(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-05
(45)【発行日】2023-12-13
(54)【発明の名称】内部透過部材
(51)【国際特許分類】
F25D 23/02 20060101AFI20231206BHJP
A47F 3/04 20060101ALI20231206BHJP
【FI】
F25D23/02 303M
A47F3/04 F
F25D23/02 302
(21)【出願番号】P 2019156714
(22)【出願日】2019-08-29
【審査請求日】2022-07-14
(31)【優先権主張番号】P 2019089912
(32)【優先日】2019-05-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000194893
【氏名又は名称】ホシザキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141645
【氏名又は名称】山田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100076048
【氏名又は名称】山本 喜幾
(72)【発明者】
【氏名】稲田 雅司
(72)【発明者】
【氏名】淺野 勝宏
【審査官】沖田 孝裕
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-155606(JP,A)
【文献】特開2016-064974(JP,A)
【文献】特表2017-525935(JP,A)
【文献】実開昭53-164059(JP,U)
【文献】実開平06-082378(JP,U)
【文献】実開平06-006269(JP,U)
【文献】特開2017-133770(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25D 23/02
A47F 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
全光線透過率が88%以上で、かつヘイズが1%以下の熱可塑性樹脂を材質と
して形成されており、前面になる透過板と後面になる透過板とが所定の間隔で対向配置されると共に当該対向する透過板の少なくとも1辺が一体的に接続されている中空二重構造体(28)であって、
当該中空二重構造体(28)は透過板の間の端部で開放する開口が端面部材(22)により閉成されるよう構成されており、温度差を有する領域を空間的に隔てるよう配設することで、該領域の内部を透過して視認し得るよう構成
されると共に、
前記中空二重構造体(28)における透過板の間の端部で開放する開口にLEDが配置されており、透過板の間を照明し得るようになっている
ことを特徴とする内部透過部材。
【請求項2】
前記中空二重構造体(28)の視認面となる一方の
透明板の外表面に、全光線透過率に優れた不燃
性のガラスまたは
難燃性の樹脂素材の板体(34)が
重なるよう配設されている請求項1記載の内部透過部材。
【請求項3】
請求項1
または2記載の内部透過部材を
扉に使用した冷却貯蔵庫。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は内部透過部材に関し、更に詳細には、冷蔵ショーケースのように外部と内部とで温度差がある領域を隔てる透明の中空二重構造体であって、製造する際の労力とコストとを大幅に低減させ得る内部透過部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
食品等の収納物品を冷却・冷凍状態で内部に保管すると共に、該収納物品を顧客や従業員が外部から視認し得るようにした設備として、例えば
図12に示す冷蔵ショーケースのような冷却貯蔵庫10や、
図11に示す寿司店のネタケース12等が広く普及している。これらの物品収納設備は、内蔵した冷凍装置から導出した冷媒の蒸発器を庫内に配置して、内部を適温にまで冷却・冷凍するようになっており、外部と内部とを仕切る部材としてガラス扉14や正面ガラス板16が使用されている。この場合、顧客や従業員が収納物品の種類や状態を外部から視認できるように、前記ガラスには光透過性の殊に優れた材質が選定されている。
【0003】
しかし、内部を視認し得る物品収納設備であって、かつ内部が外気温より低い温度に維持される冷蔵ショーケース等の冷却貯蔵庫では、内外の温度差によりガラスの内面に結露を生じ曇ってしまい、外からの視認性を著しく損なってしまう。そこで、前記ガラス扉14や正面ガラス板16を二重ガラスにして、温度差による結露の発生を防止する仕様が普及している。この二重ガラスは、2枚のガラス板を僅かな隙間を介在させて対向配置すると共に、全周囲をスペーサで囲むことで内部に密閉空間を作って断熱性を高めたものである。すなわち、冷蔵ショーケース等の内部が外気温より低く冷却されていても、外気温の内部伝達は二重ガラスの空間により阻止(断熱)されるため、内部ガラス面に結露が生じ難く良好な視認性が確保される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-77985号公報
【文献】特表2016-531063号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記の如く、冷蔵ショーケースの如き冷却貯蔵庫や寿司ネタケース等に二重ガラスを採用すると、ガラス面に曇りを生じ難くなるので視認性が損なわれることがない。しかし、二重ガラスは重量のあるガラス板を2枚使うために全体の重量が大きくなり、ガラス扉を支持する蝶番が大型化して取り扱い難い欠点がある。また二重ガラスは、住宅建築資材の用途では各種の扉寸法に応じて規格化されているので、メーカーサイドで効率的な大量生産がなされる。これに対し冷蔵ショーケース等に使用する二重ガラスは、各種製品の多様な寸法に応じて個別に製造する必要があるため、製造現場で手間と時間とを要しコスト高になっている。
【0006】
更に、二重ガラスの製造中に対向させた2枚のガラス板の間に埃が入ったり、ガラス板内面に汚れが付着したりすることがある。これは、外部からの視認性を損ない、また後工程では除去できないので、厳重な注意と洗浄・環境管理が必要になる。これも、二重ガラス扉等の製造コストを押し上げる別の要因になっている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決し、所期の目的を達成するため請求項1に記載の発明は、
全光線透過率が88%以上で、かつヘイズが1%以下の熱可塑性樹脂を材質として形成されており、前面になる透過板と後面になる透過板とが所定の間隔で対向配置されると共に当該対向する透過板の少なくとも1辺が一体的に接続されている中空二重構造体であって、当該中空二重構造体は透過板の間の端部で開放する開口が端面部材により閉成されるよう構成されており、温度差を有する領域を空間的に隔てるよう配設することで、該領域の内部を透過して視認し得るよう構成されると共に、
前記中空二重構造体における透過板の間の端部で開放する開口にLEDが配置されており、透過板の間を照明し得るようになっていることを要旨とする。
請求項1に係る発明によれば、従来の如く2枚のガラスに所要間隔を保持させて二重ガラスを製造する場合に比べて、熱可塑性の透明樹脂を中空の二重構造体に成形するだけの工程で足りるので、製造工程が短縮化されてコストが低減される。また、全体として軽量になるため取り扱いや組み付け作業が容易になる。
【発明の効果】
【0008】
冷蔵ショーケースのように、外部と内部とで温度差がある領域を空間的に隔てると共に内部を視認し得る透過部材を、成形が容易な透明樹脂の中空二重構造体にしたので、軽量化が図られて製造時や扉開閉時の取り扱いが極めて容易になる。また、押出成形や射出成形によって中空二重構造体を樹脂成形できるため、製造中に埃や汚れが付着することがなく、工程管理が容易になると共に製造コストを削減することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明に係る内部透過部材の好適な実施例を示す斜視図であって、例えば押出成形により端面に矩形状の開口を有する中空構造体になっている。
【
図2】
図1に示す内部透過部材の両端に開放している矩形状の開口を端面部材で閉成した状態を示す斜視図である。
【
図3】
図1に示す内部透過部材を成形する際に、所要の湾曲を付与して曲面を有する中空構造体とした場合の斜視図である。
【
図4】本発明の別実施例に係る内部透過部材を示す斜視図であって、例えば押出成形により端面がコ字状の中空構造体になっている。
【
図5】
図4に示す内部透過部材の両端および長手方向の上端における開口を端面部材で閉成した状態を示す斜視図である。
【
図6】
図4に示す内部透過部材における長手方向の開口にLEDの発光列を設けて、内部をLEDにより照射し得るようにした場合の平面図である。
【
図7】
図6に示すLED発光列を設けた内部透過部材の斜視図である。
【
図8】
図1に示す中空二重構造体の対向し合う2枚の透明側板において、一方の透明側板の厚みを他方の透明側板の厚みよりも薄くした変形例の斜視図である。
【
図9】
図8に示す中空構造体の開口を端面部材で閉成した内部透過部材の斜視図である。
【
図10】
図4に示す中空二重構造体の対向し合う2枚の透明側板において、一方の透明側板の厚みを他方の透明側板の厚みよりも薄くした変形例の斜視図である。
【
図11】正面のガラス体に二重ガラスを採用したネタケースの断面図である。
【
図12】一般的な冷蔵ショーケース(冷却貯蔵庫)の概略斜視図であって、(a)は扉が手前側に揺動して開放するタイプであり、(b)は扉が左右にスライドして開放するタイプである。
【
図13】
図12の冷蔵ショーケースに使用される一般的な扉の斜視図である。
【
図14】実施例3に示す内部透過部材を扉に使用した断面図であって、
図13のA―A線で切断した場合に相当している。
【
図15】実施例4に係る内部透過部材を構成する断面コ字状部材の斜視図である。
【
図16】実施例4に示す内部透過部材を扉に使用した断面図であって、
図13のA―A線で切断した場合に相当している。
【
図17】
図16に示す内部透過部材の別例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、本発明に係る内部透過部材の好適な実施例について、添付図面を参照して説明する。実施例では、
図12に示す冷蔵ショーケース10におけるガラス扉14の枠体に嵌め込まれるガラスと置き換えた透明部材や、
図11に示すネタケース12に使用される曲面を付与した透明部材を想定している。しかし、これらに限定されるものではなく、例えば、透過部材を有する扉を前面に設けた冷却貯蔵庫や、生花店で生花を低温状態に維持して鮮度を保持するショーケース等にも広く応用される。
【実施例1】
【0011】
図1は、本発明に係る内部透過部材18の実施例を示すものであって、例えば
図12における冷蔵ショーケース10のガラスに代替して使用し得るものである。この内部透過部材18は、後述する透明度の優れた熱可塑性樹脂、例えばポリエステル共重合体を樹脂成型して中空の二重構造体28にしたものである。すなわち、冷蔵ショーケースのように冷却された内部と外部とで温度差を有する領域を空間的に隔てる透明部材であり、この内部透過部材18を介して前記領域の内部を外部から視認し得るようになっている。前記中空の二重構造体とは、
図1、
図3、
図4および
図8に示すように、前面になる透過板と後面になる透過板とが所定の間隔で対向配置されていて、これら2枚の透過板の少なくとも1辺が一体的に接続されている構造をいう。
【0012】
ここで、内部透過部材18を構成する透明な熱可塑性樹脂の材料は、例えばイーストマン ケミカル カンパニーの登録商標「トライタン」に係るポリエステル共重合体が好適に使用される。前記ポリエステル共重合体に代表される前記熱可塑性樹脂の物性は、型成形時に良好な結晶性を示し、強靭性および耐薬品性に優れたものが望ましい。また、ガラス転移温度(Tg)が高く(例えば70℃以上)、かつ全光線透過率が高い(例えば88%以上)ものが選択される。更に、透明度が非常に優れた樹脂であることが必要で、その指標である「くもり度(ヘイズ)」は、例えば1%以下であることが好ましい。前述した物性を全て満足する透明な熱可塑性樹脂として、前記「トライタン」の商標に係るポリエステル共重合体を例示したが、これら物性を満たすものであれば、他の熱可塑性樹脂、例えばポリカーボネート共重合体、アクリル共重合体、メタクリルスチレン共重合体であってもよい。
【0013】
図1に示す中空二重構造体28は、透明な熱可塑性樹脂である前記ポリエステル共重合体の原料を溶融して軟化させ、例えば押出成形機(図示せず)により押出すことで成形される。また、射出成形機(図示せず)により射出成形するようにしてもよい。この中空二重構造体28は長尺で偏平な筒体であって、その両端に断面が矩形状の開口20を有している。この断面矩形状の筒体における両端部の開口20を、断熱性部材やキャップ等の端面部材22により閉成することで、
図2に示す内部透過部材18が製造される。すなわち
図1において中空二重構造体28は、冷却貯蔵庫の扉等に取り付けたときに、外部から内部の庫内収容物を視認し得る透明部材となるものであって、例えば冷却貯蔵庫の正面側(前面)になる透過板28aと、背面側(後面で庫内側)になる透過板28bと、上面28cと、下面28dとからなる。そして、
図2に示すように、中空二重構造体28における前記端面部材22,22で両側の前記開口20を閉成することで前記内部透過部材18が構成されるが、これら端面部材22および前記上面28c、下面28dは、冷蔵ショーケース10における扉フレーム(図示せず)に中空二重構造体28を嵌め込まれると隠れて見えなくなる部分である。
【0014】
前述した中空二重構造体28を基体とする内部透過部材18は、前記開口20を端面部材22で閉成するに際し、内部空気を吸引して真空度を高めることで、断熱性能を更に向上させるようにしてもよい。また、中空二重構造体28の内部空気を窒素等の不活性ガスに置換することで、中空二重構造体28における樹脂面の経年劣化による透明度の低下を防ぐようにしてもよい。
【実施例2】
【0015】
次に実施例に係る前記内部透過部材18は、
図4に示すように、端面がコ字状をなす中空二重構造体28として成形し、該コ字状の中空二重構造体28の三方に開放している端部、すなわち
図2と同様の両端部における開口20,20と、上方の長手端部における開口24との夫々を、
図5で示す如く前記端面部材22で閉成するようにしてもよい。この
図4に示すコ字状の中空二重構造体28も、前記ポリエステル共重合体等の溶融樹脂を押出成形機で押出成形したり、射出成形機で射出成形することにより得られる。
【0016】
図4に示すコ字状の中空二重構造体28では、上方の長手端部が開口しているので、その長手方向の開口24に、
図6に示す如く、LEDの発光列26を配置してから前記端面部材22で閉成するようにしてもよい。このときは、
図7に示すように、内部透過部材18における中空部がLED発光列26で照明されるので、収納保管物の視認度が向上し、また展示効果も増大する。なお、
図2や
図5、更には後述する
図9に示す内部透過部材18を冷蔵ショーケース等の開閉扉として使用する場合は、該内部透過部材18に枠体(フレーム)を嵌め込んだり、必要に応じて把手や蝶番等を取付ければよい。
【0017】
また、
図1および
図4に示す何れの内部透過部材18であっても、
図3に示すように、前記押出成形または射出成形による成形時に所要の曲面を付与するようにしてもよい。これにより得られた曲面を有する内部透過部材18は、
図11に示すネタケース12の正面ガラス板16に替えて好適に使用することができる。
【実施例3】
【0018】
図13は、
図12(b)に示す冷蔵ショーケース10の左右にスライドする扉であって、以下の実施例3に係る内部透過部材を採用した扉の斜視図である。すなわち
図13は、
図12の冷蔵ショーケース10に使用されるガラス扉14のガラスに代えて、実施例で説明した内部透過部材からなる中空二重構造体28を使用した場合の斜視図であって、矩形状の中空二重構造体28の周囲にはアルミまたは樹脂の枠体30が嵌め込まれている。前記枠体30は、左右の縦枠30a,30bと、上横枠としての上レール30cと、下横枠としての下レール30dとからなり、左縦枠30aには扉開閉用のU字状ハンドル30eが一体成形されている。なお、
図13において手前側は、前記扉14が取り付けられる冷蔵ショーケース10の外側になる領域であって、中空二重構造体28に関してはユーザーが外側から庫内を視認し得る部位(以下「視認面」という)である。
【0019】
図13に示す前記扉14における内部透過部材は、実施例1を示す
図1で説明した中空二重構造体28である。しかし、この中空二重構造体28は、一例として前述したポリエステル共重合体を樹脂成型して構成されるものであり、当該樹脂の性質上熱に弱く、高温で溶けたり燃えたりする難点がある。このため、例えば冷蔵ショーケース等の設置個所での耐火基準が高く、UL94HBの「遅燃性」が求められるような環境の下では使用に制限があった。そこで、前記ポリエステル共重合体の樹脂に難燃剤を添加して難燃性を向上させることも提案されるが、全体としての透明度が低下するために、ショーケースの扉のように高い内部視認性が要求される部分には不適当である。
【0020】
従って、前記難燃性が要求される個所でも本発明の内部視認部材を使用可能とした提案が、実施例3に係る構成である。すなわち
図14に示す如く、中空二重構造体28における前記視認面となる一方の外表面(
図12の冷蔵ショーケース10では扉14の外側)に、全光線透過率に優れ、かつ不燃性のガラスまたは難燃性の樹脂素材からなる板体34が配設されている。ここで難燃性で透明の樹脂としては、例えばポリカーポネートやポリ塩化ビニル等が使用可能である。なお、扉14のアルミや樹脂を材質とする枠体30への組み込み効率を向上させるため、テープや接着剤その他コーキング剤等で前記枠体30を固定しても良いが、可視範囲には透明性を確保するため透明な材料を使用することが推奨される。また、前記ハンドル30eやレール30c,30dを取り付けるため、枠で隠れる部分を固定しても良いし、テープや接着剤を使用することなく挟持状態で固定しても良い。
【0021】
実施例3によれば、中空二重構造体28における一方の外表面のみにガラスまたは難燃性樹脂の板体34を配置したため、安価にショーケース扉の外郭に難燃性を持たせつつ透明性を確保した。また、中空二重構造体28は断面が矩形状の筒体をなし切れ目がないので、全体的な強度を高めることができる。更に、外表面に配置したガラスが割れた場合や、難燃性樹脂に傷が生じた場合、二重構造の密閉性を壊すことがなく、外表面の板体34だけ容易に交換することができるので、短時間で安価に扉の修理ができる。
【実施例4】
【0022】
前述した実施例3に係る内部透過部材は難燃性が向上しているので、前記UL94HBの基準をクリアする点で優れている。しかし、中空二重構造体28の外表面に不燃性のガラスや難燃性樹脂の板体34を付帯させるため、透明度が若干とは云え低下してしまうことは否めない。また、中空二重構造体28の外表面に前記板体34を貼り付け等で配置する際に、両部材28,34の間に埃や気泡が侵入すると、その部分が目立ってしまう欠点がある。
【0023】
そこで、実施例4に係るに内部透過部材の中空二重構造体28は、
図15に示すように、前記視認面となる一方の表面を開放した断面コ字状の部材として形成され、その開放された開口部29に前記の全光線透過率に優れ、かつ不燃性のガラスまたは難燃性の樹脂素材からなる板体34を配置するようにしたものである。例えば、中空二重構造体28は
図15に示す如く断面コ字形に押し出し成型され、
図16に示すように、一方の視認面に開放している開口部29を塞ぐ(閉成)ように前記板体34を配置する。このとき、前記板体34で塞がれる中空二重構造体28の内部に気密性が確保されるように、接着性を付与したシール材36を介挿させることが好ましい。また、
図17の別例に示すように、中空二重構造体28の開口端縁部に段部38を形成し、この段部38に前記シール材36を介して前記板体34を配置すると、気密性が更に確保される。また、前記段部38の存在により、前記板体34が中空二重構造体28の開口部に対して偏位することがないので、組立性が一層向上する。
【0024】
図16に示す実施例4に係る中空二重構造体28と、
図17に示す実施例4の別例に係る中空二重構造体28との何れにおいても、これらの図に関して説明したように、断面が矩形状に構成された筒体の両端開口は、前記断熱性部材やキャップ等の端面部材22により閉成される。すなわち図示しないが、前記中空二重構造体28は、前記熱可塑性樹脂を押出成形または射出成形することにより得られる断面コ字状の部材と、この断面コ字状部材の前記開口部29を閉成した板体34と、該断面コ字状部材の両側に開放している端部を閉成する端面部材22とから構成される。
【0025】
実施例4によれば、扉14における透明体の外表面だけにガラスまたは難燃性樹脂を配置したため、安価に難燃性を持たせ、かつ良好な透明性を確保した。また、中空二重構造体28に貼り付けるよりも軽量化することができる。更に、
図3に示すように曲面形状の場合、曲面が重なることがないため容易に構成可能である。
【0026】
(変更例)
図1に示す断面矩形状の中空二重構造体28および
図4に示すコ字状の中空二重構造体28は、何れも対向し合う正面側(前面)の透過板28aおよび背面側(後面)の透過板28bの厚みは同一である。しかし、
図8および
図10に示すように、これら透過板の一方の厚みを他方の厚みよりも薄くしてもよい。例えば、
図8および
図10に示す前記中空二重構造体28において、対向し合う2枚の透過板28a(これを正面側とする)および透過板28b(これを背面側とする)に関して、正面側の透過板28aの厚み寸法αは、背面側の透過板28bの厚み寸法βより大きく寸法設定してある(α>β)。これは、内部透過部材18を冷蔵ショーケース等の冷却貯蔵庫10における扉の視認部位に使用することを想定した場合、外方(正面側)になる透過板28aには使用状況に応じて大きな応力が加わることが予想される。従って、中空二重構造体28の正面側となる透過板28aには、想定される範囲の応力に抗し得るだけの厚さを付与しておく。これに対し、中空二重構造体28の内側(背面側)となる透過板28bには、外部からも内部からも大きな応力が直接加わる可能性は相対的に低い。すなわち背面側の透過板28bは、正面側の透過板28aとの間に断熱空間として機能する中空体を構成するものであれば足りる。
【0027】
従って、
図8および
図10に示すように、中空二重構造体28における正面側の透過板28aの厚み(α)に対して背面側の透過板28bの厚み(β)は薄くすることが好ましい。すなわち背面側の透過板28bを薄肉化することで成形に要する材料費が削減でき、また完成品としての内部透過部材18の全体重量も更に軽くなる。また、背面側の透過板28bを薄肉化したことで、光透過率も更に向上する。これら一方の透過板28aの厚みよりも他方の透過板28bの厚みを薄くなるよう成形した矩形状(またはコ字状)の中空二重構造体28に、前記端面部材22を被着して開口を閉成することで、例えば
図9に示す内部透過部材18が得られる。
【0028】
実施例1~4に説明した本発明に係る内部透過部材は、好適には冷蔵ショーケース10の外部から内部を視認し得る扉14に採用されるものである。そして前記扉14は、
図12(a)に示す手前側へ揺動して開放するタイプにも、
図12(b)に示す左右にスライドして開放するタイプにも好適に使用可能である。
【符号の説明】
【0029】
22 端面部材、28 中空二重構造体、28a,28b 透過板,29 開口部,
34 板体