IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 富士重工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-燃料電池システム 図1
  • 特許-燃料電池システム 図2
  • 特許-燃料電池システム 図3
  • 特許-燃料電池システム 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-05
(45)【発行日】2023-12-13
(54)【発明の名称】燃料電池システム
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/04291 20160101AFI20231206BHJP
   H01M 8/04 20160101ALI20231206BHJP
   H01M 8/0444 20160101ALI20231206BHJP
   H01M 8/04664 20160101ALI20231206BHJP
   H01M 8/04746 20160101ALI20231206BHJP
   H01M 8/04791 20160101ALI20231206BHJP
【FI】
H01M8/04291
H01M8/04 N
H01M8/0444
H01M8/04664
H01M8/04746
H01M8/04791
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019174297
(22)【出願日】2019-09-25
(65)【公開番号】P2021051918
(43)【公開日】2021-04-01
【審査請求日】2022-08-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110000936
【氏名又は名称】弁理士法人青海国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 しのぶ
【審査官】藤森 一真
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-129529(JP,A)
【文献】特開2003-217637(JP,A)
【文献】特開2005-251521(JP,A)
【文献】特開2010-146749(JP,A)
【文献】特開2016-110968(JP,A)
【文献】特開2005-197156(JP,A)
【文献】特開2019-153445(JP,A)
【文献】特開2006-172923(JP,A)
【文献】特開2006-012472(JP,A)
【文献】特開2004-022190(JP,A)
【文献】特開2009-021077(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/04 - 8/0668
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池を備える燃料電池システムであって
前記燃料電池に供給される空気が流通する空気供給路と、
前記空気供給路に設けられ、第1空気が吸入される第1吸入口と、
前記空気供給路に設けられ、前記第1空気より高温の第2空気が吸入される第2吸入口と、
前記燃料電池システムにおける空気の流通経路を制御する制御装置と、
を備え
前記第2吸入口は、前記燃料電池が収容される空間内に配置され、
前記制御装置は、前記空間内における水素濃度が基準濃度以上である場合に、前記第2吸入口から前記第2空気が吸入されるように前記流通経路を制御する、
燃料電池システム。
【請求項2】
記制御装置は、
前記燃料電池の発電時に、前記第1吸入口から前記第1空気が吸入され、当該空気が前記空気供給路を介して前記燃料電池に送られるように前記流通経路を制御し、
前記燃料電池の掃気時に、前記第2吸入口から前記第2空気が吸入され、当該空気が前記空気供給路を介して前記燃料電池に送られるように前記流通経路を制御する、
請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項3】
燃料電池を備える燃料電池システムであって
前記燃料電池に供給される空気が流通する空気供給路と、
前記空気供給路に設けられ、前記空気供給路の外部から前記空気供給路の内部に第1空気が吸入される第1吸入口と、
前記空気供給路に設けられ、前記空気供給路の外部から前記空気供給路の内部に前記第1空気より高温の第2空気が吸入される第2吸入口と、
前記燃料電池システムにおける空気の流通経路を制御する制御装置と、
を備え
前記制御装置は、
前記燃料電池の発電時に、前記第1吸入口から前記第1空気が吸入され、当該空気が前記空気供給路を介して前記燃料電池に送られるように前記流通経路を制御し、
前記燃料電池の掃気時に、前記第2吸入口から前記第2空気が吸入され、当該空気が前記空気供給路を介して前記燃料電池に送られるように前記流通経路を制御する、
燃料電池システム。
【請求項4】
前記第2吸入口から吸入される前記第2空気は、発熱体により暖められた空気である、
請求項1~3のいずれか一項に記載の燃料電池システム。
【請求項5】
前記発熱体は、ラジエータである、
請求項に記載の燃料電池システム。
【請求項6】
記制御装置は、前記ラジエータの冷却能力が必要量より不足していると判定される場合に、前記第2吸入口から前記第2空気が吸入されるように前記流通経路を制御する、
請求項に記載の燃料電池システム。
【請求項7】
前記燃料電池から排出される空気が流通する空気排出路と、
前記空気供給路と前記空気排出路とをバイパスするバイパス路と、
をさらに備え、
前記制御装置は、前記ラジエータの冷却能力が必要量より不足していると判定される場合に、前記第2吸入口から吸入された前記第2空気の少なくとも一部が前記バイパス路を介して前記空気排出路に送られるように前記流通経路を制御する、
請求項に記載の燃料電池システム。
【請求項8】
前記燃料電池から排出される空気が流通する空気排出路と、
前記空気供給路と前記空気排出路とをバイパスするバイパス路と、
をさらに備え、
前記制御装置は、前記空間内における水素濃度が前記基準濃度以上である場合に、前記第2吸入口から吸入された前記第2空気の少なくとも一部が前記バイパス路を介して前記空気排出路に送られるように前記流通経路を制御する、
請求項1または2に記載の燃料電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、燃料電池を種々の装置の電力源として利用する技術の開発が進められている。燃料電池は、一般に、複数の燃料電池セルが積層されている燃料電池スタックを有しており、燃料電池セルには、電解質膜、アノード電極およびカソード電極を含む膜電極接合体が設けられている。そして、燃料電池セルにおいて、アノード電極に燃料ガス(具体的には、水素ガス)が供給され、カソード電極に酸化ガス(具体的には、空気)が供給されることによって発電が行われる。
【0003】
燃料電池の発電中には、水素ガスと空気との電気化学反応が行われることによって、水が生成される。このように生成された水が燃料電池内に残存して、燃料電池内のガス流路(具体的には、空気が流通する空気流路または水素ガスが流通する水素ガス流路)に水が詰まり、ガスの流れが阻害されてしまう場合がある。このような場合には、ガスの流れが阻害されることにより燃料電池の電圧が低下してしまうので、燃料電池の掃気(つまり、燃料電池内のガス流路に一時的にガスを流すことにより当該ガス流路内の水を除去する処理)が行われる(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2008-053086号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従来の技術では、燃料電池の掃気において、例えば、ガス流路におけるガスの流速が不足すること等の要因によって、ガス流路内の水を十分に除去することができない場合があった。この場合には、燃料電池の電圧の低下や残存した水の凍結が生じるおそれがある。
【0006】
そこで、本発明は、このような課題に鑑み、燃料電池内に残存する水を効果的に除去することが可能な燃料電池システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の燃料電池システムは、燃料電池を備える燃料電池システムであって、燃料電池に供給される空気が流通する空気供給路と、空気供給路に設けられ、第1空気が吸入される第1吸入口と、空気供給路に設けられ、第1空気より高温の第2空気が吸入される第2吸入口と、燃料電池システムにおける空気の流通経路を制御する制御装置と、を備え、第2吸入口は、燃料電池が収容される空間内に配置され、制御装置は、空間内における水素濃度が基準濃度以上である場合に、第2吸入口から第2空気が吸入されるように流通経路を制御する
【0008】
御装置は、燃料電池の発電時に、第1吸入口から第1空気が吸入され、当該空気が空気供給路を介して燃料電池に送られるように流通経路を制御し、燃料電池の掃気時に、第2吸入口から第2空気が吸入され、当該空気が空気供給路を介して燃料電池に送られるように流通経路を制御してもよい。
上記課題を解決するために、本発明の燃料電池システムは、燃料電池を備える燃料電池システムであって、燃料電池に供給される空気が流通する空気供給路と、空気供給路に設けられ、空気供給路の外部から空気供給路の内部に第1空気が吸入される第1吸入口と、空気供給路に設けられ、空気供給路の外部から空気供給路の内部に第1空気より高温の第2空気が吸入される第2吸入口と、燃料電池システムにおける空気の流通経路を制御する制御装置と、を備え、制御装置は、燃料電池の発電時に、第1吸入口から第1空気が吸入され、当該空気が空気供給路を介して燃料電池に送られるように流通経路を制御し、燃料電池の掃気時に、第2吸入口から第2空気が吸入され、当該空気が空気供給路を介して燃料電池に送られるように流通経路を制御する。
【0009】
第2吸入口から吸入される第2空気は、発熱体により暖められた空気であってもよい。
【0010】
発熱体は、ラジエータであってもよい。
【0011】
御装置は、ラジエータの冷却能力が必要量より不足していると判定される場合に、第2吸入口から第2空気が吸入されるように流通経路を制御してもよい。
【0012】
燃料電池から排出される空気が流通する空気排出路と、空気供給路と空気排出路とをバイパスするバイパス路と、をさらに備え、制御装置は、ラジエータの冷却能力が必要量より不足していると判定される場合に、第2吸入口から吸入された第2空気の少なくとも一部がバイパス路を介して空気排出路に送られるように流通経路を制御してもよい。
【0014】
燃料電池から排出される空気が流通する空気排出路と、空気供給路と空気排出路とをバイパスするバイパス路と、をさらに備え、制御装置は、上記空間内における水素濃度が基準濃度以上である場合に、第2吸入口から吸入された第2空気の少なくとも一部がバイパス路を介して空気排出路に送られるように流通経路を制御してもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、燃料電池内に残存する水を効果的に除去することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態に係る燃料電池システムの概略構成を示す模式図である。
図2】本発明の実施形態に係る燃料電池の発電時の燃料電池システムにおける空気の流れを示す模式図である。
図3】本発明の実施形態に係る燃料電池の掃気時の燃料電池システムにおける空気の流れを示す模式図である。
図4】本発明の実施形態に係るラジエータの冷却能力の不足時の燃料電池システムにおける空気の流れを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、発明の理解を容易にするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0018】
<燃料電池システムの構成>
まず、図1を参照して、本発明の実施形態に係る燃料電池システム1の構成について説明する。
【0019】
図1は、燃料電池システム1の概略構成を示す模式図である。
【0020】
なお、以下では、車両に搭載される燃料電池システム1について説明するが、本発明に係る燃料電池システムは、車両以外の他の装置に搭載されてもよく、例えば、船舶等の車両以外の移動体に搭載されてもよく、建物における発電システムとして利用される定置式のものであってもよい。
【0021】
燃料電池システム1は、燃料電池10を備えるシステムであり、例えば、燃料電池10は車両の駆動用モータの電力源として利用され得る。
【0022】
具体的には、燃料電池システム1は、図1に示されるように、燃料電池10と、空気供給路21と、空気排出路22と、バイパス路23と、第1吸入口31と、第2吸入口32と、エアフィルタ41と、コンプレッサ42と、冷媒循環路51と、ラジエータ61と、冷媒温度センサ81と、水素濃度センサ82と、三方弁91と、三方弁92と、背圧調整弁93と、制御装置100とを備える。
【0023】
なお、以下で説明するように、ラジエータ61は、本発明に係る発熱体(つまり、第2吸入口32から吸入される空気を暖める発熱体)の一例に相当する。なお、後述するように、本発明に係る発熱体は、ラジエータ61以外の発熱体であってもよい。
【0024】
燃料電池10は、燃料ガス(具体的には、水素ガス)と酸化ガス(具体的には、空気)とを反応させることにより発電する電池である。具体的には、燃料電池10は、複数の燃料電池セルが積層されている燃料電池スタックを有しており、各燃料電池セルには、電解質膜、アノード電極およびカソード電極を含む膜電極接合体が設けられている。なお、以下では、燃料電池10が車両のエンジンルーム内に配置される例を説明するが、車両内における燃料電池10の位置は、特に限定されず、例えば、車室の下方等に配置されていてもよい。
【0025】
燃料電池10には、ガスが流通するガス流路として、空気が流通する空気流路12および水素ガスが流通する水素ガス流路(図示省略)が形成されている。空気流路12の一端には空気供給路21が接続されており、空気流路12の他端には空気排出路22が接続されている。後述するように、空気流路12には、空気供給路21に設けられている空気の吸入口(具体的には、第1吸入口31または第2吸入口32)から吸入された空気が供給されるようになっている。なお、燃料電池10内において、空気流路12は、各燃料電池セルを通過するように分岐している。また、水素ガス流路は水素ガス供給路を介して水素タンクと接続されており、水素タンクから水素ガス流路に水素ガスが供給されるようになっている。なお、燃料電池10内において、水素ガス流路は、各燃料電池セルを通過するように分岐している。
【0026】
空気供給路21は、燃料電池10に供給される空気が流通する流路である。空気供給路21は、上流側で2つの流路(具体的には、第1供給路21aおよび第2供給路21b)に分岐しており、当該2つの流路の各々に空気の吸入口(具体的には、第1吸入口31および第2吸入口32)が設けられている。
【0027】
詳細には、空気供給路21は、第1供給路21aと、第2供給路21bと、第3供給路21cとを有する。第3供給路21cの下流側端部が燃料電池10内の空気流路12と接続されており、第3供給路21cの上流側端部に第1供給路21aおよび第2供給路21bがそれぞれ接続されている。そして、第1供給路21aの上流側端部に第1吸入口31が設けられており、第2供給路21bの上流側端部に第2吸入口32が設けられている。なお、各供給路は、1つの部材により形成されていてもよく複数の部材により形成されていてもよい。
【0028】
第1吸入口31は、外気(具体的には、車外の空気)が吸入される吸入口である。なお、外気は、本発明に係る第1空気(つまり、第1吸入口31から吸入される空気)の一例に相当する。例えば、第1吸入口31は、走行風が送られる位置に設けられていてもよく、車外の空間に面して設けられていてもよい。第1吸入口31から吸入された外気は、第1供給路21aを通って第3供給路21cに送られる。図1では、外気が第1吸入口31から吸入される様子が矢印A1により示されている。
【0029】
第2吸入口32は、外気より高温の空気(以下、暖気とも呼ぶ)が吸入される吸入口である。なお、暖気は、本発明に係る第2空気(つまり、第2吸入口32から吸入され、第1空気より高温の空気)の一例に相当する。具体的には、第2吸入口32は、車両において外気より高温の空気が存在する位置に設けられている。例えば、図1に示される例では、第2吸入口32は、燃料電池10の冷却に用いられる冷媒を冷却するためのラジエータ61の近傍に設けられている。
【0030】
具体的には、ラジエータ61は、冷媒が循環する冷媒循環路51に設けられている。冷媒循環路51は燃料電池10内の冷媒流路15と接続されており、冷媒流路15を流通する冷媒と燃料電池10との間で熱交換が行われることにより燃料電池10が冷却される。ラジエータ61には、燃料電池10との熱交換により暖められた冷媒が流通し、ラジエータ61の周囲の空気とラジエータ61との間で熱交換が行われることにより冷媒が冷却される。例えば、ラジエータ61には、走行風が当たるようになっており、ラジエータ61の周囲に送られる外気とラジエータ61との間で熱交換が行われる。ラジエータ61により暖められた空気は外気より高温となっており、このような空気(つまり、暖気)が第2吸入口32から吸入される。第2吸入口32から吸入された暖気は、第2供給路21bを通って第3供給路21cに送られる。図1では、ラジエータ61により暖められた空気(つまり、暖気)が第2吸入口32から吸入される様子が矢印A2により示されている。
【0031】
ラジエータ61および第2吸入口32は、エンジンルーム内に配置されている。このように、第2吸入口32は、燃料電池10が収容される空間(つまり、エンジンルーム)内に配置される。なお、第2吸入口32が収容される空間と燃料電池10が収容される空間とは、互いに異なっていてもよい。
【0032】
第1供給路21aと第2供給路21bと第3供給路21cとの接続部分には、三方弁91が設けられている。三方弁91は、第1供給路21aと第3供給路21cとが連通する状態と、第1供給路21aと第3供給路21cとの間での空気の流通が遮断される状態とを切り替える機能を有する。また、三方弁91は、第2供給路21bと第3供給路21cとが連通する状態と、第2供給路21bと第3供給路21cとの間での空気の流通が遮断される状態とを切り替える機能を有する。
【0033】
第3供給路21cには、エアフィルタ41と、コンプレッサ42とが上流側からこの順に設けられている。エアフィルタ41は、第3供給路21cを流通する空気に含まれる異物を除去する。コンプレッサ42は、当該コンプレッサ42よりも上流側の空気を圧縮して下流側(つまり、燃料電池10側)に送る。
【0034】
燃料電池システム1における空気の流れは、コンプレッサ42が駆動されることによって生じる。具体的には、第1供給路21aと第3供給路21cとが連通している状態でコンプレッサ42が駆動された場合、外気が第1吸入口31から吸入され、第1供給路21aおよび第3供給路21cを通るように、空気の流れが生じる。また、第2供給路21bと第3供給路21cとが連通している状態でコンプレッサ42が駆動された場合、暖気が第2吸入口32から吸入され、第2供給路21bおよび第3供給路21cを通るように、空気の流れが生じる。
【0035】
空気排出路22は、燃料電池10から排出される空気が流通する流路である。燃料電池10内の空気流路12を通った空気は、空気排出路22を通って排出される。図1では、空気が空気排出路22を通って排出される様子が矢印A3により示されている。なお、空気排出路22は、1つの部材により形成されていてもよく複数の部材により形成されていてもよい。
【0036】
空気排出路22には、背圧調整弁93が設けられている。背圧調整弁93は、当該背圧調整弁93より上流側(具体的には、空気排出路22における背圧調整弁93より上流側、燃料電池10内の空気流路12、空気供給路21および後述するバイパス路23)での空気の圧力を調整する機能を有する。具体的には、背圧調整弁93の開度が調整されることによって、背圧調整弁93を通過する空気の流量が調整されることにより、背圧調整弁93より上流側での空気の圧力が調整される。
【0037】
バイパス路23は、空気供給路21と空気排出路22とをバイパスする空気の流路である。具体的には、バイパス路23は、空気供給路21の第3供給路21cにおけるコンプレッサ42よりも下流側と、空気排出路22における背圧調整弁93よりも上流側との間に亘って設けられている。なお、バイパス路23は、1つの部材により形成されていてもよく複数の部材により形成されていてもよい。
【0038】
空気供給路21の第3供給路21cとバイパス路23との接続部分には、三方弁92が設けられている。三方弁92は、第3供給路21cにおける当該三方弁92よりも上流側と下流側とが連通する状態と、第3供給路21cにおける当該三方弁92よりも上流側と下流側との間での空気の流通が遮断される状態とを切り替える機能を有する。また、三方弁92は、第3供給路21cにおける当該三方弁92よりも上流側とバイパス路23とが連通する状態と、第3供給路21cにおける当該三方弁92よりも上流側とバイパス路23との間での空気の流通が遮断される状態とを切り替える機能を有する。
【0039】
冷媒温度センサ81は、冷媒循環路51における燃料電池10よりも下流側の冷媒の温度を検出し、検出結果を制御装置100に出力する。具体的には、冷媒温度センサ81は、燃料電池10内の冷媒流路15の下流側端部(つまり、冷媒流路15の出口)の近傍に設けられ、設置箇所における冷媒の温度を検出する。制御装置100が行う後述する処理では、冷媒温度センサ81により検出される冷媒の温度は、燃料電池10の温度に相当する値として利用される。
【0040】
水素濃度センサ82は、燃料電池10が収容される空間(具体的には、エンジンルーム)内における水素濃度を検出し、検出結果を制御装置100に出力する。
【0041】
制御装置100は、燃料電池システム1における各装置の動作を制御する。それにより、制御装置100は、燃料電池システム1における空気の流れを制御することができる。
【0042】
例えば、制御装置100は、演算処理装置であるCPU(Central Processing Unit)、CPUが使用するプログラムや演算パラメータ等を記憶する記憶素子であるROM(Read Only Memory)およびCPUの実行において適宜変化するパラメータ等を一時記憶する記憶素子であるRAM(Random Access Memory)等を含む。
【0043】
具体的には、制御装置100は、コンプレッサ42、三方弁91、三方弁92および背圧調整弁93の動作を制御することによって、燃料電池システム1における空気の流れ(具体的には、空気の流通経路)を制御する。
【0044】
また、制御装置100は、冷媒温度センサ81および水素濃度センサ82と通信することによって、冷媒温度センサ81および水素濃度センサ82から出力される情報を取得する。このように得られる情報は、燃料電池システム1における空気の流通経路の制御に関する処理に利用される。
【0045】
制御装置100は、上述したように、燃料電池システム1に搭載される各装置と通信を行う。制御装置100と各装置との通信は、例えば、CAN(Controller Area Network)通信を用いて実現される。
【0046】
なお、本実施形態に係る制御装置100が有する機能は複数の制御装置により少なくとも部分的に分割されてもよく、複数の機能が1つの制御装置によって実現されてもよい。制御装置100が有する機能が複数の制御装置により少なくとも部分的に分割される場合、当該複数の制御装置は、CAN等の通信バスを介して、互いに接続されてもよい。
【0047】
上記のように、燃料電池システム1では、第1空気(例えば、外気)が吸入される第1吸入口31が空気供給路21に設けられ、第1空気より高温の第2空気(例えば、外気より高温の空気である暖気)が吸入される第2吸入口32が第1吸入口31とは別に空気供給路21に設けられる。それにより、燃料電池10内に残存する水を効果的に除去することが実現される。ここで、燃料電池システム1における空気の流通経路の制御は、上述したように、制御装置100により行われる。このような、制御装置100により行われる燃料電池システム1における空気の流通経路の制御に関する処理の詳細については、後述する。
【0048】
<燃料電池システムの動作>
続いて、図2図4を参照して、本発明の実施形態に係る燃料電池システム1の動作について説明する。
【0049】
上述したように、燃料電池システム1における空気の流通経路の制御は、制御装置100により行われる。ここで、制御装置100は、状況に応じて、燃料電池システム1における空気の流通経路を切り替える。以下では、制御装置100が行う制御により実現される各状況下での燃料電池システム1における空気の流れについて説明する。なお、以下で参照する図2図4では、各状況下での燃料電池システム1における空気の流れが矢印により示されている。
【0050】
[発電時]
まず、図2を参照して、燃料電池10の発電時の燃料電池システム1における空気の流れについて説明する。
【0051】
図2は、燃料電池10の発電時の燃料電池システム1における空気の流れを示す模式図である。
【0052】
制御装置100は、例えば、車両の駆動要求が生じた場合(例えば、アクセルが踏み込まれた場合)に、燃料電池10を発電させる。なお、燃料電池10の発電は、具体的には、以下で説明する燃料電池10への空気の供給に加えて、燃料電池10への水素ガスの供給が行われることによって実現される。
【0053】
燃料電池10の発電時には、制御装置100は、図2で矢印F1により示されるように、第1吸入口31から外気が吸入され、当該外気が空気供給路21を介して燃料電池10に送られるように燃料電池システム1における空気の流通経路を制御する。
【0054】
詳細には、制御装置100は、第1供給路21aと第3供給路21cとが連通し、第2供給路21bと第3供給路21cとの間での空気の流通が遮断されるように、三方弁91の動作を制御する。また、制御装置100は、第3供給路21cにおける三方弁92よりも上流側と下流側とが連通し、第3供給路21cにおける三方弁92よりも上流側とバイパス路23との間での空気の流通が遮断されるように、三方弁92の動作を制御する。また、制御装置100は、例えば、背圧調整弁93より上流側での空気の圧力が燃料電池10の出力の目標値に対応した圧力となるように、背圧調整弁93の動作を制御する。
【0055】
制御装置100は、各弁を上記のように制御した状態で、コンプレッサ42を駆動させる。それにより、第1吸入口31から外気が吸入され、当該外気が第1供給路21a、第3供給路21c、燃料電池10内の空気流路12、空気排出路22の順に流れるように、燃料電池システム1における空気の流通経路が制御される。
【0056】
上記のように、燃料電池10の発電時には、第1吸入口31を用いて空気を吸入することによって、外気を燃料電池10内の空気流路12に供給することができる。ゆえに、外気を酸化ガスとして用いて燃料電池10を発電させることができる。
【0057】
[掃気時]
次に、図3を参照して、燃料電池10の掃気時の燃料電池システム1における空気の流れについて説明する。ここで、燃料電池10の掃気は、燃料電池10内の空気流路12に一時的に空気を流すことにより当該空気流路12内の水を除去する処理である。
【0058】
図3は、燃料電池10の掃気時の燃料電池システム1における空気の流れを示す模式図である。
【0059】
制御装置100は、例えば、燃料電池10の発電を終了する際に、燃料電池10の掃気を以下で説明するように行う。
【0060】
燃料電池10の掃気時には、制御装置100は、図3で矢印F2により示されるように、第2吸入口32から暖気が吸入され、当該暖気が空気供給路21を介して燃料電池10に送られるように燃料電池システム1における空気の流通経路を制御する。
【0061】
詳細には、制御装置100は、第1供給路21aと第3供給路21cとの間での空気の流通が遮断され、第2供給路21bと第3供給路21cとが連通するように、三方弁91の動作を制御する。また、制御装置100は、第3供給路21cにおける三方弁92よりも上流側と下流側とが連通し、第3供給路21cにおける三方弁92よりも上流側とバイパス路23との間での空気の流通が遮断されるように、三方弁92の動作を制御する。また、制御装置100は、例えば、燃料電池10の空気流路12における空気の流速が当該空気流路12に残存する水を除去し得る程度に大きくなるように、背圧調整弁93の動作を制御する。
【0062】
制御装置100は、各弁を上記のように制御した状態で、コンプレッサ42を駆動させる。それにより、第2吸入口32から暖気が吸入され、当該暖気が第2供給路21b、第3供給路21c、燃料電池10内の空気流路12、空気排出路22の順に流れるように、燃料電池システム1における空気の流通経路が制御される。なお、制御装置100は、燃料電池10の掃気時に、三方弁91の動作を制御することによって、第2吸入口32からの空気(つまり、暖気)の吸入に加えて第1吸入口31からも空気(つまり、外気)が吸入されるように、流通経路を制御してもよい。
【0063】
上記のように、燃料電池10の掃気時には、発電時に用いられる第1吸入口31と異なる第2吸入口32を用いて空気を吸入することによって、外気より高温の空気である暖気を燃料電池10内の空気流路12に供給することができる。ゆえに、当該空気流路12に残存する水を空気の流れで押し出して除去することに加えて、当該水を乾燥させることによっても除去することができる。よって、例えば、燃料電池10の掃気において空気流路12に外気を流す場合と比較して、空気の流れで押し出すことによっては除去しにくい比較的細かい水滴を乾燥させることにより除去することができる。ゆえに、燃料電池10内に残存する水を効果的に除去することができる。
【0064】
なお、上記では、燃料電池10の発電を終了する際に燃料電池10の掃気が行われる例を説明したが、燃料電池10の掃気が行われるタイミングは、特に限定されない。例えば、制御装置100は、燃料電池10の停止時において、燃料電池10の温度または外気温が基準温度以下の場合に燃料電池10の掃気を行ってもよい。基準温度は、例えば、燃料電池10内に残存した水が凍結する可能性が比較的高いか否かを判断し得る温度に設定される。なお、燃料電池10の温度としては、例えば、冷媒温度センサ81により検出される冷媒の温度を利用することができる。また、外気温を検出するセンサを車両に搭載することにより、外気温を取得することができる。また、例えば、制御装置100は、燃料電池10の起動時に燃料電池10の掃気を行ってもよい。また、例えば、制御装置100は、燃料電池10がフラッディング状態であると判定される場合に燃料電池10の掃気を行ってもよい。フラッディング状態は、発電により生成された水が燃料電池10のガス流路内に残存して、当該ガス流路に水が詰まり、ガスの流れが阻害されている状態を意味する。フラッディング状態は、例えば、燃料電池10の電圧状態や内部インピーダンス等に基づいて検出され得る。
【0065】
また、燃料電池10の掃気(つまり、燃料電池10内の空気流路12への空気の供給)が終了するタイミングは、特に限定されない。例えば、制御装置100は、燃料電池10の掃気を開始した後、基準時間が経過したときに、燃料電池10の掃気を終了してもよい。基準時間は、例えば、燃料電池10内に残存した水の掃気による除去にかかる平均的な時間として想定される時間より長い時間に設定される。
【0066】
[ラジエータの冷却能力の不足時]
燃料電池10の発電時等には、ラジエータ61の冷却能力が必要量より不足する場合がある。例えば、ラジエータ61に送られる走行風の風量が小さくなるほど、ラジエータ61の冷却能力(つまり、冷媒循環路51を循環する冷媒をラジエータ61により冷却する能力)が低下する。それにより、冷媒によって燃料電池10を適切に冷却することが困難となり得る。例えば、目標温度よりも高くなっている燃料電池10の温度を目標温度に向けて低下させることができない程度にラジエータ61の冷却能力が低下している場合が、ラジエータ61の冷却能力が必要量より不足する場合に相当する。
【0067】
図4は、ラジエータ61の冷却能力の不足時(つまり、ラジエータ61の冷却能力が必要量より不足している時)の燃料電池システム1における空気の流れを示す模式図である。
【0068】
制御装置100は、例えば、燃料電池10の温度に基づいて、ラジエータ61の冷却能力が必要量より不足しているか否かを判定する。具体的には、制御装置100は、燃料電池10の温度が比較的長い時間に亘って継続して上昇している場合に、ラジエータ61の冷却能力が必要量より不足していると判定する。なお、ラジエータ61の冷却能力が必要量より不足しているか否かの判定は、制御装置100以外の装置により行われてもよい。
【0069】
上述したように、燃料電池10の発電時には、図4で矢印F1により示されるように、第1吸入口31から外気が吸入され、当該外気が第1供給路21a、第3供給路21c、燃料電池10内の空気流路12、空気排出路22の順に流れるように、燃料電池システム1における空気の流通経路が制御されている。
【0070】
ここで、ラジエータ61の冷却能力が必要量より不足していると判定される場合には、制御装置100は、第1吸入口31からの外気の吸入に加えて、第2吸入口32から暖気が吸入されるように燃料電池システム1における空気の流通経路を制御することが好ましい。具体的には、制御装置100は、図4で矢印F3により示されるように、第2吸入口32から暖気が吸入され、当該暖気がバイパス路23を介して空気排出路22に送られるように燃料電池システム1における空気の流通経路を制御することが好ましい。なお、図4で示される例のように、矢印F1により示される空気の流れが生じている場合には、第2吸入口32から吸入された暖気の一部は、燃料電池10内の空気流路12に供給され得る。
【0071】
詳細には、燃料電池10の発電時に、ラジエータ61の冷却能力が必要量より不足していると判定される場合には、制御装置100は、三方弁91の動作を制御することにより、第2供給路21bと第3供給路21cとを連通させる。また、制御装置100は、三方弁92の動作を制御することにより、第3供給路21cにおける三方弁92よりも上流側とバイパス路23とを連通させる。それにより、矢印F1により示される空気の流れに加えて、矢印F3により示されるように、第2吸入口32から暖気が吸入され、当該暖気の少なくとも一部が第2供給路21b、第3供給路21c、バイパス路23、空気排出路22の順に流れるように、燃料電池システム1における空気の流通経路が制御される。
【0072】
なお、燃料電池10の発電時にラジエータ61の冷却能力が必要量より不足していると判定される場合において、制御装置100は、第1吸入口31から吸入される外気の流量が維持されるようにコンプレッサ42の動作を制御する(つまり、コンプレッサ42により吸引される空気の流量を増大させる)ことが好ましい。また、制御装置100は、第2吸入口32から吸入される暖気の流量と、バイパス路23を流通する空気の流量とが同程度となるように、三方弁92の動作を制御することが好ましい。
【0073】
上記のように、ラジエータ61の冷却能力が必要量より不足していると判定される場合に、第2吸入口32を用いて空気を吸入することによって、ラジエータ61の周囲で空気の流れを生じさせること、または、ラジエータ61の周囲の空気の流量を増大させることができる。ゆえに、ラジエータ61の周囲の空気とラジエータ61との間での熱交換を促進させることができる。よって、ラジエータ61の冷却能力の不足分を補うことができる。それにより、燃料電池10の温度を適切に制御することができる。
【0074】
なお、上記では、第2吸入口32が燃料電池10用のラジエータ61(つまり、燃料電池10の冷却に用いられる冷媒を冷却するためのラジエータ)の近傍に設けられている例を説明したが、第2吸入口32は、電気による発熱を伴う機器(例えば、車両の駆動輪を駆動するモータ、バッテリまたはDCDCコンバータ等)の冷却に用いられる冷媒を冷却するラジエータである電気系用ラジエータの近傍に設けられていてもよい。この場合、電気系用ラジエータにより暖められた空気が第2吸入口32から吸入される。
【0075】
ここで、燃料電池10の停止時に、電気系用ラジエータの冷却能力が必要量より不足していると判定される場合には、制御装置100は、矢印F1により示される空気の流れが生じずに、矢印F3により示される空気の流れが生じるように、燃料電池システム1における空気の流通経路を制御する。つまり、電気系用ラジエータの冷却能力が必要量より不足していると判定される場合には、制御装置100は、矢印F1により示される空気の流れを必ずしも生じさせなくてもよい。
【0076】
また、上記では、ラジエータ61の冷却能力が必要量より不足していると判定される場合に第2吸入口32から吸入された暖気の少なくとも一部がバイパス路23を介して空気排出路22に送られる例を説明したが、上記のように判定される場合に第2吸入口32から吸入された暖気の全てが燃料電池10の空気流路12を介して空気排出路22に送られてもよい。しかしながら、燃料電池10における燃料電池セルの電解質膜の乾燥を抑制する観点では、制御装置100は、ラジエータ61の冷却能力が必要量より不足していると判定される場合に、第2吸入口32から吸入された暖気の少なくとも一部がバイパス路23を介して空気排出路22に送られるように燃料電池システム1における空気の流通経路を制御することが好ましい。
【0077】
[燃料電池が収容される空間内の水素濃度の上昇時]
燃料電池10が収容される空間(例えば、エンジンルーム)内において、水素濃度が上昇して基準濃度以上となる場合がある。基準濃度は、水素濃度が車両の安全性を十分に確保し得る程度に小さいか否かを判断できる値に適宜設定される。
【0078】
燃料電池10が収容される空間内における水素濃度が基準濃度以上である場合には、制御装置100は、第2吸入口32から暖気が吸入されるように燃料電池システム1における空気の流通経路を制御することが好ましい。具体的には、制御装置100は、上記で参照した図4の矢印F3により示されるように、第2吸入口32から暖気が吸入され、当該暖気がバイパス路23を介して空気排出路22に送られるように燃料電池システム1における空気の流通経路を制御することが好ましい。
【0079】
詳細には、燃料電池10が収容される空間内における水素濃度が基準濃度以上である場合には、制御装置100は、三方弁91の動作を制御することにより、第2供給路21bと第3供給路21cとを連通させる。また、制御装置100は、三方弁92の動作を制御することにより、第3供給路21cにおける三方弁92よりも上流側とバイパス路23とを連通させる。
【0080】
制御装置100は、各弁を上記のように制御した状態で、コンプレッサ42を駆動させる。それにより、図4の矢印F3により示されるように、第2吸入口32から暖気が吸入され、当該暖気が第2供給路21b、第3供給路21c、バイパス路23、空気排出路22の順に流れるように、燃料電池システム1における空気の流通経路が制御される。なお、この際に、燃料電池10の発電が行われている場合には、図4の矢印F3により示される空気の流れに加えて、図4の矢印F1により示される空気の流れが生じるように、燃料電池システム1における空気の流通経路が制御される。この場合には、第2吸入口32から吸入された暖気の一部は、燃料電池10内の空気流路12に供給され得る。
【0081】
ここで、第2吸入口32は、上述したように、燃料電池10が収容される空間内に配置されている。ゆえに、第2吸入口32から吸入される空気は、燃料電池10が収容される空間内の空気である。よって、上記のように、燃料電池10が収容される空間内における水素濃度が基準濃度以上である場合に、第2吸入口32を用いて空気を吸入することによって、燃料電池10が収容される空間から水素を排出することができる。ゆえに、当該空間内における水素濃度を低下させることができる。
【0082】
なお、上記では、燃料電池10が収容される空間内における水素濃度が基準濃度以上である場合に第2吸入口32から吸入された暖気の少なくとも一部がバイパス路23を介して空気排出路22に送られる例を説明したが、上記のように判定される場合に第2吸入口32から吸入された暖気の全てが燃料電池10の空気流路12を介して空気排出路22に送られてもよい。しかしながら、燃料電池10における燃料電池セルの電解質膜の乾燥を抑制する観点では、制御装置100は、燃料電池10が収容される空間内における水素濃度が基準濃度以上である場合に、第2吸入口32から吸入された暖気の少なくとも一部がバイパス路23を介して空気排出路22に送られるように燃料電池システム1における空気の流通経路を制御することが好ましい。
【0083】
<燃料電池システムの効果>
続いて、本発明の実施形態に係る燃料電池システム1の効果について説明する。
【0084】
本実施形態に係る燃料電池システム1は、燃料電池10と、燃料電池10に供給される空気が流通する空気供給路21と、空気供給路21に設けられ、第1空気(例えば、外気)が吸入される第1吸入口31と、空気供給路21に設けられ、第1空気より高温の第2空気(例えば、外気より高温の空気である暖気)が吸入される第2吸入口32とを備える。それにより、燃料電池10の発電時には、第1吸入口31を用いて空気を吸入することによって、第2空気より低温の第1空気を酸化ガスとして用いて燃料電池10を発電させることができる。一方、燃料電池10の掃気時には、発電時に用いられる第1吸入口31と異なる第2吸入口32を用いて空気を吸入することによって、第1空気より高温の第2空気を用いて燃料電池10を掃気することができる。ゆえに、燃料電池10内に残存する水を効果的に除去することができる。
【0085】
また、本実施形態に係る燃料電池システム1では、制御装置100は、燃料電池10の発電時に、第1吸入口31から第1空気が吸入され、当該空気が空気供給路21を介して燃料電池10に送られるように燃料電池システム1における空気の流通経路を制御し、燃料電池10の掃気時に、第2吸入口32から第2空気が吸入され、当該空気が空気供給路21を介して燃料電池10に送られるように燃料電池システム1における空気の流通経路を制御することが好ましい。それにより、第1空気を酸化ガスとして用いた燃料電池10の発電を実現した上で、第1空気より高温の第2空気を用いた燃料電池10の掃気を実現することができる。ゆえに、燃料電池10内に残存する水を効果的に除去することを適切に実現することができる。
【0086】
また、本実施形態に係る燃料電池システム1では、第2吸入口32から吸入される第2空気は、発熱体により暖められた空気であることが好ましい。それにより、燃料電池10の掃気時に、燃料電池10に送られる空気の温度を効果的に高くすることができるので、燃料電池10の掃気により水を除去する効果を効果的に向上させることができる。
【0087】
また、本実施形態に係る燃料電池システム1では、第2吸入口32から吸入される第2空気を暖める発熱体は、ラジエータ(例えば、ラジエータ61)であることが好ましい。それにより、燃料電池システム1内またはその周囲に設けられているラジエータにより発せられる熱を有効に利用して、燃料電池10の掃気により水を除去する効果を向上させることができる。
【0088】
また、本実施形態に係る燃料電池システム1では、制御装置100は、上記発熱体としてのラジエータ(例えば、ラジエータ61)の冷却能力が必要量より不足していると判定される場合に、第2吸入口32から第2空気が吸入されるように燃料電池システム1における空気の流通経路を制御することが好ましい。それにより、ラジエータの周囲で空気の流れを生じさせること、または、ラジエータの周囲の空気の流量を増大させることができる。ゆえに、ラジエータの周囲の空気とラジエータとの間での熱交換を促進させることができるので、ラジエータの冷却能力の不足分を補うことができる。
【0089】
また、本実施形態に係る燃料電池システム1では、制御装置100は、上記発熱体としてのラジエータ(例えば、ラジエータ61)の冷却能力が必要量より不足していると判定される場合に、第2吸入口32から吸入された第2空気の少なくとも一部がバイパス路23を介して空気排出路22に送られるように燃料電池システム1における空気の流通経路を制御することが好ましい。それにより、燃料電池10に不必要に空気が送られることを抑制することができるので、燃料電池10における燃料電池セルの電解質膜の乾燥を抑制した上でラジエータの冷却能力の不足分を補うことができる。
【0090】
また、本実施形態に係る燃料電池システム1では、第2吸入口32は、燃料電池10が収容される空間内に配置され、制御装置100は、当該空間内における水素濃度が基準濃度以上である場合に、第2吸入口32から第2空気が吸入されるように燃料電池システム1における空気の流通経路を制御することが好ましい。それにより、燃料電池10が収容される空間から水素を排出することができる。ゆえに、当該空間内における水素濃度を低下させることができる。
【0091】
また、本実施形態に係る燃料電池システム1では、第2吸入口32は、燃料電池10が収容される空間内に配置され、制御装置100は、当該空間内における水素濃度が基準濃度以上である場合に、第2吸入口32から吸入された第2空気の少なくとも一部がバイパス路23を介して空気排出路22に送られるように燃料電池システム1における空気の流通経路を制御することが好ましい。それにより、燃料電池10に不必要に空気が送られることを抑制することができるので、燃料電池10における燃料電池セルの電解質膜の乾燥を抑制した上で当該空間内における水素濃度を低下させることができる。
【0092】
以上、添付図面を参照しつつ本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されないことは勿論であり、特許請求の範囲に記載された範疇における各種の変更例または修正例についても、本発明の技術的範囲に属することは言うまでもない。
【0093】
例えば、上記では、図1を参照して、燃料電池システム1の構成について説明したが、本発明に係る燃料電池システムの構成は、このような例に限定されず、例えば、図1に示される燃料電池システム1に対して一部の構成要素を削除、追加または変更したものであってもよい。具体的には、本発明に係る燃料電池システムの構成は、図1に示される燃料電池システム1に対してバイパス路23を省略したもの、三方弁91または三方弁92を互いに異なる位置に別々に設けられた複数の弁に置き換えたもの、空気供給路21におけるコンプレッサ42の設置位置または設置数を変更したもの、背圧調整弁93の動作を上記で説明した例から変更したもの等であってもよい。
【0094】
また、例えば、上記では、冷媒温度センサ81により検出される冷媒の温度が燃料電池10の温度に相当する値として利用される例について説明したが、冷媒温度センサ81以外の他のセンサ(例えば、燃料電池10の一部の温度を検出するセンサや燃料電池10の温度と相関する温度以外の物理量を検出するセンサ等)の検出結果が燃料電池10の温度に相当する値として利用されてもよい。なお、その場合、燃料電池システム1の構成から冷媒温度センサ81は省略され得る。
【0095】
また、例えば、上記では、第2吸入口32により吸入される空気(つまり、第2空気)がラジエータ61により暖められる空気である例を説明したが、第2吸入口32により吸入される空気は第1空気としての外気より高温の空気であればよく、特に限定されない。例えば、第2吸入口32は、ラジエータ以外の発熱体(例えば、車両の駆動輪を駆動するモータ、バッテリ、燃料電池10本体、ヒーターまたは燃焼器等)の近傍に設けられており、当該発熱体により暖められた空気が第2吸入口32から吸入されてもよい。また、例えば、第2吸入口32は、発熱体により暖められた空気が届かない位置に設けられていてもよい。例えば、エンジンルーム内の空気は、外気より高温となっているので、第2吸入口32がエンジンルーム内においてラジエータ61等の発熱体から比較的離れた位置に設けられていても、第2吸入口32には外気より高温の空気が吸入され得る。例えば、装置が配置された空間の空気は、輻射熱や複数の発熱体の影響により、外気より高温となっているので、第2吸入口32が車室内やエンジンルーム内に設置されていれば、発熱体の近傍でなくても第2吸入口32には外気より高温の空気が吸入され得る。
【産業上の利用可能性】
【0096】
本発明は、燃料電池システムに利用できる。
【符号の説明】
【0097】
1 燃料電池システム
10 燃料電池
12 空気流路
15 冷媒流路
21 空気供給路
21a 第1供給路
21b 第2供給路
21c 第3供給路
22 空気排出路
23 バイパス路
31 第1吸入口
32 第2吸入口
41 エアフィルタ
42 コンプレッサ
51 冷媒循環路
61 ラジエータ(発熱体)
81 冷媒温度センサ
82 水素濃度センサ
91 三方弁
92 三方弁
93 背圧調整弁
100 制御装置
図1
図2
図3
図4