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  • 特許-靴底用ゴム組成物、靴底、及び、靴 図1
  • 特許-靴底用ゴム組成物、靴底、及び、靴 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-05
(45)【発行日】2023-12-13
(54)【発明の名称】靴底用ゴム組成物、靴底、及び、靴
(51)【国際特許分類】
   A43B 13/04 20060101AFI20231206BHJP
   A43B 13/02 20220101ALI20231206BHJP
【FI】
A43B13/04 Z
A43B13/02 Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019231801
(22)【出願日】2019-12-23
(65)【公開番号】P2021097917
(43)【公開日】2021-07-01
【審査請求日】2022-10-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000000310
【氏名又は名称】株式会社アシックス
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】大▲崎▼ 隆
【審査官】宮部 愛子
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-191401(JP,A)
【文献】特開2016-093365(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0133580(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A43B 13/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
凝集粒子を含有する平均粒子径が5μm以上25μm以下の沈降法シリカと、ゴムとを含み、
前記ゴム100質量部に対する前記沈降法シリカの割合が50質量部以上100質量部以下で
引張サイクル試験で得られる入力エネルギー(Ein)-ヒステリシスロス(Ehys)のプロットの近似直線の傾き(dEhys/dEin)が0.6以上で、
ゲル分率が50%以上80%以下であり、且つ、25℃の温度で実施され、歪み量が0.025%で周波数が10Hzでの動的粘弾性試験における複素弾性率が30MPa以上90MPa以下である靴底用ゴム組成物。
【請求項2】
前記動的粘弾性試験における損失正接が0.12以上である請求項1記載の靴底用ゴム組成物。
【請求項3】
前記ゴムの一部又は全部が、スチレンブタジエンゴム、スチレン系熱可塑性樹脂、天然ゴム、イソプレンゴム、及び、イソブチレン-イソプロピレンゴムの何れかである請求項1又は2記載の靴底用ゴム組成物。
【請求項4】
凝集粒子を含有する平均粒子径が5μm以上25μm以下の沈降法シリカと、ゴムとを含むゴム組成物で構成され、
前記ゴム組成物は、
前記ゴム100質量部に対する前記沈降法シリカの割合が50質量部以上100質量部以下で
引張サイクル試験で得られる入力エネルギー(Ein)-ヒステリシスロス(Ehys)のプロットの近似直線の傾き(dEhys/dEin)が0.6以上で、
ゲル分率が50%以上80%以下であり、且つ、25℃の温度で実施され、歪み量が0.025%で周波数が10Hzでの動的粘弾性試験における複素弾性率が30MPa以上90MPa以下である靴底。
【請求項5】
前記ゴム組成物は、前記動的粘弾性試験における損失正接が0.12以上であり、複素弾性率が60MPa以上である請求項記載の靴底。
【請求項6】
前記ゴムの一部又は全部が、スチレンブタジエンゴム、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレン共重合体、天然ゴム、イソプレンゴム、及び、イソブチレン-イソプロピレンゴムの何れかである請求項4又は5に記載の靴底。
【請求項7】
請求項乃至の何れか1項に記載の靴底を備えた靴。
【請求項8】
登山靴である請求項記載の靴。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、靴底用ゴム組成物、靴底、及び、靴に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トレッキングシューズやクライミングシューズなどの登山靴が山野での歩行や人工的に作製された崖や自然の崖を上るような用途で広く用いられている。
この登山靴では、地面の凹凸が激しい場所でもグリップ性を発揮することが求められている(下記特許文献1参照)。
【0003】
ところで、登山靴に限らず従来の靴では、アウトソールなどの靴底を構成する部材が架橋ゴムで構成されており、該架橋ゴムを構成するゴム組成物には補強材として無機フィラーが含有されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第3100592号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
登山靴のように地面の凹凸が激しい場所で用いられる靴の靴底については、従来、補強材としてカーボンブラックを含有する靴底用ゴム組成物によって構成されている。
カーボンブラックを含有する靴底用ゴム組成物は、通常、黒色以外の色合いとすることが難しい。
靴を構成する部材が特定の色合いに限定されてしまうのは、靴のデザインに制約を加えてしまうために望ましいことではない。
【0006】
ところで、スニーカーなどの靴については、靴底を構成するゴム組成物に補強材としてシリカなどの白色フィラーを採用し、当該ゴム組成物を黒色以外の色合いにすることが検討されている。
【0007】
近年、登山靴についても白色フィラーを含むゴム組成物で靴底を構成することが試みられている。
靴は、強度などの観点から靴底が高弾性率なゴム組成物で構成されていることが好ましい場合があるものの上記のような試みにおいては靴底を低弾性率なゴム組成物で構成することでグリップ性を発揮させることが試みされている。
そして、登山靴の靴底を構成するゴム組成物については、白色フィラーを使用して高いグリップ性を発揮させるのに際して、併せて高い弾性率をも発揮させる手法が確立されていない。
なお、主として舗装された道路上で使用されるスニーカーなどにおいても地面の凹凸が激しい場所で用いられる場合には、登山靴と同様にグリップ性を発揮することが望ましい。
即ち、白色フィラーを使用しながらも高い弾性率を発揮して凹凸が激しい場所での優れたグリップ性を発揮することが求められているのは登山靴に限られたことではない。
【0008】
本発明は、上記のような点に鑑みてなされたもので、白色フィラーを含有しつつ靴底に高い弾性率と優れたグリップ性との両方を発揮させることが可能な靴底用のゴム組成物を提供し、高弾性率でありながらグリップ性に優れた靴底を提供して、ひいては、強度とグリップ性に優れた靴を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者が上記課題を解決すべく鋭意検討したところ、従来の靴底用のゴム組成物よりもゴムの架橋度を低下させて(場合によっては非架橋として)所定のヒステリシス特性を示す状態にすることで高い弾性率と優れたグリップ性との両方を靴底に発揮させ易くなることを見出して本発明を完成させるに至った。
【0010】
上記課題を解決するために、本発明は、
ゴムと無機フィラーとを含み、
前記無機フィラーの一部又は全部が白色フィラーで、
前記ゴム100質量部に対する前記白色フィラーの割合が50質量部以上100質量部以下であり、
引張サイクル試験で得られる入力エネルギー(Ein)-ヒステリシスロス(Ehys)のプロットの近似直線の傾き(dEhys/dEin)が0.6以上で、
ゲル分率が80%以下であり、且つ、25℃の温度で実施され、歪み量が0.025%で周波数が10Hzでの動的粘弾性試験における複素弾性率が30MPa以上である靴底用ゴム組成物、を提供する。
【0011】
上記課題を解決するために、本発明は、
ゴムと無機フィラーとを含むゴム組成物で構成され、
前記ゴム組成物は、
前記無機フィラーの一部又は全部が白色フィラーで、
前記ゴム100質量部に対する前記白色フィラーの割合が50質量部以上100質量部以下であり、
引張サイクル試験で得られる入力エネルギー(Ein)-ヒステリシスロス(Ehys)のプロットの近似直線の傾き(dEhys/dEin)が0.6以上で、
ゲル分率が80%以下であり、且つ、25℃の温度で実施され、歪み量が0.025%で周波数が10Hzでの動的粘弾性試験における複素弾性率が30MPa以上である靴底、を提供する。
【0012】
本発明は、さらに上記のような靴底を備えた靴、を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、靴底に高い弾性率と優れたグリップ性とが発揮され得る。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】一実施形態に係る登山靴の一例を示した概略斜視図。
図2】近似直線の傾きを測定するための試料の形状の一例を示した図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明の実施の形態について図を参照しつつ説明する。
図1は、登山靴の一例を示した概略斜視図であり、本実施形態に係る登山靴1は、図に示したようにアッパー2と靴底3とを備えている。
図に示すように本実施形態の靴底3は、靴の下面1bの全体を構成しているとともに下面1bの外周縁から立ち上がった状態になっている。
即ち、本実施形態の靴底3は、靴の下面1bだけでなく靴の下方領域の外周面1sをも構成している。
【0016】
本実施形態の靴底3は、非架橋、又は、架橋度の低い靴底用ゴム組成物で構成されている。
前記靴底用ゴム組成物(以下、単に「ゴム組成物」ともいう)は、ゴムと無機フィラーとを含んでおり、前記無機フィラーの一部又は全部が白色フィラーで、前記ゴム100質量部に対する前記白色フィラーの割合が50質量部以上100質量部以下である。
【0017】
前記ゴム組成物に含まれる前記ゴムは、1種単独である必要はなく、2種類以上であってもよい。
前記ゴム組成物に2種類以上のゴムを含有する場合、前記白色フィラーは、2種類以上のゴムの合計含有量を100質量部とした際に、50質量部以上100質量部以下の割合となって前記ゴム組成物に含有される。
【0018】
前記ゴム組成物は、引張サイクル試験で得られる入力エネルギー(Ein)-ヒステリシスロス(Ehys)のプロットの近似直線の傾き(dEhys/dEin)を求めた際に、該傾きが0.6以上となり、且つ、ゲル分率を求めた際にその値が80%以下となるものである。
【0019】
前記ゴム組成物は、25℃の温度で実施される歪み量が0.025%で周波数が10Hzでの動的粘弾性試験における複素弾性率が30MPa以上である。
【0020】
本実施形態での前記ゴム組成物は、前記動的粘弾性試験における損失正接が0.12以上であり、前記複素弾性率が90MPa以下である。
【0021】
前記ゴム組成物における前記ゴムは、特にその種類等が限定されるわけではないが、その一部又は全部が、スチレンブタジエンゴム、スチレン系熱可塑性エラストマー、天然ゴム、イソプレンゴム、及び、イソブチレン-イソプロピレンゴムの何れかであることが好ましい。
前記ゴム組成物には前記の通り複数のゴムを含ませ得るが、本実施形態での前記ゴム組成物に含まれる最も高い質量割合で含有されるゴム(以下、「ベースゴム」ともいう)は、スチレンブタジエンゴム、スチレン系熱可塑性エラストマー、天然ゴム、イソプレンゴム、及び、イソブチレン-イソプロピレンゴムの何れかであることが好ましい。
【0022】
前記ベースゴムが全てのゴムに占める割合は、例えば、50質量%以上とされる。
該割合は、60質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましい。
前記ベースゴムが全てのゴムに占める割合は、例えば、100質量%以下とされる。
前記ゴム組成物に含まれるゴムをベースゴム1種のみとすると、ゴム組成物の特性を他の配合剤で調整しなければならなくなる。
そこで、ゴム組成物には、ベースゴム以外にもゴムを含ませることが好ましく、複数のゴムを含ませることが好ましい。
そして、前記割合は、95質量%以下であることが好ましく、90質量%以下であることがより好ましい。
【0023】
前記ベースゴムとしては、一般的な靴の使用環境における温度域(例えば、0℃以上40℃以下)において弾性率の変化が少ないことが好ましい。
前記ベースゴムとしては、本実施形態の靴1に対して優れたグリップ性を発揮させる上において上記のような温度域において高い損失正接を示すことが好ましい。
尚、通常、損失正接は、ガラス転移温度において最大値となるため、上記のようなグリップ性を発揮させる上において、前記ベースゴムのガラス転移温度は、-15℃よりも高い温度であることが好ましく、-10℃よりも高い温度であることが好ましい。
前記ベースゴムのガラス転移温度は、20℃未満であることが好ましい。
【0024】
前記ベースゴムとしては、スチレンブタジエンゴム、スチレン系熱可塑性エラストマー、又は、イソブチレン-イソプロピレンゴム(ブチルゴム)の何れかであることが好ましい。
これらの内でスチレンブタジエンゴムは、強度と弾性に優れるばかりでなく耐摩耗性に優れる点において前記ベースゴムとして好適である。
前記ベースゴムは、溶液重合法によって得られたスチレンブタジエンゴム(以下、「溶液重合SBR」や「S-SBR」などともいう)であっても乳化重合法によって形成されたもの(以下、「乳化重合SBR」や「E-SBR」などともいう)であってもよい。
前記ベースゴムは、塩素化ブチルゴムや臭素化ブチルゴムなどのハロゲン化ブチルゴムであってもよい。
【0025】
前記ゴム組成物に含有させるゴムとしては、スチレン系熱可塑性エラストマーも好適なものとして挙げることができる。
スチレン系熱可塑性エラストマーとしては、例えば、スチレン-エチレン-ブチレン共重合体(SEB)、スチレン-ブタジエン-スチレン共重合体(SBS)、SBSの水素添加物(スチレン-エチレン-ブチレン-スチレン共重合体(SEBS))、スチレン-イソプレン-スチレン共重合体(SIS)、SISの水素添加物(スチレン-エチレン-プロピレン-スチレン共重合体(SEPS))、スチレン-ブタジエン-イソプレン-スチレン共重合体(SBIS)、SBISの水素添加物(スチレン-エチレン-エチレン-プロピレン-スチレン共重合体樹脂(SEEPS))スチレン-イソブチレン-スチレン共重合体(SIBS)、スチレン-ブタジエン-スチレン-ブタジエン(SBSB)、スチレン-ブタジエン-スチレン-ブタジエン-スチレン(SBSBS)などがあげられる。
なかでもベースゴムとして好ましいスチレン系熱可塑性エラストマーとしては、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレン共重合体(SEBS)があげられる。
【0026】
本実施形態においては、前記靴底3を構成するゴム組成物に該ベースゴムとともに白色フィラーが含有される。
白色フィラーは、一般的にゴムの補強材として利用されているカーボンブラックに比べてゴムへの分散性に劣る場合がある。
そのためゴム組成物を調製する際の混練性を向上させる上において前記ベースゴムの他に液状ゴムを含有させてもよい。
前記ベースゴムとして溶液重合SBRや乳化重合SBRを採用する場合、これらのゴムと組み合わせて常温(23℃)で液状のスチレンブタジエンゴム(以下、「液状SBR」や「L-SBR」などともいう)を含有させてもよい。
【0027】
本実施形態のゴム組成物は、大きなヒステリシスロスを示すことで凹凸の激しい山道などにおいても優れたグリップ性を発揮する。
そのためには、ゴム組成物中にゴムの分子末端が数多く存在する方が有利である。
前記液状SBRなどの利用は、ゴム組成物中における分子末端数を増やしてヒステリシスロスを増大させる上においても有利である。
【0028】
前記液状ゴムは、本実施形態での前記ゴム組成物における前記ベースゴムの含有量を100質量部としたときに、10質量部以上の質量割合で前記ゴム組成物に含有され得る。
該質量割合は、15質量部以上であることが好ましい。
前記質量割合は、通常、50質量部以下とされる。
前記質量割合は、40質量部以下であることが好ましい。
【0029】
本実施形態の前記ゴム組成物に含まれる全てのゴムに占める前記液状ゴムと前記ベースゴムとの合計量の割合は、90質量%以上であることが好ましく、95質量%以上であることがより好ましい。
【0030】
前記分子末端をゴム組成物中に数多く存在させる点では、前記ベースゴムの分子量分布(Mw/Mn)がブロードであることが好ましく、前記溶液重合SBRと前記乳化重合SBRとでは、前記乳化重合SBRの方をベースゴムとして採用する方が有利である。
【0031】
前記乳化重合SBRの分子量分布は、ゲルパーミエイションクロマトグラフ(GPC)法によって求めることができ、標準スチレンによる換算値として求められる質量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)とによって算出することができる。
前記乳化重合SBRの分子量分布(Mw/Mn)は、3以上であることが好ましく3.2以上であることが好ましい。
該分子量分布(Mw/Mn)は、通常、5以下である。
【0032】
本実施形態のゴム組成物は、非架橋、又は、架橋度の低い状態となって前記靴底3を構成する。
そのため、前記乳化重合SBRは、一般的に分子中に架橋点となり得るビニル結合が前記溶液重合SBRよりも少ない点において前記ベースゴムとして好適である。
【0033】
本実施形態の前記ゴム組成物は、前記ゴムを架橋する架橋剤を含有することができる。
該架橋剤は、一般的にゴムの架橋に用いられている硫黄や有機過酸化物を採用することができる。
該ゴム組成物での前記架橋剤は、硫黄であることが好ましい。
該硫黄は、前記ゴム組成物に含まれるゴムの合計含有量を100質量部としたときに、0.5質量部を超える質量割合で前記ゴム組成物に含有され得る。
該質量割合は、0.6質量部を超えてもよい。
該質量割合は、1質量部未満であることが好ましく、0.9質量部未満であることがより好ましい。
【0034】
前記ゴム組成物は、前記架橋剤と同様に機能させることが可能なポリスルフィド構造を分子構造中に有する化合物をさらに含有させてもよい。 該化合物としては、例えば、テトラスルフィド構造を有するシランカップリング剤などが挙げられる。
該シランカップリング剤としては、例えば、ビス(トリメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィドビス(トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドなどが挙げられる。
該化合物は、前記ゴム組成物に含まれるゴムの合計含有量を100質量部としたときに、含有する硫黄が0.1質量部を超える質量割合で前記ゴム組成物に含有され得る。
前記化合物は、含有する硫黄が0.2質量部を超える前記質量割合で前記ゴム組成物に含有され得る。
該質量割合は、1.5質量部未満とされ得る。
該質量割合は、1質量部未満であることが好ましい。
【0035】
前記ゴム組成物は、上記のようなポリスルフィド構造を有するポリスルフィド系シランカップリングとは別にモノスルフィド系シランカップリング剤を含有していてもよい。
前記モノスルフィド系シランカップリング剤は、例えば、ビス(トリメトキシシリルプロピルメタクリレート)モノスルフィド、ビス(トリエトキシシリルプロピルメタクリレート)モノスルフィド、オクタノイルチオプロピルトリメトキシシラン、オクタノイルチオプロピルトリエトキシシランなどがあげられる。
【0036】
前記ゴム組成物は、ポリスルフィド系シランカップリングやモノスルフィド系シランカップリング剤のようなスルフィド系シランカップリング剤以外にメルカプトプロピルトリメトキシシラン、メルカプトプロピルトリエトキシシランなどのメルカプト系シランカップリング剤を含んでもよい。
【0037】
前記ゴム組成物は、スルフィド系シランカップリング剤やメルカプト系シランカップリング剤のような硫黄系シランカップリング剤以外に分子構造中に硫黄を含まない非硫黄系シランカップリング剤を含んでもよい。
該非硫黄系シランカップリング剤としては、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、n-プロピルトリメトキシシラン、n-プロピルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン、トリフルオロプロピルトリメトキシシランなどのアルコキシシラン系シランカップリング剤;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランなどのビニル系シランカップリング剤;グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、エポキシシクロヘキシルエチルトリメトキシシランなどのエポキシ系シランカップリング剤;(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシランなどの(メタ)アクリル系シランカップリング剤;アミノプロピルトリメトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン、アミノエチルアミノプロピルトリメトキシシラン、アミノエチルアミノプロピルトリエトキシシラン、アミノエチルアミノプロピルメチルジメトキシシラン、アミノエチルアミノプロピルメチルジエトキシシラン、フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、フェニルアミノプロピルトリエトキシシランなどのアミノ系シランカップリング剤;イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、イソシアネートプロピルトリエトキシシランなどのイソシアネート系シランカップリング剤;トリス(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレートなどのイソシアヌレート系シランカップリング剤があげられる。
【0038】
前記ゴム組成物に含まれる前記白色フィラーとしては、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、セリサイトなどの雲母鉱物、タルク、クレー、アルミナ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化チタン、硫酸カルシウム、硫酸バリウム等が挙げられる。
前記白色フィラーとしては、例えば、ガラス板で圧縮するなどして平滑な平面を形成させた際に60%以上の白色度(JIS P8148)を示すものが挙げられる。
【0039】
本実施形態の前記ゴム組成物に含まれる前記白色フィラーは、1種単独である必要はなく、2種類以上であってもよい。
前記ゴム組成物に2種類以上の白色フィラーを含有する場合、該白色フィラーは、前記ゴムの合計含有量を100質量部とした際に、2種類以上の合計量が50質量部以上100質量部以下の割合となって前記ゴム組成物に含有される。
【0040】
前記白色フィラーの含有量は、55質量部以上であることが好ましく、60質量部以上であることがより好ましい。
前記白色フィラーの含有量は、95質量部以下であることが好ましく、90質量部以下であることがより好ましい。
【0041】
前記白色フィラーとしては、シリカが好ましい。
前記ゴム組成物は、湿式法で製造されたシリカ(以下、「湿式法シリカ」ともいう)を含んでも、乾式法で製造されたシリカ(以下、「乾式法シリカ」ともいう)を含んでもよい。
【0042】
本実施形態の前記ゴム組成物は、前記白色フィラーの一部によって凝集粒子が構成されており、複数の前記凝集粒子が含まれていることが好ましい。
白色フィラーの1次粒子が複数集合して形成された2次粒子である1次凝集粒子や、該1次凝集粒子が2次凝集して形成された2次凝集粒子を含むことで本実施形態の前記ゴム組成物は、応力が加わった際に前記1次凝集粒子や前記2次凝集粒子の一部に崩壊が生じ高いヒステリシスロスを示す。
【0043】
上記のようなことから、前記シリカは、1次凝集粒子が含まれ易い湿式法シリカであることが好ましい。
該湿式シリカは、沈降法によって作製されたシリカ(以下、「沈降法シリカ」ともいう)であっても、ゲル法によって作製されたシリカ(以下、「ゲル法シリカ」ともいう)であってもよい。
前記湿式シリカは、応力が加わった際に崩壊し易い沈降法シリカであることが好ましい。
【0044】
前記ゴム組成物に含有されるシリカなどの白色フィラーは、レーザー回折散乱法によって求められる平均粒子径(体積基準での中位径:D50)が1μm以上であることが好ましい。
該平均粒子径は、2μm以上であることがより好ましく、5μm以上であることがさらに好ましい。
該平均粒子径は、30μm以下であることが好ましく、25μm以下であることがより好ましい。
【0045】
前記ゴム組成物には、白色フィラー以外のフィラーを含有してもよいが、当該ゴム組成物を発色性に優れたものにする上で、白色フィラー以外のフィラーを過度に含有しないことが好ましい。
前記ゴム組成物に占める全ての無機フィラーに占める白色フィラーの割合は、95質量%以上であることが好ましく、98%以上であることがより好ましい。
【0046】
前記ゴム組成物は、有彩色の靴底3を構成すべく、更に赤色や青色などといった顔料を含有してもよい。
前記ゴム組成物は、例えば、老化防止剤、酸化防止剤、耐侯剤、紫外線吸収剤、光安定剤、難燃剤、離型剤、帯電防止剤、抗菌剤、防カビ剤、消臭剤、香料等の添加剤を含んでもよい。
【0047】
本実施形態の前記ゴム組成物は、前記の通り、ゲル分率が80%以下となって靴底3を構成している。
【0048】
本実施形態での「ゲル分率」とは、溶媒抽出試験で溶出されなかったゴム(「不溶ゴム」ともいう)がゴムの総量に占める割合を意味する。
前記ゴム組成物のゲル分率は、具体的には、次のようにして求めることができる。
【0049】
<ゲル分率の求め方>
直径約8mm、厚さ約2mm、中央部に貫通孔を有する円板状で、質量が0.2g程度の試料を靴底から切り出し、該試料の質量を初期質量(M0)として精秤する。
同じように質量が0.2g程度となる前記試料を別途4個用意し、それぞれ同様に初期質量を精秤する。
次いで、約45mlのトルエンを収容した容積50mLのサンプル管を5個用意し、トルエン中に浸漬された状態で試料がサンプル管に収容されたものを5セット用意する。
試料は、細い針金を貫通孔に通してサンプル管の内部で宙吊りになった状態となるようにしてトルエン中に浸漬させる。
このサンプル管に蓋をした後、35℃の温度で72時間保管する。
72時間経過後のサンプル管より試料を取り出して真空乾燥し、真空乾燥後の質量(M1)を精秤する。
【0050】
初期試料におけるゴム以外の成分の含有率(A(質量%))を、該初期試料の灰分を測定することによって求める。
該灰分は、JIS K6226-1、JIS K6226-2に基づいて測定する。
各初期試料に含まれるゴムの質量(初期質量:Mi)を初期質量(M0)の値とゴム以外の成分の含有率(A(質量%))とを用いて下記のように算出する。
ゴムの初期質量(Mi) = M0 × (100-A)/100
【0051】
トルエンに72時間浸漬した後に真空乾燥した試料についても下記のようにして含有されるゴムの質量(不溶ゴム質量:Mb)を求める。
不溶ゴム質量(Mb) = M1 × (100-A)/100
【0052】
前記初期質量(Mi)に対する前記不溶ゴム質量(Mb)の割合を算出し、各試料でのゲル分率((Mb/Mi)×100%)を算出する。
5個の試料の結果を算術平均してゴム組成物のゲル分率とする。
尚、算術平均に際して異常値とみられる測定結果は、除外する。
ゴム組成物のゲル分率の測定にあたっては、原則的に上記の通り5つの測定値の算術平均値を求めることとするが、合計5個の試料が用意できない場合などは、測定点数を減らして測定を行ってもよい。
【0053】
前記ゴム組成物は、ゲル分率が77%以下であることが好ましく、ゲル分率が76%以下であることがより好ましく、ゲル分率が75%以下であることがさらに好ましい。
前記ゴム組成物は、ヒステリシスロスを大きくする上ではゲル分率が低いことが好ましいもののゲル分率がある程度高い方が靴底3に優れた耐油性や耐薬品性を発揮させる上において有利となる。
従って、前記ゴム組成物のゲル分率は、30%以上であることが好ましく、40%以上であることがより好ましく、50%以上であることがさらに好ましい。
前記ゴム組成物におけるゲル分率の調整は、通常、ゴム分子どうしの架橋の程度を制御することで行われ得る。
【0054】
本実施形態における前記ゴム組成物は、引張サイクル試験を行った際に、該引張サイクル試験で得られる「入力エネルギー(Ein)-ヒステリシスロス(Ehys)」のプロットの近似直線の傾き(dEhys/dEin)が0.6以上となるように靴底3を構成している。
【0055】
前記近似直線の傾き(dEhys/dEin)は、次のようにして求めることができる。
<近似直線の傾きの求め方>
靴底から、均一な厚さで厚さが2mm程度のダンベル状試験片を切り出す。
ダンベル状試験片は、図2に示すような形状とする。
具体的には、ダンベル状試験片は、平行部分の幅が5mmで平行部分の長さが2mmとする。
靴底から、ダンベル状試験片を切り出すことが難しい場合は、同じ配合のゴム組成物で作製したテストシートからダンベル状試験片を切り出すようにしてもよい。
【0056】
ダンベル状試験片をチャック間隔が12mmとなるように引張試験機にセットする。
引張試験機にセットしたテストピースは、変位量が5%(12mm×5%=0.6mm)となるまで引張速度1mm/minで引張り、直ぐに、同じ速度で元の状態へと復帰させる。
この時、引張試験機で測定される引張時のSSカーブ(stress-strain curve)の積分値を入力エネルギー(Ein)とする。
そして、復帰時のSSカーブの積分値(Ein’)と前記入力エネルギー(Ein)との差(Ein-Ein’)をヒステリシスロス(Ehys)とする。
次いで、同様に、変位量が25%(3mm)、50%(6mm)、100%(12mm)での入力エネルギー(Ein)とヒステリシスロス(Ehys)とを求める。
そして、この4点のデータを横軸が入力エネルギー(Ein)、縦軸がヒステリシスロス(Ehys)となるグラフにプロットし、最小二乗法によって原点を通る直線近似して当該近似直線の傾き(dEhys/dEin)を求める。
尚、引張試験は、原則的に、温度23℃、相対湿度50%に調整された環境下で実施し、ダンベル状試験片は、当該環境下において12時間以上保持した後に引張試験に供するものとする。
【0057】
前記傾き(dEhys/dEin)は、通常、1未満であり、0.9以下であることが好ましい。
前記傾き(dEhys/dEin)は、0.8以下であることがより好ましい。
【0058】
前記傾き(dEhys/dEin)は、通常、ゴム組成物のヒステリシスロスを調整することで制御可能である。
ゴム組成物のヒステリシスロスは、応力が加わった際に崩壊可能な凝集状態の無機フィラーの含有量によって調整可能である。
ゴム組成物のヒステリシスロスは、応力が加わった際にゴム分子鎖どうしのズリの発生の程度によっても調整可能である。
分子鎖どうしのズリは、ゴムの架橋密度や系内における分子末端の存在量などによって発生の程度を調整可能である。
【0059】
当該ゴム組成物によって発揮されるグリップ性は、実施例に記載の測定方法によって求められる静止摩擦係数が1.5以上となるものであることが好ましい。
該静止摩擦係数は、1.7以上であることがより好ましく、1.9以上であることがさらに好ましい。
【0060】
前記ゴム組成物は、25℃の温度で実施される歪み量が0.025%で周波数が10Hzでの動的粘弾性試験における損失正接(tanδ)が0.12以上となる状態で靴底3を構成している。
また、前記ゴム組成物は、同じ条件での動的粘弾性試験において求められる複素弾性率(E)が30MPa以上90MPa以下となる状態で靴底3を構成している。
【0061】
前記動的粘弾性試験は、JIS K7244-4に準拠して実施することができ、例えば、次のようにして実施することができる。
<動的粘弾性試験の試験方法>
靴底3から、所定寸法(例えば、長さ33±3mm、幅5±0.3mm、厚さ2±0.3mm)の短冊状の試験片を採取する。
靴底3から、試験片を切り出すことが難しい場合は、同じ配合のゴム組成物で作製したテストシートから短冊状試験片を切り出すようにしてもよい。
この短冊状試験片を動的粘弾性測定装置にチャック間距離が20±0.2mmとなるようにセットする。
測定モードは、正弦波歪みの引張モードとし、荷重は自動静荷重とし、動歪みを5μm(0.025%)として、周波数10Hzで試験を行う。
尚、動的粘弾性測定の試験温度は25℃とし、短冊状試験片は、25℃の環境下において12時間以上保持した後に動的粘弾性試験に供するものとする。
【0062】
前記ゴム組成物の損失正接は、0.13以上であることが好ましく、0.14以上であることがより好ましい。
前記損失正接は、0.22以下であることが好ましく、0.21以下であることがより好ましい。
【0063】
前記ゴム組成物の複素弾性率は、50MPa以上であることが好ましく、60MPa以上であることがより好ましく、70MPa以上であることがさらに好ましい。
前記複素弾性率は、85MPa以下であることが好ましい。
【0064】
前記ゴム組成物の損失正接や複素弾性率は、ベースゴムとして採用するゴムの損失正接や複素弾性率などによって調整可能である。
【0065】
本実施形態の靴1は、上記のような特定のゴム組成物によって靴底3が構成されているが、アッパー2については従来公知の素材で構成させることができる。
【0066】
本実施形態の靴1は、前記ゴム組成物によって靴底3が構成されているため、ガレ場などでの登坂、岩登りや崖登りなどに際して靴底3の僅かな領域しか接地状態にならないような場面において高いグリップ性を発揮する。
即ち、本実施形態の靴1は、靴底3が地面と点接触になってしまう状況であっても着用者の安定した静止姿勢をサポートすることができる。
【0067】
本実施形態の靴1は、人工的に作製された崖を上るスポーツクライミングなどにおいても着用者の静止姿勢を良好にサポートすることができる。
即ち、本実施形態の登山靴は、自然界での利用のみならずスポーツクライミングなどにおいてもその効果が顕著に発揮され得る。
【0068】
本実施形態の靴1は、前記ゴム組成物が高い弾性率を有することで靴底3に優れた強度が発揮され得る。
従って、本実施形態の靴1は、尖った石を踏んだりして着用者の荷重が靴底の一点に集中してしまうような場合にも足に痛みを感じさせ難い。
見方を変えると、本実施形態の靴1は、靴底3を従来の登山靴よりも薄肉化することも可能であり、優れた軽量性をも発揮し得る。
【0069】
本実施形態の靴1は靴底3に対して豊富なカラーバリエーションを持たせることができ、意匠性においても優れている。
【0070】
尚、本発明の靴底用ゴム組成物は、登山靴の靴底を構成する場合のみならず、一般的なスポーツシューズの靴底を構成する際においても同様の効果を発揮する。
また、本発明は、上記例示に対して各種の変更を適宜加え得る。
即ち、本発明は、上記例示に何等限定されるものではない。
【実施例
【0071】
次に実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0072】
(実施例、比較例)
(配合剤)
ゴム組成物を調製するための原材料として下記のものを用意した。
・SBR:スチレン含有量約50質量%のスチレンブタジエンゴム(乳化重合SBR)
・SEBS:スチレン-エチレン-ブチレン-スチレン共重合体
・BrBR:臭素化ブチルゴム
・NR:天然ゴム
・L-SBR:液状SBR
・PO:パラフィンオイル
・SiO:凝集粒子を含み、平均粒子径(D50)が約20μmの沈降法シリカ
・CA:ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド
・PEG:質量平均分子量約2000、融点約52℃のポリエチレングリコール
・加硫剤1:硫黄
・加硫剤2:4,4’-ジチオジモルホリン
・加硫促進剤1:ジ-2-ベンゾチアゾリルジスルフィド
・加硫促進剤2:テトラメチルチウラムモノスルフィド
・加硫促進剤3:ジラウリルチオウレア
【0073】
(架橋体シートの作製)
表1に示した配合内容の未架橋のゴム組成物で未架橋シートを調整し、矩形貫通孔が形成された金枠の貫通孔に未架橋シートをセットし、該金枠を2枚のプレスプレートの間に挟んで熱プレスして所定厚さの架橋体シートを作製した。
【0074】
(機械的物性及びゲル分率の評価)
架橋体シートより試験片を切り出して、複素弾性率(E)、損失正接(tanδ)、引張サイクル試験で得られる入力エネルギー(Ein)-ヒステリシスロス(Ehys)のプロットの近似直線の傾き(dEhys/dEin)、及び、ゲル分率の測定を実施した。
【0075】
(摩擦係数の評価)
装置は(株)トリニティラボ製の直動型摩擦試験機、型名「μV-1000」を使用して測定を実施した。
未架橋のゴム組成物で未架橋シートを調整し、矩形貫通孔が形成された厚さ2mmの金枠の貫通孔に未架橋シートをセットし、該金枠を2枚のプレスプレートの間に挟んで熱プレスして架橋体シートを作製した。
架橋体シートは、熱プレスに際して鏡面板を使って表面が十分平滑となるように作製した。
その後、架橋体シートの表面を研磨紙(番手#400)で全体が均一になるように粗化処理した。
該架橋体シートから、幅20mm、長さ40mm、厚さ2mmのテストシートを切り出した。
水平方向に定速で移動可能なテーブルの上面にテストシートを固定した。
テストシートは、テーブルの移動方向が長手方向となるように固定した。
このテストシートの上面に平均曲率半径(R)が14mm、且つ、表面粗さ(最大高さ粗さ(Rz)=366μm)のボルタリング用ホールドを当接させ、該ホールドでテストシートに対して1kgfの荷重を加え、10秒間静止させた後、前記テーブルを10mm/secの速度で移動させた。
テーブルの移動初期段階において観察される摩擦係数の最大値を静止摩擦係数とした。
試験は、同じ設置箇所で10回以上予備摩擦を実施し、数値が安定した最終3回の測定結果の算術平均値をテストシートの静止摩擦係数とした。
【0076】
上記の評価結果を下記表に示す。
【0077】
【表1】
【0078】
上記のことからも本発明によれば、白色フィラーを含有しつつ靴底に高い弾性率と優れたグリップ性との両方を発揮させることが可能な靴底用のゴム組成物が提供され得ることがわかる。
【符号の説明】
【0079】
1:靴、2:アッパー、3:靴底
図1
図2