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特許7397519サーボシステムのステイフネス調整方法とサーボシステムのステイフネス調整装置とサーボシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-05
(45)【発行日】2023-12-13
(54)【発明の名称】サーボシステムのステイフネス調整方法とサーボシステムのステイフネス調整装置とサーボシステム
(51)【国際特許分類】
   G05B 13/02 20060101AFI20231206BHJP
【FI】
G05B13/02 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022123617
(22)【出願日】2022-08-02
(65)【公開番号】P2023029255
(43)【公開日】2023-03-03
【審査請求日】2022-08-02
(31)【優先権主張番号】202110957455.2
(32)【優先日】2021-08-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】518336123
【氏名又は名称】哈▲尓▼▲濱▼工▲業▼大学
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】楊 明
(72)【発明者】
【氏名】陳 揚洋
【審査官】藤崎 詔夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-037129(JP,A)
【文献】特開昭59-032012(JP,A)
【文献】特開2007-202348(JP,A)
【文献】米国特許第06876168(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サーボシステムのステイフネス調整方法であって、
前記サーボシステムの特徴シグナルを再構成することと、
前記特徴シグナルに基づいて、前記サーボシステムの振動特徴の共分散係数を算出することと、
算出された前記振動特徴の共分散係数に基づいて、前記サーボシステムのステイフネスを調整することと、を含み、
前記サーボシステムは、直列連結される速度ループコントローラとハイパスフィルタとを含み、
前記の前記サーボシステムの特徴シグナルを再構成することは、
速度ループコントローラ回転速度コマンドと速度ループコントローラ回転速度フィードバックを取得することと、
前記速度ループコントローラ回転速度コマンドと、前記速度ループコントローラ回転速度フィードバックと、速度ループコントローラ等価比例係数とに基づいて、電流コマンド比例コンポーネントを特定することと、
システムの定格電流を基準にして、前記電流コマンド比例コンポーネントを正規化処理することと、
正規化処理された前記電流コマンド比例コンポーネントをハイパスフィルタに通してサーボシステムの特徴シグナルの再構成を完了することと、を含み、
下式に基づいて、サーボシステムの振動特徴の共分散係数P IIR (n)を算出し、

ここで、P IIR (n)は第n個離散型サイクルにおけるサーボシステムの振動特徴の共分散係数であり、φ(n)は第n個離散型サイクルにおけるサーボシステムの振動特徴周波数のサーチグラジエント関数であり、K IIR (n)は第n個離散型サイクルにおけるサーボシステムのリカージョンゲインであり、nは第n個離散サイクルと示されかつ1以上の整数であり、μ IIR は忘却因子であり、
ここで、K IIR (n)とφ(n)は、特徴シグナルに基づいて特定され、具体的には、
前記特徴シグナルに基づいて、振動期待値移行関数y IIR (n)を確立することと、
前記y IIR (n)に基づいて、前記振動特徴周波数に対するサーチグラジエント関数Φ(n)を確立することと、
前記Φ(n)に基づいて、リカージョンゲインK IIR (n)を更新することと、を含み、
前記の算出された前記振動特徴の共分散係数に基づいて、前記サーボシステムのステイフネスを調整することは、
前記サーボシステムの安定性を判断することと、
前記サーボシステムが不安定である場合に、不安定が発生後直ちに前記サーボシステムのステイフネスを低下させて、前記サーボシステムが安定に回復した後、システム調整処理を終了させることと、
前記サーボシステムが安定である場合に、前記サーボシステムのステイフネスをサイクル終了時に増加させることと、を含むことを特徴とするサーボシステムのステイフネス調整方法。
【請求項2】
下式に基づいて、前記電流コマンド比例コンポーネントを特定し、

ここで、Gkは電流コマンド比例コンポーネントであり、Kspは速度ループコントローラ比例ゲイン係数であり、ωmRefは速度ループコントローラ回転速度コマンドであり、ωmは速度ループコントローラ回転速度フィードバックであることを特徴とする請求項に記載のサーボシステムのステイフネス調整方法。
【請求項3】
下式に基づいて、サーボシステムの特徴シグナルの再構成を完了し、

ここで、上式は再構成されたサーボシステムの特徴シグナルのs領域関数の式であり、sはラプラス変換の微分演算子であり、xIIRは再構成されたサーボシステム特徴シグナルであり、INはシステム定格電流であり、Gtはハイパスフィルタの関数の式であることを特徴とする請求項に記載のサーボシステムのステイフネス調整方法。
【請求項4】
前記の前記サーボシステムの安定性を判断することは、
算出された前記振動特徴の共分散係数PIIR(n)が所定係数閾値qIIR1より小さい継続時間が、設定時間qIIR2に達していたかどうかを判定することと、
前記振動特徴の共分散係数PIIR(n)が所定係数閾値qIIR1より小さい継続時間が、設定時間qIIR2に達していた場合に、前記サーボシステムが不安定であると認められることと、
前記振動特徴の共分散係数PIIR(n)が所定係数閾値qIIR1より小さい継続時間が、設定時間qIIR2に達していなかった場合に、前記サーボシステムが安定であると認められることと、を含むことを特徴とする請求項に記載のサーボシステムのステイフネス調整方法。
【請求項5】
プロセッサと、プログラムコマンドを有するメモリとを備えるサーボシステムのステイフネス調整装置であって、
前記プロセッサは、前記プログラムコマンドを実行すると、請求項1ないしのいずれか1項に記載のサーボシステムのステイフネス調整方法を実行するように構成されることを特徴とする、サーボシステムのステイフネス調整装置。
【請求項6】
直列連結される速度ループコントローラとハイパスフィルタとを含むサーボシステムであって、
請求項に記載のサーボシステムのステイフネス調整装置をさらに備えることを特徴とするサーボシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、信号処理およびモータシステムのパラメータ調整の技術分野に関し、例えば、サーボシステムのステイフネス調整方法とサーボシステムのステイフネス調整装置とサーボシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
サーボ産業システムでは、制御対象が多岐にわたり、デフォルトのパラメータではユーザーの要求性能を満たすことができないため、新たに導入したサーボドライブ装置では、コントローラーのパラメータ調整を何度も行う必要がある。面倒な手動での試運転を不要にするため、サーボシステムのパラメータセルフ調整技術を開発した。
【0003】
現在、主流の駆動パラメータのセルフ調整方法のほとんどは、時間領域の基準を使用している。時間領域の基準は、制御パラメータの調整を完了するように、ステップ波、正弦波、方形波、および他の事前に設定された特別な軌跡に依存する。
【0004】
本開示の実施形態を実施する過程で、従来技術において、少なくとも以下のような問題が明らかになった。特別な軌跡に依存してサーボシステムのステイフネス調整方法を決定することは、アルゴリズムの適用性を低下させる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
開示された実施形態のいくつかの態様の基本的な理解を提供するために、以下に簡単な概要を記載する。記載された概要は、一般的な解説を目的としたものではなく、また、重要な/必須的な構成要素を特定したり、これらの実施形態の保護範囲を描写したりするものではなく、むしろ、後に続く詳細な説明の前文として記載されたものである。
【0006】
本開示の実施形態は、サーボシステムのステイフネス調整方法アルゴリズムの適用性を高めるための、サーボシステムのステイフネス調整方法、装置、及びサーボシステムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
いくつかの実施形態では、前記サーボシステムのステイフネス調整方法は、サーボシステムの特徴シグナルを再構成することと、前記特徴シグナルに基づいて、前記サーボシステムの振動特徴の共分散係数を算出することと、算出された前記振動特徴の共分散係数に基づいて、前記サーボシステムのステイフネスを調整することとを含む。
【0008】
いくつかの実施形態では、前記サーボシステムのステイフネス調整装置は、プロセッサと、プログラムコマンドを有するメモリとを備え、前記プロセッサは、前記プログラムコマンドを実行すると、前記サーボシステムのステイフネス調整方法を実行するように構成される。
【0009】
いくつかの実施形態では、前記サーボシステムは、前記サーボシステムのステイフネス調整装置を含む。
【発明の効果】
【0010】
本開示の実施形態に提供される、サーボシステムのステイフネス調整方法とサーボシステムのステイフネス調整装置とサーボシステムは、以下の技術効果を実現できる。サーボシステムの特徴シグナルを再構成することにより、システムのパラメータとシステムの特徴シグナルとの関係を特定し、さらにシステム振動特徴の共分散係数を算出することにより、システムのステイフネス調整を完了する。サーボシステムのステイフネス調整処理中で、特別な軌跡に依存することなく、システム自体のパラメータに基づいて調整判断を完成することで、アルゴリズムの互換性と知能化の程度を高め、調整時間を短縮し、サーボシステムに対して良い保護を提供する。
【0011】
上記の一般的な説明および以下の説明は、例示的および説明的なものに過ぎず、本願発明を限定することを意図するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本開示の一実施形態によって提供されるサーボシステムのステイフネス調整方法の概略図である。
図2】本開示の一実施形態によって提供される実験データのグラフである。
図3】本開示の一実施形態によって提供されるサーボシステムのステイフネス調整装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本開示の実施形態の特徴及び技術内容をより詳細に理解できるようにするために、本開示の実施形態を添付図面と併せて以下に詳細に説明するが、これらの図面は例示のみを目的として提供され、本開示の実施形態を限定することを意図するものでない。以下の技術的説明では、開示された実施形態を十分に理解するために、複数の詳細について説明する。しかし、そのような詳細がない場合でも、1つまたは複数の実施形態を実施することができる。他の場合、添付図面を簡略化するために、当業者に知られている構造および装置を簡略化して示すことができる。
【0014】
本開示の実施形態の明細書及び特許請求の範囲並びに上記添付図面における「第1」、「第2」等の用語は、同様の対象を区別するために用いられ、特定の順序又はシーケンスを説明するために用いる必要はない。このように使用されるデータは、本明細書に記載される本開示の実施形態の目的のために、適切な場合には、交換可能であることを理解されたい。また、「含む」、「持つ」という用語、およびその変形は、非排他的な包含を意図している。
【0015】
特に指定のない限り、「複数」は2つ以上を表す。本開示の実施形態において、文字「/」は、先行するオブジェクトと後続するオブジェクトとが「または」の関係にあることを示す。例えば、A/Bは、AまたはBを意味する。「および/または」という用語は、オブジェクトの関連付けを表す言葉で、3つの関係が存在しうることを示す。例えば、Aおよび/またはBは、AまたはB、あるいは、AおよびBを意味する。「対応」という用語は、関連性または拘束関係を意味することができ、AがBに対応することは、AとBの間に関連性または拘束関係があることを意味する。
【0016】
図1を参照しながら、本開示の実施形態は、サーボシステムのステイフネス調整方法を提供する。サーボシステムのステイフネス調整方法は、サーボシステムがサーボシステムの特徴シグナルを再構成するステップS01と、サーボシステムが特徴シグナルに基づいて、サーボシステムの振動特徴の共分散係数を算出するステップS02と、サーボシステムが算出された振動特徴の共分散係数に基づいて、サーボシステムのステイフネスを調整するステップS03とを含む。
【0017】
本開示の実施形態によって提供されるサーボシステムのステイフネス調整方法を用いて、サーボシステムの特徴シグナルを再構成することにより、システムのパラメータとシステムの特徴シグナルとの関係を特定し、さらにシステム振動特徴の共分散係数を算出することにより、システムのステイフネス調整を完了する。サーボシステムのステイフネス調整処理中で、特別な軌跡に依存することなく、システム自体のパラメータに基づいて調整判断を完成することで、アルゴリズムの互換性と知能化の程度を高め、調整時間を短縮し、サーボシステムに対して良い保護を提供する。
【0018】
任意選択的に、サーボシステムの特徴シグナルを再構成することは、速度ループコントローラ回転速度コマンドと速度ループコントローラ回転速度フィードバックを取得することと、前記速度ループコントローラ回転速度コマンドと、前記速度ループコントローラ回転速度フィードバックと、速度ループコントローラ等価比例係数とに基づいて、電流コマンド比例コンポーネントを特定することと、システムの定格電流を基準にして、電流コマンド比例コンポーネントを正規化処理することと、正規化処理された電流コマンド比例コンポーネントをハイパスフィルタに通してサーボシステムの特徴シグナルの再構成を完了することと、を備える。
【0019】
本技術的解決手段において、速度ループコントローラは比例積分コントローラである。比例積分コントローラは、システムが収集した第n個サイクルの速度ループコントローラ回転速度コマンドωmRefと速度ループコントローラ回転速度フィードバックωmを差にして、第n個サイクルの速度ループコントローラ回転速度誤差量△ωmを求め、nは正の整数である。
任意選択的に、式(1)に基づいて、電流コマンド比例コンポーネントを特定し、
ここで、Gkは電流コマンド比例コンポーネントであり、Kspは速度ループコントローラ比例ゲイン係数であり、ωmRefは速度ループコントローラ回転速度コマンドであり、ωmは速度ループコントローラ回転速度フィードバックである。
【0020】
実際の適用では、式(2)に基づいて、速度ループコントローラの出力移行関数を特定することができ、
ここで、Ksiは速度ループコントローラ積分ゲイン係数、i∈nである。なお、速度ループコントローラ出力移行関数は、電流コマンド比例コンポーネントと電流コマンド積分コンポーネントとからなり、本出願の技術的解決手段では、電流コマンド比例コンポーネントGkが選択される。
【0021】
いくつかの任意選択の実施形態では、経験式に従い、式(3)に基づいて速度ループコントローラ比例ゲイン係数を特定することができ、
ここで、Ktはモータの電磁トルク定数であり、Jはシステム全体の慣性モーメントであり、ωsc0は速度ループ帯域幅である。
なお、モータの電磁トルク定数Ktとシステム全体の慣性モーメントJは、実際の動作条件に応じて知ることができる値であり、本出願はこれに対して具体的に限定しない。
【0022】
いくつかの任意選択の実施形態では、経験式に従い、式(4)に基づいて速度ループコントローラ積分ゲイン係数を特定することができ、
ここで、ωsc0は速度ループ帯域幅である。
実際の適用では、速度ループ帯域幅ωsc0は、サーボシステムによって調整されたスティフネス係数であると理解され得る。さらに、式(3)と式(4)を式(2)に代入することにより、サーボシステムにおける各パラメータとスティフネス係数ωsc0との関係を特定することができる。なお、式(1)におけるωmRefmと、式(2)における△ωmとは、同じ意味である。
【0023】
任意選択的に、式(5)に基づいて、サーボシステムの特徴シグナルの再構成を完成し、
ここで、上式は再構成されたサーボシステムの特徴シグナルのs領域関数の式であり、sはラプラス変換の微分演算子であり、xIIRは再構成されたサーボシステムの特徴シグナルであり、INはシステム定格電流であり、Gtはハイパスフィルタの関数の式である。
【0024】
技術的解決手段において、サーボシステムは、直列連結される速度ループコントローラとハイパスフィルタとを含む。式(6)に基づいて、ハイパスフィルタの関数の式を特定することができ、
ここで、fHPはハイパスフィルタのカットオフ周波数である。
【0025】
任意選択的に、式(7)に基づいて、サーボシステムの特徴シグナルの再構成を完成し、
ここで、上式は再構成されたサーボシステムの特徴シグナルのs領域関数の式である。
実際の適用では、ハイパスフィルタのカットオフ周波数fHPは、30Hz、50Hz、42Hz、又はその他の値であってもよい。本開示の実施形態では、ハイパスフィルタのカットオフ周波数としてfHP=50Hzが選択される。なお、式(7)は、式(1)と式(6)を式(5)に代入することにより得られるものである。
このように、サーボシステムの特徴シグナルを再構成することにより、システムが不安定である場合に、制御シグナルが発振し、制御シグナル中の発振周波数情報を捕捉することを実現し、効果的に、正規化処理後の電流コマンド比例コンポーネントとハイパスフィルタの関数の式を通して、直流コンポーネントの影響を解消し、後続のシステムが自体のパラメータに依存してステイフネス調整を完了するための基礎を提供する。
【0026】
任意選択的に、式(8)に基づいて、サーボシステムの振動特徴の共分散係数PIIR(n)を算出し、
ここで、PIIR(n)は第n個離散型サイクルにおけるサーボシステムの振動特徴の共分散係数であり、φ(n)は第n個離散型サイクルにおけるサーボシステムの振動特徴周波数のサーチグラジエント関数であり、KIIR(n)は第n個離散型サイクルにおけるサーボシステムのリカージョンゲインであり、μIIRは忘却因子である。
実際の適用では、忘却因子μIIRは定数として演算に関与する。なお、PIIR(n)の初期値は、PIIR(0)で表すことができ、PIIR(0)の値は、0.01、0.02、0.04、又はその他の値とすることができる。本開示の実施形態では、PIIR(n)の初期値としてPIIR(0)=0.01が選択される。
ここで、KIIR(n)とφ(n)は、特徴シグナルに基づいて特定される。
任意選択的に、特徴シグナルに基づいてKIIR(n)とφ(n)を特定することは、特徴シグナルに基づいて、振動期待値移行関数y IIR(n)を確立することと、y IIR(n)に基づいて、振動特徴周波数のサーチグラジエント関数φ(n)を確立することと、φ(n)に基づいて、リカージョンゲインKIIR(n)を更新することと、を含む。
【0027】
任意選択的に、式(9)に基づいて、振動期待値移行関数y IIR(n)を特定し、
ここで、上式は振動期待値移行関数のz領域移行関数の式であり、zは離散領域Z変換の変換演算子であり、nは第n個離散型サイクルと示されかつ1以上の整数であり、aIIR(n)は振動期待値移行関数のマッチング周波数パラメータ、ρは伝達型振動抑制幅の定数である。
実際の適用では、aIIR(n)の初期値はaIIR(0)で表すことができ、aIIR(0)の値は、0、1、0.35、又はその他の値とすることができ、伝達型振動抑制幅定数ρは、0.7、0.8、0.9、又はその他の値とすることができる。本開示の実施形態では、aIIR(n)の初期値としてaIIR(0)=0が選択され、伝達型振動抑制幅定数としてρ=0.9が選択される。
【0028】
任意選択的に、振動特徴周波数のサーチグラジエント関数φ(n)は式(10)に基づいて確立され、
【0029】
任意選択的に、式(11)に基づいて、リカージョンゲインKIIR(n)を更新し、
ここで、PIIR(n)は振動期待値移行関数のマッチング周波数パラメータに基づいて更新される。
【0030】
任意選択的に、式(12)に基づいて、振動期待値移行関数のマッチング周波数パラメータを更新し、
ここで、aIIR(n)は振動期待値移行関数のマッチング周波数パラメータである。
【0031】
なお、本開示の実施形態では、振動期待値移行関数y IIR(n)を確立し、振動特徴周波数のサーチグラジエント関数φ(n)を確立し、リカージョンゲインKIIR(n)を更新し、サーボシステムの振動特徴の共分散係数PIIR(n)を算出し、振動期待値移行関数のマッチング周波数パラメータaIIR(n)を更新することは、1個の離散型サイクルにおける5つのステップであると理解され得る。実際の適用では、振動期待値移行関数y IIR(n)(すなわち、式(9)に対応する)において、第1個離散型サイクルにおける振動期待値移行関数のマッチング周波数パラメータaIIR(n)は、初期値aIIR(0)をとって演算することが理解されるべきである。さらに、第n個離散型サイクルにおける振動期待値移行関数y IIR(n)に基づいて、振動特徴周波数のサーチグラジエント関数φ(n)(すなわち、式(10)に対応する)を特定する。さらに、第n個離散型サイクルにおける振動特徴周波数のサーチグラジエント関数φ(n)と、第n個離散型サイクルにおけるサーボシステムの振動特徴の共分散係数PIIR(n)と、忘却因子μIIRとに基づいて、リカージョンゲインKIIR(n)(すなわち、式(11)に対応する)を更新する。なお、第1個離散型サイクルにおける振動特徴の共分散係数PIIR(n)は、初期値PIIR(0)をとって演算する。このとき、第n個離散型サイクルにおけるサーボシステムの振動特徴の共分散係数PIIR(n)(すなわち、式(8)に対応する)を求めることができる。さらに、第n個離散型サイクルにおけるリカージョンゲインKIIR(n)と、第n個離散型サイクルにおける振動期待値移行関数y IIR(n)とに基づいて、振動期待値移行関数のマッチング周波数パラメータaIIR(n)(すなわち、式(12)に対応する)を更新する。そして、サーボシステムを次の離散サイクルに進むように、求められて更新された振動期待値移行関数のマッチング周波数パラメータaIIR(n)を、振動期待値移行関数y IIR(n+1)に代入する。
このように、振動期待値移行関数を確立し、振動特徴周波数のサーチグラジエント関数を確立し、リカージョンゲインを更新し、振動期待値移行関数のマッチング周波数パラメータを更新することにより、異なる離散型サイクルにおけるサーボシステムの振動特徴の共分散係数を特定し、それによって後続のシステムが自体のパラメータに依存してステイフネス調整を完了するための判断基準を提供する。
【0032】
任意選択的に、算出された振動特徴の共分散係数に基づいて、サーボシステムのステイフネスを調整することは、サーボシステムの安定性を判断することと、サーボシステムが不安定である場合に、サーボシステムのステイフネスをサイクル終了時に減少させ、システム調整処理を終了させることと、サーボシステムが安定である場合に、サーボシステムのステイフネスをサイクル終了時に増加させることと、を含む。
実際の適用では、サイクル終了時は、第n個離散型サイクルが終了した後を指す。すなわち、サーボシステムが不安定である場合に、サーボシステムのステイフネスを第n個離散型サイクル終了時に減少させ、システム調整処理を終了させることであり、サーボシステムが安定である場合に、サーボシステムのステイフネスを第n個離散型サイクル終了時に増加させることである。
【0033】
任意選択的に、サーボシステムの安定性を判断することは、
算出された振動特徴の共分散係数PIIR(n)が所定係数閾値qIIR1より小さい継続時間が、設定時間qIIR2に達していたかどうかを判定することと、振動特徴の共分散係数PIIR(n)が所定係数閾値qIIR1より小さい継続時間が、設定時間qIIR2に達していた場合に、前記サーボシステムが不安定であると認められることと、振動特徴の共分散係数PIIR(n)が所定係数閾値qIIR1より小さい継続時間が、設定時間qIIR2に達していなかった場合に、前記サーボシステムが安定であると認められることと、を含む。
【0034】
任意選択的に、サーボシステムの安定性を下記のように判断することができ、
上記の不等式を満たす場合に、システムの状態が不安定であると判定する。ここで、kは正の整数であり、qIIR1は所定サーボシステムの振動特徴の共分散係数の閾値であり、qIIR2は所定サーボシステムの振動特徴の共分散係数の時間閾値であり、Tsは離散型サイクルである。
このように、本開示の実施形態によって提供されるサーボシステムのステイフネス調整方法を用いて、サーボシステムの特徴シグナルを再構成することにより、システムのパラメータとシステムの特徴シグナルとの関係を特定し、さらにシステム振動特徴の共分散係数を算出することにより、システムのステイフネス調整を完了する。サーボシステムのステイフネス調整処理中で、特別な軌跡に依存することなく、システム自体のパラメータに基づいて調整判断を完成し、それによってアルゴリズムの互換性と知能化の程度を高め、調整時間を短縮し、サーボシステムに対して良い保護を提供する。
【0035】
図2を参照すると、本開示の実施形態によって提供される実験データ図に示すように、fHPを50Hzに設定して、ρを定数0.9に設定して、PIIR(0)を0.01に設定して、aIIR(0)を0に設定して、qIIR1を0.0025に設定して、qIIR2を0.1に設定して、図中のシステムは位置制御モードにあり、iqは現在のトルク値を反映するためのシステムq軸電流であり、調整軌跡は最大ストローク10rであり、最高回転速度はプラスマイナス500r/minの往復動作条件であり、fscはシステムの帯域幅すなわちシステムのステイフネスを表し、ΔθMAEは単一サブサイクル内のシステム追従誤差の平均絶対誤差の計算結果を表す。このことから、システムのステイフネスfscの増加に伴い、追従誤差ΔθMAEが徐々に減少し、且つ、サーボシステムの特徴シグナルを再構成することにより、サーボシステムの共分散係数PIIRの値も徐々に減少するが、システムが不安定である条件を満たしていないため、システムはステイフネス調整戦略の作用下で徐々に剛性を増加させることが分かる。第30s付近では、システムのステイフネスが徐々に限界に増加すると、システムが不安定になり、すなわち、q軸電流と回転速度が大きく変動し、この時点で0.0025以下まで急激に低下し、且つ、0.01s以上を維持することで、共分散係数によるシステムの不安定周波数領域の判定条件を満たし、システムが不安定であると判定された。その後、システムは、ステイフネス調整戦略の作用下でステイフネスを減少させ、直ちにステイフネスを138Hzまで低下させ、システムは安定に回復した。それと同時に、サーボシステムのステイフネス調整も完了して、好適なサーボシステムのステイフネスが得られた。
【0036】
図3に示すように、本開示の実施形態は、プロセッサ(processor)100とメモリ101とを備える、サーボシステムのステイフネス調整装置を提供する。任意選択的に、この装置は、通信インターフェース(Communication Interface)102とバス103とをさらに備えることができる。ここで、プロセッサ100、通信インターフェース102、メモリ101は、バス103を介して相互に通信を行うことができる。通信インターフェース102は、情報送信のために使用され得る。プロセッサ100は、上記の実施形態におけるサーボシステムのステイフネス調整方法を実行するように、メモリ101内の論理コマンドを呼び出すことができる。
また、上記メモリ101内の論理コマンドは、ソフトウェア機能ユニットの形態で実現され、かつスタンドアロン製品として販売又は使用される場合に、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体に格納されてもよい。
【0037】
コンピュータ可読記憶媒体としてのメモリ101は、本開示の実施形態における方法に対応するプログラムコマンド/モジュールなどのソフトウェアプログラム、コンピュータ実行可能プログラムを格納するために使用することができる。プロセッサ100は、メモリ101に格納されたプログラムコマンド/モジュールを実行することにより、データ処理だけでなく機能アプリケーションを実行し、すなわち、上記実施形態におけるサーボシステムのステイフネス調整方法を実現するものである。
【0038】
メモリ101は、格納プログラム領域と格納データ領域とからなり、ここで、格納プログラム領域は、オペレーティングシステム、少なくとも1つの機能に必要なアプリケーションを格納する。格納データ領域は、端末装置の使用状況に応じて作成されるデータ等を格納してもよい。さらに、メモリ101は、高速ランダムアクセスメモリで構成されてもよく、また、不揮発性メモリで構成されてもよい。
【0039】
本開示の実施形態は、上記のサーボシステムのステイフネス調整装置を備えるサーボシステムを提供する。
【0040】
本開示の技術的実施形態は、コンピュータ装置(パーソナルコンピュータ、サーバ、またはネットワーク装置などであってもよい)に、本開示の実施形態で説明した方法のステップの全てまたは一部を実行させるための1つまたは複数のコマンドを含む記憶媒体に格納されたソフトウェア製品の形態で具現化されてもよい。前記記憶媒体は、非一過性の記憶媒体であってもよく、例えば、USBフラッシュドライブ、リムーバブルハードディスク、ROM(Read-Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、ディスクまたはCD-ROM、その他プログラムコードを格納できる多くの媒体であり、また一過性の記憶媒体であってもよい。
【0041】
以上の説明及び添付の図面は、当業者が本開示の実施形態を実践できるように十分に説明するものである。その他の実施形態として、構造的、論理的、電気的、プロセス的、およびその他の変更を含むことができる。実施形態は、あくまで可能な変形例である。個別の部品や機能はオプションであり、明示的に要求されない限り、動作の順序が異なる場合がある。いくつかの実施形態の部品および特徴は、他の実施形態の部品および特徴に含まれるか、または他の実施形態の部品および特徴に置換されてもよい。さらに、本願で使用される用語は、実施形態を説明するためのものであり、特許請求の範囲を限定することを意図するものではない。
【0042】
当業者は、本明細書に開示された実施形態に関連して説明された様々な例のユニット及びアルゴリズムステップは、電子ハードウェア、又はコンピュータソフトウェアと電子ハードウェアの組み合わせで実装可能であることを認識することができる。これらの機能をハードウェアで実行するか、ソフトウェアで実行するかは、技術ソリューションの特定のアプリケーションと設計上の制約に依存してもよい。当業者は、説明した機能を実装するために、特定のアプリケーションごとに異なる方法を使用することができるが、そのような実装は、本開示の実施形態の範囲外であると考えるべきではない。説明の便宜と簡潔さのために、上述したシステム、装置及びユニットの特定の作業工程は、前の方法の実施形態における対応する工程を参照することができ、ここでは繰り返さないことは、当該当業者には明らかである。
【0043】
本明細書に開示された実施形態で開示された方法、製品(装置、機器などを含むが、これに限定されない)は、他の方法で実施されてもよい。例えば、上述した装置の実施形態は単に概略的なものであり、例えば、記載されたユニットの分割は、単に論理的な機能分割であってもよく、実際には、別の方法で実施されてもよく、例えば、複数のユニットまたはコンポーネントが結合されてもよく、別のシステムに統合されてもよく、一部の機能が無視されるか、実施されないこともあり得る。あるいは、図示または議論された相互結合または直接結合または通信接続は、電気的、機械的またはその他の方法であり得る何らかのインターフェース、装置またはユニットを介した間接的な結合または通信接続であってもよい。別個の構成要素として図示したユニットは、物理的に別個であってもなくてもよく、ユニットとして図示した構成要素は、物理的な単位であってもなくてもよく、すなわち、一箇所に配置されていてもよく、また複数のネットワークユニットに分散して配置されていてもよい。 これらのユニットの一部または全部は、本実施形態を実施するための実際的な必要性に応じて選択され得る。あるいは、この開示された実施形態における個々の機能ユニットは、単一の処理ユニットに統合されてもよいし、個々のユニットが物理的に別々に存在してもよいし、2つ以上のユニットが単一のユニットに統合されてもよい。
【0044】
添付図面のフローチャート及びブロック図は、本開示の実施形態によるシステム、方法及びコンピュータプログラム製品のアーキテクチャ、機能性及び動作の可能な実装を示すものである。この点で、フローチャートまたはブロック図の各ボックスは、モジュール、プログラムセグメントまたはコードの一部を表すことができ、前記モジュール、プログラムセグメントまたはコードの一部は、特定の論理機能を実行するための1つまたは複数の実行可能なコマンドを含んでいる。代替品としてのいくつかの実装では、ボックス内に示された機能は、添付の図面に示されたものとは異なる順序で発生することもある。例えば、連続する2つのボックスは、実際には実質的に並行して実行されることがあり、関係する関数によっては逆の順序で実行されることもある。また、添付図面のフローチャートやブロック図に対応する説明において、異なるボックスに対応する動作やステップも、説明で開示した順序とは異なる順序で行われる場合があり、異なる動作やステップの間に特定の順序が存在しない場合もある。例えば、連続する2つの操作やステップは、実際には実質的に並行して行われることもあれば、機能によっては逆の順序で行われることもある。ブロック図および/またはフローチャートの各ボックス、およびブロック図および/またはフローチャートのボックスの組み合わせは、特定の機能またはアクションを実行する専用のハードウェアベースのシステムで実装することができ、専用のハードウェアとコンピュータコマンドの組み合わせで実装することができる。
図1
図2
図3