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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-05
(45)【発行日】2023-12-13
(54)【発明の名称】焼却プラント及びその燃焼制御方法
(51)【国際特許分類】
   F23G 5/50 20060101AFI20231206BHJP
   F23C 9/08 20060101ALI20231206BHJP
   F23G 5/44 20060101ALI20231206BHJP
【FI】
F23G5/50 K
F23C9/08 502
F23G5/44 F
F23G5/50 C
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019198304
(22)【出願日】2019-10-31
(65)【公開番号】P2021071238
(43)【公開日】2021-05-06
【審査請求日】2022-08-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】手嶋 啓介
(72)【発明者】
【氏名】竹田 航哉
【審査官】古川 峻弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-020084(JP,A)
【文献】特開平10-332120(JP,A)
【文献】特開2007-010258(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23G 5/00-5/50
F23C 9/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ごみを焼却する焼却炉と、前記焼却炉の排ガスの熱を利用して蒸気を発生させるボイラと、前記ボイラで発生した蒸気量を検出する蒸気量計と、前記蒸気量計で検出された蒸気量に基づいて前記焼却炉の燃焼を制御する燃焼制御装置とを備え、
前記焼却炉は、
ごみ流れ方向の上流から順に配置された乾燥ストーカ、燃焼ストーカ、及び後燃焼ストーカを含む複数段のストーカと、
前記燃焼ストーカの前記ごみ流れ方向の上流端から中央までの少なくとも一部に緩慢燃焼域が規定され、当該緩慢燃焼域において前記燃焼ストーカの下方に設けられた燃焼調整ガス風箱と、
前記緩慢燃焼域を除いた前記複数段のストーカの下方に設けられた一次燃焼空気風箱と、
前記一次燃焼空気風箱に一次燃焼空気を供給する一次燃焼空気供給管と、
前記燃焼調整ガス風箱に前記一次燃焼空気よりも酸素濃度の低い低酸素ガスを供給する低酸素ガス供給管と、
前記燃焼調整ガス風箱に酸素濃度が前記一次燃焼空気りも高い高酸素ガスを供給する高酸素ガス供給管と、
前記一次燃焼空気風箱へ供給される前記一次燃焼空気の流量、前記燃焼調整ガス風箱へ供給される前記低酸素ガスの流量及び前記燃焼調整ガス風箱へ供給される前記高酸素ガスの流量を調整する流量調整装置とを有し、
前記燃焼制御装置は、前記検出された蒸気量が所定の目標蒸気量以上であるときは、前記緩慢燃焼域のごみの燃焼が前記緩慢燃焼域の周囲と比較して抑制されるように、前記一次燃焼空気風箱から前記緩慢燃焼域を除く前記燃焼ストーカの下方へ前記一次燃焼空気が供給され、且つ、前記燃焼調整ガス風箱から前記緩慢燃焼域の前記燃焼ストーカの下方へ前記低酸素ガスのみが供給されるように前記流量調整装置を制御し、
前記燃焼制御装置は、前記検出された蒸気量が前記目標蒸気量に満たないときは、前記緩慢燃焼域のごみの燃焼が促進されるように、前記一次燃焼空気風箱から前記緩慢燃焼域を除く前記燃焼ストーカの下方へ前記一次燃焼空気が供給され、且つ、前記燃焼調整ガス風箱から前記緩慢燃焼域の前記燃焼ストーカの下方へ前記低酸素ガス及び前記高酸素ガス、又は、前記高酸素ガスのみが供給されるように前記流量調整装置を制御する、
焼却プラント。
【請求項2】
前記低酸素ガス供給管が、前記焼却炉の排ガス系統と接続されており、前記低酸素ガスが前記焼却炉の排ガスである、
請求項1記載の焼却プラント。
【請求項3】
前記燃焼制御装置は、前記検出された蒸気量が前記目標蒸気量に満たないときは、前記検出された蒸気量と前記目標蒸気量の差異に基づいて、前記差異が大きくなるに従って酸素濃度が高くなるように割合が調整された前記低酸素ガス及び前記高酸素ガスが供給されるように、前記流量調整装置を制御する、
請求項1又は2に記載の焼却プラント。
【請求項4】
ごみ流れ方向の上流から順に配置された乾燥ストーカ、燃焼ストーカ、及び後燃焼ストーカを含む複数段のストーカを有するごみの焼却炉と、前記焼却炉の排ガスの熱を利用して蒸気を発生させるボイラとを備えた焼却プラントの燃焼制御方法であって、
前記ボイラで発生した蒸気量を取得するステップと、
前記燃焼ストーカの前記ごみ流れ方向の上流端から中央までの少なくとも一部に緩慢燃焼域が規定され、当該緩慢燃焼域の下方へ前記蒸気量に応じた燃焼調整用ガスを供給し、前記緩慢燃焼域を除く前記複数段のストーカの下方へ一次燃焼空気を供給するステップとを含み、
前記蒸気量が所定の目標蒸気量以上であるときの前記燃焼調整用ガスは、前記緩慢燃焼域のごみの燃焼が前記緩慢燃焼域の周囲と比較して抑制されるように、前記一次燃焼空気よりも酸素濃度の低い低酸素ガスであり、
前記蒸気量が前記目標蒸気量に満たないときの前記燃焼調整用ガスは、前記緩慢燃焼域のごみの燃焼が促進されるように、前記低酸素ガスよりも酸素濃度の高いガスである、
焼却プラントの燃焼制御方法。
【請求項5】
前記低酸素ガスが前記焼却炉の排ガスである、
請求項に記載の焼却プラントの燃焼制御方法。
【請求項6】
前記蒸気量が前記目標蒸気量に満たないときの前記燃焼調整用ガスは、前記蒸気量と前記目標蒸気量の差異に基づいて、前記差異が大きくなるに従って酸素濃度が高くなるように割合が調整されたガスである、
請求項又はに記載の焼却プラントの燃焼制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ストーカ式焼却炉を含む焼却プラントの燃焼制御技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、都市ごみや産業廃棄物などのごみを焼却するために、ストーカ式焼却炉が用いられている。一般に、ストーカ式焼却炉の燃焼室には、ごみに含まれる水分を乾燥させる乾燥帯を規定する乾燥ストーカ、ごみの揮発成分を揮発・燃焼させる燃焼帯を規定する燃焼ストーカ、及び、炭素分を完全燃焼させる後燃焼帯を規定する後燃焼ストーカが設けられている。各ストーカの下部に設けられた風箱からストーカを通じて燃焼室内へ燃焼用空気が供給され、ごみはストーカによって搬送されながら焼却される。特許文献1,2では、このようなストーカ式焼却炉が開示されている。
【0003】
特許文献1に記載のストーカ式焼却炉は、中間流型ストーカ式焼却炉であって、一次燃焼室に乾燥ストーカ、燃焼ストーカ、及び後燃焼ストーカが設けられ、燃焼ストーカ及び後燃焼ストーカの上方に二次燃焼室への入口が設けられている。
【0004】
特許文献2に記載のストーカ式焼却炉は、並行流型ストーカ式焼却炉であって、主燃焼室に乾燥ストーカ、燃焼ストーカ、及び後燃焼ストーカが設けられ、後燃焼ストーカの下流部分の上方に再燃焼室への入口が設けられている。このような並行流型ストーカ式焼却炉では、主燃焼室において燃焼ガスとごみとが並行して流れる。
【0005】
上記のようなストーカ式焼却炉と、焼却炉の排ガスの熱を利用して蒸気を発生させるボイラと、ボイラで発生した蒸気を利用して発電を行う発電装置とを含む、焼却プラントが知られている。例えば、特許文献3では、ごみの燃焼熱を廃熱ボイラで回収して発電を行うごみ焼却プラントが開示されている。このような焼却プラントでは、発電量の変動を抑えるために、ボイラで発生する蒸気量(以下、「主蒸気量」と称する)を、目標発電量に対応した目標蒸気量に厳密に維持することが要求される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2013-238350号公報
【文献】特開2016-90089号公報
【文献】特開2007-10258号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ストーカ式焼却炉に投入されるごみのごみ質(灰分、発熱量、組成など)は、通常、一定ではない。ごみ質の変化に伴って焼却炉への入熱量が低下すると、それが主蒸気量の不足を生じさせる原因となる。そこで、従来の焼却プラントでは、主蒸気量が目標蒸気量となるように、検出された主蒸気量に基づいてストーカによるごみ搬送量や燃焼用空気供給量などを調整する焼却炉の自動燃焼制御が行われている。
【0008】
主蒸気量を目標蒸気量に維持するに際し、とりわけ、主蒸気量が不足する場合には、上述の従来の自動燃焼制御では速やかな応答を得ることが難しい。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこで、本願の発明者らは、ストーカ式焼却炉において、定常時に、周囲と比較してごみの燃焼が抑制される緩慢燃焼域を設けて、速やかに熱発生量を増やせる余力を残した燃焼を行うことに着想した。
【0010】
本発明の一態様に係る焼却プラントは、ごみを焼却する焼却炉と、前記焼却炉の排ガスの熱を利用して蒸気を発生させるボイラと、前記ボイラで発生した蒸気量を検出する蒸気量計と、前記蒸気量計で検出された蒸気量に基づいて前記焼却炉の燃焼を制御する燃焼制御装置とを備えている。そして、前記焼却炉は、ごみ流れ方向の上流から順に配置された乾燥ストーカ、燃焼ストーカ、及び後燃焼ストーカを含む複数段のストーカと、前記燃焼ストーカの前記ごみ流れ方向の上流端から中央までの少なくとも一部に緩慢燃焼域が規定され、当該緩慢燃焼域において前記燃焼ストーカの下方に設けられた燃焼調整ガス風箱と、前記緩慢燃焼域を除いた前記複数段のストーカの下方に設けられた一次燃焼空気風箱と、前記一次燃焼空気風箱に一次燃焼空気を供給する一次燃焼空気供給管と、前記燃焼調整ガス風箱に前記一次燃焼空気よりも酸素濃度の低い低酸素ガスを供給する低酸素ガス供給管と、前記燃焼調整ガス風箱に酸素濃度が前記一次燃焼空気りも高い高酸素ガスを供給する高酸素ガス供給管と、前記燃焼調整ガス風箱へ供給される前記低酸素ガスの流量及び前記燃焼調整ガス風箱へ供給される前記高酸素ガスの流量を調整する流量調整装置とを有する。そして、前記燃焼制御装置は、前記検出された蒸気量が所定の目標蒸気量以上であるときは、前記緩慢燃焼域のごみの燃焼が前記緩慢燃焼域の周囲と比較して抑制されるように、前記一次燃焼空気風箱から前記緩慢燃焼域を除く前記燃焼ストーカの下方へ前記一次燃焼空気が供給され、且つ、前記燃焼調整ガス風箱から前記緩慢燃焼域の前記燃焼ストーカの下方へ前記低酸素ガスのみが供給されるように前記流量調整装置を制御するように構成されている。前記燃焼制御装置は、前記検出された蒸気量が前記目標蒸気量に満たないときは、前記緩慢燃焼域のごみの燃焼が促進されるように、前記一次燃焼空気風箱から前記緩慢燃焼域を除く前記複数段のストーカの下方へ前記一次燃焼空気が供給され、且つ、前記燃焼調整ガス風箱から前記緩慢燃焼域の前記燃焼ストーカの下方へ前記低酸素ガス及び前記高酸素ガス、又は、前記高酸素ガスのみが供給されるように前記流量調整装置を制御する。
【0011】
同様に、本発明の一態様に係る焼却プラントの燃焼制御方法は、ごみ流れ方向の上流から順に配置された乾燥ストーカ、燃焼ストーカ、及び後燃焼ストーカを含む複数段のストーカを有するごみの焼却炉と、前記焼却炉の排ガスの熱を利用して蒸気を発生させるボイラとを備えた焼却プラントの燃焼制御方法であって、前記ボイラで発生した蒸気量を取得するステップと、前記燃焼ストーカの前記ごみ流れ方向の上流端から中央までの少なくとも一部に緩慢燃焼域が規定され、当該緩慢燃焼域の下方へ前記蒸気量に応じた燃焼調整用ガスを供給し、前記緩慢燃焼域を除く前記複数段のストーカの下方へ一次燃焼空気を供給するステップとを含み、前記蒸気量が所定の目標蒸気量以上であるときの前記燃焼調整用ガスは、前記緩慢燃焼域のごみの燃焼が前記緩慢燃焼域の周囲と比較して抑制されるように、前記一次燃焼空気よりも酸素濃度の低い低酸素ガスであり、前記蒸気量が前記目標蒸気量に満たないときの前記燃焼調整用ガスは、前記緩慢燃焼域のごみの燃焼が促進されるように、前記低酸素ガスよりも酸素濃度の高いガスであることを特徴としている。
【0012】
上記構成の焼却プラント及びその燃焼制御方法では、ボイラで発生する蒸気量が目標蒸気量と同じ又はそれ以上であるときは、燃焼ストーカの緩慢燃焼域ではその周囲と比較してごみの燃焼(熱分解を含む)が抑制されている。つまり、燃焼ストーカに進入して既に始まっているごみの燃焼が、緩慢燃焼域で一旦沈静化される。このように緩慢燃焼域にあるごみの燃焼は、沈静化されているものの、酸素の供給量が増えれば速やかに増進する。よって、焼却炉の入熱が減少したときに、蒸気量の不足に対応して緩慢燃焼域に低酸素ガスよりも酸素濃度の高いガスを供給すれば、緩慢燃焼域のごみの燃焼が速やかに増進し、蒸気量を速やかに増加させることができる。ひいては、ボイラで発生する蒸気量を安定化させることができる。
【0013】
上記焼却プラントでは、前記緩慢燃焼域が、前記燃焼ストーカのごみ流れ方向の上流側端よりも下流側であって、且つ、前記燃焼ストーカのごみ流れ方向の中央よりも上流側に位置している
【0014】
前述の通り、緩慢燃焼域ではごみの燃焼が一旦沈静化されるが、このように緩慢燃焼域が配置されることで、ごみは緩慢燃焼域より下流側の燃焼ストーカ上で再び燃焼が増進されて十分な燃焼処理が行われる。
【0015】
上記焼却プラントにおいて、前記低酸素ガス供給管が、前記焼却炉の排ガス系統と接続されており、前記低酸素ガスが前記焼却炉の排ガスであってよい。
【0016】
同様に、上記焼却プラントの燃焼制御方法において、前記低酸素ガスが前記焼却炉の排ガスであってよい。
【0017】
このように系内で生じる空気より酸素濃度の低い排ガスを低酸素ガスとして利用することで、低酸素ガスを別途生成する必要がなく、また、外部へ排出される排ガスを低減することができる。
【0018】
上記焼却プラントにおいて、前記燃焼制御装置は、前記検出された蒸気量が前記目標蒸気量に満たないときは、前記検出された蒸気量と前記目標蒸気量の差異に基づいて、前記差異が大きくなるに従って酸素濃度が高くなるように割合が調整された前記低酸素ガス及び前記高酸素ガスが供給されるように、前記流量調整装置を制御するように構成されていてよい。
【0019】
同様に、上記焼却プラントの燃焼制御方法において、前記蒸気量が前記目標蒸気量に満たないときの前記燃焼調整用ガスは、前記蒸気量と前記目標蒸気量の差異に基づいて、前記差異が大きくなるに従って酸素濃度が高くなるように調製されたガスであってよい。
【0020】
これにより、緩慢燃焼域のごみの燃焼を促進させる際に、却って蒸気量が過剰となることを防止することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、燃焼ストーカを含む複数段のストーカを有するごみの焼却炉と、前記焼却炉の排ガスの熱を利用して蒸気を発生させるボイラとを備えた焼却プラントにおいて、ボイラから発生する蒸気量が目標蒸気量に対して不足した場合に、速やかに蒸気量を増やすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る焼却プラントの概略構成を示す図である。
図2図2は、焼却プラントの制御系統の構成を示す図である。
図3図3は、図1に示す焼却炉の概略構成を示す図である。
図4図4は、図3に示す焼却炉の燃焼調整ガス風箱と一次燃焼空気風箱との変形例を示す図である。
図5図5は、燃焼制御装置による焼却プラントの燃焼制御の処理の流れを示すフローチャートである。
図6図6(a)は、主蒸気量が目標蒸気量以上のときの、ストーカ上のごみの燃焼の様子を示す図であり、図6(b)は、主蒸気量が目標蒸気量に満たないときの、燃焼ストーカ上のごみの燃焼の様子を示す図である。
図7図7は、炉壁に再循環ガス供給口が設けられた焼却炉の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1に、本発明の一実施形態に係る焼却プラント100の概略構成を示す。この焼却プラント100は、ごみを焼却する焼却炉1と、焼却炉1の排ガスから熱を回収するボイラ2と、焼却炉1の排ガスを処理する排ガス系統8と、排ガスを焼却炉1へ還流する排ガス還流系統9とを含む。焼却プラント100は、燃料であるごみを一時的に貯蔵するピット60と、ボイラ2で回収された熱エネルギーを利用して発電を行う蒸気タービン発電機34とを、更に含む。但し、ピット60や蒸気タービン発電機34は、焼却プラント100から独立して設けられていてもよい。
【0024】
〔焼却炉1〕
焼却炉1は、並行流型ストーカ式焼却炉である。焼却炉1には、主燃焼室14と、再燃焼室19とが設けられている。主燃焼室14には、ごみの搬送手段としての乾燥ストーカ15a、燃焼ストーカ15b、及び後燃焼ストーカ15cが設けられている。乾燥ストーカ15a、燃焼ストーカ15b、及び後燃焼ストーカ15cは、この順序でごみ流れ方向Xの上流から下流に向けて並んでいる。
【0025】
ストーカ15a,15b,15cは、ごみをごみ流れ方向Xの下流側へ送り出すように、ストーカ駆動装置42によって往復駆動される。ストーカ駆動装置42は、各ストーカ15a,15b,15cに対応して設けられた駆動シリンダ42a,42b,42cを含む。それらの駆動シリンダ42a,42b,42cによって、各ストーカ15a,15b,15cは連動して又は独立して揺動駆動される。
【0026】
各ストーカ15a,15b,15cの下部には一次燃焼空気が導入される一次燃焼空気風箱(以下、単に「風箱16a,16b,16c」と称する)が設けられており、各風箱16a,16b,16cには一次燃焼空気供給管40が接続されている。一次燃焼空気供給管40から各風箱16a,16b,16cへ送られた一次燃焼空気は、ストーカ15a,15b,15cに設けられた孔を経由して主燃焼室14へ供給される。一次燃焼空気の供給量は流量調整装置43によって調整される。流量調整装置43は、一次燃焼空気を各風箱16a,16b,16cへ送る押込送風機43dと、各風箱16a,16b,16cへの一次燃焼空気の供給量を調整するダンパ43a,43b,43cとを含む。また、主燃焼室14には、二次燃焼空気供給管45が接続されている。二次燃焼空気供給管45には、流量調整装置44としての押込送風機やダンパ(図示略)などが設けられている。二次燃焼空気は、主燃焼室14内や再燃焼室19の入口へ向けて供給される。二次燃焼空気の供給量は流量調整装置44によって調整される。
【0027】
主燃焼室14の入口には、シュート13を介して投入ホッパ12が接続されている。また、主燃焼室14の入口には、ごみを乾燥ストーカ15a上へ押し出すフィーダ41が設けられている。フィーダ41によって、主燃焼室14へのごみの投入量が調整される。
【0028】
後燃焼ストーカ15cのごみ流れ方向Xの下流側部分の上方には、再燃焼室19の入口が設けられている。再燃焼室19は、燃焼ガスの流れ方向において主燃焼室14の下流側端部から主燃焼室14と上下に重なるように斜め上向きに延びている。主燃焼室14においてごみと並行に流れた燃焼ガスは、再燃焼室19の入口で流れの向きを反転して、更に、斜め上向きに延びる再燃焼室19に沿って上昇する。
【0029】
〔ボイラ2〕
焼却炉1の再燃焼室19と連続する煙道20,21,22には、煙道20,21,22を流れる燃焼排ガスから熱エネルギーを回収するボイラ2が構成されている。第1煙道20及び第2煙道21の壁にはボイラドラム24と接続された水管23が張り巡らされている。また、ボイラドラム24は、過熱器25の過熱管27と接続されている。過熱管27は、第3煙道22内に設置され、過熱管27を通る蒸気は第3煙道22を通過する排ガスの熱を回収する。過熱器25から蒸気タービン発電機34へ送られる蒸気の量は、ボイラ2で発生した蒸気の量の指標となり、「主蒸気量」と称される。主蒸気量は、過熱器25と蒸気タービン発電機34とを繋ぐ配管に設けられた蒸気量計39により計測される。蒸気量計39は、主蒸気量を直接的又は間接的に測定できるものであれば足り、例えば、過熱器25に入る前の蒸気の流量又は圧力の計測手段、過熱器25から出た蒸気の流量又は圧力の計測手段のうち少なくとも1つであってよい。
【0030】
第3煙道22に設けられた排気口29には排ガス系統8が接続されている。排ガス系統8は、排気口29に接続された排気路81と、排気路81に設けられたバグフィルタ82、誘引送風機83及び煙突84とを含む。
【0031】
排ガス系統8には、排ガス還流系統9が接続されている。排ガス還流系統9は、排ガス系統8から、煤塵が除去された排ガスを取り出して、焼却炉1へ還流するものである。排ガス還流系統9は、排気路81のうちバグフィルタ82の下流側且つ誘引送風機83の上流側と接続された還流路91と、還流路91に設けられた押込送風機92とを備える。押込送風機92は、焼却炉1に再循環させる排ガス(以下、「再循環ガス」と称する)の流量を変更する循環量調整手段である。更に、還流路91の押込送風機92より下流側には、循環量調整手段としてのダンパ(図示略)が設けられていてよい。なお、還流路91は、焼却炉1から排出される排ガスの一部を再循環ガスとして焼却炉1内に戻すように構成されていればよく、第3煙道22から排出された排ガスに限らず、その他の煙道20,21や再燃焼室19から抜き出した排ガスを焼却炉1内に戻すように構成されていてもよい。
【0032】
上記構成の焼却プラント100では、投入ホッパ12からシュート13を通じて焼却炉1へごみが投入される。焼却炉1に投入されたごみは、フィーダ41によって乾燥ストーカ15a上へ押し出される。ごみは、乾燥ストーカ15a上を通過するうちに、一次燃焼空気と主燃焼室14の輻射熱とにより乾燥され、着火する。着火したごみの一部は、燃焼ストーカ15b上を通過するうちに熱分解して、可燃性の熱分解ガスが発生する。この熱分解ガスは、一次燃焼空気に乗って主燃焼室14の上部へ移動して、二次燃焼空気と共に炎燃焼する。この炎燃焼に伴う熱輻射により、ごみは更に昇温する。また、着火したごみの残部は、燃焼ストーカ15b及び後燃焼ストーカ15c上を通過するうちに燃焼し、燃焼後に残った焼却灰は排出シュート18から排出され、図示しない灰処理設備で処理される。主燃焼室14の燃焼排ガスは、再燃焼室19の入口へ吹き出す二次燃焼空気と混合され、再燃焼室19で完全燃焼する。
【0033】
ボイラ2では、水管23を流れる熱回収水が、第1煙道20及び第2煙道21の熱を回収することにより、飽和蒸気の状態でボイラドラム24へ還流する。ボイラドラム24の蒸気は、過熱器25へ送られる。過熱器25では、ボイラドラム24から送られてきた蒸気が、過熱管27を通過するうちに更に高温に過熱されて、蒸気タービン発電機34へ送られる。
【0034】
また、煙道20,21,22を通過した排ガスは、排ガス系統8へ排出される。排ガス系統8では、排ガスが、バグフィルタ82で煤塵が分離された後、煙突84から大気へ放出される。排ガス還流系統9では、バグフィルタ82で煤塵が除去された排ガスが、還流路91を通じて焼却炉1へ戻される。
【0035】
上記構成の焼却プラント100の運転は、燃焼制御装置10によって制御される。図2は、焼却プラント100の制御系統の構成を示す図である。図2に示すように、燃焼制御装置10は、フィーダ41、ストーカ駆動装置42、流量調整装置43,44、及び、後述する低酸素ガス流量調整装置75並びに高酸素ガス流量調整装置76などの機器と無線又は有線で接続されており、それらの機器と情報や信号の送受信が可能である。更に、燃焼制御装置10は、蒸気量計39などの各種計器と無線又は有線で接続されており、それらの計器から検出信号の受信が可能である。
【0036】
燃焼制御装置10は、いわゆるコンピュータであって、CPU等の演算処理部、ROM、RAM等の記憶部を有している(いずれも図示せず)。記憶部には、演算処理部が実行するプログラム、各種固定データ等が記憶されている。演算処理部は、外部装置とのデータ送受信を行う。また、演算処理部は、各種センサからの検出信号の入力や各制御対象への制御信号の出力を行う。燃焼制御装置10では、記憶部に記憶されたプログラム等のソフトウェアを演算処理部が読み出して実行することにより、焼却プラント100の各構成機器の動作を制御するための処理が行われる。なお、燃焼制御装置10は単一のコンピュータによる集中制御により各処理を実行してもよいし、複数のコンピュータの協働による分散制御により各処理を実行してもよい。また、燃焼制御装置10は、マイクロコントローラ、プログラマブルロジックコントローラ(PLC)等から構成されていてもよい。
【0037】
〔焼却プラント100の燃焼制御方法〕
続いて、焼却プラント100における焼却炉1の燃焼制御方法について説明する。燃焼制御装置10は、蒸気タービン発電機34の発電量を安定化させるために、主蒸気量を所定の目標蒸気量に保つように、焼却炉1の燃焼制御を行う。
【0038】
図3に示すように、燃焼ストーカ15bの少なくとも一部に緩慢燃焼域7が規定されている。本実施形態では、緩慢燃焼域7は燃焼ストーカ15bの一箇所に規定されているが、緩慢燃焼域7は燃焼ストーカ15bの複数箇所に規定されていてもよい。緩慢燃焼域7は、望ましくは、燃焼ストーカ15bのごみ流れ方向Xの上流側端部よりも下流側であって、且つ、燃焼ストーカ15bのごみ流れ方向Xの中央よりも上流側に位置する。
【0039】
緩慢燃焼域7と燃焼ストーカ15bとの炉幅方向(図3において紙面奥行き方向)の寸法は実質的に同じであり、緩慢燃焼域7は燃焼ストーカ15bの炉幅方向全域に亘って設けられている。また、緩慢燃焼域7のごみ流れ方向Xの寸法は、燃焼ストーカ15bのごみ流れ方向Xの寸法の20~50%程度である。20%より少ないと、燃焼を調整する十分な効果を得にくい。また、50%を超えると、ごみの燃焼処理が不十分となるおそれがある。
【0040】
緩慢燃焼域7において燃焼ストーカ15bの下方には、燃焼調整ガスが導入される燃焼調整ガス風箱71が設けられている。燃焼調整ガス風箱71の炉幅方向の寸法は、燃焼ストーカ15bの炉幅方向の寸法と実質的に同じである。また、燃焼調整ガス風箱71のごみ流れ方向Xの寸法は、燃焼ストーカ15bのごみ流れ方向Xの寸法に対し、20~50%程度である。図3では、燃焼ストーカ15bの風箱16bの内部に燃焼調整ガス風箱71が配置されているが、図4に示すように燃焼ストーカ15bの風箱16bがごみ流れ方向Xに分断され、それらの間に燃焼調整ガス風箱71が設けられてもよい。風箱16bの内部空間と燃焼調整ガス風箱71の内部空間とは、燃焼調整ガス風箱71内に風箱16b内の一次燃焼空気が混入しないように隔離されている。
【0041】
燃焼調整ガス風箱71には、燃焼調整ガス風箱71へ低酸素ガスを供給する低酸素ガス供給管72と、燃焼調整ガス風箱71へ高酸素ガスを供給する高酸素ガス供給管73とが接続されている。ここで、「低酸素ガス」とは、一次燃焼空気よりも酸素濃度の低いガスである。例えば、一次燃焼空気の酸素濃度が空気と同じ21体積%程度である場合には、低酸素ガスの酸素濃度は15体積%以下であってよい。また、「高酸素ガス」とは、一次燃焼空気と酸素濃度が同じ又は高いガスである。例えば、一次燃焼空気の酸素濃度が21体積%程度である場合には、高酸素ガスの酸素濃度は21~30体積%であってよい。高酸素ガスは、例えば、空気や酸素富化空気などであってよい。
【0042】
低酸素ガス供給管72には、低酸素ガス源から燃焼調整ガス風箱71へ供給される低酸素ガスの流量を調整する低酸素ガス流量調整装置75が設けられている。また、高酸素ガス供給管73には、高酸素ガス源から燃焼調整ガス風箱71へ供給される高酸素ガスの流量を調整する高酸素ガス流量調整装置76が設けられている。低酸素ガス流量調整装置75及び高酸素ガス流量調整装置76は、燃焼制御装置10によって制御される。低酸素ガス流量調整装置75及び高酸素ガス流量調整装置76の各々は、例えば、ダンパ、流量調整弁、送風機などの公知のガス流量調整手段のうちの1つ又は2つ以上の組み合わせで構成されてよい。低酸素ガス流量調整装置75及び高酸素ガス流量調整装置76の動作によって、燃焼調整ガス風箱71に低酸素ガスのみが供給される状態、燃焼調整ガス風箱71に高酸素ガスのみが供給される状態、燃焼調整ガス風箱71に割合の調整された低酸素ガス及び高酸素ガスが供給される状態、燃焼調整ガス風箱71に低酸素ガス及び高酸素ガスのいずれも供給されない状態の各状態を切り替えることができる。
【0043】
本実施形態においては、低酸素ガス供給管72へ低酸素ガス源として排ガス還流系統9を利用している。具体的には、低酸素ガス供給管72は、排ガス還流系統9の還流路91と接続されており、低酸素ガスとして再循環ガスが低酸素ガス供給管72を通じて燃焼調整ガス風箱71へ送られる。この場合の低酸素ガス流量調整装置75は、再循環ガスの還流路91に設けられた押込送風機92であってもよい。但し、低酸素ガス流量調整装置75として、押込送風機92に代えて又は加えてダンパや送風機などの流量調整手段が用いられてもよい。
【0044】
図5は、燃焼制御装置10による焼却プラント100の燃焼制御の処理の流れを示すフローチャートである。このフローチャートでは、焼却炉1の運転が安定して、主蒸気量が所定の目標蒸気量以上である状態からスタートしている。
【0045】
燃焼制御装置10は、主蒸気量が目標蒸気量以上であるとき、即ち、主蒸気量に不足がないときには、燃焼調整ガスとして低酸素ガスが燃焼調整ガス風箱71へ供給されるように、低酸素ガス流量調整装置75及び高酸素ガス流量調整装置76を制御する。
【0046】
このように、主蒸気量に不足がないときは、緩慢燃焼域7では燃焼ストーカ15bの下方へ一次燃焼空気よりも酸素濃度の低い低酸素ガスが供給され、緩慢燃焼域7を除く燃焼ストーカ15bの下方へ一次燃焼空気が供給される。つまり、燃焼ストーカ15b上のごみに作用する酸素濃度分布に偏りがあり、緩慢燃焼域7では周囲と比較して酸素濃度が低い。その結果、図6(a)に示すように、緩慢燃焼域7では周囲と比較してごみの燃焼(熱分解を含む)が抑制される。なお、図6(a)は主蒸気量が目標蒸気量以上のときの、ストーカ上のごみの燃焼の様子を示しており、図中Fは火炎を表している。
【0047】
図5に示すように、燃焼制御装置10は、運転中、蒸気量計39で検出された主蒸気量を監視している。具体的には、燃焼制御装置10は、検出された主蒸気量を取得し(ステップS1)、それを目標蒸気量と比較して、主蒸気量が目標蒸気量以上であるかどうかを判断する(ステップS2)。
【0048】
燃焼制御装置10は、主蒸気量が目標蒸気量を下回るとき(ステップS2でNO)、即ち、主蒸気量が不足するときには、低酸素ガスよりも酸素濃度の高い燃焼調整ガスが燃焼調整ガス風箱71へ供給されるように、低酸素ガス流量調整装置75及び高酸素ガス流量調整装置76を動作させる(ステップS3)。ここで、燃焼調整ガスは高酸素ガス供給管73から供給される高酸素ガスのみから構成されてよい。或いは、蒸気量計39で検出された主蒸気量と目標蒸気量との差異、即ち、主蒸気量の不足量に基づいて、主蒸気量の不足量が大きくなるに従って燃焼調整ガスの酸素濃度が高くなるように、低酸素ガスと高酸素ガスの割合が調整されてもよい。また、燃焼調整ガスの酸素濃度は一次燃焼空気と同じであってもよい。
【0049】
このように、主蒸気量が不足しているときには、緩慢燃焼域7では燃焼ストーカ15bの下方から低酸素ガスよりも酸素濃度の高い燃焼調整ガスが供給される。その結果、図6(b)に示すように、緩慢燃焼域7でのごみの燃焼が促進され、主蒸気量が増加する。なお、図6(b)は主蒸気量が目標蒸気量に満たないときの、ストーカ上のごみの燃焼の様子を示しており、図中Fは火炎を表している。
【0050】
燃焼制御装置10は、なおも主蒸気量を取得してその値の監視を続け(ステップS4)、検出された主蒸気量が目標蒸気量以上となれば(ステップS5でYES)、燃焼調整ガスとして低酸素ガスが燃焼調整ガス風箱71へ供給されるように、低酸素ガス流量調整装置75及び高酸素ガス流量調整装置76を制御する(ステップS6)。
【0051】
なお、主蒸気量の過不足にかかわらず、燃焼調整ガス風箱71へ供給される燃焼調整ガスの流量は、燃焼調整ガス風箱71の燃焼調整ガスと風箱16bの一次燃焼空気とに差圧が生じず、且つ、燃焼調整ガス風箱71に供給される燃焼調整ガスと風箱16bに供給される一次燃焼空気との総量が所定の目標流量に維持されるような値とされる。目標流量は、検出された主蒸気量と目標主蒸気量との関係から決定されてよい。
【0052】
以上に説明したように、本実施形態に係る焼却プラント100は、ごみを焼却する焼却炉1と、焼却炉1の排ガスの熱を利用して蒸気を発生させるボイラ2と、ボイラ2で発生した蒸気量を検出する蒸気量計39と、蒸気量計39で検出された蒸気量(より詳細には、蒸気量及び各種プロセス値)に基づいて焼却炉1の燃焼を制御する燃焼制御装置10とを備えている。そして、焼却炉1は、燃焼ストーカ15bを含む複数段のストーカ15a,15b,15cと、燃焼ストーカ15bの少なくとも一部に規定された緩慢燃焼域7において燃焼ストーカの下方に設けられた燃焼調整ガス風箱71と、緩慢燃焼域7を除いた複数段のストーカ15a,15b,15cの下方に設けられた一次燃焼空気風箱16a,16b,16cと、一次燃焼空気風箱16a,16b,16cに一次燃焼空気を供給する一次燃焼空気供給管40と、燃焼調整ガス風箱71に一次燃焼空気よりも酸素濃度の低い低酸素ガスを供給する低酸素ガス供給管72と、燃焼調整ガス風箱71に酸素濃度が一次燃焼空気と同じ又はそれよりも高い高酸素ガスを供給する高酸素ガス供給管73と、燃焼調整ガス風箱71へ供給される低酸素ガスの流量及び燃焼調整ガス風箱71へ供給される高酸素ガスの流量を調整する流量調整装置75,76とを有する。そして、燃焼制御装置10は、検出された蒸気量が所定の目標蒸気量以上であるときは、燃焼調整ガス風箱71へ低酸素ガスのみが供給されるように流量調整装置を制御し、検出された蒸気量が目標蒸気量に満たないときは、燃焼調整ガス風箱71へ低酸素ガス及び高酸素ガス、又は、高酸素ガスのみが供給されるように流量調整装置75,76を制御する。
【0053】
同様に、本実施形態に係る焼却プラント100の燃焼制御方法は、燃焼ストーカ15bを含む複数段のストーカ15a,15b,15cを有するごみの焼却炉1と、焼却炉1の排ガスの熱を利用して蒸気を発生させるボイラ2とを備えた焼却プラント100の燃焼制御方法であって、ボイラ2で発生した蒸気量を取得するステップと、燃焼ストーカ15bの少なくとも一部に規定された緩慢燃焼域7の下方へ蒸気量に応じた燃焼調整用ガスを供給し、緩慢燃焼域7を除く複数段のストーカ15a,15b,15cの下方へ一次燃焼空気を供給するステップとを含み、蒸気量が所定の目標蒸気量以上であるときの燃焼調整用ガスは、一次燃焼空気よりも酸素濃度の低い低酸素ガスであり、蒸気量が目標蒸気量に満たないときの燃焼調整用ガスは、低酸素ガスよりも酸素濃度の高いガスであることを特徴としている。
【0054】
上記構成の焼却プラント100及びその燃焼制御方法では、ボイラ2で発生する蒸気量が目標蒸気量と同じ又はそれ以上であるときは、燃焼ストーカ15bの緩慢燃焼域7ではその周囲と比較してごみの燃焼(熱分解を含む)が抑制されている。つまり、燃焼ストーカ15bに進入して既に始まっているごみの燃焼が、緩慢燃焼域7で一旦沈静化される。このように緩慢燃焼域7にあるごみの燃焼は、沈静化されているものの、酸素の供給量が増えれば速やかに増進する。よって、焼却炉1の入熱の減少したときに、蒸気量の不足に対応して緩慢燃焼域7に低酸素ガスよりも酸素濃度の高いガスを供給すれば、緩慢燃焼域7のごみの燃焼が速やかに増進し、蒸気量を速やかに増加させることができる。ひいては、ボイラ2で発生する蒸気量を安定化させることができる。
【0055】
また、本実施形態に係る焼却プラント100において、緩慢燃焼域7は、燃焼ストーカ15bのごみ流れ方向Xの上流側端よりも下流側であって、且つ、燃焼ストーカ15bのごみ流れ方向Xの中央よりも上流側に位置している。
【0056】
前述の通り、緩慢燃焼域7ではごみの燃焼が一旦沈静化されるが、このように緩慢燃焼域7が配置されることで、ごみは緩慢燃焼域7より下流側の燃焼ストーカ15b上で再び燃焼が増進されて十分な燃焼処理が行われる。但し、上記のように緩慢燃焼域7が配置されることが望ましいが、緩慢燃焼域7は燃焼ストーカ15b上であれば上記の配置に限定されない。また、緩慢燃焼域7は、乾燥ストーカ15aのごみ流れ方向Xの下流部分であってごみが着火して燃焼している領域に規定されてもよい。
【0057】
また、本実施形態に係る焼却プラント100において、低酸素ガス供給管72が、焼却炉1の排ガス系統8(より詳細には、排ガス還流系統9)と接続されており、低酸素ガスが焼却炉1の排ガスである。同様に、本実施形態に係る焼却プラント100の燃焼制御方法において、低酸素ガスが焼却炉の排ガスである。
【0058】
このように系内で生じる空気より酸素濃度の低い排ガスを低酸素ガスとして利用することで、低酸素ガスを別途生成する必要がなく、また、外部へ排出される排ガスを低減することができる。但し、低酸素ガスは再循環ガスに限定されず、調製された一次燃焼空気よりも酸素濃度の低いガスが低酸素ガスとして用いられてよい。
【0059】
また、本実施形態に係る焼却プラント100において、燃焼制御装置10は、検出された蒸気量が目標蒸気量に満たないときは、検出された蒸気量と目標蒸気量の差異に基づいて、差異が大きくなるに従って酸素濃度が高くなるように割合が調整された低酸素ガス及び高酸素ガスが供給されるように、流量調整装置75,76を制御するように構成されている。同様に、本実施形態に係る焼却プラント100の燃焼制御方法において、蒸気量が目標蒸気量に満たないときの燃焼調整用ガスは、蒸気量と目標蒸気量の差異に基づいて、差異が大きくなるに従って酸素濃度が高くなるように調製されたガスである。
【0060】
これにより、緩慢燃焼域7のごみの燃焼を促進させる際に、却って蒸気量が過剰となることを防止することができる。但し、検出された蒸気量が目標蒸気量に満たないときに、燃焼調整ガス風箱71へ供給される燃焼調整ガスの酸素濃度は、蒸気量と目標蒸気量との差異にかかわらず所定の値であってもよい。
【0061】
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、本発明の精神を逸脱しない範囲で、上記実施形態の具体的な構造及び/又は機能の詳細を変更したものも本発明に含まれ得る。上記の構成は、例えば、以下のように変更することができる。
【0062】
例えば、上記実施形態に係る焼却プラント100の焼却炉1において、燃焼調整ガス風箱71に代えて、燃焼調整ガスを噴き出す散気管を設けてもよい。
【0063】
また、例えば、上記実施形態に係る焼却プラント100においてボイラ2の蒸気を利用する設備は蒸気タービン発電機34であるが、蒸気タービン発電機34に代えて又は加えて、発電機とは異なる蒸気利用設備が設けられてもよい。
【0064】
また、例えば、上記実施形態に係る焼却プラント100の焼却炉1において、図7に示すように、焼却炉1の炉壁に主燃焼室14へ再循環ガスを供給する複数の再循環ガス供給口95が設けられていてもよい。各再循環ガス供給口95には還流路91と接続された再循環ガス供給管97が接続されており、再循環ガス供給管97には各再循環ガス供給口95からの再循環ガスの供給量を調整する(又は、供給の有無を切り替える)流量調整装置96が設けられている。流量調整装置96は、例えば、流量調整弁、ダンパ、送風機などの公知の流量調整手段のうちの少なくとも1つであってよい。
【0065】
上記のように焼却炉1に再循環ガス供給口95が設けられている場合、燃焼制御装置10は、主蒸気量が目標主蒸気量以上であるとき、つまり、緩慢燃焼域7でごみの緩慢燃焼が行われているときは、複数の再循環ガス供給口95のうち緩慢燃焼域7へ向けて再循環ガスを供給する再循環ガス供給口95からの再循環ガスの供給を停止し、余の再循環ガス供給口95からの再循環ガスの供給を許容するように各流量調整装置96を制御する。また、燃焼制御装置10は、主蒸気流量が目標蒸気量に満たないとき、つまり、緩慢燃焼域7でごみの燃焼が促進されているときは、緩慢燃焼域7へ再循環ガスを供給する再循環ガス供給口95を含めた再循環ガス供給口95からの再循環ガスの供給を許容するように各流量調整装置96を制御する。このように、再循環ガス供給口95から供給される再循環ガスは二次燃焼空気の一部として熱分解ガスの燃焼に利用される。従って、主蒸気量が目標主蒸気量に対して不足したときに、緩慢燃焼域7と対応する再循環ガス供給口95から再循環ガスが供給されることで、緩慢燃焼域7のごみの燃焼を更に増進させることができる。
【符号の説明】
【0066】
100 :焼却プラント
1 :焼却炉
2 :ボイラ
7 :緩慢燃焼域
8 :排ガス系統
9 :排ガス還流系統
10 :燃焼制御装置
12 :投入ホッパ
13 :シュート
14 :主燃焼室
15a,15b,15c :ストーカ
16a,16b,16c :一次燃焼空気風箱
18 :排出シュート
19 :再燃焼室
20,21,22 :煙道
23 :水管
24 :ボイラドラム
25 :過熱器
27 :過熱管
29 :排気口
81 :排気路
82 :バグフィルタ
83 :誘引送風機
84 :煙突
34 :蒸気タービン発電機
39 :蒸気量計
40 :一次燃焼空気供給管
41 :フィーダ
42 :ストーカ駆動装置
42a,42b,42c :駆動シリンダ
43,44 :流量調整装置
43a,43b,43c :ダンパ
43d :押込送風機
45 :二次燃焼空気供給管
60 :ピット
71 :燃焼調整ガス風箱
72 :低酸素ガス供給管
73 :高酸素ガス供給管
75 :低酸素ガス流量調整装置
76 :高酸素ガス流量調整装置
91 :還流路
92 :押込送風機
95 :再循環ガス供給口
96 :流量調整装置
97 :再循環ガス供給管
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7