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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-05
(45)【発行日】2023-12-13
(54)【発明の名称】レンズ装置および撮像装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 7/08 20210101AFI20231206BHJP
   G02B 7/02 20210101ALI20231206BHJP
   G03B 17/02 20210101ALI20231206BHJP
   G03B 3/12 20210101ALI20231206BHJP
   G02B 7/28 20210101ALI20231206BHJP
   H04N 23/55 20230101ALI20231206BHJP
   H04N 23/661 20230101ALI20231206BHJP
【FI】
G02B7/08 C
G02B7/02 C
G03B17/02
G03B3/12
G02B7/28 N
H04N23/55
H04N23/661
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2019217353
(22)【出願日】2019-11-29
(65)【公開番号】P2021086117
(43)【公開日】2021-06-03
【審査請求日】2022-11-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100101498
【弁理士】
【氏名又は名称】越智 隆夫
(74)【代理人】
【識別番号】100106183
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 弘司
(74)【代理人】
【識別番号】100136799
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 亜希
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 潤一
【審査官】門田 宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-035130(JP,A)
【文献】特開2007-163645(JP,A)
【文献】特開2011-133820(JP,A)
【文献】国際公開第2014/141541(WO,A1)
【文献】特開2003-222783(JP,A)
【文献】特開2012-252255(JP,A)
【文献】特開2007-295240(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 7/08
G02B 7/02
G03B 17/02
G03B 3/12
G02B 7/28
H04N 23/55
H04N 23/661
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バックフォーカス調整をするために光軸に沿って可動のレンズ群と、
前記レンズ群を移動させる駆動部と、
前記駆動部を制御する制御部と、
外部装置と通信する通信部と、
を有し、
前記制御部は、予め定められた条件に基づいて、前記バックフォーカス調整の前に前記バックフォーカス調整が可能か否かの判定を行
前記制御部は、前記通信部を介して前記バックフォーカス調整に関する指令を受信した場合、前記判定に関する情報を前記外部装置に対して送信する、
ことを特徴とするレンズ装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記バックフォーカス調整が可能でないとの前記判定に基づいて、前記バックフォーカス調整を可能にするための案内情報を前記外部装置に対して送信する、
ことを特徴とする請求項に記載のレンズ装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記外部装置の種別に対応した案内情報を前記外部装置に対して送信することを特徴とする請求項に記載のレンズ装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記バックフォーカス調整が可能でないとの前記判定に基づいて、前記バックフォーカス調整を可能にするための設定を行う、
ことを特徴とする請求項ないし請求項のうちいずれか1項に記載のレンズ装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記設定を行った場合、前記バックフォーカス調整が可能になるまでの時間に関する情報を前記外部装置に対して送信することを特徴とする請求項に記載のレンズ装置。
【請求項6】
前記制御部は、合焦状態に基づいて前記判定を行うことを特徴とする請求項ないし請求項のうちいずれか1項に記載のレンズ装置。
【請求項7】
前記合焦状態を検出する検出部を有することを特徴とする請求項に記載のレンズ装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記合焦状態に関する情報を外部装置から取得することを特徴とする請求項に記載のレンズ装置。
【請求項9】
前記制御部は、ぼかし効果のための前記レンズ群の移動に関する情報に基づいて、前記判定を行うことを特徴とする請求項1ないし請求項のうちいずれか1項に記載のレンズ装置。
【請求項10】
ズームレンズ群と、フォーカスレンズ群と、開口絞りとを有し、
前記制御部は、前記ズームレンズ群、前記フォーカスレンズ群、前記開口絞りそれぞれの遠隔制御が可能かに基づいて、前記判定を行う、
ことを特徴とする請求項1ないし請求項のうちいずれか1項に記載のレンズ装置。
【請求項11】
前記制御部は、前記レンズ群の遠隔制御が可能かに基づいて前記判定を行うことを特徴とする請求項1ないし請求項のうちいずれか1項に記載のレンズ装置。
【請求項12】
バックフォーカス調整をするために光軸に沿って可動のレンズ群と、
前記レンズ群を移動させる駆動部と、
前記駆動部を制御する制御部と、
を有し、
前記制御部は、レンズ面における欠陥に関する情報に基づいて、前記バックフォーカス調整が可能か否かの判定を行うことを特徴とするレンズ装置。
【請求項13】
前記制御部は、前記外部装置を特定する情報に基づいて、前記条件を変更することを特徴とする請求項に記載のレンズ装置。
【請求項14】
前記制御部は、ぼかし効果のための前記レンズ群の移動に関する情報に基づいて、前記バックフォーカス調整が可能でないと判定した場合、該移動の状態を解除する制御を行うことを特徴とする請求項1ないし請求項13のうちいずれか1項に記載のレンズ装置。
【請求項15】
前記制御部は、前記レンズ装置に対する操作権に関する情報に基づいて、前記判定を行い、前記バックフォーカス調整が可能でないとの前記判定に基づいて、前記操作権を前記外部装置に与える、
ことを特徴とする請求項ないし請求項のうちいずれか1項に記載のレンズ装置。
【請求項16】
バックフォーカス調整をするために光軸に沿って可動のレンズ群と、
前記レンズ群を移動させる駆動部と、
前記駆動部を制御する制御部と、
光学面を払拭するワイパー装置と、
を有し、
前記制御部は、予め定められた条件に基づいて前記バックフォーカス調整が可能か否かの判定を行い、
前記制御部は、前記光学面における汚れに関する情報に基づいて、前記バックフォーカス調整が可能でないとの前記判定を行った場合、前記ワイパー装置を作動させることを特徴とすレンズ装置。
【請求項17】
バックフォーカス調整をするために光軸に沿って可動のレンズ群と、
前記レンズ群を移動させる駆動部と、
前記駆動部を制御する制御部と、
光学面の結露を低減する低減装置と、
を有し、
前記制御部は、予め定められた条件に基づいて前記バックフォーカス調整が可能か否かの判定を行い、
前記制御部は、前記光学面における結露に関する情報に基づいて、前記バックフォーカス調整の実行が可能でないとの前記判定を行った場合、前記低減装置を作動させることを特徴とすレンズ装置。
【請求項18】
請求項1ないし請求項17のうちいずれか1項に記載のレンズ装置と、
前記レンズ装置によって形成された像を撮る撮像素子と、
を有することを特徴とする撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズ装置および撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
テレビカメラ等の撮像システムにおけるレンズ装置には、レンズ装置のフランジバックにバックフォーカスを適合させるように調整するための操作部が備えられている。レンズ装置のバックフォーカスはレンズ装置の温度によって変化し、また、レンズ装置やカメラ装置の製造誤差や環境温度の変化によって、レンズ装置の設計上のフランジバックに対して、実際のレンズのフランジ面から撮像素子面までの距離が変化しうる。仮に、バックフォーカスが未調整の場合には、フォーカスレンズをどれだけ操作しても焦点調整することができないことがあるため、ユーザは、撮影前に、撮影に使用するカメラ装置とレンズ装置の組み合わせで、実際のフランジバック(フランジ面から撮像面までの距離)にバックフォーカスを適合させるように正確に調整する必要がある。特に交換レンズを用いた撮影において、バックフォーカス調整(フランジバック調整ともいう)を撮影前に正確に行っておくことが重要であり、従来、上述の操作部を用いてバックフォーカス調整を行うことが可能であった。
【0003】
特許文献1は、バックフォーカスの調整が実施されていることを検知すると、映像信号の評価値を表示し、精度よくバックフォーカス調整をできるようにすることを開示している。また、特許文献2は、バックフォーカス調整時に、フォーカスレンズ位置とフォーカス評価値との関係を表示し、バックフォーカスが調整できていない場合に再調整を促すことを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-006398号公報
【文献】特許第4810292号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
バックフォーカスが電動で調整可能である場合、レンズ装置のある撮影現場から離れた遠隔操作室(遠隔地)からのバックフォーカス調整も可能となる。その場合、レンズ装置においてバックフォーカス調整が実行可能な状態であることが必要である。例えば、バックフォーカス調整のためのレンズを移動させて行うぼかし効果撮影中でないことや、遠隔操作者がズームレンズ群やフォーカスレンズ群を操作可能であること、レンズ面にゴミや汚れ、結露がないこと、陽炎などの外乱がないこと等が必要である。ところが、遠隔地では、レンズ装置がそのような状態であるかを判断できない。
【0006】
本発明は、例えば、バックフォーカスの遠隔調整に有利なレンズ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するためのレンズ装置は、バックフォーカス調整をするために光軸に沿って可動のレンズ群と、前記バックレンズ群を移動させる駆動部と、前記駆動部を制御する制御部と、外部装置と通信する通信部と、を有し、前記制御部は、予め定められた条件に基づいて、前記バックフォーカス調整の前に前記バックフォーカス調整が可能か否かの判定を行前記制御部は、前記通信部を介して前記バックフォーカス調整に関する指令を受信した場合、前記判定に関する情報を前記外部装置に対して送信する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、例えば、バックフォーカスの遠隔調整に有利なレンズ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施例1における撮影システムの構成を示すブロック図。
図2】実施例1における撮影システムのバックフォーカス調整可否を判定する処理の流れを示すフローチャート。
図3】実施例1におけるバックフォーカス調整可否情報表示の一例を示す図。
図4】実施例2における撮影システムの構成を示すブロック図。
図5】実施例2における 撮影システムのバックフォーカス調整可否を判定する処理の流れを示すフローチャート。
図6】実施例2における案内情報テーブルの一例を示す図。
図7】実施例2における案内情報作成処理の流れを示すフローチャート。
図8】実施例2におけるバックフォーカス調整案内表示の一例を示す図。
図9】実施例3における撮影システムの構成を示すブロック図。
図10】実施例3における調整準備設定テーブルの一例を示す図。
図11】実施例3におけるバックフォーカス調整準備処理の流れを示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明の好ましい実施の形態を、添付の図面に基づいて詳細に説明する。
【実施例1】
【0011】
以下、図1~3を参照して、本発明の第1の実施例による、レンズ装置について説明する。図1に、本発明の第1の実施例に係るレンズ装置を含む撮影システムの構成を示す。
【0012】
撮影システムは、レンズ装置100と、レンズ装置100によって形成された像を受ける撮像素子を有するカメラ装置200と、レンズ装置100を操作するための操作装置300から構成されている。
【0013】
レンズ装置100は、バックフォーカスレンズ101、駆動部102、位置検出部103、制御部104、通信部L106から構成される。制御部104は調整可否判定部105を含む。
【0014】
バックフォーカスレンズ101は、レンズ装置100のバックフォーカスを調整するために光軸方向に可動なレンズ群である。レンズ装置100のバックフォーカスを調整するために光軸方向に移動可能なレンズ群は、実施例ではレンズ群として例示して説明するが、本発明はこれに限定されることはなく、単レンズでもよい。ぼかし効果をON/OFFする際にも同様に光軸方向に移動する。また、後述の操作装置300をレンズ装置100に接続することで操作することが可能となっている。
【0015】
駆動部102は、バックフォーカスレンズ101を動かすためのアクチュエータである。本実施例においては、DCモータとするが、これに限定されない。
【0016】
位置検出部103は、バックフォーカスレンズ101の位置を検出するための位置センサである。本実施例においては、エンコーダとするが、これに限定されない。
【0017】
制御部104はCPUであり、バックフォーカスレンズ101を駆動するためのコントロール要求が入力されると、位置検出部103からの位置情報に基づいて駆動信号を演算し、算出した駆動信号を駆動部102に出力する。また、制御部104に含まれる調整可否判定部(判定部)105は、レンズ装置のフランジバックにバックフォーカスを適合させるように調整するために必要な調整条件項目情報に基づいて、バックフォーカス調整を実行するための条件の成否を判定し、判定結果を通信部L106に出力する。本実施例の調整条件項目情報は、ぼかし効果有無情報と、不図示のズームレンズ群、フォーカスレンズ群、開口絞りの操作権情報とする。
【0018】
通信部L106は、カメラ装置200と通信する通信部である。カメラ装置200からの指令や要求を受信すると、受信した指令や要求を制御部104に出力する。逆に、カメラ装置200からの指令や要求への応答として、制御部104から情報を入力すると、カメラ装置200に入力した情報を送信する。
【0019】
カメラ装置200は、レンズ装置100と通信接続可能な撮像装置である。通信部C201が構成されており、通信によってレンズ装置100に対して要求を送信、またレンズ装置100の情報を受信する。
【0020】
操作装置300は、レンズ装置100に接続可能な操作部材である。本実施例においては、ぼかし効果の有無やぼかし効果ON時のボケ量操作、また前記光軸方向に移動して倍率を変更するズームレンズ群、光軸方向に移動してフォーカス調整するフォーカスレンズ群、開口絞りの操作権を切り替えることが可能であるものとする。
【0021】
テレビ撮影において、フォーカスレンズよりも焦点調整に対して敏感度の高いバックフォーカスレンズを駆動することで、被写体に対して意図的に焦点を合わせないように撮影を行い、映像効果を付与することを指向する場合がある。これにより、映像効果として、被写体に焦点が合った状態から徐々にぼかしていく操作(以下、ぼかし効果ONとも記載する)や、その逆の操作(以下ぼかし効果OFFとも記載する)を行うことが可能になる。この時のぼかし操作は専用の操作部材を用いて行われ、ぼかし量が大きい場合は、撮影現場から離れた遠隔地においてもモニタ画面の映像上でぼかし効果ONの操作が実施されていることを認識することができる。一方、ぼかし量が小さい場合には、遠隔地のモニタ画面の映像上でぼかし効果ONの操作が実施されていることが認識できない場合がある。特許文献1、特許文献2によると、ぼかし効果ONのままバックフォーカス調整を実施すると、再調整を促すことができない。実際の撮影時に、ぼかし効果ONの状態で撮影を開始し、ぼかし効果を停止する操作がなされることで、バックフォーカスがずれてしまうことも起こりえる。
【0022】
また、次のようなバックフォーカス調整を実施しにくい場合がある。例えば、レンズ装置から遠隔地にいる操作者(遠隔操作者、遠隔制御者)が、ズームレンズ群やフォーカスレンズ群の駆動を遠隔制御で操作できない場合である。まず、レンズ装置のバックフォーカスを調整するためには、開口絞り、ズームレンズ群、フォーカスレンズ群を動かすなど、レンズ装置を所定の状態にする操作が必要である。また、レンズ装置は、複数の操作元からの操作が可能であり、操作部材の接続やレンズ装置の状態(操作権の設定の状態)によっては、遠隔操作者からズームレンズ群やフォーカスレンズ群を操作できない場合がある。このような場合、遠隔操作者一人でバックフォーカス調整を行うことができず、レンズ装置を操作できるカメラマンが存在した場合においても、調整中に、カメラマンと遠隔操作者が連携する必要があるなど、調整の効率が悪くなってしまう。
【0023】
さらに、レンズ面における欠陥(ゴミや汚れ、結露)がある場合、調整環境において陽炎などの外乱がある場合には、ピントを合わせることができないため、バックフォーカス調整不可となる。特許文献1や特許文献2だと、調整時の映像信号評価から、調整結果は不良と判断されるはずだが、上記のような要因で調整結果不良となる場合には、そもそもバックフォーカス調整可能な条件が整っていないため、調整する時間が無駄となり、効率が悪い。
【0024】
図2のフローチャートを用いて、調整可否判定部105が行う、レンズ装置100のバックフォーカス調整の可否を判定する処理について説明する。
【0025】
まず、バックフォーカス調整を開始すると、ステップS201に進む。本実施例では、カメラ装置200からバックフォーカス調整を開始する通知ための信号を受信した場合とする。
【0026】
ステップS201では、調整可否判定部105に保持されているデータである調整可否情報Adjを、不可能を示す「NG」に初期化し、ステップS202に進む。
【0027】
ステップS202では、調整可否判定部105は制御部104からバックフォーカスを調整するために必要な調整条件項目情報を取得し、ステップS203に進む。
【0028】
ステップS203では、ステップS202で取得した調整条件項目情報に基づいて、バックフォーカス調整の実行の可否(バックフォーカス調整を実行するための条件が成立しているか否か(成否))を判定し、可能であればステップS204に進み、そうでなければステップS205に進む。具体的には、ぼかし効果ONであること、ズームレンズ群/フォーカスレンズ群/開口絞りの少なくともいずれかの操作権についてカメラ装置よりも優先度の高い操作元があること、のいずれかを満たす場合には、バックフォーカス調整はできないと判断する。すなわち、カメラ装置から通信部を介してバックフォーカス調整の要求が入力された場合に、要求元であるカメラ装置が、ズームレンズ群またはフォーカスレンズ群または開口絞りの最も高い優先度の操作権を持つことがバックフォーカス調整の実行の条件となる。
【0029】
ステップS204では、調整可否情報Adjを可能を示す「OK」とし、ステップS205に進む。
ステップS205では、調整可否情報Adjを通信部L106に出力し、処理を終了する。
【0030】
次に、図3を用いて、調整可否判定部105が更新する調整可否情報Adjの表示例を示す。図3(a)、図3(b)は、調整可否情報Adjが「OK」の場合を、図3(c)、図3(d)は調整可否情報Adjが「NG」の場合を示している。図示するように、図3(a)、図3(c)は文字列のみの表示であり、図3(b)、図3(d)は図形表示となっている。いずれにしても、バックフォーカス調整が行える状態か否かが確認できる表示であれば良い。また、表示部はデバイスに依存されず、レンズ装置100やカメラ装置200に接続されるアクセサリを想定している。
【0031】
以上の様な処理を行うことで、バックフォーカス調整を実施する前に、レンズ装置においてバックフォーカス調整が可能な状態か否かを通知することが可能となる。レンズ装置からカメラ装置に対して、調整可否情報Adjを通知することで、撮像装置か設置された場所の遠隔操作者がバックフォーカス調整を開始する際に、バックフォーカス調整できる状態であるか否かを判断できるようになる。これにより、無駄な調整失敗を省くことができ、かつ正確にバックフォーカス調整できていないまま撮像装置が撮影に使用されることを防ぐことが可能となる。
【0032】
本実施例では、レンズ装置にカメラ装置のみが通信可能に接続される構成を記載した。しかし、本発明はこれに限定されることはなく、例えばズームレンズ群を操作するレンズアクセサリなどでも良く、レンズ装置に通信可能に接続される外部装置に対して、該外部装置からレンズ装置のバックフォーカス調整をすることができるか否かを通知するようにしても良い。また、表示部をレンズ装置に備え、レンズ装置自身の表示部に対してバックフォーカス調整の可否情報を表示するようにしても良い。
【0033】
また、本実施例では、調整可否判定部105が実施するバックフォーカス調整の可否判定のトリガを、カメラ装置からの調整開始情報としたが、本発明はこれに限定されることはない。例えば、レンズ装置に備えられたバックフォーカス操作部が操作された時を含んでも良く、操作者がバックフォーカス調整を行う前に判断できれば良い。
【0034】
さらに、バックフォーカス調整の可否情報を通知するようにしたが、これに限らず「可」のみ、または「否」のみとしても良く、操作者が「可」か「否」を判断できれば良い。
【0035】
本実施例において、バックフォーカス調整可否の判断材料として、ぼかし効果有無情報と、ズームレンズ群、フォーカスレンズ群、開口絞りの操作権情報とした。その理由は、操作装置300を、ぼかし効果有無の切替、ズームレンズ群、フォーカスレンズ群、開口絞りの操作権切り替えが可能な、レンズ装置に接続される外部装置としたからである。例えば、操作装置300をぼかし効果有無の切替のみ可能な操作部材とし、ズームレンズ群、フォーカスレンズ群、開口絞りの操作権が通信部C201を介してカメラ装置200から確実に切替可能な場合もある。この場合は、ズームレンズ群、フォーカスレンズ群、開口絞りの操作権については、カメラ装置から切り替えが可能となるので、バックフォーカス調整可否の判断材料もぼかし効果有無情報のみとしても良い。この場合は、ステップS203において「ぼかし効果ONであるか」のみが判断されることとなる。
【0036】
また、バックフォーカス調整可否の判断材料は、これらに限らず、例えば、開口絞り、ズームレンズ群、フォーカスレンズ群、バックフォーカスレンズ群のいずれかが電動駆動できない場合には、バックフォーカス調整ができないとする判断を含んでも良い。また、駆動ユニットが接続されていない場合や、何等かの故障などでレンズ位置を認識できていない場合、温度センサを備え、保証温度外である場合についてもバックフォーカス調整ができないとする判断を含んでも良い。さらに、オートフォーカスなどの合焦判定部による合焦状態に関する合焦情報などを用い、レンズ面の欠陥(ゴミ付着、レンズ面の汚れ、結露など)を検知した場合や、陽炎などの影響により、焦点を合わせられないことを検知した場合についても、バックフォーカス調整ができないとする判断を含んでも良い。
【0037】
以上説明した構成により、レンズ装置の状態に基づいてバックフォーカス調整の可否状態を、レンズ装置に接続される外部装置に通知することが可能になる。
【実施例2】
【0038】
以下、図4~8を参照して、本発明の第2の実施例による、レンズ装置について説明する。
以下、実施例1で説明した内容と同様の構成要素は、同一符号で示し、説明を省略する。
【0039】
本発明の第2の実施例に係る撮影システムの構成を図4に示す。
実施例1では、バックフォーカス調整の可否を通知する例を示した。本実施例では、バックフォーカス調整の可否の判断に加え、否の場合には、可にするための案内情報通知を行う。
【0040】
図4に示した本実施例の構成では、図1の実施例1の構成に対して、制御部104に案内情報作成部107が追加されている点が異なる。
【0041】
本実施例のバックフォーカスを調整するために必要な調整条件項目情報は、実施例1と同様、ぼかし効果有無情報、不図示のズームレンズ群、フォーカスレンズ群、開口絞りの操作権情報とする。
【0042】
制御部104の調整可否判定部105は、調整条件項目情報に基づいて、バックフォーカス調整の可否を判定し、判定結果を案内情報作成部107に出力する。この時、調整条件項目情報1つ1つに基づいてバックフォーカス調整の可否を判定する点が実施例1と異なる。
【0043】
案内情報作成部107は、調整可否判定部105からのバックフォーカス調整の可否を示す情報に基づき、バックフォーカス調整を可にするための案内情報を作成する。また、作成した案内情報を通信部L106に出力する。案内情報作成についての詳細は後述する。
通信部L106は、案内情報作成部107からの案内情報を、カメラ装置200に送信する。
【0044】
次に、図5のフローチャート図を用いて、調整可否判定部105が行う、レンズ装置100のバックフォーカス調整可否を判定する処理について説明する。
【0045】
ステップS202では、制御部104から調整条件項目情報を取得し、ステップS501に進む。
ステップS501では、ステップS202で取得した調整条件項目情報1つ1つに対して、バックフォーカス調整が可能か否かを判定する。全ての調整条件項目情報に対してバックフォーカス調整可能であれば、ステップS204に進む。そうでなければステップS502に進む。
【0046】
ステップS502では、バックフォーカス調整可否判定が否となったバックフォーカス調整可否情報に対し、判定結果「否」を付与し、ステップS205に進む。
【0047】
次に、図6を用いて、案内情報を作成する際に参照する案内情報テーブルについて説明する。
【0048】
図6に示すように、案内情報テーブルには、調整条件項目情報が、項目番号と案内情報データに紐づけられたテーブルデータがリストされている。例えば、ぼかし効果がONであれば、ぼかし効果をOFF(停止)にすることを依頼するような案内情報データとなる。また、レンズ面に汚れがあることを検知した場合には、レンズ面の汚れを取り除くことを促す案内情報データとなる。
【0049】
次に、図7のフローチャート図を用いて、案内情報作成部107が行う、案内情報を作成する処理について説明する。
【0050】
まず、案内情報の作成を開始すると、ステップS701に進む。
ステップS701では、調整可否判定部105から取得したバックフォーカス調整可否情報の総情報数MAXを設定し、判定する情報のインデックス番号である判定情報番号Nに0を代入し、ステップS702に進む。
【0051】
ステップS702では、判定情報番号Nが総情報数MAXより小さいか否かを判定し、N≦MAXであれば、ステップS703に進み、そうでなければステップS706に進む。
【0052】
ステップS703では、図6で説明した案内情報テーブルを参照し、判定情報番号Nに対応する調整条件項目情報の案内情報データNdataを取得して、ステップS704に進む。
【0053】
ステップS704では、ステップS703で取得した案内情報データNdataを、案内情報Ninfoにセットし、ステップS705に進む。
ステップS705では、判定情報番号Nをインクリメントし、ステップS702に戻る。
【0054】
ステップS706では、案内情報Ninfoを通信部L106に出力し、処理を終了する。
【0055】
次に、図8を用いて、案内情報作成部107が更新する案内情報の表示例を示す。
図8(a)、図8(b)は、いずれもバックフォーカス調整可否情報が否の場合を示している。図示するように、図8(a)は文字列のみの表示であり、図8(b)は図形表示となっている。図8(a)については、ぼかし効果がONの場合の案内情報となっており、図3(c)に対して、「ExDef OFF」の表示が追加されている。これにより、操作者はバックフォーカス調整するためにぼかし効果をOFFにする必要があることが分かるようになる。また、図8(b)については、図3(d)に対して、「AdjErr Code 001」の表示が追加されている。この様に、あらかじめ決められたエラーコードを表示しても良い。いずれにしても、バックフォーカス調整が行えない場合、どのようにすればバックフォーカス調整が可能になるかを確認できる表示であれば良い。
【0056】
以上の様な処理を行うことで、バックフォーカス調整前に、レンズ装置がバックフォーカス調整否の場合に、バックフォーカス調整可にするための案内情報を通知することが可能となる。レンズ装置からカメラ装置に対して、案内情報を通知することで、遠隔操作者がバックフォーカス調整を開始する際に、バックフォーカス調整できる状態か否かに加え、バックフォーカス調整するために必要な操作が分かるようになる。これにより、迅速にバックフォーカス調整可能な状態にすることができ、バックフォーカス調整の効率化が可能となる。
【0057】
本実施例において、案内情報テーブルの調整条件項目は、予め決められた項目、および項目数としたが、これに限定されず、機種によって変更できるようにしても良いし、ユーザが項目を追加登録、または削除できるようにしても良い。また、案内情報データにおいても、表現方法を変更できるようにしても良い。例えば、図8(a)または図8(b)に示した表現方法を選択できるようにしても良い。表示デバイスによって、最適な表現が適用できれば良い。
【0058】
さらに、本実施例では、案内情報は1種類としたが、撮像装置から離れた遠隔操作室やカメラマン、アクセサリ、レンズ装置など、通知先(レンズ装置に対する外部装置の種別)に応じて(外部装置を特定する情報に基づいて)案内情報を変更する必要がある場合もある。これに対しては、以下のようにして、通知先に応じて異なる案内情報を通知できるようにしても良い。例えば、「ズーム駆動ユニットが接続されていない」ことが理由で、バックフォーカス調整できない場合を考える。この時、ズーム駆動ユニットを接続する操作をしなければならないのはレンズ装置である。そのため、ズーム駆動ユニットを接続する操作を実行可能な位置にある通知先である、レンズ装置やレンズ装置に接続されるアクセサリ、およびカメラ装置に対する通知には、「ズーム駆動ユニットを接続してください」という指示通知を行う。一方、ズーム駆動ユニットを接続する操作を直接実行できない遠隔操作室のようなカメラ装置から離れた位置にいる遠隔操作者に対しては、「ズーム駆動ユニットが接続されていない」というエラー通知を行う。このようにすることで、誰に何をしてほしいかを明確にすることができ、バックフォーカス調整時の効率化を実現することが可能となる。
【0059】
さらに、バックフォーカス調整中には、バックフォーカス調整を行う人以外、ズームレンズ群や開口絞りなどを操作してほしくない。そのため、バックフォーカス調整の可否情報が可であっても、案内情報を通知するようにしても良い。例えば、バックフォーカス調整を行わないカメラマンに対して、「ズーム、フォーカス、開口絞りの操作禁止」などの通知を行う。この様にすることで、バックフォーカス調整を効率的に行うことが可能となる。
【実施例3】
【0060】
以下、図9~11を参照して、本発明の第3の実施例による、レンズ装置について説明する。
以下、実施例1、2で説明した内容と同様の構成要素は同一符号で示し、説明を省略する。
【0061】
本発明の第3の実施例に係る撮影システムの構成を図9に示す。
実施例1、2では、バックフォーカス調整の可否を判断し、さらに実施例2ではバックフォーカス調整を可能にするための案内情報を通知する例を示した。本実施例では、バックフォーカス調整ができないと判断された場合に、バックフォーカス調整を可能にするための設定(可能化設定)を行う例を示す。
【0062】
図9に示した本実施例の構成において、図1の実施例1の構成に対して、制御部104に調整準備設定部108が追加されている点が異なる。
【0063】
本実施例のバックフォーカスを調整するために必要な調整条件項目情報は、実施例1と同様、ぼかし効果有無情報、不図示のズームレンズ群、フォーカスレンズ群、開口絞りの操作権情報とする。
【0064】
制御部104の調整可否判定部105は、調整条件項目情報に基づいて、バックフォーカス調整が可能か否かを判定し、判定結果(調整可否情報)を調整準備設定部108に出力する。この時、調整条件項目情報1つ1つに基づいてバックフォーカス調整の可否を判定する点は実施例2と同様である。
【0065】
調整準備設定部108は、調整可否判定部105からの調整可否情報に基づき、バックフォーカス調整を可能にするための可能化設定を実施する。また、作成した調整可否情報を通信部L106に出力する。
通信部L106は、調整準備設定部108からの調整可否情報を、カメラ装置200に送信する。
【0066】
次に、図10を用いて、バックフォーカス調整を可能にするための可能化設定を実施する際に参照する設定テーブルについて説明する。
【0067】
図示するように、調整条件項目情報が、項目番号と調整準備設定内容に紐づけられたテーブルデータとなっている。例えば、ぼかし効果がONであれば、ぼかし効果をOFFにする調整準備設定内容となる。また、レンズ面に汚れがあることを検知した場合には、レンズ面や最前面のカバーガラス等の光学面の汚れを取り除くために、光学面を払拭する不図示のワイパー装置を作動させるように設定する調整準備設定内容となる。
【0068】
次に、図11のフローチャート図を参照しながら、調整準備設定部108が行う、バックフォーカス調整の準備設定処理について説明する。
【0069】
まず、バックフォーカス調整の準備設定処理を開始すると、ステップS1101に進む。
ステップS1101では、調整可否判定部105から取得したバックフォーカス調整可否情報の総情報数MAXをセットし、判定する情報のインデックス番号である判定情報番号Nに0を代入し、ステップS1102に進む。
【0070】
ステップS1102では、判定情報番号Nが総情報数MAXより小さいか否かを判定し、N≦MAXであれば、ステップS1103に進み、そうでなければステップS1106に進む。
【0071】
ステップS1103では、図10で説明したバックフォーカス調整準備設定テーブルを参照し、判定情報番号Nに対応する調整準備設定内容を取得して、ステップS1104に進む。
【0072】
ステップS1104では、ステップS1103で取得した調整準備設定内容を設定し、ステップS1105に進む。
ステップS1105では、判定情報番号Nをインクリメントし、ステップS1102に戻る。
【0073】
ステップS1106では、ステップS1104で設定したいずれかの調整準備設定内容が設定中であるか設定が完了しているかを判定することにより、バックフォーカス調整ができない状態になっているかどうかを判定する。バックフォーカス調整ができない状態であればステップS1107に進み、バックフォーカス調整が可能な状態であればステップS1108に進む。
【0074】
ステップS1107では、バックフォーカス調整ができない状態であるため、「バックフォーカス調整準備中」であることを示す情報を通信部L106に出力し、ステップS1106に進む。この情報は、バックフォーカス調整の準備をしているため、操作者に待機してもらう通知であれば良い。
【0075】
ステップS1108では、バックフォーカス調整が可能な状態であるため、「バックフォーカス調整準備完」、または「バックフォーカス調整可」であることを示す情報を通信部L106に出力し、処理を終了する。
【0076】
以上のような処理を行うことで、バックフォーカス調整前に、レンズ装置がバックフォーカス調整否の場合に、バックフォーカス調整可にするための条件を満たすように設定を行うことが可能となる。自動的に設定を行い、設定中であることをレンズ装置からカメラ装置に対して通知する。このようにすることで、遠隔操作者がバックフォーカス調整を開始する際に、バックフォーカス調整できる状態になるまで待機し、バックフォーカス調整するための準備が不要になる。これにより、迅速にバックフォーカス調整可能な状態にすることができ、バックフォーカス調整の効率化が可能となる。
【0077】
本実施例では、調整準備の内容を一つ一つ設定するようにしたが、これに限定されず、必要な設定を一斉に実施するようにしても良い。また、バックフォーカス調整が完了した後は、バックフォーカス調整準備の設定を解除し、バックフォーカス調整前の状態に戻すようにしても良い。さらに、本実施例では、強制的にバックフォーカス調整可の状態に設定するようにしたが、これに限定されず、一度表示部に「バックフォーカス調整のための準備の実行の要否についての入力」を促し、ユーザの設定によってバックフォーカス調整準備を行うようにしても良い。また、調整準備の内容によっては、自動的に完結できないものもあるし、準備に時間がかかるものもある。例えば、駆動ユニットを接続するなどは、人の手で実施する必要があるため、この場合は実施例2で示した案内情報表示と組み合わせるようにしても良い。また、ヒーター、温風吹き付け装置等の装置(霜取り装置、低減装置)で結露を蒸発させる(低減する)場合は、バックフォーカス調整が可能な状態となるまで(結露の除去が終わるまで)に時間がかかるため、待機の表示時に、目安の準備完了時間を付与するようにしても良い。
【0078】
(その他の実施例)
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワークまたは記憶媒体を介してシステムまたは装置に供給し、そのシステムまたは装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサーがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【0079】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形および変更が可能である。
【符号の説明】
【0080】
100 レンズ装置
101 バックフォーカスレンズ
102 駆動部
104 制御部
105 調整可否判定部(判定部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11