(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-05
(45)【発行日】2023-12-13
(54)【発明の名称】既設管更生方法
(51)【国際特許分類】
B29C 63/32 20060101AFI20231206BHJP
F16L 1/00 20060101ALI20231206BHJP
【FI】
B29C63/32
F16L1/00 J
(21)【出願番号】P 2020009909
(22)【出願日】2020-01-24
【審査請求日】2022-10-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085556
【氏名又は名称】渡辺 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100115211
【氏名又は名称】原田 三十義
(74)【代理人】
【識別番号】100153800
【氏名又は名称】青野 哲巳
(72)【発明者】
【氏名】北山 康
(72)【発明者】
【氏名】寺尾 武司
(72)【発明者】
【氏名】近藤 陸太
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 聡俊
【審査官】▲高▼村 憲司
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-232023(JP,A)
【文献】特開2000-000889(JP,A)
【文献】特開平04-232026(JP,A)
【文献】特開2018-193732(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 63/00 - 63/48
F16L 1/00 - 1/26
F16L 5/00 - 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
既設管を螺旋管状の更生管によって更生する方法であって、
帯状部材を前記既設管の内面に沿う螺旋状に巻回して、前記帯状部材の帯幅方向の両側の互いに一周ずれて隣接する縁部分どうしを接合して強拘束状態にすることによって、前記更生管を前記既設管より小径になるよう作製
して前記既設管内に配置する製管工程と、
前記更生管における第2側の管端から第1側へ向けて順次、前記縁部分どうしが巻き方向へ相対摺動可能な弱拘束状態にする拘束弱化工程と、
前記既設管における第1側の管口と連なる人孔内に設置されるとともに前記更生管における前記第1側の管端と係合する拡張製管機によって、前記帯状部材における前記更生管に続く帯部分を前記更生管へ送り込むことによって、前記更生管における前記弱拘束状態になった管部を拡径させる拡径工程と、
前記拡径された管部の前記第1側の端部が
前記管口ひいては前記拡張製管機の近くの
前記既設管内の所定位置に配置されるまで前記拡径工程を行なった後、前記更生管を前記拡張製管機から切り離す切離工程と、
前記拘束弱化工程によって前記更生管を前記第1側の管端まで前記弱拘束状態にした後、かつ前記切離工程の後、前記更生管の前記所定位置から前記第1側の管端までの第1側管部を自然拡径させる自然拡径工程と、
を備え
、前記所定位置から前記管口まで距離が、前記更生管における前記強拘束状態の管部の巻きピッチの1倍~30倍であることを特徴とする既設管更生方法。
【請求項2】
前記製管工程において、前記帯状部材の前記縁部分どうしの間に条体を挟み、
前記拘束弱化工程において、前記条体における前記更生管から引き出されて前記更生管の管内空間に通された引き取り部分を引っ張ることによって、前記条体を順次引き抜くことを特徴とする請求項
1に記載の既設管更生方法。
【請求項3】
既設管を螺旋管状の更生管によって更生する方法であって、
帯状部材を前記既設管の内面に沿う螺旋状に巻回して、前記帯状部材の帯幅方向の両側の互いに一周ずれて隣接する縁部分どうしを接合して強拘束状態にすることによって、前記更生管を前記既設管より小径になるよう作製する製管工程と、
前記更生管における第2側の管端から第1側へ向けて順次、前記縁部分どうしが巻き方向へ相対摺動可能な弱拘束状態にする拘束弱化工程と、
前記更生管における前記第1側の管端と係合する拡張製管機によって、前記帯状部材における前記更生管に続く帯部分を前記更生管へ送り込むことによって、前記更生管における前記弱拘束状態になった管部を拡径させる拡径工程と、
前記拡径された管部の前記第1側の端部が前記拡張製管機の近くの所定位置に配置されるまで前記拡径工程を行なった後、前記更生管を前記拡張製管機から切り離す切離工程と、
前記拘束弱化工程によって前記更生管を前記第1側の管端まで前記弱拘束状態にした後、かつ前記切離工程の後、前記更生管の前記所定位置から前記第1側の管端までの第1側管部を自然拡径させる自然拡径工程と、
を備え、
前記製管工程において、前記帯状部材の前記縁部分どうしの間に条体を挟み、
前記拘束弱化工程において、前記条体における前記更生管から引き出されて前記更生管の管内空間に通された引き取り部分を引っ張ることによって、前記条体を順次引き抜き、
前記帯状部材の一方側の縁部分には複数条の嵌合凸部が形成され、他方側の縁部分には、前記嵌合凸部がそれぞれ嵌る複数条の嵌合溝が形成されており、
前記拘束弱化工程における前記条体の引き抜きによって、前記嵌合凸部の一部が切断されることを特徴とする既設管更生方法。
【請求項4】
前記第1側の管端を手動で捩じることによって、前記第1側管部を強制拡径させる手動拡径工程を、前記自然拡径工程に介在させることを特徴とする請求項1
~3の何れか1項に記載の既設管更生方法。
【請求項5】
前記製管工程においては、前記更生管の前記第1側の管端を前記既設管の前記第1側の管口から突出させ、
前記切離工程においては、前記管口の外部で前記更生管を切断し、かつ該切断位置と前記管口との間の切断距離を、前記第1側管部の拡径によって前記第1側の管端が前記管口内に位置されるか又は前記管口より突出されるように設定することを特徴とする請求項1
~4の何れか1項に記載の既設管更生方法。
【請求項6】
前記既設管の前記第1側の管口に連なる人孔に製管機を設置して、該製管機によって前記製管工程を行ない、
その後、前記製管機を前記拡張製管機として用いることを特徴とする請求項1~5の何れか1項に記載の既設管更生方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、老朽化した既設管を更生する方法に関し、特に既設管の内周に沿って螺旋管状の更生管を構築する既設管更生方法に関する。
【背景技術】
【0002】
老朽化した下水道管等の既設管内に更生管を構築して前記既設管を更生する方法は公知である。更生管としては、帯状部材を螺旋状に巻回して隣接する縁部分どうしを凹凸嵌合にて接合した螺旋管状の更生管が知られている。
特許文献1には、既設管より小径の螺旋管状の更生管を製管して既設管内に設置した後、拡張機を用いて、該更生管を構成する帯状部材の隣接する縁部分どうしを巻き方向へ相対摺動させることによって、更生管を拡径(拡張)させるエキスパンダー製管方法が記載されている。拡径された更生管が既設管の全周にわたって張り付く。
【0003】
特許文献2のエキスパンダー製管方法においては、既設管の第1側の管口が連なる人孔内に押出式の製管機を設置して、該製管機によって更生管の製管及び拡径を行う。製管時、螺旋状に巻回した帯状部材の隣接する縁部分どうし間に拘束条体を挟んでおく。製管後、更生管における製管機とは反対側(第2側)の端部から製管機側(第1側)へ向けて順次、拘束条体を引き抜きながら、前記製管機(拡張製管機)の駆動によって、帯状部材における更生管に連なる帯部分を更生管へ送り込む。これによって、更生管の前記拘束条体が引き抜かれた部分が拡径(拡張)される。更生管の拡径変形中の部分は、第2側へ向かって拡径するコーン状(円錐状)になる。その第2側に拡径済のストレートな管部が連なる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開番号WO87/05677
【文献】特開平04-232023号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この種のエキスパンダー製管の施工に際しては、拡径変形中のコーン状の管部の長さ管理が重要である。コーン状管部が長過ぎると、既設管の内面への張り付き不良が起きる。
一方、コーン状管部が短過ぎると、そのテーパ角が過大になり、未拡径の管部(拘束条体の未引き抜き部分)とコーン状管部との間等でバックリング(縁部分どうしの凹凸嵌合の破断)が起きる。特に、更生管の拡張製管機側(第1側)の管端の近くまで拡径が進んだ段階では、コーン状管部の長さを確保できず、バックリングが起きやすくなる。一旦バックリングが起きると、煩雑な補修作業を要し、場合によっては製管をやり直さなければならず、大幅な作業ロスが生じる。
本発明は、かかる事情に鑑み、エキスパンダー製管方法において、更生管の特に拡張製管機側(第1側)の管端近くでバックリングが起きるのを防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明は、既設管を螺旋管状の更生管によって更生する方法であって、
帯状部材を前記既設管の内面に沿う螺旋状に巻回して、前記帯状部材の帯幅方向の両側の互いに一周ずれて隣接する縁部分どうしを接合して強拘束状態にすることによって、前記更生管を前記既設管より小径になるよう作製する製管工程と、
前記更生管における第2側の管端から第1側へ向けて順次、前記縁部分どうしが巻き方向へ相対摺動可能な弱拘束状態にする拘束弱化工程と、
前記更生管における前記第1側の管端と係合する拡張製管機によって、前記帯状部材における前記更生管に続く帯部分を前記更生管へ送り込むことによって、前記更生管における前記弱拘束状態になった管部を拡径させる拡径工程と、
前記拡径された管部の前記第1側の端部が前記拡張製管機の近くの所定位置に配置されるまで前記拡径工程を行なった後、前記更生管を前記拡張製管機から切り離す切離工程と、
前記拘束弱化工程によって前記更生管を前記第1側の管端まで前記弱拘束状態にした後、かつ前記切離工程の後、前記更生管の前記所定位置から前記第1側の管端までの第1側管部を自然拡径させる自然拡径工程と、
を備えたことを特徴とする。
【0007】
強拘束状態とは、前記縁部分どうしの拘束力(摩擦抵抗)が弱拘束状態より強い状態を言う。
自然拡径とは、第1側管部に外部から拡径力を加えることなく、第1側管部が自らの、平板状態に戻ろうとする弾性力によって自然と拡径されることを言う。
第1側管部は、拡張製管機から解放され、かつ弱拘束状態になっているから、自ら平板状態に戻ろうとする弾性力によって自然と拡径される。このとき、第1側管部に無理な外力が作用することがないから、バックリングが起きることは殆どない。したがって、第1側管部を、バックリングを防止しながら既設管の管口付近の内周面に張り付かせることができる。バックリングの補修や製管のやり直しをする必要が無く、作業ロスを回避できる。
【0008】
前記第1側の管端を手動で捩じることによって、前記第1側管部を強制拡径させる手動拡径工程を、前記自然拡径工程に介在させることが好ましい。
補助的に手動拡径を行うことによって、第1側管部を既設管の第1側の管口まで確実に張り付かせることができる。好ましくは、手動拡径の際は、第1側管部における拡径変形中のコーン状管部のテーパ角、長さ、縁部分どうしの接合状態等を目視観察し、バックリングが起きないように捩じり力を調整する。バックリングが起きそうなときは、手動であるから、捩じり操作を直ちに止めることができ、所要の手当てを行なうことができる。
【0009】
前記製管工程においては、前記更生管の前記第1側の管端を前記既設管の前記第1側の管口から突出させ、
前記切離工程においては、前記管口の外部で前記更生管を切断し、かつ該切断位置と前記管口との間の切断距離を、前記第1側管部の拡径によって前記第1側の管端が前記管口内に位置されるか又は前記管口より突出されるように設定することが好ましい。
第1側管部の自然拡径等に伴って、管口から突出された更生管の第1側の管端(切断端)が管口へ向けて漸次移行される。一方、前記切断距離の設定によって、自然拡径等の後、最終的に、更生管の第1側の管端が管口よりも既設管の内部に引っ込むことはない。この結果、更生管を、既設管の管口まで張り付かせることができる。更生管の寸法が足らずに管口の内周面が露出されるのを防止できる。
【0010】
前記製管工程において、前記帯状部材の前記縁部分どうしの間に条体を挟み、
前記拘束弱化工程において、前記条体における前記更生管から引き出されて前記更生管の管内空間に通された引き取り部分を引っ張ることによって、前記条体を順次引き抜くことが好ましい。
条体の引き抜きによって、前記縁部分どうしの拘束力を弱めることができる。
【0011】
前記帯状部材の一方側の縁部分には複数条の嵌合凸部が形成され、他方側の縁部分には、前記嵌合凸部がそれぞれ嵌る複数条の嵌合溝が形成されており、
前記拘束弱化工程における前記条体の引き抜きによって、前記嵌合凸部の一部が切断されることが好ましい。
前記一部の嵌合凸部の切断によって、縁部分どうしの拘束力を確実に弱めることができる。
【0012】
前記既設管の前記第1側の管口に連なる人孔に製管機を設置して、該製管機によって前記製管工程を行ない、
その後、前記製管機を前記拡張製管機として用いることが好ましい。
これによって、同一の装置を用いて製管工程及び拡径工程を行なうことができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、エキスパンダー製管に際して、更生管の拡張製管機側の管端の近くでバックリングが起きるのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、更生施工中の既設管を、更生管の製管工程の終了時の状態で示す断面図である。
【
図2】
図2(a)は、前記更生管を構成する帯状部材の一例を示し、
図1のIIa-IIa線に沿う断面図である。
図2(b)は、前記更生管における螺旋状の帯状部材の隣接する縁部分どうしの嵌合構造を強拘束状態で示す、
図1の円部IIbの拡大断面図である。
図2(c)は、前記嵌合構造を弱拘束状態で示す、
図3の円部IIcの拡大断面図である。
【
図3】
図3は、既設管の更生施工における拘束弱化工程及び拡径工程を示す断面図である。
【
図4】
図4(a)は、既設管の更生施工における切離工程の一態様を示す断面図である。
図4(b)は、前記切離工程の他の態様を示す断面図である。
【
図5】
図5は、既設管の更生施工における自然拡径工程を示す断面図である。
【
図6】
図6は、自然拡径の補助的な手動拡径工程を示す断面図である。
【
図7】
図7は、前記自然拡径工程等の終了時を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態を図面にしたがって説明する。
図1に示すように、更生対象の既設管1は、例えば地中に埋設された下水道管であるが、本発明は、これに限定されず、上水道管、農業用水管、ガス管、水力発電導水管その他の埋設管のほか、トンネルなどが挙げられる。老朽化した既設管1の内周に更生管3がライニングされることによって、既設管1が更生される。
【0016】
更生管3は、帯状部材10からなる螺旋管である。帯状部材10の材質は、ポリ塩化ビニル(PVC)などの合成樹脂によって構成されている。
図2(a)に示すように、帯状部材10は、一定の断面形状を有して、同図の紙面と直交する帯長方向へ延びている。詳しくは、帯状部材10は、平帯状の帯板部11と、該帯板部11の帯幅方向の中間の複数条のリブ12と、帯幅方向の両側の凹凸状の嵌合部13,14を一体に有している。帯状部材10の帯幅方向の一方側の縁部分10aには、第1の嵌合部13が設けられている。第1嵌合部13は、2条(複数条)の嵌合凸部13a,13bを含む。帯状部材10の帯幅方向の他方側の縁部分10bには、第2の嵌合部14が設けられている。第2嵌合部14は、2条(複数条)の嵌合溝14a,14bを含む。
なお、帯状部材10の断面形状は適宜改変できる。
【0017】
更生管3は、次のようなエキスパンダー製管方法によって作製される。
<製管工程>
図1に示すように、元押し式の製管機20を用意する。該製管機20を既設管1の発進側(第1側)の管口1eに連なる人孔4の底部に設置する。地上の巻取りドラム(図示省略)から帯状部材10を順次繰り出して製管機20に供給する。
製管機20において、帯状部材10を螺旋状に巻回し、互いに一周ずれて隣接する縁部分10a,10bの嵌合部13,14どうしを凹凸嵌合させて接合する。これによって、螺旋状の更生管3を作製する。
図2(b)に示すように、嵌合凸部13aは嵌合溝14aに嵌め、嵌合凸部13bは嵌合溝14bに嵌める。これら嵌合部13,14の2条(複数)の凹凸嵌合によって、縁部分10a,10bどうしが、巻き方向へほぼ相対摺動不能な強拘束状態になる。
好ましくは、嵌合溝14a内には接着剤51を設け、嵌合溝14b内にはシール剤52を設けておく。更に好ましくは、シール剤52は潤滑性を有している。
【0018】
同時に、ワイヤ41(条体)を繰出リール42から繰り出して製管機20に導入する。製管機20において、ワイヤ41を嵌合凸部13a,13bの間に挿し入れて、嵌合部13,14どうしの間に挟む。
なお、ワイヤ41の先端側の引き取り部分41bは、予め、元押し製管前の巻き出し段階の更生管3の先端3fから引き出して折り返させ、更生管3の内部空間に通して、発進側人孔4内の巻取リール43に巻き付けておく。先端3fには、ワイヤ41の折り返し部41cが設けられる。
【0019】
このようにして作製した更生管3を製管機20から順次押し出し、既設管1の内部に挿し入れる。更生管3の先端3f(第2側の管端)を牽引してもよい。
図1に示すように、製管時の更生管3の外径(製管径)は、既設管1の内径より小径にする。これによって、既設管1内へ押し込み中の更生管3と既設管1との間の摩擦が低減される。
【0020】
更生管3の先端3fが既設管1の到達側(第2側)の管口1fに達するまで、前記製管を行なう。これにより、既設管1の全域に更生管3が配置される。好ましくは、更生管3の先端3fを治具(図示せず)等によって管口1fに対して回り止めする。
更生管3における発進側(第1側)の管端は、人孔4内の製管機20と係合されている。
【0021】
前記製管工程によって、ワイヤ41が、更生管3の全域にわたって帯状部材10に沿って螺旋状に巻かれた状態で更生管3に埋め込まれる。ワイヤ41の引き取り部分41bは、先端3fと巻取リール43とを結ぶように、更生管3の内部空間の全域に通される。
【0022】
<拘束弱化工程>
製管後、
図3に示すように、巻取リール43によって引き取り部分41bを巻き取りながら管軸方向に引っ張る。これによって、ワイヤ41の前記埋め込まれていた部分41aが更生管3から順次引き抜かれ、ワイヤ41の折り返し部41cが、第2側から第1側(
図3において右側から左側)へ向けて螺旋状の巻き方向に沿って移行される。このとき、
図2(c)に示すように、嵌合部13の一部の嵌合凸部13aの根元部分が、前記ワイヤ41の折り返し部41cによって切断される。これによって、更生管3の先端3fから第1側へ向けて順次、縁部分10a,10bどうしの拘束力が弱められて、これら縁部分10a,10bどうしが巻き方向へ相対摺動可能な弱拘束状態になる。
【0023】
<拡径(拡張)工程>
前記ワイヤ41の巻取りによる拘束弱化工程と併行して、製管機20によって、帯状部材10における更生管3に続く帯部分19を更生管3へ送り込んで更生管3に組み込む。これによって、更生管3における強拘束状態のままの一定径のストレート状の管部3aが捩じられる。すなわち、ストレート状管部3aの全体が一体的に回転されながら第2側(
図3において右側)へ押し込まれる。更生管3における弱拘束状態となった管部においては、縁部分10a,10bどうしが巻き方向に沿って互いにずれるように滑り、拡径(拡張)される。該弱拘束状態となった管部における、拡径変形中の管部3cは、第2側へ向かって拡径するコーン状(円錐台状)になる。該コーン状管部3cの更に第2側に拡径済のストレート状の管部3bが連なる。ストレート状管部3bは、強拘束状態のストレート状管部3aより大径であり、既設管1の内周面の全周にわたって張り付いてる。
製管工程で用いた製管機20が拡張製管機となる。
【0024】
拘束弱化工程と拡径工程を併行して行うのに限らず、拘束弱化工程と拡径工程とを少しずつ交互に行ってもよい。拘束弱化工程を先行させ過ぎて、第1側の部分が先に拡径されて張り付き不良が起きないように留意する。
拘束弱化工程及び拡径工程の進行に伴って、コーン状管部3cが第1側(
図3において左側)へ移行し、大径ストレート状管部3bが第1側へ伸長し、かつ小径ストレート状管部3aが縮小していく。
【0025】
図4に示すように、これら拡径された管部3c,3bの第1側の端部すなわちコーン状管部3cの小径側端部3dが、管口1eひいては製管機20の近くの所定位置1dに達するまで、拘束弱化工程及び前記拡径工程を併行して行なう。
所定位置1dは、コーン状管部3cがバックリングを生じないテーパ角及び長さに維持可能なように、製管機20までの距離等を考慮して設定する。
管口1eと所定位置1dとの間の所定距離L
1は、ストレート状管部3aの巻きピッチP
3aに対して、L
1=1×P
3a~30×P
3a程度が好ましい。
【0026】
図4に示すように、コーン状管部3cの小径側端部3dが所定位置1dに達したとき、拡径工程を終了する。
<切離工程>
そして、人孔4内において更生管3を拡張製管機20から切り離す。詳しくは、拡張製管機20と管口1eとの間の位置3pにおいて更生管3を切断する。切断位置3pと管口1eとの間の切断距離L
2は、後記自然拡径工程及び手動拡径工程後の更生管3の第1側の管端3e(切断端)が管口1eより少し突出されるように設定する。好ましくは設定に際して、ストレート状管部3aと管口1eとの直径差、距離L
1、ピッチP
3a等を考慮する。
【0027】
<第1側管部3gの拘束弱化工程>
前記切離工程と前後して、更生管3における所定位置1dから管端3eまでの小径ストレート状の第1側管部3gの全域を弱拘束状態にする。
図4(a)に示すように、切離工程の前に第1側管部3gの拘束弱化工程を行う場合は、ワイヤ41を少なくとも位置3pまで引き取り、その後、更生管3を位置3pで切断する。
【0028】
図4(b)に示すように、切離工程の後に第1側管部3gの拘束弱化工程を行う場合は、切離工程の際、ワイヤ41の引き取り部分41bを切断することなく巻取リール43と繋げておく。ワイヤ41の埋設部分41aは、更生管3と共に切断して繰出リール42から切り離す。切断後の埋設部分41aの切断端41eを更生管3の管端3eにクランプ44で止着する。そして、切離工程後、巻取リール43によってワイヤ41を巻き取る。
【0029】
<自然拡径工程>
図5に示すように、前記切離工程後かつ第1側管部3gの拘束弱化工程後、しばらく第1側管部3gを放置する。第1側管部3gは、製管機20から解放され、かつ弱拘束状態になっているから、自ら平板状態に戻ろうとする弾性力によって自然と拡径される。このとき、第1側管部3gに無理な外力が作用することがないから、バックリングが起きることは殆どない。したがって、
図7に示すように、第1側管部3gを、バックリングを防止しながら既設管1の管口1eの近くの内周面に張り付かせることができる。
【0030】
<手動拡径工程>
図6に示すように、張り付きが不十分な場合や長時間かかる場合は、補助的に手動拡径工程を自然拡径工程に介在させてもよい。すなわち、管端3eを手動で捩じることによって第1側管部3gを強制拡径させる。
手動拡径工程の際は、好ましくは、管端3eの近くに穴3hを開けて直管等の棹材5を貫通させ、該棹材5を手で回すことで、第1側管部3gに捩じり力を加える。穴3hは、嵌合部13,14ひいてはワイヤ41の埋設部分41aを避けて形成する。
【0031】
第1側管部3gを手動で拡径させることによって、拡径変形中のコーン状管部3cのテーパ角や嵌合部13,14の嵌合状態を目視観察できる。これによって、第1側管部3gの特にコーン状管部3cにおいてバックリングが起きないように捩じり力を調整できる。バックリングが起きそうなときは、手動であるから、捩じり操作を直ちに止めることができ、所要の手当てを行なうことができる。この結果、第1側管部3gを、バックリングが起きるのを未然に防止しながら拡径させて、既設管1の内周面に張り付かせることができる。したがって、バックリングの補修や製管のやり直しをする必要が無く、作業ロスを回避できる。
【0032】
第1側管部3gの自然拡径や手動拡径に伴って、人孔4内に突出された管端3eが管口1eへ向けて漸次引っ込む。一方、前述した切断距離L
2の設定によって、管端3eは、どんなに引っ込んだとしても管口1eよりも既設管1内に引っ込むことはない。したがって、
図7に示すように、既設管1の管口1eまで更生管3を確実に張り付けることができる。更生管3の寸法が足らずに管口1eの内周面が露出されるのを防止できる。
自然拡径や手動拡径後の管端3eがちょうど管口1e内に位置されるように、切断距離L
2を設定しておいてもよい。
既設管1の内周面と更生管3との間には、モルタル等の裏込め材を充填してもよい。
このようにして、既設管1が更生される。
【0033】
本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の改変をなすことができる。
例えば、第1側管部3gが切離工程によって解放された直後の自然拡径の後は、手動拡径によって、第1側管部3gが既設管1の内周面に張り付くまで強制拡径させてもよい。
製管工程では、更生管における螺旋状の帯状部材の隣接する縁部分どうし間に拘束用の条体を挟むことによって、これら縁部分どうしを強拘束状態とし、拘束弱化工程では、前記拘束用条体を前記縁部分どうし間から引き抜くことで、強拘束状態が解除されて弱拘束状態となるようにしてもよい。
切離工程においては、拡張製管機を分解するなどして更生管3から分離してもよい。
拡張製管機が、製管工程を行なう製管機とは別に用意されてもよい。牽引式の製管機によって製管工程を行ない、元押し式の製管機からなる拡張製管機によって拡径工程を行なってもよい。
拡径(拡張)後の更生管の断面形状は、円でなくてもよく、楕円や四角でもよい。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明は、例えば老朽化した下水道管の更生施工に適用可能である。
【符号の説明】
【0035】
L1 所定距離
L2 切断距離
P3a 巻きピッチ
1 既設管
1d 所定位置
1e 発進側(第1側)の管口
1f 到達側(第2側)の管口
3 更生管
3a 小径ストレート状管部
3b 大径ストレート状管部
3c コーン状管部
3d 小径側端部(拡径された管部の第1側の端部)
3e 管端(第1側の管端)
3f 先端(第2側の管端)
3g 第1側管部
3p 切断位置
4 人孔
10 帯状部材
10a,10b 縁部分
13 第1嵌合部(嵌合部)
13a 嵌合凸部(一部の嵌合凸部
13b 嵌合凸部
14 第2嵌合部(嵌合部)
14a,14b 嵌合溝
19 帯部分
20 製管機(拡張製管機)
41 ワイヤ(条体)
41a 埋設部分
41b 引き取り部分
41c 折り返し部
41e 切断端
44 クランプ(止着手段)