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特許7397659回転装置の制御装置、回転装置および回転装置の制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-05
(45)【発行日】2023-12-13
(54)【発明の名称】回転装置の制御装置、回転装置および回転装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
   H02P 8/36 20060101AFI20231206BHJP
【FI】
H02P8/36
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019230454
(22)【出願日】2019-12-20
(65)【公開番号】P2021100313
(43)【公開日】2021-07-01
【審査請求日】2022-10-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】高田 和夫
(72)【発明者】
【氏名】松井 隆之
(72)【発明者】
【氏名】宮路 永
【審査官】谿花 正由輝
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-123991(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 8/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転装置の出力ギヤを回転させるステッピングモータに駆動電圧を印加する駆動回路と、
外部からの駆動指令信号に含まれる駆動目標に応じた数の駆動パルスを前記駆動回路に出力する制御回路とを備え、
前記制御回路は、
前記駆動指令信号に含まれる駆動目標に応じた数の駆動パルスを出力する駆動パルス出力部と、
前記回転装置の出力ギヤの回転位置を読み取る位置センサから位置情報を取得する位置情報取得部と、
前記位置情報取得部で取得した位置情報に基づいて前記回転装置に回転異常が発生しているか否かを判定する異常判定部とを有
前記位置情報取得部は、前記駆動パルス出力部で出力する駆動パルスの数が所定値に達するごとに、前記回転装置の出力ギヤの回転位置を読み取る位置センサから位置情報を取得し、
前記異常判定部は、前記位置情報取得部で前回取得した第1の位置情報と、前記位置情報取得部で今回取得した第2の位置情報との差分Dが、理想的な差分Cに対して、許容値α以上異なるときに、前記回転装置に回転異常が発生していると判定する、
回転装置の制御装置。
【請求項2】
回転装置の出力ギヤを回転させるステッピングモータに駆動電圧を印加する駆動回路と、
外部からの駆動指令信号に含まれる駆動目標に応じた数の駆動パルスを前記駆動回路に出力する制御回路とを備え、
前記制御回路は、
前記駆動指令信号に含まれる駆動目標に応じた数の駆動パルスを出力する駆動パルス出力部と、
前記回転装置の出力ギヤの回転位置を読み取る位置センサから位置情報を取得する位置情報取得部と、
前記位置情報取得部で取得した位置情報に基づいて前記回転装置に回転異常が発生しているか否かを判定する異常判定部とを有し、
前記位置情報取得部は、前記駆動パルス出力部において前記駆動パルスの出力開始と出力終了とのそれぞれのタイミングで前記回転装置の出力ギヤの回転位置を読み取る位置センサから位置情報を取得し、
前記異常判定部は、前記駆動パルスの出力開始のタイミングにおいて前記位置情報取得部で取得した第3の位置情報と、前記駆動パルスの出力終了のタイミングにおいて前記位置情報取得部で取得した第4の位置情報との差分Dが、理想的な差分Cに対して、許容値α以上異なるときに、前記回転装置に回転異常が発生していると判定する、
回転装置の制御装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の回転装置の制御装置において、
前記制御回路は、前記異常判定部において前記回転装置に回転異常が発生していると判定した場合に、前記駆動パルス出力部における駆動パルスの出力を停止する出力停止部をさらに有する、
回転装置の制御装置。
【請求項4】
請求項1からのいずれかに記載の回転装置の制御装置において、
前記位置センサは前記回転位置に応じた電圧を位置情報として出力するポテンショメータである、
回転装置の制御装置。
【請求項5】
請求項1または請求項1を引用する請求項3からのいずれかに記載の回転装置の制御装置において、
前記制御回路は、
前記駆動パルス出力部で出力する駆動パルスの数をカウントする第1のカウンタと、
前記所定値を格納する第1のメモリと、
前記第1のカウンタでカウントした値と前記第1のメモリに格納された前記所定値を比較する比較器と、
前記比較器で比較した結果、前記カウントした値が前記所定値よりも大きくなったときに、前記駆動パルスの数が所定値に達したことを判断して、前記制御回路の各部に指令する指令部とを有する、
回転装置の制御装置。
【請求項6】
請求項1からのいずれかに記載の回転装置の制御装置により回転駆動されるステッピングモータと、
前記ステッピングモータの回転運動に連動して回転する出力ギヤと、
前記出力ギヤの回転位置を検出する位置センサと、を備える、
回転装置。
【請求項7】
回転装置の出力ギヤを回転させるステッピングモータに駆動電圧を印加する駆動回路に対して、駆動目標に応じた回数だけ駆動パルスを繰り返して出力する駆動パルス出力ステップと、
前記駆動パルス出力ステップの所定の繰り返しタイミングで、前記回転装置の出力ギヤの回転位置を読み取る位置センサから位置情報を取得する位置情報取得ステップと、
前記位置情報取得ステップで取得した位置情報に基づいて前記回転装置に回転異常が発生しているか否かを判定する異常判定ステップとを含
前記異常判定ステップは、前記駆動パルス出力ステップの所定の繰り返しタイミングで前回取得した第1の位置情報と、前記駆動パルス出力ステップの所定の繰り返しタイミングで今回取得した第2の位置情報との差分Dが、理想的な差分Cに対して、許容値α以上異なるときに、前記回転装置に回転異常が発生していると判定する、
回転装置の制御方法。
【請求項8】
回転装置の出力ギヤを回転させるステッピングモータに駆動電圧を印加する駆動回路に対して、駆動目標に応じた回数だけ駆動パルスを繰り返して出力する駆動パルス出力ステップと、
前記駆動パルス出力ステップの所定の繰り返しタイミングで、前記回転装置の出力ギヤの回転位置を読み取る位置センサから位置情報を取得する位置情報取得ステップと、
前記位置情報取得ステップで取得した位置情報に基づいて前記回転装置に回転異常が発生しているか否かを判定する異常判定ステップとを含み、
前記位置情報取得ステップは、前記駆動パルス出力ステップにおいて前記駆動パルスの出力開始と出力終了とのそれぞれのタイミングで前記回転装置の出力ギヤの回転位置を読み取る位置センサから位置情報を取得し、
前記異常判定ステップは、前記駆動パルスの出力開始のタイミングにおいて前記位置情報取得ステップで取得した第3の位置情報と、前記駆動パルスの出力終了のタイミングにおいて前記位置情報取得ステップで取得した第4の位置情報との差分Dが、理想的な差分Cに対して、許容値α以上異なるときに、前記回転装置に回転異常が発生していると判定する、
回転装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転装置の制御装置、回転装置および回転装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、いわゆるアクチュエータとして用いられる回転装置としては、たとえば特許文献1に記載されたような回転装置が知られている。この回転装置は、出力ギヤと、出力ギヤを駆動するモータと、出力ギヤに対応する位置に外部に挿通する開口部が形成された筐体とを備えており、開口部を通じて、筐体の外部から出力ギヤにアクセスすることができるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-038250号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような回転装置では、ステッピングモータを用いて出力ギヤを駆動制御することが行われている。すなわち、ステッピングモータの駆動信号のパルス数が移動目標のパルス数に到達するまでステッピングモータを回転させることにより出力ギヤを目標位置へ駆動制御をしている。ステッピングモータを用いた回転装置は、位置制御精度が高いため、きめ細やかな制御が可能である。
【0005】
しかしながら、ステッピングモータを用いた回転装置では、出力ギヤの物理的な位置情報を持たないため、ギヤの破損などにより出力ギヤの回転に異常(たとえば、空周り)があった場合、それを検出する手段がなかった。
【0006】
回転装置の駆動制御方式としては、上記のようにステッピングモータを用いてオープンループ制御をする方式以外にも、回転機構に取り付けられたポテンショメータで検出した電圧によるフィードバック制御をする方式が知られている。
【0007】
ポテンショメータによるフィードバックを用いた回転装置では、出力ギヤの回転に応じて変化する電圧をポテンショメータで検出し、検出した電圧から出力ギヤの現在位置を特定し、特定した現在位置から駆動量をフィードバックすることにより目標位置へ駆動制御をしている。ポテンショメータによるフィードバックを用いた回転装置では、出力ギヤの物理的な現在位置が把握できるといえる。
【0008】
しかしながら、ポテンショメータによるフィードバックを用いた回転装置では、位置制御の精度は、ポテンショメータの性能によるところが大きい。ポテンショメータによるフィードバックを用いた回転装置においてステッピングモータのように位置制御精度を高くするためには、たとえば、ポテンショメータの検出感度を上げることが必要となり、そのために感度特性の高いICが必要となるなど、構造が複雑化するおそれがある。
【0009】
本発明は上記従来の問題に鑑みなされたものであって、本発明の課題は、簡易な構成にもかかわらず、回転の位置制御精度が高く、回転装置に回転異常があることを容易に検出可能な回転装置の制御装置、回転装置および回転装置の制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、一実施形態に記載された回転装置の制御装置は、回転装置の出力ギヤを回転させるステッピングモータに駆動電圧を印加する駆動回路と、外部からの駆動指令信号に含まれる駆動目標に応じた数の駆動パルスを前記駆動回路に出力する制御回路とを備え、前記制御回路は、前記駆動指令信号に含まれる駆動目標に応じた数の駆動パルスを出力する駆動パルス出力部と、前記回転装置の出力ギヤの回転位置を読み取る位置センサから位置情報を取得する位置情報取得部と、前記位置情報取得部で取得した位置情報に基づいて前記回転装置に回転異常が発生しているか否かを判定する異常判定部とを有する。
【0011】
上記回転装置の制御装置において、前記位置情報取得部は、前記駆動パルス出力部で出力する駆動パルスの数が所定値に達するごとに、前記回転装置の出力ギヤの回転位置を読み取る位置センサから位置情報を取得してもよい。
【0012】
上記回転装置の制御装置において、前記異常判定部は、前記位置情報取得部で前回取得した第1の位置情報と、前記位置情報取得部で今回取得した第2の位置情報との差分Dが、理想的な差分Cに対して、許容値α以上異なるときに、前記回転装置に回転異常が発生していると判定してもよい。
【0013】
上記回転装置の制御装置において、前記位置情報取得部は、前記駆動パルス出力部において前記駆動パルスの出力開始と出力終了とのそれぞれのタイミングで前記回転装置の出力ギヤの回転位置を読み取る位置センサから位置情報を取得し、前記異常判定部は、前記駆動パルスの出力開始のタイミングにおいて前記位置情報取得部で取得した第3の位置情報と、前記駆動パルスの出力終了のタイミングにおいて前記位置情報取得部で取得した第4の位置情報との差分Dが、理想的な差分Cに対して、許容値α以上異なるときに、前記回転装置に回転異常が発生していると判定してもよい。
【0014】
上記回転装置の制御装置において、前記制御回路は、前記異常判定部において前記回転装置に回転異常が発生していると判定した場合に、前記駆動パルス出力部における駆動パルスの出力を停止する出力停止部をさらに有していてもよい。
【0015】
上記回転装置の制御装置において、前記位置センサは前記回転位置に応じた電圧を位置情報として出力するポテンショメータであってもよい。
【0016】
上記回転装置の制御装置において、前記制御回路は、前記駆動パルス出力部で出力する駆動パルスの数をカウントする第1のカウンタと、前記所定値を格納する第1のメモリと、前記第1のカウンタでカウントした値と前記第1のメモリに格納された前記所定値を比較する比較器と、前記比較器で比較した結果、前記カウントした値が前記所定値よりも大きくなったときに、前記駆動パルスの数が所定値に達したことを判断して、前記制御回路の各部に指令する指令部とを有していてもよい。
【0017】
上記課題を解決するために、一実施形態に記載された回転装置は、上記回転装置の制御装置により回転駆動されるステッピングモータと、前記ステッピングモータの回転運動に連動して回転する出力ギヤと、前記出力ギヤの回転位置を検出する位置センサと、を備える。
【0018】
上記課題を解決するために、一実施形態に記載された回転装置の制御方法は、回転装置の出力ギヤを回転させるステッピングモータに駆動電圧を印加する駆動回路に対して、駆動目標に応じた回数だけ駆動パルスを繰り返して出力する駆動パルス出力ステップと、駆動パルス出力ステップの所定の繰り返しタイミングで、前記回転装置の出力ギヤの回転位置を読み取る位置センサから位置情報を取得する位置情報取得ステップと、前記位置情報取得ステップで取得した位置情報に基づいて前記回転装置に回転異常が発生しているか否かを判定する異常判定ステップとを含む。
【発明の効果】
【0019】
本発明の回転装置の制御装置、回転装置および回転装置の制御方法では、簡易な構成にもかかわらず、回転の位置制御精度が高く、回転装置に回転異常があることを容易に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】第1の実施形態の回転装置の一例を示す概略構成図である。
図2】第1の実施形態の回転装置の制御装置の一例を示す概略構成図である。
図3】制御回路30の駆動制御部50によって実現される機能ブロックの構成例を示す図である。
図4】第1の実施形態の回転装置の制御装置の動作を説明するためのフロー図である。
図5】異常判定について説明するための図である。
図6】第2の実施形態の回転装置の制御装置の動作を説明するためのフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態の具体例について図を参照して説明する。なお、以下の説明において、各実施の形態において共通する構成要素には同一の参照符号を付し、繰り返しの説明を省略する。
【0022】
(第1の実施形態)
まず、第1の実施形態の回転装置の制御装置、回転装置および回転装置の制御方法について説明する。
【0023】
図1は、第1の実施形態の回転装置の一例を示す概略構成図である。回転装置1は、図1に示すように、筐体12内に、制御基板11と、ステッピングモータ20と、アクチュエータ出力軸70と、第1ギヤ71と、第2ギヤ72と、第3ギヤ73と、出力ギヤ74と、ポテンショメータ(位置センサの一例)75と、FPC(フレキシブルプリント基板)76とを備えて構成されている。
【0024】
制御基板11は、回転装置1の制御装置10を搭載しており、搭載された制御装置10がFPC76を介してステッピングモータ20とポテンショメータ75とに電気的に接続されるように配線されている。制御装置10は、ステッピングモータ20に駆動電圧を印加することによって、ステッピングモータ20の出力軸を回転駆動する。本実施形態の回転装置の制御装置10は、ポテンショメータ75によって読み取った回転位置に応じた電圧を位置情報として受け取ることができるが、受け取った位置情報を回転駆動のためには用いない(位置情報に基づいてフィードバックにより回転駆動しない)。
【0025】
ステッピングモータ20は、その出力軸に第1ギヤ71が設けられている。第2ギヤ72、および第3ギヤ73は、第1ギヤ71がステッピングモータ20によって回転駆動されると連動して回転する。これらのギヤ71、72、73が回転すると、最終的に出力ギヤ74まで連動して回転する。
【0026】
出力ギヤ74は、アクチュエータ出力軸70を有しており、このアクチュエータ出力軸70が外部の駆動対象物に接続されている。また、出力ギヤ74にはポテンショメータ75が設けられており、回転位置に応じて変化する電圧値を測定することによって出力ギヤ74の回転位置を読み取ることができる。
【0027】
図2は、第1の実施形態の回転装置の制御装置の一例を示す概略構成図であり、図3は、制御回路30の駆動制御部50によって実現される機能ブロックの構成例を示す図である。回転装置1の制御装置10は、図2に示すように、制御回路30と、駆動回路40とを備えて構成されている。
【0028】
制御回路30にはLIN(Local Interconnect Network)などを介して外部から駆動指令信号(コマンド)が入力される。駆動指令信号とは、アクチュエータ出力軸70に接続された駆動対象物が所望の動作を行うようにステッピングモータ20を駆動するための駆動目標を含んだ信号である。その駆動目標は、ステッピングモータ20の回転ステップ数でもよいし、アクチュエータ出力軸70の回転量でもよいし、アクチュエータ出力軸70の回転位置でもよいし、特に限定されない。
【0029】
制御回路30は、駆動指令信号に含まれる駆動目標に応じた数の駆動パルスを制御信号として駆動回路40に出力する駆動制御部50を備えており、駆動回路40は、ステッピングモータ20を駆動する駆動電圧を印加するモータ駆動部41を備えている。
【0030】
駆動制御部50には、出力ギヤ74の回転位置を読み取るポテンショメータ75からの出力が入力されるようになっている。
【0031】
駆動制御部50は、たとえば、CPU等のプロセッサ、ROMやRAM等の各種メモリ、タイマ(カウンタ)、A/D変換回路、入出力I/F回路、およびクロック生成回路等のハードウェア要素を有し、各構成要素がバスや専用線を介して互いに接続されたプログラム処理装置(たとえば、マイクロコントローラ:MCU)によって構成されている。
【0032】
駆動制御部50は、プロセッサがメモリ等の記憶装置(図示せず)に記憶されたプログラムに従って各種演算を行うとともにA/D変換回路および入出力I/F回路等の周辺回路を制御することによって図3に示す各機能部の構成を実現している。すなわち、図3に示すように、駆動制御部50は、機能部として、指令部(異常判定部の一例)51と、ADコンバータ(ADC:位置情報取得部の一例)52と、Aメモリ53と、パルスカウンタ54と、ポジションメモリ55と、Nカウンタ56と、第1比較部57と、Xメモリ58と、第2比較部59と、第3比較部60と、駆動パルス出力部61とを備える。駆動制御部50内の各機能部は指令部51の指令に基づいて各種処理を実行することができる。
【0033】
指令部51は、外部から駆動指令信号を受け取ると、そこに含まれる駆動目標に応じた数の駆動パルスを駆動パルス出力部61に出力するとともにパルスカウンタ54およびNカウンタ56にカウント指令を出力する。指令部51は、駆動指令信号に含まれる駆動目標に達するための駆動パルスの数を目標カウント値として算出することができる。
【0034】
指令部51は、駆動パルスの出力開始などの所定のタイミングで位置情報A(基準の位置情報、第1の位置情報)を取得し、取得した位置情報AをAメモリ53に格納する指令をADコンバータ52に対して行うことができる。指令部51は、所定のタイミングで第1比較部57、第2比較部59、および第3比較部60に比較指令を行うことができる。指令部51は、各比較部57、59、60から受け取った比較結果に基づいて各種判断を行う。
【0035】
ADコンバータ52は、指令部51からの指令を受け付けて、ポテンショメータ75から入力された回転位置に応じた電圧(位置情報)を取得し、AD変換して第1の位置情報としてAメモリ53に格納する。その後、ADコンバータ52は、異常判定のタイミングで、指令部51からの指令を受け付けて、ポテンショメータ75から入力された回転位置に応じた電圧をAD変換して第2の位置情報として第2比較部59に渡す。なお、異常判定のタイミングで取得した第2の位置情報は、第2比較部59に渡すとともに、第1の位置情報としてAメモリ53に格納された情報に上書きすることによって、異常判定のタイミングで基準位置を更新することができる。
【0036】
駆動パルス出力部61は、指令部51からの指令を受け付けて、駆動パルスを駆動回路40のモータ駆動部41に出力する。
【0037】
パルスカウンタ54は、指令部51からの指令を受け付けて、カウンタをインクリメントし、インクリメントしたカウント値をポジションメモリ55に渡す。ポジションメモリ55は、格納しているポジション(ポジションカウント値)に取得したカウント値を加えたものを回転位置の情報(ポジションカウント値)として新たに格納(更新)し、格納したことを指令部51に通知する。
【0038】
Nカウンタ56は、指令部51からの指令を受け付けて、カウンタをインクリメントし、インクリメントしたカウント値(Nカウント値)を保持する。第1比較部57は、指令部51からの指令を受け付けて、Xメモリ58に保持されている所定の値(X値ともいう)とNカウンタ56に保持されているNカウント値を比較し、比較結果を指令部51に返す。
【0039】
Xメモリ58に保持されているX値は、回転装置の回転異常を判定するタイミングの基準となる。このX値は、ポテンショメータ75の性能に基づいて設定することができ、その値は特に限定されない。ポテンショメータ75の性能が低い場合はこのX値を大きくし、ポテンショメータ75の性能が高い場合はこのX値を小さくすることによって、ポテンショメータ75の性能に応じた適切な分解能で精度良く回転異常を判定することができる。
【0040】
第2比較部59は、指令部51からの指令を受け付けて、Aメモリ53に格納されている位置情報A(第1の位置情報)とADコンバータ52を介して取得した位置情報B(第2の位置情報)とを比較し、比較結果を指令部51に返す。
【0041】
第3比較部60は、指令部51からの指令を受け付けて、ポジションメモリ55に保持されているポジションカウント値と駆動目標とされる目標カウント値とを比較し、比較結果を指令部51に返す。
【0042】
上述した第1の実施形態の回転装置の制御装置の動作について説明する。図4は、第1の実施形態の回転装置の制御装置の動作を説明するためのフロー図である。本実施形態の回転装置1の制御装置10において、指令部51が、外部から駆動指令信号(コマンド)を受信する(S101)ことによって図4の動作を開始する。
【0043】
指令部51は、駆動指令を受信すると、まず、駆動パルスの発信処理に先だって、異常判定を適切に行うための各種設定動作を行う。具体的には、指令部51は、ポジションメモリ55から現在のポジションを取得(現在位置をCall)する(S102)。その後、指令部51は、ADコンバータ52に対して、現在のポテンショメータ75で読み取った位置情報を取得する旨の指示を行う。ADコンバータ52は、ポテンショメータ75によって読み取られた位置情報(第1の位置情報の一例)Aを基準位置として取得し、取得した位置情報AをAメモリ53に格納する(S103)。また、ステップS103のタイミングで、Nカウンタ56は、指令部51からリセット指令を受け取り、Nカウンタの値を0にリセットする。
【0044】
ステップS103に続いて、駆動パルス出力部61は、指令部51から駆動パルス出力部61に対して出力パルスの発信指令を受け取って、駆動回路40のモータ駆動部41に対し、駆動パルスを発信する(S104)。これにより、ステッピングモータ20は、モータ駆動部41によって駆動電圧が印加されて駆動制御される。
【0045】
ステップS104に続いて、パルスカウンタ54は、指令部51から出力パルスのカウント指令を受け取って、カウンタをインクリメントし(S105)、インクリメントしたカウント値をポジションメモリ55に渡す。ポジションメモリ55は、インクリメントしたカウント値を受け取ると、ステップS102でCallしたポジションと受け取ったカウント値から現在位置(ポジションカウント値)を更新する(S106)。これにより、ポジションカウント値は駆動目標(目標カウント値)となるまで更新されることになる。
【0046】
ステップS106に続いて、Nカウンタ56は、指令部51からNカウンタのカウント指令を受け取って、Nカウンタ値をインクリメントする(S107)。これにより、Nカウンタ値は所定の異常判定間隔ごとの駆動パルスの発信回数を反映したものとなる。
【0047】
ステップS107に続いて、第1比較部57は、指令部51から比較指令を受け取って、Nカウンタ56のNカウンタ値とXメモリ58に保持されているX値とを比較(Nカウンタ値>X値であるかを判定)して(S108)、比較結果を指令部51に渡す。これにより、X値として回転装置の回転異常を判定するタイミングの基準となるX値と駆動パルスの発信回数を反映したNカウンタ値とを比較するので、所定の異常判定間隔で実行されるべき異常判定のタイミングを判断することができる。
【0048】
指令部51は、Nカウンタ値がX値よりも大きいという比較結果を受け取った場合(S108:Yes)、所定の異常判定間隔であると判断し、異常判定処理を実行する。具体的には、指令部51は、ADコンバータ52に対し現在の位置情報の取得を要求するとともに第2比較部59に対し比較指令をする。第2比較部59は、指令部51から比較指令を受け取ると、Aメモリ53に格納された位置情報AとADコンバータ52で取得した現在の位置情報(第2の位置情報の一例)Bとを取得する(S109)。第2比較部59は、ステップS109に続いて、位置情報Aと位置情報Bとの差分D(=B-Aまたは=A-B)を算出し、あらかじめ保持している理想的な差分Cを許容値αで調整した値((C-α)および(C+α))と算出した差分Dとを比較し(S110)、比較結果を指令部51に渡す。許容値αとしては任意の値を設定できる。また、-αと+αとの絶対値が異なる値に設定してもよい。
【0049】
指令部51は、算出した差分Dが理想的な差分Cを許容値αで調整した値の範囲外((C-α)<D<(C+α)ではない)という比較結果を得た場合(S110:No)は、回転装置に回転異常が発生していると判定してエラーフラッグをONし(S111)、駆動パルス出力部61に対して、駆動パルスの出力を停止する。これにより、ステッピングモータ20の駆動は停止する(S112)。なお、ステップS111のエラーフラッグをONする処理は、省略することもできる。
【0050】
ここで、異常判定処理について図5を用いてさらに説明する。図5は、異常判定について説明するための図である。図5の例では、駆動指令信号に応じて出力されるステッピングモータの駆動1回の指令パルス数が20パルスであり、パルスの所定の異常判定間隔が10パルス(すなわちX値は9)であり、許容値はαである場合を例に挙げて説明している。なお、この例は数値の一例を示したにすぎず、これに限定されない。
【0051】
図5には、横軸にモータへの指令パルス数が示され、縦軸に位置センサ出力値が示されている。また横軸に沿って、判定用カウンタN(Nカウンタ値)と、異常判定タイミングと、移動開始タイミングが示されている。この例では、Nカウンタ値は10カウントごとに更新され、10パルス(カウント)ごとに判定タイミングとなることがわかる。また、本図では、Aメモリ53には基準位置として位置情報A1,A2,A3が第1の位置情報として格納されることを示している。位置情報B1,B2,B3は、位置情報A1,A2,A3のそれぞれに対応する理想的な第2の位置情報を示している。
【0052】
本実施形態の回転装置1の制御装置10では、正常時は、図5の正常時の出力値推移例のグラフが示されているように、駆動パルス数が大きくなるのに比例して位置センサの出力値(位置情報の値)が大きくなる。しかしながら、回転異常が発生すると、このグラフから外れた値を示すようになる。
【0053】
たとえば、30ステップ目の判定タイミングにおいて、現在の位置情報Bとして「Ba」を取得した場合と、「Bb」を取得した場合とを例に挙げて説明する。
【0054】
この場合、30ステップ目の判定タイミングの前回の判定タイミングにおいて、Aメモリ53には基準位置として位置情報A3が第1の位置情報として格納されている。したがって、現在の位置情報(第2の位置情報の一例)Bとして「Ba」を取得した場合は、差分D1はBa-A3となる。この差分D1は、理想的な差分Cを許容値αで調整した値の範囲内にある。従って、この場合は回転異常とは判定されない。
【0055】
一方で、現在の位置情報(第2の位置情報の一例)Bとして「Bb」を取得した場合は、差分D1はBb-A3となる。この差分D2は、理想的な差分Cを許容値αで調整した値の範囲外にある。従って、この場合は、出力パルス数に応じた位置である「B3」に到達していないと考えられ、回転異常と判定される。
【0056】
一方、図4のステップS108において、指令部51は、Nカウンタ値がX値よりも大きくないという比較結果を受け取った場合(S108:No)は、異常判定のタイミングではないと判断できる。同様に、指令部51は、算出した差分Dが理想的な差分Cを許容値αで調整した値の範囲内((C-α)<D<(C+α)である)という比較結果を得た場合(S110:Yes)は、異常判定の結果、異常がないと判定されたと判断できる。これらの場合(S108:NoおよびS110:Yes)、指令部51は、停止条件の判定のために、第3比較部60に対し、比較指令をする。第3比較部60は、比較指令を受け取ると、停止条件をクリアしているかを判定するために目標カウント値とポジションカウント値とを比較し(S113)、比較結果を指令部51に渡す。
【0057】
指令部51は、ポジションカウント値が目標カウント値に到達しているので停止条件をクリアしているとの比較結果を受け取った場合(S113:Yes)、駆動パルスの発信を終了する(S112)。
【0058】
指令部51は、ポジションカウント値が目標カウント値に到達しておらず停止条件をクリアしていないとの比較結果を受け取った場合(S113:No)、ステップS108で受け取った比較結果がNカウンタ値>X値であるか否かにより、異常判定のタイミングであったかどうかを判定する(S114)。指令部51は、ステップS114の判定の結果、異常判定のタイミングであったと判定する(S114:Yes)と、ステップS103の処理に戻る。指令部51は、ステップS114の判定の結果、異常判定のタイミングでなかったと判定する(S114:No)と、ステップS104の処理に戻る。
【0059】
本実施形態の回転装置の制御装置、回転装置および回転装置の制御方法によれば、ステッピングモータの回転位置の制御は、従来通り、駆動指令信号に基づくオープン制御で行う。すなわち、位置センサによる位置情報は、通常のモータ駆動における位置情報としては用いないため、従来のステッピングモータにおける位置精度の高さ、および高分解能が損なわれることはない。一方、位置情報は、出力ギヤが物理的に動いたかどうかを判別できる程度の情報でよく、通常の位置検出に用いられる位置センサのような高精度な位置検出は必要なく、ラフな精度の安価な位置センサを用いることができるため、低コストで実現できる。
【0060】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態の回転装置の制御装置、回転装置および回転装置の制御方法について説明する。第1の実施形態では、指令部51は所定の異常判定間隔で異常判定を行っていたが、本実施形態では、指令部51は駆動目標となる(停止条件クリア)まで駆動した後に、異常判定を行う点が異なる。第2の実施形態では、指令部51以外の構成については、第1の実施形態と同様の構成の回転装置の制御装置、回転装置を採用することができる。第2の実施形態について、第1の実施形態と異なる構成のみ説明し、第1の実施形態と共通している構成については、その説明を省略する。
【0061】
図6は、第2の実施形態の回転装置の制御装置の動作を説明するためのフロー図である。第2の実施形態における回転装置1の制御装置10の動作について、図3および図6を参照しながら説明する。第2の実施形態における回転装置1の制御装置10でも、図6のステップS201からステップS206までは第1の実施形態のステップS101からステップS106と同様の処理を行ない、図6のステップS210からステップS213までは第1の実施形態のステップS109からステップS112と同様の処理を行なう。
【0062】
本実施形態では、停止条件をクリアする(S207:Yes)まで駆動パルスの発信(S204)から現在位置の更新(S206)まで繰り返される。
【0063】
指令部51は、停止条件クリアと判断する(S207:Yes)と、ステッピングモータ20の駆動を停止し(S208)、判定条件を満たしているか否かを判定する(S209)。具体的には、第1比較部57は、指令部51により比較指令を受け取り、Nカウンタ56のNカウンタ値とXメモリ58のX値とを比較して比較結果を指令部51に返す。指令部51は、Nカウンタ値がX値よりも大きい場合に、判定条件を満たしていると判断する。
【0064】
本実施形態では、ステップS203において、駆動パルスの出力開始のタイミングでの位置情報を取得し、取得した位置情報(第3の位置情報の一例)Aを基準位置の情報としてAメモリ53に格納する。また、異常判定処理については、ステップS210において、駆動パルスの出力終了のタイミングでの位置情報(第4の位置情報の一例)Bを取得し、ステップS211において、Aメモリ53に格納されていた位置情報Aとの差分Dを算出し、比較することによって、異常判定を行っている。
【0065】
本実施形態では、駆動パルス数が小さすぎる場合は、異常判定の精度が落ちるので、ステップS209の異常判定を実行するか否かを判定する処理により、異常判定の精度の低下を回避することができる。しかしながら、駆動指令信号に応じて出力されるステッピングモータの駆動1回の駆動パルス数が十分大きい用途に用いられる場合は、ステップS209の処理は必ずしも必要でない。この場合、図3に示す制御装置のNカウンタ56、第1比較部57、Xメモリ58は省略することができる。
【0066】
以上の実施形態では、図1から図3の構成の回転装置を用いて、回転装置の制御方法について具体的な一例について説明した。本実施形態の回転装置の制御方法は、回転装置の出力ギヤを回転させるステッピングモータに駆動電圧を印加する駆動回路に対して、駆動目標に応じた回数だけ駆動パルスを繰り返して出力する駆動パルス出力ステップと、駆動パルス出力ステップの所定の繰り返しタイミングで、前記回転装置の出力ギヤの回転位置を読み取る位置センサから位置情報を取得する位置情報取得ステップと、前記位置情報取得ステップで取得した位置情報に基づいて前記回転装置に回転異常が発生しているか否かを判定する異常判定ステップとを含んでいればよく、具体的に実施形態に限定されない。
【0067】
(実施形態の変形例)
以上の実施形態において、制御装置10の構成は図1の構成に限定されず、駆動制御部50の構成は図2の構成に限定されず、回転装置の構成は図3の構成に限定されない。
【0068】
以上の実施形態において、図4、6に示した処理フローは具体例であって、処理フローはこれらに限定されない。
【0069】
また、以上の実施形態において、位置情報を読み取る手段として、ポテンショメータ75を用いた例を挙げて説明したが、これに限定されず、ギヤの回転位置を物理的に読み取る位置センサであれば、たとえば、磁気センサなどであってもよい。
【符号の説明】
【0070】
1 回転装置、10 制御装置、11 制御基板、12 筐体、20 ステッピングモータ、30 制御回路、40 駆動回路、41 モータ駆動部、50 駆動制御部、51 指令部(異常判定部の一例)、52 ADコンバータ(位置情報取得部の一例)、53 Aメモリ、54 パルスカウンタ、55 ポジションメモリ、56 Nカウンタ、57 第1比較部、58 Xメモリ、59 第2比較部、60 第3比較部、61 駆動パルス出力部、70 アクチュエータ出力軸、71 第1ギヤ、72 第2ギヤ、73 第3ギヤ、74 出力ギヤ、75 ポテンショメータ(位置センサの一例)、76 FPC、A,A1,A2,A3 位置情報(第1の位置情報、第3の位置情報の一例)、B,B1,B2,B3,Ba,Bb 位置情報(第2の位置情報、第4の位置情報の一例)
図1
図2
図3
図4
図5
図6