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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-05
(45)【発行日】2023-12-13
(54)【発明の名称】推進敷設工法用推進力伝達装置
(51)【国際特許分類】
   E21D 9/06 20060101AFI20231206BHJP
   F16L 1/028 20060101ALI20231206BHJP
【FI】
E21D9/06 311A
F16L1/028 E
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020018715
(22)【出願日】2020-02-06
(65)【公開番号】P2021046775
(43)【公開日】2021-03-25
【審査請求日】2023-01-12
(31)【優先権主張番号】P 2019166996
(32)【優先日】2019-09-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000231877
【氏名又は名称】日本鋳鉄管株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000958
【氏名又は名称】弁理士法人インテクト国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100120237
【弁理士】
【氏名又は名称】石橋 良規
(72)【発明者】
【氏名】松島 誠二
【審査官】亀谷 英樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-309890(JP,A)
【文献】特開2018-179066(JP,A)
【文献】特開2013-102583(JP,A)
【文献】特開2002-059853(JP,A)
【文献】特開2014-142050(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第1693280(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 1/00-9/14
F16L 1/028
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
先行管の受け口に後行管の挿し口を嵌め込むことにより接合した管を、順次、さや管内に押し込んで、新設管を前記さや管内に敷設する推進敷設工法により使用される推進敷設工法用推進力伝達装置であって、
前記挿し口の外周面に取り付けられるリング状のバンドと、
前記バンドに設けられ、前記後行管の押し込み力を前記先行管に伝達する複数の推進力伝達手段と、
を有し、
各前記推進力伝達手段は、
前記受け口の端面方向に伸び、その先端が前記受け口の端面に当接する推進力伝達部材と、
前記バンドに固定されたブラケットと、
前記さや管内において前記後行管を支持する支持部材と、
前記支持部材を前記ブラケットに固定する、一端が前記ブラケットに取り付けられた固定軸と、
を有し、
前記推進力伝達部材には、前記バンドの軸方向に長い長孔が形成され、
前記長孔には、その一方端に前記固定軸を固定し、前記長孔を仕切る仕切壁が形成され、
前記固定軸の他端は、前記長孔の一方端に抜け出し不可に挿入され、
当該仕切壁が、前記押し込み力が所定の力を超えた場合に変形することを特徴とする推進敷設工法用推進力伝達装置。
【請求項2】
請求項1に記載の推進敷設工法用推進力伝達装置であって、
前記先行管と後行管は、前記挿し口の先端から前記受け口の奥端の間に所定の距離をとって接合され、
前記バンドは、前記受け口の端面と前記バンドの受け口側の端面の距離が前記所定の距離未満となる位置に取り付けられることを特徴とする推進敷設工法用推進力伝達装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の推進敷設工法用推進力伝達装置であって、
前記支持部材は、車輪からなることを特徴とする推進敷設工法用推進力伝達装置。
【請求項4】
請求項3に記載の推進敷設工法用推進力伝達装置であって、
前記固定軸は、前記車輪の車軸として、前記車輪をブラケット内において回転可能に固定することを特徴とする推進敷設工法用推進力伝達装置。
【請求項5】
請求項乃至の何れか一項に記載の推進敷設工法用推進力伝達装置であって、
前記推進力伝達部材の先端部は、前記受け口の前記端面と当接するように折れ曲がっていることを特徴とする推進敷設工法用推進力伝達装置。
【請求項6】
請求項に記載の推進敷設工法用推進力伝達装置であって、
前記推進力伝達部材は、折れ曲がった部分である屈曲部と、前記屈曲部より先の前記受け口の前記端面と当接する第1当接部を有し、
前記推進力伝達部材を平面視した場合に前記屈曲部の外側が円弧状に形成されており、
前記推進力伝達部材は、平面視した場合に前記屈曲部と重なる位置に、前記受け口の前記端面と当接する第2当接部を有することを特徴とする推進敷設工法用推進力伝達装置。
【請求項7】
請求項に記載の推進敷設工法用推進力伝達装置であって、
前記推進力伝達部材は、折れ曲がった部分である屈曲部の外側が円弧状に形成されており、前記屈曲部と、前記屈曲部より先側の部分の前記受け口の前記端面と当接する面に、当接板が設けられていることを特徴とする推進敷設工法用推進力伝達装置。
【請求項8】
請求項に記載の推進敷設工法用推進力伝達装置であって、
前記推進力伝達部材の折れ曲がった部分である屈曲部の外側が直角に形成されていることを特徴とする推進敷設工法用推進力伝達装置。
【請求項9】
請求項1乃至の何れか一項に記載の推進敷設工法用推進力伝達装置であって、
前記バンドは、前記バンドの端部間に通されるボルトと、前記ボルトに螺合するナットにより前記挿し口の外周面に取り付けられていることを特徴とする推進敷設工法用推進力伝達装置。
【請求項10】
請求項1乃至の何れか一項に記載の推進敷設工法用推進力伝達装置であって、
前記バンドの内周面の少なくとも一部には、前記内周面における他の部分よりも前記挿し口の接触面との摩擦力を高くする摩擦力向上部が形成されていることを特徴とする推進敷設工法用推進力伝達装置。
【請求項11】
請求項10に記載の推進敷設工法用推進力伝達装置であって、
前記摩擦力向上部には突起が形成されていることを特徴とする推進敷設工法用推進力伝達装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、先行管の受け口に後行管の挿し口を嵌め込むことにより接合した管を、順次、予め地中に敷設されたさや管内に押し込んで、新設管をさや管内に敷設するさや管式の推進敷設工法において、挿し口の外周面に固定されて後行管の推進力(押し込み力)を先行管に伝達する推進敷設工法用推進力伝達装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、道路工事による交通障害や掘削残土の処理等の問題が少なく、しかも、軌道下等の開削工事が行えない場所であっても管の敷設が可能なさや管式推進敷設工法が実施されている。
【0003】
さや管式推進敷設工法に使用される推進力伝達装置の一例が特許文献1に開示されている。以下、この推進力伝達装置を、従来推進力伝達装置という。
【0004】
従来推進力伝達装置は、後行管の挿し口の先端から先行管の受け口の奥端までの間に押込用空間(収縮代)を残して受け口に挿し口を挿入するために、受け口開口端から押込用空間に相当する長さ分以上隔てた挿し口の外面に取り付けられるバンド部材と、該バンド部材から受け口開口端方向へ伸び、先端が受け口開口端に掛かり合う推力伝達部材と、バンド部材外面に径方向に突出支持され、さや管内面に沿って摺動または転動する案内部材を備え、受け口開口端に掛かり合う推力伝達部材の強度が、管の推進力には耐えるが地震時の大きな外力には破壊される強度とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第3916411号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の図3が示すように、従来推進力伝達装置は、複数の推力伝達部材が先行管の受け口端面の外周側から掛かる構造となっている。このため、さや管で形成される推進管路が曲がっていて、連続する新設管の管軸が連結部分で曲がってさや管内を推進される場合には、一部の推力伝達部材(例えば、推進管路が左に曲がっている場合には、右側にある推力伝達部材)の掛かりが外れてしまい、残った推力伝達部材(例えば、推進管路が左に曲がっている場合には、左側にある推力伝達部材)だけで推進することになり、連続する新設管の数が多く、その総重量が大きくなると、敷設できる新設管の推進距離が短くなる場合がある。
【0007】
そこで、本発明は、推進管路が曲がっていて、連続する新設管が連結部分で曲がって推進される場合であっても、推進力伝達手段が先行管の受け口に追従可能な構造とすることにより、先行管の受け口に対して推進力を安定して伝達することができる推進敷設工法用推進力伝達装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、上記目的を達成するためになされたものであり、下記を特徴とする。
【0009】
請求項1に記載の発明は、先行管の受け口に後行管の挿し口を嵌め込むことにより接合した管を、順次、さや管内に押し込んで、新設管を前記さや管内に敷設する推進敷設工法により使用される推進敷設工法用推進力伝達装置であって、前記挿し口の外周面に取り付けられるリング状のバンドと、前記バンドに設けられ、前記後行管の押し込み力を前記先行管に伝達する複数の推進力伝達手段と、を有し、各前記推進力伝達手段は、前記受け口の端面方向に伸び、その先端が前記受け口の端面に当接する推進力伝達部材と、前記バンドに固定されたブラケットと、前記さや管内において前記後行管を支持する支持部材と、前記支持部材を前記ブラケットに固定する、一端が前記ブラケットに取り付けられた固定軸と、を有し、前記推進力伝達部材には、前記バンドの軸方向に長い長孔が形成され、前記長孔には、その一方端に前記固定軸を固定し、前記長孔を仕切る仕切壁が形成され、前記固定軸の他端は、前記長孔の一方端に抜け出し不可に挿入され、当該仕切壁が、前記押し込み力が所定の力を超えた場合に変形することを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の推進敷設工法用推進力伝達装置であって、前記先行管と後行管は、前記挿し口の先端から前記受け口の奥端の間に所定の距離をとって接合され、前記バンドは、前記受け口の端面と前記バンドの受け口側の端面の距離が前記所定の距離未満となる位置に取り付けられることを特徴とする。
【0013】
請求項に記載の発明は、請求項1又は2に記載の推進敷設工法用推進力伝達装置であって、前記支持部材は、車輪からなることを特徴とする。
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の推進敷設工法用推進力伝達装置であって、前記固定軸は、前記車輪の車軸として、前記車輪をブラケット内において回転可能に固定することを特徴とする。
【0014】
請求項に記載の発明は、請求項乃至の何れか一項に記載の推進敷設工法用推進力伝達装置であって、前記推進力伝達部材の先端部は、前記受け口の前記端面と当接するように折れ曲がっていることを特徴とする。
【0015】
請求項に記載の発明は、請求項に記載の推進敷設工法用推進力伝達装置であって、前記推進力伝達部材は、折れ曲がった部分である屈曲部と、前記屈曲部より先の前記受け口の前記端面と当接する第1当接部を有し、前記推進力伝達部材を平面視した場合に前記屈曲部の外側が円弧状に形成されており、前記推進力伝達部材は、平面視した場合に前記屈曲部と重なる位置に、前記受け口の前記端面と当接する第2当接部を有することを特徴とする。
【0016】
請求項に記載の発明は、請求項に記載の推進敷設工法用推進力伝達装置であって、前記推進力伝達部材は、折れ曲がった部分である屈曲部の外側が円弧状に形成されており、前記屈曲部と、前記屈曲部より先側の部分の前記受け口の前記端面と当接する面に、当接板が設けられていることを特徴とする。
【0018】
請求項に記載の発明は、請求項に記載の推進敷設工法用推進力伝達装置であって、前記推進力伝達部材の折れ曲がった部分である屈曲部の外側が直角に形成されていることを特徴とする。
【0019】
請求項に記載の発明は、請求項1乃至の何れか一項に記載の推進敷設工法用推進力伝達装置であって、前記バンドは、前記バンドの端部間に通されるボルトと、前記ボルトに螺合するナットにより前記挿し口の外周面に取り付けられていることを特徴とする。
【0020】
請求項10に記載の発明は、請求項1乃至の何れか一項に記載の推進敷設工法用推進力伝達装置であって、前記バンドの内周面の少なくとも一部には、前記内周面における他の部分よりも前記挿し口の接触面との摩擦力を高くする摩擦力向上部が形成されていることを特徴とする。
【0021】
請求項11に記載の発明は、請求項10に記載の推進敷設工法用推進力伝達装置であって、前記摩擦力向上部には突起が形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
この発明によれば、推進管路が曲がっていて、連続する新設管が連結部分で曲がって推進される場合において、曲がる方向とは逆の位置にある推進力伝達手段の掛かりが外れてしまいそうな場合であっても、曲がる方向に位置する推進力伝達手段が有する変形部に所定の力を超える押し込み力が掛かることにより当該変形部が変形して、推進力伝達手段が先行管の受け口に追従するように当接することから、推進力伝達手段が先行管の受け口に対して推進力を安定して伝達することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本実施形態に係る推進敷設工法用推進力伝達装置を装着した管接合部を示す部分断面斜視図である。
図2】本実施形態に係る推進敷設工法用推進力伝達装置を装着した管接合部を示す別の部分断面斜視図である。
図3】本実施形態に係る推進敷設工法用推進力伝達装置を装着した管接合部を示す横断面図である。
図4】本実施形態に係る推進敷設工法用推進力伝達装置を示す斜視図である。
図5】本実施形態に係る推進敷設工法用推進力伝達装置の推進力伝達部材を示す斜視図である。
図6】本実施形態に係る推進敷設工法用推進力伝達装置の爪部を拡大した部分斜視図である。
図7】さや管内の、本実施形態に係る推進敷設工法用推進力伝達装置を装着した管接合部を示す斜視図である。
図8】チェックゲージを示す平面図である。
図9】(A)~(D)は、本実施形態に係る推進敷設工法用推進力伝達装置を装着した管接合部の状態遷移図である。
図10】本実施形態に係る推進敷設工法用推進力伝達装置とは別の推進敷設工法用推進力伝達装置を示す斜視図である。
図11】(A)は本実施形態に係る推進力伝達部材が先行管の受け口の端面に当接する様子を示す部分平面図であり、(B)本実施形態に係る推進力伝達部材が折れ曲がる様子を示す部分平面図である。
図12】本実施形態に係る推進力伝達部材とは別の推進力伝達部材を示す斜視図(先端部側からの斜視図)である。
図13】本実施形態に係る推進力伝達部材とは別の推進力伝達部材を示す斜視図(後端部側からの斜視図)である。
図14】本実施形態に係る推進力伝達部材とは別の推進力伝達部材を示す部分平面図である。
図15】本実施形態に係る推進力伝達部材とは別の推進力伝達部材の先端部折り曲げ前の側面図である。
図16】本実施形態に係る推進力伝達部材とは別の推進力伝達部材の先端部折り曲げ前の斜視図(先端部側からの斜視図)である。
図17】本実施形態に係る推進力伝達部材とは更に別の推進力伝達部材を示す斜視図(先端部側からの斜視図)である。
図18】本実施形態に係る推進力伝達部材とは更に別の推進力伝達部材を示す部分平面図である。
図19】他の推進力伝達部材を示す斜視図(先端部側からの斜視図)である。
図20】他の推進力伝達部材を示す部分平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
次に、この発明の推進敷設工法用推進力伝達装置の実施態様を、図面を参照しながら説明する。
【0025】
図1から図7に示すように、本実施形態に係る推進敷設工法用推進力伝達装置11(以下、「推進力伝達装置11」という)は、後行管5の挿し口3の外周面に装着されるリング状の締め付け手段12と、挿し口3の外周面に沿って間隔をあけて配される複数個(本実施形態では3個)の推進力伝達手段13とを備えている。
【0026】
締め付け手段12は、一本のバンド14と、バンド14を締め付ける締め付け具としてのボルト15とナット16とからなっている。ボルト15は、バンド14の両端に通され、ボルト15に螺合するナット16を締めることによって、バンド14が締め付けられる。なお、締め付け手段12は、複数本のバンド14同士を締め付け具としてのボルト15とナット16とによりリング状に連結したものであってもよい。
【0027】
推進力伝達手段13は、推進力伝達部材17と、ブラケット18と、車輪20と、固定軸21と、固定軸保持部材25とを有する。
【0028】
推進力伝達部材17は、先行管2の受け口1の端面1aに当接し、後行管5の推進力(押し込み力)を先行管2に伝達する。推進力伝達部材17の先端部は、受け口1の端面1aと当接するように折れ曲がっている。
【0029】
ブラケット18は、バンド14の外周面に設けられている。
【0030】
車輪20は、推進管路としてのさや管19内において後行管5を支持する支持部材として機能する。
【0031】
固定軸21はボルトからなり、ブラケット18に形成されている挿通孔(図示しない)、車輪20の軸穴(図示しない)、推進力伝達部材17に形成されている長孔17a、固定軸保持部材25に形成されている挿通孔(図示しない)の順に挿通され、ナット22と螺合して固定される。換言すれば、固定軸21の一端がブラケット18に取り付けられ、車輪20をブラケット18内において回転可能に固定するとともに、固定軸21の他端は推進力伝達部材17に形成された長孔17aの一方端(図3参照)に、抜け出し不可に固定される。
【0032】
図5に示すように、固定軸21の他端が通される長孔17aは、仕切壁23により2つに仕切られ、固定軸21の他端はその一方に保持されることにより、長孔17aの一方端に固定される。仕切壁23は、押し込み力が所定の力を超えた場合に変形する。なお、仕切壁23は、推進力伝達部材17と一体に形成してもよいし、別体としてもよい。
【0033】
図3に示すように、後行管5の挿し口3は、その先端部に抜止め用突起4が形成されている。また、受け口1の内周面に形成されたロックリング用溝7内には、芯出し用リング8を介してロックリング6が嵌め込まれており、受け口1の内周面に形成されたゴム輪用溝10内には、ゴム輪9が嵌め込まれている。
【0034】
図4に示すように、固定軸保持部材25の下端は、階段状に切り欠きが形成されており、切り欠きがバンド14の端面14aと、ブラケット18の爪18aに掛かり合う位置に固定される。これにより、固定軸保持部材25が後方にずれることがないため、推進時に車輪と固定軸が斜めになることを防ぎ、安定した推進姿勢を保つことができる。
【0035】
図6に示すように、バンド14の内周面であって、ボルト15とナット16によってバンド14を締め付ける部分の近傍には、爪部24が形成されている。爪部24は、バンド14の内周面における他の部分よりも挿し口3の接触面との摩擦力を高くするために形成されている。
【0036】
次に、この発明の推進力伝達装置11を使用した推進敷設工法について説明する。
【0037】
この発明の推進力伝達装置11を使用した推進敷設工法により新設管を接合するには、地上で後行管5の挿し口3に推進力伝達装置11を固定する。すなわち、締め付け手段12のバンド14をボルト15とナット16とにより締め付けて、推進力伝達装置11を挿し口3に固定する。
【0038】
推進力伝達装置11の固定位置は、挿し口3を受け口1に嵌め込んだときに、先行管2と後行管5との管接合部が伸縮可能となる位置であり、推進力伝達手段13の先端部が受け口1の端面1aに当接する位置とする。
【0039】
地上で推進力伝達装置11を後行管5の挿し口3に固定したら、後行管5を地下(発進立坑)に吊り下ろして、先行管2の受け口1に嵌め込む。これによって、図3に示すように、先行管2と後行管5とが、管接合部に収縮代T1、伸び代T2を維持した状態で接合される。なお、収縮代T1は、挿し口3の先端から受け口1の奥端の間の距離に相当し、伸び代T2は、ロックリング6から抜止め用突起4の間の距離に相当する。このように、収縮代T1及び伸び代T2をとって管を接合することにより、地震等により管接合部に過大な押し込み力又は引っ張り力が作用した場合であっても、管接合部が伸縮し、管の破損を防ぐことができる。
【0040】
先行管2と後行管5とを接合したら、チェックゲージG(図8参照)を、バンド14と受け口1の端面1aとの間の隙間から受け口1内に挿入して、ゴム輪9が正しい位置にあるか否かを判断する。
【0041】
このようにして、チェックゲージGを受け口1の全周に亘ってゴム輪9に到達するまで挿入することができるので、チェックゲージ48によりゴム輪9の嵌め込み状態を確実に確認することができる。
【0042】
なお、バンド14は、バンド14と受け口1の端面1aとの間の取付距離T3が収縮代T1未満となる位置に取り付けられる。
【0043】
次いで、油圧ジャッキ等を用いて後行管5をさや管19で形成された推進管路内に押し込むと、推進力伝達手段13がその押し込み力を先行管2に伝達し、後行管5、先行管2及びその先の管が推進管路の奥に押し込まれる。
【0044】
このように、地上で推進力伝達装置11の装着作業が行えるので、推進力伝達装置11の装着作業と、地下での受け口1への挿し口3の嵌め込み作業とが別々に行える。この結果、地上で複数本の後行管5の挿し口3への推進力伝達装置11の装着が行えるので、管接合に要する全体の作業時間が短縮される。特に、地下で行う作業時間が大幅に短縮される。
【0045】
また、地下での推進力伝達装置11の装着作業は、作業空間が狭いことから時間を要するが、地上で推進力伝達装置11の装着作業が行えるので、地下では受け口1への挿し口3の嵌め込み作業とチェックゲージGによる確認作業のみですむ。この結果、管接合に要する全体の作業時間が短縮される。特に、地下で行う作業時間が大幅に短縮される。
【0046】
この発明の推進力伝達装置11を使用した推進敷設工法によれば、さや管19内への新設管敷設の際の後行管5の押し込み力は、後行管5の挿し口3に、締め付け手段12を介して取り付けられた推進力伝達部材17により先行管2に伝達することができる。すなわち、図1に示すように、推進力伝達部材17が受け口1の端面1aに当接することによって、押し込み力を先行管2に伝達することができる。
【0047】
次に、図9を用いて、推進力伝達部材17の仕切壁23の変形度合いの変化について説明する。
【0048】
図9(A)は、押し込み力がゼロである初期状態を示している。この初期状態から徐々に押し込み力が上昇していき、所定の力を超えると、図9(B)に示すように、仕切壁23が初期変形状態となる。そうすると、仕切壁23が変形した分だけ、収縮代T1及び取付距離T3が短くなり、伸び代T2が長くなる。なお、仕切壁23の変形(又は破断)により推進力伝達部材17がスライドする長さは、スライド長T4に相当する。
【0049】
次いで、更に、押し込み力が上昇すると、図9(C)に示すように、仕切壁23が完全変形状態となる。そうすると、仕切壁23が更に変形した分だけ、収縮代T1及び取付距離T3が更に短くなり、伸び代T2が長くなり、また、スライド長T4はゼロとなる。なお、仕切壁23は、図9(C)のように伸び変形をさせても良いし、破断させても良い。
【0050】
次いで、図9(C)の状態からさらに押し込み力が上昇すると、仕切壁23は図9(C)に示した完全変形状態のままで、バンド14が後行管5の挿し口3に対して滑る。この場合、収縮代T1が更に短くなり、伸び代T2は長くなる。なお、取付距離T3は、バンド14が当初取り付けられている位置からは後方に滑るため、図9(C)の状態から変わらない。
【0051】
ところで、本実施形態において、バンド14の挿し口3への取付強度は、押し込み力には耐えるが、地震時の大きな力で滑る強度である。ここで、押し込み力に耐えるとは、油圧ジャッキ等による押し込み力により新設管が推進されている場合に、バンド14が全く滑らないことを意味するのではなく、新設管の数が多くなるなどして油圧ジャッキ等による押し込み力が上昇した場合に、収縮代T1をゼロとしない範囲でバンド14が滑る場合を含むことを意味する。
【0052】
また、地震等によって過大な押し込み力が推進力伝達装置11に掛かると仕切壁23が完全に変形(又は破断)した後に、次いで、バンド14が滑り、図9(D)に示すように収縮代T1がゼロとなる。このとき、バンド14の内面と挿し口3の外面との間に摩擦力が働くためバンド14が一気に滑るのではなく徐々に滑るため収縮代T1を吸収する際の衝撃を軽減する(クッションのような役割を果たす)ことができる。なお、従来推進力伝達装置では、バンド部材の取付位置が、挿し口の外面における受け口開口端から押込用空間に相当する長さ分以上隔てた位置であるため、推進時の押し込み力以上の過大な力(地震などによる力)が掛かった場合には、掛かりあった推力伝達部材の破損後に一気に(推力伝達部材が耐えた分だけ)後行管が前方に押し込まれるため管に衝撃が掛かる。
【0053】
次に、推進経路が直線である場合とカーブしている場合とについて、新設管推進時の推進力伝達装置11の動きについて説明する。
【0054】
まず、推進管路が直線の部分では、連続する新設管は管軸方向に沿って直線的に推進されるため、3つの推進力伝達部材17がそれぞれ受け口1の端面1aに当接し、押し込み力を先行管2に伝達する。つまり、3つの推進力伝達部材17で押し込み力を伝達するため、1つの推進力伝達部材17に掛かる力(荷重)は全体の3分の1となる。
【0055】
一方で、例えば、推進管路が左に曲がっていて、推進管路内において連続する新設管が連結部分で左に曲がって推進される場合には、左側の推進力伝達部材17に掛かる力が、他の推進力伝達部材17よりも大きくなる。そのため、1つの推進力伝達部材17のみが受け口1の端面1aに当接する状況となった場合には、従来であれば、全ての力が1つの推進力伝達部材17に掛かることにより破損してしまい、その部分で押し込み力を受けることができなくなる。そのため、残りの2つで押し込み力を受けることになり、推進可能な距離が短くなってしまう。
【0056】
しかしながら、本実施形態の推進力伝達部材17は、押し込み力が所定の力を超えると仕切壁23が変形する。よって、この場合、左側の推進力伝達部材17の仕切壁23が変形して取付距離T3が短くなるため、他の推進力伝達部材17が受け口1の端面1aに当接することとなり、その結果、3つの推進力伝達部材17により押し込み力を先行管2に伝達することができるようになる。なお、図9(C)に示すように仕切壁23が完全に変形した状態となった場合であっても、推進力伝達部材17に掛かる力をバンド14で受けている状態であるため、変形前と同様に押し込み力を受けることは可能である。これにより、推進管路が曲がっている場合において、1つの推進力伝達部材17のみで押し込み力を伝達するよりも、大きな押し込み力を伝達することができるため、より長く連結された新設管を推進させることができる。
【0057】
なお、3つの推進力伝達部材17が受け口1の端面1aに当接している場合において、押し込み力による仕切壁23の変形は、バンド14の滑りが生じる前に発生する。つまり、仕切壁23の変形開始時の推進力伝達装置11に掛かる荷重F1(「所定の力」の一例)は、バンド14の滑り開始時の推進力伝達装置11に掛かる荷重F2よりも小さい。
【0058】
また、1つの推進力伝達部材17だけが受け口1の端面1aに当接し、荷重が集中した場合には、推進力伝達装置11に掛かる荷重F1よりも低い荷重で仕切壁23が変形する(およそ3倍の荷重が掛かるため)。
【0059】
以上説明したように、本実施形態に係る推進力伝達装置11は、挿し口3の外周面に取り付けられるリング状のバンド14を含み、バンド14は、後行管5の押し込み力を先行管2に伝達する複数の推進力伝達手段13を有し、複数の推進力伝達手段13のそれぞれは仕切壁23(「変形部」の一例)を有し、仕切壁23は押し込み力が所定の力を超えた場合に変形する。
【0060】
したがって、本実施形態の推進力伝達装置11によれば、推進管路が曲がっていて、連続する新設管が連結部分で曲がって推進される場合において、曲がる方向とは逆の位置にある推進力伝達手段の掛かりが外れてしまいそうな場合であっても、曲がる方向に位置する推進力伝達手段13が有する仕切壁23に所定の力を超える押し込み力が掛かることにより仕切壁23が変形して、推進力伝達手段13が先行管2の受け口1に追従するように当接することから、推進力伝達手段13が分散して先行管2の受け口1に対して押し込み力を伝達することができ、延いては、推進管路に追従しながら新設管を推進させることができる。これにより、推進管路が直線の部分とカーブしている部分とで、ほぼ同じ数(距離)の新設管を押し込むことができる。
【0061】
また、本実施形態に係る推進力伝達装置11は、先行管2と後行管5が、挿し口3の先端から受け口1の奥端の間に所定の距離の収縮代T1をとって接合され、推進力伝達手段13は、受け口1の端面方向に伸び、その先端が受け口1の端面1aに当接する推進力伝達部材17を有し、バンド14は、受け口1の端面1aとバンド14の受け口側の端面の距離である取付距離T3が収縮代T1未満となる位置に取り付けられ、バンド14の挿し口3への取付強度は、押し込み力には耐えるが、地震時の大きな力で滑る強度である。これにより、推進完了後に、地震等による大きな力が推進力伝達装置11に掛かった場合であっても、仕切壁23が完全に変形(又は破断)した後に、バンド14は挿し口3に対する締め付け力により耐えてから滑り始めるため、管に対する衝撃を軽減することができる。
【0062】
更に、本実施形態に係る推進力伝達装置11は、バンド14の内周面の少なくとも一部に、内周面における他の部分よりも挿し口3の接触面との摩擦力を高くする爪部24(「摩擦力向上部」の一例)が形成されている。これにより、バンド14の挿し口3に対する締め付け力を向上させ、滑りにくくさせることができ、施工者による挿し口3に対するバンド14の取付強度のばらつきを吸収することができる。
【0063】
次に、図10を用いて推進力伝達装置11の変形例について説明する。上述した実施形態における推進力伝達装置11との大きな違いは、推進力伝達部材17の管軸方向の長さと、スライド長T4が長くなっている点である。この変形例に係る推進力伝達装置11では、上述した実施形態のものと比較して、仕切壁23がより大きく変形する(又は破断する)ように形成されている。これにより、推進時において仕切壁23が完全変形状態となるまでのマージンが大きくなるため、推進管路のカーブがきつい場合でも、推進力伝達部材17の変形により押し込み力を安定して先行管に伝達することが可能となる。このようにスライド長T4の設計値は、取付距離T3を確保した状態で、適宜設定することができる。
【0064】
ところで、図11(A)に示すように、推進力伝達部材17と受け口1の端面1aとが当接した際、推進管路内を推進させる新設管の数が多い場合や、新設管の口径が大きい場合などには、推進させる新設管の重量が増し、推進力伝達部材17と端面1aの間で作用する力が大きくなるため、仕切壁23をその力に対応可能な強度に向上させる必要がある。その一方で、仕切壁23の強度を向上させたときに、仕切壁23が変形(又は破断)する前に、図11(B)に示すように、推進力伝達部材17における折り曲がった部分である屈曲部17bより手前の部分である主体部(仕切壁23や長孔17aが形成されている部分)の屈曲部17bと長孔17aの間が折れ曲がるおそれがある。特に、図10に示した推進力伝達装置11の推進力伝達部材17のように、管軸方向の長さが長い推進力伝達部材17の場合には、折れ曲がる可能性が高くなる。これは、押し込み力を先行管2に伝達する際に、図11(A)に示すように、屈曲部17bの外側が円弧状に形成されている場合、屈曲部17bは端面1aと当接しないため(円弧状となっているため当接しない)端面1a方向(端面1aに対して垂直方向)に作用する力Fが推進力伝達部材17の主体部の管軸方向直線(一点鎖線L)上に作用せず、屈曲部17bより先の端面1aに当接する先端側当接部17dに端面1a方向に作用する力Fが大きく作用し、屈曲部17b外側の円弧形状に沿って徐々に力Fの作用する場所が変わるためにおこる。
【0065】
そこで、図12図13に示すように、本実施形態に係る推進力伝達部材17とは別の推進力伝達部材17を採用することとしてもよい。別の推進力伝達部材17は、屈曲部17bに、端面1aと当接する際に端面1aとの間で作用する力F(端面1aに対して垂直方向からの力)を受けるための当接部17cを有する。これにより、図14に示すように、屈曲部17bについても端面1a方向に作用する力を推進力伝達部材17の主体部の管軸方向直線(一点鎖線L)上で受けることができるため、大きな押し込み力が作用した場合であっても仕切壁23が変形(又は破断)する前に、屈曲部17bより手前の主体部で折れ曲がることを防ぐことができる。
【0066】
ここで、図12図13に示した別の推進力伝達部材17の作成方法について説明する。まず、図15図16に示すように、推進力伝達部材17の素材である板状体から、先端部が折り曲げられる前の推進力伝達部材17を切り出す。また、推進力伝達部材17の先端部を折り曲げた際に当接部17cが形成されるように、切込孔17eを形成する。そして、推進力伝達部材17の先端部を折り曲げることにより、当接部17cを有する推進力伝達部材17が作成される。
【0067】
また、図17に示すように、更に別の推進力伝達部材17を採用することとしてもよい。更に別の推進力伝達部材17は、外側が円弧状に形成された屈曲部17bと、屈曲部17bより先側の部分の端面1aと当接する先端側当接部17dの当接面に、端面1a方向に作用する力(端面1aに対して垂直方向からの力)を受ける当接板17fが設けられている。当接板17fは、例えば溶接等により推進力伝達部材17に取り付けることができる。図17に示す推進力伝達部材17によれば、図18に示すように、屈曲部17bについても端面1a方向に作用する力を、当接板17fを介して推進力伝達部材17の主体部の管軸方向直線(一点鎖線L)上で受けることができるため、屈曲部17b外側の円弧形状に沿って徐々に力Fの作用する場所が変わることはなく、大きな押し込み力が掛かった場合であっても仕切壁23が変形(又は破断)する前に、屈曲部17bより手前の主体部で折れ曲がることを防ぐことができる。
【0068】
なお、本実施形態に係る推進力伝達部材17や別の推進力伝達部材17や更に別の推進力伝達部材17は板金曲げ加工により外側が円弧状の屈曲部17bを形成するが、図19図20に示すように、屈曲部17bの外側が直角に形成されている他の推進力伝達部材17を採用することとしてもよい。この場合、屈曲部17bを鋳造や切削加工などにより形成する。他の推進力伝達部材17によれば、端面1a方向に作用する力を推進力伝達部材17の主体部の管軸方向直線(一点鎖線L)上で受けることができるため、大きな押し込み力が掛かった場合であっても仕切壁23が変形(又は破断)する前に、屈曲部17bより手前の主体部で折れ曲がることを防ぐことができる。
【符号の説明】
【0069】
1:受け口
1a:端面
2:先行管
3:挿し口
4:抜け止め用突起
5:後行管
6:ロックリング
7:ロックリング用溝
8:芯出し用リング
9:ゴム輪
10:ゴム輪用溝
11:この発明の推進力伝達装置
12:締め付け手段
13:推進力伝達手段
14:バンド
15:ボルト
16:ナット
17:推進力伝達部材
17a:長孔
17b:屈曲部
17c:当接部
17d:先端側当接部
17e:切込孔
17f:当接板
18:ブラケット
19:さや管
20:車輪
21:固定軸
22:ナット
23:仕切壁
24:爪部
25:固定軸保持部材
G:チェックゲージ
T1:収縮代
T2:伸び代
T3:取付距離
T4:スライド長
図1
図2
図3
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