(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-05
(45)【発行日】2023-12-13
(54)【発明の名称】タイヤ
(51)【国際特許分類】
C08L 9/00 20060101AFI20231206BHJP
C08L 7/00 20060101ALI20231206BHJP
C08L 15/00 20060101ALI20231206BHJP
C08L 57/02 20060101ALI20231206BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20231206BHJP
B60C 1/00 20060101ALI20231206BHJP
【FI】
C08L9/00
C08L7/00
C08L15/00
C08L57/02
C08K3/013
B60C1/00 Z
(21)【出願番号】P 2019229746
(22)【出願日】2019-12-19
【審査請求日】2022-12-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100119530
【氏名又は名称】冨田 和幸
(72)【発明者】
【氏名】三重野 香奈
(72)【発明者】
【氏名】小笠原 拓也
【審査官】南 宏樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-108515(JP,A)
【文献】国際公開第2019/207925(WO,A1)
【文献】特開2019-006880(JP,A)
【文献】国際公開第2016/104142(WO,A1)
【文献】特開2008-174696(JP,A)
【文献】特開2011-088988(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
B60C 1/00-19/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イソプレン骨格を有するゴム、結合スチレン量が15質量%以下のアミノアルコキシシラン変性スチレン-ブタジエンゴム、及びブタジエンゴムを含有するゴム成分と、
前記ゴム成分100質量部に対して40~125質量部の充填剤と、
軟化点が110℃より高く、ポリスチレン換算の重量平均分子量が200~1200g/molであり、前記ゴム成分100質量部に対して5~50質量部の水添樹脂と、
を含
み、前記水添樹脂が水添C
5
系樹脂である、ゴム組成物を有することを特徴とする、タイヤ。
【請求項2】
前記ゴム成分中の前記ブタジエンゴムの含有量が、10~80質量%である、請求項1に記載のタイヤ。
【請求項3】
前記ゴム成分中の前記イソプレン骨格を有するゴムの含有量が、10~80質量%である、請求項1又は2に記載のタイヤ。
【請求項4】
前記ゴム組成物中の軟化剤の総量が、前記ゴム成分100質量部に対して10~70質量部である、請求項1~
3のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項5】
前記ブタジエンゴムは、シス-1,4結合量が80%以上である、請求項1~
4のいずれか1項に記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤに関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両の安全性を向上させる観点から、乾燥路面のみならず、湿潤路面、氷雪路面等の様々な路面上でのタイヤの制動性や駆動性を向上させるために、種々の検討がなされている。例えば、乾燥路面での制動性能が高く、かつ、マンホール等の、アスファルトと比して滑り易い湿潤路面においても高い制動性能を有するトレッドゴムを製造可能なゴム組成物として、天然ゴムを70質量%以上含むゴム成分(A)を配合してなり、ゴム成分100質量部に対して、C5系樹脂、C5~C9系樹脂、C9系樹脂、テルペン系樹脂、テルペン-芳香族化合物系樹脂、ロジン系樹脂、ジシクロペンタジエン樹脂、及びアルキルフェノール系樹脂の中から選ばれる少なくとも1種の熱可塑性樹脂(B)を5~50質量部、並びにシリカを含む充填剤(C)を20~120質量部配合してなり、前記充填剤(C)中のシリカ含有量が50~100質量%であるゴム組成物が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、湿潤路面でのグリップ性能を損なうことなく、乾いた路面でのグリップ性能を向上させることができるタイヤ用ゴム組成物として、スチレン含有率が20~60質量%であるスチレン-ブタジエンゴムを、ゴム成分中に70質量部以上含むジエン系ゴム成分100質量部に対して、シリカ50~300質量部と、一般式mM1・xSiOy・zH2Oで表される無機剤0~150質量部と、カーボンブラック0~150質量部とからなる充填剤群から、シリカと無機剤の合計量が200~350質量部で、かつ、シリカと無機剤とカーボンブラックの合計量が200~350質量部となるように前記各充填剤を含有し、総充填剤量に対して70質量%以上の量となる軟化剤を含有すると共に、軟化点が145℃以下となる樹脂の少なくとも1種以上を5~60質量部含有してなるタイヤ用ゴム組成物が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2015/079703号
【文献】特開2008-184505号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、本発明者らが検討したとこと、上記特許文献1又は2に開示のゴム組成物を適用したタイヤでは、ウェットグリップ性能(湿潤路面でのグリップ性能)と、転がり抵抗と、雪上性能(氷雪路面でのグリップ性能)とをバランスさせることが難しいことが分かった。
【0006】
そこで、本発明は、上記従来技術の問題を解決し、ウェットグリップ性能と転がり抵抗と雪上性能とのバランスに優れるタイヤを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する本発明の要旨構成は、以下の通りである。
【0008】
本発明のタイヤは、
イソプレン骨格を有するゴム、結合スチレン量が15質量%以下のアミノアルコキシシラン変性スチレン-ブタジエンゴム、及びブタジエンゴムを含有するゴム成分と、
前記ゴム成分100質量部に対して40~125質量部の充填剤と、
軟化点が110℃より高く、ポリスチレン換算の重量平均分子量が200~1200g/molであり、前記ゴム成分100質量部に対して5~50質量部の水添樹脂と、
を含むゴム組成物を有することを特徴とする。
かかるタイヤは、ウェットグリップ性能と転がり抵抗と雪上性能とのバランスに優れる。
【0009】
本発明のタイヤの好適例においては、前記ゴム成分中の前記ブタジエンゴムの含有量が、10~80質量%である。この場合、タイヤのウェットグリップ性能と転がり抵抗と雪上性能とをより高度に両立することができる。
【0010】
本発明のタイヤの他の好適例においては、前記ゴム成分中の前記イソプレン骨格を有するゴムの含有量が、10~80質量%である。この場合、タイヤの耐摩耗性を向上させることができる。
【0011】
本発明のタイヤの他の好適例においては、前記水添樹脂が、水添C5系樹脂、水添C5-C9系樹脂、及び水添ジシクロペンタジエン系樹脂からなる群より選択される少なくとも1種である。この場合、タイヤの雪上性能を更に向上させることができる。
【0012】
本発明のタイヤの他の好適例においては、前記ゴム組成物中の軟化剤の総量が、前記ゴム成分100質量部に対して10~70質量部である。この場合、ゴム組成物の作業性が向上し、また、タイヤの外観を良好にできる。
【0013】
本発明のタイヤにおいて、前記ブタジエンゴムは、シス-1,4結合量が80%以上であることが好ましい。この場合、タイヤのウェットグリップ性能と転がり抵抗と雪上性能とをより高度に両立することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ウェットグリップ性能と転がり抵抗と雪上性能とのバランスに優れるタイヤを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明のタイヤを、その実施形態に基づき、詳細に例示説明する。
【0016】
本実施形態のタイヤは、
イソプレン骨格を有するゴム、結合スチレン量が15質量%以下のアミノアルコキシシラン変性スチレン-ブタジエンゴム、及びブタジエンゴムを含有するゴム成分と、
前記ゴム成分100質量部に対して40~125質量部の充填剤と、
軟化点が110℃より高く、ポリスチレン換算の重量平均分子量が200~1200g/molであり、前記ゴム成分100質量部に対して5~50質量部の水添樹脂と、
を含むゴム組成物を有することを特徴とする。
以下、「結合スチレン量が15質量%以下のアミノアルコキシシラン変性スチレン-ブタジエンゴム」を「低St変性SBR」と称することがある。
【0017】
前記水添樹脂は、ポリスチレン換算の重量平均分子量が1200g/mol以下であり、低分子量であるため、ゴム成分と相溶し易く、また、該水添樹脂は、軟化点が高いため、ゴム成分を補強し、加硫ゴムの弾性率を上昇させるものと考えられる。それと共に、前記水添樹脂は、ゴム成分との相溶し易さから、湿潤路面及び氷雪路面でのグリップ性能に必要な柔軟性をタイヤに与えることができ、滑り易い湿潤路面及び氷雪路面でのグリップ性能、即ち、ウェットグリップ性能及び雪上性能を向上させることができるものと考えられる。
また、前記スチレン-ブタジエンゴムはアミノアルコキシシラン変性されていることから、充填剤との相互作用が高く、タイヤの転がり抵抗を低減できるものと考えらえる。また、前記アミノアルコキシシラン変性スチレン-ブタジエンゴムは、結合スチレン量が15質量%以下であり、タイヤの弾性率を高め過ぎないことから、ウェットグリップ性能及び雪上性能を更に向上させるものと考えられる。
以上より、本実施形態のタイヤは、ウェットグリップ性能と転がり抵抗と雪上性能とのバランスに優れるものと考えられる。
また、本実施形態のタイヤが有するゴム組成物は、イソプレン骨格を有するゴムを含むことから、タイヤの機械的強度を向上させ、タイヤの耐摩耗性も向上させるものと考えられる。
【0018】
<ゴム成分>
本実施形態のタイヤが有するゴム組成物のゴム成分は、イソプレン骨格を有するゴム、結合スチレン量が15質量%以下の変性スチレン-ブタジエンゴム(低St変性SBR)、及びブタジエンゴムを含有する。
【0019】
(イソプレン骨格を有するゴム)
前記ゴム成分がイソプレン骨格を有するゴムを含有することで、加硫ゴムの破壊強度を高めることができる。その結果、タイヤの耐摩耗性を向上させることができる。
ここで、イソプレン骨格を有するゴムとしては、例えば、天然ゴム(NR)、ポリイソプレンゴム(IR)等が挙げられる。
【0020】
前記ゴム成分中のイソプレン骨格を有するゴムの含有量は、タイヤの耐摩耗性を更に向上させる観点から、10~80質量%であることが好ましく、20~70質量%であることがより好ましく、30~65質量%であることがより好ましく、35~60質量%であることがより好ましく、41~57質量%であることが更に好ましい。
【0021】
(アミノアルコキシシラン変性スチレン-ブタジエンゴム)
前記ゴム成分は、結合スチレン量が15質量%以下のアミノアルコキシシラン変性スチレン-ブタジエンゴム(低St変性SBR)を含有する。
スチレン-ブタジエンゴムの結合スチレン量とは、スチレン-ブタジエンゴムに含まれるスチレン単位の割合を意味する。
ゴム成分が低St変性SBRを含有することで、タイヤのウェットグリップ性能及び雪上性能を向上させることができる。低St変性SBRの結合スチレン量は、タイヤのウェットグリップ性能及び雪上性能の観点から、14質量%以下であることが好ましく、13質量%以下であることがより好ましく、12質量%以下であることが更に好ましい。また、低St変性SBRの結合スチレン量は、タイヤの耐摩耗性の観点から、5質量%以上であることが好ましく、7質量%以上であることがより好ましく、8質量%以上であることが更に好ましい。
【0022】
前記ゴム成分中の低St変性SBRの含有量は、タイヤのウェットグリップ性能及び雪上性能を更に向上させる観点から、10~90質量%であることが好ましく、20~85質量%であることがより好ましく、28~78質量%であることがより好ましく、38~72質量%であることがより好ましく、48~70質量%であることがより好ましく、53~70質量%であることが更に好ましい。
【0023】
前記低St変性SBRの結合スチレン量は、低St変性SBRの重合に用いる単量体の量、重合度等により調整することができる。また、低St変性SBRの結合スチレン量は、後述する実施例に記載の方法で求めることができる。
【0024】
前記アミノアルコキシシラン変性とは、少なくとも1つの窒素原子と少なくとも1つのアルコキシ基と少なくとも1つのシラン原子を有する変性基の総称である。
窒素原子は下記から選択されることが好ましい。
第一アミノ基、加水分解可能な保護基で保護された第一アミノ基、第一アミンのオニウム塩残基、イソシアネート基、チオイソシアネート基、イミン基、イミン残基、アミド基、加水分解可能な保護基で保護された第二アミノ基、環状第二アミノ基、環状第二アミンのオニウム塩残基、非環状第二アミノ基、非環状第二アミンのオニウム塩残基、イソシアヌル酸トリエステル残基、環状第三アミノ基、非環状第三アミノ基、ニトリル基、ピリジン残基、環状第三アミンのオニウム塩残基及び非環状第三アミンのオニウム塩残基からなる群から選択される官能基を有し、直鎖、分枝、脂環もしくは芳香族環を含む炭素数1~30の1価の炭化水素基、又は酸素原子、硫黄原子及びリン原子から選ばれる少なくとも1種のヘテロ原子を含んでいても良い、直鎖、分枝、脂環又は芳香族環を含む炭素数1~30の1価の炭化水素基である。
【0025】
前記低St変性SBRは、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)の末端がアミノアルコキシシラン変性されていることが好ましい。
また、充填剤に対して高い親和性を有する観点から、低St変性SBRは、SBRの末端がアミノアルコキシシラン化合物で変性されていることが好ましい。SBRの末端がアミノアルコキシシラン化合物で変性されている場合、低St変性SBRは、充填剤(特には、シリカ)との相互作用が特に大きくなる。
【0026】
前記低St変性SBRの変性箇所は、上述のように分子末端であってもよいが、主鎖であってもよい。
分子末端が変性された低St変性SBRは、例えば、国際公開第2003/046020号、特開2007-217562号公報に記載の方法に従って、活性末端を有するSBRの末端に、種々の変性剤を反応させることで製造できる。
一好適態様においては、該分子末端が変性された低St変性SBRは、国際公開第2003/046020号、特開2007-217562号公報に記載の方法に従って、シス-1,4結合量が75%以上の活性末端を有するSBRの末端に、アミノアルコキシシラン化合物を反応させた後、多価アルコールのカルボン酸部分エステルと反応させて安定化を行うことで製造することができる。
【0027】
前記多価アルコールのカルボン酸部分エステルとは、多価アルコールとカルボン酸とのエステルであり、かつ水酸基を一つ以上有する部分エステルを意味する。具体的には、炭素数4以上の糖類又は変性糖類と脂肪酸とのエステルが好ましく用いられる。このエステルは、さらに好ましくは、(1)多価アルコールの脂肪酸部分エステル、特に炭素数10~20の飽和高級脂肪酸又は不飽和高級脂肪酸と多価アルコールとの部分エステル(モノエステル、ジエステル、トリエステルのいずれでもよい)、(2)多価カルボン酸と高級アルコールの部分エステルを、多価アルコールに1~3個結合させたエステル化合物等が挙げられる。
部分エステルの原料に用いられる多価アルコールとしては、好ましくは少なくとも三つの水酸基を有する炭素数5又は6の糖類(水素添加されていても、水素添加されていなくてもよい)、グリコールやポリヒドロキシ化合物等が用いられる。また、原料脂肪酸としては、好ましくは炭素数10~20の飽和又は不飽和脂肪酸であり、例えば、ステアリン酸、ラウリン酸、パルミチン酸が用いられる。
多価アルコールの脂肪酸部分エステルの中では、ソルビタン脂肪酸エステルが好ましく、具体的には、ソルビタンモノラウリン酸エステル、ソルビタンモノパルミチン酸エステル、ソルビタンモノステアリン酸エステル、ソルビタントリステアリン酸エステル、ソルビタンモノオレイン酸エステル、ソルビタントリオレイン酸エステル等が挙げられる。
【0028】
上記アミノアルコキシアルコキシシラン化合物は、特に限定されないが、下記一般式(i)で表されるアミノアルコキシアルコキシシラン化合物であることがより好ましい。
R11
a-Si-(OR12)4-a ・・・ (i)
【0029】
一般式(i)中、R11及びR12は、それぞれ独立に炭素数1~20の一価の脂肪族炭化水素基又は炭素数6~18の一価の芳香族炭化水素基を示し、R11及びR12の少なくとも1つはアミノ基で置換されており、aは0~2の整数であり、OR12が複数ある場合、各OR12は互いに同一でも異なっていてもよく、また、分子中には活性プロトンは含まれない。
【0030】
上記アミノアルコキシシラン化合物としては、下記一般式(ii)で表されるアミノアルコキシシラン化合物が好ましい。
【化1】
【0031】
一般式(ii)中、n1+n2+n3+n4=4(但し、n2は1~4の整数であり、n1、n3およびn4は0~3の整数である)である。
A1は、飽和環状3級アミン化合物残基、不飽和環状3級アミン化合物残基、ケチミン残基、ニトリル基、(チオ)イソシアナート基、イソシアヌル酸トリヒドロカルビルエステル基、ニトリル基、ピリジン基、(チオ)ケトン基、アミド基、並びに加水分解性基を有する第一もしくは第二アミノ基の中から選択される少なくとも1種の官能基である。n4が2以上の場合には、A1は、同一でも異なっていてもよく、A1は、Siと結合して環状構造を形成する二価の基であってもよい。
R21は、炭素数1~20の一価の脂肪族もしくは脂環式炭化水素基または炭素数6~18の一価の芳香族炭化水素基であり、n1が2以上の場合には同一でも異なっていてもよい。
R23は、炭素数1~20の一価の脂肪族もしくは脂環式炭化水素基、炭素数6~18の一価の芳香族炭化水素基またはハロゲン原子であり、n3が2以上の場合には同一でも異なっていてもよい。
R22は、炭素数1~20の一価の脂肪族もしくは脂環式炭化水素基または炭素数6~18の一価の芳香族炭化水素基であり、いずれも窒素原子および/またケイ素原子を含有していてもよい。n2が2以上の場合には、R22は、互いに同一もしくは異なっていてもよいし、あるいは、一緒になって環を形成してもよい。
R24は、炭素数1~20の二価の脂肪族もしくは脂環式炭化水素基または炭素数6~18の二価の芳香族炭化水素基であり、n4が2以上の場合には同一でも異なっていてもよい。
【0032】
加水分解性基を有する第一もしくは第二アミノ基における加水分解性基としては、トリメチルシリル基またはtert-ブチルジメチルシリル基が好ましく、トリメチルシリル基が特に好ましい。
【0033】
上記一般式(ii)で表されるアミノアルコキシシラン化合物は、下記一般式(iii)で表されるアミノアルコキシシラン化合物であることが好ましい。
【化2】
【0034】
一般式(iii)中、p1+p2+p3=2(但し、p2は1~2の整数であり、p1およびp3は0~1の整数である)である。
A2は、NRa(Raは、一価の炭化水素基、加水分解性基または含窒素有機基である)である。
R25は、炭素数1~20の一価の脂肪族もしくは脂環式炭化水素基または炭素数6~18の一価の芳香族炭化水素基である。
R27は、炭素数1~20の一価の脂肪族もしくは脂環式炭化水素基、炭素数6~18の一価の芳香族炭化水素基またはハロゲン原子である。
R26は、炭素数1~20の一価の脂肪族もしくは脂環式炭化水素基、炭素数6~18の一価の芳香族炭化水素基または含窒素有機基であり、いずれも窒素原子および/またはケイ素原子を含有していてもよい。p2が2の場合には、R26は、互いに同一でも異なっていてもよいし、あるいは、一緒になって環を形成していてもよい。
R28は、炭素数1~20の二価の脂肪族もしくは脂環式炭化水素基または炭素数6~18の二価の芳香族炭化水素基である。
加水分解性基としては、トリメチルシリル基またはtert-ブチルジメチルシリル基が好ましく、トリメチルシリル基が特に好ましい。
【0035】
上記一般式(ii)で表されるアミノアルコキシシラン化合物は、下記一般式(iv)又は下記一般式(v)で表されるアミノアルコキシシラン化合物であることも好ましい。
【化3】
【0036】
一般式(iv)中、q1+q2=3(但し、q1は0~2の整数であり、q2は1~3の整数である)である。
R31は、炭素数1~20の二価の脂肪族もしくは脂環式炭化水素基または炭素数6~18の二価の芳香族炭化水素基である。
R32およびR33は、それぞれ独立して、加水分解性基、炭素数1~20の一価の脂肪族もしくは脂環式炭化水素基または炭素数6~18の一価の芳香族炭化水素基である。
R34は、炭素数1~20の一価の脂肪族もしくは脂環式炭化水素基または炭素数6~18の一価の芳香族炭化水素基であり、q1が2の場合には同一でも異なっていてもよい。
R35は、炭素数1~20の一価の脂肪族もしくは脂環式炭化水素基または炭素数6~18の一価の芳香族炭化水素基であり、q2が2以上の場合には同一でも異なっていてもよい。
【0037】
【0038】
一般式(v)中、r1+r2=3(但し、r1は1~3の整数であり、r2は0~2の整数である)である。
R36は、炭素数1~20の二価の脂肪族もしくは脂環式炭化水素基または炭素数6~18の二価の芳香族炭化水素基である。
R37は、ジメチルアミノメチル基、ジメチルアミノエチル基、ジエチルアミノメチル基、ジエチルアミノエチル基、メチルシリル(メチル)アミノメチル基、メチルシリル(メチル)アミノエチル基、メチルシリル(エチル)アミノメチル基、メチルシリル(エチル)アミノエチル基、ジメチルシリルアミノメチル基、ジメチルシリルアミノエチル基、炭素数1~20の一価の脂肪族もしくは脂環式炭化水素基または炭素数6~18の一価の芳香族炭化水素基であり、r1が2以上の場合には同一でも異なっていてもよい。
R38は、炭素数1~20のヒドロカルビルオキシ基、炭素数1~20の一価の脂肪族もしくは脂環式炭化水素基または炭素数6~18の一価の芳香族炭化水素基であり、r2が2の場合には同一でも異なっていてもよい。
一般式(v)で表されるアミノアルコキシシラン化合物の具体例としては、N-(1,3-ジメチルブチリデン)-3-トリエトキシシリル-1-プロパンアミンが挙げられる。
【0039】
上記一般式(ii)で表されるアミノアルコキシシラン化合物は、下記一般式(vi)又は下記一般式(vii)で表されるアミノアルコキシシラン化合物であることも好ましい。
【化5】
【0040】
一般式(vi)中、R40はトリメチルシリル基、炭素数1~20の一価の脂肪族若しくは脂環式炭化水素基又は炭素数6~18の一価の芳香族炭化水素基であり、R41は炭素数1~20のヒドロカルビルオキシ基、炭素数1~20の一価の脂肪族若しくは脂環式炭化水素基又は炭素数6~18の一価の芳香族炭化水素基であり、R42は炭素数1~20の二価の脂肪族若しくは脂環式炭化水素基又は炭素数6~18の二価の芳香族炭化水素基である。ここで、TMSは、トリメチルシリル基を示す(以下、同じ。)。
【0041】
【0042】
一般式(vii)中、R43及びR44はそれぞれ独立して炭素数1~20の二価の脂肪族若しくは脂環式炭化水素基又は炭素数6~18の二価の芳香族炭化水素基であり、R45は炭素数1~20の一価の脂肪族若しくは脂環式炭化水素基又は炭素数6~18の一価の芳香族炭化水素基であり、各R45は、同一でも異なっていてもよい。
【0043】
上記一般式(ii)で表されるアミノアルコキシシラン化合物は、下記一般式(viii)又は下記一般式(ix)で表されるアミノアルコキシシラン化合物であることも好ましい。
【化7】
【0044】
一般式(viii)中、s1+s2は3であり(但し、s1は0~2の整数であり、s2は1~3の整数である)、R46は炭素数1~20の二価の脂肪族若しくは脂環式炭化水素基又は炭素数6~18の二価の芳香族炭化水素基であり、R47およびR48はそれぞれ独立して炭素数1~20の一価の脂肪族若しくは脂環式炭化水素基又は炭素数6~18の一価の芳香族炭化水素基である。複数のR47又はR48は、同一でも異なっていてもよい。
【0045】
【0046】
一般式(ix)中、Xはハロゲン原子であり、R49は炭素数1~20の二価の脂肪族若しくは脂環式炭化水素基又は炭素数6~18の二価の芳香族炭化水素基であり、R50及びR51はそれぞれ独立して加水分解性基、炭素数1~20の一価の脂肪族若しくは脂環式炭化水素基又は炭素数6~18の一価の芳香族炭化水素基であるか、或いは、R50及びR51は結合して二価の有機基を形成しており、R52及びR53はそれぞれ独立してハロゲン原子、ヒドロカルビルオキシ基、炭素数1~20の一価の脂肪族若しくは脂環式炭化水素基又は炭素数6~18の一価の芳香族炭化水素基である。R50及びR51としては、加水分解性基であることが好ましく、加水分解性基として、トリメチルシリル基、tert-ブチルジメチルシリル基が好ましく、トリメチルシリル基が特に好ましい。
【0047】
上記一般式(ii)で表されるアミノアルコキシシラン化合物は、下記一般式(x)、下記一般式(xi)、下記一般式(xii)又は下記一般式(xiii)で表されるアミノアルコキシシラン化合物であることも好ましい。
【化9】
【化10】
【化11】
【化12】
【0048】
一般式(x)~(xiii)中、記号U、Vはそれぞれ0~2且つU+V=2を満たす整数である。一般式(x)~(xiii)中のR54~92は同一でも異なっていてもよく、炭素数1~20の一価若しくは二価の脂肪族又は脂環式炭化水素基、或いは炭素数6~18の一価若しくは二価の芳香族炭化水素基である。一般式(xiii)中のα及びβは0~5の整数である。
【0049】
一般式(x)、一般式(xi)、一般式(xii)を満たす化合物の中でも、特に、N1,N1,N7,N7-テトラメチル-4-((トリメトキシシリル)メチル)へプタン-1,7-ジアミン、2-((ヘキシル-ジメトキシシリル)メチル)-N1,N1,N3,N3-2-ペンタメチルプロパン-1,3-ジアミン、N1-(3-(ジメチルアミノ)プロピル)-N3,N3-ジメチル-N1-(3-(トリメトキシシリル)プロピル)プロパン-1,3-ジアミン、4-(3-(ジメチルアミノ)プロピル)-N1,N1,N7,N7-テトラメチル-4-((トリメトキシシリル)メチル)へプタン-1,7-ジアミンが好ましい。
また、一般式(xiii)を満たす化合物の中でも、特に、N,N-ジメチル-2-(3-(ジメトキシメチルシリル)プロポキシ)エタンアミン、N,N-ビス(トリメチルシリル)-2-(3-(トリメトキシシリル)プロポキシ)エタンアミン、N,N-ジメチル-2-(3-(トリメトキシシリル)プロポキシ)エタンアミン、N,N-ジメチル-3-(3-(トリメトキシシリル)プロポキシ)プロパン-1-アミンが好ましい。
【0050】
一方、主鎖が変性された低St変性SBRは、例えば、(1)スチレン単量体及びブタジエン単量体の共重合体に、窒素原子とアルコキシ基とシラン原子を有する単量体をグラフト重合させる方法、(2)単量体と、窒素原子とアルコキシ基とシラン原子を有する単量体を共重合させる方法(スチレンと、ブタジエンと、窒素原子とアルコキシ基とシラン原子を有する単量体との共重合)、(3)スチレン単量体及びブタジエン単量体の共重合体に、窒素原子とアルコキシ基とシラン原子を有する化合物を付加させる方法等で製造することができる。なお、窒素原子とアルコキシ基とシラン原子を有する単量体を用いた共重合は、乳化重合で行ってもよいし、リビングアニオン重合、リビングラジカル重合等で行ってもよく、単量体と、窒素原子とアルコキシ基とシラン原子を有する単量体の共重合体は、共役ジエン化合物及び芳香族ビニル化合物から選択される単量体と、窒素原子とアルコキシ基とシラン原子を有する単量体とがブロック重合したものであってもよい。
【0051】
また、上記(1)共役ジエン化合物(ブタジエン)と芳香族ビニル化合物(スチレン)の共重合体に、窒素原子とアルコキシ基とシラン原子を有する単量体をグラフト重合させる方法、並びに、上記(2)共役ジエン化合物(ブタジエン)と、芳香族ビニル化合物(スチレン)と、窒素原子とアルコキシ基とシラン原子を有する単量体を共重合させる方法において、使用する窒素原子とアルコキシ基とシラン原子を有する単量体としては、窒素原子とアルコキシ基とシラン原子を有するビニル系単量体が好ましい。また、上記(3)共役ジエン化合物(ブタジエン)と芳香族ビニル化合物(スチレン)の共重合体に、窒素原子とアルコキシ基とシラン原子を有する化合物を付加させる方法において、使用する窒素原子とアルコキシ基とシラン原子を有する化合物としては、窒素原子とアルコキシ基とシラン原子を有するメルカプト化合物が好ましい。
【0052】
(ブタジエンゴム)
前記ゴム成分は、ブタジエンゴム(BR)を含有する。
ゴム成分が、低St変性SBRに加え、BRを含有することで、タイヤの雪上性能を向上させることができる。なお、ブタジエンゴム(BR)は、未変性であってもよいし、変性されていてもよく、市販のものを利用してもよいし、合成してゴム組成物に使用してもよい。
【0053】
前記ブタジエンゴム(BR)が変性ブタジエンゴム(以下、「変性BR」と称することがある。)である場合、該変性BRは、末端がスズ原子(Sn)及び窒素原子(N)の少なくとも一方を含む化合物で変性されていることが好ましい。変性BRがスズ原子及び窒素原子の少なくとも一方を含む化合物により変性されていることで、変性BRと充填剤との相互作用がより向上し、充填剤の分散性が更に向上して、ゴム組成物の耐摩耗性がより向上する。
分子末端がスズ原子(Sn)及び窒素原子(N)の少なくとも一方を含む化合物で変性された変性BRは、例えば、1,3-ブタジエンをスズ原子及び/又は窒素原子を含む重合開始剤を用いてリビング重合させた後、重合活性末端をスズ原子及び/又は窒素原子を含む変性剤で変性させる方法で製造することができる。なお、上記リビング重合は、アニオン重合で行うことが好ましい。
【0054】
アニオン重合で活性末端を有するBRを製造する場合、重合開始剤としては、リチウムアミド化合物が好ましい。該リチウムアミド化合物としては、リチウムヘキサメチレンイミド、リチウムピロリジド、リチウムピペリジド、リチウムヘプタメチレンイミド、リチウムドデカメチレンイミド、リチウムジメチルアミド、リチウムジエチルアミド、リチウムジプロピルアミド、リチウムジブチルアミド、リチウムジヘキシルアミド、リチウムジヘプチルアミド、リチウムジオクチルアミド、リチムジ-2-エチルヘキシルアミド、リチウムジデシルアミド、リチウム-N-メチルピペラジド、リチウムエチルプロピルアミド、リチウムエチルブチルアミド、リチウムメチルブチルアミド、リチウムエチルベンジルアミド、リチウムメチルフェネチルアミド等が挙げられる。
【0055】
また、上記リチウムアミド化合物としては、式:Li-AM[式中、AMは、下記式(I):
【化13】
(式中、R
1は、それぞれ独立して炭素数1~12のアルキル基、シクロアルキル基又はアラルキル基である)で表される置換アミノ基又は下記式(II):
【化14】
(式中、R
2は、3~16のメチレン基を有する、アルキレン基、置換アルキレン基、オキシアルキレン基又はN-アルキルアミノ-アルキレン基を示す)で表される環状アミノ基である]で表されるリチウムアミド化合物が挙げられる。
【0056】
上記式(I)において、R1は、炭素数1~12の、アルキル基、シクロアルキル基又はアラルキル基であり、具体的には、メチル基、エチル基、ブチル基、オクチル基、シクロヘキシル基、3-フェニル-1-プロピル基及びイソブチル基等が好適に挙げられる。なお、R1は、それぞれ同じでも異なってもよい。
また、上記式(II)において、R2は、3~16個のメチレン基を有する、アルキレン基、置換アルキレン基、オキシアルキレン基又はN-アルキルアミノ-アルキレン基である。ここで、置換アルキレン基には、一置換から八置換のアルキレン基が含まれ、置換基としては、炭素数1~12の、鎖状若しくは分枝状アルキル基、シクロアルキル基、ビシクロアルキル基、アリール基及びアラルキル基が挙げられる。また、R2として、具体的には、トリメチレン基、テトラメチレン基、ヘキサメチレン基、オキシジエチレン基、N-アルキルアザジエチレン基、ドデカメチレン基及びヘキサデカメチレン基等が好ましい。
【0057】
上記リチウムアミド化合物は、二級アミンとリチウム化合物から予備調製して重合反応に用いてもよいが、重合系中で生成させてもよい。
ここで、二級アミンとしては、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジブチルアミン、ジオクチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、ジイソブチルアミン等の他、アザシクロヘプタン(即ち、ヘキサメチレンイミン)、2-(2-エチルヘキシル)ピロリジン、3-(2-プロピル)ピロリジン、3,5-ビス(2-エチルヘキシル)ピペリジン、4-フェニルピペリジン、7-デシル-1-アザシクロトリデカン、3,3-ジメチル-1-アザシクロテトラデカン、4-ドデシル-1-アザシクロオクタン、4-(2-フェニルブチル)-1-アザシクロオクタン、3-エチル-5-シクロヘキシル-1-アザシクロヘプタン、4-ヘキシル-1-アザシクロヘプタン、9-イソアミル-1-アザシクロヘプタデカン、2-メチル-1-アザシクロヘプタデセ-9-エン、3-イソブチル-1-アザシクロドデカン、2-メチル-7-tert-ブチル-1-アザシクロドデカン、5-ノニル-1-アザシクロドデカン、8-(4’-メチルフェニル)-5-ペンチル-3-アザビシクロ[5.4.0]ウンデカン、1-ブチル-6-アザビシクロ[3.2.1]オクタン、8-エチル-3-アザビシクロ[3.2.1]オクタン、1-プロピル-3-アザビシクロ[3.2.2]ノナン、3-(tert-ブチル)-7-アザビシクロ[4.3.0]ノナン、1,5,5-トリメチル-3-アザビシクロ[4.4.0]デカン等の環状アミンが挙げられる。
また、リチウム化合物としては、エチルリチウム、n-プロピルリチウム、イソプロピルリチウム、n-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、tert-オクチルリチウム、n-デシルリチウム、フェニルリチウム、2-ナフチルリチウム、2-ブチル-フェニルリチウム、4-フェニル-ブチルリチウム、シクロヘキシルリチウム、シクロペンチルリチウム、ジイソプロペニルベンゼンとブチルリチウムとの反応生成物等のヒドロカルビルリチウムを用いることができる。
【0058】
活性末端を有するBRの活性末端を変性剤で変性するにあたって、変性剤としては、スズ原子及び窒素原子の少なくとも一方を含む変性剤を使用することができる。
【0059】
スズ原子を含む変性剤(即ち、スズ含有化合物)としては、下記式(III):
R3
aSnXb ・・・ (III)
[式中、R3は、それぞれ独立して炭素数1~20のアルキル基、炭素数3~20のシクロアルキル基、炭素数6~20のアリール基及び炭素数7~20のアラルキル基からなる群から選択され;Xは、それぞれ独立して塩素又は臭素であり;aは0~3で、bは1~4で、但し、a+b=4である]で表されるスズ含有カップリング剤が好ましい。式(III)のスズ含有カップリング剤で変性した変性BRは、少なくとも一種のスズ-炭素結合を有する。
ここで、R3として、具体的には、メチル基、エチル基、n-ブチル基、ネオフィル基、シクロヘキシル基、n-オクチル基、2-エチルヘキシル基等が挙げられる。また、式(III)のカップリング剤としては、四塩化スズ、R3SnCl3、R3
2SnCl2、R3
3SnCl等が好ましく、四塩化スズが特に好ましい。
【0060】
また、窒素原子を含む変性剤(即ち、窒素含有化合物)としては、置換又は非置換のアミノ基、アミド基、イミノ基、イミダゾール基、ニトリル基、ピリジル基等を有する窒素含有化合物が挙げられ、より具体的には、N,N’-ジメチルイミダゾリジノン(即ち、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン)、N-メチルピロリドン、4-ジメチルアミノベンジリデンアニリン、4,4’-ビス(N,N-ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’-ビス(N,N-ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4-(N,N-ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4-(N,N-ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、[4-(N,N-ジメチルアミノ)フェニル]メチルエチルケトン、4,4’-ビス(1-ヘキサメチレンイミノメチル)ベンゾフェノン、4,4’-ビス(1-ピロリジノメチル)ベンゾフェノン、4-(1-ヘキサメチレンイミノメチル)ベンゾフェノン、4-(1-ピロリジノメチル)ベンゾフェノン、[4-(1-ヘキサメチレンイミノ)フェニル]メチルエチルケトン、3-[N,N-メチル(トリメチルシリル)アミノ]プロピルジメチルエトキシシラン等が挙げられる。
【0061】
前記ゴム成分中の前記ブタジエンゴムの含有量は、10~80質量%が好ましく、10~70質量%がより好ましく、10~55質量%がより好ましく、10~45質量%が更に好ましい。ゴム成分中のブタジエンゴムの含有量が10質量%以上であると、タイヤの雪上性能を更に向上させることができ、また、80質量%以下であると、イソプレン骨格を有するゴム及び低St変性SBRの効果が大きくなり、タイヤのウェットグリップ性能と転がり抵抗と雪上性能とをより高度に両立することができる。
【0062】
前記ブタジエンゴムは、シス-1,4結合量が80%以上であることが好ましく、90%以上がより好ましく、93%以上がより好ましく、95%以上が更に好ましい。ブタジエンゴムのシス-1,4結合量が80%以上であると、タイヤのウェットグリップ性能と転がり抵抗と雪上性能とをより高度に両立することができる。
【0063】
前記ブタジエンゴムのシス-1,4結合量は、重合開始剤の種類や、重合温度等により調整することができる。また、ブタジエンゴムのシス-1,4結合量は、後述する実施例に記載の方法で求めることができる。
【0064】
上述のイソプレン骨格を有するゴム/低St変性SBR/BRの比率(質量比)は、タイヤのウェットグリップ性能と転がり抵抗と雪上性能とをより高度に両立する観点から、10~70/10~80/10~80が好ましく、耐破壊特性も考慮すると、30~60/30~75/10~40がより好ましい。
【0065】
(その他のゴム成分)
前記ゴム成分は、イソプレン骨格を有するゴム、低St変性SBR、BR以外に、他のゴム成分を含んでいてもよい。
他のゴム成分としては、結合スチレン量が15質量%超の変性スチレン-ブタジエンゴム、未変性スチレン-ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム(IIR)、ハロゲン化ブチルゴム、エチレン-プロピレンゴム(EPR,EPDM)、フッ素ゴム、シリコーンゴム、ウレタンゴム等が挙げられる。
【0066】
<充填剤>
本実施形態のタイヤが有するゴム組成物は、充填剤を含有する。該ゴム組成物中の充填剤の含有量は、前記ゴム成分100質量部に対して40~125質量部である。
ゴム組成物中の充填剤の含有量が、ゴム成分100質量部に対し、40質量部未満であると、タイヤの補強が不十分であり、タイヤの耐摩耗性が低下し、また、125質量部を超えると、タイヤの弾性率が高くなり過ぎて、タイヤの雪上性能が低下する。
タイヤの耐摩耗性を更に向上させる観点から、ゴム組成物中の充填剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対し、48質量部以上であることが好ましく、53質量部以上であることがより好ましく、58質量部以上であることがより好ましく、62質量部以上であることが更に好ましい。また、タイヤの雪上性能を更に向上させる観点から、ゴム組成物中の充填剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対し、105質量部以下であることが好ましく、100質量部以下であることが好ましく、95質量部以下であることがより好ましく、90質量部以下であることがより好ましく、85質量部以下であることが更に好ましい。
【0067】
(シリカ)
前記充填剤は、シリカを含有することが好ましく、窒素吸着比表面積(BET法)が90m2/g以上330m2/g未満であるシリカを含有することが特に好ましい。
シリカの窒素吸着比表面積(BET法)が90m2/g以上であると、タイヤの耐摩耗性を更に向上させることができる。また、シリカの窒素吸着比表面積(BET法)が330m2/g未満であると、タイヤの雪上性能を更に向上させることができる。
また、タイヤの耐摩耗性を更に向上させる観点から、シリカの窒素吸着比表面積(BET法)は、90m2/g以上であることがより好ましく、95m2/g以上であることがより好ましく、150m2/g以上であることがより好ましく、170m2/g以上であることがより好ましく、180m2/g以上であることがより好ましく、190m2/g以上であることがより好ましく、195m2/g以上であることが更に好ましい。また、タイヤの雪上性能を更に向上させる観点から、シリカの窒素吸着比表面積(BET法)は、300m2/g以下であることがより好ましく、280m2/g以下であることがより好ましく、270m2/g以下であることがより好ましく、250m2/g以下であることが更に好ましい。
【0068】
前記シリカとしては、例えば、湿式シリカ(含水ケイ酸)、乾式シリカ(無水ケイ酸)、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム等が挙げられ、これらの中でも、湿式シリカが好ましい。これらシリカは、一種単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0069】
前記ゴム組成物中のシリカの含有量は、タイヤのウェットグリップ性能を更に向上させる観点から、前記ゴム成分100質量部に対して、40質量部以上であることが好ましく、50質量部以上であることがより好ましく、55質量部以上であることが更に好ましい。また、タイヤの雪上性能を更に向上させる観点から、ゴム組成物中のシリカの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、108質量部以下であることが好ましく、100質量部以下であることがより好ましく、90質量部以下であることがより好ましく、85質量部以下であることがより好ましく、80質量部以下であることが更に好ましい。
【0070】
(カーボンブラック)
前記充填剤は、カーボンブラックを含むことも好ましい。該カーボンブラックは、加硫ゴムを補強して、加硫ゴムの耐摩耗性を向上させる。
カーボンブラックとしては、特に限定されるものではなく、例えば、GPF、FEF、HAF、ISAF、SAFグレードのカーボンブラックが挙げられる。これらカーボンブラックは、一種単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0071】
前記ゴム組成物中のカーボンブラックの含有量は、タイヤの耐摩耗性を更に向上させる観点から、ゴム成分100質量部に対して、1質量部以上であることが好ましく、3質量部以上であることがより好ましく、5質量部以上であることが更に好ましい。また、ゴム組成物の作業性の観点から、ゴム組成物中のカーボンブラックの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、30質量部以下であることが好ましく、20質量部以下であることがより好ましく、10質量部以下であることがより好ましく、7質量部以下であることがより好ましい。
【0072】
前記カーボンブラックは、充填剤中のシリカの含有量が70質量%以上である範囲で、含まれることが好ましい。充填剤中のシリカの含有量が70質量%以上であることで、タイヤのウェットグリップ性能を更に向上させることができる。より好ましくは充填剤中のシリカの含有量が80質量%以上、より好ましくは充填剤中のシリカの含有量が85質量%以上、更に好ましくは充填剤中のシリカの含有量が90質量%以上100%未満である。
【0073】
(その他の充填剤)
前記充填剤は、シリカ及びカーボンブラック以外に、例えば、クレー、タルク、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム等の無機充填剤を含んでいてもよい。
【0074】
<水添樹脂>
本実施形態のタイヤが有するゴム組成物は、軟化点が110℃より高く、ポリスチレン換算の重量平均分子量が200~1200g/molである水添樹脂を含有する。該ゴム組成物中の水添樹脂の含有量は、ゴム成分100質量部に対して5~50質量部である。
【0075】
前記水添樹脂の軟化点が110℃以下であると、タイヤの転がり抵抗を十分に低くすることができない。水添樹脂の軟化点は、タイヤの転がり抵抗を更に低くする観点から、115℃以上であることが好ましく、118℃以上であることがより好ましく、123℃以上であることがより好ましく、125℃以上であることが更に好ましい。また、水添樹脂の軟化点は、タイヤのウェットグリップ性能及び雪上性能を更に向上させる観点から、145℃以下であることが好ましく、138℃以下であることがより好ましく、133℃以下であることが更に好ましい。
【0076】
また、前記水添樹脂のポリスチレン換算の重量平均分子量が200g/mol未満であると、タイヤから水添樹脂が析出し、水添樹脂による効果を十分に発現することができず、また、1200g/molを超えると、水添樹脂がゴム成分と相溶することができない。
タイヤからの水添樹脂の析出を抑制し、タイヤ外観の低下を抑制する観点から、水添樹脂のポリスチレン換算の重量平均分子量は、500g/mol以上であることが好ましく、550g/mol以上であることがより好ましく、620g/mol以上であることがより好ましく、670g/mol以上であることがより好ましく、720g/mol以上であることがより好ましく、750g/mol以上であることがより好ましく、780g/mol以上であることが更に好ましい。また、ゴム成分への水添樹脂の相溶性を高め、水添樹脂による効果をより高める観点から、水添樹脂のポリスチレン換算の重量平均分子量は、1300g/mol以下であることが好ましく、1100g/mol以下であることが好ましく、1050g/mol以下であることが好ましく、950g/mol以下であることが好ましく、900g/mol以下であることが好ましく、850g/mol以下であることが更に好ましい。
【0077】
前記水添樹脂のポリスチレン換算の重量平均分子量(MwHR)(単位はg/mol)に対する水添樹脂の軟化点(TsHR)(単位は℃)は、0.15以上であることが好ましい[0.15≦(TsHR/MwHR)]。
また、(TsHR/MwHR)は、タイヤのウェットグリップ性能及び雪上性能を更に向上させる観点から、0.155以上であることがより好ましく、0.158以上であることがより好ましく、0.160以上であることがより好ましく、0.162以上であることが更に好ましい。また、(TsHR/MwHR)は、タイヤの性能の低下を抑制する観点から、0.2以下であることが好ましく、0.185以下であることがより好ましく、0.178以下であることがより好ましく、0.172以下であることがより好ましく、0.168以下であることがより好ましく、0.163以下であることが更に好ましい。
なお、水添樹脂の軟化点及びポリスチレン換算の重量平均分子量は、後述する実施例に記載の方法で求めることができる。
【0078】
また、前記ゴム組成物中の水添樹脂の含有量が、ゴム成分100質量部に対し5質量部未満であると、水添樹脂による効果を発現することができず、一方、50質量部を超えるとタイヤから水添樹脂が析出し、水添樹脂による効果を十分に発現することができない。
ゴム組成物中の水添樹脂の含有量は、水添樹脂による効果をより高める観点から、ゴム成分100質量部に対して、7質量部以上であることが好ましく、9質量部以上であることが更に好ましい。また、タイヤからの水添樹脂の析出を抑制し、タイヤ外観の低下を抑制する観点から、ゴム組成物中の水添樹脂の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、40質量部以下であることが好ましく、30質量部以下であることがより好ましく、25質量部以下であることがより好ましく、20質量部以下であることが更に好ましい。
【0079】
前記水添樹脂とは、樹脂を還元水素化して得られる樹脂を意味する。
水添樹脂の原料となる樹脂としては、C5系樹脂、C5-C9系樹脂、C9系樹脂、テルペン系樹脂、ジシクロペンタジエン系樹脂、テルペン-芳香族化合物系樹脂等が挙げられ、これら樹脂は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0080】
前記C5系樹脂としては、石油化学工業のナフサの熱分解によって得られるC5留分を(共)重合して得られる脂肪族系石油樹脂が挙げられる。
C5留分には、通常1-ペンテン、2-ペンテン、2-メチル-1-ブテン、2-メチル-2-ブテン、3-メチル-1-ブテン等のオレフィン系炭化水素、2-メチル-1,3-ブタジエン、1,2-ペンタジエン、1,3-ペンタジエン、3-メチル-1,2-ブタジエン等のジオレフィン系炭化水素等が含まれる。なお、C5系樹脂は、市販品を利用することができる。
【0081】
前記C5-C9系樹脂とは、C5-C9系合成石油樹脂を指し、C5-C9系樹脂としては、例えば、石油由来のC5-C11留分を、AlCl3、BF3等のフリーデルクラフツ触媒を用いて重合して得られる固体重合体が挙げられ、より具体的には、スチレン、ビニルトルエン、α-メチルスチレン、インデン等を主成分とする共重合体等が挙げられる。
C5-C9系樹脂としては、C9以上の成分の少ない樹脂が、ゴム成分との相溶性の観点から好ましい。ここで、「C9以上の成分が少ない」とは、樹脂全量中のC9以上の成分が50質量%未満、好ましくは40質量%以下であることを言うものとする。C5-C9系樹脂は、市販品を利用することができる。
【0082】
前記C9系樹脂とは、C9系合成石油樹脂を指し、例えばAlCl3やBF3等のフリーデルクラフツ型触媒を用い、C9留分を重合して得られる固体重合体を指す。
C9系樹脂としては、例えば、インデン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン等を主成分とする共重合体等が挙げられる。
【0083】
前記テルペン系樹脂は、松属の木からロジンを得る際に同時に得られるテレビン油、或いはこれから分離した重合成分を配合し、フリーデルクラフツ型触媒を用いて重合して得られる固体状の樹脂であり、β-ピネン樹脂、α-ピネン樹脂等がある。また、テルペン-芳香族化合物系樹脂としては、代表例としてテルペン-フェノール樹脂を挙げることができる。このテルペン-フェノール樹脂は、テルペン類と種々のフェノール類とを、フリーデルクラフツ型触媒を用いて反応させたり、或いは更にホルマリンで縮合する方法で得ることができる。原料のテルペン類としては特に制限はなく、α-ピネンやリモネン等のモノテルペン炭化水素が好ましく、α-ピネンを含むものがより好ましく、特にα-ピネンであることが好ましい。
【0084】
前記ジシクロペンタジエン系樹脂は、例えばAlCl3やBF3等のフリーデルクラフツ型触媒等を用い、ジシクロペンタジエンを重合して得られる樹脂を指す。
【0085】
また、前記水添樹脂の原料となる樹脂は、例えば、C5留分とジシクロペンタジエン(DCPD)とを共重合した樹脂(C5-DCPD系樹脂)を含んでいてもよい。
ここで、樹脂全量中のジシクロペンタジエン由来成分が50質量%以上の場合、C5-DCPD系樹脂はジシクロペンタジエン系樹脂に含まれるものとする。樹脂全量中のジシクロペンタジエン由来成分が50質量%未満の場合、C5-DCPD系樹脂はC5系樹脂に含まれるものとする。更に第三成分等が少量含まれる場合でも同様である。
【0086】
前記ゴム成分と水添樹脂との相溶性を高め、タイヤの雪上性能を更に向上させる観点から、水添樹脂は、水添C5系樹脂、水添C5-C9系樹脂、及び水添ジシクロペンタジエン系樹脂(水添DCPD系樹脂)からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、水添C5系樹脂及び水添C5-C9系樹脂からなる群より選択される少なくとも1種であることがより好ましく、水添C5系樹脂であることが更に好ましい。また、少なくともモノマーに水添DCPD構造又は水添された環状構造を有する樹脂であることが好ましい。
【0087】
<水添樹脂以外の熱可塑性樹脂>
前記ゴム組成物は、前記水添樹脂以外の熱可塑性樹脂を更に含んでもよく、前記水添樹脂以外の熱可塑性樹脂を更に含む場合、樹脂全体の軟化点と分子量の最適化の観点から、水添樹脂と、水添樹脂以外の熱可塑性樹脂の合計量に対する水添樹脂の含有比率は40質量%以上がより好ましく、50質量%以上がより好ましく、55質量%以上がより好ましく、60質量%以上が更に好ましい。また、タイヤの雪上性能を更に向上させる観点から、水添樹脂以外の熱可塑性樹脂としては、C5系樹脂、C9系樹脂、C5-C9系樹脂、テルペン系樹脂、テルペン-芳香族化合物系樹脂、ロジン系樹脂、ジシクロペンタジエン樹脂、及びアルキルフェノール系樹脂の中から選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、その中でもC9系樹脂またはC5-C9系樹脂から選択される樹脂が特に好ましい。
【0088】
<シランカップリング剤>
前記ゴム組成物は、充填剤としてシリカを含む場合、更にシランカップリング剤を含有することが好ましい。
シランカップリング剤としては、ゴム工業で通常使用されているシランカップリング剤を用いることができる。またウェット性能向上の観点からメルカプト基含有シランを含有することが更に好ましい。
前記シランカップリング剤の含有量は、シリカの分散性を向上させる観点から、前記シリカ100質量部に対して1質量部以上が好ましく、5質量部以上が更に好ましく、また、20質量部以下が好ましく、15質量部以下が更に好ましい。
【0089】
<オイル成分>
前記ゴム組成物は、更にオイル成分を含んでもよい。オイル成分とは、ゴム成分に含まれる伸展油と、配合剤として添加する油(配合剤油分)である。タイヤの耐摩耗性の観点から、伸展油:配合剤油分の好ましい比率は1:1~1:10である。オイル成分としては、例えば、花王社製の商品名「スプレンダー」等が好ましい。また、オイル成分は、低温軟化剤であってもよく、該低温軟化剤は、ガラス転移温度(Tg)が-60℃近くのものも含む。また、オイル成分は、ひまわり油、大豆油も包含する。
【0090】
<軟化剤>
前記ゴム組成物中の軟化剤の総量は、前記ゴム成分100質量部に対して10~70質量部であることが好ましい。ゴム組成物中の軟化剤の総量が、ゴム成分100質量部に対して10質量部以上であると、ゴム組成物の作業性が向上し、また、70質量部以下であると、タイヤの外観を良好にできる。
ここで、「軟化剤」とは、前記水添樹脂を含む熱可塑性樹脂、オイル成分を指す。但し、オイル成分は含まなくてもよい。
前記ゴム組成物中の軟化剤の総量は、前記ゴム成分100質量部に対して、より好ましくは60質量部以下、より好ましくは52質量部以下、より好ましくは48質量部以下、より好ましくは44質量部以下、より好ましくは35質量部以下、より好ましくは32質量部以下であり、また、より好ましくは12質量部以上、より好ましくは15質量部以上、より好ましくは18質量部以上である。
【0091】
オイル成分を含む場合、軟化剤全体の軟化点と分子量の最適化の観点から、水添樹脂を含む熱可塑性樹脂とオイルからなる軟化剤の合計量に対する水添樹脂を含む熱可塑性樹脂の比率は、50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、80質量%以上が更に好ましく、また、100質量%以下が好ましく、95質量%以下が更に好ましい。
【0092】
<各種成分>
前記ゴム組成物は、既述のゴム成分、充填剤、及び水添樹脂、並びに、必要に応じて、ゴム工業界で通常使用される各種成分、例えば、加工性改良剤、ステアリン酸、老化防止剤、亜鉛華、加硫促進剤、加硫剤等を、本発明の目的を害しない範囲内で適宜選択して含有していてもよい。
【0093】
<ゴム組成物の製造方法>
前記ゴム組成物の製造方法は、特に限定されるものではないが、例えば、既述のゴム成分、充填剤及び水添樹脂に、必要に応じて適宜選択した各種成分を配合して、混練り、熱入れ、押出等することにより製造することができる。
【0094】
<タイヤの製造方法>
本実施形態のタイヤは、前記ゴム組成物を有することを特徴とし、好ましくは、空気入りタイヤである。本実施形態のタイヤは、前記ゴム組成物をトレッド部に有することが好ましく、即ち、前記ゴム組成物を加硫してなるトレッドゴムを具えることが好ましい。
【0095】
前記タイヤは、適用するタイヤの種類や部材に応じ、未加硫のゴム組成物を用いて成形後に加硫して得てもよく、または予備加硫工程等を経て、一旦未加硫のゴム組成物から半加硫ゴムを得た後、これを用いて成形後、さらに本加硫して得てもよい。なお、タイヤが空気入りタイヤの場合、該空気入りタイヤに充填する気体としては、通常の或いは酸素分圧を調整した空気の他、窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガスを用いることができる。
【実施例】
【0096】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
【0097】
<変性SBRの分析方法>
(1)結合スチレン量
合成した変性SBRを試料として、試料100mgを、クロロホルムで100mLにメスアップし、溶解して測定サンプルとする。スチレンのフェニル基による紫外線吸収波長(254nm付近)の吸収量により、試料100質量%に対しての結合スチレン量(質量%)を測定する。なお、測定装置として、島津製作所社製の分光光度計「UV-2450」を用いる。
【0098】
<BRの分析方法>
(2)シス-1,4結合量
ブタジエンゴム(BR)のミクロ構造を、1H-NMRスペクトル(1,2-ビニル結合の結合量)及び13C-NMRスペクトル(シス-1,4結合とトランス-1,4結合の含有量比)の積分比より求める。
【0099】
<水添樹脂の分析方法>
(3)軟化点
水添樹脂の軟化点は、JIS-K2207-1996(環球法)に準拠して測定する。
【0100】
(4)重量平均分子量
以下の条件で、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)により、水添樹脂の平均分子量を測定し、ポリスチレン換算の重量平均分子量を算出する。
・カラム温度:40℃、
・注入量:10μL、
・キャリアー及び流速:テトラヒドロフラン 0.35mL/min、
・サンプル調製:水添樹脂約0.02gをテトラヒドロフラン20mLに溶解。
【0101】
<ゴム組成物の調製>
表1に示す配合処方で、通常のバンバリーミキサーを用いて、第1混合工程、最終混合工程の順に混合を行って、実施例及び比較例のゴム組成物を調製した。なお、第1混合工程の終了後、混合物をバンバリーミキサーから一旦取り出し、その後、再度混合物をバンバリーミキサーに投入して、最終混合工程を実施した。また、第1混合工程における混合物の最高温度は170℃とし、最終混合工程におけるゴム組成物の最高温度は110℃とした。
表1中の各成分の詳細は、次の通りである。
【0102】
(ゴム成分)
*1 NR: 天然ゴム、RSS#1
*2 BR: ブタジエンゴム、JSR社製、商品名「BR01」、シス-1,4結合量=95%
*3 アミノアルコキシシラン変性SBR: 下記の方法で合成したアミノアルコキシシラン変性スチレン-ブタジエンゴム、結合スチレン量=10質量%
*4 アミノアルコキシシラン変性SBR: 下記の方法で合成したアミノアルコキシシラン変性スチレン-ブタジエンゴム、結合スチレン量=35質量%
*5 無変性低TgSBR: スチレン-ブタジエンゴム、旭化成株式会社社製、商品名「タフデン2000」、結合スチレン量=23.5質量%
*6 無変性高TgSBR: スチレン-ブタジエンゴム、結合スチレン量=35質量%以上
【0103】
(シリカ、オイル成分、水添樹脂)
*7 シリカ: 下記の方法で合成したシリカ、窒素吸着比表面積(BET法)=110m2/g、CTAB=79m2/g
*8 オイル成分: 花王社製、商品名「スプレンダー」
*9 水添C5系樹脂: Eastman社製、商品名「登録商標Impera E1780」、軟化点=130℃、重量平均分子量(Mw)=800g/mol
【0104】
(その他成分)
その他成分として、ゴム成分100質量部に対して、ステアリン酸1質量部、亜鉛華2.5質量部、硫黄1.7質量部を含み、更には、加硫パッケージ、ワックス、老化防止剤を含む、なお、トータルワックス量は、ゴム成分100質量部に対して2質量部である。
【0105】
(アミノアルコキシシラン変性SBR(*3)の合成)
乾燥し、窒素置換した800mLの耐圧ガラス容器に、1,3-ブタジエンのシクロヘキサン溶液及びスチレンのシクロヘキサン溶液を、1,3-ブタジエン67.5g及びスチレン7.5gになるように加え、2,2-ジテトラヒドロフリルプロパン0.6mmolを加え、0.8mmolのn-ブチルリチウムを加えた後、50℃で1.5時間重合を行った。この際の重合転化率がほぼ100%となった重合反応系に対し、変性剤としてN,N-ビス(トリメチルシリル)-3-[ジエトキシ(メチル)シリル]プロピルアミンを0.72mmol添加し、50℃で30分間変性反応を行った。その後、2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール(BHT)のイソプロパノール5質量%溶液2mLを加えて反応を停止させ、常法に従い乾燥して変性SBRを得た。得られた変性SBRのミクロ構造を測定した結果、結合スチレン量が10質量%であった。
【0106】
(アミノアルコキシシラン変性SBR(*4)の合成)
乾燥し、窒素置換した800mLの耐圧ガラス容器に、1,3-ブタジエンのシクロヘキサン溶液及びスチレンのシクロヘキサン溶液を、1,3-ブタジエン70.2g及びスチレン39.5gになるように加え、2,2-ジテトラヒドロフリルプロパン0.6mmolを加え、0.8mmolのn-ブチルリチウムを加えた後、50℃で1.5時間重合を行った。この際の重合転化率がほぼ100%となった重合反応系に対し、変性剤としてN-(1,3-ジメチルブチリデン)-3-トリエトキシシリル-1-プロパンアミンを0.72mmol添加し、50℃で30分間変性反応を行った。その後、2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール(BHT)のイソプロパノール5質量%溶液2mLを加えて反応を停止させ、常法に従い乾燥して変性SBRを得た。得られた変性SBRのミクロ構造を測定した結果、結合スチレン量が35質量%であった。
【0107】
<シリカ(*7)の合成>
撹拌機を備えた180リットルのジャケット付きステンレス反応槽に、水65リットルとケイ酸ナトリウム水溶液(SiO2160g/リットル、SiO2/Na2Oモル比3.3)1.25リットルを入れ、96℃に加熱した。生成した溶液中のNa2O濃度は0.015mol/リットルであった。
この溶液の温度を96℃に維持しながら、上記と同様のケイ酸ナトリウム水溶液を流量750ミリリットル/分で、硫酸(18mol/リットル)を流量33ミリリットル/分で、同時に滴下した。流量を調整しつつ、反応溶液中のNa2O濃度を0.005~0.035mol/リットルの範囲に維持しながら中和反応を行った。反応途中から反応溶液は白濁をはじめ、30分目に粘度が上昇してゲル状溶液となった。さらに、添加を続けて100分で反応を停止した。生じた溶液中のシリカ濃度は85g/リットルであった。引き続いて、上記と同様の硫酸を溶液のpHが3になるまで添加してケイ酸スラリーを得た。得られたケイ酸スラリーをフィルタープレスで濾過、水洗を行って湿潤ケーキを得た。次いで湿潤ケーキを、乳化装置を用いてスラリーとして、噴霧式乾燥機で乾燥し、シリカを得た。
【0108】
<ゴム組成物及びタイヤの評価>
(5)ウェットグリップ性能
実施例1及び比較例1~3については、各ゴム組成物を加硫して得られた加硫ゴムについて、貯蔵弾性率(E’)を、粘弾性測定機にて、温度-5℃、初期歪を与えた後、動歪1%、周波数15Hzの条件で測定し、タイヤ性能を算出した。このときのタイヤ性能は表1となる。
評価は、実施例1を100としたときの指数として表示する。指数値は、大きい程、ウェットグリップ性能に優れていることを示す。
【0109】
(6)転がり抵抗
実施例1及び比較例1~3については、各ゴム組成物を加硫して得られた加硫ゴムについて、損失正接(tanδ)を、粘弾性測定機にて、温度50℃、初期歪を与えた後、動歪1%、周波数15Hzの条件で測定し、タイヤ性能を算出した。このときのタイヤ性能は表1となる。
評価は、実施例1を100としたときの指数として表示する。指数値は、大きい程、転がり抵抗が優れている(転がり抵抗が小さい)ことを示す。
【0110】
(7)氷雪路面でのグリップ性(雪上性能)
実施例1及び比較例1~3については、各ゴム組成物を加硫して得られた加硫ゴムについて、貯蔵弾性率(E’)を、粘弾性測定機にて、温度-20℃、初期歪を与えた後、動歪1%、周波数15Hzの条件で測定し、タイヤ性能を算出した。このときのタイヤ性能は表1となる。
評価は、実施例1を100としたときの指数として表示する。指数値は、大きい程、タイヤの雪上性能に優れていることを示す。
【0111】
【0112】
表1に示す実施例の結果から、本実施形態のタイヤは、ウェットグリップ性能と転がり抵抗と雪上性能とのバランスに優れることが分かる。