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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-05
(45)【発行日】2023-12-13
(54)【発明の名称】コマ部材と溝の嵌合構造、レンズ鏡筒
(51)【国際特許分類】
   G02B 7/04 20210101AFI20231206BHJP
【FI】
G02B7/04 D
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019232688
(22)【出願日】2019-12-24
(65)【公開番号】P2021101213
(43)【公開日】2021-07-08
【審査請求日】2022-11-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000133227
【氏名又は名称】株式会社タムロン
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100170634
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 航介
(72)【発明者】
【氏名】中村 俊貴
【審査官】登丸 久寿
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-218133(JP,A)
【文献】国際公開第2019/181679(WO,A1)
【文献】特開2010-054645(JP,A)
【文献】特開2011-039386(JP,A)
【文献】特開2011-028071(JP,A)
【文献】特開2010-276637(JP,A)
【文献】国際公開第2019/106143(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レンズ鏡筒のレンズ駆動機構における第1の部材に設けられたコマ部材と、前記第1の部材に対して径方向一方側に位置し、前記第1の部材に対して相対移動可能な第2の部材に設けられた第1の溝との嵌合構造であって、
前記第1の溝は、
幅狭部と、
前記幅狭部よりも前記第1の部材側に形成され、前記幅狭部よりも幅が広い幅広部と、を有し、
前記コマ部材は、
前記第2の部材に向かって突出する軸部を有するコマ軸と、
前記軸部の周囲に取り付けられた弾性のコマと、を有し、
前記コマが、該コマと前記幅広部の壁面との間に隙間がない状態で、該幅広部内に配置され、前記コマ軸が前記幅狭部内に、該幅狭部の壁面と間隔をあけて配置され、これにより前記レンズ鏡筒に衝撃が作用した場合に、前記コマが弾性変形し、前記コマ軸が前記幅狭部の壁面と当接するように構成されていることを特徴とするレンズ鏡筒におけるコマ部材と溝の嵌合構造。
【請求項2】
前記第1の部材と前記第2の部材との間には第3の部材が配置されており、
前記第3の部材は第2の溝を有し、
前記コマは前記第2の溝内に隙間なく配置されている、
請求項1に記載のコマ部材と溝の嵌合構造。
【請求項3】
前記第1の溝は、前記第2の部材を貫通している、
請求項1又は2に記載のコマ部材と溝の嵌合構造。
【請求項4】
前記第1の部材は、前記第2の部材に対して径方向外方に配置されており、
前記第1の部材には貫通穴が形成されており、
前記コマ部材は、前記第1の部材の径方向他方側から前記貫通穴に挿入されたコマビスをさらに有し、
前記コマ軸は、前記第1の部材の径方向一方側に配置され、前記コマビスにより固定されている、
請求項1~3の何れか1項に記載のコマ部材と溝の嵌合構造。
【請求項5】
レンズを駆動するためのレンズ駆動機構が、請求項1~4の何れか1項に記載のコマ部材と溝の嵌合構造を含む、
レンズ鏡筒。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コマ部材と溝の嵌合構造、及び、レンズ鏡筒に関する。
【背景技術】
【0002】
複数のレンズ群を有するレンズ鏡筒では、各レンズ群を光軸方向に移動させることにより、ズーミング又はフォーカシング操作を行っている。レンズ群を光軸方向に移動させる構成としては、カム筒に光軸方向に対して傾斜したカム溝を設けるとともに、レンズ群を保持する筒体やレンズ保持枠にコマ部材を立設しておき、カム溝にコマ部材を嵌め込む嵌合構造が広く用いられている。図7は、従来技術によるカム溝とコマ部材との嵌合構造を示す、カム溝に直交した断面図である。図7に示すように、この嵌合構造300では、摺動筒206にコマ部材210が立設されており、このコマ部材210がカム筒208のカム溝220に嵌まり込んでいる。コマ部材210は、摺動筒206のカム筒208側の面に軸部214Gを有するコマ軸214を配置し、このコマ軸214をコマビス212により固定し、コマ軸214の軸部214Gの周囲にコマ216を取り付けることにより構成されている。また、レンズ鏡筒を構成するカム筒208には、光軸方向に対して傾斜するように形成された貫通溝からなるカム溝220を形成しておく。そして、コマ部材210のコマ216がカム溝220内に隙間なく嵌め込まれている。このような構成によれば、摺動筒206に対して、カム筒208が回転することにより、コマ216がカム溝220に沿って移動し、摺動筒206が光軸方向に移動する。
【0003】
このようなレンズ鏡筒を落下し、摺動筒206が地面に衝突すると、摺動筒206とカム筒208との間に光軸方向の力が発生し、この力がコマ216に衝撃として加わり破損してしまう。このため、カム溝220及びコマ部材210の個数を増やし、コマに作用する衝撃を分散させることが考えられる。しかしながら、カム溝220及びコマ部材210を増やしてしまうと、部材の設計、特にカム溝の配置が困難になるとともに、組み立てに非常に手間がかかるという問題がある。
【0004】
そこで、図8に示すように、コマ軸314の軸部314Gに摺動筒206側の大径部314Bと、カム筒208側の小径部314Cとを形成しておき、小径部314Cの周りにコマ316を取り付けた嵌合構成400が提案されている。この嵌合構成400では、コマ316がカム溝220に隙間なく嵌まり込むとともに、コマ軸314とカム溝220の側面との間に隙間が設けられている。摺動筒206とカム筒208との間に光軸方向の力が作用した場合には、コマ316がわずかに変形すると、コマ軸314の大径部314Bがカム溝220の壁面に当接する。これにより、コマ316に過大な衝撃が作用するのを防止し、コマ316の破損を防止できる。図8に示す構成と同様にコマの破損を防止する構成として、特許文献1には、コマ部材が溝部の側面に当接する当接部と、当接部の寸法よりも小さい中間部とを備えた構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2008-191328号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、図8に示すような構成では、カム溝220が貫通溝であるため、ズーミング操作時などに鏡筒内に落下してしまうおそれがある。これに対して、図9に示すように、カム筒308のカム溝320に底面308Aを設けて、コマ316が離脱しないようにする嵌合構成500 も考えられる。しかしながら、このような構成ではカム筒308の厚さが増加し、レンズ鏡筒が大型化して重量増加の原因となってしまう。
【0007】
本発明は、上記の問題に鑑みなされたものであり、レンズ鏡筒を大型化することなく、コマの脱落を防止し、かつ、衝撃時にコマの破損を防止できる、コマ部材と溝の嵌合構造及びレンズ鏡筒を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のコマ部材と溝の嵌合構造は、レンズ鏡筒のレンズ駆動機構における第1の部材に設けられたコマ部材と、第1の部材に対して径方向一方側に位置し、第1の部材に対して相対移動可能な第2の部材に設けられた第1の溝との嵌合構造であって、第1の溝は、幅狭部と、幅狭部よりも第1の部材側に形成され、幅狭部よりも幅が広い幅広部と、を有し、コマ部材は、第2の部材に向かって突出する軸部を有するコマ軸と、軸部の周囲に取り付けられたコマと、を有し、コマが、コマと幅広部の壁面との間に隙間がない状態で、幅広部内に配置され、コマ軸が幅狭部内に、幅狭部の壁面と間隔をあけて配置されている、ことを特徴とする。
【0009】
上記構成の本発明によれば、常時はコマが幅広部の壁面に当接し、これによりコマが溝に沿って案内される。また、衝撃が加わった時には、コマが弾性変形してコマ軸が幅狭部の壁面に当接し、コマ軸を介して第1の部材から第2の部材に力が伝達される。これにより、コマに過大な力が作用することがなく、コマの破損を防止できる。さらに、コマが幅狭部の両縁により保持されるため、コマの脱落を防止できる。
【0010】
本発明のレンズ鏡筒は、レンズを駆動するためのレンズ駆動機構が、上記のコマ部材と溝の嵌合構造を含む。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、レンズ鏡筒を大型化することなく、コマの脱落を防止し、かつ、衝撃時にコマの破損を防止できる、コマ部材と溝の嵌合構造及びレンズ鏡筒を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の第1実施形態による広角時のレンズ鏡筒を示す斜視図である。
図2】本発明の第1実施形態による望遠時のレンズ鏡筒を示す斜視図である。
図3図1に示すレンズ鏡筒の摺動筒及びカム筒を示す斜視図である。
図4図1に示すレンズ鏡筒の摺動筒及びカム筒を示す分解斜視図である。
図5図3におけるA-A断面を示す断面図である。
図6】本発明の第2実施形態によるコマ部材と溝の嵌合構造を示す断面図である。
図7】従来技術によるカム溝とコマ部材との嵌合構造を示す、カム溝に直交した断面図である。
図8】従来技術による衝撃時にコマ軸がカム溝と当接するように構成した嵌合構造を示す、カム溝に直交した断面図(その1)である。
図9】従来技術による衝撃時にコマ軸がカム溝と当接するように構成した嵌合構造を示す、カム溝に直交した断面図(その2)である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<第1実施形態>
以下、本発明の第1実施形態によるコマ部材と溝の嵌合構造及びレンズ鏡筒について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下の説明において、鏡筒の光軸方向を光軸方向といい、鏡筒の光軸に垂直な径方向を鏡筒径方向という。
【0014】
まず、レンズ鏡筒の全体構成について説明する。
図1及び図2は、本発明の第1実施形態によるレンズ鏡筒を示す斜視図であり、図1は広角時、図2は望遠時を示す。また、図3及び図4は、図1に示すレンズ鏡筒の摺動筒及びカム筒を示し、図3は斜視図、図4は分解斜視図である。図1図4に示すように、レンズ鏡筒1は、鏡筒径方向内方に向かって同軸に入れ子状に配置された、外筒2と、直進筒4と、摺動筒6(第1の部材)と、カム筒8(第2の部材)とを備える。また、レンズ鏡筒1内には複数のレンズ群が設けられている。
【0015】
外筒2は筒状の部材であり、結像側端部にマウント2Cが設けられている。外筒2の外面の先端部にはズームリング2Bが回転可能に設けられ、ズームリング2Bの結像側にはフォーカスリング2Aが設けられている。外筒2の後端部には後玉(最後方のレンズ群のレンズ)が保持されている。
【0016】
直進筒4は、広角状態において外筒2の内側に設けられており、外筒2に対して周方向の回転が規制されているととともに、光軸方向に移動可能に保持されている。
【0017】
摺動筒6は、広角状態において直進筒4の内側に設けられており、直進筒4に対して周方向の回転が規制されているととともに、直進筒4及びカム筒8に対して光軸方向に移動可能に保持されている。摺動筒6の先端部には前玉(最前方のレンズ群)6Aが保持されている。摺動筒6の後方側端部には鏡筒径方向内方に向かって突出するコマ部材10が設けられている。
【0018】
カム筒8は、広角状態において摺動筒6の内側に設けられており、直進筒4及び摺動筒6に対して周方向に回転可能であるとともに、直進筒4とともに光軸方向に移動可能に保持されている。すなわち、カム筒8は、摺動筒6に対して光軸方向に相対移動可能である。カム筒8には、光軸方向に対して傾斜するような3本のカム溝20(第1の溝)が設けられている。
【0019】
図2に示すように、ズームリング2Bが回転されると、直進筒4及びカム筒8が光軸方向に被写体側へ移動する。また、ズームリング2Bが回転されると、その回転はカム筒8に伝達され、カム筒8が直進筒4とともに移動しながら直進筒4に対して回転する。摺動筒6は直進筒4に対して周方向の回転が規制されているため、カム筒8が回転することにより、コマ部材10がカム溝20に沿って案内され、摺動筒6が光軸方向に移動する。
【0020】
なお、上記の説明では、レンズ群に関して、後玉及び前玉についてのみ説明し、筒体に関して、外筒2、直進筒4、摺動筒6及びカム筒8についてのみ説明したが、当然、それ以外の他のレンズ群や他の筒体がレンズ鏡筒内に配置されており、ズームリング2Bの回転に連動して他のレンズ群が光軸方向に移動可能となっている。
【0021】
次に、本実施形態のコマ部材と溝の嵌合構造について説明する。
図5は、図3におけるA-A断面を示す断面図である。図5に示すように、摺動筒6の結像側端部の内面には鏡筒径方向内方に向かって突出する複数の突出部6Aが形成されており、カム筒8は、突出部6Aの内面がカム筒8の外面に当接するように、摺動筒6に対して鏡筒径方向内方に配置されている。本実施形態の嵌合構造100は、摺動筒6に固定されたコマ部材10が、カム筒8に形成されたカム溝20に嵌合されて構成されている。
【0022】
摺動筒6の結像側端部には周方向に等間隔で3つの貫通孔30が形成されている。また、摺動筒6の内面の貫通孔30が形成された部分には切り欠き部6Bが形成されており、貫通孔30は、この切り欠き部6B内に開口している。貫通孔30は円形の断面形状であり、鏡筒径方向外方(図5の上方)の円柱状の大径孔部30Aと、大径孔部30Aの鏡筒径方向内側の円柱状の小径孔部30Bとを有する。大径孔部30Aの直径は、小径孔部30Bの直径よりも大きくなっている。
【0023】
コマ部材10は、コマビス12と、コマ軸14と、コマ16と、を有する。
コマビス12は、金属又は樹脂からなる回転体形状の部材であり、円形平板状の頭部12Aと、頭部12Aに連続する基部12Bと、基部12Bに連続する先端部12Cとを有する。基部12Bは円柱状であり、基部12Bの直径は頭部12Aよりも小さく、貫通孔30の小径孔部30Bの直径と略等しい。先端部12Cは円柱状であり、先端部12Cの直径は基部12Bの直径よりも小さい。
【0024】
コマ軸14は、例えば金属などのコマ16よりも剛性の高い(弾性の高い)材料からなる回転体形状の部材である。コマ軸14は、円環状のフランジ部14Aと、軸部14Gとを備え、軸部14Gはフランジ部14Aに連続する大径部14B及び大径部14Bに連続する小径部14Cを有する。大径部14Bは略円筒状であり、大径部14Bの外径はフランジ部14Aの外径よりも小さい。また、小径部14Cは略円筒状であり、小径部14Cの外径は大径部14Bの外径よりも小さく、かつ、カム溝20の幅狭部20Bの幅よりもわずかに小さい。コマ軸14の大径部14B及び小径部14Cの長さは、取付状態において先端がカム筒8の内面よりも鏡筒径方向内方に突出しないような長さとなっており、本実施形態では、コマ軸14の小径部14Cの先端は、取付状態においてカム筒8の内面で終端している。
【0025】
また、コマ軸14には軸方向に貫通する断面円形の貫通孔14Dが形成されている。貫通孔14Dは、フランジ部14A側の大径孔部14Eと、大径孔部14Eに連続し、小径部14C側の小径孔部14Fと、を含む。大径孔部14Eは、円柱状でありフランジ部14Aから大径部14Bの中間部まで延びている。小径孔部14Fは、円柱状であり大径部14Bの中間部から小径部14Cの端面まで延びている。小径孔部14Fの直径は、大径孔部14Eの直径よりも小さい。
【0026】
コマ16は、例えば、樹脂などの弾性材料から形成された回転体形状の部材であり、円筒状のコマ本体16Aを有する。また、コマ16には軸方向(図5の上下方向)に貫通する貫通孔16Dを有する。また、コマ16は、貫通孔16Dの鏡筒径方向内方(図5の下方向)の縁から、コマ本体16Aの径方向(図5の横方向)内方に向かって延びる内縁部16Bと、コマ本体16Aの鏡筒径方向外方(図5の上方向)の外面からコマ本体16Aの径方向(図5の横方向)外方に向かって延びる外縁部16Cと、を備える。貫通孔16Dは、外縁部16C側の大径孔部16Eと、大径孔部16Eに連続する小径孔部16Fとを有する。大径孔部16Eは円柱状であり、大径孔部16Eの内径はコマ軸14の大径部14Bの外径と略等しくなっている。小径孔部16Fは円柱状であり、小径孔部16Fの内径はコマ軸14の小径部14Cの外径と略等しくなっている。
【0027】
カム溝20は、カム筒8の光軸方向に対して斜めに延びており、鏡筒径方向外方の幅広部20Aと、鏡筒径方向内方の幅狭部20Bとを有する。幅広部20Aは一定の幅で延びており、幅広部20Aの幅はコマ16のコマ本体16Aの直径と略等しくなっている。幅狭部20Bは一定の幅で延びており、幅狭部20Bの幅は、コマ軸14の小径部14Cの外径よりもわずかに大きい。
【0028】
コマビス12は、摺動筒6の貫通孔30内に鏡筒径方向外方から挿入されており、頭部12Aが貫通孔30の大径孔部30Aの底部に当接するとともに、基部12Bが貫通孔30の小径孔部30B内に位置している。また、コマ軸14は、フランジ部14Aが切り欠き部6Bの底面(鏡筒径方向内方を向く面)に当接した状態で、貫通孔30に当たる位置に配置されている。そして、コマビス12の基部12Bがコマ軸14の大径孔部14E内に収容されるとともに、コマビス12の先端部12Cが小径孔部14F内に位置しており、これによりコマビス12にコマ軸14が固定されている。このように、コマビス12にコマ軸14が固定されることにより、コマビス12の頭部12Aとコマ軸14のフランジ部14Aとが摺動筒6を挟み込み、コマビス12及びコマ軸14が摺動筒6に対して固定されている。また、コマ16は、コマ16の貫通孔16D内にコマ軸14の大径部14B及び小径部14Cが貫通した状態に配置されている。コマ16の貫通孔16Dの大径孔部16Eの内面がコマ軸14の大径部14Bの外面に当接するとともに、コマ16の貫通孔16Dの小径孔部16Fの内面がコマ軸14の小径部14Cの外面に当接することにより、コマ16がコマ軸14に取り付けられている。
【0029】
コマ部材10は先端部がカム筒8のカム溝20内に位置している。コマ部材10のコマ本体16Aがカム溝20の幅広部20A内に位置しており、コマ軸14の小径部14Cの先端が幅狭部20B内に位置している。コマ本体16Aは、コマ本体16Aの外面とカム溝20の幅広部20Aの壁面との間に隙間がない状態で、カム溝20の幅広部20Aに嵌め込まれている。また、コマ軸14の小径部14Cの先端部は、幅狭部20B内に位置しており、コマ軸14の小径部14Cと幅狭部20Bとの間には隙間が形成されている。
【0030】
このような構成によれば、常時はコマ16がカム溝20の幅広部20Aの壁面に当接し、これによりコマ16がカム溝20に沿って案内される。そして、レンズ鏡筒1の摺動筒6に対して落下などにより衝撃が加わると、摺動筒6とカム筒8との間に大きな力が生じる。これに対して、本実施形態の嵌合構造100によれば、摺動筒6とカム筒8との間に大きな力が生じると、まず、カム溝20の幅広部20Aの壁面と、軸部14Gの大径部14B及び小径部14Cの外面との間に挟まれたコマ16が弾性変形する。そして、コマ16が弾性変形すると、コマ軸14の小径部14Cの先端部がカム溝20の幅狭部20Bの壁面と当接する。このように、コマ軸14の小径部14Cの先端部がカム溝20の幅狭部20Bの壁面と当接すると、コマ軸14からカム筒8に衝撃が伝達されるため、コマ16に大きな力が作用するのを防止し、コマ16の破損を防止できる。
【0031】
本実施形態によれば、以下の効果が奏される。
本実施形態によれば、常時はコマ16がカム溝20の幅広部20Aの壁面に当接し、これによりコマ16がカム溝20に沿って案内される。また、衝撃が加わった時には、コマ16が弾性変形してコマ軸14が幅狭部20Bの壁面に当接し、コマ軸14を介して摺動筒6からカム筒8に力が伝達されるため、コマ16にそれ以上、大きな力が作用することがなく、コマ16の破損を防止できる。さらに、コマ16が幅狭部20Bの両縁により保持されるため、コマ16の脱落を防止できる。
【0032】
また、本実施形態によれば、カム溝20が幅狭部20Bを貫通しているが、コマ16が幅狭部20Bの両縁により保持されているため、コマ16の脱落を防止することができる。
【0033】
また、本実施形態によれば、摺動筒6がカム筒8に対して鏡筒径方向外方に配置され、摺動筒6には貫通孔30が形成されており、コマ部材10は摺動筒6の鏡筒径方向外方側から貫通孔に挿入されたコマビス12をさらに有し、コマ軸14は摺動筒6の鏡筒径方向内側に配置され、コマビス12により固定されている。このような構成によれば、コマ軸14を摺動筒6の鏡筒径方向内方に容易に取り付けることができる。
【0034】
<第2実施形態>
第1実施形態では、コマ部材10がカム筒8のカム溝20のみに嵌合する場合について説明したが、本発明はこれに限らず、コマ部材がカム筒のカム溝と、固定筒などの他の筒体に形成された溝の両方に嵌合する場合にも本発明を適用可能である。以下、本発明の第2実施形態について説明する。以下の説明において、第1実施形態と同様又は対応する構成については同じ符号を付して詳細な説明を省略する。
【0035】
図6は、本発明の第2実施形態によるコマ部材と溝の嵌合構造を示す断面図である。図6に示すように、嵌合構造200では、摺動筒6(第1の部材)に設けられたコマ部材210が固定筒7(第3の部材)のガイド溝40(第2の溝)と、カム筒8(第2の部材)のカム溝20(第2の部材)に嵌まり込んでいる。
【0036】
本実施形態のレンズ鏡筒は、摺動筒6の鏡筒径方向内側に固定筒7が配置され、固定筒7の鏡筒径方向内側にカム溝20が配置されている。固定筒7には、周方向又は光軸方向に延びるようなガイド溝40が形成されている。
【0037】
本実施形態では、コマ116のコマ本体116Aは回転体形状であり、大径部116G及び小径部116Hを有する。大径部116Gの直径は小径部116Hの直径よりも大きい。また、コマ116には貫通孔116Dが形成されている。貫通孔116Dは、鏡筒径方向内側の小径孔部116Fと、小径孔部116Fの鏡筒径方向外方に連続する大径孔部116Eとを含む。コマ軸14の軸部14Gがコマ116の貫通孔116Dを挿通し、軸部14Gの大径部14Bが貫通孔116Dの大径孔部116Eと当接し、軸部14Gの小径部14Cが貫通孔116Dの小径孔部116Fと当接することにより、コマ116はコマ軸14に取り付けられている。
【0038】
本実施形態では、コマ116の先端部が固定筒7のガイド溝40を挿通し、カム筒8のカム溝20内に位置している。コマ116の大径部116Gが固定筒7のガイド溝40内に位置しており、大径部116Gは、大径部116Gの外面とガイド溝40の内壁面の間に隙間のない状態で、ガイド溝40に嵌め込まれている。また、コマ116の小径部116Hがカム筒8のカム溝20の幅広部20A内に位置しており、小径部116Hは、小径部116Hの外面とカム溝20の幅広部20Aとの内壁面との間に隙間がない状態で、幅広部20Aに嵌め込まれている。また、コマ軸14の小径部14Cの先端部は、幅狭部20B内に位置しており、コマ軸14の小径部14Cと幅狭部20Bとの間には隙間が形成されている。
【0039】
このような構成によれば、常時はコマ116の大径部116Gが固定筒7のガイド溝40の壁面に当接し、これによりコマ16がガイド溝40に沿って案内されるとともに、コマ116の小径部116Hがカム筒8のカム溝20の壁面に当接し、これによりコマ16がカム溝20に沿って案内される。そして、レンズ鏡筒の摺動筒6に対して落下などにより衝撃が加わると、摺動筒6とカム筒8との間に大きな力が生じる。これに対して、本実施形態の嵌合構造200によれば、摺動筒6とカム筒8との間に大きな力が生じると、まず、カム溝20の幅広部20Aの壁面と軸部14Gの小径部14Cの間、及び、固定筒7のガイド溝40と軸部14Gの小径部14C及び大径部14Bの外面との間に挟まれたコマ16が弾性変形する。そして、コマ16が弾性変形すると、コマ軸14の小径部14Cの先端部がカム溝20の幅狭部20Bの壁面と当接する。このように、コマ軸14の小径部14Cの先端部がカム溝20の幅狭部20Bの壁面と当接すると、コマ軸14からカム筒8に衝撃が伝達されるため、コマ16に大きな力が作用するのを防止し、コマ16の破損を防止できる。
【0040】
本実施形態によっても第1実施形態と同様の効果が奏される。
【0041】
なお、上記各実施形態では、摺動筒6にコマ部材10が設けられる場合について説明したが、これに限らず、レンズ枠等にコマ部材が設けられる場合であっても本発明を適用することができる。
また、上記各実施形態では、鏡筒径方向外側に位置する摺動筒6にコマ部材10、210が設けられ、鏡筒径方向内側に位置するカム筒8にカム溝20が設けられた場合を例として説明したが、これに限らず、鏡筒径方向内側に位置する部材にコマ部材を設け、鏡筒径方向外側に位置する部材にカム溝を設ける場合にも本発明を適用することができる。すなわち、本発明における「径方向一方側」とは、本実施形態のように鏡筒径方向内側に限らず、鏡筒径方向外側であってもよい。
また、コマ部材が嵌合する溝は、カム溝に限らず、周方向に延びる溝であっても、本発明を適用できる。
【符号の説明】
【0042】
1 レンズ鏡筒
2 外筒
2A フォーカスリング
2B ズームリング
2C マウント
4 直進筒
6 摺動筒
6A 突出部
6B 切り欠き部
7 固定筒
8 カム筒
10 コマ部材
12 コマビス
12A 頭部
12B 基部
12C 先端部
14 コマ軸
14A フランジ部
14B 大径部
14C 小径部
14D 貫通孔
14E 大径孔部
14F 小径孔部
14G 軸部
16 コマ部材
16A コマ本体
16B 内縁部
16C 外縁部
16D 貫通孔
16E 大径孔部
16F 小径孔部
20 カム溝
20A 幅広部
20B 幅狭部
30 貫通孔
30A 大径孔部
30B 小径孔部
40 ガイド溝
100 嵌合構造
116 コマ部材
116A コマ本体
116D 貫通孔
116E 大径孔部
116F 小径孔部
116G 大径部
116H 小径部
図1
図2
図3
図4
図5
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図7
図8
図9