(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-05
(45)【発行日】2023-12-13
(54)【発明の名称】制御装置、制御方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
H02P 21/22 20160101AFI20231206BHJP
【FI】
H02P21/22
(21)【出願番号】P 2019189451
(22)【出願日】2019-10-16
【審査請求日】2022-09-26
(73)【特許権者】
【識別番号】516299338
【氏名又は名称】三菱重工サーマルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】深堀 智司
(72)【発明者】
【氏名】久原 正和
(72)【発明者】
【氏名】相場 謙一
(72)【発明者】
【氏名】清水 健志
【審査官】柏崎 翔
(56)【参考文献】
【文献】特許第4764124(JP,B2)
【文献】特開2009-268198(JP,A)
【文献】特開2003-88199(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 21/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
q軸電圧指令と、d軸の誘起電圧係数にインバータ出力周波数を乗算した値との間のオフセットの変化量を低減するようにモータを制御
し、かつ、比例ゲインに基づいて前記オフセットの一巡ゲインを一定に保つ制御装置であって、
前記モータの回転速度と前記比例ゲインとの対応関係に基づいて、前記一巡ゲインを一定に保つための前記比例ゲインを特定する比例ゲイン特定部と、
前記比例ゲイン特定部が特定した前記比例ゲインに応じて前記モータを制御する電圧指令を生成する電圧指令生成部と、
を備え、
前記電圧指令生成部が生成した前記電圧指令に基づいて、前記モータを制御する制御装置。
【請求項2】
q軸電圧指令と、d軸の誘起電圧係数にインバータ出力周波数を乗算した値との間のオフセットの変化量を低減するようにモータを制御し、かつ、前記モータにおけるd軸インダクタンスに基づいて前記オフセットの一巡ゲインを一定に保つ制御装置であって、
前記モータの回転速度と前記d軸インダクタンスとの対応関係に基づいて、前記一巡ゲインを一定に保つための前記d軸インダクタンスの切り替えを特定するインダクタンス切替特定部と、
前記インダクタンス切替特定部が特定した前記d軸インダクタンスに応じて前記モータを制御する電圧指令を生成する電圧指令生成部と、
を備え、
前記電圧指令生成部が生成した前記電圧指令に基づいて、前記モータを制御する制御装置。
【請求項3】
q軸電圧指令と、d軸の誘起電圧係数にインバータ出力周波数を乗算した値との間のオフセットの変化量を低減するようにモータを制御
し、かつ、比例ゲインに基づいて前記オフセットの一巡ゲインを一定に保つことを含む制御方法であって、
前記モータの回転速度と前記比例ゲインとの対応関係に基づいて、前記一巡ゲインを一定に保つための前記比例ゲインを特定することと、
特定した前記比例ゲインに応じて前記モータを制御する電圧指令を生成することと、
生成した前記電圧指令に基づいて、前記モータを制御することと、
を含む制御方法。
【請求項4】
q軸電圧指令と、d軸の誘起電圧係数にインバータ出力周波数を乗算した値との間のオフセットの変化量を低減するようにモータを制御し、かつ、前記モータにおけるd軸インダクタンスに基づいて前記オフセットの一巡ゲインを一定に保つことを含む制御方法であって、
前記モータの回転速度と前記d軸インダクタンスとの対応関係に基づいて、前記一巡ゲインを一定に保つための前記d軸インダクタンスの切り替えを特定することと、
特定した前記d軸インダクタンスに応じて前記モータを制御する電圧指令を生成することと、
生成した前記電圧指令に基づいて、前記モータを制御することと、
を含む制御方法。
【請求項5】
コンピュータに、
q軸電圧指令と、d軸の誘起電圧係数にインバータ出力周波数を乗算した値との間のオフセットの変化量を低減するようにモータを制御
し、かつ、比例ゲインに基づいて前記オフセットの一巡ゲインを一定に保つことを実行させるプログラムであって、
前記モータの回転速度と前記比例ゲインとの対応関係に基づいて、前記一巡ゲインを一定に保つための前記比例ゲインを特定することと、
特定した前記比例ゲインに応じて前記モータを制御する電圧指令を生成することと、
生成した前記電圧指令に基づいて、前記モータを制御することと、
を実行させるプログラム。
【請求項6】
コンピュータに、
q軸電圧指令と、d軸の誘起電圧係数にインバータ出力周波数を乗算した値との間のオフセットの変化量を低減するようにモータを制御し、かつ、前記モータにおけるd軸インダクタンスに基づいて前記オフセットの一巡ゲインを一定に保つことを実行させるプログラムであって、
前記モータの回転速度と前記d軸インダクタンスとの対応関係に基づいて、前記一巡ゲインを一定に保つための前記d軸インダクタンスの切り替えを特定することと、
特定した前記d軸インダクタンスに応じて前記モータを制御する電圧指令を生成することと、
生成した前記電圧指令に基づいて、前記モータを制御することと、
を実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、制御装置、制御方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
空気調和機におけるコンプレッサ、洗濯機など多くの製品において、モータが使用されている。
特許文献1には、関連する技術として、コンプレッサモータのV/f制御に関する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、V/f制御されるモータの3相電圧指令を2相の電圧指令(d軸電圧指令とq軸電圧指令)に変換したときに、実際のモータの誘起電圧と2相の電圧指令による誘起電圧の設定値との間に差が生じている場合、モータの制御装置は、その差を小さくするようにオフセットを生じさせ、d軸電圧指令からそのオフセットが減算し、減算したd軸電圧指令によってモータを制御する。
しかしながら、コンプレッサモータが急減速した場合には、オフセットの値が短期間に急激に変化する。そのため、モータの制御装置は、その短期間において、適切なオフセットを生じさせ、d軸電圧指令からそのオフセットを減算する演算を実行することができない場合がある。この場合、d軸電圧指令が所望の値よりも低下し、モータの誘起電圧よりも早くインバータの電圧が低下して弱め界磁制御の状態になってしまう。その結果、モータ電流が増加し、モータに過電流が流れる可能性がある。
そのため、モータが急減速した場合にモータに過電流が流れることを抑制することのできる技術が求められている。
【0005】
本開示は、上記の課題を解決することのできる制御装置、制御方法及びプログラムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示に係る制御装置は、q軸電圧指令と、d軸の誘起電圧係数にインバータ出力周波数を乗算した値との間のオフセットの変化量を低減するようにモータを制御し、かつ、比例ゲインに基づいて前記オフセットの一巡ゲインを一定に保つ制御装置であって、前記モータの回転速度と前記比例ゲインとの対応関係に基づいて、前記一巡ゲインを一定に保つための前記比例ゲインを特定する比例ゲイン特定部と、前記比例ゲイン特定部が特定した前記比例ゲインに応じて前記モータを制御する電圧指令を生成する電圧指令生成部と、を備え、前記電圧指令生成部が生成した前記電圧指令に基づいて、前記モータを制御する。
本開示に係る制御装置は、q軸電圧指令と、d軸の誘起電圧係数にインバータ出力周波数を乗算した値との間のオフセットの変化量を低減するようにモータを制御し、かつ、前記モータにおけるd軸インダクタンスに基づいて前記オフセットの一巡ゲインを一定に保つ制御装置であって、前記モータの回転速度と前記d軸インダクタンスとの対応関係に基づいて、前記一巡ゲインを一定に保つための前記d軸インダクタンスの切り替えを特定するインダクタンス切替特定部と、前記インダクタンス切替特定部が特定した前記d軸インダクタンスに応じて前記モータを制御する電圧指令を生成する電圧指令生成部と、を備え、前記電圧指令生成部が生成した前記電圧指令に基づいて、前記モータを制御する。
【0007】
本開示に係る制御方法は、q軸電圧指令と、d軸の誘起電圧係数にインバータ出力周波数を乗算した値との間のオフセットの変化量を低減するようにモータを制御し、かつ、比例ゲインに基づいて前記オフセットの一巡ゲインを一定に保つことを含む制御方法であって、前記モータの回転速度と前記比例ゲインとの対応関係に基づいて、前記一巡ゲインを一定に保つための前記比例ゲインを特定することと、特定した前記比例ゲインに応じて前記モータを制御する電圧指令を生成することと、生成した前記電圧指令に基づいて、前記モータを制御することと、を含む。
本開示に係る制御方法は、q軸電圧指令と、d軸の誘起電圧係数にインバータ出力周波数を乗算した値との間のオフセットの変化量を低減するようにモータを制御し、かつ、前記モータにおけるd軸インダクタンスに基づいて前記オフセットの一巡ゲインを一定に保つことを含む制御方法であって、前記モータの回転速度と前記d軸インダクタンスとの対応関係に基づいて、前記一巡ゲインを一定に保つための前記d軸インダクタンスの切り替えを特定することと、特定した前記d軸インダクタンスに応じて前記モータを制御する電圧指令を生成することと、生成した前記電圧指令に基づいて、前記モータを制御することと、を含む。
【0008】
本開示に係るプログラムは、コンピュータに、q軸電圧指令と、d軸の誘起電圧係数にインバータ出力周波数を乗算した値との間のオフセットの変化量を低減するようにモータを制御し、かつ、比例ゲインに基づいて前記オフセットの一巡ゲインを一定に保つことを実行させるプログラムであって、前記モータの回転速度と前記比例ゲインとの対応関係に基づいて、前記一巡ゲインを一定に保つための前記比例ゲインを特定することと、特定した前記比例ゲインに応じて前記モータを制御する電圧指令を生成することと、生成した前記電圧指令に基づいて、前記モータを制御することと、を実行させる。
本開示に係るプログラムは、コンピュータに、q軸電圧指令と、d軸の誘起電圧係数にインバータ出力周波数を乗算した値との間のオフセットの変化量を低減するようにモータを制御し、かつ、前記モータにおけるd軸インダクタンスに基づいて前記オフセットの一巡ゲインを一定に保つことを実行させるプログラムであって、前記モータの回転速度と前記d軸インダクタンスとの対応関係に基づいて、前記一巡ゲインを一定に保つための前記d軸インダクタンスの切り替えを特定することと、特定した前記d軸インダクタンスに応じて前記モータを制御する電圧指令を生成することと、生成した前記電圧指令に基づいて、前記モータを制御することと、を実行させる。
【発明の効果】
【0009】
本開示の実施形態による制御装置、制御方法及びプログラムによれば、モータが急減速した場合にモータに過電流が流れることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本開示の各実施形態によるモータシステムに共通の定義の一例を示す図である。
【
図2】本開示の第1実施形態によるモータシステムの構成の一例を示す図である。
【
図3】本開示の第1実施形態による制御装置の構成の一例を示す図である。
【
図4】本開示の第1実施形態における回転速度と比例ゲインとの対応関係を示す情報の一例を示す図である。
【
図5】本開示の第1実施形態によるモータシステムの処理フローを示す図である。
【
図6】本開示の第2実施形態によるモータシステムの構成の一例を示す図である。
【
図7】本開示の第2実施形態によるモータの構成の一例を示す図である。
【
図8】本開示の第2実施形態による制御装置の構成の一例を示す図である。
【
図9】本開示の第2実施形態におけるデータテーブルの一例を示す図である。
【
図10】本開示の第2実施形態によるモータシステムの処理フローを示す図である。
【
図11】本開示の第3実施形態におけるデータテーブルの一例を示す図である。
【
図12】少なくとも1つの実施形態に係るコンピュータの構成を示す概略ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(本開示の各実施形態によるモータシステムに共通の定義及び技術について)
後述する本開示の各実施形態によるモータシステムに共通の定義及び技術について説明する。
なお、本開示の各実施形態によるモータシステムは、一般的に、V/f制御と呼ばれている、周波数を調整するときに周波数を電圧で除算した値が一定に保つことによってトルクを一定に保つモータシステムを想定している。また、本開示の各実施形態によるモータシステムは、IPM(Interior Permanent Magnet)モータ、すなわち、磁石埋め込み式のモータを想定している。
【0012】
V/f制御が行われるモータシステムでは、例えば、“特許第4764124号公報”に記載されているδ軸電圧指令vδ
*[V(ボルト)]は、次の式(1)のように表わされる。
【0013】
【0014】
ここで、Kδは比例定数、iδはδ軸電流[A(アンペア)]である。
また、“特許第4764124号公報”に記載されているγ軸電圧指令vγ
*[V]は、式(2)のように表わされる。
【0015】
【0016】
ここで、Λdはd軸の誘起電圧係数[V/(rad/s)]、ω1はインバータ出力周波数[rad/s]、Vγofsはγ軸電圧オフセットである。
また、γ軸電圧オフセットVγofsは、次の式(3)のように表される。
【0017】
【0018】
ここで、Kは比例ゲインである。
【0019】
ここで、本開示の各実施形態において“特許第4764124号公報”におけるγ-δ座標系を、
図1に示すような関係(ただし、φは0度)を定義し、d-q座標系に変換する。すなわち、本開示の各実施形態では、γ軸とq軸とが対応し、δ軸とd軸とが対応するものと定義する。
よって、以下、δ軸電圧指令v
δ
*をd軸電圧指令v
d
*、γ軸電圧指令v
γ
*をq軸電圧指令v
q
*に、δ軸電流i
δをd軸電流i
dに(式(1)~式(3)には記載されていないが、γ軸電流i
γ[A]をq軸電流i
q[A]に)それぞれ置き換えて説明する。すなわち、以下、d-q座標系であるものとして説明する。
【0020】
IPMモータの二相電圧は、一般的に次の式(4)のように表される。
【0021】
【0022】
ここで、vdはd軸電圧、vqはq軸電圧、Rは巻線抵抗[Ω(オーム)]、pは微分演算子(d/dt)、Lqはq軸インダクタンス[H(ヘンリー)]、Ldはd軸インダクタンス[H]、nは極対数、ωmは回転速度[rad/s]である。
【0023】
式(4)をq軸電圧vqについて整理すると、次の式(5)のようになる。
【0024】
【0025】
式(5)をd軸電流idについて整理すると、次の式(6)のようになる。
【0026】
【0027】
式(3)のδ軸電流iδに式(6)のd軸電流idを代入することにより、γ軸電圧オフセットVγofsは、次の式(7)のように表すことができる。
【0028】
【0029】
この式(7)から、短時間におけるγ軸電圧オフセットVγofsの一巡ゲインがK/(nωmLd)となることがわかる。
よって、ゲインK/(nωmLd)を一定に保つ、または、d軸の誘起電圧係数Λdを調整してゲインK/(nωmLd)を一定に保つ場合と同等の状態を実現することができれば、モータが急減速した場合であっても、オフセットの値は変化しない、すなわち、弱め界磁制御とならないことがわかる。
【0030】
なお、モータを急減速させる場合とは、モータの状態を第1の状態から別の第2の状態に変更し、再度、第1の状態に戻す場合である。モータを急減速させる例としては、空気調和機の暖房運転中に霜取りのためにデフロストを実施するために冷房運転に切り替えるとき、また、冷房運転から再度暖房運転に戻すときにモータを一旦停止させるために急減速させる場合、洗濯機による洗濯、すすぎ、脱水、乾燥などにおいて、羽根やドラムを逆回転させる場合(すなわち、羽根やドラムの現在の回転を急減速させる必要がある場合)、モータで動作する自動車を急減速させる場合などが挙げられる。
そして、ゲインK/(nωmLd)を一定に保つ、または、d軸の誘起電圧係数Λdを調整してゲインK/(nωmLd)を一定に保つ場合と同等の状態を実現することができれば、デフロストに要する時間の短縮、洗濯、すすぎ、脱水、乾燥に要する時間の短縮、自動車においてモータの回転を急減速出せた後、モータを停止させずに別の回転制御にスムーズに移行することができるなどの効果を得ることができる。
【0031】
本開示の各実施形態によるモータシステムは、ゲインK/(nωmLd)を一定に保つことによって、モータが急減速した場合であってもモータに過電流が流れることを抑制することができる。
【0032】
<第1実施形態>
以下、図面を参照しながら実施形態について詳しく説明する。
(モータシステムの構成)
本開示の第1実施形態によるモータシステム1の構成について説明する。
本開示の第1実施形態によるモータシステム1は、モータの回転速度ωmに応じて比例ゲインKを変化させることにより、上述したゲインK/(nωmLd)を一定に保つモータシステムである。
なお、モータの回転速度ωm[rad/s]とモータの回転数m[rps]は、次の式(8)によって変換可能であり、モータの回転数mの情報を有することは、モータの回転速度ωmの情報を有することに等しい。
【0033】
【0034】
モータシステム1は、
図2に示すように、直流電圧源10、インバータ20、モータ30、電流検出装置40、制御装置50を備える。
【0035】
直流電圧源10は、直流電圧を生成する。直流電圧源10は、生成した直流電圧をインバータ20に出力する。
【0036】
インバータ20は、直流電圧から交流電圧を生成する。
具体的には、インバータ20は、直流電圧源10が生成した直流電圧を受ける。インバータ20は、制御装置50から受ける電圧指令vU
*、電圧指令vV
*、電圧指令vW
*に応じて、直流電圧源10から受けた直流電圧からモータ30を駆動するU相の交流電圧、V相の交流電圧、W相の交流電圧を生成する。
インバータ20は、生成した交流電圧をモータ30に出力する。
【0037】
モータ30は、U相、V相、W相それぞれについて、巻線301を備える。インバータ20からU相の交流電圧、V相の交流電圧、W相の交流電圧を受ける。モータ30は、受けたU相の交流電圧、V相の交流電圧、W相の交流電圧に応じて回転する。
【0038】
電流検出装置40は、インバータ20からモータ30へ流れるU相の電流値iU、インバータ20からモータ30へ流れるV相の電流値iV、インバータ20からモータ30へ流れるW相の電流値iWを取得する。
具体的には、電流検出装置40は、第1電流センサ401、第2電流センサ402、第3電流センサ403を備える。第1電流センサ401は、U相の電流値iUを検出する。第2電流センサ402は、V相の電流値iVを検出する。第3電流センサ403は、W相の電流値iWを検出する。
【0039】
電流検出装置40は、取得したU相の電流値iU、V相の電流値iV、W相の電流値iWを制御装置50に出力する。
具体的には、第1電流センサ401は、検出したU相の電流値iUを制御装置50に出力する。また、第2電流センサ402は、検出したV相の電流値iVを制御装置50に出力する。また、第3電流センサ403は、検出したW相の電流値iWを制御装置50に出力する。
【0040】
制御装置50は、インバータ20に電圧指令を出力することにより、モータ30を制御する。
制御装置50は、
図3に示すように、記憶部501、回転速度指令取得部502、電流値取得部503、電圧指令生成部504(比例ゲイン特定部の一例、電圧指令生成部の一例)を備える。
【0041】
記憶部501は、制御装置50が行う処理に必要な種々の情報を記憶する。
例えば、記憶部501は、電圧指令vU
*、電圧指令vV
*、電圧指令vW
*を導き出すための式(1)、式(2)、式(7)、次に示す式(9)及び式(10)を記憶する。
【0042】
【0043】
【0044】
なお、式(9)は、U相の電流値iU、V相の電流値iV、W相の電流値iWからd軸電流id及びq軸電流iqを導出するための式である。
また、式(10)は、d軸電圧指令vd
*(=δ軸電圧指令vδ
*)及びq軸電圧指令vq
*(=γ軸電圧指令vγ
*)から電圧指令vU
*、電圧指令vV
*、電圧指令vW
*を導出するための式である。
【0045】
また、例えば、記憶部501は、回転速度ω
mと比例ゲインKとの対応関係を示す情報を記憶する。回転速度ω
mと比例ゲインKとの対応関係を示す情報は、実験やシミュレーションなどにより予め求めておけばよい。
回転速度ω
mと比例ゲインKとの対応関係を示す情報の例としては、
図4に示すデータが挙げられる。
比例ゲインKが高くなるとゲインK/(nω
mL
d)が高くなり、モータ30に指令値に対する応答性が向上する。その結果、モータが急減速した場合であっても、応答性がよくなり、ゲインK/(nω
mL
d)の値は変化しない、すなわち、弱め界磁制御とならない。
【0046】
回転速度指令取得部502は、回転速度の指令値ωm
*を取得する。
例えば、モータシステム1の利用者が制御装置50に対して回転速度の指令値ωm
*を設定(入力)する。回転速度指令取得部502は、その利用者により設定された回転速度の指令値ωm
*を受けることにより、回転速度の指令値ωm
*を取得する。
回転速度指令取得部502は、取得した回転速度の指令値ωm
*を電圧指令生成部504に出力する。
【0047】
電流値取得部503は、U相の電流値iU、V相の電流値iV、W相の電流値iWを、電流検出装置40から取得する。
具体的には、電流値取得部503は、第1電流センサ401からU相の電流値iUを受ける。また、電流値取得部503は、第2電流センサ402からV相の電流値iVを受ける。また、電流値取得部503は、第3電流センサ403からW相の電流値iWを受ける。
電流値取得部503は、U相の電流値iU、V相の電流値iV、W相の電流値iWを、電圧指令生成部504に出力する。
【0048】
電圧指令生成部504は、回転速度指令取得部502から受けた回転速度の指令値ωm
*と、電流値取得部503から受けたU相の電流値iU、V相の電流値iV、W相の電流値iWと、回転速度ωmと比例ゲインKとの対応関係を示す情報と、に基づいて、インバータ20の出力電圧がモータ30に必要な所望の電圧となるように制御する電圧指令vU
*、電圧指令vV
*、電圧指令vW
*を生成する。
【0049】
例えば、電圧指令生成部504は、以下に示すように電圧指令vU
*、電圧指令vV
*、電圧指令vW
*を生成する。
なお、制御装置50の起動時に、記憶部501から回転速度ωmと比例ゲインKとの対応関係を示す情報、式(1)、式(2)、式(7)、式(9)、式(10)を読み出しているものとする。
【0050】
電圧指令生成部504は、回転速度指令取得部502から回転速度の指令値ωm
*を受ける。また、電圧指令生成部504は、U相の電流値iU、V相の電流値iV、W相の電流値iWを、電流値取得部503から受ける。
【0051】
電圧指令生成部504は、電流値取得部503から受けたU相の電流値iU、V相の電流値iV、W相の電流値iWを式(9)に代入する。電圧指令生成部504は、式(9)のd軸電流id(=δ軸電流iδ)を算出する。
【0052】
電圧指令生成部504は、算出したd軸電流idを式(1)におけるd軸電流id(=δ軸電流iδ)に代入する。そして、電圧指令生成部504は、d軸電圧指令vd
*(=δ軸電圧指令vδ
*)を算出する。
【0053】
電圧指令生成部504は、算出したq軸電流iqを式(7)に代入する。また、電圧指令生成部504は、回転速度指令取得部502から受けた回転速度の指令値ωm
*を回転速度ωmとして式(7)の回転速度ωmに代入する。また、電圧指令生成部504は、前回生成したq軸電圧指令vq
*(=γ軸電圧指令vγ
*)をq軸電圧vqとして式(7)のq軸電圧vqに代入する。なお、制御装置50の起動後、最初の算出時には、q軸電圧vqとして予め設定した初期値を代入する。また、電圧指令生成部504は、代入した回転速度ωmに対応する比例ゲインKを、回転速度ωmと比例ゲインKとの対応関係を示す情報において特定する。電圧指令生成部504は、特定した比例ゲインKを式(7)の比例ゲインKに代入する。そして、電圧指令生成部504は、式(7)のγ軸電圧オフセットVγofsを算出する。
【0054】
電圧指令生成部504は、算出したγ軸電圧オフセットVγofsを式(2)に代入する。そして、電圧指令生成部504は、式(2)のq軸電圧指令vq
*(=γ軸電圧指令vγ
*)を算出する。
【0055】
電圧指令生成部504は、算出した軸電圧指令vd
*(=δ軸電圧指令vδ
*)と、算出したq軸電圧指令vq
*(=γ軸電圧指令vγ
*)とを、式(10)に代入する。そして、電圧指令生成部504は、式(10)の電圧指令vU
*、電圧指令vV
*、電圧指令vW
*を算出する。
このように、電圧指令生成部504は、電圧指令vU
*、電圧指令vV
*、電圧指令vW
*を生成する。
そして、電圧指令生成部504は、生成した電圧指令vU
*、電圧指令vV
*、電圧指令vW
*をインバータ20に出力する。
【0056】
(モータシステムが行う処理)
次に、本開示の第1実施形態によるモータシステム1の処理について説明する。
ここでは、
図5に示す制御装置50が、回転速度の指令値ω
m
*と、U相の電流値i
U、V相の電流値i
V、W相の電流値i
Wと、回転速度ωmと比例ゲインKとの対応関係を示す情報と、に基づいて、電圧指令v
U
*、電圧指令v
V
*、電圧指令v
W
*を生成するモータシステム1の処理フローについて説明する。
なお、制御装置50の起動時に、記憶部501から回転速度ω
mと比例ゲインKとの対応関係を示す情報、式(1)、式(2)、式(7)、式(9)、式(10)を読み出しているものとする。
【0057】
回転速度指令取得部502は、回転速度の指令値ωm
*を取得する(ステップS1)。
電流値取得部503は、U相の電流値iU、V相の電流値iV、W相の電流値iWを、電流検出装置40から取得する(ステップS2)。
電圧指令生成部504は、回転速度指令取得部502から回転速度の指令値ωm
*を受ける。また、電圧指令生成部504は、U相の電流値iU、V相の電流値iV、W相の電流値iWを、電流値取得部503から受ける。
【0058】
電圧指令生成部504は、電流値取得部503から受けたU相の電流値iU、V相の電流値iV、W相の電流値iWを式(9)に代入する(ステップS3)。電圧指令生成部504は、式(9)のd軸電流id(=δ軸電流iδ)を算出する(ステップS4)。
【0059】
電圧指令生成部504は、算出したd軸電流idを式(1)におけるd軸電流id(=δ軸電流iδ)に代入する(ステップS5)。そして、電圧指令生成部504は、d軸電圧指令vd
*(=δ軸電圧指令vδ
*)を算出する(ステップS6)。
【0060】
電圧指令生成部504は、算出したq軸電流iqを式(7)に代入する(ステップS7)。
また、電圧指令生成部504は、回転速度指令取得部502から受けた回転速度の指令値ωm
*を回転速度ωmとして式(7)の回転速度ωmに代入する(ステップS8)。
また、電圧指令生成部504は、前回生成したq軸電圧指令vq
*(=γ軸電圧指令vγ
*)をq軸電圧vqとして式(7)のq軸電圧vqに代入する(ステップS9)。なお、制御装置50の起動後、最初の算出時には、q軸電圧vqとして予め設定した初期値を代入する。
また、電圧指令生成部504は、ステップS8の処理で代入した回転速度ωmに対応する比例ゲインKを、回転速度ωmと比例ゲインKとの対応関係を示す情報において特定する(ステップS10)。電圧指令生成部504は、特定した比例ゲインKを式(7)の比例ゲインKに代入する(ステップS11)。
そして、電圧指令生成部504は、式(7)のγ軸電圧オフセットVγofsを算出する(ステップS12)。
【0061】
電圧指令生成部504は、算出したγ軸電圧オフセットVγofsを式(2)に代入する(ステップS13)。そして、電圧指令生成部504は、式(2)のq軸電圧指令vq
*(=γ軸電圧指令vγ
*)を算出する(ステップS14)。
【0062】
電圧指令生成部504は、算出した軸電圧指令vd
*(=δ軸電圧指令vδ
*)と、算出したq軸電圧指令vq
*(=γ軸電圧指令vγ
*)とを、式(10)に代入する(ステップS15)。そして、電圧指令生成部504は、式(10)の電圧指令vU
*、電圧指令vV
*、電圧指令vW
*を算出する(ステップS16)。
このように、制御装置50は、電圧指令vU
*、電圧指令vV
*、電圧指令vW
*を生成する。
【0063】
そして、電圧指令生成部504は、生成した電圧指令vU
*、電圧指令vV
*、電圧指令vW
*をインバータ20に出力する。
こうすることにより、制御装置50は、モータ30を弱め界磁制御とならない所望の状態で制御することができる。
【0064】
(モータシステムによる作用、効果)
以上、本開示の第1実施形態によるモータシステム1について説明した。
本開示の第1実施形態による制御装置(50)は、q軸電圧指令(vq
*)と、d軸の誘起電圧係数(Λd)にインバータ出力周波数(ω1)を乗算した値との間のオフセット(Vγofs)の変化量を低減するようにモータ(30)を制御する。
具体的には、制御装置(50)は、(1)の制御装置(50)であって、比例ゲイン(K)に基づいて前記オフセット(Vγofs)の一巡ゲイン(K/(nωmLd))を一定に保つ制御装置(50)であって、前記モータ(30)の回転速度(ωm)と前記比例ゲイン(K)との対応関係に基づいて、前記一巡ゲイン(K/(nωmLd))を一定に保つための前記比例ゲイン(K)を特定する比例ゲイン特定部(504)と、前記比例ゲイン特定部(504)が特定した前記比例ゲイン(K)に応じて前記モータ(30)を制御する電圧指令(d軸電圧指令vd
*、q軸電圧指令vq
*、電圧指令vU
*、電圧指令vU
*、電圧指令vV
*、電圧指令vW
*)を生成する電圧指令生成部(504)と、前記電圧指令生成部(504)が生成した前記電圧指令(d軸電圧指令vd
*、q軸電圧指令vq
*、電圧指令vU
*、電圧指令vU
*、電圧指令vV
*、電圧指令vW
*)に基づいて、前記モータ(30)を制御する。
【0065】
この制御装置(50)により、モータ(30)の回転速度(ωm)に応じて比例ゲイン(K)を変化させることができ、ゲインK/(nωmLd)(一巡ゲインの一例)を一定に保つことができる。その結果、モータ(30)が急減速した場合であっても、オフセット(Vγofs)の値は変化しない。すなわち、モータ(30)に過電流が流れることを抑制することができ、弱め界磁制御とならない。
【0066】
<第2実施形態>
(モータシステムの構成)
本開示の第2実施形態によるモータシステム1の構成について説明する。
本開示の第2実施形態によるモータシステム1は、モータの回転数に応じてモータの巻き線の巻数を変化させ、d軸インダクタンスLdを変化させることにより、上述したゲインK/(nωmLd)を一定に保つモータシステムである。
【0067】
モータシステム1は、
図6に示すように、直流電圧源10、インバータ20、モータ30、電流検出装置40、制御装置50を備える。
以下、本開示の第2実施形態によるモータシステム1と本開示の第1実施形態によるモータシステム1の相違点について主に説明する。
【0068】
モータ30は、U相、V相、W相それぞれについて、巻線301を備える。
巻線301は、インダクタンスを切り替え可能な構造を有する。
例えば、巻線301は、
図7に示すように、巻線301a~301d及びスイッチ302a~302cを備える。
スイッチ302a~302cのそれぞれが制御装置50による制御に応じてオン状態またはオフ状態になることにより、巻線301のインダクタンスが切り替わる。
【0069】
制御装置50は、
図8に示すように、記憶部501、回転速度指令取得部502、電流値取得部503、電圧指令生成部504、巻線切替指令生成部505(インダクタンス切替特定部の一例)を備える。
【0070】
記憶部501は、制御装置50が行う処理に必要な種々の情報を記憶する。
例えば、記憶部501は、電圧指令vU
*、電圧指令vV
*、電圧指令vW
*を導き出すための式(1)、式(2)、式(7)、次に示す式(9)及び式(10)を記憶する。
【0071】
また、例えば、記憶部501は、回転速度ω
mと巻線切替指令V
SW
*との対応関係を示す情報を記憶する。巻線切替指令V
SW
*とは、巻線301のインダクタンスを切り替えてゲインK/(nω
mL
d)の値を一定に保つために、それぞれの回転速度ω
mに応じてスイッチ302a~302cを切り替える指令である。
回転速度ω
mと巻線切替指令V
SW
*との対応関係を示す情報の例としては、
図9に示すデータテーブルTBL1が挙げられる。なお、巻線切替指令V
SW
*は、回転速度ω
mに反比例して巻線301のインダクタンスが変化するようにスイッチ302a~302cを切り替える指令である。すなわち、巻線切替指令V
SW
*は、回転速度ω
mが大きくなるにつれて巻線301のインダクタンスが小さくなるようにスイッチ302a~302cを切り替える指令である。回転速度ω
mと巻線切替指令V
SW
*との対応関係を示す情報は、実験やシミュレーションなどにより予め求めておけばよい。
巻線301のインダクタンスが小さくなるとゲインK/(nω
mL
d)が高くなり、応答性が上がる。その結果、モータが急減速した場合であっても、応答性がよくなり、ゲインK/(nω
mL
d)の値は変化しない、すなわち、弱め界磁制御とならない。
【0072】
電圧指令生成部504は、回転速度指令取得部502から受けた回転速度の指令値ωm
*と、電流値取得部503から受けたU相の電流値iU、V相の電流値iV、W相の電流値iWと、回転速度ωmと巻線切替指令VSW
*との対応関係を示す情報と、に基づいて、インバータ20の出力電圧がモータ30に必要な所望の電圧となるように制御する電圧指令vU
*、電圧指令vV
*、電圧指令vW
*を生成する。
【0073】
例えば、電圧指令生成部504は、以下に示すように電圧指令vU
*、電圧指令vV
*、電圧指令vW
*を生成する。
なお、制御装置50の起動時に、記憶部501から回転速度ωmと巻線切替指令VSW
*との対応関係を示す情報、式(1)、式(2)、式(7)、式(9)、式(10)を読み出しているものとする。
【0074】
電圧指令生成部504は、回転速度指令取得部502から回転速度の指令値ωm
*を受ける。また、電圧指令生成部504は、U相の電流値iU、V相の電流値iV、W相の電流値iWを、電流値取得部503から受ける。
【0075】
電圧指令生成部504は、電流値取得部503から受けたU相の電流値iU、V相の電流値iV、W相の電流値iWを式(9)に代入する。電圧指令生成部504は、式(9)のd軸電流id(=δ軸電流iδ)を算出する。
【0076】
電圧指令生成部504は、算出したd軸電流idを式(1)におけるd軸電流id(=δ軸電流iδ)に代入する。そして、電圧指令生成部504は、d軸電圧指令vd
*(=δ軸電圧指令vδ
*)を算出する。
【0077】
電圧指令生成部504は、算出したq軸電流iqを式(7)に代入する。また、電圧指令生成部504は、回転速度指令取得部502から受けた回転速度の指令値ωm
*を回転速度ωmとして式(7)の回転速度ωmに代入する。また、電圧指令生成部504は、前回生成したq軸電圧指令vq
*(=γ軸電圧指令vγ
*)をq軸電圧vqとして式(7)のq軸電圧vqに代入する。なお、制御装置50の起動後、最初の算出時には、q軸電圧vqとして予め設定した初期値を代入する。そして、電圧指令生成部504は、式(7)のγ軸電圧オフセットVγofsを算出する。
電圧指令生成部504は、式(7)に代入した回転速度ωmの値を巻線切替指令生成部505に出力する。
【0078】
電圧指令生成部504は、算出したγ軸電圧オフセットVγofsを式(2)に代入する。そして、電圧指令生成部504は、式(2)のq軸電圧指令vq
*(=γ軸電圧指令vγ
*)を算出する。
【0079】
電圧指令生成部504は、算出した軸電圧指令vd
*(=δ軸電圧指令vδ
*)と、算出したq軸電圧指令vq
*(=γ軸電圧指令vγ
*)とを、式(10)に代入する。そして、電圧指令生成部504は、式(10)の電圧指令vU
*、電圧指令vV
*、電圧指令vW
*を算出する。
このように、電圧指令生成部504は、電圧指令vU
*、電圧指令vV
*、電圧指令vW
*を生成する。
そして、電圧指令生成部504は、生成した電圧指令vU
*、電圧指令vV
*、電圧指令vW
*をインバータ20に出力する。
【0080】
巻線切替指令生成部505は、受けた回転速度ωmの値に基づいて、巻線切替指令VSW
*を生成する。
具体的には、巻線切替指令生成部505は、電圧指令生成部504が式(7)に回転速度ωmを代入する度に、代入した回転速度ωmに対応する巻線切替指令VSW
*を、回転速度ωmと巻線切替指令VSW
*との対応関係を示す情報において特定する。
そして、巻線切替指令生成部505は、電圧指令生成部504が生成した電圧指令vU
*、電圧指令vV
*、電圧指令vW
*をインバータ20に出力すると同時に、特定した巻線切替指令VSW
*をモータ30に出力する。
【0081】
(モータシステムが行う処理)
次に、本開示の第2実施形態によるモータシステム1の処理について説明する。
ここでは、
図10に示す制御装置50が、回転速度の指令値ω
m
*と、U相の電流値i
U、V相の電流値i
V、W相の電流値i
Wと、回転速度ωmと巻線切替指令V
SW
*との対応関係を示す情報と、に基づいて、電圧指令v
U
*、電圧指令v
V
*、電圧指令v
W
*を生成するモータシステム1の処理フローについて説明する。
なお、制御装置50の起動時に、記憶部501から回転速度ω
mと巻線切替指令V
SW
*との対応関係を示す情報、式(1)、式(2)、式(7)、式(9)、式(10)を読み出しているものとする。
【0082】
制御装置50は、ステップS1~ステップS9の処理を行う。
電圧指令生成部504は、ステップS8の処理で代入した回転速度ωmの値を巻線切替指令生成部505に出力する。
そして、電圧指令生成部504は、式(7)のγ軸電圧オフセットVγofsを算出する(ステップS12)。
【0083】
制御装置50は、ステップS13~ステップS16の処理を行う。
このように、制御装置50は、電圧指令vU
*、電圧指令vV
*、電圧指令vW
*を生成する。
【0084】
また、巻線切替指令生成部505は、ステップS8の処理で電圧指令生成部504が式(7)に代入した回転速度ωmの値を受ける。
巻線切替指令生成部505は、受けた回転速度ωmの値に基づいて、巻線切替指令VSW
*を生成する(ステップS17)。
このように、制御装置50は、巻線切替指令VSW
*を生成する。
【0085】
そして、電圧指令生成部504は、生成した電圧指令vU
*、電圧指令vV
*、電圧指令vW
*をインバータ20に出力する。
また、巻線切替指令生成部505は、電圧指令生成部504が生成した電圧指令vU
*、電圧指令vV
*、電圧指令vW
*をインバータ20に出力すると同時に、特定した巻線切替指令VSW
*をモータ30に出力する。
こうすることにより、制御装置50は、モータ30を弱め界磁制御とならない所望の状態で制御することができる。
【0086】
(モータシステムによる作用、効果)
以上、本開示の第2実施形態によるモータシステム1について説明した。
本開示の第1実施形態による制御装置(50)は、q軸電圧指令(vq
*)と、d軸の誘起電圧係数(Λd)にインバータ出力周波数(ω1)を乗算した値との間のオフセット(Vγofs)の変化量を低減するようにモータ(30)を制御する。
具体的には、制御装置(50)は、(1)の制御装置(50)であって、前記モータ(30)におけるd軸インダクタンス(Ld)に基づいて前記オフセット(Vγofs)の一巡ゲイン(K/(nωmLd))を一定に保つ制御装置(50)であって、前記モータ(30)の回転速度(ωm)と前記d軸インダクタンス(Ld)との対応関係に基づいて、前記一巡ゲイン(K/(nωmLd))を一定に保つための前記d軸インダクタンス(Ld)の切り替えを特定するインダクタンス切替特定部(505)と、前記インダクタンス切替特定部(505)が特定した前記d軸インダクタンス(Ld)に応じて前記モータ(30)を制御する電圧指令(d軸電圧指令vd
*、q軸電圧指令vq
*、電圧指令vU
*、電圧指令vU
*、電圧指令vV
*、電圧指令vW
*)を生成する電圧指令生成部(504)と、前記電圧指令生成部(504)が生成した前記電圧指令(d軸電圧指令vd
*、q軸電圧指令vq
*、電圧指令vU
*、電圧指令vU
*、電圧指令vV
*、電圧指令vW
*)に基づいて、前記モータ(30)を制御する。
【0087】
この制御装置(50)により、モータ(30)の回転速度(ωm)に応じてd軸インダクタンス(Ld)を変化させることができ、ゲインK/(nωmLd)(一巡ゲインの一例)を一定に保つことができる。その結果、モータ(30)が急減速した場合であっても、オフセット(Vγofs)の値は変化しない。すなわち、モータ(30)に過電流が流れることを抑制することができ、弱め界磁制御とならない。
【0088】
<第3実施形態>
(モータシステムの構成)
本開示の第3実施形態によるモータシステム1の構成について説明する。
本開示の第3実施形態によるモータシステム1は、d軸の誘起電圧係数Λdを調整することにより、ゲインK/(nωmLd)を一定に保つ場合と同等の状態を実現するモータシステムである。
【0089】
モータシステム1は、
図6に示した本開示の第2実施形態によるモータシステム1と同様に、直流電圧源10、インバータ20、モータ30、電流検出装置40、制御装置50を備える。
以下、本開示の第3実施形態によるモータシステム1と本開示の第2実施形態によるモータシステム1の相違点について主に説明する。
【0090】
モータ30は、U相、V相、W相それぞれについて、巻線301を備える。
巻線301は、複数の巻線間の接続を切り替え可能な構造を有する。
スイッチ302a~302cのそれぞれが制御装置50による制御に応じてオン状態またはオフ状態になることにより、巻線301における複数の巻線間の接続が切り替わる。
これにより、d軸の誘起電圧係数Λdを調整することができる。
【0091】
制御装置50は、
図8に示した本開示の第2実施形態によるモータシステム1と同様に、記憶部501、回転速度指令取得部502、電流値取得部503、電圧指令生成部504、巻線切替指令生成部505を備える。
【0092】
記憶部501は、制御装置50が行う処理に必要な種々の情報を記憶する。
例えば、記憶部501は、電圧指令vU
*、電圧指令vV
*、電圧指令vW
*を導き出すための式(1)、式(2)、式(7)、次に示す式(9)及び式(10)を記憶する。
【0093】
また、例えば、記憶部501は、回転速度ω
mと巻線切替指令V
SW
*との対応関係を示す情報を記憶する。巻線切替指令V
SW
*とは、巻線301における複数の巻線間の接続を切り替えてゲインK/(nω
mL
d)の値を一定に保つ場合と同様のd軸の誘起電圧係数Λ
dの調整を実現するために、それぞれの回転速度ω
mに応じてスイッチ302a~302cを切り替える指令である。
回転速度ω
mと巻線切替指令V
SW
*との対応関係を示す情報の例としては、
図11に示すデータテーブルTBL2が挙げられる。なお、巻線切替指令V
SW
*は、回転速度ω
mに応じて巻線301のインダクタンスが変化するようにスイッチ302a~302cを切り替える指令である。すなわち、巻線切替指令V
SW
*は、回転速度ω
mが大きくなるにつれて巻線301のインダクタンスが大きくなるようにスイッチ302a~302cを切り替える指令である。回転速度ω
mと巻線切替指令V
SW
*との対応関係を示す情報は、実験やシミュレーションなどにより予め求めておけばよい。
巻線301のインダクタンスが大きくなると誘起電圧係数Λ
dが大きくなりゲインK/(nω
mL
d)を一定に保つ場合のγ軸電圧オフセットV
γofsと同様のγ軸電圧オフセットV
γofsを実現することができる。その結果、モータが急減速した場合であっても、応答性がよくなり、ゲインK/(nω
mL
d)の値が変化しない場合と同様に、弱め界磁制御とならない。
【0094】
電圧指令生成部504は、回転速度指令取得部502から受けた回転速度の指令値ωm
*と、電流値取得部503から受けたU相の電流値iU、V相の電流値iV、W相の電流値iWと、回転速度ωmと巻線切替指令VSW
*との対応関係を示す情報と、に基づいて、インバータ20の出力電圧がモータ30に必要な所望の電圧となるように制御する電圧指令vU
*、電圧指令vV
*、電圧指令vW
*を生成する。
【0095】
例えば、電圧指令生成部504は、以下に示すように電圧指令vU
*、電圧指令vV
*、電圧指令vW
*を生成する。
なお、制御装置50の起動時に、記憶部501から回転速度ωmと巻線切替指令VSW
*との対応関係を示す情報、式(1)、式(2)、式(7)、式(9)、式(10)を読み出しているものとする。
【0096】
電圧指令生成部504は、回転速度指令取得部502から回転速度の指令値ωm
*を受ける。また、電圧指令生成部504は、U相の電流値iU、V相の電流値iV、W相の電流値iWを、電流値取得部503から受ける。
【0097】
電圧指令生成部504は、電流値取得部503から受けたU相の電流値iU、V相の電流値iV、W相の電流値iWを式(9)に代入する。電圧指令生成部504は、式(9)のd軸電流id(=δ軸電流iδ)を算出する。
【0098】
電圧指令生成部504は、算出したd軸電流idを式(1)におけるd軸電流id(=δ軸電流iδ)に代入する。そして、電圧指令生成部504は、d軸電圧指令vd
*(=δ軸電圧指令vδ
*)を算出する。
【0099】
電圧指令生成部504は、算出したq軸電流iqを式(7)に代入する。また、電圧指令生成部504は、回転速度指令取得部502から受けた回転速度の指令値ωm
*を回転速度ωmとして式(7)の回転速度ωmに代入する。また、電圧指令生成部504は、前回生成したq軸電圧指令vq
*(=γ軸電圧指令vγ
*)をq軸電圧vqとして式(7)のq軸電圧vqに代入する。なお、制御装置50の起動後、最初の算出時には、q軸電圧vqとして予め設定した初期値を代入する。そして、電圧指令生成部504は、式(7)のγ軸電圧オフセットVγofsを算出する。
電圧指令生成部504は、式(7)に代入した回転速度ωmの値を巻線切替指令生成部505に出力する。
【0100】
電圧指令生成部504は、算出したγ軸電圧オフセットVγofsを式(2)に代入する。そして、電圧指令生成部504は、式(2)のq軸電圧指令vq
*(=γ軸電圧指令vγ
*)を算出する。
【0101】
電圧指令生成部504は、算出した軸電圧指令vd
*(=δ軸電圧指令vδ
*)と、算出したq軸電圧指令vq
*(=γ軸電圧指令vγ
*)とを、式(10)に代入する。そして、電圧指令生成部504は、式(10)の電圧指令vU
*、電圧指令vV
*、電圧指令vW
*を算出する。
このように、電圧指令生成部504は、電圧指令vU
*、電圧指令vV
*、電圧指令vW
*を生成する。
そして、電圧指令生成部504は、生成した電圧指令vU
*、電圧指令vV
*、電圧指令vW
*をインバータ20に出力する。
【0102】
巻線切替指令生成部505は、受けた回転速度ω
mの値に基づいて、巻線切替指令V
SW
*を生成する。
具体的には、巻線切替指令生成部505は、電圧指令生成部504が式(7)に回転速度ω
mを代入する度に、代入した回転速度ω
mに対応する巻線切替指令V
SW
*を、回転速度ω
mと巻線切替指令V
SW
*との対応関係を示す情報において特定する。
そして、巻線切替指令生成部505は、電圧指令生成部504が生成した電圧指令v
U
*、電圧指令v
V
*、電圧指令v
W
*をインバータ20に出力すると同時に、特定した巻線切替指令V
SW
*をモータ30に出力する。
なお、本開示の第3実施形態によるモータシステム1の処理は、使用するデータテーブルがデータテーブルTBL1ではなくデータテーブルTBL2であるという違いがあるが、
図10に示した本開示の第2実施形態によるモータシステム1の処理と同様に考えることができる。
【0103】
(モータシステムによる作用、効果)
以上、本開示の第3実施形態によるモータシステム1について説明した。
制御装置(50)は、(1)の制御装置(50)であって、d軸の誘起電圧係数(Λd)の変化に基づいて前記オフセット(Vγofs)の変化量を低減させる制御装置(50)であって、前記モータ(30)における巻線(301a、301b、301c、301d)を切り替える、または、前記モータ(30)に発生する磁界を変化させることにより、d軸の誘起電圧係数(Λd)を変化させる。
【0104】
この制御装置(50)により、モータ(30)の回転速度(ωm)に応じてd軸の誘起電圧係数(Λd)を調整することにより、ゲインK/(nωmLd)を一定に保つ場合と同等の状態を実現することができる。その結果、モータ(30)が急減速した場合であっても、オフセット(Vγofs)の値は変化しない。すなわち、モータ(30)に過電流が流れることを抑制することができ、弱め界磁制御とならない。
【0105】
なお、本開示の第1実施形態では、比例ゲインKと回転数mと対応関係を示すデータとして視覚的にわかりやすい
図3のグラフを示した。
しかしながら、本開示の別の実施形態では、記憶部501において、グラフから対応関係を導き出す処理を省くために、複数の回転数mの値と、それぞれの回転数mの値に対応する比例ゲインKの値とが関連付けられて記憶されているものであってもよい。
【0106】
また、本開示の第1実施形態では、回転速度ωmと比例ゲインKとの対応関係を示す情報の例として、比例ゲインKと回転数mと対応関係を示すデータを示した。
しかしながら、本開示の別の実施形態では、制御装置50が電圧指令vU
*、電圧指令vV
*、電圧指令vW
*のそれぞれを導き出すときに、回転速度ωmの値を用いる場合、演算回数を低減するために、式(8)を用いて回転数mを回転速度ωmに予め変換し、回転速度ωmと比例ゲインKとの対応関係を直接示す情報を記憶部501に記憶しておくものであってもよい。
また、本開示の別の実施形態では、制御装置50が電圧指令vU
*、電圧指令vV
*、電圧指令vW
*のそれぞれを導き出すときに、回転数mの値を用いる場合、記憶部501は、回転数mと比例ゲインKとの対応関係を直接示す情報と、式(7)における回転速度ωmの部分を式(8)を用いて回転数mで示した式と、を記憶しておくものであってもよい。
【0107】
なお、本開示の第3実施形態では、d軸の誘起電圧係数Λdを調整してゲインK/(nωmLd)を一定に保つ場合と同等の状態にする方法として、制御装置50が巻線301における複数の巻線間の接続を切り替える例を示した。
しかしながら、本開示の別の実施形態では、d軸の誘起電圧係数Λdを調整してゲインK/(nωmLd)を一定に保つ場合と同等の状態にすることができれば、どのような方法を用いるものであってもよい。例えば、本開示の別の実施形態では、モータ30が内部の磁界を制御できる構造を有し、制御装置50がその磁界の発生を制御することにより、d軸の誘起電圧係数Λdを調整してゲインK/(nωmLd)を一定に保つ場合と同等の状態にするものであってよい。
【0108】
なお、本開示の第1~第3実施形態では、制御装置50は、常時、ゲインK/(nωmLd)を一定に保つ、または、d軸の誘起電圧係数Λdを調整してゲインK/(nωmLd)を一定に保つ場合と同等の状態を実現するものとして説明した。
しかしながら、本開示の別の実施形態では、制御装置50は、モータ30を急減速させる場合にのみ、ゲインK/(nωmLd)を一定に保つ、または、d軸の誘起電圧係数Λdを調整してゲインK/(nωmLd)を一定に保つ場合と同等の状態を実現するものであってもよい。
【0109】
なお、本開示の実施形態における処理は、適切な処理が行われる範囲において、処理の順番が入れ替わってもよい。
本開示の実施形態におけるステップS17の処理は、ステップS9~ステップS16の処理と並行して行われるものであってもよい。
【0110】
本開示の実施形態における記憶部501や記憶装置(レジスタ、ラッチを含む)のそれぞれは、適切な情報の送受信が行われる範囲においてどこに備えられていてもよい。また、記憶部501や記憶装置のそれぞれは、適切な情報の送受信が行われる範囲において複数存在しデータを分散して記憶していてもよい。
【0111】
本開示の実施形態について説明したが、上述の制御装置50、その他の制御装置は内部に、コンピュータシステムを有していてもよい。そして、上述した処理の過程は、プログラムの形式でコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記憶されており、このプログラムをコンピュータが読み出して実行することによって、上記処理が行われる。コンピュータの具体例を以下に示す。
図12は、少なくとも1つの実施形態に係るコンピュータの構成を示す概略ブロック図である。
コンピュータ5は、
図12に示すように、CPU6、メインメモリ7、ストレージ8、インターフェース9を備える。
例えば、上述の制御装置50、その他の制御装置のそれぞれは、コンピュータ5に実装される。そして、上述した各処理部の動作は、プログラムの形式でストレージ8に記憶されている。CPU6は、プログラムをストレージ8から読み出してメインメモリ7に展開し、当該プログラムに従って上記処理を実行する。また、CPU6は、プログラムに従って、上述した各記憶部に対応する記憶領域をメインメモリ7に確保する。
【0112】
ストレージ8の例としては、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)、DVD-ROM(Digital Versatile Disc Read Only Memory)、半導体メモリ等が挙げられる。ストレージ8は、コンピュータ5のバスに直接接続された内部メディアであってもよいし、インターフェース9または通信回線を介してコンピュータ5に接続される外部メディアであってもよい。また、このプログラムが通信回線によってコンピュータ5に配信される場合、配信を受けたコンピュータ5が当該プログラムをメインメモリ7に展開し、上記処理を実行してもよい。少なくとも1つの実施形態において、ストレージ8は、一時的でない有形の記憶媒体である。
【0113】
また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現してもよい。さらに、上記プログラムは、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるファイル、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【0114】
本開示のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例であり、開示の範囲を限定しない。これらの実施形態は、開示の要旨を逸脱しない範囲で、種々の追加、種々の省略、種々の置き換え、種々の変更を行ってよい。
【0115】
<付記>
本開示の各実施形態に記載のコンバータ装置2は、例えば以下のように把握される。
【0116】
(1)第1の態様に係る制御装置(50)は、q軸電圧指令(vq
*)と、d軸の誘起電圧係数(Λd)にインバータ出力周波数(ω1)を乗算した値との間のオフセット(Vγofs)の変化量を低減するようにモータ(30)を制御する。
【0117】
この制御装置(50)により、ゲインK/(nωmLd)(一巡ゲインの一例)を一定に保つ、または、d軸の誘起電圧係数(Λd)を調整してゲインK/(nωmLd)を一定に保つ場合と同等の状態を実現することができる。その結果、モータ(30)が急減速した場合であっても、オフセット(Vγofs)の値は変化しない。すなわち、モータ(30)に過電流が流れることを抑制することができ、弱め界磁制御とならない。
【0118】
(2)第2の態様に係る制御装置(50)は、(1)の制御装置(50)であって、比例ゲイン(K)に基づいて前記オフセット(Vγofs)の一巡ゲイン(K/(nωmLd))を一定に保つ制御装置(50)であって、前記モータ(30)の回転速度(ωm)と前記比例ゲイン(K)との対応関係に基づいて、前記一巡ゲイン(K/(nωmLd))を一定に保つための前記比例ゲイン(K)を特定する比例ゲイン特定部(504)と、前記比例ゲイン特定部(504)が特定した前記比例ゲイン(K)に応じて前記モータ(30)を制御する電圧指令(d軸電圧指令vd
*、q軸電圧指令vq
*、電圧指令vU
*、電圧指令vU
*、電圧指令vV
*、電圧指令vW
*)を生成する電圧指令生成部(504)と、前記電圧指令生成部(504)が生成した前記電圧指令(d軸電圧指令vd
*、q軸電圧指令vq
*、電圧指令vU
*、電圧指令vU
*、電圧指令vV
*、電圧指令vW
*)に基づいて、前記モータ(30)を制御する。
【0119】
この制御装置(50)により、モータ(30)の回転速度(ωm)に応じて比例ゲイン(K)を変化させることができ、ゲインK/(nωmLd)(一巡ゲインの一例)を一定に保つことができる。その結果、モータ(30)が急減速した場合であっても、オフセット(Vγofs)の値は変化しない。すなわち、モータ(30)に過電流が流れることを抑制することができ、弱め界磁制御とならない。
【0120】
(3)第3の態様に係る制御装置(50)は、(1)の制御装置(50)であって、前記モータ(30)におけるd軸インダクタンス(Ld)に基づいて前記オフセット(Vγofs)の一巡ゲイン(K/(nωmLd))を一定に保つ制御装置(50)であって、
前記モータ(30)の回転速度(ωm)と前記d軸インダクタンス(Ld)との対応関係に基づいて、前記一巡ゲイン(K/(nωmLd))を一定に保つための前記d軸インダクタンス(Ld)の切り替えを特定するインダクタンス切替特定部(505)と、前記インダクタンス切替特定部(505)が特定した前記d軸インダクタンス(Ld)に応じて前記モータ(30)を制御する電圧指令(d軸電圧指令vd
*、q軸電圧指令vq
*、電圧指令vU
*、電圧指令vU
*、電圧指令vV
*、電圧指令vW
*)を生成する電圧指令生成部(504)と、前記電圧指令生成部(504)が生成した前記電圧指令(d軸電圧指令vd
*、q軸電圧指令vq
*、電圧指令vU
*、電圧指令vU
*、電圧指令vV
*、電圧指令vW
*)に基づいて、前記モータ(30)を制御する。
【0121】
この制御装置(50)により、モータ(30)の回転速度(ωm)に応じてd軸インダクタンス(Ld)を変化させることができ、ゲインK/(nωmLd)(一巡ゲインの一例)を一定に保つことができる。その結果、モータ(30)が急減速した場合であっても、オフセット(Vγofs)の値は変化しない。すなわち、モータ(30)に過電流が流れることを抑制することができ、弱め界磁制御とならない。
【0122】
(4)第4の態様に係る制御装置(50)は、(1)の制御装置(50)であって、d軸の誘起電圧係数(Λd)の変化に基づいて前記オフセット(Vγofs)の変化量を低減させる制御装置(50)であって、前記モータ(30)における巻線(301a、301b、301c、301d)を切り替える、または、前記モータ(30)に発生する磁界を変化させることにより、d軸の誘起電圧係数(Λd)を変化させる。
【0123】
この制御装置(50)により、モータ(30)の回転速度(ωm)に応じてd軸の誘起電圧係数(Λd)を調整することにより、ゲインK/(nωmLd)を一定に保つ場合と同等の状態を実現することができる。その結果、モータ(30)が急減速した場合であっても、オフセット(Vγofs)の値は変化しない。すなわち、モータ(30)に過電流が流れることを抑制することができ、弱め界磁制御とならない。
【0124】
(5)第5の態様に係る制御方法は、q軸電圧指令(vq
*)と、d軸の誘起電圧係数(Λd)にインバータ出力周波数(ω1)を乗算した値との間のオフセット(Vγofs)の変化量を低減するようにモータ(30)を制御すること、を含む。
【0125】
この制御方法により、ゲインK/(nωmLd)(一巡ゲインの一例)を一定に保つ、または、d軸の誘起電圧係数(Λd)を調整してゲインK/(nωmLd)を一定に保つ場合と同等の状態を実現することができる。その結果、モータ(30)が急減速した場合であっても、オフセット(Vγofs)の値は変化しない。すなわち、モータ(30)に過電流が流れることを抑制することができ、弱め界磁制御とならない。
【0126】
(7)第7の態様に係るプログラムは、コンピュータに、q軸電圧指令(vq
*)と、d軸の誘起電圧係数(Λd)にインバータ出力周波数(ω1)を乗算した値との間のオフセット(Vγofs)の変化量を低減するようにモータ(30)を制御すること、を実行させる。
【0127】
このプログラムにより、ゲインK/(nωmLd)(一巡ゲインの一例)を一定に保つ、または、d軸の誘起電圧係数(Λd)を調整してゲインK/(nωmLd)を一定に保つ場合と同等の状態を実現することができる。その結果、モータ(30)が急減速した場合であっても、オフセット(Vγofs)の値は変化しない。すなわち、モータ(30)に過電流が流れることを抑制することができ、弱め界磁制御とならない。
【符号の説明】
【0128】
1・・・モータシステム
5・・・コンピュータ
6・・・CPU
7・・・メインメモリ
8・・・ストレージ
9・・・インターフェース
10・・・直流電圧源
20・・・インバータ
30・・・モータ
40・・・電流検出装置
50・・・制御装置
301、301a、301b、301c、301d・・・巻線
302a、302b、302c・・・スイッチ
401・・・第1電流センサ
402・・・第2電流センサ
403・・・第3電流センサ
501・・・記憶部
502・・・回転速度指令取得部
503・・・電流値取得部
504・・・電圧指令生成部
505・・・巻線切替指令生成部