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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-05
(45)【発行日】2023-12-13
(54)【発明の名称】液体吐出ヘッド
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/14 20060101AFI20231206BHJP
【FI】
B41J2/14 611
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020005410
(22)【出願日】2020-01-16
(65)【公開番号】P2021112835
(43)【公開日】2021-08-05
【審査請求日】2022-12-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高木 誠
【審査官】小宮山 文男
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-245801(JP,A)
【文献】特開2019-217667(JP,A)
【文献】特開2009-029116(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
各々が、第一方向に配置された複数の吐出素子と、
前記複数の吐出素子に接続されて、前記複数の吐出素子をそれぞれ駆動する複数の駆動素子と、
前記複数の駆動素子それぞれを制御する複数の制御回路と、
前記複数の吐出素子及び前記複数の駆動素子に電力を供給する第一電源配線及び第一グラウンド配線と、
前記複数の制御回路に電力を供給する第二電源配線及び第二グラウンド配線と、
前記第一方向に沿って配置されて、前記複数の吐出素子に液体を供給する複数の供給口と、を有し、
前記第一電源配線及び前記第一グラウンド配線は、積層された複数の導電層のうち第一導電層において、前記第一方向に延伸する第一配線群を有し、前記複数の導電層のうち前記第一導電層と異なる第二導電層において、前記第一方向と交差する第二方向に延伸する第二配線群を有し、
前記第二電源配線が、前記第一導電層および前記第二導電層のいずれか一方に配置されていることを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項2】
前記第二電源配線及び前記第二グラウンド配線は、前記第二導電層に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項3】
前記第一配線群の前記第一電源配線と前記第二配線群の前記第一電源配線とがビアで接続され、前記第一配線群の前記第一グラウンド配線と前記第二配線群の前記第一グラウンド配線とがビアで接続されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項4】
前記第一電源配線には第一電位が供給され、前記第二電源配線には第二電位が供給され、前記第一電位は前記第二電位よりも高電位であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項5】
前記第一導電層のシート抵抗は前記第二導電層のシート抵抗よりも低いことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項6】
前記第一導電層の厚さは前記第二導電層の厚さよりも厚いことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項7】
前記第一導電層は前記第二導電層よりも前記複数の吐出素子が配置される側に近い位置に配置されることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項8】
前記第二方向に、前記複数の吐出素子を有する吐出素子列が並んで配されていることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項9】
前記複数の導電層が形成された基板は前記第一方向に沿って延びる第一辺及び第二辺と、前記第二方向に沿って延びる第三辺及び第四辺とを有し、
前記第一辺と前記第三辺とが隣接し、前記第一辺と前記第四辺とが隣接し、
前記第一辺に沿って前記第一電源配線及び前記第一グラウンド配線と接続される複数の電極パッドが設けられていることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項10】
前記第一辺と前記第三辺との成す角が鈍角であり、前記第一辺と前記第四辺との成す角が鋭角であることを特徴とする、請求項9に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項11】
前記第一辺の中央よりも前記第三辺に近い側には、前記第一辺の中央よりも前記第四辺に近い側より多い数の電極パッドが配置されていることを特徴とする請求項10に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項12】
前記第一電源配線及び前記第一グラウンド配線の少なくともいずれかと前記複数の電極パッドとは複数の引き出し配線により接続されており、
前記複数の引き出し配線は、前記複数の吐出素子を有する吐出素子列が前記第二方向にn列配置されているときに、前記複数の電極パッドに最も近い1列目の前記吐出素子列及び前記複数の電極パッドから最も遠いn列目の前記吐出素子列を除く前記吐出素子列に電力を供給する前記第一配線群の前記第一電源配線及び前記第一グラウンド配線の少なくともいずれかに接続されていることを特徴とする請求項9乃至11のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項13】
前記複数の引き出し配線が、前記複数の電極パッドから所定の列だけ離れた前記吐出素子列に電力を供給する前記第一配線群の前記第一電源配線及び前記第一グラウンド配線の少なくともいずれかに接続されて、前記接続された箇所から前記第二方向に延伸して前記電極パッドと接続されており、
前記電極パッドより1から所定の列-1列目の前記吐出素子列が配置された領域を第一領域、所定の列+1列目からn列目の前記吐出素子列が配置された領域を第二領域とし、前記第一領域の第二配線群の配線幅の合計を第一配線幅W1とし、前記第二領域の第二配線群の配線幅の合計を第二配線幅W2とし、前記第一配線幅W1と前記第二配線幅W2の比をbとしたときに、
で求まるaに最も近い整数に対応した列を前記所定の列とすることを特徴とする請求項12に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項14】
前記複数の引き出し配線は少なくとも二つの異なる吐出素子列に電力を供給する前記第一配線群の前記第一電源配線及び前記第一グラウンド配線の少なくともいずれかに接続されていることを特徴とする請求項12に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項15】
少なくとも前記第三辺および前記第四辺に近い領域においては前記複数の引き出し配線が、前記基板の中央に位置する前記吐出素子列よりも電極パッドから離れた前記吐出素子列の前記第一電源配線及び前記第一グラウンド配線の少なくともいずれかに接続されていることを特徴とする請求項14に記載の液体吐出ヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出ヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
吐出素子で発生したエネルギーを液体に与えることによって、液体を吐出口から吐出させる液体吐出ヘッドが知られている。記録の高速化を実現するために、液体吐出ヘッドには複数の吐出素子が配置される。同時に駆動される吐出素子の数に応じてヘッドに供給される電流が変化し、これによって吐出素子に印加される電圧がばらついた場合、吐出される液体の量がばらつき、形成される画像の画質が低下しうる。特許文献1には電圧低下の影響を低減させうる配線構造が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-213708号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
吐出素子への電源配線およびグラウンド配線に単一レイヤで構成されるプレート状の電源配線を用いると、吐出素子を制御する制御回路で使用される層に加えて2層の電源層が必要になり、高コスト化の原因となっていた。本発明によれば、液体吐出ヘッドにおいてコストダウンを図るのに有利な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の液体吐出ヘッドは、各々が、第一方向に配置された複数の吐出素子と、前記複数の吐出素子に接続されて、前記複数の吐出素子をそれぞれ駆動する複数の駆動素子と、前記複数の駆動素子それぞれを制御する複数の制御回路と、前記複数の吐出素子及び前記複数の駆動素子に電力を供給する第一電源配線及び第一グラウンド配線と、前記複数の制御回路に電力を供給する第二電源配線及び第二グラウンド配線と、前記第一方向に沿って配置されて、前記複数の吐出素子に液体を供給する複数の供給口と、を有し、前記第一電源配線及び前記第一グラウンド配線は、積層された複数の導電層のうち第一導電層において、前記第一方向に延伸する第一配線群を有し、前記複数の導電層のうち前記第一導電層と異なる第二導電層において、前記第一方向と交差する第二方向に延伸する第二配線群を有し、前記第二電源配線が、前記第一導電層および前記第二導電層のいずれか一方に配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
液体吐出ヘッドにおいてコストダウンを図るのに有利な技術を提供すること。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施形態1に係る液体吐出ヘッドの平面図。
図2】本発明に係る液体吐出ヘッドの断面図。
図3】本発明に係る液体吐出ヘッドの回路図。
図4】実施形態2に係る液体吐出ヘッドの平面図。
図5】実施形態3に係る液体吐出ヘッドのグラウンド配線の結線図。
図6】実施形態3に係る電源配線の等価回路図。
図7】実施形態4に係る液体吐出ヘッドのグラウンド配線の結線図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0009】
(実施形態1)
本発明の実施形態1の液体吐出ヘッド用半導体装置について図1の平面図により説明する。基板101上に複数の吐出素子102が第一方向に並んで配置され、吐出素子列109を構成している。吐出素子列109の近傍には、2つの吐出素子102に液体を供給する供給口1031および1032が配置され、吐出素子列に沿って供給口列を構成している。同様に吐出素子列近傍には、吐出素子102と1対1に対応する駆動素子(不図示)と駆動素子の駆動/非駆動をコントロールする制御回路(不図示)が形成されている。本実施形態では、このような吐出素子列が第一方向と直交する第二方向に向かって複数列配列されている。
【0010】
吐出素子は二つの電気端子を有し、一端には電源から電力が供給されて、他端は駆動素子を介してグラウンドに接続されている。吐出素子102のグラウンド側は駆動素子を介して第一グラウンド配線104に接続している。第一グラウンド配線104は第一方向に延伸する配線1041a~cを有する第一配線群1041と、第二方向に延伸する配線1042a~cを有する第二配線群1042とを含む。第一配線群1041の配線1041a~cと第二配線群1042の配線1042a~cとは異なる導電層に配されており、ビア1043で接続されている。同様に、吐出素子102の電源側は電力を供給する第一電源配線105に接続されている。第一電源配線105は、第一方向に延伸する配線1051a~cを有する第一配線群1051と、第二方向に延伸する配線1052a~cを有する第二配線群1052とを含む。第一配線群1051の配線1051a~cと第二配線群1052の配線1052a~cとは異なる導電層に配されており、ビア1053で接続されている。
【0011】
制御回路には電源を供給するための第二電源配線106とグラウンド側の第二グラウンド配線107とが接続されている。第二電源配線106は第一方向に延伸する配線1061a~cを有する第一配線群1061と、第二方向に延伸する配線1062a~bを有する第二配線群1062とを含む。第一配線群1061の配線1061a~cと第二配線群1062の配線1062a~bとはビア1063で接続されている。また、第二グラウンド配線107は第一方向に延伸する配線1071a~cを有する第一配線群1071と第二方向に延伸する配線1072a~bを有する第二配線群1072とを含む。第一配線群1071の配線1071a~cと第二配線群1072の配線1072a~bとはビア1073で接続されている。
【0012】
本実施形態の液体吐出ヘッドは3層に積層された導電層を配線層として備える。配線層は半導体基板上に絶縁層を挟んで形成されている。吐出素子に流れる電流をオン、オフする駆動素子や駆動素子を制御する制御回路などの半導体回路は基板101に形成されている。半導体回路が形成されている側を下層、吐出素子が形成されている側を上層とする。このとき下層から導電層を順番に、第一導電層M1、第二導電層M2、第三導電層M3と呼ぶ。第一グラウンド配線104および第一電源配線105の第一配線群は第三導電層M3に、第二配線群は第二導電層M2にそれぞれ配置されている。また、第二電源配線106および第二グラウンド配線107については、第一配線群は第一導電層M1に、第二配線群は第二導電層M2にそれぞれ配置されている。
【0013】
以上のように、本実施形態では、第一グラウンド配線104及び第一電源配線105の第二配線群(1042、1052)と第二電源配線106及び第二グラウンド配線107の第二配線群(1062、1072)をいずれも第二導電層M2に配置している。
【0014】
図2(a)は、本実施形態の液体吐出ヘッド用半導体装置のA-A´断面図である。以下では本実施形態の導電層の構成について説明する。基板101上には絶縁層I1~I4と導電層M1~M3が、I1、M1、I2、M2、I3、M3、I4の順に形成されている。導電層M1~M3は、必要に応じてパターニングされ、配線として用いられている。導電層の厚さは、第一導電層M1および第二導電層M2に対して、第三導電層M3が厚い。例えば本実施形態では、第三導電層M3の厚みは第一導電層M1および第二導電層M2の各厚みの2倍とすることができる。
【0015】
第一導電層M1には、第二電源配線の第一配線群1061a~c及び1071a~1071cが配置されている。第二導電層M2には、第二電源配線の第二配線群1062a~b及び第二グラウンド配線の第二配線群1072a~b、第一電源配線の第二配線群1052a~c及び第一グラウンド配線の第二配線群1042a~cがそれぞれ配置されている。また、上層の第三導電層M3には、第一グラウンド配線と第一電源配線の第一配線群1041a~c及び1051a~cが配置されている。以下では配線群内の特定の配線を特に区別する必要がない場合は、a~cの添え字を省略することがある。例えば、M3層の第一グラウンド配線1041a~cについて、第一グラウンド配線1041と表記することがある。
【0016】
第二導電層M2および第三導電層M3に配置された第一グラウンド配線の第一配線群1041および第二配線群1042のそれぞれは絶縁層I3に形成されたビア1043で接続されている。また、導電層M1および導電層M2に配置された第二電源配線の第一配線群1061と第二配線群1062は絶縁層I2に形成されたビア1063で接続されている。
【0017】
図2(b)は、本実施形態の液体吐出ヘッドのB-B´断面図である。断面図では基板101の導電層は複数の供給口1031によって分断されており、第一方向に並べて配置された供給口1031の間には梁が複数配置された梁領域108がある。梁領域108は複数の導電層M1~M3を有する。第二導電層M2には、第二方向に延伸する複数の電源・グラウンド配線の第二配線群(第一電源配線1052、第一グラウンド配線1042、第二電源配線1062、第二グラウンド配線1072)が供給口を挟んだ梁部に隣り合うように配置されている。一方、梁領域108の第三導電層M3は、すべて吐出素子グラウンド配線の第一配線群1041Cの一部になっている。
【0018】
図2(c)は本実施形態の吐出素子102と駆動素子との間の配線の一例(C-C´断面)を説明する図である。基板101に吐出素子102に流れる電流をオンまたはオフするための駆動素子としてNMOSトランジスタ111が形成されている。NMOSトランジスタ111のドレインは第一導電層M1、第二導電層M2の配線やビアを介して吐出素子102の一方の端子と接続されている。吐出素子102の他方の端子はビアを介して第三導電層M3の第一電源配線1051と接続されている。NMOSトランジスタ111のソースは第一導電層M1、第二導電層M2の配線やビアを介して第三導電層M3の第一グラウンド配線1041に接続されている。本実施形態では第三導電層M3の配線に吐出素子102を駆動したときの電流が流れるようにしている。この例で分かるように吐出素子102に対応して駆動素子であるNMONトランジスタ111が基板101に形成されている。また駆動素子を制御する制御回路(不図示)も駆動素子に対応して基板101に形成されている。
【0019】
図3は、本発明の液体吐出ヘッドに用いられる吐出素子102と吐出素子を駆動する回路の1セグメントを示している。吐出素子102は例えばヒータであり、2つの電気端子を有する。一方の端子は、駆動素子であるNMOS111のドレイン端子に接続される。もう一方の端子は、吐出素子に電源を供給する電源端子113に接続される。電源端子113は、第一電源配線105に接続されて電流の供給を受けることができる。NMOS111のソース端子は、グラウンド端子114に接続される。グラウンド端子114は、第一グラウンド配線104に接続される。NMOS111のゲート端子は、NMOS111を制御する信号を出力する制御回路112に接続される。また、制御回路112は、制御回路用の電源端子およびグラウンド端子である電源端子115およびグラウンド端子116に接続される。制御回路112は、制御信号Sigに応じて駆動回路111のオン、オフ(駆動/非駆動状態)を制御する。なお、本実施形態ではNMOS111は吐出素子102のグラウンド側に接続されて吐出素子102に流れる電流をスイッチングしている。しかし、NMOS111を吐出素子102の電源側に接続してソース端子を吐出素子102に接続し、NMOS111をソースフォロワとして用いてもよい。
【0020】
吐出素子102が第1方向に並んだ吐出素子列109に沿って複数のセグメントが配置されている。各セグメントの電源端子113は第一配線群の第一電源配線1051に、グラウンド端子114は第一配線群の第一グラウンド配線1041に、複数のセグメントについて共通に接続されている。また、制御回路112の電源端子115が第二電源配線106に、グラウンド端子116が第二グラウンド配線107に、複数セグメントについて共通に接続されている。ここで制御回路の電源系と吐出素子及び駆動素子の電源系とで電源配線の系統を分けている。これは、制御回路は主に論理回路などの低電圧で動作する回路であり、吐出素子102とその駆動素子(NMOS111)とは高電圧により動作させることが多いためである。つまり吐出素子に電力を供給する電源の電位の方が制御回路に電力を供給する電源の電位よりも高電位である。また吐出素子102には過渡的に大きな電流が流れることも制御回路系の電源と配線を分けている理由である。
【0021】
本実施形態では、第一電源配線105および第一グラウンド配線104を、その延伸方向によって二つの配線層に振り分ける構成とし、そのうち一方の配線を、制御回路の配線と同じ層に配置する構成にした。これにより、第一電源配線と第一グラウンド配線にそれぞれ専用に割り当てられていた電源のための導電層を2層から1層に低減して、低コスト化を図ることができる。なお、第一グランド配線104と第一電源配線105の第一配線群及び第二配線群の中での位置が入れ替わってもよい。
【0022】
また、記録装置において同一色の吐出素子が第一方向に密に並んで吐出素子列を構成し、第二方向に異なる色の吐出を担う吐出素子列が並ぶ構成にする場合、第一方向の吐出素子列内については同時に吐出を行う必要がある。一方で、第二方向の吐出素子列間では制御により同時駆動する列の数を制御することが可能である。そこで第一方向に並んで配置された吐出素子への電流供給について、第一方向の電源配線の抵抗値のばらつき低減に対する強いニーズがある。本実施形態では、吐出素子用の第一電源配線と第一グラウンド配線を第一方向の配線層に配置し、別の層に第二電源配線と第二グラウンド配線を配置する。この構成により第一方向の配線幅を確保できるので、吐出素子へ供給する電流のばらつきを低減することができる。第二方向の配線層では制御回路の配線が同一配線層に隣接して配置されることで配線密度が疎になるが、大きな電流が流れる吐出素子102を駆動したときの電圧降下が考慮された配線構造としている。
【0023】
また、本実施形態では、第三導電層M3について、第一導電層M1および第二導電層M2より膜厚を大きくし、シート抵抗を低くすることにより低抵抗化を図ることにより、第一方向の吐出素子列への配線による抵抗値のばらつきを低減してもよい。シート抵抗を低下させるには膜厚を大きくすることに限定されず、第三導電層M3において低抵抗な電源配線を形成できるようにすればよい。例えば、第一導電層M1および第二導電層M2をアルミ配線で構成し、第三導電層M3を銅配線で構成して低抵抗化を図ってもよい。
【0024】
また、本実施形態では、吐出素子の第一配線群を第二配線群より上層の第三導電層M3に配置した。また、基板101に形成された制御回路へ接続するためのビアにより第二配線群と基板上の第一導電層M1の配線とを協働させている。これにより第一電源配線の第二配線群1052および第一グラウンド配線の第二配線群1042の実質的な配線幅が、制御回路へのビアにより狭くなることをさらに防止でき、導電層の配線効率を高めることが可能になる。また吐出素子102へ電流を供給する第一配線群については抵抗値のばらつきを低減させ得る。
【0025】
本実施形態では、第二電源配線の第二配線群1062および第二グラウンド配線の第二配線群1072を、第一電源配線の第二配線群1052および第一グラウンド配線の第二配線群1042と同じ導電層に配置する構成としている。しかしながら、実施形態はこれに限らない。例えば、制御回路の制御信号Sigも第二導電層M2に配置して、第二導電層M2を経由して第二方向へ駆動信号を送ることができるようにして制御回路へ駆動信号を送るようにしてもよい。
【0026】
(実施形態2)
図4は、本実施形態の液体吐出ヘッドの平面図である。本実施形態の液体吐出ヘッドは、基板201として平行四辺形チップを使い、第一方向に延伸して配置された液体吐出素子列が平行四辺形の基板201上に配置されている。第一方向と第二方向が直交していない点が実施形態1と異なる。
【0027】
本実施形態では、平行四辺形の基板201は、第一方向に延伸する第一辺202および第二辺203と、第一方向と交差する第二方向に延伸する第三辺204および第四辺205を備える。また、基板上の第一電源配線105と第一グラウンド配線104を基板外に接続するための電極パッドである、第一電源端子207a~cおよび第一グラウンド端子206a~cが第一辺202に沿って配置されている。本実施形態においても、第一電源配線105及び第一グラウンド配線104は、第一方向に延伸する第一配線群1041と、第二方向に延伸する第二配線群1042とが異なる導電層に配置される。これをビアで接続して格子状の電源配線のパターンを構成することは実施形態1と同様である。
【0028】
また、第一方向で隣り合う吐出素子列は第一方向に位置がずれて配置されており、第三辺204および第四辺205に沿うように配置されている。吐出素子及び制御回路のための第二配線群は、第一方向と直交する方向に延伸する部分と吐出素子列間で第三辺及び第四辺に沿うように延伸する部分とを有する。第二配線群は全体として第二方向に向かって延伸するよう構成される。
【0029】
以下、本実施形態について第一グラウンド配線104を例に説明する。第一グラウンド端子206aより第三辺204寄りのセグメントでは、それ以外のセグメントに対して、直近の第一グラウンド端子206a以外の第一グラウンド接続端子206b、cからの位置は遠い。このため、第一グラウンド端子206aより第三辺204寄りのセグメントでは、第一グラウンド端子206aに対する配線抵抗より第一グラウンド端子206bや206cへの配線抵抗が大きくなる傾向がある。
【0030】
第一グラウンド配線104は、基板の形状に沿った形状を有する平行四辺形の格子状の配線である。第二辺203と第三辺204がなす角度及び第一辺202と第四辺205とがなす角度は鋭角である。第一辺202と第三辺204とがなす角度及び第二辺203と第四辺205がなす角度は鈍角である。したがって、第一グラウンド端子206a~cが配置されている第一辺202と反対側にある第二辺203の両端の角部の角度は、それぞれ鋭角及び鈍角となっている。また、第二辺203と第三辺204との交点近傍の領域と、第二辺203と第四辺205との交点の近傍の領域では形状が異なる。電源配線は基板201の端部で途切れるため電流経路が物理的に制限される。二つの辺のなす角度が小さい(鋭角)ほど電流経路の制限は強くなる。
【0031】
これらの理由から、基板201が平行四辺形チップの場合は、第一グラウンド端子206a~cからの電流経路における抵抗による電圧降下量の場所依存性は角部が直角である場合よりも大きい。このために第二辺と第三辺が鋭角に交差する点近傍の領域209で、電圧降下が最も大きくなる傾向がある。しかし、本実施形態では実施形態1と同様に、第一方向の配線抵抗を低減する構成を採ることにより、平行四辺形のチップにおいて電流が流れたときに生じる抵抗による電圧降下量の場所依存性を低減しうる。
【0032】
また、本実施形態では、第一辺に沿って配置された第一グラウンド端子を、第四辺205より第三辺204の近くに配置された第一グラウンド端子の数が、第三辺204より第四辺205の近くに配置された第一グラウンド端子の数より多く配置する。これにより、基板201上での第一グラウンド端子206aを領域209に接近させられることから、領域209での配線抵抗を低減できる。
【0033】
第一グラウンド配線104の配線抵抗の最小値は、第一グラウンド端子206付近で得られ、第一グラウンド端子206の配置箇所に依存して、抵抗値の最小値を得るセグメントの位置は変わっても、その最小値は変化しない。このことから、本発明を適用すると、格子形状の配線を有する平行四辺形基板において、抵抗値の最大値を低減すると共に、全セグメントでの吐出素子グラウンド配線104における電流経路の抵抗値の最大値と最小値の差を小さくすることが可能である。
【0034】
液体吐出ヘッドでは、同時に多くの吐出素子102をオンに駆動すると、配線抵抗での電圧降下が大きくなり得るので吐出特性のばらつきが課題であった。本実施形態の構成によれば、抵抗値の最大値を小さくできることから、同時に多くの吐出素子102をオンに駆動してもばらつきが低減される。そのために多くの吐出素子を並べて配置できるので印刷の高速化が達成できる。
【0035】
また、液体吐出ヘッドでは、配線抵抗の大きい吐出素子と駆動素子とを含むセグメントでも十分な発熱量が得られるように、吐出素子に供給する電力を決定している。このために配線抵抗の最大値と最小値に差があると、配線抵抗の小さいセグメントでは吐出素子102において電圧降下量が大きくなり、余分な電力が消費される。これにより配線抵抗の小さいセグメントの寿命は短くなる可能性があった。本実施形態のように配線抵抗の最大値と最小値の差を低減することで、電流を調整して配線抵抗の小さいセグメントの吐出素子で消費される余分な電力を小さくできるため、吐出素子の長寿命化につながる。
【0036】
なお、ここでは第一グラウンド配線104と第一グラウンド端子206a~cを例に配線抵抗を低減しばらつきを少なくする配置について説明した。しかし、第一電源配線105および第一電源端子207a~cについても、グラウンド電源及びグラウンド端子におけるのと同様に電源端子の位置による効果が成立することはいうまでもない。なお、第一グラウンド端子206及び第一電源端子207は導電層M3の端部に配置してもよい。あるいは、導電層M2の第一辺に沿った端部をすべてグラウンド用の導電部として、第一グラウンド端子206を配置し、導電層M3の第一辺に沿った端部をすべて第一電源端子用の導電部として、第一電源端子207を配置してもよい。
【0037】
(実施形態3)
次に、第二方向にn列の吐出素子列が配置されている場合にさらに配線での電圧降下の低減を実現する例について第一グラウンド配線104を例に説明する。本実施形態は基板にn列並んで配置された吐出素子列の所定の列のセグメントに電源を供給する第一グラウンド配線104と第一グラウンド端子206との間に引き出し配線を配置することにより、吐出素子への配線での電圧降下のばらつきを抑制する。以下、図5及び6により説明する。図5は本実施形態に係る液体吐出ヘッドの第一グラウンド配線104の第一配線群と第二配線群との結線図である。基板205には、吐出素子が第一方向に並べて配置されて吐出素子列を構成している。第二方向には吐出素子がn列配置されている。吐出素子へのグラウンド配線104は他の実施例と同様に、第一配線群は導電層M3に配置され、第二配線群は第二導電層M2に配置される。第一配線群は第一方向に延伸するように配置され、第二配線群は第一方向と直交する第二方向に延伸して配置される。
【0038】
図5では、第一配線群の第一グラウンド配線1041と第二配線群の第一グラウンド配線1042が基板を平面視したときに格子状にみえるように簡略化されて示されている。ここで第一配線群および第二配線群とのビアによる接続箇所が格子の交点(黒いドット)に対応する。また、基板の端部には辺に沿って第一グラウンド端子206a~cが設けられている。第一グラウンド端子206a~cと第一グラウンド配線104との間は引き出し配線301により接続されている。引き出し配線301は第一グラウンド配線104と接続点302a~eで接続されている。
【0039】
本実施形態では、接続点302a~eは、すべて同一列(a列目)の吐出素子列に配置されている。引き出し配線301を、第一グラウンド端子206a~cに最も近い吐出素子列に接続していない(すなわち、a≠1)。なお、ここで第一グラウンド端子206a~cの配置された辺に一番近い吐出素子列を第一列とし、最も離れた吐出素子列をn列として説明をする。引き出し配線301はa列目の吐出素子の第一グラウンド配線104の第一配線群と第二配線群との交点のある領域(例えばビアで接続された箇所)から引き出されているものとして説明する。また、引き出し配線301は第二方向に配線されている第二配線群の第一グラウンド配線1042の一部を利用して布線されている。
【0040】
以下の説明では、a列目より第一グラウンド端子206a~cに近い吐出素子列に属する第一グラウンド配線104が配線された領域を第一格子状配線領域303と呼ぶ。また逆側の第一グラウンド端子206a~cより遠い側の吐出素子列に属する第一グラウンド配線が配線された領域を第二格子状配線領域304と呼ぶ。第二方向への第一グラウンド配線の一部は引き出し配線301として使用されているので、第一格子状配線領域303と、第二格子状配線領域304では第二方向に延伸する配線の本数が異なっている。第一格子状配線領域303では第二配線群の配線の数は引き出し線301に使われている分だけ第二格子状配線領域304より配線の本数が少ない。
【0041】
図6に、本実施形態における電源配線の等価回路を示す。引き出し配線301の一端が第一グラウンド端子206に接続され、もう一端は、a列目(a≠1)の吐出素子列の接続点302に接続されている。第一グラウンド配線104の配線系統は接続点302を境に第一格子状配線領域303と第二格子状配線領域304の二つの領域に分割されている。第一格子状配線領域303には1~a-1列目までのa-1列の吐出素子列が配置されている。また、第二格子状配線領域304にはa+1~n列目までのn-a列の吐出素子列が配置されている。また、各吐出素子列は第二方向への配線抵抗を有する。ここで、a-1およびn-aは、いずれもnより少ない数である。
【0042】
吐出素子列の第二方向の配線には、第一グラウンド端子206の近くに配置された吐出素子ではグラウンド端子206から離れて配置された吐出素子で消費される電流も併せて流れている。1つの吐出素子列での電圧降下量は、その吐出素子が含まれる吐出素子列より末端側に配置された吐出素子列の数に依存する。格子状の配線領域における最大電圧降下量は、接続点から末端までのすべての列での電圧降下量の合計に等しい。図6のように、接続点302に引き出し線を接続して配線末端までの配線系統を分割すると、第一グラウンド端子206から配線のそれぞれの末端までに通過する吐出素子列数を少なくできる。このため引き出し配線301により格子状の配線を分割しない場合に対して、第一グラウンド端子206からの電圧降下量の最大値を抑制できる。一方で、電圧降下量の最小値となる箇所は、第一方向での接続点の位置によらず接続点302となる。第二方向にn列の吐出素子列が配置された液体吐出ヘッドで、電源を複数系統に分割するように接続点302(すなわち、1<a<nなるa列目に)を設けることで、1列目に第一グラウンド端子を設けるより吐出素子列間の電圧降下量の差を低減できる。
【0043】
なお、電圧降下量の最大値を最も低減できるのは、第一格子状配線領域303での電圧降下と第二格子状配線領域304での電圧降下の量が等しい場合である。以下では、第一格子状配線領域303と第二格子状配線領域304の電圧降下の量を等しくするための条件について、図6を用いてさらに説明する。図6では、すべての吐出素子列毎に電流Imaxを消費すると仮定している。なお、Imaxは所定列の吐出素子列内で同時に駆動可能なすべての素子を駆動する際の消費電流量に相当する。それぞれの格子状配線領域の第二配線群の合計配線幅Wを、格子状配線領域の第二配線群のr本の配線の内p番目の配線について、長さ方向の平均配線幅Wpの合計として、式1のように定義する。
【0044】
【0045】
第二方向に延伸する配線を、複数種類の異なる配線幅の配線を用いても構成してもよい。ここで、第一格子状配線領域303の合計配線幅をW1、第二格子状配線領域304の合計配線幅をW2とする。さらに、合計配線幅W1の合計配線幅W2に対する比率を配線幅比率bと定義し、b=W1/W2で表す。本実施形態において、第一格子状配線領域では、引き出し配線301が配置されているために第二配線群として用いられる配線数が少なくなる。このため第二配線群の配線の幅に大きな差異がなければ合計配線幅W1は合計配線幅W2より小さくなり、配線幅比率b<1となる。
【0046】
第二格子状配線領域304における第二方向への吐出素子列で隣接する吐出素子の間の配線抵抗の抵抗値をRとすると、接続点302から末端までの電圧降下量V2は、n-a列分の電圧降下量の合計として、式2で表される。
【0047】
【0048】
一方、第一格子状配線領域303では、配線幅比率がbであるため、吐出素子列あたりの配線による抵抗値はRの1/b倍(>1)となる。第二格子状配線領域304と同様の計算により、a-1列の吐出素子列を有する第一格子状配線領域303における接続点302から末端までの電圧降下量V1は、式3で表される。
【0049】
【0050】
第二格子状配線領域304での電圧降下量と、第一格子状配線領域303での電圧降下量とを等しくする(V1=V2)。この場合、吐出素子列数n、引き出し配線の接続点a列目、第一格子状配線領域303の配線幅比率bとの間に次の関係が成立する。
【0051】
【0052】
この関係をaについて解くと次の式4が得られる。
【0053】
【0054】
例えば、本実施形態では、吐出素子列数n=10列、配線幅比率b=0.25とすると最適な接続点はa=3.85となる。この場合、aに最も近い整数となる4列目で接続するのがよい。上記の関係を満たすことで、第一格子状配線領域303と第二格子状配線領域304とでそれぞれ発生する電圧降下量の差をほぼ同等にし、格子状配線領域で発生する電圧降下量の差を最も低減できる。
【0055】
また、第一格子状配線領域303と第二格子状配線領域304との電源配線の合計配線幅を調整してbの値が小さくなるよう設計することで、最適な引き出し配線接続点aの値を小さくできる。すなわち、引き出し配線の長さを低減できる。
【0056】
bの値を小さくする方法として、第二格子状配線領域304において、第二方向に延伸する配線の配線幅を大きく設計するか、配線本数を増加させるのが望ましい。あるいは引き出し配線301を増やして第一格子状領域での第二配線群の数を減らしてもよい。第二格子状配線領域での第二方向への電圧降下を低減しながら、接続点302を1列目側に近づけて引き出し配線の長さを低減しながら格子状配線領域での電圧降下量の差を低減し、第一グラウンド配線104での電圧降下量を低減できる。以上は引き出し線301を第一グラウンド配線104に接続する例によって説明した。しかし、第一電源配線105に引き出し配線を接続した場合でも同様な効果を奏することができる。また引き出し配線の本数は本実施形態に限定されない。
【0057】
一例として、第一グラウンド配線104についてはa列目で引き出し配線と接続し、第一電源配線105を本発明の実施形態1のように1列目で引き出し配線301と接続する例を説明する。第一電源配線105は、n列目に近づくにつれて、合計配線幅Wを低減しても吐出素子への電圧降下による影響はそれほど大きくは発生しない。一方で、第一グラウンド配線での電圧降下量の差は、駆動素子であるNMOS111のソース側がグラウンドから浮くので、駆動素子のオン抵抗に影響する。そこで第一グラウンド配線については引き出し配線を設けて電圧降下量の差を低減することにより吐出素子列毎のオン抵抗のばらつきを抑制することができる。
【0058】
(実施形態4)
図7は、本実施形態に係る液体吐出ヘッド用半導体装置の第一グラウンド配線104の結線図である。第三実施形態とは、基板315の形状が平行四辺形であることと、一部の引き出し配線の接続点312a、b、eが、接続点312c、dより第一グラウンド端子206から離れた吐出素子列の配線に接続されていることが異なる。
【0059】
平行四辺形状のチップでは、電源経路の制限により、第二辺203と第三辺204の交点近傍の領域209で電圧降下量が最大になる。同様に、第二辺203と第四辺205の交点近傍の領域でも、電流経路の制限による電圧降下量が大きくなる。そこで、第三辺204および第四辺205近傍においては一部の引き出し配線の接続点302を電源端子から離れた個所とする。引き出し配線の接続点を電圧降下量が大きくなる領域に近づけて配線することで、領域209で発生する電圧降下の最大値を低減することが可能である。
【0060】
異なる列に引き出し線を接続することによる効果は次のように考えることができる。それぞれの接続点312が異なるr本の引き出し配線を有し、p番目の引き出し配線がそれぞれ配線幅WpでQp列目にて接続されるとする。このとき、引き出し配線の接続点は、配線幅Wpによる加重平均値として下記式5で算出されるx列目に引き出し配線が接続されているのと等価であるものとみなす。
【0061】
【0062】
式5より算出されるx列目を、式4より算出されるa列目になるように設定する。さらに、外部と接続される電極パッドからの配線抵抗が大きい領域に対する抵抗値を低減するために、辺204に近い側と辺205に近い側でのQp列を調整することにより、本実施形態での格子状配線領域で発生する電圧降下量の差を低減できる。本実施形態では、平行四辺形チップを対象としたが、実施形態はこれに限らない。例えば、長方形チップにおいても基板端では中央に比べて端部では電流経路の制限による電圧降下量の増大が見込まれるから、グラウンド端子が設けられた辺に隣接する辺に近いほど、引き出し線の接続点を端子から離れた個所とする構成が有効である。ここでは引き出し線配301を第一グラウンド配線104に接続する例によって説明した。しかし、第一電源配線105に引き出し配線301を接続しても同様な効果を奏することができる。また引き出し配線301の本数は本実施形態に限定されない。
【0063】
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、発明の範囲を公にするために請求項を添付する。
【符号の説明】
【0064】
101 基板、102 吐出素子、103 供給口、104 第一グラウンド配線、1041 第一グラウンド配線の第一配線群、1042 第一グラウンド配線の第二配線群、1043 第一グラウンド配線の接続用ビア、105 第一電源配線、1051 第一電源配線の第一配線群、1052 第一電源配線の第二配線群、1053 第一電源配線の接続用ビア、106 第二電源配線、1062 第二電源配線の第二配線群、107 第二グラウンド配線、1072 第二グラウンド配線の第二配線群
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7