IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 住化スタイロンポリカーボネート株式会社の特許一覧

特許7397684ポリカーボネート系樹脂組成物、及びそれを含む樹脂成形品
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-05
(45)【発行日】2023-12-13
(54)【発明の名称】ポリカーボネート系樹脂組成物、及びそれを含む樹脂成形品
(51)【国際特許分類】
   C08L 69/00 20060101AFI20231206BHJP
   C08K 5/526 20060101ALI20231206BHJP
   C08L 55/02 20060101ALI20231206BHJP
   C08L 53/00 20060101ALI20231206BHJP
【FI】
C08L69/00
C08K5/526
C08L55/02
C08L53/00
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020007040
(22)【出願日】2020-01-20
(65)【公開番号】P2021113287
(43)【公開日】2021-08-05
【審査請求日】2022-08-19
(73)【特許権者】
【識別番号】396001175
【氏名又は名称】住化ポリカーボネート株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001276
【氏名又は名称】弁理士法人小笠原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】温井 紳二
(72)【発明者】
【氏名】▲福▼▲間▼ 智彦
【審査官】南 宏樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-256305(JP,A)
【文献】特許第6629473(JP,B1)
【文献】特開2016-003329(JP,A)
【文献】特開2016-184519(JP,A)
【文献】特開昭63-112655(JP,A)
【文献】特開2016-132745(JP,A)
【文献】国際公開第2021/039895(WO,A1)
【文献】特開2002-105301(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリカーボネート樹脂(A)50~99質量部、ABS樹脂(B)1~50質量部、アクリル酸エステル単量体単位を含む重合体ブロック(a)とメタクリル酸エステル単量体単位を含む重合体ブロック(b)を含むアクリル系トリブロック共重合体(C)0.5~10質量部、及び下記一般式(4)で表されるリン系酸化防止剤(D)0.001~1質量部を含有し、
ISO179-1に準じて測定したノッチ付きシャルピー衝撃強度が50KJ/m であり、
温度250℃、射出圧力1600kg/cm の条件下における厚さ1mmの樹脂のスパイラル流動長が120mm以上であることを特徴とする、ポリカーボネート系樹脂組成物。
一般式(4):
【化5】
[式中、R11~R18は、それぞれ独立に、炭素数1~3のアルキル基またはアルケニル基を示す。R11とR12、R13とR14、R15とR16、R17とR18とは、互いに結合して環を形成していても良い。R19~R22は、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1~20のアルキル基を示す。d~gは、それぞれ独立して、0~5の整数である。X~Xは、それぞれ独立に、単結合または炭素原子を示す。X~Xが単結合である場合、R11~R22のうち、当該単結合に繋がった官能基は一般式(4)から除外される。]
【請求項2】
前記ポリカーボネート樹脂(A)の粘度平均分子量が17000~30000である、請求項1記載のポリカーボネート系樹脂組成物。
【請求項3】
前記アクリル系トリブロック共重合体(C)が、前記重合体ブロック(a)の両末端のそれぞれに前記重合体ブロック(b)の一末端が結合したトリブロック共重合体である、請求項1に記載のポリカーボネート系樹脂組成物。
【請求項4】
前記一般式(4)で表される亜リン酸エステル化合物が、ビス(2,4-ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジフォスファイトを含む、請求項1に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項5】
熱安定剤、酸化防止剤、着色剤、離型剤、軟化剤、帯電防止剤及び衝撃性改良剤を含む群から選択される少なくとも1種を更に含有する、請求項1~4のいずれかに記載のポリカーボネート系樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載のポリカーボネート系樹脂組成物を含む、成形品。
【請求項7】
前記成形品が、電気機器、電子機器、IT機器、車両用機器の筐体を含む、請求項6記載の成形品。
【請求項8】
請求項1~5のいずれかに記載のポリカーボネート系樹脂組成物を成形することを含む、成形品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリカーボネート樹脂組成物及びそれを含む成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリカーボネート樹脂は、汎用エンジニアリングプラスチックとして、透明性、耐衝撃性、耐熱性、寸法安定性等に優れた熱可塑性樹脂であり、その優れた特性から、電気・電子・ITE、機械、自動車などの分野で広く用いられている。
【0003】
しかしながら、ポリカーボネート樹脂は、溶融粘度が高く、成型加工性に劣るという問題があり、成形品の薄肉化・大型化が進むに伴い、成形加工性(流動性)を改良することが強く求められている。
【0004】
上記問題を解決する手段として、ポリカーボネート樹脂にゴム変性スチレン系樹脂を配合した組成物が多く提案されている。ポリカーボネート樹脂の成形加工性の改良のために、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂(ABS樹脂)、ゴム変性ポリスチレン樹脂(HIPS)、アクリロニトリル・スチレン樹脂(AS樹脂)などのスチレン系樹脂をポリカーボネート樹脂に配合した組成物は、ポリマーアロイとして、その耐熱性、成形加工性から多くの成形分野に用いられてきている。
【0005】
ポリカーボネート樹脂にスチレン系樹脂を配合したポリマーアロイの問題点としては、成形加工性を(流動性)を向上するためにスチレン系樹脂の配合比率が高くなると、ポリカーボネート樹脂が本来有する衝撃強度がより低くなることが挙げられる。
【0006】
また、ポリカーボネート樹脂の成形加工性を改良する方法として、スチレン系樹脂のみならず、リン酸エステル系化合物も添加する方法も提案されているが、この場合もポリカーボネート樹脂が本来の有する衝撃強度が低くなる点は改善されない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開平6-228426号公報
【文献】特開平8-151493号公報
【文献】特許第3638806号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、ポリカーボネート樹脂本来の特性である高い衝撃強度を維持して成型加工性を改良したポリカーボネート樹脂組成物、及びそれを含む成形品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意研究を行った結果、ポリカーボネート樹脂に、ABS樹脂と、アクリル酸エステル単量体単位を含む重合体ブロックとメタクリル酸エステル単量体単位を含む重合体ブロックとから構成されたアクリル系ブロック共重合体と、リン系酸化防止剤とを配合することにより、高い衝撃強度を維持しつつ成型加工性が向上することを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、ポリカーボネート樹脂(A)50~99質量部、ABS樹脂(B)1~50質量部、アクリル酸エステル単量体単位を含む重合体ブロック(a)とメタクリル酸エステル単量体単位を含む重合体ブロック(b)とから構成されたアクリル系トリブロック共重合体(C)0.5~10質量部、及び後述する一般式(4)で表されるリン系酸化防止剤(D)0.001~1質量部を含有し、ISO179-1に準じて測定したノッチ付きシャルピー衝撃強度が50KJ/m であり、温度250℃、射出圧力1600kg/cm の条件下における厚さ1mmの樹脂のスパイラル流動長が120mm以上であることを特徴とするポリカーボネート樹脂組成物及びそれを含む成形品を提供するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ポリカーボネート樹脂本来の特性である高い衝撃強度を維持して成型加工性を改良したポリカーボネート樹脂組成物、及びそれを含む成形品を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のポリカーボネート組成物及び成形品は、優れた成形加工性のみならず、高い衝撃特性を有している。本発明のポリカーボネート組成物及び成形品、電気機器や電子機器、IT機器、車両用機器の筐体に適しており、特に、メーターパネル筐体や車載機器の筐体に適している。本発明に係るポリカーボネート樹脂組成物は、ポリカーボネート樹脂(A)と、ABS樹脂(B)と、アクリル系トリブロック共重合体(C)と、リン系酸化防止剤(D)とを含有する。
【0013】
本発明にて使用されるポリカーボネート樹脂(A)は、種々のジヒドロキシジアリール化合物とホスゲンとを反応させるホスゲン法、またはジヒドロキシジアリール化合物とジフェニルカーボネートなどの炭酸エステルとを反応させるエステル交換法によって得られる重合体であり、代表的なものとしては、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(通称ビスフェノールA)から製造されたポリカーボネート樹脂が挙げられる。
【0014】
上記ジヒドロキシジアリール化合物としては、ビスフェノールAの他に、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)オクタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル-3-メチルフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-tert-ブチルフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-ブロモフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジブロモフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジクロロフェニル)プロパンのようなビス(ヒドロキシアリール)アルカン類、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンのようなビス(ヒドロキシアリール)シクロアルカン類、4,4′-ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4′-ジヒドロキシ-3,3′-ジメチルジフェニルエーテルのようなジヒドロキシジアリールエーテル類、4,4′-ジヒドロキシジフェニルスルフィドのようなジヒドロキシジアリールスルフィド類、4,4′-ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4′-ジヒドロキシ-3,3′-ジメチルジフェニルスルホキシドのようなジヒドロキシジアリールスルホキシド類、4,4′-ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4′-ジヒドロキシ-3,3′-ジメチルジフェニルスルホンのような、ジヒドロキシジアリールスルホン類等が挙げられる。
【0015】
これらは単独または2種類以上混合して使用されるが、これらの他に、ピペラジン、ジピペリジルハイドロキノン、レゾルシン、4,4′-ジヒドロキシジフェニル等を混合して使用してもよい。
【0016】
さらに、上記のジヒドロキシアリール化合物と以下に示すような3価以上のフェノール化合物を混合使用してもよい。3価以上のフェノールとしてはフロログルシン、4,6-ジメチル-2,4,6-トリ-(4-ヒドロキシフェニル)-ヘプテン、2,4,6-ジメチル-2,4,6-トリ-(4-ヒドロキシフェニル)-ヘプタン、1,3,5-トリ-(4-ヒドロキシフェニル)-ベンゾール、1,1,1-トリ-(4-ヒドロキシフェニル)-エタン及び2,2-ビス-〔4,4-(4,4′-ジヒドロキシジフェニル)-シクロヘキシル〕-プロパンなどが挙げられる。
【0017】
ポリカーボネート樹脂(A)の粘度平均分子量は、強度面から17000~30000が好ましい。このような粘度平均分子量のポリカーボネート樹脂を用いることで、高い衝撃強度を備えるポリカーボネート樹脂組成物が得られる。成形加工性と強度面から、ポリカーボネート樹脂(A)の粘度平均分子量は、19000~28000であることがより好ましい。30000を超える場合は、加工性が悪くなる場合がある。また、かかるポリカーボネート樹脂を製造するに際し、分子量調整剤、触媒等を必要に応じて使用することができる。
【0018】
本発明にて使用されるABS樹脂(B)は、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体であり、重合方法としては乳化重合、懸濁重合、塊状重合などの重合方法が挙げられるが、特にバルク重合法(連続塊状重合法)からなるABS樹脂が好適である。ABS樹脂(B)として、粘度の異なる2種類以上のABS樹脂を併用しても良い。
【0019】
ABS樹脂(B)の配合量は、ポリカーボネート樹脂(A)50~99質量部に対して、1~50質量部であることが好ましい。ABS樹脂(B)の配合量が1質量部未満の場合、成形加工性が不足する可能性があり、ABS樹脂(B)の配合量が50質量部を超える場合、耐熱性が低下する可能性があるため好ましくない。
【0020】
本発明にて使用されるアクリル系トリブロック共重合体(C)は、アクリル酸エステル単量体単位を含む重合体ブロック(a)と、メタクリル酸エステル単量体単位を含む重合体ブロック(b)とから構成される。
【0021】
重合体ブロック(a)に含まれるアクリル酸エステル単量体単位の含有量は、該重合ブロック(a)100質量%に対して60質量%以上100質量%以下(すなわち主成分)であることが好ましく、70質量%以上100質量%以下であることがより好ましい。重合体ブロック(a)におけるアクリル酸エステル単量体単位としては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸-n-オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸-2-エチルヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸フェニル、アクリル酸ジメチルアミノエチルなどのモノマーから誘導される構成単位が挙げられ、これらのうち1種または2種以上が用いられる。
【0022】
この重合体ブロック(a)は、上記モノマーの重合反応によって得られ、重合体ブロック(a)の重量平均分子量としては、6,000以上1,000,000以下が望ましく、10,000以上800,000以下が更に望ましく、15,000以上500,000以下が特に望ましい。重合体ブロック(a)の重量平均分子量が上記範囲であると、耐衝撃性、流動性に優れたアクリル系トリブロック共重合体(C)が得られる観点から望ましい。
【0023】
また、重合体ブロック(a)には、アクリル酸エステル由来の構成単位以外にも、所望の効果を損なわない範囲で、その他の構成単位を含んでもよい。その他の構成単位としては、例えば、アクリル酸グリシジル、アクリル酸アリル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、オレフィンなどの他モノマーが挙げられる。
【0024】
重合体ブロック(b)に含まれるメタクリル酸エステル単量体単位の含有量は、該重合ブロック(b)100質量%に対して60質量%以上100質量%以下(すなわち主成分)であることが好ましく、70質量%以上100質量%以下であることがより好ましい。重合体ブロック(b)における、メタクリル酸エステル単量体単位としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸-n-オクチル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸-2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチルなどのモノマーから誘導される構成単位が挙げられ、これらのうち1種または2種以上が用いられる。
【0025】
この重合体ブロック(b)は、上記モノマーの重合反応によって得られ、重合体ブロック(b)の重量平均分子量は、1,000以上1,000,000以下が望ましく、2,000以上750,000以下が更に望ましく、3,000以上500,000以下が特に望ましい。重合体ブロック(b)の重量平均分子量が上記範囲内であると、マトリクス樹脂への分散性に優れたたアクリル系トリブロック共重合体(C)が得られる観点から望ましい。
【0026】
なお、重合体ブロック(b)には、メタクリル酸エステル由来の構成単位以外にも、所望の効果を損なわない範囲で、その他の構成単位を含んだ構成であってもよい。その他の構成単位としては、例えば、アクリル酸エステル、メタクリル酸、アクリル酸、芳香族ビニル化合物、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、オレフィンなどの他モノマーが挙げられる。
【0027】
本発明において用いられるアクリル系トリブロック共重合体としては、重合体ブロック(a)の両末端のそれぞれに重合体ブロック(b)の一末端が結合した、(b)-(a)-(b)構造のトリブロック構造体を用いることが好ましい。上記(b)-(a)-(b)構造のトリブロック構造体を用いることにより、ポリカーボネート樹脂組成物の高い衝撃強度を維持しつつ成型加工性を向上させることができる。
【0028】
アクリル系トリブロック共重合体の製造方法としては、以下の方法が挙げられる。
【0029】
具体的には、各ブロックを構成するモノマーをリビング重合する方法が挙げられる。このようなリビング重合の手法としては、例えば、有機アルカリ金属化合物を重合開始剤とし、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の塩などの鉱酸塩存在下でアニオン重合する方法、有機アルカリ金属化合物を重合開始剤とし、有機アルミニウム化合物の存在下でアニオン重合する方法、有機希土類金属錯体を重合開始剤として重合する方法、α-ハロゲン化エステル化合物を開始剤として銅化合物の存在下、ラジカル重合する方法などが挙げられる。また、多価ラジカル重合開始剤や多価ラジカル連鎖移動剤を用いて、各ブロックを構成するモノマーを重合させ、本発明のアクリル系トリブロック共重合体を含有する混合物として製造する方法なども挙げられる。これらの方法中、ブロック共重合体が高純度で得られ、また分子量分布が狭い、つまり本発明のポリカーボネート樹脂組成物の耐衝撃強度、耐熱性を低下させる要因となるオリゴマーや、流動性を低下させる要因となる高分子量体を含まないことから、有機アルカリ金属化合物を重合開始剤とし、有機アルミニウム化合物の存在下で、アニオン重合する方法が好ましい。
【0030】
本発明におけるアクリル系トリブロック共重合体(C)の重量平均分子量は、耐衝撃性、流動性、分散性の向上の観点から、1,000以上1,000,000以下であることが望ましく、2,000以上500,000以下であることが更に望ましい。
【0031】
本発明におけるアクリル系トリブロック共重合体(C)としては、具体的には、ポリアクリル酸ブチルを単量体単位とする重合体ブロックと、ポリメタアククリ酸メチルを単量体単位とする重合体ブロックとを含むトリブロック共重合体が好適に用いられる。
【0032】
また、アクリル系トリブロック共重合体(C)は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよく、2種以上を併用する場合には、分子量の異なるブロック共重合体や、アクリル酸エステル単量体を含む重合体ブロック(a)及びメタクリル酸エステル由来の単量体単位(b)を含む重合体ブロックの含有量の異なるブロック共重合体を併用してもよい。
【0033】
なお、アクリル系トリブロック共重合体(C)としては、市販品を用いても良く、この市販品としては、(株)クラレ製「LA2149e(商品名)」、(株)クラレ製「LA2250(商品名)」、(株)クラレ製「LA4285(商品名)」、(株)クラレ製「LA1114(商品名)」(株)クラレ製「LA2140(商品名)」等が挙げられる。
【0034】
アクリル系トリブロック共重合体(C)の配合量は、ポリカーボネート樹脂組成物50~99質量部に対して、0.5~10質量部であることが好ましい。アクリル系トリブロック共重合体(C)の配合量がこの範囲を外れる場合、衝撃強度が低下する可能性があるため好ましくない。
【0035】
本発明にて使用されるリン系酸化防止剤(D)としては、下記亜リン酸エステル構造を有する亜リン酸エステル化合物が好ましく、例えば、下記一般式(1)、(2)、(3)及び(4)で表わされる化合物のうち1種または2種以上を用いることができる。
【化1】
【0036】
一般式(1):
【化2】
(式中、Rは、炭素数1~20のアルキル基を示し、aは、0~3の整数を示す)
【0037】
式(1)において、Rは、炭素数1~20のアルキル基であるが、さらには、炭素数1~10のアルキル基であることが好ましい。
【0038】
一般式(1)で表される化合物としては、例えば、トリフェニルホスファイト、トリクレジルホスファイト、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)フォスファイト、トリスノニルフェニルホスファイト等が挙げられる。これらの中でも、特にトリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)フォスファイトが好適であり、例えば、BASF社製のイルガフォス168(「イルガフォス」はビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピアの登録商標)として商業的に入手可能である。
【0039】
一般式(2):
【化3】
(式中、R、R、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~8のアルキル基、炭素数5~8のシクロアルキル基、炭素数6~12のアルキルシクロアルキル基、炭素数7~12のアラルキル基又はフェニル基を示す。Rは、水素原子又は炭素数1~8のアルキル基を示す。Xは、単結合、硫黄原子又は式:-CHR-(ここで、Rは、水素原子、炭素数1~8のアルキル基又は炭素数5~8のシクロアルキル基を示す)で表される基を示す。Aは、炭素数1~8のアルキレン基又は式:*-COR-(ここで、Rは、単結合又は炭素数1~8のアルキレン基を示し、*は、酸素側の結合手であることを示す)で表される基を示す。Y及びZは、いずれか一方がヒドロキシル基、炭素数1~8のアルコキシ基又は炭素数7~12のアラルキルオキシ基を示し、もう一方が水素原子又は炭素数1~8のアルキル基を示す。)
【0040】
一般式(2)において、R、R、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~8のアルキル基、炭素数5~8のシクロアルキル基、炭素数6~12のアルキルシクロアルキル基、炭素数7~12のアラルキル基又はフェニル基を示す。
【0041】
ここで、炭素数1~8のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、t-ペンチル基、i-オクチル基、t-オクチル基、2-エチルヘキシル基等が挙げられる。炭素数5~8のシクロアルキル基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基等が挙げられる。炭素数6~12のアルキルシクロアルキル基としては、例えば、1-メチルシクロペンチル基、1-メチルシクロヘキシル基、1-メチル-4-i-プロピルシクロヘキシル基等が挙げられる。炭素数7~12のアラルキル基としては、例えば、ベンジル基、α-メチルベンジル基、α,α-ジメチルベンジル基等が挙げられる。
【0042】
、R及びRは、それぞれ独立して、炭素数1~8のアルキル基、炭素数5~8のシクロアルキル基又は炭素数6~12のアルキルシクロアルキル基であることが好ましい。特に、R及びRは、それぞれ独立して、t-ブチル基、t-ペンチル基、t-オクチル基等のt-アルキル基、シクロヘキシル基又は1-メチルシクロヘキシル基であることが好ましい。特に、Rは、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、t-ペンチル基等の炭素数1~5のアルキル基であることが好ましく、メチル基、t-ブチル基又はt-ペンチル基であることがさらに好ましい。
【0043】
は、水素原子、炭素数1~8のアルキル基又は炭素数5~8のシクロアルキル基であることが好ましく、水素原子、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、t-ペンチル基等の炭素数1~5のアルキル基であることがさらに好ましい。
【0044】
一般式(2)において、Rは、水素原子又は炭素数1~8のアルキル基を示す。炭素数1~8のアルキル基としては、例えば、前記R、R、R及びRの説明にて例示したアルキル基が挙げられる。特に、Rは、水素原子又は炭素数1~5のアルキル基であることが好ましく、水素原子又はメチル基であることがさらに好ましい。
【0045】
一般式(2)において、Xは、単結合、硫黄原子又は式:-CHR-で表される基を示す。ここで、式:-CHR-中のRは、水素原子、炭素数1~8のアルキル基又は炭素数5~8のシクロアルキル基を示す。炭素数1~8のアルキル基及び炭素数5~8のシクロアルキル基としては、例えば、それぞれ前記R、R、R及びRの説明にて例示したアルキル基及びシクロアルキル基が挙げられる。特に、Xは、単結合、メチレン基、又はメチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、t-ブチル基等で置換されたメチレン基であることが好ましく、単結合であることがさらに好ましい。
【0046】
一般式(2)において、Aは、炭素数1~8のアルキレン基又は式:*-COR-で表される基を示す。炭素数1~8のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、オクタメチレン基、2,2-ジメチル-1,3-プロピレン基等が挙げられ、好ましくはプロピレン基である。また、式:*-COR-におけるRは、単結合又は炭素数1~8のアルキレン基を示す。Rを示す炭素数1~8のアルキレン基としては、例えば、前記Aの説明にて例示したアルキレン基が挙げられる。Rは、単結合又はエチレン基であることが好ましい。また、式:*-COR-における*は、酸素側の結合手であり、カルボニル基がフォスファイト基の酸素原子と結合していることを示す。
【0047】
一般式(2)において、Y及びZは、いずれか一方がヒドロキシル基、炭素数1~8のアルコキシ基又は炭素数7~12のアラルキルオキシ基を示し、もう一方が水素原子又は炭素数1~8のアルキル基を示す。炭素数1~8のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、t-ブトキシ基、ペンチルオキシ基等が挙げられる。炭素数7~12のアラルキルオキシ基としては、例えば、ベンジルオキシ基、α-メチルベンジルオキシ基、α,α-ジメチルベンジルオキシ基等が挙げられる。炭素数1~8のアルキル基としては、例えば、前記R、R、R及びRの説明にて例示したアルキル基が挙げられる。
【0048】
一般式(2)で表される化合物としては、例えば、2,4,8,10-テトラ-t-ブチル-6-〔3-(3-メチル-4-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)プロポキシ〕ジベンゾ〔d,f〕〔1,3,2〕ジオキサホスフェピン、6-[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロポキシ]-2,4,8,10-テトラ-t-ブチルジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン、6-[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロポキシ]-4,8-ジ-t-ブチル-2,10-ジメチル-12H-ジベンゾ[d,g][1,3,2]ジオキサホスホシン、6-[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]-4,8-ジ-t-ブチル-2,10-ジメチル-12H-ジベンゾ[d,g][1,3,2]ジオキサホスホシン等が挙げられる。これらの中でも、特に光学特性が求められる分野に、ポリカーボネート樹脂組成物を用いる場合には、2,4,8,10-テトラ-t-ブチル-6-〔3-(3-メチル-4-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)プロポキシ〕ジベンゾ〔d,f〕〔1,3,2〕ジオキサホスフェピンが好適であり、例えば、住友化学(株)製のスミライザーGP(「スミライザー」は登録商標)として商業的に入手可能である。
【0049】
一般式(3):
【化4】
(式中、R及びR10は、それぞれ独立して、炭素数1~20のアルキル基又はアルキル基で置換されていてもよいアリール基を示し、b及びcは、それぞれ独立して、0~3の整数を示す。)
【0050】
一般式(3)で表される化合物としては、例えば、ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジフォスファイト、フェニルビスフェノールAペンタエリスリトールジフォスファイト等が挙げられる。ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジフォスファイトは、ADEKA社製、商品名「アデカスタブPEP-24G」として商業的に入手可能である。(株)ADEKA製のアデカスタブPEP-36(「アデカスタブ」は登録商標)が商業的に入手可能である。
【0051】
一般式(4):
【化5】
【0052】
(式中、R11~R18は、それぞれ独立に、炭素数1~3のアルキル基またはアルケニル基を示す。R11とR12、R13とR14、R15とR16、R17とR18とは、互いに結合して環を形成していても良い。R19~R22は、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1~20のアルキル基を示す。d~gは、それぞれ独立して、0~5の整数である。X~Xは、それぞれ独立に、単結合または炭素原子を示す。X~Xが単結合である場合、R11~R22のうち、当該単結合に繋がった官能基は一般式(4)から除外される)
【0053】
一般式(4)で表される化合物の具体例としては、例えばビス(2,4-ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジフォスファイトが挙げられる。これは、Dover Chemical社製、商品名「Doverphos(登録商標) S-9228」、ADEKA社製、商品名「アデカスタブPEP-45」(ビス(2,4-ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジフォスファイト)として商業的に入手可能である。
【0054】
また、上記一般式(1)~(4)で表される化合物に代えて、あるいは、上記一般式(1)~(4)で表される何れかの化合物に加えて、下記一般式(5)で表される化合物を使用しても良い。
【0055】
一般式(5):
【化6】
(式中、R23~R26は炭素数1~20のアルキル基、またはアルキル基で置換されてもよいアリール基を示す。)
【0056】
一般式(5)で表される化合物の具体例としては、例えば、[1,1´-ビフェニル]-4,4-ジイルビス[ビス(2,4-ジ-t-ブチルフェノキシ)フォスフィン] 等が挙げられ、例えば、BASF社製のイルガフォスP-EPQ(商品名)、クラリアントジャパン(株)製のサンドスタブP-EPQ(商品名)が商業的に入手可能である。
【0057】
リン系酸化防止剤(D)の配合量は、ポリカーボネート樹脂(A)50~99質量部に対して、0.001~1質量部であることが好ましい。リン系酸化防止剤の配合量がこの範囲を外れる場合、衝撃強度が低下する可能性があるため好ましくない。また、リン系酸化防止剤の配合量が1質量部を超えると色相の向上効果が十分ではないため好ましくない。リン系酸化防止剤(D)の配合量は、好ましくは、0.02~0.8質量部の範囲である。
【0058】
さらに、実施の形態に係るポリカーボネート樹脂組成物には、本発明における効果を損なわない範囲で、例えば、熱安定剤、他の酸化防止剤、着色剤、離型剤、軟化剤、帯電防止剤、衝撃性改良剤等の各種添加剤、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)以外のポリマー等が適宜配合されていてもよい。
【0059】
本発明に係るポリカーボネート樹脂組成物は、ポリカーボネート樹脂(A)、ABS樹脂(B)、アクリル系トリブロック共重合体(C)、及びリン系酸化防止剤(D)を混合し、必要に応じて、各種添加剤及び/またはポリカーボネート樹脂(A)以外のポリマー等を混合する製造方法を例示することができる。本発明が目的とするポリカーボネート樹脂組成物を得ることができる限り、その製造方法は特に制限されることはなく、各成分の種類及び量を適宜調整することができる。成分の混合方法も特に制限されることはなく、例えば、タンブラー、及びリボンブレンダー等の公知の混合機にて混合する方法や、押出機にて溶融混練する方法を例示できる。これらの方法により、ポリカーボネート樹脂組成物のペレットを容易に得ることができる。
【0060】
本発明に係る成形品は、上記のポリカーボネート樹脂組成物を成形して得ることができる。
【0061】
本発明が目的とする成形品を得ることができる限り、成形品の製造方法は特に限定されることはなく、例えば、公知の射出成形法、圧縮成形法等によりポリカーボネート樹脂組成物を成形する方法が挙げられる。
【0062】
本発明に係る成形品は、電気機器や電子機器、IT機器、車両用メーターパネルの筐体に適しており、特に、耐熱性の要求される車両用の周辺部品や筐体にも適している。
【0063】
以上のように、本発明の例示として、実施の形態を説明した。しかしながら、本発明における技術は、これに限定されず、適宜、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施の形態にも適用可能である。
【実施例
【0064】
以下に、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。なお、特にことわりがない限り、「部」及び「%」はそれぞれ質量基準である。
【0065】
原料として以下のものを使用した。
1、ポリカーボネート樹脂(A):
ビスフェノールAと塩化カルボニルとから合成されたポリカーボネート樹脂
1-1、住化ポリカーボネート社製SDポリカ200-3(商品名)(粘度平均分子量:28500):「SDポリカ」は住化ポリカーボネート(株)の登録商標、以下、「PC-1」と略称
1-2、住化ポリカーボネート社製SDポリカ200-13(商品名)(粘度平均分子量:21500):「SDポリカ」は住化ポリカーボネート(株)の登録商標、以下、「PC-2」と略称
1-3、住化ポリカーボネート社製SDポリカ200-30(商品名)(粘度平均分子量:17600):「SDポリカ」は住化ポリカーボネート(株)の登録商標、以下、「PC-3」と略称
【0066】
2.バルク重合法(連続塊状重合法)からなるABS樹脂(B)
2-1、トリンセオ社製MAGNUM A-156(商品名)
(低粘度バルクABS樹脂):「MAGNUM」はトリンセオ(株)の登録商標、以下、「ABS-1」と略称
2-2、トリンセオ社製MAGNUM A-371(商品名)
(中粘度バルクABS樹脂):「MAGNUM」はトリンセオ(株)の登録商標、以下、「ABS-2」と略称
2-3、トリンセオ社製MAGNUM A-440(商品名)
(高粘度バルクABS樹脂):「MAGNUM」はトリンセオ(株)の登録商標、以下、「ABS-3」と略称
2-4、日本エイアンドエル社製サンタックAT05(商品名)、以下、「ABS-4」と略称
【0067】
3.アクリル酸エステル単量体単位を含む重合体ブロック(a)とメタクリル酸エステル単量体単位を含む重合体ブロックとから構成されたアクリル系トリブロック共重合体(C)
3-1、クラレ社製クラリティLA2140(商品名)
(低分子量アクリル系トリブロック共重合体):「クラリティ」は(株)クラレの登録商標、以下、「MAM-1」と略称
3-2、クラレ社製クラリティLA2330(商品名)
(高分子量アクリル系トリブロック共重合体):「クラリティ」は(株)クラレの登録商標、以下、「MAM-2」と略称
【0068】
3.リン系酸化防止剤(D):
3-1.以下の式で表される、2,4,8,10-テトラ-t-ブチル-6-〔3-(3-メチル-4-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)プロポキシ〕ジベンゾ〔d,f〕〔1,3,2〕ジオキサホスフェピン:環状亜リン酸エスエル系酸化防止剤
【化7】
[住友化学(株)製のスミライザーGP(商品名)、以下、「AO-1」と略称]
【0069】
3-2.以下の式で表される、ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジフォスファイト(IUPAC名:3,9-ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノキシ)-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5,5]ウンデカン)
【化8】
[ADEKA製のアデカスタブPEP-36(商品名)、以下、「AO-2」と略称]
【0070】
3-3.以下の式で表される、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)フォスファイト
【化9】
[BASF社製のイルガフォス168(商品名)、以下、「AO-3」と略称]
【0071】
3-4.以下の式で表される、[1,1´-ビフェニル]-4,4´-ジイルビス[ビス(2,4-ジ-t-ブチルフェノキシ)フォスフィン]
【化10】
[式中、R23~R26は、2,4-ジ-t-ブチルフェニル基:クラリアントジャパン社製サンドスタブP-EPQ(商品名)、以下、「AO-4」と略称]
【0072】
(実施例1~20及び比較例1~7)
前述の各種配合成分を表1~4に示す配合比率にて一括してタンブラーに投入し、10分間乾式混合した後、二軸押出機(日本製鋼所製TEM37SS)を用いて、溶融温度240℃にて混練し、ポリカーボネート樹脂組成物のペレットを得た。
【0073】
(ノッチ付きシャルピー衝撃強度の評価)
上記で得られた各種樹脂組成物のペレットをそれぞれ100℃で4時間乾燥した後に、射出成型機(日本製鋼所製J-100EII-P)を用いて設定温度260℃、射出圧力1600kg/cmにてISO試験法に準じた試験片を作成し、得られた試験片を用いてISO179-1、ISO75-2に準じノッチ付きシャルピー衝撃強さを測定した。ノッチ付きシャルピー衝撃強度が50KJ/m以上を良好とした。
【0074】
(滞留試験後のノッチ付きシャルピー衝撃強度の評価)
上記で得られた各種樹脂組成物のペレットをそれぞれ100℃で4時間乾燥した後に、射出成型機(日本製鋼所製J-100EII-P)を用いて設定温度260℃の条件下で強制的に射出成形機のシリンダー内で20分間樹脂を滞留させてISO試験法に準じた試験片を作成した。得られた試験片を用いてISO179-1、ISO75-2に準じノッチ付きシャルピー衝撃強さを測定した。滞留後のノッチ付きシャルピー衝撃強度は50KJ/m以上を良好とした。
【0075】
(スパイラル流動長の評価)
上記で得られた各種樹脂組成物のペレットをそれぞれ100℃で4時間乾燥した後に、射出成型機(日本製鋼所製J-100EII-P)を用いて設定温度250℃、射出圧力1600kg/cmの条件下で厚さ1mmの樹脂の流動長を測定した。スパイラル流動長は120mm以上を良好とした
【0076】
(荷重たわみ温度の評価)
上記で得られた各種樹脂組成物のペレットをそれぞれ100℃で4時間乾燥した後に、射出成型機(日本製鋼所製J-100EII-P)を用いて設定温度260℃、射出圧力1600kg/cmにてISO試験法に準じた試験片(ISO規格1号ダンベル試験片)を作成し、得られた試験片を用いてISO75-2に準じ荷重たわみ温度を測定した。試験片に加える曲げ応力は、1.8MPaとした。荷重たわみ温度が100℃以上を良好とした。
【0077】
【表1】
【0078】
【表2】
【0079】
【表3】
【0080】
【表4】
【0081】
表1~表3のとおり、ポリカーボネート樹脂組成物が本発明の構成要件を全て満足する場合(実施例1~20)にあっては、全ての評価項目にわたり良好な結果を示した。
【0082】
一方、表4で示したとおり、ポリカーボネート樹脂組成物が本発明の構成要件を満足しない場合(比較例1~7)においては、いずれの場合も何らかの欠点を有していた。
【0083】
比較例1、比較例2及び比較例3は、ポリカーボネート樹脂に対するABS樹脂の配合量が規定量より高いため、荷重たわみ温度が100℃未満となり、耐熱性が劣っていた。
【0084】
比較例4は、アクリル系トリブロック共重合体の配合量が規定量より少ない場合で、衝撃強度が低くなり、滞留試験後の衝撃強度も劣っていた。
【0085】
比較例5は、アクリル系トリブロック共重合体の配合量が規定量より多い場合で、滞留試験後の衝撃強度が劣っていた。
【0086】
比較例6は、酸化防止剤の配合量が規定量より少ない場合で、滞留試験後の衝撃強度が劣っていた。
【0087】
比較例7は、酸化防止剤の配合量が規定量より多い場合で、滞留試験後の衝撃強度が劣っていた。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明のポリカーボネート組成物は、優れた成形加工性と高い衝撃特性を有していることから、電気機器、電子機器、IT機器、車両用機器の筐体に適しており、特に、メーターパネル筐体や車載機器の筐体に適している。