(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-05
(45)【発行日】2023-12-13
(54)【発明の名称】検査回路及びセンサ装置
(51)【国際特許分類】
G01R 31/52 20200101AFI20231206BHJP
G01R 19/165 20060101ALI20231206BHJP
【FI】
G01R31/52
G01R19/165 C
(21)【出願番号】P 2020001370
(22)【出願日】2020-01-08
【審査請求日】2022-11-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000010098
【氏名又は名称】アルプスアルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108006
【氏名又は名称】松下 昌弘
(74)【代理人】
【識別番号】100085453
【氏名又は名称】野▲崎▼ 照夫
(74)【代理人】
【識別番号】100135183
【氏名又は名称】大窪 克之
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 靖彦
【審査官】島▲崎▼ 純一
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-166975(JP,A)
【文献】特開平01-248069(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/52
G01R 19/165
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
増幅回路から負荷に出力される負荷電流の経路に設けられた抵抗の故障を検査する検査回路であって、
前記負荷電流に応じた電流検出信号を生成する電流検出部と、
前記抵抗に生じる抵抗電圧に応じた電圧検出信号を生成する電圧検出部と、
前記電流検出信号に基づいて、前記負荷電流が予め定めた電流範囲に含まれるか判定する電流判定部と、
前記電圧検出信号に基づいて、前記抵抗電圧が予め定めた第1電圧範囲に含まれるか判定する電圧判定部と、
前記電流判定部において前記負荷電流が前記電流範囲から外れたと判定された場合に、前記電圧判定部において前記抵抗電圧が前記第1電圧範囲に含まれると判定されたならば、前記抵抗が短絡状態で故障していると判定する故障判定部とを有し、
前記第1電圧範囲は、短絡状態でない前記抵抗を流れる前記負荷電流が前記電流範囲から外れた場合に、前記抵抗電圧が外れる電圧範囲であ
り、
前記増幅回路は、前記負荷電流が流れる経路に設けられ、入力される制御信号に応じて前記負荷電流を制御する複数のトランジスタを含み、
前記電流検出部は、前記増幅回路の複数の前記トランジスタに入力される複数の前記制御信号に基づいて前記電流検出信号を生成する、
検査回路。
【請求項2】
前記増幅回路は、それぞれ前記負荷電流が流れる経路に設けられた第1トランジスタ及び第2トランジスタを含み、
前記第1トランジスタは、前記抵抗の一方の端子と基準電位との間における前記負荷電流の経路に設けられ、
前記第2トランジスタは、前記抵抗の他方の端子と前記基準電位との間における前記負荷電流の経路に設けられ、
前記電流検出部は、前記第1トランジスタに入力される前記制御信号と前記第2トランジスタに入力される前記制御信号との差に基づいて前記電流検出信号を生成する、
請求項1に記載の検査回路。
【請求項3】
増幅回路から負荷に出力される負荷電流の経路に設けられた抵抗の故障を検査する検査回路であって、
前記負荷電流に応じた電流検出信号を生成する電流検出部と、
前記抵抗に生じる抵抗電圧に応じた電圧検出信号を生成する電圧検出部と、
前記電流検出信号に基づいて、前記負荷電流が予め定めた電流範囲に含まれるか判定する電流判定部と、
前記電圧検出信号に基づいて、前記抵抗電圧が予め定めた第1電圧範囲に含まれるか判定する電圧判定部と、
前記電流判定部において前記負荷電流が前記電流範囲から外れたと判定された場合に、前記電圧判定部において前記抵抗電圧が前記第1電圧範囲に含まれると判定されたならば、前記抵抗が短絡状態で故障していると判定する故障判定部とを有し、
前記第1電圧範囲は、短絡状態でない前記抵抗を流れる前記負荷電流が前記電流範囲から外れた場合に、前記抵抗電圧が外れる電圧範囲であ
り、
前記増幅回路は、それぞれ前記負荷電流が流れる経路に設けられた第1トランジスタ及び第2トランジスタを含み、
前記第1トランジスタは、前記抵抗の一方の端子と基準電位との間における前記負荷電流の経路に設けられ、
前記第2トランジスタは、前記抵抗の他方の端子と前記基準電位との間における前記負荷電流の経路に設けられ、
前記電流検出部は、
前記第1トランジスタに流れる前記負荷電流に比例した第1ミラー電流を発生する第1カレントミラー回路と、
前記第2トランジスタに流れる前記負荷電流に比例した第2ミラー電流を発生する第2カレントミラー回路と、
前記第1ミラー電流に応じた第1信号と前記第2ミラー電流に応じた第2信号との差に応じた前記電流検出信号を生成する差動増幅回路とを含む、
検査回路。
【請求項4】
前記電圧判定部は、前記電圧検出信号に基づいて、前記抵抗電圧が予め定めた第2電圧範囲に含まれるかを更に判定し、
前記故障判定部は、前記電圧判定部において、前記抵抗電圧が前記第2電圧範囲から外れたと判定された場合、前記抵抗が開放状態で故障していると判定し、
前記増幅回路により増幅される入力信号は、前記負荷電流に応じて負帰還制御されており、
前記第2電圧範囲は、前記負荷電流が前記抵抗に流れる場合に前記抵抗電圧が含まれる電圧範囲である、
請求項1~3のいずれか一項に記載の検査回路。
【請求項5】
前記電圧判定部は、
少なくとも1つのしきい電圧と前記電圧検出信号とを比較する少なくとも1つのコンパレータと、
前記少なくとも1つのコンパレータの比較結果に基づいて、前記少なくとも1つのしきい電圧に対応する電圧範囲に前記抵抗電圧が含まれるか判定する論理回路と、
前記抵抗の短絡状態の故障を判定する短絡判定モードにおいて、前記第1電圧範囲に対応する前記少なくとも1つのしきい電圧を前記少なくとも1つのコンパレータに入力し、前記抵抗の開放状態の故障を判定する開放判定モードにおいて、前記第2電圧範囲に対応する前記少なくとも1つのしきい電圧を前記少なくとも1つのコンパレータに入力するしきい電圧入力部とを含む、
請求項4に記載の検査回路。
【請求項6】
前記電圧判定部は、
少なくとも1つの第1しきい電圧と前記電圧検出信号とを比較する少なくとも1つの第1コンパレータと、
前記少なくとも1つの第1コンパレータの比較結果に基づいて、前記少なくとも1つの第1しきい電圧に対応する前記第1電圧範囲に前記抵抗電圧が含まれるか判定する第1論理回路と、
少なくとも1つの第2しきい電圧と前記電圧検出信号とを比較する少なくとも1つの第2コンパレータと、
前記少なくとも1つの第2コンパレータの比較結果に基づいて、前記少なくとも1つの第2しきい電圧に対応する前記第2電圧範囲に前記抵抗電圧が含まれるか判定する第2論理回路とを含む、
請求項4に記載の検査回路。
【請求項7】
物理量に応じて抵抗値が変化する少なくとも1つのセンサ素子を含んだブリッジ回路と、
前記少なくとも1つのセンサ素子の前記抵抗値に応じて前記ブリッジ回路により生成される信号を増幅する増幅回路と、
前記増幅回路の出力に接続された負荷と、
前記増幅回路から前記負荷に出力される負荷電流の経路に設けられた抵抗と、
前記抵抗に生じる抵抗電圧に応じたセンサ信号を出力するセンサ出力部と、
前記抵抗の故障を検査する
請求項1~6のいずれか一項に記載された検査回路と
を有するセンサ装置。
【請求項8】
前記センサ出力部は、前記故障判定部において前記抵抗が故障していると判定された場合、前記センサ信号の出力ノードを高インピーダンス状態にする、
請求項7に記載のセンサ装置。
【請求項9】
前記センサ素子は、検出対象の電流が発生する磁界に応じて前記抵抗値が変化する磁気抵抗効果素子であり、
前記負荷は、前記検出対象の電流が発生する前記磁界を前記センサ素子において打ち消すように磁界を発生するためのコイルを含む、
請求項7又は8に記載のセンサ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抵抗の故障を検査する検査回路と、そのような検査回路を備えたセンサ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気平衡式電流センサのコイルを駆動する場合など、比較的大きな電流で負荷を駆動する場合、負荷に流れる電流を検出するための抵抗として、抵抗値の小さいシャント抵抗が用いられる。このような抵抗の故障(オープン状態、ショート状態)を検査するため、下記の特許文献に記載される検査回路では、オープン状態の判定とショート状態の判定にそれぞれ独立のコンパレータが使用され、2つの判定(オープン状態、ショート状態)が独立の検査モードで個別に行われる。これにより、2つの判定においてそれぞれ適切な条件を設定することが可能となり、2つの判定をそれぞれ高い精度で行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した特許文献に記載される検査回路では、通常の動作モードとは異なる特別な検査モードの下で故障の判定が行われる。そのため、例えば電源投入後の起動時など、通常の動作(電流センサの場合は、電流を検出する動作)を行わない期間に限定して故障の判定が行われる。従って、通常の動作時に抵抗の故障が発生しても、これを直ちに判定することができないという不利益がある。
【0005】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、通常の動作時でも抵抗の故障を検出することが可能な検査回路と、そのような検査回路を備えたセンサ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の観点は、増幅回路から負荷に出力される負荷電流の経路に設けられた抵抗の故障を検査する検査回路であって、前記負荷電流に応じた電流検出信号を生成する電流検出部と、前記抵抗に生じる抵抗電圧に応じた電圧検出信号を生成する電圧検出部と、前記電流検出信号に基づいて、前記負荷電流が予め定めた電流範囲に含まれるか判定する電流判定部と、前記電圧検出信号に基づいて、前記抵抗電圧が予め定めた第1電圧範囲に含まれるか判定する電圧判定部と、前記電流判定部において前記負荷電流が前記電流範囲から外れたと判定された場合に、前記電圧判定部において前記抵抗電圧が前記第1電圧範囲に含まれると判定されたならば、前記抵抗が短絡状態で故障していると判定する故障判定部とを有する。前記第1電圧範囲は、短絡状態でない前記抵抗を流れる前記負荷電流が前記電流範囲から外れた場合に、前記抵抗電圧が外れる電圧範囲である。
【0007】
この構成によれば、短絡状態で故障した前記抵抗を流れる前記負荷電流が前記電流範囲から外れた場合、前記抵抗に生じる前記抵抗電圧は、前記第1電圧範囲に含まれたままとなる。前記電流判定部において前記負荷電流が前記電流範囲から外れたと判定され場合に、前記電圧判定部において前記抵抗電圧が前記第1電圧範囲に含まれると判定されたならば、前記故障判定部において前記抵抗が短絡状態で故障していると判定される。従って、前記抵抗の故障を検出するために、前記抵抗へ専用の定電流源から所定の電流を流すことなどが不要であり、前記増幅回路から前記負荷へ任意の前記負荷電流が流れている状態でも、前記抵抗の故障の検出を行うことが可能である。そのため、通常の動作時でも前記抵抗の故障の検出が可能である。
【0008】
好適に、前記増幅回路は、前記負荷電流が流れる経路に設けられ、入力される制御信号に応じて前記負荷電流を制御する複数のトランジスタを含み、前記電流検出部は、前記増幅回路の複数の前記トランジスタに入力される複数の前記制御信号に基づいて前記電流検出信号を生成する。
この構成によれば、前記増幅回路の複数の前記トランジスタに入力される複数の前記制御信号に基づいて前記電流検出信号が生成されるため、前記電流検出信号を生成するために電流センサなどを用いる場合に比べて構成が簡易になる。
【0009】
好適に、前記増幅回路は、それぞれ前記負荷電流が流れる経路に設けられた第1トランジスタ及び第2トランジスタを含み、前記第1トランジスタは、前記抵抗の一方の端子と基準電位との間における前記負荷電流の経路に設けられ、前記第2トランジスタは、前記抵抗の他方の端子と前記基準電位との間における前記負荷電流の経路に設けられ、前記電流検出部は、前記第1トランジスタに入力される前記制御信号と前記第2トランジスタに入力される前記制御信号との差に基づいて前記電流検出信号を生成する。
この構成によれば、2つの前記制御信号の差を求める簡易な信号処理によって前記電流検出信号が生成される。
【0010】
好適に、前記増幅回路は、それぞれ前記負荷電流が流れる経路に設けられた第1トランジスタ及び第2トランジスタを含み、前記第1トランジスタは、前記抵抗の一方の端子と基準電位との間における前記負荷電流の経路に設けられ、前記第2トランジスタは、前記抵抗の他方の端子と前記基準電位との間における前記負荷電流の経路に設けられる。前記電流検出部は、前記第1トランジスタに流れる前記負荷電流に比例した第1ミラー電流を発生する第1カレントミラー回路と、前記第2トランジスタに流れる前記負荷電流に比例した第2ミラー電流を発生する第2カレントミラー回路と、前記第1ミラー電流に応じた第1信号と前記第2ミラー電流に応じた第2信号との差に応じた前記電流検出信号を生成する差動増幅回路とを含む。
この構成によれば、前記第1ミラー電流に応じた第1信号と前記第2ミラー電流に応じた第2信号との差として、比較的振幅の大きい信号を得易くなるため、前記負荷電流が小さい場合でも、比較的振幅の大きい前記電流検出信号を生成し易くなる。
【0011】
好適に、前記電圧判定部は、前記電圧検出信号に基づいて、前記抵抗電圧が予め定めた第2電圧範囲に含まれるかを更に判定し、前記故障判定部は、前記電圧判定部において、前記抵抗電圧が前記第2電圧範囲から外れたと判定された場合、前記抵抗が開放状態で故障していると判定する。前記増幅回路により増幅される入力信号は、前記負荷電流に応じて負帰還制御されている。前記第2電圧範囲は、前記負荷電流が前記抵抗に流れる場合に前記抵抗電圧が含まれる電圧範囲である。
この構成によれば、前記増幅回路により増幅される前記入力信号が前記負荷電流に応じて負帰還制御されているため、前記負荷電流が前記抵抗に流れなくなる、すなわち前記抵抗が開放状態で故障すると、前記増幅回路から出力される電圧が最大値又は最小値に近づき、前記抵抗電圧が前記第2電圧範囲から外れる。前記電圧判定部により前記抵抗電圧が前記第2電圧範囲から外れたと判定された場合、前記故障判定部では、前記抵抗が開放状態で故障していると判定される。
【0012】
好適に、前記電圧判定部は、少なくとも1つのしきい電圧と前記電圧検出信号とを比較する少なくとも1つのコンパレータと、前記少なくとも1つのコンパレータの比較結果に基づいて、前記少なくとも1つのしきい電圧に対応する電圧範囲に前記抵抗電圧が含まれるか判定する論理回路と、前記抵抗の短絡状態の故障を判定する短絡判定モードにおいて、前記第1電圧範囲に対応する前記少なくとも1つのしきい電圧を前記少なくとも1つのコンパレータに入力し、前記抵抗の開放状態の故障を判定する開放判定モードにおいて、前記第2電圧範囲に対応する前記少なくとも1つのしきい電圧を前記少なくとも1つのコンパレータに入力するしきい電圧入力部とを含む。
この構成によれば、前記少なくとも1つのコンパレータが、前記抵抗の短絡状態の故障を判定する前記短絡判定モードと、前記抵抗の開放状態の故障を判定する前記開放判定モードとにおいて兼用されるため、回路構成が簡易になる。
【0013】
好適に、前記電圧判定部は、少なくとも1つの第1しきい電圧と前記電圧検出信号とを比較する少なくとも1つの第1コンパレータと、前記少なくとも1つの第1コンパレータの比較結果に基づいて、前記少なくとも1つの第1しきい電圧に対応する前記第1電圧範囲に前記抵抗電圧が含まれるか判定する第1論理回路と、少なくとも1つの第2しきい電圧と前記電圧検出信号とを比較する少なくとも1つの第2コンパレータと、前記少なくとも1つの第2コンパレータの比較結果に基づいて、前記少なくとも1つの第2しきい電圧に対応する前記第2電圧範囲に前記抵抗電圧が含まれるか判定する第2論理回路とを含む。
この構成によれば、前記抵抗電圧が前記第1電圧範囲に含まれているか否かの判定と、前記抵抗電圧が前記第2電圧範囲に含まれているか否かの判定とが並行して行われるため、前記抵抗の短絡状態の故障判定と前記抵抗の開放状態の故障判定とを同時に行うことが可能となる。
【0014】
本発明の第2の観点は、物理量に応じて抵抗値が変化する少なくとも1つのセンサ素子を含んだブリッジ回路と、前記少なくとも1つのセンサ素子の前記抵抗値に応じて前記ブリッジ回路により生成される信号を増幅する増幅回路と、前記増幅回路の出力に接続された負荷と、前記増幅回路から前記負荷に出力される負荷電流の経路に設けられた抵抗と、前記抵抗に生じる抵抗電圧に応じたセンサ信号を出力するセンサ出力部と、前記抵抗の故障を検査する上記第1の観点の検査回路とを有するセンサ装置である。
この構成によれば、センサ装置における通常のセンシング動作時でも前記抵抗の故障の検出が可能となる。
【0015】
好適に、前記センサ出力部は、前記故障判定部において前記抵抗が故障していると判定された場合、前記センサ信号の出力ノードを高インピーダンス状態にする。
この構成によれば、前記抵抗が故障しているとの判定結果を外部に出力する手段として前記センサ信号の前記出力ノードが兼用されるため、当該判定結果を出力するための端子を別個に設ける場合に比べて構成が簡易になる。
【0016】
好適に、前記センサ素子は、検出対象の電流が発生する磁界に応じて前記抵抗値が変化する磁気抵抗効果素子であり、前記負荷は、前記検出対象の電流が発生する前記磁界を前記センサ素子において打ち消すように磁界を発生するためのコイルを含む。
この構成によれば、電流を検出するセンサ装置において、電流検出の最中でも前記抵抗の故障を検出することが可能となる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、通常の動作時でも抵抗の故障を検出することが可能な検査回路と、そのような検査回路を備えたセンサ装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、本実施形態に係るセンサ装置の構成の一例を示す図である。
【
図2】
図2は、増幅回路の構成の一例を示す図である。
【
図3】
図3は、検査回路の構成の一例を示す図である。
【
図4】
図4Aは、入力電圧に対する電圧検出信号の変化の一例を表す図である。
図4Bは、入力電圧に対する電流検出信号の変化の一例を表す図である。
【
図5】
図5は、電流検出部の一変形例を示す図である。
【
図6】
図6は、電圧判定部の一変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は、本実施形態に係るセンサ装置の一例を示す図である。
図1の例に示すセンサ装置は、磁気平衡式の電流センサであり、ブリッジ回路2と、増幅回路3と、コイルCLと、抵抗Rsと、センサ出力部9と、検査回路10とを有する。
【0020】
ブリッジ回路2は、3つの抵抗21、22、23とセンサ素子MRを有する。抵抗21と抵抗23とがノードN1において直列に接続され、抵抗22とセンサ素子MRとがノードN2において直列に接続される。抵抗21及び抵抗23の直列回路と、抵抗22及びセンサ素子MRの直列回路とが、電源電圧VDDと基準電位Gの間で並列に接続される。センサ素子MRは磁気抵抗効果素子(GMR素子、TMR素子など)であり、図示しない電流路を流れる検出対象の電流が発生する磁界に応じて抵抗値が変化する。なお、この例において、ブリッジ回路2は1つのセンサ素子MR(磁気抵抗効果素子)を含んでいるが、他の例では2以上のセンサ素子を含んでいてもよい。
【0021】
増幅回路3は、センサ素子MRの抵抗値に応じてブリッジ回路2により生成される信号を増幅する。
図1の例において、増幅回路3は、ブリッジ回路2のノードN1とノードN2との間に生じる電圧Vinを入力端子(IN+,IN-)において入力し、電圧Vinを増幅した信号を出力端子(OUT+,OUT-)から出力する。
【0022】
図2は、増幅回路3の構成の一例を示す図である。増幅回路3は、例えば
図2に示すように、差動増幅部31と出力部32を含む。
図2の例において、差動増幅部31及び出力部32はそれぞれMOSトランジスタにより構成されているが、これらの回路は他の種類のトランジスタ(バイポーラトランジスタなど)で構成されていてもよい。
【0023】
増幅回路3は、負荷電流ILが流れる経路に設けられたトランジスタ(
図2の例ではトランジスタM1~M4)を含む。これらのトランジスタは、入力される制御信号(
図2の例ではトランジスタM1~M4のゲートの電圧)に応じて負荷電流ILを制御する。
【0024】
図2の例にける差動増幅部31は、フォールデッドカスコード型の差動アンプであり、pチャンネルMOSトランジスタであるトランジスタM10~M19と、nチャンネルMOSトランジスタであるトランジスタM20~M25を含む。また、
図2の例における出力部32は、フルブリッジ回路により構成されたAB級アンプであり、nチャンネルMOSトランジスタである第1トランジスタM1及び第2トランジスタM2と、pチャンネルMOSトランジスタである第3トランジスタM3及び第4トランジスタM4を含む。
【0025】
差動増幅部31において、トランジスタM10及びM11は差動対を構成し、互いのソースが接続される。トランジスタM10のゲートには入力端子IN+の電圧が印加され、トランジスタM11のゲートには入力端子IN-の電圧が印加される。トランジスタM10及びM11のソースは、直列接続されたトランジスタM12及びM13を介して電源電圧VDDに接続される。トランジスタM12及びM13は、電流源を構成しており、それぞれのゲートにはバイアス電圧B12、B13が印加される。
【0026】
差動増幅部31において、トランジスタM14及びM15は電流源を構成しており、電源電圧VDDとノードNg4との間に直列接続される。トランジスタM14、M15のゲートには、それぞれバイアス電圧B14、B15が印加される。ノードNg4は、出力部32の第4トランジスタM4のゲートに接続される。
【0027】
差動増幅部31において、トランジスタM20は電流源を構成する。トランジスタM20のソースは基準電位Gに接続され、トランジスタM20のドレインはトランジスタM21(ゲート接地回路)を介してノードNg2に接続される。トランジスタM20、M21のゲートには、それぞれバイアス電圧B20、B21が印加される。ノードNg2は、出力部32の第2トランジスタM2のゲートに接続される。
【0028】
差動増幅部31において、ノードNg4とノードNg2との間には、トランジスタM16及びM22が並列接続される。トランジスタM16及びM22は、電圧Vinがゼロの時に第2トランジスタM2及び第4トランジスタM4がカットオフしないように、これらのゲート間の電圧を定める。トランジスタM16、M22のゲートには、それぞれバイアス電圧B16、B22が印加される。
【0029】
差動増幅部31において、トランジスタM17及びM18は電流源を構成しており、電源電圧VDDとノードNg3との間に直列接続される。トランジスタM17、M18のゲートには、それぞれバイアス電圧B17、B18が印加される。バイアス電圧B17、B18は、それぞれバイアス電圧B14、B15と同じでもよい。ノードNg3は、出力部32の第3トランジスタM3のゲートに接続される。
【0030】
差動増幅部31において、トランジスタM23は電流源を構成する。トランジスタM23のソースは基準電位Gに接続され、トランジスタM23のドレインはトランジスタM24(ゲート接地回路)を介してノードNg1に接続される。トランジスタM23、M24のゲートには、それぞれバイアス電圧B23、B24が印加される。バイアス電圧B23、B24は、それぞれバイアス電圧B20、B21と同じでもよい。ノードNg1は、出力部32の第1トランジスタM1のゲートに接続される。
【0031】
差動増幅部31において、ノードNg3とノードNg1との間には、トランジスタM19及びM25が並列接続される。トランジスタM19及びM25は、電圧Vinがゼロの時に第1トランジスタM1及び第3トランジスタM3がカットオフしないように、これらのゲート間の電圧を定める。トランジスタM19、M25のゲートには、それぞれバイアス電圧B19、B25が印加される。バイアス電圧B19、B25は、それぞれれバイアス電圧B16、B22と同じでもよい。
【0032】
差動増幅部31において、トランジスタM10のドレインはトランジスタM20のドレインに接続され、トランジスタM11のドレインはトランジスタM23のドレインに接続される。
【0033】
出力部32において、第1トランジスタM1及び第3トランジスタM3が直列に接続される。第1トランジスタM1のソースは基準電位Gに接続され、第3トランジスタM3のソースは電源電圧VDDに接続され、第1トランジスタM1及び第3トランジスタM3のドレインは出力端子OUT-に接続される。
【0034】
出力部32において、第2トランジスタM2及び第4トランジスタM4が直列に接続される。第2トランジスタM2のソースは基準電位Gに接続され、第4トランジスタM4のソースは電源電圧VDDに接続され、第2トランジスタM2及び第4トランジスタM4のドレインは出力端子OUT+に接続される。
【0035】
コイルCLは、増幅回路3の出力端子(OUT+、OUT-)に接続された負荷であり、増幅回路3から出力される負荷電流ILがコイルCLに流れる。コイルCLに流れる負荷電流ILは、ブリッジ回路2のセンサ素子MRに作用する磁界を発生し、この磁界によってセンサ素子MRの抵抗値が変化する。コイルCLを流れる負荷電流ILは、センサ素子MRにおいて負荷電流ILの磁界と検出対象電流の磁界とが打ち消し合うように負帰還制御される。
【0036】
抵抗Rsは、増幅回路3からコイルCLに出力される負荷電流ILの経路に設けられた抵抗であり、負荷電流ILに比例した抵抗電圧VRsを発生する。
【0037】
検査回路10は、抵抗Rsの故障を検査する回路である。
図1の例において、検査回路10は、電流検出部4と、電圧検出部5と、電流判定部6と、電圧判定部7と、故障判定部8を含む。
図3は、検査回路10のより詳細な構成の一例を示す図である。
【0038】
電流検出部4は、負荷電流ILに応じた電流検出信号Siを生成する。例えば、電流検出部4は、増幅回路3において負荷電流ILの経路に設けられたトランジスタ(M1~M4)に入力される制御信号(ゲート電圧)に基づいて、電流検出信号Siを生成する。
【0039】
図3の例において、電流検出部4は、第1トランジスタM1のゲート電圧Vg1と第2トランジスタM2のゲート電圧Vg2との差に基づいて電流検出信号Siを生成する。この例において、電流検出部4は、ゲート電圧Vg1とゲート電圧Vg2との差を増幅する差動アンプ41を有しており、差動アンプ41により増幅された電圧差(Vg1-Vg2)を電流検出信号Siとして出力する。
【0040】
第1トランジスタM1は、抵抗Rsを介してコイルCLの一方の端子に接続された出力端子OUT-と基準電位Gとの間における負荷電流ILの電流経路に設けられている。また、第2トランジスタM2は、コイルCLの他方の端子に接続された出力端子OUT+と基準電位Gとの間における負荷電流ILの電流経路に設けられている。出力端子OUT+から出力端子OUT-へ負荷電流ILが流れるとき、負荷電流ILは電源電圧VDDから第4トランジスタM4及び第1トランジスタM1を通って基準電位Gに流れ、第2トランジスタM2には流れない。そのため、この場合はゲート電圧Vg1がゲート電圧Vg2より高くなり、その差は負荷電流ILに応じた大きさとなる。逆に、出力端子OUT-から出力端子OUT+へ負荷電流ILが流れるとき、負荷電流ILは電源電圧VDDから第3トランジスタM3及び第2トランジスタM2を通って基準電位Gに流れ、第1トランジスタM1には流れない。そのため、この場合はゲート電圧Vg2がゲート電圧Vg1より高くなり、その差は負荷電流ILに応じた大きさとなる。従って、ゲート電圧Vg1とゲート電圧Vg2との差を増幅して得られた電流検出信号Siは、負荷電流ILに応じた信号レベルを持つ。
【0041】
電圧検出部5は、抵抗Rsに生じる抵抗電圧VRsに応じた電圧検出信号Svを生成する。電圧検出部5は、例えば
図3に示すように、抵抗電圧VRsを増幅する差動アンプ51を有する。電圧検出部5は、差動アンプ51により増幅された抵抗電圧VRsを電圧検出信号Svとして出力する。
【0042】
電流判定部6は、電流検出信号Siに基づいて、負荷電流ILが予め定めた電流範囲XAに含まれるか判定する。
図3の例において、電流判定部6は、コンパレータ61及び62と論理回路63を有する。
【0043】
コンパレータ61及び62は、負荷電流ILの電流範囲XAを定めるしきい電圧Vt5及びVt6と電流検出信号Siとを比較する。コンパレータ61は、電流検出信号Siがしきい電圧Vt5より低い場合にハイレベルの信号を出力し、電流検出信号Siがしきい電圧Vt5より高い場合にローレベルの信号を出力する。コンパレータ62は、電流検出信号Siがしきい電圧Vt6より高い場合にハイレベルの信号を出力し、電流検出信号Siがしきい電圧Vt6より低い場合にローレベルの信号を出力する。
【0044】
論理回路63は、コンパレータ61及び62の比較結果に基づいて、しきい電圧Vt5及びVt6(Vt5>Vt6)に対応する所定の電流範囲XAに負荷電流ILが含まれるか判定する。
図3の例において、論理回路63はNAND回路であり、コンパレータ61及び62のいずれか一方がローレベルの信号を出力した場合にハイレベルの信号S6を出力し、それ以外の場合にローレベルの信号S6を出力する。すなわち、論理回路63は、電流検出信号Siが電圧Vt6~Vt5の範囲から外れた場合、負荷電流ILが所定の電流範囲XAから外れたことを示すハイレベルの信号S6を出力し、それ以外の場合はローレベルの信号S6を出力する。
【0045】
電流判定部6において判定される電流範囲XAは、抵抗Rsにおいて短絡状態の故障が生じた場合に流れ得る最小の負荷電流ILが確実に外れるように、比較的狭い範囲に設定される。
【0046】
電圧判定部7は、電圧検出信号Svに基づいて、抵抗電圧VRsが予め定めた第1電圧範囲XV1に含まれるか判定する。第1電圧範囲XV1は、短絡状態でない抵抗Rsを流れる負荷電流ILが上述した電流範囲XAから外れた場合に、抵抗電圧VRsが外れるように設定された電圧範囲である。
【0047】
図3の例において、電圧判定部7は、第1コンパレータ71A及び72Aと第1論理回路73Aを有する。第1コンパレータ71A及び72Aは、抵抗電圧VRsの第1電圧範囲XV1を定めるしきい電圧Vt1及びVt2と電圧検出信号Svとを比較する。第1コンパレータ71Aは、電圧検出信号Svがしきい電圧Vt1より低い場合にハイレベルの信号を出力し、電圧検出信号Svがしきい電圧Vt1より高い場合にローレベルの信号を出力する。第1コンパレータ72Aは、電圧検出信号Svがしきい電圧Vt2より高い場合にハイレベルの信号を出力し、電圧検出信号Svがしきい電圧Vt2より低い場合にローレベルの信号を出力する。
【0048】
第1論理回路73Aは、第1コンパレータ71A及び72Aの比較結果に基づいて、しきい電圧Vt1及びVt2(Vt1>Vt2)に対応する所定の第1電圧範囲XV1に抵抗電圧VRsが含まれるか判定する。
図3の例において、第1論理回路73AはNAND回路であり、第1コンパレータ71A及び72Aのいずれか一方がローレベルの信号を出力した場合にハイレベルの信号S7Aを出力し、それ以外の場合にローレベルの信号S7Aを出力する。すなわち、第1論理回路73Aは、電圧検出信号Svが電圧Vt2~Vt1の範囲から外れた場合、抵抗電圧VRsが所定の第1電圧範囲XV1から外れたことを示すハイレベルの信号S7Aを出力し、それ以外の場合はローレベルの信号S7Aを出力する。
【0049】
また、電圧判定部7は、電圧検出信号Svに基づいて、抵抗電圧VRsが予め定めた第2電圧範囲XV2に含まれるかを更に判定する。第2電圧範囲XV2は、負荷電流ILが抵抗Rsに流れる場合に、抵抗電圧VRsが含まれるように設定された電圧範囲である。第2電圧範囲XV2は、増幅回路3から出力され得る最大の負荷電流ILが抵抗電圧VRsに流れた場合でも抵抗電圧VRsが含まれるように、比較的広い範囲に設定される。第2電圧範囲XV2は、上述した第1電圧範囲XV1に比べて広い電圧範囲である。
【0050】
図3の例において、電圧判定部7は、第2コンパレータ71B及び72Bと第2論理回路73Bを有する。第2コンパレータ71B及び72Bは、抵抗電圧VRsの第2電圧範囲XV2を定めるしきい電圧Vt3及びVt4と電圧検出信号Svとを比較する。第2コンパレータ71Bは、電圧検出信号Svがしきい電圧Vt3より低い場合にハイレベルの信号を出力し、電圧検出信号Svがしきい電圧Vt3より高い場合にローレベルの信号を出力する。第2コンパレータ72Bは、電圧検出信号Svがしきい電圧Vt4より高い場合にハイレベルの信号を出力し、電圧検出信号Svがしきい電圧Vt4より低い場合にローレベルの信号を出力する。
【0051】
第2論理回路73Bは、第2コンパレータ71B及び72Bの比較結果に基づいて、しきい電圧Vt3及びVt4(Vt3>Vt4)に対応する所定の第2電圧範囲XV2に抵抗電圧VRsが含まれるか判定する。
図3の例において、第2論理回路73BはNAND回路であり、第2コンパレータ71B及び72Bのいずれか一方がローレベルの信号を出力した場合にハイレベルの信号S7Bを出力し、それ以外の場合にローレベルの信号S7Bを出力する。すなわち、第2論理回路73Bは、電圧検出信号Svが電圧Vt4~Vt3の範囲から外れた場合、抵抗電圧VRsが所定の第2電圧範囲XV2から外れたことを示すハイレベルの信号S7Bを出力し、それ以外の場合はローレベルの信号S7Bを出力する。
【0052】
故障判定部8は、電流判定部6において負荷電流ILが電流範囲XAから外れたと判定された場合に、電圧判定部7において抵抗電圧VRsが第1電圧範囲XV1に含まれると判定されたならば、抵抗Rsが短絡状態で故障していると判定する。すなわち故障判定部8は、信号S6がハイレベルのときに信号S7Aがローレベルならば、抵抗Rsが短絡状態で故障していると判定する。
【0053】
また故障判定部8は、電圧判定部7において、抵抗電圧VRsが第2電圧範囲XV2から外れたと判定された場合、抵抗Rsが開放状態で故障していると判定する。すなわち故障判定部8は、信号S7Bがハイレベルの場合に、抵抗Rsが開放状態で故障していると判定する。
【0054】
故障判定部8は、抵抗Rsが短絡状態及び開放状態のいずれかで故障している場合(信号S6がハイレベルかつ信号S7Aがローレベルの場合、又は、信号S7Bがハイレベルの場合)、抵抗Rsに故障が生じたことを示す信号S8をセンサ出力部9に出力する。
【0055】
センサ出力部9は、負荷電流ILによって抵抗Rsに生じる抵抗電圧VRsに応じたセンサ信号Soutを出力する。
図3の例において、センサ出力部9は、電圧検出部5の電圧検出信号Svを更に増幅する差動アンプ91有しており、差動アンプ91の増幅結果の信号をセンサ信号Soutとして出力する。
【0056】
なお、センサ出力部9は、故障判定部8において抵抗Rsが故障していると判定された場合、センサ信号Soutの出力ノードN9を高インピーダンス状態にする。
【0057】
センサ信号Soutを入力する他の装置において、出力ノードN9につながる信号線が抵抗を介して電源電圧レベルにプルアップされているか、又は、この信号線が抵抗を介してグランドレベルにプルダウンされている場合、出力ノードN9が高インピーダンス状態になると、センサ信号Soutは電源電圧レベル又はグランドレベルになる。この場合、当該他の装置では、センサ信号Soutが異常なレベル(電源電圧レベル、グランドレベル)になっているか監視することで、センサ装置の抵抗Rsに故障が生じたことを把握することが可能となる。
【0058】
ここで、上述した構成を有するセンサ装置による電流検出動作について説明する。
【0059】
図1に示すセンサ装置では、増幅回路3により増幅される電圧Vinが、負荷電流ILに応じて負帰還制御される。増幅回路3のゲインが十分に大きいものとすると、電圧Vinは概ねゼロとなるように負荷電流ILが変化する。すなわち、電圧Viが正の電圧の場合、電圧Viが正の電圧からゼロへ近づくように負荷電流ILが変化し、電圧Viが負の電圧の場合は、電圧Viが負の電圧からゼロへ近づくように負荷電流ILが変化する。電圧Viの変化は、測定対象の電流が発生する磁界の変化に応じたセンサ素子MRの抵抗値の変化によってもたらされる。このことから、電圧Vinが概ねゼロとなるように負荷電流ILが変化した場合、コイルCLには、電圧Vinが概ねゼロのときにセンサ素子MRに作用する磁界(例えばゼロ付近の磁界)が保たれるように負荷電流ILが流れる。すなわちコイルCLには、測定対象の電流によるセンサ素子MR付近の磁界の変化を打ち消すように、負荷電流ILが流れる。その結果、コイルCLに流れる負荷電流ILの変化は、測定対象の電流の変化に概ね比例する。従って、負荷電流ILを抵抗Rsにより検出した信号であるセンサ信号Soutは、測定対象の電流に概ね比例した信号となる。
【0060】
次に、検査回路10による抵抗Rsの故障検出動作について説明する。
【0061】
(短絡状態の故障の検出)
図4Aは、増幅回路3に入力される電圧Vinに対する電圧検出信号Svの変化の一例を表した図である。
図4Bは、電圧Vinに対する電流検出信号Siの変化の一例を表した図である。
図4A及び
図4Bにおいて、太い実線は抵抗Rsが正常状態の場合のグラフであり、太い点線は抵抗Rsが短絡状態の場合のグラフである。
【0062】
抵抗Rsに短絡が生じていない場合は、増幅回路3に入力される電圧Vinが大きくなるにつれて負荷電流ILが増大し、抵抗電圧VRsが大きくなるため、
図4Aにおいて実線のグラフで表すように、電圧Vinが大きくなるにつれて電圧検出信号Svが大きくなる。また、この場合、負荷電流ILの増大に伴って、出力部32のトランジスタ(M1~M4)に流れる電流が増大し、第1トランジスタM1のゲート電圧Vg1と第2トランジスタM2のゲート電圧Vg2との差も大きくなる。そのため、
図4Bにおいて実線のグラフで表すように、電圧Vinが大きくなるにつれて電流検出信号Siが大きくなる。電圧Vinが「V1」より大きくなると(Vin>V1)、負荷電流ILが電流範囲XAを外れて(Si>Vt5)、電流判定部6の信号S6がハイレベルとなる(
図4B)。このとき、
図4Aの実線のグラフに示すように、抵抗電圧VRsは第1電圧範囲XV1を外れており(Sv>Vt1)、電圧判定部7の信号S7Aはハイレベルとなる。信号S6がハイレベルの場合に信号S7Aがハイレベルとなるため、故障判定部8では、抵抗Rsにおいて短絡状態の故障が生じていないと判定される。
【0063】
抵抗Rsが短絡状態で故障した場合は、増幅回路3に入力される電圧Vinが大きくなるにつれて負荷電流ILが増大しても、
図4Aにおいて点線のグラフで表すように、抵抗電圧VRsはあまり変化しない。一方、この場合も、出力部32のトランジスタ(M1~M4)には電流が流れるため、増幅回路3に入力される電圧Vinが大きくなるにつれて負荷電流ILが増大すると、第1トランジスタM1のゲート電圧Vg1と第2トランジスタM2のゲート電圧Vg2との差が大きくなる。そのため、
図4Bにおいて点線のグラフで表すように、電圧Vinが大きくなるにつれて電流検出信号Siが大きくなる。電圧Vinが「V1」より大きくなると(Vin>V1)、負荷電流ILが電流範囲XAを外れて(Si>Vt5)、電流判定部6の信号S6がハイレベルとなる(
図4B)。このとき、
図4Aの点線のグラフに示すように、抵抗電圧VRsは第1電圧範囲XV1に含まれており(Vt1>Sv>Vt2)、電圧判定部7の信号S7Aはローレベルとなる。信号S6がハイレベルの場合に信号S7Aがローレベルとなるため、故障判定部8では、抵抗Rsにおいて短絡状態の故障が発生したと判定される。
【0064】
(開放状態の故障の検出)
上述したように、増幅回路3によって増幅される電圧Vin(ブリッジ回路2のノードN1、N2間の電圧)は、負荷電流ILに応じて負帰還制御される。負荷電流ILの経路に設けられた抵抗Rsが開放状態で故障すると、この負帰還制御が働いたままの状態で負荷電流ILが強制的にゼロとなる。そのため、増幅回路3の出力電圧Vout(出力端子OUT+,OUT-間の電圧)は正又は負の最大電圧となり、抵抗電圧VRsは出力電圧Voutと等しくなる。ここで、第2電圧範囲XV2は、この正又は負の最大電圧に比べて十分狭い範囲に設定されるため、抵抗電圧VRs(Vout)が正又は負の最大電圧になると、抵抗電圧VRsは第2電圧範囲XV2から外れる。これにより、第2電圧範囲XV2に対応するしきい電圧の範囲(Vt4~Vt3)から電圧検出信号Svが外れるため、電圧判定部7の信号S7Bがハイレベルとなる。信号S7Bがハイレベルになると、故障判定部8では、抵抗Rsにおいて短絡状態の故障が発生したと判定される。
【0065】
以上説明したように、本実施形態によれば、短絡状態で故障した抵抗Rsを流れる負荷電流ILが所定の電流範囲XAから外れた場合、抵抗Rsに生じる抵抗電圧VRsは、所定の第1電圧範囲XV1に含まれたままとなる。電流判定部6において負荷電流ILが電流範囲XAから外れたと判定され場合において、電圧判定部7において抵抗電圧VRsが第1電圧範囲XV1に含まれると判定されたならば、故障判定部8において抵抗Rsが短絡状態で故障していると判定される。従って、抵抗Rsの故障を検出するために、抵抗Rsへ専用の定電流源から所定の電流を流すことなどが不要であり、増幅回路3からコイルCLへ任意の負荷電流ILが流れている状態でも、抵抗Rsの短絡状態の故障を検出することができる。そのため、通常の動作時でも(電流検出の最中でも)抵抗Rsの故障の検出を行うことができる。
【0066】
本実施形態によれば、負荷電流ILの経路に設けられた増幅回路3のトランジスタ(M1~M4)に入力される制御信号(ゲート電圧)に基づいて電流検出信号Siが生成されるため、電流検出信号Siを生成するために電流センサなどを用いる場合に比べて回路構成を簡易にすることができる。特に、本実施形態によれば、第1トランジスタM1のゲート電圧Vg1と第2トランジスタM2のゲート電圧Vg2との差を差動アンプ41によって増幅することにより、非常に簡易な回路構成で電流検出信号Siを生成することができる。
【0067】
本実施形態によれば、抵抗電圧VRsが第1電圧範囲XV1に含まれているか否かの判定と、抵抗電圧VRsが第2電圧範囲XV2に含まれているか否かの判定とが並行して行われるため、抵抗Rsの短絡状態の故障判定と抵抗Rsの開放状態の故障判定とを同時に行うことが可能となる。
【0068】
本実施形態によれば、故障判定部8において抵抗Rsが故障していると判定された場合、センサ出力部9においてセンサ信号Soutの出力ノードN9が高インピーダンス状態にされる。これにより、抵抗Rsが故障しているとの判定結果を外部に出力する手段として、センサ信号Soutの出力ノードN9が兼用されるため、当該判定結果を出力するための端子を別個に設ける場合に比べて構成を簡易にすることができる。
【0069】
次に、上述した実施形態に関連する変形例について説明する。
【0070】
図5は、電流検出部4の一変形例を示す図である。
図5に示す変形例の電流検出部4は、第1カレントミラー回路42と、第2カレントミラー回路43と、差動アンプ44とを含む。
【0071】
第1カレントミラー回路42は、第1トランジスタM1に流れる負荷電流ILに比例した第1ミラー電流Im1を発生する。
図5の例において、第1カレントミラー回路42は、nチャンネルMOSトランジスタであるトランジスタM25及びM26と、抵抗R1とを含む。トランジスタM25のゲートとソースが、それぞれ第1トランジスタM1のゲートとソースに接続されるため、トランジスタM25には第1トランジスタM1の負荷電流ILに比例した第1ミラー電流Im1が流れる。トランジスタM25のドレインはトランジスタM26のソースに接続され、トランジスタM26のドレインは抵抗R1の一方の端子に接続され、抵抗R1の他方の端子には定電圧源11による電圧Vbが印加される。トランジスタM26はゲート接地回路であり、ゲートに一定のバイアス電圧B26が印加される。
【0072】
第2カレントミラー回路43は、第2トランジスタM2に流れる負荷電流ILに比例した第2ミラー電流Im2を発生する。
図5の例において、第2カレントミラー回路43は、nチャンネルMOSトランジスタであるトランジスタM27及びM28と、抵抗R2とを含む。トランジスタM27のゲートとソースが、それぞれ第2トランジスタM2のゲートとソースに接続されため、トランジスタM27には第2トランジスタM2の負荷電流ILに比例した第2ミラー電流Im2が流れる。トランジスタM27のドレインはトランジスタM28のソースに接続され、トランジスタM28のドレインは抵抗R2の一方の端子に接続され、抵抗R2の他方の端子には電圧Vbが印加される。トランジスタM28はゲート接地回路であり、ゲートに一定のバイアス電圧B28が印加される。
【0073】
差動アンプ44は、第1ミラー電流Im1に応じた第1信号S1と第2ミラー電流Im2に応じた第2信号S2との差に応じた電流検出信号Siを生成する。すなわち差動アンプ44は、第1信号S1と第2信号S2との差を増幅した信号を電流検出信号Siとして出力する。
図5の例において、第1信号S1は、電圧Vbに対して抵抗R1の電圧降下分だけ低い電圧であり、第2信号S2は、電圧Vbに対して抵抗R2の電圧降下分だけ低い電圧である。
【0074】
負荷電流ILに対する第1ミラー電流Im1の比と負荷電流ILに対する第2ミラー電流Im2の比とが互いに等しく、かつ、抵抗R1と抵抗R2の抵抗値が略等しいものとすると、第1信号S1と第2信号S2との差は概ね負荷電流ILに比例する。従って、第1信号S1と第2信号S2を差動アンプ44により増幅して得られる電流検出信号Siは、概ね負荷電流ILに比例する。
【0075】
図5に示す変形例によれば、第1ミラー電流Im1に応じた第1信号S1と第2ミラー電流Im2に応じた第2信号S2との差(S1-S2)は、ゲート電圧の差(Vg1-Vg2)などと比べて振幅の大きい信号となる。そのため、負荷電流ILが小さい場合でも、比較的振幅の大きい電流検出信号Siを生成し易くなり、抵抗Rsの故障(短絡)をより正確に判定できる。
【0076】
図6は、電圧判定部7の一変形例を示す図である。
図6に示す電圧判定部7は、コンパレータ74及び75と、論理回路76と、しきい電圧入力部77とを有する。
【0077】
コンパレータ74及び75は、しきい電圧入力部77によって入力されるしきい電圧VA、VB(VA>VB)と電圧検出信号Svとを比較する。コンパレータ74は、電圧検出信号Svがしきい電圧VA(Vt1又はVt2)より低い場合にハイレベルの信号を出力し、電圧検出信号Svがしきい電圧VAより高い場合いローレベルの信号を出力する。コンパレータ75は、電圧検出信号Svがしきい電圧VB(Vt2又はVt4)より高い場合にハイレベルの信号を出力し、電圧検出信号Svがしきい電圧VBより低い場合いローレベルの信号を出力する。
【0078】
しきい電圧入力部77は、抵抗Rsの短絡状態の故障を判定する短絡判定モードにおいて、第1電圧範囲XV1に対応するしきい電圧VA及びVBをそれぞれコンパレータ74及び75に入力し、抵抗Rsの開放状態の故障を判定する開放判定モードにおいて、第2電圧範囲XV2に対応するしきい電圧VA及びVBをそれぞれコンパレータ74及び75に入力する。すなわち、しきい電圧入力部77は、短絡判定モードにおいて、しきい電圧Vt1に相当するしきい電圧VAをコンパレータ74に入力するとともに、しきい電圧Vt2に相当するしきい電圧VBをコンパレータ75に入力する。また、しきい電圧入力部77は、開放判定モードにおいて、しきい電圧Vt3に相当するしきい電圧VAをコンパレータ74に入力するとともに、しきい電圧Vt4に相当するしきい電圧VBをコンパレータ75に入力する。
【0079】
例えばしきい電圧入力部77は、予め設定された一定の周期で短絡判定モードと開放判定モードとを交互に繰り返す。
【0080】
論理回路76は、コンパレータ74及び75の比較結果に基づいて、しきい電圧VA及びVBに対応する電圧範囲に抵抗電圧VRsが含まれるか判定する。
図6の例において、論理回路76はNAND回路であり、コンパレータ74及び75のいずれか一方がローレベルの信号を出力した場合にハイレベルの信号S7を出力し、それ以外の場合にローレベルの信号S7を出力する。
【0081】
論理回路76は、短絡判定モードにおいて電圧検出信号Svが電圧VB~VAの範囲(電圧Vt2~Vt1の範囲)から外れた場合、抵抗電圧VRsが第1電圧範囲XV1から外れたことを示すハイレベルの信号S7を出力し、それ以外の場合はローレベルの信号S7を出力する。
【0082】
論理回路76は、開放判定モードにおいて電圧検出信号Svが電圧VB~VAの範囲(電圧Vt4~Vt3の範囲)から外れた場合、抵抗電圧VRsが第2電圧範囲XV2から外れたことを示すハイレベルの信号S7を出力し、それ以外の場合はローレベルの信号S7を出力する。
【0083】
故障判定部8は、電流判定部6において負荷電流ILが電流範囲XAから外れたと判定された場合に、短絡判定モードの電圧判定部7において抵抗電圧VRsが第1電圧範囲XV1に含まれると判定されたならば、抵抗Rsが短絡状態で故障していると判定する。すなわち故障判定部8は、短絡判定モードにおいて信号S6がハイレベルのときに信号S7がローレベルならば、抵抗Rsが短絡状態で故障していると判定する。
【0084】
また故障判定部8は、開放判定モードの電圧判定部7において抵抗電圧VRsが第2電圧範囲XV2から外れたと判定された場合、抵抗Rsが開放状態で故障していると判定する。すなわち故障判定部8は、開放判定モードにおいて信号S7がハイレベルの場合に、抵抗Rsが開放状態で故障していると判定する。
【0085】
図6に示す変形例によれば、コンパレータ74及び75が、抵抗Rsの短絡状態の故障を判定する短絡判定モードと、抵抗Rsの開放状態の故障を判定する開放判定モードとにおいて兼用される。そのため、短絡状態の故障判定と開放状態の故障判定とに個別のコンパレータ74及び75を設ける場合に比べて回路構成を簡易にすることができる。
【0086】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、種々のバリエーションを含んでいる。
【0087】
上述した実施形態では、第1トランジスタM1のゲート電圧Vg1と第2トランジスタM2のゲート電圧Vg2との差に基づいて電流検出部4が電流検出信号Siを生成しているが、本発明はこの例に限定されない。例えば電源電圧VDDを基準電位とみなした場合、電流検出部4は、第3トランジスタM3のゲート電圧Vg3と第4トランジスタM4のゲート電圧Vg4との差に基づいて電流検出信号Siを生成してもよい。
【0088】
上述した実施形態では、電圧判定部7において電圧検出信号Svの範囲を2つのコンパレータにより判定しているが、電圧検出信号Svの変化可能な範囲に制限がある場合には、電圧判定部7において電圧検出信号Svの範囲を1つのコンパレータにより判定してもよい。同様に、電流検出信号Siの変化可能な範囲に制限がある場合には、電流判定部6において電流検出信号Siの範囲を1つのコンパレータにより判定してもよい。
【0089】
上述した実施形態では、増幅回路3において負荷電流ILを正負の双方向に流すことが可能であるが、本発明の他の実施形態では、負荷電流の方向を一方向に限定してもよい。
【0090】
上述した実施形態では、ブリッジ回路2に含まれるセンサ素子MRの例として磁気抵抗効果素子を挙げているが、他のセンサ素子でもよい。また、センサ装置は電流センサに限定されず、他の物理量を検出するセンサ装置でもよい
【0091】
上述した実施形態における回路構成は一例であり、同等の機能を持つ別の回路に置き換えてもよい。
【符号の説明】
【0092】
2…ブリッジ回路、21~23…抵抗、3…増幅回路、31…差動増幅部、32…出力部、4…電流検出部、41…差動アンプ、42…第1カレントミラー回路、43…第2カレントミラー回路、44…差動アンプ、5…電圧検出部、51…差動アンプ、6…電流判定部、61…コンパレータ、62…コンパレータ、63…論理回路、7…電圧判定部、71A,72A…第1コンパレータ、71B,72B…第2コンパレータ、73A…第1論理回路、73B…第2論理回路、74、75…コンパレータ、76…論理回路、77…しきい電圧入力部、8…故障判定部、9…センサ出力部、91…差動アンプ、10…検査回路、11…定電圧源、CL…コイル、Rs…抵抗、MR…センサ素子、M1…第1トランジスタ、M2…第2トランジスタ、N9…出力ノード、VRs…抵抗電圧、IL…負荷電流、Si…電流検出信号、Sv…電圧検出信号、Im1…第1ミラー電流、Im2…第2ミラー電流、S1…第1信号、S2…第2信号、Sout…センサ信号