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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-05
(45)【発行日】2023-12-13
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 11/12 20060101AFI20231206BHJP
【FI】
B60C11/12 A
B60C11/12 C
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019224894
(22)【出願日】2019-12-12
(65)【公開番号】P2021091376
(43)【公開日】2021-06-17
【審査請求日】2022-11-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100186015
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 靖之
(72)【発明者】
【氏名】田中 雄太
【審査官】市村 脩平
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-062468(JP,A)
【文献】特開2009-280035(JP,A)
【文献】特開2006-281689(JP,A)
【文献】特開2006-062469(JP,A)
【文献】特開2019-104344(JP,A)
【文献】実開平01-123707(JP,U)
【文献】特開2005-119415(JP,A)
【文献】特開2009-173207(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C1/00-19/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッド踏面に区画されたブロック状陸部を備える空気入りタイヤであって、
前記ブロック状陸部は、タイヤ幅方向に延在し、前記トレッド踏面に開口する複数本のスリット状サイプと、それぞれの前記スリット状サイプの底部からタイヤ径方向内側に向けて延在するピン状サイプと、を有し、
前記複数本のスリット状サイプは、前記ブロック状陸部のタイヤ周方向端部に最も近い端側スリット状サイプと、該端側スリット状サイプのタイヤ周方向中央側に隣接する中央側スリット状サイプとを有し、
前記端側スリット状サイプに設けられたピン状サイプの合計容積が、前記中央側スリット状サイプに設けられたピン状サイプの合計容積よりも大きいことを特徴とする空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記端側スリット状サイプに複数本の前記ピン状サイプが設けられている、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記端側スリット状サイプに設けられた前記ピン状サイプの数が、前記中央側スリット状サイプに設けられたピン状サイプの数よりも多い、請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記端側スリット状サイプが、前記ブロック状陸部のタイヤ周方向端部から該ブロック状陸部のタイヤ周方向長さの25%以内の範囲に位置する、請求項1~3の何れか一項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
前記端側スリット状サイプは、前記トレッド踏面に開口する開口部から前記底部までの間に分岐部を有する、請求項1~4の何れか一項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項6】
トレッド踏面に区画されたブロック状陸部を備える空気入りタイヤであって、
前記ブロック状陸部は、タイヤ幅方向に延在し、前記トレッド踏面に開口する、前記トレッド踏面における開口幅が2mm以上の複数本の横溝と、それぞれの前記横溝の底部からタイヤ径方向内側に向けて延在するピン状サイプと、を有し、
前記複数本の横溝は、前記ブロック状陸部のタイヤ周方向端部に最も近い端側横溝と、該端側横溝のタイヤ周方向中央側に隣接する中央側横溝とを有し、
前記端側横溝に設けられたピン状サイプの合計容積が、前記中央側横溝に設けられたピン状サイプの合計容積よりも大きいことを特徴とする空気入りタイヤ。
【請求項7】
前記端側横溝に複数本の前記ピン状サイプが設けられている、請求項6に記載の空気入りタイヤ。
【請求項8】
前記端側横溝に設けられた前記ピン状サイプの数が、前記中央側横溝に設けられたピン状サイプの数よりも多い、請求項6又は7に記載の空気入りタイヤ。
【請求項9】
前記端側横溝が、前記ブロック状陸部のタイヤ周方向端部から該ブロック状陸部のタイヤ周方向長さの25%以内の範囲に位置する、請求項6~8の何れか一項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項10】
前記端側横溝は、前記トレッド踏面に開口する開口部から前記底部までの間に分岐部を有する、請求項6~9の何れか一項に記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、トレッド踏面に区画形成されたブロック状陸部に、タイヤ幅方向に延在する複数本のスリット状サイプを設けた空気入りタイヤが知られている(例えば、特許文献1参照)。このような構成によれば、スリット状サイプにより形成される陸部のエッジ成分等により、湿潤路面での空気入りタイヤのグリップ性能を向上させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2001-71712号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のような空気入りタイヤにおいては、使用によりトレッド踏面の摩耗が進展した際に、ブロック状陸部の圧縮剛性が高くなって接地性が低下する虞がある。特に、摩耗進展時における制動時(ブレーキング時)においては、ブロック状陸部のタイヤ周方向端部側の接地性が低下し易いという問題がある。
【0005】
それゆえ本発明は、摩耗進展時における陸部の接地性を向上した空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一態様において、本発明の空気入りタイヤは、トレッド踏面に区画されたブロック状陸部を備える空気入りタイヤであって、
前記ブロック状陸部は、タイヤ幅方向に延在し、前記トレッド踏面に開口する複数本のスリット状サイプと、それぞれの前記スリット状サイプの底部からタイヤ径方向内側に向けて延在するピン状サイプと、を有し、
前記複数本のスリット状サイプは、前記ブロック状陸部のタイヤ周方向端部に最も近い端側スリット状サイプと、該端側スリット状サイプのタイヤ周方向中央側に隣接する中央側スリット状サイプとを有し、
前記端側スリット状サイプに設けられたピン状サイプの合計容積が、前記中央側スリット状サイプに設けられたピン状サイプの合計容積よりも大きいことを特徴とする。
かかる構成によれば、摩耗進展時におけるブロック状陸部のタイヤ周方向端部側の圧縮剛性を低減することができるので、摩耗進展時における制動時のブロック状陸部の接地性を向上させることができる。
【0007】
ここで、「トレッド踏面」とは、空気入りタイヤを適用リムに装着し、規定内圧を充填して、最大負荷荷重を負荷した際に路面と接地することとなるトレッド表面の、タイヤ周方向全域にわたる面をいう。また、「スリット状サイプ」とは、空気入りタイヤを適用リムに装着し、規定内圧を充填し、無負荷とした状態での、トレッド踏面における開口幅が2mm未満の切込み(スリット)をいう。また、「ピン状サイプ」とは、トレッド踏面視(平面視)での直径(最大径)よりも深さ(タイヤ径方向長さ)が大きい穴を意味する。また、「タイヤ幅方向に延在」とは、タイヤ幅方向に対して平行に延在している場合のみならず、タイヤ幅方向に対して斜めに傾斜して延在している場合も含む。
【0008】
また、本明細書において、「適用リム」とは、タイヤが生産され、使用される地域に有効な産業規格であって、日本ではJATMA(日本自動車タイヤ協会)のJATMA YEAR BOOK、欧州ではETRTO(The European Tyre and Rim Technical Organisation)のSTANDARDS MANUAL、米国ではTRA(The Tire and Rim Association,Inc.)のYEAR BOOK等に記載されているまたは将来的に記載される、適用サイズにおける標準リム(ETRTOのSTANDARDS MANUALではMeasuring Rim、TRAのYEAR BOOKではDesign Rim)を指す(即ち、上記の「リム」には、現行サイズに加えて将来的に上記産業規格に含まれ得るサイズも含む。「将来的に記載されるサイズ」の例としては、ETRTO 2013年度版において「FUTURE DEVELOPMENTS」として記載されているサイズを挙げることができる。)が、上記産業規格に記載のないサイズの場合は、タイヤのビード幅に対応した幅のリムをいう。また、「規定内圧」とは、上記JATMA等に記載されている、適用サイズ・プライレーティングにおける単輪の最大負荷能力に対応する空気圧(最高空気圧)を指し、上記産業規格に記載のないサイズの場合は、「規定内圧」は、タイヤを装着する車両毎に規定される最大負荷能力に対応する空気圧(最高空気圧)をいうものとする。また、「最大負荷荷重」とは、上記最大負荷能力に対応する荷重をいうものとする。
【0009】
上記の空気入りタイヤとしては、前記端側スリット状サイプに複数本の前記ピン状サイプが設けられていることが好ましい。
かかる構成によれば、端側スリット状サイプにピン状サイプを1本のみ設ける場合に比べて、ブロック状陸部のタイヤ周方向端部側の圧縮剛性をバランスよく低減することができる。
【0010】
上記の空気入りタイヤとしては、前記端側スリット状サイプに設けられた前記ピン状サイプの数が、前記中央側スリット状サイプに設けられたピン状サイプの数よりも多いことが好ましい。
かかる構成によれば、端側スリット状サイプに設けられたピン状サイプの単独の容積を大きくすることなく、端側スリット状サイプに設けられたピン状サイプの合計容積を中央側スリット状サイプに設けられたピン状サイプの合計容積よりも大きくすることができる。
【0011】
上記の空気入りタイヤとしては、前記端側スリット状サイプが、前記ブロック状陸部のタイヤ周方向端部から該ブロック状陸部のタイヤ周方向長さの25%以内の範囲に位置することが好ましい。
かかる構成によれば、摩耗進展時において制動時の接地性が低下し易い範囲のブロック状陸部の圧縮剛性をより確実に低減することができるので、より効果的に制動時のブロック状陸部の接地性を向上させることができる。
【0012】
上記の空気入りタイヤとしては、前記端側スリット状サイプは、前記トレッド踏面に開口する開口部から前記底部までの間に分岐部を有することが好ましい。
かかる構成によれば、摩耗進展過程でスリット状サイプの本数を増やすことができるとともに、ピン状サイプを広い範囲に配置し易く、また、ピン状サイプの数も増やし易くなる。
【0013】
他の態様において、本発明の空気入りタイヤは、トレッド踏面に区画されたブロック状陸部を備える空気入りタイヤであって、
前記ブロック状陸部は、タイヤ幅方向に延在し、前記トレッド踏面に開口する複数本の横溝と、それぞれの前記横溝の底部からタイヤ径方向内側に向けて延在するピン状サイプと、を有し、
前記複数本の横溝は、前記ブロック状陸部のタイヤ周方向端部に最も近い端側横溝と、該端側横溝のタイヤ周方向中央側に隣接する中央側横溝とを有し、
前記端側横溝に設けられたピン状サイプの合計容積が、前記中央側横溝に設けられたピン状サイプの合計容積よりも大きいことを特徴とする。
かかる構成によれば、摩耗進展時におけるブロック状陸部のタイヤ周方向端部側の圧縮剛性を低減することができるので、摩耗進展時における制動時のブロック状陸部の接地性を向上させることができる。
【0014】
上記の空気入りタイヤとしては、前記端側横溝に複数本の前記ピン状サイプが設けられていることが好ましい。
かかる構成によれば、端側横溝にピン状サイプを1本のみ設ける場合に比べて、ブロック状陸部のタイヤ周方向端部側の圧縮剛性をバランスよく低減することができる。
【0015】
上記の空気入りタイヤとしては、前記端側横溝に設けられた前記ピン状サイプの数が、前記中央側横溝に設けられたピン状サイプの数よりも多いことが好ましい。
かかる構成によれば、端側横溝に設けられたピン状サイプの単独の容積を大きくすることなく、端側横溝に設けられたピン状サイプの合計容積を中央側横溝に設けられたピン状サイプの合計容積よりも大きくすることができる。
【0016】
上記の空気入りタイヤとしては、前記端側横溝が、前記ブロック状陸部のタイヤ周方向端部から該ブロック状陸部のタイヤ周方向長さの25%以内の範囲に位置することが好ましい。
かかる構成によれば、摩耗進展時において制動時の接地性が低下し易い範囲のブロック状陸部の圧縮剛性をより確実に低減することができるので、より効果的に制動時のブロック状陸部の接地性を向上させることができる。
【0017】
上記の空気入りタイヤとしては、前記端側横溝は、前記トレッド踏面に開口する開口部から前記底部までの間に分岐部を有することが好ましい。
かかる構成によれば、摩耗進展過程で横溝の本数を増やすことができるとともに、ピン状サイプを広い範囲に配置し易く、また、ピン状サイプの数も増やし易くなる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、摩耗進展時における陸部の接地性を向上した空気入りタイヤを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態にかかる空気入りタイヤのトレッドパターンを模式的に示す展開図である。
図2図1の空気入りタイヤにおけるブロック状陸部を単独で示す斜視図である。
図3図1の陸部の変形例を示すタイヤ周方向断面図である。
図4】本発明の他の実施形態にかかる空気入りタイヤのトレッドパターンを模式的に示す展開図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に例示説明する。
ここで、空気入りタイヤ(以下、単にタイヤとも称する)の内部構造等については、従来のものと同様の構造とすることができる。一例としては、該タイヤは、一対のビード部と、該一対のビード部に連なる一対のサイドウォール部と、該一対のサイドウォール部間に配置されたトレッド部とを有するものとすることができる。また、該タイヤは、一対のビード部間をトロイダル状に跨るカーカスと、該カーカスのクラウン部のタイヤ径方向外側に配置されたベルトと、を有するものとすることができる。
以下、特に断りのない限り、寸法等は、タイヤを適用リムに装着し、規定内圧を充填し、無負荷状態とした際の寸法等を指す。
【0021】
図1は、本発明の一実施形態にかかる空気入りタイヤのトレッドパターンを模式的に示す展開図である。
【0022】
図1に示すように、本例のタイヤは、トレッド踏面1に、タイヤ周方向に延在する複数本(図示例では4本)の周方向溝2(2a、2b、2c、2d)と、タイヤ幅方向に延在する複数本の幅方向溝3と、を有している。また、トレッド踏面1には、周方向溝2、トレッド端TE及び幅方向溝3等によって区画された複数本(図示例では3本)のリブ状陸部4(4a、4b、4c)と、複数のブロック状陸部5とが設けられている。なお、本明細書においては、スリット状サイプ6によりリブ状陸部4がタイヤ周方向に分断されている場合であっても、幅方向溝で完全に分断されていなければ、リブ状陸部に含めるものとしている。ここで、「周方向溝」とは、タイヤ周方向に延在し、空気入りタイヤを適用リムに装着し、規定内圧を充填し、無負荷とした状態での、上記トレッド踏面1における開口幅が、2mm以上の溝をいう。また、「幅方向溝」とは、タイヤ幅方向に延在し、空気入りタイヤを適用リムに装着し、規定内圧を充填し、無負荷とした状態での、上記トレッド踏面1における開口幅が、2mm以上のものをいう。また、「トレッド端」とは、上記トレッド踏面1のタイヤ幅方向両側の最外側点をいう。
【0023】
この例では、周方向溝2a、2bは、タイヤ赤道面CLを境界としたタイヤ幅方向の一方の半部に位置しており、他の周方向溝2c、2dは、タイヤ赤道面CLを境界としたタイヤ幅方向の他方の半部に位置している。そして、この例では、タイヤ赤道面CL上に1本のリブ状陸部4bと、各タイヤ幅方向半部に1本ずつのリブ状陸部4a、4cとが配置されている。図1に示した例では、周方向溝2の本数は、4本であるが、1~3本又は5本以上とすることもできる。従って、リブ状陸部4の個数も、1本、2本又は4本以上とすることができる。なお、リブ状陸部4は、ブロック状陸部であってもよい。また、ブロック状陸部5の数も適宜変更可能である。また、複数のブロック状陸部5は、全て同一の形状であってもよいし、相互に異なる形状であってもよい。また、タイヤ幅方向両端部(トレッド端TE側)に設けられ、周方向に配列された複数のブロック状陸部5で構成される2本の陸部列のうちの一方は、リブ状陸部であってもよい。
【0024】
また、トレッド踏面1に設けられるトレッドパターンは、タイヤ赤道面CLに対して対称であってもよいし、非対称であってもよい。また、当該トレッドパターンは、タイヤ赤道面CL上の1点を基準とした点対称形状であってもよいし、非対称であってもよい。
【0025】
ここで、周方向溝2の溝幅(トレッド踏面視において、溝の延在方向に対して垂直に測った開口幅)は、例えば、2mm以上、30mm以下とすることができ、特に、5mm以上、15mm以下とすることが好ましい。また、周方向溝2の溝深さ(最大深さ)は特には限定されないが、例えば4mm以上、20mm以下とすることができる。
【0026】
本例では、図1に示すトレッド踏面視において、周方向溝2は、いずれも、タイヤ周方向に沿って(傾斜せずに)延在しているが、例えば、周方向溝2の少なくとも1本がタイヤ周方向に対して傾斜して延在していてもよい。また、図示例では、周方向溝2は、いずれも、タイヤ周方向に沿って直線状に延在しているが、例えば、周方向溝2の少なくとも1本がジグザグ状に屈曲していたり、蛇行するように湾曲したりしていてもよい。
【0027】
また、幅方向溝3の溝幅(トレッド踏面視において、溝の延在方向に対して垂直に測った開口幅)は、特には限定されないが、例えば、2mm以上、20mm以下とすることができ、特に、2mm以上、15mm以下とすることが好ましい。また、幅方向溝3の溝深さ(最大深さ)は、特には限定されないが、例えば2mm以上、20mm以下とすることができる。
【0028】
本例では、図1に示すトレッド踏面視において、幅方向溝3は、いずれも、タイヤ幅方向に沿って(傾斜せずに)延在しているが、例えば、幅方向溝3の少なくとも1本がタイヤ幅方向に対して傾斜して延在していてもよい。また、図示例では、幅方向溝3は、いずれも、タイヤ幅方向に沿って直線状に延在しているが、例えば、幅方向溝3の少なくとも1本がジグザグ状に屈曲していたり、蛇行するように湾曲したりしていてもよい。
【0029】
リブ状陸部4は、タイヤ幅方向に隣接する2本の周方向溝2によって区画されるか、周方向溝2とトレッド端TEとによって区画される。なお、本例の3本のリブ状陸部4(4a、4b、4c)は全て周方向溝2(2a、2b、2c、2d)によって区画されている。
【0030】
本例では、3本のリブ状陸部4のタイヤ幅方向両側に、それぞれ複数のブロック状陸部5が周方向に並べて設けられている。本例のブロック状陸部5は、周方向溝2a、2d、トレッド端TE及び幅方向溝3によって区画されている。ブロック状陸部5の形状は、周方向溝2および幅方向溝3の形状に応じて変更可能である。
【0031】
ここで、図2は、1つのブロック状陸部5を拡大して示す斜視図である。本例において、ブロック状陸部5には、タイヤ幅方向に延在する複数本(図示例では4本)のスリット状サイプ6(61、62、63、64)と、各スリット状サイプ6の底部6aから径方向内側に向けて延在するピン状サイプ7とが設けられている。複数本のスリット状サイプ6は、タイヤ周方向に間隔を空けて配置されている。タイヤ周方向に隣接する2本のスリット状サイプ6間の間隔(タイヤ周方向の間隔)は、特に限定されない。
【0032】
複数本のスリット状サイプ6(61、62、63、64)は、ブロック状陸部5のタイヤ周方向端部5a、5bに最も近い端側スリット状サイプ61、64と、端側スリット状サイプ61、64のタイヤ周方向中央側に隣接する中央側スリット状サイプ62、63とを有し、端側スリット状サイプ61、64に設けられたピン状サイプ7の合計容積が、中央側スリット状サイプ62、63に設けられたピン状サイプ7の合計容積よりも大きくなるように構成されている。
【0033】
本例では、1つのブロック状陸部5に、2本の端側スリット状サイプ61、64と、2本の中央側スリット状サイプ62、63が設けられている。より具体的に、図1、2に示すブロック状陸部5は、ブロック状陸部5の一方のタイヤ周方向端部5aに最も近い端側スリット状サイプ61と、端側スリット状サイプ61のタイヤ周方向中央側に隣接する中央側スリット状サイプ62とを有する。また、ブロック状陸部5は、ブロック状陸部5の他方のタイヤ周方向端部5bに最も近い端側スリット状サイプ64と、端側スリット状サイプ64のタイヤ周方向中央側に隣接する中央側スリット状サイプ63とを有する。
【0034】
端側スリット状サイプ61の底部6aには、2本のピン状サイプ7が相互に間隔を空けて設けられており、中央側スリット状サイプ62の底部6aには、1本のピン状サイプ7が設けられている。本例では、端側スリット状サイプ61に設けられた2本のピン状サイプ7の合計容積が、中央側スリット状サイプ62に設けられた1本のピン状サイプ7の合計容積よりも大きくなっている。
【0035】
また、端側スリット状サイプ61の2本のピン状サイプ7は、ブロック状陸部5のタイヤ幅方向中心線を挟んで対称に配置されており、中央側スリット状サイプ62のピン状サイプ7は、ブロック状陸部5のタイヤ幅方向中心部に配置されている。このように、端側スリット状サイプ61の2本のピン状サイプ7と、中央側スリット状サイプ62のピン状サイプ7とは、ブロック状陸部5においてタイヤ幅方向にずれた位置に配置されている。
【0036】
端側スリット状サイプ64の底部6aには、2本のピン状サイプ7が相互に間隔を空けて設けられており、中央側スリット状サイプ63の底部6aには、1本のピン状サイプ7が設けられている。端側スリット状サイプ64の2本のピン状サイプ7は、ブロック状陸部5のタイヤ幅方向中心線を挟んで対称に配置されており、中央側スリット状サイプ63のピン状サイプ7は、ブロック状陸部5のタイヤ幅方向中心部に配置されている。このように、端側スリット状サイプ64の2本のピン状サイプ7と、中央側スリット状サイプ63のピン状サイプ7とは、ブロック状陸部5においてタイヤ幅方向にずれた位置に配置されている。
【0037】
なお本例では、ブロック状陸部5のタイヤ周方向の中心線5cを挟んで対称となるように、スリット状サイプ61、62、63、64と各ピン状サイプ7が配置されている。
【0038】
ここで、本例では、各端側スリット状サイプ61、64に設けられたピン状サイプ7の数を、中央側スリット状サイプ62、63に設けられたピン状サイプ7の数よりも多くすることで、端側スリット状サイプ61、64に設けられたピン状サイプ7の合計容積を、中央側スリット状サイプ62、63に設けられたピン状サイプ7の合計容積よりも大きくするようにしているが、これに限られない。例えば、端側スリット状サイプ61、64に設けられたピン状サイプ7を、中央側スリット状サイプ62、63に設けられたピン状サイプ7よりも大きくすることで、端側スリット状サイプ61、64に設けられたピン状サイプ7の合計容積を、中央側スリット状サイプ62、63に設けられたピン状サイプ7の合計容積よりも大きくするようにしてもよい。その場合、端側スリット状サイプ61、64に設けられたピン状サイプ7の数と、中央側スリット状サイプ62、63に設けられたピン状サイプ7の数は同数でもよいし、違っていてもよい。
【0039】
なお、トレッド踏面1は、上記のような端側スリット状サイプ61、64及び中央側スリット状サイプ62、63を有するブロック状陸部5を少なくとも1つ備えていればよい。また、当該ブロック状陸部5には、上記の端側スリット状サイプ61、64及び中央側スリット状サイプ62、63が少なくとも1本ずつ設けられていればよい。なお本例では、トレッド踏面1に設けられた全てのブロック状陸部5において、端側スリット状サイプ61、64に設けられたピン状サイプ7の合計容積が中央側スリット状サイプ62、63に設けられたピン状サイプ7の合計容積よりも大きくなるように構成されている。
【0040】
なお、トレッド踏面1は、スリット状サイプ6及びピン状サイプ7を有しないブロック状陸部5を有していてもよいし、全てのブロック状陸部5がスリット状サイプ6及びピン状サイプ7を有するようにしてもよい。また、リブ状陸部4(4a、4b、4c)の構成は特に限定されず、スリット状サイプ及び/又はピン状サイプを設けてもよいし、設けなくてもよい。
【0041】
図1、2に示すスリット状サイプ6は、タイヤ幅方向に沿って(タイヤ幅方向に対して平行に)一直線状に延在している。スリット状サイプ6は、ブロック状陸部5の幅方向全体にわたって延在している。つまり、スリット状サイプ6の延在方向の一方の端部はトレッド端TEに位置し、他方の端部は周方向溝2aに連通している。なお、スリット状サイプ6は、タイヤ幅方向に対して傾斜して斜めに延在してもよい。また、スリット状サイプ6の延在方向における何れか一方の端部または両方の端部が、ブロック状陸部5内で終端していてもよい。また、スリット状サイプ6は、図1に示すトレッド踏面視で、延在方向に沿って全体が一直線状の形状に限らず、湾曲部または屈曲部を有していてもよい。
【0042】
スリット状サイプ6のサイプ幅(トレッド踏面1において、スリット状サイプ6の延在方向に対して垂直に測った開口幅)は、例えば0.2mm以上、1.0mm以下とすることができ、特に、0.3mm以上、0.7mm以下とすることが好ましい。なお、スリット状サイプ6のサイプ幅は、本例のようにスリット状サイプ6の延在方向に沿って一定であることが好ましいが、延在方向に沿ってサイプ幅が変化してもよい。また、スリット状サイプ6は、トレッド踏面1に開口する開口部6bから底部6aまでタイヤ径方向(スリット状サイプ6の深さ方向)に一直線状に延在していることが好ましいが、これに限られず、スリット状サイプ6は、タイヤ径方向に対して傾斜していてもよいし、また、湾曲部または屈曲部を有していてもよい。また、スリット状サイプ6のサイプ幅は、スリット状サイプ6の深さ方向に沿って一定であることが好ましいが、深さ方向に沿ってサイプ幅が変化してもよい。また、スリット状サイプ6のサイプ深さ(トレッド踏面1への開口部6bから底部6aまでのタイヤ径方向の長さ)は、例えば、1mm以上、20mm以下とすることができ、特に、3mm以上、15mm以下とすることが好ましい。
【0043】
ピン状サイプ7は、新品時のトレッド踏面1には露出しておらず、タイヤの使用によりトレッド踏面1が所定の位置(スリット状サイプ6の底部6a)まで摩耗した摩耗進展時に露出するように構成されている。本例のピン状サイプ7は、スリット状サイプ6の底部6aからタイヤ径方向内側に向けて一直線状に延在する円柱状の空間(穴)である。
【0044】
なお、ピン状サイプ7の形状、体積(容積)、位置、数は適宜変更可能である。例えば、1本のスリット状サイプ6の底部6aに3本以上のピン状サイプ7を設けてもよい。また、ブロック状陸部5は、ピン状サイプ7が設けられていないスリット状サイプ6を有していてもよい。また、ピン状サイプ7の形状は、本例のような円柱状に限られず、例えば多角柱状としてもよいし、トレッド踏面視でピン状サイプ7の中心から放射状に延在する複数の切込み部を有するY字状もしくはX字状等としてもよい。
【0045】
本例のピン状サイプ7は、断面(ピン状サイプ7の延在方向(深さ方向)に垂直な横断面)の形状が、ピン状サイプ7の上端から下端まで一定であるが、これに限られず、断面形状が深さ方向に沿って変化する形状であってもよい。例えば、ピン状サイプ7の上端から下端に向けて、連続的もしくは段階的に直径が大きくなる形状であってもよいし、逆に、ピン状サイプ7の上端から下端に向けて、徐々に直径が小さくなる形状であってもよい。
【0046】
ピン状サイプ7のサイプ径(トレッド踏面視での最大径)は、例えば、0.2mm以上、5.0mm以下とすることができ、特に、0.3mm以上、2.0mm以下とすることが好ましい。また、ピン状サイプ7のサイプ径は、ピン状サイプ7を形成し易くする点においては、スリット状サイプ6のサイプ幅以下であることが好ましい。なお、図1、2に示す例では、ピン状サイプ7の直径がスリット状サイプ6のサイプ幅よりも大きい。
【0047】
ピン状サイプ7のサイプ深さ(ピン状サイプ7の上端から下端までのタイヤ径方向の長さ)は、例えば、0.5mm以上、15mm以下とすることができ、特に、1.0mm以上、5.0mm以下とすることが好ましい。
【0048】
以上の通り、本実施形態のタイヤは、トレッド踏面1に区画されたブロック状陸部5を備える空気入りタイヤであって、ブロック状陸部5は、タイヤ幅方向に延在し、トレッド踏面1に開口する複数本のスリット状サイプ6と、それぞれのスリット状サイプ6の底部6aからタイヤ径方向内側に向けて延在するピン状サイプ7と、を有し、複数本のスリット状サイプ6は、ブロック状陸部5のタイヤ周方向端部5a、5bに最も近い端側スリット状サイプ61、64と、端側スリット状サイプ61、64のタイヤ周方向中央側に隣接する中央側スリット状サイプ62、63とを有し、端側スリット状サイプ61、64に設けられたピン状サイプ7の合計容積が、中央側スリット状サイプ62、63に設けられたピン状サイプ7の合計容積よりも大きいことを特徴とする。かかる構成によれば、ピン状サイプ7を設けたことで、摩耗進展時におけるブロック状陸部5の圧縮剛性が低減して、トレッド踏面1が路面に食い込み易くなる。なお、例えばピン状サイプ7に代えて、ピン状サイプ7の下端の深さまで延在するスリット状サイプを設けた場合(スリット状サイプ6の深さをピン状サイプ7の下端の深さまで大きくした場合)には、陸部の倒れ込みが発生する虞があるところ、本実施形態ではスリット状サイプ6を適切な深さに維持しながらピン状サイプ7を設けることで、そのような陸部の倒れ込みを抑制することができる。その結果、摩耗進展時におけるブロック状陸部5の接地性を適切に高めることができる。また、端側スリット状サイプ61、64に設けられたピン状サイプ7の合計容積が、中央側スリット状サイプ62、63に設けられたピン状サイプ7の合計容積よりも大きいため、ブロック状陸部5のタイヤ周方向端部5a、5b側の圧縮剛性が中央側の圧縮剛性よりも低くなり、制動時におけるブロック状陸部5の接地性を高めることができる。その結果、摩耗進展時における制動時のブロック状陸部5の接地性を向上させることができ、例えば摩耗進展時における湿潤路面でのグリップ性能を向上させることができる。
【0049】
なお、本実施形態のタイヤにあっては、スリット状サイプ6の底部6aに連なるピン状サイプ7を設けたことで、ピン状サイプ7を設けない場合と比較して、路面とトレッド踏面1との間の水を、スリット状サイプ6を介してピン状サイプ7に吸い上げることができるので、タイヤの排水性を高めることも可能となる。
【0050】
また、本実施形態のタイヤにあっては、スリット状サイプ6がタイヤ幅方向に延在していることで、ピン状サイプ7が露出するまでのタイヤ幅方向のエッジ成分(タイヤ周方向に対するエッジ成分)を増大させて、ピン状サイプ7が露出する摩耗進展時までの湿潤路面でのタイヤのグリップ性能を向上させることができる。
【0051】
ここで、本実施形態のタイヤにあっては、スリット状サイプ6がタイヤ幅方向に対して平行に延在していることが好ましい。このような構成とすることで、ピン状サイプ7が露出するまでのタイヤ幅方向のエッジ成分を増大させて、ピン状サイプ7が露出する摩耗進展時までの湿潤路面でのタイヤのグリップ性能を向上させることができる。
【0052】
なお、スリット状サイプ6は、タイヤ幅方向に対して傾斜して延在していてもよく、この場合、タイヤ幅方向に対して45°以下の傾斜角度で傾斜して延在していることが好ましく、また、30°以下の傾斜角度で傾斜して延在していることが好ましい。また、スリット状サイプ6は、トレッド踏面視でタイヤ幅方向に沿って一直線状に延在していることが好ましい。一方で、スリット状サイプ6は延在方向に沿って一直線状の形状に限らず、湾曲部または屈曲部を有していてもよい。
【0053】
また、本実施形態のタイヤにあっては、端側スリット状サイプ61、64に複数本のピン状サイプ7が設けられている。かかる構成によれば、端側スリット状サイプ61、64にピン状サイプ7を1本のみ設ける場合に比べて、ブロック状陸部5のタイヤ周方向端部5a、5b側の圧縮剛性をバランスよく低減することができる。
【0054】
また、本実施形態のタイヤにあっては、端側スリット状サイプ61、64に設けられたピン状サイプ7の数が、中央側スリット状サイプ62、63に設けられたピン状サイプ7の数よりも多くなっている。かかる構成によれば、端側スリット状サイプ61、64に設けられたピン状サイプ7の単独の容積を大きくすることなく、端側スリット状サイプ61、64に設けられたピン状サイプ7の合計容積を中央側スリット状サイプ62、63に設けられたピン状サイプ7の合計容積よりも大きくすることができる。
【0055】
また、本実施形態のタイヤにあっては、端側スリット状サイプ61、64が、ブロック状陸部5のタイヤ周方向端部5a、5bからブロック状陸部5のタイヤ周方向長さの25%以内の範囲に位置する。かかる構成によれば、摩耗進展時における制動時の接地性が低下し易い範囲のブロック状陸部5の圧縮剛性をより確実に低減することができるので、より効果的に摩耗進展時における制動時のブロック状陸部5の接地性を向上させることができる。
【0056】
ここで、図3は、スリット状サイプ6が、トレッド踏面1に開口する開口部6bから底部6aまでの間に分岐部6cを有する場合の一例を示したものである。なお、図3は、スリット状サイプ6の延在方向に垂直な断面を示している。つまり、図3は、例えば図1に示すようにスリット状サイプ6がタイヤ幅方向に延在している場合におけるタイヤ周方向断面を示している。なお、分岐部6cを有するスリット状サイプ6の種類は特に限定されない。すなわち、例えば図1、2に示すブロック状陸部5において、4本のスリット状サイプ61、62、63、64の全てが分岐部6cを有する構成としてもよいし、何れか1本~3本のスリット状サイプ6(61、62、63、64)のみが分岐部6cを有する構成としてもよい。
【0057】
図3に示すように、スリット状サイプ6は、トレッド踏面1に開口する開口部6bからタイヤ径方向内側に向かって延在する踏面側サイプ部分6dと、当該踏面側サイプ部分6dから分岐部6cを介して分岐して延在する、分岐サイプ部分6eと、を有している。
【0058】
踏面側サイプ部分6dは、トレッド踏面1の法線方向(タイヤ径方向)に延在し、分岐サイプ部分6eは、図3のタイヤ周方向断面視で、タイヤ周方向に沿って延在する水平サイプ部分6fと、トレッド踏面1の法線方向に延在する2本の垂直サイプ部分6gとからなる。2本の垂直サイプ部分6gのそれぞれの底部6aに、ピン状サイプ7が設けられている。かかる構成によれば、摩耗進展過程で1本のスリット状サイプ6が分岐して2本になるため、スリット状サイプ6の本数を摩耗進展過程で増やすことができる。また、トレッド踏面1に開口するスリット状サイプ6の開口部6bよりも底部6aの数が増えるとともに、底部6aの位置が広範囲に拡がるため、ピン状サイプ7を広い範囲に配置し易く、また、ピン状サイプ7の数も増やし易くなる。その結果、摩耗進展過程においてスリット状サイプ6の本数が増えることによってエッジ成分を増大させることができ、また、ピン状サイプ7を広い範囲に多く配置することにより摩耗進展時の接地性の向上効果を高めることができる。また、摩耗進展時における制動時の接地性を高める観点から、端側スリット状サイプ61、64に分岐部6cが設けられていることが好ましい。
【0059】
なお、上記のスリット状サイプ6及びピン状サイプ7は、例えば、金属板の加工、鋳造、積層造形(3Dプリンター)等により製造することができるが、これらに限定されるものではない。
【0060】
本発明は、上記のようなスリット状サイプ6のみならず、スリット状サイプ6よりも溝幅の大きい横溝8にも同様に適用することができる。その場合の空気入りタイヤは、例えば図4に示すように、トレッド踏面1に区画されたブロック状陸部5を備え、ブロック状陸部5は、タイヤ幅方向に延在し、トレッド踏面1に開口する複数本の横溝8と、それぞれの横溝8の底部からタイヤ径方向内側に向けて延在するピン状サイプ7と、を有し、複数本の横溝8は、ブロック状陸部5のタイヤ周方向端部5a、5bに最も近い端側横溝81、84と、端側横溝81、84のタイヤ周方向中央側に隣接する中央側横溝82、83とを有し、端側横溝81、84に設けられたピン状サイプ7の合計容積が、中央側横溝82、83に設けられたピン状サイプ7の合計容積よりも大きい。ここで、横溝8は、タイヤ幅方向に延在し、空気入りタイヤを適用リムに装着し、規定内圧を充填し、無負荷とした状態での、トレッド踏面1における開口幅が2mm以上の溝をいう。
【0061】
この空気入りタイヤによっても、スリット状サイプ6の場合について説明したのと同様の理由により、摩耗進展時におけるブロック状陸部5の接地性を向上させることができる。
【0062】
この場合、端側横溝81、84に複数本のピン状サイプ7が設けられていることが好ましい。かかる構成によれば、端側横溝81、84にピン状サイプ7を1本のみ設ける場合に比べて、ブロック状陸部5のタイヤ周方向端部5a、5b側の圧縮剛性をバランスよく低減することができる。
【0063】
上記の空気入りタイヤとしては、端側横溝81、84に設けられたピン状サイプ7の数が、中央側横溝82、83に設けられたピン状サイプ7の数よりも多いことが好ましい。かかる構成によれば、端側横溝81、84に設けられたピン状サイプ7の単独の容積を大きくすることなく、端側横溝81、84に設けられたピン状サイプ7の合計容積を中央側横溝82、83に設けられたピン状サイプ7の合計容積よりも大きくすることができる。
【0064】
上記の空気入りタイヤとしては、端側横溝81、84が、ブロック状陸部5のタイヤ周方向端部5a、5bからブロック状陸部5のタイヤ周方向長さの25%以内の範囲に位置することが好ましい。かかる構成によれば、摩耗進展時において制動時の接地性が低下し易い範囲のブロック状陸部5の圧縮剛性をより確実に低減することができるので、より効果的に制動時のブロック状陸部5の接地性を向上させることができる。
【0065】
上記の空気入りタイヤとしては、端側横溝81、84は、トレッド踏面1に開口する開口部から底部までの間に分岐部を有することが好ましい。かかる構成によれば、摩耗進展過程で横溝8の本数を増やすことができるとともに、ピン状サイプ7を広い範囲に配置し易く、また、ピン状サイプ7の数も増やし易くなる。その結果、横溝8によるエッジ成分を増大させることができ、また、ピン状サイプ7による摩耗進展時の接地性の向上効果を高めることができる。
【0066】
横溝8は、タイヤ幅方向に対して平行に延在していることが好ましい。このような構成とすることで、ピン状サイプ7がトレッド踏面1に露出するまでの摩耗進展過程において、タイヤ幅方向のエッジ成分を増大させて、ピン状サイプ7が露出する摩耗進展時までの湿潤路面でのタイヤのグリップ性能を向上させることができる。
【0067】
本例の横溝8は、タイヤ幅方向に沿って(タイヤ幅方向に対して平行に)一直線状に延在している。横溝8は、ブロック状陸部5の幅方向の一部に延在している。つまり、横溝8の延在方向の両端部は共に、ブロック状陸部5内で終端している。なお、横溝8は、タイヤ幅方向に対して傾斜して斜めに延在してもよい。また、横溝8の延在方向における何れか一方の端部が、周方向溝2(2b、2c)に連通していてもよい。また、横溝8は、延在方向に沿って一直線状の形状に限らず、湾曲部または屈曲部を有していてもよい。
【0068】
横溝8の溝幅(トレッド踏面1において、横溝8の延在方向に対して垂直に測った開口幅)は、例えば、2mm以上、10mm以下とすることができる。なお、横溝8の溝幅は、本例のように横溝8の延在方向に沿って一定であることが好ましいが、延在方向に沿って溝幅が変化してもよい。また、横溝8の溝幅は、横溝8の深さ方向に沿って一定であることが好ましいが、深さ方向に沿って溝幅が変化してもよい。また、横溝8の溝深さ(トレッド踏面1への開口部から底部までのタイヤ径方向の長さ)は、例えば、2mm以上、20mm以下とすることができる。
【0069】
本発明に係る空気入りタイヤは、上述した実施形態及び変形例に示す具体的な構成に限定されず、特許請求の範囲を逸脱しない限りで、種々の変形、変更が可能である。
【符号の説明】
【0070】
1:トレッド踏面 2(2a、2b、2c、2d):周方向溝 3:幅方向溝 4(4a、4b、4c):リブ状陸部 5:ブロック状陸部 5a、5b:ブロック状陸部のタイヤ周方向端部 6:スリット状サイプ 6a:底部 6b:開口部 6c:分岐部 6d:踏面側サイプ部分 6e:分岐サイプ部分 6f:水平サイプ部分 6g:垂直サイプ部分 7:ピン状サイプ 8:横溝 61、64:端側スリット状サイプ 62、63:中央側スリット状サイプ 81、84:端側横溝 82、83:中央側横溝
図1
図2
図3
図4