(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-05
(45)【発行日】2023-12-13
(54)【発明の名称】光シート顕微鏡機能ユニットを有する顕微鏡システム
(51)【国際特許分類】
G02B 21/00 20060101AFI20231206BHJP
【FI】
G02B21/00
(21)【出願番号】P 2019571063
(86)(22)【出願日】2018-06-25
(86)【国際出願番号】 EP2018066943
(87)【国際公開番号】W WO2018234582
(87)【国際公開日】2018-12-27
【審査請求日】2021-06-25
(31)【優先権主張番号】102017114029.8
(32)【優先日】2017-06-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】511079735
【氏名又は名称】ライカ マイクロシステムズ シーエムエス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Leica Microsystems CMS GmbH
【住所又は居所原語表記】Ernst-Leitz-Strasse 17-37, D-35578 Wetzlar, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ヴェアナー クネーベル
(72)【発明者】
【氏名】フローリアン ファールバッハ
【審査官】越河 勉
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-540996(JP,A)
【文献】特開2006-323075(JP,A)
【文献】特表2015-523602(JP,A)
【文献】特表2014-531060(JP,A)
【文献】特表2016-540989(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0048012(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第102016104651(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 21/00
G02B 21/06-21/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
照明対物レンズが第1の対物レンズ(20)によって形成され、検出対物レンズが別個の第2の対物レンズ(24)によって形成されている光シート顕微鏡機能ユニット(20,24,30)と、少なくとも1つのさらなる光学顕微鏡機能ユニット(24,48)と、を含む顕微鏡システム(10)において、
前記さらなる光学顕微鏡機能ユニット(24,48)は、前記第2の対物レンズ(24)によって形成されている検出対物レンズを有しており、
前記顕微鏡システム(10)は、前記光シート顕微鏡機能ユニット(20,24,30)および前記さらなる光学顕微鏡機能ユニット(24,48)がそれぞれ前記第2の対物レンズ(24)によって形成されかつ共通に使用される前記検出対物レンズを介して受光する検出光に基づく相関画像評価のための評価ユニット(100)を有して
おり、
前記顕微鏡システム(10)は、前記第1の対物レンズ(20)が保持されている第1のスタンド部分(14)と、前記第2の対物レンズ(24)が前記第1の対物レンズ(20)に対向するように保持されている第2のスタンド部分(16)と、から構成されている顕微鏡スタンド(12)を有しており、
前記さらなる光学顕微鏡機能ユニット(24,48)は、点状に走査する試料照明および/または広視野試料照明のための前記第2のスタンド部分(16)に割り当てられた照明モジュール(48)を含むことを特徴とする、
顕微鏡システム(10)。
【請求項2】
前記さらなる光学顕微鏡機能ユニット(24,48)は、前記第2の対物レンズ(24)によって形成されている照明対物レンズを有する、
請求項1記載の顕微鏡システム(10)。
【請求項3】
前記顕微鏡システム(10)は、前記光シート顕微鏡機能ユニット(20,24,30)から前記第1の対物レンズ(20)によって生成された照明焦点(34)を前記第2の対物レンズ(24)の焦点平面に偏向させる光偏向装置(36,38)を有している、
請求項1または2記載の顕微鏡システム(10)。
【請求項4】
前記光偏向装置(36)は、前記照明焦点(34)を前記第2の対物レンズ(24)の光軸(O)に対して垂直に偏向させる少なくとも1つのミラー素子を有し、前記ミラー素子は、好適には前記第1の対物レンズ(20)または前記第2の対物レンズ(24)に取り付けられている、
請求項3記載の顕微鏡システム(10)。
【請求項5】
前記光シート顕微鏡機能ユニット(20,24,30)は、前記第2の対物レンズ(24)によって受光された検出光を検出するために前記第2のスタンド部分(16)に配置された表面センサ(46)を有する、
請求項1から4までのいずれか1項記載の顕微鏡システム(10)。
【請求項6】
前記照明モジュール(48)は、点状に走査する試料照明のためのスキャナ(52)を含む、
請求項1から5までのいずれか1項記載の顕微鏡システム(10)。
【請求項7】
前記照明モジュール(48)は、前記第2の対物レンズ(24)によって受光された検出光のためのデスキャン検出器を形成するスポットセンサ(54)を有する、
請求項6記載の顕微鏡システム(10)。
【請求項8】
前記光シート顕微鏡機能ユニット(20,24,30)の前記表面センサ(46)は、同時に前記第2の対物レンズ(24)によって受光される検出光のために、前記さらなる光学顕微鏡機能ユニット(24,48)に割り当てられた非デスキャン検出器を形成する、
請求項5記載の顕微鏡システム(10)。
【請求項9】
前記光シート顕微鏡機能ユニット(20,24,30)は、前記第1のスタンド部分(14)に割り当てられている光シート発生器(30)を含む、
請求項4から8までのいずれか1項記載の顕微鏡システム(10)。
【請求項10】
前記顕微鏡システム(10)は、前記第2のスタンド部分(16)もしくは前記第2のスタンド部分(16)の1つのサブユニット(22,94)を、前記第1のスタンド部分(14)に対して相対的にもしくは前記第1のスタンド部分(14)の1つのサブユニット(18)に対して相対的に調整するための調整装置(70,96)を含む、
請求項4から9までのいずれか1項記載の顕微鏡システム(10)。
【請求項11】
前記調整装置(70,96)は、前記第2のスタンド部分(16)または前記第2のスタンド部分(16)の前記1つのサブユニット(22,94)を、前記第1の対物レンズ(20)の光軸(O)に対して垂直にかつ前記第2の対物レンズ(24)の光軸(O)に対して垂直に存在するシフト平面内で、前記第1のスタンド部分(14)に対して相対的にもしくは前記第1のスタンド部分(14)の前記1つのサブユニット(18)に対して相対的にシフトさせるように構成されているスライドユニット(70)を含む、
請求項10記載の顕微鏡システム(10)。
【請求項12】
前記調整装置は、前記第2のスタンド部分(16)または前記第2のスタンド部分(16)の前記1つのサブユニット(22,94)を、前記第1の対物レンズ(20)の光軸(O)に対して垂直にかつ前記第2の対物レンズ(24)の光軸(O)に対して垂直に存在する旋回軸(S)周りで、前記第1のスタンド部分(14)に対して相対的にもしくは前記第1のスタンド部分(14)の前記1つのサブユニット(18)に対して相対的に旋回させるように構成されている旋回ユニット(96)を含む、
請求項10または11記載の顕微鏡システム(10)。
【請求項13】
前記スライドユニット(70)は、前記第2のスタンド部分(16)の前記1つのサブユニット(94)を前記第2の対物レンズ(24)の焦点平面に対して平行に存在するシフト平面内で前記第1のスタンド部分(14)に対して相対的にシフトさせるように構成されており、前記旋回ユニット(96)は、前記第2のスタンド部分(16)をその全体において前記旋回軸(S)周りで前記第1のスタンド部分(14)に対して相対的に旋回させるように構成されている、
請求項11を引用する請求項12記載の顕微鏡システム(10)。
【請求項14】
前記さらなる光学顕微鏡機能ユニット(24,48)は、その全体が前記第2のスタンド部分(16)に割り当てられている、
請求項4から13までのいずれか1項記載の顕微鏡システム(10)。
【請求項15】
前記さらなる光学顕微鏡機能ユニット(24,48)は、点状に結像する顕微鏡、特に走査型顕微鏡を形成する、
請求項1から14までのいずれか1項記載の顕微鏡システム(10)。
【請求項16】
前記走査型顕微鏡は、共焦点顕微鏡、多光子顕微鏡、STED顕微鏡、RESOLFT顕微鏡、FCS顕微鏡、分光顕微鏡、FLIM顕微鏡またはCARS/SRS顕微鏡である、
請求項15記載の顕微鏡システム(10)。
【請求項17】
前記さらなる光学顕微鏡機能ユニット(24,48)は、広視野顕微鏡、特に局在顕微鏡である、
請求項1から14までのいずれか1項記載の顕微鏡システム(10)。
【請求項18】
前記顕微鏡システム(10)の使用位置において、前記第1および第2のスタンド部分(14,16)の一方は、下方のスタンド部分であり、他方のスタンド部分は、上方のスタンド部分である、
請求項1から17までのいずれか1項記載の顕微鏡システム(10)。
【請求項19】
顕微鏡システム(10)を用いて試料を顕微鏡結像する方法であって、
前記顕微鏡システム(10)は、照明対物レンズが第1の対物レンズ(20)によって形成され、検出対物レンズが別個の第2の対物レンズ(24)によって形成されている光シート顕微鏡機能ユニット(20,24,30)と、少なくとも1つのさらなる光学顕微鏡機能ユニット(24,48)と、を含んでいる方法において、
前記第2の対物レンズ(24)が、前記光シート顕微鏡機能ユニット(20,24,30)を用いた試料の結像のためにも、前記さらなる光学顕微鏡機能ユニット(24,48)を用いた試料の結像のためにも、共通の検出対物レンズとして使用され、
前記光シート顕微鏡機能ユニット(20,24,30)および前記さらなる光学顕微鏡機能ユニット(24,48)がそれぞれ前記第2の対物レンズ(24)によって形成されかつ共通に使用される前記検出対物レンズを介して受光する検出光に基づいて、相関画像評価が実行され
、
前記顕微鏡システム(10)は、前記第1の対物レンズ(20)が保持されている第1のスタンド部分(14)と、前記第2の対物レンズ(24)が前記第1の対物レンズ(20)に対向するように保持されている第2のスタンド部分(16)と、から構成されている顕微鏡スタンド(12)を有しており、
前記さらなる光学顕微鏡機能ユニット(24,48)は、点状に走査する試料照明および/または広視野試料照明のための前記第2のスタンド部分(16)に割り当てられた照明モジュール(48)を含むことを特徴とする、
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、照明対物レンズが第1の対物レンズによって形成され、検出対物レンズが別個の第2の対物レンズによって形成されている光シート顕微鏡機能ユニットと、少なくとも1つのさらなる光学顕微鏡機能ユニットと、を含む顕微鏡システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、特に蛍光顕微鏡検査では、試料の薄い層のみが照明されるいわゆる光シートまたは光シート顕微鏡が使用されている。従来の蛍光顕微鏡と比較して、光シート顕微鏡は、より高い解像度とより低い光曝露とを可能にし、これによって、生物学的試料の漂白または光誘起ストレスによる不所望な影響が回避される。それゆえ、光シート顕微鏡は、生物の蛍光検査に特に有益に使用できる。
【0003】
従来技術からは光シート顕微鏡を実現するための様々なタイプの光学配置が公知である。本発明の文脈において、ここでは特に、照明および検出が2つの別個の対物レンズを介して行われる配置構成に言及すべきである。この場合、照明対物レンズと検出対物レンズとは、通常、相互に垂直に配置されている。しかしながらこれらの対物レンズのこの垂直な配置構成は、特に、既存の顕微鏡システム、例えば共焦点システムに容易に統合させることができないという欠点を有する。
【0004】
従来技術からは、照明対物レンズと検出対物レンズとが顕微鏡スタンドの垂直軸に沿った前述の直角の配置構成から離れて相互に対向している光シート顕微鏡が公知である。これに関する一例は、独国特許出願公開第102011054914号明細書に開示されている。そのような配置構成においても検出軸線に対して垂直に存在する光シートを生成できるようにするために、垂直なスタンド軸線に沿って照明対物レンズを通って出射する照明光束は、試料を検出対物レンズの水平に存在する焦点平面において光シートで照明するために、照明光束を直角に偏向するミラーシステムに配向される。次いで、焦点平面に存在する試料の目標領域が、検出対物レンズによってカメラセンサに結像される。
【0005】
米国特許第9057879号明細書からは、光シート顕微鏡機能ユニットを共焦点顕微鏡機能ユニットと組み合わせている顕微鏡システムが公知である。このシステムの場合、光シート照明と共焦点照明ならびに検出が、1つの同じ顕微鏡対物レンズを介して行われている。それに比べて、光シート検出に対しては別個の対物レンズが設けられている。
【0006】
前述の顕微鏡システムでは、光シート顕微鏡機能ユニットと共焦点顕微鏡機能ユニットとが、異なる検出対物レンズで動作するため、必ずしも、2つの異なる顕微鏡法の使用に従って得られた画像データを相互に参照すること、すなわち相関付けすることができるとは限らない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この従来技術から出発して、本発明の課題は、2つの機能ユニットで得られた画像データの簡単でかつ正確な評価が可能になるように、光シート顕微鏡機能ユニットとさらなる光学顕微鏡機能ユニットとから形成される顕微鏡システムをさらに開発することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、この課題を、照明対物レンズが第1の対物レンズによって形成され、検出対物レンズが別個の第2の対物レンズによって形成されている光シート顕微鏡機能ユニットと、少なくとも1つのさらなる光学顕微鏡機能ユニットと、を含み、ここで、このさらなる光学顕微鏡機能ユニットが、第2の対物レンズによって形成されている検出対物レンズを有している、顕微鏡システムによって解決している。
【0009】
つまり本発明は、光シート顕微鏡機能ユニットと、さらなる光学顕微鏡機能ユニット、例えば共焦点顕微鏡機能ユニットとが次のように相互に組み合わされている、すなわち、2つの機能ユニットが、結像すべき試料から到来する検出光を1つの同じ検出対物レンズによって受光するように相互に組み合わされている顕微鏡システムを想定している。唯1つの検出対物レンズの使用は、一方の顕微鏡法から他方の顕微鏡法に変更する際の試料の移動を要することなく、異なる顕微鏡法を使用した試料の結像を可能にさせる。このことは、顕微鏡システムの取り扱いを著しく容易にさせる。つまり、本発明による顕微鏡システムによれば、光シート顕微鏡法とさらなる光学顕微鏡法とに関する相関顕微鏡法を特に簡単にかつエラーを最小化するように実施することが可能になる。
【0010】
本発明による顕微鏡システムは、特に、試料がまず光シート顕微鏡方式で大まかにかつ迅速に検査され、引き続き、付加的な画像データを得るためにさらなる光学顕微鏡機能ユニットによって結像されるように使用できる。ここでは、そのような試料のさらなる撮像により、例えば関心のある試料領域のより高い解像度が可能になると考えられる。
【0011】
好適な実施形態では、顕微鏡システムは、光シート顕微鏡機能ユニットおよびさらなる光学顕微鏡機能ユニットがそれぞれ第2の対物レンズによって形成されかつ共通に使用される検出対物レンズを介して受光する検出光に基づく相関画像評価のための評価ユニットを有している。この好適な相関画像評価は、2つの顕微鏡機能ユニットが、それぞれ、2つの機能ユニットに共通に割り当てられた検出対物レンズの焦点平面によって画定されている1つの同じ試料平面から検出光を受光することによって可能になる。本発明の趣旨において相関画像評価とは、光シート顕微鏡機能ユニットを用いて得られた画像データも、さらなる光学顕微鏡機能ユニットを用いて得られた画像データも使用される、画像データの評価を意味するものと理解されたい。特に、相関画像評価では、2つの機能ユニットの2つ以上の画像もしくは部分画像からの相互計算、例えば加算(重畳)または減算または他の数学的演算によって、少なくとも1つの結果画像を得ることができる。
【0012】
好適には、さらなる光学顕微鏡機能ユニットは、第2の対物レンズによって形成されている照明対物レンズを有する。つまり、この実施形態では、2つの顕微鏡機能ユニットによって共通に使用される検出対物レンズは、同時に、さらなる光学顕微鏡機能ユニットの照明対物レンズも表す。したがって、他の(第1の)対物レンズは、単独で光シート顕微鏡機能ユニットに、詳細には照明対物レンズとして割り当てられている。
【0013】
特に好適な実施形態では、顕微鏡システムは、第1の対物レンズが保持されている第1のスタンド部分と、第2の対物レンズが第1の対物レンズに対向するように保持されている第2のスタンド部分と、から構成されている顕微鏡スタンドを有する。前述の顕微鏡スタンドとは、ここでは、特に光の供給と光の取り出しとを目的とした機械的インターフェースを提供する一連の接続口(ポート)を有する顕微鏡本体を意味するものと理解されたい。これらのインターフェースを介して、例えばカメラ、接眼レンズ、スキャナおよびマニピュレータを顕微鏡スタンドに取り付けることができる。それに応じて、前述のスタンド部分は、顕微鏡スタンドもしくは顕微鏡本体を構成する顕微鏡部品本体として理解できる。
【0014】
本発明の文脈において、2つのスタンド部分は、機能的観点で見て、結像すべき試料の収容のための試料チャンバを有する顕微鏡テーブルによって相互に分離されている。例えば、顕微鏡システムの使用位置において2つのスタンド部分の一方が下方のスタンド部分であり、他方が上方のスタンド部分であると仮定するならば、スタンド部分の前述した機能的分離は、下方のスタンド部分に割り当てられた照明および検出コンポーネントが顕微鏡テーブルの下方から効力を生じ、それに対して上方のスタンド部分に割り当てられた照明および検出コンポーネントは顕微鏡テーブルの上方から効力を生じることを意味する。
【0015】
これに関連して、本発明による顕微鏡システムは、正立顕微鏡として実施されてもよいし、倒立顕微鏡としても実施されてもよいことを指摘しておく。ここで、本発明では、正立顕微鏡とは、共通の検出対物レンズが顕微鏡テーブルの上方に配置されている配置構成を意味するものと理解されたい。それに対して、倒立顕微鏡の実施形態の場合は共通の検出対物レンズが試料テーブルの下方に存在する。
【0016】
好適には、この顕微鏡システムは、光シート顕微鏡機能ユニットから第1の対物レンズによって生成された照明焦点を第2の対物レンズの焦点平面に偏向させる光偏向装置を有する。そのような光偏向装置は、顕微鏡システムの2つの対物レンズが相互に対向する配置構成においても、光シートを検出対物レンズの焦点平面と同一平面上に生成できることを可能にする。
【0017】
好適には、光偏向装置は、照明焦点を第2の対物レンズの光軸に対して垂直に偏向させる少なくとも1つのミラー素子を有する。このミラー素子は、好適には、第1の対物レンズまたは第2の対物レンズに取り付けられているが、顕微鏡システムの他の要素、例えばカバーガラスまたは2つのスタンド部分の1つに取り付けることも考えられる。好適な実施形態では、光軸の両側に2つのミラー素子が設けられている。
【0018】
特別な実施形態では、光シート顕微鏡機能ユニットは、第2の対物レンズによって受光された検出光を検出するために第2のスタンド部分に配置された表面センサを有する。この表面センサは、例えばCCDカメラもしくはCMOSカメラとして実施されている。
【0019】
さらなる実施形態では、さらなる光学顕微鏡機能ユニットは、点状に走査する試料照明および/または広視野試料照明のための第2のスタンド部分に割り当てられた照明モジュールを含む。この場合は、「割り当てられた」との言い回しにより、前述の照明モジュールが第2のスタンド部分の内部に配置できることも、適切なインターフェースを介して第2のスタンド部分に結合できることもことばに表されている。
【0020】
実施例では、照明モジュールは、点状に走査する試料照明のためのスキャナを含む。そのようなスキャナは、例えば、従来の共焦点顕微鏡で使用されるようなそれ自体公知のミラースキャナの形態で実施されてもよい。
【0021】
前述したケースでは、特別な実施形態の照明モジュールは、第2の対物レンズによって受光された検出光のためのいわゆるデスキャン検出器を形成するスポットセンサを有する。デスキャン検出器としてスポットセンサは、検出光をスキャナへのそのフィードバックの後に位置固定された光束として受光する。
【0022】
照明モジュールのために光を提供する光源は、照明モジュール内に統合されるか、あるいはまた例えば光導波路を介して結合されてもよい。ここでは、光源自体は、複数の個々の光源、例えば複数のレーザーおよび/またはレーザーダイオード(特に異なる波長のもの)を含むことができる。
【0023】
付加的または代替的に、光シート顕微鏡機能ユニットの表面センサは、同時に第2の対物レンズによって受光される検出光のために、さらなる光学顕微鏡機能ユニットに割り当てられた非デスキャン検出器を形成することができる。このケースでは、さらなる光学顕微鏡機能ユニットから受光された検出光は、点状に走査するスキャナにフィードバックされる(もしくは専らフィードバックされる)のではなく、直接、表面センサに案内される。このことは、2つの顕微鏡機能ユニットから検出された画像データの直接の比較を可能にする。
【0024】
一実施形態では、第1のスタンド部分は、第1のスタンド部分を介した付加的または代替的な検出を可能にする検出器、好適には非デスキャン検出器も同様に含む。
【0025】
好適な実施形態では、光シート顕微鏡機能ユニットは、第1のスタンド部分に割り当てられた光シート発生器を含む。そのような光シート発生器は、例えば、光源と該光源の下流側に配置されたスキャナとを含み、このスキャナによって、準静的な光シートが構築されるように照明焦点が移動する。代替的実施形態では、スキャナの代わりに、光シートを生成する光学系、例えば、シリンドリカルレンズを設けてもよい。ただし、光源(例えば1つ以上のレーザー)は、光シート発生器の一部である必要はなく、むしろこれと例えば光導波路を介して接続されているだけでもよい。ここでは、(光シート顕微鏡機能ユニットの)光シート発生器の光源と、(さらなる光学顕微鏡機能ユニットの)照明モジュールとが同じハウジング内に収容されているか、少なくとも部分的に同一であることも考えられる。つまり、例えば両光源に対して1つのレーザーが使用される。
【0026】
特に好適な実施形態では、顕微鏡システムは、第2のスタンド部分もしくは第2のスタンド部分の少なくとも一部(サブユニット)を、第1のスタンド部分に対して相対的にもしくは第1のスタンド部分の少なくとも一部(サブユニット)に対して相対的に調整するための調整装置を有する。したがって、そのような調整装置は、1つ以上のサブユニット、例えば第2のスタンド部分の対物レンズホルダ(対物レンズ接続口)などを、第1のスタンド部分(もしくは少なくともそのサブユニット)に対して相対的に調整するだけでなく、調整装置が第2のスタンド部分を全体として、第1のスタンド部分(もしくはその少なくとも1つのサブユニット)に対して相対的に調整することも考えられる。調整とは、特に、シフトおよび/または旋回および/または回転を含み得る運動を意味するものと理解されたい。1つの駆動ユニットまたは機構は、第2のスタンド部分を第1のスタンド部分に対して相対的に調整するために(「相対調整」)、例えば第1のスタンド部分を、顕微鏡が存在する空間の基準システムに対して相対的に移動させることができるが、代替的または付加的に第2のスタンド部分も移動させることができるであろう。同様のことは、スタンド部分のサブユニットについても当てはまる。
【0027】
したがって、そのような調整装置は、特に、第2のスタンド部分および/または第2のスタンド部分の少なくとも1つのサブユニット(例えばレンズホルダなど)を、第2の対物レンズの光軸に対して垂直に存在するシフト平面内で、少なくとも第1のスタンド部分(もしくは少なくともそのサブユニット)に対して相対的に1つの方向にシフトさせるように構成されているスライドユニットを含むことができる。この横方向のシフト性によって一連の利点、例えば検出可能な試料空間の拡大が生じる。特に、光シートの生成のために光軸の両側に2つのミラー素子が相互に比較的広い間隔で配置されており、かつ照明視野は、これらのミラー素子が照明対物レンズによってもはや十分に照明できない(つまりこれらが照明焦点をもはや十分に偏向できない)くらいに小さい場合、2つのスタンド部分のうちの一方の横方向のシフトにより、必要に応じてこれらのミラー素子のうちの1つを移動させることが、すなわち照明することができる。その他に、撮像中に照明対物レンズを照明視野の縁部ではなく中央領域で使用すること(つまりミラー素子を照明対物レンズの中央領域に位置決めすること)が可能であり、このことは、光学的能力(結像能力)の向上につながり、特に横方向の色誤差の減少につながる。また、より高い倍率の、したがって(入射瞳の同じ直径のもとで)より大きな開口数の照明対物レンズも使用できる。さらに、照明対物レンズを照明視野の中央領域で使用する可能性により、特殊な光シートの使用で想定される、光軸に沿った照明焦点のスライドも容易になる。
【0028】
スライドユニットは、上記の機能性に対して代替的または付加的に、第2のスタンド部分および/または第2のスタンド部分の少なくとも1つのサブユニットを第1および/または第2の対物レンズの光軸に対して平行にシフトさせることが可能になるように構成されてもよい。例えば、第2のスタンド部分のレンズ接続口を第2の対物レンズの光軸に対して平行にシフトすることが考えられる。代替的または付加的に、調整装置は、場合によっては、第1のスタンド部分および/または第1のスタンド部分の少なくとも1つのサブユニットを第1および/または第2の対物レンズの光軸に対して平行にシフトさせることができるさらなるスライドユニットを含むこともできる。
【0029】
さらなる好適な実施形態では、調整装置は、第2のスタンド部分および/または第2のスタンド部分の少なくとも1つのサブユニットを、第1の対物レンズの光軸に対して垂直にかつ/または第2の対物レンズの光軸に対して垂直に存在する旋回軸周りで、第1のスタンド部分(もしくは少なくともそのサブユニット)に対して相対的に旋回させるように構成されている旋回ユニットを含む。
【0030】
さらなる好適な実施形態では、調整装置は、第2のスタンド部分および/または第2のスタンド部分の少なくとも1つのサブユニットを、第1の対物レンズの光軸に対して平行にかつ/または第2の対物レンズの光軸に対して平行に存在する回転軸周りで、第1のスタンド部分(もしくは少なくともそのサブユニット)に対して相対的に回転させるように構成されている回転ユニットを含む。
【0031】
さらなる実施形態では、スライドユニットは、第2のスタンド部分のサブユニットを第2の対物レンズの焦点平面に対して平行に存在するシフト平面内で第1のスタンド部分に対して相対的にシフトさせるように構成されている。さらに旋回ユニットは、第2のスタンド部分をその全体において旋回軸周りで第1のスタンド部分に対して相対的に旋回させるように構成されている。この結合されたスライド/旋回運動の可能性は、用途に応じて任意に選択できる複数の設定手段を提供する。
【0032】
好適には、さらなる光学顕微鏡機能ユニットは、その全体が第2のスタンド部分に割り当てられている。このことは、顕微鏡システムの特にコンパクトな構造を可能にさせる。
【0033】
好適な実施形態では、さらなる光学顕微鏡機能ユニットは、点状に結像する顕微鏡、特に走査型顕微鏡を形成する。
【0034】
前述の走査型顕微鏡は、例えば共焦点顕微鏡である。インターフェースとして共通の検出対物レンズを有している、光シート顕微鏡と共焦点顕微鏡との組み合わせにより、異なる顕微鏡法を使用して画像データを1つの同じ試料領域から得ることができ、相互に相関付けすることができる。例えば、まず光シート顕微鏡を用いて試料領域の概要画像が撮像される。この概要画像内で、例えばより高い解像度で結像すべき箇所が見つかった場合には、光シート顕微鏡から共焦点顕微鏡へ切り替えられる。
【0035】
走査型顕微鏡は、さらなる実施形態では多光子顕微鏡であってもよい。この目的のために、顕微鏡システムは照明モジュールを有し、この照明モジュールは、多光子レーザーとスキャナとを含む。照射された試料領域内で励起された光子の検出は、デスキャンモードにおいて、検出光をスキャナにフィードバックし、次いで、スポットセンサに案内することによって行うことができる。非デスキャンモードを介した検出も考えられる。この場合、検出光は、例えばスキャナの手前で分離されて検出器に供給される。
【0036】
さらなる実施形態では、走査型顕微鏡は、STED顕微鏡(STED:stimulated emission depletion)またはRESOLFT顕微鏡(RESOLFT:revesible saturable optical fluorescence depletion)であってもよい。
【0037】
他の実施形態では、走査型顕微鏡は、CARS/SRS顕微鏡(CARS:coherent anti-Stokes Raman scattering;SRS:stimulated Raman scattering)として実施されてもよい。
【0038】
さらに他の実施形態では、走査型顕微鏡は、蛍光寿命測定を実施する顕微鏡(FLIM:fluorescence lifetime imaging microscopy;FLIM顕微鏡)または蛍光相関分光法(FCS:fluorescence correlation spectroscopy;FCS顕微鏡)を実施する顕微鏡または分光顕微鏡であってもよい。分光顕微鏡とは、使用される蛍光マーカーの発光スペクトルから複数のスペクトル領域を同時にもしくは順次連続して検出する可能性を提供する顕微鏡を意味するものと理解されたい。基本的には、分光顕微鏡は、検出された光のスペクトルを測定するのに適している。
【0039】
光学顕微鏡機能ユニットとして走査型顕微鏡(例えば共焦点顕微鏡、多光子顕微鏡、STED顕微鏡、CARS/SRS顕微鏡、FLIM顕微鏡、FCS顕微鏡、分光顕微鏡)の場合、代替的に、検出光は非デスキャンモードで表面センサに直接案内することもできる。このセンサは同時に光シート顕微鏡の検出器を形成する。このケースでは、検出光は表面センサ上で走査運動を実施し、これは、スキャナによって引き起こされる試料上の照明光の走査運動に相応している。
【0040】
光シート顕微鏡機能ユニットの他に設けられるさらなる光学顕微鏡機能ユニットは、広視野顕微鏡、特に局在顕微鏡を形成することもできる。
【0041】
本発明のさらなる態様によれば、照明対物レンズが第1の対物レンズによって形成され、検出対物レンズが別個の第2の対物レンズによって形成されている光シート顕微鏡機能ユニットと、少なくとも1つのさらなる光学顕微鏡機能ユニットと、を含んでいる、顕微鏡システムを用いて試料を顕微鏡結像する方法が想定されており、ここでは、第2の対物レンズが、光シート顕微鏡機能ユニットを用いた試料の結像のためにも、さらなる光学顕微鏡機能ユニットを用いた試料の結像のためにも、共通の検出対物レンズとして使用される。
【0042】
以下では本発明を、実施例に基づき図面に関連してより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【
図1】一実施例としての顕微鏡システムの概略構造を示した図
【
図2】
図1による顕微鏡システムに設けられた2つの対物レンズを示した図
【
図4】顕微鏡システムのさらなる変化形態を示した図
【
図5】顕微鏡システムのさらなる変化形態を示した図
【
図6】
図5による顕微鏡システムに設けられた2つの対物レンズを示した図
【
図7】顕微鏡システムのさらなる変化形態を示した図
【
図8】顕微鏡システムのさらなる変化形態を示した図
【
図9】顕微鏡システムのさらなる変化形態を示した図
【
図10】顕微鏡システムのブロック回路図を示した図
【発明を実施するための形態】
【0044】
図1は、本発明の一実施例を示す顕微鏡システム10の概略図を示す。
【0045】
顕微鏡システム10は、全体的に符号12が付された顕微鏡スタンドを有する。この顕微鏡スタンド12は、下方のスタンド部分14とその上に載置された上方のスタンド部分16とから形成されている。下方のスタンド部分14には、対物レンズ接続口18を介して第1の対物レンズ20が取り付けられている。相応に、上方のスタンド部分16には、対物レンズ接続口22を介して第2の対物レンズ24が取り付けられている。2つの対物レンズ20および24は(これらは
図2において再度単独で示されている)、光軸Oに沿って相互に対向しており、この光軸Oは、
図1によるxyz座標系に関連してz軸に対して平行に延びる。したがって、これらの対物レンズ20および24は、顕微鏡テーブル26の両側に配置されている。この顕微鏡テーブル26は、
図1および
図2には明示的に示されていない例えばガラス底を備えたペトリ皿の形態で形成された試料チャンバを有している。
【0046】
下方のスタンド部分14には、接続口28を介して光シート発生器30が結合されている。この光シート発生器30は、例えばミラーもしくはダイクロイックビームスプリッタ32を介して第1の対物レンズ20に入力結合される光シート状の照明光分布を生成することに用いられる。この目的のために、光シート発生器30は、
図1には示されていないそれ自体公知の光シート発生コンポーネント、例えば光源や光源から放射された照明光を走査運動に置き換えるスキャナなどを有している。この走査運動の結果として、第1の対物レンズ20により生成され、
図2において符号34が付された照明焦点は、試料照明に用いられる光シートを生成する。
【0047】
さらに
図2で示されているように、第1の対物レンズ20に面する第2の対物レンズ24には、光軸Oの両側に配置された2つのミラー素子36,38が取り付けられており、これらの2つのミラー素子36,38は、光軸Oに対して平行に第1の対物レンズ20から出射する照明焦点34を、光軸Oに対して垂直に第2の対物レンズ24の焦点平面に偏向する。それにより、偏向された照明焦点34によって生成される光シートは、第2の対物レンズ24の焦点平面と同一平面上に配置されている。
【0048】
上記の説明から明らかなように、下方のスタンド部分14に配置された第1の対物レンズ20は、
図1による実施例では、結像すべき試料を第2の対物レンズ24の焦点平面において光シートで照明する照明対物レンズとして用いられる。それゆえ、第1の対物レンズ20は、以下では光シート照明対物レンズとも称される。
【0049】
下方のスタンド部分14には、さらに、顕微鏡コンポーネントを結合するインターフェースを形成し、特に下方のスタンド部分14に光を供給するかまたは下方のスタンド部分14から光を取り出すのに用いられるさらなる接続口が存在している。一例として
図1には接続口40が示されており、この接続口40は、ダイクロイックビームスプリッタ32の方向に照明光を放射するさらなる光源の結合に用いられる。さらに、下方のスタンド部分14には、接眼レンズ42が取り付けられている。
【0050】
光シート照明対物レンズ20に対向する対物レンズ24は、
図1による実施例では、一方では、光シートで照明された試料から到来する検出光の検出に用いられる。この目的のために、第2の対物レンズ24は、チューブ光学系44を介して、例えばCCDもしくはCMOSカメラとして実施されている表面センサ46に検出光を案内する。他方では、対物レンズ24は、機能的に共焦点照明モジュール48に割り当てられており、この共焦点照明モジュール48は、接続口50を介して上方のスタンド部分16に結合されている。この機能において、対物レンズ24は、共焦点照明モジュール48内に含まれる図示されていない光源から生成され同様に共焦点照明モジュール48内に含まれる共焦点スキャナ52を介して案内される検出光を結像すべき試料上に案内する照明対物レンズとしても用いられ、共焦点試料照明によって生成された検出光を上方のスタンド部分16に戻して共焦点照明モジュール48に案内し、そこでは検出光がスポットセンサ54によって検出される検出対物レンズとしても用いられる。検出光は共焦点スキャナ52にフィードバックされるので、スポットセンサ54は、いわゆるデスキャンセンサとしてそれ自体公知の方法で動作する。上記で説明した第2の対物レンズ24の二重機能のために、当該第2の対物レンズ24は、以下では共通の照明/検出対物レンズとも称される。
【0051】
下方のスタンド部分14のように、上方のスタンド部分16にも一連の接続口が設けられており、これらは、外部のコンポーネントを当該スタンド部分16に結合するためのインターフェースを定めている。共焦点照明モジュール48が取り付けられる既に述べた接続口50の他に、スタンド部分16は、表面センサ46を結合するための接続口56と、LEDランプ62を結合するための接続口58と、を有する。この場合、これらの2つの接続口50および58は、2つの平行なインターフェース平面E
1,E
2を定めており、これらの平面はE
1,E
2は、画像側の焦点平面および/または共通の照明/検出対物レンズ24の対物レンズ側の焦点平面に対して相対的に明確な(特に共役な)位置を有する。好適には、接続口50および58自体も、例えば、共通の照明/検出対物レンズ24に関して、かつ/または画像側および/または対物レンズ側の焦点平面に対して相対的にほどよく定められた(特に既知の)位置を有する。インターフェース平面E
2は、
図1による実施例では、いわゆる入射光軸を定めており、この光軸に沿ってLEDランプ62から放射される光が共通の照明/検出対物レンズ24に案内される。さらに、上方のスタンド部分16には、接眼レンズ60が配置されている。
【0052】
上方のスタンド部分16は、先に既に前述した、表面センサ46の手前に配置されたチューブ光学系44の他に、第1のインターフェース平面E1内に配置されたビームスプリッタミラー64(この場合は用途に応じて例えば(場合によってはフレキシブルにビームパス内に挿入可能で)さらなるフィルタによる補足も可能なビームスプリッタもしくはミラーであり得る)ならびにフィルタキューブ66およびダイクロイックビームスプリッタ68を含み、これらは、第2のインターフェース平面E2に、ひいては入射光軸上に配置されている。前述の光学的コンポーネント64,66および68は、上方のスタンド部分16の内部において照明光および検出光に所望の方法で影響を与えるために、それ自体既知の方法で、用途に応じて、共通の照明/検出対物レンズ24の光軸O上に位置決めされる。特に、(適合する色素の使用のもとで)ビームスプリッタミラー64として相応に選択されたビームスプリッタにより、照明のタイプ(共焦点照明または光シートによる照明)に応じた分割が達成され、それによって2つのタイプの照明の検出光の平行検出が達成され得る。また相応のビームスプリッタ(もしくは偏光フィルタとの組み合わせ)が使用される場合、偏光方向に従って分割することも考えられる。
【0053】
図1による顕微鏡システム10は、異なる機能ユニットのモジュール方式の配置構成を表しており、これらは個別に使用できるが、結像のために一緒に使用することもできる。特に、顕微鏡システム10は、光シート顕微鏡機能ユニットを含み、その主要な機能コンポーネントは、照明に関しては光シート発生器30および光シート照明対物レンズ20によって与えられ、検出に関しては共通の照明/検出対物レンズ24および表面センサ46によって与えられている。さらに、この顕微鏡システム10は、さらなる共焦点顕微鏡機能ユニットを含み、その主要なコンポーネントは、照明に関しても、検出に関しても、共焦点照明モジュール48および共通の照明/検出対物レンズ24によって与えられている。
【0054】
上記で説明した
図1による実施例では、共焦点顕微鏡機能ユニットは、試料から到来する検出光が共焦点スキャナ52へのそのフィードバックの後でスポットセンサ54を用いていわゆるデスキャンモードで検出される。しかしながら、この検出光をいわゆる非デスキャンモードで直接、表面センサ46に案内することも同様に可能である。このケースでは、表面センサ46上の検出光は、共焦点スキャナ52によって引き起こされた試料上の照明光の走査運動に相応する走査運動を実施する。
【0055】
図1による顕微鏡システム10は、さらにスライドユニット70を有し、このスライドユニット70は、上方のスタンド部分16をxy平面内で、すなわち光軸Oに対して垂直に、下方のスタンド部分14に対して相対的に移動させることを可能にする。この横方向のシフトの可能性は、特に、光シート照明対物レンズ20を、視野の縁部ではなく視野の中央領域で使用することを可能にさせ、このことは、とりわけより高い光学的結像能力(特により少ない横方向の色誤差)を可能にさせる。
【0056】
図3~
図9は、
図1による本発明による顕微鏡システム10の一連の変化形態を示す。ここでは説明を簡素化するために、これらの変化形態ではいずれにせよその基本的機能が、
図1に示されたコンポーネントに対応するコンポーネントには、
図1で使用された参照符号が付されている。
【0057】
図3による変化実施形態は、
図1による実施例と実質的に次の点で異なっている。すなわち、第1のインターフェース平面E
1が省略され、共焦点照明モジュール48が第2のインターフェース平面E
2内に、すなわち入射光軸内に結合されている点である。
【0058】
図4による変化実施形態は、
図3による実施形態と接眼レンズ60が省略されている点で異なっている。
【0059】
図5は、
図1による実施例と次の点で異なっている実施形態を示す。すなわち、光シートの生成が上方のスタンド部分16を介して行われ、それに対して光シートの検出ならびに共焦点照明および検出は、下方のスタンド部分14で実現されている点である。それに応じて、光シート発生器30は、
図5による実施形態では第1のインターフェース平面E
1内で上方のスタンド部分16に結合されている。さらに、共焦点照明モジュール48は、下方のスタンド部分14に取り付けられている。さらに、
図5に示されている実施形態は、例えばCCDもしくはCMOSカメラの形態のさらなる表面検出器72を下方のスタンド部分14に有している。このさらなる表面検出器72は、光シートで照明された試料から到来する検出光を検出する。
【0060】
図1による実施形態に比べて、
図5に示されている実施形態では、光シート照明対物レンズ20および共通の照明/検出対物レンズ24の配置構成が入れ替わっており、すなわち、光シート/照明対物レンズ20は上方のスタンド部分16に存在し、それに対して共通の照明/検出対物レンズ24は、下方のスタンド部分14に配置されている。それに応じて、
図6に示されているように、光シート照明対物レンズ20に取り付けられた2つのミラー素子36,38は、顕微鏡テーブル26の下方に存在している。
【0061】
図7に示されている実施形態は、光シート発生器30が光導波路102を介して多色光源74に結合されている点を除いて、本発明に関連する限り、実質的に
図3による実施例に対応している。多色光源74は、複数の単色光源76,78,80,82を含み、これらの単色光源76,78,80,82は、複数のダイクロイックミラー84,86,88,90を介して光シート発生器30に、異なる色の照明光を供給している。多色光源74は、代替的に、連続した広幅のスペクトル波長を供給する白色光レーザーからなるか、またはそのような白色光レーザーを含んでもよい。特に、白色光レーザーと単色光源との組み合わせも考えられる。同時に、多色光源74は、さらなる光導波路102を介して共焦点照明モジュール48にも接続され、上方のスタンド部分16にも光源として用いられる。先の実施形態とは対照的に、下方のスタンド部分14は、さらに対物レンズ接続口18までと光シート発生器30までに短縮され、特に、下方のスタンド部分14用の接眼レンズ42は省略された。この場合、対物レンズ接続口18(この対物レンズ接続口18は下方のスタンド部分14のサブユニットである)は、スライドユニット70を用いて光シート/照明対物レンズ20の光軸に対して平行にも、光シート/照明対物レンズ20の光軸に対して垂直な平面内にもシフト可能である。さらに、さらなるスライドユニット98によって対物レンズ接続口22(この対物レンズ接続口22は上方のスタンド部分16のサブユニットを形成する)も、照明/検出対物レンズ24の光軸に対して平行に移動することができる。つまり、この調整装置は、このケースでは2つのスライドユニット70,98を含む。
【0062】
多色光源74は、ここでは、光スイッチ104を介して、光シート発生器30および共焦点照明モジュール48への結合に用いられる光導波路102に接続されてもよい。この光スイッチ104は、ここでは、光をそれぞれ完全に光シート発生器30かまたは共焦点照明モジュール48に供給する、スイッチの機能を備えた光学部品であってもよい。それにより、2つの機能ユニット(光シート顕微鏡機能ユニットおよび光学顕微鏡機能ユニット)は、試料を順次連続して照明する。代替的に、光スイッチ104は、光の第1の成分は光シート顕微鏡機能ユニットに供給し、光の第2の成分は共焦点顕微鏡機能ユニットに供給する、スプリッタの機能を備えた光学部品であってもよい。それにより、これらの機能ユニットは同時に試料を照明する。この光スイッチ104は、この場合、例えば切り替え可能なミラー、例えば音響光学変調器(AOM)もしくは音響光学偏向器(AOD)などのような音響光学部品、あるいは電気光学変調器(EOM)を含むことができる。
【0063】
図8による実施形態は、共焦点照明モジュール48が、
図7のようにインターフェース平面E
1内ではなく、インターフェース平面E
2内に、すなわち入射光軸内に配置されている点を除いて、実質的に
図7に示されている配置構成に相応している。
【0064】
図9は、
図3による実施例に基づく顕微鏡システム10の一実施形態を示す。
図3に示されている実施形態とは異なり、
図9による配置構成では、スライドユニット70は、上方のスタンド部分16を全体としてではなく、
図9において符号94が付され共通の照明/検出対物レンズ24が保持されている、上方のスタンド部分16のサブユニットのみを、xy平面内で横方向にシフトする機能を有する。付加的に、
図9による顕微鏡システム10は、旋回ユニット96を有し、この旋回ユニット96を用いて、上方のスタンド部分16は全体としてx軸に対して平行な旋回軸S周りで旋回させることができる。このようにして、対物レンズ24は、結合されたスライド/旋回運動で対物レンズ20に対して相対的に調整することができる。
【0065】
図10による最後のブロック回路図では、再度、2つの対物レンズ20および24、光シート発生器30ならびに共焦点照明モジュール48が、一方では、光シート顕微鏡と共焦点顕微鏡とを形成する2つの機能ユニットにどのように機能的に割り当てられ、他方では、2つのスタンド部分14,16にどのように空間的に割り当てられているかが純粋に概略的に表されている。前述の機能ユニットは、
図10では破線で示されている。さらに
図10は、顕微鏡システム10の全体的な動作を制御する制御/評価ユニット100を示している。この場合、この制御/評価ユニット100は、特に、共焦点顕微鏡によって得られるデータを光シート顕微鏡によって生成された画像データと相関付けするようにして画像データを評価するように構成されている。
【0066】
上記で説明した実施形態は、単なる例示として理解されるべきである。そのため、特に、異なる実施形態の個々の態様は相互に容易に組み合わせることができることを指摘しておく。
【0067】
説明した実施形態では、本発明によるさらなる光学顕微鏡機能ユニットは、共焦点顕微鏡を形成する。もちろんここでは、この機能ユニットが、スポット方式で結像する他のタイプの顕微鏡、例えば多光子顕微鏡、STED顕微鏡、RESOLFT顕微鏡、またはCARS/SRS顕微鏡で表せることも理解されたい。さらに、この機能ユニットは、広視野顕微鏡、特に局在顕微鏡として実施されてもよい。
【符号の説明】
【0068】
10 顕微鏡システム
12 顕微鏡スタンド
14 下方のスタンド部分
16 上方のスタンド部分
18 対物レンズ接続口
20 対物レンズ
22 対物レンズ接続口
24 対物レンズ
26 顕微鏡テーブル
28 接続口
30 光シート発生器
32 ダイクロイックビームスプリッタ
34 照明焦点
36,38 ミラー素子
40 接続口
42 接眼レンズ
44 チューブ光学系
46 表面センサ
48 共焦点照明モジュール
50 接続口
52 共焦点スキャナ
54 スポットセンサ
56 接続口
58 接続口
60 接眼レンズ
62 LEDランプ
64 ビームスプリッタミラー
66 蛍光キューブ
68 ダイクロイックビームスプリッタ
70 スライドユニット
72 さらなる表面検出器
74 多色光源
76~82 光源
84~90 ダイクロイックミラー
94 サブユニット
96 旋回ユニット
98 さらなるスライドユニット
100 制御/評価ユニット
102 光導波路
104 光スイッチ