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特許7397560フローサイトメーター、データ送信方法及び情報処理システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-05
(45)【発行日】2023-12-13
(54)【発明の名称】フローサイトメーター、データ送信方法及び情報処理システム
(51)【国際特許分類】
   G01N 15/14 20060101AFI20231206BHJP
   G16H 10/40 20180101ALI20231206BHJP
【FI】
G01N15/14 Z
G01N15/14 C
G16H10/40
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2022202773
(22)【出願日】2022-12-20
(62)【分割の表示】P 2018179994の分割
【原出願日】2018-09-26
(65)【公開番号】P2023029386
(43)【公開日】2023-03-03
【審査請求日】2023-01-11
(73)【特許権者】
【識別番号】390014960
【氏名又は名称】シスメックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100140431
【弁理士】
【氏名又は名称】大石 幸雄
(72)【発明者】
【氏名】立谷 洋大
(72)【発明者】
【氏名】辻 智悠
(72)【発明者】
【氏名】川上 肇
【審査官】海野 佳子
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-160730(JP,A)
【文献】特開2017-058361(JP,A)
【文献】特開2014-062917(JP,A)
【文献】特表2018-512871(JP,A)
【文献】特開2005-287927(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0253302(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 15/010-15/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
標識抗体色素を含む試薬を用いて処理される検体に含まれる粒子をフローサイトメーターにより測定することにより、前記粒子の光学的情報を含む粒子データを取得するステップと、
病院に関する業務を支援する病院情報システム、及び、臨床検査に関する業務を支援する臨床検査情報システムの少なくとも一方に、前記粒子データ、及び、前記粒子データに基づいて生成される前記粒子の粒子分布図に関するデータの少なくとも一方を送信するステップと、を含む、データ送信方法。
【請求項2】
前記取得するステップは、コンピュータにより実行される、請求項1に記載のデータ送信方法。
【請求項3】
前記送信するステップは、コンピュータにより実行される、請求項1又は2に記載のデータ送信方法。
【請求項4】
前記取得するステップ及び前記送信するステップは、コンピュータにより実行される、請求項1に記載のデータ送信方法。
【請求項5】
1又は複数の測定項目を含むオーダー情報を取得するステップを更に備え、
前記取得するステップにおいて、前記オーダー情報に含まれる前記1又は複数の測定項目に応じて、前記検体に含まれる前記粒子を測定する、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のデータ送信方法。
【請求項6】
前記取得するステップにおいて、前記検体から測定試料を調製する前処理が実行された後に、当該測定試料に含まれる前記粒子を測定する、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のデータ送信方法。
【請求項7】
前記送信するステップにおいて、病院に関する業務を支援する病院情報システム、及び、臨床検査に関する業務を支援する臨床検査情報システムの少なくとも一方に、前記粒子データに基づいて前記粒子の粒子分布図を出力するための出力情報を前記粒子分布図に関するデータとして送信する、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のデータ送信方法。
【請求項8】
前記出力情報は、前記粒子データに基づいて異なる複数の前記粒子分布図を出力するための出力情報を含む、請求項7に記載のデータ送信方法。
【請求項9】
前記出力情報は、前記検体に含まれる前記粒子が測定された日時を示す日時情報を更に含む、請求項8に記載のフデータ送信方法。
【請求項10】
前記光学的情報は、前記粒子の散乱光情報及び蛍光情報の少なくとも一方を含む、請求項1から請求項9のいずれか一項に記載のデータ送信方法。
【請求項11】
前記送信するステップにおいて、前記粒子データ、及び、前記粒子データに基づいて生成される前記粒子の粒子分布図に関するデータの少なくとも一方を、所定の標準規格に準拠した形式で送信する、請求項1から請求項10のいずれか一項に記載のデータ送信方法。
【請求項12】
前記所定の標準規格は、CLSI(Clinical and Laboratory Standards Institute)に準拠した標準規格である、請求項11に記載のデータ送信方法。
【請求項13】
前記所定の標準規格は、ASTM(American Society for Testing and Materials)、HL7(Health Level Seven)、IHE(Integrating the Healthcare Enterprise)、DICOM(Digital Imaging and Communications in Medicine)及びMFER(Medical waveform Format Encoding Rules)の少なくとも一つの標準規格を含む、請求項12に記載のデータ送信方法。
【請求項14】
前記送信するステップにおいて、病院に関する業務を支援する病院情報システム、及び、臨床検査に関する業務を支援する臨床検査情報システムの少なくとも一方に、前記検体に対応づけられた患者情報を更に送信する、請求項1から請求項13のいずれか一項に記載のデータ送信方法。
【請求項15】
前記患者情報は、患者を識別する患者識別情報を含む、請求項14に記載のデータ送信方法。
【請求項16】
前記送信するステップにおいて、病院に関する業務を支援する病院情報システム、及び、臨床検査に関する業務を支援する臨床検査情報システムの少なくとも一方に、検体ごとに、前記粒子データ、及び、前記粒子データに基づいて生成される前記粒子の粒子分布図に関するデータの少なくとも一方と、前記検体に対応づけられた患者情報と、を含むメッセージを送信する、請求項1から請求項15のいずれか一項に記載のデータ送信方法。
【請求項17】
前記メッセージは、前記粒子データ及び前記粒子分布図に関するデータの少なくとも一方を含む第1レコードと、前記患者情報を含む第2レコードと、を含む、請求項16に記載のデータ送信方法。
【請求項18】
前記送信するステップにおいて、臨床検査に関する業務を支援する臨床検査情報システムを介して、病院に関する業務を支援する病院情報システムに、前記粒子データ、及び、前記粒子分布図に関するデータの少なくとも一方を送信する、請求項1から請求項17のいずれか一項に記載のデータ送信方法。
【請求項19】
前記粒子データに基づいて生成される前記粒子の粒子分布図は、ドットプロット及びヒストグラムの少なくとも一方を含む、請求項1から請求項18のいずれか一項に記載のデータ送信方法。
【請求項20】
前記送信するステップにおいて、病院に関する業務を支援する病院情報システム、及び、臨床検査に関する業務を支援する臨床検査情報システムの少なくとも一方に、前記粒子データ、及び、前記粒子データに基づいて生成される前記粒子の粒子分布図に関するデータの少なくとも一方を含む圧縮データを送信する、請求項1から請求項19のいずれか一項に記載のデータ送信方法。
【請求項21】
前記送信するステップにおいて、前記粒子の粒子数に関する粒子数情報を更に送信する、
請求項1から請求項20のいずれか一項に記載のデータ送信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フローサイトメーター、データ送信方法及び情報処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、医師が入力する患者の各種情報を含む電子カルテを生成し管理する電子カルテシ
ステムが普及し始めている。
【0003】
電子カルテには、患者の氏名、年齢、ID、治療薬の種類及び投与量、診察内容、治療内
容、並びに手術等のイベント等の情報の他、X線画像や超音波画像等の医用画像、及び、
検査装置から出力された検査値が含まれる。電子カルテシステムとしては、病院の業務を
支援する病院情報システム(Hospital Information System:HIS)、及び、臨床検査に関す
る業務を支援する臨床検査情報システム(Clinical Laboratory Information System:LI
S)の少なくとも一方を含む医療情報システムが知られている。
【0004】
また、粒子1つ1つを個別に検出することのできるフローサイトメーターを用い、液体
中に分散した粒子個々の大きさ、構造、及び蛍光強度等を光学的に検出し、その検出され
た情報に基づいて粒子の数や分布を計測する方法としてフローサイトメトリーが知られて
いる。
【0005】
従来の電子カルテシステムは、フローサイトメトリーから、検査値としてリンパ球、単
球及び顆粒球等の血球数を示す情報を取得することができる。医師は、電子カルテシステ
ム上で、当該情報を閲覧することができる。しかしながら、従来の電子カルテシステムで
は、粒子の分布を示す粒子分布図を閲覧することはできない。そのため、医師は、フロー
サイトメトリーで生成され管理されている粒子分布図を、自身の端末装置からLAN経由で
閲覧する必要がある(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【文献】[平成30年7月12日検索]、インターネット<URL:https://www.bc-cytometry.com/FCM/FCM/fcm_08.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記したとおり、非特許文献1に記載のような従来の電子カルテシステムにおいては、
医師又は検査技師等の管理者(例えば、技師長)は、各端末からLAN経由で、フローサイ
トメトリーにおいて管理された粒子分布図を閲覧する必要がある。よって、医師又技師長
(以下では、「医師等」とする。)にとって、粒子分布図を含む電子カルテを閲覧する際
の操作性が低く、このようなシステムの利便性が高いとはいえない。
【0008】
また、医師等は、自身の端末からLAN経由で、フローサイトメトリーにおいて管理され
た粒子分布図を閲覧することは可能であるが、当該端末において粒子分布図の再ゲーティ
ング等の調整を行うことができない。医師等がより正確な診断を行うために粒子分布図の
調整を希望する場合には、調整内容に関するフィードバックを検査技師等に行い、検査技
師等は、フローサイトメトリーにおいて管理されている、検体に含まれる粒子の光学的情
報を含む粒子データ及び粒子データに基づいて生成される粒子の粒子分布図に関するデー
タの少なくとも一方に基づいて、改めて粒子分布図を生成する必要がある。このように、
従来のシステムにおいては、粒子分布図の調整等を行うには、医師等と検査技師等との間
のフィードバックの回数等に応じた時間が必要になるので、医師等が正確な診断を迅速に
行うことができないおそれがある。
【0009】
そこで、本発明は、検体に含まれる粒子の粒子分布図を含む電子カルテを閲覧する際の
電子カルテシステムの操作性を高め、且つ、利便性を向上させることができ、さらに医師
等が正確な診断を迅速に行うことが可能なフローサイトメーター、データ送信方法、及び
情報処理システムを提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様に係るフローサイトメーター(10)は、検体に含まれる粒子を測定す
ることにより、前記粒子の光学的情報を含む粒子データを取得する粒子データ取得部(6
33)と、病院に関する業務を支援する病院情報システム(2)、及び、臨床検査に関す
る業務を支援する臨床検査情報システム(4)の少なくとも一方に、前記粒子データ、及
び、前記粒子データに基づいて生成される前記粒子の粒子分布図に関するデータの少なく
とも一方を送信する送信部(635)と、を備える。
【0011】
上記フローサイトメーター(10)によれば、検体に含まれる粒子の光学的情報を含む
粒子データ、及び、当該粒子データに基づいて生成される粒子の粒子分布図に関するデー
タの少なくとも一方を、病院情報システム(2)、及び、臨床検査情報システム(4)の
少なくとも一方に送信する。よって、病院情報システム(2)、及び、臨床検査情報シス
テム(4)の少なくとも一方において、検体に含まれる粒子の粒子分布図を含む電子カル
テを生成し、生成された電子カルテを閲覧することができる。また、必要に応じて、電子
カルテにおける粒子分布図を調整することができる。したがって、電子カルテを閲覧する
際のシステムの操作性を高め、且つ、利便性を向上させることができ、さらに医師等が正
確な診断を迅速に行うことができる。
【0012】
本発明の一態様に係るフローサイトメーター(10)は、検体に含まれる粒子を測定す
ることにより、前記粒子の光学的情報を含む粒子データを取得する粒子データ取得部(6
33)と、前記粒子データを送信する送信部(635)と、を備える。
【0013】
上記フローサイトメーター(10)によれば、検体に含まれる粒子の光学的情報を含む
粒子データを送信する。よって、粒子データの送信先において、検体に含まれる粒子の粒
子分布図を含む電子カルテを生成し、生成された電子カルテを閲覧することができる。ま
た、必要に応じて、電子カルテにおける粒子分布図を調整することができる。したがって
、電子カルテを閲覧する際の操作性を高め、且つ、利便性を向上させることができ、さら
に医師等が正確な診断を迅速に行うことができる。
【0014】
上記フローサイトメーター(10)において、1又は複数の測定項目を含むオーダー情
報を取得するオーダー情報取得部(631)を更に備え、前記粒子データ取得部(633
)は、前記オーダー情報に含まれる前記1又は複数の測定項目に応じて、前記検体に含ま
れる前記粒子を測定してもよい。
【0015】
上記フローサイトメーター(10)によれば、オーダー情報に含まれる1又は複数の測
定項目に応じて、検体に含まれる粒子を測定できるので、測定項目に応じた測定結果を取
得できる。
【0016】
上記フローサイトメーター(10)において、前記粒子データ取得部(633)は、前
記検体から測定試料を調製する前処理が実行された後に、当該測定試料に含まれる前記粒
子を測定してもよい。
【0017】
上記フローサイトメーター(10)によれば、検体から測定試料を調製する前処理を実
行することによって、測定オーダーに含まれる測定項目により適合した粒子測定を行うこ
とができるので、正確な粒子データを取得できる。
【0018】
上記フローサイトメーター(10)において、前記送信部(635)は、病院に関する
業務を支援する病院情報システム(2)、及び、臨床検査に関する業務を支援する臨床検
査情報システム(4)の少なくとも一方に、前記粒子データに基づいて前記粒子の粒子分
布図を出力するための出力情報を前記粒子分布図に関するデータとして送信してもよい。
【0019】
上記フローサイトメーター(10)によれば、粒子分布図に対応する画像データ自体を
送信する必要がないので、送信するデータ量を削減することが可能となる。
【0020】
上記フローサイトメーター(10)において、前記出力情報は、前記粒子データに基づ
いて異なる複数の前記粒子分布図を出力するための出力情報を含んでもよい。
【0021】
上記フローサイトメーター(10)によれば、ある検体について、異なる日時に測定さ
れた粒子データに対応する粒子分布図を比較表示することができる。
【0022】
上記フローサイトメーター(10)において、前記出力情報は、前記検体に含まれる前
記粒子が測定された日時を示す日時情報を更に含んでもよい。
【0023】
上記フローサイトメーター(10)によれば、ある検体について、粒子データに対応す
る粒子分布図を時系列で表示することができる。
【0024】
上記フローサイトメーター(10)において、前記光学的情報は、前記粒子の散乱光情
報及び蛍光情報の少なくとも一方を含んでもよい。
【0025】
上記フローサイトメーター(10)によれば、病院情報システム(2)、及び、臨床検
査情報システム(4)の少なくとも一方において、前記粒子の散乱光情報及び蛍光情報の
少なくとも一方を取得すると、これらの情報を、粒子分布図を出力可能なデータに変換し
、粒子分布図を含む電子カルテが出力可能である。
【0026】
上記フローサイトメーター(10)において、前記送信部(635)は、前記粒子デー
タ、及び、前記粒子データに基づいて生成される前記粒子の粒子分布図に関するデータの
少なくとも一方を、所定の標準規格に準拠した形式で送信してもよい。
【0027】
上記フローサイトメーター(10)によれば、所定の標準規格に準拠した形式でデータ
を送信するので、安定的にデータを送信することができる。
【0028】
上記フローサイトメーター(10)において、前記所定の標準規格は、CLSI(Clinical
and Laboratory Standards Institute)に準拠した標準規格であってもよい。
【0029】
上記フローサイトメーター(10)によれば、CLSIという国際規格に準拠した形式でデ
ータを送信するので、安定的にデータを送信することができる。
【0030】
上記フローサイトメーター(10)において、前記所定の標準規格は、ASTM(American
Society for Testing and Materials)、HL7(Health Level Seven)、IHE(Integrating the
Healthcare Enterprise)、DICOM(Digital Imaging and Communications in Medicine)及
びMFER(Medical waveform Format Encoding Rules)の少なくとも一つの標準規格を含ん
でもよい。
【0031】
上記フローサイトメーター(10)によれば、情報通信に関する様々な標準規格を使用
可能となるため、データ送信の際のフォーマットに関する選択の幅が拡大する。
【0032】
上記フローサイトメーター(10)において、前記送信部(635)は、病院に関する
業務を支援する病院情報システム(2)、及び、臨床検査に関する業務を支援する臨床検
査情報システム(4)の少なくとも一方に、前記検体に対応づけられた患者情報を更に送
信してもよい。
【0033】
上記フローサイトメーター(10)によれば、病院情報システム(2)、及び、臨床検
査情報システム(4)の少なくとも一方において、特定の患者に対応づけられた検体を識
別することができる。
【0034】
上記フローサイトメーター(10)において、前記患者情報は、患者を識別する患者識
別情報を含んでもよい。
【0035】
上記フローサイトメーター(10)によれば、病院情報システム(2)、及び、臨床検
査情報システム(4)の少なくとも一方において、特定の患者に対応づけられた検体をよ
り正確に識別することができる。
【0036】
上記フローサイトメーター(10)において、前記送信部(635)は、病院に関する
業務を支援する病院情報システム(2)、及び、臨床検査に関する業務を支援する臨床検
査情報システム(4)の少なくとも一方に、検体ごとに、前記粒子データ、及び、前記粒
子データに基づいて生成される前記粒子の粒子分布図に関するデータの少なくとも一方と
、前記検体に対応づけられた患者情報と、を含むメッセージを送信してもよい。
【0037】
上記フローサイトメーター(10)によれば、検体ごとに、粒子データ、及び、粒子分
布図に関するデータの少なくとも一方を患者情報と関連づけて送信するので、医師が閲覧
を希望する患者の電子カルテを正確に出力することが可能となる。
【0038】
上記フローサイトメーター(10)において、前記メッセージは、前記粒子データ及び
前記粒子分布図に関するデータの少なくとも一方を含む第1レコードと、前記患者情報を
含む第2レコードと、を含んでもよい。
【0039】
上記フローサイトメーター(10)によれば、粒子データ、及び、粒子分布図に関する
データの少なくとも一方を患者情報と関連づけて送信するので、医師が閲覧を希望する患
者の電子カルテを正確に出力することが可能となる。
【0040】
上記フローサイトメーター(10)において、前記送信部(635)は、臨床検査に関
する業務を支援する臨床検査情報システム(4)を介して、病院に関する業務を支援する
病院情報システム(2)に、前記粒子データ、及び、前記粒子分布図に関するデータの少
なくとも一方を送信してもよい。
【0041】
上記フローサイトメーター(10)によれば、フローサイトメーター(10)が病院情
報システム(2)と直接接続されていなくても、臨床検査情報システム(4)を介してデ
ータを送信することができる。
【0042】
上記フローサイトメーター(10)において、前記粒子データに基づいて生成される前
記粒子の粒子分布図は、ドットプロット及びヒストグラムの少なくとも一方を含んでもよ
い。
【0043】
上記フローサイトメーター(10)によれば、検体に含まれる粒子データをドットプロ
ット及びヒストグラムの少なくとも一方で表示するので、粒子の分布状態を適切に把握す
ることができる。
【0044】
上記フローサイトメーター(10)において、前記送信部(635)は、病院に関する
業務を支援する病院情報システム(2)、及び、臨床検査に関する業務を支援する臨床検
査情報システム(4)の少なくとも一方に、前記粒子データ、及び、前記粒子データに基
づいて生成される前記粒子の粒子分布図に関するデータの少なくとも一方を含む圧縮デー
タを送信してもよい。
【0045】
上記フローサイトメーター(10)によれば、病院情報システム(2)、及び、臨床検
査情報システム(4)の少なくとも一方に対する送信データを圧縮するので、送信の際の
データ量を削減することができる。
【0046】
上記フローサイトメーター(10)において、前記送信部(635)は、前記粒子の粒
子数に関する粒子数情報を更に送信してもよい。
【0047】
上記フローサイトメーターによれば、送信部(635)は、粒子の粒子数に関する粒子
数情報を更に送信するので、検査値としての粒子数を更に含む電子カルテを生成し出力で
きる。
【0048】
本発明の一態様に係るデータ送信方法は、コンピュータが、検体に含まれる粒子を測定
することにより、前記粒子の光学的情報を含む粒子データを取得するステップと、前記コ
ンピュータが、病院に関する業務を支援する病院情報システム(2)、及び、臨床検査に
関する業務を支援する臨床検査情報システム(4)の少なくとも一方に、前記粒子データ
、及び、前記粒子データに基づいて生成される前記粒子の粒子分布図に関するデータの少
なくとも一方を送信するステップと、を含む。
【0049】
上記データ送信方法によれば、検体に含まれる粒子の粒子データ、及び、当該粒子デー
タに基づいて生成される粒子の粒子分布図に関するデータの少なくとも一方を、病院情報
システム(2)、及び、臨床検査情報システム(4)の少なくとも一方に送信する。よっ
て、病院情報システム(2)、及び、臨床検査情報システム(4)の少なくとも一方にお
いて、検体に含まれる粒子の粒子分布図を含む電子カルテを生成し、生成された電子カル
テを閲覧することができる。したがって、電子カルテを閲覧する際のシステムの操作性を
高め、且つ、利便性を向上させることができ、さらに医師等が正確な診断を迅速に行うこ
とができる。
【0050】
本発明の一態様に係るデータ送信方法は、コンピュータが、検体に含まれる粒子を測定
することにより、前記粒子の光学的情報を含む粒子データを取得するステップと、前記コ
ンピュータが、前記粒子データを送信するステップと、含む。
【0051】
上記データ送信方法によれば、検体に含まれる粒子の粒子データを送信する。よって、
粒子データの送信先において、検体に含まれる粒子の粒子分布図を含む電子カルテを生成
し、生成された電子カルテを閲覧することができる。また、必要に応じて、電子カルテに
おける粒子分布図を調整することができる。したがって、電子カルテを閲覧する際の操作
性を高め、且つ、利便性を向上させることができ、さらに医師等が正確な診断を迅速に行
うことができる。
【0052】
本発明の一態様に係る情報処理システムは、検体に含まれる粒子を測定することにより
取得された、光学的情報を含む粒子データ、及び、前記粒子データに基づいて生成される
前記粒子の粒子分布図に関するデータの少なくとも一方を受信する受信部と、受信した前
記粒子データ及び前記粒子分布図に関するデータの少なくとも一方に基づいて、前記粒子
分布図を含む電子カルテを生成する電子カルテ生成部と、を備える。
【0053】
上記情報処理システムによれば、検体に含まれる粒子の光学的情報を含む粒子データ、
及び、当該粒子データに基づいて生成される粒子の粒子分布図に関するデータの少なくと
も一方を受信し、検体に含まれる粒子の粒子分布図を含む電子カルテを生成する。また、
必要に応じて、電子カルテにおける粒子分布図を調整することができる。よって、生成さ
れた電子カルテを閲覧することができるので、電子カルテを閲覧する際のシステムの操作
性を高め、且つ、利便性を向上させることができ、さらに医師等が正確な診断を迅速に行
うことができる。
【発明の効果】
【0054】
本開示によれば、検体に含まれる粒子の粒子分布図を含む電子カルテを閲覧する際の電
子カルテシステムの操作性を高め、且つ、利便性を向上させることができ、さらに医師が
正確な診断を迅速に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
図1】本実施形態に係るフローサイトメーターと電子カルテシステムとのネットワーク構成の概略図の一例を示す図である。
図2】本実施形態に係るフローサイトメーターの外観図の一例を示す図である。
図3】本実施形態に係るフローサイトメーターの光学系の一例を示す図である。
図4】本実施形態に係るフローサイトメーターの情報処理系の一例を示す図である。
図5】本実施形態に係る測定条件に含まれる情報の例を示す図である。図中FSCは前方散乱光を示し、SSCは側方散乱光を示し、FL1、FL2、FL3、及びFL4はピーク波長の異なる4種の蛍光を示す。また、chはチャネルを示す。
図6】本実施形態に係る情報処理部の機能ブロックの一例を示す図である。
図7】本実施形態に係るフローサイトメーターのデータ送信処理の一例を示す図である。
図8】本実施形態に係るフローサイトメーターが送信するデータの形式の一例を示す図である。
図9図8に示すASTMレコードの構成の一例を示す図である。
図10図8に示すASTMフィールドの構成の一例を示す図である。
図11図8に示すASTMフィールドの構成の一例を示す図である。
図12図11に示すASTMフィールド10.1.4の「データ値」に含まれて送信されるドットデータの通信データフォーマットの一例を示す図である。
図13図11に示すASTMフィールド10.1.4の「データ値」に含まれて送信される粒度分布データの通信データフォーマットの一例を示す図である。
図14】本実施形態に係る医師端末装置の表示部における電子カルテ表示画面の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0056】
添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。なお、各図において、同一
の符号を付したものは、同一又は同様の構成を有する。
【0057】
[フローサイトメーターと電子カルテシステム]
図1は、本発明の実施形態に係るフローサイトメーターと電子カルテシステムとのネッ
トワーク構成の概略図の一例を示す図である。図1に示すフローサイトメーター10は、
液体中に分散した粒子個々の大きさ、構造、及び蛍光強度等を光学的に検出し、その検出
された情報に基づいて粒子の数や分布を計測する方法であるフローサイトメトリーの実施
に用いられる測定装置である。例えば、フローサイトメーター10は、シースフロー方式
により粒子1つ1つを個別に検出する機能を有する。
【0058】
図1に示すように、フローサイトメーター10は、例えば病院や検査施設等に設置され
、例示的に、フローサイトメーター本体13と、フローサイトメーター本体13に接続さ
れた情報処理装置14とを備えている。フローサイトメーター本体13及び情報処理装置
14の具体的構成については、後述する。電子カルテシステム1(情報処理システム)は
、フローサイトメーター10からの検査結果に関する情報の他、患者の氏名、年齢、ID、
治療薬の種類及び投与量、診察内容、治療内容、処置内容、病名、各種医療検査のオーダ
ー、並びに手術等のイベント等、様々な情報を収集し、電子カルテを生成した上で管理す
る。
【0059】
なお、フローサイトメーター10は、電子カルテシステム1と通信ネットワークN1を
介して接続される。なお、通信ネットワークN1は、例えばインターネット、仮想プライ
ベートネットワーク(VPN)、広域通信網(WAN)、公衆交換電話網(PSTN)等
の通信媒体であるが、フローサイトメーター10と電子カルテシステム1との間で通信を
行うことができるものであればこれらに限定されない。
【0060】
ここで、本実施形態の概要を以下に説明する。図1に示すように、フローサイトメータ
ー10は、電子カルテシステム1から、1又は複数の測定項目を含む測定オーダー(オー
ダー情報)を取得し、測定オーダーに含まれる1又は複数の測定項目に応じて、検体に含
まれる粒子を測定する。そして、フローサイトメーター10は、検体に含まれる粒子を測
定することにより、粒子の光学的情報を含む粒子データを取得し、取得した粒子データ、
及び、取得した粒子データに基づいて生成される粒子の粒子分布図に関するデータの少な
くとも一方を電子カルテシステム1に送信する。フローサイトメーター10は、検体に含
まれる粒子を測定することにより、粒子の光学的情報を含む粒子データを取得し、取得し
た粒子データのみを電子カルテシステム1に送信してもよい。
【0061】
測定オーダーに含まれる測定項目とは、フローサイトメーター10で測定される1又は
2以上の項目であり、例えば粒子の種類、粒子に存在する物質の種類等である。具体的に
は、細胞の種類、タンパク質の種類、糖鎖の種類、脂質の種類、糖タンパク質の種類、糖
脂質の種類、リポタンパク質の種類、核酸の種類などを挙げることができる。なお、後述
するとおり、測定オーダーには、フローサイトメーター10で測定する際の測定条件も含
まれ得る。
【0062】
粒子データとは、粒子に関するデータであり、例えば粒子の光学的情報を含む。光学的
情報とは、粒子から発せられる1又は2以上の光波長スペクトルに含まれる情報である。
光波長スペクトルにはその光波長スペクトルに含まれる個々の光波長、光波長領域、及び
そのそれぞれの光波長、又は光波長領域の強さが含まれる。個々の光波長、及び波長領域
は、後述する1又は2以上の受光素子(例えば、図5の受光素子100A~100Fを参
照)のいずれが受光したかによって特定することができる。また、それぞれの光波長、又
は光波長領域の強さは、受光した受光素子が出力する電気信号によって特定することがで
きる。光学的情報は、例示的に、細胞(粒子)のサイズを表す前方散乱光情報と、細胞の
内部構造を表す側方散乱光情報と、細胞のタンパク質や遺伝子等の発現を表す蛍光情報と
、を含む。電子カルテシステム1は、フローサイトメーター10から粒子の光学的情報を
含む粒子データを取得すると、取得した粒子データを、粒子分布図を出力可能なデータに
変換し、粒子分布図を含む電子カルテを生成し、出力する。
【0063】
粒子データは、粒子の粒子数に関する粒子数情報を更に含んでもよい。粒子数情報は、
例えば、リンパ球、単球及び顆粒球等の血球数を含む。
【0064】
粒子分布図に関するデータとは、例えば、(1)粒子分布図を電子カルテシステム1に
おいて出力するための出力情報と、(2)粒子分布図を示す画像データと、を含む。電子
カルテシステム1は、フローサイトメーター10から(1)粒子分布図を電子カルテシス
テム1において出力するための出力情報を取得すると、取得した当該出力情報に基づいて
粒子分布図を含む電子カルテを生成し、出力する。ここで、粒子分布図を電子カルテシス
テム1において出力するための出力情報とは、(1-1)フローサイトメーター10で測
定された各粒子の粒子データに対応するドットデータ(後述する図12参照)と、(1-
2)フローサイトメーター10で測定された各粒子の分布に対応する粒度分布データ(後
述する図13参照)と、を含む。また、電子カルテシステム1は、フローサイトメーター
10から(2)粒子分布図を示す画像データを取得すると、取得した当該画像データに対
応する粒度分布図を含む電子カルテを生成し、出力する。
【0065】
このように、フローサイトメーター10は、検体に含まれる粒子の粒子データ、及び、
当該粒子データに基づいて生成される粒子の粒子分布図に関するデータの少なくとも一方
を電子カルテシステム1に送信する。よって、電子カルテシステム1において、検体に含
まれる粒子の粒子分布図を含む電子カルテを生成し、生成された電子カルテを、例えば、
電子カルテシステム1の医師端末装置7又は検査技師端末装置9において閲覧することが
できる。また、必要に応じて、電子カルテにおける粒子分布図を調整することができる。
したがって、電子カルテを閲覧する際の電子カルテシステムの操作性を高め、且つ、利便
性を向上させることができ、さらに医師等が正確な診断を迅速に行うことができる。
【0066】
図1に示すように、電子カルテシステム1は、例示的に、病院の業務を支援する病院情
報システム2(Hospital Information Systems:HIS)2と、臨床検査に関する業務を支援
する臨床検査情報システム(Clinical Laboratory Information System:LIS)4と、を
含む。
【0067】
HIS2は、例示的に、医師や看護師が行う検査や処方などの指示(オーダー)を電子
的に管理する機能、医事会計機能、及び電子カルテを生成し管理する機能(電子カルテ生
成部)等を有する病院情報管理サーバ3と、例えば医師が閲覧するための電子カルテを表
示する医師端末装置7と、備える。
【0068】
LIS4は、病院などの医療施設における検査技師等による検査業務全般を扱う情報シ
ステムであり、例えば、検査の受け付ける機能、検査結果の報告をする機能、及び、デー
タ管理等の検査フローをサポートする機能等を有する臨床検査情報管理サーバ5と、例え
ば検査技師が検査内容を閲覧するための画面を表示する検査技師端末装置9と、を備える
。なお、LIS4が、電子カルテを生成し管理する機能(電子カルテ生成部)を有してい
てもよい。
【0069】
なお、上記したとおり、電子カルテシステム1からフローサイトメトリー10に対して
測定オーダーが送信されるが、例えば医師の指示に基づいて、HIS2からLIS4を介
して測定オーダーが送信されてもよい。また、測定オーダーは、例えば検査技師の指示に
基づいて、LIS4からフローサイトメトリー10に対して測定オーダーが送信されても
よい。
【0070】
図1に示すように、HIS2とLIS4とは、通信ネットワークN3を介して接続され
る。通信ネットワークN3は、例えばインターネット、仮想プライベートネットワーク(
VPN)、広域通信網(WAN)、公衆交換電話網(PSTN)等の通信媒体であるが、
HIS2とLIS4との間で通信を行うことができるものであればこれらに限定されない
【0071】
なお、電子カルテシステム1に接続されるフローサイトメーター10の数は限定されず
、電子カルテシステム1に複数のフローサイトメーター10が接続されていてもよい。ま
た、電子カルテシステム1に含まれるHIS2及びLIS4の数にも特に限定されない。
【0072】
図2は、本発明の実施形態に係るフローサイトメーターの外観図の一例を示す図である
図2に示すように、フローサイトメーター本体13は、例示的に、前処理として調製し
た測定試料を収容した試料容器720を収納する収納部730と、昇降動作及び水平移動
が可能に構成された不図示の吸引部と、を備える。例えば、図2に示すように、試料容器
720を収納部730に配置するとともに収納部730をフローサイトメーター本体13
内に移動させることにより、試料容器720をフローサイトメーター本体13の内部に位
置付ける。そして、試料容器720内の測定試料の測定を、フローサイトメーターに指示
する。これに応じ、吸引部が、フローサイトメーター本体13の内部に位置付けられた試
料容器720から測定試料を吸引する。
【0073】
[フローサイトメーターの光学系]
図3は、本実施形態に係るフローサイトメーターの光学系の一例を示す図である。フロ
ーサイトメーター10は、検体中の粒子を含む粒子含有液が通過するフローセル20と、
フローセル20を通過する粒子に光を照射する光源101、124と、粒子に由来する光
の光学的情報を検出して電気信号に変換された検出信号を出力する受光素子100A~1
00Fとを備えている。
【0074】
粒子は、所定の光を照射された際に1又は2以上の光を発することが好ましい。所定の
光を照射された際に粒子から発せられる光を、粒子に由来する光と総称する。粒子に由来
する光には散乱光及び発光などが含まれる。粒子に由来する光は、どのような波長の光で
あってもよいが、400nm~850nmの範囲にピーク波長を有する光であることが好
ましい。より具体的には、粒子に由来する光は蛍光であることが好ましい。粒子に由来す
る光は、粒子に含まれる物質自体に由来する自家蛍光等の発光であってもよい。あるいは
、粒子に由来する光は、粒子を蛍光物質などの発光物質で標識し、この発光物質が発する
光を粒子に由来する光として検出してもよい。また、粒子に由来する光は、測定項目毎に
ピーク波長が異なることが好ましい。
【0075】
粒子含有液とは、試料からフローサイトメーター内に吸引された粒子浮遊液を含む液で
あり、必要に応じて希釈液を含む。
【0076】
以下、粒子に由来する光が散乱光と蛍光である場合を例として具体的に説明する。
光源101から出射された光は、コリメートレンズ102、ダイクロイックミラー10
3、集光レンズ104を経てフローセル20に照射される。フローセル20を通過する粒
子に由来する光の前方散乱光は、集光レンズ105により集光され、ビームストッパー1
06、ピンホール板107、バンドパスフィルタ108を経て受光素子100Aに入射す
る。
【0077】
一方、フローセル20を通過する粒子に由来する光の側方散乱光及び側方蛍光は、集光
レンズ109により集光される。側方散乱光は、ダイクロイックミラー110、111、
112、ピンホール板103、バンドパスフィルタ114を経て受光素子100Bに入射
する。波長が520nm以上、542nm以下の側方蛍光は、ダイクロイックミラー11
0、111を透過してダイクロイックミラー112で反射され、ピンホール板115、バ
ンドパスフィルタ116を経て受光素子100Cに入射する。また、波長が570nm以
上、620nm以下の側方蛍光は、ダイクロイックミラー110を透過してダイクロイッ
クミラー111で反射され、ピンホール板117、バンドパスフィルタ118を経て受光
素子100Dに入射する。さらに波長が670nm以上、800nm以下の側方蛍光は、
ダイクロイックミラー110で反射され、ダイクロイックミラー119を透過してピンホ
ール板120、バンドパスフィルタ121を経て受光素子100Eに入射する。
【0078】
光源124から出射された光は、コリメートレンズ125、ダイクロイックミラー10
3、集光レンズ104を経てフローセル20に照射される。フローセル20を通過する粒
子に由来する光の側方蛍光は、集光レンズ109により集光される。662.5nm以上
、687.5nm以下の側方蛍光はダイクロイックミラー110で反射され、ダイクロイ
ックミラー119で反射された後、ピンホール板122、バンドパスフィルタ123を経
て受光素子100Fに入射する。
【0079】
本実施形態では、例えば、光源101には488nmの波長のレーザダイオードを用い
、光源124には642nmの波長のレーザダイオードを用いている。フローセル20に
はシースフローセルを用いている。また、前方散乱光を受光する受光素子100Aにはフ
ォトダイオードを用い、側方散乱光を受光する受光素子100Bにはアバランシェフォト
ダイオード(avalanche photodiode、APD)を用い、側方蛍光を受光する受光素子10
0C~100Fにはフォトマルチプライアチューブ(PhotoMultiplier Tube、PMT)を
用いている。本実施形態においては、フローサイトメーター10が6つの受光素子100
A~100Bを備える。4つの受光素子100C~100Fは、試料中の粒子に結合した
色素に由来し異なるピーク波長を有する4つの光の光学的情報をそれぞれ検出するもので
あるが、これに限定されない。例えば、フローサイトメーター10が、3以上の受光素子
を備え、3以上の受光素子のうち少なくとも2以上の受光素子は、異なるピーク波長を有
する少なくとも2つの色素に由来する光の光学的情報をそれぞれ検出するものであればよ
い。例えばHIV検査において、細胞表面のCD4、CD45、CD8、CD3のそれぞ
れに結合する4種類の標識抗体色素を用いた場合には、細胞表面に存在するマーカーに応
じてそれぞれの標識抗体色素に由来する4つのピーク波長を有する4つの蛍光が測定試料
から生じるが、それぞれの蛍光を4つの受光素子100C~100Fで検出することがで
きる。
【0080】
光源は、1つであっても2つ以上であってもよい。光源は、粒子に結合した色素に由来
する光の波長領域に応じて選択される。光源が2以上である場合には、これらの光源は異
なるピーク波長を有する光を発することが好ましい。光源が2以上である場合には、光源
が1つである場合に比べて、精度良く複数の蛍光を分離して検出できるため好ましい。例
えば、HIV検査において、1つの光源を用いる場合には、CD4に対する標識抗体色素
としてFITC、CD8に対する標識抗体色素としてPEcy5を用いることがあるが、
FITCからの蛍光のピーク波長とPEcy5からの蛍光のピーク波長とが近接している
ため、それぞれの波長領域の重複部分が大きくなる傾向にある。一方、2つの光源を用い
た場合には、各光源からの発光タイミングをずらすことで、複数の蛍光を分離して検出で
きる。また、各光源からの光のピーク波長に適した色素を用いることで、複数の蛍光のそ
れぞれの波長領域の重複部分を減らすこともできる。例えば、CD8に対する標識抗体色
素として、PEcy5ではなくAPCを用いることができる。フォトダイオード、ダイク
ロイックミラー、及びバンドパスフィルタの数は、粒子に由来する光のピーク波長の数に
応じて変更することができる。また、フォトダイオード、ダイクロイックミラー、及びバ
ンドパスフィルタの種類も、粒子に由来する光のピーク波長、又は波長領域、及びその強
さに応じて選択することができる。
【0081】
各受光素子100A~100Fが出力する検出信号は、後述する図5に示すように、増
幅部130A~130Fで増幅され、A/D変換部131A~131FでA/D変換され
て信号処理部63に入力される。詳細には、フォトダイオードである受光素子100Aと
APDである受光素子100Bとに接続された増幅部130A,130Bは、オペアンプ
等から構成される既知の増幅回路であり、各増幅回路の増幅度の調整により、入力される
受光素子100A,100Bの出力電圧を調整している。また、PMTである受光素子1
00C~100Fに印加される電圧値を変化させることで、PMTの出力電圧の調整を行
っている。以下、受光素子100A~100Fの検出感度の調整とは、受光素子100A
,100Bにおいては増幅回路の増幅度を調整することをいい、受光素子100C~10
0Fにおいては、受光素子100C~100Fに印加する電圧を調整することをいう。受
光素子100A,100Bにおいて増幅回路における増幅度を調整することにより受光素
子が出力する検出信号が増幅され、受光素子100C~100Fに印加する電圧を調整す
ることにより受光素子100C~100Fが出力する検出信号が調整される。なお、増幅
とは、入力信号に対する出力信号の比が1以上である場合も1未満である場合も含む。ま
た、受光素子100C~100Fに接続された増幅部130C~130Fに、さらに既知
の増幅回路を含んでいてもよく、受光素子100C~100Fの検出感度の調整とは、こ
の増幅回路により受光素子100C~100Fの出力電圧を調整することを含んでいても
よい。
【0082】
フローサイトメーター10は、例示的に、光源124、フローセル20、及び、受光素
子100A~100Fを含む図2の構成と、図5に示す増幅部130A~130F、A/
D変換部131A~131F、信号処理部63、及び、後述する温度センサ22を含む測
定部65と、を備える。測定部65は、後述する通信部64で受信された測定条件に応じ
て、フローセル20を通過する粒子含有液中の粒子を光学的に測定する。ここで、測定と
は、受光素子100A~100Fが粒子に由来する光の光学的情報を検出することと、受
光素子100A~100Fが出力する検出信号を記憶することを含み、また、記憶した検
出信号を用いて、例えば粒子数の計測などの結果を生成するなど、後述する信号処理部6
3が行う処理を含む。受光素子100A~100Fが出力する検出信号とは、増幅部13
0A~130Fを介してA/D変換部131A~131Fが出力する信号を含む。
【0083】
フローサイトメーター10は、図1に示すように、フローサイトメーター本体13と、
フローサイトメーター本体13に接続された情報処理装置14とを備えており、測定部6
5のうち、光源124と、フローセル20と、受光素子100A~100Fとを含む図2
の構成と、増幅部130A~130Fと、A/D変換部131A~131Fとはフローサ
イトメーター本体13に配置されている。また、信号処理部63は情報処理装置14に配
置されている。なお、フローサイトメーター10が情報処理装置14を備えていない場合
には、信号処理部63はフローサイトメーター本体13に配置されていてもよい。また、
フローサイトメーター10は、粒子含有液をフローセル20に通過させて測定を行うため
に、図示しないポンプやモータ等を制御する制御部を有しているが、この制御部は、信号
処理部63が兼ねていてもよく、別途、情報処理装置14又はフローサイトメーター本体
13に配置されていてもよい。
【0084】
[測定条件]
フローサイトメーター10は、測定に先だって測定項目に応じた測定条件の設定を行う
ために、例えば、図1に示す電子カルテシステム1から、測定オーダーに含まれる測定条
件を受信する。また、フローサイトメーター10は、不図示の外部サーバから測定条件を
受信してもよい。図4は、粒子に由来する光が蛍光である場合における受信した測定条件
に含まれる情報を例示している。測定条件は、測定に関する基本的な情報(以下、「基本
測定情報」という)と、光学的情報を検出するための検出感度の調整に関わる情報(以下
、「検出感度の調整に関わる情報」という)と、検出された光学的情報の補正に関わる情
報と、選択する粒子の領域を光学的情報に基づいて設定するためのゲーティングに関わる
情報(以下、「ゲーティングに関わる情報」という)と、後述する温度補正に用いるため
の計算式とを含む。
【0085】
基本測定情報は、基本情報、測定情報、閾値を含む。基本情報は、測定条件の種類を特
定するための識別情報(図4においては、「測定条件ID」という)や測定条件名を含む
。測定情報は、フローサイトメーターに吸引される試料の分析容量、粒子をフローサイト
メーター内に流す際の流速を示すフローレート、フローサイトメーターに吸引される試料
の希釈倍率を含む。閾値は検知レベルとも呼ばれ、粒子として検出する光学的情報の下限
の設定値である。閾値は、各受光素子100A~100Fが粒子に由来する光に対してそ
れぞれ設定される。例えば、閾値は光の強度に応じて0から1023の数値の範囲で設定
することができる。仮に閾値を50と設定した場合には、光の強度が50以上のものを粒
子として検出する。
【0086】
検出感度の調整に関わる情報は、受光素子100A~100Fの出力電圧の増幅度を示
す値と、受光素子100A~100Fに印加される電圧値との少なくとも1つを含む。例
えば、受光素子100A、100Bに接続された増幅回路の増幅度を調整するための増幅
値と、受光素子100C~100Fに印加される電圧を調整するためのPMT電圧値であ
る。なお、増幅値及びPMT電圧値のいずれか一方のみを含むものであってもよい。また
、受光素子100C~100Fに増幅回路が接続されている場合には、増幅回路における
増幅度を調整するための増幅値を含んでいてもよい。
【0087】
検出された光学的情報の補正に関わる情報は、受光素子100A~100Fで検出され
た光学的情報に含まれる検出対象外の光波長分布量に関わる情報を含んでいる。これは一
度の測定で粒子が発するピーク波長の異なる2以上の光を検出する場合、当該2以上の光
の波長領域が一部重複することがある。このため、検出しようとしている一方の光に検出
対象ではないもう一方の光が漏れ込み、光の検出の特異性が低下することがある。光の波
長の分布とその光量を光波長分布量と称し、漏れ込んだ光の波長の分布とその光量を検出
対象外の光波長分布量という。受光素子100C~100Fは、2以上の光の波長領域の
重複部分を区別して受光することができないため、受光素子100C~100Fのそれぞ
れの電気信号から、検出対象外の蛍光に起因する電気信号を取り除いて、検出対象の蛍光
からの光学的情報のみを取り出す、いわゆる蛍光補正を行う。検出された光学的情報に含
まれる検出対象外の光波長分布量に関わる情報は、図4において蛍光補正値と示されてお
り、この蛍光補正に用いられるものである。最も、簡便な蛍光補正値は、検出対象の蛍光
の光波長分布量から差し引かれるべき検出対象外の蛍光の光波長分布量である。例えば、
2つの異なるピーク波長を有する蛍光を蛍光1及び蛍光2とした場合、蛍光1と蛍光2の
間で光波長分布が重ならず、蛍光補正の必要がなければ蛍光1の蛍光補正値は0.0とな
る。一方、蛍光1と蛍光2を同時に測定した際に光分布波長が重なり、その重なる光波長
分布量が27.5%の時は、蛍光1の蛍光分布量から蛍光2に由来する蛍光分布量を27
.5%引くために、蛍光補正値を27.5と設定することができる。
【0088】
ゲーティングに関わる情報は、粒子に由来する光の分布図上の分布設定に関わる情報を
含むものである。フローサイトメーターでは、検出した光学的情報から1つ測定項目に対
して、又は2以上の測定項目毎にスキャッタグラムやヒストグラムと呼ばれる粒子に由来
する光の分布図を作成する。スキャタグラムは、2つの測定項目についてX軸とY軸の二
軸で粒子に由来する光の分布を表すものである。ヒストグラムは、1つの測定項目につい
て光の強さとその粒子の数により表されるものである。ゲーティングとは、このそれぞれ
の分布図に対して、測定項目に応じて適切な測定を行うために、分布図の中に測定項目に
応じた一定の分布領域を選択することをいう。より具体的には、以下に示す情報を設定す
ることをいう。
【0089】
粒子に由来する光の分布図上の分布設定に関わる情報には、スキャッタグラムに関わる
情報と、ヒストグラムに関わる情報と、ゲートに関わる情報とを含む。スキャッタグラム
に関わる情報は、スキャッタグラムを作成するための情報であり、作成されるスキャタグ
ラムの名称であるスキャッタグラム名、上位ゲート、第1の測定項目を表す光を受光して
いるフォトダイオードを示すX軸チャネル(X軸chともいう)、そのX軸チャネルの名
称、第2の測定項目を表す光を受光しているフォトダイオードを示すY軸チャネル(Y軸
chともいう)、そのY軸チャネルの名称を含む。ヒストグラムに関わる情報はヒストグ
ラムを作成するための情報であり、ヒストグラム名、上位ゲート、測定項目を表す光を受
光しているフォトダイオードを示すX軸チャンネル、そのX軸チャンネルの名称を含む。
上位ゲートとは、2以上のゲートを使用してこれに対応するそれぞれのスキャタグラムを
作成する場合に、先に作成されたスキャタグラムのゲートを示す。ゲートに関わる情報は
、スキャッタグラムやヒストグラムから選択する各粒子の領域を決定するためのものであ
り、選択したゲートの名称であるゲート名、ゲートの位置を示す位置情報、受光した光波
長又は光波長領域に対して表示部上で与えられる色、測定項目名、受光する光の強度の上
限値、受光する光の強度の下限値、分析結果を表示する際の結果値タイプを含む。結果値
タイプとは、結果の様々な統計処理値であり、例えば、粒子総数、平均値、変動係数、全
体に対する割合、最頻値などである。
【0090】
作成されるスキャッタグラム及びヒストグラムの数は測定項目により異なる。このため
、スキャッタグラムに関わる情報と、ヒストグラムに関わる情報と、ゲートに関わる情報
とは、作成されるスキャッタグラム及びヒストグラムの数に応じて複数個含まれる場合が
ある。なお、粒子に由来する光の分布図上の分布設定に関わる情報には、ドットプロット
に関わる情報を含んでもよい。
【0091】
[フローサイトメーターの情報処理系]
図5は、本実施形態に係るフローサイトメーターの情報処理系の一例を示す図である。
図5は、フローサイトメーター10の情報処理系の構成を示し、例示的に、入力部60と
、条件入力部61と、表示部62と、信号処理部63と、通信部64とを備えている。信
号処理部63は、受光素子100A~100Fから出力される検出信号を増幅器130A
~130F及びA/D変換部131A~Fを介して取得する。また、粒子含有液の温度を
検出して、電気信号に変換された温度検出信号を出力する温度センサ22を備えており、
信号処理部63は、温度センサ22による温度検出信号を温度検出回路132、A/D変
換部133を介して取得する。
【0092】
入力部60は、例えば、キーボード、マウス、タッチパネルの少なくとも1つより構成
され、フローサイトメーター10を操作するユーザによる測定項目の変更入力等を受け付
ける。
【0093】
条件入力部61は、例えば、キーボード、マウス、タッチパネルの少なくとも1つより
構成され、フローサイトメーター10を操作するユーザによる測定条件の入力を受け付け
る。
【0094】
表示部62は、例えばモニターにより構成され、測定項目、測定条件、及び検査結果等
を表示する。
【0095】
入力部60と、条件入力部61と、表示部62は、フローサイトメーター本体13に接
続された情報処理装置14に配置されているが、フローサイトメーター本体13に配置さ
れてもよい。
【0096】
通信部64は、図1に示す通信ネットワークN1を介して、電子カルテシステム1と通
信を行うための通信装置などから構成される。
【0097】
信号処理部63は、例示的に、データ処理の作業領域に使用するメモリ82と、プログ
ラム及び処理データを記録する記憶部83と、後述するデータ処理を行うCPU(Centra
l Processing Unit)81と、各部の間でデータを伝送するバス84と、を備える。また
、信号処理部63は、例示的に、信号処理部63に接続された各部60、61、62、6
4との間でデータの入出力を行い、又は受光素子100A~100Fから出力される検出
信号が増幅器130A~130F及びA/D変換部131A~131Fを介して入力され
、若しくは温度センサ22による温度検出信号が温度検出回路132、A/D変換部13
3を介して入力されるインタフェース部(図5において「I/F部」と示されている)8
5、86とを備えている。
【0098】
以下の説明においては、特に断らない限り、信号処理部63が行う処理は、実際には信
号処理部63のCPU81が行う処理を意味する。CPU81はメモリ82を作業領域と
して必要なデータ(処理途中の中間データ等)を一時記憶し、記憶部83に長期保存する
データを適宜記録する。
【0099】
図6は、本実施形態に係る情報処理部の機能ブロックの一例を示す図である。図6に示
すように、信号処理部63は、図5に示す記憶部83又はメモリ82に格納されたプログ
ラムを実行することにより、例示的に、1又は複数の測定項目を含むオーダー情報を取得
するオーダー情報取得部631と、測定項目に基づいて検体に含まれる粒子を測定するこ
とにより、粒子の粒子データを取得する粒子データ取得部633と、図1に示すHIS2
、及び、LIS4の少なくとも一方に、粒子データ、及び、粒子データに基づいて生成さ
れる粒子の粒子分布図に関するデータの少なくとも一方を送信する送信部635と、を備
える。また、信号処理部63は、例示的に、1又は複数の測定項目を含むオーダー情報を
取得するオーダー情報取得部635としても機能してもよい。なお、信号処理部63は、
当該信号処理部63に接続された各部の動作を制御する。
【0100】
[データ送信処理]
図7は、本実施形態に係るフローサイトメーターのデータ送信処理の一例を示す図であ
る。
【0101】
(ステップS1)
図5及び図6に示すフローサイトメーター10の信号処理部63のオーダー情報取得部
631は、1又は複数の測定項目を含むオーダー情報をHIS2、及び、LIS4の少な
くとも一方から取得する。なお、オーダー情報は、図1に示すフローサイトメーター10
により取得される前に、検体から測定試料を調製する前処理を実行する前処理装置(不図
示)が取得してもよい。この場合は、前処理装置は、オーダー情報に含まれる測定項目に
応じて、検体から測定試料を調製し、調製した測定試料を測定項目に関する情報とともに
フローサイトメーター10に提供する。
【0102】
(ステップS3)
フローサイトメーター10は、オーダー情報取得部631により取得されたオーダー情
報に含まれる測定項目に基づいて検体に含まれる粒子を測定することにより、粒子の粒子
データを取得する。この構成によれば、オーダー情報に含まれる1又は複数の測定項目に
応じて、検体に含まれる粒子を測定できるので、測定項目に応じた測定結果を取得できる
【0103】
フローサイトメーター10は、前処理装置による、検体から測定試料を調製する前処理
が実行された後に、当該測定試料に含まれる粒子を測定してもよい。
【0104】
この構成によれば、検体から測定試料を調製する前処理を実行することによって、測定
オーダーに含まれる測定項目により適合した粒子測定を行うことができるので、正確な粒
子データを取得できる。
【0105】
(ステップS5)
送信部635は、図1に示すHIS2、及び、LIS4の少なくとも一方に、粒子デー
タ、及び、粒子データに基づいて生成される粒子の粒子分布図に関するデータの少なくと
も一方を送信する。例えば、送信部635は、粒子データ、及び、粒子データに基づいて
生成される粒子の粒子分布図に関するデータの少なくとも一方を、所定の標準規格に準拠
した形式で送信する。この構成によれば、所定の標準規格に準拠した形式でデータを送信
するので、安定的にデータを送信することができる。
【0106】
ここで、所定の標準規格は、CLSI(Clinical and Laboratory Standards Institute)に
準拠した標準規格である。CLSIとは、医療機器全般の標準化を行うための国際規格である
。この構成によれば、CLSIという国際規格に準拠した形式でデータを送信するので、安定
的にデータを送信することができる。
【0107】
また、所定の標準規格は、ASTM(American Society for Testing and Materials)、HL7(
Health Level Seven)、IHE(Integrating the Healthcare Enterprise)、DICOM(Digital I
maging and Communications in Medicine)及びMFER(Medical waveform Format Encoding
Rules)の少なくとも一つの標準規格を含んでもよい。この構成によれば、情報通信に関
する様々な標準規格を使用可能となるため、データ送信の際のフォーマットに関する選択
の幅が広がる。
【0108】
上記のように所定の標準規格は、様々な規格を含みうるが、以下では、ASTMプロトコル
に関して詳細を説明する。
【0109】
図8は、本実施形態に係るフローサイトメーターが送信するデータの形式の一例を示す
図である。図8は、ASTMプロトコルの一例を示しており、各データは、例示的に、ASTMメ
ッセージ・レコード・フィールド・サブフィールドの4つの構成に配置されて送信される
。まず、データは「メッセージ」を使用して送信される。「メッセージ」は「レコード」
の列で構成され、メッセージヘッダレコード(H)で始まり、メッセージ終止符レコード(L)
で終了する。また、「レコード」は「フィールド」の列で構成され、レコード識別子と呼
ばれるASCIIアルファベットで始まり、[CR]で終了する一連のテキストで構成される。さ
らに、「フィールド」は、「サブフィールド」の列で構成される。
【0110】
図9は、図8に示すASTMレコードの構成の一例を示す図である。図9に示すように、各
レコードタイプは、レコード識別子が割り当てられることで識別される。例えば、レコー
ド識別子Rに対応する「測定結果」レコード(第1レコード)を含む「メッセージ」は、
レコード識別子Pに対応する「患者情報」レコード(第2レコード)を含んで送信される
。つまり、図6に示す送信部635は、検体ごとに、粒子データ、及び、粒子データに基
づいて生成される粒子の粒子分布図に関するデータの少なくとも一方(測定結果)と、検
体に対応づけられた患者情報と、を含むメッセージを送信してもよい。
【0111】
この構成によれば、検体ごとに、検体に含まれる粒子の測定結果を患者情報と関連づけ
て送信するので、図1に示す電子カルテシステム1において、医師が閲覧を希望する患者
の電子カルテを正確に出力することが可能となる。
【0112】
なお、レコード識別子Rに対応する「測定結果」レコードを含む「メッセージ」は、レ
コード識別子Pに対応する「患者情報」レコードに加えて、レコード識別子Oに対応する
「測定依頼」レコードを更に含んで送信されてもよい。
【0113】
図10は、図8に示すASTMフィールド8の構成の一例を示す図である。図10に示すよ
うに、患者情報は、少なくとも、患者を識別する患者識別情報(ASTMフィールド8.1.
5)を含む。この構成によれば、図1に示す電子カルテシステム1において、特定の患者
に対応づけられた検体をより正確に識別することができる。
【0114】
図11は、図8に示すASTMフィールド10の構成の一例を示す図である。図11に示す
ように、粒子データ、及び、粒子の粒子分布図に関するデータの少なくとも一方は、ASTM
フィールド10.1.4の「データ値」に配置されて図1に示す電子カルテシステム1に
送信される。
【0115】
図12は、図11に示すASTMフィールド10.1.4の「データ値」に含まれて送信さ
れるドットデータの通信データフォーマットの一例を示す図である。図12に示すように
、ドットデータは、ASTMフィールド10.1.4の「データ値」に含まれて送信される。
そして、図1に示す電子カルテシステム1は、フローサイトメーター10からドットデー
タ(出力情報)を取得すると、取得した当該ドットデータに基づいて、当該ドットデータ
に対応するドットプロット(粒子分布図)を含む電子カルテを生成し、出力する。ここで
、ドットデータとは、フローサイトメーター10で測定された各粒子に対応するデータ、
つまり、粒子のドットごとのデータである。
【0116】
図13は、図11に示すASTMフィールド10.1.4の「データ値」に含まれて送信さ
れる粒度分布データの通信データフォーマットの一例を示す図である。図12に示すよう
に、粒度分布データは、ASTMフィールド10.1.4の「データ値」に含まれて送信され
る。そして、図1に示す電子カルテシステム1は、フローサイトメーター10から粒度分
布データ(出力情報)を取得すると、取得した当該粒度分布データに基づいて、当該粒度
分布データに対応するヒストグラム(粒子分布図)を含む電子カルテを生成し、出力する
。ここで、粒度分布データとは、フローサイトメーター10で測定された各粒子の分布状
況を示すデータである。
【0117】
これらの構成によれば、粒子分布図に対応する画像データ自体を送信する必要がないの
で、送信するデータ量を削減することが可能となる。
【0118】
出力情報は、取得された粒子データに基づいて異なる複数の粒子分布図を出力するため
の出力情報を含む。この構成によれば、例えばある検体について、異なる日時に測定され
た粒子データに対応する粒子分布図を比較表示することができる。
【0119】
出力情報は、検体に含まれる粒子が測定された日時を示す日時情報を更に含む。この構
成によれば、例えばある検体について、粒子データに対応する粒子分布図を時系列で表示
することができる。
【0120】
なお、図6に示す送信部635は、粒子分布図を示す画像データ自体を図1に示す電子
カルテシステム1に送信してもよい。また、送信部635は、例示的に、細胞(粒子)の
サイズを表す前方散乱光情報と、細胞の内部構造を表す側方散乱光情報と、細胞のタンパ
ク質や遺伝子等の情報を知るための蛍光情報と、を含む粒子データを電子カルテシステム
1に送信してもよい。
【0121】
図14は、本実施形態に係る医師端末装置の表示部における電子カルテ表示画面の一例
を示す図である。図14に示すように、医師端末装置7の表示部70における電子カルテ
表示画面Gには、患者情報と、患者に対応づけられた検体の検査値と、図12に示すドッ
トデータに対応するドットプロットD1、D2、D3(粒子分布図)と、図13に示す粒
度分布データに対応するヒストグラムH1(粒子分布図)と、を含む電子カルテが出力さ
れる。
【0122】
この構成によれば、検体に含まれる粒子データをドットプロット及びヒストグラムの少
なくとも一方で表示するので、粒子の分布状態を適切に把握することができる。
【0123】
また、患者情報と患者に対応づけられた検体の検査値とに関連づけて、粒子分布図を一
覧表示するので、患者の検査結果を容易に把握することができる。
【0124】
以上、本実施形態によれば、フローサイトメーター10は、検体に含まれる粒子の粒子
データ、及び、当該粒子データに基づいて生成される粒子の粒子分布図に関するデータの
少なくとも一方を電子カルテシステム1に送信する。よって、電子カルテシステム1にお
いて、検体に含まれる粒子の粒子分布図を含む電子カルテを生成し、生成された電子カル
テを、例えば、電子カルテシステム1の医師端末装置7又は検査技師端末装置9において
閲覧することができる。また、必要に応じて、電子カルテにおける粒子分布図を調整する
ことができる。したがって、電子カルテを閲覧する際の電子カルテシステム1の操作性を
高め、且つ、利便性を向上させることができ、さらに医師等が正確な診断を迅速に行うこ
とができる。
【0125】
<他の実施形態>
上記実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈
するものではない。本発明はその趣旨を逸脱することなく、変更/改良(たとえば、各実
施形態を組み合わせること、各実施形態の一部の構成を省略すること)され得るとともに
、本発明にはその等価物も含まれる。
【0126】
図6に示すフローサイトメーターの信号処理部63の送信部635は、図1に示すLI
S4を介して、HIS2に、粒子データ、及び、粒子分布図に関するデータの少なくとも
一方を送信してもよい。
【0127】
この構成によれば、フローサイトメーター10がHIS2と直接接続されていなくても
、LIS4を介してデータを送信することができる。
【0128】
送信部635は、病院情報システム2及び床検査情報システム4の少なくとも一方に、
粒子データ、及び、粒子データに基づいて生成される粒子の粒子分布図に関するデータの
少なくとも一方を含む圧縮データを送信してもよい。
【0129】
この構成によれば、HIS2及びLIS4の少なくとも一方に対する送信データを圧縮
するので、送信の際のデータ量を削減することができる。
【0130】
送信部635は、粒子の粒子数に関する粒子数情報を更に送信してもよい。
【0131】
この構成によれば、送信部635は、粒子の粒子数に関する粒子数情報を更に送信する
ので、図1に示す電子カルテシステム1において、検査値としての粒子数を更に含む電子
カルテを生成し出力できる。
【符号の説明】
【0132】
1…電子カルテシステム(情報処理システム)、2…HIS(Hospital Information Sy
stems)、4…(Clinical Laboratory Information System)、10…フローサイトメータ
ー、631…オーダー情報取得部、633…粒子データ取得部、635…送信部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14