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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-05
(45)【発行日】2023-12-13
(54)【発明の名称】光通信モジュール
(51)【国際特許分類】
   H04B 10/40 20130101AFI20231206BHJP
   H01L 31/10 20060101ALI20231206BHJP
   H04B 10/80 20130101ALI20231206BHJP
【FI】
H04B10/40
H01L31/10 G
H04B10/80
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019089516
(22)【出願日】2019-05-10
(65)【公開番号】P2020188300
(43)【公開日】2020-11-19
【審査請求日】2022-04-22
(73)【特許権者】
【識別番号】301005371
【氏名又は名称】日本ルメンタム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】弁理士法人はるか国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】峰川 勇人
(72)【発明者】
【氏名】時田 茂
(72)【発明者】
【氏名】大森 幸一
(72)【発明者】
【氏名】速見 明弘
(72)【発明者】
【氏名】成澤 早紀
【審査官】鴨川 学
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-165040(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0292619(US,A1)
【文献】国際公開第2019/049495(WO,A1)
【文献】特開2003-309518(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 10/40
H01L 31/10
H04B 10/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホスト装置の開口に挿入され、該ホスト装置から第1電源電圧及び第2電源電圧が印加され、前記ホスト装置と信号の送受信を行う光通信モジュールであって、
前記光通信モジュールの挿入方向に並ぶよう前記ホスト装置に設けられた、第1電源供給端子及び該第1電源供給端子よりも前記開口側に位置する第2電源供給端子のうち、前記第1電源供給端子と接触し、前記第1電源電圧が印加される第1電源被供給端子と、
前記第2電源供給端子と接触し、前記第2電源電圧が印加される第2電源被供給端子と、
前記挿入方向と直交する方向に前記第1電源供給端子と並ぶよう前記ホスト装置に設けられた第3電源供給端子と接触し、第3電源電圧が印加される第3電源被供給端子と、
前記挿入方向と直交する方向に前記第2電源供給端子と並ぶよう前記ホスト装置に設けられた第4電源供給端子と接触し、第4電源電圧が印加される第4電源被供給端子と、
前記第1電源被供給端子及び前記第2電源被供給端子に接続され、前記信号の処理を行う信号処理回路と、
前記第1電源被供給端子と前記信号処理回路との間に設けられ、前記第2電源被供給端子に印加される電圧に応じて、前記第1電源被供給端子と前記信号処理回路との間の接続を制御する電源制御回路と、
を含み、
前記第3電源被供給端子と前記第4電源被供給端子は、前記光通信モジュールの挿入方向に並ぶよう配置され、
前記電源制御回路は、さらに前記第3電源被供給端子と前記信号処理回路との間に設けられ、前記第2電源被供給端子に印加される電圧に応じて、前記第3電源被供給端子と前記信号処理回路との間の接続を制御する、
光通信モジュール。
【請求項2】
前記電源制御回路は、前記第1電源被供給端子に前記第1電源電圧が印加され、かつ、
前記第2電源被供給端子に前記第2電源電圧が印加された場合に、前記第1電源被供給端
子と前記信号処理回路とを接続するAND回路またはリレー回路を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の光通信モジュール。
【請求項3】
前記第1電源電圧は、前記第2電源電圧と同じ、または、前記第2電源電圧よりも高い、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の光通信モジュール。
【請求項4】
ホスト装置の開口に挿入され、該ホスト装置から第1電源電圧及び第2電源電圧が印加され、前記ホスト装置と信号の送受信を行う光通信モジュールであって、
前記光通信モジュールの挿入方向に並ぶよう前記ホスト装置に設けられた、第1電源供給端子及び該第1電源供給端子よりも前記開口側に位置する第2電源供給端子のうち、前記第1電源供給端子と接触し、前記第1電源電圧が印加される第1電源被供給端子と、
前記第2電源供給端子と接触し、前記第2電源電圧が印加される第2電源被供給端子と、
前記第1電源被供給端子及び前記第2電源被供給端子に接続され、前記信号の処理を行う信号処理回路と、
前記第1電源被供給端子と前記信号処理回路との間に設けられ、前記第2電源被供給端子に印加される電圧に応じて、前記第1電源被供給端子と前記信号処理回路との間の接続を制御する電源制御回路と、
を含み、
前記電源制御回路は、
前記第2電源被供給端子に印加される電圧に応じて、前記第1電源被供給端子と前記信号処理回路との接続を制御する接続回路と、
少なくとも前記信号処理回路、光送信部及び光受信部への電源投入順序を制御する制御部と、を含み、
前記第1電源被供給端子は、前記接続回路と接続され、
前記第2電源被供給端子は、前記接続回路と前記制御部の両方と接続される、
光通信モジュール。
【請求項5】
前記第1電源被供給端子は、前記接続回路のみと接続される、ことを特徴とする請求項に記載の光通信モジュール。
【請求項6】
前記挿入方向と直交する方向に前記第1電源供給端子と並ぶよう前記ホスト装置に設けられた第3電源供給端子と接触し、第3電源電圧が印加される第3電源被供給端子と、
前記挿入方向と直交する方向に前記第2電源供給端子と並ぶよう前記ホスト装置に設けられた第4電源供給端子と接触し、第4電源電圧が印加される第4電源被供給端子と、
をさらに有し、
前記第3電源被供給端子と前記第4電源被供給端子は、前記光通信モジュールの挿入方向に並ぶよう配置され、
前記電源制御回路は、さらに前記第3電源被供給端子と前記信号処理回路との間に設けられ、前記第4電源被供給端子に印加される電圧に応じて、前記第3電源被供給端子と前記信号処理回路との間の接続を制御し、
前記電源制御回路は、前記第4電源被供給端子に印加される電圧に応じて、前記第3電源被供給端子と前記光送信部との接続を制御する他の接続回路を含み、
前記第3電源被供給端子は、前記他の接続回路と接続され、
前記第4電源被供給端子は、前記他の接続回路と前記制御部の両方と接続される、
ことを特徴とする請求項4または5に記載の光通信モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光通信モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、通信トラフィックの増加に伴う通信システムの高速化、拡大化に対処するために、通信装置間の情報伝送の方法として、光ファイバ通信が用いられている。
【0003】
光ファイバ通信を用いて通信を行う通信装置には、光信号から電気信号への変換、電気信号から光信号への変換、信号の増幅、信号の変調及び復調、などの信号処理を行う光通信モジュールが設けられる。光通信モジュールには、ホスト装置に設けられた開口(例えば、エッジコネクタ)に挿抜可能な光通信モジュールが用いられる。
【0004】
光通信モジュールは、ホスト装置から電源を供給されるための端子や、信号の送受信のための端子が配置される。当該端子の形状や配置は、規格化されている。例えば、光通信モジュールに設けられた基板の表面及び裏面の双方において、複数種の電源電圧が供給されるために複数の電源被供給端子が配置される規格が存在する。
【0005】
例えば、下記特許文献1は、2系統の電源供給経路を有する光通信モジュールにおいて、2系統の電源供給経路の双方にスイッチを設ける点を開示している。当該スイッチは、2系統の電源供給経路に電源が供給された場合にON状態となる。
【0006】
また、光通信モジュールのホスト装置への挿入方向に端子を並べて配置する形状の規格が存在する。当該規格では、ホスト装置には、第1電源供給端子及び該第1電源供給端子よりもホスト装置から見て開口側に位置する第2電源供給端子設けられる。また、光通信モジュールには、ホスト装置に完全に挿入された状態で、第1電源供給端子と接触し第1電源電圧が印加される第1電源被供給端子と、第2電源供給端子と接触し第2電源電圧が印加される第2電源被供給端子と、が配置される。
【0007】
挿入方向に端子が並べて配置されている場合、光通信モジュールの挿抜時に、ホスト装置の第2電源供給端子と、光通信モジュールの第1電源供給端子と、が一時的に接触する。そのため、図8に示すように、光通信モジュールの第1電源供給端子に、ホスト装置の第2電源供給端子から本来供給されるべきでないVCC2の電源電圧が一時的に供給されてしまう。当該状況は、光通信モジュールの誤動作や内部回路、内部に使用される集積回路の故障の原因となる。
【0008】
そこで、下記特許文献2は、当該第1電源供給端子と第2電源供給端子とを電気的に接続する点、当該第1電源供給端子と第2電源供給端子とを近接して配置する点、遅延回路を用いて、本来供給されるべきでない電源電圧が供給されるリスクを低減する点を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2009-165040号公報
【文献】米国特許出願公開第2018/0292619号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1によれば、2系統の電源供給経路のどちらに先に電源が供給されるか不定であるため、2つの電源供給経路の双方にスイッチが配置される。しかしながら、双方にスイッチを設けると回路規模が増加し、コストも高くなる。
【0011】
また、特許文献2が開示するように、第1電源供給端子と第2電源供給端子とを電気的に接続した場合や、第1電源供給端子と第2電源供給端子とを近接して配置した場合、第1電源供給端子と第2電源供給端子に供給される電源電圧が同じである必要がある。そのため、第1電源供給端子と第2電源供給端子に、異なる電源電圧を供給することができない。
【0012】
また、仮に同じ電源電圧が供給される場合であっても、第1電源供給端子に間歇的に電圧が供給されるため、光通信モジュールの内部でサージ電流が流れ、故障の原因となる。さらに、遅延回路を用いたとしても、光通信モジュールを遅い速度で挿入した場合には、第1電源供給端子に本来供給されるべきでない電源電圧が供給されるおそれがある。
【0013】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、ホスト装置への挿入方向に並ぶように配置された電源被供給端子を有する挿抜可能な光通信モジュールであって、低コスト、かつ、本来供給されるべきでない電源電圧が供給されることによる故障や動作不良の生じる可能性を低減した光通信モジュールを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の一側面に係る光通信モジュールによれば、ホスト装置の開口に挿入され、該ホスト装置から第1電源電圧及び第2電源電圧が印加され、前記ホスト装置と信号の送受信を行う光通信モジュールであって、前記光通信モジュールの挿入方向に並ぶよう前記ホスト装置に設けられた、第1電源供給端子及び該第1電源供給端子よりも前記開口側に位置する第2電源供給端子のうち、前記第1電源供給端子と接触し、前記第1電源電圧が印加される第1電源被供給端子と、前記第2電源供給端子と接触し、前記第2電源電圧が印加される第2電源被供給端子と、前記第1電源被供給端子及び前記第2電源被供給端子に接続され、前記信号の処理を行う信号処理回路と、前記第1電源被供給端子と前記信号処理回路との間に設けられ、前記第2電源被供給端子に印加される電圧に応じて、前記第1電源被供給端子と前記信号処理回路との間の接続を制御する電源制御回路と、を含む。
【0015】
また、本発明の他の一側面に係る光通信モジュールによれば、前記電源制御回路は、前記第1電源被供給端子に前記第1電源電圧が印加され、かつ、前記第2電源被供給端子に前記第2電源電圧が印加された場合に、前記第1電源被供給端子と前記信号処理回路とを接続するAND回路またはリレー回路を含む。
【0016】
また、本発明の他の一側面に係る光通信モジュールによれば、前記挿入方向と直交する方向に前記第1電源供給端子と並ぶよう前記ホスト装置に設けられた第3電源供給端子と接触し、第3電源電圧が印加される第3電源被供給端子と、前記挿入方向と直交する方向に前記第2電源供給端子と並ぶよう前記ホスト装置に設けられた第4電源供給端子と接触し、第4電源電圧が印加される第4電源被供給端子と、をさらに有し、前記第3電源被供給端子と前記第4電源被供給端子は、前記光通信モジュールの挿入方向に並ぶよう配置され、前記電源制御回路は、さらに前記第3電源被供給端子と前記信号処理回路との間に設けられ、前記第4電源被供給端子に印加される電圧に応じて、前記第3電源被供給端子と前記信号処理回路との間の接続を制御する。
【0017】
また、本発明の他の一側面に係る光通信モジュールによれば、前記挿入方向と直交する方向に前記第1電源供給端子と並ぶよう前記ホスト装置に設けられた第3電源供給端子と接触し、第3電源電圧が印加される第3電源被供給端子と、前記挿入方向と直交する方向に前記第2電源供給端子と並ぶよう前記ホスト装置に設けられた第4電源供給端子と接触し、第4電源電圧が印加される第4電源被供給端子と、をさらに有し、前記第3電源被供給端子と前記第4電源被供給端子は、前記光通信モジュールの挿入方向に並ぶよう配置され、前記電源制御回路は、さらに前記第3電源被供給端子と前記信号処理回路との間に設けられ、前記第2電源被供給端子に印加される電圧に応じて、前記第3電源被供給端子と前記信号処理回路との間の接続を制御する。
【0018】
また、本発明の他の一側面に係る光通信モジュールによれば、前記第1電源電圧は、前記第2電源電圧と同じ、または、前記第2電源電圧よりも高い。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、ホスト装置への挿入方向に並ぶように配置された電源被供給端子を有する挿抜可能な光通信モジュールの製造コストを低減することができる。また、故障や動作不良の生じる可能性を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本実施形態に係る光通信モジュールの機能ブロック図である。
図2】本実施形態に係る光通信モジュールの端子部の形状を示す平面図である。
図3】本実施形態に係る光通信モジュールとホスト装置の断面図である。
図4】本実施形態に係る電源制御回路の機能ブロック図である。
図5】電源制御回路に含まれるAND回路の回路図の一例を示す図である。
図6】電源制御回路の入力電圧と出力電圧のタイミングチャートである。
図7】変形例における電源制御回路の機能ブロック図である。
図8】従来技術において電源被供給端子に供給される電源電圧のタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための好適な実施の形態(以下、実施形態という)を、図面に従って説明する。
【0022】
図1には、本実施形態に関わる光通信モジュール100の機能ブロック図を示す。図1に示す様に、光通信モジュール100は、端子部102と、電源制御回路104と、信号処理回路106と、光送信部108と、光受信部110と、演算部112と、リセット回路114と、を含む。各構成は、例えば、プリント基板上に形成される。光通信モジュール100は、後述するホスト装置302の開口に挿入され、該ホスト装置302から第1電源電圧及び第2電源電圧等が印加され、ホスト装置302と信号の送受信を行う。
【0023】
端子部102には、ホスト装置302から電源を供給される複数の電源被供給端子と、ホスト装置302から信号を受信する複数の信号受信端子と、ホスト装置302に対して信号を送信する複数の信号送信端子と、が配置される。本実施形態では、電源被供給端子は、第1電源被供給端子116から第6電源被供給端子126を含む。また、信号受信端子は、第1信号受信端子p及びnから第4信号受信端子p及びnを含む。また、信号送信端子は、第1信号送信端子p及びnから第4信号送信端子p及びnを含む。なお、各信号端子のp及びnの組み合わせは、差動信号のペアであることを表す。端子部102の詳細については後述する。
【0024】
電源制御回路104は、第1列202の電源被供給端子と信号処理回路106との間に設けられ、第2列204の電源被供給端子に印加される電圧に応じて、第1列202の電源被供給端子と信号処理回路106との間の接続を制御する。電源制御回路104の詳細については後述する。
【0025】
信号処理回路106は、電源制御回路104を介して各電源被供給端子に接続され、信号の処理を行う。具体的には、信号処理回路106は、まず、電源制御回路104を介して各電源被供給端子から電源を供給される。また、信号処理回路106は、ホスト装置302から信号受信端子を介して電気信号を取得する。信号処理回路106は、ホスト装置302から取得した電気信号に含まれるデータとクロックの位相を調整し、受信したデータの内容を判別する。そして、信号処理回路106は、光送信部108に送信データを伝達する。また、信号処理回路106は、光受信部110から受信データを取得し、データの内容を判別する。受信データの内容を判別する方法は、基準クロックに受信データの位相をあわせる方式でも良いし、受信データから基準クロックを抽出する方式でもよい。さらに、信号処理回路106は、光受信部110が受信した光信号に応じて出力される電流信号の波形を整形する波形整形回路等を含む回路を備える。信号処理回路106は、整形された電流信号を電気信号として、信号送信端子を介してホスト装置302へ出力する。
【0026】
光送信部108は、信号処理回路106から取得した送信データに基づいて、光信号を送信する。具体的には、例えば、光送信部108は、レーザダイオードと、送信回路と、を含む。送信回路は、レーザダイオードに電流を供給して駆動させる駆動回路等を含む。光送信部108は、信号処理回路106部から取得した送信データをレーザダイオードにより光信号に変換し、外部へと出力する。
【0027】
光受信部110は、光信号を受信し、電圧信号に変換した上で信号処理回路106に送信する。具体的には、例えば、光受信部110は、受光素子と、出力回路と、を含む。受光素子は、光信号を受信して、電流信号に変換する。出力回路は、受光素子により受光した光信号を増幅する。これにより、光受信部110は、受信した光信号を電圧信号に変換して信号処理回路106へ出力する。なお、受光素子は、例えば、フォトダイオードやアバランシェフォトダイオード等であってもよい。
【0028】
演算部112は、光通信モジュール100に含まれる各構成を制御する。具体的には、例えば、演算部112は、光送信部108、光受信部110の動作状態や、ホスト装置302から供給される電源電圧等の各種の情報に基づいて光通信モジュール100の動作状態を監視する。また、演算部112は、光通信モジュール100において異常が発生した場合に、対応するアラーム信号を生成する。また、この場合、演算部112は、光送信部108、光受信部110に対して光通信モジュール100で検出した異常に対応した動作制御を行う。
【0029】
リセット回路114は、演算部112に電源が投入されて安定するまでの間、演算部112をリセット状態に保持する回路である。リセット回路114は、従来から用いられている技術であるため、詳細な説明は省略する。
【0030】
続いて、端子部102に配置される各端子について、図2(a)から図3(b)を用いて説明する。図2(a)は、光通信モジュール100の端子部102の表面の形状を示す平面図である。図2(b)は、光通信モジュール100の端子部102の裏面の形状を示す平面図である。図3(a)は、光通信モジュール100をホスト装置302に接続する途上の状態における光通信モジュール100及びホスト装置302の断面図である。図3(b)は、光通信モジュール100がホスト装置302に完全に接続された状態における光通信モジュール100及びホスト装置302の断面図である。ここでは、図3(a)、(b)は図2(a)、(b)のIII-III’断面図を示す。なお、図2(a)及び図2(b)において、ホスト装置302は、光通信モジュール100の図面上の上側に配置され、光通信モジュール100は、ホスト装置302の開口部に接続される。
【0031】
図2は、端子部102の形態の一例を示す図であって、光通信業界における1つの規格で定められた端子配置のレイアウトである。図2(a)から図3(b)に示すように、端子部102には、複数の端子が、光通信モジュール100の挿入方向206に向かって2列に並べて配置される。ここで、光通信モジュール100の挿入方向206は、図2(a)及び図2(b)の図面上の上方向であって、図3(a)及び図3(b)の図面上の右方向である。以下、図2(a)及び図2(b)の図面上の上側であって、図3(a)及び図3(b)の図面上の右側を第1列202とし、図2(a)及び図2(b)の図面上の下側であって、図3(a)及び図3(b)の図面上の左側を第2列204とする。
【0032】
図2(a)に示すように、端子部102表面の第1列202には、第1電源被供給端子116及び第3電源被供給端子120が設けられる。端子部102表面の第2列204には、第2電源被供給端子118及び第4電源被供給端子122が設けられる。端子部102裏面の第1列202には、第5電源被供給端子124が設けられる。端子部102裏面の第2列204には、第6電源被供給端子126が設けられる。また、詳細は記載しないが、信号端子やGND端子は、端子部102の規格で定められる所与の位置に設けられる。
【0033】
ここで、第1電源被供給端子116と、第2電源被供給端子118は、光通信モジュール100の挿入方向206に向かって並べて配置される。同様に、第3電源被供給端子120と、第4電源被供給端子122は、光通信モジュール100の挿入方向206に向かって並べて配置される。同様に、第5電源被供給端子124と、第6電源被供給端子126は、光通信モジュール100の挿入方向206に向かって並べて配置される。
【0034】
図3(a)及び図3(b)に示すように、ホスト装置302には、光通信モジュール100の挿入方向206に並ぶように、第1列202に第1電源供給端子304及び第5電源供給端子308が設けられ、該第1電源供給端子304よりも開口側である第2列204に第2電源供給端子306及び第6電源供給端子310が設けられる。なお、図3(a)及び図3(b)には図示しないが、第1列202に第3電源供給端子が設けられ、第2列204に、第4電源供給端子が設けられる。第1電源供給端子304乃至第6電源供給端子310には、ホスト装置302の電源生成部(図示なし)から、第1電源電圧乃至第6電源電圧が印加されている。
【0035】
光通信モジュール100の端子部102の挿入が完了すると、対応する電源供給端子と電源被供給端子が接触する。これにより、光通信モジュール100は、ホスト装置302から電源が供給されて起動する。起動完了後、光通信モジュール100は、信号端子を介して、ホスト装置302とのデータ通信が可能となる。
【0036】
上記のように、ホスト装置302と光通信モジュール100の端子は、それぞれ挿入方向206に並べて2列に配置されている。そのため、図3(a)に示すように、光通信モジュール100をホスト装置302に挿入する際、光通信モジュール100の第1列202に含まれる第1電源被供給端子116は、ホスト装置302の第2電源供給端子306と一時的に接触する。この時、第1電源被供給端子116には、第2電源供給端子306から第2電源電圧が印可される状態となっている。
【0037】
さらに、図3(b)に示すように、光通信モジュール100の挿入が完了されると、光通信モジュール100の第1電源被供給端子116は、ホスト装置302の第1電源供給端子304と接触する。同時に、光モジュール100の第2列204に含まれる第2電源被供給端子118は、ホスト装置302の第2電源供給端子306と接触する。すなわち、光通信モジュール100がホスト装置302に完全に接続された状態で、第1電源被供給端子116は、第1電源供給端子304と接触し第1電源電圧が印加される。また、第2電源被供給端子118は、第2電源供給端子306と接触し第2電源電圧が印加される。
【0038】
同様に、光通信モジュール100の第1列202に含まれる第3電源被供給端子120は、途中まで挿入された状態で、同じ第2列204に配置されたホスト装置302の第4電源供給端子(図示なし)と接触し、本来とは異なる電源が供給される。また裏面の第5電源被供給端子124についても同様である。
【0039】
上記のように、光通信モジュール100の挿入途中において、第1列202の電源被供給端子が、ホスト装置302の第2列204の電源供給端子(例えば第2電源供給端子306)と接触した状態では、第1列202の電源被供給端子には所望と異なる電源が供給される。また、その後、第1列202の電源被供給端子はホスト装置302の電源供給端子と接触しない状態となる。さらに、光通信モジュール100がホスト装置302に完全に差し込まれた状態では、光通信モジュール100の第1列202の電源被供給端子は、ホスト装置302の第1列202の電源供給端子(例えば第1電源供給端子304)と接触する。
【0040】
すなわち、光通信モジュール100の第1列202の電源被供給端子には間歇的に電源が供給される。この場合、光通信モジュール100が誤動作する可能性や、内部回路が破損する可能性がある。電源被供給端子が挿入方向206に並んで配置された光通信モジュール100を用いる場合、光通信モジュール100の挿抜時に、光通信モジュール100の電源被供給端子に本来接続すべきでないホスト装置302側の電源供給端子が接触することを回避できない。本発明によれば、電源制御回路104が第1列202に配置された電源被供給端子と信号処理回路106との間の接続を制御することにより、当該課題を解決できる。
【0041】
電源制御回路104の動作について、図4を用いて説明する。図4は、電源制御回路104の機能ブロック図である。
【0042】
図4に示すように、電源制御回路104は、3個の接続回路402と、制御部404と、を含む。接続回路402は、第1電源被供給端子116と信号処理回路106との間に設けられ、第2電源被供給端子118に印加される電圧に応じて、第1電源被供給端子116と信号処理回路106との間の接続を制御する。
【0043】
具体的には、例えば、電源制御回路104は、第1電源被供給端子116に第1電源電圧が印加され、かつ、第2電源被供給端子118に第2電源電圧が印加された場合に、第1電源被供給端子116と信号処理回路106とを接続する接続回路402を含む。接続回路402は、例えばAND回路である。AND回路の2個の入力端子の一方は、第1電源被供給端子116と接続される。また、他の一方は、第2電源被供給端子118と接続される。同様に、他のAND回路の2個の入力端子の一方は、第3電源被供給端子120と接続され、他の一方は第4電源被供給端子122と接続される。また、他のAND回路の2個の入力端子の一方は、第5電源被供給端子124と接続され、他の一方は第6電源被供給端子126と接続される。
【0044】
制御部404は、第1電源被供給端子116及び第2電源被供給端子118に供給された電源を、リセット回路114、演算部112及び信号処理回路106に供給する。制御部404は、第3電源被供給端子120及び第4電源被供給端子122に供給された電源を、光送信部108に供給する。制御部404は、第5電源被供給端子124及び第6被電源供給端子に供給された電源を、光送信部108に供給する。制御部404は、例えばホットスワップICである。制御部404は、信号処理回路106、光送信部108及び光受信部110等への電源投入順序を制御する。
【0045】
図5は、接続回路402がAND回路である実施形態において、接続回路402の一例を示す図である。図5は、3個のAND回路のうち、第1電源被供給端子116及び第2電源被供給端子118と接続されるAND回路を示す図である。
【0046】
図5に示すように、接続回路402は、3個の抵抗と、電界効果トランジスタ504(P型MOSFET)と、バイポーラトランジスタ502(npn型トランジスタ)と、を含む。バイポーラトランジスタ502のエミッタ端子は接地され、ベース端子は抵抗を介して第2電源被供給端子118と接続され、コレクタ端子はRC抵抗を介して第1電源被供給端子116と接続される。電界効果トランジスタ504のドレイン端子は出力端子と接続され、ソース端子は第1電源被供給端子116と接続され、ゲート端子はバイポーラトランジスタ502のコレクタ端子と接続される。また、電界効果トランジスタ504のドレイン端子とGNDの間にRL抵抗が設けられる。
【0047】
接続回路402の動作について、図6を用いて説明する。図6は、光通信モジュール100が挿入される際に、第1電源被供給端子116、第2電源被供給端子118及び出力端子の電圧を示すタイムシーケンス図である。前提として、第1電源供給端子304の電圧はVCC1であり、第2電源供給端子306の電圧はVCC2であるとする。
【0048】
図6に示すように、光通信モジュール100がホスト装置302に挿入される前の状態では、第1電源被供給端子116及び第2電源被供給端子118は電源供給端子と接触していない。従って、T1までの期間において、第1電源被供給端子116及び第2電源被供給端子118の電圧は0Vである。また、第1電源被供給端子116の電圧が0Vである場合、電界効果トランジスタ504はOFF状態である。従って、T1までの期間、AND回路の出力端子の電圧は0Vである。
【0049】
光通信モジュール100をホスト装置302に挿入すると、T1の時点で、光通信モジュール100の第1電源被供給端子116とホスト装置302の第2電源供給端子306が接触する。これにより、第2電源供給端子306から第1電源被供給端子116にVCC2の電源電圧が供給される。従って、T1からT2の期間では、第1電源被供給端子116の電圧は、VCC2となる。一方、第2電源被供給端子118は、いずれの電源供給端子とも接触していない。そのため、T1からT2の期間、第2電源被供給端子118の電圧は、0Vである。
【0050】
第2電源被供給端子118の電圧が0Vである場合、バイポーラトランジスタ502のコレクタ端子にはコレクタ電流が流れない。そのため、バイポーラトランジスタ502はOFF状態である。また、電界効果トランジスタ504のソース電流も流れない。そのため、第1電源被供給端子116の電圧がVCC2であっても、電界効果トランジスタ504はOFF状態である。従って、T1からT2の期間、AND回路の出力端子の電圧は0Vである。
【0051】
さらに光通信モジュール100が挿入されると、T2からT3の期間、第1電源被供給端子116及び第2電源被供給端子118は、ともに電源供給端子と接触しない。従って、T2からT3の期間、第1電源被供給端子116及び第2電源被供給端子118の電圧は、0Vである。また、T1までの期間と同様、T2からT3の期間、AND回路の出力端子の電圧は0Vである。
【0052】
さらに光通信モジュール100が挿入されたT3の時点では、光通信モジュール100の第1電源被供給端子116とホスト装置302の第1電源供給端子304が接触する。これにより、第1電源供給端子304から第1電源被供給端子116にVCC1の電源電圧が印加される。また、同時に、光通信モジュール100の第2電源被供給端子118とホスト装置302の第2電源供給端子306が接触する。これにより、第2電源供給端子306から第2電源被供給端子118にVCC2の電源電圧が供給される。従って、T3以降では、第1電源被供給端子116の電圧はVCC1であり、第2電源被供給端子118の電圧はVCC2である。
【0053】
第1電源被供給端子116の電圧がVCC1であり、第2電源被供給端子118の電圧がVCC2である場合、バイポーラトランジスタ502のベースにベース電流が流れるため、バイポーラトランジスタ502はON状態となる。また、RC抵抗に電流が流れることで、電界効果トランジスタ504のゲート端子とソース端子間の電圧に電位差が発生するため、電界効果トランジスタ504はON状態となる。この場合、RL抵抗の両端に電位差が発生する。その結果、AND回路の出力端子は、抵抗RLと電界効果トランジスタ504のソースに流れる電流によって一義的に決まる電圧(図の例ではVCC1’)となる。
【0054】
以上説明した本実施形態によれば、電源被供給端子が挿入方向206に2列に並べて配置されるよう規格化された光通信モジュール100であっても、光通信モジュール100の挿抜時に、第1電源被供給端子116、第3電源被供給端子120及び第5電源被供給端子124に来接続すべきでない電源供給端子と接触した場合においても、光通信モジュール100内部へ電源電圧が供給されることを防止することが出来る。
【0055】
これにより、第1電源電圧が第2電源電圧よりも高い場合、定格電圧よりも高い電圧が電源制御回路104や信号処理回路106等に供給されることにより、電源制御回路104や信号処理回路106等が破損することを防止できる。また、第1電源電圧が第2電源電圧と同じであっても、図6に示すように、間歇的に電源が供給されることによって生じるサージ電流等に起因して、光通信モジュール100内部の各構成が誤動作または破損することを防止できる。
【0056】
なお、上記において、光通信モジュール100をホスト装置302に挿入する場合について説明したが、光通信モジュール100をホスト装置302から抜く場合も同様である。すなわち、第1電源被供給端子116の電圧がVCC1であり、第2電源被供給端子118の電圧がVCC2である場合にのみ、AND回路の出力端子の電圧は、VCC1となる。
【0057】
また、上記では、第1電源被供給端子116及び制御部404の間に設けられる接続部の動作について説明したが、第3電源被供給端子120と制御部404の間に設けられる接続部も同様の構成で同様の動作を行う。すなわち、接続部は、さらに第3電源被供給端子120と信号処理回路106との間に設けられ、第4電源被供給端子122に印加される電圧に応じて、第3電源被供給端子120と信号処理回路106との間の接続を制御する。同様に、接続部は、さらに第5電源被供給端子124と信号処理回路106との間に設けられ、第6電源被供給端子126に印加される電圧に応じて、第5電源被供給端子124と信号処理回路106との間の接続を制御する。
【0058】
本実施形態では、第1列202に属する電源被供給端子はAND回路の入力端子の一方にのみ接続されている。対して、第2列204に属する電源被供給端子は、AND回路の他方の入力端子に接続されると共に、直接制御部に接続されていることが特徴である。上述のように第1列202はホスト装置の挿抜時に電源投入が2回行われてしまい、誤動作、電圧破壊の原因をなりうる。そのため、AND回路を設け本来の接続状態(ホスト装置に奥まで差し込まれた状態)になるまで後段の信号処理回路や光送信部などに電圧がかからないように防止している。一方、第2列204に属する電源被供給端子は、挿抜時には本来接続される第2列の電源端子としか接続されることがないため、後段の回路等の間にAND回路のような防止機構を設ける必要が無い。単に複数の電源が投入されてから全体の電源が投入されるような機構の場合は、全ての電源被供給端子にAND回路が必要となる。しかし、本実施形態のように複数の電源端子が挿抜方向に並んでいる場合は、片側だけにAND回路を接続させればよく、コスト面、部品の配置スペースの省略という格別な効果が得られる。
【0059】
本発明は上記の実施形態に限定されるものではない。また、その他にも本発明の要旨を逸脱しない範囲で多様な変更、変形又は置換が可能であることはもちろんである。
【0060】
例えば、電源制御回路104は、さらに第3電源被供給端子120と信号処理回路106との間に設けられ、第2電源被供給端子118に印加される電圧に応じて、第3電源被供給端子120と信号処理回路106との間の接続を制御してもよい。具体的には、例えば、図7に示すように、第3電源被供給端子120と信号処理回路106との間に設けられるAND回路は、第2電源被供給端子118及び第3電源被供給端子120と接続されてもよい。この場合、第2電源被供給端子118は、電界効果トランジスタ504のソース端子に接続され、第3電源被供給端子120は、抵抗を介してバイポーラトランジスタ502のベース端子に接続される。
【0061】
図2(a)及び図2(b)に示すように、第1列202に配置される各端子は、挿入方向206に直交する方向に並べて配置される。そのため、光通信モジュール100を挿抜する際に、第2電源供給端子306と、第4電源被供給端子122には、ほぼ同じタイミングで電源電圧が供給される。従って、本変形例においても、第3電源被供給端子120と第4電源被供給端子122が接触した場合であっても、第3電源被供給端子120から光通信モジュール100内部へ第4電源被供給端子122が供給されることを防止することが出来る。
【0062】
また、電源制御回路104は、ADコンバータ、DAコンバータを内蔵するマイクロコンピュータや、FPGA、CPLDで構成されても良いし、その他方法で構成されても良い。
【0063】
また、本実施例の接続回路402はN型MOSFETを含むAND回路であるが、その他部品で構成されても良い。
【0064】
さらに、接続回路402はリレー回路であってもよい。具体的には、例えば、接続回路402は、第2電源被供給端子118への第2電源電圧の供給に応じて、第1電源被供給端子116に供給された第1電源電圧が制御部404や信号処理回路106へ供給するリレー回路であってもよい。
【符号の説明】
【0065】
100 光通信モジュール、102 端子部、104 電源制御回路、106 信号処理回路、108 光送信部、110 光受信部、112 演算部、114 リセット回路、116 第1電源被供給端子、118 第2電源被供給端子、120 第3電源被供給端子、122 第4電源被供給端子、124 第5電源被供給端子、126 第6電源被供給端子、202 第1列、204 第2列、206 挿入方向、302 ホスト装置、304 第1電源供給端子、306 第2電源供給端子、308 第5電源供給端子、310 第6電源供給端子、402 接続回路、404 制御部、502 バイポーラトランジスタ、504 電界効果トランジスタ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8