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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-05
(45)【発行日】2023-12-13
(54)【発明の名称】電子デバイス
(51)【国際特許分類】
   H03H 9/25 20060101AFI20231206BHJP
   H03H 9/17 20060101ALI20231206BHJP
   H03H 9/02 20060101ALI20231206BHJP
   H01L 23/02 20060101ALI20231206BHJP
【FI】
H03H9/25 A
H03H9/25 C
H03H9/17 F
H03H9/02 A
H01L23/02 C
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019175663
(22)【出願日】2019-09-26
(65)【公開番号】P2021052359
(43)【公開日】2021-04-01
【審査請求日】2022-08-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000204284
【氏名又は名称】太陽誘電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】岩渕 亮太
(72)【発明者】
【氏名】山内 基
(72)【発明者】
【氏名】宮川 卓
(72)【発明者】
【氏名】菊地 努
(72)【発明者】
【氏名】丸屋 優樹
【審査官】志津木 康
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-021998(JP,A)
【文献】特開2015-115671(JP,A)
【文献】特開2015-126381(JP,A)
【文献】特開2015-156626(JP,A)
【文献】特開2009-278016(JP,A)
【文献】特開2002-198774(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0308920(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L21/54-23/26
H03H3/007-3/10
H03H9/00-9/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持基板と、
前記支持基板上に設けられた圧電層と、
前記圧電層の前記支持基板とは反対側の面上に設けられた電極を含む機能素子と、
平面視して、前記圧電層及び前記機能素子を囲んで前記支持基板上に設けられた金属製の枠体と、
前記支持基板とで空隙を挟み前記枠体上に設けられ、前記機能素子に前記空隙を介して直接対向し、前記機能素子を前記空隙内に封止する金属製のリッドと、
前記空隙内において前記支持基板と前記リッドとの間に設けられた柱状体と、を備える電子デバイス。
【請求項2】
前記圧電層は、前記圧電層を貫通する貫通孔を有し、
前記柱状体は、前記貫通孔において前記支持基板と前記リッドとの間に設けられる、請求項1に記載の電子デバイス。
【請求項3】
支持基板と、
前記支持基板上に設けられた圧電層と、
前記圧電層の表面上に設けられた電極を含む機能素子と、
平面視して、前記圧電層及び前記機能素子を囲んで前記支持基板上に設けられた金属製の枠体と、
前記支持基板とで空隙を挟み前記枠体上に設けられ、前記機能素子を前記空隙内に封止する金属製のリッドと、
前記空隙内において前記支持基板と前記リッドとの間に設けられた柱状体と、を備え、
前記圧電層は、前記圧電層を貫通する貫通孔を有し、
前記柱状体は、前記貫通孔において前記支持基板と前記リッドとの間に設けられ、
前記柱状体の一方の端面は前記支持基板に接し、他方の端面は前記リッドに接する、電子デバイス。
【請求項4】
前記柱状体の高さは、前記支持基板の上面から前記機能素子の前記電極の上面までの距離よりも大きい、請求項1から3のいずれか一項に記載の電子デバイス。
【請求項5】
前記柱状体は前記圧電層から離れて設けられる、請求項1から4のいずれか一項に記載の電子デバイス。
【請求項6】
支持基板と、
前記支持基板上に設けられた圧電層と、
前記圧電層の表面上に設けられた電極を含む機能素子と、
平面視して、前記圧電層及び前記機能素子を囲んで前記支持基板上に設けられた金属製の枠体と、
前記支持基板とで空隙を挟み前記枠体上に設けられ、前記機能素子を前記空隙内に封止する金属製のリッドと、
前記空隙内において前記支持基板と前記リッドとの間に設けられた柱状体と、を備え、
前記圧電層は、底面に前記圧電層が存在する凹部を有し、
前記柱状体は、前記凹部において前記支持基板と前記リッドとの間に設けられる、電子デバイス。
【請求項7】
前記リッドはグランドに接続され、
前記柱状体は、金属製で、前記リッドから前記支持基板に向かって幅が狭まる形状をしている、請求項1から6のいずれか一項に記載の電子デバイス。
【請求項8】
前記柱状体は、前記リッドの前記枠体よりも内側に位置する領域の重心に位置して前記支持基板と前記リッドとの間に設けられる、請求項1から7のいずれか一項記載の電子デバイス。
【請求項9】
前記支持基板は、サファイア基板、アルミナ基板、スピネル基板、石英基板、水晶基板、又はシリコン基板であり、
前記圧電層は、単結晶タンタル酸リチウム層又は単結晶ニオブ酸リチウム層であり、
前記機能素子は、前記電極として前記圧電層上に設けられた櫛型電極を含む弾性波素子である、請求項1から8のいずれか一項に記載の電子デバイス。
【請求項10】
前記機能素子は、前記電極として前記圧電層を挟む下部電極及び上部電極を含む圧電薄膜共振子である、請求項1から8のいずれか一項記載の電子デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
基板上に設けられた弾性波素子等の機能素子との間に空隙が形成されるようにリッド(蓋)を設け、空隙内に機能素子を封止する電子デバイスが知られている(例えば、特許文献1から5)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-58911号公報
【文献】特開2014-90340号公報
【文献】特開2014-143640号公報
【文献】国際公開第2009/090895号
【文献】特開2016-201780号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
空隙上に金属製のリッドが設けられる構造では、リッドに圧力が加わった場合にリッドが撓むことがある。リッドが撓むことで、リッドが機能素子等と接触し、特性が劣化してしまうことがある。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、リッドの撓みを低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、支持基板と、前記支持基板上に設けられた圧電層と、前記圧電層の前記支持基板とは反対側の面上に設けられた電極を含む機能素子と、平面視して、前記圧電層及び前記機能素子を囲んで前記支持基板上に設けられた金属製の枠体と、前記支持基板とで空隙を挟み前記枠体上に設けられ、前記機能素子に前記空隙を介して直接対向し、前記機能素子を前記空隙内に封止する金属製のリッドと、前記空隙内において前記支持基板と前記リッドとの間に設けられた柱状体と、を備える電子デバイスである。
【0007】
上記構成において、前記圧電層は、前記圧電層を貫通する貫通孔を有し、前記柱状体は、前記貫通孔において前記支持基板と前記リッドとの間に設けられる構成とすることができる。
【0008】
上記構成において、前記柱状体の高さは、前記支持基板の上面から前記機能素子の前記電極の上面までの距離よりも大きい構成とすることができる。
【0009】
上記構成において、前記柱状体は前記圧電層から離れて設けられる構成とすることができる。
【0010】
本発明は、支持基板と、前記支持基板上に設けられた圧電層と、前記圧電層の表面上に設けられた電極を含む機能素子と、平面視して、前記圧電層及び前記機能素子を囲んで前記支持基板上に設けられた金属製の枠体と、前記支持基板とで空隙を挟み前記枠体上に設けられ、前記機能素子を前記空隙内に封止する金属製のリッドと、前記空隙内において前記支持基板と前記リッドとの間に設けられた柱状体と、を備え、前記圧電層は、前記圧電層を貫通する貫通孔を有し、前記柱状体は、前記貫通孔において前記支持基板と前記リッドとの間に設けられ、前記柱状体の一方の端面は前記支持基板に接し、他方の端面は前記リッドに接する、電子デバイスである
【0011】
本発明は、支持基板と、前記支持基板上に設けられた圧電層と、前記圧電層の表面上に設けられた電極を含む機能素子と、平面視して、前記圧電層及び前記機能素子を囲んで前記支持基板上に設けられた金属製の枠体と、前記支持基板とで空隙を挟み前記枠体上に設けられ、前記機能素子を前記空隙内に封止する金属製のリッドと、前記空隙内において前記支持基板と前記リッドとの間に設けられた柱状体と、を備え、前記圧電層は、底面に前記圧電層が存在する凹部を有し、前記柱状体は、前記凹部において前記支持基板と前記リッドとの間に設けられる、電子デバイスである
【0012】
上記構成において、前記リッドはグランドに接続され、前記柱状体は、金属製で、前記リッドから前記支持基板に向かって幅が狭まる形状をしている構成とすることができる。
【0013】
上記構成において、前記柱状体は、前記リッドの前記枠体よりも内側に位置する領域の重心に位置して前記支持基板と前記リッドとの間に設けられる構成とすることができる。
【0014】
上記構成において、前記支持基板は、サファイア基板、アルミナ基板、スピネル基板、石英基板、水晶基板、又はシリコン基板であり、前記圧電層は、単結晶タンタル酸リチウム層又は単結晶ニオブ酸リチウム層であり、前記機能素子は、前記電極として前記圧電層上に設けられた櫛型電極を含む弾性波素子である構成とすることができる。
【0015】
上記構成において、前記機能素子は、前記電極として前記圧電層を挟む下部電極及び上部電極を含む圧電薄膜共振子である構成とすることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、リッドの撓みを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1(a)及び図1(b)は、実施例1に係る弾性波デバイスの断面図及び平面図である。
図2図2は、実施例1における弾性波素子の平面図である。
図3図3(a)はフィルタの回路図、図3(b)はディプレクサの回路図である。
図4図4(a)から図4(d)は、実施例1に係る弾性波デバイスの製造方法を示す断面図(その1)である。
図5図5(a)から図5(c)は、実施例1に係る弾性波デバイスの製造方法を示す断面図(その2)である。
図6図6(a)及び図6(b)は、比較例に係る弾性波デバイスの断面図及び平面図である。
図7図7は、比較例に係る弾性波デバイスで生じる課題を説明する断面図である。
図8図8(a)から図8(c)は、シミュレーションAに用いたモデルの斜視図、平面図、及び断面図である。
図9図9(a)及び図9(b)は、シミュレーションAにおけるリッドの撓みを示す図である。
図10図10(a)及び図10(b)は、シミュレーションBに用いたモデルの平面図及び断面図である。
図11図11(a)及び図11(b)は、シミュレーションBにおけるリッドの撓みを示す図である。
図12図12は、実施例1の変形例1に係る弾性波デバイスの平面図である。
図13図13は、シミュレーションCに用いたモデルの平面図である。
図14図14(a)及び図14(b)は、シミュレーションCにおけるリッドの撓みを示す図である。
図15図15は、実施例1の変形例2に係る弾性波デバイスの平面図である。
図16図16は、シミュレーションDに用いたモデルの平面図である。
図17図17(a)及び図17(b)は、シミュレーションDにおけるリッドの撓みを示す図である。
図18図18は、実施例2に係る弾性波デバイスの断面図である。
図19図19は、実施例3に係る弾性波デバイスの断面図である。
図20図20は、実施例4に係る弾性波デバイスの断面図である。
図21図21は、実施例5に係る弾性波デバイスの断面図である。
図22図22(a)から図22(k)は、柱状体の形状の例を示す平面図である。
図23図23(a)から図23(g)は、柱状体の形状の例を示す側面図である。
図24図24(a)及び図24(b)は、柱状体の配置の例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照し、本発明の実施例について、電子デバイスとして弾性波デバイスを例に説明する。
【実施例1】
【0019】
図1(a)及び図1(b)は、実施例1に係る弾性波デバイスの断面図及び平面図である。図1(b)は、リッド24、枠体20、圧電層13、及び柱状体30を主に示している。図1(a)及び図1(b)のように、実施例1の弾性波デバイス100は、支持基板10の上面11上に圧電層13が接合されている。支持基板10は、例えばサファイア基板、アルミナ基板、スピネル基板、石英基板、水晶基板、又はシリコン基板である。サファイア基板は単結晶のAlを主成分とする基板である。アルミナ基板は多結晶のAlを主成分とする基板である。スピネル基板は単結晶又は多結晶のMgAlを主成分とする基板である。石英基板はアモルファスのSiOを主成分とする基板である。水晶基板は単結晶のSiOを主成分とする基板である。圧電層13は、例えば単結晶タンタル酸リチウム層又は単結晶ニオブ酸リチウム層である。支持基板10の線膨張係数は圧電層13の線膨張係数より小さい。これにより、弾性波デバイス100の周波数温度係数を低減できる。圧電層13と支持基板10との間に酸化シリコン又は窒化アルミニウム等の絶縁体層を設けてもよい。このように、圧電層13は支持基板10に直接又は間接的に接合されている。
【0020】
圧電層13の上面14上に1又は複数の弾性波素子15が設けられている。支持基板10の周縁領域には圧電層13が設けられていない。平面視において、圧電層13及び弾性波素子15を囲むように支持基板10上に枠体20が設けられている。枠体20は圧電層13から離れて支持基板10上に設けられている。枠体20は、環状金属層21及び環状接合層22を備える。環状金属層21は支持基板10の上面11に接触している。環状接合層22は環状金属層21上に設けられている。
【0021】
支持基板10の下面12上に端子18が設けられている。端子18は、弾性波素子15を外部と電気的に接続するためのフットパッドである。支持基板10を貫通するビア配線16が設けられている。ビア配線16の一端は端子18に接続する。ビア配線16の他端は圧電層13の上面14から支持基板10の上面11に延在する配線17に接続する。これにより、弾性波素子15は配線17及びビア配線16を介して端子18に電気的に接続されている。支持基板10を貫通するビア配線16aが設けられている。ビア配線16aは端子18aと枠体20とを電気的に接続する。
【0022】
枠体20上に、支持基板10との間に空隙27を挟んでリッド24が設けられている。リッド24は枠体20に接合されている。リッド24及び枠体20により弾性波素子15は空隙27に封止される。リッド24は接合層25及び本体26を含む。接合層25は環状接合層22と接合する。本体26は、接合層25より厚く、リッド24が潰れ難くなるように接合層25より硬い材料で形成される。
【0023】
配線17、ビア配線16及び16a、端子18及び18a、並びに環状金属層21は、例えば銅層、アルミニウム層、白金層、ニッケル層、又は金層等の金属層である。環状接合層22は、例えば金錫、銀錫、錫、又は錫銀銅等のロウ材金属層である。接合層25は、環状接合層22と接合する金属層であり、例えば金層である。本体26は、線膨張係数の小さい金属層であり、例えばコバール層である。枠体20及びリッド24が金属であるため、ビア配線16aにグランド電位を供給することにより、枠体20及びリッド24にシールド効果を付与することができる。また、枠体20及びリッド24が金属であることで、弾性波素子15を空隙27に気密性良く封止することができる。なお、枠体20及びリッド24は支持基板10上では弾性波素子15に電気的に接続されていない。
【0024】
圧電層13は、圧電層13を上面14から下面にかけて貫通する貫通孔40を有する。貫通孔40は、圧電層13の一部に開口状に設けられている場合を例に示すが、圧電層13を複数に分離するように設けられていてもよい。貫通孔40では例えば支持基板10の上面11が露出している。貫通孔40において支持基板10とリッド24との間に柱状体30が設けられている。柱状体30は空隙27内に位置して設けられている。柱状体30は圧電層13から離れて設けられている。柱状体30は、金属層31及び接合層32を備える。金属層31は支持基板10の上面11に接触している。接合層32は金属層31上に設けられている。これにより、柱状体30の一端は支持基板10の上面11に接触し、他端はリッド24に接合している。
【0025】
金属層31は、例えば銅層、アルミニウム層、白金層、ニッケル層、又は金層等の金属層であり、一例として環状金属層21と同じ材料で形成されている。接合層32は、例えば金錫、銀錫、錫、又は錫銀銅等のロウ材金属層であり、一例として環状接合層22と同じ材料で形成されている。柱状体30は、金属で形成される場合に限られず、セラミック等の絶縁材料で形成されてもよい。
【0026】
枠体20は、圧電層13の周りを略長方形の枠状に延在することで圧電層13及び弾性波素子15を囲んでいる。このため、リッド24の枠体20よりも内側に位置する内側領域29の支持基板10側の面は略長方形状をしている。略長方形状とは、製造誤差程度に頂点が丸みを帯びている場合及び/又は各辺が曲線となっている場合等も含む。リッド24の内側領域29は空隙27に露出している。柱状体30はリッド24の内側領域29の重心に位置して支持基板10とリッド24との間に設けられている。
【0027】
支持基板10は例えばサファイア基板であり、その厚さは例えば50μmから300μmである。圧電層13は例えば42°回転YカットX伝搬タンタル酸リチウム層であり、その厚さは例えば0.5μmから30μmであり例えば弾性波の波長以下である。枠体20の高さは例えば10μmから30μmである。環状金属層21は、例えば支持基板10側から厚さが5μmから20μmの銅層と厚さが2.5μmのニッケル層との積層である。環状接合層22は、例えば厚さが3.5μmの金錫層である。リッド24の接合層25は、例えば厚さが2μmの金層である。リッド24の本体26は、例えば厚さが30μmから100μmのコバール板である。ビア配線16及び16aは、例えば直径が30μmから100μmの銅である。端子18は、例えば支持基板10側から厚さが2μmの銅層と厚さが5μmのニッケル層と厚さが0.3μmの金層との積層である。
【0028】
枠体20の幅は例えば20μmから30μmである。支持基板10の側面及びリッド24の側面と枠体20の側面との間の距離は例えば5μmから10μmである。支持基板10の大きさは、例えば1.2mm×1.0mmである。支持基板10の下面12とリッド24の上面との間の距離は例えば0.15mmである。
【0029】
柱状体30の高さは、枠体20の高さと略同じであり、例えば10μmから30μmである。柱状体30の長さ及び幅は20μmから30μmである。金属層31は、例えば環状金属層21と同じで支持基板10側から厚さが5μmから20μmの銅層と厚さが2.5μmのニッケル層との積層である。接合層32は、例えば環状接合層22と同じで厚さが3.5μmの金錫層である。柱状体30と圧電層13との距離Dは例えば1μmから10μmである。
【0030】
図2は、実施例1における弾性波素子の平面図である。図2のように、弾性波素子15は弾性表面波共振子である。圧電層13の上面14上にIDT(Interdigital Transducer)50と反射器51が形成されている。IDT50は、互いに対向する一対の櫛型電極52を有する。櫛型電極52は、複数の電極指53と、複数の電極指53を接続するバスバー54と、を有する。反射器51は、IDT50の両側に設けられている。IDT50が圧電層13に弾性表面波を励振する。一対の櫛型電極52のうち一方の櫛型電極の電極指53のピッチがほぼ弾性波の波長λとなる。すなわち、弾性波の波長λは、一対の櫛型電極52の電極指53のピッチの2倍にほぼ等しい。IDT50及び反射器51は、例えばアルミニウム膜、銅膜、又はモリブデン膜等の金属膜により形成される。圧電層13の上面14上にIDT50及び反射器51を覆う保護膜又は温度補償膜が設けられていてもよい。
【0031】
圧電層13の上面14上に形成された複数の弾性波素子15によってフィルタが形成されていてもよいし、デュプレクサが形成されていてもよい。図3(a)はフィルタの回路図、図3(b)はディプレクサの回路図である。図3(a)のように、入力端子Tinと出力端子Toutとの間に1又は複数の直列共振器S1からS4が直列に接続されている。入力端子Tinと出力端子Toutとの間に1又は複数の並列共振器P1からP3が並列に接続されている。直列共振器S1からS4及び並列共振器P1からP3が弾性波素子15である。直列共振器及び並列共振器の個数等は適宜設定できる。フィルタとしてラダー型フィルタを例に説明したが、フィルタは多重モード型フィルタであってもよい。
【0032】
図3(b)のように、共通端子Antと送信端子Txとの間に送信フィルタ60が接続されている。共通端子Antと受信端子Rxとの間に受信フィルタ61が接続されている。送信フィルタ60は、送信端子Txから入力された高周波信号のうち送信帯域の信号を送信信号として共通端子Antに通過させ、他の周波数の信号を抑圧する。受信フィルタ61は、共通端子Antから入力された高周波信号のうち受信帯域の信号を受信信号として受信端子Rxに通過させ、他の周波数の信号を抑圧する。なお、マルチプレクサとしてデュプレクサを例に示したがトリプレクサ又はクワッドプレクサであってもよい。
【0033】
[製造方法]
図4(a)から図5(c)は、実施例1に係る弾性波デバイスの製造方法を示す断面図である。図4(a)のように、支持基板10の上面11に例えばレーザ光を照射してビアを形成し、ビア内に銅等の金属層を例えばめっき法を用い形成する。その後、支持基板10の上面11が露出するように金属層の上面を例えばCMP(Chemical Mechanical Polishing)法を用い平坦化する。これにより、支持基板10にビア配線16及び16aが形成される。
【0034】
図4(b)のように、支持基板10の上面11に圧電基板を例えば表面活性化法を用い常温接合する。支持基板10と圧電基板とは数nmのアモルファス層等を介し直接接合されてもよいし、絶縁層を介し間接的に接合されてもよい。その後、圧電基板の上面を例えばCMP法を用い研磨する。これにより、支持基板10の上面11に直接又は間接的に接合された圧電層13が形成される。
【0035】
図4(c)のように、圧電層13の一部を例えばエッチング法を用いて除去する。これにより、支持基板10の周縁領域の圧電層13が除去され、ビア配線16及び16aが露出する。また、圧電層13に貫通孔40が形成される。貫通孔40では例えば支持基板10の上面11が露出している。
【0036】
図4(d)のように、圧電層13の上面14上に弾性波素子15を形成する。圧電層13の上面14からビア配線16まで延在し、弾性波素子15とビア配線16を電気的に接続する配線17を形成する。
【0037】
図5(a)のように、圧電層13及び弾性波素子15を囲むように支持基板10の上面11上に、環状金属層21及び環状接合層22を形成する。これにより、枠体20が形成される。環状金属層21及び環状接合層22の形成と同時に、圧電層13の貫通孔40で露出した支持基板10の上面11上に、環状金属層21と同じ材料からなる金属層31と、環状接合層22と同じ材料からなる接合層32と、を形成する。これにより、貫通孔40に柱状体30が形成される。
【0038】
図5(b)のように、枠体20の環状接合層22上にリッド24を接合する。これにより、リッド24及び枠体20により弾性波素子15が空隙27に封止される。リッド24は柱状体30の接合層32にも接合される。
【0039】
図5(c)のように、支持基板10の下面12を例えばCMP法を用い研磨する。これにより、ビア配線16及び16aが支持基板10の下面12から露出する。支持基板10の下面12上にビア配線16及び16aに接続する端子18及び18aを形成する。以上により、実施例1の弾性波デバイス100が製造される。
【0040】
[比較例]
図6(a)及び図6(b)は、比較例に係る弾性波デバイスの断面図及び平面図である。図6(b)は、リッド24、枠体20、及び圧電層13を主に示している。図6(a)及び図6(b)のように、比較例の弾性波デバイス1000では、支持基板10とリッド24との間に柱状体30が設けられていない。その他の構成は、実施例1の弾性波デバイス100と同じであるため説明を省略する。
【0041】
図7は、比較例に係る弾性波デバイスで生じる課題を説明する断面図である。例えば配線基板上に実装された弾性波デバイス1000を含む複数の電子部品をモールド樹脂で封止するとき、配線基板を樹脂封止装置のキャビティ内に配置した後にキャビティ内に樹脂を流し込むことを行う。キャビティ内に樹脂を流し込むときに、弾性波デバイス1000に圧力が加わる。空隙27の気密性を向上させるために枠体20及びリッド24は金属製であることが好ましいが、リッド24が金属製である場合では展延性が高くなる。このため、リッド24に圧力が加わることによって、図7のように、リッド24が撓むことがある。リッド24が撓んだ場合、リッド24が弾性波素子15及び/又は配線17に接触して特性が劣化してしまうことがある。
【0042】
[シミュレーション]
リッドに圧力が加わった場合の撓みについて計算したシミュレーションについて説明する。シミュレーションは、枠体20とリッド24のみを考慮した簡易モデルを用いて行った。図8(a)から図8(c)は、シミュレーションAに用いたモデルの斜視図、平面図、及び断面図である。図8(a)から図8(c)のように、リッド24は、長さXが1.284mm、幅Yが0.784mm、高さZが30μmの直方体形状をしているとした。枠体20の幅Dは23μm、高さHは20μmであるとした。リッド24は、ヤング率が138GPa、ポワソン比が0.317のコバールで形成されているとした。枠体20は、ヤング率が110GPa、ポワソン比が0.343の銅で形成されているとした。図8(c)のように、枠体20の下面28を固定し、リッド24の上面に圧力Fを加えたときのリッド24の撓みについてシミュレーションした。圧力Fは、モールド樹脂形成時の圧力に相当する6MPaとした。
【0043】
図9(a)及び図9(b)は、シミュレーションAにおけるリッドの撓みを示す図である。図9(a)は、リッド24が変形していない箇所を基準とし、この基準からの撓み量を示した側面図であり、図9(b)は、等高線図である(以下のシミュレーション結果においても同様である)。撓み量は、枠体20側への撓みをマイナスとして示している。図9(a)及び図9(b)のように、リッド24の内側領域29の重心に近いほど撓み量が大きくなっている。最大撓み量は-17.6μmであった。
【0044】
なお、圧力Fを静水圧試験に対応する12MPa、18MPaとしたときについてもシミュレーションを行い、この場合でも、リッド24は図9(a)及び図9(b)と同様な形状で撓むことが確認された。圧力Fを12MPaとしたときの最大撓み量は-35.2μmであり、圧力Fを18MPaとしたときの最大撓み量は-52.8μmであった。
【0045】
図10(a)及び図10(b)は、シミュレーションBに用いたモデルの平面図及び断面図である。図10(a)及び図10(b)のように、シミュレーションBでは、リッド24の内側領域29の重心に柱状体30が設けられているとした。柱状体30は、長さ23μm、幅23μm、高さ20μmの直方体形状であるとした。柱状体30は、ヤング率が110GPa、ポワソン比が0.343の銅で形成されているとした。その他については、シミュレーションAと同じ構造とした。図10(b)のように、枠体20の下面28及び柱状体30の下面38を固定し、リッド24の上面に6MPaの圧力Fを加えたときのリッド24の撓みについてシミュレーションした。
【0046】
図11(a)及び図11(b)は、シミュレーションBにおけるリッドの撓みを示す図である。図11(a)及び図11(b)のように、柱状体30を設けることで、最大撓み量は-6.4μmとなった。
【0047】
比較例の弾性波デバイス1000は、図6(a)及び図6(b)のように、柱状体30が設けられていない。この場合、図9(a)及び図9(b)のように、リッド24に圧力Fが加わったときのリッド24の撓みが大きくなる。このため、比較例の弾性波デバイス1000では、図7のように、リッド24が撓んで弾性波素子15及び/又は配線17に接触し、特性が劣化する恐れがある。
【0048】
一方、実施例1の弾性波デバイス100によれば、図1(a)及び図1(b)のように、空隙27内において支持基板10とリッド24との間に柱状体30が設けられている。この場合、図11(a)及び図11(b)のように、リッド24に圧力Fが加わった場合でも、リッド24に生じる撓みを低減できる。よって、リッド24が弾性波素子15及び配線17に接触することを抑制でき、特性の劣化を抑制できる。柱状体30の長さ及び幅は、リッド24の撓みを低減する点から、20μm以上が好ましく、30μm以上がより好ましく、40μm以上が更に好ましい。一方、圧電層13の面積の減少を抑制する点から、柱状体30の長さ及び幅は、100μm以下が好ましく、80μm以下がより好ましく、60μm以下が更に好ましい。
【0049】
圧電層13は圧電層13を貫通する貫通孔40を有し、柱状体30は貫通孔40において支持基板10とリッド24との間に設けられることが好ましい。これにより、リッド24に圧力が加わって柱状体30が押された場合でも圧電層13に負荷が加わることが抑制される。よって、圧電層13にクラックが発生することを抑制できる。
【0050】
柱状体30の高さは、支持基板10の上面11から弾性波素子15を形成する櫛型電極52の上面までの距離よりも大きいことが好ましい。これにより、リッド24が撓んだ場合でも、リッド24が弾性波素子15に接することを抑制でき、特性の劣化を抑制できる。
【0051】
圧電層13は単結晶タンタル酸リチウム層又は単結晶ニオブ酸リチウム層である。この場合、圧電層13は劈開性を有するために負荷が加わると割れ易い。よって、このような場合では、柱状体30は、圧電層13の貫通孔40において支持基板10とリッド24との間に設けられることが好ましい。また、圧電層13の厚さが弾性波の波長λ以下の場合、圧電層13は負荷が加わると割れ易い。よって、このような場合においても、柱状体30は、圧電層13の貫通孔40において支持基板10とリッド24との間に設けられることが好ましい。
【0052】
リッド24によって柱状体30が押された場合において圧電層13に負荷が加わることを抑制するために、柱状体30は圧電層13から離れて設けられることが好ましい。圧電層13への負荷の抑制及び弾性波デバイスの大型化の抑制の点から、柱状体30と圧電層13との間の距離Dは、2μm以上10μm以下が好ましく、3μm以上8μm以下がより好ましく、4μm以上6μm以下が更に好ましい。
【0053】
柱状体30は支持基板10又はリッド24の一方に接触し、他方には接触せずに隙間が形成されている場合でもよいが、リッド24の撓みを効果的に低減するために、柱状体30の一方の端面は支持基板10に接し、他方の端面はリッド24に接することが好ましい。
【0054】
柱状体30は、リッド24の内側領域29の重心に位置して支持基板10とリッド24との間に設けられることが好ましい。これにより、リッド24に圧力が加わった場合でも、リッド24の撓みを効果的に低減できる。
【0055】
弾性波デバイス100の低背化のために、リッド24の厚さは支持基板10の厚さよりも小さい場合が好ましい。この場合、リッド24は圧力が加わった場合に撓み易くなる。したがって、このような場合では、柱状体30を設けることが好ましい。
【0056】
柱状体30の下には配線17が設けられていない場合が好ましい。これにより、リッド24に圧力が加わって柱状体30が押された場合でも、配線17を介した圧電層13への応力の伝搬が抑制され、圧電層13にクラックが発生することを抑制できる。
【0057】
[実施例1の変形例1]
図12は、実施例1の変形例1に係る弾性波デバイスの平面図である。図12は、リッド24、枠体20、圧電層13、及び柱状体30a、30bを主に示している。図12のように、実施例1の変形例1の弾性波デバイス110では、柱状体30a及び30bが、リッド24の内側領域29を平面視した場合における内側領域29の長手方向に沿う仮想的な直線70上に位置して支持基板10とリッド24との間に設けられている。柱状体30a及び30bは、例えばリッド24の内側領域29の重心71に対して対称な位置に設けられている。例えば、枠体20と柱状体30aとの間の距離Aと、柱状体30aと30bとの間の距離Bと、柱状体30bと枠体20との間の距離Cとは、略同じ大きさになっている。その他の構成は、実施例1の弾性波デバイス100と同じであるため説明を省略する。
【0058】
[シミュレーション]
図13は、シミュレーションCに用いたモデルの平面図である。シミュレーションCでは、リッド24の内側領域29を平面視した場合における内側領域29の長手方向に沿う仮想的な直線70上に位置して柱状体30a及び30bが設けられているとした。柱状体30a及び30bは、リッド24の内側領域29の重心71に対称に位置して設けられているとした。枠体20と柱状体30aの中心との間の距離X1、柱状体30aと30bとの中心間の距離X2、及び柱状体30bの中心と枠体20との間の距離X3は、全て同じ大きさの0.448mmであるとした。柱状体30a及び30bは、シミュレーションBと同様に、長さ23μm、幅23μm、高さ20μmの直方体形状をしていて、ヤング率が110GPa、ポワソン比が0.343の銅で形成されているとした。その他については、シミュレーションAと同じ構造とした。枠体20及び柱状体30a、30bの下面を固定し、リッド24の上面に6MPaの圧力を加えたときのリッド24の撓みについてシミュレーションした。
【0059】
図14(a)及び図14(b)は、シミュレーションCにおけるリッドの撓みを示す図である。図14(a)及び図14(b)のように、柱状体30a及び30bを設けることで、最大撓み量は-2.5μmに低減された。
【0060】
実施例1の変形例1のように、柱状体30a及び30bが、リッド24の内側領域29の長手方向に沿う仮想的な直線70上に位置して支持基板10とリッド24との間に設けられていてもよい。これにより、リッド24の撓みを低減できる。リッド24の撓みを低減する点から、柱状体30a及び30bは、リッド24の内側領域29の重心71に対して対称な位置に設けられることが好ましい。また、枠体20と柱状体30aとの間の距離Aと、柱状体30aと30bとの間の距離Bと、柱状体30bと枠体20との間の距離Cと、が略同じになるように、柱状体30aと30bが設けられることが好ましい。略同じとは製造誤差程度の異なる場合を含む。
【0061】
[実施例1の変形例2]
図15は、実施例1の変形例2に係る弾性波デバイスの平面図である。図15のように、実施例1の変形例2の弾性波デバイス120では、柱状体30c及び30dが、リッド24の内側領域29を平面視した場合における内側領域29の対角線72上に位置して支持基板10とリッド24との間に設けられている。柱状体30c及び30dは、例えばリッド24の内側領域29の重心71に対して対称な位置に設けられている。例えば、内側領域29の角部と柱状体30cとの間の距離Aと、柱状体30cと30dとの間の距離Bと、柱状体30dと内側領域29の角部との間の距離Cとは、略同じ大きさになっている。その他の構成は、実施例1の弾性波デバイス100と同じであるため説明を省略する。
【0062】
[シミュレーション]
図16は、シミュレーションDに用いたモデルの平面図である。シミュレーションDでは、リッド24の内側領域29を平面視した場合における内側領域29の対角線72上に位置して、柱状体30c及び30dが設けられているとした。柱状体30c及び30dは、リッド24の内側領域29の重心71に対して対称に位置して設けられているとした。リッド24の内側領域29の角部と柱状体30cの中心との間の距離X1、柱状体30cと30dとの中心間の距離X2、及び柱状体30dの中心とリッド24の内側領域29の角部との間の距離X3は、全て同じ大きさで0.478mmであるとした。柱状体30c及び30dは、シミュレーションBと同様に、長さ23μm、幅23μm、高さ20μmの直方体形状をしていて、ヤング率が110GPa、ポワソン比が0.343の銅で形成されているとした。その他については、シミュレーションAと同じ構造とした。枠体20及び柱状体30c、30dの下面を固定し、リッド24の上面に6MPaの圧力を加えたときのリッド24の撓みについてシミュレーションした。
【0063】
図17(a)及び図17(b)は、シミュレーションDにおけるリッドの撓みを示す図である。図17(a)及び図17(b)のように、柱状体30c及び30dを設けることで、最大撓み量は-4.7μmに低減された。
【0064】
実施例1の変形例2のように、柱状体30c及び30dが、リッド24の内側領域29の対角線72上に位置して支持基板10とリッド24との間に設けられていてもよい。これにより、リッド24の撓みを低減できる。リッド24の撓みを低減する点から、柱状体30c及び30dは、リッド24の内側領域29の重心71に対して対称な位置に設けられることが好ましい。また、リッド24の内側領域29の角部と柱状体30aとの間の距離Aと、柱状体30aと30bとの間の距離Bと、柱状体30bとリッド24の内側領域29の角部との間の距離Cが略同じになるように、柱状体30cと30dが設けられることが好ましい。
【0065】
実施例1の変形例1及び変形例2では、2つの柱状体が設けられている場合を例に示したが、3つ以上の複数の柱状体が設けられていてもよい。
【実施例2】
【0066】
図18は、実施例2に係る弾性波デバイスの断面図である。図18のように、実施例2の弾性波デバイス200では、柱状体30eがリッド24から支持基板10に向かって幅が狭まる形状をしている。柱状体30eの側面と支持基板10の上面11との間の柱状体30e側の角度θは、例えば90°より大きく130°以下であってもよいし、95°以上120°以下であってもよいし、100°以上110°以下であってもよい。その他の構成は、実施例1の弾性波デバイス100と同じであるため説明を省略する。
【0067】
実施例2によれば、柱状体30eはリッド24から支持基板10に向かって幅が狭まる形状をしている。リッド24は、シールドのためにグランドに接続されることが好ましい。柱状体30eは、剛性を高めるために金属製であることが好ましい。この場合、柱状体30eはグランド電位となる。このような場合に、弾性波素子15及び配線17と柱状体30eとの間の寄生容量を低減するために、柱状体30eをリッド24から支持基板10に向かって幅が狭まる形状とし、柱状体30eと弾性波素子15及び配線17との間の距離を広くすることが好ましい。なお、柱状体30eは支持基板10上では弾性波素子15に電気的に接続されていない。
【実施例3】
【0068】
図19は、実施例3に係る弾性波デバイスの断面図である。図19のように、実施例3の弾性波デバイス300では、貫通孔40における圧電層13aの側面は、支持基板10に向かって広がるように傾斜したテーパ形状となっている。圧電層13aの側面と支持基板10の上面11との間の圧電層13a側の角度θは、90°より小さく65°以上であってもよいし、85°以下70°以上であってもよし、80°以下75°以上であってもよい。その他の構成は、実施例1の弾性波デバイス100と同じであるため説明を省略する。
【0069】
実施例3によれば、貫通孔40における圧電層13aの側面は支持基板10に向かって広がるように傾斜している。これにより、弾性波素子15及び配線17と柱状体30との間の距離を広くすることができ、弾性波素子15及び配線17と柱状体30との間の寄生容量を低減できる。
【0070】
実施例3においても、実施例2のように、リッド24から支持基板10に向かって幅が狭まる形状の柱状体30eを用いてもよい。
【実施例4】
【0071】
図20は、実施例4に係る弾性波デバイスの断面図である。図20のように、実施例4の弾性波デバイス400では、圧電層13bは、貫通孔40を有さず、上面14に凹部19を有する。凹部19の底面には圧電層13bが存在する。柱状体30は、凹部19で支持基板10とリッド24との間に設けられている。例えば、柱状体30の一方の端面は凹部19の底面に接し、他方の端面はリッド24に接している。凹部19の深さは、例えば圧電層13bの厚さの1/4以上3/4以下であってもよいし、1/3以上2/3以下であってもよい。その他の構成は、実施例1の弾性波デバイス100と同じであるため説明を省略する。
【0072】
実施例3によれば、柱状体30は、圧電層13bの凹部19において支持基板10とリッド24との間に設けられている。これにより、リッド24に圧力が加わって柱状体30が押された場合、圧電層13bの凹部19の底面に負荷が加わるようになる。このため、圧電層13bの上面14にクラックが発生することを抑制でき、弾性波素子15の特性劣化を抑制できる。
【0073】
柱状体30の高さは、凹部19の底面から弾性波素子15を形成する櫛型電極52の上面までの距離よりも大きいことが好ましい。これにより、リッド24が撓んだ場合でも、リッド24が弾性波素子15に接することを抑制でき、特性の劣化を抑制できる。
【0074】
柱状体30は圧電層13bの凹部19の底面又はリッド24の一方に接し、他方には接してなく隙間が形成されていてもよいが、リッド24の撓みを効果的に低減するために、柱状体30の一方の端面は圧電層13bの凹部19の底面に接し、他方の端面はリッド24に接することが好ましい。
【0075】
実施例4においても、実施例2のように、リッド24から支持基板10に向かって幅が狭まる形状の柱状体30eを用いてもよい。実施例3と同様に、凹部19の内側面が支持基板10に向かって広がるように傾斜していてもよい。また、実施例2から実施例4においても、実施例1の変形例1及び変形例2と同様に複数の柱状体が設けられていてもよい。
【実施例5】
【0076】
図21は、実施例5に係る弾性波デバイスの断面図である。図21のように、実施例5の弾性波デバイス500では、弾性波素子15aが支持基板10の上面11上に設けられている。支持基板10の上面11上に圧電層83が設けられている。圧電層83を挟むように下部電極82及び上部電極84が設けられている。下部電極82と支持基板10との間に空隙87が形成されている。圧電層83の少なくとも一部を挟み下部電極82と上部電極84とが対向する領域が共振領域86である。共振領域86において、下部電極82及び上部電極84は圧電層83内に厚み縦振動モードの弾性波を励振する。共振領域86以外において、下部電極82上に下部配線81が設けられ、上部電極84上に上部配線85が設けられている。なお、圧電層83の共振領域86の外周領域にQ値を高めるため又は温度補償のための挿入膜が挿入されていてもよい。
【0077】
下部電極82及び上部電極84は例えばルテニウム膜等の金属膜である。下部配線81及び上部配線85は例えば銅等の金属膜である。圧電層83は例えば窒化アルミニウム層又は酸化亜鉛層である。空隙87の代わりに弾性波を反射する音響反射膜が設けられていてもよい。弾性波素子15aは一般的に知られている方向により製造される。
【0078】
支持基板10の周縁領域には圧電層83等が設けられてなく、圧電層83等を囲むように支持基板10上に枠体20が設けられている。枠体20上にリッド24が接合されている。これにより、弾性波素子15aは空隙27に封止されている。
【0079】
圧電層83等を貫通する貫通孔90が形成されている。貫通孔90は、実施例1の貫通孔40と同様に、圧電層83等の一部に開口状に設けられていてもよいし、圧電層83等を複数に分離するように設けられていてもよい。貫通孔90では例えば支持基板10の上面11が露出している。貫通孔90において支持基板10とリッド24との間に柱状体30が設けられている。柱状体30は、圧電層83等から離れて設けられている。柱状体30の一端は支持基板10の上面11に接触し、他端はリッド24に接合している。
【0080】
柱状体30は、実施例1の変形例1及び変形例2と同様に、リッド24の内側領域29の重心に対して対称な位置に設けられている。なお、柱状体30は、実施例1と同様に、リッド24の内側領域29の重心に位置して設けられていてもよい。
【0081】
実施例1から実施例4のように、圧電層の表面上に設けられた電極を含む機能素子は、単結晶タンタル酸リチウム層又は単結晶ニオブ酸リチウム層である圧電層13~13bの上面14上に設けられた櫛型電極52を含む弾性波素子の場合でもよい。実施例5のように、機能素子は、圧電層83の上面及び下面上に設けられた下部電極82及び上部電極84を含む圧電薄膜共振子の場合でもよい。また、機能素子は、弾性波素子以外の場合でもよく、MEMS(Micro Electro Mechanical System)素子等の圧電素子の場合でもよい。なお、実施例5においても、実施例2のように、リッド24から支持基板10に向かって幅が狭まる形状の柱状体30eを用いてもよい。
【0082】
図22(a)から図22(k)は、柱状体の形状の例を示す平面図である。図22(a)から図22(k)は、図の明瞭化のためにクロスハッチングを付している。図22(a)及び図22(b)のように、柱状体30は平面視で正方形状であってもよいし、長方形状であってもよい、図22(c)及び図22(d)のように、正方形及び長方形の角部が丸みを帯びていてもよい。図22(e)及び図22(f)のように、辺が外側に膨らんだ矩形状であってもよいし、辺が内側に凹んだ矩形状であってもよい。図22(g)から図22(i)のように、円形状であってもよいし、楕円形状であってもよいし、菱形状であってもよい。図22(j)のように、十字型形状であってもよい。図22(k)のように、中空状であってもよい。
【0083】
図23(a)から図23(g)は、柱状体の形状の例を示す側面図である。図23(a)から図23(g)では、図の明瞭化のためにクロスハッチングを付している。図23(a)及び図23(b)のように、柱状体30は側面視で正方形状であってもよいし、長方形状であってもよい。図23(c)のように、リッド24から支持基板10に向かって幅が狭まるような台形状であってもよいし、図23(d)のように、リッド24から支持基板10に向かって幅が広がるような台形状であってもよい。図23(e)及び図23(f)のように、台形を2つ重ねたような形状をしていてもよい。図23(g)のように、外側に膨らんだ辺を有する矩形状であってもよい。
【0084】
図24(a)及び図24(b)は、柱状体の配置の例を示す平面図である。図24(a)のように、柱状体30はリッド24の内側領域29の周縁部に配置されていてもよい。図24(b)のように、柱状体30はリッド24の内側領域29の4隅に配置されていてもよい。
【0085】
以上、本願発明の実施形態について詳述したが、本願発明はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本願発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0086】
10 支持基板
13、13a 圧電層
15、15a 弾性波素子
16、16a ビア配線
17 配線
18、18a 端子
19 凹部
20 枠体
21 環状金属層
22 環状接合層
24 リッド
25 接合層
26 本体
27 空隙
29 内側領域
30、30a、30b、30c、30d、30e 柱状体
31 金属層
32 接合層
40 貫通孔
50 IDT
51 反射器
52 櫛型電極
53 電極指
54 バスバー
60 送信フィルタ
61 受信フィルタ
70 直線
71 重心
72 対角線
81 下部配線
82 下部電極
83 圧電層
84 上部電極
85 上部配線
86 共振領域
87 空隙
90 貫通孔
100、110、120、200、300、400、500、1000 弾性波デバイス
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24