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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-05
(45)【発行日】2023-12-13
(54)【発明の名称】自動縫合器用縫合補強材
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/072 20060101AFI20231206BHJP
   A61L 27/40 20060101ALI20231206BHJP
   A61L 27/56 20060101ALI20231206BHJP
   A61L 27/58 20060101ALI20231206BHJP
   A61L 27/18 20060101ALI20231206BHJP
   A61L 27/20 20060101ALI20231206BHJP
   A61L 27/22 20060101ALI20231206BHJP
   A61L 27/50 20060101ALI20231206BHJP
【FI】
A61B17/072
A61L27/40
A61L27/56
A61L27/58
A61L27/18
A61L27/20
A61L27/22
A61L27/50
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019224762
(22)【出願日】2019-12-12
(65)【公開番号】P2021090698
(43)【公開日】2021-06-17
【審査請求日】2022-09-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000001339
【氏名又は名称】グンゼ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】佐脇 天
(72)【発明者】
【氏名】上之 康弘
(72)【発明者】
【氏名】池田 潤基
【審査官】石川 薫
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-065699(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0209658(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/072
A61L 27/00-27/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動縫合器又は自動縫合器用縫合補強材を水分に浸した後、前記自動縫合器の作用面に接するように貼付することで前記自動縫合器に装着される自動縫合器用縫合補強材であって、
前記自動縫合器用縫合補強材は、生体吸収性材料からなる布状体層と、
水溶性高分子からなり前記作用面に接するスポンジ層とが積層一体化され
前記水溶性高分子は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース又はプルランを含有する自動縫合器用縫合補強材
【請求項2】
前記生体吸収性材料がポリグリコール酸、ポリ乳酸又は乳酸とカプロラクトンの共重合体である請求項1記載の自動縫合器用縫合補強材
【請求項3】
前記スポンジ層が凍結乾燥体である請求項1又は2記載の自動縫合器用縫合補強材
【請求項4】
前記スポンジ層の厚みが0.5mm以上10mm以下である請求項1、2又は3記載の自動縫合器用縫合補強材
【請求項5】
前記布状体層は、目付が3g/m 以上300g/m 以下である不織布である請求項1、2、3又は4記載の自動縫合器用縫合補強材。
【請求項6】
前記自動縫合器に貼付した際の接着強度が1.5N/cm以上30N/cm 以下である請求項1、2、3、4又は5記載の自動縫合器用縫合補強材
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、あらゆるサイズの自動縫合器に用いることができるとともに、ポート通過性が高く、自動縫合器を操作した際にずれが生じ難い自動縫合器用縫合補強材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、多数のステープルを埋入したホッチキスタイプの自動縫合器が組織の縫合に用いられている。しかし、肺等への適用においては縫合部からの空気漏れの問題があり、また、軟弱組織への適用においては組織の損傷、断裂等の問題が生じることがあった。
【0003】
そこで、空気漏れや体液漏れ、組織の損傷を防ぐために生体吸収性の補強材が自動縫合器とともに用いられている(例えば、特許文献1、2)。特許文献1、2の補強材は、1枚の生体吸収性不織布の対向する2辺を縫い合わせる、又は2枚の生体吸収性不織布若しくは1枚の生体吸収性不織布と1枚の伸縮性編地を重ねて、対向する2辺を縫い合わせることによって筒状の構造としている。そして、筒の中に自動縫合器のカートリッジの端部を差し込むことで自動縫合器に装着され、組織と一緒に縫合されることで組織を補強する。また、補強後は不要部位を補強材から延出した糸を引っ張ることで分離できるため、作業性が高い。更に、補強材は生体吸収性不織布でできているため、補強が不要になった後は最終的に生体内に吸収される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平08-047526号公報
【文献】特許第4675237号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の自動縫合器に用いられる補強材は、自動縫合器を操作した際にずれが生じないようにするために、組織を補強する生地と伸縮性を有する生地とを組み合わせて筒状とすることで、自動縫合器へ密着させている。しかしながら、自動縫合器のカートリッジは様々なサイズのものが存在しているため、カートリッジの大きさによっては補強材を充分に自動縫合器に密着させることができず、ずれが生じることがある。また、カートリッジの大きさに適合した補強材を用いた場合であっても、生地の縫い目付近には隙間が生じてしまうため、ずれが生じることがある。
【0006】
一方、自動縫合器を用いた内視鏡手術では、患者の体内に筒状のポートを複数本穿刺し、このポートを通して内視鏡や自動縫合器等の器具を挿入する。この際、従来の補強材は自動縫合器のカートリッジ部を取り巻くように装着されていることから、自動縫合器のポート挿入時に補強材が引っかかってしまうことがある。また、カートリッジ部を取り巻くように補強材が存在していることで、補強材を装着した自動縫合器はサイズが大きくなってしまうことから、自動縫合器自体のサイズよりも大きな口径のポートを用いなければ自動縫合器を通すことができない。患者の負担を軽減する観点からは、より口径の小さなポートに通すことができる補強材が求められている。
【0007】
本発明は、上記問題に鑑み、あらゆるサイズの自動縫合器に用いることができるとともに、ポート通過性が高く、自動縫合器を操作した際にずれが生じ難い自動縫合器用縫合補強材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、生体吸収性材料からなる布状体層と、水溶性高分子からなるスポンジ層とが積層一体化されている自動縫合器用縫合補強材である。
以下、本発明について詳説する。
【0009】
本発明者らは鋭意検討した結果、生体吸収性材料からなる布状体上に水分を含むと粘着性を発現するスポンジ層を積層一体化した補強材とすることで、自動縫合器の作用面に補強材を貼り付けることができ、自動縫合器の操作時に補強材のずれが生じ難くなることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
本発明の自動縫合器用縫合補強材(以下、単に補強材ともいう)は、生体吸収性材料からなる布状体層を有する。
補強材に生体吸収性材料を用いることで、補強が不要になった後は最終的に生体内に吸収されることから、体内に異物を長期間残留させることがなく、安全性が高い。なお、本発明において「自動縫合器」とは、自動縫合器だけでなく自動吻合器も含まれる。
【0011】
上記生体吸収性材料としては、例えば、ポリグリコリド、ポリラクチド(D、L、DL体)、グリコリド-ラクチド(D、L、DL体)共重合体、グリコリド-ε-カプロラクトン共重合体、ラクチド(D、L、DL体)-ε-カプロラクトン共重合体、ポリ(p-ジオキサノン)、グリコリド-ラクチド(D、L、DL体)-ε-カプロラクトン共重合体等のα-ヒドロキシ酸重合体高分子等の合成吸収性高分子や、コラーゲン、ゼラチン、キトサン、キチン等の天然吸収性高分子が挙げられる。これらは単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。例えば、上記生体吸収性材料として上記合成吸収性高分子を用いる場合に、天然吸収性高分子を併用してもよい。なかでも、高い強度を示すことから、ポリグリコール酸、ポリ乳酸又は乳酸とカプロラクトンの共重合体が好適である。
【0012】
上記生体吸収性材料としてポリグリコリド(グリコリドのホモポリマー又はコポリマー)を用いる場合、ポリグリコリドの重量平均分子量の好ましい下限は30000、好ましい上限は1000000である。上記ポリグリコリドの重量平均分子量が30000以上であると、より確実に組織を補強することができ、1000000以下であると、異物反応をより抑えることができる。上記ポリグリコリドの重量平均分子量のより好ましい下限は50000、より好ましい上限は300000である。
【0013】
上記布状体層の形態は特に限定されず、例えば、編地、織地、不織布、フィルム等いかなる形態であってもよい。なかでも、柔軟性、通気性、ステープルの通り易さ等の観点から不織布であることが好ましい。
【0014】
上記布状体層が不織布である場合、上記不織布の目付は特に限定されないが、好ましい下限は3g/m、好ましい上限は300g/mである。上記不織布の目付が3g/m以上であると、より確実に組織を補強することができ、300g/m以下であると、組織への接着性をより高めることができる。上記生体吸収性不織布の目付のより好ましい下限は5g/m、より好ましい上限は100g/mである。
【0015】
上記不織布を製造する方法は特に限定されず、例えば、エレクトロスピニングデポジション法、メルトブロー法、ニードルパンチ法、スパンボンド法、フラッシュ紡糸法、水流交絡法、エアレイド法、サーマルボンド法、レジンボンド法、湿式法等の従来公知の方法を用いることができる。
【0016】
本発明の補強材は、水溶性高分子からなるスポンジ層を有する。
水溶性高分子は、水分を含むと粘着性を発現するため、布状体層上に水溶性高分子からなる層を設けることによって、自動縫合器を生理食塩水に浸漬した後、自動縫合器の作用面に補強材を貼り付けるだけで自動縫合器への装着が可能になるとともに、自動縫合器操作時の補強材のずれを生じ難くすることができる。また、水溶性高分子をスポンジ状とすることで水分を容易に吸収して速やかに粘着性を発現させることができる。また、自動縫合器の作用面に貼り付けるだけで装着が可能であることから、補強材を従来のような筒状とする必要がなく、いかなるサイズの自動縫合器にも用いることができる。更に、自動縫合器の作用面以外に補強材が存在しなくなることから、自動縫合器をポートに挿入する際に補強材が引っかかることがなく、自動縫合器をより口径の小さなポートに通すことができる。なお、ここでスポンジ状とは多数の空隙を有する構造のことを指す。
【0017】
上記水溶性高分子としては、例えば、多糖類系材料、タンパク質系材料等の天然高分子やポリアクリル酸、ポリビニルアルコール等の合成高分子が挙げられる。自動縫合器用の縫合補強材は体内に埋入されるため、生体適合性の高い材料が必要とされる。なかでも、自動縫合器の操作時はずれが生じ難く、縫合終了時には容易に剥離できる程度の粘着力を有することから、上記水溶性高分子は多糖類系材料又はタンパク質系材料であることが好ましい。上記多糖類系材料としては、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、プルラン、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース等が挙げられ、タンパク質系材料としては、ゼラチン、コラーゲンペプチド、水溶性エラスチン等が挙げられる。
【0018】
上記水溶性高分子は、2%濃度の水溶液にした際の粘度が1mPa・s以上500mPa・s以下であることが望ましい。上記の範囲の水溶性高分子を用いることでスポンジ層にした際に適度な柔らかさを有し、水分が浸透した後、適度な粘着性を発現し、容易に自動縫合器へ貼り付けることが可能になる。
【0019】
上記スポンジ層は凍結乾燥体であることが好ましい。
スポンジ層を凍結乾燥によって形成することで、気孔形成剤を使わずにスポンジ層が形成できるため、気孔形成剤の除去が不要であり、材料純度の高いスポンジ層を形成できる。凍結乾燥の方法は特に限定されず、従来公知の方法を用いることができる。
【0020】
上記スポンジ層の厚みは、0.5mm以上10mm以下であることが好ましい。
スポンジ層の厚みを上記範囲とすることで、自動縫合器操作時のずれをより抑えることができるとともに、縫合終了後は容易に剥離できる程度の適度な粘着力に調節しやすくすることができる。上記スポンジ層の厚みは1.5mm以上であることが好ましく、5.0mm以下であることが好ましい。上記スポンジ層の厚みは、スポンジ層を凍結乾燥によって形成する場合は、布状体層に浸す水溶性高分子溶液の量によって調節することができる。また、ここで上記スポンジ層の厚みは、スポンジ層の全面積をダイヤルゲージ(例えば、テクロック社製SMD-565J-L等)によって1箇所/cmの間隔で測定した厚みを平均したもののことを指す。
【0021】
上記スポンジ層の密度は特に限定されないが、0.04g/cm以上0.2g/cm以下であることが好ましい。
スポンジ層の密度が上記範囲であることで、自動縫合器操作時のずれをより抑えることができるとともに、縫合終了後は容易に剥離できる程度の適度な粘着力に調節しやすくすることができる。
【0022】
本発明の補強材は、上記布状体層と上記スポンジ層とが積層一体化されている。
粘着力を発現するスポンジ層が、布状体層と積層一体化していることで、取り扱い性が高まり、補強材を手術現場で容易に自動縫合器へ装着することができる。なお、ここで、積層一体化とは、力を加えても上記布状体層と上記スポンジ層との間で剥離が起き難い程度に両層を接合することを指す。上記布状体層と上記スポンジ層とを積層一体化する方法としては、上記布状体を上記スポンジ層の原料となる水溶性高分子溶液上に浮かべた後に、凍結乾燥を行う方法が挙げられる。布状体層とスポンジ層の界面密着性を高めるためには、上記布状体をプラズマ処理装置等で親水処理を行い、布状体への水溶性高分子溶液の浸透性を改善することが好ましい。
【0023】
本発明の補強材は、自動縫合器に貼付した際の接着強度が1.5N/cm以上であることが好ましい。
自動縫合器に貼付した際の接着強度が上記範囲であることで、自動縫合器操作時のずれをより抑えることができる。上記接着強度は3.0N/cm以上であることがより好ましい。上記接着強度の上限は特に限定されないが、縫合終了後の剥離を容易にする観点から30N/cm以下であることが好ましい。なお、上記接着強度は具体的には以下の方法で測定することができる。
補強材を8mm幅×40mm長にカットし、予め生理食塩水に浸しておいた自動縫合器(例えば、エチコン社製、エンドパスステープラーECHELON FLEX 60等)の作用面(アンビル側)に10mm長のみ貼付し、3分間押さえつけて接着させる。次いで、自動縫合器の柄の部分を引張試験機(例えば、オートグラフ精密万能試験機AG-X Plus、島津製作所社製等)の下部チャックに装着し、自動縫合器からはみ出た補強材の端部を引張試験機の上部チャックに装着する。その後、引張速度100mm/minにて引張試験を行い、ずれが生じた際の最大荷重を接着強度とする。
【0024】
本発明の補強材の製造方法は特に限定されず、例えば、上記方法で製造しても良いし、または布状体を底面に敷いた後、水溶性高分子溶液が布状体の下面に流れ込まないようにしたうえで布状体の上に水溶性高分子溶液を流し込み、凍結乾燥によってスポンジ層を形成することによって得ることができる。
【0025】
本発明の補強材は、自動縫合器又は補強材を水分に浸した後自動縫合器に貼付することで装着される。上記水分は上記スポンジ層が粘着性を発現できれば純水でなくともよく、生理食塩水や緩衝溶液等であってもよい。
【0026】
本発明の補強材は、自動縫合器を用いて組織を縫合する際に空気漏れや体液漏れ、組織の損傷を抑えるために用いられる。ここで、自動縫合器に従来の補強材と本発明の補強材が装着された状態を表した模式図を図1及び図2に示す。図1(a)、(b)に示すように、従来の自動縫合器用縫合補強材2は、筒状にして自動縫合器1に装着したとしても、補強材2の縫い合わせ付近の隙間や補強材2と自動縫合器1とのサイズ差によって密着性が低下して自動縫合器の操作の際に補強材にずれが生じることがあった。また、図1(b)に示すように、従来の自動縫合器用縫合補強材2は筒状であるため、自動縫合器1の作用面以外の部分にも補強材が存在している。そのため、自動縫合器1をポートへ通す際に自動縫合器用縫合補強材2がポートに引っかかったり、口径の大きなポートを用いなければ自動縫合器1を通せなかったりしていた。
一方、図2(a)、(b)に示すように、本発明の自動縫合器用縫合補強材3は、生体吸収性材料からなる布状体層31と、水分を含むと粘着性を発現するスポンジ層32とが積層一体化した構造となっている。本発明の自動縫合器用縫合補強材3は、自動縫合器1の作用面にスポンジ層32が接するように貼り付けることで自動縫合器1に装着でき、自動縫合器を操作した際の補強材のずれを抑えることができる。また、図2(a)、(b)に示すように、本発明の自動縫合器用縫合補強材3は筒状にしなくとも装着可能であるため、自動縫合器のサイズに関係なくずれを抑えることができる。また、図2(b)に示すように、本発明の自動縫合器用縫合補強材3は自動縫合器の作用面にのみ存在していることから、自動縫合器をポートに通したときに補強材が引っ掛かることがなく、また、従来の自動縫合器用縫合補強材よりも細いポートに自動縫合器を通すことができる。更に、本発明の補強材は水分を含ませなければ粘着性が発現しないため、補強材の保管時や輸送時の取り扱い性も高い。
なお、図2では本発明の補強材を直線縫合タイプの自動縫合器に用いているが、本発明の補強材は、直線縫合タイプの自動縫合器への適用にのみに限定されず、円周縫合タイプの自動吻合器にも適用しても良い。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、あらゆるサイズの自動縫合器に用いることができるとともに、ポート通過性の高く、自動縫合器を操作した際にずれが生じ難い自動縫合器用縫合補強材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】従来の自動縫合器用縫合補強材の一例を模式的に表した図である。
図2】本発明の自動縫合器用縫合補強材の一例を模式的に表した図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下に本発明の態様を更に詳しく説明するが、本発明はこれらの態様にのみ限定されるものではない。
【0030】
(実施例1)
(1)自動縫合器用縫合補強材の製造
ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)(粘度グレード6:AN6、2%溶液粘度:5.1mPa/s、三菱ケミカルフーズ社製)に蒸留水を加えて8重量%のHPMC水溶液を調製し、φ100mmのシャーレに10g加えた。次いで、HPMC水溶液を加えたシャーレ上に、布状体層としてφ100mmにカットしたポリグリコール酸(PGA)製のシート状不織布を浮かべた。シート状不織布にHPMC水溶液が浸透したのを確認した後、シャーレを-80℃の冷凍庫に15分間入れることでHPMC水溶液を凍結した。その後、凍結したHPMC水溶液を真空凍結乾燥機にて乾燥することで、不織布上にHPMCのスポンジ層(接着剤層)を形成し、自動縫合器用縫合補強材を作製した。得られた自動縫合器用縫合補強材についてダイヤルゲージ(テクロック社製SMD-565J-L)によって1箇所/cmの間隔で測定した厚みを平均することで、スポンジ層の厚みを測定した。また、スポンジ層の厚みと重量についても測定し、密度を算出した。結果を表1に示した。
【0031】
(2)接着強度の測定
補強材を8mm幅×40mm長にカットし、予め生理食塩水に浸しておいた自動縫合器(エチコン社製、エンドパスステープラーECHELON FLEX 60)の作用面(アンビル側)に10mm長のみ貼付し、3分間押さえつけて接着させた。次いで、自動縫合器の柄の部分を引張試験機(オートグラフ精密万能試験機AG-X Plus、島津製作所社製)の下部チャックに装着し、自動縫合器からからはみ出た補強材の端部を引張試験機の上部チャックに装着した。その後、引張速度100mm/minにて引張試験を行い、ズレが生じた際の最大荷重を接着強度とした。結果を表1に示した。
【0032】
(実施例2~5)
シャーレに加えるHPMC水溶液の液量を表1の通りとした以外は実施例1と同様にして自動縫合器用縫合補強材を得て、スポンジ層の厚み、密度及び接着強度を測定した。
【0033】
(比較例1)
ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)(粘度グレード6:AN6、2%溶液粘度:5.1mPa/s、三菱ケミカルフーズ社製)に蒸留水を加えて8重量%のHPMC水溶液を調製し、φ100mmのシャーレに15g加えた。次いで、HPMC水溶液を加えたシャーレ上に、布状体層としてφ100mmにカットしたポリグリコール酸(PGA)製のシート状不織布を浮かべた。シート状不織布にHPMC水溶液が浸透したのを確認した後、シャーレを90℃の乾燥機に60分間入れることで、不織布上にHPMCのフィルム層(接着剤層)を形成し、自動縫合器用縫合補強材を作製した。得られた自動縫合器用縫合補強材についてフィルム層の厚みと重量を測定し密度を算出し、結果を表1に示した。
【0034】
(実施例6)
ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)(粘度グレード50:AN50、2%溶液粘度:37mPa/s、三菱ケミカルフーズ社製)に蒸留水を加えて6重量%のHPMC水溶液を調製し、φ100mmのシャーレに10g加えた。次いで、HPMC水溶液を加えたシャーレ上に、布状体層としてφ100mmにカットしたポリグリコール酸(PGA)製のシート状不織布を浮かべた。シート状不織布にHPMC水溶液が浸透したのを確認した後、シャーレを-80℃の冷凍庫に15分間入れることでHPMC水溶液を凍結した。その後、凍結したHPMC水溶液を真空凍結乾燥機にて乾燥することで、不織布上にHPMCのスポンジ層(接着剤層)を形成し、自動縫合器用縫合補強材を作製した。得られた自動縫合器用縫合補強材について実施例1と同様の方法でスポンジ層の厚みを測定した。また、スポンジ層の厚みと重量についても測定し、密度を算出した。結果を表1に示した。
【0035】
(実施例7~10)
シャーレに加えるHPMC水溶液の液量を表1の通りとした以外は実施例6と同様にして自動縫合器用縫合補強材を得て、スポンジ層の厚み、密度及び接着強度を測定した。
【0036】
(比較例2)
ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)(粘度グレード50:AN50、2%溶液粘度:37mPa/s、三菱ケミカルフーズ社製)に蒸留水を加えて5重量%のHPMC水溶液を調製し、φ100mmのシャーレに15g加えた。その後、HPMC水溶液を加えたシャーレ上に、布状体層としてφ100mmにカットしたポリグリコール酸(PGA)製のシート状不織布を浮かべた。シート状不織布にHPMC水溶液が浸透したのを確認した後、シャーレを90℃の乾燥機に60分間入れることで、不織布上にHPMCのフィルム層(接着剤層)を形成し、自動縫合器用縫合補強材を作製した。得られた自動縫合器用縫合補強材についてフィルム層の厚みと重量を測定し密度を算出し、結果を表1に示した。
【0037】
(実施例11)
プルラン(日本薬局方プルラン、2%溶液粘度:3.7mPa/s、林原社製)に蒸留水を加えて10重量%のプルラン水溶液を調整し、φ100mmのシャーレに20g加えた。次いで、プルラン水溶液を加えたシャーレ上に、布状体層としてφ100mmにカットしたPGA製のシート状不織布を浮かべた。シート状不織布にプルラン水溶液が浸透したのを確認した後、シャーレを-80℃の冷凍庫に15分間入れることでプルラン水溶液を凍結した。その後、凍結したプルラン水溶液を真空凍結乾燥機にて乾燥することで、不織布上にプルランのスポンジ層(接着剤層)を形成し、自動縫合器用縫合補強材を作製した。得られた自動縫合器用縫合補強材について実施例1と同様にスポンジ層の厚み、密度及び接着強度を測定した。結果を表1に示した。
【0038】
(実施例12、13)
シャーレに加えるプルラン水溶液の液量を表1の通りとした以外は実施例11と同様にして自動縫合器用縫合補強材を得て、スポンジ層の厚み、密度及び接着強度を測定した。
【0039】
(実施例14)
アルギン酸ナトリウム(低粘度グレード:IL-2、2%溶液粘度:63mPa/s、キミカ社製)に蒸留水を加えて10重量%のアルギン酸ナトリウム水溶液を調製し、φ100mmのシャーレに20g加えた。次いで、アルギン酸ナトリウム水溶液を加えたシャーレ上に、布状体層としてφ100mmにカットしたPGA製のシート状不織布を浮かべた。シート状不織布にアルギン酸ナトリウム水溶液が浸透したのを確認した後、シャーレを-80℃の冷凍庫に15分間入れることでアルギン酸ナトリウム水溶液を凍結した。その後、凍結したアルギン酸ナトリウム水溶液を真空凍結乾燥機にて乾燥することで、不織布上にアルギン酸ナトリウムのスポンジ層(接着剤層)を形成し、自動縫合器用縫合補強材を作製した。得られた自動縫合器用縫合補強材について実施例1と同様にスポンジ層の厚み、密度及び接着強度を測定した。結果を表1に示した。
【0040】
(実施例15)
シャーレに加えるアルギン酸ナトリウム水溶液の液量を表1の通りとした以外は実施例14と同様にして自動縫合器用縫合補強材を得て、スポンジ層の厚み、密度及び接着強度を測定した。
【0041】
(実施例16)
ゼラチン(メディゼラチンHMG-BP、2%溶液粘度:2.0mPa/s、ニッピ社製)に蒸留水を加えて5重量%のゼラチン水溶液を調整し、φ100mmのシャーレに15g加えた。次いで、ゼラチン水溶液を加えたシャーレ上に、布状体層としてφ100mmにカットしたPGA製のシート状不織布を浮かべた。シート状不織布にゼラチン水溶液が浸透したのを確認した後、シャーレを-80℃の冷凍庫に15分間入れることでゼラチン水溶液を凍結した。その後、凍結したゼラチン水溶液を真空凍結乾燥機にて乾燥することで、不織布上にゼラチンのスポンジ層(接着剤層)を形成し、自動縫合器用縫合補強材を作製した。得られた自動縫合器用縫合補強材について実施例1と同様にスポンジ層の厚み、密度及び接着強度を測定した。結果を表1に示した。
【0042】
(実施例17~19)
シャーレに加えるゼラチン水溶液の液量を表1の通りとした以外は実施例16と同様にして自動縫合器用縫合補強材を得て、スポンジ層の厚み、密度及び接着強度を測定した。
【0043】
<評価>
実施例及び比較例で得られた自動縫合器用縫合補強材について、下記の項目について評価した。結果を表1に示した。
【0044】
(装着性の評価)
得られた自動縫合器用縫合補強材を10mm幅×60mm長と8mm幅×60mm長にカットし、予め生理食塩水に浸しておいたエチコン製の自動縫合器(エンドパスステープラーECHELON FLEX 60、口径:12mm)の作用面(カートリッジ側およびアンビル側)に、スポンジ層が自動縫合器と接するようにそれぞれ貼付した。この際、縫合器の作用面に容易に接着できた場合を「○」、容易に接着できなかった場合を「×」として装着性を評価した。
【0045】
(ポート通過性の評価)
得られた自動縫合器用縫合補強材を10mm幅×60mm長と8mm幅×60mm長にカットし、予め生理食塩水に浸しておいたエチコン製の自動縫合器(エンドパスステープラーECHELON FLEX 60、口径:12mm)の作用面(カートリッジ側およびアンビル側)に、スポンジ層が自動縫合器と接するようにそれぞれ貼付した。その後、自動縫合器用縫合補強材を貼付した自動縫合器をφ12mmポートに通した。この際、引っ掛かりや補強材の剥離がなかった場合を「○」、引っ掛かりや補強材の剥離があった場合を「×」としてポート通過性を評価した。なお、比較例1、2については、補強材を装着することができなかったため、評価を行っていない。
【0046】
(耐ずれ性の評価)
得られた自動縫合器用縫合補強材を10mm幅×60mm長と8mm幅×60mm長にカットし、予め生理食塩水に浸しておいたエチコン製の自動縫合器(エンドパスステープラーECHELON FLEX 60)の作用面(カートリッジ側およびアンビル側)に、スポンジ層が自動縫合器と接するようにそれぞれ貼付した。その後、自動縫合器用縫合補強材を貼付した自動縫合器でブタの肺を掴み、肺を上下左右に引っ張った。この際、補強材のずれがなかった場合を「○」、少しずれはあったものの実用上問題ない範囲であった場合を「△」、補強材が大きくずれた場合を「×」として耐ずれ性を評価した。なお、比較例1、2については、補強材を装着することができなかったため、評価を行っていない。
【0047】
(ファイヤーカット性の評価)
自動縫合器用縫合補強材を貼付した自動縫合器でブタの肺を掴み、クロージングレバーを掴んでロックした後、ファイヤリングトリガーを3回ストロークすることでステープリングとナイフカットを行った。4回目のストロークでナイフを元の位置に戻したのち、縫合器のロックを解放した。この際、ステープリングとナイフカットが問題なくでき、補強材が縫合器から問題なく剥がれた場合を「〇」、ステープリングとナイフカットができない又は補強材が縫合器から剥がれなかった場合を「×」としてファイヤーカット性を評価した。なお、比較例1、2については、補強材を装着することができなかったため、評価を行っていない。
【0048】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明によれば、あらゆるサイズの自動縫合器に用いることができるとともに、ポート通過性が高く、自動縫合器を操作した際にずれが生じ難い自動縫合器用縫合補強材を提供することができる。
【符号の説明】
【0050】
1 自動縫合器
2 従来の自動縫合器用縫合補強材
3 本発明の自動縫合器用縫合補強材
31 布状体層
32 スポンジ層
図1
図2