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特許7397643シリコン基板エッチング溶液、及びこれを用いた半導体素子の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-05
(45)【発行日】2023-12-13
(54)【発明の名称】シリコン基板エッチング溶液、及びこれを用いた半導体素子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/306 20060101AFI20231206BHJP
   H01L 21/308 20060101ALI20231206BHJP
【FI】
H01L21/306 E
H01L21/308 E
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019222169
(22)【出願日】2019-12-09
(65)【公開番号】P2020096182
(43)【公開日】2020-06-18
【審査請求日】2022-10-31
(31)【優先権主張番号】10-2018-0159735
(32)【優先日】2018-12-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】513280854
【氏名又は名称】オーシーアイ カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】OCI Company Ltd.
【住所又は居所原語表記】94,Sogong-ro,Jung-gu,Seoul,100-718(KR)
(74)【代理人】
【識別番号】100096091
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 誠一
(72)【発明者】
【氏名】ユ・ホソン
(72)【発明者】
【氏名】キム・ミョンヒョン
(72)【発明者】
【氏名】ムン・ヨンスン
(72)【発明者】
【氏名】イ・ジュンウン
(72)【発明者】
【氏名】チャン・ピョンファ
【審査官】山口 祐一郎
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0321121(US,A1)
【文献】特開2012-033561(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2017-0134899(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2017-0126049(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/306
H01L 21/308
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコン窒化膜をエッチングするシリコン基板エッチング溶液であって、
リン酸水溶液;及び、
下記の化1で表されるシリコン添加剤;
を含む、
シリコン基板エッチング溶液:
【化1】
ここで、
~Rは、それぞれ独立に水素、C-C10アルキル、C-C12シクロアルキル、少なくとも1つのヘテロ原子を含むC-C10ヘテロアルキル、C-C10アルケニル、C-C10アルキニル、C-C10ハロアルキル、C-C10アミノアルキル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル及びヒドロキシ、アミノ、ハロゲン、スルホン、ホスホニック、フォスフォリック、チオール、アルコキシ、アマイド、エステル、酸無水物、ハロゲン化アシル、シアノ、カルボキシル及びアゾールから選択され、R~Rのうち少なくとも1つは、ヘテロアリールであり、該ヘテロアリールはN-オキシド基を有し、
25℃及び1barにおける85%リン酸水溶液に対する前記シリコン添加剤の溶解度は、100ppm以上である。
【請求項2】
記N-オキシド基を有するヘテロアリール基は、ピリジンN-オキシド基、イミダゾールN-オキシド基、チアゾールN-オキシド基、オキサゾールN-オキシド基、またはトリアジンN-オキシド基である、
請求項1に記載のシリコン基板エッチング溶液。
【請求項3】
前記ヘテロアリールは、ピロリル、ピリジル、オキサゾリル、アイソオキサゾリル、トリアゾリル、チアゾリル、アイソチアゾリル、ピラゾリル、ピラゾリジニル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、イミダゾリル、イミダゾリニル、ピリダジニル、トリアジニル、ピペリジニル、ピラジニル、及びピリミジニルを含む、
請求項に記載のシリコン基板エッチング溶液。
【請求項4】
前記シリコン基板エッチング溶液中の前記シリコン添加剤は、100~10,000ppmで含まれる、
請求項1に記載のシリコン基板エッチング溶液。
【請求項5】
前記シリコン基板エッチング溶液は、シリコン化膜からなる単一膜又はシリコン酸化膜とシリコン窒化膜を共に含む多層膜をエッチングする、請求項1に記載のシリコン基板エッチング溶液。
【請求項6】
前記シリコン基板エッチング溶液は、フッ化水素、フッ化アンモニウム、重フッ化アンモニウム、及びフッ化水素アンモニウムから選択される少なくとも1つのフッ素含有化合物をさらに含む、
請求項1に記載のシリコン基板エッチング溶液。
【請求項7】
前記シリコン基板エッチング溶液は、有機系カチオンとフッ素系アニオンとがイオン結合した形態を有するフッ素含有化合物をさらに含む、
請求項1に記載のシリコン基板エッチング溶液。
【請求項8】
請求項1によるシリコン基板エッチング溶液を用いて行われるエッチング工程を含む半導体素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコン基板エッチング溶液、これを用いた半導体素子の製造方法に関し、より詳細には、シリコン基板エッチング溶液中のシラン化合物(例えば、シリック酸)の濃度を調節することにより、シリコン窒化膜をエッチングする際、シリコン酸化膜対シリコン窒化膜に対するエッチング選択比を向上させることのできるシリコン基板エッチング溶液、及びこれを用いて行われるエッチング工程を含む半導体素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、シリコン窒化膜とシリコン酸化膜をエッチングする様々な方法があるが、乾式エッチング法と湿式エッチング法が主に使用される方法である。
【0003】
乾式エッチング法は、通常、気体を用いたエッチング法であって、湿式エッチング法より等方性に優れるという長所があるが、湿式エッチング法より生産性に劣り過ぎ、高価の方式である点で、湿式エッチング法が広く利用されている流れである。
【0004】
一般に湿式エッチング法としては、エッチング溶液としてリン酸を用いる方法がよく知られている。このとき、シリコン窒化膜のエッチングのため純粋なリン酸のみを用いる場合、素子が微細化するにつれて、シリコン窒化膜のみならず、シリコン酸化膜までエッチングされることによって、各種の不良及びパターン異常が発生する等の問題が生じ得るため、シリコン酸化膜のエッチング速度をさらに下げる必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、シリコン基板エッチング溶液中のシラン化合物(例えば、シリック酸)の濃度を増加させて、シリコン酸化膜に対するエッチング速度を低くし、シリコン酸化膜対シリコン窒化膜に対するエッチング選択比を向上させることのできるシリコン基板エッチング溶液を提供することを目的とする。
【0006】
また、本発明は、シリコン酸化膜のみならず、シリコン窒化膜に対するエッチング速度まで低下するか、シリコン系パーティクルが生成することを防ぐことのできるシリコン基板エッチング溶液を提供することを目的とする。
【0007】
さらに、本発明は、上述したシリコン基板エッチング溶液を用いて行われるエッチング工程を含む半導体素子の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した技術的課題を解決するために、本発明の一側面によれば、リン酸水溶液及び下記の化1で表されるシリコン添加剤を含むシリコン基板エッチング溶液が提供される。
【0009】
【化1】
【0010】
ここで、R~Rは、それぞれ独立に水素、C-C10アルキル、C-C12シクロアルキル、少なくとも1つのヘテロ原子を含むC-C10ヘテロアルキル、C-C10アルケニル、C-C10アルキニル、C-C10ハロアルキル、C-C10アミノアルキル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル及びヒドロキシ、アミノ、ハロゲン、スルホン、ホスホニック、フォスフォリック、チオール、アルコキシ、アマイド、エステル、酸無水物、ハロゲン化アシル、シアノ、カルボキシル及びアゾールから選択され、R~Rのうち少なくとも1つは、N-オキシド基を有するヘテロアリールである。
【0011】
本発明の一側面によるシリコン基板エッチング溶液で用いられるシリコン添加剤の25℃及び1barにおける85%リン酸水溶液に対する溶解度は、100ppm以上であることが好ましい。
【0012】
また、本発明の他の側面によれば、上述したシリコン基板エッチング溶液を用いて行われるエッチング工程を含む半導体素子の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0013】
本発明に用いられるシリコン添加剤は、シリコン基板のエッチング条件で、シリコン基板エッチング溶液中のシラン化合物(例えば、シリック酸)の濃度を増加させることで、シリコン酸化膜に対するエッチング速度を低くすることができる。
【0014】
このとき、本願で用いられるシリコン添加剤は、シリコン原子に結合した親水性ヘテロアリール基を含むことで、シリコン基板エッチング溶液に対する溶解度を十分に確保することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の利点及び特徴、そしてそれらを達成する方法は、後述する実施例を参照すれば明確になる。しかし、本発明は、以下に開示する実施例に限定されるものではなく、異なる様々な形態に具現されるものである。ただし、本実施例は、本発明の開示を完全にし、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者に発明の範疇を完全に知らせるために提供されるものであり、本発明は、請求項の範疇によって定義されるだけである。
【0016】
以下では、本発明によるシリコン基板エッチング溶液について詳説する。
【0017】
本発明の一側面によれば、リン酸水溶液及び下記の化1で表されるシリコン添加剤を含むシリコン基板エッチング溶液が提供される。
【0018】
本発明によるシリコン基板エッチング溶液のエッチング対象であるシリコン基板は、少なくともシリコン酸化膜(SiO)を含むことが好ましく、シリコン酸化膜(SiO)及びシリコン窒化膜(Si)を共に含んでいてもよい。また、シリコン酸化膜とシリコン窒化膜が共に含まれたシリコン基板の場合、シリコン酸化膜とシリコン窒化膜が交互に積層するか、異なる領域に積層した形態であってもよい。
【0019】
ここで、シリコン酸化膜は、用途及び素材の種類等によってSOD(Spin On Dielectric)膜、HDP(High Density
Plasma)膜、熱酸化膜(thermal oxide)、BPSG(Borophosphate
Silicate Glass)膜、PSG(Phospho Silicate Glass)膜、BSG(Boro
Silicate Glass)膜、PSZ(Polysilazane)膜、FSG(Fluorinated Silicate
Glass)膜、LP-TEOS(Low
Pressure Tetra Ethyl Ortho Silicate)膜、PETEOS(Plasma Enhanced Tetra
Ethyl Ortho Silicate)膜、HTO(High Temperature Oxide)膜、MTO(Medium
Temperature Oxide)膜、USG(Undopped Silicate Glass)膜、SOG(Spin
On Glass)膜、APL(Advanced Planarization Layer)膜、ALD(Atomic Layer
Deposition)膜、PE-酸化膜(Plasma Enhanced oxide)又はO-TEOS(O-Tetra Ethyl
Ortho Silicate)等に言及し得る。
【0020】
ここで、リン酸水溶液は、シリコン窒化膜をエッチングすると共に、エッチング溶液のpHを維持して、エッチング溶液内に存在する様々な形態のシラン化合物がシリコン系パーティクルに変化することを抑える成分である。
【0021】
一実施例において、シリコン基板エッチング溶液100重量部に対し、りん酸水溶液は、60~90重量部で含まれることが好ましい。
【0022】
シリコン基板エッチング溶液100重量部に対し、りん酸水溶液の含量が60重量部未満である場合、シリコン窒化膜のエッチング速度が低下し、シリコン窒化膜が十分にエッチングされないか、シリコン窒化膜のエッチングの工程効率性が低下するおそれがある。
【0023】
一方、シリコン基板エッチング溶液100重量部に対し、りん酸水溶液の含量が90重量部を超える場合、シリコン窒化膜のエッチング速度が増加し過ぎるだけでなく、シリコン酸化膜まで早くエッチングされることによって、シリコン酸化膜対シリコン窒化膜に対する選択比が低下し得るし、シリコン酸化膜のエッチングによるシリコン基板の不良を引き起こし得る。
【0024】
本発明の一実施例によるシリコン基板エッチング溶液は、シリコン酸化膜対シリコン窒化膜に対する選択比を高くするため、下記の化1で表されるシリコン添加剤を含んでいてもよい。
【0025】
【化1】
【0026】
ここで、R~Rは、それぞれ独立に水素、C-C10アルキル、C-C12シクロアルキル、少なくとも1つのヘテロ原子を含むC-C10ヘテロアルキル、C-C10アルケニル、C-C10アルキニル、C-C10ハロアルキル、C-C10アミノアルキル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル及び親水性作用基から選択される。
【0027】
本願におけるハロゲンは、フルオロ(-F)、クロロ(-Cl)、ブロモ(-Br)又はヨード(-I)を意味し、ハロアルキルは、上述したハロゲンに置換されたアルキルを意味する。例えば、ハロメチルは、メチルの水素のうち少なくとも1つがハロゲンに取り替えられたメチル(-CHX、-CHX又は-CX)を意味する。
【0028】
また、本願におけるアルコキシは、-O-(アルキル)基と-O-(無置換のシクロアルキル)基両方とも意味するものであって、1つ以上のエーテル基及び1~10個の炭素原子を有する直鎖又は分鎖炭化水素である。
【0029】
具体的には、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、n-ブトキシ、tert-ブトキシ、sec-ブトキシ、n-ペントキシ、n-ヘキソキシ、1,2-ジメチルブトキシ、シクロプロピルオキシ、シクロブチルオキシ、シクロペンチルオキシ、シクロヘキシルオキシ等を含むものの、これに限定されものではない。
【0030】
(ここで、aは、1~4から選択される整数)がアルケニル又はアルキニルであるとき、アルケニルのsp-混成炭素又はアルキニルのsp-混成炭素が直接に結合するか、アルケニルのsp-混成炭素又はアルキニルのsp-混成炭素に結合したアルキルのsp-混成炭素によって間接に結合した形態であってもよい。
【0031】
本願におけるC-C作用基は、a~b個の炭素原子を有する作用基を意味する。例えば、C-Cアルキルは、a~b個の炭素原子を有する、直鎖アルキル及び分鎖アルキル等を含む飽和脂肪族基を意味する。直鎖又は分鎖アルキルは、この主鎖に10個以下(例えば、C-C10の直鎖、C-C10の分鎖)、好ましくは4個以下、より好ましくは3個以下の炭素原子を有する。
【0032】
具体的には、アルキルは、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、s-ブチル、i-ブチル、t-ブチル、ペント-1-イル、ペント-2-イル、ペント-3-イル、3-メチルブト-1-イル、3-メチルブト-2-イル、2-メチルブト-2-イル、2,2,2-トリメチルエト-1-イル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、及びn-オキチルであってもよい。
【0033】
本願におけるアリールは、他に定義されない限り、単一環又は互いに接合又は共有結合で連結された多重環(好ましくは、1~4個の環)を含む不飽和芳香族性環を意味する。アリールの非制限的な例としては、フェニル、ビフェニル、o-テルフェニル(terphenyl)、m-テルフェニル、p-テルフェニル、1-ナプチル、2-ナプチル、1-アントリル(anthryl)、2-アントリル、9-アントリル、1-フェナントレニル(phenanthrenyl)、2-フェナントレニル、3-フェナントレニル、4-フェナントレニル、9-フェナントレニル、1-ピレニル、2-ピレニル、及び4-ピレニル等がある。
【0034】
本願におけるアラルキルは、アリールがアルキルの炭素に置換された形態の作用基であって、-(CHArの総称である。アラルキルの例として、ベンジル(-CH)又はフェネチル(-CHCH)等がある。
【0035】
本願におけるシクロアルキル(cycloalkyl)又はヘテロ原子を含むシクロアルキル(heterocycloalkyl)は、他に定義されない限り、それぞれアルキル又はヘテロアルキルの環状構造と理解されてもよい。
【0036】
シクロアルキルの非制限的な例としては、シクロペンチル、シクロヘキシル、1-シクロヘキセニル、3-シクロヘキセニル、及びシクロヘプチル等がある。
【0037】
ヘテロ原子を含むシクロアルキルの非制限的な例としては、1-(1,2,5,6-テトラヒドロピリジル)、1-ピペリジニル、2-ピペリジニル、3-ピペリジニル、4-モルホリニル、3-モルホリニル、テトラヒドロフラン-2-イル、テトラヒドロフラン-3-イル、テトラヒドロチエン-2-イル、テトラヒドロチエン-3-イル、1-ピペラジニル、及び2-ピペラジニル等がある。
【0038】
また、シクロアルキル又はヘテロ原子を含むシクロアルキルは、ここにシクロアルキル、ヘテロ原子を含むシクロアルキル、アリール又はヘテロアリールが接合するか、共有結合で連結された形態を有してもよい。
【0039】
シリコン原子に結合した親水性作用基は、ヒドロキシ基又はリン酸水溶液のpH条件下で、ヒドロキシ基に置換可能な作用基を意味する。
【0040】
ここで、リン酸水溶液のpH条件下で、ヒドロキシ基に置換可能な作用基の非制限的な例としては、アミノ、ハロゲン、スルホン、ホスホニック、フォスフォリック、チオール、アルコキシ、アマイド、エステル、酸無水物、ハロゲン化アシル、シアノ、カルボキシル及びアゾールがあり、必ずしも上述した作用基に限定されるものではなく、りん酸水溶液のpH条件下で、ヒドロキシ基に置換可能な任意の作用基も含むものと理解しなければならない。
【0041】
このとき、本発明の一実施例によれば、R~Rのうち少なくとも1つ、好ましくは、少なくとも2つは、N-オキシド基を有するヘテロアリールであ。R~Rのうち2つがヘテロアリールである場合、2つのヘテロアリールは、互いに同様であるか相違してもよい。
【0042】
本発明において、シリコン原子に結合するヘテロアリールは、N-オキシド基を有する親水性ヘテロアリール作用基であ。R~Rのうち2つがヘテロアリールである場合、2つのヘテロアリールともN-オキシド基を有するか、2つのヘテロアリールのうち1つのヘテロアリールのみN-オキシド基を有してもよい。R~Rのうち3つがヘテロアリールである場合、3つのヘテロアリールともN-オキシド基を有するか、3つのヘテロアリールのうち1つ又は2つのヘテロアリールのみN-オキシド基を有してもよい。
【0043】
ここで、ヘテロアリールは、ピロリル、ピリジル、オキサゾリル、アイソオキサゾリル、トリアゾリル、チアゾリル、アイソチアゾリル、ピラゾリル、ピラゾリジニル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、イミダゾリル、イミダゾリニル、ピリダジニル、トリアジニル、ピペリジニル、ピラジニル又はピリミジニルであってもよく、必ずしもこれに制限されるものではない。
【0044】
すなわち、本願におけるヘテロアリールは、環内のN-オキシド基を有するように、ヘテロ原子として窒素を含む芳香族性環として定義され得る。
【0045】
上述したヘテロアリールの例示のほかも、ヘテロアリールは、N-オキシド基を有するヘテロアリールに非芳香族性又は芳香族性環が接合した形態のヘテロアリールも含んでいてもよい。
【0046】
例えば、ヘテロアリールに芳香族性環が接合した形態のヘテロアリールは、インドリル、アイソインドリル、ベンズイミダゾリル、ピュリニル、インダゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾアイソオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、キノリニル、アイソキノリニル、キノキサリニル、アクリジニル、シノリニル、キナゾリニル、及びフタラジニル等を含む。
【0047】
また、化1で表されるシリコン添加剤のシリコン原子には、N-オキシド基を有するヘテロアリールと、N-オキシド基を有しないヘテロアリールが共に存在してもよい。
【0048】
このとき、N-オキシド基を有しないヘテロアリールは、アリール内の1つ以上の炭素原子が窒素、酸素又は硫黄のような非炭素原子に置換された作用基であって、フリル、テトラヒドロフリル、ピロリル、ピロリジニル、チエニル、テトラヒドロチエニル、オキサゾリル、アイソオキサゾリル、トリアゾリル、チアゾリル、アイソチアゾリル、ピラゾリル、ピラゾリジニル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、イミダゾリル、イミダゾリニル、ピリジル、ピリダジイル、トリアジニル、ピラジニル、ピペライニル、ピリミジニル、ナフチリジニル、ベンゾフラニル、ベンゾチエニル、インドリル、インドリニル、インドリジニル、インダゾリル、キノリジニル、キノリニル、アイソキノリニル、シノリニル、フタラジニル、キナゾリニル、キノキサリニル、プテリジニル、キヌクリジニル、カバゾイル、アクリジニル、フェナジニル、フェノチジニル、フェノキサジニル、フリニル、ベンズイミダゾリル、及びベンゾチアゾリル等と、これらが接合した類似体がある。
【0049】
すなわち、本発明の一側面によるシリコン基板エッチング溶液で用いられるシリコン添加剤は、シリコン原子に結合した少なくとも1つのヘテロアリールを含み、ヘテロアリールのうち少なくとも1つは、N-オキシド基を有する親水性ヘテロアリールであってもよい。
【0050】
これにより、本発明で用いられるシリコン添加剤の25℃及び1barにおける85%リン酸水溶液に対する溶解度は、100ppm以上であってもよい。
【0051】
25℃及び1barにおける85%リン酸水溶液に対するシリコン添加剤の溶解度が100ppm未満である場合、エッチング条件で、シリコン基板エッチング溶液中のシラン化合物(例えば、シリック酸)が十分な濃度で存在しにくいため、シリコン酸化膜に対するエッチング速度を十分に低くすることができない。
【0052】
このとき、シリコン原子に結合したヘテロアリール基は、シリコン原子と常温では安定して結合を維持することにより、シリコン基板エッチング溶液中のシラン化合物(例えば、シリック酸)の濃度が急激に増加することを防ぐことで、シリコン酸化膜のみならず、シリコン窒化膜に対するエッチング速度まで低下しないようにすることができる。
【0053】
上述したシリコン添加剤は、シリコン基板エッチング溶液中に100~10,000ppmで存在することが好ましい。
【0054】
シリコン基板エッチング溶液中のシリコン添加剤が100ppm未満で存在する場合、エッチング条件下で、シリコン基板エッチング溶液中のシラン化合物(例えば、シリック酸)の濃度が低く過ぎて、シリコン酸化膜対シリコン窒化膜に対する選択比の増加効果が微弱であり得る。
【0055】
一方、シリコン基板エッチング溶液中のシリコン添加剤が10,000ppmを超える場合、エッチング条件下で、シリコン基板エッチング溶液中のシラン化合物(例えば、シリック酸)の量が多くなリ過ぎて、シリコン酸化膜のみならず、シリコン窒化膜のエッチング速度まで低下する問題が発生し得る。また、エッチング溶液中のシラン化合物は、自らシリコン系パーティクルのソースとして作用し得る。
【0056】
本発明の一実施例によるシリコン基板エッチング溶液は、シリコン添加剤を用いることによって低下するシリコン窒化膜のエッチング速度を補償すると共に、全体的なエッチング工程の効率を向上させるために、フッ素含有化合物をさらに含んでいてもよい。
【0057】
本願におけるフッ素含有化合物は、フッ素イオンを解離させる任意の形態のあらゆる化合物を指す。
【0058】
一実施例において、フッ素含有化合物は、フッ化水素、フッ化アンモニウム、重フッ化アンモニウム、及びフッ化水素アンモニウムから選択される少なくとも1つである。
【0059】
また、他の実施例において、フッ素含有化合物は、有機系カチオンとフッ素系アニオンとがイオン結合した形態の化合物であってもよい。
【0060】
例えば、フッ素含有化合物は、アルキルアンモニウムとフッ素系アニオンとがイオン結合した形態の化合物であってもよい。ここで、アルキルアンモニウムは、少なくとも1つのアルキル基を有するアンモニウムであり、最大4つのアルキル基を有してもよい。アルキル基に対する定義は、前述したとおりである。
【0061】
さらに他の例において、フッ素含有化合物は、アルキルピロリウム、アルキルイミダゾリウム、アルキルピラゾリウム、アルキルオキサゾリウム、アルキルチアゾリウム、アルキルピリジニウム、アルキルピリミジニウム、アルキルピリダジニウム、アルキルピラジニウム、アルキルピロリジニウム、アルキルホスホニウム、アルキルモホリニウム、及びアルキルピペリジニウムから選択される有機系カチオンと、フルオロホスファート、フルオロアルキル-フルオロホスファート、フルオロボラート、及びフルオロアルキル-フルオロボラートから選択されるフッ素系アニオンとがイオン結合した形態のイオン性液体であってもよい。
【0062】
シリコン基板エッチング溶液のうち、フッ素含有化合物として一般に使用されるフッ化水素又はフッ化アンモニウムに比べて、イオン性液状に提供されるフッ素含有化合物は、高い沸点及び分解温度を有するところ、高温で行われるエッチング工程中に分解されることによって、エッチング溶液の組成を変化させるおそれが少ないという利点がある。
【0063】
本発明の他の側面によれば、上述したシリコン基板エッチング溶液を用いて行われるエッチング工程を含む半導体素子の製造方法が提供される。
【0064】
本製造方法によれば、少なくともシリコン窒化膜(Si)を含むシリコン基板上で、上述したエッチング溶液を用いてシリコン窒化膜に対する選択的なエッチング工程を行うことにより、半導体素子を製造することが可能である。
【0065】
半導体素子の製造に用いられるシリコン基板は、シリコン窒化膜(Si)を含むか、シリコン酸化膜(SiO)及びシリコン窒化膜(Si)を共に含んでいてもよい。また、シリコン酸化膜とシリコン窒化膜が共に含まれたシリコン基板の場合、シリコン酸化膜とシリコン窒化膜が交互に積層するか、互いに異なる領域に積層した形態であってもよい。
【0066】
本発明による半導体素子の製造方法は、フラッシュメモリー素子の素子分離工程、デ-ラム素子の素子分離工程又は相変化メモリー素子でのダイオード形成工程中、シリコン酸化膜に対する損失なしにシリコン窒化膜の選択的な除去が要求される工程段階において、上述したシリコン基板エッチング溶液を用いることで行われてもよい。
【0067】
以下では、本発明の具体的な実施例を示す。ただし、下記に記載の実施例は、本発明を具体的に例示するか説明するためのものに過ぎず、これによって本発明が制限されてはならない。
【0068】
シリコン基板エッチング溶液の組成
実施例1
リン酸85重量%、下記の化2で表されるシリコン添加剤1,000ppm及び残量の水を混合して、シリコン基板エッチング溶液を製造した。
【0069】
【化2】
【0070】
実施例2
下記の化3で表されるシリコン添加剤を用いたことを除いては、実施例1と同様にシリコン基板エッチング溶液を製造した。
【0071】
【化3】
【0072】
実施例3
下記の化4で表されるシリコン添加剤を用いたことを除いては、実施例1と同様にシリコン基板エッチング溶液を製造した。
【0073】
【化4】
【0074】
実施例4
下記の化5で表されるシリコン添加剤を用いたことを除いては、実施例1と同様にシリコン基板エッチング溶液を製造した。
【0075】
【化5】
【0076】
実施例5
下記の化6で表されるシリコン添加剤を用いたことを除いては、実施例1と同様にシリコン基板エッチング溶液を製造した。
【0077】
【化6】
【0078】
実施例6
下記の化7で表されるシリコン添加剤を用いたことを除いては、実施例1と同様にシリコン基板エッチング溶液を製造した。
【0079】
【化7】
【0080】
比較例1
シリコン添加剤を用いていないことを除いては、実施例1と同様にシリコン基板エッチング溶液を製造した。
【0081】
比較例2
下記の化8で表されるシリコン添加剤を用いたことを除いては、実施例1と同様にシリコン基板エッチング溶液を製造した。
【0082】
【化8】
【0083】
比較例3
下記の化9で表されるシリコン添加剤を用いたことを除いては、実施例1と同様にシリコン基板エッチング溶液を製造した。
【0084】
【化9】
【0085】
実験例1
各実施例及び比較例による組成を有するシリコン基板エッチング溶液の中で、シリコン添加剤の溶解度を測定するために、25℃及び1barにおけるICPで測定した。測定結果は、下記の表1に示した。
【0086】
【表1】
【0087】
上記表1の結果を参考すれば、比較例3と異なって、実施例1~実施例6で用いられたシリコン添加剤は、シリコン原子に結合した親水性ヘテロアリール基を含むことで、シリコン基板エッチング溶液に対する溶解度を十分に確保することにより、シリコン基板エッチング溶液中のシラン化合物(例えば、シリック酸)の濃度を増加させて、シリコン酸化膜に対するエッチング速度を低くし得ることを確認することができる。
【0088】
実験例2
各実施例及び比較例による組成を有するシリコン基板エッチング溶液を165℃に加熱した後、それぞれ500Å厚さのシリコン酸化膜(thermal oxide layer)及びシリコン窒化膜を、加熱されたエッチング溶液に3分間浸漬してエッチングした。このとき、165℃に加熱されたエッチング溶液のpHは、2.0~2.5範囲内に測定された。
【0089】
エッチング前及びエッチング後のシリコン酸化膜及びシリコン窒化膜の厚さは、エリプソメトリ(Nano-View,SE
MG-1000;Ellipsometery)を利用して測定しており、測定の結果は、5回の測定結果の平均値である。エッチング速度は、エッチング前及びエッチング後のシリコン酸化膜及びシリコン窒化膜の厚さの差をエッチング時間(3分)で割って算出した数値である。
【0090】
また、エッチングを完了した後、エッチング溶液を粒子大きさ分析機で分析して、エッチング溶液内に存在するシリコン系パーティクルの平均直径を測定した。
【0091】
測定されたエッチング速度及びエッチング溶液中のシリコン系パーティクルの平均直径は、下記の表2に示した。
【0092】
【表2】
【0093】
表2の結果を参考すれば、比較例1にように、別途シリコン添加剤を用いていない場合に比べて、比較例2のように、シリコン添加剤としてエッチング溶液中のシリコン濃度を増加させることのできるシラン化合物を用いた場合、シリコン酸化膜に対するエッチング速度を低くして、結果として、シリコン酸化膜対シリコン窒化膜に対するエッチング選択比を向上させることが可能である。ただし、比較例2のように、シリコン添加剤としてシリコン原子にエトキシ基が結合したシラン化合物を用いる場合、シリコン系パーティクルが成長したことを確認することができる。
【0094】
一方、比較例3で用いられたシリコン添加剤の場合、シリコン基板エッチング溶液内へ十分に溶解されることができず、シリコン窒化膜に対するエッチング選択比の向上効果が微弱であることを確認することができる。
【0095】
実験例3
各実施例及び比較例による組成を有するシリコン基板エッチング溶液を、165℃でそれぞれ0.5時間、1時間及び2時間で加熱した後、それぞれ500Å 厚さのシリコン酸化膜(thermal oxide layer)及びシリコン窒化膜を、加熱されたエッチング溶液に3分間浸漬してエッチングした。このとき、165℃に加熱されたエッチング溶液のpHは、2.0~2.5範囲内に測定された。
【0096】
エッチング前及びエッチング後のシリコン酸化膜及びシリコン窒化膜の厚さは、エリプソメトリ(Nano-View,SE
MG-1000;Ellipsometery)を利用して測定しており、測定の結果は、5回の測定結果の平均値である。エッチング速度は、エッチング前及びエッチング後のシリコン酸化膜及びシリコン窒化膜の厚さの差をエッチング時間(3分)で割って算出した数値である。
【0097】
それぞれ加熱された時間を異にしたシリコン基板エッチング溶液を用いて測定されたエッチング速度は、下記の表3~表5に示した。
【0098】
【表3】
【0099】
【表4】
【0100】
【表5】
【0101】
シリコン基板エッチング溶液の加熱時間が増えることにつれて、シリコン基板エッチング溶液中のシラン化合物(シリック酸)の含量が徐々に増加し、これにより、シリコン酸化膜に対するエッチング速度が徐々に減少して、シリコン酸化膜対シリコン窒化膜に対するエッチング選択比が向上することを確認することができる。
【0102】
以上、本発明の一実施例について説明したが、該技術分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載した本発明の思想から脱しない範囲内で、構成要素の付加、変更、削除又は追加等によって本発明を多様に修正及び変更することができ、これも本発明の権利範囲内に含まれる。