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特許7397687深紫外光を発する発光装置及びそれを用いた水殺菌装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-05
(45)【発行日】2023-12-13
(54)【発明の名称】深紫外光を発する発光装置及びそれを用いた水殺菌装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 33/48 20100101AFI20231206BHJP
   H01L 33/58 20100101ALI20231206BHJP
   H01L 23/06 20060101ALI20231206BHJP
   H01L 23/02 20060101ALI20231206BHJP
   C02F 1/32 20230101ALI20231206BHJP
【FI】
H01L33/48
H01L33/58
H01L23/06 A
H01L23/02 F
C02F1/32
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020008418
(22)【出願日】2020-01-22
(65)【公開番号】P2021118199
(43)【公開日】2021-08-10
【審査請求日】2022-12-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000002303
【氏名又は名称】スタンレー電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000888
【氏名又は名称】弁理士法人山王坂特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 千寿
(72)【発明者】
【氏名】山根 貴好
【審査官】右田 昌士
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第108123023(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0338388(US,A1)
【文献】国際公開第2016/010043(WO,A1)
【文献】特開2015-018873(JP,A)
【文献】特開2018-037583(JP,A)
【文献】特開2017-147432(JP,A)
【文献】特開2016-127156(JP,A)
【文献】特開2009-253067(JP,A)
【文献】特表2017-510997(JP,A)
【文献】特開2017-147406(JP,A)
【文献】特開2012-109352(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0263833(US,A1)
【文献】国際公開第2018/100775(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/003535(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/037996(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00 - 33/64
H01S 5/00 - 5/50
H01L 23/00 - 23/10
C02F 1/00 - 1/26
C02F 1/30 - 1/38
F21S 2/00
F21V 8/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力供給用の電極が形成された基板と、該基板の上に搭載され、深紫外光を発する発光素子と、外周の端部が前記基板に固着され、前記発光素子を含む空間を気密状態で覆うドーム状のカバー部材とを有し、
前記カバー部材は、前記外周の端部に、底面が前記基板に固着された鍔部が形成されており、前記鍔部の端面は、外周に向かって曲面が形成されており、
前記カバー部材は
前記発光素子から発せられた深紫外光を遮光する金属膜からなる遮光部と、
前記鍔部と前記基板とを接合する接合材の層と、を有し、
前記遮光部は、前記鍔部の端面に形成されており、前記接合材と接する領域を含み、
前記接合材の層は、前記基板と前記カバー部材との接合部を跨いで、前記遮光部に沿って前記鍔部の底面から端面にかけて這い上がり、前記遮光部の少なくとも一部を覆う接合材の領域を有する
ことを特徴とする発光装置。
【請求項2】
請求項1に記載の発光装置であって、
前記金属膜は、Al、Ag、Ni、Ti、Cu、Au、Cr、Mo及びTaのうち1以上を用いた単層または複層であることを特徴とする発光装置。
【請求項3】
請求項1に記載の発光装置であって、
前記接合材として、AuSnを用いていること特徴とする発光装置。
【請求項4】
請求項1に記載の発光装置であって、
前記接合材として、Ni、Au、Ti、およびAlのうちの1以上を用いていること特徴とする発光装置。
【請求項5】
請求項1に記載の発光装置であって、
前記遮光部は、前記発光素子が搭載された基板の上面からの高さが、前記基板の上面からの前記発光素子の上面までの高さより高いことを特徴とする発光装置。
【請求項6】
請求項1に記載の発光装置であって、
前記発光素子の中心を含む垂直方向断面において、前記発光素子の上面の中心と前記遮光部の最上部とを結ぶ線の、前記発光素子の上面に対する角度が20度以下であることを特徴とする発光装置。
【請求項7】
請求項1に記載の発光装置であって、
前記鍔部の底面には、前記遮光部は配置されていないことを特徴とする発光装置。
【請求項8】
請求項1に記載の発光装置であって、
前記遮光部に沿って前記鍔部の底面から端面にかけて這い上がった前記接合材は、前記遮光部と前記接合材の層との接合境界を覆うことを特徴とする発光装置。
【請求項9】
請求項に記載の発光装置であって、
前記接合材の層は、前記カバー部材側のメタライズ層と、前記基板側のパッド層とに挟まれており、
さらに、前記メタライズ層または前記パッド層の前記接合材の層側の面であって、前記カバー部材の内周側には、前記接合材に対して濡れ性が低い材料を用いたことを特徴とする発光装置。
【請求項10】
水を供給する供給路付近に配置され、供給路を流れる水に深紫外光を照射する発光装置と、その駆動回路とを備えた水殺菌装置であって、前記発光装置として、請求項1ないしのいずれか一項に記載の発光装置を用いたことを特徴とする水殺菌装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、深紫外光を発する半導体発光素子を用いた発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
深紫外光を発する半導体発光素子は、サファイアなどの単結晶基板上に窒化アルミニウム(AlN)層をテンプレート層とし、その上に発光層等を含む半導体多層膜構造をエピタキシャル成長させるか、あるいは、窒化アルミニウム単結晶基板上に発光層等を含む半導体多層膜構造をエピタキシャル成長させて形成される。このような半導体発光素子は、下地のAlN層(またはAlN単結晶基板)が水分によって容易に加水分解を起こし変質してしまうため、これを用いた発光装置は、半導体素子を実装したパッケージ基板を、ガラス等の透明な部材で封止した構造を持つ(特許文献1-3)。
【0003】
特許文献1及び2に記載された発光装置は、凹部を形成したパッケージ基板の凹部に発光素子をフリップチップ接合によって実装し、パッケージ基板の上に平板上の透明な窓部材を接合し、凹部と透明体で囲まれる空間を封止している。これらの先行文献に記載された発光装置では、パッケージ基板と窓部材との接合面に複数の金属やシリコン酸化膜などを積層した接合層を形成することで、発光素子が実装された空間の気密性や発光素子の信頼性を保つようにしている。また特許文献2には、窓部材側にも端部に金属層を形成し、接合材が金属層に沿ってフィレットを形成することで、平板状の窓部材にかかる応力を低減することが記載されている。
【0004】
また特許文献3には、発光素子を実装した平板上のパッケージ基板に、発光素子を露出させる貫通孔を形成したスペーサを固定し、その上にガラス板を固定した構造の発光装置が開示されている。特許文献3には、ガラス板の、基板に固定される面に凹部を形成し、ガラス板がスペーサを兼ねた構造も開示されている。
【0005】
しかしながら、これら特許文献1-3に記載された発光装置では、発光素子からの光を取り出す窓部材やガラス板が平板上な透明体であるため、発光素子からの光の一部は透明体の下面すなわち光が当たる面で一部反射されるため、光の取り出し効率が低下するという課題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第6294417号公報
【文献】特許第5866561号公報
【文献】特開2015-18873号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
発光装置の光取り出し効率を改善するために、本出願人はドーム状の透明体で基板に実装された発光素子を気密に封止した発光装置を提案している。この発光装置では、ドーム状の透明体は外周に鍔部を有し、鍔部を接合材を介して基板に接合することにより、発光素子を透明体と基板とで囲まれる空間に気密に封止している。発光素子から発せられる深紫外光は、ドーム状の透明体から発光装置の外側に出射される。この際、光が入射する透明体の面及び透明体から光が出射する面が曲面であることから、光は透明体の面に対し直交に近い角度で進み、入射面及び出射面での反射が抑制され、高い光取り出し効率が実現できる。
【0008】
しかしながら、この発光装置では、発光素子からその側面方向に向かう光が、ドーム状の透明体の下側、すなわち基板に固定された鍔部からも外側に照射されるという問題が生じた。深紫外光はエネルギーが高いため、細菌やカビに対し高い殺菌・殺黴効果があるが、照射されることによってプラスチック等が急速に劣化するという問題がある。また人体に対しても直接照射されることは好ましくない。
【0009】
本発明は、上述したドーム形状の透明体(以下、カバー部材ともいう)を持つ発光装置における新たな課題を解決するためなされたものであり、発光素子からその側面方向に向かう深紫外光が、ドーム状のカバー部材の下側端部から照射されるのを防ぐことを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の発光装置は、電力供給用の電極が形成された基板と、該基板の上に搭載され、深紫外光を発する発光素子と、外周の端部が基板に固着され、発光素子を含む空間を気密状態で覆うドーム状のカバー部材とを有している。カバー部材は、端部の周囲の少なくとも一部に、発光素子から発せられた深紫外光を遮光する遮光部を有している。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、遮光部が深紫外光を遮光するため、発光素子からその側面方向に向かう深紫外光がカバー部材の下側端部から照射されるのを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】(a)は実施形態1の発光装置10の上面図、(b)は図1(a)のA-A’断面図、(c)は発光装置10の下面図。
図2】(a)は金属層4の構成例を示す断面図、(b)は金属層4の加熱(溶融)前の層構成の一例を示す断面図、(c)は金属層11と電極パッド5の加熱前の層構成の一例を示す断面図。
図3】発光装置から出射される光の分布図。
図4】発光装置10の製造方法を示すフロー図。
図5】(a)~(e)は、カバー部材2をパッケージ基板3に実装する方法を示す説明図。
図6】(a)は実施形態2の発光装置10Bの構成例を示す断面図、(b)は発光装置10Bの金属層4の加熱前の層構成の概要を示す断面図。
図7】(a)~(d)は、発光装置の変形例をそれぞれ示す断面図。
図8】(a)~(c)は水殺菌装置100の使用例の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の発光装置の実施形態について説明する。
【0014】
<<実施形態1の発光装置10>>
実施形態1の発光装置10は、図1(a)、(b)に示すように、電力供給用の電極が形成されたパッケージ基板(以下、単に基板ともいう)3と、基板3上に搭載され深紫外光を発する発光素子1と、発光素子1を含む空間Sを気密状態で覆うドーム状のカバー部材2とを備えている。カバー部材2は、その外周の端部が基板3に固着されている。またカバー部材2は、外周端部の周囲の少なくとも一部に、発光素子1から発せられた深紫外光を遮光する遮光部8を有している。カバー部材2の端部は、接合材の層(金属層)4により基板3に接合されている。
【0015】
以下、発光装置10を構成する各部材の具体例について説明する。なお、以下の説明において、基板3に発光素子1が搭載される側を上側とし、その反対側を下側とする。
【0016】
<発光素子1>
発光素子1は、波長210nm以上310nm以下の深紫外波長領域の光を放射する深紫外発光素子(DUV-LED)である。発光素子1は、既知の構造(例えば、窒化アルミニウム(AlN)やサファイア等の単結晶基板上に、AlN層をテンプレート層として深紫外発光をする発光層や電極等を積層した構造)を有する半導体発光素子である。発光素子1の基板としてAlNの単結晶基板を用いた場合、転位密度が10(個/cm)オーダーと少なく、高品質になるため、発光素子1は、より短い波長の深紫外光を出射することができる。発光素子1の発光層は、たとえばAlGaN系材料で構成される。
【0017】
発光素子1は、パッケージ基板3に対して既知の方法により実装されている。例えば発光素子1が底面に一対の電極を有している場合、基板3に設けた電極に対し、図1(b)のように半田等の金属層11を用いてフリップチップ接合により実装してもよいし、ダイボンディングとボンディングワイヤで実装してもよい。
【0018】
<基板3>
基板3には発光素子1に電力を供給する電極として、図1(a)~(c)に示すように、基板3の上面側の電極パッド5と、基板3の下面側の裏面電極7と、基板3を貫通し電極パッド5及び裏面電極7を接続する貫通電極6とが形成されている。電極パッド5上には、発光素子1に対して電気的に並列に接続され発光素子1を逆電圧から保護するツェナーダイオード9が接続されている。また基板3の下面には、裏面電極7に接続し電極パッド5に給電するための不図示の配線が設けられている。
【0019】
基板3は、絶縁性で良好な熱伝導性を有し発光素子1の熱を外部に放出可能であることが好ましく、例えばセラミック製、ダイヤモンド製またはSi製である。例えば、基板3がセラミック製の場合、セラミックとしてAlN、アルミナ、SiC、Si、及びLTCC(Low temperature co-fired ceramic:低温同時焼成セラミックス)のうちの1以上を含むもの用いることができる。また、Cu等の高熱伝導材を絶縁層でコートしたものでも良い。
【0020】
<カバー部材2>
カバー部材2は、上に凸となる曲面を上下両面に有するドーム状部20と、ドーム状部20の下端部から外周に向けて広がる鍔部22とを備えている。カバー部材2を上面側から見た形状は、ドーム状部20が円形であり、鍔部22が矩形である。
【0021】
ドーム状部20の下面と基板3との間の空間Sは中空であり、He、N2などの不活性ガスが充填されている。金属層4によりカバー部材2が基板3に接合されているため、発光素子1は空間S内に気密に封止されている。気密の程度は、例えば不活性ガスのリークレートで3.0×10-10Pam/s以下であることが望ましい。これにより、カバー部材2と基板3との接合部分から空間S内への水分の侵入を防ぐことができ、空間S内の水分量が3000ppm以下に維持される。この値は、発光素子1の基板が通電中に水分により加水分解を起こし変質することを防ぎ、市場要求を満足するレベルの寿命を担保可能な値である。
【0022】
カバー部材2は、発光素子1の発する深紫外光を透過する材質(例えば石英ガラス、水晶、UV透過ガラス)で構成されている。
【0023】
<金属層4>
金属層4は、上述したようにカバー部材2と基板3とを気密に接合するための層であり、基板3の上面とカバー部材2の鍔部22の下面との間で、発光素子1の配置された空間Sの全周を囲むように、枠状に形成されている。金属層4は、例えば図2(a)に示すように、カバー部材2に接合されたメタライズ層4aと、基板3に接合されたパッド層4bと、メタライズ層4aおよびとパッド層4bの間に配置された接合層4cとを備える構成とすることができる。
【0024】
メタライズ層4a、パッド層4b及び接合層4cの層構成は任意であり、それぞれ単層であっても、図2(b)に示すように多層構造であってもよい。
【0025】
金属層4の厚さおよび幅は任意であるが、外周側と内周側との幅Wは、図2(a)に示すようにカバー部材2の厚さTよりも大きい(W>T)と、金属層4の接合時、カバー部材2の金属層4との接合界面付近における破断を防止することができる。金属層4の幅Wは、220μmより大きいことが好ましく、300μm以上であることがより好ましく、370μm以上であることが更に好ましい。カバー部材2の厚さTは、500μmよりも小さいことが好ましく、200μm以上500μm未満であることがより好ましく、220μm以上370μm以下であることが更に好ましい。金属層4の厚みは、0.3μm以上20μm以下であることが望ましい。
【0026】
<遮光部8>
遮光部8は、発光素子1からの光をカバー部材2の側面から出射されるのを防止するための手段であり、本実施形態では、鍔部22の外側面に形成されている。遮光部8は、カバー部材2からの深紫外光を遮光できるものであれば限定されず、遮光可能な材料及び部材を用いることができる。本実施形態では、カバー部材2の表面に形成された金属膜である。
【0027】
遮光部8は、発光素子1から発せられる深紫外光が発光装置の周囲の部材に到達しないように、カバー部材2の下端から側方への漏れ光を遮光できる高さまで配置されていればよい。遮光部8の高さは、発光素子1の中心を含む垂直方向断面において、発光素子1の上面の中心と遮光部8の最上部とを結ぶ線の、発光素子1の上面に対する角度が20度以下となるような高さであることが好ましい。
【0028】
発光装置から出射される深紫外光の分布を図3に示す。この図では、発光素子1の中心を含む垂直方向断面において、発光装置から真上に向けて出射される光の方向を0°、発光素子の発光面に対して水平な方向を±90°として示している。
【0029】
図3の強調部Eに示すように、深紫外光が-70°以下、及び+70°以上の範囲の光は漏れ光となって、カバー部材2の鍔部22の端部から漏れ出ることがわかる。従ってこの範囲をカバーするように遮光部8の高さを設定する。この図では発光素子1の上面が±90°の位置にある場合を示しているが、発光素子1の上面がこれより高い位置にある場合には、漏れ光の範囲は-90°以下、及び+90°以上の範囲になる。従って発光素子1の上面の位置が高い場合を考慮し、遮光部8は、-100°~-70°、及び+70°~+100°の範囲で遮光することが好ましい。
【0030】
具体的には、図1(b)に示すように、発光素子1が搭載された基板3の上面から遮光部8の上端までの高さ(遮光部8の高さh1)が、基板3の上面からの発光素子1の上面までの高さ(発光素子1の高さh2)より高くなるように遮光部8を配置することが好ましい。
【0031】
ただし遮光部8は、カバー部材2の周囲全体に配置する必要はなく、漏れ光が問題となりうる側面にのみ設けたり、部分的に設けたりすることが可能である。
【0032】
遮光部8には、深紫外光を反射または吸収できる材料を用いればよい。遮光部8が深紫外光を反射する場合、遮光部8が反射した深紫外光を取り出して利用できるため、取り出し効率がより高くなる。遮光部8には、例えば、Al、Ag、Ni、Ti、Cu、Au、Cr、Mo及びTaのうち1以上を用いた単層または複層の金属層を用いることができる。
【0033】
遮光部8が金属膜の場合、遮光部8は、蒸着法や、スパッタリング法等により形成することができる。
【0034】
<電極パッド5及び金属層11>
発光素子1が基板3に対して金属層11により実装されている場合、金属層11は、基板3上の電極パッド5に対して接続層(例えばAuSn)を介して接続されている。電極パッド5及び金属層11は、それぞれ単層であっても、図2(c)に示すように多層構造であってもよい。電極パッド5の材質には、例えば、Ni、Au、Cu、Pt、Ti、およびNiCrのうちの1以上を用いることができ、金属層11の材質には、例えば、Ni、Au、Ti、および Alのうちの1以上を用いることができる。
【0035】
<貫通電極6及び裏面電極7>
貫通電極6の材料には、発光素子1が発光時に出す熱を放熱する作用を有している材料を用いることが好ましく、例えばCu、Wを用いることができる。裏面電極7にはNiCr、Au、Nを用いることができる。
【0036】
実施形態1の発光装置では、カバー部材がドーム状であるため、発光素子から出射され発光装置の外に出射される深紫外光は、カバー部材に対し直交に近い角度で入射する。これにより本実施形態の発光装置では、カバー部材の入射面及び出射面での深紫外光の反射が抑制され、高い光取り出し効率を実現することができる。
【0037】
またこの発光装置では、カバー部材がドーム状であるため、深紫外光の出射可能な角度範囲が従来よりも広くなる。さらにカバー部材に遮光部を配置したことにより、発光素子からその側面方向に向かう深紫外光がカバー部材の下側端部から漏出するのを防ぐことができる。これにより、発光装置の周囲に配置されている部材が深紫外光の照射により劣化するのを防ぐことができる。
【0038】
<製造方法>
以下、実施形態1の発光装置10の製造方法の一例を、図4、5を参照して説明する。
【0039】
[工程801]
発光素子1と基板3を用意し、発光素子1を基板3上に配置する。
具体的には、深紫外光を発光する発光素子1を既知の手法により、全体の厚さが数百μm程度となるように製造する。発光素子1は例えば、AlN単結晶の基板上に深紫外発光をする発光層や電極等を積層して形成する。発光素子1の下面であってp側電極およびn側電極がある部分には金属層11の材料を形成する。
【0040】
基板3の上面には、電極パッド5の材料を形成し、その上に接合材(例えばAuSn合金ペースト)を形成する。基板3の下面には、裏面電極7の材料を形成する。電極パッド5と裏面電極7とを電気的に接続するように、基板3を貫通する貫通電極6を形成する。
【0041】
金属層11が電極パッド5に接するように、発光素子1を基板3上に配置する。
【0042】
[工程802]
基板3上の配線パターンに、金属層11と電極パッド5とを接合する接合材(AnSn合金ペースト)を塗布し、その上にツェナーダイオード9を配置する。
【0043】
[工程803]
発光素子1及びツェナーダイオード9を配置した基板3を、170℃で60秒間プリヒートし、共晶炉にて315℃で30秒間加熱(リフロ-)する。これにより接合材が溶融する。その後、基板3を冷却して、AuSn共晶合金により、発光素子1と基板3、ツェナーダイオードと基板3が、それぞれ接合する。以上の工程801~803により、発光素子1が基板3にフリップチップ実装される。
【0044】
[工程804]
必要に応じ、基板3を洗浄して、接合材に含まれるフラックスの残渣を除去する。
【0045】
[工程805]
遮光部8が形成されたカバー部材2を、図5(a)~(e)に示すように基板3に接合する。
【0046】
まず、カバー部材2を例えば金型成形により製造する。カバー部材2は、鍔部22の最外端のサイズが基板3の外側端のサイズと同等かそれよりわずかに小さくなるようにする。製造したカバー部材2の鍔部22の外周面全体に、遮光部8を形成する(図5(a))。
【0047】
金属層4をカバー部材2と基板3との間にそれぞれ枠状に形成する。例えばカバー部材2の下面側には、金属層4のメタライズ層4aとして図2(b)に示すように、Ti/Pd/Cu/Ni/Au層をこの順に配置する。基板3の上面側縁部には、メタライズ層4aと向かい合うように金属層4のパッド層4bとしてNiCr/Au/Ni/Au層をこの順に配置する。パッド層4b上には、接合層4cとしてAuSn合金ペーストを塗布する。
【0048】
次に、カバー部材2および基板3を、上下逆さまになるように治具91にセットする(図5(b))。このとき、基板3とカバー部材2の間に隙間を設けることが好ましい。
【0049】
次にプリヒートを行い、材料に含まれる水分を除去する(図5(c))。プリヒートの条件は、真空中で温度150℃~275℃、時間5min~15minとする。
【0050】
次に、バネ荷重を利用して、押上げピン92でカバー部材2を押し上げる(図5(d))。押し上げ時の条件は、窒素中で温度150℃~275℃、時間60sとし、バネ荷重は50g~150gとする。
【0051】
次に、共晶炉にて本加熱を行う(図5(e))。本加熱条件は、窒素中で温度295~350℃、時間5s~30sとし、5g~150gのバネ荷重でカバー部材2を押圧した状態で行う。
【0052】
この本加熱により、カバー部材2と基板3との間に配置した金属層のうち、Au/AuSn/Au層が溶融してAuSn共晶合金を形成し、基板3側のパッド層4bとカバー部材2側のメタライズ層4aとが接合する。このようにして金属層4を形成することにより、カバー部材2と基板3とを、これらの間の空間Sが気密状態となるように接合できる。
【0053】
本加熱後に冷却を行い、完成した発光装置を取り出す。
【0054】
[工程806]
完成した各発光装置について、加圧He雰囲気内に一定時間放置して後述する気密試験(リークチェック)を行い、気密性が担保されているものについて合格とする。
【0055】
[工程807]
工程806でリークチェックに合格した製品を出荷可能品と判定する。以上の工程により、発光装置10を製造することができる。
【0056】
<<実施形態2の発光装置10B>>
以下、実施形態2の発光装置10Bについて説明する。発光装置10Bは、図6(a)、(b)に示すように、上述した実施形態1の発光装置10と同様に、発光素子1、カバー部材2、基板3、金属層4、及び遮光部8を備えている。
【0057】
一方、発光装置10Bは、遮光部8と金属層4の形状が発光装置10と異なる。発光装置10Bにおいて、遮光部8は、金属層4と接するように、カバー部材2の端部においてその外周面から下面にかけて連続して配置されている。その結果金属層4は、基板3とカバー部材2との接合部を跨いで遮光部8の少なくとも一部を覆うように、遮光部8の下面から外周面にかけて這い上がり、図示するように遮光部8と金属層4との接合境界を覆うような形状を有している。
【0058】
このように発光装置10Bでは、金属層4が遮光部8の外周面に這い上がるような形状を有していることにより、カバー部材2と基板3の密着性がより高まる。そのため、発光装置10Bでは、発光装置10で得られる効果に加えて、カバー部材内部の空間Sの気密性を高め加水分解による変質を防ぐという効果をより高めることができる。
【0059】
<製造方法>
実施形態2の発光装置10Bの製造方法は、実施形態1の発光装置10の製造方法とほぼ同じであるが、工程805の遮光部8をカバー部材2に形成する工程(図5(a))がわずかに異なるため、その異なる点について説明する。
【0060】
カバー部材2を用意したら、図6(b)に示すように、遮光部8の材料を鍔部22の外周面2aから下面2bにかけて連続するように形成する。
【0061】
カバー部材2下面に配置した遮光部8と基板3との間には、金属層4(例えばメタライズ層4a、パッド層4b及び接合層4c)の材料を形成する。メタライズ層4a及びパッド層4bの、接合層4cに接する領域よりも内側の領域4rには、メタライズ層4a及びパッド層4bの接合層4cに接する面に配置した材料(例えばAu)より濡れ性が低い材料(例えばCr)を塗布する。このようにして形成した金属層4を実施形態1と同様の工程により溶融させて、カバー部材2と基板3とを接合させる。
【0062】
実施形態2の発光装置において、金属層4の材料は実施形態1と同じであってもよいし、基板3とパッド層4bとの間にPt/Ti等を塗布してもよい。
【0063】
金属層4に含まれるAuSn合金は、カバー部材2を構成する材料(ガラス)よりも金属に対して濡れ広がりやすい性質を有している。そのため、遮光部8をカバー部材2端部の外周面2aから下面2bに連続して配置することにより、金属層4は溶融時に、遮光部8の形状に沿って這い上がるように濡れ広がり、冷却時にその形状のまま固まり、遮光部8の外周面に沿って這い上がるような形状となる。
【0064】
また、メタライズ層4a及び/又はパッド層4bの内側の領域4rに濡れ性が低い材料を塗布することにより、その材料が共晶時に接合層4cの材料(AuSn)を濡れ性の悪さによって弾き、AuSnが外側(矢印Y側)へ押し出されやすくなる。このため、金属層4がより這い上がり構造を形成しやすくなる。
【0065】
以下、実施形態1、2の発光装置を基本とした変形例の発光装置について、図7を参照し説明する。
【0066】
<<変形例1>>
変形例1の発光装置は、図7(a)に示すように、カバー部材2の鍔部22の端部に、外周面に向かって曲面が形成されている以外は、実施形態2と同様の構成であり、実施形態2と同様の方法により製造することができる。この発光装置は、鍔部22の端部に曲面が形成されていることにより、実施形態2の発光装置10Bのように遮光部8を鍔部22の下面に配置しなくても、金属層4が遮光部8に沿って鍔部22の下面から外周面にかけて這い上がるような構造となる。なお図示しないが、金属層4が実施形態2のように鍔部22の下面に配置され、かつ鍔部22の外周面が変形例1のように曲面を有している場合、金属層4の這い上がり構造はより形成されやすくなる。
【0067】
<<変形例2>>
変形例2の発光装置では、図7(b)に示すように、基板3の外周全周に渡って立ち上がった壁部30が形成されている。金属層4は、カバー部材2の鍔部22の下面と壁部30の上面との間に配置されている。
【0068】
また基板3上には、半導体発光装置1を載せる台座部31が形成されており、基板3の台座部31が載せられている部分の上面32から発光素子1の上面までの高さは、基板3の上面32から壁部30の上端までの高さよりも高くなっている。
【0069】
変形例2では、電極パッド5は台座部31の上面に配置され、電極パッド5と裏面電極7とを接続する貫通電極6は、台座部31及び基板3を貫通するように形成されている。変形例2の発光装置では、これら以外の構成が実施形態1の発光装置の構成と同じである。
【0070】
<<変形例3>>
変形例3の発光装置は、図7(c)に示すように、遮光部8が鍔部22の外側面ではなく内側面に配置されている以外は、実施形態1と同様の構成である。
【0071】
<<変形例4>>
変形例4の発光装置は、図7(d)に示すように、カバー部材2に鍔部が形成されておらず、ドーム状部20の下端部と基板3とが金属層4により接合されている。遮光部8はドーム状部20の下部の外周面に配置されている。またドーム状部20は上面から見た形状が他の例の発光装置と同様に円形であり(図1(a)参照)、金属層4は上面から見て円形となるように配置されている。変形例4のこれら以外の構成は、実施形態1と同じ構成である。
【0072】
図7(a)~(d)の変形例は例示であり、更に実施形態1、2や変形例1~4の構成を組み合わせることが可能である。
【0073】
<<水殺菌装置100>>
以上で説明した発光装置は、殺菌装置、脱臭用装置、樹脂硬化用装置等、深紫外光を出射する装置に適用することができる。以下、発光装置が備えられた水殺菌装置100の構成及び使用例について説明する。
【0074】
水殺菌装置100は、電源から電力の供給を受けて照射される深紫外光により水を殺菌するものである。水殺菌装置100は、図8に示すように、水101を供給する供給路Pに配置され、供給路Pを流れる水101に深紫外光Dを照射する発光装置10と、その駆動回路とを備えている。
【0075】
水殺菌装置100は、供給路Pに対して任意の位置に配置することができ、複数配置されていてもよい。例えば、同位置を流れる水101に対し深紫外光Dを出射するように、互いに向かい合う一対の水殺菌装置100を配置し、より強い光で殺菌するようにしてもよい(図8(a))。或いは、互いに異なる位置に深紫外光Dを照射するように、向かい合う位置に水殺菌装置100を配置して、広範囲を殺菌可能としてもよい(図8(b))。また、深紫外光Dの照射方向に対し向かい合う位置に反射板を配置して深紫外光Dを反射させ、深紫外光Dの照射範囲を拡大させてもよい(図8(c))。
【0076】
水殺菌装置100は、遮光部を有する発光装置10を備えているため、発光装置10から発せられる深紫外光が発光装置の周囲に配置されている部材に照射されるのを防ぐことができる。また水殺菌装置100が発光装置10を複数備えている場合、各発光装置から発せられる深紫外光が互いの発光装置に照射されて劣化するのを防ぐことができる。
【実施例
【0077】
以下、本発明の発光装置の実施例について説明する。
【0078】
<気密性評価>
[方法]
実施例として、実施形態2の発光装置を製造した。また、比較例として、カバー部材に遮光部を配置しなかった以外は実施形態1の発光装置と同じ構成の発光装置を製造した。これら実施例及び比較例の各発光装置について熱衝撃試験を行った後、気密性の評価を行った。各発光装置のサンプル数はそれぞれ50個とし、各サンプルについて、-40℃/15分~85℃/15分を1サイクル(計30分)とする、200サイクル及び1000サイクルの熱衝撃試験を行った。
【0079】
熱衝撃試験後の各サンプルの気密性について、JIS Z 2331に規定されるボンビング法に準じて評価した。具体的には、まず各発光装置を加圧He雰囲気内に一定時間放置した。これにより、発光素子1が配置されている空間SにHeが入り込む。加圧後、発光装置を真空炉内に設置し、空間Sから漏れ出すHeを検出することにより、発光装置のパッケージ内部のHe量を計測した。Heのリークレートが3.0×10-10Pam/s以下である場合には、カバー部材2内の気密が担保されていると評価した。
【0080】
[結果]
実施例の発光装置について、いずれのサンプルもリークがみられなかった。一方、比較例の発光装置では、Heのリークレートが3.0×10-10Pam/sを超えたサンプルがそれぞれ5個(割合:10%)存在した。この結果から、遮光部8に這い上がり構造を有する発光装置では、カバー部材とパッケージ本体との密着性が向上し、気密性より高くなることがわかった。
【符号の説明】
【0081】
1…発光素子、10…発光装置、100…水殺菌装置、2…カバー部材、3…基板、4…金属層、8…遮蔽部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8