傾斜角度に近づくように変形し、雌ネジと雄ネジの摺接面積が増大する。その結果、ボルトのネジ山全体でナットのネジ山全体と摺接することとなり、片当りを緩和して摺接時の摩擦力を増大し、当該摩擦力がボルトの緩み防止力として機能する。
【0035】
[耐緩み性について]
ボルトの雄ネジ部のネジ山をその先端方向へ2~10°傾けているために、ネジ山に傾斜角度を有していないナットと螺合させた場合、ナットのネジ山の先端部がボルトのネジ山間に形成された谷底近傍に接触しながら締め付けられる。
その後、さらにナットを締め付けると、ナットのネジ山がボルトの谷底近傍の接触部分を基点としてボルトのネジ山の傾斜角度に近づくように弾性変形し、ボルトのネジ山とナットのネジ山との接触面積が増大する。その結果、ボルトのネジ山全体でナットのネジ山全体と摺接することとなり、摺接時の摩擦力が緩み防止力として機能する。したがって、この時の力は、ボルトの危険断面と呼ばれているナットの端面部では、ボルト頭部方向への力となっているため、危険断面のネジ谷底の応力は、圧縮応力が発生する。このような圧縮応力は、締結時に作用する繰返し荷重に対して、有利に働くため、本発明は、耐緩み性を付与せしめるだけでなく、疲労強度向上においても、有用となることが期待できる。
【0036】
さらに、耐疲労・耐緩み防止機能を備えたボルト構造に係る本発明によれば、応力集中を低減することができるため、耐疲労特性の改善に加えて、例えば、応力腐食割れ(Stress Corrosion Cracking、SCC)、遅れ破壊(Delayed Fracture)、水素脆化(Hydrogen embrittlement、HE)などの疲労破壊以外の環境破壊などに対しても有効であると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】従来のボルトに従来のナットを締結したときの概要側面図である。
図2】従来のボルトとナットの締結状態におけるネジ山の荷重分担図である。
図3】従来のボルトの雄ネジの谷底に生ずる応力を説明する図である。
図4】従来のボルトとナットを螺合させたときの雄ネジと雌ネジの螺合状態を示す断面図である。
図5】従来のボルトとナットを螺合したときに作用する力の関係を示す説明図である。
図6】第1の発明に係るナットの断面図である。
図7図6におけるA部を拡大した本発明に係るナットの上半分の断面詳細図である。
図8】本発明に係るボルトと、従来のナットを螺合したときの断面図である。
図9図8におけるB部を拡大した本発明に係るボルトと、従来のナットを螺合したときに作用する力の関係を示す説明図である。
図10】第2の発明に係るボルトの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本発明の要旨は、ボルト軸線の先端側にネジ山を有する雄ネジを備え、雄ネジのネジ山を軸線の直角断面に対して雄ネジ部の先端側に2~10°傾けたことを特徴とするボルト構造である。
【0039】
また、ボルト軸線の先端側に形成された雄ネジ部と、雄ネジのボルト頭部側又はボルト円筒部側のネジ山の頂部の一部が除去されボルト頭部側又は前記ボルト円筒部側に向かってネジ山外径が漸次縮径したテーパー部と、テーパー部の最小径部からボルト頭部側又はボルト円筒部側に向かって緩やかな円弧状に形成された不完全ネジ除去部と、を有することを特徴とするボルト構造である。
【0040】
以下、従来のボルト・ナットにおける疲労破壊の要因及び対策等について説明した後、従来のボルト・ナットの締結体における疲労破壊の要因について説明し、その要因を踏まえて本発明の実施例を図面に基づき詳細に説明する。
【0041】
[従来のボルト・ナットにおける疲労破壊の要因及び対策等について]
まず、最初にボルト・ナットにおける疲労破壊の要因及び対策等について、概要を説明する。
【0042】
図1は、従来のボルトに従来のナットを締結したときの概要側面図である。
ここで、「従来のボルト」及び「従来のナット」とは、従来から一般に使用されているメートルネジ(JIS B 0205)のボルト及びナットを指すものとする。「従来のネジ」も同様とする。
【0043】
従来のボルト1は、図1に示すように、軸線9上の、略六角形のボルト頭部3、ボルト円筒部5及び雄ネジ部4から構成し、当該雄ネジ部4にナット2の雌ネジ部24を螺合させて締結するよう構成している。そして、ボルト1の座面3aにワッシャ又は/及びバネ座金7並びに被締結物8、8を挿通し、さらにワッシャ又は/及びバネ座金7を挿通し、ナット2を螺合して締結する。
【0044】
このようにして締結されたボルト1とナット2において、ボルト1の雄ネジ部4の各ネジ山10b1、10b2、10b3・・・10bi・・・は、表2及び図2に示すように荷重を分担している。
【0045】
【表2】
(単位:%、全体で100%)
【0046】
表2において、横軸のP1、P2、P3・・・(以下各荷重の一つを「Pi」と表記する。)はボルト1の各ネジ山10b1、10b2、10b3・・・(以下各ネジ山の一つを「10bi」と表記する。)における各荷重を示している。また、表2中の数字は、各ネジ山10biが荷重分担する比率(%)を示している。例えば、表2において、ネジ山数が6のときのネジ山10b1(表2中では符号P1)の荷重分担比率は33.7%である。また、ネジ山10b2(表2中では符号P2)の荷重分担比率は22.9%である。以下同様に、ネジ山10b3(表2中では符号P3)は15.8%、ネジ山10b4(表2中では符号P4)は11.4%と荷重分担比率は減少してゆく。
この傾向は、ネジ山数の多寡に関係なく同様の傾向を示しており、例えば、ネジ山数が10の時も同様の傾向を示している。
【0047】
図2は、従来のボルト1とナット2の締結状態におけるネジ山の荷重分担状況を示している。すなわち、図2は、従来のボルト1とナット2を締結した際の各ネジ山10biにおける各荷重Piの大きさを追記した荷重分担図である。
【0048】
図2に示すように、(1)ボルト1の各ネジ山10biの荷重分担は不均一である。(2)ボルト1のネジ山数に関係なく、最初のネジ山10b1に全体の荷重の約3分の1の荷重P1がかかっている。また、最初のネジ山10b1から3番目のネジ山10b3まででボルトにかかる荷重全体の70%を分担している。このように、ボルトとナットが螺合する際の先頭に位置するネジ山10b1から10b3に荷重が集中し、これが比較的低い応力で疲労破壊の1要因となっている。
【0049】
このように荷重が集中する要因は、次のように考えられている。すなわち、図3において、ボルト1にナット2を螺合し、ナット2に右向きに荷重Pが加わると、ボルト1の各ネジ山10biのフランク11とナット2の各ネジ山20niのフランク22とが摺接しているため、ナット2の各ネジ山20niのフランク22から、摺接しているボルト1の各ネジ山10biのフランク11に対し、ボルト1の雄ネジ部4を引張る方向(図3の右方向、または、ボルト1の先端部側)に荷重Piが作用する。この荷重Piは、摺接している各ネジ山10biの雄ネジの谷底13に対する引張力として作用する。
【0050】
図3において、σmiは、m番目のネジ山10bmの荷重Pmによりi番目のネジ山10biの谷底13に生ずる応力を示している。例えば、1番目のネジ山10b1の谷底13には、σ11、σ21、σ31・・・σv1の応力が発生している。ここで、σ11は1番目のネジ山10b1の荷重P1による応力、σ21は2番目のネジ山10b2の荷重P2による応力、σ31は3番目のネジ山10b3の荷重P3による応力を示している。また、図3における符号vは、ナット2と螺合するネジ山の総数のうち最後のネジ山の番号を示している。
【0051】
また、図3における「+」、「-」の符号は谷底13に対する引張応力と圧縮応力を示している。すなわち、符号「+」が引張応力を示し、符号「-」が圧縮応力を示している。
そうすると、ボルト1のネジ山10b1は左側のフランク11が図3において右側に押圧されているためにネジ山10b1の左側の谷底13には引張応力が生起されて「+」となり、ネジ山10b1の右側の谷底13はその逆の圧縮応力が生起されて「-」となる。
【0052】
したがって、図3に示すように、1番目のネジ山10b1の左側の谷底13には、ネジ山10b1からネジ山10bvまでにかかる応力(+σ11、+σ21、+σ31・・・+σv1)がすべて引張応力として作用する。
ネジ山10b1とネジ山10b2の間に位置する2番目の谷底13には、-σ12、+σ22、+σ32・・・+σv2、ネジ山10b2とネジ山10b3の間に位置する3番目の谷底13には、-σ13、-σ23、+σ33・・・+σv3の応力が作用する。
以下同様にして、引張応力の「+」と圧縮応力の「-」がキャンセルし合って、ネジ山10biの符号iが大きくなればなるほど、谷底13にかかる応力σmiは小さくなっていく。
【0053】
[従来のボルト・ナットの締結体における疲労破壊の要因について]
次に、従来のボルト・ナットの締結体における疲労破壊の要因について、図面を用いて説明する。なお、以下の説明では、煩雑さを避けるためにネジ山「10bi、20ni」の符号の表記は、特に必要のない限り省略する。
【0054】
図4は、従来のボルト1と従来のナット2を螺合させたときの、雄ネジ10と雌ネジ20の螺合状態を示す断面図である。図4において、ボルト1の雄ネジ10のネジ山の角度φbと、ナット2の雌ネジ20のネジ山の角度φnは共に60°で同一の角度である。
【0055】
すなわち、従来のボルト1の雄ネジ10のネジ山の角度φbは、軸線9と直交する垂線Lと、フランク11aとのなす角度であるフランク角φ1及び垂線Lとフランク11bとのなす角度であるフランク角φ2との和である。
同様に、ナット2の雌ネジ20のネジ山の角度φnもフランク角φ1とφ2との和である。そして、従来のネジ山の角度φb、φnは、この和の角度(φ1+φ2)であり、いずれも60°である。
【0056】
また、当該ネジ山の角度φb、φnは、軸線9と直交する垂線Lに対して左右対称であるためフランク角φ1とフランク角φ2は等しくなる。このため、フランク角φ1、φ2は、ネジ山の角度φb、φnの1/2であり、それぞれ30°となる。したがって、以下、フランク角φ1、φ2をφと表記する。
以上のように、雄ネジ10と雌ネジ20のそれぞれのフランク角は30°で等しいため、両者は上下対称であり、理論上は、雄ネジ10のフランク11bとナット2の雌ネジ20のフランク22a、及びフランク11aとフランク22bは、全面で摺接する。
【0057】
しかし、現実には、ボルト1とナット2は別工程で製造されるため、ボルト1を製造する過程で生起されるネジ山のピッチ公差によって、ボルト1のネジ山とナット2のネジ山との接触部に偏りを生じて接触部と非接触部とが生起されるため、全面で摺接することにはならない。しかも、仮に、寸法公差どおりに加工がされていたとしても、フランク11bとフランク22aは、小さな凹凸面を有するため、全面で摺接することはあり得ない。これは、フランク11aとフランク22bにおいても同様である。
【0058】
したがって、フランク11bとフランク22a及びフランク11aとフランク22bは、ボルト1とナット2の製造上の公差等によって両者の接触個所に偏りを生起する。その結果、フランク11b、22a及び11a、22bが摺接する個所は、その表面の一部分となる。このように、接触箇所に偏りを生起している状態を「片当り」と呼称している。したがって、フランク11bとフランク22a及びフランク11aとフランク22bは、全面が摺接するのではなく、いずれかの個所で片当り状態となって摺接している。このような片当たりは、寸法が大きいほど、また、ボルトの材質が硬いほど顕著になる。
【0059】
ここで、図5に示すように、雌ネジ20のフランク22aの根元部分近傍が、雄ネジ10のフランク11bの先端部分Xで摺接した場合について説明する。なお、交点Eは、フランク22aとフランク22bの延長線の交点である。
【0060】
図5は、従来のナット2と、従来のボルト1を螺合したときに作用する力の関係を示す説明図である。なお、本図における符号Fは、図3における荷重Piと同義である。以下は、フランク22aとフランク11bに作用する力についての説明であるので、一般に力学の分野で広く用いられている記号F及びfを用いて説明する。
【0061】
ナット2の雌ネジ20のフランク22aの根元部分は、本図に示すように、例えば、ボルト1の雄ネジ10のフランク11bの先端部分Xで摺接している。そして、先端部分Xには、荷重Pにおける1個のネジ山が負担する力Fが作用する。すなわちナット2の雌ネジ20のフランク22aの根元部分は、ボルト1の雄ネジ10のフランク11bの先端部分Xを力Fで押圧する。この力Fは、フランク11bに垂直方向の成分であるF2=Fcosφと、フランク11bに沿った方向の成分であるF1=Fsinφに分解することができる。
すなわち、ボルト1の雄ネジ10のフランク11bの先端部分Xは、力F2=Fcosφ1と力F1=Fsinφの成分を有する力Fで、押圧される。
なお、φ=30°であるから、cosφ=(√3/2)、sinφ=(1/2)となるが、以下では、cosφ、sinφで表記する。
【0062】
これに対して、フランク11bの先端部分Xは、力Fの反作用として力の向きが180°反転した力fが作用する。この力fは、フランク22aの根元部分を押圧する。力fは、フランク11bの垂直方向の成分であるf2=fcosφと、フランク11bに沿った方向の成分であるf1=fsinφに分解することができる。
すなわち、フランク22aの根元部分は、フランク11bの先端部分Xから、力f2=fcosφと、力f1=fsinφの成分を有する反作用による力fを受ける。
なお、作用反作用の法則により、力F1と力f1、及び力F2と力f2とはそれぞれ大きさが同じで、力の向きが180°反対である。
【0063】
ここで、力F1は、図5に示すように、ボルト1の雄ネジ10をフランク11bに沿って雄ネジ10の頂方向に作用する引張力である。すなわち、この力F1は、雄ネジ10が伸張する方向に作用する。
しかし、雄ネジ10は、塑性変形でない限り、その形状を維持するために、雄ネジ10の内部では引張力F1に抗する内部応力が発生する。
【0064】
内部応力とは、力を加えられた部材内に発生している単位面積あたりの力のことであり、内部応力σ=引張力/断面積 で表される。
したがって、摺接個所の先端部分Xにおける雄ネジ10の内部応力σ1は、先端部分Xにおける力Fが加えられる部分の断面積をS1とすると、σ1=F1/S1となる。
そして、摺接する個所である先端部分Xにおけるネジ山の断面積S1は、ネジ山の谷底13における断面積に比べて小さい。したがって、先端部分Xにおける内部応力σ1は、雄ネジ10の谷底13に生起される内部応力σよりも大きくなる。
【0065】
なお、この計算式における内部応力σ1はあくまでも全体の断面積における平均値であり、実際には力を加えられた部材の形状に応じて各部位ごとに内部応力が異なるため、内部応力の解析はそれほど簡単ではない。現実には、内部応力の解析は、CAE(Computer Aided Engineering)に依らなければ相当の困難を伴う。
【0066】
次に、力F2は、雄ネジ10のフランク11bを、図5に示すように、点Eを支点として反時計回りの方向に曲げようとする力として作用する。この力F2により点Eと先端部分Xの間には、フランク11bの面を伸張させようとする力が働く。また、フランク11aの面には、フランク11bの面とは反対に圧縮しようとする力が働く。
【0067】
すなわち、力F2は、雄ネジ10のネジ山を力F2の方向に変形させようとする力として作用する。その結果、摺接する側のフランク11bが伸張方向、その裏側のフランク11aが圧縮方向の力として作用する。これが、図3を用いて説明した引張応力(+σ)と圧縮応力(-σ)が生じる理由である。
【0068】
しかし、実際には、点Eから雄ネジ10の谷底13までの部分は、ボルト1のボルト円筒部5の延長上にあたる部分であるため内部応力σ1に係る断面積S1は極めて大きい。したがって、この部分に発生する内部応力σ1は無視できる。
一方、雄ネジ10の谷底13から先端部分Xまでは長さが長いため、曲げようとする力F2を受けると、雄ネジ10のネジ山の伸張量及び圧縮量も大きくなる。したがって、曲げ応力は大きくなり疲労強度に大きく影響する。
【0069】
また、力F2の作用については、次のようにも考えられる。
すなわち、フランク11bの直線部分における谷底13側の終端である変曲点をGとし、先端部分Xと変曲点Gとの長さをL1とすると、力F2は、変曲点Gを支点としてフランク11bを時計回りの方向に回転させようとする力である。したがって、フランク11bには、L1×F2からなる力のモーメントが発生する。
【0070】
以上のように、従来のボルト・ナットによる締結体における疲労破壊の要因は、図2を用いて説明した通り、(1)ボルト1の雄ネジ10に生起される荷重が不均一であり、さらに、(4)ボルト1のフランク11bの先端部分Xで片当りが発生すると、(2)ナット2からフランク11bに沿ってネジ山の頂方向に作用する引張力F1により引張応力を生じるとともに、(3)フランク11bに垂直方向の力F2による曲げ応力を生じる。これにより、従来のボルト1と従来のナット2の組合せによるネジ締結体は、疲労破壊を引き起こす4つの要因の全てに該当し、従来のボルト1が疲労破壊に至ることが論理付けられる。
【0071】
すなわち、表1に記載したように、従来のボルト・ナットの締結体における疲労破壊の要因である(1)ボルト1の雄ネジ10に生起される荷重が不均一であること、(2)ボルト1の雄ネジ10間の谷底13に引張り応力が集中すること、(3)ボルト1の雄ネジ10に曲げ応力が集中すること、(4)片当り、の4つの要因のいずれにも該当する。したがって、従来のボルト1およびナット2を利用したネジ締結体は、以上のような理由により疲労破壊に至る危険性を有している。
したがって、前記4つの要因のいずれか又はその全てについて対策を講じることがボルト1の疲労強度を改善することにつながる。
【0072】
[第1の発明について]
次に、第1の発明に係るボルト1を使用することで従来のネジ締結体における疲労破壊の要因対策について図面を用いて詳説する。
図6は、ボルト1の断面図である。図6において、実線は、本発明に係るボルトのネジ山を示し、また、二点鎖線は従来のボルトのネジ山の形状を示している。
【0073】
本発明に係るボルト1は、雄ネジ10のネジ山を先端側に2~10°傾けて形成し、雄ネジ10のフランク11bの根元部分Yを、ナット2の雌ネジ20のフランク22aの先端部と摺接させるように形成したことを特徴とする耐疲労・耐緩み防止機能を備えたボルト構造100である。
【0074】
図7は、図6におけるA部を拡大した本発明に係るボルト1の上半分の断面図である。
図7における二点鎖線は、従来のボルト1を示している。従来のボルト1の雄ネジ10のネジ山の角度(フランク角度)は、ネジ山のフランク11a、11bを上方に延長した交点Eとなす角度であり、前述の通り60°である。また、フランク11a、11bのフランク角φ、φは、点Eと雄ネジ10のピッチLpを二等分する点Hを結ぶ垂線Lと、それぞれのフランク11a、11bとがなす角度である。フランク角φ、φは、角度が相等しいため、ネジ山の角度の1/2となり、前述の通り30°である。なお、図中符号Lは、ボルト1の軸線9と直交する。
【0075】
一方、本図において実線で表された本発明に係るボルト1の雄ネジ10のネジ山の角度は、軸線9と直交する垂線Lに対してボルト1の先端側に2~10°傾けている。この傾きの角度をθとする。
この傾きの角度θは、雄ネジ10のネジ山のフランク11a、11bを上方に延長した交点Fと雄ネジ10のピッチLpを二等分する点Jとを結ぶ直線を垂線Mと、前述の垂線Lとのなす角度である。
【0076】
なお、雄ネジ10のネジ山をボルト1の先端側に傾きの角度θだけ傾けることにより螺合するナット2の雌ネジ20のフランク22bの先端部分をボルト1の雄ネジ10のフランク11bの根元部分に摺接するよう構成している。そのため、本発明に係るボルト1の雄ネジ10のピッチLpは、従来の雄ネジ10のピッチLpとピッチの大きさは同じであるが、図7に示すように、約(√3/2)Lp・tanθだけ図7において右側にずれる。
【0077】
また、ボルト1の先端側に角度θ傾いた垂線Mと、フランク11a、11bとのなすフランク角をそれぞれφ1、φ2とすると、本発明に係るナット2の雌ネジ20のネジ山の角度は、図7からわかるように、フランク角φ1とφ2の和となる。この和の角度は(φ1+φ2)<2φであり、従来のネジ山の角度である60°よりも小さくなる。
【0078】
本発明に係るボルト1の特徴は、雄ネジ10のネジ山をボルト1の先端側に2~10°傾けた点にある。
この傾きの角度θを2~10°とした理由について以下に説明する。先述のように、従来のネジ山のフランク角φは60°であり、垂線Lとフランク11aとがなすフランク角φはその半分の30°である。
そうすると、ナット2のフランク角度が60°でありフランク22aと垂線Lとのなす角度が30°であるため、垂線Lと垂線Mとがなす角度θを30°とするとネジ山が入らなくなる。そこで、上限値をその1/3の10°とした。また、当該傾きの角度θを0°にしたのでは従来のボルト1の構造と変わらないため、雌ネジ20のフランク22bの先端部とボルト1のフランク11aの谷底13近傍との接触面積が変わらずに摩擦力を生じにくい。そこで、下限値を2°とした。この数値は図面を描いて幾何学的手法を用いて決定したものであり、この範囲内であれば所期の目的を達成することが可能である。
【0079】
本発明に係るボルト1の雄ネジ10のネジ山は、雄ネジ10の先端側に角度θだけ傾いているために、当該雄ネジ10のフランク11aの根元部分Yは、ナット2の雌ネジ20のフランク22bの先端部分と摺接する。この摺接状態は、図7のボルト1の拡大断面図における上半部分、下半部分とも上下対称になる。
【0080】
図8は、本発明に係るボルト1と、従来のナット2を螺合したときの断面図である。本図に示すように、ボルト1のフランク11aの根元部分Yは、ナット2のフランク22aの先端部分と谷底13近傍で摺接するよう構成している。
【0081】
図9は、図8における符号B部を拡大した本発明に係るボルト1と、従来のナット2を螺合したときに作用する力の関係を示す説明図である。
ボルト1の雄ネジ10のフランク11aの根元部分Yは、本図に示すように、ナット2の雌ネジ20のフランク22bの先端部分と摺接する。そして、フランク11aの根元部分Yには、力Fが作用する。すなわち、ナット2の雌ネジ20のフランク22aは、ボルト1の雄ネジ10のフランク11bを力Fで押圧する。この力Fは、前記フランク11bの垂直方向の成分であるF2=Fcosφと、フランク11bに沿った方向の成分であるF1=Fsinφに分解することができる。
すなわち、ボルト1の雄ネジ10のフランク11bの根元部分Yは、力F2=Fcosφと力F1=Fsinφの成分を有する力Fで押圧される。
【0082】
これに対して、ボルト1の雄ネジ10のフランク11bの根元部分Yは、力Fの反作用による力fにより、ナット2の雌ネジ20のフランク22aの先端部分を押圧する。この力fは、力Fと大きさが同じで、力の向きが180°反対である。この反作用による力fは、前記フランク11bの垂直方向の成分である力f2=fcosφと、フランク11bに沿った方向の成分である力f1=fsinφに分解することができる。
すなわち、ナット2の雌ネジ20のフランク22aの先端部分は、ボルト1の雄ネジ10のフランク11bの根元部分Yから、力f2=fcosφと、力f1=fsinφの成分を有する反作用による力fを受ける。
なお、作用反作用の法則により、力F1とf1及び力F2とf2は、それぞれ大きさが同じで、力の向きが180°反対である。
【0083】
ここで、力F1は、図9に示すように、ボルト1の雄ネジ10のネジ山をフランク11bに沿って、ネジ山の頂方向に作用する引張力である。すなわち、この力F1は、ネジ山が伸張する方向に作用する。
しかし、当該ネジ山が伸張する塑性変形をしない限り、その形状を維持するために、ネジ山の内部では当該引張力F1に対する内部応力が発生する。
【0084】
内部応力とは、先述のとおり力を加えられた部材内に発生している単位面積あたりの力のことであり、内部応力σ=引張力/断面積で表される。
したがって、摺接する個所である根元部分Yにおける内部応力σ2は、根元部分Yの断面積をS2とすると、σ2=F1/S2となる。
そして、摺接個所の根元部分Yにおける力F1が加えられる部分のネジ山の断面積S2は、ネジ山の先端部分Xにおける断面積S1と比較してはるかに大きい。したがって、根元部分Yにおける内部応力σ2は、内部応力σ1よりもはるかに小さくなる。
【0085】
なお、この計算式における内部応力σ2はあくまでも平均値であり、現実には、内部応力の解析は、CAE(Computer Aided Engineering)に依らなければ相当の困難を伴うことは前述の通りである。
【0086】
次に、力F2は、ボルト1の雄ネジ10のフランク11bを、図9に示すように、点Eを支点として反時計回りの方向に曲げようとする力である。この力F2により点Eと根元部分Yの間には、フランク11bの面に当該力F2により伸張させようとする力が働く。また、その裏側のフランク11aの面には当該力F2により圧縮しようとする力が働く。
【0087】
しかし、実際には、点Eから雄ネジ10の谷底13までの部分は、ボルト1のボルト円筒部5の延長上にある部分であるため内部応力σ2に係る断面積S2が極めて大きい。したがって、この部分に発生する内部応力σ2は無視できる。一方、雄ネジ10の谷底13から根元部分Yまでは長さが短いため、曲げようとする力F2を受けても雄ネジ10のネジ山の伸張量及び圧縮量が大きくならない。このために、曲げ応力がボルト1の疲労強度に与える影響は小さい。
【0088】
また、力F2の作用については、次のようにも考えられる。ボルト1のフランク11bの直線部分の谷底13側の終端である変曲点をGとし、根元部分Yと変曲点Gとの長さをL1とすると、力F2は、変曲点Gを支点として反時計回りの方向に回転させようとする力である。したがって、フランク11bには、L1×F2からなる力のモーメントが発生する。力のモーメントとはこの式が示すとおり、長さ×力であり、例えば、梃子の原理もこの力のモーメントによるものである。梃子の原理によれば、力点に同じ力F2を加えた場合であっても、梃子の力点から支点までの長さが2倍になれば、作用点に作用する力は2倍になる。
したがって、長さL1が長くなれば雄ネジ10の根元部分Yに加わる力のモーメントの大きさも大きくなり、その結果、雄ネジ10の引張応力及び曲げ応力も大きくなる。
【0089】
しかし、雄ネジ10の谷底13の変曲点Gから根元部分Yとの長さL1は、長さが短いため、雄ネジ10には、長さL1の個所から力F2によるL1×F2なる力のモーメントによる力が加えられるが、その力のモーメントは小さい。
したがって、根元部分Yと変曲点Gとの長さL1における伸張量及び圧縮量は小さく、力のモーメントにより発生する曲げ応力の値は小さくなる。
よって、当該曲げ応力が疲労強度に与える影響は小さい。
【0090】
以上のように、本発明に係るボルト1は、ボルト1の雄ネジ10をボルト1の先端側に2~10°傾けることにより、雄ネジ10のフランク11bの根元部分Yにナット2の雌ネジ20のフランク22aの先端部分を摺接できるように構成し、ボルト1の雄ネジ10に与える引張力や曲げ力により生ずる内部応力σ2を小さくすることができる。
【0091】
また、本発明に係るボルト1は、雄ネジ10のフランク11bの根元部分Yを、ナット2の雌ネジ20のフランク22aの先端部分と摺接するように構成しているために、当該摺接面積は、従来のネジ構造と比較して狭くなることが想定される。
【0092】
したがって、このような状態は「片当り」に該当するが、この場合、フランク22aの先端部分とフランク11bの根元部分Yとの接圧が高くなり、しかも、ナット2の雌ネジ20は、内部応力によっては破壊しにくいため、雌ネジ20のフランク22aに局部的に容易に変形が発生して片当り状態が解消される。
【0093】
さらに、雌ネジ20の谷底23からフランク22aの先端部分までは長さが長いため雌ネジ20の先端部分は根元部分Yに弾接し、ナット2のフランク22aの先端部分は力Fで、ボルト1のネジ山のフランク11bの根元部分Yを押圧する。
【0094】
さらに、雌ネジ20のフランク22aの先端部分が、雄ネジ10のフランク11bの根元部分Yから反作用による力fを受けて局部的に変形しながら雌ネジ20と雄ネジ10が摺接する構造とすることで、雄ネジ10と雌ネジ20が軸線9方向にお互いに反発させるような軸力が発生し、これが耐緩み性を付与させて、従来のボルト1とナット2の螺合に比べて緩みにくさを生起するとともに、耐疲労特性にも良好なボルト構造100を得ることができる。
【0095】
また、締結前は雌ネジ20のフランク22aの先端部分が、雄ネジ10のフランク11bの根元部分Yに摺接しているだけのため、ナット2を締め付ける際の摩擦力を可及的に低減し、締付け易い構造を実現している。
そして、締結後は局部的な塑性変形によりボルト1とナット2のフランク11b、22aがフランク22aの塑性変形により全体で摺接する構造となるため摺接面積が拡大して摩擦力が増大し、緩みにくくすることができる。
【0096】
本発明に係るボルト1は、以上のように構成されており、かつ、以上説明したような作用を有するために、ボルト1の疲労強度を支配する要因である(1)ボルト1の各雄ネジ10に生起される荷重が不均一であること、(2)ボルトの各雄ネジ10間の谷底13に引張り応力が集中すること、(3)ボルト1の各雄ネジ10に曲げ応力が集中すること、(4)片当り、の4つの要因のうち、(2)ボルトの各雄ネジ10間の谷底13に引張り応力が集中すること及び(3)ボルト1の各雄ネジ10に曲げ応力が集中することについて、上記の原理により要因を解消することができる。
【0097】
また、(4)片当りについても、雌ネジ20のフランク22aの先端部分が、雄ネジ10のフランク11bの根元部分Yと摺接すると接圧が高くなり、雌ネジ20のフランク22aの先端部分に局所的に塑性変形が発生して片当り状態を解消することができる。
以上のとおり、第1の発明によれば、ボルトの疲労強度を支配する4つの要因のうち、(2)から(4)の3つの要因について対策を実施することができる。
【0098】
[第2の発明について]
次に、第2の発明について図面により説明する。
本発明は、第1の発明をさらに上回る特性を備えたものである。すなわち、第2の発明に係る耐疲労・耐緩み防止機能を備えたボルト構造100は、雄ネジ10と雌ネジ20の螺合によるネジ締結体において、図10に示すように、第1の発明に係るボルト1に「耐疲労ボルト」の特性を付加して従来のナット2と螺合させて使用することを特徴とするものである。
【0099】
第2の発明に使用する「耐疲労ボルト」は、図10に示すように、ボルト1のボルト円筒部5側の雄ネジ部4に、ネジ山を除去して縮径した不完全ネジ除去部6と、不完全ネジ除去部6から徐々に拡径するネジ山の頂部の一部が除去されたテーパー部4aとを鈍い円弧状に形成させたものである。
【0100】
そして、図10におけるボルト1のC部拡大図に示すように、不完全ネジ除去部6から雄ネジ部4の先端側に向けて漸次ネジ山を拡径して従来のネジ山の高さに至るテーパー部4aを形成している。これにより、不完全ネジ除去部6近傍の雄ネジ10への応力集中をなくし、応力集中係数αを1に等しい状態として荷重分担の均一化を実現することができる。
【0101】
このように形成されたボルト1の雄ネジ部4の雄ネジ10に螺合するナット2の雌ネジ20は、テーパー状に形成された部分が螺合高さの70~80%を占めるのが理想的としているために、ナット2の雌ネジ20の端面では、雄ネジ10のネジ山の高さは完全ネジ山高さの20~30%程度にすぎない。しかし、この場合でも、雌ネジ20のフランク22aの先端部分が雄ネジ10のフランク11bの根元部分Yに摺接するように雄ネジ10が先端側に向けて2~10°の傾きの角度θを有しているので、雄ネジ10のネジ山の頂部が部分的に除去されていても確実に締結することができ、締結強度に遜色は認められない。
【0102】
第2の発明は、以上のように構成しているために、不完全ネジ部の応力集中がほとんどなくなり、応力集中係数αはほとんど1に等しくなる。これにより、(1)ボルト1の各雄ネジ10に生起される荷重分担を均一化することができる。
したがって、第2の発明は、前記(2)から(4)の要因を対策済みの第1の発明に係るボルト1に各雄ネジ10に生起される荷重分担を均一化する構成を併用する構成であるため、ボルト1の危険断面であるナット2の雌ネジ20の端面において疲労強度を支配する(1)から(4)の4つの要因全てに対し、対策を講じていることになる。すなわち、(1)ボルト1の各雄ネジ10に生起される荷重分担を均一化し、(2)ボルト1の各雄ネジ10間の谷底13に引張り応力が集中することを緩和し、(3)ボルト1の各雄ネジ10に曲げ応力が集中することを緩和し、(4)片当りを減少することができる。
【0103】
さらに、雌ネジ20のフランク22aの先端部分が雄ネジ10のフランク11bの根元部分Yに弾接して摺接するよう構成することにより、ボルトの軸線9の方向に反作用による力が発生し、この力がネジ締結体の緩み防止に効果を発揮する。
【0104】
このように、ネジ締結体の緩み防止と、ボルト1自体の疲労強度向上により、安全・安心の締結構造を実現することができる。
また、耐疲労・耐緩み防止機能を備えたボルト構造100は、適切な使用条件のもとでは、ほとんど緩むおそれがないため、疲労限の向上分だけボルト1には大きな変動荷重を付加させることができる。
【0105】
例えば、締結部に従来10本のボルト1を使用していた場合、それを5本のボルト1、ナット2でも十分に安全性を確保することができる。その場合には、単にボルト1、ナット2等の数量を減らすだけでなく、ボルト孔加工の数も減らすことができ、ボルト1、ナット2の締付け作業も従来の半分で済む。
また、ボルト1、ナット2の使用本数を減らすことができることは、締結部の重量軽減にもつなげることができる。
【0106】
さらに、本ボルト構造の発明は、応力集中を低減することができるため、耐疲労特性の改善に加えて、例えば、応力腐食割れ(Stress Corrosion Cracking、SCC)や遅れ破壊(Delayed Fracture)、水素脆化(Hydrogen embrittlement、HE)などの疲労破壊以外の環境破壊などに対しても有効であると考えられる。
【0107】
本ボルト構造は、従来のナット2との組み合わせに対して適用できることはいうまでもないが、それ以外にも、例えば、埋め込みボルトや両ネジボルトの場合にも、問題なく適用可能である。また、雌ネジのネジ山の先端部分を雄ネジのネジ山の根元部分に摺接させることにより、ボルトの軸線方向に反発力が発生し、この力がボルトの緩み防止に効果を発揮する。
【0108】
また、本発明に係る耐疲労・耐緩み防止機能を備えたボルト構造100に使用するボルトの材料に関しては、特に制約を設ける必要はなく、金属、非金属を問わず、全ての固体材料にその考え方を適用できる。しかし、特に効果が顕著と考えられるのは、鉄鋼材料や銅、アルミニウム、チタン及びマグネシウム等の軟質金属とそれらの合金類である。また、一部の硬質金属に適用する場合、ボルト1及びナット2の両方とも同じ硬質であると、両者の螺合時に噛付きを起こすおそれがあるので、その場合は壊れにくい雌ネジ20側の材料を少し軟らかい材料(ボルト1材料の硬さを100%とした場合、ナットの硬さを、ボルトの硬さと同等または60~90%程度)に変更することが望ましい。
このように構成することにより、部分的に片当りが発生していても、締結使用時に軟らかいナット2のネジ山が変形して、片当りを緩和する。
【0109】
以上の実施形態において説明した本発明に係る耐疲労・耐緩み防止機能を備えたボルト構造100は、上述した実施形態に限られず、上述した実施形態の中で開示した各構成を相互に置換したり組み合わせを変更した構成、公知発明及び上述した実施形態の中で開示した各構成を相互に置換したり組み合わせを変更した構成等も含まれる。また、本発明の技術的範囲は上述した実施形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された事項とその均等物にまで及ぶものである。
【0110】
例えば、ボルト1の雄ネジ10のネジ山は、雄ネジ部4の先端側に2~10°傾けた形状に構成しているが、当該傾きの角度θの範囲から外れる場合であっても、雄ネジ10のフランク11bの根元部分Yを、ナット2の雌ネジ20のフランク22aの先端部分と摺接させるようにして本発明と同様の効果を奏するものである場合は均等物であることは当然である。
【符号の説明】
【0111】
1 ボルト
2 ナット
3 ボルト頭部
3a 座面
4 雄ネジ部
4a テーパー部
5 ボルト円筒部
6 不完全ネジ除去部
7 ワッシャ又は/及びバネ座金
8 被締結物
9 軸線
10 雄ネジ
10b 雄ネジのネジ山
11 雄ネジのフランク
13 谷底
20 雌ネジ
20n 雌ネジのネジ山
22 雌ネジのフランク
23 谷底
24 雌ネジ部
100 耐疲労・耐緩み防止機能を備えたボルト構造
θ 傾きの角度
φ、φ1、φ2 フランク角
φb、φn ネジ山の角度
Lp ピッチ
L、M 直線
G 変曲点
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10