(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-05
(45)【発行日】2023-12-13
(54)【発明の名称】PF管固定用サドル及び配線構造
(51)【国際特許分類】
F16L 3/08 20060101AFI20231206BHJP
H02G 9/04 20060101ALI20231206BHJP
【FI】
F16L3/08 D
H02G9/04
(21)【出願番号】P 2019169478
(22)【出願日】2019-09-18
【審査請求日】2022-06-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長岐 淳
【審査官】渡邉 聡
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/096043(WO,A1)
【文献】特開2011-244579(JP,A)
【文献】特開2015-229912(JP,A)
【文献】特開2006-090082(JP,A)
【文献】特開2009-250258(JP,A)
【文献】特開2001-094134(JP,A)
【文献】特開2016-138386(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 3/08
H02G 9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
隣接する太陽電池モジュール間における配線構造であって、
前記太陽電池モジュール間の近接するフレームに対してそれぞれ回転可能に固定されたPF管固定用サドルと、
前記PF管固定用サドルにより抱持された前記太陽電池モジュール間の配線を収容するPF管と、
前記PF管に収容される配線と、を備えてなり、
前記PF管固定用サドルは、
前記太陽電池モジュールのフレームの下面に取り付けられる基部と、
前記基部から下方に向けて湾曲して形成される湾曲抱持部と、
前記基部から前記フレーム内に挿し込まれる挿込部と、
前記基部と前記フレームとの間に介在されるシート状の電食防止用パッキンと、を備え、
前記挿込部は、当該フレームに対して回転可能に固定されるよう構成されており、
前記配線は、前記各太陽電池モジュール間を、前記太陽電池モジュールの傾斜直交方向に短絡して接続していることを特徴とする配線構造。
【請求項2】
前記挿込部は、弾性変形可能な側面視略V字形に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の
配線構造。
【請求項3】
前記挿込部は、一端が前記基部に接続されると共に、前記フレームの内空に延伸されて、折り返されて下方に向けた他端が前記フレームの外側に突出していることを特徴とする請求項1又は2に記載の
配線構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池モジュール間の配線を収容するPF管を固定するためのPF管固定用サドル、並びに、隣接する太陽電池モジュール間における配線構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
建物の屋根上等に複数の太陽電池モジュールを並べて設置した際に、太陽電池モジュール間を繋ぐ配線の劣化や浸水を防ぎ、建物の美観を保つ観点から、配線をPF管に収容して保護することが行われている。
図1Aに示すように、太陽電池モジュールを屋根に取り付けるための固定金具(後足)まで配線を引き回し、当該固定金具(後足)にワイヤーで固定したPF管内に配線を収容することが、従来行われている。また、特許文献1には、配線を収容したPF管を、サドルとネジによって軒先に固定する軒先構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、
図1Aや特許文献1の技術では、太陽電池モジュール下の外に配置されたPF管内に配線を収容するため、配線長を長く取る必要があった。太陽電池モジュールが屋根上等に取付けられた後に配線工事を行うため、太陽電池モジュール下にワイヤーやネジによるPF管の固定を行うための十分な作業スペースが取れないからである。
【0005】
そこで、本発明は、より短い配線長で太陽電池モジュール間の配線を行うためのPF管固定用サドル及び配線構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、本発明のPF管固定用サドルは、太陽電池モジュールの配線を収容するPF管を固定するためのPF管固定用サドルであって、前記太陽電池モジュールのフレームの下面に取り付けられる基部と、前記基部から下方に向けて湾曲して形成される湾曲抱持部と、前記基部から前記フレーム内に挿し込まれる挿込部と、前記基部と前記フレームとの間に介在されるシート状の電食防止用パッキンと、を備え、前記挿込部は、当該フレームに対して回転可能に固定されるよう構成されていることを特徴とする。
【0007】
ここで、前記挿込部は、弾性変形可能な側面視略V字形に形成されている構成とすることができる。また、前記挿込部は、一端が前記基部に接続されると共に、前記フレームの内空に延伸されて、折り返されて下方に向けた他端が前記フレームの外側に突出している構成とすることができる。
【0008】
さらに、本発明の配線構造は、隣接する太陽電池モジュール間における配線構造であって、前記太陽電池モジュール間の近接するフレームに対してそれぞれ回転可能に固定された前記PF管固定用サドルと、前記PF管固定用サドルにより抱持された前記太陽電池モジュール間の配線を収容するPF管と、前記PF管に収容される配線と、を備えてなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
このように構成された本発明のPF管固定用サドル(以下、単に「サドル」と称することもある。)は、太陽電池モジュールのフレーム(以下、単に「フレーム」と称することもある。)の下面に直接取り付けられることによって、太陽電池モジュールの下にPF管を容易に固定することができる上に、太陽電池モジュール間の配線をより短い配線長で接続することが可能となる。
【0010】
また、挿込部がフレームに対して回転可能に固定されることによって、太陽電池モジュール間を接続するPF管を任意の角度で固定できるため、太陽電池モジュール間の配線をより短い配線長で接続することができる。
【0011】
さらに、挿込部が弾性変形可能な側面視略V字形に形成されていれば、挿込部をフレーム内に挿し込みフレームと係合させることによって、サドルをフレームに対してワンタッチで容易に取り付けることができる。
【0012】
また、挿込部は、一端が基部に接続され、他端がフレームの外側に突出していれば、ペンチ等を用いてサドルを取り外しでき、PF管の交換メンテナンスが容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1A】従来の配線構造の構成を示した説明図である。
【
図1B】本実施の形態の配線構造の構成を示した説明図である。
【
図2】屋根の上に並べられた太陽電池モジュール間の配線を行う工程を説明する斜視図である。
【
図3】本実施の形態のPF管固定用サドルの構成を説明する図であって、(a)は上面図、(b)は正面図、(c)は側面図である。
【
図4】本実施の形態のPF管固定用サドルの構成を説明する図であって、(a)は斜め上から見た斜視図、(b)は斜め下から見た斜視図である。
【
図5】挿込部の使用時の状態を示した断面図であって、(a)は挿入時、(b)は固定時の図である。
【
図6】PF管固定用サドルによって横方向のPF管を固定する工程を説明する図であって、(a)は正面図、(b)は底面図である。
【
図7】縦方向のPF管の固定方法を説明する側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0015】
図1Aは、隣接する太陽電池モジュール1,1間における従来の配線構造の構成を示した説明図である。複数の太陽電池モジュール1,・・・が隣接して並べられ、各太陽電池モジュール1,1間は配線21,・・・によって接続されている。この配線21,・・・は、太陽電池モジュール1,・・・を固定するための固定金具である後足11b,・・・にワイヤー23(
図7参照)で固定されたPF管22,・・・を通して引き回されている。そのため、後足11b,・・・まで配線21,・・・を引き回す必要があり、配線長を長く取らなければならない。
【0016】
これに対して
図1Bは、隣接する太陽電池モジュール1,1間における本実施の形態の配線構造の構成を示した説明図である。複数の太陽電池モジュール1,・・・が隣接して並べられ、各太陽電池モジュール1,1間は配線21,・・・によって接続されている。この配線21,・・・は、太陽電池モジュール1,・・・を固定するための固定金具である後足11b,・・・ではなく、隣接する各太陽電池モジュール1,1間の近接するフレーム12,12に対して固定されたPF管22,・・・を通して引き回されている。そのため、配線21,・・・は各太陽電池モジュール1,1間を横方向に短絡して接続することができ、より短い配線長での配線が可能となる。
【0017】
図2は、本実施の形態において屋根3の上に並べられた太陽電池モジュール1,1間の配線を行う工程を説明する斜視図である。この屋根3の上には、複数の太陽電池モジュール1,・・・が縦横に隣接して並べられる。各太陽電池モジュール1は、その下面に取り付けられた固定金具11(前足11a、後足11b)によって屋根3の凸部31に固定される。太陽電池モジュール1の下面と屋根3との間は、離隔した状態となる。
【0018】
一方、各太陽電池モジュール1には、それによって発電された電力を送電するための配線21が接続される。この配線21は、それぞれ合成樹脂製の可撓管であるPF管22に通された後、隣接する太陽電池モジュール1から引き出された配線21と接続される。次に、配線21を通したPF管22を固定する。横方向(太陽電池モジュール1の傾斜直交方向)のPF管22の固定には、本実施の形態のサドル4が用いられる。
【0019】
このサドル4は、
図3、4に示すように、太陽電池モジュール1のフレーム12の下面に取り付けられる基部41と、基部41から下方に向けて湾曲して形成される湾曲抱持部42と、基部41からフレーム12内に挿し込まれる挿込部43と、基部41とフレーム12との間に介在されるシート状の電食防止用パッキン44とによって主に構成される。
【0020】
この基部41は略コの字形の板状に形成され、その付け根部分から立ち上げられる湾曲抱持部42と一体的に成形されている。また、挿込部43は、基部41の前記付け根部分からフレーム12の内空に向けて突出した左右対称の爪形状を有しており、その爪の中ほどが膨らんで返し431を形成している。この挿込部43は、フレーム12の下面部121に穿孔されたボルト穴13内に挿入され、ボルト穴13の縁と返し431とが係合することにより、挿込部43及びサドル4はフレーム12に対して回転可能に固定される。
【0021】
より具体的には、
図5に示すように、挿込部43は弾性変形可能な側面視略V字形に形成される。したがって、挿入時の挿込部43の幅X(
図5(a)参照)はボルト穴13の直径より小さくなるが、固定時の挿込部43の幅Y(
図5(b)参照)はボルト穴13の直径より大きくなる。そのため、本実施の形態のサドル4は、取り付けが容易であるにもかかわらず外れにくい構造となっている。
【0022】
さらに、挿込部43は、一端が基部41の前記付け根部分に接続されると共に、ボルト穴13を通ってフレーム12の内空に延伸されて、折り返されて下方に向けた他端が、フレーム12(ボルト穴13)の外側に突出して取外し用突起432を形成している。したがって、ペンチ等で取外し用突起432をつまみ、挿込部43の幅を縮めることで、挿込部43及びサドル4を取外すことができ、PF管22の交換等のメンテナンス作業が容易となる。
【0023】
また、電食防止用パッキン44としては、ポリプロピレン、ポリエチレン等の絶縁素材からなるシートを用いることができる。この電食防止用パッキン44は、フレーム12とサドル4とが異種金属製品である場合に限り必須となる。すなわち、異種金属製品同士が接することによって生じる電食を防止するために、電食防止用パッキン44を基部41とフレーム12との間に介在させる。
【0024】
図6(a)、(b)は、サドル4によって横方向のPF管22を固定する工程を説明する図である。配線21を通したPF管22の両端を湾曲抱持部42,42で抱持するようにして、近接するフレーム12,12の下面部121,121に穿孔されたボルト穴13,13に対し、挿込部43,43を
図6(a)のA矢印方向に挿入し、カチッと音がするまで押し込むことにより、PF管22を太陽電池モジュール1,1の間に固定することができる。ここで、横方向の配線21を収容するPF管22の長さは、例えば、隣接するフレーム12,12の下面のボルト穴13,13間の距離に両側約50mmずつ足した長さとすることができる。
【0025】
また、縦方向(太陽電池モジュール1の傾斜方向)のPF管22の固定は、ワイヤー23にて固定金具11に固定することにより行う。
図7は、ワイヤー23によって縦方向のPF管22を固定する工程を説明する図である。配線21を通したPF管22の両端を、近接する太陽電池モジュール1,1の固定金具である前足11a,後足11bに対し、ステンレス製等のワイヤー23を用いて固定することにより、PF管22を太陽電池モジュール1,1の間に固定することができる。ここで、縦方向の配線21を収容するPF管22の長さは、例えば、PF管22を固定する前足11a,後足11b間の距離に両側約50mmずつ足した長さとすることができる。
【0026】
このようにして、全ての太陽電池モジュール1を直列に接続した後、
図2に示すように、配線21,21を同一の太陽電池モジュール1下まで配線し、1本のPF管22に収容してジョイントボックスJBまで配線する。
【0027】
次に、本実施の形態に係るPF管固定用サドル及び配線構造の作用について説明する。
【0028】
サドル4は、基部41からフレーム12内に挿し込まれることによって、太陽電池モジュール1のフレーム12の下面に直接取り付けられるよう構成されている。それゆえ、太陽電池モジュール1の下にPF管22を直接固定することが可能となり、太陽電池モジュール1,1間の配線21をより短い配線長で接続することができる。
【0029】
また、挿込部43は、基部41の付け根部分からフレーム12の内空に向けて突出した左右対称の爪形状を有しており、その爪の中ほどが膨らんで返し431を形成している。この挿込部43が、フレーム12の下面部121に穿孔されたボルト穴13内に挿入されると、ボルト穴13の縁と返し431とが係合する。これにより、挿込部43及びサドル4は、フレーム12に対して回転可能に固定される。
【0030】
さらに、サドル4は、湾曲抱持部42を介してPF管22を抱持すると共に、フレーム12に対して回転可能に固定されるよう構成されている挿込部43を備えている。したがって、サドル4は、太陽電池モジュール1,1間を接続するPF管22を任意の角度で固定できるため、太陽電池モジュール1,1間の配線21をより短い配線長で接続することができる。
【0031】
また、挿込部43が弾性変形可能な側面視略V字形に形成されている場合は、挿込部43をフレーム12内に挿し込みフレーム12と係合させることによって、サドル4をフレーム12に対してワンタッチで容易に取り付けることができる。さらに、挿込部43の一端が基部41に接続され、他端がフレーム12(ボルト穴13)の外側に突出して取外し用突起432を形成している場合は、ペンチ等を用いてサドル4を取り外しでき、PF管22の交換メンテナンスが容易となる。
【0032】
以上、図面を参照して、本発明の実施の形態を詳述してきたが、具体的な構成は、この実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
【0033】
例えば、前記実施の形態では、凸部31を有する陸屋根に配線構造を設ける場合について説明したが、これに限定されるものではなく、傾斜屋根に対しても本発明の配線構造を適用することができる。
【0034】
また、前記実施の形態では、縦方向のPF管22の固定をワイヤー23を用いて行う場合について説明したが、これに限定されるものではなく、フレーム12の長辺の下面部121にもボルト穴13を設けておくことにより、縦方向のPF管22の固定についてもサドル4を適用することができる。
【符号の説明】
【0035】
1 太陽電池モジュール
11 固定金具
12 フレーム
21 配線
22 PF管
4 サドル
41 基部
42 湾曲抱持部
43 挿込部
432 取外し用突起
44 電食防止用パッキン