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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-05
(45)【発行日】2023-12-13
(54)【発明の名称】液体吐出装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/165 20060101AFI20231206BHJP
【FI】
B41J2/165 101
B41J2/165 211
B41J2/165 505
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020004037
(22)【出願日】2020-01-15
(65)【公開番号】P2021109410
(43)【公開日】2021-08-02
【審査請求日】2022-08-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000137823
【氏名又は名称】株式会社ミマキエンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】100104329
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 卓治
(74)【代理人】
【識別番号】100177149
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 浩義
(72)【発明者】
【氏名】坂本 旬
(72)【発明者】
【氏名】渡部 美咲
(72)【発明者】
【氏名】塚田 晃弘
【審査官】中村 博之
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-057991(JP,A)
【文献】特開2016-150485(JP,A)
【文献】特開2019-188746(JP,A)
【文献】特開2017-087597(JP,A)
【文献】中国実用新案第201761146(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吐出するノズルの吐出口が設けられたノズル面を有する液体吐出ヘッドと、
前記ノズル面に当接して前記ノズルを覆うキャップと、
前記キャップが前記ノズル面に当接している場合に前記キャップ内の気圧を調節する気圧調節部と、
前記気圧調節部が前記キャップ内の気圧を第1の気圧にする場合に前記キャップが前記ノズル面に当接する圧力である当接力を第1の圧力とし、前記気圧調節部が前記キャップ内の気圧を前記第1の気圧より小さい絶対値を有する第2の気圧にする場合に前記当接力を前記第1の圧力未満の第2の圧力とする当接力調節部と、
を備え、
前記当力調節部は、前記ノズルのクリーニング時には前記当接力を前記第1の圧力とし、前記ノズルの保管時には、前記当接力を前記第2の圧力とする、
液体吐出装置。
【請求項2】
前記液体吐出ヘッドから前記液体を吐出して所定の印刷を行う印刷位置と、前記ノズル面が前記キャップの開口と向き合うメンテナンス位置との間で、前記液体吐出ヘッドを移動させる移動装置をさらに備え、
前記移動装置は印刷中又は印刷後に前記液体吐出ヘッドを前記印刷位置から前記メンテナンス位置に移動させ、その後、前記当接力調節部は前記当接力を前記第1の圧力とし、且つ、前記気圧調節部は前記キャップ内の気圧を前記第1の気圧とし、これにより、前記ノズルから前記液体を排出させる、
請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項3】
前記液体吐出ヘッドから前記液体を吐出して所定の印刷を行う印刷位置と、前記ノズル面が前記キャップの開口と向き合うメンテナンス位置との間で、前記液体吐出ヘッドを移動させる移動装置をさらに備え、
前記移動装置は処理後に前記液体吐出ヘッドを前記印刷位置から前記メンテナンス位置に移動させ、その後、前記当接力調節部は前記当接力を前記第2の圧力とし、且つ、前記気圧調節部は前記キャップ内の圧力を前記第2の気圧とし、これにより、前記ノズル内に前記液体を維持する、
請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項4】
前記液体吐出ヘッドから前記液体を吐出して所定の印刷を行う印刷位置と、前記キャップの開口が前記ノズル面と向き合うメンテナンス位置との間で、前記液体吐出ヘッドを移動させる移動装置をさらに備え、
前記移動装置は前記液体吐出ヘッドを前記印刷位置から前記メンテナンス位置に移動させ、その後、前記当接力調節部は前記当接力を前記第1の圧力とし、且つ、前記気圧調節部は前記キャップ内の気圧を前記第1の気圧とし、これにより、前記ノズルに前記液体を供給する供給路に前記液体を充填させる、
請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項5】
前記当接力調節部が前記キャップに当接する力を前記第1の圧力とし、その後、前記気圧調節部は前記キャップ内の気圧を前記第1の気圧とする、
請求項2又は4に記載の液体吐出装置。
【請求項6】
前記当接力調節部が前記キャップに当接する力を前記第1の圧力とし、これと並行して、前記気圧調節部は前記キャップ内の気圧を前記第1の気圧とする、
請求項2又は4に記載の液体吐出装置。
【請求項7】
前記当接力調節部は、前記キャップの開口が前記ノズル面と向き合うメンテナンス位置にあるときに、前記キャップが前記ノズル面に当接する位置と前記キャップが前記ノズル面と離間する位置との間で、前記キャップを前記ノズル面に向かう一方向に沿って移動させるアクチュエータを備える、
請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項8】
前記当接力調節部は、
前記キャップが載せられているスライド部と、
前記スライド部が第1の方向に沿ってスライド可能であり、且つ、前記スライド部が前記第1の方向に沿ってスライドする最中に前記第1の方向に垂直な第2の方向に沿って前記スライド部が変位するように、前記スライド部を保持するガイド部と、
を含み、
前記ガイド部は、
前記キャップが前記ノズル面と離間する位置で前記スライド部を保持する第1の係止部と、
前記キャップが前記ノズル面に前記第2の圧力で押し付けられる位置で前記スライド部を保持する第2の係止部と、
前記キャップが前記ノズル面に前記第1の圧力で押し付けられる位置で前記スライド部を保持する第3の係止部と、
を含み、
前記ガイド部は前記スライド部を前記第1の係止部、前記第2の係止部、及び前記第3の係止部をこの順番で経由してスライド可能に保持する、
請求項1から7のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンタをはじめとする液体吐出装置では、ノズルの先端での液体(例えば、インク)の乾燥及びそれに伴う目詰まりを防ぐために、ノズルを長時間にわたり使用しない場合には、ノズルをキャップで気密的に覆って保管する。また、ノズルをクリーニングするために、ノズルの保管中に定期的に又はノズルの使用直前に、前述のようにノズルを気密的に覆うキャップを介してノズル内の液体を吸引して除去する。ノズルの乾燥防止及びクリーニングのためにキャップをノズルに装着することをキャッピングという。
【0003】
例えば、特許文献1は、こうしたキャッピングのためのキャッピング移動機構を含むクリーニング装置を備えたインクジェットプリンタを開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-176563号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来、キャッピング時にキャップの先端をノズルの周囲のノズル面に押し当てる圧力(以下、キャッピング圧力)は、保管のためのキャッピングかクリーニングのためのキャッピングかを問わず、クリーニング時の吸引により生じるキャップ内外の気圧差に抗して、キャップとノズル面との間を気密的に密閉できる程度の高い圧力に設定される。
【0006】
こうした高い圧力は、ノズルのクリーニングには役立つが、ノズルの保管の場合には、ノズル面及びその近傍構造の損傷をもたらすおそれがある。例えば、ノズルから吐出する液体の付着を防ぐための防汚層(例えば、撥水層)がノズル面にしばしば塗膜されているが、前述の高い圧力でのキャッピングでは、こうした防汚層が割れたり剥がれたりするおそれがある。また、例えば、インクジェットプリンタの場合、微細なノズル構造及びインク流路が刻まれた金属板の積層体がプリントヘッドに採用されることもあるが、こうした積層体はその積層方向へキャップから高い圧力を掛けられ続けると隣接する金属板の間の境界や金属板と他の材料からなる部品との間の境界でクラックが生じるおそれがある。
【0007】
以上を鑑み、本発明は、キャッピングを好適に行うことができる液体吐出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の観点に係る液体吐出装置は、
液体を吐出するノズルの吐出口が設けられたノズル面を有する液体吐出ヘッドと、
前記ノズル面に当接して前記ノズルを覆うキャップと、
前記キャップが前記ノズル面に当接している場合に前記キャップ内の気圧を調節する気圧調節部と、
前記気圧調節部が前記キャップ内の気圧を第1の気圧にする場合に前記キャップが前記ノズル面に当接する圧力である当接力を第1の圧力とし、前記気圧調節部が前記キャップ内の気圧を前記第1の気圧より小さい絶対値を有する第2の気圧にする場合に前記当接力を前記第1の圧力未満の第2の圧力とする当接力調節部と、
を備える、
ことを特徴とする。
【0009】
以上の構成によれば、キャップがノズル面に当接する当接力をキャップ内の気圧に応じて最適化できるため、キャッピングを好適に行うことができる。例えば、ノズルを保管する場合のキャッピング圧力をノズルをクリーニングする場合のキャッピング圧力よりも低くできるため、ノズルのクリーニングではキャップとノズル面との間の十分な密閉力を確保しつつ、ノズルの保管をより好適に、例えば、ノズル面及び液体吐出ヘッドでの損傷をより少なくノズルの保管を行うことができる。
【0010】
前記液体吐出ヘッドから前記液体を吐出して所定の印刷を行う印刷位置と、前記ノズル面が前記キャップの開口と向き合うメンテナンス位置との間で、前記液体吐出ヘッドを移動させる移動装置をさらに備え、
前記移動装置は印刷中又は印刷後に前記液体吐出ヘッドを前記印刷位置から前記メンテナンス位置に移動させ、その後、前記当接力調節部は前記当接力を前記第1の圧力とし、且つ、前記気圧調節部は前記キャップ内の気圧を前記第1の気圧とし、これにより、前記ノズルから前記液体を排出させる、
こととしてもよい。
【0011】
以上の構成によれば、キャップがノズル面に当接する当接力をキャップ内の気圧に応じて最適化できるため、キャッピングを好適に行うことができる。
【0012】
前記液体吐出ヘッドから前記液体を吐出して所定の印刷を行う印刷位置と、前記ノズル面が前記キャップの開口と向き合うメンテナンス位置との間で、前記液体吐出ヘッドを移動させる移動装置をさらに備え、
前記移動装置は処理後に前記液体吐出ヘッドを前記印刷位置から前記メンテナンス位置に移動させ、その後、前記当接力調節部は前記当接力を前記第2の圧力とし、且つ、前記気圧調節部は前記キャップ内の圧力を前記第2の気圧とし、これにより、前記ノズル内に前記液体を維持する、
こととしてもよい。
【0013】
以上の構成によれば、キャップがノズル面に当接する当接力をキャップ内の気圧に応じて最適化できるため、キャッピングを好適に行うことができる。
【0014】
前記液体吐出ヘッドから前記液体を吐出して所定の印刷を行う印刷位置と、前記キャップの開口が前記ノズル面と向き合うメンテナンス位置との間で、前記液体吐出ヘッドを移動させる移動装置をさらに備え、
前記移動装置は前記液体吐出ヘッドを前記印刷位置から前記メンテナンス位置に移動させ、その後、前記当接力調節部は前記当接力を前記第1の圧力とし、且つ、前記気圧調節部は前記キャップ内の気圧を前記第1の気圧とし、これにより、前記ノズルに前記液体を供給する供給路に前記液体を充填させる、
こととしてもよい。
【0015】
以上の構成によれば、キャップがノズル面に当接する当接力をキャップ内の気圧に応じて最適化できるため、キャッピングを好適に行うことができる。
【0016】
前記当接力調節部が前記キャップに当接する力を前記第1の圧力とし、その後、前記気圧調節部は前記キャップ内の気圧を前記第1の気圧とする、
こととしてもよい。
【0017】
以上の構成によれば、キャップがノズル面に当接する当接力をキャップ内の気圧に応じて最適化できるため、キャッピングを好適に行うことができる。
【0018】
前記当接力調節部が前記キャップに当接する力を前記第1の圧力とし、これと並行して、前記気圧調節部は前記キャップ内の気圧を前記第1の気圧とする、
こととしてもよい。
【0019】
以上の構成によれば、キャップがノズル面に当接する当接力をキャップ内の気圧に応じて最適化できるため、キャッピングを好適に行うことができる。
【0020】
前記当接力調節部は、前記キャップの開口が前記ノズル面と向き合うメンテナンス位置にあるときに、前記キャップが前記ノズル面に当接する位置と前記キャップが前記ノズル面と離間する位置との間で、前記キャップを前記ノズル面に向かう一方向に沿って移動させるアクチュエータを備える、
こととしてもよい。
【0021】
以上の構成によれば、キャップがノズル面に当接する当接力をキャップ内の気圧に応じて容易に最適化できる。例えば、ノズルのクリーニング時の当接力とノズルの保管時の当接力とを異なる圧力に簡便に調節できる。
【0022】
前記当接力調節部は、
前記キャップが載せられているスライド部と、
前記スライド部が第1の方向に沿ってスライド可能であり、且つ、前記スライド部が前記第1の方向に沿ってスライドする最中に前記第1の方向に垂直な第2の方向に沿って前記スライド部が変位するように、前記スライド部を保持するガイド部と、
を含み、
前記ガイド部は、
前記キャップが前記ノズル面と離間する位置で前記スライド部を保持する第1の係止部と、
前記キャップが前記ノズル面に前記第2の圧力で押し付けられる位置で前記スライド部を保持する第2の係止部と、
前記キャップが前記ノズル面に前記第1の圧力で押し付けられる位置で前記スライド部を保持する第3の係止部と、
を含み、
前記ガイド部は前記スライド部を前記第1の係止部、前記第2の係止部、及び前記第3の係止部をこの順番で経由してスライド可能に保持する、
こととしてもよい。
【0023】
以上の構成によれば、キャップがノズル面に当接する当接力をキャップ内の気圧に応じて容易に最適化し且つ維持できる。例えば、ノズルのクリーニング時の当接力とノズルの保管時の当接力とを異なる圧力に簡便に調節し且つ維持できる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、キャッピングを好適に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の一実施の形態のインクジェットプリンタの全体図。
図2図1の装置本体内の構成を示すブロック図。
図3】(A)インクジェットヘッドを短手方向に切った断面図。(B)インクジェットヘッドを長手方向に切った断面図。
図4】(A)ヘッドキャップの平面図。(B)ヘッドキャップを短手方向に切った断面図。(C)ヘッドキャップを長手方向に切った断面図。
図5】(A)ヘッドキャップを押し付けた状態のインクジェットヘッドを短手方向に切った断面図。(B)ヘッドキャップを押し付けた状態のインクジェットヘッドを長手方向に切った断面図。
図6】(A)変形例のヘッドキャップ移動機構の平面図。(B)変形例のヘッドキャップ移動機構の正面図。(C)変形例のヘッドキャップ移動機構の側面図。
図7】(A)ヘッドキャップがインクジェットヘッドと離れている場合の変形例のヘッドキャップ移動機構の側面図。(B)ヘッドキャップがインクジェットヘッドに第1の圧力で押し付けられる場合の変形例のヘッドキャップ移動機構の側面図。(C)ヘッドキャップがインクジェットヘッドに第2の圧力で押し付けられる場合の変形例のヘッドキャップ移動機構の側面図。
図8】(A)変形例において、ヘッドキャップを押し付けた状態のインクジェットヘッドを短手方向に切った断面図。(B)変形例において、ヘッドキャップを押し付けた状態のインクジェットヘッドを長手方向に切った断面図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
(インクジェットプリンタ10の構成)
本発明の実施の形態に係るインクジェットプリンタ10は、図1に示す外観を有し、インクジェット方式によりメディアMに画像を印刷する。メディアMは、例えば、紙、又は、布帛などのシート材である。インクジェットプリンタ10は、装置本体11及び架台12を備える。装置本体11は、メディアMに画像を印刷する部分であり、架台12により支持されている。
【0027】
装置本体11は、メディアMを支持するプラテン110を備える。さらに、装置本体11は、その内部に、インクジェットヘッド120と、インク供給機構130と、ヘッド移動機構140と、送り機構150と、メンテナンス機構160と、入出力部180と、コントローラ190と、を備える(図2も参照)。
【0028】
インクジェットヘッド120は、画像を印刷するときに、印刷用のインクをメディアMにインクジェット方式(ピエゾ方式とサーマルヘッド方式とのいずれでもよい)で吐出する。印刷用のインクは、例えば、YMCKそれぞれのインクである。インクジェットヘッド120は、図3に示すように、後述のインク供給機構130を介してインク貯蔵部から送られてきたインクを吐出するノズル121と、当該ノズル121が開口するノズル面122とを備える。
【0029】
インク供給機構130は、インク供給路を有し、インク供給路により、インク貯蔵部、例えばインクボトル又はインクカートリッジ内のインクをインクジェットヘッド120に供給する。
【0030】
ヘッド移動機構140は、インクジェットヘッド120を、印刷を行う位置と後述のメンテナンス位置との間で、例えば、左右方向、つまり、主走査方向に沿って移動させる。ヘッド移動機構140は、インクジェットヘッド120が搭載されているキャリッジと、キャリッジの左右方向への移動を案内するガイドレールと、を備える。さらに、ヘッド移動機構140は、キャリッジが固定された駆動ベルトと、駆動ベルトが掛けまわされた駆動プーリ及び従動プーリと、駆動プーリを回転される駆動モータと、を備える。駆動モータの回転により、駆動ベルトが回転し、キャリッジが左右方向に移動する。
【0031】
送り機構150は、メディアMを手前奥方向である副走査方向に送るための機構である。送り機構150は、駆動モータと、駆動モータにより回転する駆動ローラと、複数のピンチローラと、を備える。駆動ローラと複数のピンチローラとによりメディアMは挟まれ、駆動ローラの回転により、メディアMは副走査方向に送られる。
【0032】
メンテナンス機構160は、ノズル121のクリーニング及びノズル121の保管を行う。クリーニングは、定期的に実行される。
【0033】
メンテナンス機構160は、ヘッドキャップ161と、ヘッドキャップ移動機構162と、吸引装置163と、を備える。メンテナンス機構160は、装置本体11内の左右方向の一端部(例えば、図1では、右端)に配置されている。
【0034】
ヘッドキャップ161は、一端に開口が形成された略カップ状の部材であり、例えば、図4に示すように、上部開口の箱形である。ヘッドキャップ161は、その開口端部がノズル面122に当接すると、ノズル面122に設けられているノズル121を気密的に覆う。ヘッドキャップ161は、底部に排出口161aを備えており、排出口161aは、吸引装置163に流体連通している。
【0035】
ヘッドキャップ移動機構162は、ヘッドキャップ161を移動させ、当該ヘッドキャップ161を、インクジェットヘッド120のノズル面122に所定の圧力で押し付けて当接させたり、ノズル面122から離したりする。このため、ヘッドキャップ移動機構162は、インクジェットヘッド120がノズル121のメンテナンスのためのメンテナンス位置(例えば、図1では、右端)にあるときに、ヘッドキャップ161を、ノズル面121に向かう一方向に沿って、例えば、上下に、移動させるアクチュエータを備える。インクジェットヘッド120がメンテナンス位置にあるとき、インクジェットヘッド120のノズル面162とヘッドキャップ161の開口とは向かい合う。
【0036】
第1の圧力は、ノズル121のクリーニング時にヘッドキャップ161内が後述の第1の気圧である場合にヘッドキャップ161の内外に生じる気圧差に抗して、ヘッドキャップ161とノズル面122との間が気密的に密閉される圧力以上の圧力である。
【0037】
第2の圧力は、第1の圧力未満であり、且つ、ノズル121の保管時にヘッドキャップ161内が後述の第2の気圧である場合にヘッドキャップ161の内外に存在する気圧差に抗して、ヘッドキャップ161とノズル面122との間が気密的に密閉される圧力以上の圧力である。この気圧差は、通常、実質的に0Paなので、第2の圧力は、0Pa以上であればよい。
【0038】
吸引装置163は、ヘッドキャップ161内の空気を吸引して、吐出ノズルを気密的に覆った状態のヘッドキャップ161内を所定の気圧にする。吸引装置163は、インクジェットヘッド120のノズル121をクリーニングする場合には、ヘッドキャップ161内の気圧をインクジェットヘッド120のノズル121内に残留したインクが吸い出される程度の気圧である第1の気圧に調節する。特に、第1の気圧はヘッドキャップ161外の気圧よりも低い負圧である。一方、インクジェットヘッド120のノズル121を保管する場合には、ヘッドキャップ161内の空気の吸引を取り止め吸引装置163からヘッドキャップ161内への空気の流入を許すことで、ヘッドキャップ161内の気圧をインクジェットヘッド120のノズル121内にインクが維持される程度の気圧である第2の気圧に調節する。第2の気圧は、第1の気圧よりも小さい絶対値を有するのであれば、ヘッドキャップ161外の気圧と同じでもよいし、当該気圧よりも高くてもよいし、当該気圧よりも低くてもよい。ここで、第1及び第2の気圧は、ヘッドキャップ161外の気圧を基準とした値である。
【0039】
入出力部180は、コントローラ190による制御のもとで、各種画像を表示するとともに、ユーザ(オペレータ等を含む)からの操作入力を受け付ける。入出力部180は、例えば、タッチパネルからなる。入出力部180により表示される各種画像には、ユーザからの操作入力を受け付けるための操作部(操作ボタン等)を表す画像が含まれる。入出力部180は、液晶モニタ等の表示部と、操作スイッチなどの操作部と、から構成されてもよい。
【0040】
コントローラ190は、インクジェットプリンタ10全体を制御する。コントローラ190は、例えば、プログラムにより動作するマイクロコンピュータ等の各種コンピュータにより構成される。また、コントローラ190は、外部のホストコンピュータ等と通信可能となっており、当該コントローラ190には画像データが供給される。
【0041】
コントローラ190は、図2に示すように、記憶部191と、印刷実行部192と、クリーニング実行部193と、保管実行部194と、を備える。
【0042】
記憶部191は、HDD(Hard Disk Drive)、又は、SSD(Solid State Drive)などの各種の記憶装置により構成されている。記憶部191は、制御部190により実行されるプログラムや当該プログラムの実行時に使用される各種の設定値を記憶している。記憶部191は、後述のプロセッサのメインメモリとして機能するRAM(Random Access Memory)を有してもよい。
【0043】
印刷実行部192、クリーニング実行部193、及び保管実行部194は、それぞれ、例えば、記憶部191が記憶しているプログラムを実行するCPU(Central Processing Unit)等の各種プロセッサからなる。
【0044】
印刷実行部192は、インクジェットプリンタ10の外部(ホストコンピュータなど)から供給される画像データに基づいて、インクジェットヘッド120とヘッド移動機構140と送り機構150とを制御し、前記の画像データが示す画像をメディアMに印刷する。印刷実行部192は、ヘッド移動機構140を駆動し、インクジェットヘッド120を移動させながら、画像データに基づくタイミングで、インクジェットヘッド120を制御してインクを吐出させる。このような工程により、画像データが表す画像の一ラインが印刷される。その後、印刷実行部192は、送り機構150を駆動してメディアMを副走査方向に所定量送る。このような、画像の一ラインの印刷と、送り機構150によるメディアMの送り等と、を繰り返し行うことにより画像がメディアMに印刷される。
【0045】
クリーニング実行部193は、印刷中又は印刷後に、ヘッド移動機構140とメンテナンス機構160とを制御し、インクジェットヘッド120のノズル121のクリーニングを実行する。具体的に、クリーニング実行部193は、インクジェットヘッド120がメンテナンス位置にないなら、ヘッド移動機構140を駆動して、インクジェットヘッド120をメンテナンス位置に移動させる。さらに、クリーニング実行部193は、ヘッドキャップ161をヘッドキャップ移動機構162によりインクジェットヘッド120のノズル面122に第1の圧力で押し付けて当接させ、吸引装置163を駆動して吸引を行わせ、ヘッドキャップ161内を負圧である第1の気圧に調節し、インクジェットヘッド120のノズル121内のインクを吸い出す。その後、クリーニング実行部193は、ヘッドキャップ161をインクジェットヘッド120から離す。このようにしてインクジェットヘッド120のノズル121のクリーニングが行われる。
【0046】
保管実行部194は、印刷後に、ヘッド移動機構140とメンテナンス機構160とを制御し、インクジェットヘッド120のノズル121の保管を実行する。具体的に、保管実行部194は、ヘッド移動機構140を駆動して、インクジェットヘッド120をメンテナンス位置に移動させる。さらに、保管実行部194は、ヘッドキャップ161をヘッドキャップ移動機構162によりインクジェットヘッド120のノズル面122に第2の圧力で押し付けて当接させ、その状態を維持する。この際に、保管実行部194は、吸引装置163による吸引を取り止めさせ又はクリーニング時よりも弱く吸引させ、ヘッドキャップ161内を第2の気圧に調節し、インクジェットヘッド120のノズル121内にインクを維持する。このようにしてインクジェットヘッド120のノズル121の保管が行われる。
【0047】
(効果)
従来のインクジェットプリンタにおいて、ノズルの保管やクリーニングのために、ノズルの先端をヘッドキャップで気密的に覆う場合、ヘッドキャップの先端をノズルの周囲のノズル面に押し当てる圧力は、キャッピングを行う目的によらず、クリーニング時の吸引により生じるキャップ内外の気圧差に抗して、ヘッドキャップとノズル面との間を気密的に密閉できる程度の高い圧力、すなわち、上述の実施の形態の第1の圧力に設定される。
【0048】
第1の圧力は、ノズルのクリーニングには役立つが、ノズルの保管の場合には、ノズル面及びその近傍構造の損傷をもたらすおそれがある。例えば、ノズルから吐出する液体の付着を防ぐための防汚層(例えば、撥水層)がノズル面にしばしば塗膜されているが、第1の圧力でのキャッピングでは、こうした防汚層が割れたり剥がれたりするおそれがある。また、例えば、微細なノズル構造及びインク流路が刻まれた金属板の積層体がインクジェットプリンタのプリントヘッドに採用されることもあるが、こうした積層体はその積層方向へヘッドキャップから第1の圧力を掛けられ続けると隣接する金属板の間の境界や金属板と他の材料からなる部品との間の境界でクラックが生じるおそれがある。
【0049】
一方、上述の実施の形態に係るインクジェットプリンタ10では、ノズル121のクリーニング時には、ヘッドキャップ161がインクジェットヘッド120のノズル面122へ第1の圧力で押し付けられるので、吸引装置163がノズル121からヘッドキャップ161を介してインクを吸引する最中も、ヘッドキャップ161とノズル面122との間はしっかりと気密的に密閉される。一方、ノズル121の保管時には、ヘッドキャップ161がインクジェットヘッド120のノズル面122へ第1の圧力より低い第2の圧力で押し付けられるので、第1の圧力で押し付けられる場合よりも、ノズル面122及びヘッドキャップ161が損傷を受けづらく、安全である。この結果、ヘッドキャップ161、特に、ノズル面122の製品寿命を改善できる。
【0050】
(変形例)
本発明は、上述の実施の形態に限定されない。上述の実施の形態の変形例を以下に例示する。なお、上述の実施の形態及び以下の変形例の構成は、矛盾のない限り、任意に組み合わせることができる。
【0051】
(変形例1)
上述の実施の形態では、液体吐出装置としてインクジェットプリンタ10を採用しているが、この代わりに、液体を吐出するノズルの吐出口が設けられたノズル面を有する液体吐出ヘッドを備える任意の液体吐出装置を採用できる。
【0052】
例えば、インクジェットプリンタ10のインクジェットヘッド120と、インク供給機構130と、ヘッド移動機構140と、送り機構150と、の各機構は、上述の実施の形態以外の構成でもよい。これら各機構は、公知の構成でよい。画像の印刷、ノズルのクリーニング、ノズルの保管についても公知の方法を採用できる。
【0053】
また、液体吐出装置は、インクジェットプリンタ以外のもの、例えば、ディスペンサ、スプレー装置などであってもよい。
【0054】
(変形例2)
上述の実施の形態では、第2の圧力は、ノズル121の保管時にヘッドキャップ161の内外に存在する気圧差に抗して、ヘッドキャップ161とノズル面122との間が気密的に密閉される圧力以上の圧力であるが、ノズル121の保管時にノズル121内のインクの乾燥に伴う不具合(例えば、ノズル121内のインクの粘度の増加、ノズル121内又はその周囲でのインクの硬化など)を防止又は抑制できるのであれば、前述の気密的に密閉する圧力未満でもよい。
【0055】
(変形例3)
上述の実施の形態において、ノズル121のクリーニングと同様の操作により、インク供給機構130からノズル121までを接続する供給路にインクを充填することもできる。
【0056】
具体的には、コントローラ190は、充填実行分をさらに備える。充填実行部は、印刷前、印刷中、又は印刷後に、ヘッド移動機構140とメンテナンス機構160とを制御し、インクジェットヘッド120のノズル121に接続する供給路へのインクの充填を実行する。充填実行部は、インクジェットヘッド120がメンテナンス位置にないなら、ヘッド移動機構140を駆動して、インクジェットヘッド120をメンテナンス位置に移動させる。さらに、充填実行部は、ヘッドキャップ161をヘッドキャップ移動機構162によりインクジェットヘッド120のノズル面122に第1の圧力で押し付けて当接させ、吸引装置163を駆動して吸引を行わせ、ヘッドキャップ161内を負圧である第1の気圧に調節し、ノズル121に接続する供給路にインクを充填する。その後、充填実行部は、ヘッドキャップ161をインクジェットヘッド120から離す。このようにしてノズル121に接続する供給路へのインクの充填が行われる。
【0057】
(変形例4)
上述の実施形態では、ヘッドキャップ161内の気圧を調節するための気圧調節部として、吸引装置163を用いているが、ヘッドキャップ161内の気圧を調節できるのであれば任意の気圧調節装置を採用できる。例えば、ヘッドキャップ161内の気圧を第1の気圧から第2の気圧とする場合に、ヘッドキャップ161内を強制的に加圧する気圧調節装置を用いてもよい。
【0058】
(変形例5)
上述の実施形態では、ヘッドキャップ161内の気圧に応じてヘッドキャップ161がノズル面122に当接する圧力である当接力を調節する当接力調節部として、ヘッドキャップ移動機構162を用いているが、当接力をこのように調節できるのであれば任意の機構を採用できる。なお、当接力とは、ヘッドキャップ161とノズル面122とが当接する部分に掛かる圧力のことを指す。
【0059】
例えば、上述の実施の形態では、ヘッドキャップ移動機構162は、ヘッドキャップ161を移動させ、当該ヘッドキャップ161を、インクジェットヘッド120のノズル面122に第1の圧力及び第2の圧力で押し付けたて当接させたり、ノズル面122から離したりする機構として、アクチュエータを備えるが、この代わりに、同様の機能を有する他の移動機構を備えてもよい。
【0060】
例えば、ヘッドキャップ移動機構162は、上述のアクチュエータの代わりに、カム機構を有してもよい。こうしたカム機構の具体例のひとつについて以下で説明する。
【0061】
本変形例では、ヘッドキャップ移動機構162は、図6に示すように、カム機構200を含む。カム機構200は、スライド部210と、ガイド部220と、駆動部(図示せず)とを含む。
【0062】
スライド部210は、その上にヘッドキャップ161が載せられており、1組のガイド部220の間にスライド可能に支持されており、例えば、板状である。スライド部210の側面には2組のスライドピン211が突出しており、これらのスライドピン211はそれぞれ対応するカム溝221にスライド可能に嵌入されている。カム溝221から突出するスライドピン211の先端にカム溝221からの脱落を防止するためのボタンが設けられてもよい。
【0063】
1組のガイド部220は、例えば、板状であり、それぞれ、同じ高さに設けられた2つのカム溝221を含む。カム溝221には、それぞれ、対応するスライドピン211がスライド可能に嵌入されている。カム溝221は、水平方向(図6では、前後方向)に延びる3つの係止部221A、221C、221Eと、係止部221A及び係止部221Cを斜めに接続する移行部221Bと、係止部221C及び係止部221Eを斜めに接続する移行部221Dと、を備える。係止部221A、221C、221Eは、垂直方向(図6では、上下方向)に異なる高さに配置されており、係止部221Aは最も低い位置に、係止部221Eは最も高い位置に、係止部221Cは係止部221A、221Eの間に、それぞれ、位置している。
【0064】
駆動部は、インクジェットヘッド120がメンテナンス位置にあるときに、スライド部210を水平方向に移動させる任意の駆動機構である。スライド部210の移動は、スライドピン211を介して、カム溝221の形状により規制されている。スライドピン211は係止部221A、221C、221E内では水平方向に移動するので、スライドピン211が係止部221A、221C、221E内にある場合、スライド部210も水平方向に沿って移動する。スライドピン211は移行部221B、221D内では斜めに移動するので、スライドピン211が移行部221B、221D内にある場合、スライド部210も斜めに移動、すなわち、水平方向に移動しつつ、垂直方向にも変位する。
【0065】
メンテナンス位置にあるヘッドキャップ120に対する係止部221Aの位置関係(特に、ヘッドキャップ120のノズル面122と係止部221Aとの間の距離)は、図7(A)に示すように、スライドピン211が係止部221A内にある場合に、ヘッドキャプ161がノズル面122と離れるように設計される。
【0066】
メンテナンス位置にあるヘッドキャップ120に対する係止部221Cの位置関係(特に、ヘッドキャップ120のノズル面122と係止部221Cとの間の距離)は、図7(B)に示すように、スライドピン211が係止部221C内にある場合に、ヘッドキャプ161がノズル面122に第2の圧力で押し付けられるように設計される。
【0067】
メンテナンス位置にあるヘッドキャップ120に対する係止部221Eの位置関係(特に、ヘッドキャップ120のノズル面122と係止部221Eとの間の距離)は、図7(C)に示すように、スライドピン211が係止部221E内にある場合に、ヘッドキャプ161がノズル面122に第1の圧力で押し付けられるように設計される。
【0068】
また、カム機構200は、スライド部210が、ヘッドキャップ120を載せ、ガイド部220が、スライド部210を一方向に沿ってスライド可能であり、かつ、スライド部210が当該一方向に沿ってスライドする最中に当該一方向に垂直な別の方向に沿ってスライド部210が変位するように、スライド部210を保持するのであれば、別の移動機構であってもよい。
【0069】
例えば、ガイド部220に、各カム溝221の代わりに、スライドピン211を設け、スライド部210に、各スライドピン211の代わりに、カム溝221を設けてもよい。
【0070】
また、例えば、ガイド部220に、各カム溝221の代わりに、スライド部210に面したガイド部220の面から突出するレール222を設け、スライド部210に、各スライドピン211の代わりに、レール222に沿って移動可能なようにレール222を上下に挟む1組のローラー212を設けてもよい。
【0071】
(変形例6)
上述の実施形態では、当接力調節部であるヘッドキャップ移動機構162が当接力を調節してから、気圧調節部である吸引装置163がヘッドキャップ161内の気圧を調節することとなっているが、当接力調節部が当接力を調節するタイミングと気圧調節部が気圧を調節するタイミングは任意である。気圧調節部が気圧を所定の気圧(例えば、第1の気圧)に調節してから、当接力調節部が当接力を所定の圧力(例えば、第1の圧力)に調節してもよいし、これらの調節を並行して行ってもよい。調節を並行して行う場合、気圧調節部による気圧の調節の開始と当接力調節部による当接力の調節の開始が同時でなくともよいし、気圧調節部による気圧の調節の終了と当接力調節部による当接力の終了の開始が同時でなくともよい。
【0072】
(変形例7)
ヘッドキャップ161及びノズル面122の形状、材料、及び構成は、ヘッドキャップ161が第2の圧力でノズル面122に押し付けられているときにヘッドキャップ161とノズル面122との間が気密的に密閉されるのであれば、任意である。
【0073】
ヘッドキャップ161の材料は、弾性材料(例えば、樹脂(ゴムなど))でもよいし、剛性材料(例えば、金属)でもよい。また、ヘッドキャップ161の一部が弾性材料からなり、残部が剛性材料からなるのでもよい。
【0074】
ヘッドキャップ161と接触するノズル面122の表面の形状及びノズル面122と接触するヘッドキャップ161の表面の形状は任意である。例えば、ヘッドキャップ161と接触するノズル面122の表面上、及び/又は、ノズル面122と接触するヘッドキャップ161の表面上に、凹部や凸部を設けてもよい。また、ヘッドキャップ161と接触するノズル面122の表面と、ノズル面122と接触するヘッドキャップ161の表面とが、平坦である場合に、インクジェットヘッド120がメンテナンス位置にある時の両表面の位置関係は、必ずしも平行である必要はない。
【0075】
ヘッドキャップ161と接触するノズル面122の表面上、及び/又は、ノズル面122と接触するヘッドキャップ161の表面上に、上述の弾性材料から形成された弾性材料層を設けてもよい。例えば、図7(C)では、ヘッドキャップ161を上下方向に圧縮して示しているが、変形例3において、ヘッドキャップ161は、全体が弾性体であってもよいし、大部分が剛体でありノズル面122と接触する部分のみが前述の弾性材料層となっていてもよい。
【0076】
また、ヘッドキャップ161とヘッドキャップ移動機構160との間(例えば、変形例3においてヘッドキャップ161とスライド部210との間)に、上述の弾性材料から形成された弾性材料層やバネなどの弾性構造体を設けてもよい。
【0077】
(変形例8)
ノズル121及びノズル面122の位置関係は、ノズル121の周囲にノズル面122が形成されている限り、任意である。例えば、図8に示すように、ノズル面122に設けられた凸部122aにノズル121が開口していてもよい。また、反対に、ノズル面122に設けられた凹部にノズル121が開口していてもよい。
【0078】
(変形例9)
上述の実施形態では、クリーニング、保管、充填といった操作において、ヘッドキャップ161内の気圧に応じてヘッドキャップ161をノズル面122に当接させる当接力を最適化させたが、こうしたキャッピングの当接力の最適化はこれらの操作に限らず、広く、ヘッドキャップ161をノズル面122に当接させ、ヘッドキャップ161内の気圧を所定の気圧に調節する必要がある任意の操作に適用できる。この場合、第1の気圧及び第2の気圧は、操作に応じて決定されればよく、特に、第1の気圧は操作によっては負圧でなくてもよい。本変形例によれば、ヘッドキャップ161の当接力を操作に応じて最適化できる。
【符号の説明】
【0079】
10 インクジェットプリンタ
11 装置本体
12 架台
110 プラテン
120 インクジェットヘッド
121 ノズル
122 ノズル面
122a 凸部
130 インク供給機構
140 ヘッド移動機構
150 送り機構
160 メンテナンス機構
161 ヘッドキャップ
161a 排出口
162 ヘッドキャップ移動機構
163 吸引装置
180 入出力部
190 コントローラ
191 記憶部
192 印刷実行部
193 クリーニング実行部
194 保管実行部
200 カム機構
210 スライド部
211 スライドピン
220 ガイド部
221 カム溝
221A、221C、221E 係止部
221B、221D 移行部
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図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8