(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-05
(45)【発行日】2023-12-13
(54)【発明の名称】画像処理装置および画像処理方法
(51)【国際特許分類】
H04N 23/63 20230101AFI20231206BHJP
G03B 17/18 20210101ALI20231206BHJP
【FI】
H04N23/63
G03B17/18
(21)【出願番号】P 2019218347
(22)【出願日】2019-12-02
【審査請求日】2022-11-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松岡 成己
【審査官】▲うし▼田 真悟
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-309301(JP,A)
【文献】特開2015-095833(JP,A)
【文献】特開2016-220023(JP,A)
【文献】特開2001-245204(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 23/63
G03B 17/18
G06T 1/00
G06T 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像データを取得する取得手段と、
前記画像データの輝度または色成分の階調値のヒストグラムを表示装置に表示させる表示手段と、を有し、
前記表示手段は、前記画像データが取り得る最大値が前記画像データのビット深度によって定まる最大値よりも小さい場合と、そうでない場合とで、前記ヒストグラムの表示方法を異ならせる、
ことを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記表示手段は、前記画像データが取り得る最大値が前記画像データのビット深度によって定まる最大値より小さい場合には、前記画像データが取り得る最大値よりも大きな値の範囲と、前記画像データが取り得る値の範囲とが視覚的に区別できるように前記ヒストグラムを表示させることを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記表示手段は、前記画像データが取り得る最大値が前記画像データのビット深度によって定まる最大値よりも小さい場合には、前記ヒストグラムの階級の範囲の最大値を前記画像データが取り得る最大値に基づいて決定することを特徴とする請求項1または2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記表示手段は、前記画像データが取り得る最小値が前記画像データのビット深度によって定まる最小値より大きい場合には、前記画像データが取り得る最小値よりも小さな値の範囲と、前記画像データが取り得る値の範囲とが視覚的に区別できるように前記ヒストグラムを表示させることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記表示手段は、前記画像データが取り得る最小値が前記画像データのビット深度によって定まる最小値より大きい場合には、前記ヒストグラムの階級の範囲の最小値を前記画像データが取り得る最小値に基づいて決定することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記画像データが取り得る最大値が、前記画像データを生成する際に用いる規格に応じて定まる値であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記表示手段は、前記画像データが取り得る最大値よりも大きな値の範囲と、前記画像データが取り得る値の範囲とが視覚的に区別できるように前記ヒストグラムを表示させる場合、前記画像データが取り得る最大値よりも大きな値の範囲と、前記画像データが取り得る値の範囲とで、ビンの表示形態が同じになるようにすることを特徴とする請求項6に記載の画像処理装置。
【請求項8】
前記表示手段は、前記画像データが取り得る最大値の代わりに、前記画像データの最大値を用いることを特徴とする請求項6に記載の画像処理装置。
【請求項9】
前記表示手段は、前記画像データに、前記画像データが取り得る最大値よりも大きな値のデータが含まれる場合、該データの度数を前記画像データが取り得る最大値を含む区間の度数に含めることを特徴とする請求項6に記載の画像処理装置。
【請求項10】
前記画像データが取り得る最小値が、前記画像データを生成する際に用いる規格に応じて定まる値であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項11】
前記表示手段は、前記画像データが取り得る最小値よりも小さな値の範囲と、前記画像データが取り得る値の範囲とが視覚的に区別できるように前記ヒストグラムを表示させる場合、前記画像データが取り得る最小値よりも小さな値の範囲と、前記画像データが取り得る値の範囲とで、ビンの表示形態が同じになるようにすることを特徴とする請求項10に記載の画像処理装置。
【請求項12】
前記表示手段は、前記画像データが取り得る最小値の代わりに、前記画像データの最小値を用いることを特徴とする請求項10に記載の画像処理装置。
【請求項13】
前記表示手段は、前記画像データに、前記画像データが取り得る最小値よりも小さな値のデータが含まれる場合、該データの度数を前記画像データが取り得る最小値を含む区間の度数に含めることを特徴とする請求項10に記載の画像処理装置。
【請求項14】
前記画像データが、輝度を絶対値として扱うHDR規格に準拠した画像データ、もしくは露光量の対数に比例した輝度を有する画像データであることを特徴とする請求項1から13のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項15】
撮像素子と、
請求項1から14のいずれか1項に記載の画像処理装置とを有し、
前記画像データが前記撮像素子によって得られることを特徴とする撮像装置。
【請求項16】
画像処理装置が実行する画像処理方法であって、
画像データを取得する取得工程と、
前記画像データの輝度または色成分の階調値のヒストグラムを表示装置に表示させる表示工程と、を有し、
前記表示工程では、前記画像データが取り得る最大値が前記画像データのビット深度によって定まる最大値よりも小さい場合と、そうでない場合とで、前記ヒストグラムの表示方法を異ならせる、
ことを特徴とする画像処理方法。
【請求項17】
コンピュータを、請求項1から14のいずれか1項に記載の画像処理装置が有する各手段として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置および画像処理方法に関し、特にハイダイナミックレンジ(HDR)信号の取り扱い技術に関する。
【背景技術】
【0002】
発光素子(例えばLED)の性能向上などにより、従来よりも表示輝度のダイナミックレンジが広い表示装置が実現されている。このような表示装置では、従来の表示装置では表現できなかった、高輝度域の色やディテールを有する信号(HDR信号)をより忠実に表示することができる。
【0003】
HDR信号における映像信号レベルと表示輝度との関係を表す信号特性はEOTF(Electro-Optical Transfer Function:電気光伝達関数)で規定される。そして、EOTFにはSMPTE ST 2084で規格化されているPQ(Perceptual Quantization)と、ARIB STD-B67で規格化されているHLG(Hybrid Log Gamma)の2つがある。HLGが表示輝度を相対値として扱うのに対して、PQは表示輝度を最大10000nits(またはcd/m2)の絶対値として扱う点が大きな違いである。そのため、出力ダイナミックレンジが変化するような撮影モードで撮影を行うと、PQでは表示ピーク輝度が変化する場合がある。
【0004】
図1(a)に、異なる撮影モードに対応付けられた、出力ダイナミックレンジが異なる入出力特性(ガンマカーブ)41、42の例を示す。横軸は入力段数(EV)、縦軸は出力輝度である。入力段数0は、反射率18%の無彩色被写体(標準反射体)の明るさに相当する。ガンマカーブ41、42は、入力段数が3程度までは違いが無いが、入力段数が3を超える高輝度の特性が異なっている。具体的には、ガンマカーブ41の最大出力値(図中43で示す)、ガンマカーブ42の最大出力値(図中44で示す)よりも小さい。また、最小出力値はいずれのガンマカーブも0であるが、最大出力値43、44はいずれも10ビットデータの最大値である1023よりも小さい。
【0005】
また、広ダイナミックレンジの画像データを得るために、LOGガンマと呼ばれるガンマカーブを用いて撮影することが知られている。
図1(b)はLOGガンマ45の一例であり、横軸に入力段数、縦軸に出力輝度を示す。LOGガンマ45を用いると、露光量の対数に比例した出力輝度を有する映像信号(LOG信号またはLOGデータとよぶ)が得られる。
図1(b)に示すLOGガンマ45を用いた場合、LOG信号の輝度は、最小値minDRL46から最大値maxDRL47の範囲の値を有する。ここで、10ビットで表現可能な信号値が0から1023であるとすると、最大出力値maxDRL47は1023よりも小さく、最小出力値minDRL46は0よりも大きい。なお、LOGデータはそのまま表示するとコントラストおよび彩度の低い画像となるため、グレーディングと呼ばれる画像処理を適用して、色や出力ダイナミックレンジを調整して用いる。
【0006】
このように、ビット深度によって定まる、表現可能な信号値の範囲(10ビットであれば0から1023)よりも狭い範囲しか用いないガンマカーブが存在する。この場合、映像信号の最大値や最小値は、信号のビット深度で定まる最大値や最小値と一致しない。また、使用されるガンマカーブによって、映像信号の最大値や最小値が変化する。
【0007】
一方で、使用されるガンマカーブにかかわらず、入力輝度が高い場合に映像信号の白飛びは発生しうる。白飛びした映像信号からなる画像領域は階調を復元することができないため、例えば撮影時において、白飛びが発生する可能性があるかどうかを把握できることが望ましい。従来の表示輝度ダイナミックレンジ(Standard Dynamic Range:SDR)の画像データを取り扱う撮像機器では、輝度ヒストグラムの最大レベル近傍の頻度を黒で、その他のレベルの頻度を白で表示するものがある(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1では、画像データのレベルが0から255である場合に、240以上のレベルを有する画素の頻度を黒く表示している。これは、画像データの取り得るレベルの範囲が、8ビット深度で表現可能な範囲と合致する場合である。
【0010】
しかしながら、
図1に示したガンマカーブを用いて撮影された映像信号は、出力最大輝度に対応する信号値が、信号値を表すビット深度で表現可能な最大値よりも小さい。したがって、輝度ヒストグラムにおける最大レベルをビット深度に基づいて定めた場合、白飛びする可能性がユーザに正しく伝わらないことが起こりうる。例えば、特許文献1の構成であれば、輝度ヒストグラムにおいて黒で表示される頻度がない場合であっても、白飛びが発生することがあり得る。
【0011】
また、特許文献1には記載されていないが、低輝度領域における黒つぶれ発生について警告を行う場合についても同様の問題が生じる。
【0012】
本発明はこのような従来技術の課題に鑑みてなされたものである。本発明の目的は、信号のビット深度で表現可能な値の範囲より、信号値として使用される値の範囲が狭い映像信号について、白飛びや黒つぶれの発生可能性についてユーザが把握可能な表示を行う画像処理装置および画像処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述の目的は、画像データを取得する取得手段と、画像データの輝度または色成分の階調値のヒストグラムを表示装置に表示させる表示手段と、を有し、表示手段は、画像データが取り得る最大値が画像データのビット深度によって定まる最大値よりも小さい場合と、そうでない場合とで、ヒストグラムの表示方法を異ならせる、ことを特徴とする画像処理装置によって達成される。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、信号のビット深度で表現可能な値の範囲より、信号値として使用される値の範囲が狭い映像信号について、白飛びや黒つぶれの発生可能性についてユーザが把握可能な表示を行う画像処理装置および画像処理方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図2】実施形態に係る画像処理装置の一例としてのデジタルカメラの断面図
【
図3】
図2のデジタルカメラの機能構成例を示すブロック図
【
図4】
図3の信号処理回路25の動作を説明するための機能ブロック図
【
図5】PQ(Perceptual Quontization)のEOTF特性を示した図
【
図6】実施形態におけるHDR信号のヒストグラム表示動作に関する機能ブロック図
【
図7】実施形態におけるmaxDRLの算出動作に関するフローチャート
【
図8】HDR信号の例と、第1実施形態に係るヒストグラム表示に関する模式図
【
図9】第3実施形態に係るヒストグラム表示に関する模式図
【
図10】第5実施形態に係るヒストグラム表示に関する模式図
【
図11】第6実施形態に係るヒストグラム表示に関する模式図
【発明を実施するための形態】
【0016】
●(第1実施形態)
以下、添付図面を参照して本発明をその例示的な実施形態に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定しない。また、実施形態には複数の特徴が記載されているが、その全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0017】
なお、以下の実施形態では、本発明をデジタル一眼レフカメラ(DSLR)で実施する場合に関して説明する。しかし、本発明は撮像機能を有する任意の電子機器に対して適用可能である。このような電子機器には、ビデオカメラ、コンピュータ機器(パーソナルコンピュータ、タブレットコンピュータ、メディアプレーヤ、PDAなど)、携帯電話機、スマートフォン、ゲーム機、ロボット、ドローン、ドライブレコーダが含まれる。これらは例示であり、本発明は他の電子機器にも適用可能である。
【0018】
図2は実施形態に係るデジタルカメラ(以下、カメラ)100の、主な光学部材やセンサ等の配置例を示す断面図である。カメラ100はレンズ交換可能なデジタル一眼レフカメラであり、カメラ本体1と交換レンズ2を有している。ただし、本発明は撮像素子を用いたカメラ全般に適用可能であり、レンズ交換が可能か否か、ミラーボックスを有するか否かといった構造の差異や、カメラの用途には依存しない。本発明はスマートフォン、コンピュータ、ゲーム機といった電子機器に内蔵されたカメラや、医療機器、産業機器、自動車などに搭載されるカメラなどにも適用可能である。カメラ本体1において撮像素子10は例えばCMOSイメージセンサやCCDイメージセンサであり、複数の画素(蓄積型光電変換素子)が配列されている。撮像素子10の前方近傍に設けられていたメカニカルシャッタ11は、撮像素子10の露出タイミングおよび露出時間を制御する。
【0019】
主ミラー3と、主ミラー3の半透過性部分の背面に配置された第1の反射ミラー7は、撮影時には交換レンズ2からの光が撮像素子10に直接入射するよう、上方に移動(ミラーアップ)する。第2の反射ミラー8は、第1の反射ミラー7が反射した光束をさらに反射し、焦点検出用センサ(AFセンサ)9に入射させる。AFセンサ9は例えば画素数が撮像素子10よりも少ない撮像素子であってよい。
【0020】
第1の反射ミラー7、第2の反射ミラー8および焦点検出用センサ9は、撮影画面内の任意の位置での位相差検出方式での焦点検出を行うための構成である。測光用センサ(AEセンサ)6はペンタプリズム4および第3の反射ミラー5で反射された撮影画面の像を受光する。AEセンサ6は受光部を複数の領域に分割し、領域ごとに被写体の輝度情報を出力できる。分割数に制限は無い。なお、撮像素子においては、受光部に配置される画素以外に、画素信号の増幅回路や信号処理用の周辺回路などが形成されている。
【0021】
ペンタプリズム4によってファインダー光学系が構成される。
図2には示していないが、ペンタプリズム4で反射された被写体像はアイピースから観察可能である。AEセンサ6には主ミラー3によって反射されてピント板12によって拡散された光線のうち光軸外の一部が入射する。交換レンズ2はカメラ本体1に設けられたレンズマウントの接点を通じ、必要に応じてカメラ本体1と通信する。なお、ライブビュー表示および動画記録時には主ミラー3が上方に移動した状態のため、AEセンサ6やAFセンサ9は使用できない。そのため、撮像素子10で撮像された画像から得られる情報を使用して露出制御や焦点調節制御を行う。
【0022】
図4は、
図3に示したカメラ本体1とその交換レンズ2の電気回路の構成例を示すブロック図である。カメラ本体1において制御部21は例えば内部にALU(ARITHMETIC and Logic Unit)、ROM、RAMやA/Dコンバータ、タイマー、シリアル通信ポート(SPI)等を内蔵したワンチップマイクロコンピュータである。制御部21は、例えばROMに記憶されたプログラムをRAMにロードして実行することにより、カメラ本体1および交換レンズ2の動作を制御する。制御部21の具体的な動作については後述する。
【0023】
AFセンサ9及びAEセンサ6の出力信号は、制御部21のA/Dコンバータ入力端子に接続される。信号処理回路25は制御部21の指示に従って撮像素子10を制御し、撮像素子10が出力する画素信号にノイズ低減処理やA/D変換などの前処理を行ってRAW画像データを生成する。また、信号処理回路25は、RAW画像データに対して、色補間やホワイトバランス処理といった現像処理を適用し、画像信号(画像データ)を生成する。また信号処理回路25は、得られた画像信号を記録するにあたって、圧縮および合成といった、必要な画像処理を行う。
【0024】
メモリ28はDRAM等であり、信号処理回路25が種々の信号処理を行う際のワークメモリとして使われたり、後述する表示器27に画像を表示する際のビデオメモリ(VRAM)として使われたりする。表示器27はカメラ本体1の背面液晶ディスプレイや、外部ディスプレイであり、カメラ100の設定値などの情報やメッセージ、メニュー画面等のGUI、また撮像された画像などを表示する。表示器27はHDR表示が可能であるものとする。表示器27は制御部21からの指示により制御される。記憶部26は例えば半導体メモリカードである。信号処理回路25から供給される記録用の画像信号(動画または静止画信号)は、所定形式のデータファイルに格納され、記憶部26に記録される。
【0025】
モーター22は、制御部21の制御に従い、主ミラー3及び第1の反射ミラー7の移動(アップおよびびダウン)やメカニカルシャッタ11のチャージを行う。操作部23はユーザがカメラを操作するために用いるスイッチなどの入力デバイス群である。操作部23には撮影準備動作の開始および撮影開始を指示するためのレリーズスイッチ、撮影モードを選択するための撮影モード選択スイッチ、方向キー、決定キーなどが含まれる。接点部29はレンズマウントに設けられ、交換レンズ2が装着されるとレンズ側の接点部50と接触する。接点部29は交換レンズ2に電源を供給したり交換レンズ2と通信したりするために用いられ、制御部21のシリアル通信ポートの入出力信号が接続される。シャッタ駆動部24は制御部21の出力端子に接続されてメカニカルシャッタ11を駆動する。
【0026】
交換レンズ2には、接点部29と対をなす接点部50が設けられている。接点部50には、制御部21と同様のワンチップマイクロコンピュータであるレンズ制御部51が接続されている。レンズ制御部51は接点部50を通じてカメラ本体1の制御部21と通信することができる。レンズ制御部51は例えばマイクロプロセッサ、ROM、およびRAMを有し、ROMに記憶されたプログラムをRAMにロードして実行することにより、制御部21からの指示に基づいて交換レンズ2の動作を制御する。また、レンズ制御部51は交換レンズ2の固有情報や現在の状態などを、制御部21に通知する。フォーカスレンズ駆動部52はレンズ制御部51の出力端子に接続され、フォーカスレンズを駆動する。ズーム駆動部53は、レンズ制御部51の制御に従い、交換レンズ2の画角を変更する。絞り駆動部54は、レンズ制御部51の制御に従い、絞りの開口量を調整する。
【0027】
交換レンズ2がカメラ本体1に装着されると接点部29および50が接触する。これによりレンズ制御部51とカメラ本体の制御部21とが電気的に接続され、レンズ制御部51と制御部21とが通信可能となる。また、接点部29および50を通じ、交換レンズ2の動作に必要な電力もカメラ本体1から供給される。制御部21が焦点検出や露出演算を行うために必要な交換レンズ2の固有情報や、フォーカスレンズの位置に基づいた現在の合焦距離に関する情報などがレンズ制御部51から制御部21へ、データ通信によって供給される。交換レンズ2の固有情報には、光学系の特性に関する情報や、機種情報などが含まれてよい。また、制御部21による焦点検出処理や露出演算処理で得られた焦点調節情報や絞り情報は制御部21からレンズ制御部51にデータ通信によって供給される。レンズ制御部51は、焦点調節情報に従ってフォーカスレンズを駆動したり、絞り情報に従って絞りの開口量を制御したりする。
【0028】
以下、第1実施形態における撮影から現像までの具体的な動作について、説明する。
図4の操作部23に含まれる電源スイッチがオンされるなどにより、制御部21が動作可能になると、制御部21は初期化処理を実行する。初期化処理において制御部21は、交換レンズ2のレンズ制御部51から、焦点検出や露出演算に必要なレンズ情報を取得する。初期化処理が完了すると制御部21は撮影スタンバイ状態における動作を実行する。撮影スタンバイ状態において制御部21は、例えば動画の撮影と、撮影された動画の表示を継続的に実行し、ライブビュー表示を実現する。また制御部21は、操作部23を監視し、操作部23の操作が検出されると、検出された操作に応じた処理を実行する。
【0029】
例えば、操作部23に含まれるレリーズスイッチの半押し操作が検出された場合、制御部21は静止画の撮影準備処理を実行する。撮影準備処理には、AF(オートフォーカス)処理、AE(自動露出)処理などが含まれる。また、レリーズスイッチの全押し操作が検出された場合、制御部21は静止画の撮影処理を実行する。静止画の撮影処理において制御部21は、撮影準備処理で得られた焦点検出や露出演算の結果に基づいてフォーカスレンズの位置を調整したり、メカニカルシャッタ11の動作を制御したりする。
【0030】
撮像素子10の露光が終了し、画素信号が読み出されると、信号処理回路25においてRAW画像データに対する現像処理が行われる。本実施形態のカメラ100は、撮像で得られた画像をSDR画像として記録するか、HDR画像として記録するかを設定可能である。信号処理回路25は、SDR画像の記録が設定されている場合はSDR用のパラメータを用いて現像処理を実行し、8ビットのSDR画像データを生成する。また、信号処理回路25は、HDR画像の記録が設定されている場合はHDR用のパラメータを用いて現像処理を実行し、10ビットのHDR画像データを生成する。ここで、8ビット、10ビットは各色成分(例えばR、G、B)の値を表すデータのビット深度である。なお、RAW画像データを記録し、現像処理は後で適用してもよい。
【0031】
HDR画像における映像信号レベルと表示輝度との関係を表す信号特性はEOTF(Electro-Optical Transfer Function:電気光伝達関数)で規定される。そして、EOTFにはSMPTE ST 2084で規格化されているPQ(Perceptual Quontization)と、ARIB STD-B67で規格化されているHLG(Hybrid Log Gamma)の2つがある。HLGは、SDRと同様に表示輝度を相対値として扱うため、最大表示輝度(表示最大出力目標値)は表示装置によって変化する。一方、PQは
図5に示すように、表示輝度を最大10,000nits(またはcd/m
2)の絶対値として扱うため、表示最大出力目標値は表示装置に依存せずに一定である。
【0032】
なお、本実施形態では、特に記載が無い限り、HDR画像の信号特性は輝度を絶対値として取り扱うEOTF(例えばPQ)に準拠しているものとする。したがって、信号処理回路25は、PQに従った輝度値を有するHDR画像データを生成する。そのため、
図1(a)に例示したような、撮影モードによってダイナミックレンジ(より正確には出力最大値)が変化する場合、生成されるHDR画像データの表示最大出力目標値も撮影モードによって変化する。
【0033】
RAW画像の現像処理について
図4を用いて説明する。
図4において、402~405、408~412は、信号処理回路25が行う処理を機能ブロックとして記載したものであるが、機能ブロックの1つ以上が制御部21によって実施されてもよい。RAW画像データ401を構成する画素データのそれぞれは、対応する画素に設けられたカラーフィルタの色の強度を表し、他の色の情報は有していない。ここでは撮像素子10の各画素にはR(赤)、G(緑)、B(青)のいずれかのカラーフィルタが設けられているものとする。
ホワイトバランス部402では、光源による色かぶりを補正して白を再現するための処理がなされる。具体的にはホワイトバランス部402は、RAW画像データ401を構成する各画素のRGBデータを、例えばxy色空間等の所定の色空間にプロットする。そして、ホワイトバランス部402は、その色空間において光源色の可能性が高い黒体輻射軌跡付近にプロットされたデータのR,G,Bを積分し、その積分値からR及びB成分のホワイトバランス係数G/R及びG/Bを求める。ホワイトバランス部402はホワイトバランス係数を画像データに適用することによりホワイトバランス処理を実施する。
色補間部403ではノイズリダクション処理や、色補間処理により、全ての画素においてR、G、Bの色情報が揃ったカラー画像を生成する。生成されたカラー画像は、マトリクス変換部404およびガンマ変換部405を経て基本的なカラー画像が生成される。ここでガンマ変換部405は、輝度取得部409が取得したガンマカーブ(コントラスト調整用カーブ407)を用いる。HDR画像を得る場合のガンマカーブは、EOTFの逆特性(Inverse EOTF)であり、例えば
図5に示すPQ(Perceptual Quontization)の逆特性である。なお、Inverse EOTFとOOTF(Opto-Optical Transfer Function)特性を組み合わせたOETF(Optical-Electro Transfer Function)を用いてもよい。
【0034】
<最大出力目標値>
カメラ100には、
図1(a)に示したような、出力ダイナミックレンジが異なる複数の撮影モードが用意されている。ユーザは例えば撮影するシーンのコントラストや明るさ、撮影した画像を表示するディスプレイが対応する出力輝度などを考慮して、撮影モードを選択することができる。
【0035】
本明細書における最大出力目標値とは、画像データのビット深度で定まる、輝度の最大階調数(ビット深度が10ビットであれば信号値0~1023に相当)のうち、現像処理後の画像データが取り得る最大の階調値である。したがって、最大出力目標値は、出力ダイナミックレンジの上限に対応する。
図1(a)に示したガンマカーブは、いずれも最大出力目標値が1023より低いため、HDR信号でも出力ダイナミックレンジは0~1023の範囲より狭くなる。
【0036】
最大出力目標値は撮影モードごとに予め定められる。カメラ100はHDR撮影モードとして第1のモードと第2のモードを有し、第1のモードの最大出力目標値よりも第2のモードの方が、最大出力目標値が高いものとする。例えば
図1(a)の例であれば、最大出力目標値43を有するガンマカーブ41が第1のモード、最大出力目標値44を有するカーブ42が第2のモードの入出力特性である。本実施形態では、第1のモードの最大出力目標値は288nits(対応する信号値632)、第2のモードの最大出力目標値は648nits(対応する信号値721)に予め定められているものとする。
【0037】
輝度を絶対値として扱う場合、表示輝度と信号値との関係は表示装置に依存しない。したがって、撮影モード間の最大出力目標値の差は、出力ダイナミックレンジの差となる。本実施形態では、最大出力目標値[nitsまたはcd/m2]、あるいは最大出力目標値に対応する信号値を、maxDRL(maximum Dynamic Range Level)と呼ぶ。maxDRLを最大出力目標値に対応する信号値とした場合、第1のモードのmaxDRLは632、第2のモードのmaxDRLは721である。HDR画像の輝度値を表すデータのビット深度が10ビットの場合、データとして表現可能な値の範囲は0~1023である。しかし、第1のモード、第2のモードのいずれも、maxDRLは1023より小さい。そのため、例えば第1のモードで撮影されたHDR画像において、633~1023の値を有する輝度データは存在しない。
【0038】
撮影モードに応じた異なる最大出力目標値を実現するため、撮影モードに応じたガンマカーブをコントラスト調整用カーブ407として、制御部21のROMに予め格納しておく。そして、ガンマ選択部408は、現在設定されている撮影条件406を、例えばメモリ28を参照して取得する。そして、ガンマ選択部408は、取得した撮影条件に含まれる撮影モードに対応するコントラスト調整用カーブ407を制御部21から取得し、輝度取得部409に出力する。
【0039】
輝度取得部409は、取得したコントラスト調整用カーブ407をガンマ変換部405に供給する。また、輝度取得部409は、コントラスト調整用カーブ407の最大出力値を含む複数の出力値について、対応する絶対輝度を取得する。絶対輝度は、SMPTE ST2084で規格化されているPQ方式のEOTF(
図5)から求めることができる。そして、輝度取得部409は、maxDRL(コントラスト調整用カーブ407の最大出力値または、最大出力値に対応する絶対輝度[nits])を、例えばメモリ28に格納する
【0040】
色輝度調整部410は、ガンマ変換部405がガンマ変換して生成したカラー画像データに対して、画像の見栄えを改善するための画像処理を適用する。色輝度調整部410は例えば、カラー画像に対してシーン検出処理を適用し、予め定められたシーンであると判定された場合には、シーンに関連づけられた画像処理を適用する。例えば夕景シーンであると判定された場合、色輝度調整部410は、彩度を強調する画像処理をカラー画像データに対して適用する。
【0041】
色輝度調整部410の出力する画像データは、圧縮部411でデータ量削減のために符号化される。符号化方法は例えばHEVC規格に準拠した方法であってよいが、他の方法でもよい。記録部412は、符号化された画像データを格納した所定形式のデータファイルを生成する。また、記録部412は、ガンマ選択部408で選択されたコントラスト調整用カーブ407について輝度取得部409が取得したmaxDRLを、データファイルのメタデータとして例えばヘッダに記載する。このようにして、記録部412は、HDR信号413を生成し、出力する。なお、表示用の画像データを生成する場合、記録部412は生成した画像データをデータファイルに格納せずに、maxDRLと関連づけてメモリ28に格納してもよい。
【0042】
<ヒストグラム表示>
次に、ヒストグラム表示動作について説明する。本実施形態におけるヒストグラム表示とは、横軸に信号の輝度階調値ないし色階調値の階級を、縦軸に度数を示すヒストグラムを、撮像によって得られた画像データについて表示する機能である。輝度階調値は例えばRGB成分の値を用いて算出した輝度値を用いることができる。また、色階調値のヒストグラムは、色成分ごとに生成、表示することができる。
【0043】
ユーザはヒストグラムを参照することにより、現在の撮影条件で撮像した画像データに白飛びする領域や黒潰れする領域が存在するかどうかを把握できる。特に、白飛びした領域は輝度が飽和した領域であるため、撮像後の画像処理によって階調を復元することが困難である。このため、現在の撮影条件で白飛びする領域が存在することをユーザに報知することにより、ユーザは意図しない白飛び領域の発生を、撮影条件を変更することによって回避したり減らしたりすることができる。
【0044】
上述したように、輝度を絶対値として扱うHDR規格に準拠したHDR画像を撮像するする場合、ヒストグラム表示に関して特有の課題が存在する。SDR画像や、輝度を相対値として取り扱うHDR規格に準拠したHDR画像であれば、画像データのビット深度で表現可能な最大値(例えば10ビットであれば1023)を、画像データの最大表示輝度として取り扱えばよい。
【0045】
PQ方式のように、輝度を絶対値として扱うHDR規格に準拠したHDR画像を撮像する場合には、画像データのビット深度で表現可能な最大値よりも、輝度の最大値に対応するデータの値が小さかったり、さらに撮影モードに応じて変化したりする。そのため、SDR画像と同様のヒストグラム表示を行った場合、白飛びする領域が存在する画像データあっても、最大輝度を表す階級の頻度が0であることが起こりうる。
【0046】
そのため本実施形態では、maxDRLに基づくヒストグラム表示を行う。以下、本実施形態のヒストグラム表示動作について、
図6および
図7を用いて説明する。
図6は、HDR信号413に基づくヒストグラム表示に関する信号処理回路25の動作を、機能ブロックとして記載した図である。信号処理回路25は、
図4を用いて説明した処理によって生成したHDR信号413に基づくヒストグラム表示を行う際に以下の動作を実行する。なお、
図6に示すヒストグラム表示部601を、制御部21がROMに記憶されているプログラムを実行することにより実現してもよい。
【0047】
S701にて、輝度取得部409は、ヒストグラムを生成する対象のHDR画像データが、記憶部26に保存されている記録済みHDR信号なのか否かを判定する。例えばカメラ100が再生モードである場合、輝度取得部409はヒストグラムを生成する対象のHDR画像データが、記憶部26に保存されている記録済みHDR画像データであると判定する。この場合、S702が実行される。一方、カメラ100が撮影モードである場合、輝度取得部409はヒストグラムを生成する対象のHDR画像データが、記憶部26に保存されている記録済みHDR画像データでないと判定する。この場合、S703が実行される。なお、S701における判定は、他の条件に基づいて行ってもよい。
【0048】
S702でヒストグラム表示部601は、表示対象となるHDR信号を格納するデータファイルのメタデータに記載されているmaxDRLを取得する。
【0049】
S703が実行されるのは、撮影スタンバイ状態や動画撮影中に表示されるライブビュー画像のように、記憶部26に記録されていない(撮影中の)HDR信号を対象にヒストグラム表示を行う場合である。S703でヒストグラム表示部601は、ガンマ選択部408が選択したコントラスト調整用カーブ407から輝度取得部409が取得したmaxDRLを、例えばメモリ28から取得する。
【0050】
S704でヒストグラム表示部601は、S702またはS703で取得したmaxDRLに基づくヒストグラム表示を行う。ヒストグラム表示は、表示器27もしくは外部表示装置に対して行うことができる。また、ヒストグラムと、ヒストグラムの生成対象となった画像データとは、同じ画面に表示してもよいし、別個の画面に表示してもよい。
【0051】
ヒストグラム表示の一例について説明する。以下、特に記載がない限り、本実施形態では、HDR画像データのビット深度を10ビットとする。例えば、
図8(a)が、maxDRLが1023より小さいHDR画像データを模式的に示しているものとする。このHDR画像データをSDR画像データと同様に扱ってヒストグラム表示を行った例を
図8(b)に示す。この場合、maxDRLとは無関係に、0から1023までの範囲の度数分布を示すヒストグラム801が表示されるため、ヒストグラム801からは、HDR画像データにおける白飛びする領域の発生可能性を把握することができない。
【0052】
図8(c)は、S704でヒストグラム表示部601が表示するヒストグラム801の例を示している。ヒストグラム801は、階級の範囲0~1023のうち、0からmaxDRLまでの範囲802と、maxDRLから1023までの範囲803とが視覚的に区別できるように表示される。これにより、範囲802に示される度数のうち、範囲803と802との境界(=maxDRL)付近における度数から、白飛び領域の発生可能性について把握することができる。
【0053】
なお
図8(c)の例では、ある単一色のレイヤーを範囲803に重畳することにより、範囲802と803とを視覚的に区別可能にしているが、他の方法を用いてもよい。例えば縞模様など、特定のパターンを有するレイヤーを範囲803に重畳させたり、重畳させたレイヤーを周期的に明滅させたり、範囲802と803との境界に直線を描画するなどが考えられるが、これらに限定されない。また、0、1023、maxDRLに対応するヒストグラムの横軸の位置の近傍に、「0」「1023」「maxDRL」のラベルを表示してもよい。
【0054】
本実施形態では、輝度値を絶対値として扱う規格に準じたHDR画像データのヒストグラムを、データのビット深度で表現可能な値の範囲のうち、HDR画像データが取り得る最大値を超える範囲と超えない範囲とが視覚的に区別可能に表示するようにした。そのため、HDR画像データが取り得る最大値がデータのビット深度で表現可能な最大値と一致しない場合や、HDR画像データが取り得る最大値が撮影条件によって変化する場合であっても、ヒストグラムから白飛びの発生可能性を把握することができる。
【0055】
●(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態は、S704でヒストグラム表示部601の行うヒストグラムの表示方法以外は第1実施形態と共通である。したがって、以下では、本実施形態におけるヒストグラム表示方法について説明する。
【0056】
第1実施形態では、輝度値を絶対値として扱う規格に準じたHDR画像データを対象とする場合も、他の規格に準じたHDR画像データやSDR画像データを対象とする場合も、階級の範囲は同じであった。つまり、ヒストグラムの対象とする画像データのビット深度が同じであれば、そのビット深度で表現可能な最小値と最大値(10ビットであれば0と1023)を階級の範囲とするヒストグラムを表示していた。
【0057】
このため、ビット深度で表現可能な最大値とmaxDRLとの差が大きい場合、ヒストグラムの表示領域が有効に活用されない。例えばmaxDRLが500の場合にはヒストグラムの表示領域の左半分のみにビンが描画され、右半分は無駄になってしまう。
【0058】
そのため、本実施形態では、maxDRLに基づくヒストグラム表示を行う場合には、ヒストグラムの階級の最大値をmaxDRLに応じて変更するようにした。
図8(d)は、
図8(a)のHDR画像データについて、ヒストグラムの階級の範囲の最大値をmaxDRLにしてヒストグラムを表示した例を示している。
【0059】
ここでは、ビンの見かけ上の幅を変更しないため、ビンあたりの階級の区間幅が狭くなっており、度数分布の分解能が高くなり、中間輝度についてよりきめ細かく度数分布を把握することができる。なお、ヒストグラムの階級の範囲の最大値をmaxDRLにする代わりに、ヒストグラムの階級の範囲に、maxDRLを超える値の範囲の一部を含めてもよい。この場合、ヒストグラム表示部601は、第1実施形態で説明したように、maxDRLを超える範囲が視覚的に判別できるようにする。
【0060】
また、本実施形態においても、横軸の「0」、「maxDRL」を含む代表値に対応する近傍に、代表値のラベルを表示してもよい。
【0061】
本実施形態によれば、輝度値を絶対値として扱う規格に準じたHDR画像データのヒストグラムについて、階級の最大値をHDR画像データが取り得る最大値に基づいて定めるようにした。そのため、第1実施形態の効果に加え、ヒストグラム表示領域を効率的に利用することができる。また、階級の区間幅を変更した場合には、中間輝度の度数分布をよりきめ細かく把握することが可能になる。
【0062】
●(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について説明する。第1および第2実施形態ではHDR画像データについてのヒストグラムを表示したが、本実施形態では、露光量の対数に比例した輝度を有するLOGデータについてのヒストグラムを表示する。なお、カメラ100の構成や信号処理回路25の機能構成については第1実施形態と同様であってよい。
【0063】
本実施形態において、信号処理回路25はLOGデータを生成する。
図4において、ガンマ選択部408が選択するコントラスト調整用カーブ407が、
図1(b)に示すようなLOGガンマカーブ45であることを除き、画像データの生成動作は基本的に第1実施形態と同様である。
【0064】
ただし、LOGガンマカーブを用いる場合、LOGデータが取り得る最大値と最小値の両方が、データのビット深度で表現可能な値の範囲の最大値と最小値と異なりうる。そのため、輝度取得部409は、LOGデータが取り得る最大値をmaxDRLとして取得することに加え、minDRL(minimum Dynamic Range Level)を取得する。minDRLは、最小出力目標値[nitsまたはcd/m
2]、あるいは最小出力目標値に対応する信号値である。
図1(b)の例で言えば、出力最小値46に対応する最小出力目標値もしくは最小出力値46である。
【0065】
そして、記録部412は、輝度取得部409が取得したminDRLを、maxDRLと同様にして、LOGデータとともにメモリもしくは記憶部26に記録する。
【0066】
minDRLが0よりも大きい場合、SDR画像と同じヒストグラム表示では、黒潰れ領域の発生可能性についても把握が困難になる。そのため、本実施形態のヒストグラム表示部601は、maxDRLに加え、minDRLにも基づいてヒストグラムを表示する。
【0067】
具体的な表示方法の例を、
図9に示す。
図9(a)は、あるLOGデータをSDR信号と同様に扱ってヒストグラム表示を行った例を示す。この場合、minDRL、maxDRLとは無関係に、0から1023までの範囲の度数分布を示すヒストグラム901が表示される。そのため、ヒストグラム901からは、LOGデータにおいて黒つぶれする領域もしくは白飛びする領域の発生可能性を把握することができない。
【0068】
図9(b)は、LOGデータのヒストグラム表示において第1実施形態と同様の構成を適用した例を示す。ヒストグラム表示部601は、階級の範囲0~1023のうち、minDRLに満たない範囲904およびmaxDRLを超える範囲902と、minDRL以上、maxDRL以下の値の範囲903とを視覚的に区別できるように表示する。
【0069】
あるいは、ヒストグラム表示部601は、
図9(c)に示すように、LOGデータのヒストグラム表示において第2実施形態と同様の構成を適用してもよい。この場合、ヒストグラム表示部601は、ヒストグラムの階級の範囲の最小値をminDRLに基づいて決定し、ヒストグラムの階級の範囲の最大値をmaxDRLに基づいて決定する。
【0070】
図9(c)は、ヒストグラムの階級の範囲の最小値をminDRL、最大値をmaxDRLにしてヒストグラムを表示した例を示している。なお、ヒストグラムの階級の範囲に、minDRLに満たない値の範囲の一部や、maxDRLを超える値の範囲の一部を含めてもよい。この場合、ヒストグラム表示部601は、
図9(b)に示すように、minDRLに満たない範囲やmaxDRLを超える範囲が視覚的に判別できるようにする。
【0071】
図9(c)の例では、ビンの見かけ上の幅を変更していないため、ビンあたりの階級の区間幅が狭くなっており、度数分布の分解能が高くなり、中間輝度についてよりきめ細かく度数分布を把握することができる。
また、本実施形態においても、横軸の「minDRL」、「maxDRL」を含む代表値に対応する近傍に、代表値のラベルを表示してもよい。
【0072】
本実施形態によれば、LOGデータのヒストグラム表示において、階級の最小値および最大値をLOGデータが取り得る最小値および最大値に基づいて定めるようにした。そのため、ユーザは、LOGデータについての白飛び領域および黒潰れ領域の発生可能性を、ヒストグラムから容易に把握することができる。
【0073】
なお、ここでは、LOGデータが取り得る最大値と最小値の両方が、データのビット深度で表現可能な値の範囲の最大値と最小値と異なる場合について説明した。しかし、LOGデータが取り得る最大値が、データのビット深度で表現可能な値の範囲の最大値と異なるが、LOGデータが取り得る最小値は、データのビット深度で表現可能な値の範囲の最小値と合致する場合もある。この場合には、第1および第2実施形態と同様、maxDRLのみに基づくヒストグラムの表示を行えばよい。最小値だけが合致しない場合も同様である。
【0074】
●(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態について説明する。第1~第3実施形態では、maxDRLおよびminDRLが固定値である場合のヒストグラム表示について説明した。本実施形態では、動画記録時など、maxDRLおよびminDRLが時間変動しうる場合におけるヒストグラム表示について説明する。
【0075】
HDR動画やLOG動画の記録中に撮影条件を変更したり、異なるタイミングで撮影した動画をまとめて1つの動画ファイルを生成したりする場合などには、maxDRLまたはminDRLが、動画のフレームごとやチャプターごとに変動しうる。この場合、記録部412は、動画ファイルにおける、フレームごとまたはチャプターごとのメタデータに、輝度取得部409が取得したmaxDRLやminDRLを含めるようにする。
【0076】
このような動画ファイルを再生する場合、ヒストグラム表示部601は、再生対象のフレームに対応するメタデータを参照することで、再生対象のフレームに適用すべきmaxDRLおよび/またはminDRLを取得することができる。そして、ヒストグラム表示部601は、第1~第4実施形態のいずれかで説明した方法でヒストグラム表示を行うことができる。
【0077】
なお、フレームごとまたはチャプターごとのメタデータを記録できない動画フォーマットの場合、記録部412は例えば最初のフレームまたはチャプターについてのmaxDRLおよびminDRLを動画ファイルに記録する。また、再生時にも動画ファイルに記録されたmaxDRLおよびminDRLを全フレームおよびチャプタに適用する。
【0078】
本実施形態によれば、1つの動画ファイルに記録されているHDR動画データやLOG動画データについて、maxDRLやminDRLの値が時間変動する場合であっても、適切なヒストグラムを表示することができる。そのため、ユーザはmaxDRLおよびminDRLの変動を意識することなく、白飛びや黒潰れの発生可能性を容易に把握することができる。
【0079】
●(第5実施形態)
次に、本発明の第5実施形態について説明する。第1の実施形態では、撮影モードなど、撮影条件で定まるガンマカーブの最大出力目標値(または対応する信号値)をmaxDRLと定義していた。しかしながら、ガンマ変換部405でガンマカーブを用いた輝度補正処理を適用した後に、例えばシャープネス処理や明瞭度補正処理など、局所的にコントラストを強調する処理を適用すると、信号値がmaxDRLよりも大きくなる場合がある。
【0080】
図10(a)は、このような、maxDRLよりも大きな値のデータが含まれるHDR画像データの度数分布の一例を示す。ここで、maxDRLよりも大きな、画像データの最大値をM1で示している。このようなHDR画像データに対して第1実施形態のヒストグラム表示方法を適用した場合、
図10(b)に示すような表示となる。
【0081】
maxDRLより大きな信号値の度数に対して単一色のレイヤーが重畳表示されるため、maxDRLより大きな信号値に対応するビンの色が他のビンの色と変わり、無効な信号値が記録されているかのような誤解をユーザに与えてしまう懸念がある。そのため、本実施形態において、ヒストグラム表示部601は、
図10(c)のように、ヒストグラムの背景領域に対して単一色のレイヤーを重畳させ、さらにその前面のレイヤーにヒストグラムのビンを表示する。これにより、maxDRLより大きい信号値に対応するビンの色(表示形態)が、maxDRL以下の信号値についてのビンの色(表示形態)と同じままとなる。そのため、ユーザは、maxDRLを超える値のデータがmaxDRL以下の値のデータと同じ扱いであること(無効でないことを)を直感的に把握することができる。
【0082】
なお、第1実施形態や本実施形態ではレイヤーを用いてヒストグラムの一部領域の表示を視覚的に変更しているが、例えば、塗りつぶしを用いるなど、必ずしもレイヤーを重畳する方法を用いなくてもよい。
【0083】
なお、LOGデータのようにminDRLが0より大きくなる信号を扱う場合、前述の理由により、画像データにminDRLよりも小さい値が含まれることがある。このような場合にも、maxDRLよhり大きな値の範囲と同様の表示を行うようにする。
【0084】
本実施形態によれば、第1実施形態や第3実施形態の効果に加え、ガンマ補正後の画像処理により、maxDRLより大きい値やminDRLより小さい値が画像データに含まれる場合であっても、白飛びや黒潰れの発生可能性をユーザが容易に把握できる。
【0085】
●(第6実施形態)
次に、本発明の第6実施形態について説明する。第5の実施形態では、maxDRLよりも大きな信号値またはminDRLよりも小さな信号値を持つ信号における、第1実施形態の適用方法について説明した。本実施形態では、同様の信号に対する第2実施形態の適用方法について説明する。
【0086】
図10(a)に示すような度数分布を有する画像データに対して第2実施形態を適用すると、
図11(a)に示すように、maxDRLより大きな値の度数(
図11(a)に点線で示す)がヒストグラムに表示されない。そのため、本実施形態のヒストグラム表示部601は、maxDRLに基づいてヒストグラムの階級の範囲を決定する際、ヒストグラムを表示する対象の画像データがmaxDRLより大きな信号値を取り得る場合、以下の方法1または方法2を採用する。
【0087】
<方法1>
ヒストグラム表示部601は、ヒストグラム表示を行う画像データの最大値を検出する。そして、ヒストグラム表示部601は、検出した最大値が、輝度取得部409で取得したmaxDRLよりも大きい場合、ヒストグラムの階級の最大値を、検出した最大値以上の値とする。
図10(b)に、ヒストグラムの階級の最大値を、検出した最大値とした場合の例を示している。
方法1を採用した場合、画像データにmaxDRLよりも大きな値が含まれる場合であっても、ヒストグラムの表示領域を効率的に使用しつつ、漏れの無いヒストグラムを表示することができる。
【0088】
<方法2>
ヒストグラムの階級の最大値はmaxDRLに基づいて決定し(第2実施形態と同様)、ヒストグラム表示を行う画像データ含まれる、maxDRLよりも大きな値については、maxDRLを含む区間の度数に含める。
図10(c)に、ヒストグラムの階級の最大値をmaxDRLとした場合の例を示している。
方法2を採用した場合、表示対象の画像データが変わっても、ヒストグラム表示における階級の範囲は変動しない。そのため、複数フレーム分のHDR画像データを手動で切替ながら順次再生させた場合に、画像間の輝度分布の比較が容易であり、かつその比較に基づいて白飛びの発生可能性について把握することができる。
【0089】
なお、LOGデータのようにminDRLが0より大きくなる信号を扱う場合、前述の理由により、画像データにminDRLよりも小さい値が含まれることがある。このような場合にも、maxDRLよりも大きい値と同様に取り扱うことができる。例えば、方法1を採用する場合、ヒストグラム表示部601は、画像データの最小値を検出し、最小値がminDRLよりも小さい場合、ヒストグラムの階級の範囲の最小値を、検出した最小値に基づいて決定する。また、方法2を採用する場合、ヒストグラム表示部601は、みnDRLより小さい値の度数を、minDRLを含む区間の度数に含めたヒストグラムを表示する。
【0090】
本実施形態によれば、第2実施形態や第3実施形態の効果に加え、ガンマ補正後の画像処理により、maxDRLより大きい値やminDRLより小さい値が画像データに含まれる場合であっても、白飛びや黒潰れの発生可能性をユーザが容易に把握できる。
【0091】
●(第7実施形態)
次に、本発明の第7実施形態について説明する。第1~第6実施形態で述べたヒストグラム表示動作は、撮影に係る機能を必須としてはいない。したがって、上述した実施形態は、カメラで撮影された画像を表示するディスプレイなどの表示装置や、パーソナルコンピュータやスマートフォン等の、カメラと双方向的な通信が可能な電子機器で実施することもできる。
【0092】
(その他の実施形態)
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサーがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【0093】
本発明は上述した実施形態の内容に制限されず、発明の精神および範囲から離脱することなく様々な変更及び変形が可能である。したがって、発明の範囲を公にするために請求項を添付する。
【符号の説明】
【0094】
1…カメラ本体、2…交換レンズ、10…撮像素子、21…制御部、25…信号処理回路、51…レンズ制御部、405…ガンマ変換部、407…コントラスト調整用カーブ、408…ガンマ選択部、409…輝度取得部