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特許7397635放射線検出装置、放射線検出システム、制御方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-05
(45)【発行日】2023-12-13
(54)【発明の名称】放射線検出装置、放射線検出システム、制御方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/00 20060101AFI20231206BHJP
   H04N 5/32 20230101ALI20231206BHJP
【FI】
A61B6/00 320Z
H04N5/32
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2019211705
(22)【出願日】2019-11-22
(65)【公開番号】P2021079021
(43)【公開日】2021-05-27
【審査請求日】2022-11-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 実
【審査官】井上 香緒梨
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-198548(JP,A)
【文献】特表2013-524477(JP,A)
【文献】特開2013-233420(JP,A)
【文献】特開2014-158580(JP,A)
【文献】特開2016-127989(JP,A)
【文献】特開2019-136388(JP,A)
【文献】特開2001-149359(JP,A)
【文献】特開平9-129395(JP,A)
【文献】特開2019-042294(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00-6/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線検出装置であって、
自動露出制御の対象である対象領域の設定を示す情報と、前記対象領域に対応する被写体の放射線透過特性を示す情報とを取得する取得手段と、
前記対象領域に基づいて候補領域を設定する設定手段と、
前記候補領域に入射中の放射線量をモニタするモニタ手段と、
モニタされた放射線量前記取得手段により取得された放射線透過特性を示す情報とに応じて定まる範囲に含まれる領域を検出領域として特定する特定手段と、
前記検出領域でモニタされた放射線量に関する信号を出力する出力手段と、
を備えることを特徴とする放射線検出装置。
【請求項2】
前記設定手段は、前記対象領域の少なくとも一部と、前記対象領域外の少なくとも一部とを含むように前記候補領域を設定することを特徴とする請求項1に記載の放射線検出装置。
【請求項3】
前記特定手段は、前記候補領域内の複数の位置の放射線量を表す関数を用いて前記検出領域を特定することを特徴とする請求項1又は2に記載の放射線検出装置。
【請求項4】
前記特定手段は、前記関数の微分値がゼロとなる位置を含むように前記検出領域を特定することを特徴とする請求項3に記載の放射線検出装置。
【請求項5】
前記特定手段は、前記候補領域内の第1方向における複数の位置の放射線量を表す関数と、前記候補領域内の第2方向における複数の位置の放射線量を表す関数とを用いて前記検出領域を特定することを特徴とする請求項1又は2に記載の放射線検出装置。
【請求項6】
前記設定手段は、前記対象領域が複数存在する場合に、前記対象領域ごとに個別の候補領域を設定することを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の放射線検出装置。
【請求項7】
前記設定手段は、前記対象領域が複数存在する場合に、複数の前記対象領域に対して1つの候補領域を設定することを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の放射線検出装置。
【請求項8】
前記設定手段は、所定の条件を満たすように前記検出領域を特定できない場合に、前記候補領域を再設定することを特徴とする請求項1乃至7の何れか1項に記載の放射線検出装置。
【請求項9】
前記所定の条件は、前記候補領域内の複数の位置の放射線量を表す関数の微分値がゼロとなる位置が存在することを含むことを特徴とする請求項8に記載の放射線検出装置。
【請求項10】
自動露出制御の対象である対象領域の設定を示す情報と、前記対象領域に対応する被写体の放射線透過特性を示す情報とを取得する取得手段と、
前記対象領域に基づいて候補領域を設定する設定手段と、
前記候補領域に入射中の放射線量をモニタするモニタ手段と、
モニタされた放射線量と前記取得手段により取得された放射線透過特性を示す情報とに応じて定まる範囲に含まれる領域を検出領域として特定する特定手段と、
前記検出領域でモニタされた放射線量に関する信号を出力する出力手段と、
を備える放射線検出装置であって、
前記特定手段が、前記候補領域内の複数の位置の放射線量を表す関数の微分値がゼロとなる位置が存在することを含む所定の条件を満たす前記検出領域を特定できない場合に、前記設定手段は前記候補領域を再設定することを特徴とする放射線検出装置。
【請求項11】
前記放射線量に関する信号は、前記検出領域でモニタされた放射線量又は放射線の照射を停止するための制御信号の少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1乃至10の何れか1項に記載の放射線検出装置。
【請求項12】
前記放射線透過特性を示す情報は、操作者による操作に応じて得られた前記対象領域の設定を示す情報に基づいて取得された、被写体の部位の放射線透過量を示す情報であることを特徴とする請求項1乃至11の何れか1項に記載の放射線検出装置。
【請求項13】
請求項1乃至12の何れか1項に記載の放射線検出装置と、
前記放射線検出装置と通信可能に接続された、前記放射線検出装置を制御する制御装置と、
を備える放射線検出システム。
【請求項14】
放射線検出装置による制御方法であって、
自動露出制御の対象である対象領域の設定を示す情報と、前記対象領域に対応する被写体の放射線透過特性を示す情報とを取得する取得工程と、
前記対象領域に基づいて候補領域を設定する設定工程と、
前記候補領域に入射中の放射線量をモニタするモニタ工程と、
モニタされた放射線量前記取得工程において取得された放射線透過特性を示す情報とに応じて定まる範囲に含まれる領域を検出領域として特定する特定工程と、
前記検出領域でモニタされた放射線量に関する信号を出力する出力工程と、
を有することを特徴とする制御方法。
【請求項15】
自動露出制御の対象である対象領域の設定を示す情報と、前記対象領域に対応する被写体の放射線透過特性を示す情報とを取得する取得工程と、
前記対象領域に基づいて候補領域を設定する設定工程と、
前記候補領域に入射中の放射線量をモニタするモニタ工程と、
モニタされた放射線量と前記取得工程において取得された放射線透過特性を示す情報とに応じて定まる範囲に含まれる領域を検出領域として特定する特定工程と、
前記検出領域でモニタされた放射線量に関する信号を出力する出力工程と、
を備える放射線検出装置による制御方法であって、
前記特定工程において、前記候補領域内の複数の位置の放射線量を表す関数の微分値がゼロとなる位置が存在することを含む所定の条件を満たす前記検出領域を特定できない場合に、前記設定工程において、前記候補領域を再設定することを特徴とする制御方法。
【請求項16】
請求項14又は15に記載の制御方法をコンピュータに実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線検出装置、放射線検出システム、制御方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
自動露出制御を行う放射線検出装置が実用化されている。放射線検出装置のうち自動露出制御の対象となる検出領域はユーザによって設定される。この設定された検出領域は、被写体の関心領域(例えば、肺野部)のサイズや被写体と放射線検出装置との位置関係に起因して、関心領域の実際の位置からずれる可能性がある。特許文献1に記載された放射線撮像装置は、モニタ中の放射線量に基づいて階級ごとの複数の画像を生成し、これらの画像と参照画像との類似性に基づいて関心領域に対応する位置にある検出領域を精度よく特定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-36467号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された技術では、複数の画像を生成し、参照画像と比較するため、撮影部位を特定するまでに時間がかかる。撮影部位の特定に時間がかかってしまうと、適切なタイミングで放射線の照射を停止することが困難になる。このことは、胸部撮影のように放射線の照射時間が10ms程度と短い場合に特に顕著である。本発明の1つの側面は、自動露出制御の対象となる検出領域を効率よく特定するための技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題に鑑みて、放射線検出装置であって、自動露出制御の対象である対象領域の設定を示す情報と、前記対象領域に対応する被写体の放射線透過特性を示す情報とを取得する取得手段と、前記対象領域に基づいて候補領域を設定する設定手段と、前記候補領域に入射中の放射線量をモニタするモニタ手段と、モニタされた放射線量前記取得手段により取得された放射線透過特性を示す情報とに応じて定まる範囲に含まれる領域を検出領域として特定する特定手段と、前記検出領域でモニタされた放射線量に関する信号を出力する出力手段と、を備えることを特徴とする放射線検出装置が提供される。
【発明の効果】
【0006】
上記手段により、自動露出制御の対象となる検出領域を効率よく特定できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の実施形態の放射線検出システムの構成例を説明する図。
図2】本発明の実施形態の放射線検出装置の構成例を説明する図。
図3】本発明の実施形態の検出領域の例を説明する図。
図4】本発明の実施形態の放射線検出装置の動作例を説明する図。
図5】本発明の実施形態の検出領域の特定方法の例を説明する図。
図6】本発明の実施形態の検出領域の特定方法の別の例を説明する図。
図7】本発明の実施形態の検出領域の特定方法の別の例を説明する図。
図8】本発明の実施形態の候補領域の再設定方法の例を説明する図。
図9】本発明の実施形態の放射線検出システムの構成例を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。尚、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものでない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0009】
図1を参照して、一部の実施形態に係る放射線検出システムの構成例について説明する。放射線検出システムの構成は既存の構成と同様であってもよく、以下ではその一例について説明する。本願明細書において、放射線は、放射線崩壊によって放出される粒子(光子を含む)の作るビームであるα線、β線、γ線などの他に、同程度以上のエネルギーを有するビーム、例えばX線や粒子線、宇宙線などを含んでもよい。図1の放射線検出システムは、放射線検出装置100と、制御コンソール110と、放射線インタフェースユニット120と、放射線源130とを含んでもよい。放射線検出装置100と、制御コンソール110と、放射線インタフェースユニット120とは、制御部140によって互いに通信可能なように接続されている。制御部140と各装置との接続は、有線であってもよいし無線であってもよい。各装置間の通信において、通信方式や通信内容に応じた通信ディレイが発生する。放射線検出システムはこの通信ディレイの値を管理してもよい。
【0010】
制御コンソール110は、放射線検出システムのユーザ(例えば医師や放射線技師、以下では単にユーザと呼ぶ)が放射線検出システムを操作するための装置である。放射線源130は、放射線を発生する装置である。放射線源130は、放射線インタフェースユニット120からの指示に従って放射線の照射の開始及び停止を行う。放射線検出装置100は、自身に入射した放射線を検出する装置である。放射線検出装置100は、医療用画像診断装置、非破壊検査装置、放射線を用いた分析装置として使用されてもよい。放射線検出装置100は、自身に入射中の放射線量をモニタ可能である。放射線検出システムは、放射線検出装置100でモニタされた放射線量に基づいて、制御部140によって自動露出制御(以下、AEC:Auto Exposure Control)を行う。放射線検出装置100は、例えば17インチ(431.8mm)四方の有効領域を有する。
【0011】
以下、放射線検出システムの動作を簡単に説明する。この動作は既存の放射線検出システムの動作と同様であってもよい。制御コンソール110は、撮影開始前に、ユーザから撮影設定を取得する。この撮影設定は、例えば被写体の種類、被写体の撮影範囲、撮影範囲内の関心領域(ROI:Region of Interest)などを含んでもよい。制御コンソール110は、撮影設定に従って、放射線源130の照射上限時間、管電流、管電圧などの撮影条件を決定する。
【0012】
撮影条件が決定された後、曝射スイッチが押されると、放射線源130は、放射線検出装置100に向けた放射線の照射を開始する。放射線源130から照射された放射線は、放射線検出装置100と放射線源130との間に置かれた被写体を透過し、放射線検出装置100に入射する。放射線検出装置100は、入射中の放射線量をモニタする。モニタ中の放射線量が閾値に到達すると、放射線検出装置100は、放射線源130の放射線の照射を停止させるために必要な放射線量のモニタ情報を生成する。制御部140は、モニタ情報に基づいてモニタ中の放射線量が閾値に到達したことを判定すると、放射線源130の放射線の照射を停止させるための信号(以下、曝射停止信号)を生成する。曝射停止信号を受信した放射線源130は、放射線の照射を停止する。放射線源130は、曝射停止信号を受信する前に照射上限時間に到達した場合にも放射線の照射を停止する。放射線の照射が停止された後、放射線検出装置100は、自身に入射した放射線の放射線量を計測し、その値に基づく放射線画像を制御コンソール110へ送信する。制御コンソール110は、この放射線画像をユーザに向けて表示してもよいし、記憶部に格納してもよい。放射線検出装置100は、モニタ中の放射線量情報を生成し、放射線照射を制御する制御部140に出力するだけであってもよいし、放射線照射を停止させるための制御信号を出力してもよい。以下の本実施形態では、主に前者の場合、すなわち、放射線検出装置100が、モニタ中の放射線量情報を生成し、この放射線量情報を、放射線照射を制御する制御部140に出力する形態について記載している。
【0013】
図2を参照して、放射線検出装置100の構成例について説明する。図2は、入射中の放射線量をモニタ可能な放射線検出装置100の構成の一例であり、他の構成が採用されてもよい。放射線検出装置100は、複数の画素と、駆動回路210と、読出し回路220と、電源回路230と、制御回路240とを含む。
【0014】
複数の画素は、行列状に配置され、画素アレイを形成する。図2の例では画素が5行5列に配置されているが、画素アレイのサイズはこれに限られない。各画素は、入射した放射線量に応じた信号を生成する。駆動回路210は、複数の駆動線201、204を走査することによって、画素に蓄積されている電荷を読出し回路220が読み出せるようにする。読出し回路220は、複数の信号線202、205を通じて画素から信号を読み出す。読出し回路220は、読み出した信号の増幅やアナログ・デジタル変換を行ってもよい。電源回路230は、各画素の光電変換素子にバイアス電圧を供給する。制御回路240は、放射線検出装置100全体の動作を制御する。ここで、制御回路240は、放射線検出装置100の制御装置として機能してもよい。具体的に、制御回路240は、駆動回路210及び読出し回路220に制御信号を供給することによってこれらの動作を制御してもよい。さらに、制御回路240は、放射線検出装置100の外部の装置と通信してもよい。例えば、制御回路240は、制御コンソール110からの指示を受信したり、放射線源130への指示を送信したり、放射線画像を制御コンソール110へ送信したりしてもよい。
【0015】
複数の画素は、複数の画像用画素200と、複数のモニタ用画素203とを含む。画像用画素200は、放射線画像を生成するための画素である。モニタ用画素203は、入射中の放射線量をモニタするための画素である。放射線の入射中に、駆動回路210は、駆動線204にオン信号(画素内のスイッチ素子をオンにする信号)を定期的に供給する。これによって、モニタ用画素203に蓄積されている信号が信号線205を通じて読出し回路220に読み出される。制御回路240は、モニタ用画素203から読み出された放射線量を積算し放射線量を出力する。また、制御回路240は、モニタ用画素203から読み出された放射線量を積算し、積算した放射線量が閾値に到達したかどうかを判定し、その判定結果に基づいて制御信号を出力してもよい。放射線の照射中に、駆動回路210は、駆動線201にオフ信号(画素内のスイッチ素子をオフにする信号)を供給し続ける。そのため、放射線量のモニタ中に画像用画素200には電荷が蓄積され続ける。放射線の照射が停止した後に、駆動回路210は、駆動線201にオン信号を順番に供給する。これによって、画像用画素200に蓄積されている信号が信号線202を通じて読出し回路220に読み出される。制御回路240は、この信号に基づいて放射線画像も生成する。
【0016】
複数のモニタ用画素203は、画素アレイの領域内に分散して配置されている。例えば、複数のモニタ用画素203は、画素アレイを3×3の9個の区画に等分した場合に、各区画に含まれるように分散されてもよい。さらに、複数のモニタ用画素203は、画素アレイをさらに細かく等分した各区画に何れかのモニタ用画素203が含まれるように分散されてもよい。
【0017】
図3を参照して、放射線検出装置100の対象領域について説明する。ユーザは、被写体のうちAECの対象とする部位(以下、対象部位と呼ぶ)に対応する位置にある放射線検出装置100の領域をAECの対象領域として設定する。対象部位に対応する位置とは、放射線検出装置100のうち、対象部位を透過した放射線が到達するとユーザが判断した位置のことである。対象部位は1つの部位であってもよいし、複数の部位であってもよい。対象部位は、関心領域と同じであってもよいし異なっていてもよい。対象部位が複数存在する場合に、ユーザは対象部位ごとに対象領域を設定してもよい。例えば、ユーザは、肺野部が対象部位である場合に、放射線検出装置100のうち、肺野部に対応する位置にある2つの領域を対象領域302a、302bとして設定する。
【0018】
図3(a)では、ベッド300の上に放射線検出装置100が配置され、その上に被写体301が仰向けに横たわっている。図3(b)では、ベッド300の上に放射線検出装置100が配置され、その上に被写体311が仰向けに横たわっている。この状態で撮影が行われる。被写体301は被写体311よりも大きい。例えば、被写体301は大人であり、被写体311は子どもである。図3(a)に示すように、大きな被写体301では、対象領域302a、302bは対象部位(肺野部)内に収まっている。しかし、図3(b)に示すように、小さな被写体311では、対象部位(肺野部)も小さいため、対象領域302a、302bが対象部位(肺野部)からはみ出している。そのため、制御部140は、この対象領域302a、302bでモニタされた放射線量に基づいてAECを行ったとしても、放射線照射の停止のタイミングを正しく判定できない恐れがある。言い換えると、過剰曝射や過少曝射が行われる恐れがある。また、図3(a)の場合でも、被写体301が放射線検出装置100からずれて配置された場合には、対象領域302a、302bが対象部位(肺野部)からはみ出し、AECを正しく行えない恐れがある。
【0019】
以下に説明する本発明の実施形態は、対象部位の放射線透過特性に応じて、放射線照射停止のためにモニタする領域の範囲を調整することによって、AECを精度よく且つ効率的に特定する。
【0020】
図4を参照して、放射線検出装置100の動作例について説明する。以下の動作の各工程は、放射線検出装置100の制御回路240の汎用プロセッサ又は制御部140の汎用プロセッサが、各装置のメモリ内に格納されたプログラムを実行することによって行われてもよい。これに代えて、以下の動作の少なくとも一部の工程は、制御回路240の専用回路(例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit))又は制御部140の専用回路によって実行されてもよい。
【0021】
ステップS401で、制御回路240は、自動露出制御の対象である対象領域の設定を示す情報と、対象領域に対応する被写体の放射線透過特性を示す情報とを取得する。これらの情報は、制御コンソール110を通じてユーザから取得されてもよいし、これらの情報が事前に格納された記憶部から読み出されてもよい。例えば、ユーザは、グラフィカルユーザインタフェースを通じて、放射線検出装置100の有効領域の一部を対象領域として設定してもよい。制御回路240は、この設定を示す情報を取得する。
【0022】
対象領域に対応する被写体の放射線透過特性とは、透過した放射線が対象領域に入射する被写体の部位(上述の対象部位)の放射線透過特性のことである。放射線透過特性は、対象部位がその周囲と比較して放射線を透過しやすいのか又は透過しにくいのかに関してもよい。例えば、肺野部は空気層が多く、照射された放射線の吸収量が少ないため、放射線の透過量は多い。一方、縦隔部は空気層が少なく、骨があるため、放射線の透過量は少ない。放射線透過特性を示す情報は、放射線透過量を直接示す情報であってもよい。これに代えて、放射線透過特性を示す情報は、対象部位の名称(例えば、肺野部や縦隔部)であってもよい。部位とその放射線透過量との対応関係が事前に設定され、放射線検出システムの記憶部(例えば、制御回路240の記憶部や制御コンソール110の記憶部)に格納されていてもよい。制御回路240は、この対応関係を参照することによって、対象部位の名称に基づいて放射線透過量を判定できる。また、放射線透過量が多い部位は、放射線画像において黒くなり、放射線透過量が少ない部位は、放射線画像において白くなる。そのため、放射線透過特性を示す情報は、「黒」又は「白」のような色であってもよい。
【0023】
ステップS402で、制御回路240は、対象領域に基づいて候補領域を設定する。候補領域とは、後続のステップで放射線量をモニタする領域のことである。制御回路240は、対象領域の少なくとも一部と、対象領域外の少なくとも一部とを含むように候補領域を設定してもよい。さらに制御回路240は、対象領域の全体を含むように候補領域を設定してもよい。
【0024】
図5を参照して、候補領域の一例について説明する。図5の上図に示すように、制御回路240は、対象領域302a及び302bに対して、候補領域500を設定する。この例で、制御回路240は、複数の対象領域302a及び302bに対して1つの候補領域500を設定する。候補領域500の大きさ(すなわち、横方向の幅及び縦方向の幅)は事前に設定された固定値であってもよいし、対象領域302a及び302bの大きさに応じた値であってもよい。例えば、候補領域500の横方向の幅は、放射線検出装置100の有効領域の幅に対して所定の比率(例えば、90%)であってもよい。これに代えて、候補領域500の横方向の幅は、対象領域302aの横方向の幅に対して所定の比率(例えば、150%)であってもよい。また、候補領域500の縦方向の幅は、放射線検出装置100の有効領域の横方向の幅に対して所定の比率(例えば、10%)であってもよい。これに代えて、候補領域500の縦方向の幅は、対象領域302aの縦方向の幅に対して所定の比率(例えば、80%や120%)であってもよい。候補領域500の位置は、例えば対象領域302a及び302bの重心と候補領域500の重心とが一致するように設定されてもよい。候補領域の大きさ及び位置の設定は、モニタ用画素203のレイアウトや駆動方法に依存してもよい。
【0025】
図6を参照して、候補領域の別の例について説明する。図6の上図に示すように、対象部位として縦隔部が設定され、縦隔部に重なる領域が対象領域302cとして設定されている。この例で、制御回路240は、1つの対象領域302cに対して1つの候補領域600を設定する。候補領域600の大きさ及び位置の設定方法は、候補領域500の大きさ及び位置の設定方法と同様である。
【0026】
図7を参照して、候補領域の別の例について説明する。図7の上図に示すように、対象部位として肺野部が設定され、縦隔部に重なる領域が対象領域302a及び302bとして設定されている。この例で、制御回路240は、対象領域302a、302bごとに個別の候補領域700a、700bを設定する。具体的に、制御回路240は、対象領域302aに対して候補領域700aを設定し、対象領域302bに対して候補領域700bを設定する。候補領域700aの大きさ及び位置は、対象領域302aに対して設定される。候補領域700bの大きさ及び位置は、対象領域302bに対して設定される。候補領域700a及び700bの大きさ及び位置の設定方法は、候補領域500の大きさ及び位置の設定方法と同様である。
【0027】
ステップS403で、ユーザからの指示に従って放射線源130が放射線検出装置100へ向けた放射線の照射を開始したことに伴い、制御回路240は、候補領域に含まれるモニタ用画素203を用いて、候補領域に入射中の放射線量のモニタを開始する。
【0028】
ステップS404で、制御回路240は、モニタされた放射線量が、ステップS401で取得した放射線透過特性に応じて定まる範囲に含まれる領域を検出領域として特定する。このステップは、放射線量のモニタ開始から一定時間経過後に実行されてもよいし、候補領域に含まれる複数のモニタ用画素203でモニタされた放射線量の代表値(例えば、最大値や最小値、平均値、中央値)が所定の閾値を超えたことに応じて実行されてもよい。
【0029】
図5を参照して、検出領域の特定方法の一例について説明する。制御回路240は、モニタされた放射線量に基づいて、候補領域500内の横方向における複数の位置の放射線量を表す1変数関数を作成する。図5の中図は、この関数をグラフ501で表現したものである。グラフ501の横軸は、候補領域500の横方向における位置(座標値)を示す。グラフ501の縦軸は、横方向の各位置における縦方向の複数の位置の放射線量の代表値(例えば、平均値、中央値など)を示す。肺野部では放射線透過量が多いためモニタされる放射線量が多く、肺野部の周囲ではそれよりも放射線透過量が少ないためモニタされる放射線量が少ない。対象部位が肺野部の場合に、ステップS401で取得された放射線透過特性は、対象部位の放射線透過量が多いことを示す。そこで、制御回路240は、候補領域500のうち、放射線量が多い領域を検出領域502a及び502bとして特定する。
【0030】
具体的に、図5の中図に示すように、グラフ501は、2つの位置で極大値を取り、そのうち位置p4で最大値v2を取る。極大値を取る位置において、関数の微分値はゼロとなる。制御回路240は、放射線量がv1からv2までの範囲内となる位置p1からp2及びp3からp5を検出領域502a及び502bの横方向における範囲とする。検出領域の縦方向における範囲は、候補領域500の縦方向における範囲と同一であってもよい。制御回路240は、v2に基づいてv1を決定してもよい。例えば、制御回路240は、v1=a×v2(例えば、a=0.85)となるようにv1を決定してもよい。これに代えて、制御回路240は、v2-v1=(グラフ501の値域)×b(例えば、b=0.85)となるようにv1を決定してもよい。
【0031】
さらに、制御回路240は、関数の2階微分に基づいて検出領域を特定してもよい。例えば、制御回路240は、極大値となる位置を含み、2階微分値がゼロとなる点を両端とする範囲を検出領域502a及び502bの横方向における範囲としてもよい。
【0032】
図6を参照して、検出領域の特定方法の別の例について説明する。候補領域500内の横方向における複数の位置の放射線量を表す1変数関数を作成する点は図5の例と同様である。図6の中図は、この関数をグラフ601で表現したものである。グラフ601の横軸は、候補領域600の横方向における位置(座標値)を示す。グラフ601の縦軸は、横方向の各位置における縦方向の複数の位置の放射線量の代表値(例えば、平均値、中央値など)を示す。縦隔部では放射線透過量が少ないためモニタされる放射線量が少なく、縦隔部の周囲ではそれよりも放射線透過量が多いためモニタされる放射線量が多い。対象部位が縦隔部の場合に、ステップS401で取得された放射線透過特性は、対象部位の放射線透過量が少ないことを示す。そこで、制御回路240は、候補領域500のうち、放射線量が少ない領域を検出領域602として特定する。
【0033】
具体的に、図6の中図に示すように、グラフ601は、1つの位置で極小値v1を取る。極小値を取る位置において、関数の微分値はゼロとなる。制御回路240は、放射線量がv1からv2までの範囲内となる位置p1からp3を検出領域602の横方向における範囲とする。検出領域の縦方向における範囲は、候補領域500の縦方向における範囲と同一であってもよい。制御回路240は、v1に基づいてv2を決定してもよい。例えば、制御回路240は、v2=a×v1(例えば、a=1.1)となるようにv2を決定してもよい。これに代えて、制御回路240は、v2-v1=(グラフ501の値域)×b(例えば、b=0.90)となるようにv2を決定してもよい。
【0034】
さらに、制御回路240は、関数の2階微分に基づいて検出領域を特定してもよい。例えば、制御回路240は、極大値となる位置を含み、2階微分値がゼロとなる点を両端とする範囲を検出領域602の横方向における範囲としてもよい。
【0035】
図7を参照して、検出領域の特定方法の別の例について説明する。図7の例では、対象領域ごとに候補領域が設定されている。そこで、制御回路240は、候補領域700aと候補領域700bとのそれぞれについて、候補領域内の横方向における複数の位置の放射線量を表す1変数関数を作成する。グラフ701aの縦軸は、候補領域700a内の横方向の各位置における縦方向の複数の位置の放射線量の代表値(例えば、平均値、中央値など)を示す。グラフ701bの縦軸は、候補領域700b内の横方向の各位置における縦方向の複数の位置の放射線量の代表値(例えば、平均値、中央値など)を示す。制御回路240は、候補領域700aのうち、放射線量がv1からv2の範囲内にある位置p1からp2を検出領域として特定する。また、制御回路240は、候補領域700bのうち、放射線量がv3からv4の範囲内にある位置p3からp4を検出領域として特定する。v1からv2の範囲及びv3からv4の範囲の特定方法は、図5のv1からv2の範囲の特定方法と同様であってもよい。
【0036】
図7の例で、制御回路240は、検出領域の縦方向における範囲も、モニタされた放射線量に基づいて特定する。具体的に、制御回路240は、モニタされた放射線量に基づいて、候補領域700a内の縦方向における複数の位置の放射線量を表す1変数関数を作成する。図7の右図は、この関数をグラフ701cで表現したものである。グラフ701cの縦軸は、候補領域700aの縦方向における位置(座標値)を示す。グラフ701cの横軸は、縦方向の各位置における横方向の複数の位置の放射線量の代表値(例えば、平均値、中央値など)を示す。この関数に基づいて、制御回路240は、候補領域700aのうち、放射線量がv5からv6の範囲内にある位置p5からp6を検出領域として特定する。v5からv6の範囲の特定方法は、図5のv1からv2の範囲の特定方法と同様であってもよい。
【0037】
上述の例では、制御回路240は、1変数関数を用いて検出領域を特定した。これに代えて、制御回路240は、候補領域500内の横方向及び縦方向の両方における複数の位置の放射線量を表す2変数関数を作成し、これに基づいて検出領域を特定してもよい。例えば、制御回路240は、この2変数関数の微分(例えば、全微分)がゼロになる位置を含むように検出領域を特定してもよい。
【0038】
ステップS405で、制御回路240は、検出領域を特定できたかどうかを判定する。検出領域を特定できた場合(ステップS405で「YES」)に、制御回路240は処理をステップS406に遷移し、それ以外の場合(ステップS405で「NO」)に、制御回路240は処理をステップS409に遷移する。上述の図5図7の例は、いずれも検出領域を特定できた場合である。図8を参照して、検出領域を特定できなかった場合について説明する。
【0039】
図8では、被写体301が放射線検出装置100に対して左側にずれて配置されている。そのため、ステップS401で取得された対象領域302a及び302bは、対象部位である肺野部に対して右側にずれている。制御回路240は、候補領域700aでモニタされた放射線量に基づいてグラフ801aを表す関数を生成し、候補領域700bでモニタされた放射線量に基づいてグラフ801bを表す関数を生成する。
【0040】
図8でも、図7と同様にして、検出領域の横方向における範囲を設定するとする。しかし、グラフ801aは、微分値がゼロとなり、極大値v2を有するものの、この位置よりも左側でv1に等しくなる位置が存在しないため、制御回路240は、検出領域の横方向における範囲を特定できない。また、グラフ801は、極大値を取らないため、制御回路240は、検出領域の横方向における範囲を特定できない。
【0041】
このように、所定の条件を満たすように検出領域を特定できない場合に、ステップ409で、制御回路240は、候補領域を再設定する。所定の条件とは、上述のように、候補領域内の複数の位置の放射線量を表す関数の微分値がゼロとなる位置が存在することを含んでもよい。対象部位の放射線透過量が多い場合に、制御回路240は、放射線量が多くなる方向に候補領域を移動する。例えば、グラフ801aの左半分の放射線量の平均値は、グラフ801aの右半分の放射線量の平均値よりも大きい。そこで、制御回路240は、候補領域700aを左方向に移動する。グラフ801bについても同様である。制御回路240は、候補領域を移動する代わりに、この移動方向に候補領域を広げてもよい。
【0042】
ステップS406で、制御部140は、検出領域でモニタされた放射線量が閾値を超えたかどうかを判定する。放射線量が閾値を超えた場合(ステップS406で「YES」)に、制御部140は処理をステップS407に遷移し、それ以外の場合(ステップS406で「NO」)に、制御部140はステップS406を繰り返す。このステップは、1つ以上の対象検出領域が特定できた場合に実行される。そのため、制御部140は、1つ以上の検出領域を、この検出領域以外の領域よりも優先的に基づいて、放射線の照射を停止するかどうかを判定する。例えば、制御部140は、この検出領域以外の領域の放射線量を考慮せずに、1つ以上の検出領域のみに基づいて、放射線の照射を停止するかどうかを判定してもよい。閾値との比較に用いられる放射線量は、検出領域に含まれる複数のモニタ用画素203の放射線量の代表値(例えば、平均値や中央値など)であってもよい。
【0043】
ステップS407で、制御部140は、放射線の照射の停止を指示する信号を生成し、放射線源130へ送信する。この信号を受けて、放射線源130は放射線の照射を中止する。ステップS408で、制御回路240は、画像用画素200から信号を読み出し、その信号に基づいて放射線画像を生成する。
【0044】
図4の方法で、制御部140によって行われる処理は、放射線検出装置100に内蔵される制御回路240や、他の装置(回路)によって実行されてもよい。
【0045】
ステップS406で「NO」の場合に、制御回路240は、ステップS406を繰り返した。これによって、ステップS404で特定された検出領域がステップS406で繰り返し使用される。これに代えて、ステップS406で「NO」の場合に、制御回路240は、ステップS404に処理を遷移してもよい。この場合に、放射線量が閾値を超えたかどうかの判定ごとに検出領域を特定することになる。これによって、各時点でモニタされた放射線量に応じて検出領域を特定できる。
【0046】
上記の方法によれば、対象部位の放射線透過特性に応じて検出領域を特定し、この検出領域の放射線量に基づいて放射線の照射を停止するかどうかが判定される。そのため、ユーザが設定した対象領域が対象部位に対して適切でなかったとしても、AECを精度良く且つ効率的に行うことができる。その結果、放射線検出装置100の再設置の手間を省けるため、ユーザや患者の負担が軽減する。
【0047】
図9は上述の放射線検出装置のX線診断システム(放射線検出システム)への応用例を示した図である。X線チューブ6050(放射線源)で発生した放射線としてのX線6060は、被験者又は患者6061の胸部6062を透過し、放射線検出装置6040に入射する。放射線検出装置6040は、上述の放射線検出装置100であってもよい。この入射したX線には患者6061の体内部の情報が含まれている。X線の入射に対応してシンチレータは発光し、これを光電変換して、電気的情報を得る。この情報はデジタル信号に変換され信号処理部となるイメージプロセッサ6070により画像処理され制御室の表示部となるディスプレイ6080で観察できる。なお、放射線検出システムは、検出装置と、検出装置からの信号を処理する信号処理部とを少なくとも有する。
【0048】
また、この情報は電話回線6090等の伝送処理部により遠隔地へ転送でき、別の場所のドクタールームなど表示部となるディスプレイ6081に表示もしくは光ディスク等の記録部に保存することができ、遠隔地の医師が診断することも可能である。また記録部となるフィルムプロセッサ6100により記録媒体となるフィルム6110に記録することもできる。
【0049】
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、発明の範囲を公にするために請求項を添付する。
【符号の説明】
【0050】
100 放射線検出装置、140 制御部、240 制御回路、302a~302b 対象領域、500 候補領域、502a~502b 検出領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9