(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-05
(45)【発行日】2023-12-13
(54)【発明の名称】複合管の製造方法及び製造装置並びに複合管
(51)【国際特許分類】
B29C 44/00 20060101AFI20231206BHJP
F16L 11/11 20060101ALI20231206BHJP
B29C 48/13 20190101ALI20231206BHJP
B29C 48/151 20190101ALI20231206BHJP
B29C 48/25 20190101ALI20231206BHJP
B29C 44/20 20060101ALI20231206BHJP
B29C 44/56 20060101ALI20231206BHJP
B32B 1/08 20060101ALI20231206BHJP
B32B 5/18 20060101ALI20231206BHJP
B29K 23/00 20060101ALN20231206BHJP
B29L 23/00 20060101ALN20231206BHJP
【FI】
B29C44/00 E
F16L11/11
B29C48/13
B29C48/151
B29C48/25
B29C44/20
B29C44/56
B29C44/00 B
B32B1/08 B
B32B1/08 A
B32B5/18
B29K23:00
B29L23:00
(21)【出願番号】P 2019162686
(22)【出願日】2019-09-06
【審査請求日】2022-06-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085556
【氏名又は名称】渡辺 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100115211
【氏名又は名称】原田 三十義
(74)【代理人】
【識別番号】100153800
【氏名又は名称】青野 哲巳
(72)【発明者】
【氏名】金平 豊
(72)【発明者】
【氏名】萩野 智和
(72)【発明者】
【氏名】市原 幸治
【審査官】横山 敏志
(56)【参考文献】
【文献】特表平11-503217(JP,A)
【文献】特開平10-311462(JP,A)
【文献】特開2010-210041(JP,A)
【文献】特開2017-009072(JP,A)
【文献】特開2017-013498(JP,A)
【文献】特開2017-226144(JP,A)
【文献】米国特許第05975143(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 48/00 - 48/96
B29C 44/00 - 44/60
B29C 67/20
F16L 9/00 - 11/26
B32B 1/00 - 43/00
B29C 64/00 - 64/40
B29C 67/00 - 67/08
B29C 69/00 - 69/02
B29C 73/00 - 73/34
B29D 1/00 - 29/10
B29D 33/00
B29D 99/00
B33Y 10/00 - 99/00
Japio-GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
大径部と小径部が管軸方向に交互に形成された可撓性の波形管によって可撓性の内管を被覆してなる複合管を製造する方法であって、
全長にわたって一定の円形断面を有する成形済みの前記内管を予め用意し、
前記内管を、押出ノズルの中央部の内管送出口から波形管成形部へ送り出し、
前記波形管となる樹脂を
溶融し所定の発泡倍率で発泡されるようにして前記押出ノズルに供給して、前記押出ノズルの前記内管送出口を囲む環状の押出し口から前記樹脂を管状にして前記波形管成形部へ押し出
すとともに発泡させ、
前記波形管成形部によって、前記管状の樹脂を拡径させながら波形断面に成形し、
前記成形と同時に、前記波形管の内周面の管軸方向及び周方向に分布する保持凸部を形成し、
前記保持凸部を発泡により前記内管の外周面に向かって膨ませて前記内管の外周面と接触させ
、これにより、前記波形管が前記内管に対して管軸方向に滑るのを許容しながら、前記内管
を前記波形管に対して同軸になるよう保持することを特徴とする複合管の製造方法。
【請求項2】
前記発泡倍率が、1.5倍~4倍であることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記保持凸部の少なくとも一部を、前記小径部に形成することを特徴とする請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記保持凸部の少なくとも一部を、前記波形管の周方向にわたる環状に形成することを特徴とする請求項1~3の何れか1項に記載の製造方法。
【請求項5】
前記保持凸部の少なくとも一部を、前記波形管の周方向に間隔を置いて形成することを特徴とする請求項
1~3の何れか1項に記載の製造方法。
【請求項6】
前記保持凸部の少なくとも一部を、前記管軸方向に沿って延びるように形成することを特徴とする請求項
1又は2に記載の製造方法。
【請求項7】
大径部と小径部が管軸方向に交互に形成された可撓性の波形管によって可撓性の内管を被覆してなる複合管を製造する装置であって、
前記波形管となる樹脂を溶融し、所定の発泡倍率で発泡するようにして供給する発泡樹脂供給部と、
全長にわたって一定の円形断面を有する成形済みの前記内管を送り出す内管送出口、及び前記内管送出口を囲む環状に形成され、前記
発泡樹脂供給部からの溶融状態の前記樹脂を管状にして押し出すとともに発泡を開始させる押出し口を有する押出ノズルと、
前記大径部を画成する大径型面部、及び前記小径部を画成する小径型面部を有して、前記押出ノズルの押出し方向の下流側において前記管状の樹脂を拡径させながら波形断面に成形する波形管成形部と、
前記波形管成形部に設けられた保持凸部形成部と、
を備え、前記保持凸部形成部によって、前記波形管の内周面の管軸方向及び周方向に分布する保持凸部を形成し、前記保持凸部を発泡により前記内管の外周面に向かって膨ませて前記内管の外周面と接触させ、これにより、前記波形管が前記内管に対して管軸方向に滑るのを許容しながら、前記内管を前記波形管に対して同軸になるよう保持することを特徴とする複合管の製造装置。
【請求項8】
前記保持凸部形成部が、前記小径型面部に設けられた保持型部を含むことを特徴とする請求項7に記載の製造装置。
【請求項9】
前記保持型部が、前記小径型面部の周方向にわたる環状であることを特徴とする請求項8に記載の製造装置。
【請求項10】
前記小径型面部の周方向に離れた複数位置にそれぞれ前記保持型部が設けられていることを特徴とする請求項8に記載の製造装置。
【請求項11】
前記保持凸部形成部が、前記押出し方向に延びる保持型部を含むことを特徴とする請求項
7に記載の製造装置。
【請求項12】
大径部と小径部が管軸方向に交互に形成された可撓性の波形管によって可撓性の内管を被覆してなる複合管を製造する装置であって、
前記波形管となる樹脂を溶融し、所定の発泡倍率で発泡するようにして供給する発泡樹脂供給部と、
全長にわたって一定の円形断面を有する成形済みの前記内管を送り出す内管送出口、及び前記内管送出口を囲む環状に形成され、前記
発泡樹脂供給部からの溶融状態の前記樹脂を管状にして押し出すとともに発泡を開始させる押出し口を有する押出ノズルと、
前記大径部を画成する大径型面部、及び前記小径部を画成する小径型面部を有して、前記押出ノズルの押出し方向の下流側において前記管状の樹脂を拡径させながら波形断面に成形する波形管成形部と、
前記押出ノズルの環状の押出し口の内周縁に形成された保持凸部形成部としての切欠凹部と、
を備え、前記切欠凹部によって、前記波形管の内周面の管軸方向及び周方向に分布する保持凸部を形成し、前記保持凸部を発泡により前記内管の外周面に向かって膨ませて前記内管の外周面と接触させ、これにより、前記波形管が前記内管に対して管軸方向に滑るのを許容しながら、前記内管を前記波形管に対して同軸になるよう保持することを特徴とする複合管の製造装置。
【請求項13】
大径部と小径部が管軸方向に交互に形成された可撓性の波形管と、前記波形管によって被覆された可撓性の内管とを備えた複合管であって、
前記波形管が発泡樹脂によって構成され、
前記波形管の内周面には、前記内管の外周面と接する保持凸部が管軸方向及び周方向に分布するように形成され、
前記保持凸部の少なくとも一部が、前記波形管の周方向に間隔を置いて配置され、
前記保持凸部によって
、前記波形管が前記内管に対して管軸方向に滑るのを許容しながら、前記内管
を前記波形管に対して管径方向
に拘束することを特徴とする複合管。
【請求項14】
前記保持凸部の少なくとも一部が、前記小径部に設けられていることを特徴とする請求項13に記載の複合管。
【請求項15】
大径部と小径部が管軸方向に交互に形成された可撓性の波形管と、前記波形管によって被覆された可撓性の内管とを備えた複合管であって、
前記波形管が発泡樹脂によって構成され、
前記波形管の内周面には、前記内管の外周面と接する保持凸部が管軸方向及び周方向に分布するように形成され、
前記保持凸部の少なくとも一部が、前記管軸方向に沿って延び
、
前記保持凸部によって、前記波形管が前記内管に対して管軸方向に滑るのを許容しながら、前記内管を前記波形管に対して管径方向に拘束することを特徴とする複合管。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内管を被覆層で被覆してなる複合管の製造方法等に関し、特に波形管を被覆層とする複合管の製造方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、給水給湯用の可撓管は表面が柔らかいため、被覆層を付けて複合管とした製品が広く普及している。被覆層を発泡樹脂層としたタイプは、低価格で納まりが良く、かつ角部での引き摺り傷等に比較的強いことで市場の支持を集めている。さらに滑りやすく角に引掛かかりにくくしたり、保温性をより高めたり、生曲げ部分の内まわり側に発生するたるみやシワが目立たないようにしたり、継手接続時の内管露出性をさらに良くしたいとの要請もある。
被覆層として、大径部と小径部が管軸方向に交互に形成された波形管(コルゲート管)を用いることにすれば、このような要請に応えることができる。
【0003】
特許文献1には、合成樹脂製の内管を形成して硬化させた後、その外周面上で波形管を成形することで複合管を製造する方法が開示されている。先に内管を成形して硬化させる。該内管を、押出ノズルの中心の内管送出口から送り出して波形管成形部に導入する。
波形管成形部は、2つの長円形の環状軌道上に並べられた多数個の半割筒状の波付け金型を備えている。これら波付け金型が各環状軌道に沿って循環移動しながら、2つの環状軌道における対をなす波付け金型どうしが、環状軌道の約半周移動する期間中、互いに合わさって閉じた筒状の波付け金型対となる。
該波付け金型対の内部に前記内管を挿し入れる。かつ2層の合成樹脂からなる被覆層を、前記押出ノズルの内管送出口を囲む二重環状の押出し口から共押し出しする。被覆層は、内管を囲む管状に形成されて波付け金型対の内部に導入される。さらに、バキュームによって、被覆層を拡径させて波付け金型対の内周の波形の型面に密着させる。これによって、被覆層が、波形に成形されて波形管となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前掲特許文献の方法によって製造された複合管においては、波形管の大径部と内管との間はもちろんのこと、小径部と内管との間にも全周にわたって隙間が形成されている。当該隙間は、押出しノズルの内管送出口と押出し口とを仕切る環状壁(内筒)の厚さや、波形状にするためのバキューム等による拡径に起因して形成されたものであり、製造工程上、不可避的なものと言える。このような隙間があると、内管の内部を通る流体の圧力(内圧)、流量、温度などが急変したとき、内管がばたつくなどして、ウォーターハンマー(水撃)音や熱伸縮音が発生しやすい。
本発明は、かかる事情に鑑み、例えば作製済の内管の外周に波形管を押出成形してなる複合管であっても、内圧や温度等の急変による内管のバタツキを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明方法は、大径部と小径部が管軸方向に交互に形成された可撓性の波形管によって可撓性の内管を被覆してなる複合管を製造する方法であって、
予め用意した前記内管を押出ノズルの中央部の内管送出口から波形管成形部へ送り出し、
前記波形管となる樹脂を所定の発泡倍率で発泡されるようにして前記押出ノズルに供給して、前記押出ノズルの前記内管送出口を囲む環状の押出し口から前記樹脂を管状にして前記波形管成形部へ押し出し、
前記波形管成形部によって、前記管状の樹脂を拡径させながら前記波形断面に成形し、
前記成形と同時に、前記波形管の内周面の管軸方向及び周方向に分布する保持凸部を形成し、前記保持凸部を前記内管の外周面と接触させることによって前記内管が前記波形管に対して同軸になるよう保持することを特徴とする。
【0007】
前記押出し時の管状の樹脂の内周面と内管の外周面との間には隙間が形成される。かつ波形断面への成形時の拡径によって前記隙間が更に広がろうとする。かかる隙間を考慮して、前記樹脂の発泡倍率や保持凸部の管内側への突出量などを調整する。これによって、保持凸部が内管と接するようにでき、少なくとも成形時には内管が波形管と同軸になるよう保持できる。
このようにして成形された複合管においては、保持凸部によって、内管が管径方向へ変位するのが抑制される。したがって、複合管の供用時、内圧や温度などが急変しても、内管がばたつくのを抑制でき、ウォーターハンマー音、熱伸縮音などの発生を抑えることができる。
【0008】
前記発泡倍率が、1.5倍~4倍であることが好ましい。
これによって、成形時に保持凸部が内管と確実に接するようにできる。
【0009】
前記製造方法において、前記保持凸部の少なくとも一部を、前記小径部に形成することが好ましい。
前記小径部自体が保持凸部を構成していてもよい。
前記小径部から保持凸部が管内側へ突出されていてもよい。
【0010】
前記製造方法において、前記保持凸部の少なくとも一部を、前記波形管の周方向にわたる環状に形成することが好ましい。
前記製造方法において、前記保持凸部の少なくとも一部を、前記波形管の周方向に間隔を置いて形成することが好ましい。
前記製造方法において、前記保持凸部の少なくとも一部を、前記管軸方向に沿って延びるように形成することが好ましい。
【0011】
本発明装置は、大径部と小径部が管軸方向に交互に形成された可撓性の波形管によって可撓性の内管を被覆してなる複合管を製造する装置であって、
前記波形管となる樹脂を所定の発泡倍率で発泡するようにして供給する発泡樹脂供給部と、
前記内管を送り出す内管送出口、及び前記内管送出口を囲む環状に形成され、前記樹脂を管状にして押し出す押出し口を有する押出ノズルと、
前記大径部を画成する大径型面部、及び前記小径部を画成する小径型面部を有して、前記押出ノズルの押出し方向の下流側において前記管状の樹脂を拡径させながら前記波形断面に成形する波形管成形部と、
前記波形管成形部又は前記押出ノズルに設けられた保持凸部形成部と、
を備え、前記保持凸部形成部によって、前記波形管の内周面の管軸方向及び周方向に分布するとともに前記内管の外周面と接して前記内管を同軸になるよう保持する保持凸部を形成することを特徴とする。
【0012】
当該複合管製造装置によって作製された複合管は、保持凸部により内管を保持することで、内管が波形管に対して管径方向へ変位するのが抑制される。これによって、内管がばたつくのを抑制できる。
【0013】
前記保持凸部形成部が、前記小径型面部に設けられた保持型部を含むことが好ましい。
これによって、波形管の小径部に保持凸部を形成できる。
波形管成形部の各小径型面部(すべての小径型面部)に保持型部が設けられていてもよく、一部(例えば所定個置き)の小径型面部だけに保持型部が設けられていてもよい。
【0014】
前記保持型部が、前記小径型面部の周方向にわたる環状であることが好ましい。
これによって、波形管の小径部の周方向にわたる環状の保持凸部を形成できる。
保持型部は、波形管の全周にわたる閉環状でもよく、周方向の一部が切り欠かれた開環状でもよい。
【0015】
前記小径型面部の周方向に離れた複数位置にそれぞれ前記保持型部が設けられていることが好ましい。つまり、複数の保持型部が、小径型面部の周方向に間隔を置いて配置されていてもよい。
これによって、波形管の小径部の周方向に間隔を置いて複数の保持凸部を形成できる。
【0016】
前記保持凸部形成部が、前記押出し方向に延びる保持型部を含むことが好ましい。
これによって、波形管の管軸方向に延びる保持凸部を形成できる。
【0017】
前記保持凸部形成部が、前記押出ノズルの環状の押出し口の内周縁に形成された切欠凹部を含むことが好ましい。
押出ノズルの押出し口から前記樹脂を押し出すとき、該樹脂の一部が切欠凹部に入り込む。これによって、押し出された管状の樹脂の内周面に前記切欠凹部に対応する凸条が形成される。続いて、波形管成形部において前記樹脂を波形状の波形管に成形することで、該波形管の内周面に前記凸条由来の縦スジ状保持凸部が形成される。
【0018】
本発明物は、大径部と小径部が管軸方向に交互に形成された可撓性の波形管と、前記波形管によって被覆された可撓性の内管とを備えた複合管であって、
前記波形管が発泡樹脂によって構成され、
前記波形管の内周面には、前記内管の外周面と接する保持凸部が管軸方向及び周方向に分布するように形成され、前記保持凸部によって前記内管が前記波形管に対して管径方向へ拘束されていることを特徴とする。
【0019】
当該複合管によれば、内圧や温度などが急変しても、保持凸部による拘束によって内管がばたつくのを抑制できる。この結果、ウォーターハンマー音、熱伸縮音などの発生を抑えることができる。
好ましくは、当該複合管は、前記製造方法又は前記製造装置によって製造される。波形管は、好ましくは非発泡樹脂層を有さず、より好ましくは単層の発泡樹脂によって構成されている。
【0020】
前記保持凸部の少なくとも一部が、前記小径部に設けられていることが好ましい。
波形管の各小径部(すべての小径部)に保持凸部が設けられていてもよく、一部(例えば所定個置き)の小径部だけに保持凸部が設けられていてもよい。
【0021】
前記保持凸部の少なくとも一部が、前記波形管の周方向にわたる環状であることが好ましい。
該保持凸部は、波形管の全周にわたる閉環状でもよく、周方向の一部が切り欠かれた開環状でもよい。
【0022】
前記保持凸部の少なくとも一部が、前記波形管の周方向に間隔を置いて配置されていることが好ましい。
これによって、内管を周方向の複数箇所から保持できる。
【0023】
前記保持凸部の少なくとも一部が、前記管軸方向に沿って延びていることが好ましい。
前記管軸方向に延びる保持凸部の管内側を向く頂部は、前記波形管の管軸方向の断面に倣う波形状であってもよく、前記管軸方向の断面に依らず、管径方向の一定高さに配置されて管軸方向に真っ直ぐ延びていてもよい。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、複合管における内管の内圧や温度などの急変があっても、内管がばたつくのを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1(a)】
図1(a)は、本発明の第1実施形態に係る複合管を、一部を管軸方向に沿う断面にして示す正面図である。
【
図1(b)】
図1(b)は、同図(a)のIb-Ib線に沿う、前記複合管の断面図である。
【
図2】
図2(a)は、複合管製造装置の一例を示す平面図である。
図2(b)は、複合管製造装置の他の一例を示す平面図である。
【
図5】
図5は、前記第1実施形態に係る複合管の変形態様を示す、管軸方向に沿う断面図である。
【
図6】
図6は、前記第1実施形態に係る複合管の他の変形態様を示す、管軸方向に沿う断面図である。
【
図7】
図7(a)は、前記第1実施形態に係る複合管の他の変形態様を示す、管軸方向と直交する断面図である。
図7(b)は、前記第1実施形態に係る複合管の他の変形態様を示す、管軸方向と直交する断面図である。
【
図8(a)】
図8(a)は、本発明の第2実施形態に係る複合管を、
図8(b)のVIIIa-VIIIa線に沿って一部を断面にして示す正面図である。
【
図8(b)】
図8(b)は、
図8(a)のVIIIb-VIIIb線に沿う、前記第2実施形態に係る複合管の断面図である。
【
図9】
図9は、前記第2実施形態に係る複合管製造装置における波付け金型対を、
図10のIX-IX線に沿って示す断面図である。
【
図11(a)】
図11(a)は、前記第2実施形態に係る複合管の変形態様を示す、管軸方向に沿う断面図である。
【
図11(b)】
図11(b)は、前記第2実施形態に係る複合管の他の変形態様を示す、管軸方向に沿う断面図である。
【
図12】
図12(a)は、前記第2実施形態に係る複合管の他の変形態様を
図12(b)のXIIa-XIIa線に沿って一部を断面にして示す正面図である。
図12(b)は、同図(a)のXIIb-XIIb線に沿う断面図である。
【
図13】
図13は、
図12の態様の複合管製造装置における波付け金型対の軸線と直交する断面図である。
【
図14】
図14(a)は、複合管の他の変形態様を示す、管軸方向に沿う断面図である。
図14(b)は、複合管の他の変形態様を示す、管軸方向に沿う断面図である。
【
図15】
図15(a)は、前記第2実施形態に係る複合管の他の変形態様を示す、管軸と直交する断面図である。
図15(b)は、前記第2実施形態に係る複合管の他の変形態様を示す、管軸と直交する断面図である。
【
図16】
図16(a)は、前記第2実施形態に係る複合管の他の変形態様を示す正面図である。
図16(b)は、同図(a)のb-b線に沿う断面図である。
図16(c)は、同図(a)のc-c線に沿う断面図である。
図16(d)は、同図(a)のd-d線に沿う断面図である。
図16(e)は、同図(a)のe-e線に沿う断面図である。
図16(f)は、同図(a)のf-f線に沿う断面図である。
【
図17】
図17(a)は、前記第2実施形態に係る複合管の他の変形態様を示し、管軸と直交する断面図である。
図17(b)は、前記第2実施形態に係る複合管の他の変形態様を示し、管軸と直交する断面図である。
図17(c)は、前記第2実施形態に係る複合管の他の変形態様を示し、管軸と直交する断面図である。
【
図18】
図18(a)は、前記第2実施形態に係る複合管の他の変形態様を示し、管軸と直交する断面図である。
図18(b)は、前記第2実施形態に係る複合管の他の変形態様を示し、管軸と直交する断面図である。
図18(c)は、前記第2実施形態に係る複合管の他の変形態様を示す、管軸と直交する断面図である。
【
図19】
図19は、本発明の第3実施形態に係る複合管を、一部を断面にして示す正面図である。
【
図21】
図21は、前記第3実施形態の複合管製造装置における波付け金型対を示し、
図22のXXI-XXI線に沿う断面図である。
【
図23】
図23は、前記第3実施形態の複合管の変形態様を、一部を断面にして示す正面図である。
【
図25】
図25は、前記第3実施形態の変形態様(
図23)の複合管製造装置における波付け金型対を示し、
図26(a)のXXV-XXV線に沿う断面図である。
【
図27】
図27は、本発明の第4実施形態に係る複合管を、一部を
図28のXXVII-XXVII線に沿う断面にして示す正面図である。
【
図29】
図29は、前記第4実施形態の複合管製造装置における押出しノズルを示し、軸線と直交する断面図である。
【
図30】
図30は、前記押出ノズルから樹脂及び内管を押し出す状態で示す、
図29のXXX-XXX線に沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態を図面にしたがって説明する。
<第1実施形態(
図1~
図4)>
図1(a)及び同図(b)は、本発明の第1実施形態に係る複合管1を示したものである。複合管1は、例えば給水給湯用の配管として用いられる。複合管1は、管本体である内管9と、被覆層としての波形管10を備えている。
【0027】
内管9は、全長にわたって一定の円形断面に形成され、かつ可撓性を有している。内管9の材質としては、架橋ポリエチレン(PE-X)、ポリエチレン(PE)、高耐熱ポリエチレン(PE-RT)、ポリブテン、ポリプロピレン(PP)その他の合成樹脂が挙げられる。さらに、内管9は、ポリエチレン層を表皮に有した架橋ポリエチレン管(JISK6769のE種)であってもよく、金属強化多層構造などの金属を含む複合樹脂管であってもよい。内管9の材質として、上記は例示であり、可撓性、流体流通性などの所要の性能を確保し得るものであれば、特に制限はない。
内管9の内部が、水、湯などの流体が通る流体通路となる。内管9の外周は、波形管10(コルゲート管)によって被覆されている。
【0028】
波形管10は、大径部11及び小径部12を有し、波形断面になっている。大径部11と小径部12とが管軸方向に交互に一定の配置ピッチP10で形成されている。
大径部11は、波形管10の外部から見て環状の凸部(山部)となり、内部から見ると環状の凹部となっている。小径部12は、波形管10の外部から見て環状の凹部(谷部)となり、内部から見ると環状の凸部となっている。
【0029】
波形管10は、可撓性の発泡樹脂によって構成されている。波形管10の樹脂材料としては、架橋ポリエチレン(PE-X)、ポリエチレン(PE)、高耐熱ポリエチレン(PE-RT)、ポリブテン、ポリプロピレン(PP)、熱可塑性エラストマー、熱硬化性エラストマー、プラストマーその他の合成樹脂が挙げられ、単一材質に限らず複数の材質を含む複合樹脂でもよい。上記は波形管10の材質の例示であり、可撓性、内管9に対する保護性などの所要の性能を確保し得るものであれば、波形管10の材質として特に制限はない。
【0030】
波形管10は、非発泡樹脂層を有さず、発泡樹脂の単層によって構成されている。
波形管10の発泡剤としては、例えば無機系の化学発泡剤や発泡性マイクロカプセルが用いられているが、これに限らず、フロンなどに代表される物理発泡剤や超臨界流体などを用いてよい。発泡剤の配合割合によって発泡倍率が調整される。波形管10を構成する発泡樹脂の発泡倍率は、好ましくは1.5倍~4倍であり、より好ましくは2.5倍~3.5倍である。
発泡剤は、発泡によって樹脂ひいては波形管10の比重を下げる働きをする。発泡倍率は、非発泡の材料の比重と、発泡させた材料の比重との比から求めることができる。比重の計測は、例えば高精度電子比重計を用いるとよい。
【0031】
波形管10の内部に内管9が挿通されている。好ましくは、内管9と波形管10とはほぼ同軸上に配置されている。
小径部12の内周面部(管内側への突出端部)が、全周にわたって内管9の外周面と接している。小径部12の内周面部は、内管9を保持する環状の保持凸部13を構成している。
言い換えると、波形管10の内周面には保持凸部13が形成されている。保持凸部13によって、内管9が波形管10に対して管径方向に変位不能に拘束されている。好ましくは、保持凸部13によって、内管9が波形管10と同軸をなすように保持されている。
【0032】
環状保持凸部13は、小径部12ごとに配置されることで、波形管10の内周面の管軸方向及び周方向に分布している。詳しくは、環状保持凸部13は、小径部12と同じ配置ピッチで波形管10の管軸方向に分布されている。かつ環状保持凸部13は、波形管10の周方向の全周にわたって分布され、閉環状になっている。
【0033】
図2は、複合管1の製造装置3を示したものである。製造装置3は、発泡樹脂供給部30と、押出ノズル31と、波形管成形部32とを備えている。
詳細な図示は省略するが、発泡樹脂供給部30は、波形管10の原料となる樹脂19を受け入れるホッパー、樹脂19を加熱溶融するヒータ、発泡剤の添加部、樹脂19と発泡剤を混錬して押し出すシリンダー及びスクリューを含む。ホッパー投入前の原料樹脂19に発泡剤が含まれていてもよい。
【0034】
図2(a)に示すように、発泡樹脂供給部30及び押出ノズル31は、クロスヘッドダイを構成していてもよく、
図2(b)に示すように、オフセットダイを構成していてもよい。
【0035】
図3及び
図4に示すように、押出ノズル31は、外筒31aと内筒31bを有する二重筒形状になっている。内筒31bの中心穴は、内管送出口31cを構成している。内管送出口31cの口径は、内管9の外直径とほぼ等しい。
外筒31aと内筒31bとの間の環状空間は、樹脂19の押出し口31dを構成している。押出し口31dは、環状をなして内管送出口31cを囲んでいる。
内筒31bの少なくとも先端部における厚さt
31b(押出し口31dの内周側の半径と内管送出口31cの半径との差)は、例えばt
31b=0.5mm~2mm程度であるが、これに限定されるものではない。
【0036】
図2及び
図3に示すように、押出ノズル31の押出し方向の下流側(
図2において右側)に波形管成形部32(コルゲーター)が配置されている。波形管成形部32は、2つの長円形の環状軌道32a,32bと、多数個の半割筒状の波付け金型33a,33bを備えている。2つの環状軌道32a,32bが、押出ノズル31の軸線(押出し方向)を延長した軸線L
33上で接するように平行に並べられている。
【0037】
第1の環状軌道32a上に第1の波付け金型33aが環状に並べられている。第2の環状軌道32b上に第2の波付け金型33bが環状に並べられている。
これら波付け金型33a,33bが、対応する環状軌道32a,32bに沿って循環するように互いに同期して移動される。2つの環状軌道32a,32bの対をなす波付け金型33a,33bどうしが、軸線L33に添って平行移動する期間中、互いに合わさって閉じた筒状の波付け金型対33となる。複数の波付け金型対33が軸線L33上に一列に並べられている。
【0038】
各波付け金型33a,33bひいては波付け金型対33の内周面(型面)には、大径型面部34及び小径型面部35が形成されている。大径型面部34は、径方向外側へ凹むとともに波付け金型対33の全周にわたる凹環状をなしており、大径部11を成形する。型面部34,35のうち特に大径型面部34には、小さい吸引穴36が開口されている。
【0039】
小径型面部35は、管内側へ突出するとともに波付け金型対33の全周にわたる凸環状をなしており、小径部12を成形する。各小径型面部35の管内側への突出端部は、環状保持凸部13を形成するための保持型部37(保持凸部形成部)を構成している。要するに、波形管成形部32の内周面(型面)に保持型部37が設けられている。保持型部37は、前記内周面の周方向の全周にわたる閉環状になっている。
【0040】
複合管1は、次のようにして製造される。
予め、内管9を成形して硬化させたり入手したりするなどして、用意しておく。
該内管9を、押出ノズル31に導入し、中央部の内管送出口31cから波形管成形部32へ送り出す。内管9は、波付け金型対33の内部に導入されて送り方向の下流側(
図2において右側)へ送られる。
【0041】
併行して、発泡樹脂供給部30において、樹脂19を加熱溶融し、かつ所定の配合比の発泡剤を添加することによって所定の発泡倍率(好ましくは1.5倍~4倍)で発泡するようにしたうえで、該樹脂19を押出ノズル31へ供給する。押出ノズル31内においては高圧のため樹脂19は未だ発泡を開始していない。
該樹脂19を、押出ノズル31の押出し口31dから波形管成形部32へ向けて押し出す。押出によって樹脂19に加わる圧力が低下するために、押出直後から発泡が開始される。
押出し時の樹脂19Aは、押出し口31dと実質的に同じ内直径及び外直径の管状になっている。管状の樹脂19Aは、内管9を囲む被覆層となる。管状の樹脂19Aの内周面と内管9の外周面との間には、内筒31bの厚さt31b分の隙間dが形成されている。押出し時の樹脂19Aの肉厚は、例えば0.5mm~2mmであるが、これに限定されるものではない。
【0042】
管状の樹脂19Aは、波形管成形部32の軸線L33上の一列をなす波付け金型対33内に導入される。導入直後の管状の樹脂19Aの外周面は、波付け金型対33から離れている。
【0043】
続いて、波形管成形部32の吸引穴36からバキュームする。これによって、管状の樹脂19Aが拡径されて波付け金型対33の型面部34,35に密着され、波形断面の波形管10に成形される。該波形管10によって内管9が被覆される。
【0044】
成形と同時に、小径型面部35と一体の保持型部37によって、小径部12と一体の環状保持凸部13が形成される。かつ樹脂19Aの発泡によって波形管10の厚みが増大される。その結果、環状保持凸部13が内管9の外周面と接する。
逆に言えば、発泡成形後の波形管10の環状保持凸部13が内管9と接するよう、樹脂19の発泡倍率と、保持型部37の管内側への突出量が調節される。例えば押出し時の樹脂19Aの肉厚が1mm程度、隙間dの大きさが0.5mm程度であれば、発泡倍率を1.5倍以上とすることで、環状保持凸部13が内管9の外周に確実に接するようにできる。
【0045】
実際の波形管の断面は真円ではなく若干扁平化されている。このため、発泡倍率に安全上の余裕を設定しなくても、扁平化された断面の少なくとも短径側の保持凸部13が内管9と接触されるようにでき、実用上不具合はない。発泡倍率の上限は4倍程度とすることで、成形に支障はない。
【0046】
これによって、内管9が、保持凸部13によって保持され、波形管成形部32に対して管径方向へ拘束される。したがって、内管9の管径方向への変位を抑制できる。
予め用意した内管9の外周上に波形管10が成形されるために、波形管10の内周面の一部(具体的には保持型部37)に内管9の外周面の形状が転写される。これにより、成形方法を特定することができる。
【0047】
このようにして作製された複合管1は、例えば給湯給水用の配管として用いられる。内管9の内部を水や湯などの流体が通る。該流体の圧力、流量、温度などは使用状況によって急変し得る。一方、内管9が保持凸部13によって拘束されているために、前記急変が起きても内管9のバタツキを抑制でき、ウォーターハンマー(水撃)音や熱伸縮音が発生するのを防止できる。
さらに、波形管10を構成する発泡樹脂が衝撃を吸収することで、ウォーターハンマー音や熱伸縮音の発生を一層確実に防止できる。しかも、波形管10は単層の発泡樹脂だけで構成されており、非発泡の表層を持たないことで、剛性が抑制され、柔軟性を向上できる。また、波形管10は、発泡によって厚肉化されているため、引き摺り等に対して、非発泡表層を有するものと同等の耐破れ性を確保できる。
内管9の被覆層として波形断面の波形管10を用いることによって、配管施工時に複合管1が角張った障害物に引っ掛かったとしても、滑りやすく、引っ掛かり状態を解除しやすい。
波形管10の少なくとも大径部11の内周面と内管9の外周面との間には空気断熱層が形成されるため保温性が高まる。複合管1を生曲げしたときは、内まわり側に発生するたるみやシワが目立たなくなる。継手接続時には被覆層である波形管10を内管9に対して管軸方向に滑らすことで、接続対象の内管9を露出させて接続作業を行うことができる。
【0048】
次に、本発明の他の実施形態を説明する。以下の実施形態において既述の形態と重複する構成に関しては、図面に同一符号を付して説明を省略する。
<第1実施形態(環状保持凸部)の変形態様(1)>
図5に示すように、環状保持凸部13を有する第1実施形態の波形管10における一部の小径部12Aだけに保持凸部13が設けられていてもよい。例えば、管軸方向(
図5において左右方向)に数個飛ばしの小径部12Aが、他の小径部12よりも管内側へ大きく突出されて内管9の外周面と接触されることで、保持凸部13を構成していてもよい。
図5においては、2つ飛ばしの小径部12Aが保持凸部13を構成しているが、これに限らず、1つ飛ばし又は3つ以上飛ばしの小径部12が保持凸部13を構成していてもよい。
【0049】
図5の二点鎖線にて示すように、複合管製造装置においては、波付け金型33a,33bの内周の型面を波形管10の所望形状と対応するよう形成しておく。特に、波付け金型33a,33bの小径部12Aに対応する小径型面部35ひいては保持型部37を、他の小径型面部35より突出させておく。これによって、
図5の実線に示す波形管10を作製できる。
【0050】
<第1実施形態(環状保持凸部)の変形態様(2)>
保持凸部13を構成する小径部12の断面形状は、適宜変更してもよい。
図1及び
図5においては管内側を向く谷部分がフラットな台形形状であったが、
図6に示すように、保持凸部13を構成する小径部12Bの谷部分が、丸みを帯びた半円状断面になっていてもよい。
図6の二点鎖線にて示すように、複合管製造装置においては、波付け金型33a,33bの小径部12Bに対応する小径型面部35ひいては保持型部37の管内側を向く頂部を、丸みを帯びた半円状断面に形成しておく。これによって、
図6の実線に示す波形管10を作製できる。
【0051】
<第1実施形態(環状保持凸部)の変形態様(3)>
保持凸部13は、必ずしも波形管10の全周にわたる閉環状である必要はない。
図7(a)に示すように、環状保持凸部13が、周方向の1箇所13cだけ欠けた環状であってもよい。
図7(b)に示すように、環状保持凸部13が、周方向の2箇所13c,13cにおいて欠けた環状であってもよい。図示は省略するが、環状保持凸部13が、周方向の3箇所以上欠けた環状であってもよい。
【0052】
図7(a)及び(b)の二点鎖線は、保持凸部13が形成されていない場合の小径部12を仮想的に示したものである。欠けた箇所13c以外の部分においては、環状保持凸部13が仮想的な小径部12よりも管内側へ突出されている。
図示は省略するが、複合管製造装置においては、波付け金型33a,33bの保持型部37を周方向の1箇所だけ欠けた環状に形成しておく。これによって、
図7(a)及び(b)の実線にて示す波形管10を作製できる。
変形態様(3)において、環状保持凸部13の欠けている箇所は、波形管10の周方向の一定位置である必要は無く、管軸方向(
図7において紙面直交方向)に隣接する環状保持凸部13の欠けている箇所どうしが、周方向にずれていてもよい。
【0053】
<第2実施形態(離散保持凸部、
図8~
図10)>
図8(a)及び同図(b)は、本発明の第2実施形態に係る複合管1Bを示したものである。該複合管1Bの波形管10Bにおいては、各小径部12に複数の離散保持凸部14が設けられている。複数の離散保持凸部14が、小径部12の周方向に間隔を置いて配置されている。ここでは、90度置きに4つの離散保持凸部14が設けられている。各離散保持凸部14は、小径部12から管内側へ突出されている。好ましくは、離散保持凸部14の形状及び配置は、型抜きを容易化するためにアンダーカットを回避するように設定されている(以下の変形態様において同様)。
波形管10Bの管軸方向に沿う、離散保持凸部14の幅寸法W
14は、小径部12の同方向に沿う幅寸法より小さい。波形管10Bの周方向に沿う、離散保持凸部14の長さ寸法L
14は、小径部12の周長の4分の1(保持凸部の個数分の1)より小さい。
【0054】
図8(a)に示すように、波形管10Bを外側から見ると、小径部12における離散保持凸部14の配置箇所には、凹溝15が形成されている。
図8(b)に示すように、各離散保持凸部14における頂部14e(管内側の端部)は、平坦(フラット)になっている。該頂部14eが、内管9の外周面と接している。これら離散保持凸部14によって、内管9が、波形管10Bに対して管径方向に拘束されている。この結果、内圧や温度などが急変しても、内管9がばたつくのを抑制でき、ウォーターハンマー音や熱伸縮音の発生を抑制できる。
第2実施形態の複合管1Bは、大径部11と内管9との間だけでなく、小径部12と内管9との間にも隙間が形成される。これによって、複合管1Bの保温性を一層高めることができる。
【0055】
図9及び
図10は、第2実施形態における複合管製造装置の波形管成形部32を示したものである。波形管成形部32の各波付け金型33a,33bには、小径型面部35に保持型部38(保持凸部形成部)が形成されている。保持型部38は、小径型面部35から管内側へ突出されている。
図10に示すように、4つの保持型部38が、小径型面部35の周方向に90度間隔で設けられている。保持型部38の形状及び配置は、アンダーカットを回避するように設定されている(以下の変形態様において同様)。
保持型部38によって、
図8に示す離散保持凸部14及び凹溝15が成形される。
【0056】
<第2実施形態(離散保持凸部)の変形態様(1)>
図11に示すように、波形管10Bの一部の小径部12だけに離散保持凸部14が設けられていてもよい。例えば、
図11(a)においては、管軸方向(同図において左右方向)に1つ飛ばしの小径部12に離散保持凸部14が設けられている。
図11(b)においては、2つ飛ばしの小径部12に離散保持凸部14が設けられている。
図示は省略するが、3つ以上飛ばしの小径部12に離散保持凸部14が設けられていてもよい。
図11(a)及び(b)の二点鎖線にて示すように、複合管製造装置においては、波付け金型33a,33bの保持型部38を離散保持凸部14の配置と対応するよう形成しておく。これによって、
図11(a)及び(b)の実線にて示す波形管10Bを作製できる。
【0057】
<第2実施形態(離散保持凸部)の変形態様(2)>
波形管10Bの周方向に沿う、離散保持凸部14の長さは適宜設定可能である。
図12に示す態様では、離散保持凸部14の前記周方向の長さが、
図8(a)の態様より短い。
図13に示すように、複合管製造装置においては、波付け金型33a,33bの保持型部38を
図10よりも周方向に短く形成しておく。これによって、
図12に示す波形管10Bを作製できる。
【0058】
<第2実施形態の変形態様(3)>
図14(a)及び同図(b)の二点鎖線にて示すように、波付け金型33a,33bの保持型部38の幅寸法は、狭く設定(同図(a))したり、広く設定(同図(b))したりできる。
図14(a)及び同図(b)の三点鎖線は、内管9が無いと仮定した場合に、保持型部38によって形成される離散保持凸部14を示したものである。
図14(a)及び同図(b)の実線にて示すように、当該変形態様(3)における実際の離散保持凸部14は、内管9によって圧縮されて小径部12と一体になっている。離散保持凸部14と小径部12の管内側を向く頂面どうしが面一になって内管9と接している。
図14(b)においては、離散保持凸部14が幅広であるために、内管9によって圧縮された分の樹脂が膨出部19bとなって小径部12の両側へ膨出されている。
【0059】
<第2実施形態(離散保持凸部)の変形態様(4)>
波形管10Bの周方向における、離散保持凸部14の配置数は適宜設定可能である。
図15(a)に示す態様では、3つの離散保持凸部14が周方向に120°間隔で配置されている。
図15(b)に示す態様では、8つの離散保持凸部14が周方向に45°間隔で配置されている。
【0060】
<第2実施形態(離散保持凸部)の変形態様(5)>
図16に示す態様では、波形管10Bの管軸方向の位置に応じて離散保持凸部14の配置角度が変化している。詳しくは、
図16においては、1つの小径部12あたり例えば3つの離散保持凸部14が120°間隔で配置されているところ、同図(b)~(f)に示すように、管軸方向に小径部12を順次辿るごとに、離散保持凸部14の配置角度が例えば30°ずつ回転している。4個(n個)隣りの小径部12どうしの離散保持凸部14の配置が互いに同一になっている。
これによって、複合管1Bを生曲げ配管する際、曲げる方向によって曲げ抵抗が大きく異ならないようにでき、配管施工性を確保できる。
当該態様の複合管製造装置においては、各波付け金型33a,33bの小径型面部35の数が上記n(=4)の倍数(
図16では例えば8個)であることが好ましい。そうすることで、波付け金型33a,33bを環状軌道32a,32bに沿って配置順を考慮することなく並べることができる。
管軸方向に隣接する離散保持凸部14どうしのずれ角度は適宜設定できる。好ましくは、アンダーカットを回避するために、配置角度に応じて、離散保持凸部14の形状が異なっている。
小径部12ごとに離散保持凸部14の数が異なっていてもよい。
さらに離散保持凸部14の配置パターンは、必ずしも規則的である必要はなく、ランダムであってもよい。
【0061】
<第2実施形態(離散保持凸部)の変形態様(5)>
離散保持凸部14の断面形状は、適宜改変可能である。
図17の態様においては、離散保持凸部14が、両側に膨出部19bを有する二股状の断面形状になっている。頂部14eは、内管9の外周面に倣うことで、内管9と面接触している。
図17(a)においては、波形管10Bの周方向に、3つの二股状の離散保持凸部14が周方向に120°間隔で配置されている。
図17(b)においては、波形管10Bの周方向に、4つの二股状の離散保持凸部14が周方向に90°間隔で配置されている。
図17(c)においては、波形管10Bの周方向に、8つの二股状の離散保持凸部14が周方向に45°間隔で配置されている。
【0062】
図18の態様においては、離散保持凸部14が管内側へ向かって先細の突起状になっており、頂部14eが内管9とほぼ点状に接触している。
図18(a)においては、波形管10Bの周方向に、3つの突起状の離散保持凸部14が周方向に120°間隔で配置されている。
図18(b)においては、波形管10Bの周方向に、4つの突起状の離散保持凸部14が周方向に90°間隔で配置されている。
図18(c)においては、波形管10Bの周方向に、8つの突起状の離散保持凸部14が周方向に45°間隔で配置されている。
複合管製造装置においては、波付け金型33a,33bの保持型部38を離散保持凸部14と対応する形状に形成しておく。これによって、
図17(a)~(c)及び
図18(a)~(c)に示す波形管10Bを作製できる。
【0063】
<第3実施形態(波付け金型にて形成される縦スジ状保持凸部、
図19~
図22)>
図19及び
図20は、本発明の第3実施形態に係る複合管1Cを示したものである。複合管1Cにおける波形管10Cの内周面には、縦スジ状の保持凸部16が形成されている。縦スジ状保持凸部16は、波形管10Cの管軸方向に沿って延びる縦スジ状をなして、大径部11及び小径部12を縦断している。4つ(複数)の縦スジ状保持凸部16が、波形管10Cの内周面の周方向に間隔を置いて配置されている。好ましくは、縦スジ状保持凸部16の形状及び配置は、型抜きを容易化するためにアンダーカットを回避するように設定されている(以下の変形態様において同様)。
【0064】
各縦スジ状保持凸部16の管内側を向く頂部16eは、波形管10Cの管軸方向の波形断面に倣う波形状になっている。各縦スジ状保持凸部16における小径部12からの突出部分が、内管9の外周面と接している。
これら縦スジ状保持凸部16によって、内管9が、波形管10Cに対して管径方向に拘束されている。この結果、内圧や温度などが急変しても、内管9がばたつくのを抑制でき、ウォーターハンマー音や熱伸縮音の発生を抑制できる。
縦スジ状保持凸部16の前記周方向の個数は適宜変更できる。
【0065】
波形管10Cの外周面には、縦スジ状の凹溝17が形成されている。凹溝17は、縦スジ状保持凸部16と対応する4つ(複数)の周方向位置に配置され、管軸方向に延びている。凹溝17の溝底部は、波形管10Cの管軸方向の波形断面に倣う波形状になっている。
【0066】
図21及び
図22に示すように、第3実施形態の複合管製造装置においては、波付け金型33a,33bの内周の型面には、縦スジ状保持型部39が形成されている。縦スジ状保持型部39は、大径型面部34及び小径型面部35を縦断して、波付け金型33a,33bの軸方向(押出ノズル31の押出し方向)に延びるとともに、その頂部は、大径型面部34及び小径型面部35の波形断面に倣う波形状になっている。縦スジ状保持型部39の形状及び配置は、アンダーカットを回避するように設定されている(以下の変形態様において同様)。
縦スジ状保持型部39によって、縦スジ状保持凸部16及び凹溝17(
図19、
図20)が形成される。
【0067】
<第3実施形態(縦スジ状保持凸部)の変形態様>
図23及び
図24に示す態様においては、縦スジ状保持凸部16の管内側を向く頂部16eは、波形管10Cの管径方向の一定高さに配置されて管軸方向に真っ直ぐ延びている。該頂部16eが全長にわたって内管9の外周面と接している。凹溝17の溝底部は、管径方向の一定位置に配置されて管軸方向に真っ直ぐ延びている。
図25、並びに
図26(a)及び同図(b)に示すように、対応する縦スジ状保持型部39の頂部は、波付け金型33a,33bの径方向の一定高さに配置されて、軸方向(
図25において左右方向)に沿って真っ直ぐ延びている。
【0068】
<第4実施形態(押出しノズルにて形成される縦スジ状保持凸部、
図27~
図30)>
図27及び
図28は、本発明の第4実施形態に係る複合管1Dを示したものである。複合管1Dにおける波形管10Dの内周面には、第3実施形態(
図19)と同様の縦スジ状の保持凸部16Dが周方向に等間隔で複数形成されている。該縦スジ状保持凸部16Dの管内側を向く頂部16eは、波形管10Dの管軸方向の波形断面に倣う波形状になっている。各縦スジ状保持凸部16Dにおける小径部12からの突出部分が、内管9の外周面と接している。
波形管10Dの外周面には、凹溝17(
図19、
図20参照)が形成されていない。
【0069】
図29及び
図30は、第4実施形態の複合管製造装置における押出ノズル40を示したものである。押出ノズル40は、内筒41と、外筒42を含む。内筒41の中心穴が内管送出口43を構成し、内筒41と外筒42の間の環状空間が押出し口44を構成している。
【0070】
内筒41の外周面(押出し口44の内周縁)には、複数(例えば4つ)の切欠凹部45(保持凸部形成部)が形成されている。これら切欠凹部45は、内筒41の周方向に等間隔(例えば90°間隔)で配置されている。各切欠凹部45は、内筒41の軸方向へ延びるとともに、内筒41の先端面へ向かうにしたがって漸次深さが増大しつつ、内筒41の先端面に達している。
なお、切欠凹部45の深さが、内筒41の軸方向の位置に依らず一定であってもよい。
【0071】
図30に示すように、押出ノズル40の押出し口44から樹脂19を押し出すとき、樹脂10の一部が切欠凹部45に入り込む。これによって、押し出された管状の樹脂19Aの内周面に、凸条19dが形成される。凸条19dは、押出方向(管状樹脂19Aの管軸方向)に沿って真っ直ぐ延びる。凸条19dの突出高さは、内筒41の先端面での切欠凹部45の深さに応じた一定の大きさになっている。
該凸条19dを含む管状の樹脂19Aを、発泡させながら波形管成形部32に導入して波形に成形する。これによって、管状の樹脂19Aが波形管10Dとなり、凸条19dが縦スジ状保持凸部16D(
図27、
図28)となる。
【0072】
本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の改変をなすことができる。
例えば、波形管が、環状保持凸部13と縦スジ状保持凸部16の両方を有していてもよく、離散保持凸部14と縦スジ状保持凸部16の両方を有していてもよい。
波形管成形部32は、バキューム式に代えて、管状樹脂19Aと内管9の間を加圧するブロー式であってもよい。
保持凸部が、波形管の内周面の周方向及び管軸方向に沿う螺旋状であってもよい。
2以上の実施形態(変形態様を含む)の独自構成を組み合わせてもよい。
たとえば、保持凸部が管芯に向いていない様式でも良い。
複合管は、給水給湯配管に限らず、電線などの挿通用配管などとして用いられてもよい。
【実施例1】
【0073】
実施例を説明する。本発明は以下の実施例には限定されない。
図15(a)に示す断面構造の複合管を作製した。
該複合管の波形管の樹脂材料は、高密度ポリエチレン(日本ポリエチレン株式会社製ノバテックHD(登録商標)HE121)であった。発泡剤としては、三協化成株式会社製発泡剤MB5885を用いた。
作製した複合管を、固定された三つ穴の空洞コンクリートブロックの1つの穴に挿通して引き上げることで、複合管の表面を前記1つの穴の上縁に擦れさせた。手秤で引き上げ力を測定し、15kgfの力で引き上げたときの複合管の外観を目視で観察した。表面(波形管の外周面)の破れは確認されなかった。
【0074】
別途、前記と同じ構造の全長5mの複合管を用意し、該複合管を床面上に這わせるとともに長さ方向の2箇所で水平に曲げ、かつ1箇所で垂直に曲げて立ち上げ、蛇口に接続した。元圧0.2MPaとして水を流した後、蛇口を急閉したところ、特に大きな水撃音は発生しなかった。また、同複合管の60℃熱伸縮評価においても、特に異常音の発生は起きなかった。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明は、例えば給水給湯管に適用できる。
【符号の説明】
【0076】
1,1B,1C,1D 複合管
9 内管
10,10B,10C,10D 波形管
11 大径部
12 小径部
12A,12B 小径部(保持凸部)
13 環状保持凸部(保持凸部)
14 離散保持凸部(保持凸部)
16,16D 縦スジ状保持凸部(保持凸部)
19 原料樹脂
19A 押出時の管状樹脂
3 複合管製造装置
30 発泡樹脂供給部
31 押出ノズル
31c 内管送出口
31d 押出し口
32 波形管成形部
33a,33b 波付け金型
33 波付け金型対
34 大径型面部
35 小径型面部
37,38,39 保持型部(保持凸部形成部)
40 押出ノズル
43 内管送出口
44 押出し口
45 切欠凹部(保持凸部形成部)