(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-05
(45)【発行日】2023-12-13
(54)【発明の名称】継手付きホース
(51)【国際特許分類】
F16L 37/086 20060101AFI20231206BHJP
A62C 33/00 20060101ALI20231206BHJP
【FI】
F16L37/086
A62C33/00 C
(21)【出願番号】P 2021017695
(22)【出願日】2021-02-05
【審査請求日】2022-11-04
(73)【特許権者】
【識別番号】593140299
【氏名又は名称】株式会社山田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100100055
【氏名又は名称】三枝 弘明
(72)【発明者】
【氏名】笠原 正司
(72)【発明者】
【氏名】笠原 宏文
【審査官】岩瀬 昌治
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-069092(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 37/086
A62C 33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内側に出没自在な爪を備えた受け金具と、前記爪と係合可能な環状凹部を備えた差し金具と、前記受け金具と前記差し金具が一端と他端にそれぞれ取り付けられたホースと、を含む継手付きホースであって、
前記差し金具は筒状体と、前記筒状体に対してスライド自在かつ回転自在に前記筒状体を取り囲む円筒状の押し輪とを有し、
前記押し輪は一端にフランジを具備し、
前記フランジは対向する2つの張り出し部と、前記押し輪の軸線回りに前記2つの張り出し部と直交する位置に設けられた対向する2つの切り欠き部と、を備えており、
前記2つの切り欠き部は前記2つの張り出し部より幅狭に形成されており、前記2つの切り欠き部のいずれか一方又は両方
にはその外周縁に前記押し輪の径方向外側へ僅かに突出する3つ以上の凸部が互いに間隔を空けて設けられていることを特徴とする継手付きホース。
【請求項2】
内側に出没自在な爪を備えた受け金具と、前記爪と係合可能な環状凹部を備えた差し金具と、前記受け金具と前記差し金具が一端と他端にそれぞれ取り付けられたホースと、を含む継手付きホースであって、
前記差し金具は筒状体と、前記筒状体に対してスライド自在かつ回転自在に前記筒状体を取り囲む円筒状の押し輪とを有し、
前記押し輪は一端にフランジを具備し、
前記フランジは対向する2つの張り出し部と、前記押し輪の軸線回りに前記2つの張り出し部と直交する位置に設けられた対向する2つの切り欠き部と、を備えており、
前記2つの切り欠き部は前記2つの張り出し部より幅狭に形成されており、
前記2つの切り欠き部は第1の切り欠き部と第2の切り欠き部とであり、
前記第1の切り欠き部にはその外周縁に前記押し輪の径方向外側へ僅かに突出する3つ以上の凸部が互いに間隔を空けて設けられ、
前記第2の切り欠き部にはその外周縁に全長に亘って前記押し輪の径方向内側へ円弧状に凹む1つの凹部と、前記1つの凹部の両端に配置され、前記押し輪の径方向外側へ僅かに突出する2つの凸部と、が設けられていることを特徴とする継手付きホース。
【請求項3】
前記2つの張り出し部の少なくとも一方には
その外周縁に指を引っ掛け可能な指掛け部が設けられていることを特徴とする請求項1
又は2に記載の継手付きホース。
【請求項4】
前記指掛け部は前記押し輪の径方向内側へ凹む凹部であることを特徴とする請求項
3に記載の継手付きホース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は継手付きホースに関し、特に、消防用ホースを継手によって着脱自在に連結したり分離したりするのに好適な継手付きホースに関する。
【背景技術】
【0002】
図4は従来の継手付きホースにおける差込式結合継手の一部切り欠き断面斜視図である。
図4に示すように、従来の継手付きホース200は、ホースHの一端と他端に差し金具30と受け金具40とがそれぞれ取り付けられている。この差し金具30の先端部を受け金具40の受け口に挿入すると、受け金具40の中の爪42a,42b,42cが差し金具30の環状凹部30gに引っ掛かって差し金具30と受け金具40が連結し、この状態で、差し金具30の押し輪32を受け金具40の側へスライドさせると、押し輪32によって爪42a,42b,42cが環状凹部30gから外れて、差し金具30と受け金具40が分離可能に構成されている。言い換えると、差し金具30と受け金具40は差込式結合継手を構成している。この種類の差込式結合継手は日本工業規格(Japanese Industrial Standard、JIS)に記載されている(JIS B 9911)。これにより、継手付きホース200を複数本連結させてホースを伸ばすことができるようになっている。
【0003】
この継手付きホース200は二重巻きにした状態で取り扱われる。具体的には、継手付きホース200のホースHを中央付近で2つに折り畳み、その折り畳み部分を中心としてコイル状に巻回し、その外周部において、差し金具30の外側に受け金具40の側のホース部分を被せて、つまり、差し金具30を上下からホースHで挟んで継手付きホース200を二重巻きにし、この状態で、継手付きホース200を格納箱や消防車等に収容したり、消防士や消防団員が火災現場まで担いで移動させたりする(
図6(a)参照)。
【0004】
このとき、差し金具30の押し輪32はフランジ32aを有しており、このフランジ32aは径方向外側へ円環状に張り出している。このため、継手付きホース200を二重巻きにして、その外周部において差し金具30をホースHの間に挟むと、押し輪32のフランジ32aによってホースHが二重巻きの径方向外側へ押し広げられるので、継手付きホース200を二重巻きにした状態の外径が大きくなってしまうとともに、押し輪32のフランジ32aとホースHとが点接触となるので、二重巻きにした継手付きホース200を担いで走ると、差し金具30がホースHの間から抜け出たり、ホースHが差し金具30の上から落下したりして、継手付きホース200を二重巻きにした状態が崩れてしまうという問題がある。
【0005】
図5は従来の差し金具における押し輪の斜視図(a)と平面図(b)である。
図5(a)と
図5(b)に示すように、上述の問題を解決するために、フランジ52aに一対の平坦部55,56を備えた差し金具50の押し輪52が考案されている。この一対の平坦部55,56は押し輪52の軸線O3を挟んで対向配置されている。この種類の押し輪52は、例えば、特許文献1と特許文献2に記載されている。特許文献1にはフランジ(フランジ部)の対向位置に一対の切り欠き部を備えた差し金具(雄金具)の押し輪(解除リング)が記載されている。特許文献2にはフランジ(フランジ形状部分)が平面から見て略楕円形である管継手の押し輪(開放リング)が記載されている。
【0006】
図6は
図5の押し輪を備えた継手付きホースを二重巻きにした状態を示す側面図(a)と、II-II断面図(b)である。
図6(a)と
図6(b)に示すように、継手付きホース300は上述した押し輪52を備えた差し金具50がホースHの一端に取り付けられているとともに、受け金具40がホースHの他端に取り付けられている。この状態で、継手付きホース300を二重巻きにして、その外周部において、差し金具50をホースHで挟むと、押し輪52のフランジ52aにおける一対の平坦部55,56をそれぞれホースHと当接させることができるようになっている。これにより、二重巻きにした継手付きホース300の外径を従来に比べて小さくすることができるとともに、押し輪52のフランジ52aとホースHとが線接触となるので、差し金具50をホースHの間から外れ難くすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2009-207704号公報
【文献】実開昭62-18494号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述の継手付きホース300を二重巻きにした状態でその外周部において差し金具50をホースHの間に挟むと、押し輪52のフランジ52aにおける一対の平坦部55,56とホースHとが線接触しているだけなので、消防士や消防団員が二重巻きにした継手付きホース300を担いで走ると、差し金具50とホースHとが互いに横滑りするおそれが依然としてある。このため、差し金具50がホースHの間から抜け出たり、差し金具50の上からホースHが滑り落ちたりして、継手付きホース300の二重巻きが崩れてしまうおそれを拭い去ることができない。
【0009】
そこで、本発明は上記問題点を解決するものであり、その課題は、差し金具とホースとが互いに横滑りすることを防止又は低減できる継手付きホースを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために本発明は、内側に出没自在な爪を備えた受け金具と、前記爪と係合可能な環状凹部を備えた差し金具と、前記受け金具と前記差し金具が一端と他端にそれぞれ取り付けられたホースと、を含む継手付きホースであって、前記差し金具は筒状体と、前記筒状体に対してスライド自在かつ回転自在に前記筒状体を取り囲む円筒状の押し輪とを有し、前記押し輪は一端にフランジを具備し、前記フランジは対向する2つの張り出し部と、前記押し輪の軸線回りに前記2つの張り出し部と直交する位置に設けられた対向する2つの切り欠き部と、を備えており、前記2つの切り欠き部は前記2つの張り出し部より幅狭に形成されており、前記2つの切り欠き部のいずれか一方又は両方に滑り止め手段が設けられていることを特徴とする。
【0011】
この発明によれば、内側に出没自在な爪を備えた受け金具と、前記爪と係合可能な環状凹部を備えた差し金具と、前記受け金具と前記差し金具が一端と他端にそれぞれ取り付けられたホースと、を含む継手付きホースであって、前記差し金具は筒状体と、前記筒状体に対してスライド自在かつ回転自在に前記筒状体を取り囲む円筒状の押し輪とを有し、前記押し輪は一端にフランジを具備し、前記フランジは対向する2つの張り出し部と、前記押し輪の軸線回りに前記2つの張り出し部と直交する位置に設けられた対向する2つの切り欠き部と、を備えており、前記2つの切り欠き部は前記2つの張り出し部より幅狭に形成されており、前記2つの切り欠き部のいずれか一方又は両方に滑り止め手段が設けられていることにより、前記継手付きホースを二重巻きにしてその外周部において前記差し金具を前記ホースの間に挟んで、前記差し金具の前記押し輪における前記2つの切り欠き部を前記ホースと当接させると、前記2つの切り欠き部のいずれか一方又は両方が前記滑り止め手段を介して前記ホースと当接するので、前記滑り止め手段が設けられていない場合に比べて、前記差し金具と前記ホースとが互いに横滑りすることを防止又は低減できる。
【0012】
本発明において、前記滑り止め手段は前記2つの切り欠き部の長手方向に互いに間隔を空けて配置され、前記押し輪の径方向外側へ突出する2つ以上の凸部であることが好ましい。この発明によれば、前記滑り止め手段は前記2つの切り欠き部の長手方向に互いに間隔を空けて配置され、前記押し輪の径方向外側へ突出する2つ以上の凸部であることにより、前記2つ以上の凸部が前記ホースの外周と当接するので、前記切り欠き部の外周縁が平滑に形成されている場合より、前記押し輪の前記フランジを前記ホースの外周へ食い込ませることができる。
【0013】
本発明において、前記2つの切り欠き部の少なくとも一方にはその長手方向の全長に亘って前記押し輪の径方向内側へ円弧状に凹む凹部が形成されていることが好ましい。この発明によれば、前記2つの切り欠き部の少なくとも一方にはその長手方向の全長に亘って前記押し輪の径方向内側へ円弧状に凹む凹部が形成されていることにより、前記凹部の上に前記ホースが載置されると、前記ホースの一部が前記凹部の中に落ち込んで下側から円弧状に支持されるので、前記ホースが前記切り欠き部の上から滑り落ちることを防止又は低減できる。
【0014】
本発明において、前記2つの張り出し部の少なくとも一方には指を引っ掛け可能な指掛け部が設けられていることが好ましい。この発明によれば、前記2つの張り出し部の少なくとも一方には指を引っ掛け可能な指掛け部が設けられているので、指を前記指掛け部に引っ掛けることによって前記差し金具の前記筒状体に対して前記押し輪の姿勢を保持できる。
【0015】
本発明において、前記指掛け部は前記押し輪の径方向内側へ凹む凹部であることが好ましい。この発明によれば、前記指掛け部は前記押し輪の径方向内側へ凹む凹部であるので、前記指掛け部が貫通孔(開口)である場合に比べて、前記指掛け部に対して指を容易に着脱させることができる。
【発明の効果】
【0016】
以上、説明したように本発明によれば、差し金具の押し輪におけるフランジの2つの切り欠き部のいずれか一方又は両方に滑り止め手段が設けられているので、継手付きホースを二重巻きにして差し金具をホースの間に挟んだ状態において、差し金具とホースが互いに横滑りすることを防止又は低減できるという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明に係る実施形態の継手付きホースを二重巻きにした状態を示す側面図(a)とI-I断面図(b)とである。
【
図2】本実施形態に係る差し金具を示す斜視図である。
【
図3】本実施形態に係る押し輪を示す斜視図(a)と平面図(b)とである。
【
図4】従来の継手付きホースにおける差込式結合継手の一部切り欠き断面斜視図である。
【
図5】従来の差し金具における押し輪の斜視図(a)と平面図(b)とである。
【
図6】
図5の押し輪を備えた継手付きホースを二重巻きにした状態を示す側面図(a)とII-II断面図(b)とである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る実施形態の継手付きホースについて詳細に説明する。
図1は本発明に係る実施形態の継手付きホースを二重巻きにした状態を示す側面図(a)とI-I断面図(b)とである。
図1(a)に示すように、継手付きホース100は差し金具10と受け金具20とホースHとを有する。差し金具10と受け金具20は金属からなり、差込式結合継手を構成し、従来例と同様な機構で互いに着脱可能に構成されている。このうち、受け金具20とホースHとは従来の受け金具40とホースHとそれぞれ同一である。
【0019】
なお、
図2と
図3において、矢印Upで示す方向を上側とし(
図2と
図3(a)では紙面の上側である。)、矢印Dwで示す方向を下側とし(
図2と
図3(b)では紙面の下側である。)、矢印Frで示す方向を前側とし(
図3(b)では紙面の下側である。)、矢印Bkで示す方向を後側とし(
図3(b)では紙面の上側である。)、矢印Lfで示す方向を左側とし(
図3(b)の紙面の左側である。)、矢印Rtで示す方向を右側とする(
図3(b)の紙面の右側である。)。矢印Upと矢印Dwで示す方向を上下方向とし、矢印Frと矢印Bkで示す方向を前後方向とし、矢印Lfと矢印Rtで示す方向を左右方向とする。この上下方向は
図2では差し金具10の軸線O1に沿って伸びる方向と同一に設定されており、
図3(a)では押し輪12の軸線O2に沿って伸びる方向と同一に設定されている。これら方向は相対的な位置関係を示すものであり、重力方向に対する絶対的な位置関係を示すものではない。
【0020】
図2は本実施形態に係る差し金具を示す斜視図である。
図2に示すように、差し金具10は金属からなり、筒状体11と押し輪12を有する。筒状体11は中空の円筒状である。この筒状体11の基端部の側、図示例では矢印Upで示す上側の外周には複数の凹凸11aが円環状に形成されており、ホースHを取り付けたときにホースHを抜け難くすることができるようになっている。これに対して、筒状体11の先端部、図示例では矢印Dwで示す下側の端部には幅厚部11bが設けられている。この幅厚部11bは差し金具10の軸線O1の回りに周回状に幅厚に形成されており、言い換えると、筒状体11の径方向外側へ周回状に膨出しており、押し輪12の抜け止めを構成している。
【0021】
図3は本実施形態に係る押し輪を示す斜視図(a)と平面図(b)である。
図3(a)に示すように、押し輪12は中空の円筒状であり、フランジ12aと円筒12bを有する。フランジ12aは押し輪12の径方向外側へ張り出しており、円筒12bの一端、図示例では上側の端部に設けられている。フランジ12aと円筒12bは一体形成されている。この押し輪12の内側は上下方向に貫通しており、筒状体11を挿通可能に構成されている。
【0022】
図3(b)に示すように、押し輪12のフランジ12aは、2つの張り出し部と2つの切り欠き部とを有する。2つの張り出し部は第1の張り出し部13と第2の張り出し部14とであり、押し輪12の径方向外側へ円弧状に張り出しており、押し輪12の軸線O2を挟んで対向配置されている。図示例では、第1の張り出し部13と第2の張り出し部14とは所定の幅で円弧状に湾曲しており、矢印Frと矢印Bkで示す前後方向に伸びており、押し輪12の軸線O2を挟んで矢印Lfと矢印Rtで示す左右方向の左右の位置にそれぞれ配置されている。
【0023】
ここで、第1の張り出し部13には指を引っ掛け可能な指掛け部Fgが形成されている。この指掛け部Fgに指を引っ掛けることによって押し輪12の姿勢を保持できるようになっている。つまり、押し輪12の回転を止めることができるようになっている。この指掛け部Fgは押し輪12の径方向内側へ凹む凹部である。このため、指掛け部Fgが貫通孔である場合に比べて、指を指掛け部Fgへ着脱容易に引っ掛けることができるようになっている。また、この指掛け部Fgの凹部は円弧状に湾曲している。これにより、指掛け部Fgの凹部が矩形状に屈曲している場合に比べて、指を指掛け部Fgから容易に取り外すことができる。さらに、この指掛け部Fgは第1の張り出し部13の外周縁に形成されており、第1の張り出し部13の長手方向の中央部、図示例では前後方向の中央部に配置されている。
【0024】
2つの切り欠き部は第1の切り欠き部15と第2の切り欠き部16とであり、2つの張り出し部より幅狭に形成されており、一方向に伸びており、押し輪12の軸線O2を挟んで対向配置されている。図示例では、第1の切り欠き部15と第2の切り欠き部16とは左右方向に伸びており、軸線O2を挟んで前後の位置にそれぞれ配置されている。このため、2つの切り欠き部は2つの張り出し部と押し輪12の軸線O2の回りに直交する位置に配置されている。
【0025】
この状態において、2つの張り出し部と2つの切り欠き部とは押し輪12の軸線O2の回りに環状に接続されており、一体形成されている。より具体的には、第1の張り出し部13と第2の張り出し部14と第1の切り欠き部15と第2の切り欠き部16とは押し輪12の軸線O2に対して左側と右側と前側と後側とにそれぞれ配置され、この状態で環状に接続されている。これら第1の張り出し部13と第2の張り出し部14と第1の切り欠き部15と第2の切り欠き部16とは一体形成されている。
【0026】
図3(b)に示すように、ここで、第1の切り欠き部15は3つの凸部P1,P2,P3を有する。この3つの凸部P1,P2,P3は押し輪12の径方向外側へ僅かに突出しており、第1の切り欠き部15の外周縁に互いに間隔を空けて配置されている。図示例では、3つの凸部P1,P2,P3は前側へ僅かに突出しており、左右方向に互いに間隔を空けて配置されている。このため、第1の切り欠き部15の外周縁をホースHの外周へ押し当てると、3つの凸部P1,P2,P3がホースHの外周を押圧するようになっている。この3つの凸部P1,P2,P3は上記滑り止め手段に相当する。
【0027】
より具体的には、第1の切り欠き部15には2つの凹部R1,R2が形成されている。この2つの凹部R1,R2は押し輪12の径方向内側へ円弧状に凹んでおり、第1の切り欠き部15の外周縁に互いに間隔を空けて、図示例では、第1の切り欠き部15の長手方向(左右方向)の両端部に配置されている。この状態において、一方の凹部R1の外側(左側)の角部が凸部P1を構成し、他方の凹部R2の外側(右側)の角部が凸部P3を構成している。この2つの凸部P1,P2は丸みを帯びており、ホースHの外周が傷つくことを防止できるようになっている。この2つの凹部R1,R2の間に凸部P2が設けられている。この凸部P2は略矩形に僅かに突出している。
【0028】
一方、第2の切り欠き部16は2つの凸部P4,P5を有する。この2つの凸部P4,P5は押し輪12の径方向外側へ僅かに突出しており、第2の切り欠き部16の外周縁に互いに間隔を空けて配置されている。図示例では、2つの凸部P4,P5は後側へ僅かに突出しており、左右方向に間隔を空けて配置されている。言い換えると、2つの凸部P4,P5は第2の切り欠き部16の長手方向の両端部にそれぞれ配置されている。このため、第2の切り欠き部16の外周縁をホースHの外周へ押し当てると、2つの凸部P5,P6がホースHの外周を押圧するようになっている。この2つの凸部P4,P5は上記滑り止め手段に相当する。
【0029】
より具体的には、第2の切り欠き部16には1つの凹部R3が形成されている。この1つの凹部R3は押し輪12の径方向内側へ円弧状に凹んでおり、第2の切り欠き部16の長手方向(左右方向)の全長に亘って形成されている。この凹部R3の内側はホースHの一部を保持可能に構成されている。凹部R3の両端部(両方の角部)は2つの凸部P4,P5をそれぞれ構成している。この2つの凸部P4,P5は丸みを帯びており、ホースHの外周が傷つくことを防止できるようになっている。
【0030】
図2に戻って、押し輪12はその内側に筒状体11が挿通されて筒状体11に取り付けられている。換言すると、押し輪12は筒状体11を取り囲むように筒状体11の外側に配置されている。この状態において、押し輪12は筒状体11に対して差し金具10の軸線O1に沿って(上下方向)にスライド自在に構成されているとともに、矢印Rdで示す差し金具10の軸線O1の回りに回転自在に構成されている。このとき、筒状体11の外周における複数の凹凸11aの下側に円環状の止め輪17が取り付けられている。この止め輪17と筒状体11の幅厚部11bとは押し輪12の抜け止めを構成しており、この止め輪17と筒状体11の幅厚部11bの間に押し輪12が配置されている。このため、押し輪12は止め輪17と筒状体11の幅厚部11bとの間をスライド自在に構成されている。
【0031】
この状態において、差し金具10は従来例と同様に、押し輪12の円筒12bと筒状体11の幅厚部11bとの間に環状凹部10gが設けられている。この環状凹部10gは円環状の凹溝であり、押し輪12の円筒12bの下側の端部と筒状体11の外周と幅厚部11bの上側の段部とで囲まれており、押し輪12のスライドによって開閉可能に構成されている。
【0032】
また、この環状凹部10gは受け金具20の爪を引っ掛けたり取り外したりすることができるように構成されている。具体的には、差し金具10を受け金具20の受け口の中へ挿入すると、受け金具20の爪が差し金具10の環状凹部10gと引っ掛かるとともに、この状態で、差し金具10の押し輪12を受け金具20の側へスライドさせて、環状凹部10gを閉じると、爪が環状凹部10gから外れるようになっている。これにより、差し金具10と受け金具20とが着脱可能に構成される。
【0033】
図1(a)と
図1(b)に戻って、継手付きホース100は上述した差し金具10と受け金具20がホースHの一端と他端にそれぞれ取り付けられている。この継手付きホース100を従来例と同様に二重巻きにして、その外周部において差し金具10をホースHの間に挟んで、押し輪12のフランジ12aにおける第1の切り欠き部15と第2の切り欠き部16との双方の外周縁をホースHの外周へ当接させると、第1の切り欠き部15の3つの凸部P1,P2,P3と第2の切り欠き部16の2つの凸部P4,P5とがホースHの外周を押圧するようになっている。これにより、第1の切り欠き部15と第2の切り欠き部16との外周縁が平坦に形成されている場合に比べて、第1の切り欠き部15とホースHとの接触面積と、第2の切り欠き部16とホースHとの接触面積とがそれぞれ小さくなるので、3つの凸部P1,P2,P3と2つの凸部P4,P5とがそれぞれホースHの外周へ食い込むようになっている。
【0034】
上述のように構成された継手付きホース100は、二重巻きにして、その外周部において、押し輪12のフランジ12aにおける第1の切り欠き部15と第2の切り欠き部16との両方がホースHと当接するように、差し金具10をホースHの間に挟んでまとめられる。
【0035】
本実施形態においては、継手付きホース100を二重巻きにして、その外周部において差し金具10をホースHの間に挟んだ状態において、押し輪12のフランジ12aにおける第1の切り欠き部15と第2の切り欠き部16との外周縁をホースHの外周に当接させると、3つの凸部P1,P2,P3と2つの凸部P4,P5とがそれぞれホースHの外周に食い込むので、第1の切り欠き部15と第2の切り欠き部16との外周縁が平坦に形成されている場合に比べて、差し金具10とホースHとが互いに横ずれすることを防止又は低減でき、継手付きホース100を二重巻きにした状態が崩れることを防止又は低減できる。
【0036】
また、第2の切り欠き部16には1つの凹部R3が形成されており、この凹部R3は第2の切り欠き部16の長手方向の全長に亘って円弧状に凹んでいることにより、第2の切り欠き部16の外周縁の上にホースHが載置されると、ホースHの一部が凹部R3の中に落ち込むので、凹部R3がホースHを下側から保持することができ、ホースHが第2の切り欠き部16の上から落下し難くすることができる。
【0037】
この実施形態においては、差し金具10は押し輪12が筒状体11に対して回転自在に取り付けられており、押し輪12のフランジ12aにおける第1の張り出し部13には指を引っ掛け可能な指掛け部Fgが形成されており、この指掛け部Fgは凹部であることにより、指を指掛け部Fgに引っ掛けることによって押し輪12の姿勢を保持することができるので、この押し輪12の姿勢を保持した状態で、継手付きホース100を二重巻きにすることができ、押し輪12のフランジ12aにおける第1の切り欠き部15と第2の切り欠き部16との両方がホースHの外周と当接するように、差し金具10をホースHの間に容易に挟むことができる。
【0038】
尚、本実施形態の継手付きホース100は、上述の図示例にのみ限定されるものではなく、本考案の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、第1の切り欠き部15は滑り止め手段として3つの凸部P1,P2,P3が設けられているが、2つの凸部が設けられていてもよいし、4つ以上の凸部が設けられていてもよい。また、第1の切り欠き部15の外周縁が波状やジグザグ状に形成されていてもよい。さらに、第1の切り欠き部15の外周縁が平坦に形成されており、その表面が粗面に形成されていてもよいし、その表面にローレット加工が施されていてもよい。これにより、第1の切り欠き部15がホースHに対して横滑りすることを防止又は低減できる。
【0039】
同様に、第2の切り欠き部16は滑り止め手段として2つの凸部P4,P5が設けられているが、3つの凸部が設けられていてもよいし、4つ以上の凸部が設けられていてもよい。また、第2の切り欠き部16の外周縁が波状やジグザグ状に形成されていてもよい。さらに、第2の切り欠き部16の外周縁が平坦に形成されており、その表面が粗面に形成されていてもよいし、その表面にローレット加工が施されていてもよい。これにより、第2の切り欠き部16がホースHに対して横滑りすることを防止又は低減できる。
【0040】
なお、本実施形態では2つの切り欠き部の両方に滑り止め手段が設けられているが、2つの切り欠き部のいずれか一方に滑り止め手段が設けられていてもよい。すなわち、第1の切り欠き部15と第2の切り欠き部16とのいずれか一方にのみ滑り止め手段が設けられていてもよい。この滑り止め手段は例えば、3つの凸部P1,P2,P3でもよいし、2つの凸部P4,P5でもよいし、4つ以上の凸部でもよい。また、第1の切り欠き部15と第2の切り欠き部16とのいずれか一方の外周縁が波状やジグザグ状に形成されていてもよい。さらに、第1の切り欠き部15と第2の切り欠き部16とのいずれか一方の外周縁が平坦に形成され、その表面が粗面に形成されていてもよいし、その表面にローレット加工が施されていてもよい。
【0041】
また、本実施形態では2つの切り欠き部には互いに異なる滑り止め手段が設けられているが、同一の滑り止め手段が設けられていてもよい。換言すると、第1の切り欠き部15と第2の切り欠き部16とは両方とも滑り止め手段として3つの凸部P1,P2,P3が設けられていてもよいし、2つの凸部P4,P5が設けられていてもよいし、4つ以上の凸部が設けられていてもよい。また、第1の切り欠き部15と第2の切り欠き部16との両方の外周縁が波状やジグザグ状に形成されていてもよい。さらに、第1の切り欠き部15と第2の切り欠き部16との両方の外周縁が平坦に形成されており、その表面が粗面に形成されていてもよいし、その表面にローレット加工が施されていてもよい。
【0042】
なお、指掛け部Fgは第1の張り出し部13に形成されているが、第2の張り出し部14に形成されていてもよいし、第1の張り出し部13と第2の張り出し部14の両方に形成されていてもよい。また、指掛け部Fgは円弧状の凹部であるが矩形状の凹部でもよいし、指掛け部Fgは凹部ではなく指を挿入可能な貫通孔(開口)でもよい。
【符号の説明】
【0043】
100,200,300…継手付きホース、10,30,50…差し金具、10g,30g…環状凹部、11…筒状体、11a…凹凸、11b…幅厚部、12,32,52…押し輪、12a,32a,52a…フランジ、12b…円筒、13…第1の張り出し部、14…第2の張り出し部、15…第1の切り欠き部、16…第2の切り欠き部、17…止め輪、20,40…受け金具、42a,42b,42c…爪、55,56…平坦部、Fg…指掛け部、H…ホース、O1,O2,O3…軸線、P1,P2,P3,P4,P5…凸部、R1,R2,R3…凹部、Up,Dw,Fr,Bk,Lf,Rt、Rd…矢印