(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-05
(45)【発行日】2023-12-13
(54)【発明の名称】うつ病を治療するための組成物および方法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/428 20060101AFI20231206BHJP
A61P 25/24 20060101ALI20231206BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20231206BHJP
A61K 31/4178 20060101ALI20231206BHJP
A61K 45/00 20060101ALN20231206BHJP
A61K 31/538 20060101ALN20231206BHJP
A61K 31/439 20060101ALN20231206BHJP
A61K 31/473 20060101ALN20231206BHJP
A61K 31/4184 20060101ALN20231206BHJP
A61K 31/46 20060101ALN20231206BHJP
【FI】
A61K31/428
A61P25/24
A61P43/00 121
A61P43/00 111
A61K31/4178
A61K45/00
A61K31/538
A61K31/439
A61K31/473
A61K31/4184
A61K31/46
(21)【出願番号】P 2019557617
(86)(22)【出願日】2018-04-23
(86)【国際出願番号】 US2018028885
(87)【国際公開番号】W WO2018200387
(87)【国際公開日】2018-11-01
【審査請求日】2021-03-08
(32)【優先日】2017-04-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】519348587
【氏名又は名称】チェイス セラピューティクス コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100149076
【氏名又は名称】梅田 慎介
(74)【代理人】
【識別番号】100119183
【氏名又は名称】松任谷 優子
(74)【代理人】
【識別番号】100173185
【氏名又は名称】森田 裕
(74)【代理人】
【識別番号】100162503
【氏名又は名称】今野 智介
(74)【代理人】
【識別番号】100144794
【氏名又は名称】大木 信人
(72)【発明者】
【氏名】チェイス,トーマス エヌ.
(72)【発明者】
【氏名】クラレンス-スミス,キャスリーン イー.
【審査官】六笠 紀子
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-536667(JP,A)
【文献】特表2013-545824(JP,A)
【文献】Depression and Anxiety,2000年,11,pp.58-65
【文献】月刊薬事,2007年,Vol.49, No.8 ,pp.1174-1178
【文献】道薬誌,2016年,Vol.33, No.10,pp.9-17
【文献】Progress in neuro-psychopharmacology & biological psychiatry,2010年,Vol. 34, No. 8,pp. 1446-1449
【文献】The Journal of clinical psychiatry,2013年,Vol. 74, No. 7,pp.e636-641
【文献】Neuropsychopharmacology,2012年,Vol. 38, Supp. SUPPL. 1,pp.S441-S442, Abstract Number: W211
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/33-33/44
A61K 45/00-45/08
A61K 38/00-38/58
A61K 48/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効1日用量のプラミペキソールまたはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物を含む医薬組成物であって、大うつ病性障害に罹患している患者の治療において、
オンダンセトロンまたはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物と組合せて使用される、医薬組成物。
【請求項2】
オンダンセトロンまたはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物を含む医薬組成物であって、大うつ病性障害に罹患している患者の治療において、有効1日用量のプラミペキソールまたはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物と組合せて使用される、医薬組成物。
【請求項3】
オンダンセトロンまたはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物を有効1日用量のプラミペキソールまたはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物と組合せて含む医薬組成物であって、大うつ病性障害に罹患している患者の治療において使用される、医薬組成物。
【請求項4】
前記組合せにおいて、前記
オンダンセトロンまたはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物が1μg~300mgの1日用量で投与される、請求項1~3のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記プラミペキソールまたはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物がプラミペキソール二塩酸塩一水和物である、請求項1~3のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記組合せにおいて、
前記
オンダンセトロンまたはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物が、2mg~32mgのオンダンセトロン塩基と同等な1日用量で投与されるオンダンセトロンまたはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物
で投与され、かつ
前記プラミペキソールまたはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物が、0.375mg~45mgのプラミペキソール二塩酸塩一水和物と同等な1日用量で投与される、
請求項1~3のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記組合せにおいて、前記プラミペキソールまたはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物が、1.5mg~45mgのプラミペキソール二塩酸塩一水和物と同等な1日用量で投与される、請求項
6に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記組合せにおいて、前記プラミペキソールまたはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物が、5mg~45mgのプラミペキソール二塩酸塩一水和物と同等な1日用量で投与される、請求項
6に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記組合せにおいて、前記プラミペキソールまたはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物が、6.5mg~45mgのプラミペキソール二塩酸塩一水和物と同等な1日用量で投与される、請求項
6に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記
オンダンセトロンまたはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物が、前記
オンダンセトロンまたはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物を0.1mg~300mgの単位形態当たりの量で、医薬担体またはビヒクルと混合した形で含む単位投与形態の医薬組成物に製剤化されており、かつ
前記プラミペキソールまたはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物が、前記プラミペキソールまたはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物を0.125mg~45mgのプラミペキソール二塩酸塩一水和物と同等な単位形態当たりの量で、医薬担体またはビヒクルと混合した形で含む単位投与形態の医薬組成物に製剤化されている、
請求項1または2に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記組成物中の前記
オンダンセトロンまたはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物が、2mg~32mgのオンダンセトロン塩基と同等な単位形態当たりの量のオンダンセトロンおよびその薬学的に許容される塩または溶媒和物
で存在し、かつ
前記組成物中の前記プラミペキソールまたはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物が、1.5mg~45mgの量で存在する、
請求項
10に記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記組成物中、前記プラミペキソールまたはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物が、5mg~45mgのプラミペキソール二塩酸塩一水和物と同等な単位形態当たりの量で存在する、請求項
11に記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記組成物中、前記プラミペキソールまたはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物が、6.5mg~45mgのプラミペキソール二塩酸塩一水和物と同等な単位形態当たりの量で存在する、請求項
11に記載の医薬組成物。
【請求項14】
前記組成物中、前記プラミペキソールまたはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物が、6.5mg~20mgのプラミペキソール二塩酸塩一水和物と同等な単位形態当たりの量で存在する、請求項
11に記載の医薬組成物。
【請求項15】
有効1日用量のプラミペキソールまたはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物と組合せて、大うつ病性障害を治療するための医薬品を調製するための
オンダンセトロンまたはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物の使用。
【請求項16】
前記組合せにおいて、前記医薬品が、単位形態当たりの有効量の前記
オンダンセトロンまたはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物を医薬担体またはビヒクルと混合した形で含む単位投与形態の医薬組成物であり、前記プラミペキソールまたはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物もまた、単位形態当たりの有効量の前記プラミペキソールまたはその薬学的に許容される塩を、医薬担体またはビヒクルと混合した形で含む単位投与形態の医薬組成物中にある、請求項
15に記載の使用。
【請求項17】
前記組合せが、単位
形態当たりの有効量の前記
オンダンセトロンまたはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物、および単位形態当たりの有効量の前記プラミペキソールまたはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物を、医薬担体またはビヒクルと混合した形で含む単位投与形態の医薬組成物からなる固定用量配合剤(fixed-dose combination)である、請求項
16に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願は、2017年4月24日に出願された米国仮特許出願第62/489,016号に基づく利益を主張し、当該仮特許出願の開示は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、うつ病の治療の分野に関する。
【0003】
本発明の目的
本発明は、大うつ病性障害を治療するための、5HT3-アンタゴニストおよび有効量のプラミペキソールを含む固定用量配合剤(fixed-dose combinations)を含む医薬の組合せに関する。
【0004】
定義
- 「CGI」:臨床全般印象。
- 「CNS」:中枢神経系。
- 「IR」:組成物からの活性成分の即放。
- 「ER」:組成物からの活性成分の徐放。
- 「GI」:胃腸。
- 「AE」:有害作用。
- 「DSM-5」:精神障害の診断と統計マニュアル(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders)、第5版。
- 「HAMD」:ハミルトンうつ病評価尺度。
- 「MADRS」:モンゴメリ/アスベルグうつ病評価尺度。
- 「MDD」:大うつ病性障害。
- 「MAOI」:モノアミンオキシダーゼ阻害剤。
- 「NIMH」:国立精神衛生研究所(National Institute of Mental Health)。
- 「PD」:パーキンソン病。
- 「持続性抑うつ障害」:気分変調症とも呼ばれる。
- 「PMDD」:月経前不快気分障害。
- 「5HT3-アンタゴニスト」:セロトニン受容体サブタイプ-3のアンタゴニストであり、本文献では5HT3受容体アンタゴニストまたは5HT3受容体阻害剤ともいう。
- 「5HT3-アンタゴニストの有効1日用量」:本明細書で使用する場合、前記5HT3-アンタゴニストの1日用量1μg~300mgを指す。
- 「5HT3-アンタゴニストの有効量/単位形態」または「5HT3-アンタゴニストの単位形態当たりの有効量」:単位形態当たりの前記5HT3-アンタゴニストの1μg~300mgの範囲の量。
- 「プラミペキソール」:活性成分としての(S)-6-プロピルアミノ-4,5,6,7-テトラヒドロ-1,3-ベンゾチアゾール-2-アミンであり、特に指定のない限り、その遊離塩基およびその薬学的に許容される塩ならびに溶媒和物を含む。
- 「プラミペキソールの有効1日用量」または「プラミペキソールの治療有効量」:少なくとも、PDの対症療法に認可されているプラミペキソール二塩酸塩一水和物の1日用量と同等なプラミペキソールの1日用量であり、この有効1日用量は、用量調整期間中に使用される低1日用量を含む。
- プラミペキソールに関する「有効量/単位形態」または「単位形態当たりの有効量」:少なくとも、PDの対症療法に認可されている単位形態当たりのプラミペキソール二塩酸塩一水和物の量と同等な単位形態当たりのプラミペキソールの量であり、この量は、用量調整期間中に使用される単位形態当たりの低量を含む。
- いずれかの5HT3-アンタゴニストまたはプラミペキソールに関する「その塩または溶媒和物」または「その塩および溶媒和物」:この表現は、前記プラミペキソールまたは前記5HT3-アンタゴニストの任意の塩が、溶媒、通常は水と溶媒和することができることを示す。
- 「SSRI」:選択的セロトニン再取り込み阻害剤。
- 「NDRI」:ノルエピネフリン-ドパミン再取り込み阻害剤。
- 「TCA」:三環系抗うつ薬。
- 「TTS」:経皮治療システム。
- 「抑うつ障害群」:大うつ病性障害(MDD)、持続性抑うつ障害(気分変調症)、双極性うつ病、季節性情動障害(SAD)、精神病性うつ病、月経前不快気分障害(PDD)、周産期(産後)うつ病、状況性うつ病および非定型うつ病を含むが、これらに限定されない。これらの抑うつ障害群に共通する特徴は、悲しい、空虚なまたは怒りっぽい気分になり、個体の機能する能力に著しく悪影響を及ぼす体細胞変化および認知変化を伴うことである。これらの障害の違いは、持続期間、タイミングまたは推定される病因という事項である。精神障害の診断と統計マニュアル(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders)、第5版の抑うつ障害群(Depressive Disorders)、dsm.psychiatryonline.org/doi/10.1176/appi.books.9780890425596.dsm04を参照されたい。
【背景技術】
【0005】
大うつ病性障害(MDD)は、うつ病または臨床的うつ病とも呼ばれ、一般的であるが、重大な負荷に結びつく重篤な気分障害であり、米国において人口の約16%がその生涯において冒されている(de Sousaら、2015年にレビューされている)。うつ病は、米国において最も一般的なよくみられる精神障害の1つである。最近の研究では、うつ病は、遺伝的、生物学的、環境的および心理的な各要因の組合せに起因することが示唆されている。
【0006】
MDDの推定損失は、就労日の喪失を含む多くの心理社会的要因のため、年間約830億米ドルになる(de Sousaら、2015年にレビューされている)。推定によると、うつ病の人は平均で年間27.2就労日を喪失している(de Sousaら、2015年にレビューされている)。負荷のかなりの部分は治療の不成功に相応する。最初に抗うつ薬を試みた後に、抑うつ症状が寛解に達するのはMDD患者の3分の1にすぎず(de Sousaら、2015年にレビューされている)、治療の不成功は、MDDに認められる苦痛、および社会的費用の実質的な一因となる。
【0007】
うつ病の徴候および症状は、典型的に、以下のもの:持続的な、悲しい、不安なまたは「空虚な」気分;絶望感または厭世観;いらだち;罪悪感、役立たず感または無力感;趣味および活動における興味または喜びの喪失;エネルギー減退または疲労;動作または会話の緩慢化;不穏感、またはじっと座っていることが困難;集中、想起または決断が困難;睡眠困難、早朝覚醒または寝過ごし;食欲および/または体重の変化;死または自殺について思考、または自殺未遂;明快な身体的原因のない、かつ/または治療をしても緩和されない痛みもしくは疼痛、頭痛、痙攣または消化の問題(NIMH、Health and Education、NIMH Web Siteに投稿されたMental Health Information)からなる。うつ病のすべての人がすべての症状を経験するわけではない。少しの症状しか経験しない人もいれば、多くの症状を経験し得る人もいる。うつ病と診断するには、徴候および症状が、ほとんど1日中、ほぼ毎日、少なくとも2週間現れていなければならない(DSM-5)。
【0008】
うつ病は、どの年齢でも起こり得る(NIMH、Health and Education、NIMH Web Siteに投稿されたMental Health Information)が、成人期に始まることが多い。うつ病は、今では、小児および青年に発症すると認められているが、気分の低下より、顕著ないらだちを伴って現れることがある。うつ病は、特に中年またはそれより高齢の成人では、他の重篤な医学的疾病、例えば、糖尿病、がん、心疾患およびパーキンソン病などとともに発症する可能性がある。危険因子としては、うつ病の個人歴または家族歴;大きな生活の変化、外傷またはストレス;一定の身体的疾病および薬剤が挙げられる。
【0009】
うつ病の一部の形態は、わずかに異なり、または特有の環境下で発症する(NIMH、Health and Education、NIMH Web Siteに投稿されたMental Health Information)。例えば以下のとおりである。
【0010】
持続性抑うつ障害(気分変調症とも呼ばれる)は、早発性または遅発性であり、非定型の特徴があったりなかったりするが、少なくとも2年間持続する抑うつ気分である。持続性抑うつ障害と診断された人は、症状の重症度が低い期間に加えて大うつ病のエピソードを有する場合があるが、持続性抑うつ障害とみなされるためには症状が2年間持続していなくてはならない。
【0011】
周産期うつ病は、多くの女性が出産後に経験する「産後のうつ症状」(通常出産後2週間以内にはっきりする比較的軽度の抑うつ症状および不安症状)より大いに重篤である。周産期うつ病の女性は、妊娠中または出産後(産後うつ病)に、最も悪化した大うつ病を経験する。周産期うつ病に伴う極度の悲愴感、不安感および疲憊感により、これら母親になったばかりの人々が自分自身および/または自分の乳児に日々の世話活動をすることが困難になる場合がある。
【0012】
精神病性うつ病は、人が重度のうつ病に加えて、ある形態の精神障害を有する場合、例えば、不穏で根拠のない凝り固まった信念(妄想)をもっている場合、または他の人には聞こえたり見えたりしない不安をかき立てるもの(幻覚)を聞いたり見たりする場合に起こる。精神病症状は、典型的には、罪悪感、貧困または疾病の妄想など、抑うつの「テーマ」を有している。
【0013】
季節性情動障害は、自然の日光が少ない冬の月々の間にうつ病が発症することを特徴とする。このうつ病は、一般に、春および夏の間は消散する。冬季うつ病には、通常、社会的引きこもり、睡眠増加および体重増加が伴い、毎年予想どおりに季節性情動障害が再発する。
【0014】
気分調節不全障害(小児および青年において診断される;DSM-5)。
【0015】
月経前不快気分障害(PMDD;DSM-5)。
【0016】
双極性障害はうつ病とは異なるが、双極性障害の患者は大うつ病の基準に合致する極度の気分の低下のエピソードを経験するため、このリストに含まれている(「双極性うつ病」と呼ばれる)。双極性障害は、持続的なエピソード性および消耗性の状態であり、推定生涯有病率は、I型(躁病を伴う)とII型(軽躁病を伴う)の両方を含めると2.0%を超える(Poonら、2015年にレビューされている)。双極性障害には、躁病、軽躁病、躁うつ混合状態、または精神障害の再発性のエピソード、ならびに顕著な大うつ病および気分変調症、ならびに一般的な不安症状がつきまとい、これらはすべて、利用可能な薬理学的治療および心理社会的治療を使用しても、潜在的に重度の機能障害、物質濫用、および自殺の高率化、事故、ならびに同時に発症する医学的疾病による死亡率の増加の高いリスクをもたらす(Poonら、2015年)。この障害の抑うつの構成要素は治療に成功するのが特に困難であり、臨床的に重要な病的状態の残留を含む、治療でのフォローアップ週間のほぼ50%の4分の3を占める(Poonら、2015年にレビューされている)。
【0017】
「うつ病」という用語の範囲に包含される他の気分障害としては、抑うつ気分を伴うアルツハイマー病、パーキンソン病、レビー小体病および他の認知症における抑うつ気分、脳卒中後うつ病、統合失調感情障害、抑うつ気分を伴う適応障害、ならびに薬物誘発性およびアルコール誘発性の抑うつ気分が挙げられる。
【0018】
うつ病は、通常、薬剤および精神療法で初期治療される。これらの治療が症状を軽減しない場合、電気痙攣療法および他の脳刺激療法が役に立つ場合がある。薬剤には以下が含まれる(Mayo Clinic)。
【0019】
選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)、例えば、フルオキセチン(プロザック)、パロキセチン(パキシル、ペキセバ)、セルトラリン(ゾロフト)、シタロプラム(セレクサ)およびエスシタロプラム(レクサプロ)など。
【0020】
セロトニン-ノルエピネフリン再取り込み阻害剤(SNRI)、例えば、デュロキセチン(サインバルタ)、ベンラファキシン(イフェクサーXR)、デスベンラファキシン(プリスティーク、ケデズラ(Khedezla))およびレボミルナシプラン(フェトジーマ)など。
【0021】
ノルエピネフリン-ドパミン再取り込み阻害剤(NDRI)、例えば、ブプロピオン(ウェルブトリン、アプレンジン(Aplenzin)、フォルフィボ(Forfivo)XL)など。
【0022】
非定型抗うつ薬、例えば、トラゾドンおよびミルタザピン(レメロン)、ボルチオキセチン(ブリンテリックス(Brintellix))、ならびにビラゾドン(ビイブリド(Viibryd))など。
【0023】
三環系抗うつ薬(TCA)、例えば、イミプラミン(トフラニール)、ノルトリプチリン(パメロール)、アミトリプチリン、ドキセピン、トリミプラミン(スルモンチール)、デシプラミン(ノルプラミン(Norpramin))およびプロトリプチリン(ビバクチル(Vivactil))など。これらはきわめて有効であり得るが、これらより新しい抗うつ薬より重度の副作用を引き起こす傾向がある。したがって、三環系は通常、第二選択治療と考えられている。
【0024】
モノアミンオキシダーゼ阻害剤(MAOI)、例えば、トラニルシプロミン(パルネート(Parnate))、フェネルジン(ナーディル)およびイソカルボキサジド(マルプラン)などは、通常、他の薬剤が効かなかった場合に処方されることがある。しかし、MAOIは、一定の食物、ならびに経口避妊薬、充血除去薬および一定のハーブ系サプリメントを含む数種の薬剤と重大な相互作用をする可能性があるため、普通、第一選択の抗うつ薬治療にはならない。セレギリンTTS(エムサム(Emsam))はより新しいMAOIであり、引き起こし得る副作用が他のMAOIより少ない。
【0025】
上記すべての抗うつ薬剤の1つの不利な点は、抗うつ効果が得られ始めるのに通常2~4週間かかるという点である。
【0026】
(S)-6-プロピルアミノ-4,5,6,7-テトラヒドロ-1,3-ベンゾチアゾール-2-アミン(プラミペキソール)は、合成アミノチアゾール誘導体であり、US4,886,812に記載されており、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。この誘導体は、「初期パーキンソン病の徴候および症状の治療」(以下、「PDの対症療法」と呼ぶ)用に認可されているドパミンオートレセプターアゴニストであり(SchneiderおよびMierau、1987年)、0.375mg/日~4.5mg/日の範囲の用量で、等しく3回に分けた用量を与えられる(ミラペックス(登録商標)処方情報、2016年7月)。プラミペキソールは、0.125mg、0.25mg、0.5mg、1mgおよび1.5mgのプラミペキソール二塩酸塩一水和物を含有する即放用の錠剤で、ならびに0.375mg、0.75mg、1.5mg、3mgおよび4.5mgのプラミペキソール二塩酸塩一水和物を含有する徐放用の錠剤で供給される。これは麦角誘導体薬物(エルゴリンのクラス、例えば、ブロモクリプチンおよびペルゴリド)とは構造的に異なる。プラミペキソールはドパミンD2受容体アゴニストであり、これは、完全アゴニストであり、かつ受容体のD2サブファミリーのドパミンD3受容体サブタイプに対して受容体選択性を有するという点で、薬理学的に類例のないものでもある。これらの特性は、有効性(より大きい治療効果の可能性がある完全アゴニスト)と安全性(受容体選択性は不所望な副作用を軽減し得る)の両方の面で、現在利用可能なドパミンアゴニストと比較すると、利点をもたらし得る[Piercey、1998年]。
【0027】
プラミペキソールは、PDの患者における抑うつ症状の治療に有効である(効果量は小さいが)ことも発見された。PD患者296名において、12週にわたる二重盲検、プラセボ対照試験が、プラミペキソール(0.125~1.0mg/kg)を用いて実施された。主要評価項目はベックうつ病調査票尺度(BDI)であった。その結果から、BDIスコアが、プラミペキソール群では補正値5.9(SE0.5)、プラセボ群では4.0(SE0.5)減少したことが示された。2つの治療群間の差は、効果量の規模は小さいが、有意であった(p=0.01;Baroneら、2010年)。さらに、プラミペキソールが抗うつ治療に加えられた(増強)、他の小規模な非盲検の場合が多い試験でも、大うつ病性障害(MDD)の非PD患者において(Cusinら、2013年;Goldbergら、2004年)、治療抵抗性うつ病の非PD患者を含めて(HoriおよびKunigi、2012年;Paeら、2013年;Fawcettら、2016年)、および双極性障害を伴ううつ病の患者を含めて(Sienaertら、2013年;Dell’OssoおよびKetter、2013年;Tondoら、2014年;ら、2016年にレビューされている)、中程度ではあるがプラミペキソールに有利となる有意な有効性があることが示された。しかし、Kleebattら(2017年)は、そのレビューの中で、プラミペキソールについて抗うつ効果の明白なエビデンスは得られなかったと判断し、その原因は、エビデンスのレベルの低さ、被験者数の少なさ、または結果の不一致にあるとした。これらのすべての報告書において、プラミペキソールの用量は、刊行物のタイトルに「高用量」のプラミペキソールと述べられている(Fawcettら、2016年)ものでさえも、PDの治療に認可されている範囲内に留まっていた。これらの試験の大部分において、有効性は中程度のようであったため、より高用量のプラミペキソールが、ランダム化、前向き、二重盲検、プラセボ対照、固定用量試験で試験された(Corriganら、2000年)。大うつ病のDSM-III-R診断(単回または再発エピソード、メランコリアの特徴を伴いまたは伴わず、かつ精神病性の特徴を伴わない)を受けている適格患者全174名が、5つの治療群:[プラセボ群、フルオキセチン群(20mg/日)、または3つのプラミペキソール群(0.375mg/日;1mg/日;5mg/日)から1つ]のうち1つに割り当てられた。患者は、1週間のプラセボ導入、8週間の治療、および1週間の試験後フォローアップ評価(9週目)を受けた。有効性は、主として、HAM-D(17項目版)全スコア、MADRS全スコアおよびCGI-疾病の重症度(SI)スコアにおけるベースラインからの変化によって測定した。結果から、プラミペキソール5.0mg群(45.4%)を除き、各治療群の患者の大多数が試験を完遂した(66~86%)ことが分かった。プラミペキソール5.0mg群では、主に有害事象(AE)のため、患者の57.6%が早期に治療を中止し、患者の76%から悪心の報告があり、39%から嘔吐の報告があった。エンドポイントで(8週目)、プラミペキソール1.0mg群およびフルオキセチン群は、プラセボ群より、HAMD(p=0.0076)およびMADRSに関して、ベースラインからの改善が有意に良好であった。プラミペキソール5.0mg群は、8週目での改善が最高であった(-15.00)が、脱落率が高いため、この試験ではプラセボに対するP値が利用できなかった。
【0028】
まとめると、Corriganら(2000年)によって報告された結果は、プラミペキソールの用量が高いほど有効性が高くなる可能性があるが、用量制限有害事象(AE)、特に悪心および嘔吐の発生率が高いため、認可された用量よりも高い用量を使用することはできないということを示唆している。また、以前に、動物試験で、高用量のプラミペキソールはうつ病の治療に対する有効性が高いであろうと示唆された。例えば、高用量のプラミペキソールは、Willnerの無快感症試験(Willnerら、1994年)、定間隔試験、強制水泳試験およびREM睡眠阻害試験を含む、うつ病の症状をシミュレートする動物行動の様々な試験において、活性であることが分かった。
【0029】
本発明者らは、US2011/0071135の中で、別の治療の状況において、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤を、5HT3-アンタゴニストを含む制吐剤と組み合わせることによって、前記アセチルコリンエステラーゼ阻害剤の用量を増加できることを開示した。
【0030】
文献US2014/0024644(WO2014/014951およびWO2014/014962も参照)は、5HT3-アンタゴニスト活性を有する、アザビシクロアルキル基またはオキサアザビシクロアルキル基でエステル化またはN-置換されているインドールおよびインダゾール-酢酸誘導体または-アセトアミド誘導体を開示している。そこに記載されている化合物は、5HT3受容体の阻害によって治療可能な疾患の治療に有用であると主張されている。この文献は、5HT3-アンタゴニストで治療することができる一連の障害、すなわち、嘔吐、片頭痛、物質濫用および耽溺、神経変性障害および精神障害(うつ病を含む)、胃腸障害、免疫学的障害、アテローム性動脈硬化症および炎症を列挙している。この文献はまた、前記5HT3-アンタゴニストと6つのクラスの神経弛緩薬との可能な組合せ、および前記5HT3-アンタゴニストとプラミペキソールを含む多くの活性薬剤との可能な組合せを開示している。この文献は、MDDの治療のためのプラミペキソールとの可能な組合せについては、何ら記載も示唆もしていない。
【0031】
結論として、多くの文献が、プラミペキソールの抗うつ効果を増強する可能性はプラミペキソールの用量の増加と関連していることを報告している(特に、Willnerら、1994年、Corriganら、2000年、およびUS2011/0071135の開示)にもかかわらず、プラミペキソールは、うつ病の治療においては依然としてほとんど不活性である。
【0032】
したがって、プラミペキソールを用いて、うつ病に罹患している患者の安全で長期間の有効な治療を提供するという問題はまだ解決されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0033】
本発明は、MDDなどの抑うつ障害群の治療のためのプラミペキソールの治療域を増加させて、その十分な抗うつ効果を安全に可能にすることに関する。特に、本発明は、プラミペキソールの治療域を増加させるための、プラミペキソールと5HT3-アンタゴニストとの組合せに関する。
【0034】
オンダンセトロンまたはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物が、高用量のプラミペキソールの胃腸の副作用を低減するまたは抑止さえすることにより、プラミペキソールの十分な抗うつ潜在能を可能にすることが判明した。
【0035】
前記5HT3-アンタゴニストをプラミペキソールまたはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物と組合せて使用することによって、有害作用を最小にしてプラミペキソールの治療有効1日用量を維持することにより、うつ病に罹患している患者を安全に治療することが可能であることも判明した。
【0036】
前記5HT3-アンタゴニストとプラミペキソールまたはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物との組合せは、プラミペキソールの十分な抗うつ効果を可能にする。
【0037】
例えば、プラミペキソール二塩酸塩一水和物の場合、これと前記5HT3-アンタゴニストとの組合せは、多くの患者において、PDの症状の治療のためのプラミペキソール二塩酸塩一水和物の上述の最大推奨用量(4.5mg/日)を大幅に上回る治療有効量の前記プラミペキソール二塩酸塩一水和物の投与が可能になり、このため、MDDに罹患している患者の治療においてその有効性が増大する。
【0038】
より具体的には、抑うつ障害に罹患している患者において、1回投与につき5mg~45mg、または5mg~45mg/日、通常5mg~20mg/日の範囲のプラミペキソール二塩酸塩一水和物と同等な用量のプラミペキソールを5HT3-アンタゴニストと組み合わせると、かなりの有効性および速やかな作用発現をもたらすことが判明した。有利には、5HT3-アンタゴニストと組み合わせると、4.5mg超~45mg、5mg~45mg、6mg超~45mgまたは6.5mg~45mg、通常6mg超~20mgもしくは6.5~20mgのプラミペキソール二塩酸塩一水和物と同等なプラミペキソールの1日用量は、MDDに罹患している患者に対して安全な治療をもたらす。
【0039】
これまでに、上述の多くの文献がプラミペキソールの抗うつ効果の可能性を報告しているにもかかわらず、プラミペキソール/5HT3-アンタゴニストの組合せを、現在使用されているプラミペキソールの1日用量で、さらにPDの治療に推奨されている1日用量より高い1日用量、実にはるかに高い1日用量で使用することによって、プラミペキソールに固有の有害作用を実質的に起こさずに、大うつ病性障害を安全に治癒させることができるとは誰も考えていなかった。
【0040】
したがって、本発明は、MDDなどの抑うつ障害群の治療に使用するための、
(a)5HT3-アンタゴニスト、および
(b)有効1日用量のプラミペキソールまたはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物
を含む、医薬の組合せを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0041】
第1の態様によれば、本発明は、MDDの治療においてプラミペキソールの十分な抗うつ効果を可能にするための、5HT3-アンタゴニストの使用(または5HT3-アンタゴニストを使用しての方法)を提供する。
【0042】
より正確にいうと、この第1の態様によれば、本発明は、MDDの治療において、有効1日用量のプラミペキソールと組合せて使用するための5HT3-アンタゴニストを提供する。前記プラミペキソールの有効1日用量は、PDの治療に推奨されている最大1日用量より高く、実にはるかに高くあり得る。
【0043】
この第1の態様によれば、本発明はまた、大うつ病性障害に罹患している患者を治療する方法であって、有効1日用量のプラミペキソールまたはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物と組合せて5HT3-アンタゴニストを用いて、前記患者を治療するステップを含む方法も提供する。前記有効1日用量(プラミペキソール二塩酸塩一水和物として)は、PDの対症療法に推奨されているプラミペキソール二塩酸塩一水和物の最大用量を大幅にかつ安全に上回ることができる。
【0044】
したがって、この第1の態様によれば、本方法(または使用)は、0.375mg~45mgのプラミペキソールの1日用量(プラミペキソール二塩酸塩一水和物として)と組み合わせる5HT3-アンタゴニストの安全な投与を提供する。各患者について、1日用量0.375mgで開始する初期用量調整の後、前記1日用量は、3mg~45mg、好ましくは4.5mg超~45mg、5mg~45mg、6mg超~45mgもしくは6.5mg~45mg、通常4.5mg超~20mg、5mg~20mg、6mg超~20mg、または6.5mg~20mgの用法まで漸増させる。
【0045】
特に、本発明は、大うつ病性障害に罹患している患者を治療する方法(または前記5HT3-アンタゴニストの使用)であって、4.5mg超~45mg、好ましくは5mg~45mg、6mg超~45mgまたは6.5mg~45mgのプラミペキソール二塩酸塩一水和物と同等な1日用量のプラミペキソールまたはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物と組合せて前記5HT3-アンタゴニストを用いて、前記患者を治療するステップを含む方法を提供する。
【0046】
通常、上記のように、前記プラミペキソールの1日用量は、疾病の重症度ならびに患者の年齢および状態に依存して、5mg~20mg、6mg超~20mg、または6.5mg~20mgのプラミペキソール二塩酸塩一水和物と同等なものとなる。
【0047】
第2の態様によれば、本発明は、MDDの治療においてプラミペキソールまたはその薬学的に許容される塩および/もしくは溶媒和物のAEを予防するまたは治癒させるための、そしてさらに、主として、前記プラミペキソールを、MDDに罹患している患者に、PDの治療に認可されている最大推奨用量より高い用量、実にはるかに高い用量で投与し、このようにして、MDDとの闘いにおいてプラミペキソールの有効性を増大させるための、活性成分として前記5HT3-アンタゴニストを医薬担体またはビヒクルと混合した形で含む医薬組成物からなる医薬品を調製するための前記5HT3-アンタゴニストの使用を提供する。
【0048】
特に、この第2の態様によれば、本発明は、有効1日用量のプラミペキソールまたはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物と組合せたMDDの治療のための、活性成分として5HT3-アンタゴニストを医薬担体またはビヒクルと混合した形で含む医薬組成物からなる医薬品を調製するための前記5HT3-アンタゴニストの使用を提供する。
【0049】
好ましくは、この第2の態様によれば、本発明は、パーキンソン病の対症療法に推奨されているプラミペキソール二塩酸塩一水和物の最大用量を大幅にかつ安全に上回ることができる1日用量の(プラミペキソール二塩酸塩一水和物として)プラミペキソールまたはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物と組合せた、MDDの安全な治療のための医薬品を製造するための5HT3-アンタゴニストの使用を提供する。上記のように、前記1日用量(プラミペキソール二塩酸塩一水和物として)は、0.375mg~45mg、特に4.5mg超~45mg、5mg~45mg、6mg超~45mgもしくは6.5mg~45mg、通常5mg~20mg、6mg超~20mgまたは6.5mg~20mgである。
【0050】
一実施形態によれば、前記方法(または使用)のために、前記5HT3-アンタゴニストおよび前記プラミペキソールまたはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物は、それぞれ、医薬担体またはビヒクルと混合した形で医薬組成物に製剤化され、別々に、同時にまたは逐次に、前記組合せでの治療を必要とする患者に、特にMDDに罹患している患者に投与される。通常、前記組成物は単位投与形態である。
【0051】
別の実施形態によれば、前記使用または前記方法のために、前記5HT3-アンタゴニストと前記プラミペキソールまたはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物とが一緒に混合され、医薬担体またはビヒクルと混合した形で医薬組成物(固定用量配合剤)に製剤化されて、MDDに罹患しており前記治療を必要とする患者に投与される。通常、前記組成物は単位投与形態である。
【0052】
術後の悪心および嘔吐または化学療法誘発性の悪心および嘔吐の予防に適応される5HT3-アンタゴニストは、好ましくは、一般に現在PDの治療に使用されている用量、またはそれより高い用量、実にはるかに高い用量のプラミペキソールと組合せて使用することができる。この組合せの使用は、同時に、プラミペキソールの有害作用を軽減する、または除去さえすることによって、MDDに罹患している患者の状態を大幅に改善するが、この組合せを使用しない場合、前記プラミペキソールを単独で使用すると耐容性がない。
【0053】
本発明によれば、好ましくは、使用される前記5HT3-アンタゴニストは、術後の悪心および嘔吐の予防もしくは治療に、または化学療法誘発性の悪心および嘔吐の予防に、有効であることが分かっている、または認可されているものである。事実、驚くべきことに、化学療法薬によって誘発される悪心、嘔吐および下痢を阻止することが知られている5HT3受容体阻害剤は、特に高用量で投与されると、前記MDDの治療においてプラミペキソールの有効性に影響することなく、プラミペキソールの胃腸の副作用も阻止することが分かった。
【0054】
この発見は驚くべきである。なぜなら、疾病の重症度にかかわらず、また前記5HT3-アンタゴニストとプラミペキソールの両者は、各々の特有の適応症において10年より長い間使用されてきた2つの製品群であったという事実にもかかわらず、今まで、有効量の前記5HT3-アンタゴニストを有効量のプラミペキソールと組み合わせることによって、さらにプラミペキソールの治療用量、特にプラミペキソール二塩酸塩一水和物の用量の増加を可能にすることによって、MDDに罹患している患者の状態を安全に改善することが可能であろうとは誰も考えなかったからである。
【0055】
別のさらなる実施形態によれば、本発明は、有効量/単位形態の5HT3-アンタゴニストを構成成分(a)として、および有効量/単位形態のプラミペキソールを構成成分(b)として、医薬担体またはビヒクルと混合した形で含む医薬組成物からなる医薬の固定用量配合剤を提供する。
【0056】
前記組合せにおいて、構成成分(a)は、前記組成物中に、単位形態当たり1μg~300mgの量で存在し、構成成分(b)は、前記組成物中に、単位形態当たり0.125mg~45mg、通常0.125mg~20mgのプラミペキソール二塩酸塩一水和物と同等な量で存在する。
【0057】
プラミペキソールまたはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物の単位形態当たりの用量は、プラミペキソール二塩酸塩一水和物として、通常、1.5mg~20mg、1.625mg~20mg、3mg~20mg、5mg~20mg、6mg超~20mgおよび6.5mg~20mgからなる群から選択される範囲にあることになる。
【発明を実施するための形態】
【0058】
本発明は、プラミペキソールと組合せてMDDの治療に使用するための、好ましくは術後の悪心および嘔吐または化学療法誘発性の悪心および嘔吐の予防に有効である、または適応されることが分かっている5HT3-アンタゴニストを含む医薬の組合せ;および単位形態当たりの有効量のプラミペキソールを含むMDDの治療のための医薬品を調製するための、前記5HT3-アンタゴニストおよびプラミペキソールを含む医薬の組合せの使用に関する。前記有効量は、PDの治療に推奨されているプラミペキソールの最大1日用量より高く、実にはるかに高くあり得る。
【0059】
より具体的には、本発明は、その各態様によれば、
- MDDの治療を必要とする患者における前記治療の方法であって、前記患者に、5HT3-アンタゴニストをプラミペキソールの治療有効1日用量と組合せて投与するステップを含む方法;
- MDDの治療を必要とする患者における前記治療に、治療有効1日用量のプラミペキソールと組合せて使用するための5HT3-アンタゴニスト;および
- 治療有効1日用量のプラミペキソールと組合せた、MDDの治療を必要とする患者における前記治療のための医薬品を製造するための5HT3-アンタゴニストの使用
に関する。
【0060】
本発明はまた、MDDの治療のための医薬品を、前記5HT3-アンタゴニストおよび前記プラミペキソールを含む医薬組成物からなる固定用量配合剤に調製するための前記5HT3-アンタゴニストの使用も提供する。
【0061】
5HT3-アンタゴニスト
5HT3-アンタゴニストのうちいずれか、特に、術後の悪心および嘔吐または化学療法誘発性の悪心および嘔吐の予防に有効である、または適応されることが分かっているものは、一般に現在PDの治療に使用されている用量、またはそれより高い用量、実にはるかに高い用量のプラミペキソールと組合せて使用することができる。
【0062】
この組合せを連用すると、同時に、前記プラミペキソールによって誘発される有害作用を軽減する、または除去さえすることによって、MDDに罹患している患者の状態を改善する。
【0063】
本発明によれば、好ましくは、使用される前記5HT3-アンタゴニストは、がんの化学療法後の悪心および嘔吐の予防用に認可されているものである。
【0064】
有用な5HT3-アンタゴニストは、US5,360,800に開示されている5-メチル-2-[(4-メチル-1H-イミダゾール-5-イル)メチル]-2,3,4,5-テトラヒドロ-1H-ピリド[4,3-b]インドール-1-オン(アロセトロン)ならびにその薬学的に許容される塩および溶媒和物、特にその塩酸塩;US4,892,872に開示されている(±)-6-クロロ,3,4-ジヒドロ-4-メチル-3-オキソ-N-(キヌクリジニル)-2H-1,4-ベンゾオキサジン-8-カルボキサミド(アザセトロン)ならびにその薬学的に許容される塩および溶媒和物、特にその塩酸塩;[(1S,5R)-8-メチル-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタン-3-イル]3,5-ジクロロベンゾエート(ベメセトロン、CAS:40796-97-2);US4,939,136に開示されている(10R)-10-[(2-メチル-1H-イミダゾール-1-イル)メチル]-5,6,9,10-テトラヒドロ-4H-ピリド(3,2,1-jk)カルバゾール-11-オン(シランセトロン)ならびにその薬学的に許容される塩および溶媒和物、特にその塩酸塩一水和物;US4,906755に開示されている(3R)-10-オキソ-8-アザトリシクロ[5.3.1.03,8]ウンデカ-5-イル1H-インドール-3-カルボキシレート(ドラセトロン)ならびにその薬学的に許容される塩および溶媒和物、特にそのモノメタンスルホン酸一水和物、;US5,141,945に開示されている(+)-(R)-8,9-ジヒドロ-10-メチル-7-[(5-メチルイミダゾール-4-イル)メチル]ピリド[1,2-a]インドール-6(7H)-オン(ファベセトロン)ならびにその薬学的に許容される塩および溶媒和物、特にその塩酸塩またはマレイン酸塩;US4,886,808に開示されている1-メチル-N-((1R,3r,55)-9-メチル-9-アザビシクロ[3.3.1]ノナン-3-イル)-1H-インダゾール-3-カルボキサミド(グラニセトロン)ならびにその薬学的に許容される塩および溶媒和物、特にその塩酸塩;US5,223,511に開示されている2,3-ジヒドロ-N-(8-メチル-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-3-イル)-2-オキソ-1H-ベンゾイミダゾール-1-カルボキサミド(イタセトロン)ならびにその薬学的に許容される塩および溶媒和物、特にその塩酸塩;US5,256,665に開示されている1-フェニルメチル-2-(1-ピペラジニル)-1H-ベンゾイミダゾール(レリセトロン)ならびにその薬学的に許容される塩および溶媒和物、特にその塩酸塩、ならびに、US6,136,807に開示されている経皮製剤;6-フルオロ-5-メチル-2-[(5-メチル-1H-イミダゾール-4-イル)メチル]-2,3,4,5-テトラヒドロ-1H-ピリド[4,3-b]インドール-1-オン(ルロセトロン、CAS128486-54-4)ならびにその薬学的に許容される塩および溶媒和物、特にそのメシル酸塩(GR 87445 N);US4,695,578に開示されている(±)1,2,3,9-テトラヒドロ-9-メチル-3-[(2-メチル-1H-イミダゾール-1-イル)メチル]-4H-カルバゾール-4-オン(オンダンセトロン)ならびにその薬学的に許容される塩および溶媒和物、特にその塩酸塩二水和物;US5,202,333に開示されている(3aS)-2-[(S)-1-アザビシクロ[2.2.2]オクタ-3-イル]-2,3,3a,4,5,6-ヘキサヒドロ-1-オキソ-1H-ベンゾ[de]イソキノリン(パロノセトロン)ならびにその薬学的に許容される塩および溶媒和物、特にその塩酸塩;US5,344,927に開示されている1-メチルインドール-3-イル)-[(5R)-4,5,6,7-テトラヒドロ-3H-ベンゾイミダゾール-5-イル]メタノン(ラモセトロン)ならびにその薬学的に許容される塩および溶媒和物、特にそのフマル酸塩;endo-N-(8-メチル-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-3-イル)-2,3-ジヒドロ-3,3-ジメチル-インドール-1-カルボキサミド(3,3-ジメチル-N-1αH,5αH-トロパン-3α-イル-1-インドリンカルボキサミド、リカセトロン、CAS117086-68-7)ならびにその薬学的に許容される塩および溶媒和物、特にその塩酸塩;US4,789,673に開示されている1H-インドール-3-カルボン酸の(3-endo)-S-メチル-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-3-イルエステル(3-トロパニルインドール-3-カルボキシレート、トロピセトロン)ならびにその薬学的に許容される塩および溶媒和物、特にその塩酸塩;ならびにUS5,563、148に開示されている5-クロロ-2,2-ジメチル-N-(8-メチル-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-3-イル)-2,3-ジヒドロ-1-ベンゾフラン-7-カルボキサミド(ザトセトロン)ならびにその薬学的に許容される塩および溶媒和物、特にそのマレイン酸塩からなる群から選択され、この段落に引用したすべての米国特許の開示は、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0065】
有利には、前記5HT3-アンタゴニストは、アザセトロンならびにその薬学的塩および溶媒和物、ドラセトロンならびにその薬学的に許容される塩および溶媒和物、グラニセトロンならびにその薬学的塩および溶媒和物、オンダンセトロンならびにその薬学的塩および溶媒和物、パロノセトロンならびにその薬学的塩および溶媒和物、ラモセトロンならびにその薬学的塩および溶媒和物、ならびにトロピセトロンならびにその薬学的塩および溶媒和物からなる群から選択される。
【0066】
前記5HT3-アンタゴニストの塩および前記プラミペキソールの塩の実例としては、鉱酸(塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、硝酸およびリン酸など)または有機酸(ギ酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、炭酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、アスパラギン酸、およびグルタミン酸など)との酸付加塩が挙げられる。溶媒和剤は一般に水である。
【0067】
術後の悪心および嘔吐の予防もしくは治療、または化学療法誘発性の悪心および嘔吐の予防に利用可能な5HT3受容体のアンタゴニストは、本発明によれば特に有用である。特に、アザセトロン塩酸塩(10mg錠剤で、および静脈内注射用の10mgバイアルで市販);ドラセトロンモノメタンスルホン酸一水和物(メシル酸ドラセトロンとも呼ばれる)(200mg最大用量錠剤で、および12.5mg/0.625mlバイアルで市販);グラニセトロン塩酸塩(2.24mg最大用量錠剤で市販);オンダンセトロン塩酸塩二水和物(10mg最大用量錠剤で、および20mlの複数回用バイアルとして入手可能な2mg/ml(オンダンセトロン塩基として)溶液剤で市販);パロノセトロン塩酸塩(0.28mg/5mL注射剤で、および0.56mgカプセル剤で、ならびに0.075mg/1.5mlまたは0.25mg/5ml(パロノセトロン塩基として)バイアルで市販);ラモセトロン(0.15mg/ml注射剤で、および0.1mg経口錠剤で市販);およびトロピセトロン塩酸塩(5.64mgカプセルで、静脈内注射用2.256mg/2mlバイアルで、および静脈内または皮下注射用5.64-mgバイアルで市販)は特に有利な5HT3-アンタゴニストである。
【0068】
本発明によれば、5HT3-アンタゴニストは、活性成分として前記5HT3-アンタゴニストを1μg~300mgの単位形態当たりの量で、医薬担体またはビヒクルと混合した形で含む医薬組成物中に使用され、0.375mg~45mg、通常、4.5mg超~45mg、5mg~45mg、6mg超~45mgまたは6.5mg~45mgのプラミペキソール二塩酸塩一水和物と同等なプラミペキソールの1日用量と組合せて、MDDに罹患している患者に投与される。
【0069】
したがって、例えば、プラミペキソールと組合せて長期投与される本発明による経口医薬組成物には、アザセトロンならびにその薬学的に許容される塩および溶媒和物(5mg~10mgのアザセトロン塩酸塩と同等な単位形態当たりの量で、15mg~40mgのアザセトロン塩酸塩と同等な1日用量で投与される);ドラセトロンならびにその薬学的に許容される塩および溶媒和物(25mg~200mgのメシル酸ドラセトロンと同等な単位形態当たりの量で、75mg~200mgのメシル酸ドラセトロンと同等な1日用量で投与される);グラニセトロンならびにその薬学的に許容される塩および溶媒和物(0.5mg~2mgのグラニセトロン塩基と同等な単位形態当たりの量で、1.5mg~8mgのグラニセトロン塩基と同等な1日用量で投与される);オンダンセトロンならびにその薬学的に許容される塩および溶媒和物(0.5mg~16mg、通常、2mg~8mgのオンダンセトロン塩基と同等な単位形態当たりの量で、6mg~64mg、通常、6mg~32mgのオンダンセトロン塩基と同等な1日用量で投与される);パロノセトロンならびにその薬学的に許容される塩および溶媒和物(0.25mg~0.5mgのパロノセトロン塩基と同等な単位形態当たりの量で、0.75mg~2mgのパロノセトロン塩基と同等な1日用量で投与される);ラモセトロンならびにその薬学的に許容される塩および溶媒和物(0.05mg~0.2mgのラモセトロン塩酸塩と同等な単位形態当たりの量で、0.05mg~0.2mgのラモセトロン塩酸塩と同等な1日用量で投与される);ならびにトロピセトロンならびにその薬学的に許容される塩および溶媒和物(2.5mg~5mgのトロピセトロン塩基と同等な単位形態当たりの量で、7.5mg~20mgのトロピセトロン塩基と同等な1日用量で投与される)からなる群から選択される5HT3-アンタゴニストを含めることができる。
【0070】
好ましくは、前記5HT3-アンタゴニストは、アザセトロン塩酸塩(5mg~10mgと同等な単位形態当たりの量で、15mg~40mgのアザセトロン塩酸塩と同等な1日用量で投与される);メシル酸ドラセトロン、(25mg~200mgのメシル酸ドラセトロンと同等な単位形態当たりの量で、75mg~200mgと同等な1日用量で投与される);グラニセトロン塩酸塩(0.5mg~2mgのグラニセトロン塩基と同等な単位形態当たりの量で、1.5mg~16mg、通常、2mg~8mgと同等な1日用量で投与される);オンダンセトロン塩酸塩二水和物(0.5mg~32mg、通常、2mg~32mg、2mg~16mgまたは2mg~8mgのオンダンセトロン塩基と同等な量で、6mg~64mg、通常、6~32mgのオンダンセトロン塩基と同等な1日用量で投与される);パロノセトロン塩酸塩(0.25mg~0.5mgのパロノセトロン塩基と同等な量で、0.75~2mgのパロノセトロン塩基と同等な1日用量で投与される);ラモセトロン塩酸塩(0.05mg~0.2mgの単位形態当たりの量で、0.05mg~0.2mgの1日用量で投与される);およびトロピセトロン塩酸塩(2.5mg~5mgのトロピセトロン塩基と同等な量で、7.5~20mgのトロピセトロン塩基と同等な1日用量で投与される)からなる群から選択される。
【0071】
この組成物は、プラミペキソールまたはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物を、0.125~45mg、好ましくは4.5mg超~45mg、6mg超~45mgもしくは6.5mg~45mg、通常、3mg~20mg、好ましくは5mg超~20mg、6mg超~20mgまたは6.5mg~20mgのプラミペキソール二塩酸塩一水和物と同等な範囲の単位形態当たりの量で含む単位投与形態の医薬組成物と組合せて、MDDに罹患している患者に投与されることになる。
【0072】
前記5HT3-アンタゴニストを上記のように含む単位投与形態の医薬組成物は、前記5HT3-アンタゴニストと一緒に、医薬担体またはビヒクルと混合した形で固定用量配合剤に製剤化されている別の活性成分、特に、プラミペキソールを含有することができる。
【0073】
プラミペキソール
本発明の組合せにおいて、MDDに罹患している患者におけるプラミペキソールの有害作用を中和する5HT3-アンタゴニストの有益な作用は、本組合せを用いない場合に、前記患者の大多数において、プラミペキソール二塩酸塩一水和物の現在認可されている用量範囲内(1日当たり0.375mg~4.5mg)でさえも耐容性がない、プラミペキソールの1日用量の安全な投与を可能にする。
【0074】
さらに、5HT3-アンタゴニストは、特に、術後の悪心および嘔吐の予防もしくは治療に、または化学療法誘発性の悪心および嘔吐の予防に、有効であることが分かっている、または認可されているものの中から選択され、4.5mg超~45mg、6mg超~45mgまたは6.5mg~45mgのプラミペキソール二塩酸塩二水和物と同等なプラミペキソールまたはその薬学的に許容される塩の1日用量で、前記患者を安全に治療することを可能にする。
【0075】
プラミペキソールの薬学的に許容される塩は、無機酸または有機酸との塩、例えば、以下に限定されないが、塩酸、臭化水素酸、硫酸、スルファミン酸、リン酸、硝酸、酢酸、プロピオン酸、ステアリン酸、グリコール酸、シュウ酸、コハク酸、乳酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、フマル酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、フェニル酢酸、グルタミン酸、安息香酸、サリチル酸、2-アセトキシ安息香酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、2-ヒドロキシエタンスルホン(イセチオン)酸、p-トルエンスルホン酸、2-ナフタレンスルホン酸、4-アミノ-ベンゼンスルホン(スルファニル)酸、2,6-ナフタレンジスルホン酸、1,5-ナフタレンジスルホン酸、およびパモ(エンボン)酸との塩である。溶媒和溶媒は通常、水である。
【0076】
5HT3-アンタゴニストとの組合せで投与するために、プラミペキソールまたはその薬学的に許容される塩は、活性成分として前記プラミペキソールまたはその薬学的に許容される塩の単位形態当たりの有効量を、医薬担体またはビヒクルと混合した形で含む単位投与形態の医薬組成物に製剤化される。前記活性成分は、任意の投与経路用に既知の技術に従って製剤化される。
【0077】
プラミペキソール二塩酸塩一水和物の場合、WO2012/0140604およびWO2008/122638に開示されているプラミペキソール二塩酸塩一水和物を含む市販の安定な医薬組成物、およびUS8,399,016に開示されているプラミペキソール二塩酸塩一水和物を含む徐放性組成物が、MDDの治療のために5HT3-アンタゴニストと組合せて使用するのに有用であり得る。これらの文献の内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0078】
5HT3-アンタゴニストとの医薬組成物中、プラミペキソールまたはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物の単位形態当たりの用量は、プラミペキソール二塩酸塩一水和物の、0.125mg~45mg、3mg~45mg、4.5mg超~45mg、5mg~45mg、6mg超~45mgおよび6.5mg~45mgからなる群から選択される範囲と同等である。通常、前記単位形態当たりの用量は、プラミペキソール二塩酸塩一水和物の、0.125mg~20mg、1.6mg~20mg、3mg~20mg、4.5mg超~20mg、5mg~20mg、6mg超~20mgおよび6.5mg~20mgからなる群から選択される範囲と同等である。
【0079】
プラミペキソールまたはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物のIR単位形態当たりの用量は、安全性および耐容性(5HT3-アンタゴニストとの組合せの場合)に依存して、好ましくは、プラミペキソール二塩酸塩一水和物の、0.125mg~22.5mg、3mg~22.5mg、4.5mg超~22.5mg、6mg超~22.5mgおよび6.5mg~22.5mgからなる群から選択される範囲と同等であり、通常、0.125mg~10mg、1.5mg~10mg、1.625mg~10mg、3mg~10mg、4.5mg超~10mg、5mg~10mg、6mg超~10mgおよび6.5mg~10mgからなる群から選択される範囲であろう。
【0080】
緩徐放出組成物、および経皮貼付剤などの経皮治療システムを含むER製剤中のプラミペキソールまたはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物の単位形態当たりの用量は、耐容性(前記5HT3-アンタゴニストとの組合せの場合)に依存して、プラミペキソール二塩酸塩一水和物の、0.375mg~45mg、1.5mg~45mg、3mg~45mg、4.5mg超~45mg、5mg~45mg、6mg超~45mgおよび6.5mg~45mgからなる群から選択される範囲と同等であり、通常、プラミペキソール二塩酸塩一水和物の、0.375mg~45mg、1.5~20mg、3mg~20mg、4.5mg超~20mg、5mg~20mg、6mg超~20mgおよび6.5mg~20mgからなる群から選択される範囲と同等な、単位形態当たりの量からの範囲となるであろう。
【0081】
定義で述べたように、上記プラミペキソールの単位形態当たりの用量は、特にプラミペキソールの1日用量の初期用量調整の場合に、またはそれより頻度は低いが小児うつ病患者の治療に使用する場合に、使用することができる低用量を含む。
【0082】
前記5HT3アンタゴニストがオンダンセトロンである場合、単位形態当たりの用量(オンダンセトロン塩基として)は8mg~32mgの範囲となるであろう。
【0083】
前記5HT3アンタゴニストがドラセトロンである場合、プラミペキソールまたはその薬学的に許容される塩を上記の用量/単位形態で組み合わせると、単位形態当たりの用量(メシル酸ドラセトロンとして)は、1.5mg~200mgの範囲となるであろう。
【0084】
本発明の第1の態様。
上記のとおり、本発明は、MDDの治療に使用するための、
(a)前記5HT3-アンタゴニスト、および
(b)有効1日用量の前記プラミペキソールまたはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物
を含む医薬の組合せを提供する。
【0085】
第1の態様によれば、本発明の実施形態は、
MDDの治療を必要とする患者における前記治療のために、有効1日用量のプラミペキソールまたはその薬学的に許容される塩と組合せて使用するための5HT3-アンタゴニスト、および
MDDに罹患している患者を治療する方法であって、5HT3-アンタゴニストを、有効1日用量のプラミペキソールまたはその薬学的に許容される塩と組合せて、前記治療を必要とする患者に投与するステップを含む方法
を含む。
【0086】
特に、本発明は、大うつ病性障害に罹患している患者を治療する方法であって、有効1日用量のプラミペキソールまたはその薬学的に許容される塩と組合せて、有効量の5HT3-アンタゴニストで、前記患者を治療するステップを含む方法を提供する。
【0087】
通常、前記5HT3-アンタゴニストは、プラミペキソールの用量調整期間中に使用する1日用量を含む0.375mg~45mgのプラミペキソール二塩酸塩一水和物と同等なプラミペキソールの有効1日用量と組合せて、1μg~300mgの1日用量で投与される。
【0088】
当技術分野において公知のとおり、重大な有害作用を引き起こす可能性のある薬物で患者を治療する場合、プラミペキソールは、最低用量(1日当たり0.375mgから3mg未満まで、または4.5mg未満まで)で、5HT3-アンタゴニストと組合せて使用され得るが、本発明により提供される別の利点は、前記5HT3-アンタゴニストが同時に存在するため、安全な用量調整閾値量が増加することである。
【0089】
さらに、本発明によれば、5HT3-アンタゴニストの同時投与により、PDの治療に推奨されているプラミペキソール二塩酸塩一水和物の最大1日用量より大幅に高い1日用量のプラミペキソールの投与が可能になる。
【0090】
術後の悪心および嘔吐または化学療法誘発性の悪心および嘔吐の予防に適応される5HT3-アンタゴニストは、本発明によれば、プラミペキソールと組合せて、問題なく使用することができる。
【0091】
この場合、本発明の方法の実施において(または本発明の使用に従うと)、これらの5HT3-アンタゴニストの1日用量は、悪心および嘔吐の予防または治療のための現在のプロトコルに従って、外科手術またはがんの化学療法を受けている小児または成人の患者において、前記予防または治療をする量と、少なくとも同程度の高さである。
【0092】
通常、本発明によるMDDの治療のための方法(または使用)において、プラミペキソールまたはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物は、通常、医薬担体またはビヒクルと混合した医薬組成物にして、0.375mg~45mg、1.5mg~45mg、3mg~45mg、5mg~45mg、6mg超~45mgおよび6.5mg~45mgのプラミペキソール二塩酸塩一水和物、場合により1.5mg~20mg、有利には3mg~20mg、好ましくは5mg~20mgのプラミペキソール二塩酸塩一水和物と同等な1日用量で、前記治療を必要とする患者に投与される。前記方法(または使用)において、プラミペキソールは、5HT3-アンタゴニストと組合せて前記患者に投与される。
【0093】
特定の実施形態によれば、前記方法(または使用)において、前記プラミペキソールまたはその薬学的に許容される塩は、プラミペキソール二塩酸塩一水和物であり、1.5mg~20mg、有利には3mg~20mg、通常、5mg~20mgの1日用量で前記患者に経口投与される。この実施形態によれば、前記方法(または使用)において、前記プラミペキソールまたはその薬学的に許容される塩は、任意の投与経路で投与される前記5HT3-アンタゴニストと組合せて、前記患者に投与される。
【0094】
好ましくは、本発明による、患者においてMDDを治療する方法(または治療するための使用)において、
前記組合せにおける前記5HT3-アンタゴニストは、2mg~32mgのオンダンセトロン塩基と同等な1日用量で投与されるオンダンセトロンまたはその薬学的に許容される塩、ならびに75mg~200mgのメシル酸ドラセトロンと同等な1日用量で投与されるドラセトロンおよびその薬学的に許容される塩からなる群から選択され、かつ
前記プラミペキソールまたはその薬学的に許容される塩は、0.375mg~45mg、特に1.5mg~45mg、3mg~45mg、5mg~45mg、6mg超~45mgおよび6.5mg~45mgのプラミペキソール二塩酸塩一水和物と同等な1日用量で投与される。
【0095】
通常、前記方法(または使用)において、前記5HT3-アンタゴニストは、4mg~32mgの有効1日用量(オンダンセトロンとして)のオンダンセトロンまたはその薬学的に許容される塩であり、1.5mg~20mg、有利には3mg~20mg、好ましくは5mg~20mgの有効1日用量(プラミペキソール二塩酸塩一水和物として)の前記プラミペキソールまたはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物と組合せて投与される。
【0096】
MDDの治療用にそれらを投与するために、前記プラミペキソールまたはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物、および前記5HT3-アンタゴニストは、それぞれ、医薬担体またはビヒクルと混合した形で医薬組成物に製剤化される。特に、前記組合せにおいて、前記5HT3-アンタゴニストは、活性成分として単位形態当たりの有効量の前記5HT3-アンタゴニストを、医薬担体またはビヒクルと混合した形で含む単位投与形態の医薬組成物に製剤化され、かつ、それとは別に、前記プラミペキソールまたはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物もまた、活性成分として有効量の前記プラミペキソールまたはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物を、医薬担体またはビヒクルと混合した形で含む単位投与形態の医薬組成物に製剤化される。
【0097】
より具体的には、前記組合せにおいて、
前記5HT3-アンタゴニストは、前記5HT3-アンタゴニストを0.1mg~300mgの単位形態当たりの量で、医薬担体またはビヒクルと混合した形で含む単位投与形態の医薬組成物に製剤化され、かつ
前記プラミペキソールまたはその薬学的に許容される塩は、前記プラミペキソールまたはその薬学的に許容される塩を0.125mg~45mgのプラミペキソール二塩酸塩一水和物と同等な単位形態当たりの量で、医薬担体またはビヒクルと混合した形で含む単位投与形態の医薬組成物に製剤化される。
【0098】
好ましくは、前記組合せにおいて、前記組成物中の前記5HT3-アンタゴニストは、2mg~32mgのオンダンセトロン塩基と同等な単位形態当たりの量のオンダンセトロンおよびその薬学的に許容される塩または溶媒和物、ならびに25mg~200mgのメシル酸ドラセトロンと同等な単位形態当たりの量のドラセトロンおよびその薬学的に許容される塩または溶媒和物からなる群から選択される。
【0099】
プラミペキソールは、好ましくは、前記組成物中に、5mg~45mgまたは6.5mg~45mg、通常、5mg~20mgまたは6.5mg~20mgのプラミペキソール二塩酸塩一水和物と同等な単位形態当たりの量で存在する。
【0100】
このようにして得られた各医薬組成物は、MDDに罹患している患者に同時にまたは逐次に投与される。
【0101】
前記プラミペキソールまたはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物および前記5HT3-アンタゴニストはまた、前記プラミペキソールまたはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物と前記5HT3-アンタゴニストとを医薬担体またはビヒクルと混合した形で含む医薬組成物からなる固定用量配合剤に、一緒に製剤化することができる。
【0102】
通常、本発明の方法(または使用)において、前記組合せは、単位形態当たりの有効量の前記5HT3-アンタゴニスト、および単位形態当たりの有効量の前記プラミペキソールまたはその薬学的に許容される塩を、医薬担体またはビヒクルと混合した形で含む単位投与形態の医薬組成物からなる固定用量配合剤である。
【0103】
この固定用量配合剤により、プラミペキソールまたはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物と5HT3-アンタゴニストとの安全な併用投与が確実になる。
【0104】
上記のように、術後の悪心および嘔吐の予防もしくは治療、または化学療法誘発性の悪心および嘔吐の予防に適応される5HT3-アンタゴニストを使用する場合、前記5HT3-アンタゴニストの単位形態当たりの量は、この適応症に認可されている小児または成人の用量と、少なくとも同程度の高さである。しかし、その量は前記用量の6倍までにすることができる。
【0105】
上記の固定用量配合剤において、プラミペキソールの用量/単位形態は、プラミペキソール二塩酸塩一水和物として、0.125mg~45mg、3mg~45mg、4.5mg超~45mg、5mg~45mg、6mg超~45mgおよび6.5mg~45mgからなる群から選択される範囲にある。通常、前記範囲は、0.125mg~20mg、3mg~20mg、4.5mg超~20mg、5mg~20mg、6mg超~20mgおよび6.5mg~20mgからなる群から選択され、5HT3-アンタゴニストの用量/単位形態は、1μg~300mgの範囲である。
【0106】
5HT3-アンタゴニストがオンダンセトロンまたはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物である場合、その用量/単位形態(オンダンセトロンとして)は、2mg~32mg、通常、4mg~32mgである。
【0107】
5HT3-アンタゴニストがドラセトロンまたはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物である場合、その用量/単位形態(メシル酸ドラセトロンとして)は、1.5mg~200mgである。
【0108】
前記プラミペキソールまたはその薬学的に許容される塩がプラミペキソール二塩酸塩一水和物である場合、経口IR-単位形態当たりの用量範囲は、安全性および耐容性(5HT3-アンタゴニストとの組合せの場合)に依存して、0.125mg~22.5mg、1.5mg~22.5mg、3mg~22.5mg、4.5mg超~22.5mg、5mg~22.5mg、6mg超~22.5mgおよび6.5mg~22.5mg、通常、1.5mg~10mg、3mg~10mg、4.5mg超~10mg、5mg~10mg、6mg超~10mgおよび6.5mg~10mgからなる群から選択される。5HT3-アンタゴニストがオンダンセトロン塩酸塩二水和物である場合、プラミペキソール二塩酸塩一水和物と組み合わせると、経口IR単位形態当たりのオンダンセトロンの用量は、2mg~16mg、通常、4mg~16mgのオンダンセトロン塩基と同等であろう。
【0109】
プラミペキソールまたはその薬学的に許容される塩の用量/単位形態は、プラミペキソール二塩酸塩一水和物として、緩徐放出組成物、および経皮貼付剤などの経皮治療システムを含むER製剤中、耐容性(5HT3-アンタゴニストとの組合せの場合)に依存して、1.5mg~45mg、3mg~45mg、4.5mg超~45mg、5mg~45mg、6mg超~45mgおよび6.5mg~45mg、通常、1.5mg~20mg、3mg~20mg、4.5mg超~20mg、5mg~20mg、6mg超~20mgおよび6.5mg~20mgからなる群から選択される範囲となるであろう。
【0110】
5HT3アンタゴニストがオンダンセトロンまたはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物である場合、用量/ER単位形態(オンダンセトロンとして)は、8mg~32mgの範囲であろう。
【0111】
5HT3アンタゴニストがドラセトロンまたはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物である場合、プラミペキソールを上記用量/単位形態で組み合わせると、用量/単位形態(メシル酸ドラセトロンとして)は、1.5mg~200mgの範囲であろう。
【0112】
本発明の第2の態様。
本発明の第2の態様は、有効1日用量のプラミペキソールまたはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物と組合せた、MDDの治療のための、活性成分として前記5HT3-アンタゴニストを医薬担体またはビヒクルと混合した形で含む医薬組成物からなる医薬品を調製するための前記5HT3-アンタゴニストの使用を提供する。
【0113】
本発明のこの第2の態様の第1の実施形態は、活性成分として5HT3-アンタゴニストを、医薬担体またはビヒクルと混合して含み、同様に医薬担体またはビヒクルと混合した医薬組成物中のプラミペキソールまたはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物と組合せて、MDDを治療するための、医薬組成物からなる医薬品を調製するための前記5HT3-アンタゴニストの使用を提供する。
【0114】
前記プラミペキソールの1日用量は、PDの症状の治療に推奨されているプラミペキソール二塩酸塩一水和物の最大1日用量より大幅に高くてもよい。
【0115】
この第2の態様の第2の実施形態は、プラミペキソールまたはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物を、PDの対症療法に認可されている用量と少なくとも同程度の高さの用量(プラミペキソール二塩酸塩一水和物として)と組合せた、MDDの治療のための、単位形態当たりの有効量の前記5HT3-アンタゴニストを医薬担体と混合した形で含む単位投与形態の医薬組成物からなる医薬品を調製するための前記5HT3-アンタゴニストの使用を提供する。
【0116】
特に、5HT3-アンタゴニストは、前記5HT3-アンタゴニストを1μg~300mg、0.1mg~300mgまたは1mg~300mgの単位形態当たりの量で、医薬担体またはビヒクルと混合した形で含む医薬組成物に製剤化される。
【0117】
前記プラミペキソールと組合せた、MDDの治療のための、5HT3-アンタゴニストの適応症のための、前記医薬組成物中の好ましい5HT3-アンタゴニストは、アザセトロンならびにその薬学的に許容される塩および溶媒和物、特にその塩酸塩(5mg~10mgのアザセトロン塩酸塩と同等な量/単位形態);ドラセトロンならびにその薬学的に許容される塩および溶媒和物、特にそのメシル酸塩一水和物(20mg~200mgのメシル酸ドラセトロンと同等な量/単位形態);グラニセトロンならびにその薬学的に許容される塩および溶媒和物、特にその塩酸塩(0.5mg~2mgのグラニセトロン塩基と同等な量/単位形態);オンダンセトロンならびにその薬学的に許容される塩および溶媒和物、特にその塩酸塩二水和物(2mg~32mg、通常、2mg~16mgのオンダンセトロン塩基と同等な量/単位形態);パロノセトロンならびにその薬学的に許容される塩および溶媒和物、特にその塩酸塩(0.1mg~2mg、通常、0.25mg~0.5mgのパロノセトロン塩基と同等な量/単位形態);ラモセトロンならびにその薬学的に許容される塩および溶媒和物、特にその塩酸塩(2.5μg~100μgのラモセトロン塩酸塩と同等な量/単位形態);ならびにトロピセトロンならびにその薬学的に許容される塩および溶媒和物、特にその塩酸塩(2.5mg~5mgのトロピセトロン塩基と同等な量/単位形態)からなる群から選択される。
【0118】
活性成分として前記5HT3-アンタゴニストを医薬担体またはビヒクルと混合した形で含む前記医薬組成物中の、前記5HT3-アンタゴニストは、同様に医薬担体またはビヒクルと混合した医薬組成物中のプラミペキソールと組合せて、MDDの治療のために、前記治療を必要とする患者に、同時にまたは逐次に投与される。前記医薬組成物およびその1日用量は、上記の「プラミペキソール」の部で説明されている
【0119】
これらの医薬組成物が常に互いの組合せで使用されることにより、MDDに罹患している患者の実質的かつ有効な治療のための高用量のプラミペキソールの使用が初めて可能になる。事実、本発明のこの第2の態様に従って記載されている医薬組成物は、0.375mg~45mg、特に4.5mg超~45mg、通常、5mg~45mg、6mg超~45mgまたは6.5mg~45mgのプラミペキソールの1日用量と組合せた、MDDに罹患している患者の安全な治療を可能にし、このようにして、前記患者の抑うつ状態を軽減し、回復さえさせる。場合により、前記プラミペキソールの1日用量は、4.5mg超~20mg、5mg~20mg、6mg超~20mgまたは6.5mg~20mgである。
【0120】
MDDの治療において、5HT3-アンタゴニストおよびプラミペキソールは組合せで使用され、その2種の活性構成成分は、同時にもしくは逐次に、または5HT3-アンタゴニストおよび6-プロピルアミノ-4,5,6,7-テトラヒドロ-1,3-ベンゾチアゾール-2-アミンを薬学的に許容される担体またはビヒクルと混合した形で一緒に含む医薬組成物などの固定用量配合剤として、共投与することができる。
【0121】
5HT3-アンタゴニストおよびプラミペキソールは、別々にまたは一緒に、任意の従来の経口または非経口の単位投与形態、例えば、カプセル剤、錠剤、散剤、カシェ剤、懸濁剤、溶液剤または経皮デバイスに入れて投与することができる。
【0122】
単位形態当たりの有効量での前記5HT3-アンタゴニスト、および単位形態当たりの有効量での前記プラミペキソールの個別(同時または逐次)投与の場合、これらはそれぞれ、前記5HT3-アンタゴニストを医薬担体またはビヒクルと混合した形で容器に入れたもの、および前記プラミペキソールを医薬担体またはビヒクルと混合した形でもう1つの別の容器に入れたものを含むキットにパッケージ化することができる。
【0123】
上記にも述べたように、同時投与の場合、前記5HT3-アンタゴニストおよび前記プラミペキソールは、単位形態当たりの有効量の前記5HT3-アンタゴニストと単位形態当たりの有効量の前記プラミペキソールまたはその薬学的に許容される塩とを、医薬担体またはビヒクルと混合した形で含む単位投与形態の医薬組成物からなる固定用量配合剤に、一緒に製剤化することができる。
【0124】
本発明のこの第2の態様の第3の実施形態は、MDDの治療のための医薬品を調製するための前記5HT3-アンタゴニストの使用であって、前記医薬品は、活性成分として前記5HT3-アンタゴニストを、および第2の活性成分としてプラミペキソールまたはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物を、医薬担体またはビヒクルと混合した形で含む医薬組成物からなる固定用量配合剤である、前記5HT3-アンタゴニストの使用を提供する。
【0125】
本発明のこの第2の態様のこの第3の実施形態によれば、前記固定用量配合剤は、MDDの治療に使用するための、
(a)前記5HT3-アンタゴニスト、および
(b)PDの治療に認可されている単位形態当たりの量と少なくとも同程度の高さの単位形態当たりの量の(プラミペキソール二塩酸塩一水和物として)プラミペキソールまたはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物
を、医薬担体またはビヒクルと混合した形で含む医薬組成物からなる。
【0126】
有利には、本発明のこの第2の態様のこの第3の実施形態によれば、前記固定用量配合剤は、MDDの治療のための、
(a)化学療法誘発性の悪心および嘔吐の予防に認可されている量/単位形態と少なくとも同程度の高さの量/単位形態の前記5HT3-アンタゴニスト、および
(b)PDの治療に認可されている量/単位形態と少なくとも同程度の高さの量/単位形態(プラミペキソール二塩酸塩一水和物として)のプラミペキソールまたはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物
を、医薬担体またはビヒクルと混合した形で含む単位投与形態の医薬組成物からなる。
【0127】
一般に、上記の医薬組成物中、前記5HT3-アンタゴニストは、1μg~300mgの量で存在し、前記プラミペキソールは、0.125mg~45mgの量で存在する。
【0128】
5HT3-アンタゴニストが術後の悪心および嘔吐の予防もしくは治療、または化学療法誘発性の悪心および嘔吐の予防に適応されるものの中から選択される場合、前記5HT3-アンタゴニストは、前記組成物中に、術後の悪心および嘔吐の予防もしくは治療、または化学療法誘発性の悪心および嘔吐の予防に有効であることが分かっている、または認可されている量/単位形態と少なくとも同程度の高さの量/単位形態で、および前記用量の6倍までの用量で存在する。前記各5HT3-アンタゴニストおよびMDDの治療において使用するための医薬組成物中のそれらの単位形態当たりの量は、「5HT3-アンタゴンニスト」の部で説明されている。
【0129】
これらの固定用量配合剤中、プラミペキソールの用量/単位形態は、プラミペキソール二塩酸塩一水和物として、通常、0.125mg~20mg、有利には3mg~20mg、好ましくは5mg~20mg、6mg超~20mgまたは6.5mg~20mgの範囲であり、5HT3-アンタゴニストの用量/単位形態は、1μg~300mgの範囲である。
【0130】
5HT3-アンタゴニストがオンダンセトロンまたはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物である場合、その用量/単位形態(オンダンセトロンとして)は、2mg~32mg、通常、4mg~32mgである。
【0131】
5HT3-アンタゴニストがドラセトロンまたはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物である場合、その用量/単位形態(メシル酸ドラセトロンとして)は、1.5mg~200mgである。
【0132】
有利な固定用量配合剤は、
(a)アロセトロンまたはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物、特にその塩酸塩(0.25mg~2mgの量/単位用量(アロセトロンとして));アザセトロンまたはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物、特にその塩酸塩(5mg~10mgの量/単位用量);ドラセトロンまたはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物、特にそのメシル酸塩一水和物(25mg~200mgの量/単位用量(メシル酸ドラセトロンとして));グラニセトロンまたはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物、特にその塩酸塩(0.5mg~2mgのグラニセトロン塩基と同等な量/単位用量);オンダンセトロンまたはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物、特にその塩酸塩二水和物(2mg~32mgのオンダンセトロン塩基と同等な量/単位用量);パロノセトロンまたはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物、特にその塩酸塩(0.25mg~0.5mgのパロノセトロン塩基と同等な量/単位用量);ラモセトロンまたはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物、特にその塩酸塩(50μg~40mgの量/単位用量);およびトロピセトロンまたはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物、特にその塩酸塩(2.5mg~5mgのトロピセトロン塩基と同等な量/単位用量)からなる群から選択される5HT3-アンタゴニスト、および
(b)プラミペキソール二塩酸塩一水和物の、0.125mg~45mg、好ましくは5mg~45mg、6mg超~45mgまたは6.5mg~45mgと同等な量、通常、0.125mg~20mg、3mg~20mg、4.5mg超~20mg、5mg~20mg、6mg超~20mgおよび6.5mg~20mgからなる群から選択される範囲と同等な量のプラミペキソールまたはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物
を、医薬担体またはビヒクルと混合した形で含む単位投与形態の薬学的組成物からなる。
【0133】
一実施形態によれば、前記有利な組成物は、活性成分として、
(a)オンダンセトロンまたはその塩もしくは溶媒和物の2mg~32mgの量(オンダンセトロン塩基として);およびドラセトロンの25mg~200mgの量(メシル酸ドラセトロンとして)からなる群から選択される5HT3-アンタゴニスト、および
(b)0.125mg~45mgの量(プラミペキソール二塩酸塩一水和物として)のプラミペキソールまたはその薬学的に許容される塩
を、医薬担体またはビヒクルと混合した形で含む。
【0134】
前記有利な組成物は、好ましくは、構成成分(b)として、プラミペキソールまたはその薬学的に許容される塩を、3mg~45mg、5mg~45mg、6mg超~45mgおよび6.5mg~45mgからなる群から選択される量(プラミペキソール二塩酸塩一水和物として)で含む。
【0135】
通常、MDDの治療に使用するための5HT3-アンタゴニスト/プラミペキソールの固定用量配合剤は、オンダンセトロンまたはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物の、2mg~32mgのオンダンセトロン塩基に相当する量からなる群から選択される5HT3-アンタゴニストを構成成分(a)として、およびプラミペキソールまたはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物を、0.125mg~20mg、有利には3mg~20mg、好ましくは5mg~20mg、6mg超~20mgまたは6.5mg~20mgのプラミペキソール二塩酸塩一水和物と同等な量で、構成成分(b)として、医薬担体またはビヒクルと混合した形で含む医薬組成物からなる。
【0136】
ここで、プラミペキソールの用量/単位形態は、特にプラミペキソールの1日用量の用量調整の場合に、またはそれより頻度は低いが小児うつ病患者の治療に使用する場合に、使用することができる低用量を含む。
【0137】
製剤
経口、皮下、静脈内、経皮または局所の各投与のための本発明の医薬組成物において、活性成分は、好ましくは、従来の医薬担体またはビヒクルと混合した単位投与形態で投与される。
【0138】
本医薬組成物は、5HT3-アンタゴニストもしくはプラミペキソールまたはその両方の活性成分が、希釈剤(セルロース、デキストロース、ラクトース、マンニトール、ソルビトールまたはスクロースなど)、滑沢剤(酸、ステアリン酸カルシウムもしくはステアリン酸マグネシウム、ポリエチレングリコール、シリカまたはタルクなど)、および必要な場合、結合剤(ケイ酸アルミニウムマグネシウム、ゼラチン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムまたはポリビニルピロリドンなど)を含めてもよい担体またはビヒクルと混合される、経口形態(錠剤またはゼラチンカプセル剤など)に製剤化されてもよい。
【0139】
前記経口形態は、5HT3-アンタゴニストもしくはプラミペキソール(もしくはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物)またはその両方の活性成分の所定の量を徐々に放出することにより、長時間のまたは遅延性の活性を有するように、スクロースまたは種々のポリマーでコーティングされた錠剤とすることができ、または代替として、錠剤は、担体(アクリル酸およびメタクリル酸のポリマーおよびコポリマー、ヒドロキシプロピルエチルセルロースなどのセルロース誘導体、または他の適切な材料など)を使用して製造することができる。経口製剤は、プラミペキソール(もしくはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物)もしくは5HT3-アンタゴニスト、またはその両方の活性成分の徐放を可能にするカプセルの形態とすることもできる。
【0140】
本医薬組成物はまた、貼付製剤などのTTSに製剤化されてもよく、その場合、活性成分または活性成分の混合物には、補助剤、例えば、D-ソルビトール、ゼラチン、カオリン、メチルパラベン、ポリソルベート80、プロピレングリコール、プロピルパラベン、ポビドン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリル酸ナトリウム、酒石酸、二酸化チタンおよび精製水などを含めてもよい。貼付製剤はまた、皮膚透過促進剤、例えば、乳酸エステル(例えば、乳酸ラウリル)、トリアセチンまたはジエチレングリコールモノエチルエーテルなどを含有してもよい。
【0141】
上記の医薬組成物において、好ましいプラミペキソールまたはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物の活性成分は、プラミペキソール塩基またはその二塩酸塩一水和物であり、好ましい5HT3-アンタゴニストの活性成分は、オンダンセトロン塩基もしくはその塩酸塩二水和物、またはドラセトロン塩基もしくはそのメシル酸塩一水和物である。
【0142】
プラミペキソールと組合せた、企図される、MDDの治療における使用のために、5HT3-アンタゴニストは、前記5HT3-アンタゴニストが医薬担体またはビヒクルと混合される医薬組成物に製剤化される。
【0143】
投与量、すなわち患者に投与される単回用量中の活性成分の量は、患者の年齢、体重および健康状態に依存して広範に変動し得る。上記で説明した単位投与形態の医薬組成物におけるこの投与量は、各5HT3-アンタゴニストの効力および患者の年齢に応じて、1μg~300mgの単回用量を、および患者の年齢に応じて、0.125mg~45mg、通常、0.125mg~20mg、有利には3mg~20mg、好ましくは5mg~20mgまたは6.5mg~20mgのプラミペキソール二塩酸塩一水和物と同等なプラミペキソールまたはその薬学的に許容される塩の単回用量を、各々の活性成分の用量の強度に応じて、静脈内、皮下、経口または経皮の各投与により、1日1~3回投与する量を含む。5HT3-アンタゴニストがオンダンセトロン塩酸塩二水和物である場合、前記投与量(単回用量)は、4mg~16mg(オンダンセトロン塩基として)の範囲であり、プラミペキソールまたはその薬学的に許容される塩がプラミペキソール二塩酸塩一水和物である場合、前記投与量(単回用量)は、0.125mg~45mg、3mg~45mg、5mg~45mg、6mg超または6.5mg~45mg、通常、0.125mg~20mg、有利には3mg~20mg、好ましくは5mg~20mgまたは6.5mg~20mgの範囲である。
【0144】
オンダンセトロンは、経皮薬物送達システム(TDDS)により投与することもできる。「経皮薬物送達システム」は、経皮製剤およびそのような経皮製剤を組み入れた経皮貼付剤を使用する経皮送達を提供する。例えば、経皮薬物送達システムには、5HT3-アンタゴニスト(オンダンセトロンなど)を含む貼付剤、クリーム剤、ゲル剤、ローション剤またはペースト剤の形態で、組成物を含めることができる。経皮製剤の例としては、以下に限定されないが、US6,562,368に記載されているもの、US7,029,694、US7、179,483、US8,241,662およびUS2009/0018190に記載されている経皮ゲル製剤、WO2005/039531、US2007/022379、US2010/0216880、US2014/0037713およびUS8,652,491に記載されている、溶液剤、クリーム剤、ローション剤、スプレー剤、軟膏剤、ゲル剤、エアゾール剤および貼付薬物送達などの局所適用または経皮適用に利用することができる経皮または経粘膜の医薬製剤、WO2013/061969およびUS2014/0271796に記載されている経皮吸収製剤を挙げることができ、これらの開示は、その全体が、参照により本明細書に組み込まれる。経皮貼付剤としてはまた、以下に限定されないが、US9,782,536に記載されている、軟性の特徴を備えた留置硬性カテーテルおよび/または軟性カテーテルアタッチメントを有するパッチポンプ、US9,724,462に記載されている選択的に活性化可能なパッチポンプ、US9,623,173に記載されている、ワイヤレス通信システムにつながれているパッチポンプ、US9,616,171に記載されている整合層のパッチポンプ、US8,915,879に記載されている注入ポンプ、US8,480,649に記載されている可搬型注入薬物送達、US8,282,366に記載されているマイクロポンプ、およびUS7,828,771に記載されているパッチポンプも挙げることができ、これらの開示は、その全体が、参照により本明細書に組み込まれる。他の経皮貼付剤としては、以下に限定されないが、US8,802,134に記載されている、アクリル系ポリマーを接着基剤として含む接着剤層組成物中にオキシブチニンが組み込まれ、アクリル系ポリマーは、ポリメタクリル酸メチルとポリアクリレートとのコポリマーである貼付剤、US8,877,235に記載されている、支持層および当該支持層の少なくとも1つの表面に配置されている接着剤層からなる貼付剤、US5,441,740およびUS5,500,222に記載されている、モノグリセリドまたは脂肪酸モノグリセリドの混合物を皮膚透過促進剤として使用する貼付剤、US5,686,097、US5,747,065、US5,750,137およびUS5,900,250に記載されている、モノグリセリドまたはモノグリセリドと乳酸エステルとの混合物を皮膚透過促進剤として使用するための貼付剤、US5,614,211およびUS5,635,203に記載されている、薬物放出に影響を及ぼさない、非律速連結層をリザーバの皮膚隣接面に備える貼付剤、US5,212,199、US5,227,169、US5,601,839およびUS5,834,010に記載されている、トリアセチンを透過促進剤として使用する貼付剤、US6,555,129に記載されている、自己接着性の層の形態のマトリックス物質を備え、当該マトリックス物質がアンモニウム基を含有する(メタ)アクリレートコポリマーからなる貼付剤、US6,743,441、7,081,249、US7,081,250、US7,081,251、US7,081,252およびUS7,087,241に記載されている経皮貼付剤を挙げることができ、これらの開示は、その全体が、参照により本明細書に組み込まれる。好ましくは、経皮薬物送達システムは、貼付剤、パッチポンプ、注入ポンプまたはマイクロポンプである。
【0145】
本発明の医薬組成物は、様々な投与法に好適な従来の添加剤とともに製剤化される。特に有利であるのは、錠剤、複数割線錠、コーティング錠、口腔内崩壊錠、徐放錠、硬カプセル剤または軟カプセル剤、徐放カプセル剤、経皮投与用貼付剤、所定の単位形態の液体経口溶液剤、シロップ剤または懸濁剤、および静脈内投与または皮下投与用のバイアルの形態の製剤である。
【0146】
したがって、例えば、プラミペキソールまたはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物(単位用量当たりの量(プラミペキソール二塩酸塩一水和物として)が0.125mg~45mg、3mg~45mg、5mg~45mg、6mg超~45mgまたは6.5mg~45mg、通常、0.125mg~20mg、有利には3mg~20mg、好ましくは5mg~20mgまたは6.5mg~20mgで、1日用量が1.5mg~45mg、有利には3mg~45mg、好ましくは5mg~45mgまたは6.5mg~45mg、通常、1.5mg~20mg、有利には3mg~20mg、好ましくは5mg~20mgまたは6.5mg~20mgで投与される)と組合せて長期投与される本発明による医薬組成物には、アロセトロン塩酸塩(0.25mg~2mgの量/単位用量(アロセトロンとして)で、0.25mg~3mgの1日用量で投与される);アザセトロン塩酸塩(5mg~10mgの量/単位用量で、15mg~20mgの1日用量で投与される);メシル酸ドラセトロン一水和物(25mg~200mgの量/単位用量(メシル酸ドラセトロンとして)で、75mg~200mgの1日用量で投与される);グラニセトロン塩酸塩(0.5mg~2mgのグラニセトロン塩基と同等な量/単位用量で、1.5mg~8mgの1日用量で投与される);オンダンセトロン塩酸塩二水和物(2mg~8mgのオンダンセトロン塩基と同等な量/単位用量で、6mg~32mgの1日用量投与される);パロノセトロン塩酸塩、(0.25mg~0.5mgのパロノセトロン塩基と同等な量/単位用量で、0.75~2mgの1日用量で投与される);ラモセトロン塩酸塩(50μg~20mgの量/単位用量で、75μg~40mgの1日用量で投与される);またはトロピセトロン塩酸塩(2.5mg~5mgのトロピセトロン塩基と同等な量/単位用量で、7.5~20mgの1日用量で投与される)を含めることができる。
【0147】
小児患者または肥満患者の場合、5HT3-アンタゴニストの1日用量は、体重を基準にして決定することができる。したがって、例えば、アザセトロン塩酸塩は、0.4~0.5mg/kgの1日用量で投与することができ、メシル酸ドラセトロンは、9~9.5mg/kgの1日用量で投与することができ、グラニセトロン塩酸塩は、0.09~0.11mg/kgの1日用量で投与することができ、オンダンセトロン塩酸塩二水和物は、0.45~0.55mg/kgの1日用量で投与することができ、パロノセトロン塩酸塩は、0.03mg/kgの1日用量で投与することができ、トロピセトロン塩酸塩は、0.5~0.6mg/kgの1日用量で投与することができる。
【実施例1】
【0148】
5HT3-アンタゴニストがヒトにおいてプラミペキソールの胃腸の(GI)有害作用(AE)を予防する能力を試験した。
【0149】
第I相試験は、プラミペキソール二塩酸塩一水和物(「プラミペキソール」)の経口単回用量を、オンダンセトロン塩酸塩二水和物(「オンダンセトロン」)の経口単回用量を伴い、または伴わずに服用する被験者において実施した。試験は、単施設、単盲検試験とした。
【0150】
本試験の目的は、パーキンソン病の治療に認可されている用量または臨床試験においてうつ病の治療に有効であると示されている用量と同等か、またはそれらより高い用量で与えられたプラミペキソールの胃腸の副作用を、オンダンセトロンが安全に減弱化できることを立証することであった。
【0151】
試験に登録するためには、参加者は次の参加/除外基準:
【0152】
主要な参加基準
1.年齢20~45歳の男性および女性両方の被験者。
2.妊娠可能性のある女性は、スクリーニング期間から試験終了時来院の14日後まで、禁欲することに、そうでない場合は次の医学的に許容される避妊形態、すなわち、殺精子ゼリーを伴うコンドーム、殺精子ゼリーを伴うペッサリーもしくは子宮頚部キャップ、または子宮内避妊器具(IUD)のうちいずれか2つを使用することに同意しなければならない。男性パートナーが精管切除術を受けている女性は、医学的に許容される避妊の1つの追加形態を使用することに同意しなければならない。被験者は、安全対策として、上記の受胎調節法を最終来院後14日間行うことに同意しなければならない。
3.妊娠可能性のない女性は、手術による妊孕力の喪失(子宮摘出後状態、両側卵巣摘出後状態または両側卵管結紮後状態)または閉経後少なくとも12カ月と定義される女性であり、試験期間中に避妊を必要としない。その理由は原資料に記載されなければならない。
4.女性パートナーに妊娠可能性のある男性は、有効性が高く、医学的に許容される形態の避妊を、スクリーニング期間から試験終了時来院の14日後まで使用することに同意しなければならない。女性パートナーに妊娠可能性があるが、自分自身が手術により妊孕力が喪失している(精管切除術後状態の)男性は、殺精子薬を伴うコンドームを同じ期間使用することに同意しなければならない。男性の被験者は、安全対策として、上記の受胎調節法を最終来院後14日間行うことに同意しなければならない。
5.被験者は、精神医学的個人歴および家族歴ならびに身体検査、心電図(ECG)、バイタルサインおよび臨床検査の結果を含むその病歴によって判定される良好な健康状態でなければならない。医学的な異常状態のある被験者については、試験責任医師または被指名者が、その異常状態が被験者の健康にさらなる重大なリスクをもたらしたり、試験の目的を妨げたりしないと考える場合にのみ、参加することができる。
6.被験者は、その医学的状態における変化を明瞭かつ確実に報告できなければならない。
7.肥満度指数(BMI)が19.0~32.0kg/m2(上下限を含む)である被験者。
8.複数の丸剤またはカプセル剤を同時に嚥下できる被験者。
9.被験者は、試験の目的および必要な手順を理解し、試験に参加し、試験の手順および規定に従う意思があることを示すインフォームドコンセントのフォームに署名していなければならない。
【0153】
主要な除外基準:
被験者を試験の登録から除外する基準は次のとおりとした:
1.試験期間中に被験者の安全を妨げる、被験者を過度のリスクに曝す、または試験の目的を妨げる可能性がある、何らかの臨床的に関連する急性または慢性の疾患。
2.胃腸、肝臓もしくは腎臓の疾患、または試験薬の吸収、分布、代謝もしくは排泄を妨げることが知られている他の状態の既往歴または存在。
3.物質濫用の既往歴、既知の薬物嗜癖、または薬物濫用もしくはアルコールの検査が陽性。
4.薬物または他の重大なアレルギーの既往歴。
5.プラミペキソールに対する、またはオンダンセトロンもしくは類似のセロトニン受容体アンタゴニストに対する、またはアプレピタントもしくは類似のサブスタンスP/NK1受容体アンタゴニストに対する既知の過敏性。
5.過去および/または現在のQT間隔延長、先天性QT延長症候群、電解質異常(例えば、低カリウム血症または低マグネシウム血症)、うっ血性心不全、徐脈性不整脈、またはスクリーニング、1日目または投与前の、QT延長または第1度房室ブロックにつながる他の医薬製品、男性では≧450QTcFおよび女性では≧470QTcF。
7.試験登録の1カ月以内の中枢作用性薬または制吐薬での治療。
8.タバコまたはニコチンの使用者(試験に登録する1年以上前にタバコもニコチンも使用を止めた被験者を除く)。
9.キサンチンを含有する飲料の過剰な1日消費量(すなわち>500mg/日のカフェイン)。
10.試験実施期間中(スクリーニング来院から試験薬の最終投与まで)、長期間の集中的身体運動を削減するのを厭う被験者。
11.B型肝炎表面抗原、C型肝炎抗体の検査結果が陽性。
12.HIV1または2の血清学的検査結果が陽性。
13.試験期間中に何らかの医学的治療または歯科治療が必要になる可能性がある。
14.1日目の入院前14日以内の何らかの処方薬またはOTC医薬品の使用。加えて、中枢効果のある薬剤はいずれも、薬物半減期が14日より長い場合、入院(1日目)の前、その薬物半減期の5倍に等しい期間、禁止される。
15.試験期間中に協力しそうにない、および/または試験責任医師の意見に従うかが疑わしい被験者。
16.緊急の際に連絡がとれない被験者。
17.試験登録の30日以内の試験用薬物の摂取。
18.スクリーニングでC-SSRS(コロンビア自殺重症度評価尺度)により査定される自殺念慮のエビデンスを、過去6カ月以内に示している。
【0154】
参加者は、試験に登録後、漸増する経口単回用量のプラミペキソールを、1日1回朝、服用した(試験の期間1)。プラミペキソールの開始用量は0.5mgとした。その用量は、1日につき0.5mgの増分で増量された。被験者(男性/女性)がその人の最低不耐容用量(FID-1)に達すると、上向きの用量漸増を中止した。最低不耐容用量(FID)は、以下のように定義した:
- 1エピソードの嘔吐、または
- 2エピソードのレッチング、または
- 1エピソードの1時間より長い重度の悪心(グレード3;日常生活の活動を妨げる悪心または不十分な経口カロリー摂取もしくは水分摂取と定義され、経管栄養、完全非経口栄養または入院を指示される)、または
- 4時間毎の評価で3連続エピソードの中等度の悪心(グレード2;自覚症状があるが、日常生活の活動を妨げないものと定義される)、または
- 1エピソードの中等度の下痢(グレード2;基準より4~6回多い便と定義される)。
【0155】
被験者がプラミペキソール単独でFID-1に達した場合、その被験者は、少なくとも5日間休薬し、その後、試験の期間2に入った。この期間中に、被験者は、経口オンダンセトロン塩酸塩二水和物(10mg、これは8mgのオンダンセトロン塩基と同等)と一緒に、経口単回1日用量のプラミペキソールの服用を0.5mgで開始し、被験者が再度上記に定義した不耐容用量に達するまで、0.5mgの増分で漸増していった。経口プラミペキソールに経口オンダンセトロンを加えた際のFIDを、FID-2と呼ぶことにした。
【0156】
期間2の間に、被験者が、FID-1と同じかまたはそれより低い用量でFID-2に達した場合、試験責任医師が安全性の問題はないと判断し、被験者が同意すれば、被験者はFID-2の用量と同用量のプラミペキソールを、前より高い用量の経口オンダンセトロン塩酸塩二水和物(20mg、これは16mgのオンダンセトロン塩基と同等)と一緒に、その翌日に服用した。実施計画書には、前記被験者は、用量調整の残りの期間を、不耐容用量(FID2+)に達するまで、前より高い用量の経口オンダンセトロン塩酸塩二水和物(20mg、これは16mgのオンダンセトロン塩基と同等)で継続するべきであることを明記した。実施計画書の他の条項はすべて、変更しないままとした。評価は用量漸増日用に計画したものと同じとした。
【0157】
各試験日に、被験者を、薬物投与後8時間まで、AE、バイタルサイン、ECGについてフォローアップした。さらに、スクリーニング時および試験の終了時に、医学的試験項目群(laboratory panel)を採用した。
【0158】
3名の被験者が試験に登録した。次の表1に、被験者の人口統計学的特性をまとめている。
【0159】
【0160】
被験者全員が、試験期間中にFID-1(プラミペキソール単独)に達した。5名の被験者全員において、用量制限毒性は胃腸の有害事象であった。被験者全員において、FID-2はFID-1より高かった。試験の期間2の間に、被験者5名中3名が実施計画書によって許容されたプラミペキソールの最大用量6mgに耐容性を示し、したがって、これらの被験者はFID-2(プラミペキソールのオンダンセトロンとの組合せ)に達しなかった。換言すれば、オンダンセトロンをプラミペキソールと同時投与すると、高用量のプラミペキソールに関連する胃腸の用量制限有害事象の発生が予防された。表2は、各被験者についての、FID-1(プラミペキソール単独)およびFID-2(プラミペキソール+オンダンセトロン)の値の一覧である。
【0161】
【0162】
次の表3に示すように、被験者全員において、期間2の間の最大耐容用量(MTD)は、期間1の間のMTDより高く、被験者2名において、MTD-2は3倍を超えて増加した。
【0163】
【0164】
結果から、オンダンセトロンをプラミペキソールと共投与すると、プラミペキソールの用量を耐容可能に増加させることができ、その結果、プラミペキソールを単独で投与した場合より高いプラミペキソール用量での耐容性が実現するということが分かった。
【0165】
結論として、オンダンセトロンをプラミペキソールと経口高用量で共投与すると、プラミペキソールがパーキンソン病の症状の治療に推奨されている有効用量と同程度の高さの、またはそれより高い用量で投与された場合に、胃腸のAEの発生が予防された。
【0166】
参考文献
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