(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-05
(45)【発行日】2023-12-13
(54)【発明の名称】光学用粘着シート
(51)【国際特許分類】
C09J 7/38 20180101AFI20231206BHJP
C09J 153/02 20060101ALI20231206BHJP
C09J 11/08 20060101ALI20231206BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20231206BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20231206BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20231206BHJP
【FI】
C09J7/38
C09J153/02
C09J11/08
C09J11/06
B32B27/30 B
B32B27/00 M
(21)【出願番号】P 2019551717
(86)(22)【出願日】2019-06-25
(86)【国際出願番号】 JP2019025149
(87)【国際公開番号】W WO2020004383
(87)【国際公開日】2020-01-02
【審査請求日】2022-03-15
(31)【優先権主張番号】P 2018120630
(32)【優先日】2018-06-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安井 伸宜
(72)【発明者】
【氏名】炭井 佑一
(72)【発明者】
【氏名】野田 真理子
(72)【発明者】
【氏名】市川 大翔
(72)【発明者】
【氏名】筧 鷹麿
(72)【発明者】
【氏名】豊嶋 克典
【審査官】澤村 茂実
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-227395(JP,A)
【文献】国際公開第2016/006352(WO,A1)
【文献】特表2012-512267(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
B32B 27/00,27/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スチレン含有量が15質量%以下であるスチレン系ブロック共重合体
、芳香族環を有する粘着付与剤を含有する粘着層(A)を含み、
前記粘着層(A)における軟化剤の含有量が、前記粘着層(A)100質量%に対して0~25質量%であり、
前記粘着層(A)における前記粘着付与剤の含有量が、前記粘着層(A)100質量%に対して7質量%以上であり、
前記粘着層(A)における前記粘着付与剤と前記軟化剤の合計含有量が、前記粘着層(A)100質量%に対して50質量%以下であり、
前記粘着層(A)が球状の相とその他の相に相分離した構造を有
し、
且つ
前記粘着層(A)における前記球状の相の平均径が120nm以下である、
光学用粘着シート。
【請求項2】
前記粘着層(A)が
前記軟化剤及び
前記粘着付与剤を含有する、請求項1に記載の光学用粘着シート。
【請求項3】
前記粘着層(A)における前記軟化剤の含有量が、前記粘着層(A)100質量%に対して5~25質量%であり、且つ
前記粘着層(A)における前記粘着付与剤の含有量が、前記粘着層(A)100質量%に対して10~50質量%である、
請求項2に記載の光学用粘着シート。
【請求項4】
前記スチレン系ブロック共重合体中のスチレン含有量が
12質量%以下である、請求項1~3のいずれかに記載の光学用粘着シート。
【請求項5】
前記粘着層(A)における前記球状の相の平均径が100nm以下である、請求項1~4のいずれかに記載の光学用粘着シート。
【請求項6】
前記スチレン系ブロック共重合体が、スチレン系トリブロック共重合体又は一般式(A-B)nCで表されるラジアル型スチレン系ブロック共重合体、及びスチレン系ジブロック共重合体を含有し、
前記粘着層(A)における前記スチレン系トリブロック共重合体又はラジアル型スチレン系ブロック共重合体の含有量が、前記粘着層(A)100質量%に対して15~45質量%であり、且つ
前記粘着層(A)における前記スチレン系ジブロック共重合体の含有量が、前記粘着層(A)100質量%に対して15~55質量%である、
請求項1~5のいずれかに記載の光学用粘着シート。
【請求項7】
前記粘着層(A)における軟化剤の含有量が、前記粘着層(A)100質量%に対して10~25質量%である、請求項1~6のいずれかに記載の光学用粘着シート。
【請求項8】
前記粘着層(A)におけるスチレン系ブロック共重合体の含有量が、前記粘着層(A)100質量%に対して45~85質量%である、請求項1~7のいずれかに記載の光学用粘着シート。
【請求項9】
前記粘着層(A)上に配置されている基材を含む、請求項1~8のいずれかに記載の光学用粘着シート。
【請求項10】
請求項1~9のいずれかに記載の光学用粘着シート、及び前記光学用粘着シート上に配置されている被着体を含む、積層体。
【請求項11】
請求項1~9のいずれかに記載の光学用粘着シートと、前記光学用粘着シートの第1の表面に積層された第1の被着体と、前記光学用粘着シートの前記第1の表面とは反対の第2の表面に積層された第2の被着体とを含む、請求項10に記載の積層体。
【請求項12】
前記第1の被着体が、反射防止フィルム、飛散防止フィルム、カバーパネル、金属若しくは金属酸化物薄膜付フィルム、金属又は金属酸化物薄膜付ガラス、超複屈折フィルム、又はタッチパネルモジュールであり、前記第2の被着体が、カバーパネル、金属又は金属酸化物薄膜付フィルム、金属若しくは金属酸化物薄膜付ガラス、超複屈折フィルム、タッチパネルモジュール、偏光板、又はディスプレイパネルモジュールである、請求項11に記載の積層体。
【請求項13】
透明プラスチックフィルム基材の一方の面に、金属酸化物により形成された透明導電性薄膜を有し、他方の面に機能層を有する透明導電性フィルムの一方の面に、請求項1~9のいずれかに記載の光学用粘着シートを有することを特徴とする粘着剤層付き透明導電性フィルム。
【請求項14】
前記透明導電性フィルムの透明導電性薄膜上に、前記光学用粘着シートを有することを特徴とする請求項13に記載の粘着剤層付き透明導電性フィルム。
【請求項15】
前記透明導電性フィルムの機能層上に、前記光学用粘着シートを有することを特徴とする請求項13に記載の粘着剤層付き透明導電性フィルム。
【請求項16】
請求項13~15のいずれかに記載の粘着剤層付き透明導電性フィルムを少なくとも1つ有することを特徴とするタッチパネル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学用粘着シート等に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器においては、各種部材を固定するために粘着シートが用いられる。例えば、タッチパネルモジュール、ディスプレイモジュール、カメラモジュール等の発光/受光デバイス(光学デバイス)等においては、透明な粘着シートを用いて部材が貼合せられることがある。
【0003】
近年、タッチパネルの構造が多岐に変化しており、マルチタッチパネル、フレキシブルタッチパネル、薄膜タッチパネル等が検討されている。これらタッチパネルに用いられる光学粘着シートには、誤作動防止のために、低誘電率であることが要求される。低誘電率を実現するためには、従来一般的に用いられるアクリル系共重合体ポリマーを主成分とするよりも、ゴム系ブロックポリマーを主成分とする光学粘着シートが用いられることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開第2016-186044号公報
【文献】特開第2017-057382号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者は研究を進める中で、ゴム系ブロックポリマーを主成分とした場合、アクリル系共重合体ポリマーを主成分とした場合と比較して、加湿時の白化が発生し易いことに着目した。そして、これを改善する過程で、白化の発生を抑制できても、光学特性が低下する場合があるという問題を見出した。
【0006】
そこで、本発明は、ゴム系ブロックポリマーを含みながらも、耐白化性及び光学特性に優れた光学用粘着シートを提供することを課題とする(課題1)。
【0007】
また、近年は有機ELディスプレイの採用が増えつつあるが、有機ELディスプレイは水分による悪影響を受けやすいことから、粘着シートの粘着剤として、従来広く用いられてきたアクリル系粘着剤に替えて、スチレン系ブロック共重合体等のゴム系粘着剤が用いられることがある。例えば、特許文献2には、粘着剤としてゴム系ポリマーを含む、透湿度が一定以下の粘着シートが開示されている。
【0008】
特許文献2に開示される技術のように、水分による悪影響を抑えるためには、粘着シートを、水分を通さないように設計することが考えられる。ところが、電子機器(特に有機ELデバイス)においては、外部からの水分浸入を防ぐために、粘着シートを含む全体がガラス等の水分透過性が低い材料で封止・密閉される場合が多い。このような場合、周囲の部材から残存水分が放出されると、この水分は密閉空間中で他に行き場所がないため、たとえ粘着シート自体が水分に強くても、他の部材や水分に弱い部材に対して悪影響が及んでしまう。具体的には、水分が層間の界面領域に凝集して、白化を引き起こし、表示品質を劣化させてしまうことがある。
【0009】
そこで、本発明は、耐白化性に優れた、スチレン系ブロック共重合体を含む光学用粘着シートを提供することを課題とする(課題2)。
【課題を解決するための手段】
【0010】
特許文献1には、スチレン系エラストマーを含み、球状の島成分を含む相分離構造を有する粘着剤組成物が開示されている。しかし、特許文献1からは、耐白化性及び光学特性を両立する技術については不明である。
【0011】
本発明者は課題1に鑑みて研究を進める中で、軟化剤の含有量と、相分離構造に着目するに至った。そして、さらに鋭意研究を進め、軟化剤の含有量を一定以下に設定し、さらに相分離構造を球状に制御することにより、耐白化性及び光学特性を両立できることを見出し、本発明(発明1)を完成するに至った。
【0012】
また、本発明者は、課題2に鑑みて研究を進める中で、含水率(特定環境下での水分保持性能)及び透湿度に着目するに至った。そして、さらに鋭意研究を進め、これらを比較的高い値に制御することにより、優れた耐白化性を達成できることを見出し、本発明(発明2)を完成するに至った。
【0013】
即ち、本発明は、下記の態様を包含する。
【0014】
項1. スチレン系ブロック共重合体を含有する粘着層(A)を含み、
前記粘着層(A)における軟化剤の含有量が、前記粘着層(A)100質量%に対して0~25質量%であり、且つ
前記粘着層(A)が球状の相とその他の相に相分離した構造を有する、
光学用粘着シート。
【0015】
項2. 前記粘着層(A)が軟化剤及び粘着付与剤を含有する、項1に記載の光学用粘着シート。
【0016】
項3. 前記粘着付与剤が芳香族環を有する粘着付与剤であり、
前記粘着層(A)における前記軟化剤の含有量が、前記粘着層(A)100質量%に対して5~25質量%であり、且つ
前記粘着層(A)における前記粘着付与剤の含有量が、前記粘着層(A)100質量%に対して10~50質量%である、
項2に記載の光学用粘着シート。
【0017】
項4. 前記スチレン系ブロック共重合体中のスチレン含有量が15質量%以下である、項1~3のいずれかに記載の光学用粘着シート。
【0018】
項5. 前記粘着層(A)における前記球状の相の平均径が100nm以下である、項1~4のいずれかに記載の光学用粘着シート。
【0019】
項6. 前記スチレン系ブロック共重合体が、スチレン系トリブロック共重合体又は一般式(A-B)nCで表されるラジアル型スチレン系ブロック共重合体、及びスチレン系ジブロック共重合体を含有し、
前記粘着層(A)における前記スチレン系トリブロック共重合体又はラジアル型スチレン系ブロック共重合体の含有量が、前記粘着層(A)100質量%に対して15~45質量%であり、且つ
前記粘着層(A)における前記スチレン系ジブロック共重合体の含有量が、前記粘着層(A)100質量%に対して15~55質量%である、
項1~5のいずれかに記載の光学用粘着シート。
【0020】
項7. 前記粘着層(A)における軟化剤の含有量が、前記粘着層(A)100質量%に対して10~25質量%である、項1~6のいずれかに記載の光学用粘着シート。
【0021】
項8. 前記粘着層(A)におけるスチレン系ブロック共重合体の含有量が、前記粘着層(A)100質量%に対して45~85質量%である、項1~7のいずれかに記載の光学用粘着シート。
【0022】
項9. 前記粘着層(A)上に配置されている基材を含む、項1~8のいずれかに記載の光学用粘着シート。
【0023】
項A. スチレン系ブロック共重合体を含有する粘着層(A)を含み、
前記粘着層(A)の65℃90%RHで3日間静置後の含水率が0.10~0.25質量%であり、且つ
前記粘着層(A)の65℃90%RHにおける透湿度が350~1000g/m2・dayである、
光学用粘着シート。
【0024】
項10. 項1~9及び項Aのいずれかに記載の光学用粘着シート、及び前記光学用粘着シート上に配置されている被着体を含む、積層体。
【0025】
項11. 項1~9及び項Aのいずれかに記載の光学用粘着シートと、前記光学用粘着シートの第1の表面に積層された第1の被着体と、前記光学用粘着シートの前記第1の表面とは反対の第2の表面に積層された第2の被着体とを含む、項10に記載の積層体。
【0026】
項12. 前記第1の被着体が、反射防止フィルム、飛散防止フィルム、カバーパネル、金属若しくは金属酸化物薄膜付フィルム、金属又は金属酸化物薄膜付ガラス、超複屈折フィルム、又はタッチパネルモジュールであり、前記第2の被着体が、カバーパネル、金属又は金属酸化物薄膜付フィルム、金属若しくは金属酸化物薄膜付ガラス、超複屈折フィルム、タッチパネルモジュール、偏光板、又はディスプレイパネルモジュールである、項11に記載の積層体。
【0027】
項13. 透明プラスチックフィルム基材の一方の面に、金属酸化物により形成された透明導電性薄膜を有し、他方の面に機能層を有する透明導電性フィルムの一方の面に、項1~9及び項Aのいずれかに記載の光学用粘着シートを有することを特徴とする粘着剤層付き透明導電性フィルム。
【0028】
項14. 前記透明導電性フィルムの透明導電性薄膜上に、前記光学用粘着シートを有することを特徴とする項13に記載の粘着剤層付き透明導電性フィルム。
【0029】
項15. 前記透明導電性フィルムの機能層上に、前記光学用粘着シートを有することを特徴とする項13に記載の粘着剤層付き透明導電性フィルム。
【0030】
項16. 項13~15のいずれかに記載の粘着剤層付き透明導電性フィルムを少なくとも1つ有することを特徴とするタッチパネル。
【発明の効果】
【0031】
本発明(発明1)によれば、スチレン系ブロック共重合体を含みながらも、耐白化性及び光学特性に優れた光学用粘着シートを提供することができる。
【0032】
また、本発明(発明2)によれば、耐白化性に優れた、スチレン系ブロック共重合体を含む光学用粘着シートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】ミクロ相分離構造が球状である場合の一例を示す。
【
図2】ミクロ相分離構造がシリンダー状構造である場合の一例を示す。
【
図3】(a)本発明の光学用粘着シートを適用した、粘着剤層付き透明導電性フィルムの一例を示す概略断面図である。(b)本発明の光学用粘着シートを適用した、粘着剤層付き透明導電性フィルムの一例を示す概略断面図である。
【
図4】本発明の光学用粘着シートが、透明導電性フィルムとの関係において適用される静電容量方式のタッチパネルの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本明細書中において、「含有」及び「含む」なる表現については、「含有」、「含む」、「実質的にからなる」及び「のみからなる」という概念を含む。
【0035】
1.光学用粘着シート
本発明は、その一態様として、スチレン系ブロック共重合体を含有する粘着層(A)を含み、前記粘着層(A)における軟化剤の含有量が、前記粘着層(A)100質量%に対して0~25質量%であり、且つ前記粘着層(A)が球状の相とその他の相に相分離した構造を有する、光学用粘着シート(本明細書において、「本発明の光学用粘着シート」と示すこともある。)に関する。
【0036】
また、本発明は、その一態様として、スチレン系ブロック共重合体を含有する粘着層(A)を含み、前記粘着層(A)の65℃90%RHで3日間静置後の含水率が0.10~0.25質量%であり、且つ前記粘着層(A)の65℃90%RHにおける透湿度が350~1000g/m2・dayである、光学用粘着シート(本明細書において、「本発明の光学用粘着シート」と示すこともある。)に関する。以下に、これについて説明する。
【0037】
以下に、これらについて説明する。
【0038】
粘着層(A)は、粘着剤として、スチレン系ブロック共重合体を含有する。
【0039】
スチレン系ブロック共重合体は、粘着シート用粘着剤として使用され得るものであれば特に制限されない。スチレン系ブロック共重合体としては、例えばスチレン-(エチレン-プロピレン)-スチレン型ブロック共重合体(SEPS)、スチレン-(エチレン-ブチレン)-スチレン型ブロック共重合体(SEBS)、スチレン-(ブタジエン-ブチレン)-スチレン型ブロック共重合体(SBBS)、スチレン-イソブチレン-スチレン型ブロック共重合体(SIBS)等のスチレン系トリブロック共重合体が挙げられ、好ましくはSEPS、SEBS等が挙げられ、より好ましくはSEPSが挙げられる。スチレン系ブロック共重合体の別の例としては、スチレン-(エチレン-プロピレン)型ブロック共重合体(SEP)、スチレン-(エチレンーブチレン)型ブロック共重合体(SEB)、スチレン-(ブタジエンーブチレン)型ブロック共重合体(SBB)、スチレンーイソブチレン型ブロック共重合体(SIB)等のスチレン系ジブロック共重合体が挙げられ、好ましくはSEP、SEB等が挙げられ、より好ましくはSEPが挙げられる。
【0040】
また、上記粘着層(A)において、粘着剤として含有するスチレン系ブロック共重合体は、一般式(A-B)nCで表される構造を有するスチレン系ブロック共重合体でもよい。
【0041】
上記一般式中、Aは芳香族アルケニル重合体ブロック(ハードセグメント)を表し、Bは共役ジエン重合体ブロック(ソフトセグメント)を表し、A-Bはスチレン系ブロック共重合体を表し、Cはカップリング剤に由来する成分を表し、n個の(A-B)は、上記Aで表される芳香族アルケニル-共役ジエン共重合体が、Cに直接結合している。nは2以上の整数を表す。nが3以上である場合、上記共重合体は、いわゆる星形重合体である。nは加工性の観点から、3または4が好ましく、4がより好ましい。nの上限は特に限定されないが、上記ラジアル型スチレン系ブロック共重合体のゲル化を抑制する観点から、通常8以下である。
【0042】
上記Cで表されるカップリング剤残基が由来するカップリング剤として、例えば、メチルジクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、メチルトリクロロシラン、ブチルトリクロロシラン、テトラクロロシラン、ハロゲン化合物(例えば、ジブロモエタン、テトラクロロ錫、ブチルトリクロロ錫、テトラクロロゲルマニウム、ビス(トリクロロシリル)エタン)、エポキシ化合物(例えば、エポキシ化大豆油)、カルボニル化合物(例えば、アジピン酸ジエチル、アジピン酸ジメチル、ジメチルテレフタル酸、ジエチルテレフタル酸)、ポリビニル化合物(例えば、ジビニルベンゼン)、ポリイソシアネート等が挙げられる。なかでも、工業的に入手しやすく、反応性も高いことから、メチルジクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、メチルトリクロロシラン、テトラクロロシランが好ましい。
【0043】
スチレン系ブロック共重合体の重量平均分子量は、粘着シート用粘着剤として採用され得るものであれば特に制限されない。該重量平均分子量は、例えば1万~200万、好ましくは3万~50万である。
【0044】
スチレン系ブロック共重合体のスチレン含有量は、特に制限されず、例えば20質量%以下である。該スチレン含有量は、好ましくは17質量%以下、より好ましくは15質量%以下、さらに好ましくは12質量%以下、よりさらに好ましくは10質量%以下、特に好ましくは8質量%以下である。該スチレン含有量の下限は、特に制限されず、例えば1質量%、3質量%、又は5質量%である。該スチレン含有量をより低くすることにより、ミクロ相分離構造を球状に制御し、且つその粒径をより小さくすることができ、また耐白化性、光学特性等をより高めることができる。
【0045】
スチレン系ブロック共重合体は、1種単独であってもよいし、2種以上の組み合わせであってもよい。
【0046】
本発明においては、スチレン系ブロック共重合体として、スチレン系トリブロック共重合体又はラジアル型スチレン系ブロック共重合体、及びスチレン系ジブロック共重合体の両方を組み合わせて含有することが好ましい。スチレン系トリブロック共重合体又はラジアル型スチレン系ブロック共重合体とスチレン系ジブロック共重合体とを組み合わせる場合は、相溶性の観点から、両者は同様の構造を有すること(例えば、スチレン系トリブロック共重合体がSEPSの場合は、スチレン系ジブロック共重合体はSEPであること)が好ましい。
【0047】
なお、スチレン系ブロック共重合体が、スチレン系トリブロック共重合体又はラジアル型スチレン系ブロック共重合体、及びスチレン系ジブロック共重合体の混合物である場合、スチレン系ブロック共重合体のスチレン含有量は、以下のようにして求めることができる。
(スチレン系ブロック共重合体のスチレン含有量)=(スチレン系トリブロック共重合体又はラジアル型スチレン系ブロック共重合体のスチレン含有量)×(スチレン系ブロック共重合体全体におけるスチレン系トリブロック共重合体又はラジアル型スチレン系ブロック共重合体の含有比率)+スチレン系ジブロック共重合体のスチレン含有量×(スチレン系ブロック共重合体全体におけるスチレン系ジブロック共重合体の含有比率)
【0048】
粘着層(A)におけるスチレン系ブロック共重合体の含有量は、特に制限されないが、粘着層(A)100質量%に対して、例えば40~90質量%、好ましくは45~85質量%、より好ましくは45~75質量%、さらに好ましくは50~75質量%、よりさらに好ましくは50~65質量%である。
【0049】
粘着層(A)におけるスチレン系トリブロック共重合体又はラジアル型スチレン系ブロック共重合体の含有量は、特に制限されないが、粘着層(A)100質量%に対して、例えば0~45質量%、好ましくは15~45質量%である。スチレン系トリブロック共重合体又はラジアル型スチレン系ブロック共重合体の含有量は、スチレン系トリブロック共重合体又はラジアル型スチレン系ブロック共重合体とスチレン系ジブロック共重合体との合計100質量%に対して、例えば0~100質量%、好ましくは15~85質量%、より好ましくは25~75質量%、さらに好ましくは30~70質量%である。これらの該含有量の中でも、耐白化性等の観点から、30~60質量%が好ましく、35~50質量%がより好ましく、38~45質量%がさらに好ましく、40~43質量%がよりさらに好ましい。
【0050】
粘着層(A)におけるスチレン系ジブロック共重合体の含有量は、特に制限されないが、粘着層(A)100質量%に対して、例えば0~55質量%、好ましくは15~55質量%である。スチレン系ジブロック共重合体の含有量は、スチレン系トリブロック共重合体又はラジアル型スチレン系ブロック共重合体とスチレン系ジブロック共重合体との合計100質量%に対して、例えば0~100質量%、好ましくは15~85質量%、より好ましくは25~75質量%、さらに好ましくは30~70質量%である。これらの該含有量の中でも、耐白化性等の観点から、40~70質量%が好ましく、50~65質量%がより好ましく、55~62質量%がさらに好ましく、57~60質量%がよりさらに好ましい。
【0051】
スチレン系トリブロック共重合体又はラジアル型スチレン系ブロック共重合体とスチレン系ジブロック共重合体との合計含有量は、スチレン系ブロック共重合体100質量%に対して、例えば70質量%以上、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上、よりさらに好ましくは99質量%以上である。
【0052】
粘着層(A)は、粘着剤として主にスチレン系ブロック共重合体を含む限り特に制限されず、粘着剤としてスチレン系ブロック共重合体のみを含有するものであってもよいし、他の粘着剤を含有するものであってもよい。他の粘着剤としては、例えばアクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ポリオレフィン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ビニルアルキルエーテル系粘着剤、ポリアミド系粘着剤、シリコーン系粘着剤、フッ素系粘着剤等が挙げられる。粘着層(A)が他の粘着剤を含有する場合、他の粘着剤の含有量は、粘着層(A)100質量%に対して、例えば0~10質量%、好ましくは0~5質量%、より好ましくは0~1質量%である。
【0053】
粘着層(A)は、粘着付与剤を含有することが好ましい。
【0054】
粘着付与剤は、粘着シート、特に粘着剤としてスチレン系ブロック共重合体を含む粘着シートに使用され得るものであれば特に制限されない。粘着付与剤としては、例えば、石油樹脂、スチレン系樹脂、ロジン骨格含有樹脂、テルペン骨格含有樹脂等が挙げられ、好ましくは石油樹脂、スチレン系樹脂、テルペン骨格含有樹脂等が挙げられる。粘着付与剤は、耐白化性等の観点から、芳香族環を有するものであることが好ましい。
【0055】
芳香族環を有する粘着付与剤としては、例えば、芳香族石油樹脂、スチレン系重合体、α-メチルスチレン系重合体、スチレン-(α-メチルスチレン)系共重合体、スチレン-脂肪族炭化水素系共重合体、スチレン-(α-メチルスチレン)-脂肪族炭化水素系共重合体、スチレン-芳香族炭化水素系共重合体、芳香族水添テルペン、芳香族変性テルペン等が挙げられる。これらの中でも、耐白化性等の観点から、好ましくはスチレン-芳香族炭化水素系共重合体、スチレン-脂肪族炭化水素系共重合体等が挙げられ、より好ましくはスチレン-芳香族炭化水素系共重合体が挙げられる。
【0056】
粘着付与剤の軟化点は、特に制限されず、粘着付与剤として採用され得る範囲である。軟化点は、例えば85℃以上、好ましくは85~200℃、より好ましくは100~170℃、さらに好ましくは120~160℃である。本明細書において、軟化点は、JISK2207に規定する試験方法によって測定される値である。
【0057】
粘着付与剤は、1種単独であってもよいし、2種以上の組み合わせであってもよい。
【0058】
粘着層(A)における粘着付与剤の含有量は、特に制限されないが、粘着層(A)100質量%に対して、例えば50質量%以下である。該含有量は、ミクロ相分離構造を球状に制御し、且つその粒径をより小さくすることができるという観点、耐白化性、タック等の観点から、好ましくは10~50質量%、より好ましくは15~40質量%、さらに好ましくは20~35質量%、よりさらに好ましくは20~30質量%である。
【0059】
粘着層(A)における粘着付与剤と後述の軟化剤の合計含有量は、特に制限されないが、粘着層(A)100質量%に対して、例えば10~60質量%、好ましくは15~55質量%、より好ましくは25~55質量%、さらに好ましくは25~50質量%、よりさらに好ましくは35~50質量%である。
【0060】
粘着層(A)は、軟化剤を含有していてもよい。ただ、発明1において、その含有量は、後述の通り、耐白化性等の観点から一定量以下である。
【0061】
軟化剤は、粘着シート、特に粘着剤としてスチレン系ブロック共重合体を含む粘着シートに使用され得るものであれば特に制限されない。軟化剤としては、典型的には、常温(23℃)で液体であり、スチレン系ブロック共重合体のソフトセグメントに相溶する物質、例えば炭化水素基のみで構成されたオリゴマーを使用することができる。軟化剤の具体例としては、ポリイソブチレン、ポリイソプレン、ポリブタジエン、ポリブテン等、さらにはこれらの構成モノマーや他のモノマーが任意に組み合わされてなるポリマー等が挙げられる。これらの中でも、好ましくはポリイソブチレンが挙げられる。
【0062】
軟化剤の重量平均分子量は、特に制限されないが、例えば3000~50000、好ましくは5000~35000である。
【0063】
軟化剤は、1種単独であってもよいし、2種以上の組み合わせであってもよい。
【0064】
粘着層(A)における軟化剤の含有量は、粘着層(A)100質量%に対して、耐白化性等の観点から0~25質量%である。該含有量の好ましい下限は、耐白化性、タック等の観点から、5質量%、さらに好ましい下限は10質量%である。該含有量の好ましい上限は、耐白化性、タック等の観点から、20質量%、さらに好ましい上限は15質量%である。
【0065】
粘着層(A)は、白化を著しく悪化させない範囲において、上記以外の他の成分を含有していてもよい。他の成分としては、例えば、シランカップリング剤、重合開始剤、架橋剤、酸化防止剤、架橋促進剤、帯電防止剤、光安定(吸収)剤、分散安定剤、防腐剤、粘度調整剤、金属腐食防止剤、可塑剤、溶剤等が挙げられる。
【0066】
他の成分は、1種単独であってもよいし、2種以上の組み合わせであってもよい。
【0067】
粘着層(A)における他の成分の含有量は、粘着層(A)100質量%に対して、例えば0~10質量%、好ましくは0~5質量%、より好ましくは0~1質量%である。
【0068】
発明1において、粘着層(A)は、光学特性等の観点から、球状の相とその他の相に相分離した構造を有する。「球状の相とその他の相に相分離した構造を有する」とは、例えば粘着層(A)の断面を透過型電子顕微鏡で1万倍~50万倍の倍率で観察した明視野観察像において、濃淡の程度が周囲(他の相)よりも濃い球状の領域(球状相)が存在することを意味する。該観察像においては、濃淡の程度が周囲よりも濃い他の形状(例えばシリンダー状)の領域が存在することもあるが、本発明においては、球状相がより多いことが望ましい。この観点から、断面の観察像(縦:1μm×横:1μm)における球状相の個数は、例えば250~3000個、好ましくは350~2500個、より好ましくは500~1500個である。
【0069】
球状相の平均径(平均直径)は、光学特性等の観点から、例えば120nm以下、好ましくは100nm以下、より好ましくは80nm以下、さらに好ましくは50nm以下、よりさらに好ましくは35nm以下である。該平均径の下限は、特に制限されず、例えば5nm、10nm、15nm、20nmである。該平均径は、試料の断面を透過型電子顕微鏡で観察(5万倍)し、1μm×1μmの観察領域において無作為に球状構造を10個選択し、それぞれ長径と短径を測定し、それらの平均値を算出することで測定できる。
【0070】
粘着層(A)は、65℃90%RHで3日間静置後の含水率が0.10~0.25質量%であることが好ましい。発明2においては、粘着層(A)は当該構成を有する。65℃90%RHで3日間静置前の粘着層(A)の質量をX(単位:g)とし、65℃90%RHで3日間静置後の粘着層(A)中の水分量をY(単位:g)とした場合、含水率は次式[含水率=(Y/X)×100 (%)]で算出することができる。水分量は、カールフィッシャー法で測定される。また、Xは、常温(例えば15~30℃、好ましくは20~25℃)常湿(例えば35~65%RH、好ましくは45~55%RH)下で一定期間(例えば1日以上、好ましくは1~5日間、より好ましくは2~4日間)放置してから測定した値であることが望ましい。
【0071】
含水率を上記範囲とすることにより、耐白化性をより向上させることができ、特に白化の発生を抑制することができる。
【0072】
含水率は、耐白化性の観点から、好ましくは0.12~0.25質量%、より好ましくは0.15~0.25質量%である。
【0073】
粘着層(A)は、65℃90%RHにおける透湿度が350~1000g/m2・dayであることが好ましい。発明2においては、粘着層(A)は当該構成を有する。透湿度は、JIS Z 0208(防湿包装材料の透湿度試験方法(カップ法))に準じて、温度65℃、湿度90%RHの条件で測定する。
【0074】
透湿度を上記範囲とすることにより、耐白化性をより向上させることができ、特に白化発生後の白化の消失を促進することができる。
【0075】
透湿度は、好ましくは365g/m2・day以上である。
【0076】
粘着層(A)の厚みは、透明性などを損なわない範囲であれば特に制限されず、用途に応じて適宜設定することができる。該厚みは、例えば1~100μm、好ましくは5~50μm、より好ましくは10~40μmである。
【0077】
粘着層(A)の層構成は特に制限されない。粘着層(A)は、1層からなる単層であってもよいし、同一又は異なる組成を有する複数の層であってもよい。
【0078】
本発明の光学用粘着シートは、粘着層として粘着層(A)のみを含むものであってもよいし、粘着層(A)以外の他の粘着層を含んでいてもよい。後者の場合、他の粘着層の厚みは、粘着層全体の透明性などを損なわない範囲であれば特に制限されず、例えば粘着層全体の厚みが、例えば1~100μm、好ましくは5~50μm、より好ましくは10~40μmとなるような厚みである。また、他の粘着層の層構成は、特に制限されず、1層からなる単層であってもよいし、同一又は異なる組成を有する複数の層であってもよい。他の粘着層を含む場合、粘着層(A)は、粘着層中に、他の粘着層を介して複数配置されていてもよい。また、他の粘着層を含む場合、粘着層(A)は、粘着層の最外層に配置されていることが好ましい。
【0079】
本発明の光学用粘着シートの層構成は、粘着層を含む限りにおいて特に制限されない。具体的には、本発明の光学用粘着シートとしては、例えば、(1)粘着層のみから形成された構成の基材レス両面粘着シート、(2)粘着層上に配置されている基材を含む基材付き粘着シート(例えば(2-1)基材の少なくとも一方の面に粘着層が形成され且つ基材の両面側に粘着面が形成された構成の基材付き両面粘着シート、(2-2)基材の一方の面に粘着層が形成された構成の基材付き粘着シート)などが挙げられる。なお、粘着シートが基材付き両面粘着シートである場合、基材の両面に形成された粘着層が粘着層(A)であってもよく、基材の一方の面に形成された粘着層が粘着層(A)であり且つ基材の他方の面に形成された粘着層が粘着層(A)以外の粘着層であってもよい。
【0080】
基材としては、紙などの紙系の基材、布、不織布、ネットなどの繊維系の基材;金属箔、金属板などの金属系の基材;プラスチックのフィルムやシートなどのプラスチック系の基材;ゴムシートなどのゴム系の基材;などの適宜な薄層体を用いることができる。基材として、プラスチックのフィルムやシートなどのプラスチック系基材を好適に用いることができる。基材には剥離ライナーが含まれ、剥離ライナーは、粘着シート又はテープ用の公知の剥離ライナーを用いることができる。
【0081】
本発明の光学用粘着シートは、ロール状に巻回された形態で形成されていてもよく、シートが積層された形態で形成されていてもよい。すなわち、本発明の光学用粘着シートは、テープ状、シート状などの形態を有することができる。従って、粘着シートには、粘着シート又は粘着テープが含まれる。
【0082】
本発明の光学用粘着シートの製造方法は、特に制限されない。本発明の光学用粘着シートは、例えば、上記した粘着層(A)の粘着剤等の各成分、及び必要に応じて添加される希釈剤の混合物(粘着剤組成物)を支持体表面(基材表面、又は他の粘着層の表面)に塗布する工程を含む方法によって、製造することができる。
【0083】
希釈剤としては、特に制限されないが、例えばトルエン、ベンゼン、キシレン、エチルベンゼン、メシチレン、クロロベンゼン、ニトロベンゼン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ジメチルエーテル等が挙げられる。これらの中でも、トルエンが好ましい。希釈剤は、1種単独であってもよいし、2種以上の組み合わせであってもよい。
【0084】
希釈剤を添加する場合、その配合割合は特に制限されない。該配合割合は、塗工性等の観点から、粘着剤組成物の固形分濃度が、例えば10~50質量%、好ましくは25~40質量%となるような配合割合である。
【0085】
粘着剤組成物を塗布する方法は、特に制限されない。例えば、慣用のコーター(グラビヤロールコーター、リバースロールコーター、キスロールコーター、ディップロールコーター、バーコーター、ナイフコーター、スプレーコーターなど)を用いて塗布することができる。
【0086】
塗布後は、乾燥させることが好ましい。乾燥温度は、例えば30~200℃、好ましくは60~160℃、より好ましくは90~130℃である。乾燥時間は、乾燥温度によっても異なり得るが、例えば30秒間~15分間、好ましくは2分間~10分間、より好ましくは3分間~7分間である。
【0087】
2.積層体
粘着層(A)を含む本発明の光学用粘着シートは、光学的に透明な部材を備えた電気製品、電子製品、若しくは光学機器、例えば携帯電話、スマートフォン、パソコン、電子ペーパー、タブレット型パーソナルコンピューターおよびゲーム機などの画像表示装置(例えば液晶ディスプレイ、OLEDディスプレイ、エレクトロウェッティング方式ディスプレイ)を製造する際に、表面を保護するためのカバーパネルとタッチパネルモジュールとを接着したり、カバーパネルとディスプレイパネルモジュールとを接着したり、タッチパネルモジュールとディスプレイパネルモジュールとを接着したりするのに好適に用いることができる。本発明の光学用粘着シートはこれら以外の光学フィルムなどの光学用途にも適用可能である。
【0088】
このため、本発明は、その一態様として、本発明の光学用粘着シート、及び本発明の光学用粘着シート上に配置されている被着体を含む、積層体(本明細書において、「本発明の積層体」と示すこともある。)、特に光学積層体に関する。
【0089】
本発明の好ましい一態様において、被着体としては、好ましくはパッシベーション膜、ハードコート層、ポリビニルアルコール膜等が挙げられる。これらの被着体は、吸水し易い材料であるところ、本願発明において問題としている白化の問題が生じ易い。本発明の光学用粘着シートを使用することにより、このような被着体を採用する場合であっても、効果的に白化を抑制することが可能である。
【0090】
本発明の好ましい一態様においては、本発明の積層体は、本発明の光学用粘着シートと、本発明の光学用粘着シートの第1の表面(粘着層表面)に積層された第1の被着体と、本発明の光学用粘着シートの第1の表面とは反対の第2の表面(粘着層表面)に積層された第2の被着体とを備える。第1の被着体は、反射防止フィルム、飛散防止フィルム、カバーパネル、金属若しくは金属酸化物薄膜付フィルム、金属又は金属酸化物薄膜付ガラス、超複屈折フィルム、又はタッチパネルモジュールであることが好ましい。第2の被着体が、カバーパネル、金属又は金属酸化物薄膜付フィルム、金属若しくは金属酸化物薄膜付ガラス、超複屈折フィルム、タッチパネルモジュール、偏光板、又はディスプレイパネルモジュールであることが好ましい。
【0091】
カバーパネルが、カバーガラス、ポリカーボネート板、または、ポリメチルメタクリレート板であり、第1の被着体が、カバーガラス、ポリカーボネート板、ポリメチルメタクリレート板、金属もしくは金属酸化物薄膜付フィルム、または、タッチパネルモジュールであることが好ましい。
【0092】
本発明の積層体の具体例としては、本発明の光学用粘着シートを介してカバーパネルとタッチパネルモジュールとが接着されたカバーパネル-タッチパネルモジュール積層体や、本発明の光学用粘着シートを介してカバーパネルとディスプレイパネルモジュールとが接着されたカバーパネル-ディスプレイパネルモジュール積層体や、本発明の光学用粘着シートを介してタッチパネルモジュールとディスプレイパネルモジュールとが接着されたタッチパネルモジュールディスプレイパネルモジュール積層体などが挙げられる。上記カバーパネルとしては、ガラス板が好適に用いられる。
【0093】
また、本発明の光学用粘着シートを介して金属または金属酸化物により形成された透明電極層付フィルムの2つが積層された透明電極層付フィルム積層体も、本発明の積層体として好ましい。
【0094】
光学積層体と画像表示部とを備える画像表示装置に、本発明の積層体は好適に用いられる。
【0095】
本発明の積層体の好ましい一態様として、本発明の光学用粘着シートを有する粘着剤層付き透明導電性フィルムが挙げられる。透明導電性フィルムは、その性質上、画像を表示させる機器において使用されることが通常であり、この場合、本願発明で問題としている白化は、画像表示品質の低下という問題を引き起こし得る。また、透明導電性フィルムは、ハードコート層等の吸水し易い材料を使用することがあり、この場合は白化の問題が生じ易い。このため、耐白化性に優れた本発明の光学用粘着シートは、透明導電性フィルムにおけるこれらの問題の解消に寄与することが可能であり、該フィルムに好適に利用することができる。
【0096】
粘着剤層付き透明導電性フィルムの態様について、図面を参照しながら以下に説明する。
【0097】
図3(a)、(b)は、本発明の光学用粘着シート1が、透明導電性フィルム2上に設けられている実施形態を示す断面図である。
図3(a)に示す透明導電性フィルム2は、透明プラスチックフィルム基材4の一方の面に、透明導電性薄膜3を有し、他方の面に機能層5を有する。当該透明プラスチックフィルム基材4の機能層5を有する側(すなわち、透明導電性薄膜3に対して反対側)に光学用粘着シート1を形成することができる。また、光学用粘着シート1の透明導電性フィルム2が貼り合わされていない側の粘着面は、実用に供されるまで離型フィルム(不図示)で保護してもよい。また、
図3(b)に示す透明導電性フィルム2は、
図3(a)の透明導電性薄膜3と機能層5の貼り合せ位置を逆にしたものである。
【0098】
前記透明プラスチックフィルム基材としては、特に制限されないが、透明性を有する各種のプラスチックフィルムが用いられる。当該プラスチックフィルムは1層のフィルムにより形成されている。例えば、その材料として、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、アセテート系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂等が挙げられる。これらの中で特に好ましいのは、ポリエステル系樹脂、ポリイミド系樹脂、及びポリエーテルスルホン系樹脂である。前記フィルム基材の厚みは、15~200μmであることが好ましい。
【0099】
前記フィルム基材には、表面に予めスパッタリング、コロナ放電、火炎、紫外線照射、電子線照射、化成、酸化などのエッチング処理や下塗り処理を施して、この上に設けられる透明導電性薄膜、又はアンダーコート層の前記フィルム基材に対する密着性を向上させるようにしてもよい。また、透明導電性薄膜、又はアンダーコート層を設ける前に、必要に応じて溶剤洗浄や超音波洗浄などにより除塵、清浄化してもよい。
【0100】
前記透明導電性薄膜の構成材料としては特に限定されず、インジウム、スズ、亜鉛、ガリウム、アンチモン、チタン、珪素、ジルコニウム、マグネシウム、アルミニウム、金、銀、銅、パラジウム、タングステン、カドミウムからなる群より選択される少なくとも1種の金属の金属酸化物が用いられる。当該金属酸化物には、必要に応じて、さらに上記群に示された金属原子を含んでいてもよい。例えば、特に限定はされないが、ITO(酸化インジウムスズ)、ZnO、SnO、CTO(酸化カドミウムスズ)などが好ましく用いられ、ITOが特に好ましく用いられる。ITOとしては、酸化インジウム80~99重量%及び酸化スズ1~20重量%を含有することが好ましい。透明導電性薄膜の厚みは、特に限定されないが、10~200nm程度であり、薄膜の観点からは、15~40nmであることがより好ましく、20~30nmであることがさらに好ましい。
【0101】
なお、
図3には示していないが、透明プラスチックフィルム基材には、アンダーコート層を介して透明導電性薄膜を設けることができる。なお、アンダーコート層は複数層設けることができる。透明プラスチックフィルム基材と粘着剤層の間にオリゴマー移行防止層を設けることができる。
【0102】
アンダーコート層は、無機物、有機物、又は無機物と有機物との混合物により形成することができる。例えば、無機物として、NaF(1.3)、Na3AlF6(1.35)、LiF(1.36)、MgF2(1.38)、CaF2(1.4)、BaF2(1.3)、SiO2(1.46)、LaF3(1.55)、CeF3(1.63)、Al2O3(1.63)などの無機物〔上記各材料の()内の数値は光の屈折率である〕が挙げられる。これらのなかでも、SiO2、MgF2、A12O3などが好ましく用いられる。特に、SiO2が好適である。上記の他、酸化インジウムに対して、酸化セリウムを10~40重量部程度、酸化スズを0~20重量部程度含む複合酸化物を用いることができる。
【0103】
また有機物としては、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、シロキサン系ポリマー、有機シラン縮合物などが挙げられる。これらの有機物は、少なくとも1種が用いられる。特に、有機物としては、メラミン樹脂とアルキド樹脂と有機シラン縮合物の混合物からなる熱硬化型樹脂を使用するのが望ましい。
【0104】
アンダーコート層の厚さは、特に制限されるものではないが、光学設計、前記フィルム基材からのオリゴマー発生防止効果の点から、通常、300nm以下程度であり、1~300nm程度であることが好ましく、5~300nm程度であることがより好ましい。
【0105】
前記機能層としては、例えば、視認性の向上を目的とした防眩処理(AG)層や反射防止(AR)層を設けることができる。防眩処理層の構成材料としては特に限定されず、例えば、電離放射線硬化型樹脂、熱硬化型樹脂、熱可塑性樹脂等を用いることができる。防眩処理層の厚みは0.1~30μmが好ましい。反射防止層としては、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化ケイ素、フッ化マグネシウム等が用いられる。反射防止層は複数層を設けることができる。
【0106】
また機能層として、ハードコート(HC)層を設けることができる。ハードコート層の形成材料としては、例えば、メラミン系樹脂、ウレタン系樹脂、アルキド系樹脂、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂などの硬化型樹脂からなる硬化被膜が好ましく用いられる。ハードコート層の厚さとしては、0.1~30μmが好ましい。厚さを0.1μm以上とすることが、硬度を付与するうえで好ましい。また前記ハードコート層上に、前記防眩処理層や反射防止層を設けることができる。
【0107】
本発明の光学用粘着シートは、上記透明導電性フィルムの機能層又は透明導電性層に適用されて、粘着剤層付きの透明導電性フィルムとして用いられる。
【0108】
前記粘着剤層は、透明導電性フィルムの機能層又は透明導電性層に直接塗布し、加熱乾燥等により溶媒を除去することにより、粘着剤層を透明導電性フィルム上に形成することができる。また、剥離処理したセパレーターに形成した粘着剤層を、適宜に透明導電性フィルムの機能層又は透明導電性層に転写して、粘着剤層付きの透明導電性フィルムを形成することができる。
【0109】
なお、上記の粘着剤層付きの透明導電性フィルムの作製にあたって用いた、剥離処理したシートは、そのまま粘着剤層付き透明導電性フィルムのセパレーターとして用いることができ、工程面における簡略化ができる。
【0110】
また、前記粘着剤層付きの透明導電性フィルムにおいて、粘着剤層の形成にあたっては、透明導電性フィルムの表面に、アンカー層を形成したり、コロナ処理、プラズマ処理などの各種易接着処理を施した後に粘着剤層を形成することができる。また、粘着剤層の表面には易接着処理をおこなってもよい。
【0111】
上記粘着剤層付き透明導電性フィルムは、タッチパネルや液晶ディスプレイなどの種々の装置の形成などにおいて用いられる。特に、タッチパネル用電極板として好ましく用いることができる。タッチパネルは、種々の検出方式(例えば、抵抗膜方式、静電容量方式等)に好適に用いられる。
【0112】
静電容量方式のタッチパネルは、通常、所定のパターン形状を有する透明導電性薄膜を備えた透明導電性フィルムがディスプレイ表示部の全面に形成されている。
【0113】
本発明の粘着剤層付き透明導電性フィルムが用いられている静電容量方式のタッチパネルの一例を
図4に示す。
図4において、6は静電容量方式タッチパネルであり、7は装飾パネルであり、8は粘着剤層、又は粘着シートであり、9は透明導電性フィルムであり、10はハードコートフィルムである。装飾パネル7は、ガラス板や透明アクリル板(PMMA板)であることが好ましい。ハードコートフィルム10は、PETフィルムなどの透明プラスチックフィルムにハードコート処理が施されたものが好ましい。
【0114】
例えば、
図4においては、2枚の透明導電性フィルム9に挟まれた粘着剤層8が、
図3に示す本発明の光学用粘着シート1に該当する。
【0115】
上記静電容量方式タッチパネル6は、本発明の光学用粘着シート1が用いられているので、耐皮脂性、耐加湿白濁性が高く、厚さを薄くすることができ、動作の安定性に優れる。また、外観や視認性が良好である。
【0116】
また、上記構成以外のタッチパネルにおいても本発明の光学用粘着シートを用いることができる。具体的には、透明基体(例えば、ガラス等)/粘着剤層(又は粘着シート)/透明導電性フィルム/粘着剤層(又は粘着シート)/透明導電性フィルム/粘着剤層(又は粘着シート)/液晶表示装置(LCD);ITO等の透明導電性薄膜付の透明基体(例えば、ガラス等)/粘着剤層(又は粘着シート)/透明導電性フィルム/粘着剤層(又は粘着シート)/液晶表示装置(LCD);の構成において適用することができる。
【実施例】
【0117】
以下に、実施例に基づいて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0118】
(1)粘着シートの作製
(1-1)実施例1
スチレン系トリブロック共重合体としてスチレン-(エチレン-プロピレン)-スチレン型ブロック共重合体(SEPS、商品名:セプトン2063、スチレン含有量:13質量%、クラレ社製)25質量部、スチレン系ジブロック共重合体としてスチレンー(エチレンープロピレン)型ブロック共重合体(SEP、商品名:セプトン2063、スチレン含有量:13質量%、クラレ社製)35質量部、及び粘着付与剤としてスチレン-芳香族炭化水素系共重合体(商品名:FMR0150、軟化点:145℃、三井化学社製)40質量部を、トルエン中で撹拌して均一に溶解させて、粘着剤組成物(固形分濃度:34質量%)を得た。
【0119】
得られた粘着剤組成物を、セパレータ1(離型処理された厚さ75μmのポリエチレンテレフタレートフィルム)上に塗布し、110℃で5分間乾燥して、乾燥膜厚25μmの塗膜(粘着層(A))を形成した。塗膜のセパレータ1貼付面とは反対の面に、セパレータ2(厚さ50μmの離型処理されたポリエチレンテレフタレートフィルム)をさらに貼り合せ、光学用粘着シートを得た。
【0120】
(1-2)実施例2~14及び比較例1~2
表1及び表2に示す配合組成(組成の単位は質量%である)に従って、実施例1と同様にして光学用粘着シートを得た。実施例1で使用した成分以外の成分は以下のとおりである。
【0121】
なお、実施例9では、(a1)及び(b1)を使用し、実施例7、8、及び14では、(a2)及び(b2)を使用し、比較例2では、(a3)及び(b3)を使用し、その他の実施例及び比較例では実施例1と同じスチレン系トリブロック共重合体及びスチレン系ジブロック共重合体を使用した。
【0122】
(a)スチレン系トリブロック共重合体
(a1)スチレン-(エチレン-ブチレン)-スチレン型ブロック共重合体(SEBS、商品名:タフテックH1062、スチレン含有量:18質量%、旭化成社製)
(a2)スチレン-(エチレン-プロピレン)-スチレン型ブロック共重合体(SEPS、商品名:セプトン2004、スチレン含有量:18質量%、クラレ社製)
(a3)スチレン-(エチレン-プロピレン)-スチレン型ブロック共重合体(SEPS、商品名:セプトン2002、スチレン含有量:30質量%、クラレ社製)。
【0123】
(b)スチレン系ジブロック共重合体
(b1)スチレン-(エチレン-ブチレン)型ブロック共重合体(SEB、商品名:タフテックH1062、スチレン含有量:18質量%、旭化成社製)
(b2)スチレン-(エチレン-プロピレン)型ブロック共重合体(SEP、商品名:セプトン2004、スチレン含有量:18質量%、クラレ社製)
(b3)スチレン-(エチレン-プロピレン)型ブロック共重合体(SEP、商品名:セプトン2002、スチレン含有量:30質量%、クラレ社製)。
【0124】
(c)軟化剤
(c1)ポリイソブチレン(商品名:日石ポリブテンHV-300、数平均分子量:1400、JXTGエネルギー社製)
(c2)ポリイソプレン(商品名:クラプレンLIR-290、重量平均分子量:31000、クラレ社製)
(c3)ポリブタジエン(商品名:クラプレンLBR-302、重量平均分子量:5500、クラレ社製)。
【0125】
(d)粘着付与剤
(d1)芳香族系粘着付与剤(スチレン-脂肪族炭化水素系共重合体)(商品名:FTR6125、軟化点:125℃、三井化学社製)
(d2)芳香族変性テルペン系粘着付与剤(商品名T0105、ヤスハラケミカル社製)。
【0126】
(1-3)実施例15~18
ラジアル型スチレン系ブロック共重合体は以下の方法で合成した。
【0127】
(a)(A-B)の構造を有する共重合体の合成
窒素置換された反応容器に、脱気及び脱水されたシクロヘキサン500重量部、共役ジエン化合物として1,3-ブタジエン8重量部及びテトラヒドロフラン10重量部を仕込み、重合開始温度の40℃にてn-ブチルリチウム0.10重量部を添加して、昇温重合を行った。1,3-ブタジエンの重合転化率がほぼ100%に達した後、芳香族アルケニル化合物としてスチレン15重量部を加えて、昇温重合を行った。スチレンの重合転化率がほぼ100%に達した後、反応液を15℃に冷却し、次いで、芳香族アルケニル化合物としてスチレン20重量部及び共役ジエン化合物として1,3-ブタジエン57重量部を加え、更に昇温重合を行った。重合転化率がほぼ100%に達した後、一部取り出したポリマーをGPC分析したところ、重量平均分子量は約10.1万であった。
【0128】
(b)カップリング
反応容器内に、カップリング剤としてメチルジクロロシラン0.07重量部を加えて、カップリング反応を行った。カップリング反応が完結した後、水素ガスを0.4MPa-Gaugeの圧力で供給しながら10分間放置した。一部取り出したポリマーをGPC分析したところ、重量平均分子量は約14.1万であり、カップリング率(共重合体全体のうちのカップリングした共重合体の含有量)は70%であった。また、一部取り出したポリマーの赤外吸収スペクトルを測定し、モレロ法により算出したところ、ビニル結合含有率は70モル%であった。
【0129】
(c)水素添加
反応容器内に、ジエチルアルミニウムクロライド0.02重量部及びビス(シクロペンタジエニル)チタニウムフルフリルオキシクロライド0.04重量部を加え、撹拌した。水素ガス供給圧0.7MPa-Gauge、反応温度80℃で水素添加反応を開始し、水素の吸収が終了した時点で、反応溶液を常温、常圧に戻し、反応容器から抜き出すことにより、(A-B)nの構造を有する共重合体(スチレン系共重合体(X))と(A-B)の構造を有する共重合体(スチレン系共重合体(Y))とからなるスチレン系共重合体を得た。(A-B)nの構造を有する共重合体の含有量は約70質量%であり、(A-B)の構造を有する共重合体の含有量は約30質量%であった。
【0130】
上記、スチレン系共重合体X、スチレン系共重合体Y、芳香族変性テルペン樹脂(商品名:YSレジンTO105、ヤスハラケミカル社製)、ポリイソブチレン(商品名:日石ポリブテンHV-300、重量数平均分子量:1400、JXTGエネルギー社製) を使用し、表2に示す配合組成(組成の単位は質量%である)に従って、実施例1と同様にして光学用粘着シートを得た
【0131】
(2)評価
(2-1)ミクロ相分離構造
光学用粘着シート(実施例1~18及び比較例1~2)をルテニウムで染色した後、クライオミクロトームを用いて塗膜とセパレータとの積層方向に対して垂直な面で切断し、塗膜の断面を透過型電子顕微鏡にて観察(2万倍)した。得られた観察像に基づいて、構造が球状であるか又はシリンダー状であるかについて、判定した。球状構造の一例を
図1に示し、シリンダー構造の一例を
図2に示す。また、球状構造である場合、球径(球状相の平均径)は、1μm×1μmの観察領域(5万倍)において無作為に球状構造を10個選択し、それぞれ長径と短径を測定し、それらの平均値を算出することで測定した。結果を表1及び表2に示す。
【0132】
(2-2)白化
光学用粘着シート(実施例1~18及び比較例1~2)をガラスとポリエチレンテレフタレートフィルムの間に積層したものを試験片とし、65℃環境下で水に浸水させ、240時間後のHazeを測定した。具体的には、光学用粘着シートをソーダガラス(0.7×56×86.6mm)上に貼り合せ、常温(23℃)にて分光色測計(コニカミノルタ製、CM-3700d)を用いて単層シート面からソーダガラス面へ透過させた光をSCI方式にて評価した際の、Hazeを測定した。試験片の端部と中央部のHazeの差異が0.5未満の場合を「◎」、試験片の端部と中央部のHazeの差異が0.5以上1未満の場合を「○」、試験片の端部と中央部のHazeの差異が1以上5未満の場合を「△」、試験片の端部と中央部のHazeの差異が5以上の場合を「×」と評価した。結果を表1及び表2に示す。
【0133】
(2-3)光学特性
光学用粘着シート(実施例1~18及び比較例1~2)のセパレータ2を剥離し、ソーダガラス(0.7×56×86.6mm)上にハンドローラーにて貼り合せ、その後セパレータ1を剥離し、常温(23℃)にて分光色測計(コニカミノルタ製、CM-3700d)を用いて単層シート面からソーダガラス面へ透過させた光をSCI方式にて評価した際の、Hazeを測定した。結果を表1及び表2に示す。
【0134】
(2-4)タック
光学用粘着シート(実施例1~18及び比較例1~2)のセパレータ2を剥離し、ソーダガラス(2.0×50×125mm)上にハンドローラーにて貼り合せ、その後セパレータ1を剥離し、セパレータ1を剥離した面を上側に静置した。その面の上部で直方体のSUS304(底面積100mm2)を、光学用粘着シートの粘着層(A)に瞬間的に接触した後、離れることを繰り返すように、100mm/minの速度で上下に10往復させ、各往復毎にSUS304に生じた最大荷重の平均値を測定した。結果を表1及び表2に示す。
【0135】
(2-5)含水率
光学用粘着シート(実施例1~18及び比較例1~2)を23℃50%RHで3日以上静置した後、1.3cm×4cmに裁断し、セパレータ2を剥離してその質量(α(単位:g))を測定した。セパレータ2を剥離した塗膜の面に、厚さ25μmのアルミニウム箔を貼り合せ、65℃90%RHで3日静置した。セパレータ1を剥離し、カールフィッシャー法による水分測定装置(平沼微量水分測定装置、AQ-2000)と水分気化装置(平沼水分気化装置、EV-2000)を用いて、120℃10分間加熱した際に発生した水分量(γ(単位:g))を測定した。また、剥離したセパレータ1を再度23℃50%RHで3日以上静置して質量(β(単位:g))を測定した。
【0136】
上記のようにして得られた各測定値から次式[含水率={γ/(α-β)}×100 (%)]により含水率を算出した。結果を表1及び表2に示す。
【0137】
(2-6)透湿度
JIS Z 0208(防湿包装材料の透湿度試験方法(カップ法))に準じて、温度65℃、湿度90%RHの条件で測定した。より具体的には、光学用粘着シート(実施例1~18及び比較例1~2)のセパレータ1及び2を剥離し、金属網に貼り合せた。塩化カルシウム約10gを入れた透湿カップ(内径60mm)の上に、金属網に貼り合わせた評価用単層シートを被せて周囲を封止した。その後、60℃90%RHに静置して評価を行った。結果を表1及び表2に示す。
【0138】
(2-7)白化の消失
上記「(2-2)白化」の評価が「△」又は「×」の場合(白化が生じた場合)について、23℃50%RHで24時間静置した後、白化の有無を観察した。静置後に白化が消失していた場合を「○」、静置後も白化がみられた場合を「×」と評価した。結果を表2に示す。
【0139】
【0140】
【符号の説明】
【0141】
1 光学用粘着シート
2 透明導電性フィルム
3 透明導電性薄膜
4 透明プラスチックフィルム基材
5 機能層
6 静電容量方式タッチパネル
7 装飾パネル
8 光学用粘着シート
9 透明導電性フィルム
10 ハードコートフィルム
11 ITO層
12 PET基材層
13 HC層
14 ガラス